JP6783704B2 - 陰イオン選択性電極及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、陰イオン選択性電極及びその製造方法に関する。
イオン選択性電極は、液中の特定のイオン濃度を選択的に定量できるため、水質分析や医療分野などの広い分野で使用されている。特に、医療分野では、生体の代謝反応とイオン濃度との間に密接な関係があるため、血液や尿などの生体試料中に含まれる特定のイオンを定量することで、高血圧症状、腎疾患、神経障害などを診断することができる。臨床検査において多数の検体を連続して分析する必要があるため、イオン選択性電極を搭載した高スループットの自動分析装置又は電解質濃度測定装置が日常的に使われている。
測定項目として、主にナトリウムイオン、カリウムイオンなどの陽イオンと塩素イオンなどの陰イオンが測定されている。陽イオンに関しては、クラウンエーテルやバリノマイシンなど特定の陽イオンを選択的に補足するがそれ自体は電荷を持たないニュートラルキャリア分子が見出されている。ナトリウムやカリウムなどの陽イオン選択性電極のイオン感応膜には一般的にこれらのニュートラルキャリア分子を含む膜が使用されており、当該イオン感応膜は高いイオン選択性を有している。一方で、陰イオンに関しては、高スループットの速い応答性が求められる自動分析装置のイオン選択性電極に適したニュートラルキャリアはなく、種々の構成のイオン感応膜が用いられている。
例えば、特許文献1には、陰イオン交換膜をベースとし、その表面にメタフェニレンジアミンとホルムアルデヒドとの縮合物を被覆させた塩素イオン感応膜が記載されている。
また、特許文献2には、4級アンモニウムイオンを含むエポキシ樹脂をベースとした陰イオン感応膜が記載されている。
さらに、非特許文献1には、4級アンモニウムイオンを含むエポキシ樹脂をベースとした陰イオン感応膜について、可塑剤を加えることで、測定電位が安定するまでの時間(プレコンディショニング時間)を3時間以上から数分に短縮することが開示されている。
特許第3812049号公報 特開2003−215087号公報
Anal. Chem. 2004, 76, 4217−4222
自動分析装置の分析対象である血液には、陰イオンとして、塩素イオンの他に重炭酸イオンが多く含まれる。例えば、塩素イオン選択性電極を用いて、塩素イオン濃度を定量する際、重炭酸イオンに対しては感度が低く、塩素イオンに対しては感度の高い特性、つまり塩素イオン選択性に対して重炭酸イオン選択性が低いことが必要となる。キャリブレーションや濃度計算などによって補正することで妨害イオンの影響を低減する方法もあるが、より正確に塩素イオン濃度を測定するためには、より高いイオン選択性が求められる。
上記の非特許文献1のように、エポキシ樹脂をベースとしたイオン感応膜のイオン選択性は優れているが、当該イオン感応膜を装置に搭載してから測定電位が安定するまでに時間がかかる。実際に、自動分析装置では、電極を搭載してから数分〜数十分で測定が始まるため、電位が安定するまでの時間は早いほうが良い。非特許文献1では可塑剤又は溶剤を膜成分として加えることで、電位安定化までの時間を短縮できることを示しているが、可塑剤又は溶剤などの低分子量成分は、膜中に固定化されていないため、保管中や使用中に成分が抜け出し、電極性能が変化することが懸念される。
一方、イオン交換膜をベースとしたイオン感応膜は、高密度の固定電荷を有しており、含水しやすい。そのため、このイオン感応膜に関しては、電位が安定するまでの時間が短いが、イオン選択性が乏しい。そのため、特許文献1では、メタフェニレンジアミンとホルムアルデヒドの縮合物で被覆することでイオン選択性を向上させている。自動分析装置用のイオン選択性電極としては十分な性能を有しているが、更なるイオン濃度測定の分析精度及び信頼性の向上には、イオン選択性電極のイオン選択性及び長期安定性の向上が必要であった。
そこで、以下では、高いイオン選択性を有し、電位が安定するまでの時間が短い陰イオン選択性電極及びその製造方法を開示する。
例えば、上記課題を解決するために、特許請求の範囲に記載の構成を採用する。本願は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例をあげるならば、内部液を入れる空間を有する電極筐体と、前記内部液に接する内部電極と、第1面と、前記第1面に対して反対側に位置する第2面とを有し、前記内部液と試料液との間に配置された陰イオン交換膜と、を有し、前記内部液は、前記陰イオン交換膜の前記第1面の一部に接し、前記陰イオン交換膜の前記第2面の一部は、前記試料液と接することができるように露出しており、前記陰イオン交換膜は、陰イオン交換樹脂膜を有し、前記陰イオン交換膜の前記第2面の少なくとも一部がエポキシアミン樹脂で被覆されている、陰イオン選択性電極が提供される。
また、他の例によれば、電極筐体に設けられた開口部を塞ぎ、かつ、試料液に接することができるように陰イオン交換膜を前記電極筐体に配置する工程であって、前記陰イオン交換膜は、陰イオン交換樹脂膜を有する、配置する工程と、前記電極筐体の内部を内部液で充填する工程と、前記内部液に接するように内部電極を前記電極筐体に取付ける工程とを含み、前記配置する工程の前、又は、前記配置する工程の後において、前記陰イオン交換樹脂膜の前記試料液に接触する側の表面にエポキシアミン樹脂を塗布するステップと、前記エポキシアミン樹脂を硬化させるステップとを含む陰イオン選択性電極の製造方法が提供される。
本発明によれば、高いイオン選択性を有し、電位が安定するまでの時間が短い陰イオン選択性電極及びその製造方法を提供することができる。本発明に関連する更なる特徴は、本明細書の記述、添付図面から明らかになるものである。また、上記した以外の、課題、構成及び効果は、以下の実施例の説明により明らかにされる。
一実施例のフロー型陰イオン選択性電極の正面図である。 図1のA−A’断面の模式図である。 図2のB−B’断面の模式図である。 一実施例のイオン感応膜の構成に係る断面図である。 一実施例のイオン感応膜の構成に係る断面図である。 比較例1のイオン感応膜の構成に係る断面図である。 比較例2のイオン感応膜の構成に係る断面図である。 比較例3のイオン感応膜の構成に係る断面図である。 一実施例のスティック型陰イオン選択性電極に係る断面図である。 実施例1〜3と比較例1〜2に関するスロープ感度の評価結果である。 実施例1〜3と比較例1〜2に関する塩素イオン(Cl)に対する重炭酸イオン(HCO )選択性の測定結果である。 実施例2、比較例2及び比較例3の電極に関して電気抵抗値を測定した結果である。 実施例2、比較例2及び比較例3の電極を装置に搭載した直後の電位安定性の実験結果である。 実施例3の電極について管理血清を用いて負荷試験を実施した後にスロープ感度を評価した結果である。 実施例3の電極について管理血清を用いて負荷試験を実施した後に重炭酸イオン選択性を評価した結果である。 実施例4のスティック型電極の重炭酸イオン選択性の評価結果である。
以下、添付図面を参照して本発明の実施例について説明する。添付図面は本発明の原理に則った具体的な実施例を示しているが、これらは本発明の理解のためのものであり、決して本発明を限定的に解釈するために用いられるものではない。
[第1実施例]
図1は、一実施例のフロー型陰イオン選択性電極の正面図である。図2は図1のA−A’断面の模式図、図3は図2のB−B’断面の模式図である。
本実施例のフロー型陰イオン選択性電極は、電極筐体10を備える。電極筐体10は、内部液(以下の内部ゲル16)を入れる空間となる内部液空間11と、当該電極筐体10を貫通する流路12とを有している。測定対象の試料液は流路12を通る。また、内部液空間11は、電解質を含んだ内部ゲル16によって満たされている。電極筐体10は、その内部ゲル16と接するように内部電極13を備える。内部電極13は、内部ゲル16を内部液空間11に閉じ込めるためのフタ18に接着されている。
内部液空間11と試料液が通る流路12との間にイオン感応膜17が配置されている。イオン感応膜17は、流路12を通過する試料液に接することができるように配置されている。また、内部ゲル16は、イオン感応膜17によって、流路12を通る試料液に接しないように電極筐体10内で隔離されている。また、電極筐体10は、流路12の出入り口の近傍において、装置もしくは他の電極の流路と連結できるようパッキン15を有している。
なお、本実施例の陰イオン選択性電極は、例えば、自動分析装置に搭載され、内部電極13が装置側の配線と接続される。これにより、自動分析装置は、試料液中に含まれる測定対象イオンの濃度に応じて発生した電位を測定でき、測定対象イオンの濃度を分析できる。
図4は、図3のC部分を拡大した模式図であり、本実施例に特徴的なイオン感応膜17の層構造を示している。以下では、本実施例の陰イオン選択性電極の製造方法を説明する。
まず、固定化されたカチオンを有する陰イオン交換樹脂膜を用意する。本例において、イオン感応膜17は、陰イオン交換樹脂膜(陰イオン交換膜1)を基材とする。この例では、陰イオン交換樹脂膜は、ベンジルトリメチルアンモニウム基を有する強塩基性陰イオン交換膜であり、補強材としてPVC系合成繊維布を含む。また、陰イオン交換樹脂膜に固定化された陽イオンが4級アンモニウムイオンである。
陰イオン交換膜1は、第1面1aと、第1面1aに対して反対側に位置する第2面1bとを有する。陰イオン交換膜1の第2面1bに、エポキシ主剤とアミン系硬化剤との混合物で粘度30Pa・sの液体を均一に塗布する。したがって、イオン感応膜17は、陰イオン交換膜1と、その表面に塗布されたエポキシアミン樹脂層5とを有する。この例では、エポキシアミン樹脂層5は、エポキシ主剤とアミン系硬化剤とを含む重合反応生成物である。
イオン感応膜17は、塗布したエポキシアミン樹脂層5が電極筐体10に接するように配置される。このとき、電極筐体10に設けられた開口部(すなわち、流路12となる開口部)を塞ぐように、イオン感応膜17と電極筐体10とを密着させ、40℃、12時間の条件でエポキシアミン樹脂層5を硬化させる。このとき、電極筐体10と陰イオン交換膜1との接着部分にもエポキシアミン樹脂層5が配置されるため、陰イオン交換膜1と電極筐体10とを接着することもできる。
その後、電極筐体10の内部液空間11に内部ゲル16を満たす(図2及び図3参照)。内部ゲル16は、イオン感応膜17によって、流路12を通る試料液に接しないように電極筐体10内で隔離される。陰イオン交換膜1の第1面1aの少なくとも一部は、内部ゲル16に接する。一方、陰イオン交換膜1の第2面1bにあるエポキシアミン樹脂層5の一部は、流路12を通る試料液に接することができるように露出している。なお、本例では、エポキシアミン樹脂層5が、陰イオン交換膜1の第2面1bにおいて、流路12側の開口部分の全面を覆うように配置されている。なお、エポキシアミン樹脂層5が、流路12側の開口部分の全面を必ずしも覆う必要はなく、流路12側の開口部分の少なくとも一部を覆っていても以下で説明する本実施例の効果を期待できる。そして、フタ18を内部液空間11の上部に溶着すると共に、内部電極13を内部ゲル16と接するようにフタ18に取付ける。
なお、内部ゲル16の水分の蒸散を抑制するために、流路12とは反対側の陰イオン交換膜1の第1面1aもエポキシアミン樹脂で被覆しても良く、電極性能として同様の効果が発揮される。
本実施例では、陰イオン交換膜1として、4級アンモニウムイオンを陰イオン交換基として有する高度に架橋されたポリスチレン系の膜であり、PVC(ポリ塩化ビニル)製の糸の織物が補強材となっている膜が用いられる。しかし、この膜に限らず、固定化されたカチオンを高密度に有するイオン交換膜であれば、以下で説明する効果を発揮できる。
このような方法で製造された陰イオン選択性電極は、陰イオン交換膜1と電極筐体10との接着部分に、エポキシ主剤とアミン系硬化剤との硬化物が存在し、また、陰イオン交換膜1の流路12に露出している面もエポキシ主剤とアミン系硬化剤との硬化物に覆われている。このように、電極筐体10と陰イオン交換膜1との接着部分にエポキシアミン樹脂層5が配置されているため、陰イオン交換膜1と電極筐体10とを強固に接着することができる。また、陰イオン交換膜1とエポキシアミン樹脂層5とから構成される層構造が、イオン感応膜として、自動分析装置に求められる高い性能(スロープ感度、イオン選択性、初期電位安定性、低電気抵抗、検体負荷耐性)を満たす。具体的な電極性能に関しては後述する。このように、陰イオン交換膜1の表面にエポキシアミン樹脂層5を形成し、陰イオン交換膜1と電極筐体10とを接着するという簡便な方法で、高性能な陰イオン選択性電極の製造が可能となる。
本実施例では、エポキシ主剤として、ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂を主とする混合物を用いたが、それに限らず、他のグリシジルエーテルやグリシジルアミン、グリシジルエステルなどを用いてもよい。また、エポキシ主剤として使用される材料が、可塑剤やその他添加剤を含んでいても良い。アミン系硬化剤として、ポリアミドアミンを主とする混合物を用いたが、脂肪族ポリアミンや脂環式ポリアミン、芳香族ポリアミン、脂肪族ポリアミン、変性ポリアミンなどを用いてもよい。また、アミン系硬化剤として使用される材料が、硬化促進剤やその他の添加物を含んでいても良い。
以上から、本実施例によれば、高スループットで連続測定を行う自動分析装置に適した陰イオン選択性電極であって、高い性能(イオン選択性、スロープ感度、低電気抵抗、検体負荷耐性と初期電位安定性)を有する陰イオン選択性電極を提供できる。また、本実施例の陰イオン選択性電極は、簡便な工程によって製造可能である。
[第2実施例]
本実施例は、実施例1で説明したものと同様の図1〜3に示すフロー型陰イオン選択性電極である。図5は図3のC部分を拡大した模式図であり、本実施例に特徴的なイオン感応膜の層構造を示している。
本実施例の陰イオン選択性電極の製造方法を説明する。まず、固定化されたカチオンを有する陰イオン交換膜1を用意する。陰イオン交換膜1を、メタフェニレンジアミンを溶媒に溶解した溶液中に浸漬し、続いて、ホルムアルデヒドと無機酸との混合液に浸漬する。これにより、メタフェニレンジアミン(MPDA)とホルムアルデヒドとの縮合物を陰イオン交換膜1の内部及び表面に形成する。この縮合層2のことをMPDA縮合層2と呼ぶ。
MPDA縮合層2を形成した陰イオン交換膜1の表面に、エポキシ主剤とアミン系硬化剤との混合物で粘度30Pa・s(25℃)の液を均一に塗布する。これにより、例えば、陰イオン交換膜1の第2面1b側のMPDA縮合層2の表面にエポキシアミン樹脂層5が形成される。このように、本例のイオン感応膜17は、陰イオン交換膜1とエポキシアミン樹脂層5との間にMPDA縮合層2が配置された層構造となる。
イオン感応膜17は、エポキシアミン樹脂層5が電極筐体10に接するように配置される。このとき、電極筐体10に設けられた開口部(すなわち、流路12となる開口部)を塞ぐように、イオン感応膜17と電極筐体10とを密着させ、40℃、12時間の条件でエポキシアミン樹脂層5を硬化させる。なお、硬化温度に関して、80℃より高い場合、陰イオン交換膜1及び電極筐体10がダメージを受ける可能性があるため、できるだけ低い温度で硬化できる材料を用いたほうが良い。したがって、エポキシアミン樹脂層5を硬化させる工程における硬化温度は80℃以下が好ましい。
その後、電極筐体10の内部液空間11に内部ゲル16を満たす(図2及び図3参照)。内部ゲル16は、イオン感応膜17によって、流路12を通る試料液に接しないように電極筐体10内で隔離される。陰イオン交換膜1の第2面1b側にあるエポキシアミン樹脂層5の一部は、流路12を通る試料液に接することができるように露出している。そして、フタ18を内部液空間11の上部に溶着すると共に、内部電極13を内部ゲル16と接するようにフタ18に取付ける。
なお、内部ゲル16の水分の蒸散を抑制するために、流路12とは反対側の陰イオン交換膜1の第1面1a側もエポキシアミン樹脂で被覆しても良く、電極性能として同様の効果が発揮される。
本実施例では、陰イオン交換膜1として、4級アンモニウム基を陰イオン交換基として有する高度に架橋されたポリスチレン系の膜であり、PVC(ポリ塩化ビニル)製の糸の織物が補強材となっている膜が用いられる。しかし、この膜に限らず、固定化されたカチオンを高密度に有するイオン交換膜であれば、本実施例の効果は発揮できる。
このような方法で製造された陰イオン選択性電極は、陰イオン交換膜1と電極筐体10との間に、エポキシ主剤とアミン系硬化剤との硬化物が存在し、また、陰イオン交換膜1の流路12に露出している面もエポキシ主剤とアミン系硬化剤との硬化物に覆われている。このように、陰イオン交換膜1と電極筐体10との間にエポキシ樹脂が存在することで、陰イオン交換膜1と電極筐体10とを強固に接着することができる。また、陰イオン交換膜1をMPDA縮合層2で被覆しているため、陰イオン交換膜1そのものよりもイオン選択性が向上する。さらに、本実施例の陰イオン選択性電極では、そのMPDA縮合層2の表面にエポキシアミン樹脂層5が存在するため、スロープ感度やイオン選択性が向上する。具体的な電極性能に関しては、後述する。
本実施例におけるMPDA縮合層2で被覆された陰イオン交換膜1もまた、自動分析装置に求められる性能を十分満たすことができる。そのため、もし仮に、試料液と接する表面の一部分がエポキシアミン樹脂層5に覆われていなくても、十分な電極性能を発揮するため、安定した性能の電極を製造できる。
本実施例では、エポキシ主剤として、ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂を主とする混合物を用いたが、それに限らず、他のグリシジルエーテルやグリシジルアミン、グリシジルエステルなどを用いてもよい。また、エポキシ主剤として使用される材料が、可塑剤やその他添加剤を含んでいても良い。アミン系硬化剤として、ポリアミドアミンを主とする混合物を用いたが、脂肪族ポリアミンや脂環式ポリアミン、芳香族ポリアミン、脂肪族ポリアミン、変性ポリアミンなどを用いてもよい。また、アミン系硬化剤として使用される材料が、硬化促進剤やその他の添加物を含んでいても良い。
[第3実施例]
本実施例は、実施例1で説明したものと同様の図1〜3に示すフロー型陰イオン選択性電極である。図5は図3のC部分を拡大した模式図であり、本実施例に特徴的なイオン感応膜の層構造を示している。
本実施例の陰イオン選択性電極の製造方法を説明する。まず、固定化されたカチオンを有する陰イオン交換膜1を用意する。陰イオン交換膜1を、メタフェニレンジアミンを溶媒に溶解した溶液中に浸漬し、続いて、ホルムアルデヒドと無機酸との混合液に浸漬する。これにより、メタフェニレンジアミン(MPDA)とホルムアルデヒドとの縮合物を陰イオン交換膜1の内部及び表面に形成する。この縮合層2のことをMPDA縮合層2と呼ぶ。
MPDA縮合層2を形成した陰イオン交換膜1の表面に、エポキシ主剤とアミン系硬化剤との混合物で粘度1.5Pa・s(25℃)の液を均一に塗布する。これにより、例えば、陰イオン交換膜1の第2面1b側のMPDA縮合層2の表面にエポキシアミン樹脂層5が形成される。
イオン感応膜17は、エポキシアミン樹脂層5が電極筐体10に接するように配置される。このとき、電極筐体10に設けられた開口部(すなわち、流路12となる開口部)を塞ぐように、イオン感応膜17と電極筐体10とを密着させ、40℃、12時間の条件でエポキシアミン樹脂層5を硬化させる。
その後、電極筐体10の内部液空間11に内部ゲル16を満たす。内部ゲル16は、イオン感応膜17によって、流路12を通る試料液に接しないように電極筐体10内で隔離される。陰イオン交換膜1の第2面1b側にあるエポキシアミン樹脂層5の一部は、流路12を通る試料液に接することができるように露出している。そして、フタ18を内部液空間11の上部に溶着すると共に、内部電極13を内部ゲル16と接するようにフタ18に取付ける。
なお、内部ゲル16の水分の蒸散を抑制するために、流路12とは反対側の陰イオン交換膜1の第1面1a側もエポキシアミン樹脂で被覆しても良く、電極性能として同様の効果が発揮される。
本実施例では、陰イオン交換膜1として、4級アンモニウム基を陰イオン交換基として有する高度に架橋されたポリスチレン系の膜であり、PVC(ポリ塩化ビニル)製の糸の織物が補強材となっている膜が用いられる。しかし、この膜に限らず、固定化されたカチオンを高密度に有するイオン交換膜であれば、本実施例の効果は発揮できる。
このような方法で製造された陰イオン選択性電極は、陰イオン交換膜1と電極筐体10との間に、エポキシ主剤とアミン系硬化剤との硬化物が存在し、また、陰イオン交換膜1の流路12に露出している面もエポキシ主剤とアミン系硬化剤との硬化物に覆われている。このように、陰イオン交換膜1と電極筐体10との間にエポキシ樹脂が存在することで、陰イオン交換膜1と電極筐体10とを強固に接着することができる。また、陰イオン交換膜1をMPDA縮合層2で被覆しているため、陰イオン交換膜1そのものよりもイオン選択性が向上する。さらに、本実施例の陰イオン選択性電極では、そのMPDA縮合層2の表面にエポキシアミン樹脂層5が存在するため、イオン感応膜17として、自動分析装置に求められる性能(スロープ感度、イオン選択性、初期電位安定性、低電気抵抗、検体負荷耐性)が向上する。具体的な電極性能に関しては、後述する。
本実施例におけるMPDA縮合層2で被覆された陰イオン交換膜1もまた、自動分析装置に求められる性能を十分満たすことができる。そのため、もし仮に、試料液と接する表面の一部分がエポキシアミン樹脂層5に覆われていなくても、十分な電極性能を発揮するため、安定した性能の電極を製造できる。さらに、本実施例では、実施例2と比べて低粘度のエポキシアミン樹脂を使用しているため、膜表面に均一に塗布しやすく、高い性能を有する電極がより安定して製造可能となる。エポキシアミン樹脂層5として使用されるエポキシアミン樹脂の粘度は、30Pa・s(25℃)以下が好ましく、より好ましくは、10Pa・s(25℃)より小さい。
本実施例では、エポキシ主剤として、ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂を主とする混合物を用いたが、それに限らず、他のグリシジルエーテルやグリシジルアミン、グリシジルエステルなどを用いてもよい。また、エポキシ主剤として使用される材料が、可塑剤やその他添加剤を含んでいても良い。アミン系硬化剤として、ポリアミドアミンを主とする混合物を用いたが、脂肪族ポリアミンや脂環式ポリアミン、芳香族ポリアミン、脂肪族ポリアミン、変性ポリアミンなどを用いてもよい。また、アミン系硬化剤として使用される材料が、硬化促進剤やその他の添加物を含んでいても良い。
[第4実施例]
図9は、本実施例のスティック型陰イオン選択性電極の断面の模式図である。スティック型陰イオン選択性電極は、電極筐体22を備える。電極筐体22は開口部を有する。陰イオン交換膜21は、電極筐体22の下側の開口部を塞ぐように配置されている。陰イオン交換膜21は、第1面21aと、第1面21aに対して反対側に位置する第2面21bとを有する。スティック型陰イオン選択性電極の外側に位置する陰イオン交換膜21の第2面21bは、エポキシ主剤とアミン系硬化剤との硬化物からなるエポキシアミン樹脂層26で被覆されている。電極筐体22の開口部は、内部液23を入れる内部液空間27を構成しており、内部液空間27には、電解質を含んだ内部液23が配置されている。陰イオン交換膜21の第1面21aの少なくとも一部は、内部液23に接する。また、電極筐体22は、その内部液23と接するように内部電極24を備える。内部電極24は、内部液23を電極筐体22内に閉じ込めるためのフタ25に接着されている。
なお、本実施例の陰イオン選択性電極は、例えば、自動分析装置に搭載され、内部電極24が装置側の配線と接続される。これにより、自動分析装置は、試料液中に含まれる測定対象イオン濃度に応じて発生した電位を測定でき、測定対象イオンの濃度を分析できる。
本実施例の陰イオン選択性電極の製造方法を説明する。まず、固定化されたカチオンを有する陰イオン交換膜21を用意する。陰イオン交換膜21の材料は、上述の実施例1〜3の陰イオン交換膜1と同様の材料を採用することができる。
電極筐体22は、図9上の上下方向に開口する開口部を有する。電極筐体22の下側の開口部を塞ぐように、陰イオン交換膜21を電極筐体22に接着する。次に、陰イオン交換膜21の少なくとも試料液に接する表面(第2面21b)にエポキシ主剤とアミン系硬化剤との混合物を塗布する。そして、40℃、12時間の条件でエポキシアミン樹脂層26を硬化させる。その後、電極筐体22の内部に内部液23を充填する。内部液23は、陰イオン交換膜21の第1面21aの少なくとも一部と接する。そして、フタ25を電極筐体22の上部に取り付けると共に、内部電極24を内部液23と接するようにフタ25に取付ける。
本実施例では、陰イオン交換膜21として、4級アンモニウム基を陰イオン交換基として有する高度に架橋されたポリスチレン系の膜であり、PVC(ポリ塩化ビニル)製の糸の織物が補強材となっている膜が用いられる。しかし、この膜に限らず、固定化されたカチオンを高密度に有するイオン交換膜であれば、本実施例の効果は発揮できる。
このような方法で製造された陰イオン選択性電極は、陰イオン交換膜21と電極筐体22との境界部にも、エポキシ主剤とアミン系硬化剤との硬化物が存在し、また、陰イオン交換膜21の露出している面もエポキシ主剤とアミン系硬化剤との硬化物に覆われている。そのため、陰イオン交換膜21と電極筐体22とを強固に接着することができる。
また、陰イオン交換膜21とエポキシアミン樹脂層26からなる層構造が、イオン感応膜として、陰イオン選択性電極に求められる高い性能(スロープ感度、イオン選択性、初期電位安定性、低電気抵抗、検体負荷耐性)を満たす。具体的な電極性能に関しては後述する。このように、陰イオン交換膜21の表面にエポキシアミン樹脂を塗布するという簡便な方法で、高性能かつ強固な電極の製造が可能となる。また、陰イオン交換膜21とエポキシアミン樹脂層26とから構成される層構造が、イオン感応膜として、陰イオン選択性電極に求められる高い性能(スロープ感度、イオン選択性、初期電位安定性、低電気抵抗、検体負荷耐性)を満たす。具体的な電極性能に関しては後述する。このように、陰イオン交換膜21の表面にエポキシアミン樹脂を塗布するという簡便な方法で、高性能かつ強固な陰イオン選択性電極の製造が可能となる。
なお、陰イオン交換膜21に対して、実施例2と同様のMPDA処理を行っても良い。すなわち、陰イオン交換膜21の表面及び内部にMPDA縮合層が形成されてもよく、MPDA縮合層の表面にエポキシアミン樹脂層26が形成されてもよい。
本実施例の膜の層構造は、実施例1〜3と同様であるため、イオン感応膜としてのスロープ感度、イオン選択性、電気抵抗、使用寿命、及び初期電位安定性なども同等の特性を持つ。
本実施例では、陰イオン交換膜21と電極筐体22との接着工程とエポキシアミン樹脂層26の塗布及び硬化工程とを別々の工程で行ったが、同時に行っても良く、陰イオン交換膜21と電極筐体22との接着工程をエポキシアミン樹脂で行っても本実施例の効果は発揮される。
本実施例では、エポキシ主剤として、ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂を主とする混合物を用いたが、それに限らず、他のグリシジルエーテルやグリシジルアミン、グリシジルエステルなどを用いてもよい。また、エポキシ主剤として使用される材料が、可塑剤やその他添加剤を含んでいても良い。アミン系硬化剤として、ポリアミドアミンを主とする混合物を用いたが、脂肪族ポリアミンや脂環式ポリアミン、芳香族ポリアミン、脂肪族ポリアミン、変性ポリアミンなどを用いてもよい。また、アミン系硬化剤として使用される材料が、硬化促進剤やその他の添加物を含んでいても良い。
[比較例1]
比較例1は、図1〜3で示した構成と同様の構成を有し、イオン感応膜の構成のみ異なる。したがって、以下では、実施例1と異なる部分のみ説明する。図6は、図3のC部分を拡大した模式図であり、比較例1のイオン感応膜の層構造を示している。
比較例1の陰イオン選択性電極の製造方法を説明する。まず、固定化されたカチオンを有する陰イオン交換膜1を用意する。電極筐体10に設けられた開口部を塞ぐように、陰イオン交換膜1を、低沸点の溶剤であるTHF(テトラヒドロフラン)を用いて電極筐体10に溶着する。その後、電極筐体10の内部液空間11に内部ゲル16を満たす。そして、フタ18を内部液空間11の上部に溶着すると共に、内部電極13を内部ゲル16と接するようにフタ18に固定する。
本比較例では、陰イオン感応膜として、4級アンモニウム基を陰イオン交換基として有する高度に架橋されたポリスチレン系の膜であり、PVC(ポリ塩化ビニル)製の糸の織物が補強材となっている膜が用いられる。このような方法で製造された陰イオン選択性電極は、陰イオン交換膜1が流路12に直接露出されている構造となる。具体的な電極性能に関しては後述する。
[比較例2]
比較例2は、図1〜3で示した構成と同様の構成を有し、イオン感応膜の構成のみ異なる。したがって、以下では、実施例2と異なる部分のみ説明する。図7は、図3のC部分を拡大した模式図であり、比較例2のイオン感応膜の層構造を示している。
比較例2の陰イオン選択性電極の製造方法を説明する。まず、固定化されたカチオンを有する陰イオン交換膜1を用意する。陰イオン交換膜1を、メタフェニレンジアミンを溶媒に溶解した溶液中に浸漬し、続いて、ホルムアルデヒドと無機酸との混合液に浸漬する。これにより、メタフェニレンジアミン(MPDA)とホルムアルデヒドとの縮合物を陰イオン交換膜1の内部及び表面に形成する。この縮合層2のことをMPDA縮合層2と呼ぶ。
MPDA縮合層2を形成した陰イオン交換膜1を、電極筐体10に設けられた開口部(すなわち、流路12となる開口部)を塞ぐように、低沸点の溶剤であるTHF(テトラヒドロフラン)を用いて電極筐体10に溶着する。その後、電極筐体10の内部液空間11に内部ゲル16を満たす。そして、フタ18を内部液空間11の上部に溶着すると共に、内部電極13を内部ゲル16と接するようにフタ18に固定する。
本比較例では、陰イオン感応膜として、4級アンモニウム基を陰イオン交換基として有する高度に架橋されたポリスチレン系の膜であり、PVC(ポリ塩化ビニル)製の糸の織物が補強材となっている膜が用いられる。このような方法で製造された陰イオン選択性電極は、MPDA縮合層2が流路12に直接露出されている構造となる。具体的な電極性能に関しては後述する。
[比較例3]
比較例3は、図1〜3で示した構成と同様の構成を有し、イオン感応膜の構成のみ異なる。したがって、以下では、実施例1と異なる部分のみ説明する。図8は、図3のC部分を拡大した模式図であり、比較例3のイオン感応膜の層構造を示している。
比較例3の陰イオン選択性電極の製造方法を説明する。まず、流路12の内径とほぼ同一の外径を有する丸棒を流路12に差込んだ状態で、電極筐体10に設けられた開口部(すなわち、流路12となる開口部)を塞ぐようにエポキシ主剤とアミン系硬化剤の混合物を塗布する。そして、40℃、12時間の条件で、塗布した混合物を硬化させる。これにより、円弧状のエポキシアミン樹脂層7が流路12の上部に形成される。その後、電極筐体10の内部液空間11に内部ゲル16を満たす。そして、フタ18を内部液空間11の上部に溶着すると共に、内部電極13を内部ゲル16と接するようにフタ18に固定する。
本比較例では、エポキシ主剤として、ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂及びビスフェノールF型液状エポキシ樹脂を主とする混合物を用い、アミン系硬化剤として、ポリアミドアミンを主とする混合物を用いる。このような方法で製造された陰イオン選択性電極は、エポキシアミン樹脂層7が試料液に接する構造となる。具体的な電極性能に関しては後述する。
上記の実施例1〜3及び比較例1〜3について、塩素イオン選択性電極としての特性を評価するための手順をここで述べる。
まず、スロープ感度については、既知の高濃度標準液と低濃度標準液を測定し、式(1)から求めた。
SL=(EMF−EMF)/(LogC−LogC) ・・・・式(1)
SL:スロープ感度
EMF:既知高濃度標準液の測定起電力
EMF:既知低濃度標準液の測定起電力
:高濃度標準液の既知濃度値
:低濃度標準液の既知濃度値
なお、スロープ感度SLは、以下のネルンスト式の2.303×(RT/zF)に相当する。
E = E0 + 2.303×(RT/zF)×Log(f×C)
(E0:測定系により定まる一定電位、z:測定対象イオンの価数、F:ファラデー定数、R:気体定数、T:絶対温度、f:活量係数、C:イオン濃度)
スロープ感度は温度と測定対象のイオン価数から計算することができるが、上記の方法によって電極固有のスロープ感度SLを求めることができる。
また、塩素イオンに対する重炭酸イオン選択性は、いわゆる混合溶液法で評価した。混合溶液法とは、標準液に妨害イオンを添加し、それを試料液としたときの測定濃度値を添加濃度に対してプロットした直線の傾きから求める方法である。
図10は、実施例1〜3と比較例1〜2に関するスロープ感度の評価結果である。図11は、実施例1〜3と比較例1〜2に関する塩素イオン(Cl)に対する重炭酸イオン(HCO )選択性の測定結果である。
スロープ感度は、その絶対値が大きいほうが電極としての性能が良いことを示し、つまり、陰イオン選択性電極の場合、値が小さいほうが良い。また、塩素イオン選択性電極として使用する際は、妨害イオンである重炭酸イオン選択性は小さいほうが良い。
図10に示すように、陰イオン交換膜1に何も処理していない感応膜を有する比較例1の電極に関しては、スロープ感度は-45.4であった。これに対して、陰イオン交換膜1の表面をエポキシアミン樹脂層5で被覆した実施例1の電極に関しては、スロープ感度が-49.4に改善した。
図11に示すように、比較例1の電極に関しては、重炭酸イオン選択性は0.47であったが、実施例1に関しては、重炭酸イオン選択性は0.22に改善した。このように、従来ではイオン交換膜のイオン選択性を向上させるためにはMPDA処理などの表面処理が必要であった。しかし、実施例1と比較例1との比較結果が示すように、エポキシアミン樹脂層5を陰イオン交換膜1の表面に塗布して硬化させることで、MPDA処理を行うことなく、同様の効果が得られることが分かった。
また、図10に示すように、陰イオン交換膜1にMPDA処理を施した感応膜を有する比較例2の電極に関しては、スロープ感度は-51.1であった。また、図11に示すように、比較例2の電極に関しては、重炭酸イオン選択性は0.21であった。これに対して、MPDA処理を施した陰イオン交換膜1の表面にエポキシアミン樹脂層5を形成した実施例2及び実施例3に関しては、スロープ感度が、それぞれ、-51.1、-52.8であった。また、実施例2及び実施例3に関しては、重炭酸イオン選択性が、それぞれ、0.17、0.11であった。これらの結果から、実施例2及び3の重炭酸イオン選択性は、比較例2と比較して向上していることを確認した。また、実施例3のスロープ感度は、実施例2と比較してさらに改善されたことが分かる。
実施例1〜3が比較例1及び2と比べて電極性能の向上した理由として、陰イオン交換膜1の試料液と接する表面(第2面1b)をエポキシアミン樹脂層5で被覆したことで、エポキシアミン樹脂が有するイオン選択性が獲得できたと考えられる。なお、実施例2と実施例3との違いは、硬化前のエポキシアミン樹脂の粘度の違いにより、実施例3の方が表面に均一にエポキシアミン樹脂を塗布できたことが一つの要因であると考えられる。
図12は、実施例2、比較例2及び比較例3に関して電気抵抗値を測定した結果である。一般的にイオン選択性電極にとって電気抵抗値は低い方が、電気的なノイズの影響を受けにくいため適している。エポキシアミン樹脂のみをイオン感応膜として有する比較例3に関しては、電気抵抗値は900MΩであり、高い抵抗値であった。一方、比較例2の電極に関しては、電気抵抗値は41KΩであった。また、実施例2の電極に関しては、電気抵抗値49KΩであり、比較例3と比べて桁違いに低い抵抗を有することが確認できた。
エポキシアミン樹脂の硬化過程ではアンモニウムイオンが生成されるが、アンモニウムイオンが低密度でしか存在していないと考えられる。そのため、比較例3のエポキシアミン樹脂のみで成形されたイオン感応膜の導電性が低く、高い抵抗を有していたと考えられる。一方、陰イオン交換膜1には高密度にアンモニウムイオンが固定化されており、比較的高い導電性を有する。実施例2は、エポキシアミン樹脂層5を陰イオン交換膜1の表面にしか有していないため、比較例2とほぼ同等の低い抵抗を有していると考えられる。
図13は、比較例2、比較例3及び実施例2の電極をそれぞれ電解質測定装置に搭載し、その直後から数分から数十分おきにイオン濃度が一定の標準液を連続測定したときの起電力を示す。図13のグラフでは、縦軸が、測定された電位を示し、横軸が、測定時間を示す。「0:00」は、電解質測定装置に各電極を搭載した直後に測定した電位である。
図13に示すように、比較例3は、1時間以上経過してから電位が安定するのに対し、比較例2は、装置に搭載された直後から電位が安定していた。一方、実施例2も比較例2とほぼ同様に、装置に搭載された直後から速やかに電位が安定することが確認された。これは、イオン感応膜の水分に対するなじみやすさに関係していると考えられる。比較例3のエポキシアミン樹脂のみから構成されたイオン感応膜はアンモニウムイオンが低密度であり、水になじむのがゆっくりであるのに対し、陰イオン交換膜1をベースとした比較例2と実施例2は、陰イオン交換膜自体が高密度の固定化されたアンモニウムイオンを有するため水になじみやすい。このことから、比較例2と実施例2の場合、装置に搭載してすぐに電位が安定したと考えられる。電解質測定装置は、立ち上げてすぐに測定を開始できることは重要である。実施例2のイオン選択性電極は、速やかに電位が安定するという重要な特性を有する。
図14は、実施例3の電極について管理血清を用いて負荷試験を実施した後にスロープ感度を評価した結果である。図15は、実施例3の電極について管理血清を用いて負荷試験を実施した後に重炭酸イオン選択性を評価した結果である。
合計12000検体負荷を実施した。その結果、実施例3に関して、スロープ感度と重炭酸イオン選択性はともに安定しており、自動分析装置で連続測定を行っても、電極性能としてほとんど変化しないことが確認できた。実施例1及び実施例2に関しても、同様に負荷試験でほとんど変化しないことを確認した。これは、試料と接する表面の材質が同質のもので形成されているため、膜表面の汚染については同等であると考えられ、また、イオン感応膜17のベースとして高密度に固定化されたカチオンを有している陰イオン交換膜1を使用しているため、当該膜中にカウンターアニオンとして多くの塩素イオンを有している。そのため、測定の際に妨害イオンが陰イオン交換膜1中に入り込んだ場合でも、イオン応答への影響は少ないと考えられる。また、上述の実施例1〜3のイオン感応膜17は物理的な強度も十分持ち合わせている。以上のことから、実施例1〜3の電極の全てに関して、負荷試験に対して安定した電極性能を維持できたと考えられる。
図16は、実施例4のスティック型電極において、エポキシアミン樹脂層26の膜厚を変更した際の重炭酸イオン選択性の測定結果を示す。
図16に示すように、エポキシアミン樹脂を塗布していないものは重炭酸イオン選択性が0.5であったのに対し、エポキシアミン樹脂層26を陰イオン交換膜21の表面に塗布することで、選択性が0.21〜0.26と大幅に改善した。また、膜厚が1mm以上の場合は、測定液に浸漬後1分以内という短い測定時間内においては正常な電位が取得できなかった。このため、陰イオン交換膜上のエポキシアミン樹脂の膜厚は1mm未満が好ましい。
上述の実施例1〜4の陰イオン選択性電極は、内部液を内部に保持するための電極筐体と、イオン感応膜と、内部電極とを有する。内部液は、陰イオン感応膜の第一面の一部と内部電極の一部とに接し、陰イオン感応膜の第二面の一部は試料液と接することができるように流路に露出している。陰イオン感応膜は陰イオン交換樹脂膜を基材とし、陰イオン感応膜の第二面の少なくとも一部がエポキシアミン樹脂で被覆されている。
上述の実施例1〜4の陰イオン選択性電極は以下の方法で製造できる。当該製造方法は、電極筐体に設けられた開口部を塞ぎ、かつ、試料液に接することができるように陰イオン交換膜を電極筐体に配置する工程と、電極筐体の内部を内部液で充填する工程と、内部液に接するように内部電極を配置する工程とを含む。実施例1〜3の場合、陰イオン交換膜を電極筐体に配置する工程の前に、イオン交換樹脂膜の試料液に接触する側の表面にエポキシアミン樹脂を塗布するステップと、エポキシアミン樹脂を硬化させるステップとを含む。実施例4の場合、陰イオン交換膜を電極筐体に配置する工程の後において、イオン交換樹脂膜の試料液に接触する側の表面にエポキシアミン樹脂を塗布するステップと、エポキシアミン樹脂を硬化させるステップとを含む。
上述の実施例によれば、高い性能(イオン選択性、スロープ感度、低電気抵抗、検体負荷耐性)を有し、さらに電極を装置に設置してから測定電位が安定するまでの時間が短い陰イオン選択性電極を提供することができる。また、上述の実施例の陰イオン選択性電極は、簡便な工程にて製造可能である。上述の実施例の陰イオン選択性電極は、高スループットで連続測定を行う自動分析装置にも適しており、イオン濃度測定の分析精度及び信頼性の更なる向上が達成できる。
本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。上記実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることもできる。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることもできる。また、各実施例の構成の一部について、他の構成を追加・削除・置換することもできる。
1 …陰イオン交換膜
2 …MPDA縮合層
5 …エポキシアミン樹脂層
10 …電極筐体
11 …内部液空間
12 …流路
13 …内部電極
15 …パッキン
16 …内部ゲル
17 …イオン感応膜
18 …フタ
21 …陰イオン交換膜
22 …電極筐体
23 …内部液
24 …内部電極
25 …フタ
26 …エポキシアミン樹脂層
27 …内部液空間

Claims (15)

  1. 内部液を入れる空間を有する電極筐体と、
    前記内部液に接する内部電極と、
    第1面と、前記第1面に対して反対側に位置する第2面とを有し、前記内部液と試料液との間に配置された陰イオン交換膜と、
    を有し、
    前記内部液は、前記陰イオン交換膜の前記第1面の一部に接し、
    前記陰イオン交換膜の前記第2面の一部は、前記試料液と接することができるように露出しており、
    前記陰イオン交換膜は、陰イオン交換樹脂膜を有し、
    前記陰イオン交換膜の前記第2面の少なくとも一部がエポキシアミン樹脂で被覆されている、陰イオン選択性電極。
  2. 請求項1に記載の陰イオン選択性電極において、
    前記エポキシアミン樹脂は、エポキシ主剤とアミン系硬化剤とを含む重合反応生成物であることを特徴とする陰イオン選択性電極。
  3. 請求項1に記載の陰イオン選択性電極において、
    前記電極筐体と前記陰イオン交換膜との接着部分に前記エポキシアミン樹脂が配置されていることを特徴とする陰イオン選択性電極。
  4. 請求項1に記載の陰イオン選択性電極において、
    前記陰イオン交換樹脂膜に固定化された陽イオンが4級アンモニウムイオンであることを特徴とする陰イオン選択性電極。
  5. 請求項1に記載の陰イオン選択性電極において、
    前記陰イオン交換膜と前記エポキシアミン樹脂との間に、メタフェニレンジアミンとホルムアルデヒドとの縮合物が配置されていることを特徴とする陰イオン選択性電極。
  6. 請求項1に記載の陰イオン選択性電極において、
    前記陰イオン交換樹脂膜が、ベンジルトリメチルアンモニウム基を有する強塩基性陰イオン交換膜であり、補強材としてPVC系合成繊維布を含むことを特徴とする陰イオン選択性電極。
  7. 請求項1に記載の陰イオン選択性電極において、
    前記陰イオン交換膜の前記第1面の少なくとも一部がエポキシアミン樹脂で被覆されていることを特徴とする陰イオン選択性電極。
  8. 請求項1に記載の陰イオン選択性電極において、
    前記エポキシアミン樹脂の膜厚が1mm未満であることを特徴とする陰イオン選択性電極。
  9. 電極筐体に設けられた開口部を塞ぎ、かつ、試料液に接することができるように陰イオン交換膜を前記電極筐体に配置する工程であって、前記陰イオン交換膜は、陰イオン交換樹脂膜を有する、配置する工程と、
    前記電極筐体の内部を内部液で充填する工程と、
    前記内部液に接するように内部電極を前記電極筐体に取付ける工程とを含み、
    前記配置する工程の前、又は、前記配置する工程の後において、
    前記陰イオン交換樹脂膜の前記試料液に接触する側の表面にエポキシアミン樹脂を塗布するステップと、
    前記エポキシアミン樹脂を硬化させるステップと
    を含む陰イオン選択性電極の製造方法。
  10. 請求項9に記載の陰イオン選択性電極の製造方法において、
    前記エポキシアミン樹脂は、エポキシ主剤とアミン系硬化剤とを含む重合反応生成物であることを特徴とする陰イオン選択性電極の製造方法。
  11. 請求項9に記載の陰イオン選択性電極の製造方法において、
    前記エポキシアミン樹脂の粘度は30Pa・s(25℃)以下であることを特徴とする陰イオン選択性電極の製造方法。
  12. 請求項9に記載の陰イオン選択性電極の製造方法において、
    前記硬化させるステップの硬化温度が80℃以下であることを特徴とする陰イオン選択性電極の製造方法。
  13. 請求項9に記載の陰イオン選択性電極の製造方法において、
    前記配置する工程は、前記陰イオン交換樹脂膜と前記電極筐体との間に前記エポキシアミン樹脂を配置して、前記陰イオン交換樹脂膜と前記電極筐体とを接着するステップを含むことを特徴とする陰イオン選択性電極の製造方法。
  14. 請求項9に記載の陰イオン選択性電極の製造方法において、
    前記エポキシアミン樹脂を塗布するステップの前に、前記陰イオン交換樹脂膜の表面をメタフェニレンジアミンとホルムアルデヒドとの縮合物で被覆するステップをさらに含むことを特徴とする陰イオン選択性電極の製造方法。
  15. 請求項9に記載の陰イオン選択性電極の製造方法において、
    前記陰イオン交換樹脂膜が、ベンジルトリメチルアンモニウム基を有する強塩基性陰イオン交換膜であり、補強材としてPVC系合成繊維布を含むことを特徴とする陰イオン選択性電極の製造方法。
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