JP6789612B2 - 植物用発育向上剤、およびそれを用いた植物の製造方法 - Google Patents

植物用発育向上剤、およびそれを用いた植物の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、植物を健全に発育させるための植物用発育向上剤、およびそれを用いた植物の製造方法に関するものである。
農作物や観賞用の植物は、その植物にとって最適の環境で生育することが理想であるが、現実には環境の変化等により種々のストレスを受けている。例えば、天候の大きな変化や異常気象により、高温ストレスや低温ストレスといった温度ストレス、および紫外線ストレスを受ける。また、水不足により乾燥ストレスを受ける場合もある。さらに、農薬や化学薬品による化学ストレスも植物に大きなダメージを与えることがある。
その他にも、多くのストレスが植物の生育を阻害する。
酸性雨や化学肥料により土壌のpHが変化し、根腐れ等の原因となるpHストレス、長雨により根が水に浸かったり、土壌が固すぎることで、根が呼吸できなくなる低酸素ストレスがある。
過剰な施肥によりアンモニアストレスが生じるケースも多く報告されている。
有機酸は、植物の成長促進や病気予防のために広く使用されているが、細胞浸透性が高いため、過剰に与えると植物にとってストレスとなる。
また、光ストレスには、上述した紫外線ストレス以外にも、赤外線ストレスや低日照ストレスも植物の生育を阻害する。
あるいは、バクテリア等による病害ストレス、害虫による食害ストレスも発育を大きく阻害する。
海岸地域に生育する植物の場合、強い塩ストレスを受ける。また、地下水灌漑利用による塩害が生じる場合もある。
さらに、植え替えによる土壌環境等の急変化のストレスや、台風の強風による物理ストレス等、非常に多くのストレスが存在する。
これらのストレスは、植物の発育阻害要因となり、農産物の場合には、品質劣化や収量減少という大きな問題を引き起こす。このような環境ストレスを軽減するために、ハウス栽培等において、環境要因をできるだけ一定に維持することも行われているが、多額の設備投資が必要であり、且つ管理コストの増加を招くといったコスト面での負担が生じる。
また、季節性の環境ストレスの場合、栽培できる期間が限定される要因となり、遊休期間が長くなり、生産コストが増大する。あるいは、栽培する植物の種類が限定される要因となる。
さらに、環境ストレスにより発育が遅れることで、栽培期間が長期化し、農地の回転効率の悪化を招くといった問題が生じる。
上記の問題を解決するために、植物の環境ストレス耐性を付与する製剤が研究されている。例えば、酵母細胞壁酵素分解物を含む薬剤組成物が、植物の環境ストレス耐性を付与する効果があることが見出されている(例えば、特許文献1)。
また、タケニグサ由来物であるサンギナリンが、高温ストレスや乾燥ストレスに対する植物の耐性をさらに向上させることも報告されている(例えば、特許文献2)。
特開2007−45709 特許第5544450号
特許文献1および特許文献2に開示された製剤においては、環境ストレスに対する植物の耐性を向上させる効果が確認されている。しかし、実際の農産物の栽培においては、さらに大きなストレスが掛かることがあり、より耐性を高めることができる製剤が求められている。また、温度ストレスや乾燥ストレスに対する耐性だけではなく、化学ストレスや紫外線ストレスといったより広範囲のストレスに対する耐性を向上できる製剤が望まれている。
また、特許文献1に開示された製剤は有効成分が特定されていないため、安全性に不安が残る。特許文献2に開示された製剤は有効成分が毒性の強いアルカロイドであり、やはり安全性に懸念がある。
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、植物が受ける種々の環境ストレス全般に対して強力な耐性を付与し、且つ安全性の高い製剤を提供するものである。あるいは、植物の成長を促進し、または、植物の品質を向上するものである。
本発明に係る植物用発育向上剤は、植物の環境ストレスを緩和し、または植物の成長を促進し、または品質を改善する植物用発育向上剤であって、ゼルンボンまたはその類縁体、あるいはそれらの塩を主成分とするものである。
本発明に係る植物用発育向上剤は、植物が受ける種々の環境ストレス全般に対して対応可能であり、且つより強力なストレス耐性を付与するものである。または、植物の成長を促進し、あるいは品質を向上させるものである。また、食用の植物に含まれる天然物を主成分としているため、高い安全性を担保出来る。
高温ストレスに対する検証実験におけるキュウリの苗の状態を示す写真である。 乾燥ストレスに対する検証実験におけるキュウリの苗の状態を示す写真である。
本発明に係る植物用発育向上剤の詳細、およびその新たな効能等を確認するために行った実験結果に関して、以下において説明する。なお、以下の説明は本発明に関する良好な一例を開示するものであり、本発明が当該実施の形態に限定されるものではない。
なお、本発明に係る植物用発育向上剤は、植物が受ける各種のストレスを緩和し、または植物の成長を促進し、あるいは品質を改善するものである。ここで、各種のストレスとは、以下の検証実験において示すように、温度ストレスや化学的ストレス、光ストレス、乾燥ストレス、pHストレス、塩ストレス、低酸素ストレス、食害ストレス、物理的ストレス等の植物が受ける可能性のあるほとんどの種類のストレスであり、この中には病気に対するストレスも含まれる。すなわち、病気を予防し、あるいは治癒力を向上させる効果も含む場合もある。
本発明に係る植物用発育向上剤は、ゼルンボン、α―フムレン、β―カリオフィレンなどのセスキテルペン類であり、食用の植物中に含まれる天然物であるため、安全性が高い。
ゼルンボンは環状セスキテルペンの一種であり、ハナショウガの精油成分には、80%から90%のゼルンボンが含有されている。α―フムレンやその異性体であるβ―カリオフィレンは、ゼルンボンの類縁体である。類縁体は、受容体結合特性などの分子生物学的な性質や構造が類似しているため、近似した特性を示す。しかし、ある化合物の原子または原子団が別の原子または原子団と置換された組成を持つ別の化合物である。
ゼルンボンやα―フムレン、β―カリオフィレンは、ショウガおよびウコン等のショウガ科植物の抽出物や粉砕品として得ることができる。あるいは、ホップ、チョウジ、あるいはラベンダーの抽出物や粉砕品としても得ることができる。
本実施の形態においては、ゼルンボンやα―フムレン、β―カリオフィレンとして、ハナショウガの精油成分からの抽出物を主に用いたが、粉砕物を用いても同様の効能が得られる。
これらの物質が、植物が受ける各種のストレスを緩和する、あるいは成長を促進する等の効能を有することを確認するため、いくつかの検証実験を行った。以下、検証実験の結果について報告する。いずれの検証実験においても、これらの物質の溶液を用い、濃度は植物に十分な効能を付与できるように、0.01ppmから10ppmの範囲で検証実験ごとに適宜調整した。比較のために用いたサンギナリンについても同様であり、同じ検証実験においては、これらの物質と同じ濃度に設定した。
実施の形態1.
まず、種子植物に対する植物用発育向上剤の有効性を検証するために実施したいくつかの検証実験について、以下に説明する。
(検証実験1 高温ストレスに対する検証実験:水耕栽培)
小松菜を用いて、高温ストレスに対する検証実験を行った。実験手順は以下の通りである。
播種から7日後に、本葉が展開する程度まで成長した小松菜を培養スポンジで挟み込み、発泡スチロールのフロートにセットする。樹脂製コンテナに培養液を入れ、フロートを浮かべると共に、エアーポンプとストーンでバブリングを行う。そして、葉面に製剤を散布する。液肥としては、1960年代に農林水産省の園芸試験場で開発された野菜水耕用の汎用配合である園試処方による液肥を用いた。
9日間、高温環境で培養を行い、小松菜の成長状態を観察する。
ここで、製剤としてはゼルンボンを用い、比較のために、製剤としてサンギナリンを散布したもの、および有効成分の含まれていない水のみを散布したもの(以下、対照試料と呼ぶ)も併せて培養を行った。9日間の培養期間中の各日の最高温度は30℃から43℃であった。また、日当たりの良好な場所で培養を行った。検体数は、それぞれ40検体とし、10検体ごとにまとめて乾燥重量を測定した。
検証実験結果を表1に示す。
なお、サンギナリンを散布したものを比較試料として用いた理由は、多くの物質の中でもサンギナリンが特に高いストレス耐性向上効果を有しているためである。例えば、植物用耐ストレス製剤、特に高温ストレス耐性を高める働きを持つことが知られているイソチアネートの10倍程度のストレス活性をサンギナリンは有するため、サンギナリンよりも高い効果を確認できれば、他の植物用耐ストレス製剤に対する優位性を証明できると考えたためである。
小松菜の平均重量を比べると、対照試料よりも、サンギナリンを散布したものでは、わずか3%程度の重量増加であり、有意な効果があるかどうかが判明しなかった。一方、ゼルンボンをを散布したものでは15%程度も重量が増加し、明確にストレス耐性を高める効果があることが分った。
なお、α―フムレン、およびβ―カリオフィレンを製剤として用いた場合においても、ゼルンボンとほぼ同様の効果が確認できた。
(検証実験2 高温ストレスおよび低日照ストレスに対する検証実験:水耕栽培)
次に、検証実験1と同様の条件で、再度検証実験を行った。検体数はそれぞれ60検体とし、うち40検体に関しては日当たりの良好な場所で培養を行い、他の20検体に関しては日光がほとんど当たらない場所で培養を行った。9日間の培養期間中の各日の最高温度は、検証実験1と同様に30℃から43℃であった。
日当たりの良好な場所で培養した40検体の結果を表2に、日当たりがほとんど無い場所で培養を行った20検体の結果を表3に示す。
小松菜の平均重量を比べると、表2に示した検証実験では、対照試料よりも、サンギナリンを散布したものでは11%程度、ゼルンボンをを散布したものでは17%程度も重量が増加した。この検証実験は、検証実験1とほぼ同条件であるが、検証実験1では有意な効果を示さなかったサンギナリンを散布したものが、今回は有意な効果を示した。
以上のように、ゼルンボンをを散布したものは、対照試料やサンギナリンを散布したものよりも、安定して良好な成長を示した。一方、サンギナリンを散布したものは、対照試料よりも良好な成長を示したが、効果にばらつきがあることが分った。
表3に示した検証実験では、表2に示した検証実験に比べて、対照試料の成長が著しく悪く、日照不足の影響が明らかに見られる。他方、サンギナリンを散布したものでは17%程度、ゼルンボンを散布したものでは37%程度も対照より成長が良かった。ゼルンボンを散布したものに関しては、表2と表3に示すように、ほとんど重量に差が無く、日照不足によるストレスを十分に緩和している。
以上の結果より、ゼルンボンは高温ストレス、および低日照ストレスに対して、高い耐性を付与し、また成長促進効果を有することも確認できた。サンギナリンもストレス耐性を高める効果が確認されたが、ゼルンボンに比べて小さく、また、ほとんど効果が確認できない場合もあった。
(検証実験3 高温ストレスに対する検証実験:土耕栽培)
次に、キュウリを用いた土耕栽培において、製剤の有効性を確認する実験を行った。
まず、15cmポット(5号ポット)に育苗培土を入れ、キュウリの種を点播した。この育苗培土は、肥料成分としてチッソ180mg/L、リンサン120mg/L、およびカリウム220mg/Lを含有したものであり、土壌pHは6.0に調整した。そして、毎早朝に水やりを行った。
発芽後3日目から4日目のキュウリの子葉にゼルンボンを葉面散布したものと、水のみを葉面散布したものとを10日間栽培し、成長の違いを観察した。温度および日照の条件は検証実験1と同様である。
図1に示すように、ゼルンボンを葉面散布したものは大きく成長し、高温ストレスに対する耐性を付与する効果が顕著に表れている。重量、葉の面積、茎の長さ、根の長さ、および根の量のすべてにおいて、ゼルンボンを葉面散布することで大きく成長している。
(検証実験4 酸ストレスに対する検証実験)
カイワレ大根を用いて、硝酸による酸ストレスに対する耐性について調べた。硝酸を用いた理由は、一般的な化学肥料の主成分であり、酸ストレス以外の植物に対する影響を排除できるためである。
発芽後3日目から4日目のカイワレ大根の子葉にゼルンボンを葉面散布したものと、水のみを葉面散布したものとを数日間栽培した。そして、pH2.5の酸性溶液に1分間浸漬した。
ゼルンボンを葉面散布したものは、わずかにしおれが散見されたが、水のみを葉面散布したものは全体が大きくしおれた。
(検証実験5 アルカリストレスに対する検証実験)
次に、カイワレ大根を用いて、水酸化カリウムによるアルカリストレスに対する耐性について調べた。水酸化カリウムも硝酸と同様に、一般的な化学肥料の主成分であるので、アルカリストレス以外の植物に対する影響については考慮する必要が無く、アルカリストレスに対する効能を適正に評価できる。
発芽後3日目から4日目のカイワレ大根の子葉にゼルンボンを葉面散布したものと、水のみを葉面散布したものとを数日間栽培した。そして、pH9.0の酸性溶液に浸漬した。
ゼルンボンを葉面散布したものに比べて、水のみを葉面散布したものは全体が大きくしおれた。
以上より、酸およびアルカリのいずれに対しても、ゼルンボンが植物に耐性を与えることを確認できた。植物の成長に適するpHは5.5から6.5程度であり、この適正領域よりも極端な低pHあるいは高pHの環境においても、ストレスを大きく低減できることが判明した。
(検証実験6 乾燥ストレスに対する検証実験)
キュウリを用いて乾燥ストレスに対する耐性について調べた。
発芽直後のキュウリの苗にゼルンボンを3ml注入したものと、注入しなかったものとを18日間栽培した。栽培期間中、土表面が常時乾燥している状態を保つよう、与える水の量、および水を与える回数を最小限に留めた。具体的には、乾燥が進み、しおれ始めた時のみ、少量の水を点滴した。
18日間栽培後のキュウリの苗の様子を図2に示す。ゼルンボンを注入したものは、対照に比べて大きく成長していることが分かる。
また、各苗の重量を測定した。測定結果を表4に示す。
平均重量は、ゼルンボンを散布したものが対照試料よりも約13%も大きい。T検定値は1.32%となり、有意水準の5%以下であるので、明らかに有意差を示している。
ゼルンボンの代わりに、α―フムレン、あるいは、β―カリオフィレンを発芽直後のキュウリの苗に注入し、発育状況について測定した結果をそれぞれ表5と表6に示す。なお、使用した製剤以外の栽培条件は、ゼルンボンを使用した際と同様である。
平均重量は、α―フムレン、あるいは、β―カリオフィレンを散布したものが対照試料よりも8%以上大きい。T検定値は有意水準の5%以下であり、明らかに有意差を示している。
(検証実験7 乾燥ストレスからの回復に関する検証実験)
次に、カイワレ大根を乾燥状態にすることで大きなダメージを与え、その後、十分な水分を与えることで、ダメージを回復できるかどうかについて検証を行った。
まず、カイワレ大根を夜間に水に浸して発芽を促進させる。発芽後、バーミキュライトに植えて、園試処方の養液を含浸。25℃にて5日間の培養を行った。培養時の明期は6時間である。そして、ゼルンボンを噴霧した。対照とした検体では水を噴霧した。
さらに1日間培養を行い、その後、根を洗ってバーミキュライトを落とし、根をペーパータオルで拭いた。そして、トレーに並べて、1晩乾燥させた。
ポットに腐葉土と赤玉土を4対6の比率でブレンドした培土に、上記の乾燥したカイワレ大根を定植した。
ゼルンボンを噴霧した検体は、4検体中3検体が乾燥から回復した。
一方、ゼルンボンの代わりに水を噴霧した検体は、4検体中1検体しか回復しなかった。また、回復した検体もゼルンボンを噴霧した検体に比べて、成長が悪かった。
検証実験6および7より、ゼルンボンを用いることで、植物の乾燥ストレスを十分に緩和できるとともに、乾燥ストレスによって受けたダメージを回復する効果もあることを確認できた。
(検証実験8 低温ストレスに対する検証実験)
製剤としてゼルンボンやα―フムレン、β―カリオフィレンを用いた場合の植物の低温ストレスに対する耐性向上の効果について検証する実験を行った。
植物としてキュウリを用いた。
まず、キュウリの種子を25℃の水に48時間浸漬した後、栽培ポットに2粒の種子を播種した。播種時に各製剤液を3ml添加した。そして、日光の下、約30℃の温度条件で17日間栽培した。発育したキュウリの葉全体に各製剤液を葉面散布し、さらに上記と同条件で1日間栽培した。対照試料として、水のみを添加および散布したものも同条件で栽培した。
上記のように、製剤としてゼルンボン、α―フムレン、β―カリオフィレンのいずれかを用いた試料と対照試料の計4種の各試料に関して、以下の手順で低温ストレスを与えた。
まず、各試料の上から2枚目の葉を取り、ほぼ等しい大きさにカットし、水道水と共にポリ袋に入れて密封した。そして、−10℃および0℃に冷却した暗所にて2日間静置した。
なお、上記のほぼ等しい大きさにカットした試料は、本検証実験にて一部を用い、それ以外のカットした試料は、後述する他のストレス耐性を検証する試験にも用いた。
暗所から各試料を取り出し、TTC試験(2、3、5−トリフェニルテトラゾリウムクロライド検定)を行った。TTC試験は細胞の活性を調べる手法であり、活性度が高い細胞ほど赤く染色される。一方、死滅した細胞はほとんど染色されない。
−10℃で暗所にて静置した試料に関しては、製剤を用いていない対照試料は完全に死滅していた。一方、製剤としてゼルンボン、α―フムレン、β―カリオフィレンのいずれかを用いた試料は、いずれも薄っすらと染色され、一部の細胞が活性を有しており、細胞が生存していることを確認できた。
0℃で暗所にて静置した試料に関しては、製剤を用いていない対照試料は薄っすらと染色され、一部の細胞が弱い活性を有していた。一方、製剤としてゼルンボン、α―フムレン、β―カリオフィレンのいずれかを用いた試料は、濃く染色され、ほとんどすべての細胞が強い活性を有していることが確認できた。
また、上記の実験過程において、各試料の上から2枚目の葉を取り、低温ストレスの試料としたが、残った試料については、4℃の冷所にて蛍光灯の下、2日間栽培を継続し、TTC試験を行った。
製剤を用いていない対照試料は、葉のわずかな部分のみ染色され、大部分の細胞は死滅していた。一方、製剤としてゼルンボン、α―フムレン、β―カリオフィレンのいずれかを用いた試料は、葉の周囲を除いて濃く染色され、葉の中央部分の細胞は強い活性を有しており、細胞が生存していることを確認できた。
以上の実験結果より、ゼルンボン、α―フムレン、β―カリオフィレンの各製剤が、低温ストレスに対して、高い耐性をキュウリに付与できることが判明した。
(検証実験9 有機酸ストレスに対する検証実験)
検証実験8においてほぼ等しい大きさにカットした試料の一部を用いて、有機酸に対する耐性を調べた。検証実験4において、無機酸である硝酸を用いて一般的な酸ストレス、すなわち低pH環境に対する耐性を確認したが、本検証実験においては、有機酸である酢酸を用いた。
農業の現場においては、農作物の成長促進や病害予防等を目的として、酢酸をはじめ、有機酸は広く用いられている。有機農法で使用される木酢液(木材を乾留した際に生じる乾留液の上澄分)の主成分も酢酸である。ただし、無機酸とは異なり、有機酸は細胞への浸透性が高いため、濃度を高くしすぎると細胞へのダメージが生じてしまう。特に、酢酸は有機酸の中でもギ酸とともに分子量が最も小さく、乖離率も小さいため細胞に浸透しやすく、大きなダメージを細胞に与える。ここでは、0.4%の酢酸溶液に各試料を2時間浸漬し、TTC試験を行った。
その結果、製剤を用いていない対照試料は細胞のほとんどが死滅し、生き残っている細胞も染色度合いが小さく、活性度が低かった。一方、製剤としてゼルンボン、α―フムレン、β―カリオフィレンのいずれかを用いた試料は、半分程度の細胞が活性を有し、その活性度も高く、細胞が生存していることを確認できた。
以上のように、細胞への浸透性が最も高い酢酸に対する耐性が向上できることを確認できたため、それ以外の有機酸に対する耐性も十分に向上できると考えられる。
(検証実験10 アンモニアストレスに対する検証実験)
土壌中の無機窒素は、アンモニア態窒素、亜硝酸態窒素、硝酸態窒素の3形態で存在する。通常、有機物が分解されるとまずアンモニア態窒素が生成され、さらに土壌中の硝酸菌等の作用で亜硝酸態窒素を経て硝酸態窒素にまで変換される。植物が利用するのは毒性の無い硝酸態窒素が理想であるが、過剰な施肥等により毒性を持つアンモニア態窒素が植物に吸収されることもあり、アンモニアに対する耐性を向上させることは、植物の健全な発育のために重要である。
本検証実験においては、検証実験8においてほぼ等しい大きさにカットした試料の一部を用いて、アンモニアに対する耐性を調べた。1.0%のアンモニア溶液に各試料を3時間浸漬し、TTC試験を行った。
その結果、製剤を用いていない対照試料はすべての細胞が死滅していた。一方、製剤としてゼルンボン、α―フムレン、β―カリオフィレンのいずれかを用いた試料は、一部の細胞が活性を有しており、細胞の生存を確認できた。
(検証実験11 紫外線ストレスに対する検証実験)
次に、光ストレスに対する耐性向上効果について検証した。ここでは、可視光や赤外線に比べて波長が短く(光子当たりのエネルギーが大きく)、生命体へのダメージが非常に大きい紫外線を用いた。
本検証実験においては、シャーレに水を入れ、検証実験8においてほぼ等しい大きさにカットした試料の一部を浮かべ、紫外線を24時間照射し、TTC試験を行った。
その結果、製剤を用いていない対照試料はすべての細胞が死滅していた。一方、製剤としてゼルンボン、α―フムレン、β―カリオフィレンのいずれかを用いた試料は、半分程度のの細胞が活性を有しており、細胞の生存を確認できた。
以上のように、最も過酷な紫外線に対して有効性を確認できたので、通常の環境において植物に与えられる光ストレス全般にたいして、耐性を向上できると考えられる。
(検証実験12 塩分ストレスに対する検証実験)
検証実験8においてほぼ等しい大きさにカットした試料の一部を用いて、塩分に対する耐性を調べた。1.0%の塩水に各試料を24時間浸漬し、TTC試験を行った。
その結果、製剤を用いていない対照試料は一部の細胞が死滅し、生き残っている細胞も染色度合いが小さく、活性度が低かった。一方、製剤としてゼルンボン、α―フムレン、β―カリオフィレンのいずれかを用いた試料は、大部分の細胞が生存しており、その活性度も高かった。
以上、検証実験9から12において、ゼルンボン、α―フムレン、β―カリオフィレンのいずれも、有機酸、アンモニア、光および塩分の各ストレスに対して、植物に耐性を付与できることを確認できた。
(検証実験13 実際の農業生産現場での総合的な検証実験)
上記の検証実験1から12の結果を踏まえ、実際の農業生産現場での総合的な効果を検証するため、京都市のビニールハウスにおいて検証実験を行った。
ビニールハウスは、パイプ式のビニールハウスであり、この中に湛液型水耕栽培装置を設置し、水耕栽培を行った。湛液型水耕栽培とは、栽培ベッドに肥料が溶けた養液を溜め、土を使わずに養液のみで栽培する水耕栽培の一手法である。
栽培は夏季に約1か月に渡り行った。その期間における各日のビニールハウス内の最高気温は28℃から44℃の範囲であった。また、最低気温の範囲は24℃から27℃であった。
栽培品種としては、生育適温が18℃から23℃と冷涼な気候を好むリーフレタスを敢えて選択した。リーフレタスは暑さに弱いため、徒長やチップバーン(縁腐れ病)、異形葉といった各種の生理障害や、うどんこ病や根腐れ病といった各種の病気を発生しやすく、通常は夏の栽培は困難とされている。
このリーフレタスの生育の具体的な手順について以下に述べる。

<1.播種>
育苗トレイに敷き詰めた育苗用スポンジ上に播種。播種後、1日で発芽。
<2.製剤散布>
発芽後10日目に、5試験区に分け、ゼルンボン、α―フムレン、β―カリオフィレン、サンギナリン、および有効成分の含まれていない水のみを葉面に散布。
その後、苗一つごとにスポンジを切り分け、株間を10cmとした発砲スチロールのフロートにセットし、湛液型水耕栽培装置に浮かべた。液肥としては園試処方による液肥を用いた。また、pH調整剤として水酸化ナトリウムとリン酸を用い、栽培期間中のpH値を6.0から6.5の範囲に維持した。
<3.植え替え>
発芽後20日目に、株間を25cmとした発砲スチロールのフロートに植え替え、湛液型水耕栽培装置に浮かべた。液肥及びpHについては上記の通りである。
<4.収穫および観察>
試験区ごとに収穫サイズが150gから180gになるのを待ち収穫。生理障害や病気の発生の有無に関して観察を行った。
観察項目は、生理障害として、異形葉、徒長、チップバーン、根の張り具合、味の5項目、病気耐性として、うどんこ病と根腐れ病の2項目の計7項目である。

収穫日および観察結果を表7に示す。
まず、収穫サイズが150gから180gに達した収穫日に関しては、対照試験区では38日目、サンギナリン試験区は35日目であり、サンギナリンの散布により成長速度が速くなった。一方、ゼルンボン試験区では、発芽後30日目で収穫サイズが150gから180gに達した。また、α―フムレン試験区で32日目、β―カリオフィレン試験区で33日目であり、ゼルンボン、α―フムレン、あるいはβ―カリオフィレンを散布することで、サンギナリンを散布した場合に比べても成長速度が向上することを確認できた。
生理障害に関しては、対照試験区で異形葉、徒長およびチップバーンの発生があり、根の張り具合も不良であった。サンギナリン試験区でも異形葉と徒長の発生があった。他方、ゼルンボン、α―フムレン、あるいはβ―カリオフィレンを散布した試験区では、生理障害の発生は無く、根の張り具合もサンギナリン試験区よりも極めて良好であった。
味については、対照試験区のリーフレタスは苦味があった。これは、苦み成分ラクチュコピリンが過剰発生していることが原因と思われる。ゼルンボン、α―フムレン、あるいはβ―カリオフィレンを散布した試験区のリーフレタスは苦味が無かった。
病気に関しては、対照試験区において、うどんこ病と根腐れ病が発生していた。また、サンギナリン試験区でも根腐れ病の発生が確認された。他方、ゼルンボン、α―フムレン、あるいはβ―カリオフィレンを散布した試験区においては、病気の発生は確認できなかった。したがって、これらの製剤は、病気に対する耐性を向上させることにより病気を予防し、また、病気の治癒力を向上させる効果も併せ持つと考えられる。
以上より、ゼルンボン、α―フムレン、あるいはβ―カリオフィレンを用いることで、成長速度が速くなり、種々の生理障害や病気が発生せず、品質が高いリーフレタスが得られた。夏季には栽培することが難しいとされていたリーフレタスであるが、これらの製剤を用いることで栽培が可能となることを確認できた。
この現場試験においては、リーフレタスに対して数々のストレスが発生していたと考えられる。まず、生育に適する気温よりかなり高い気温で栽培しているため、強い高温ストレスが確実に発生していた。また、エアレーションを用いない水耕栽培であり、常時水中にある根が呼吸することは困難であり、低酸素ストレスも確実に発生していた。さらに、夏の炎天下における栽培であるため、強い日照による光ストレスもあった。また、自然の環境であり、バクテリアやカビによる病害ストレス、およびアオムシ等の食害虫やアブラムシによる害虫ストレスも発生していたと考えられる。さらに、栽培過程において植え替えを行ったが、植え替えによる栽培環境の急激な変化もストレスとして発生していたと考えられる。
このように、実際の農業生産現場においては実験室環境よりも数多くのストレスが発生しているが、そうした過酷な環境においても、本発明にかかる植物用発育向上剤は十分な効能を発揮することが確認できた。
実施の形態2.
実施の形態1においては、種子植物に対する植物用発育向上剤の有効性を検証するためのいくつかの実験結果について述べた。本実施の形態においては、シダ植物に対する植物用発育向上剤の有効性を検証する実験結果について述べる。
シダ植物としては、草原や明るい林内などによく見られる代表的なシダ植物であるベニシダを用いて、各種ストレスに対する検証実験を行った。実験手順は以下の通りである。
十分に成長したベニシダの葉面全体にゼルンボン、α―フムレン、β―カリオフィレンの各製剤をそれぞれ葉面散布した。また、対照試料は、水のみを葉面散布した。葉面散布後、25℃で1日間栽培した。そして、適当な大きさにカットした葉に対して各種のストレスを与え、各試料の細胞活性をTTC試験により調べた。
(検証実験14 高温ストレスに対する検証実験:シダ植物)
適当な大きさにカットした葉を45℃の水道水に18時間浸漬し、TTC試験を実施した。
製剤を用いていない対照試料は染色されず、ほとんどの細胞が死滅していた。一方、製剤としてゼルンボン、α―フムレン、β―カリオフィレンのいずれかを用いた試料は、いずれも薄っすらと染色され、細胞が活性を有しており、細胞が生存していることを確認できた。
(検証実験15 有機酸ストレスに対する検証実験:シダ植物)
適当な大きさにカットした葉を0.4%の酢酸溶液に3時間浸漬し、TTC試験を実施した。
製剤を用いていない対照試料は染色されず、ほとんどの細胞が死滅していた。一方、製剤としてゼルンボン、α―フムレン、β―カリオフィレンのいずれかを用いた試料は、いずれも薄っすらと染色され、細胞が活性を有しており、細胞が生存していることを確認できた。
(検証実験16 アンモニアストレスに対する検証実験:シダ植物)
適当な大きさにカットした葉を1.0%のアンモニア溶液に48時間浸漬し、TTC試験を実施した。
製剤を用いていない対照試料は染色されず、ほとんどの細胞が死滅していた。一方、製剤としてゼルンボン、α―フムレン、β―カリオフィレンのいずれかを用いた試料は、いずれも薄っすらと染色され、細胞が活性を有しており、細胞が生存していることを確認できた。
以上の検証実験から、シダ植物に対しても、ゼルンボン、α―フムレン、およびβ―カリオフィレンが、各種のストレス耐性を向上させることを確認できた。
実施の形態3.
実施の形態1および実施の形態2においては、種子植物およびシダ植物に対する植物用発育向上剤の有効性を検証するためのいくつかの実験結果について述べた。本実施の形態においては、コケ植物に対する植物用発育向上剤の有効性を検証する実験結果について述べる。
コケ植物としては、公園や屋上、庭園の緑化に広く用いられているコケ植物である砂苔を用いて、各種ストレスに対する検証実験を行った。実験手順は以下の通りである。
砂苔マットごとに、ゼルンボン、α―フムレン、β―カリオフィレンの各製剤をそれぞれ噴霧した。また、対照試料は、水のみを噴霧した。噴霧後、25℃で1日間栽培した。そして、それぞれの試料に各種のストレスを与え、各試料の細胞活性をTTC試験により調べた。
(検証実験17 高温ストレスに対する検証実験:コケ植物)
各試料を45℃の水道水に18時間浸漬し、TTC試験を実施した。
製剤を用いていない対照試料は染色されず、ほとんどの細胞が死滅していた。一方、製剤としてゼルンボン、α―フムレン、β―カリオフィレンのいずれかを用いた試料は、いずれも薄っすらと染色され、細胞が活性を有しており、細胞が生存していることを確認できた。
(検証実験18 有機酸ストレスに対する検証実験:コケ植物)
各試料を0.4%の酢酸溶液に3時間浸漬し、TTC試験を実施した。
製剤を用いていない対照試料は染色されず、ほとんどの細胞が死滅していた。一方、製剤としてゼルンボン、α―フムレン、β―カリオフィレンのいずれかを用いた試料は、いずれも薄っすらと染色され、細胞が活性を有しており、細胞が生存していることを確認できた。
(検証実験19 アンモニアストレスに対する検証実験:コケ植物)
各試料を1.0%のアンモニア溶液に48時間浸漬し、TTC試験を実施した。
製剤を用いていない対照試料は染色されず、ほとんどの細胞が死滅していた。一方、製剤としてゼルンボン、α―フムレン、β―カリオフィレンのいずれかを用いた試料は、いずれも薄っすらと染色され、細胞が活性を有しており、細胞が生存していることを確認できた。
以上の検証実験から、コケ植物に対しても、ゼルンボン、α―フムレン、およびβ―カリオフィレンが、各種のストレス耐性を向上させることを確認できた。
実施の形態4.
実施の形態1から実施の形態3において述べたように、本発明に係る植物用発育向上剤は、植物が受ける多様なストレスを緩和し、また、ストレスにより植物がダメージを受けた場合には、ダメージからの回復力も向上させる効果も有する。
本実施の形態においては、この性質を利用して、機能成分高含有農作物を効果的に生産する方法について述べる。
消費者の健康志向の高まり、および栽培技術の進歩により、健康機能性成分の含有を高めた農作物の開発が進められている。この機能成分高含有農作物を生産する方法は、品種改良を除くと、主に以下の2つの方法があり、順に、方法の概略と問題点について説明する。
<第1の方法:植物に多量の機能成分を生産させる方法>
大多数の機能成分は、植物がストレスから身を守るための防御物質として機能している。そのため、各種ストレスを人為的に与えることで、植物はより多くの機能成分を生産する。
しかし、各種のストレスを植物に与えると、植物はダメージを受けるため、見かけ、味、食感といった農作物としての本来の品質が低下することがある。あるいは、収量が低下することもある。
特定の機能成分を植物に多量に生産させるためには、どのようなストレスを与えても良いわけでは無く、最適なストレス、およびそのストレスの最適な与え方がある。しかし、上記の問題が生じる可能性が有るため、与えるストレスの種類や与え方に制約が生じ、十分に機能成分を含有する植物を開発することが困難であった。
<第2の方法:植物に機能成分を取り込ませる方法>
植物の根や葉から、機能成分を植物に直接取り込ませることで、機能成分高含有農産物を生産することができる。ただし、植物に機能成分を取り込ませるには、植物を高濃度の機能成分に晒す必要があり、機能成分自体が植物にダメージ(化学ストレス)を与えてしまう。
また、特定の機能成分においては、効率的に植物に取り込ませるために、養液のpHを高pHや低pHにコントロールすることが必要であるが、この場合には、植物にpHストレスを与えることになる。
以上のように、特定の機能成分を植物に取り込ませる際には、植物に化学ストレスやpHストレスを与えることになり、結果として、品質や収量の低下を招く場合がある。そのため、植物に取り込ませる機能成分に制約が生じたり、効率的に取り込ませることが困難であったりするという問題があった。
以上に示した2つの方法のいずれにおいても、本発明に係る植物用発育向上剤を植物に与えてやることで、それぞれの問題を解決あるいは改善できる。
植物用発育向上剤を植物に予め与えておくことで、多様なストレスに対する耐性が向上するので、第1の方法においては、植物に付与するストレスの種類やその与え方の選択範囲が広がり、より多量の機能成分を含有する植物を生産することができるようになる。
また、第2の方法においては、植物に取り込ませることができる機能成分の選択範囲が広がると同時に、より効率的に多量の機能成分を植物に取り込ませることが可能となる。
以上、実施の形態1から4に示した本発明に係る植物用発育向上剤について、その特長を中心にまとめる。
本植物用耐ストレス製剤は、ゼルンボン、α―フムレン、β―カリオフィレンなどのセスキテルペン類であり、食用の植物中に含まれる天然物であるため、安全性が高い。したがって、人が食する農産物にも安心して用いることができる。そして、植物が受ける可能性があるストレス全般に対して、耐性を向上できる効果があるため、その利用価値は極めて大きなものがある。
まず、地球温暖化により、年々、気温が上昇しているが、本製剤を利用することにより、高温ストレス耐性が向上するため、気温が上昇しても、栽培を可能とすることができる。
また、植物には最適な成育温度があり、各植物ごとに成育できる温度帯域、すなわち、生育可能な地域が決まっている。しかし、本製剤を利用することで、高温および低温ストレスに対する耐性が向上するので、適温域をはずれた高温地帯、あるいは低温地帯でも、栽培を可能とすることができる。すなわち、各地域において、栽培する植物の選択肢を広げることができる。
本植物用耐ストレス製剤は、乾燥ストレス耐性も向上することができるため、乾燥地においても、栽培する植物の選択肢を大きく広げることができる。
また、塩ストレスに対する耐性も向上できるため、沿岸地域においても、栽培する植物の選択肢を広げることが可能となる。
さらに、pHストレスやアンモニアストレスを緩和できるため、土壌の質に依存せず、多様な植物を栽培できる。
本植物用耐ストレス製剤は、その他の様々な環境ストレス耐性を向上できるため、十分な管理を行わない粗放的栽培でも、品質・収穫量を上げることが可能であり、農業における管理コストを低減できる。
一方、究極的な集約的農業である施設園芸においては、夏の温度対策が問題となっているが、本植物用耐ストレス製剤用いることで、施設的な温度対策をしなくとも栽培を可能とすることが可能となり、管理コストの低減と共に、品質・収穫量も向上できる。
また、植物工場や施設園芸など、人工的な栽培環境下において生じる様々なストレス耐性も向上できるので、品質・収穫量を上げることができる。
さらに、本植物用発育向上剤を用いて植物の各種環境ストレス耐性を向上させれば、植物の全身獲得抵抗性が向上するので、各種病害にかかっても耐えることができるようになり、減農薬につながる。特に、検証実験7で確認したように、単にストレスを緩和するだけでは無く、ダメージからの回復力も向上させる効果も有するため、各種病害に罹った植物の自然治癒力を高めることができる。
また、多くのストレスは一時的に顕著になるものである。例えば、数日間の急激な気象変化は、一時的に強い高温ストレスや光ストレス、あるいは乾燥ストレスを植物に与える。これらの強いストレスにより、植物の細胞は大きなダメージを受けるが、ダメージからの回復力を向上させる効果を有することで、強いストレスが無くなった後には、再び良好に発育することが可能になる。したがって、短期的な気象の大きな変動の有無に影響を受けることなく、毎年、安定した農産物の収穫が可能となる。
また、植物に害を及ぼす病原体を駆除する際には、薬剤や酸、アルカリを用いた化学的手段や、熱や紫外線、乾燥といった物理的手段を用いる。本植物用耐ストレス製剤を用いて植物の各種環境ストレス耐性を予め向上させておけば、より強力な駆除手段を用いることが可能となり、病気の予防効果を高めるための選択肢が広がる。
特に、pHストレスや有機酸ストレスに対する耐性も高めることができるので、病気の予防および病原体等の駆除のため使用可能な製剤の幅が広がる。
また、屋上や壁面緑化として植物を栽培する場合、特に様々な強いストレスに晒される。土壌が極めて少ない特殊な環境であり、常時、温度ストレス(高温、低温)や乾燥ストレス、光ストレスに晒されている。また、土壌中の緩衝作用が機能せず、pHや化学物質濃度が極端な値になりやすく、強いpHストレスや化学ストレスを受ける。さらに、ウィルスやカビ等の病原体に加え、コガネムシ幼虫等の食害虫も発生しやすく、植物にとっては厳しい環境である。したがって、屋上や壁面緑化として栽培される植物は、このような悪環境にも耐えることができる植物に限定されていたが、本発明に係る植物用発育向上剤を用いれば、栽培できる植物の用途を大きく広げることが可能となり、ビルや家屋の窓、屋上を様々な植物で飾ることができるようになる。
また、植物は複数の異なるストレスを受けている場合が多い。個々のストレスに対する耐性を高めるために複数の異なる製剤を用いた場合には、それら製剤の相互作用が懸念されるが、多様なストレスに対して有効性を持つ本発明に係る植物用発育向上剤を用いれば、そのような心配が生じない。
本植物用発育向上剤を用いることで、機能成分高含有農作物の可能性を広げることも可能となる。機能性農産物とは、人の生体調整機能を向上させる働きを持つ機能成分を多く含む農産物のことである。
実施の形態4に示した2つの方法のいずれにおいても有効であり、第1の方法においては、植物に付与するストレスの種類やその与え方の選択範囲が広がり、より多量の機能成分を含有する植物を生産することができるようになる。また、第2の方法においては、植物に取り込ませることができる機能成分の選択範囲が広がると同時に、より効率的に多量の機能成分を植物に取り込ませることが可能となる。
以上に開示したように、ゼルンボン、α―フムレン、あるいはβ―カリオフィレンは、植物の環境ストレスを緩和し、または植物の成長を促進し、または品質を改善する効果を有することを見出し、植物用発育向上剤という新たな用途に適していることを確認できた。

Claims (2)

  1. ゼルンボンを主成分とし、植物の環境ストレスを緩和し、植物の成長を促進する植物用ストレス緩和・発育向上剤であって、
    ハナショウガの抽出物、または粉砕物であることを特徴とする、植物用ストレス緩和・発育向上剤
  2. 上記環境ストレスは、高温、低日照、酸、アルカリ、乾燥、紫外線、塩分のうちのいずれかひとつ以上のストレスである
    ことを特徴とする請求項1に記載の植物用ストレス緩和・発育向上剤。
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