JP6792400B2 - 乳含有飲食品 - Google Patents
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Description
例えば、特許文献1には、無脂乳固形分(SNF)濃度と塩類濃度とを制御し、脱塩濃縮乳を得て、この脱塩濃縮乳を遠心分離することで、比較的に低脂肪含量であっても、強いコクを有するフレッシュクリームを得る方法が開示されている。また、特許文献2には、5’−グアニル酸ナトリウムを3重量%以上含有する酵母エキスと脱脂粉乳及び/又は脱脂乳を含む乳製品用調味料が開示されており、この乳製品用調味料を、低脂肪あるいは無脂肪の乳製品、それを利用した食品に添加するだけで、風味や食感を改善し、コク、脂肪感、濃厚感、乳感、甘味等を付与することができることが記載されている。特許文献3には、乳清ミネラルを有効成分とする乳風味増強剤が開示されており、この乳風味増強剤により、飲食品において、乳製品、特に乳蛋白質の使用量を減じた場合であっても、多量に乳蛋白質を配合したかのような豊かな厚みのある乳風味を付与することができるとことが記載されている。
しかし、これらの方法は、応用できる食品が限られたり、その効果が十分ではない等、市場のニーズを満たすには改善の余地が大きいものであった。
また、本発明は、乳含有飲食品にβ−1,3−1,4−グルカンを0.0001〜0.1質量%含有させる、乳風味の増強方法を提供するものである。
まず、本発明の乳含有飲食品の必須成分であるβ−1,3−1,4−グルカンについて説明する。
上記β−1,3−1,4−グルカンは1−3−β−D−グルコピラノース結合及び1−4−β−D−グルコピラノース結合を主体とするグルコース重合体を主成分とするものである。
上記β−1,3−1,4−グルカンの由来としては主に穀物が挙げられ、中でもイネ科植物が好ましい。イネ科植物の例としては、米類、小麦類、トウモロコシ類、モロコシ類、ヒエ類、アワ類、キビ類、大麦類、オーツ麦類(カラス麦類)、ライ麦類等の穀類を挙げることができる。特にこれらイネ科植物から抽出によって得られた水溶性β−1,3−1,4−グルカンが好ましい。
尚、β−1,3−1,4−グルカンは、穀物以外の単子葉類植物等からも得ることができる。また、抽出以外には、分級等の方法によってもβ−1,3−1,4−グルカンを得ることができる。
・装置 EcoSEC HLC8320GPC(東ソー株式会社)
・カラム TSK GEL G6000PWXL(東ソー株式会社)−Shodex Sugar SB-802(昭和電工)
GPCの条件としては、例えば、下記の条件を採用することができる。
・溶離液 Milli-Q水によるイソクラチック溶出
・流速 0.5ml/min
・測定温度 60℃(カラム、インレット、RI)
・検出 RI及びUV(280nm)による検出(45℃)
・分析時間 20分
・試料濃度 1mg/ml
・サンプル注入量 50μl
・GPC解析ソフト(HLC8320GPC、EcoSECデータ解析 Ver.1.07、東ソー株式会社)
式中、F及びWは次の通りである。
F=(100)/(グルコース100μgの吸光度EG)
W=無水物質量(mg)
乳含有飲食品にβグルカン含有組成物を含有させた場合、β−1,3−1,4−グルカンのほかにマルトース等の低分子成分や澱粉等の多糖類も併存することになる。β−1,3−1,4−グルカンと上記低分子成分が併存した場合に、本発明の効果がより強調される。この理由は明らかではないものの、β−1,3−1,4−グルカンと低分子成分との間の何らかの作用により相乗効果が起きているものと思われる。
また、標準β−1,3−1,4−グルカン換算分子量1000以下の領域の割合が5〜70%であることが好ましく、10〜65%がより好ましく、20〜60%が更に好ましい。
標準β−1,3−1,4−グルカン換算分子量5000〜200000及び1000以下の領域の割合が上記範囲となることで、本発明の効果がより顕著なものとなる。
尚、GPCにおける各分子量領域の割合は、上記したGPC測定により得られたクロマトグラムから、全体の領域の面積に対する標準β−1,3−1,4−グルカン換算分子量5000〜200000の領域の面積割合、標準β−1,3−1,4−グルカン換算分子量1000以下の領域の面積割合として算出するものとする。上記標準β−1,3−1,4−グルカン換算分子量5000〜200000の領域とは、標準β−1,3−1,4−グルカン換算分子量5000と標準β−1,3−1,4−グルカン換算分子量200000に挟まれた領域をいうものとし、上記標準β−1,3−1,4−グルカン換算分子量1000以下の領域とは、標準β−1,3−1,4−グルカン換算分子量1000と0で挟まれた領域をいうものとする。
本発明の乳風味の増強方法は、乳含有飲食品にβ−1,3−1,4−グルカンを0.0001〜0.1質量%含有させるものであり、好ましくは0.001〜0.09質量%、より好ましくは0.006〜0.08質量%、最も好ましくは0.01〜0.07質量%含有させる。0.0001質量%未満であると呈味改善効果が見られず、また0.1質量%を超えると本発明の効果が急激に低下し、本発明の効果が不十分となってしまう。
β−1,3−1,4−グルカンは、例えば、通常の方法で乳含有飲食品を製造した後、出来上がった乳含有飲食品に添加することにより含有させることができ、あるいは乳含有飲食品の製造の際にβ−1,3−1,4−グルカンを他の原料と共に使用して乳含有飲食品を製造することにより含有させることもできる。
本発明の乳風味の増強方法に関し、特に言及しない点については、先に述べた本発明の乳含有飲食品についての詳細な説明を適宜適用することができる。
大麦の粉砕物(全粒粉、以下同じ)1000gを5リットルの水に分散させ、60℃で3時間撹拌して抽出処理を行った。抽出液を遠心分離した後、上澄み液を−20℃で凍結させ、続いてこの凍結物を融解させ、得られた溶液中のβグルカンを含有する固形分を濾過し乾燥した。収量は26gであった。これをβ−1,3−1,4−グルカン含有組成物Aとした。
(β−1,3−1,4−グルカンの含有量:72質量%、分子量5000〜200000の割合:67%、分子量1000以下の割合:5%、ただし、分子量は標準β−1,3−1,4−グルカン換算のものを基準とした。以下同じ。)
大麦の粉砕物1000gを9リットルの水に分散させ、α−アミラーゼを1500ユニット添加した後、60℃で3時間反応させて、抽出処理を行うと共に酵素処理を行った。反応液を遠心分離し、上清を凍結乾燥して粉末を207g得た。これをβ−1,3−1,4−グルカン含有組成物Bとした。
(β−1,3−1,4−グルカンの含有量:18質量%、分子量5000〜200000の割合:44%、分子量1000以下の含有量:55%)
大麦の粉砕物1000gを9リットルの水に分散させ、セルラーゼを35ユニット添加した後、60℃で3時間反応させて、抽出処理を行うと共に酵素処理を行った。反応液を遠心分離し、上清を凍結乾燥して粉末を185g得た。これをβ−1,3−1,4−グルカン含有組成物Cとした。
(β−1,3−1,4−グルカンの含有量:28質量%、分子量5000〜200000の割合:58%、分子量1000以下の含有量:42%)
大麦の粉砕物100gを9リットルの水に分散させ、60℃で3時間撹拌して抽出処理を行った。抽出液を遠心分離し、上清を凍結乾燥して粉末を145g得た。これをβ−1,3−1,4−グルカン含有組成物Dとした。
(β−1,3−1,4−グルカンの含有量:32質量%、分子量5000〜200000の割合:50%、分子量1000以下の含有量:16%)
市販の低脂肪乳(乳固形分:8.5質量%、脂肪分:1.0質量%)に、上記調製例で得られたβ−1,3−1,4−グルカン含有組成物A〜Dを、β−1,3−1,4−グルカン純分としての含有量がそれぞれ[表1]に示す量となるように添加、溶解して、様々なβ−1,3−1,4−グルカン含有量の乳飲料A〜D(アルファベットは添加したβ−1,3−1,4−グルカン含有組成物に対応)を製造し、乳風味試験を行なった。乳風味試験においては、下記評価方法に従って乳風味強度及び乳味質の評価を行なった。
10人のパネラーに、上記乳飲料A〜Dと、対照として用意したβ−1,3−1,4−グルカン含有組成物無添加の低脂肪乳を舐めさせ、その乳風味強度及び乳味質について、それぞれ下記のパネラー評価基準により評価させ、その合計点数について下記評価基準で評価を行ない、それらの結果を表1に記載した。
対照に比べあきらかに強化された乳風味を感じる・・ 2点
対照に比べ若干強化された乳風味を感じる・・・・・ 1点
対照とほぼ同じ程度の乳風味を感じる・・・・・・・ 0点
対照より弱い乳風味を感じる・・・・・・・・・・ −1点
乳風味を感じない・・・・・・・・・・・・・・・ −2点
(乳風味強度評価基準)
◎+ :10人のパネラーの合計点が17〜20点
◎ :10人のパネラーの合計点が13〜16点
○ :10人のパネラーの合計点が10〜12点
△ :10人のパネラーの合計点が5〜9点
× :10人のパネラーの合計点が0〜4点
××:10人のパネラーの合計点が0点未満
乳風味以外の風味を全く感じない・・・・・・・・・・・・・・・・・2点
乳風味以外の風味を感じるが、乳風味として違和感がない・・・・・・1点
乳風味以外の異味・雑味を感じ、且つ乳風味として違和感がある・・・0点
耐えがたい異味・雑味を感じる・・・・・・・・・・・・・・・・・−1点
(乳味質評価基準)
◎ :10人のパネラーの合計点が16〜20点
○ :10人のパネラーの合計点が10〜15点
△ :10人のパネラーの合計点が5〜9点
× :10人のパネラーの合計点が0〜4点
××:10人のパネラーの合計点が0点未満
市販レギュラーコーヒー(粉末)45質量部を、お湯620質量部で抽出し、コーヒー抽出液を得た。このコーヒー抽出液370質量部に、砂糖35量部、牛乳(乳固形分:12.8質量%)95質量部、及び前記β−1,3−1,4−グルカン含有組成物B0.5質量部を添加し、混合、溶解してコーヒー飲料Aを得た(固形分に占める乳固形分:17質量%)。
一方、β−1,3−1,4−グルカン含有組成物Bを無添加とした以外は同様の配合・製法で、対照のコーヒー飲料Bを得た。
コーヒー飲料Aとコーヒー飲料Bを比較試飲したところ、コーヒー飲料Aは、コーヒー飲料Bに比較して良好な乳風味が強く感じられた。
市販の紅茶葉6.5質量部を、お湯500質量部で抽出し、紅茶抽出液を得た。この紅茶抽出液370質量部に、砂糖20質量部、牛乳(乳固形分:12.8質量%)50質量部、及び前記β−1,3−1,4−グルカン含有組成物B0.5質量部を加え、ミルクティーAを作製した(固形分に占める乳固形分:24質量%)。
尚、β−1,3−1,4−グルカン含有組成物Bを無添加とした以外は同様の配合・製法で、対照のミルクティーBを得た。
ミルクティーAとミルクティーBを比較試飲したところ、ミルクティーAは、ミルクティーBに比較して良好な乳風味が強く感じられた。
市販のココアパウダー(純ココア)12質量部及び砂糖8質量部に熱湯10質量部を加え、ダマが出来ないよう、よく混合し、氷水で充分冷やした後、β−1,3−1,4−グルカン含有組成物B0.2質量部、及び牛乳(乳固形分:12.8質量%)150質量部を加え、アイスミルクココアAを作製した(固形分に占める乳固形分:49質量%)。
尚、β−1,3−1,4−グルカン含有組成物Bを無添加とした以外は同様の配合・製法で、対照のアイスミルクココアBを得た。
アイスミルクココアAとアイスミルクココアBを比較試飲したところ、アイスミルクココアAは、アイスミルクココアBに比較して良好な乳風味が強く感じられた。
市販のドリンクヨーグルト(乳固形分:8.5質量%)100質量部にβ−1,3−1,4−グルカン含有組成物B0.1質量部を加えて良く混合し、ドリンクヨーグルトAを作製した(固形分に占める乳固形分:約60質量%)。
尚、β−1,3−1,4−グルカン含有組成物Bを添加していない上記の市販のドリンクヨーグルトを、対照のドリンクヨーグルトBとした。
ドリンクヨーグルトAとドリンクヨーグルトBを比較試飲したところ、ドリンクヨーグルトAは、ドリンクヨーグルトBに比較して良好な乳風味が強く感じられた。
牛乳200質量部を加温し、砂糖50質量部、及びβ−1,3−1,4−グルカン含有組成物B0.3質量部を加えて溶かし、更に予め粉末ゼラチン5質量部を25質量部の水で膨潤させておいた膨潤ゼラチン30質量部を加え、ゼラチンが溶けるまで湯煎加熱した。粗熱をとったあと、ゼリー型に分注し、冷蔵庫で冷却して固め、ミルクゼリーAを作製した(固形分に占める乳固形分:24質量%)。
尚、β−1,3−1,4−グルカン含有組成物Bを無添加とした以外は同様の配合・製法で、対照のミルクゼリーBを得た。
ミルクゼリーAとミルクゼリーBを比較試食したところ、ミルクゼリーAは、ミルクゼリーBに比較して良好な乳風味が強く感じられた。
Claims (3)
- β−1,3−1,4−グルカンを0.0001〜0.1質量%含有し、
上記β−1,3−1,4−グルカン源として、標準β−1,3−1,4−グルカン換算分子量5000〜200000の領域の割合が30〜80%であり、標準β−1,3−1,4−グルカン換算分子量1000以下の領域の割合が20〜70%であるイネ科植物の抽出物を含む、乳含有飲食品(但しヨーグルト類を除く)。 - 乳製品含有飲食品の固形分基準で、乳固形分が20質量%以上である、請求項1記載の乳含有飲食品。
- 乳含有飲食品にβ−1,3−1,4−グルカンを0.0001〜0.1質量%含有させる、乳風味の増強方法。
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