JP6791125B2 - 光ファイバ素線 - Google Patents

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Description

本発明は、光ファイバ素線に関する。
本出願は、2015年10月14日出願の日本出願第2015−202665号に基づく優先権を主張し、前記日本出願に記載された全ての記載内容を援用するものである。
一般に、光ファイバ心線は、ガラスファイバと該ガラスファイバを覆う被覆樹脂層とからなる光ファイバ素線を識別するために、インク層と呼ばれる薄い着色層を最外層に有している(例えば、特許文献1参照。)。
被覆樹脂層は、ガラスファイバを保護し、光ファイバの伝送損失を防ぐために十分な硬化性を有する必要がある。例えば、特許文献2では、耐マイクロベンド特性と低温特性を両立するために、被覆樹脂層に含まれるスズの含有量を低減することが検討されている。
特開平6−242355号公報 国際公開第2014/168201号
上記課題を解決するために、本発明の一実施形態による光ファイバ素線は、ガラスファイバと、ガラスファイバを覆う被覆樹脂層とを備え、被覆樹脂層が、スズと、光開始剤として2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンを含有する紫外線硬化型樹脂組成物の硬化物とを含み、被覆樹脂層中に含まれる分子量1000以下の未硬化成分の割合が、15質量%以下であり、被覆樹脂層表面におけるリン−スズ錯体の量の炭化水素の量に対する比が1000ppm以下である。
本実施形態に係る光ファイバ素線の一例を示す断面図である。 本実施形態に係る光ファイバテープ心線の一例を示す断面図である。
[本開示が解決しようとする課題]
光ファイバ心線は、光ファイバ心線を複数並列してテープ材で覆った光ファイバテープ心線の形態で使用されることがある。そして、光ファイバテープ心線からテープ材を除去して光ファイバ心線を取り出す作業をする際、インク層が被覆樹脂層から剥がれる、色剥がれが生じることがある。
そこで、本開示は、十分な硬化性を有し、かつ、インク層との密着性に優れる被覆樹脂層を備える光ファイバ素線を提供することを目的とする。
[本開示の効果]
本開示によれば、十分な硬化性を有し、かつ、インク層との密着性に優れる被覆樹脂層を備える光ファイバ素線を提供することができる。
[本発明の実施形態の説明]
最初に、本発明の実施形態の内容を列記して説明する。本発明の一実施形態による光ファイバ素線は、ガラスファイバと、ガラスファイバを覆う被覆樹脂層とを備え、被覆樹脂層が、スズと、光開始剤として2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンを含有する紫外線硬化型樹脂組成物の硬化物とを含み、被覆樹脂層中に含まれる分子量1000以下の未硬化成分の割合が、15質量%以下であり、被覆樹脂層表面におけるリン−スズ錯体の量の炭化水素の量に対する比が1000ppm以下である。
被覆樹脂層の硬化性を高めるためには、リン系光開始剤である2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィン(以下、「TPO」と略記する。)を用いることが有効である。一方、TPOを多量に紫外線硬化型樹脂組成物に配合すると、TPOが被覆樹脂層の表面に偏在することがある。
また、スズ(Sn)触媒は、例えば、ウレタンの合成触媒として一般的に知られており、被覆樹脂層を形成するために用いられる紫外線硬化型樹脂組成物を構成する樹脂成分(例えば、ウレタンオリゴマー)に混入することがある。
スズはリンと錯体(P−Sn錯体)を形成して、被覆樹脂層の表面に偏在することがある。P−Sn錯体が被覆樹脂層表面に偏在すると、光ファイバテープ心線を作製した際の被覆樹脂層とインク層との界面の密着性が低下し、単心分離時に色剥がれが生じ易くなる。そこで、P−Sn錯体の偏在を抑えるためには、TPOの配合量を減らす必要があるが、TPOの配合量を減らすと、被覆樹脂層の硬化性が低下することになる。
これに対して、本実施施形態の光ファイバ素線は、被覆樹脂層中のリンが含まれ、被覆樹脂層表面におけるP−Sn錯体の量の炭化水素の量に対する比を1000ppm以下に低減することで、被覆樹脂層の硬化性と密着性とを両立することができる。
上記光ファイバ素線において、被覆樹脂層中に含まれる分子量1000以下の未硬化成分の割合は、15質量%以下であることにより、被覆樹脂層の硬化性を更に高めることができる。
上記被覆樹脂層は、プライマリ樹脂層とセカンダリ樹脂層とを有し、セカンダリ樹脂層は、ビスフェノール骨格を有する多官能モノマーを25質量%以上含有する紫外線硬化型樹脂組成物の硬化物を含んでいてもよい。これにより、リン−スズ錯体の偏在が更に低減され、被覆樹脂層はインク層との密着性により優れるものとなる。
セカンダリ樹脂層のヤング率は、23℃で800MPa以上であってもよい。これにより、耐マイクロベンド特性が向上できる。また、セカンダリ樹脂層のヤング率は、23℃で900MPa以上であってもよい。これにより、光ファイバ心線の剛性が高められるため、単心分離の作業性が向上できる。
光ファイバに機械強度を持たせるために樹脂被覆層には一定の厚さが必要であるが、光ファイバ素線の外径は、通常260μm以下であってもよい。また、光ケーブルの多芯化の観点から、光ファイバ素線の外径は、210μm以下であってもよい。
[本発明の実施形態の詳細]
本発明の実施形態に係る光ファイバ素線及びその製造方法の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。以下の説明では、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
(光ファイバ素線)
図1は、本実施形態に係る光ファイバ素線1の一例を示す断面図である。図1に示されるように、本実施形態の光ファイバ素線1は、光伝送体であるガラスファイバ10及び被覆樹脂層20を備えている。
ガラスファイバ10は、コア12及びクラッド14を有しており、ガラス製の部材、例えばSiOガラスからなる。ガラスファイバ10は、光ファイバ素線1に導入された光を伝送する。コア12は、例えばガラスファイバ10の中心軸線を含む領域に設けられている。コア12は、純SiOガラス、又は、それにGeO、フッ素元素等を含んでいてもよい。クラッド14は、コア12を囲む領域に設けられている。クラッド14は、コア12の屈折率より低い屈折率を有する。クラッド14は、純SiOガラスからなってもよいし、フッ素元素が添加されたSiOガラスからなってもよい。
ガラスファイバ10の径は、通常、125μm程度である。被覆樹脂層20の総厚は、60〜70μm程度であるが、それ以下であってもよい。被覆樹脂層20の総厚は、32.5μm以上が望ましい。被覆樹脂層20の総厚は、32.5〜65μmが好ましく、62.5μm以下であってもよく、60μm以下であってもよく、42.5μm以下であってもよい。
光ファイバに機械強度を持たせるために樹脂被覆層には一定の厚さが必要であることから、光ファイバ素線1の外径は通常260μm以下であってもよい。光ファイバ素線1の外径は、190〜255μmであってもよく、245μmが好ましい。光ケーブルの多芯化の観点から、光ファイバ素線1の外径は、210μm以下であってもよく、200μm以下が好ましく、180μm以上が好ましい。
被覆樹脂層20は、ガラスファイバと接する第1の層であるプライマリ樹脂層22と、該第1の層と接する第2の層であるセカンダリ樹脂層24とを有している。
プライマリ樹脂層22の厚さは、通常、15〜40μm程度であり、20〜40μmであってもよい。セカンダリ樹脂層24の厚さは、通常15〜45μm程度である。
プライマリ樹脂層22のヤング率は、23℃で1MPa以下であることが好ましく、0.8MPa以下であることがより好ましく、0.4MPa以下であることが更に好ましい。プライマリ樹脂層22のヤング率の下限値は、特に限定されないが0.05MPa程度である。セカンダリ樹脂層24のヤング率は、23℃で800MPa以上であることが好ましく、800〜1000MPaであってもよい。
光ファイバ心線の剛性が高められ、単心分離の作業性を向上する観点から、セカンダリ樹脂層24のヤング率は、23℃で800MPa以上であることが好ましく、900MPa以上であることがより好ましく、900〜1500MPaであってもよい。
被覆樹脂層20は、例えば、オリゴマー、モノマー及び光重合開始剤を含む紫外線硬化性樹脂組成物を硬化させて形成することができる。
オリゴマーとしては、例えば、ウレタン(メタ)アクリレートが挙げられる。オリゴマーは、2種以上を混合して用いてもよい。ここで、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はそれに対応するメタクリレートを意味する。(メタ)アクリル酸についても同様である。
ウレタン(メタ)アクリレートとしては、ポリオール化合物、ポリイソシアネート化合物及び水酸基含有アクリレート化合物を反応させて得られるものが挙げられる。ポリオール化合物としては、例えば、ポリテトラメチレングリコール、ポリプロピレングリコール及びビスフェノールA・エチレンオキサイド付加ジオールが挙げられる。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート及びイソホロンジイソシアネートが挙げられる。水酸基含有アクリレート化合物としては、例えば、2−ヒドロキシ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート及びトリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
モノマーとしては、重合性基を1つ有する単官能モノマー、重合性基を2以上有する多官能モノマーを用いることができる。モノマーは、2種以上を混合して用いてもよい。
単官能モノマーとしては、例えば、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、(メタ)アクリロイルモルホリン等の環状構造を有するN−ビニルモノマー;イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ノニルフェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。中でも、環状構造を有するN−ビニルモノマーが、硬化速度を向上する点で好ましい。
多官能モノマーとしては、例えば、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジイルジメチレンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ビスフェノール化合物のエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド付加体ジオールのジ(メタ)アクリレート、ビスフェノール化合物のグリシジルエーテルにジ(メタ)アクリレートを付加させたエポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
ビスフェノール化合物としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールAP、ビスフェノールB、ビスフェノールBP、ビスフェノールC及びビスフェノールEが挙げられ、中でも、ビスフェノールAが好ましい。すなわち、多官能モノマーとして、ビスフェノール骨格を有する多官能モノマーを用いることができ、中でも、ビスフェノールA骨格を有する多官能モノマーを用いることが好ましい。
特に、インク層との密着性がより一層向上する観点から、セカンダリ樹脂層24は、セカンダリ樹脂層を形成するための紫外線硬化性樹脂組成物の全量を基準として、ビスフェノール骨格を有する多官能モノマーを25質量%以上含有する紫外線硬化性樹脂組成物の硬化物を含むことが好ましい。該紫外線硬化性樹脂組成物は、ビスフェノール骨格を有する多官能モノマーを25〜40質量%含有することがより好ましく、25〜35質量%含有することが更に好ましい。
被覆樹脂層20を形成する紫外線硬化性樹脂組成物は、被覆樹脂層の硬化性と密着性とを両立する観点から、光開始剤として2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィン(以下、「TPO」という)を含有する。TPOの含有量は、被覆樹脂層20中0.5〜2.0質量%となるように調整される。
上記紫外線硬化性樹脂組成物には、本発明の奏する効果を阻害しない範囲で、TPO以外の公知のラジカル光重合開始剤を併用してもよく、例えば、アシルホスフィンオキサイド系開始剤及びアセトフェノン系開始剤が挙げられる。
アシルホスフィンオキサイド系開始剤としては、例えば、2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド及び2,4,4−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィノキサイドが挙げられる。
これらの開始剤由来のリンが、被覆樹脂層20中に含まれる。リンの含有量は、被覆樹脂層20を形成するための紫外線硬化性樹脂組成物を含む被覆樹脂液をアセトンに40℃で16時間浸漬して得られた抽出液をガスクロマトグラフ質量分析することで求めることができる。
アセトフェノン系開始剤としては、例えば、1−ヒドロキシシクロヘキサン−1−イルフェニルケトン(BASF社製、商品名「イルガキュア184」)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(BASF社製、商品名「ダロキュア1173」)、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(BASF社製、商品名「イルガキュア651」)、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルホリノプロパン−1−オン(BASF社製、商品名「イルガキュア907」)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1(BASF社製、商品名「イルガキュア369」)、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン及び1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オンが挙げられる。
被覆樹脂層からのインク層の色剥がれを低減する観点から、被覆樹脂層表面におけるP−Sn錯体の量の炭化水素の量に対する比は、1000ppm以下であるが、950ppm以下が好ましく、900ppm以下がより好ましい。P−Sn錯体の量の炭化水素の量に対する比の下限値は、特に限定されないが、60ppm程度である。なお、P−Sn錯体の量の炭化水素の量に対する比は、TOF−SIMSを用いて被覆樹脂層の表面を分析することで測定することができる。
被覆樹脂層20中に含まれる分子量1000以下の未硬化成分の割合は、被覆樹脂層の硬化性を向上する観点から、15質量%以下であることが好ましい。分子量1000以下の未硬化成分は、光ファイバ素線をメチルエチルケトンに60℃で17時間浸漬して、抽出された抽出物の分子量とその量をガスクロマトグラフ質量分析計で測定することにより求めることができる。
ガラスファイバ10に被覆樹脂層20を形成する方法としては、従来、光ファイバ素線の製造に用いられている方法を適用することができる。
例えば、クラッド14の周囲に紫外線硬化性樹脂組成物を塗布し、その紫外線硬化性樹脂組成物を紫外線の照射によって硬化させることにより、被覆樹脂層20を形成する。
被覆樹脂層20が、プライマリ樹脂層22及びセカンダリ樹脂層24を有する場合は、プライマリ樹脂層形成用の樹脂組成物をクラッド14の周囲に塗布し、紫外線の照射によって硬化させてプライマリ樹脂層22を形成した後、セカンダリ樹脂層形成用の樹脂組成物をプライマリ樹脂層22の周囲に塗布し、紫外線の照射によって硬化させてセカンダリ樹脂層24を形成する方式(wet−on−dry方式)を用いてもよい。また、プライマリ樹脂層形成用の硬化性樹脂組成物をクラッド14の周囲に塗布した後、その周りにセカンダリ樹脂層形成用の樹脂組成物を塗布し、紫外線の照射によって同時に硬化させてプライマリ樹脂層22及びセカンダリ樹脂層24を形成する方式(wet−on−wet方式)を用いてもよい。
(光ファイバ心線)
被覆樹脂層20を構成するセカンダリ樹脂層24の外周面には、光ファイバ素線を複数本配置して光ファイバテープ心線の形態で用いる際に識別するため、インク層となる着色層30を形成することができる。本実施形態では、光ファイバ素線1に着色層30が形成された形態を光ファイバ心線2という(図2参照)。
着色層の厚さは、3μm以上であり、5〜10μmであることが好ましい。着色層の厚さが3μm以上であれば、色剥がれを抑制することができる。
着色層は、光ファイバ心線の識別性を向上する観点から、顔料を含有することが好ましい。顔料としては、例えば、カーボンブラック、酸化チタン、亜鉛華等の着色顔料、γ−Fe、γ−Feとγ−Feの混晶、CrO、コバルトフェライト、コバルト被着酸化鉄、バリウムフェライト、Fe−Co、Fe−Co−Ni等の磁性粉、MIO、ジンククロメート、ストロンチウムクロメート、トリポリリン酸アルミニウム、亜鉛、アルミナ、ガラス、マイカ等の無機顔料が挙げられる。また、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、染付レーキ顔料等の有機顔料を用いることもできる。顔料には、各種表面改質や複合顔料化等の処理が施されていてもよい。
光ファイバ心線の外径は、通常245〜265μm程度であるが、245μm以下であってもよい。光ファイバ心線の機械強度を向上させる観点からは、光ファイバ心線の外径は190μm以上が好ましい。
(光ファイバテープ心線)
本実施形態の光ファイバ素線を用いて光ファイバテープ心線を作製することができる。図2は、本実施形態に係る光ファイバテープ心線100の断面図である。同図に示される光ファイバテープ心線100は、並列配置された複数本(ここでは4本)の光ファイバ素線1の外周に着色層30が形成された形態である光ファイバ心線2がテープ材40により一体化されたものである。テープ材40は、例えば、エポキシアクリレート樹脂、ウレタンアクリレート樹脂等によって形成されている。このような光ファイバテープ心線は、低温環境下における伝送損失の増加を低減することができる。また、上記光ファイバテープ心線は、光ファイバテープ心線からテープ材を除去して光ファイバ心線を取り出す作業をする際に色剥がれが生じることがなく、光ファイバ心線を容易に識別することができる。
次に実施例を挙げて、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
[プライマリ樹脂層形成用樹脂組成物の調製]
(調製例1)
ポリプロピレングリコールジオールに、ジイソシアネート、ヒドロキシアクリレートを反応させることにより得られるウレタンアクリレートを65質量部、ノニルフェニルアクリレートを25質量部、N−ビニルカプロラクタムを10質量部及びTPO(BASF社製、商品名「ルシリンTPO」)を1質量部混合して、樹脂組成物Aを調整した。
[セカンダリ樹脂層形成用樹脂組成物の調製]
ポリプロピレングリコールジオールに、ジイソシアネート、ヒドロキシアクリレートを反応させることにより得られるウレタンアクリレートと、ビスフェノール系エポキシアクリレートと、アクリル酸イソボルニルと、N−ビニルカプロラクタムと、TPOとを下記の割合で混合して、セカンダリ樹脂層形成用樹脂組成物をそれぞれ調製した。
(調製例2)
アクリル酸イソボルニルを10質量部、N−ビニルカプロラクタムを10質量部に固定し、セカンダリ樹脂層形成用樹脂組成物中に含まれるビスフェノールA系エポキシアクリレートが25質量%となるように、ウレタンアクリレートの配合量を調整し、更に被覆樹脂層のTPOの配合量を0.5質量%とした樹脂組成物B1を得た。
(調製例3)
アクリル酸イソボルニルを10質量部、N−ビニルカプロラクタムを10質量部に固定し、セカンダリ樹脂層形成用樹脂組成物中に含まれるビスフェノールA骨格を有するエポキシアクリレートが45質量%となるようにウレタンアクリレートの配合量を調整し、更に被覆樹脂層のTPOの配合量を2.0質量%とした樹脂組成物B2を得た。
(調製例4)
アクリル酸イソボルニルを10質量部、N−ビニルカプロラクタムを10質量部に固定し、セカンダリ樹脂層形成用樹脂組成物中に含まれるビスフェノールA骨格を有するエポキシアクリレートが30質量%となるようにウレタンアクリレートの配合量を調整し、更に被覆樹脂層のTPOの配合量を0.2質量%とした樹脂組成物B3を得た。
(調製例5)
アクリル酸イソボルニルを10質量部、N−ビニルカプロラクタムを10質量部に固定し、セカンダリ樹脂層形成用樹脂組成物中に含まれるビスフェノールA骨格を有するエポキシアクリレートが10質量%となるようにウレタンアクリレートの配合量を調整し、更に被覆樹脂層のTPOの配合量を1.0質量%とした樹脂組成物B4を得た。
(調製例6)
調製例3においてウレタンアクリレートの分子量を調整し、セカンダリ樹脂層のヤング率が23℃で800Maとなる樹脂組成物B5を得た。
(調製例7)
調製例3においてウレタンアクリレートの分子量を調整し、セカンダリ樹脂層のヤング率が23℃で1000Maとなる樹脂組成物B6を得た。
(調製例8)
調製例3において被覆樹脂層のTPOの配合量を0.5質量%とした樹脂組成物B7を得た。
[着色層形成用樹脂組成物の調製]
(調製例9)
ウレタンアクリレート系樹脂を70質量部、有機顔料を6質量部、2官能アクリレートモノマーと多官能アクリレートモノマーとの混合物(配合比:4/6)を20質量部、イルガキュア907を3質量部、フェノール系酸化防止剤を0.03質量部、硫黄系酸化防止剤を0.01質量部、アミン系重合禁止剤を0.01質量部及びシリコーンオイルを0.1重量部混合して、樹脂組成物Cを調製した。
[テープ材用樹脂組成物の調製]
ビスフェノールA・エチレンオキサイド付加ジオール1mol、トリレンジイソシアネート2mol及びヒドロキシエチルアクリレート2molを反応させて得られるウレタンアクリレートを18質量部、ポリテトラメチレングリコール1mol、トリレンジイソシアネート2mol及びヒドロキシエチルアクリレート2molを反応させて得られるウレタンアクリレートを10質量部、トリレンジイソシアネート1mol及びヒドロキシエチルアクリレート2molを反応させて得られるトリシクロデカンジアクリレートを15質量部、N−ビニルピロリドンを10質量部、イソボルニルアクリレートを10質量部、ビスフェノールA・エチレンオキサイド付加ジオールジアクリレートを5質量部、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパン−1−オン(BASF社製、商品名「イルガキュア907」)を0.7質量部及びTPOを1.3質量部混合して、樹脂組成物Dを調製した。
[光ファイバ素線]
(実施例1)
コア及びクラッドから構成される直径125μmのガラスファイバの外周に、樹脂組成物Aを用いて厚さ35μmのプライマリ樹脂層を形成し、更にその外周に樹脂組成物B1を用いて厚さ25μmのセカンダリ樹脂層を形成して、直径245μmの光ファイバ素線を得た。なお、線速は1500m/分とした。
(実施例2)
樹脂組成物B2を用いてセカンダリ樹脂層を形成した以外は、実施例1と同様に操作して光ファイバ素線を得た。
(実施例3)
コア及びクラッドから構成される直径125μmのガラスファイバの外周に、樹脂組成物Aを用いて厚さ17.5μmのプライマリ樹脂層を形成し、更にその外周に樹脂組成物B5を用いて厚さ17.5μmのセカンダリ樹脂層を形成して、直径195μmの光ファイバ素線を得た。
(実施例4)
樹脂組成物B6を用いてセカンダリ樹脂層を形成した以外は、実施例3と同様に操作して光ファイバ素線を得た。
(実施例5)
樹脂組成物B7を用いてセカンダリ樹脂層を形成した以外は、実施例3と同様に操作して光ファイバ素線を得た。
(比較例1)
樹脂組成物B3を用いてセカンダリ樹脂層を形成した以外は、実施例1と同様に操作して光ファイバ素線を得た。
(比較例2)
樹脂組成物B4を用いてセカンダリ樹脂層を形成した以外は、実施例1と同様に操作して光ファイバ素線を得た。
[光ファイバ心線]
実施例及び比較例でそれぞれ得られた光ファイバ素線を一旦巻き取った後に、着色機で光ファイバ素線を改めて繰り出しながらセカンダリ樹脂の外周に樹脂組成物Cにより、厚さ5μmのインク層(着色層)を形成することで、光ファイバ心線をそれぞれ作製した。
[光ファイバテープ心線]
光ファイバ心線を4本並列してそれらの周囲をテープ材(樹脂組成物D)で被覆して一体化して光ファイバテープ心線を得た。
[評価]
(P−Sn錯体の量)
セカンダリ樹脂層表面を、TOF−SIMSで分析した。使用装置をTRIFT V nanoTOF、イオン種Au+、加速電圧30kVとした。光ファイバ素線の側方からイオンビームを照射して測定した。+337(m/z)のピークの値(リン−スズ錯体の量を表す)と+59(m/z)のピークの値(炭化水素の量を表す)の比(+337のピークの値/+59のピークの値)からP−Sn錯体の量の炭化水素の量に対する比を測定した。結果を表1に示す。
(硬化性の評価)
被覆樹脂層の硬化性を、下記条件で分子量が1000以下の未硬化成分を抽出することで確認した。すなわち、光ファイバ素線をメチルエチルケトンに60℃で17時間浸し、抽出された抽出物のうち分子量1000以下の物質の量をガスクロマトグラフ質量分析計で求め、これを光ファイバ素線の被覆層樹脂層の重量で除して、分子量1000以下の成分の割合を求めた。結果を表1に示す。光ファイバ素線未硬化成分の含有量が15質量%以下である場合を、硬化性良とし、15質量%を超える場合を硬化性不良とした。
(単心分離作業及び色剥がれ試験)
光ファイバテープ心線を工具(住友電気工業社製TS−1/4)を使用してテープ材を除去して光ファイバ心線に分離した。このときに色剥がれがない(着色層がテープ材とともに剥がれることがない)場合を密着性「良」とし、色剥がれが生じると密着性「不良」と判断した。
(セカンダリ樹脂層のヤング率)
セカンダリ樹脂層のヤング率は、光ファイバ素線からガラス部分を抜き取り、被覆樹脂層を引っ張り試験機にかけて測定した。結果を表2に示す。
(単心分離作業性)
光ファイバテープ心線からTelcordia GR−20 5.3.1に準拠し、光ファイバ心線を単心分離させた。その際のインク層(着色層)の剥がれの有無を評価した。表2中、剥がれ無しを「A」、剥がれ有りを「B」とした。
Figure 0006791125
Figure 0006791125
実施例で作製した光ファイバ素線では、被覆樹脂層が十分な硬化性を有し、かつ、インク層との密着性に優れることが確認できた。また、セカンダリ樹脂層のヤング率が大きくなると、単心分離作業性が向上することが確認できた。
1…光ファイバ素線、2…光ファイバ心線、10…ガラスファイバ、12…コア、14…クラッド、20…被覆樹脂層、22…プライマリ樹脂層、24…セカンダリ樹脂層、30…着色層、40…テープ材、100…光ファイバテープ心線。

Claims (5)

  1. ガラスファイバと、前記ガラスファイバを覆う被覆樹脂層と、を備える光ファイバ素線であって、
    前記被覆樹脂層が、スズと、光開始剤として2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンを含有する紫外線硬化型樹脂組成物の硬化物とを含み、前記2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンの含有量が、0.5〜2.0質量%であり、
    前記被覆樹脂層中に含まれる分子量1000以下の未硬化成分の割合が、15質量%以下であり、
    前記被覆樹脂層表面におけるリン−スズ錯体の量の炭化水素の量に対する比が60ppm以上1000ppm以下であり、
    前記被覆樹脂層が、プライマリ樹脂層とセカンダリ樹脂層とを有し、
    前記セカンダリ樹脂層が、ビスフェノール骨格を有する多官能モノマーを25質量%以上含有する紫外線硬化型樹脂組成物の硬化物を含む、光ファイバ素線。
  2. 前記セカンダリ樹脂層のヤング率が、23℃で800MPa以上である、請求項に記載の光ファイバ素線。
  3. 前記セカンダリ樹脂層のヤング率が、23℃で900MPa以上である、請求項記載の光ファイバ素線。
  4. 外径が260μm以下である、請求項1〜のいずれか一項に記載の光ファイバ素線。
  5. 外径が210μm以下である、請求項1〜のいずれか一項に記載の光ファイバ素線。
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