JP6785083B2 - 抗酸化剤、抗酸化剤を含有する油脂組成物およびこれを含有する油性食品 - Google Patents

抗酸化剤、抗酸化剤を含有する油脂組成物およびこれを含有する油性食品 Download PDF

Info

Publication number
JP6785083B2
JP6785083B2 JP2016150602A JP2016150602A JP6785083B2 JP 6785083 B2 JP6785083 B2 JP 6785083B2 JP 2016150602 A JP2016150602 A JP 2016150602A JP 2016150602 A JP2016150602 A JP 2016150602A JP 6785083 B2 JP6785083 B2 JP 6785083B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
oil
alkaline substance
cdm
fat
polyphenol compound
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2016150602A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2018016776A (ja
Inventor
憲孝 大石
憲孝 大石
正敏 梅澤
正敏 梅澤
玲 佐々木
玲 佐々木
隆 石黒
隆 石黒
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Miyoshi Oil and Fat Co Ltd
Original Assignee
Miyoshi Oil and Fat Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Miyoshi Oil and Fat Co Ltd filed Critical Miyoshi Oil and Fat Co Ltd
Priority to JP2016150602A priority Critical patent/JP6785083B2/ja
Publication of JP2018016776A publication Critical patent/JP2018016776A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6785083B2 publication Critical patent/JP6785083B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Food Preservation Except Freezing, Refrigeration, And Drying (AREA)
  • Edible Oils And Fats (AREA)
  • Noodles (AREA)
  • Anti-Oxidant Or Stabilizer Compositions (AREA)
  • Fats And Perfumes (AREA)

Description

本発明は、抗酸化剤、抗酸化剤を含有する油脂組成物およびこれを含有する油性食品に関する。
バター、マーガリン等の油脂類、油脂を配合したケーキ類、ビスケット、クッキー、クラッカー等の焼き菓子類、さらにポテトチップスやフライ麺等のフライ食品等は、油脂を含有することによる良好な味を有する反面、経時的な風味の劣化が大きな問題となっている。油脂の酸化が進行すると、これらの油性食品の味や匂い、食感なども低下する。
このような観点から、油脂組成物およびこれを含有する油性食品には、多くの酸化防止処理が施されている。例えば、容器や包装中に酸化防止剤を封入する方法、種々の酸化防止剤、例えばトコフェロール、アスコルビン酸、ポリフェノール等を油脂に添加する方法等が広く採用されている(非特許文献1)。また、油脂に炭酸カルシウムや炭酸カリウム等のアルカリ物質を添加する方法も採用されている(特許文献1、2)。
しかしながら、特許文献1に記載の方法は、炭酸カルシウムのようなアルカリ土類金属の炭酸塩を単独で油脂に添加する方法であり、必ずしも満足し得る抗酸化能が得られなかった。特許文献2に記載の方法も、特許文献1と同様に、炭酸カリウムのようなアルカリ金属の炭酸塩を単独で油脂に添加する方法であって、必ずしも満足し得る抗酸化能が得られなかった。
そこで、茶抽出物に含まれるカテキンに代表されるポリフェノールと乳化剤とを含有する抗酸化剤や、ポリフェノール類を含有する混合物Aとアルカリ剤を含む混合物Bとからなる二剤型の抗酸化剤等が提案されている(特許文献3、4)。特許文献3に記載の抗酸化剤では、ポリフェノールとして、茶抽出物およびその成分である、茶カテキン、エピガロカテキンガレート等の特定のポリフェノール類を用いることが提案されている。特許文献4に記載の抗酸化製品では、ポリフェノール類を含有する混合物Aとして、茶抽出物に加え、コーヒー豆抽出物を用いることが提案されている。さらにまた、茶抽出物と乳化剤を併用した抗酸化物質を含有する食用油脂およびこれを用いた食品が提案されている(特許文献5)。
特開昭59−152998号公報 特開2015−57979号公報 特開2000−219880号公報 特開2008−156278号公報 国際公開WO2013/172348号パンフレット
食用油脂入門<改定2版> 日本食糧新聞社 pp.201
しかしながら、特許文献3、4に記載の抗酸化剤では、単に、ポリフェノール類として茶抽出物およびその成分である特定のポリフェノール類、あるいはコーヒー豆抽出物とアルカリ物質との混合物の抗酸化能について検討しているに過ぎなかった。しかも、特許文献3、4のいずれにおいても、得られた抗酸化剤を食用の油脂や油脂組成物およびこれを用いた油性食品へ利用することについては、何ら検討されていなかった。
特許文献5に記載の抗酸化物質を含有する食用油脂では、油脂の酸化にともなう風味や色味の劣化を抑制する効果が必ずしも十分ではないという問題があり、油脂およびこれを用いた食品のさらなる酸化安定性の向上が望まれていた。
本発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、従来よりも油脂組成物およびこれを用いた油性食品の酸化安定性を向上させることが可能であり、長期にわたって酸化による風味および外観の変化を抑制することができる安全な抗酸化剤を提供することを課題としている。
上記の課題を解決するために、本発明の抗酸化剤は、以下の点を特徴とする。
(1)水酸基を1〜5個含有し、B環にガレート構造を持たないフラボノイド化合物(ただし、カルコン化合物を除く)、水酸基を6個含有し、C環にカルボニル基を有し、C環の2位の炭素と3位の炭素との間に炭素−炭素二重結合を持たないフラボノイド化合物、カルコン化合物からなる群のうち少なくとも一種を含むポリフェノール化合物(ただし、ジヒドロケルセチンを除く)と、アルカリ物質とを、酸化を抑制する対象物への添加成分として含むことを特徴とする。
(2)アルカリ物質が、1価のカルボン酸塩およびアルカリ金属塩からなる群のうち少なくとも一種であることが好ましい。
本発明の油脂組成物は、以下の点を特徴とする。
(3)上記発明(1)または(2)に記載の抗酸化剤と、油脂とを含有することを特徴とする。
(4)アルカリ物質が、1価のカルボン酸塩およびアルカリ金属塩からなる群のうち少なくとも一種であることが好ましい。
(5)上記発明(3)または(4)において、ポリフェノール化合物の配合量が対油20〜5000ppmであることが好ましい。
(6)上記発明(3)から(5)のいずれかにおいて、アルカリ物質の配合量が、オレイン酸ナトリウムとして、対油30〜10000ppmであることが好ましい。
本発明の油性食品は、以下の点を特徴とする。
(7)上記発明(3)から(6)のいずれかに記載の油脂組成物を含有すること
本発明によれば、従来よりも油脂組成物およびこれを用いた油性食品の酸化安定性を向上させることが可能であり、長期にわたって酸化による風味および外観の変化を抑制することができる安全な抗酸化剤が実現される。
アルカリ物質の添加量とCDM延長の相乗効果との関係を示したグラフである。横軸に示したアルカリ物質の添加量は、オレイン酸ナトリウム換算量(ppm)を示している。
以下に、本発明について詳細に説明する。
本発明の抗酸化剤は、(A)水酸基を1〜5個含有し、B環にガレート構造を持たないフラボノイド化合物(ただし、カルコン化合物を除く)、(B)水酸基を6個含有し、C環にカルボニル基を有し、C環の2位の炭素と3位の炭素との間に炭素−炭素二重結合を持たないフラボノイド化合物、(C)カルコン化合物からなる群のうち少なくとも一種を含むポリフェノール化合物(ただし、ジヒドロケルセチンを除く)と、アルカリ物質とを、酸化を抑制する対象物への添加成分として含むことを特徴とする。
ここで、ポリフェノール化合物とは、同一分子内に2個以上のフェノール性水酸基(ベンゼン環、ナフタリン環などの芳香族環に結合した水酸基)をもつ化合物の総称であり、その構造により、フェニルカルボン酸化合物、リグナン化合物、クルクミン化合物、クマリン化合物、フラボノイド化合物に分類される。これらの中でも、代表的なポリフェノール化合物であるフラボノイド系化合物は、以下の一般式に示すように、A環とB環の2つのベンゼン環を3個の炭素原子でつないだジフェニルプロパン構造を有するフェニル化合物群の総称である。
Figure 0006785083
フラボノイド化合物は、3個の炭素原子からなるC環の構造によって、さらに、以下のように分類される。(a)C環に1個の2重結合を有し、C環4位にカルボニル基を有するフラボン、(b)フラボンのC環3位に水酸基が結合したフラボノール、(c)フラボンで、B環の結合位置がC環2位から3位に置き換わったイソフラボン、(d)C環に2重結合もカルボニル基も含まれないフラバン、(e)フラバンのC環3位に水酸基が結合したフラバノール(カテキン)、(f)C環4位にカルボニル基を有するフラバノン、(g)フラバノンのC環3位に水酸基が結合したフラバノノール、(h)フラボンのC環1位の酸素が還元され、2位で開環したカルコン、(i)C環に2個の2重結合を有し、C環1位の酸素が+に荷電したアントシアニジンに分類される。なお、カルコンに関しては、酸性下では、環が閉じ、フラバノンとなる。
このような、ポリフェノール化合物(A)としては、例えば、ケンフェロール、ケルセチン、(+)−カテキン、エピカテキン、ダイゼイン、4’−ヒドロキシフラバノン、6−ヒドロキシフラバノン、アピゲニン、バイカレイン、ヘスペレチン、ナリンゲニン、エリオジクチオール等が例示される。ポリフェノール化合物(B)としては、例えば、ジヒドロミリセチン等が例示される。ポリフェノール化合物(C)としては、例えば、イソリキリチゲニン、ブテイン等が例示される。
本発明では、ポリフェノール化合物として、上記の様々な種類のフラボノイド化合物、カルコン化合物、さらにはそれらの配糖体についてもフラボノイド化合物に含むものとする。
これらのポリフェノール化合物としては、例えば、化学合成によって得られた純度95%以上の合成品、さらには純度98%以上である高純度の合成品や、複数のポリフェノール化合物の合成品を含有している混合物、該ポリフェノール化合物を含有する植物の葉、花、種子、茎、根等の各部位を溶媒によって抽出することで得られる抽出物、該抽出物を精製することで得られる高純度(95%以上)の天然物およびその混合物等を用いることが例示される。
植物の各部位からのポリフェノール化合物の抽出方法としては、例えば、有機溶媒、水またはこれらの混合溶媒による抽出方法や、二酸化炭素や水を用いた亜臨界抽出、臨界抽出等の方法も例示される。
有機溶媒抽出に用いられる溶媒としては、安全性等の観点から、例えば、水、エタノール、酢酸エチル、アセトンおよびこれらの混合溶媒等が例示される。得られた抽出液については、必要に応じて、適宜、さらに濃縮し、蒸留、再結晶等の方法により精製することが好ましく考慮される。
ポリフェノール化合物を含有する植物抽出物を用いる場合、当該抽出物中のポリフェノール化合物の純度は50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましい。なお、当該抽出物中のポリフェノール化合物の純度の上限は100質量%である。
本発明の抗酸化剤を含有する油脂組成物およびこれを用いた油性食品においては、風味や食感の低下を抑制する観点から、ポリフェノール化合物として、高純度品を用いることが好ましく、特に、天然物の高純度品を用いることが好ましく考慮される。また、上記の観点から、ポリフェノール化合物の配合量は、対油20〜5000ppmの範囲内であることが好ましく、抗酸化能の観点から、50〜5000ppmであることがより好ましく、また油性食品としたときの風味、色相、コストの観点から50〜1000ppmであることがさらに好ましい。
本発明に用いるアルカリ物質は、食品に添加することが許容されており、アルカリ性を示すものであれば、特に制限されず、例えば、アルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩、有機酸塩、アルコキシド化合物、脂肪酸塩等が例示される。具体的には、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、乳酸ナトリウム、乳酸カリウム、オレイン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム等が例示される。これらのアルカリ物質は、単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。油性食品に添加することを考慮すると、強アルカリでは、油脂の加水分解を引き起こす可能性があることから、弱アルカリを用いることが好ましく考慮される。
このようなアルカリ物質は、油脂に添加することを考慮すると、油脂への分散性が良好である1価のカルボン酸塩およびアルカリ金属塩からなる群のうち少なくとも一種であることが好ましく考慮される。また、アルカリ物質を油脂中に均一に分散させることが好ましいため、溶媒に溶解し、アルカリ溶液として使用することが好ましい。
アルカリ物質の中でも、クエン酸塩やリン酸塩は、油脂への分散性が低いため、油脂に直接添加すると効果が得られにくいと考えられる。このような油脂への分散性の低いアルカリ物質を用いる場合には、1)アルカリ物質を一旦水に溶解させ、ポリフェノール化合物と接触させた後、乾燥化する方法や、2)油性食品の原料の中で、水分を含む原料にアルカリ物質を添加し、ポリフェノール化合物を含有する油脂組成物と混合して、加熱調理する方法等を適用することができる。このような方法を適用することにより、アルカリ物質を油性食品中に均一に分散させ、所定の抗酸化能(酸化安定性)を発揮することができる。
アルカリ物質の溶解に用いることができる溶媒としては、水、メタノールやエタノール等のアルコール類が例示されるが、特に、水を用いることが好ましく考慮される。これらの溶媒は単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。
アルカリ溶液の好ましい濃度としては、例えば、0.01〜5mol/Lの範囲が例示される。
また、本発明では、アルカリ性を示す乳化剤もアルカリ物質として使用することができる。食品への使用を考慮すると、食品添加物としての使用が許容されている乳化剤を用いることが好ましい。
アルカリ物質として、乳化剤を用いることで、ポリフェノール化合物の分散性が向上し、抗酸化能(酸化安定性)を向上させることができる。
このような乳化剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、レシチン等が挙げられる。これらの乳化剤は、単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。さらには、上記の乳化剤以外のアルカリ物質と併用することも可能である。
乳化剤としては、アルカリ物質を含有するものであれば、いずれの乳化剤でも用いることができ、特にアルカリ物質の含有量が高いものであると、添加量を少なくすることができ、乳化剤による異味を低減できるので好ましい。
上記の乳化剤のうち、酸化安定性を向上させる効果の観点から、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルおよびショ糖脂肪酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましく考慮される。
グリセリン脂肪酸エステルとしては、モノグリセリン脂肪酸エステル(モノグリセリド)、有機酸モノグリセリン脂肪酸エステルが挙げられる。より具体的には、例えば、モノグリセリンC8−C24脂肪酸エステル、酢酸モノグリセリンC8−C24脂肪酸エステル、クエン酸モノグリセリンC8−C24脂肪酸エステル、コハク酸モノグリセリンC8−C24脂肪酸エステル、ジアセチル酒石酸モノグリセリンC8−C24脂肪酸エステル、乳酸モノグリセリンC8−C24脂肪酸エステル等が例示される。
ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、例えば、グリセリンが2〜10個縮合したポリグリセリンに脂肪酸がエステル結合した化合物や、リシノール酸を3〜5個縮合したポリリシノール酸をポリグリセリンに結合した化合物であるポリグリセリン縮合リシノール酸エステル等が例示され、ポリグリセリンC8−C24脂肪酸エステルを用いることが好ましく考慮される。
ショ糖脂肪酸エステルとしては、ショ糖C8−C24脂肪酸エステルが挙げられる。(C8−C24は、結合している脂肪酸の炭素数を意味する。)
乳化剤は、特に酸化安定性が良好であるという観点から、ポリグリセリン脂肪酸エステル(ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル)、グリセリン脂肪酸エステル(有機酸モノグリセリン脂肪酸エステル、モノグリセリド)、ショ糖脂肪酸エステルが好適に用いられ、市販品としては、CR−ED(ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル、阪本薬品工業株式会社製)、ポエムPR−100(ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル、阪本薬品工業株式会社製)、サンソフト818H(ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル、太陽化学株式会社製)、ポエムV200(反応モノグリセライド、理研ビタミン株式会社製)、ポエムB−40(コハク酸モノグリセリン脂肪酸エステル、理研ビタミン株式会社製)、ER−290(ショ糖エルカ酸脂肪酸エステル、三菱化学フーズ株式会社製)などが挙げられる。
また油脂や、油性食品への添加という観点からは、乳化剤は、HLB値が7以下であることが好ましい。HLB値が7以下であれば、油性食品中への乳化剤の分散が良好となる。
また、本発明の抗酸化剤を油脂に添加しフライ油として用いる際には、褐変しづらいという観点から、乳化剤としてグリセリン脂肪酸エステル(有機酸モノグリセリン脂肪酸エステル、モノグリセリド)が好適に用いられる。
グリセリン脂肪酸エステル等の乳化剤は、グリセリンと脂肪酸にアルカリ触媒を添加して反応させることにより得られるので、乳化剤中に脂肪酸塩が残存していることが報告されている(例えば、特開2000−287631号公報等参照)。このような脂肪酸塩がアルカリ物質として機能していると考えられる。
乳化剤中のアルカリ物質の含有量については、「セッケン試験」(基準油脂分析試験法<公益社団法人日本油化学会> 2.6.2−1996<セッケン>)により測定することができる。
「セッケン試験」では、アルカリ含有量を塩酸で滴定、測定し、オレイン酸ナトリウム(セッケン)換算量として算出する。上記の乳化剤中のアルカリ物質としては、脂肪酸塩が主たるものであると考えられるが、他のアルカリが含有されていた場合にもオレイン酸ナトリウム換算量として測定される。このため、本明細書中では、既知のアルカリ物質の配合量についても、オレイン酸ナトリウム換算量(ppm)で表記している。
このようなアルカリ物質の油脂への配合量は、十分な酸化安定性の向上効果を得る点および抗酸化剤を含有する油性食品の風味の点から、オレイン酸ナトリウムとして、対油30〜10000ppmであることが好ましく、油性食品に用いた場合に、遊離脂肪酸による風味の劣化が発生しないという観点から500〜10000ppmであることがより好ましい。
ポリフェノール化合物とアルカリ物質との配合比としては、例えば、ポリフェノール化合物の配合量(ppm)×アルカリ物質の配合量(ppm)≧7000(ただし、ポリフェノール化合物の配合量は、10ppm以上、アルカリ物質の配合量は、37ppm以上、アルカリ物質の配合量はオレイン酸ナトリウム換算量)であることが例示される。
ポリフェノール化合物とアルカリ物質との配合比が上記の条件を満たしていれば、ポリフェノール化合物単独での添加またはアルカリ物質単独での添加した際の抗酸化能よりも高い抗酸化能が認められ、ポリフェノール化合物とアルカリ物質とによる相乗効果が発揮される。このため、本発明の抗酸化剤は、従来よりも油脂組成物およびこれを用いた油性食品の酸化安定性を向上させることが可能であり、長期にわたって酸化による風味および外観の変化を抑制することができ、しかも食品として摂取した際に安全である。
本発明の抗酸化剤は、食品用抗酸化剤であり、好ましくは油脂組成物用抗酸化剤、油性食品油用抗酸化剤である。本発明の抗酸化剤は、油脂組成物またはこの油脂組成物を含有する油性食品に配合すればよいが、食用油脂に含有させるのが好ましい。本発明の抗酸化剤を含有する油脂組成物は、酸化安定性が向上した油脂となる。また、本発明の抗酸化剤を含有する油脂組成物を含む油性食品は、酸化安定性が向上した食品となる。
本発明の抗酸化剤を含有する油脂としては、食用油脂であればよく、動物油脂、植物油脂を問わず、例えば大豆油、菜種油、綿実油、サフラワー油、コーン油、米油、オリーブ油、ゴマ油、ヤシ油、パーム油、パーム核油、シソ油等の植物油、マグロ油、イワシ油等の魚油、ラード、牛脂、乳脂等の動物油や、これら分別油、エステル交換油脂、硬化油等が挙げられる。
また、食品、特に油脂を含有する油性食品としては、クッキーやビスケット(クラッカーを含む)ケーキ類等の焼き菓子類、パン、蒸パン、蒸ケーキ、中華まん、蒸まんじゅう等の蒸し菓子、米菓、ドーナツ、チュロス等の揚げ菓子、アイスクリーム等の冷菓、加熱調理食品(ポテトチップス等のスナック菓子、フライドポテト、コロッケ、から揚げ、天ぷら、インスタントラーメン等のフライ麺等のフライ食品、お好み焼き、焼き肉などの焼き物、野菜炒め、焼きそばなどの炒め物、ソーセージやハンバーグ等の肉類、シチュー等)が挙げられる。このうち、油脂を加熱する工程を含む食品、例えば菓子類(クッキー、ビスケット、クラッカー、ケーキ等)、フライ食品、炒め物、焼き物、油脂をスプレーするスナック菓子、米菓等に用いるのが好ましく、さらに焼き菓子類(クッキー、ビスケット、クラッカー、ケーキ等)、フライ食品(フライ麺、ポテトチップス等)に用いるのがより好ましい。
本発明において酸化安定性の向上効果を得るには、油性食品の製造工程の任意の工程で、ポリフェノール化合物とアルカリ物質とを配合する工程を含めばよい。
例えば、油脂とポリフェノール化合物とアルカリ物質とを個別に配合すること、油脂にポリフェノール化合物、アルカリ物質のいずれか一方を添加し、いずれか一方を個別に配合すること、油脂にポリフェノール化合物とアルカリ物質とを配合すること等が例示される。また、焼き菓子類、フライ食品等の油脂の加熱工程を含む食品の場合には、焼き菓子類の練り込み用油脂や、フライ食品の揚げ油等の加熱調理用油脂の中にポリフェノール化合物とアルカリ物質を添加しておくのが好ましい。
アルカリ物質として、乳化剤を用いることで、本発明の抗酸化剤を食品に均一に分散させることができる。このため、油性食品において、バラツキなく抗酸化能を発揮させることができる。
これらの油性食品においても、ポリフェノール化合物とアルカリ物質の配合量、および配合比は、前記抗酸化剤の場合と同様である。
本発明の油脂組成物としては、前述の油脂にポリフェノール化合物とアルカリ物質とを配合し得ることができる。油脂組成物の製造方法としては、例えば、ポリフェノール化合物を分散させた油脂に、アルカリ物質を分散させる方法、アルカリ物質を分散させた油脂に、ポリフェノール化合物を分散させる方法、ポリフェノール化合物を分散させた油脂と、アルカリ物質を分散させた油脂とを混合する方法、ポリフェノール化合物とアルカリ物質とを混合した混合物を油脂に分散させる方法等が例示される。
また、ポリフェノールの分散性を向上させるために、エタノール、アルコール製剤などのアルコールや、水に分散させて配合することもできる。水を添加する場合は、長期保存性を考慮すると、脱水処理し使用することが好ましい。中でもポリフェノール化合物の分散性がより向上し、均一な製品が得られ、また脱水処理等を行わず使用できるという観点から、アルカリ物質を分散させた油脂に、エタノールに分散させたポリフェノール化合物を配合する方法がより好ましく考慮される。
本発明では、上記油脂組成物を急冷捏和し、可塑性油脂として使用することもできる。
また、上記油脂組成物に水相を添加した乳化物を急冷捏和し、可塑性油脂とすることもできる。
水相を含有する乳化物の形態としては油中水型、水中油型、油中水中油型、水中油中水型が挙げられ、水相の含有量は、好ましくは0.6〜40質量%、より好ましくは2〜35質量%である。水相を含有する形態としては油中水型が好ましく、マーガリンが例示される。
また油脂を可塑性油脂とした形態としてはショートニングも例示される。
可塑性油脂は、公知の方法により製造することができる。例えば本発明の油脂組成物を含む油相を加熱し、コンビネーター、パーフェクター、ボテーター、ネクサス等の冷却混合機により急冷捏和し得ることができる。また水相を含有する形態のものは、本発明の油脂組成物を含む油相と水相とを適宜に加熱し混合して乳化した後、コンビネーター、パーフェクター、ボテーター、ネクサス等の冷却混合機により急冷捏和し得ることができる。冷却混合機により急冷捏和後には、必要に応じて熟成(テンパリング)してもよい。
本発明の油脂組成物は、菓子に添加する場合は、菓子を製造する際の作業性と菓子へ均一に分散し、焼成品での酸化安定性がばらつくことがないという観点で可塑性油脂として添加することがより好ましい。
本発明の油脂組成物は、本発明の効果を損なわないものであれば、公知の酸化防止剤を併用することができる。併用する酸化防止剤としては、天然及び合成された酸化防止剤が使用でき、例えば、各種トコフェロール類(α、β、γ、δ 等)、L−アスコルビン酸ステアレート、L−アスコルビン酸パルミテート、エリソルビン酸ナトリウム、カテキン類等が挙げられる。
本発明の油脂組成物は、必要に応じて、香料、色素、シリコーン等を添加することができる。
以下、本発明の実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
なお、セッケン試験は基準油脂分析試験法(公益社団法人日本油化学会)の2.6.2−1996(セッケン)に従い測定した。
<実験1.各種ポリフェノール化合物による油脂の酸化安定性評価試験>
(参考例)
パーム油にアルカリ物質として、0.05%(w/w)の酢酸ナトリウム(AcONa、国産化学株式会社製、純度98.5%)、0.05%(w/w)オレイン酸ナトリウム(OleNa、和光純薬工業株式会社製、純度60.0%以上)、アルカリ性を示す市販の乳化剤である1%(w/w)のCR−ED(ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル、阪本薬品工業株式会社製)をそれぞれ溶解し、3種類の試料を得た。なお、上記のアルカリ物質、アルカリ性を示す乳化剤については、セッケン試験を行い、オレイン酸ナトリウム換算値を求めた。例えば、0.05%(w/w)の酢酸ナトリウムは、オレイン酸ナトリウム換算値が1828ppmであり、1%のCR−EDは、オレイン酸ナトリウム換算値が122ppmとなる。なお、上記のとおり、オレイン酸ナトリウムは、純度が60%以上であり、かつオレイン酸のほかにステアリン酸等も含むため、添加量が0.05%(w/w)であっても、オレイン酸ナトリウム換算値は449ppmとなる。
パーム油単独のCDM(hr)、得られた試料のCDM(hr)を測定した。CDMの測定は、基準油脂分析法およびアメリカ油化学協会法に公定法として収載された油脂の酸化安定性の評価方法であり、油脂の酸化により発生した揮発性分解物を純水中に捕集して、その導電率を継続的に測定し急激に変化率が上昇する屈曲点までの時間を求める方法である。[CDM試験(Conductometric Determination Method:ランシマット法]基準油脂分析試験法 2.5.1.2−1996(日本油化学会編)によりCDM値を求めた。具体的には、120℃に加熱した油脂に空気を吹き込み、酸化により生成した揮発性分解物を水中に捕集し、水の導電率が急激に変化する屈曲点までの時間(hr)を調べた。CDM値が高いほど油脂の酸化安定性が高いことを示す。
(実施例1)
パーム油にアルカリ物質として0.05%(w/w)の酢酸ナトリウムを溶解した後、ポリフェノール化合物として4’−ヒドロキシフラバノン(東京化成工業株式会社製、4’−ヒドロキシフラバノン含有量99.9%)の1%(w/v)エタノール溶液を調整し、パーム油100gに対し2mL添加して撹拌し、ポリフェノール量が対油200ppmである試料を得た。4’−ヒドロキシフラバノンのみを添加したパーム油のCDM(hr)、得られた試料のCDM(hr)を測定した。また、以下の計算式から、ポリフェノール化合物とアルカリ物質との相乗効果について算出した。
{(ポリフェノール化合物とアルカリ物質併用時のCDM)−(パーム油単独のCDM)}―{(ポリフェノール化合物添加時のCDM)−(パーム油単独のCDM)}―{(アルカリ物質添加時のCDM)−(パーム油単独のCDM)}…(1)
(実施例2)
ポリフェノール化合物を6−ヒドロキシフラバノン(東京化成工業株式会社製、6−ヒドロキシフラバノン含有量99.3%)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、6−ヒドロキシフラバノンのみを添加したパーム油のCDM(hr)、得られた試料のCDM(hr)を測定した。また、ポリフェノール化合物とアルカリ物質との相乗効果について算出した。
(実施例3)
ポリフェノール化合物をダイゼイン(東京化成工業株式会社社製、ダイゼイン含有量99.9%)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、ダイゼインのみを添加したパーム油のCDM(hr)、得られた試料のCDM(hr)を測定した。また、ポリフェノール化合物とアルカリ物質との相乗効果について算出した。
(実施例4)
パーム油にアルカリ物質として、0.05%(w/w)の酢酸ナトリウム、0.05%(w/w)オレイン酸ナトリウム、1%(w/w)のCR−ED(阪本薬品工業株式会社社製、主成分としてポリグリセリン縮合リシノール酸エステルを含有する)をそれぞれ溶解し、ポリフェノール化合物をアピゲニン(和光純薬工業株式会社社製、アピゲニン含有量99.3%)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、アピゲニンのみを添加したパーム油のCDM(hr)、得られた試料のCDM(hr)を測定した。また、ポリフェノール化合物とアルカリ物質との相乗効果について算出した。
(実施例5)
ポリフェノール化合物をバイカレイン(東京化成工業株式会社社製、バイカレイン含有量98.8%)に変更したこと以外は、実施例4と同様にして、バイカレインのみを添加したパーム油のCDM(hr)、得られた試料のCDM(hr)を測定した。また、ポリフェノール化合物とアルカリ物質との相乗効果について算出した。
(実施例6)
ポリフェノール化合物をヘスペレチン(和光純薬工業株式会社製、ヘスペレチン含有量99.6%)に変更したこと以外は、実施例4と同様にして、ヘスペレチンのみを添加したパーム油のCDM(hr)、得られた試料のCDM(hr)を測定した。また、ポリフェノール化合物とアルカリ物質との相乗効果について算出した。
(実施例7)
ポリフェノール化合物をナリンゲニン(東京化成工業株式会社製、ナリンゲニン含有量95.8%)に変更したこと以外は、実施例4と同様にして、ナリンゲニンのみを添加したパーム油のCDM(hr)、得られた試料のCDM(hr)を測定した。また、ポリフェノール化合物とアルカリ物質との相乗効果について算出した。
(実施例8)
ポリフェノール化合物をケンフェロール(東京化成工業株式会社製、ケンフェロール含有量99.8%)に変更したこと以外は、実施例4と同様にして、ケンフェロールのみを添加したパーム油のCDM(hr)、得られた試料のCDM(hr)を測定した。また、ポリフェノール化合物とアルカリ物質との相乗効果について算出した。
(実施例9)
ポリフェノール化合物をエリオジクチオール(PhytoLab GmbH & Co. KG製、エリオジクチオール含有量100%)に変更したこと以外は、実施例4と同様にして、エリオジクチオールのみを添加したパーム油のCDM(hr)、得られた試料のCDM(hr)を測定した。また、ポリフェノール化合物とアルカリ物質との相乗効果について算出した。
(実施例10)
パーム油にアルカリ物質として、0.05%(w/w)オレイン酸ナトリウム、1%(w/w)のCR−EDをそれぞれ溶解し、ポリフェノール化合物をケルセチン(東京化成工業株式会社製、ケルセチン含有量99.4%)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、ケルセチンのみを添加したパーム油のCDM(hr)、得られた試料のCDM(hr)を測定した。また、ポリフェノール化合物とアルカリ物質との相乗効果について算出した。
(実施例11)
ポリフェノール化合物を(+)−カテキン(東京化成工業株式会社製、(+)−カテキン含有量99.8%)に変更したこと以外は、実施例4と同様にして、(+)−カテキンのみを添加したパーム油のCDM(hr)、得られた試料のCDM(hr)を測定した。また、ポリフェノール化合物とアルカリ物質との相乗効果について算出した。
(実施例12)
ポリフェノール化合物をエピカテキン(和光純薬工業株式会社製、エピカテキン含有量100%)に変更したこと以外は、実施例4と同様にして、エピカテキンのみを添加したパーム油のCDM(hr)、得られた試料のCDM(hr)を測定した。また、ポリフェノール化合物とアルカリ物質との相乗効果について算出した。
(実施例13)
パーム油にアルカリ物質として、1%(w/w)のCR−EDを溶解し、ポリフェノール化合物をジヒドロミリセチン(PhytoLab GmbH & Co. KG製、ジヒドロミリセチン含有量98.7%)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、ジヒドロミリセチンのみを添加したパーム油のCDM(hr)、得られた試料のCDM(hr)を測定した。また、ポリフェノール化合物とアルカリ物質との相乗効果について算出した。
(実施例14)
ポリフェノール化合物をイソリキリチゲニン(東京化成工業株式会社製、イソリキリチゲニン含有量97.1%)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、イソリキリチゲニンのみを添加したパーム油のCDM(hr)、得られた試料のCDM(hr)を測定した。また、ポリフェノール化合物とアルカリ物質との相乗効果について算出した。尚、イソキリチゲニンは、カルコン化合物である。
(実施例15)
ポリフェノール化合物をブテイン(東京化成工業株式会社製、ブテイン含有量99.8%)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、ブテインのみを添加したパーム油のCDM(hr)、得られた試料のCDM(hr)を測定した。また、ポリフェノール化合物とアルカリ物質との相乗効果について算出した。尚、ブテインは、カルコン化合物である。
(比較例1)
ポリフェノール化合物をジヒドロロビネチン(EXTRASYNTHES社製、ジヒドロロビネチン含有量95%)に変更したこと以外は、実施例4と同様にして、ジヒドロロビネチンのみを添加したパーム油のCDM(hr)、得られた試料のCDM(hr)を測定した。また、ポリフェノール化合物とアルカリ物質との相乗効果について算出した。
(比較例2)
パーム油にアルカリ物質として、0.05%(w/w)の酢酸ナトリウム、0.05%(w/w)オレイン酸ナトリウムをそれぞれ溶解し、ポリフェノール化合物をミリセチン(東京化成工業株式会社製、ミリセチン含有量97.8%)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、ミリセチンのみを添加したパーム油のCDM(hr)、得られた試料のCDM(hr)を測定した。また、ポリフェノール化合物とアルカリ物質との相乗効果について算出した。
(比較例3)
ポリフェノール化合物をエピガロカテキン(和光純薬工業株式会社製、エピガロカテキン含有量100%)に変更したこと以外は、実施例4と同様にして、エピガロカテキンのみを添加したパーム油のCDM(hr)、得られた試料のCDM(hr)を測定した。また、ポリフェノール化合物とアルカリ物質との相乗効果について算出した。
(比較例4)
ポリフェノール化合物をエピガロカテキンガレート(東京化成工業株式会社製、エピガロカテキンガレート含有量98.8%)に変更したこと以外は、実施例4と同様にして、エピガロカテキンガレートのみを添加したパーム油のCDM(hr)、得られた試料のCDM(hr)を測定した。また、ポリフェノール化合物とアルカリ物質との相乗効果について算出した。
(比較例5)
ポリフェノール化合物をフラバノン(東京化成工業株式会社製、フラバノン含有量99.8%)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、フラバノンのみを添加したパーム油のCDM(hr)、得られた試料のCDM(hr)を測定した。また、ポリフェノール化合物とアルカリ物質との相乗効果について算出した。
(比較例6)
パーム油にアルカリ物質として、0.05%(w/w)酢酸ナトリウム、1%(w/w)のCR−EDをそれぞれ溶解し、ポリフェノール化合物をクロロゲン酸(和光純薬工業株式会社製、クロロゲン酸含有量99.8%)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、クロロゲン酸のみを添加したパーム油のCDM(hr)、得られた試料のCDM(hr)を測定した。また、ポリフェノール化合物とアルカリ物質との相乗効果について算出した。
上記の参考例、実施例1〜15および比較例1〜6のCDMの測定結果、ポリフェノール化合物とアルカリ物質併用時の相乗効果について、表1に示す。
Figure 0006785083
<実験2.アルカリ物質の添加量を変化させた場合の酸化安定性の評価>
パーム油に対するアルカリ物質の添加量を変化させた場合の酸化安定性の変化について実験1.と同様にして評価した。アルカリ物質としては、CR−ED、酢酸ナトリウム(AcONa)、水酸化ナトリウム(NaOH)をそれぞれ、オレイン酸ナトリウム換算量で30、100、500、2000、5000、10000、15000ppm添加した。ポリフェノール化合物としては、実施例7と同様に200ppmのナリンゲニンを用いた。結果を表2〜4に示す。
Figure 0006785083
Figure 0006785083
Figure 0006785083
表2に示すように、アルカリ物質としてCR−EDを用いた場合、見かけのCDMの値は、アルカリ物質量として、10000ppmまでは、濃度依存的な上昇を続けることが確認された。しかしながら、CR−EDとナリンゲニンの相乗効果については、オレイン酸ナトリウム換算量で5000ppmまでは濃度依存的にCDMの値が増大し、酸化安定性も向上しているが、10000ppmおよび15000ppmの高濃度のCR−EDを添加した場合には、ナリンゲニンとの相乗効果が低下する傾向にあることが確認された。
表3に示すように、アルカリ物質として、酢酸ナトリウムを用いた場合、見かけのCDMの値は、濃度依存的な上昇を続け、しかも、CR−ED添加時よりも高い値を示すことが確認された。さらに、酢酸ナトリウムとナリンゲニンの相乗効果についても、酢酸ナトリウムの濃度依存的にCDMの値が増大し、酸化安定性も向上していることが確認された。
表4に示すように、アルカリ物質として、水酸化ナトリウムを用いた場合、酢酸ナトリウムを用いた場合と同様に、見かけのCDMの値と、水酸化ナトリウムとナリンゲニンを併用したときの相乗効果を示すCDMの値のいずれもが、濃度依存的に増大し、酸化安定性も向上していることが確認された。一方で、アルカリ物質としてCR−EDおよび酢酸ナトリウムを用いた場合よりも、見かけのCDMの値は低い水準で推移していることが確認された。
上記の3種類のアルカリ物質とナリンゲニン併用時の相乗効果を示すCDMの値のグラフを図1に示す。
図1に示すように、アルカリ物質として、酢酸ナトリウムまたは水酸化ナトリウムを添加した場合、その添加量に応じてCDM延長の相乗効果が増大することが確認された。一方、アルカリ物質を含有する乳化剤であるCR−EDを添加した場合、オレイン酸ナトリウム換算量で5000ppmまでは添加量に応じてCDM延長の相乗効果が認められるが、10000ppm以上の添加では、CDM延長の相乗効果が減ぜられることが確認された。
<実験3.ポリフェノール化合物の添加量を変化させた場合の酸化安定性の評価>
パーム油に対するポリフェノール化合物の添加量を変化させた場合の酸化安定性の変化について実験1.と同様にして評価した。ポリフェノールとしては、ナリンゲニンを20、50、200、500、1000、2000ppm添加した。尚、ナリンゲニンの調整については、実施例7と同様に1%(w/v)エタノール溶液を用いた。アルカリ物質としては、酢酸ナトリウムをオレイン酸ナトリウム換算として、1828ppmとなるように添加した。結果を表5に示す。
Figure 0006785083
表5に示すように、ナリンゲニンの添加量が増大するにつれて、CDM延長の相乗効果が増大することが確認された。
<実験4.ポリフェノール化合物とアルカリ物質を併用したフライ試験>
表6に示す、6種のフライ油を作製し、フライ試験を行った。
パーム油のみのもの、パーム油に、ポリフェノール化合物として、ナリンゲニンまたはエピガロカテキンガレート(EGCg)を200ppm、アルカリ物質として酢酸ナトリウム500ppmを混合、添加しフライ油を得た。尚、ナリンゲニン、エピガロカテキンガレート(EGCg)の調整については、実施例7、比較例4と同様に1%(w/v)エタノール溶液を用いた。
得られたフライ油を用いフライ麺を製造し、そのCDM(hr)を測定した。
<フライ麺の製造>
市販のなま中華麺(八番麺工房)一人前(約130g)を熱湯で1分間茹でた後、140℃のフライ油で3分間フライし、フライ麺を得た。
<CDM測定>
フライ麺を細かく砕き、3gを使用しフライ麺のCDMを測定した。結果を表6に示す。
Figure 0006785083
<色調変化の評価>
フライ試験の際に、フライ麺を入れる前のフライ油(140℃、5分加熱したフライ油)を、ロビボンド比色計により、5.25インチセルを用いて基準油脂分析試験法(公益社団法人日本油化学会)の2.2.11−1996(ロビボンド法)に従い、これらのサンプル油脂組成物の色調を表7に示す。
Figure 0006785083
表6に示すように、油脂にポリフェノール化合物とアルカリ物質を配合したフライ油を用いて製造したフライ麺では、油脂のみのフライ油で製造したフライ麺に比べCDMが延長することが確認された。
また、表7に示すように、色調変化の評価では、エピガロカテキンガレートは、着色が激しく、測定不能であった。
このため、油脂組成物だけでなく、油脂組成物を用いたフライ食品等の油性食品においても本発明は抗酸化能と、色調変化が少ないという効果があることが確認された。
<実験5.油脂組成物の経時的な色調変化の評価>
パーム油に、ポリフェノール化合物としてナリンゲニン200ppm(ナリンゲニンは実施例7と同様に1%(w/v)エタノール溶液を用いた。)と、アルカリ物質としてCR−ED1%添加したサンプルAと、ポリフェノール化合物を200ppmのエピガロカテキンガレート(エピガロカテキンガレートは比較例4と同様に1%(w/v)エタノール溶液を用いた。)に変更したこと以外は、サンプルAと同様に調製したサンプルBを60℃の恒温槽の内部に3日間静置した後、ロビボンド比色計により、5.25インチセルを用いて基準油脂分析試験法(公益社団法人日本油化学会)の2.2.11−1996(ロビボンド法)に従い、これらのサンプル油脂組成物の色調を評価した。結果を表8に示す。
Figure 0006785083
表8に示すように、ナリンゲニンを含有するサンプルAでは、ロビボンド比色計によるR値が1.9、Y値が18となり、高温下に長時間さらされても、油脂組成物の着色はほぼないことが確認された。一方、茶抽出物であるエピガロカテキンガレートを含有するサンプルBでは、ロビボンド比色計によるR値が8.8、Y値が54となり、油脂組成物が赤褐色に変化することが確認された。これは、ポリフェノール化合物の中でも、エピガロカテキンガレートを含むカテキン類については、油脂組成物の褐変を抑制する機能が低いことを示していると考えられる。
したがって、油性食品の調理に用いる油脂組成物には、カテキン類以外のポリフェノール化合物を添加することが好ましいと考えられる。
<実験6.各種乳化剤による酸化安定性の評価>
(参考例)
パーム油にアルカリ物質として、アルカリ性を示す市販の乳化剤である対油6.67%(w/w)のポエムV200(反応モノグリセライド、理研ビタミン株式会社製)、対油2.32%(w/w)のER−290(ショ糖エルカ酸脂肪酸エステル、三菱化学フーズ株式会社製)、をそれぞれ溶解し、2種類の試料を得た。なお、上記のアルカリ物質であるアルカリ性を示す乳化剤については、セッケン試験を行い、オレイン酸ナトリウム換算値を求めた。例えば、ポエムV200は、オレイン酸ナトリウム換算値が1826ppm、ER−290は、5252ppmとなる。
なお、各乳化剤の添加量は、実験1.における乳化剤であるCR−ED(ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル)と同様に、オレイン酸ナトリウム換算値で122ppmとなるように調整した。結果を表9に示す。
Figure 0006785083
表9より、乳化剤の種類によらず、アルカリ性を示す乳化剤であれば、本発明のポリフェノール化合物と併用することで、抗酸化能の向上が確認できた。

Claims (4)

  1. 食用油脂の酸化を抑制する抗酸化剤と、食用油脂とを含有する油脂組成物であって、
    前記抗酸化剤は、水酸基を1〜5個含有し、B環にガレート構造を持たないフラボノイド化合物(ただし、カルコン化合物を除く)、水酸基を6個含有し、C環にカルボニル基を有し、C環の2位の炭素と3位の炭素との間に炭素−炭素二重結合を持たないフラボノイド化合物、カルコン化合物からなる群のうち少なくとも一種を含むポリフェノール化合物(ただし、ジヒドロケルセチンを除く)と、アルカリ物質とを含み、
    前記ポリフェノール化合物の配合量が対油20〜5000ppmである油脂組成物
  2. 前記アルカリ物質が、1価のカルボン酸塩およびアルカリ金属塩からなる群のうち少なくとも一種である請求項1に記載の油脂組成物
  3. 前記アルカリ物質の配合量が、オレイン酸ナトリウムとして、対油30〜10000ppmである請求項1または2に記載の油脂組成物。
  4. 請求項1から3のいずれか一項に記載の油脂組成物を含有する油性食品
JP2016150602A 2016-07-29 2016-07-29 抗酸化剤、抗酸化剤を含有する油脂組成物およびこれを含有する油性食品 Active JP6785083B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2016150602A JP6785083B2 (ja) 2016-07-29 2016-07-29 抗酸化剤、抗酸化剤を含有する油脂組成物およびこれを含有する油性食品

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2016150602A JP6785083B2 (ja) 2016-07-29 2016-07-29 抗酸化剤、抗酸化剤を含有する油脂組成物およびこれを含有する油性食品

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2018016776A JP2018016776A (ja) 2018-02-01
JP6785083B2 true JP6785083B2 (ja) 2020-11-18

Family

ID=61081352

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2016150602A Active JP6785083B2 (ja) 2016-07-29 2016-07-29 抗酸化剤、抗酸化剤を含有する油脂組成物およびこれを含有する油性食品

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6785083B2 (ja)

Family Cites Families (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH02214780A (ja) * 1989-02-14 1990-08-27 San Ei Chem Ind Ltd アントシアン色素の安定化法
WO1996002609A1 (fr) * 1994-07-15 1996-02-01 Otsuka Pharmaceutical Co., Ltd. Agent gonflant contenant un antioxydant
CA2375929C (en) * 1999-06-16 2009-09-01 Kao Corporation Fat composition
JP2008156278A (ja) * 2006-12-22 2008-07-10 Takasago Internatl Corp 二剤型抗酸化剤組成物およびそれを含有する抗酸化製品
EP2850949B1 (en) * 2012-05-16 2019-02-06 Fuji Oil Holdings Inc. Edible fat or oil and process for producing same
JP5786215B1 (ja) * 2015-02-09 2015-09-30 フードテック・トレーディング株式会社 抗酸化剤組成物およびそれを添加した油脂

Also Published As

Publication number Publication date
JP2018016776A (ja) 2018-02-01

Similar Documents

Publication Publication Date Title
de Oliveira et al. Use of natural antioxidants in the inhibition of cholesterol oxidation: A review
AU2018202247B2 (en) Fat containing polyunsaturated fatty acid
CA2375929C (en) Fat composition
Albertos et al. Carob seed peel as natural antioxidant in minced and refrigerated (4 C) Atlantic horse mackerel (Trachurus trachurus)
JP5652557B2 (ja) 食用油脂及びそれを含有する食品並びにその製造方法
JP2005298816A (ja) 劣化防止剤
Kapadiya et al. Spices and herbs as a source of natural antioxidants for food
CN109022148B (zh) 四元复配抗氧化剂、其制备方法及用途
EP3329784A1 (en) Antioxidant composition for oil, preparation method therefor, cooking oil containing same, and method for preparing cooking oil
JP6303253B2 (ja) 食用油脂及びそれを含有する食品
Makris et al. Plant-derived antioxidants as food additives
KR102379302B1 (ko) 고온 튀김용 유지조성물 및 그의 제조방법
JP5765476B2 (ja) 多価不飽和脂肪酸含有食用植物油脂
Niklová et al. Effect of evening primrose extracts on oxidative stability of sunflower and rapeseed oils
JP6459161B2 (ja) 製菓用油脂及びそれを利用した食品
JP5343751B2 (ja) 食品改質剤
CN106889206B (zh) 一种煎炸专用油
JP6785083B2 (ja) 抗酸化剤、抗酸化剤を含有する油脂組成物およびこれを含有する油性食品
JP5786215B1 (ja) 抗酸化剤組成物およびそれを添加した油脂
JP6761623B2 (ja) 食品用抗酸化剤
JP6817014B2 (ja) 抗酸化剤、抗酸化剤を含有する油脂組成物およびこれを含有する油性食品
JP6304451B2 (ja) コーヒークリーム用油脂組成物
JP2022030447A (ja) 動物性油脂用の抗酸化剤
JP6461471B2 (ja) 酸化劣化が抑制された乳製品
TR201619861A2 (tr) Aktioksidanca Zenginleştirilmiş ve Okside Olmayan Kızartmalık Yağ ve Bu Yağın Üretim Metodu

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20190402

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20200130

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20200225

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20200420

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20200526

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20200820

C60 Trial request (containing other claim documents, opposition documents)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: C60

Effective date: 20200820

A911 Transfer to examiner for re-examination before appeal (zenchi)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A911

Effective date: 20200828

C21 Notice of transfer of a case for reconsideration by examiners before appeal proceedings

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: C21

Effective date: 20200901

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20201020

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20201026

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6785083

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250