JP6791354B2 - マトリクス樹脂、中間材及び成形品 - Google Patents
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Description
本願は、2018年1月16日に、日本に出願された特願2018−004833号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
繊維強化複合材料は様々な方法で製造されている。例えば連続繊維からなる強化繊維基材に予めマトリクス樹脂を含浸させたプリプレグを積層し、樹脂を加熱硬化させて成形する方法が広く用いられている。ところが、プリプレグを用いる成形では細かい凹凸を有する複雑な形状の繊維強化複合材料の製造が困難である。
中間材としては、例えば、一定長に裁断した強化繊維と、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂等の熱硬化性樹脂とを含むものが知られている(特許文献1〜4)。
特許文献7には特定のウレタン変性エポキシ(メタ)アクリレートを必須成分とするプリプレグが記載されている。特定のウレタン変性エポキシ(メタ)アクリレートは、1分子当りの平均水酸基数が特定の範囲にあるエポキシ(メタ)アクリレートと1分子当たりの平均イソシアネート基数が特定の範囲にあるポリイソシアネートとの反応物である。
[1] 下記(A−1)〜(A−4)成分の混合物を少なくとも含む、マトリクス樹脂。
(A−1)成分:1分子中に1個以上のエチレン性不飽和基を有し、平均水酸基数が1.8〜4である、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂及び不飽和ポリエステル樹脂の両方。
(A−2)成分:エチレン性不飽和単量体。
(A−3)成分:イソシアネート基含有率が15〜30.5質量%であり、平均イソシアネート基数が1.8〜2.4であるポリイソシアネート。
(A−4)成分:熱重合開始剤。
[2] 下式(1)〜下式(4)を満たす、[1]のマトリクス樹脂。
5≦V1X≦40 ・・・(1)
Y≧0.5 ・・・(2)
5≦V1X+Y≦70 ・・・(3)
5≦V1X−Y≦70 ・・・(4)
式(1)中、V1Xは(A−3)成分の配合量がエチレン性不飽和基を有する成分からなる熱硬化性樹脂100質量部に対して基準量X[質量部]であるマトリクス樹脂を23℃で168時間静置した際の熟成粘度[×106mPa・s]であり、基準量Xは10〜40質量部である。
式(2)中、Yは式(1)中の基準量Xに対して(A−3)成分の配合量を増加又は減少させる差分量[質量部]である。
式(3)中、V1X+Yは式(1)中の基準量Xに対して、(A−3)成分の配合量を式(2)中の差分量Y[質量部]増加させたマトリクス樹脂を23℃で168時間静置した際の熟成粘度[×106mPa・s]である。
式(4)中、V1X−Yは式(1)中の基準量Xに対して、(A−3)成分の配合量を式(2)中の差分量Y[質量部]減少させたマトリクス樹脂を23℃で168時間静置した際の熟成粘度[×106mPa・s]である。
[3] 下式(5)及び下式(6)を満たす、[1]又は[2]のマトリクス樹脂。
5≦V1≦40 ・・・(5)
V2/V1≦2.5 ・・・(6)
式(5)中、V1はマトリクス樹脂を23℃で168時間静置した際の熟成粘度[×106mPa・s]である。
式(6)中、V1は式(5)中のV1と同じであり、V2はマトリクス樹脂を23℃で336時間静置した際の熟成粘度[×106mPa・s]である。
[4] 前記液状ポリイソシアネートが分子内に1個以上の芳香環を有する、[1]〜[3]のいずれかのマトリクス樹脂。
[5] 下式(7)及び下式(8)を満たす、[1]〜[4]のいずれかのマトリクス樹脂。
0.6≦a1/b≦0.75 ・・・(7)
Vn≦1000 ・・・(8)
式(7)中、a1は(A−1)成分の含有量[g]であり、bはエチレン性不飽和基を有する成分からなる熱硬化性樹脂の含有量[g]である。
式(8)中、Vnはエチレン性不飽和基を有する成分からなる熱硬化性樹脂のニート樹脂粘度[mPa・s]である。
[6] 下式(9)を満たす、[1]〜[5]のいずれかのマトリクス樹脂。
V10/Vs≦1.20 ・・・(9)
式(9)中、Vsは前記マトリクス樹脂から(A−3)成分を除いたプレマトリクス樹脂と、(A−3)成分とを混合した直後の粘度[mPa・s]であり、V10は前記プレマトリクス樹脂と(A−3)成分とを混合して10分が経過した際の粘度[mPa・s]である。
[7] [1]〜[6]のいずれかのマトリクス樹脂と、繊維長が5〜120mmの炭素繊維束と、を含む、中間材。
[8] [7]の中間材を加熱加圧成形して得られる、成形品。
[9] 周波数1Hzの条件下で動的粘弾性測定により測定される損失正接が極大値を示す温度が、120℃以上である、[8]の成形品。
要件(I):マトリクス樹脂を中間材としたときの中間材に含まれる増粘後のマトリクス樹脂の粘度が適切な範囲にあり、かつ該中間材が取扱いに適したタック性及びドレープ性を具備するとともに、成形時に充分な流動性を具備する状態を発現可能であること。
「重合性不飽和単量体」とは、重合性不飽和基を有する単量体である。
「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート又はメタクリレートの総称であり、「エポキシ(メタ)アクリレート」とは、エポキシアクリレート又はエポキシメタクリレートの総称である。
「イソシアネート基含有率」とは、ポリイソシアネート100gあたりのイソシアネート基の質量を意味する。
「平均イソシアネート基数」とは、ポリイソシアネート1分子あたりのイソシアネート基数の平均値を意味する。
「粘度」は、23℃環境下でM3ローターを備えたTB−10(東機産業株式会社製)を用いて、ローター回転数を60rpmとして測定される値である。
「炭素繊維含有率」とは、中間材100質量%に対する炭素繊維の含有量を意味する。
数値範囲を示す「〜」は、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含むことを意味する。
なお、「マトリクス樹脂を一定時間ほぼ一定温度に保つこと」を「熟成させる」又は「増粘させる」と称することがある。
本発明のマトリクス樹脂は、下記(A−1)〜(A−4)成分の混合物を少なくとも含む。本発明のマトリクス樹脂は下記(A−5)成分を含んでもよい。
(A−1)成分:1分子中に1個以上のエチレン性不飽和基を有し、平均水酸基数が1.8〜4である、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂及び不飽和ポリエステル樹脂の両方。
(A−2)成分:エチレン性不飽和単量体。
(A−3)成分:イソシアネート基含有率が15〜30.5質量%であり、平均イソシアネート基数が1.8〜2.4である液状ポリイソシアネート。
(A−4)成分:熱重合開始剤。
(A−5)成分:(A−1)成分及び(A−2)成分以外の化合物であって、水酸基を有さず、エチレン性不飽和基を有している化合物。
本発明のマトリクス樹脂は(A−1)〜(A−5)成分以外のその他の成分を含んでもよい。
本発明のマトリクス樹脂は(A−1)成分として、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂及び不飽和ポリエステル樹脂の両方を含む。
本発明のマトリクス樹脂は、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂と不飽和ポリエステル樹脂のそれぞれを1種以上含んでよい。
本発明のマトリクス樹脂において、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂は1分子中に1個以上のエチレン性不飽和基を有し、平均水酸基数が1.8〜4であれば特に限定されない。例えば、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂は、エポキシ樹脂と不飽和一塩基酸との反応生成物(不飽和酸エポキシエステル)として得ることができる。
中でも、ビスフェノールA骨格を1分子中に1〜4個有するエポキシ樹脂を用いたエポキシ(メタ)アクリレート樹脂は、(A−3)成分との増粘反応時に2次元方向への反応が優先的に進みやすく、マトリクス樹脂及び中間材のプロセスウインドウをさらに広げることができるため好適である。特に、ビスフェノールA骨格を1〜2個有するエポキシ樹脂を主成分とするエポキシ(メタ)アクリレートは、(A−2)成分を配合した際のニート樹脂粘度を低く抑えることができる。その結果、例えば炭素繊維束の含有量が高い中間材を製造する際に品質を維持しやすい傾向にある。
エポキシ(メタ)アクリレート樹脂が1分子中に有するエチレン性不飽和基の数は、1.0以上であり、1.5以上が好ましい。また、前記エチレン性不飽和基の数は、5.0以下が好ましく、3.0以下がより好ましく、2.5以下がさらに好ましい。前記エチレン性不飽和基の数が前記範囲内であると、後述する本発明の成形品の硬化性、耐溶剤性、耐熱性及び力学物性等がさらに優れる。
エポキシ(メタ)アクリレート樹脂が1分子中に有するエチレン性不飽和基の数は、1.0〜5.0が好ましく、1.5〜5.0がより好ましく、1.5〜3.0がさらに好ましく、1.5〜2.5が特に好ましい。
また、前記平均水酸基数は、4以下であり、3.8以下が好ましい。平均水酸基数が4以下であると、(A−1)成分と(A−3)成分との増粘反応が2次元方向で優先的に生じ、3次元方向の反応が抑制される。その結果、得られる中間材の取扱性と流動性とが優れる。
エポキシ(メタ)アクリレート樹脂が1分子中に有する水酸基数の平均は、1.8〜3.8が好ましく、2.8〜3.8がより好ましい。
本発明のマトリクス樹脂において、不飽和ポリエステル樹脂は1分子中に1個以上のエチレン性不飽和基を有し、平均水酸基数が1.8〜4であれば特に限定されない。例えば不飽和ポリエステル樹脂は、α,β−オレフィン系不飽和ジカルボン酸と2価のグリコールとの縮合で合成されたポリエステル樹脂(α,β−オレフィン系不飽和ジカルボン酸と2価のグリコールとの重縮合体)として得ることができる。前記ポリエステル樹脂は、α,β−オレフィン系不飽和ジカルボン酸に由来して、エチレン性不飽和基を有し、かつ水酸基を有する。
前記ポリエステル樹脂の合成においては、これら2成分のほかに、α,β−オレフィン系不飽和ジカルボン酸以外のジカルボン酸(飽和ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸等)、ジカルボン酸と反応するジシクロペンタジエン、2価のグリコール以外のアルコール(1価のアルコール(モノオール)、3価のアルコール(トリオール)等)等を併用することができる。
α,β−オレフィン系不飽和ジカルボン酸と併用可能な他のジカルボン酸としては、アジピン酸、セバシン酸、コハク酸、グルコン酸、フタル酸無水物、o−フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、テトラクロロフタル酸等が例示される。
2価のグリコールとしては、アルカンジオール、オキサアルカンジオール、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物等が例示される。アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド等が例示される。
アルカンジオールとしては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール等が例示される。
オキサアルカンジオールとしては、ジオキシエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール等が例示される。
グリコールと併用可能な1価あるいは3価のアルコールとしては、オクチルアルコール、オレイルアルコール、トリメチロールプロパン等が例示される。
不飽和ポリエステル樹脂が1分子中に有するエチレン性不飽和基の数は、1〜5が好ましく、1.5〜5.0がより好ましく、1.5〜3.0がさらに好ましい。
また、前記平均水酸基数は、4以下であり、3.5以下が好ましく、3.3以下がより好ましい。平均水酸基数が4以下であると、(A−1)成分と(A−3)成分との増粘反応が2次元方向に優先的に生じ、3次元方向の反応が抑制される。その結果、得られる中間材の取扱性と流動性とが優れる。
不飽和ポリエステル樹脂が1分子中に有する水酸基数の平均は1.8〜3.5が好ましく、1.8〜3.3がより好ましい。
(A−1)成分が1分子中に有するエチレン性不飽和基の数は1〜5が好ましく、1.0〜3.0がより好ましく、1.0〜2.5がさらに好ましく、1.5〜2.5が特に好ましい。
また、前記平均水酸基数は、4以下であり、3.8以下が好ましい。
また、平均水酸基数が4以下であると、(A−1)成分と(A−3)成分との増粘反応が2次元方向で優先的に生じ、3次元方向の反応が抑制される。その結果、得られる中間材の取扱性と流動性とが優れる。
(A−1)成分が1分子中に有する水酸基数の平均は1.8〜3.8が好ましく、2〜3.8がより好ましい。
なお、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂と不飽和ポリエステル樹脂との質量比(エポキシ(メタ)アクリレート樹脂/不飽和ポリエステル樹脂)は、1/4〜4/1が好ましく、1/2〜2/1がより好ましい。前記質量比が前記範囲内にあると、前述の効果が発現される傾向にある。
その他、一般的にエポキシ(メタ)アクリレート樹脂は、分子末端もしくは分子中に2級水酸基を有し、不飽和ポリエステル樹脂は、1〜3級水酸基を有することができる。そこで、分子末端に1級水酸基を有する不飽和ポリエステル樹脂と、エポキシ(メタ)アクリレートを併用することで、(A−3)成分との増粘反応時に、分子末端の水酸基を優先的に反応させる手法がある。この手法で得られるマトリクス樹脂及び中間材は、プロセスウインドウがさらに広くなる傾向がある。
(A−1)成分の含有量が60質量%以上であると、中間材製造時のプロセスウインドウがさらに広くなる。また、(A−1)成分の含有量が75質量%以下であると、マトリクス樹脂の粘度が過度に高くならず、中間材製造時に製品斑や含浸不良が生じにくく、良好な中間材をさらに得やすくなる。
本発明のマトリクス樹脂は(A−2)成分を含む。(A−2)成分は、重合性稀釈媒とも称される。
(A−2)成分の具体例としては、以下の化合物が例示される。ただし、(A−2)成分は以下の例示物に限定されない。
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとエチレンオキシドの付加物、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとプロピレンオキシドの付加物、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートと有機ラクトン類(ε−カプロラクトン等)の付加物等の水酸基含有ビニル単量体。
N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド化合物。(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等の不飽和カルボン酸類。
(メタ)アクリロニトリル等の重合性不飽和ニトリル類。
マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル、フマル酸ジブチル、イタコン酸ジエチル、イタコン酸ジブチル等の不飽和カルボン酸エステル類。
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類。
また、スチレン系単量体に近い性状の単量体としては、ビニルトルエン、ブタンジオールジ(メタ)アクリレートを好適に用いることができる。これらの中でも経済性や重合性の観点からスチレンが好ましい。経済的に許容されれば、スチレンと(メタ)アクリレート類の併用が中間材の経時変化の抑制の点から好ましい。
(A−2)成分の含有量が10質量%以上であると、熱硬化性樹脂中の(A−2)成分の量が充分となり、ニート樹脂粘度を下げることができる。その結果、中間材製造時の炭素繊維への含浸が容易となり品質がさらに向上する。また成形品に残存するVOCを低く抑えることができる傾向にある。
(A−2)成分の含有量が40質量%以下であると、熱硬化性樹脂中の(A−2)成分の量が過剰にならず、成形品のVOCを低く抑えることができる傾向にある。また、(A−1)成分の配合量も過度に少なくならないため、成形品の力学物性やTgも好適な範囲に収めることができる。
本発明のマトリクス樹脂は(A−3)成分を含む。
ポリイソシアネートのイソシアネート基含有率の下限値は15質量%であり、25質量%が好ましい。イソシアネート基含有率が15質量%以上であることにより、中間材製造時に過剰にポリイソシアネートを配合する必要がなくなり、得られる成形品の耐熱性の低下が低減される。具体的には、後述するDMA測定によって得られる成形品のTgの低下が抑えられ、良好な耐熱性が維持される。
一方、イソシアネート基含有率が30.5質量%超であるポリイソシアネートは、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、「4,4’MDI」とも記す。)及びその変性物の少なくとも一方の含有量が少なかったり、4,4’MDIの異性体である2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、「2,4’MDI」とも記す。)等及びその変性物を多く含有している場合が多い。また、イソシアネート基含有率が30.5質量%超であるポリイソシアネートは、4,4’MDIとその異性体である2,4’MDI等の混合変性物を多く含ませること、その他4,4’MDIやその異性体からなる多官能変性物を多く含ませることで製造されている場合が多い。その結果、中間材の製造後の熟成期間が過度に長くなったり、中間材のプロセスウインドウが狭くなる。よって、イソシアネート基含有率が30.5質量%超であるポリイソシアネートは、生産性の観点から好ましくない。
ポリイソシアネートのイソシアネート基含有率は、15〜30.2質量%が好ましく、25〜30.5質量%がより好ましく、25〜30.2質量%がさらに好ましい。
ポリイソシアネートの平均イソシアネート基数の上限値は2.4である。これにより、(A−1)成分と(A−3)成分との増粘反応が2次元方向に優先的に進むことができる一方、3次元方向への増粘反応を抑制できるため、前記中間材が優れた流動性を具備する。
ポリイソシアネートの平均イソシアネート基数は2.0〜2.4が好ましい。
本発明のマトリクス樹脂において、特に(A−3)成分として液状のポリイソシアネートを用いる場合、中間材を製造する際の取扱性や分散性が優れる傾向にある。この場合においては、固体状のポリイソシアネートを用いる場合と比べ、液状ポリイソシアネートが完全溶解するまでに高濃度のポリイソシアネートと(A−1)成分との接触を防ぐことができ、3次元方向や多官能体の生成をさらに効果的に抑えることができる。その結果、中間材の成形性の低下を防ぐことができる。なお、本発明においては、液体のポリイソシアネートと固体のポリイソシアネートとを混合し、固体のポリイソシアネートを最終的に液化させて液状ポリイソシアネートとして用いてもよい。
イソシアネートプレポリマーとしては、水酸基を有するポリエーテルポリオール又はポリエステルポリオールとジイソシアネートとの反応により得られる化合物が例示される。
イソシアネート変性物としては、例えば、カルボジイミド変性液状MDI(MDI、MDIカルボジイミド、MDIカルボジイミドアダクト体を主要成分とするもの)を用いてもよい。
これらのポリイソシアネートは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。なお、固体のポリイソシアネートを用いる場合においては、液体のポリイソシアネートと組み合わせ、液状ポリイソシアネートとすることができる。
以上より、(A−3)成分としては、中間材製造時の取扱性や分散性に優れ、中間材製造後の熟成期間を短くでき、かつ成形品の力学物性を高く維持できる点から、4,4’MDIを主成分として含み、かつ、4,4’MDIの変性物(例えばカルボジイミド変性MDI等)を混合することで液化した液状ポリイソシアネートが最適である。
なお、(A−3)成分は、実使用で問題ない範囲であれば、2,4’MDI等のMDI異性体、MDI異性体の変性物(例えばカルボジイミド変性物)、4,4’MDI及びMDI異性体の混合物からなる変性物(例えばカルボジイミド変性物)、前記MDI異性体及び前記MDI異性体の変性物以外のポリイソシアネートからなる群より選ばれる少なくとも一つを含んでもよい。
5≦V1X≦40 ・・・(1)
Y≧0.5 ・・・(2)
5≦V1X+Y≦70 ・・・(3)
5≦V1X−Y≦70 ・・・(4)
式(1)中、V1Xは(A−3)成分の配合量がエチレン性不飽和基を有する成分からなる熱硬化性樹脂100質量部に対して基準量X[質量部]であるマトリクス樹脂を23℃で168時間静置した際の熟成粘度[×106mPa・s]であり、基準量Xは10〜40質量部である。
式(2)中、Yは式(1)中の基準量Xに対して(A−3)成分の配合量を増加又は減少させる差分量[質量部]である。
式(3)中、V1X+Yは式(1)中の基準量Xに対して、(A−3)成分の配合量を式(2)中の差分量Y[質量部]増加させたマトリクス樹脂を23℃で168時間静置した際の熟成粘度[×106mPa・s]である。例えば、基準量Xに対して、(A−3)成分の配合量を差分量0.5[質量部]増加させたマトリクス樹脂の(A−3)成分の配合量は、X+0.5[質量部]である。
式(4)中、V1X−Yは式(1)中の基準量Xに対して、(A−3)成分の配合量を式(2)中の差分量Y[質量部]減少させたマトリクス樹脂を23℃で168時間静置した際の熟成粘度[×106mPa・s]である。例えば、基準量Xに対して、(A−3)成分の配合量を差分量0.5[質量部]減少させたマトリクス樹脂の(A−3)成分の配合量は、X−0.5[質量部]である。
なお、式(1)〜式(4)中、(A−3)成分の配合量は熱硬化性樹脂100質量部に対する配合量である。
基準量X[質量部]の数値範囲としては、例えば10〜40の間の数値を適用することができる。
マトリクス樹脂を23℃で168時間静置した際の熟成粘度が5〜40[×106mPa・s]を満たすマトリクス樹脂が存在し、そのマトリクス樹脂に配合された(A−3)成分の配合量から0.5質量部又は0.5質量部以上を増減させて得られるマトリクス樹脂の熟成粘度が5〜70[×106mPa・s]を満たさない場合、中間材製造時の製造振れの影響を受けて場所斑が生じやすくなり、取扱性及び流動性を損なうような斑が生じやすくなる。
具体例として、基準量X[質量部]に対する差分量Y[質量部]が0.5質量部である場合、得られる(A−3)成分の水準はX[質量部]、X+0.5[質量部]、X−0.5[質量部]の3水準となる。他にもY[質量部]が0.3質量部である場合、得られる(A−3)成分の水準はX[質量部]、X+0.3[質量部]、X−0.3[質量部]の3水準となり、Y[質量部]が1.0質量部である場合、得られる(A−3)成分の水準はX[質量部]、X+1.0[質量部]、X−1.0[質量部]の3水準となる。ただし、(A−3)成分の水準は3水準に限定されない。例えば、Y[質量部]が1.0質量部又は0.5質量部である場合、得られる(A−3)成分の水準はX[質量部]、X+1.0[質量部]、X−1.0[質量部]、X+0.5[質量部]、X−0.5[質量部]の5水準となる。
差分量Y[質量部]は、0.5〜5.0が好ましく、0.5〜3.0がより好ましく、0.5〜2.0がさらに好ましい。
本発明のマトリクス樹脂は(A−4)成分として、熱重合開始剤を含む。熱重合開始剤は加熱によってラジカル種を生じさせる化合物である。(A−4)成分は特に限定されない。(A−4)成分としては、パーオキシジカーボネート類、パーオキシエステル類、パーオキシモノカーボネート類、パーオキシケタール類、ジアルキルパーオキサイド類等の有機過酸化物が例示される。
また、(A−4)成分の含有量は、熱硬化性樹脂100質量%に対して5.0質量%以下が好ましく、3.0質量%以下がより好ましい。(A−4)成分の含有量が5.0質量%以下であると、成形品に含まれる熱硬化性樹脂の硬化物の分子量が過度に小さくならず、成形品の力学物性やTgの低下を防ぎやすくなる。
(A−4)成分の含有量は、熱硬化性樹脂100質量%に対して0.1〜5.0質量%が好ましく、0.1〜3.0質量%がより好ましく、0.5〜5.0質量%がより好ましく、0.5〜3.0質量%がさらに好ましい。
本発明のマトリクス樹脂は(A−5)成分を含んでもよい。
(A−5)成分としては、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー類、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー類、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー類、(メタ)アクリレートハーフエステル類等が例示される。
(A−5)成分の市販品としては、CN9023、CN9028等のウレタン(メタ)アクリレートシリーズ(SARTOMER社製)が例示される。その他、スチレンと予め混合された製品としては、CBZ500シリーズ、CBZ255シリーズ、CBZ650Fシリーズ、CBZFX、R(日本ユピカ株式会社製)が例示される。ただし、(A−5)成分はこれらに限定されない。
本発明のマトリクス樹脂が(A−5)成分を含む場合、(A−5)成分の含有量の一例としては、熱硬化性樹脂100質量%に対して0〜30質量%とすることができる。本発明においては、配合後のマトリクス樹脂の粘度に応じて、(A−5)成分と(A−2)成分との配合量の比率を選択することができる。
本発明のマトリクス樹脂はその他の成分を含んでもよい。その他の成分としては、硬化促進剤、無機充填剤、内部離型剤、安定剤(重合禁止剤)、顔料、着色料、湿潤分散剤、吸水剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤等が例示される。
硬化促進剤の具体例としては、ナフテン酸コバルト、オクテン酸コバルト、オクチル酸亜鉛、オクテン酸バナジル、ナフテン酸銅、ナフテン酸バリウム等に代表される金属石鹸類、バナジルアセチルアセテート、コバルトアセチルアセテート、鉄アセチルアセトネート等に代表される金属錯体類、アニリン、N,N−ジメチルアミノ−p−ベンズアルデヒド、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N−エチル−m−トルイジン、トリエタノールアミン、m−トルイジン、ジエチレントリアミン、ピリジン、フェニルモルホリン、ピペリジン、ジエタノールアニリン等に代表されるアミン類が例示される。ただし、硬化促進剤はこれらに限定されない。
これらの中でも硬化促進剤としては、特にアミン類の硬化促進剤が好ましい。これら硬化促進剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
マトリクス樹脂が硬化促進剤を含む場合、硬化促進剤の含有量は熱硬化性樹脂100質量部に対して0.001〜5質量部が好ましい。
これら無機充填剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの中でも密度が小さく補強効果の高い炭素繊維粉及び炭素繊維ミルドが好適に用いられる。
マトリクス樹脂が無機充填剤を含む場合、無機充填剤の含有量は、軽量化の観点から必要最小限とすることが好ましい。例えば、無機充填剤の含有量は、熱硬化性樹脂100質量部に対して、1〜20質量部が好ましい。
これら内部離型剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
マトリクス樹脂が内部離型剤を含む場合、内部離型剤の含有量は、求める離型性水準及び添加材料により適宜設定することができる。内部離型剤の含有量は、例えば、熱硬化性樹脂100質量部に対して、0.1〜10質量部が好ましい。
マトリクス樹脂が紫外線吸収剤を含む場合、紫外線吸収剤の含有量は、熱硬化性樹脂100質量部に対して、1〜10質量部が好ましい。
マトリクス樹脂が光安定剤を含む場合、光安定剤の含有量は、熱硬化性樹脂100質量部に対して、1〜5質量部が好ましい。光安定剤は重合を阻害しない範囲で配合すればよい。
なお、紫外線吸収剤及び光安定剤はそれぞれを単独で用いるより、併用することでそれらの効果がより高くなる。
マトリクス樹脂が酸化防止剤を含む場合、酸化防止剤の含有量は、熱硬化性樹脂100質量部に対して、1〜10質量部が好ましい。酸化防止剤は、ラジカル感応性が高いため、光安定剤以上に重合硬化を阻害してしまう可能性がある。そのため最適な含有量にとどめることが好ましい。
マトリクス樹脂の増粘物の23℃における熟成粘度は、5〜70[×106mPa・s]が好ましく、6〜70[×106mPa・s]がより好ましく、5〜60[×106mPa・s]がさらに好ましく、6〜60[×106mPa・s]が特に好ましい。
5≦V1≦40 ・・・(5)
V2/V1≦2.5 ・・・(6)
式(5)中、V1はマトリクス樹脂を23℃で168時間静置した際の熟成粘度[×106mPa・s]である。
式(6)中、V1は式(5)中のV1と同じであり、V2はマトリクス樹脂を23℃で336時間静置した際の熟成粘度[×106mPa・s]である。
本発明のマトリクス樹脂が前記式(6)を満たすと、得られる中間材の貯蔵安定性が優れ、中間材の取扱性及び流動性の時間変化が少なく、長期にわたって優れた特性を維持できる傾向にある。
以上より、本発明のマトリクス樹脂が前記(5)及び前記(6)を満たすと、得られる中間材の取扱性及び流動性がさらに優れ、製品斑がさらに生じにくくなるとともに、中間材の貯蔵安定性がさらに優れ、中間材の取扱性及び流動性等の優れた特性を長期間維持できる。
熱硬化性樹脂のニート樹脂粘度Vnは、100[mPa・s]以上が好ましく、150[mPa・s]以上がより好ましい。ニート樹脂粘度Vnが100[mPa・s]以上であると、(A−2)成分を過度に配合する必要がなく、中間材製造時に熱硬化性樹脂の増粘物と炭素繊維束との分離が生じにくくなる傾向にある。また(A−1)成分の分子量を極端に低下させる必要が生じず、中間材のタックが過度に強くならず取扱性に優れた中間材を得ることができる傾向にある。
熱硬化性樹脂のニート樹脂粘度Vnは、100〜1000[mPa・s]が好ましく、150〜1000[mPa・s]がより好ましく、100〜800[mPa・s]がさらに好ましく、150〜800[mPa・s]が特に好ましい。
0.6≦a1/b≦0.75 ・・・(7)
Vn≦1000 ・・・(8)
式(7)中、a1は(A−1)成分の含有量[g]であり、bはエチレン性不飽和基を有する成分からなる熱硬化性樹脂の含有量[g]である。
式(8)中、Vnはエチレン性不飽和基を有する成分からなる熱硬化性樹脂のニート樹脂粘度[mPa・s]である。
本発明のマトリクス樹脂の製造には、各成分を均一に分散又は溶解可能な方法であれば、特に限定されない。例えば、(A−1)成分、(A−2)成分及び(A−3)成分を混合し、マトリクス樹脂から(A−4)成分を除いたプレマトリクス樹脂を予め製造し、次にプレマトリクス樹脂と(A−4)成分とを混合する方法がある。この方法は、制御が簡便であり、かつ中間材製造時に製品斑を生じさせにくいため好適に用いられる。
なお、プレマトリクス樹脂又はマトリクス樹脂を製造する際は、三本ロールミル、プラネタリミキサー、ニーダー、万能攪拌機、ホモジナイザー、ホモディスペンサー等の混合機を用いることができる。ただし、混合機はこれらに限定されない。
V10/Vs≦1.20 ・・・(9)
式(9)中、Vsは前記マトリクス樹脂から(A−3)成分を除いたプレマトリクス樹脂と、(A−3)成分とを混合した直後の粘度[mPa・s]であり、V10は前記プレマトリクス樹脂と(A−3)成分とを混合して10分が経過した際の粘度[mPa・s]である。
初期増粘率(V10/Vs)が1.2超であると、中間材製造時に製品斑が生じやすく含浸不良が所々に生じたり、後述する中間材の目付が場所毎に異なる傾向を示すおそれがある。
初期増粘率(V10/Vs)の下限値は理論的には1.0である。初期増粘率(V10/Vs)は1.0〜1.2が好ましく、1.0〜1.14がより好ましく、1.0〜1.10がさらに好ましい。
以上説明した本発明のマトリクス樹脂は、(A−3)成分の液状ポリイソシアネートのイソシアネート基含有率が30.5質量%以下であるため、中間材製造時に(A−1)成分と(A−3)成分との配合比率が外的要因により最適値からずれてしまった場合でも、その配合比率のずれによる影響が小さくなり、プロセスウインドウが広くなる。
本発明の中間材は、本発明のマトリクス樹脂と、繊維長が5〜120mmの炭素繊維束とを含む。
炭素繊維束は、例えば連続する炭素繊維からなる炭素繊維束を裁断することで得られる。
炭素繊維束を構成する炭素繊維としては、例えば、ポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維、レーヨン系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維等が例示される。なかでも、圧縮強度に優れ、低密度である点から、PAN系炭素繊維が好ましい。これら炭素繊維は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
炭素繊維束の繊維長は、120mm以下であり、80mm以下が好ましい。炭素繊維束の繊維長が120mm以下であると、成形時に優れた流動性を発現するとともに、成形品内における力学物性等のバラつきを抑制できる。
本発明の中間材においては、炭素繊維束の繊維長が5〜120mmであるため、成形品の力学物性、力学物性のバラつきの抑制、成形時の流動性を両立することができる。
炭素繊維束の繊維長は10〜120mmが好ましく、5〜80mmがより好ましく、10〜80mmがさらに好ましい。
炭素繊維束のフィラメント数は1000〜80000本が好ましく、1000〜60000本がより好ましく、2000〜60000本がさらに好ましい。
炭素繊維束としては、フィラメント数が前記範囲のものを用いてもよい。フィラメント数が例えば30000〜100000本の範囲の炭素繊維束を、インライン又はオフラインで分割してフィラメント数を前記範囲とした後に使用してもよい。
炭素繊維含有率は、30〜75質量%が好ましく、35〜75質量%がより好ましく、30〜70質量%がさらに好ましく、35〜70質量%が特に好ましい。
炭素繊維束の目付は50〜4000g/m2が好ましく、500〜4000g/m2がより好ましく、800〜4000g/m2がさらに好ましく、800〜3000g/m2が特に好ましい。
炭素繊維以外の繊維としては、ガラス繊維束、有機繊維束等が例示される。例えば、本発明の中間材が炭素繊維以外の繊維としてガラス繊維束を含むと、中間材製造時のマトリクス樹脂の含浸性が向上する傾向にある。他にも、本発明の中間材がマトリクス樹脂に溶解可能な有機繊維束を含むと、炭素繊維束同士の拘束を緩和させることができ、中間材の流動性を向上させることができる。
第1の工程:マトリクス樹脂を製造する工程。
第2の工程:繊維長が5〜120mmの炭素繊維束を二次元にランダムに堆積してシート状物とし、シート状物にマトリクス樹脂を含浸させて中間材前駆体を得る工程。
第3の工程:中間材前駆体に含まれるマトリクス樹脂を増粘又は熟成させる工程。
第3の工程により、マトリクス樹脂由来の(A−1)成分が有する水酸基と、マトリクス樹脂由来の(A−4)成分が有するイソシアネート基とが反応する。
第3の工程を行う際には、熟成粘度V1及び熟成粘度V2を測定し、熟成粘度V1が5〜40[×106mPa・s]を満たし、増粘比(V2/V1)が2.5以下であることを確認することが好ましい。これにより、貯蔵安定性に優れ、取扱性及び流動性の時間変化が少なく、長期にわたって優れた特性を維持できる中間材を得やすくなる。
本発明の成形品は、本発明の中間材を硬化させて加熱加圧成形して得られる硬化物である。
本発明の中間材を硬化させて加熱加圧成形する方法としては、例えば、以下の方法を適用できる。
本発明の中間材を一枚又は複数枚重ねたものを、一対の金型の間に配置した後、配置した中間材を加熱加圧して、中間材に含まれるマトリクス樹脂の増粘物を硬化させる方法。
加熱加圧工程の時間としては、例えば、0.5〜60分間である。成形品の形状、流動厚み等を鑑みて適宜選択すればよい。
[(A−1)成分及び(A−2)成分の混合物]
・CSVE(日本ユピカ株式会社製、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂とスチレンの混合物、スチレン含有率33質量%、平均水酸基数2.1)
・DP132(日本ユピカ株式会社製、不飽和ポリエステル樹脂とスチレンの混合物、スチレン含有率33質量%、平均水酸基数3.2)
・ネオポール8051(日本ユピカ株式会社製、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂とスチレンの混合物、スチレン含有率32質量%、平均水酸基数数1.8〜4.0)
[(A−3)成分]
・コスモネートLL(三井化学製、イソシアネート基含有率29.5質量%、平均イソシアネート基数2.1、主成分4,4’MDI)
・Lupranate MM103(BASF社製、イソシアネート基含有率29.5質量%、平均イソシアネート基数2.2、主成分4,4’MDI)
・SUPRASEC 2020(HUNTSMAN社製、イソシアネート基含有率29.5質量%、平均イソシアネート基数2.1、主成分4,4’MDI)
・Desmodur CD−S(Covestro社製、イソシアネート基含有率29.7質量%、平均イソシアネート基数2.1、主成分4,4’MDI)
・Dion 31100(Reichhold社製、イソシアネート基含有率22.7質量%、平均イソシアネート基数2.4以下、主成分4,4’MDI)
・Mondur MR(Covestro社製、イソシアネート基含有率31.5質量%、平均イソシアネート基数2.8、主成分4,4’MDI以外)
・SUPRASEC 2385(HUNTSMAN社製、イソシアネート基含有率30.9質量%、平均イソシアネート基数2.0、主成分4,4’MDI)
・Lupranate MX121/1(BASF社製、イソシアネート基含有率33質量%、平均イソシアネート基数2.2、主成分4,4’MDI以外)
(ニート樹脂粘度Vn)
エチレン性不飽和基を有する成分からなる熱硬化性樹脂のニート樹脂粘度Vn、プレマトリクス樹脂の粘度Vs、マトリクス樹脂の粘度V10は、23℃環境下でM3ローターを備えたTB−10(東機産業株式会社製)を用いて測定を行なった。ローター回転数は60rpmで実施した。
マトリクス樹脂を23℃環境に168時間静置した後の熟成粘度V1及びマトリクス樹脂を23℃環境に336時間静置した後の熟成粘度V2を、T−BarスピンドルT−Fを備えたヘリパス型デジタル粘度計HB DV−1 prime(BROOKFIELD社製)を用いて行った。
熟成粘度はマトリクス樹脂の表面から下面に向けて下降しながら測定を行い、マトリクス樹脂の表面に接触した際を0秒とし、120〜150秒経過した段階での瞬間値を用いた。スピンドル回転数は0.3〜50rpmの範囲とし、測定時のトルクが10〜70%の範囲内、好ましくは30〜50%の範囲内になるようにスピンドル回転数を調整して行った。
熟成粘度の測定により得られた熟成粘度V1及び熟成粘度V2を基に下式(10)により増粘比を算出した。増粘比が2.5以下の場合、熟成後の安定性に優れ、中間材とした際の貯蔵安定性に優れると判断した。なお、増粘比の算出は熟成粘度V1が3.0[×106mPa・s]以上であるマトリクス樹脂について行った。
(増粘比)=V2/V1 ・・・(10)
プレマトリクス樹脂に(A−3)成分を配合し、混合攪拌した直後のマトリクス樹脂の粘度Vs及び(A−3)成分を配合し、混合攪拌した直後から10分経過した時のマトリクス樹脂の粘度V10をニート樹脂粘度Vnと同様にして測定した。得られたVs及びV10を基に、下式(11)により初期増粘率を算出した。
(初期増粘率)=V10/Vs ・・・(11)
成形板から長さ55mm、幅12.7mm、厚さ2mmの試験片を切り出し、(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製、「ARES−RDS」)を用いて、測定周波数1Hz、昇温速度5℃/分で、30〜250℃までの領域において測定を行い、logG’及びlogG’’及び損失正接(tanδ)を温度に対してプロットし、周波数1Hzの条件下で動的粘弾性測定により測定される損失正接(tanδ)が極大値を示す温度をtanδmaxとした。tanδmaxが大きいほど、耐熱性に優れることを意味する。なお、tanδmaxが120℃以上であるとき耐熱性が良好であるとし、tanδmaxが140℃以上である場合は、耐熱性が優れていると判断した。
(取扱性)
調合後23℃環境に168時間静置したマトリクス樹脂の表層かから厚み1cm分を除いた内部から3〜20gの樹脂片を作業者の手で掴みだした際に、手袋に付着したか否かで取扱性を判断した。取扱性の評価基準は以下の通りである。
「○」:手袋への付着は無く、中間材とした際に良好な取扱性が期待できる。
「△」:手袋への付着は無く、中間材とした際にコシが弱いが取扱が可能であると期待できる。
「×」:マトリクス樹脂の切り出しが不可能又は手袋への付着が確認される。
調合後23℃環境に168時間静置したマトリクス樹脂の表層から厚み1cm分を除いた内部から1〜5gの樹脂片を切り出した。当該樹脂片を140℃の加熱盤上に静置した後、スパーチュラで押し付けながら同心円状にマトリクス樹脂を移動させて溶解挙動を確認して融解性を評価した。融解性の評価基準は以下の通りである。
「○」:均一、又は未溶解成分が散見されるが均一な樹脂塗膜を形成することが可能であり、中間材とした際に良好な成形性が期待できる。
「△」:加熱盤に未溶解成分が付着するが、塗膜の形成には至らない。中間材とした際に成形性が劣ることが予想される。
「×」:加熱盤に付着しない。中間材とした際に成形性が著しく劣ると予想される。
プロセスウインドウは、(A−3)成分の配合量を基準量Xから差分量Y増減させた複数のマトリクス樹脂における取扱性と融解性の各評価結果に基づき評価した。プロセスウインドウの判定は、取扱性評価の結果が「〇」又は「△」であり、かつ、融解性評価の結果が「〇」を満たす(A−3)成分の配合量の水準が三準以上あるとき、プロセスウインドウが良好であると判断した。これは、中間材製造時に製品斑を少なくできることを意味する。
中間材の含浸性は、製造した中間材前駆体及び中間材からキャリアフィルムを除去した後、中間材前駆体及び中間材の表面部分と内部とを作業者が目視及び触手で確認することにより評価した。検査は幅方向全域とした。判断指標は以下の通りである。
評価基準
「〇」:マトリクス樹脂の炭素繊維束への濡れが良好であり、マトリクス樹脂が全体に略均一に存在していた。
「△」:マトリクス樹脂の炭素繊維束への濡れが一部不充分であるが、増粘時に含浸が進み増粘後のマトリクス樹脂の強化繊維束への濡れは良好であった。
「×」:マトリクス樹脂の炭素繊維束への濡れが不充分であり、増粘後もマトリクス樹脂の強化繊維束への濡れは不充分であった。
300mm×300mmの成形板から長さ100mm、幅25mm、厚さ2mmの試験片を12枚切り出し、5kNインストロン万能試験機を用い、L/D=40、クロスヘッド速度5mm/分の条件で3点曲げ試験を実施し、曲げ強度と曲げ弾性率の平均値を求めた。いずれも数値が高いほど力学物性に優れることを意味する。
製造後23℃環境下で168時間静置した中間材を60〜80mm角に複数枚切出し積層体を得た。積層体の質量は90gになるように積層枚数を調整した。評価には、100tプレス機と、コア(下型)とキャビティ(上型)とからなる内部空間が直径100mmの円筒形状を形成しており、かつ前記円筒空間のキャビティ側の最上部側面に厚み1.5〜2mm、幅50mmの流路が形成された金型を用いた。成形性評価として、コアに積層体をチャージしてから10秒経過してから、コアを上昇させた後10MPaで加圧を行い、流路中に流れ出た成形材の流動長(mm)を測定した。コア・キャビティ及び流路は何れも140℃に加熱した。成形時間は120秒とした。流動長が420mm以上であれば好適な成形性があると判断し、450mm以上であれば成形性が優れると判断し、480mm以上であれば特に成形性が優れると判断した。
(実施例1〜5、比較例1〜4)
表1,2に記載の(A−1)成分及び(A−2)成分の混合物である1種類又は2種類の熱硬化性樹脂100質量部に、(A−4)成分である熱重合開始剤として1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサンの75質量%溶液(日本油脂株式会社製、製品名:パーヘキサC−75(EB))0.5質量部及びt−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネートの74質量%溶液(化薬アクゾ株式会社製、製品名:カヤカルボンBIC−75)0.5質量部、内部離型剤としてリン酸エステル系誘導体組成物(アクセルプラスチックリサーチラボラトリー社製、製品名:MOLD WIZ INT−EQ−6)0.5質量部、重合禁止剤として1,4−ベンゾキノン0.02質量部、吸湿剤としてモレキュラーシーブ(A Honeywell Company社製 UOP L−POWDER)1.2質量部をそれぞれ配合し、充分に混合撹拌しプレマトリクス樹脂を得た。その後、表1,2に記載の(A−3)成分を配合し、2〜4分程度混合攪拌することで各例のマトリクス樹脂を得た。
なお、各例で用いた熱硬化性樹脂のニート樹脂粘度を表1,2に示した。
各例のマトリクス樹脂の基準量Xは表3〜5に示すとおりである。例えば、表3に示すように、実施例1では基準量X[質量部]が21.5である。これに対して、差分量Y[質量部]を0.5又は1.0とし、(A−3)成分の配合量がX[質量部]、X+1.0[質量部]、X−1.0[質量部]、X+0.5[質量部]、X−0.5[質量部]の5水準のマトリクス樹脂を調整した。
表3〜5において、(A−3)成分の配合量に関して、配合量を基準量より減少させた場合、「基準量との関係」の欄に「減」と記載した。一方、配合量を基準量より増加させた場合、「基準量との関係」の欄に「増」と記載した。
プロセスウインドウの評価結果が良好であったため、実施例1〜5では中間材の製造をさらに実施した。中間材については後述する。
その後、マトリクス樹脂の熟成粘度V2を測定し増粘比を算出したが、熟成粘度V1が5〜40[×106mPa・s]を満たすマトリクス樹脂の増粘比は、2.5を超える傾向があった。増粘比の算出結果から、比較例2では中間材の製造を実施しなかった。
その後、マトリクス樹脂の熟成粘度V2を測定し増粘比を算出したが、熟成粘度V1が5〜40[×106mPa・s]を満たすマトリクス樹脂の増粘比はいずれも2.5超となった。増粘比の算出結果から、比較例3では中間材の製造を実施しなかった。
比較例4では、(A−3)成分の配合量が基準量Xであるマトリクス樹脂の熟成粘度V1Xは、5〜40[×106mPa・s]であり、(A−3)成分の配合量を基準量Xから0.5質量部増減させたマトリクス樹脂の熟成粘度(V1X+0.5及びV1X−0.5)は5〜70[×106mPa・s]を満たし、Y≧0.5であった。また、取扱性の評価結果が△又は○であり、融解性の評価結果が○であるマトリクス樹脂が3水準あり、プロセスウインドウは良好であった。
プロセスウインドウの評価結果が良好であったため、比較例4では中間材の製造をさらに実施した。
(実施例1〜5、比較例4)
(A−3)成分の配合量が基準量Xである実施例1〜5のマトリクス樹脂を、ドクターブレードを用いてポリエチレン製フィルム(キャリアフィルム)上に厚さ0.5〜3.0mmになるように塗布し、その上に、フィラメント数が15000本の炭素繊維束(三菱ケミカル株式会社製、TR50S 15L)を長さ25mmにチョップしたものを、炭素繊維の目付が略均一になるように、かつ、炭素繊維の方向がランダムになるように散布し、シート状に堆積させた。その上に、同マトリクス樹脂を厚さ0.5〜3.0mmになるように塗布した別のポリエチレン製のキャリアフィルムを、マトリクス樹脂が炭素繊維束と接するように重ね合わせ、ロール対の間を通して押圧して、シート状の炭素繊維束に上下からマトリクス樹脂を含浸させ中間材前駆体を得た。得られた中間材前駆体を23℃にて168時間静置することによりマトリクス樹脂を充分に増粘させて中間材を得た。
実施例1と比較例4では、目付が3000±300g/m2であり、炭素繊維含有率が50質量%である中間材前駆体A及び中間材Aと、目付2800±280g/m2であり、かつ炭素繊維含有率が60質量%である中間材前駆体B及び中間材Bとを製造した。実施例2〜5では、実施例1と同様の中間材前駆体A及び中間材Aを製造した。
実施例1〜5で得られた中間材Aを、製造後23℃度環境下で168時間静置した後、上述の方法に従って成形性評価を実施した。いずれも、脱型不良や外観不良がなく、また流動性に優れる結果であった。一方、比較例4について同様に成形性評価を実施したが、流動性が劣っていた。
(実施例1〜5、比較例4)
実施例1〜5、及び比較例4で得られた中間材Aを成形して成形板を得た。具体的には実施例1〜5の中間材Aを200mm〜250mm角に2枚切り出し積層物を得た。次いで、長さ300mm、幅300mm、厚さ2mmのキャビティが形成された金型を用い、140℃に加熱した金型に積層物をチャージ率40〜60%でチャージし、素早く型を閉じて成形圧力8MPaで5分間加熱圧縮成形した。なお、型締の完了の直前にキャビティ内を減圧し内在空気を除去した。
実施例1〜5で得られた成形板は、欠損や反りも無く、表面も平滑であった。成形板を用いて、曲げ試験を行った。表6に示すように、いずれも良好な結果であった。
また、実施例1、実施例5、比較例4で得られた成形板について、DMA測定を行った。実施例1のtanδmaxは161℃、実施例5のtanδmaxは150℃であり、いずれも耐熱性は良好であった。
一方、比較例4で得られた成形板は、tanδmaxが167℃であり、耐熱性は良好であったが、表6に示すように曲げ強度が実施例1〜5と比較して低下していた。
また、各実施例の結果から、熱硬化性樹脂のニート樹脂粘度がより低いほうが、中間材の炭素繊維含有率が高い中間材の製造に好適であることが示唆された。
比較例2では、(A−3)成分として用いた化合物のイソシアネート基含有率が30.5質量%であるため、マトリクス樹脂組成物の増粘比が2.5を超える傾向にあった。そのため、中間材製造時の製品斑の発生及び貯蔵安定性の低下が懸念される。
比較例4では、(A−1)成分として不飽和ポリエステル樹脂を含まないため、中間材製造時のマトリクス樹脂の含浸性、中間材の成形時の流動性が劣り、成形品の曲げ強度も劣っていた。
Claims (8)
- 下記(A−1)〜(A−4)成分の混合物を少なくとも含み、下式(1)〜下式(4)を満たす、マトリクス樹脂。
(A−1)成分:1分子中に1個以上のエチレン性不飽和基を有し、平均水酸基数が1.8〜4である、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂及び不飽和ポリエステル樹脂の両方。
(A−2)成分:エチレン性不飽和単量体。
(A−3)成分:イソシアネート基含有率が15〜30.5質量%であり、平均イソシアネート基数が1.8〜2.4であるポリイソシアネート。
(A−4)成分:熱重合開始剤。
5≦V1 X ≦40 ・・・(1)
Y≧0.5 ・・・(2)
5≦V1 X+Y ≦70 ・・・(3)
5≦V1 X−Y ≦70 ・・・(4)
式(1)中、V1 X は(A−3)成分の配合量がエチレン性不飽和基を有する成分からなる熱硬化性樹脂100質量部に対して基準量X[質量部]であるマトリクス樹脂を23℃で168時間静置した際の熟成粘度[×10 6 mPa・s]であり、基準量Xは10〜40質量部である。
式(2)中、Yは式(1)中の基準量Xに対して(A−3)成分の配合量を増加又は減少させる差分量[質量部]である。
式(3)中、V1 X+Y は式(1)中の基準量Xに対して、(A−3)成分の配合量を式(2)中の差分量Y[質量部]増加させたマトリクス樹脂を23℃で168時間静置した際の熟成粘度[×10 6 mPa・s]である。
式(4)中、V1 X−Y は式(1)中の基準量Xに対して、(A−3)成分の配合量を式(2)中の差分量Y[質量部]減少させたマトリクス樹脂を23℃で168時間静置した際の熟成粘度[×10 6 mPa・s]である。 - 下式(5)及び下式(6)を満たす、請求項1に記載のマトリクス樹脂。
5≦V1≦40 ・・・(5)
V2/V1≦2.5 ・・・(6)
式(5)中、V1はマトリクス樹脂を23℃で168時間静置した際の熟成粘度[×106mPa・s]である。
式(6)中、V1は式(5)中のV1と同じであり、V2はマトリクス樹脂を23℃で336時間静置した際の熟成粘度[×106mPa・s]である。 - 前記ポリイソシアネートが分子内に1個以上の芳香環を有する、請求項1又は2に記載のマトリクス樹脂。
- 下式(7)及び下式(8)を満たす、請求項1〜3のいずれか一項に記載のマトリクス樹脂。
0.6≦a1/b≦0.75 ・・・(7)
Vn≦1000 ・・・(8)
式(7)中、a1は(A−1)成分の含有量[g]であり、bはエチレン性不飽和基を有する成分からなる熱硬化性樹脂の含有量[g]である。
式(8)中、Vnはエチレン性不飽和基を有する成分からなる熱硬化性樹脂のニート樹脂粘度[mPa・s]である。 - 下式(9)を満たす、請求項1〜4のいずれか一項に記載のマトリクス樹脂。
V10/Vs≦1.20 ・・・(9)
式(9)中、Vsは前記マトリクス樹脂から(A−3)成分を除いたプレマトリクス樹脂と、(A−3)成分とを混合した直後の粘度[mPa・s]であり、V10は前記プレマトリクス樹脂と(A−3)成分とを混合して10分が経過した際の粘度[mPa・s]である。 - 請求項1〜5のいずれか一項に記載のマトリクス樹脂と、
繊維長が5〜120mmの炭素繊維束と、
を含む、中間材。 - 請求項6に記載の中間材を加熱加圧成形して得られる、成形品。
- 周波数1Hzの条件下で動的粘弾性測定により測定される損失正接が極大値を示す温度が、120℃以上である、請求項7に記載の成形品。
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