JP6782716B2 - 抗体またはリガンドの結合および機能を明らかにするための細胞ベースアッセイ法 - Google Patents

抗体またはリガンドの結合および機能を明らかにするための細胞ベースアッセイ法 Download PDF

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Description

発明の分野
本発明は、抗体またはリガンドの結合および機能を明らかにするための新しい細胞ベースアッセイ法に関する。
背景
化学療法は、これまでのところ依然として、最も一般的に使用される癌治療法の内の1つである。しかし、化学療法薬は、癌細胞の1つの特徴である活発に分裂している細胞を標的とするため、血液細胞、腸、口、および毛髪の細胞などの健常な分裂細胞も影響を受け、その結果、かなり強い副作用が生じる。科学者らは、それらの副作用を最小限にするために化学療法薬の投与および組合せを改善することに継続的に取り組んでいる。さらに、抗体ベースの療法が、この15年間の間に発展し、現在では、血液悪性疾患および固形腫瘍の治療において有益な組合せまたは化学療法アプローチの代替方法になっている。化学療法とは異なり、抗体療法は、癌細胞表面の特異的抗原を標的とし、したがって、より部位特異的な治療を可能にし、それによって健常組織に対する副作用を軽減する。抗体をベースとする治療薬を開発する過程では、臨床試験に持ち込み最終的に販売するための最良の候補物を特定するために、様々なアッセイ法が必要とされる。最初の初期の前臨床段階において、これらの抗体は、作製され、その標的特異性、ならびに標的に対する親和性および機能性について解析されなければならない。結合特性は、様々なタンパク質-タンパク質相互作用アッセイ法、例えば、FRETベースの方法、表面プラズモン共鳴(SPR)、蛍光活性化細胞選別(FACS)、またはアルファスクリーン(AlphaScreen)(商標)を用いて解析することができる。通常、機能性は、臨床試験に入る前に動物モデルで試験するための最良の候補物を特定するために、できるだけ似た生理学的状況を再現するように設計された様々な細胞ベースアッセイ法で試験される。一般に、これらの機能アッセイ法は、初代細胞、腫瘍細胞株、または特定の経路が活性化されるとレポーターを発現するように設計されたレポーター細胞を用いて実施される。抗体治療分子の開発過程において初期段階(state)で結合および機能性を評価することを可能にする組合せアッセイ法を設計することは、大いに有益であると思われる。
本発明の発明者らは、同じバイアル中の抗体および抗体様構築物(例えばリガンド)の結合および機能性の評価を組み合わせた新規なアッセイ法を開発した。この新規なアッセイ法は、例えば、スクリーニングまたは特徴決定の目的にとって有用である。
この新しいアッセイ法は、結合だけでなく機能性について初期にスクリーニングするための有益なツールであり、薬物候補の開発の初期段階で最良の結合物を特定することを可能にする。
概要
1つの態様において、以下の段階を含む、標的抗原に特異的に結合する抗体またはリガンドの結合および機能性を明らかにするためのインビトロアッセイ法が提供される
i)細胞を提供する段階であって、該細胞が
a)該細胞の表面で標的抗原を発現し、
b)エネルギードナー化合物で共有結合的または非共有結合的に標識されており、かつ
c)標的抗原の応答エレメントの制御下にあるレポーター遺伝子を含む、
段階;
ii)試験しようとする抗体またはリガンドを添加する段階;
iii)エネルギー移動を測定することによって標的抗原への結合を測定する段階であって、エネルギーアクセプター化合物が、試験しようとする抗体かまたは一次抗体(第1の抗体)に結合する二次抗体のいずれかに共有結合的または非共有結合的に結合している、段階;および
iv)レポーター遺伝子の発現レベルと標的抗原の活性化レベルまたは阻害レベルとの相関関係を明らかにすることによって、抗体またはリガンドの機能性を明らかにする段階。
1つの態様において、エネルギードナー化合物およびエネルギーアクセプター化合物は、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)エネルギードナー化合物およびエネルギーアクセプター化合物であり、段階iii)で測定されるエネルギー移動は、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)である。1つの態様において、FRETは時間分解FRETである。
1つの態様において、FRETエネルギードナー化合物はテルビウムクリプテートであり、かつ/またはFRETエネルギーアクセプター化合物はd2である。
1つの態様において、エネルギードナー化合物およびエネルギーアクセプター化合物は、生物発光エネルギー移動(BRET)エネルギードナー化合物およびエネルギーアクセプター化合物であり、段階iii)で測定されるエネルギー移動は、生物発光エネルギー移動(BRET)である。
1つの態様において、エネルギードナー化合物およびエネルギーアクセプター化合物は、アルファスクリーンドナービーズおよびアルファスクリーンアクセプタービーズであり、段階iii)で測定されるエネルギー移動は、一重項酸素からアクセプタービーズ内のチオキセン誘導体へのエネルギー移動である。
1つの態様において、標的抗原への結合および抗体の機能性は、同じバイアル中で測定される。
1つの態様において、標的抗原は、エネルギードナー化合物によって共有結合的または非共有結合的に標識される。
1つの態様において、エネルギードナー化合物は、コムギ胚芽凝集素(WGA)に共有結合的または非共有結合的に連結される。
1つの態様において、レポーター遺伝子は、蛍光タンパク質をコードしている遺伝子、またはその触媒活性を検出することができる酵素をコードしている遺伝子より選択される。
1つの態様において、レポーター遺伝子は、緑色蛍光タンパク質(GFP)またはルシフェラーゼをコードしている。
1つの態様において、標的抗原は、細胞表面受容体である。
1つの態様において、段階iii)およびiv)は、連続的または同時に実施される。
1つの態様において、標的抗原および応答エレメントは、NF-κB経路の一部分である。
1つの態様において、応答エレメントは、SEQ ID NO: 1、2、3、4、または5のDNA配列を有している少なくとも1つのDNAリピートを含む。
1つの態様において、応答エレメントは、SEQ ID NO: 6、7、8、または9のDNA配列を含む。
1つの態様において、アッセイ法は、標的抗原応答エレメントの制御下にあるレポーター遺伝子をコードしているDNA配列を含む発現ベクターを用いて細胞をトランスフェクションする予備段階を含む。
[本発明1001]
以下の段階を含む、標的抗原に特異的に結合する抗体またはリガンドの結合および機能性を明らかにするためのインビトロアッセイ法:
i)細胞を提供する段階であって、該細胞が
a)該細胞の表面で該標的抗原を発現し、
b)エネルギードナー化合物で共有結合的または非共有結合的に標識されており、かつ
c)該標的抗原の応答エレメントの制御下にあるレポーター遺伝子を含む、
段階;
ii)試験しようとする該抗体またはリガンドを添加する段階;
iii)エネルギー移動を測定することによって該標的抗原への結合を測定する段階であって、エネルギーアクセプター化合物が、試験しようとする該抗体かまたは一次抗体に結合する二次抗体のいずれかに共有結合的または非共有結合的に結合している、段階;および
iv)該レポーター遺伝子の発現レベルと標的抗原の活性化レベルまたは阻害レベルとの相関関係を明らかにすることによって、該抗体またはリガンドの機能性を明らかにする段階。
[本発明1002]
前記エネルギードナー化合物および前記エネルギーアクセプター化合物が、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)エネルギードナー化合物および蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)エネルギーアクセプター化合物であり、段階iii)で測定されるエネルギー移動が、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)である、本発明1001のアッセイ法。
[本発明1003]
前記FRETが時間分解FRETである、本発明1002のアッセイ法。
[本発明1004]
前記FRETエネルギードナー化合物がテルビウムクリプテートであり、かつ/または前記FRETエネルギーアクセプター化合物がd2である、本発明1003のアッセイ法。
[本発明1005]
前記エネルギードナー化合物および前記エネルギーアクセプター化合物が、生物発光エネルギー移動(BRET)エネルギードナー化合物および生物発光エネルギー移動(BRET)エネルギーアクセプター化合物であり、段階iii)で測定されるエネルギー移動が、生物発光エネルギー移動(BRET)である、本発明1001のアッセイ法。
[本発明1006]
前記エネルギードナー化合物および前記エネルギーアクセプター化合物が、アルファスクリーンドナービーズおよびアルファスクリーンアクセプタービーズであり、段階iii)で測定されるエネルギー移動が、一重項酸素から該アクセプタービーズ内のチオキセン誘導体へのエネルギー移動である、本発明1001のアッセイ法。
[本発明1007]
前記抗体の前記標的抗原への結合および機能性が、同じバイアル中で測定される、本発明1001〜1006のいずれかのアッセイ法。
[本発明1008]
前記標的抗原が、前記エネルギードナー化合物によって共有結合的または非共有結合的に標識される、本発明1001〜1007のいずれかのアッセイ法。
[本発明1009]
前記エネルギードナー化合物が、コムギ胚芽凝集素(WGA)に共有結合的または非共有結合的に連結される、本発明1001〜1007のいずれかのアッセイ法。
[本発明1010]
前記レポーター遺伝子が、蛍光タンパク質をコードしている遺伝子、またはその触媒活性を検出することができる酵素をコードしている遺伝子より選択される、本発明1001〜1009のいずれかのアッセイ法。
[本発明1011]
前記レポーター遺伝子が、緑色蛍光タンパク質(GFP)またはルシフェラーゼをコードしている、本発明1010のアッセイ法。
[本発明1012]
前記標的抗原が細胞表面受容体である、本発明1001〜1011のいずれかのアッセイ法。
[本発明1013]
段階iii)およびiv)が、連続的または同時に実施される、本発明1001〜1012のいずれかのアッセイ法。
[本発明1014]
前記標的抗原および前記応答エレメントが、NF-κB経路の一部分である、本発明1001〜1013のいずれかのアッセイ法。
[本発明1015]
前記応答エレメントが、SEQ ID NO: 1、2、3、4、または5のDNA配列を有している少なくとも1つのDNAリピートを含む、本発明1014のアッセイ法。
[本発明1016]
前記応答エレメントが、SEQ ID NO: 6、7、8、または9のDNA配列を含む、本発明1014または1015のアッセイ法。
[本発明1017]
前記標的抗原の応答エレメントの制御下にあるレポーター遺伝子をコードしているDNA配列を含む発現ベクターを用いて細胞をトランスフェクションする予備段階を含む、本発明1001〜1016のいずれかのアッセイ法。
[本発明1018]
本質的に本明細書において前述したようなアッセイ法。
トランスフェクション効率の測定ならびにSNAP-受容体Xトランスフェクションおよびテルビウム、すなわちドナー蛍光色素による標識の後の細胞の生存率測定。テルビウムシグナルは、ウェル当たり10000個の細胞について615nmの波長で測定した。トランスフェクション試薬のLipofectamine 2000、Lipofectamine LTX、およびXtreme Gene HPを比較した。 Lipofectamine LTXのトランスフェクション効率の測定ならびにSNAP-受容体Xトランスフェクションおよびテルビウム、すなわちドナー蛍光色素による標識の後のHEK NFκB-Luc-GFP細胞およびHeLa NFκB-Luc細胞の生存率測定。テルビウムシグナルは、ウェル当たり10000個の細胞を用いて615nmの波長で測定した。 受容体Xを発現するHEK NFκB-Luc-GFP細胞およびHeLa NFκB-Luc細胞に対する抗体Iおよび抗体IIを用いたTag-lite(登録商標)間接的結合アッセイ法。これらの抗体は、25nM〜0.05nMの範囲の2倍希釈系列に希釈した。d2標識した二次抗体については濃度150nMを使用した。Graph Pad Prism 6.0を用いて非線形回帰によって結合曲線を当てはめた。 受容体X発現HEK NFκB-Luc-GFP細胞に結合する抗体Iを用いた間接的Tag-lite(登録商標)結合アッセイ法。抗体Iは、12.5nM〜0.025nMまでの2倍希釈系列に希釈した。d2標識した二次抗体は、150nMまたは75nMの濃度で使用した。Graph Pad Prism 6.0を用いて非線形回帰によって結合曲線を当てはめた。 受容体X発現HEK NFκB-Luc-GFP細胞に対する抗体I、抗体III、および抗体IVを用いた間接的Tag-lite(登録商標)結合アッセイ法。抗体はすべて、20nM〜0.04nMまでの2倍希釈系列に希釈した。d2標識した二次抗体は、75nMの濃度で使用した。Graph Pad Prism 6.0を用いて非線形回帰によって結合曲線を当てはめた。 受容体X発現HEK NFκB-Luc-GFP細胞に対する抗体IIIの間接的Tag-lite(登録商標)結合アッセイ法。抗体は、20nM〜0.04nMの範囲の濃度で2倍希釈系列に希釈した。d2標識した二次抗体は、75nMの濃度で使用した。室温でのインキュベーションを、37℃でのインキュベーションと比較した。Graph Pad Prism 6.0を用いて非線形回帰によって結合曲線を当てはめた。 受容体X発現HEK NFκB-Luc-GFP細胞に結合する抗体IIIの間接的Tag-lite(登録商標)結合アッセイ法。抗体は、20nM〜0.04nMの範囲の濃度で2倍希釈系列に希釈した。d2標識した二次抗体は、75nMの濃度で使用した。希釈物のための異なる緩衝液および媒体を比較した。Graph Pad Prism 6.0において非線形回帰によって結合曲線を当てはめた。 受容体X発現HEK NFκB-Luc-GFP細胞に結合する抗体IIIの間接的Tag-lite(登録商標)結合アッセイ法。実験は、細胞解凍後すぐ、およびその後毎日、3日間(every following day for 3)、実施した。抗体は、20nM〜0.04nMの範囲の2倍希釈系列に希釈した。d2標識した二次抗体は、75nMの濃度で使用した。Graph Pad Prism 6.0を用いて非線形回帰によって結合曲線を当てはめた。 標識された受容体X発現HEK NFκB-Luc-GFP細胞のテルビウムシグナルおよび生存率の測定。テルビウムシグナルを、解凍後すぐ、およびその後毎日、3日目まで、測定した。ウェル当たり10000個の細胞を毎日播種し、615nmの波長で測定した。 6時間のインキュベーション後の受容体X発現HEK NFκB-Luc-GFP細胞に対する抗体IおよびTNFαを用いたルシフェラーゼ1000アッセイシステム。TNFαの希釈系列(2倍)は、25〜0.8ng/mlの範囲であり、抗体Iの希釈系列(4倍)は、30〜0.03nMの範囲であった。抗体Iおよび二次抗体単独を対照として使用した。Graph Pad Prism 6.0を用いて非線形回帰によって結合曲線を当てはめた。 TNF-aによって活性化した際の48時間のインキュベーション後のルシフェラーゼ1000アッセイシステムと比べた、ONE-Glo(商標)ルシフェラーゼアッセイシステム。安定にトランスフェクトされたHEK NFκB-Luc-GFP-受容体X細胞および一過性にトランスフェクトされたHEK NFκB-Luc-GFP-受容体X-Tb細胞のNFκB経路を、TNFα(50ng/ml)によって活性化した。 6時間および48時間のインキュベーション後のONE-Glo(商標)ルシフェラーゼアッセイシステム。安定にトランスフェクトされたHEK NFκB-Luc-GFP-受容体X細胞および一過性にトランスフェクトされたHEK NFκB-Luc-GFP-受容体X-Tb細胞のNFκB経路を、一次抗体としての抗体III(10nM)および二次抗体としての抗hu IgG Fcγ特異的ヤギIgG F(ab)2(40nM)によって活性化した。 24時間のインキュベーション後に96ウェルプレートならびに384ウェルプレート中で実施したONE-Glo(商標)ルシフェラーゼアッセイシステム。安定にトランスフェクトされたHEK NFκB-Luc-GFP-受容体X細胞のNFκB経路を、一次抗体としての抗体III(10nM)および二次抗体としての抗hu IgG Fcγ特異的ヤギIgG F(ab)2(40nM)によって活性化した。 6時間のインキュベーション後に384ウェルプレート中で実施したONE-Glo(商標)ルシフェラーゼアッセイシステム。安定にトランスフェクトされたHEK NFκB-Luc-GFP-受容体X細胞のNFκB経路を、一次抗体としての抗体III(10nM)および二次抗体としての抗hu IgG Fcγ特異的ヤギIgG F(ab)2(40nM)によって活性化した。 受容体X発現HEK NFκB-Luc-GFP細胞に対する抗体IIIを用いたWGA-HTRF間接的結合アッセイ法。抗体Vは、陰性対照としての機能を果たした。両方の抗体を、1.56nM〜0.01nMの範囲の2倍希釈系列に希釈した。d2標識した二次抗体は、75nMの濃度で使用した。Graph Pad Prism 6.0を用いて非線形回帰によって結合曲線を当てはめた。 一過性にスーパートランスフェクトされた受容体X発現HEK NFκB-Luc-GFP細胞および一過性にトランスフェクトされた受容体X発現HEK NFκB-Luc-GFP細胞に対する抗体IIIを用いた間接的Tag-lite(登録商標)結合アッセイ法。抗体はすべて、12.5nM〜0.02nMの範囲の2倍希釈系列に希釈した。d2標識した二次抗体は、75nMの濃度で使用した。Graph Pad Prism 6.0を用いて非線形回帰によって結合曲線を当てはめた。 安定にトランスフェクトされた受容体X発現HEK NFκB-Luc-GFP細胞、一過性にトランスフェクトされた受容体X発現HEK NFκB-Luc-GFP細胞、および一過性にスーパートランスフェクトされた受容体X発現HEK NFκB-Luc-GFP細胞を、24時間のインキュベーション後にONE-Glo(商標)ルシフェラーゼアッセイシステムで試験した。40〜2.5nMの範囲の2倍希釈系列の抗体IIIによって、NFκB経路を活性化した。二次抗体としての抗hu IgG Fcγ特異的ヤギIgG F(ab)2を、一次抗体と比べて4倍モル濃度程度の量(extent)で添加した。 一過性にスーパートランスフェクトされた受容体X発現HEK NFκB-Luc-GFP細胞を、24時間のインキュベーション後にONE-Glo(商標)ルシフェラーゼアッセイシステムで試験した。40nMの濃度の抗体IIIによって、NFκB経路を活性化した。二次抗体としての抗hu IgG Fcγ特異的ヤギIgG F(ab)2および抗hu-IgG-d2を、1:1〜1:5(一次抗体:二次抗体)の間の比で試験した。 一過性にスーパートランスフェクトされた受容体X発現HEK NFκB-Luc-GFP細胞に対する抗体IIIを用いた間接的Tag-lite(登録商標)結合アッセイ法。抗体IIIは、40nM〜0.02nMの範囲の2倍希釈系列に希釈した。d2標識した二次抗体は、120nMの濃度で使用した。Graph Pad Prism 6.0を用いて非線形回帰によって結合曲線を当てはめた。 一過性にスーパートランスフェクトされた受容体X発現HEK NFκB-Luc-GFP細胞を、24時間のインキュベーション後にONE-Glo(商標)ルシフェラーゼアッセイシステムで試験した。40〜0.02nMの範囲の2倍希釈系列の抗体IIIによって、NFκB経路を活性化した。二次抗体としての抗ヒトIgG-d2を、一次抗体と比べて3倍モル濃度程度の量で添加した。 huDR5発現HEK EBNA細胞に対するドロジツマブおよび対照抗体AbYを用いたアルファスクリーン結合アッセイ法。抗体はすべて、ウェル中で2倍希釈して、0.63nMから始めて最終的に0.05nMまで希釈した。(A)非線形回帰によって当てはめたドロジツマブおよびAbYのシグモイド結合曲線。(B)非線形回帰による、ドロジツマブおよびAbYのKD値の決定。 受容体Z発現HEK EBNA細胞に対するAbZおよび対照抗体AbYを用いたアルファスクリーン結合アッセイ法。抗体はすべて、ウェル中で2倍希釈して、2.5nMから始めて最終的に0.05nMまで希釈した。(A)非線形回帰によって当てはめたAbZおよびAbYのシグモイド結合曲線。(B)非線形回帰によるAbZおよびAbYのKD値の決定。 PBS/1%FCS(a)または増殖培地(b)のいずれかにおけるCD3発現細胞に対する抗CD3のWGA-FRET結合アッセイ法。さらに、非結合対照IgGを、陰性対照として両方のアッセイ法に含めた。Graph Pad Prismの一部位特異的結合機能を用いて曲線を当てはめた。 PBS/1%FCS(a)または増殖培地(b)のいずれかにおける、抗CD3の結合によるNFkB経路の活性化。さらに、非結合対照IgGを、陰性対照として両方のアッセイ法において使用した。ONE-Glo(登録商標)ルシフェラーゼアッセイシステムを用いて、ルシフェラーゼ活性を測定した。GraphPad Prismのシグモイド用量反応フィットを用いて、EC50を決定した。
発明の態様の詳細な説明
I. 定義
本明細書において使用される場合、「レポーター遺伝子」とは、その発現を分析することができる遺伝子を意味する。1つの好ましい態様において、「レポーター遺伝子」とは、試験しようとする抗体またはリガンドの活性を間接的に検出するための代用物としてその産生および検出が使用されるタンパク質をコードする遺伝子である。レポータータンパク質は、レポーター遺伝子によってコードされる、そのタンパク質である。好ましくは、レポーター遺伝子は、その触媒活性を単純なアッセイ方法によって検出できる酵素をコードするか、または内部蛍光のような特性を有しており、その結果、最低限の試料調製しか必要としない単純かつ迅速なアッセイ法でレポーター遺伝子の発現を検出できるタンパク質をコードする。その触媒活性を検出できる酵素の非限定的な例は、ルシフェラーゼ、βガラクトシダーゼ、アルカリホスファターゼである。ルシフェラーゼは、分子量(MW)が61kDaである単量体酵素である。ルシフェラーゼは、触媒として作用し、アデノシン三リン酸(ATP)およびMg2+の存在下でD-ルシフェリンをルシフェリルアデニル酸に変換することができる。さらに、ピロリン酸(PPi)およびアデノシン一リン酸(AMP)が副産物として生成する。次いで、中間体であるルシフェリルアデニル酸が酸化されてオキシルシフェリン、二酸化炭素(CO2)、および光となる。オキシルシフェリンは、反応によって放出される光に基づいてルミノメーターで定量的に測定することができる生物発光産物である。ルシフェラーゼレポーターアッセイ法、例えばルシフェラーゼ1000アッセイシステムおよびONE-Glo(商標)ルシフェラーゼアッセイシステムは市販されており、当技術分野において公知である。
「内部蛍光を有しているタンパク質」という用語は、タンパク質内の内部アミノ酸の環化および酸化を通じて、または蛍光補助因子の酵素的付加を介して、蛍光性の高い内部発色団を形成することができるタンパク質を意味する。「内部蛍光を有しているタンパク質」という用語は、野生型蛍光タンパク質および変化したスペクトル特性または物理的特性を示す変異体を含む。この用語は、タンパク質内の改変されていないチロシン基、トリプトファン基、ヒスチジン基、およびフェニルアラニン基の蛍光寄与(fluorescence contribution)だけに基づく弱い蛍光を提示するタンパク質は含まない。内部蛍光を有しているタンパク質は当技術分野において公知であり、例えば、緑色蛍光タンパク質 (GFP)、赤色蛍光タンパク質(RFP)、青色蛍光タンパク質(BFP、Heim et al. 1994, 1996)、CFPとして公知であるシアン蛍光変種(Heim et al. 1996; Tsien 1998);YFPとして公知である黄色蛍光変種(Ormo et al. 1996; Wachter et al. 1998);サファイア(Sapphire)として公知であるバイオレット励起可能な緑色蛍光変種(Tsien 1998; Zapata-Hommer et al. 2003);および高感度緑色蛍光タンパク質またはEGFPとして公知であるシアン励起可能な緑色蛍光を発する変種(Yang et al. 1996)があり、例えば生細胞画像化(例えばIncucyte)または蛍光分光法によって測定することができる。
本明細書において使用される場合、「抗体またはリガンドの機能性」という用語は、抗体またはリガンドの生物活性、例えば、抗体またはリガンドが細胞応答を誘発する能力を意味する。例えば、標的抗原への結合を通じて、抗体が、細胞のシグナル伝達経路を活性化または抑制する、すなわち、標的抗原の機能を活性化または阻害する。例えば、試験しようとする抗体は、NF-κB経路を活性化する受容体に結合し、この結合を通じて、細胞核内の応答エレメントが活性化される。この応答エレメントをレポーター遺伝子に連結すると、本発明のアッセイ法において活性化を容易にモニターすることができる。「機能性」という用語はまた、抗体のエフェクター機能、例えば、C1q結合および補体依存性細胞障害(CDC);Fc受容体結合;抗体依存性細胞媒介性細胞障害(ADCC);抗体依存性細胞食作用(ADCP)、サイトカイン分泌、抗原提示細胞による免疫複合体を介した抗原取込み;細胞表面受容体(例えばB細胞受容体)の下方調節;ならびにB細胞活性化も含む。
本明細書において使用される場合、「標的抗原」とは、抗体またはその断片によって標的とされ得る任意の表面抗原を意味する。また、リガンドによって標的とされ得る受容体も意味する。「標的抗原の応答エレメント」とは、特定の転写因子が結合すると活性化または発現停止され得る特異的な転写因子結合エレメントまたはシス作用エレメントを意味する。1つの態様において、応答エレメントは、転写因子が結合するとレポーター遺伝子の発現を推進する最小プロモーター(例えばTATAボックスプロモーター)の上流に位置しているシス作用性エンハンサーエレメントである。
本明細書において使用される場合、「NF-κB」とは、「活性化B細胞の核内因子κ軽鎖エンハンサー」を意味し、アポトーシスのメディエーターをコードする多くの遺伝子の調節、ウイルス複製、腫瘍形成、様々な自己免疫疾患、および炎症応答に関係付けられている転写因子である。NF-κBは、ほぼすべての真核細胞中に存在している。通常、NFκBは不活性な状態で細胞質ゾル中に位置しており、これは阻害性κB(IκB)タンパク質と複合体を形成するためである。リガンドが内在性膜受容体(「NF-κB経路の受容体」とも呼ばれる)に結合すると、IκBキナーゼ(IKK)が活性化される。IKKは、2つのキナーゼおよび1つの調節サブユニットからなる酵素複合体である。この複合体は、IκBタンパク質をリン酸化し、その結果、ユビキチン化、したがってプロテアソームによるそれらのタンパク質の分解を招く。最後に、遊離型NFκBは活性な状態で存在しており、核に移行し、κB DNAエレメントに結合し、標的遺伝子の転写を誘導する。
本明細書において使用される場合、「NF-κB経路」とは、NF-κBの活性の変化(modulation)をもたらす刺激を意味する。例えば、リガンドまたは抗体のいずれかの結合によってToll様受容体シグナル伝達、TNF受容体シグナル伝達、T細胞受容体およびB細胞受容体のシグナル伝達が活性化されると、NF-κBが活性化される。続いて、リン酸化されたNF-κB二量体がκB DNAエレメントに結合し、標的遺伝子の転写を誘導する。本明細書において有用である例示的なκB DNAエレメントは、「NF-κB経路の応答エレメント」と呼ばれる。したがって、「NF-κB経路の受容体」とは、NF-κBの活性の変化を引き起こすことができる受容体を意味する。「NF-κB経路の受容体」の例は、Toll様受容体、TNF 受容体、T細胞受容体、およびB細胞受容体である。その標的に結合するとNF-κBの活性の変化をもたらす抗体の非限定的な例は、抗CD40抗体、抗DR5抗体、抗DR4抗体、抗41BB抗体、抗Ox40抗体、および抗GITR抗体である。その標的に結合するとNF-κBの活性の変化をもたらすリガンドの例は、OX40リガンド、4-1BBリガンド、またはCD40リガンドである。
本明細書において使用される「ハイスループットスクリーニング」とは、その中で説明される新規のアッセイ法を用いて、比較的多数の様々な抗体候補またはリガンド候補を結合および機能性について解析できることを意味すると理解されるべきである。典型的なこのようなハイスループットスクリーニングは、マルチウェルのマイクロタイタープレートにおいて、例えば、96ウェルプレートもしくは384ウェルプレートで、または1536ウェルのプレートもしくは3456ウェルのプレートで実施される。
「エネルギードナー化合物」という用語は、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)エネルギードナー化合物、生物発光エネルギー移動(BRET)エネルギードナー化合物、およびアルファスクリーンドナービーズを意味する。「エネルギーアクセプター化合物」という用語は、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)エネルギーアクセプター化合物、生物発光エネルギー移動(BRET)エネルギーアクセプター化合物、およびアルファスクリーンアクセプタービーズを意味する。
「FRET」という用語は、2つの発色団の間で起こる蛍光共鳴エネルギー移動プロセスを意味する。本明細書において使用される発色団は、例えば、蛍光構成要素、発光構成要素、および他の非蛍光構成要素を含む。「FRET」、「蛍光共鳴エネルギー移動」、「Forster共鳴エネルギー移動」、および「共鳴エネルギー移動」は、本明細書において同義的に使用される。
本明細書において使用される「時間分解FRET」という用語は、アクセプター蛍光体の発光の時間分解検出に基づく、2つの発色団の間で起こるエネルギー移動プロセスを意味する(Morrison, L.E., 1988. Anal. Biochem., 174 (1) 101)。
本明細書において使用される、「FRETドナー」または「FRETエネルギードナー」とも呼ばれる「FRETエネルギードナー化合物」は、FRETにおいて有用なドナー蛍光体を意味し、当技術分野において公知である。エネルギードナー化合物の非限定的な例は、表Bに挙げている。好ましくは、FRETエネルギードナー化合物は、例えばテルビウムクリプテート(「Lumi4-Tb」)およびユウロピウムクリプテート(Eu3+クリプテート)のような希土類元素である。方法において有用である適切なランタニドキレートには、例えば米国特許第5,622,821号、同第5,639,615号、同第5,656,433号、および同第4,822,733号において説明されているものが含まれる。
本明細書において使用される「FRETアクセプター」または「FRETエネルギーアクセプター」とも呼ばれる「FRETエネルギーアクセプター化合物」は、FRETにおいて有用なアクセプター蛍光体を意味し、当技術分野において公知であり、例えば、Alexa蛍光色素(Life technologies)またはCy5、YFP、FITC、化学修飾されたアロフィコシアニン(XL665)、d2である。エネルギーアクセプター化合物のさらなる非限定的な例は、表Bに挙げている。好ましくは、FRETエネルギーアクセプター化合物はd2である。
「BRET」という用語は、生物発光ドナー部分(すなわちBRETエネルギードナー化合物)と蛍光アクセプター部分(すなわちBRETエネルギーアクセプター化合物)の間の共鳴エネルギー移動(RET)を意味する。
「アルファスクリーン」という用語は、増幅発光近接ホモジニアスアッセイ法(Amplified Luminescent Proximity Homogeneous Assay)を意味し、例えば、"Luminescent oxygen channeling immunoassay: Measurement of particle binding kinetics by chemiluminescence." Ullman, EF, et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA, Vol. 91, pp. 5426-5430, June 1994において説明されている。
「親和性」とは、ある分子(例えば、抗体またはリガンド)の1つの結合部位とその結合相手(例えば、抗原または受容体)の間の非共有結合性相互作用の総合計の強さを意味する。別段の定めが無い限り、本明細書において使用される場合、「結合親和性」とは、結合対のメンバー(例えば、抗体および抗原)間の1:1相互作用を反映する固有の結合親和性を意味する。通常、分子Xの相手Yに対する親和性は、解離定数(Kd)によって表すことができる。親和性は、本明細書において説明するものを含む、当技術分野において公知の一般的な方法によって測定することができる。結合親和性を測定するための具体的な説明的かつ例示的態様を以下に説明する。
「親和性成熟」抗体とは、抗原に対する抗体の親和性を向上させるような変化を有していない親抗体と比べて、1つまたは複数の超可変領域(HVR)に1つまたは複数の変化を有している抗体を意味する。
本明細書において使用される場合、「リガンド」という用語は、別の分子に結合できる任意の分子を意味する。リガンド分子の例には、ペプチド、タンパク質、炭水化物、脂質、または核酸が含まれるが、それらに限定されるわけではない。本明細書において説明するアッセイ法を用いて解析するのに好ましいリガンドは、標的抗原に結合する能力があるペプチドまたはタンパク質である。通常、このような標的抗原は、細胞表面受容体である。
本明細書における「抗体」という用語は、最も広い意味で使用され、限定されるわけではないが、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば二重特異性抗体)、および所望の抗原結合活性を示す限りにおいて抗体断片を含む、様々な抗体構造体を包含する。
「抗体断片」とは、インタクト抗体が結合する抗原に結合する、インタクト抗体の一部分を含む、インタクト抗体以外の分子を意味する。抗体断片の例には、Fv、Fab、Fab'、Fab'-SH、F(ab')2;ダイアボディ、交差Fab(cross-Fab)断片;直鎖状抗体;単鎖抗体分子(例えばscFv);および抗体断片から形成された多重特異性抗体が含まれるが、それらに限定されるわけではない。scFv抗体は、例えば、Houston, J.S., Methods in Enzymol. 203 (1991) 46-96において説明されている。さらに、抗体断片は、VHドメインの特徴を有している、すなわち、VLドメインと組み合わさることができるか、またはVLドメインの特徴を有している、すなわち、VHドメインと組み合わさることができて、機能的な抗原結合部位となり(to)、それによって完全長抗体の抗原結合特性を提供する、単鎖ポリペプチドも含む。
本明細書において使用される場合、「Fab断片」とは、軽鎖のVLドメインおよび定常ドメイン(CL)を含む軽鎖断片、ならびに重鎖のVHドメインおよび第1の定常ドメイン(CH1)を含む、抗体断片を意味する。
「免疫グロブリン分子」という用語は、天然に存在する抗体の構造を有しているタンパク質を意味する。例えば、IgGクラスの免疫グロブリンは、ジスルフィド結合されている2つの軽鎖および2つの重鎖から構成される、約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。N末端からC末端に向かって、各重鎖は、可変重鎖ドメインまたは重鎖可変ドメインとも呼ばれる可変領域(VH)と、それに続く、重鎖定常領域とも呼ばれる3つの定常ドメイン(CH1、CH2、およびCH3)を有している。同様に、N末端からC末端に向かって、各軽鎖は、可変軽鎖ドメインまたは軽鎖可変ドメインとも呼ばれる可変領域(VL)と、それに続く、軽鎖定常領域とも呼ばれる軽鎖定常(CL)ドメインを有している。免疫グロブリンの重鎖は、α(IgA)、δ(IgD)、ε(IgE)、γ(IgG)、またはμ(IgM)と呼ばれる5つのタイプの内の1つに割り当てることができ、これらの内のいくつかは、サブタイプ、例えば、γ1(IgG1)、γ2(IgG2)、γ3(IgG3)、γ4(IgG4)、α1(IgA1)、およびα2(IgA2)にさらに分類することができる。免疫グロブリンの軽鎖は、定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)およびラムダ(λ)と呼ばれる2つのタイプの内の1つに割り当てることができる。免疫グロブリンは、免疫グロブリンヒンジ領域によって連結された2つのFab分子および1つのFcドメインから本質的になる。
「抗原結合ドメイン」という用語は、抗原の一部分または全体に特異的に結合し、かつ相補的である領域を含む抗原結合分子の一部分を意味する。抗原が大型である場合、抗原結合分子は、エピトープと呼ばれる、抗原の特定の部分にしか結合しないことがある。抗原結合ドメインは、例えば、1つまたは複数の抗体可変ドメイン(抗体可変領域とも呼ばれる)によって提供され得る。好ましくは、抗原結合ドメインは、抗体の軽鎖可変領域(VL)および抗体の重鎖可変領域(VH)を含む。
「キメラ」抗体という用語は、重鎖および/または軽鎖の一部分は、ある特定の供給源または種に由来するが、重鎖および/または軽鎖の残りの部分は、異なる供給源または種に由来する、通常は組換えDNA技術によって作製される(prepared)抗体を意味する。ウサギ可変領域およびヒト定常領域を含むキメラ抗体が好ましい。本発明によって包含される「キメラ抗体」の他の好ましい形態は、特にC1q結合および/またはFc受容体(FcR)結合に関して本発明に従う特性を生じるように、定常領域が元の抗体のものから改変または変更されたものである。このようなキメラ抗体は、「クラススイッチ抗体」とも呼ばれる。キメラ抗体は、免疫グロブリン可変領域をコードするDNAセグメントおよび免疫グロブリン定常領域をコードするDNAセグメントを含む免疫グロブリン遺伝子を発現させた産物である。従来の組換えDNA技術および遺伝子トランスフェクション技術を使用するキメラ抗体を作製するための方法は、当技術分野において周知である。例えば、Morrison, S.L., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81 (1984) 6851-6855;米国特許第5,202,238号および同第5,204,244号を参照されたい。
「エフェクター機能」とは、抗体アイソタイプによって異なる、抗体のFc領域に起因し得る生物活性を意味する。抗体エフェクター機能の例には、C1q結合および補体依存性細胞障害(CDC);Fc受容体結合;抗体依存性細胞媒介性細胞障害(ADCC);抗体依存性細胞食作用(ADCP)、サイトカイン分泌、抗原提示細胞による免疫複合体を介した抗原取込み;細胞表面受容体(例えばB細胞受容体)の下方調節;ならびにB細胞活性化が含まれる。
本明細書において使用される場合、「操作する(engineer)、操作された(engineered)、操作すること(engineering)」という用語は、天然に存在するポリペプチドもしくは組換えポリペプチドまたはその断片のペプチド骨格の任意の操作または翻訳後修飾を含むとみなされる。操作することは、個々のアミノ酸のアミノ酸配列、グリコシル化パターン、または側鎖基の改変、ならびにこれらのアプローチの組合せを含む。
本明細書において使用される「アミノ酸変異」という用語は、アミノ酸の置換、欠失、挿入、および修飾を包含することを意図している。最終構築物が所望の特徴、例えば、Fc受容体への結合の減少または別のペプチドとの結合の増加を示すことを条件として、最終構築物に到達するように、置換、欠失、挿入、および修飾の任意の組合せを行うことができる。アミノ酸配列の欠失および挿入には、アミノ末端および/またはカルボキシ末端のアミノ酸の欠失および挿入が含まれる。具体的なアミノ酸変異は、アミノ酸置換である。例えば、Fc領域の結合特徴を変化させるためには、非保存的アミノ酸置換、すなわち1つのアミノ酸を異なる構造特性および/または化学特性を有している別のアミノ酸で置換することが、特に好ましい。アミノ酸置換には、天然に存在しないアミノ酸による置換、または20種類の標準アミノ酸の天然に存在するアミノ酸誘導体(例えば、4-ヒドロキシプロリン、3-メチルヒスチジン、オルニチン、ホモセリン、5-ヒドロキシリジン)による置換が含まれる。アミノ酸変異は、当技術分野において周知の遺伝学的方法または化学的方法を用いて生じさせることができる。遺伝学的方法には、部位特異的変異誘発、PCR、および遺伝子合成などが含まれ得る。遺伝子操作以外の方法、例えば化学修飾によってアミノ酸の側鎖基を変化させる方法もまた有用であり得ることが、予想される。同じアミノ酸変異を示すのに、様々な呼称が本明細書において使用され得る。例えば、Fcドメインの329位におけるプロリンからグリシンへの置換は、329G、G329、G329、P329G、またはPro329Glyと表すことができる。
薬剤、例えば薬学的製剤の「有効量」とは、必要な投与量および期間で、所望の治療的結果または予防的結果を実現するのに有効な量を意味する。
本明細書における「Fcドメイン」または「Fc領域」という用語は、定常領域の少なくとも一部分を含む、免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために使用される。この用語は、天然配列のFc領域および変種Fc領域を含む。IgG重鎖のFc領域の境界は若干変わる場合があるが、通常、ヒトIgG重鎖Fc領域は、Cys226またはPro230から重鎖のカルボキシル末端までに及ぶと定められている。しかしながら、Fc領域のC末端リジン(Lys447)は、存在する場合もあれば存在しない場合もある。本明細書において別段の指定が無い限り、Fc 領域中または定常領域中のアミノ酸残基の番号付与は、EU指標とも呼ばれるEU番号付与方式に従い、これは、Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD, 1991において説明されている。本明細書において使用されるFcドメインの「サブユニット」とは、二量体Fcドメインを形成している2つのポリペプチドの内の1つ、すなわち、安定な自己会合をする能力がある、免疫グロブリン重鎖のC末端定常領域を含む1つのポリペプチドを意味する。例えば、IgG Fcドメインのサブユニットは、IgG CH2定常ドメインおよびIgG CH3定常ドメインを含む。
「Fcドメインの第1のサブユニットおよび第2のサブユニットの会合を促進する改変」とは、Fcドメインサブユニットを含むポリペプチドが同一のポリペプチドと会合してホモ二量体を形成するのを減少させるか、または防止する、Fcドメインサブユニットのペプチド骨格の操作または翻訳後修飾である。本明細書において使用される会合を促進する改変は、会合することが望まれる2つのFcドメインサブユニットのそれぞれ(すなわち、Fcドメインの第1のサブユニットおよび第2のサブユニット)に別々の改変を施すことを具体的には含み、これらの改変は、これら2つのFcドメインサブユニットの会合を促進するように互いに相補的である。例えば、会合を促進する改変は、Fcドメインサブユニットの会合を立体的または静電気的に有利にするために、Fcドメインサブユニットの一方または両方の構造または電荷をそれぞれ変化させてよい。したがって、各サブニットに融合される他の構成要素(例えば抗原結合部分)が同じではないという点で同一ではない可能性がある、第1のFcドメインサブユニットを含むポリペプチドと第2のFcドメインサブユニットを含むポリペプチドとの間で、(ヘテロ)二量体化が起こる。いくつかの態様において、会合を促進する改変は、Fcドメイン中にアミノ酸変異、具体的にはアミノ酸置換を含む。特定の態様において、会合を促進する改変は、Fcドメインの2つのサブユニットのそれぞれに、別々のアミノ酸変異、具体的にはアミノ酸置換を含む。
「完全長抗体」、「インタクト抗体」、および「全長抗体」という用語は、本明細書において同義的に使用されて、天然抗体の構造に実質的に同様の構造を有しているか、または本明細書において定義するFc領域を含む重鎖を有している抗体を意味する。
「宿主細胞」、「宿主細胞株」、および「宿主細胞培養物」という用語は同義的に使用され、外来性核酸が導入された細胞を、そのような細胞の子孫を含めて意味する。宿主細胞には、「形質転換体」および「形質転換細胞」が含まれ、初代形質転換細胞およびそれに由来する子孫が継代の回数に関わらず含まれる。子孫の核酸内容は親細胞と完全に同一でなくてもよく、変異を含んでもよい。最初に形質転換された細胞においてスクリーニングまたは選択されたのと同じ機能または生物活性を有している変異子孫は、本明細書に含まれる。
「ヒト抗体」は、ヒトもしくはヒト細胞によって産生される抗体またはヒト抗体レパートリーもしくは他のヒト抗体コード配列を使用する非ヒト供給源由来の抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有している抗体である。ヒト抗体のこの定義は、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を具体的には除く。本発明によるキメラ抗体およびヒト化抗体に関しても言及するように、本明細書において使用される「ヒト抗体」という用語は、例えば、「クラススイッチ」、すなわちFc部分の変更または変異(例えば、IgG1からIgG4への変異および/またはIgG1/IgG4変異)によって、特にC1q結合および/またはFcR結合に関して本発明に従う特性を生じるように、定常領域が改変されたそのような抗体も含む。
「組換えヒト抗体」という用語は、本明細書において使用される場合、組換え手段によって調製、発現、作製、または単離されるすべてのヒト抗体、例えば、NS0細胞もしくはCHO細胞などの宿主細胞から、またはヒト免疫グロブリン遺伝子に関してトランスジェニックである動物(例えばマウス)から単離された抗体、あるいは宿主細胞中にトランスフェクトされた組換え発現ベクターを用いて発現させた抗体を含むことを意図する。このような組換えヒト抗体は、再配列された形態の可変領域および定常領域を有している。本発明による組換えヒト抗体は、インビボの体細胞超変異に供された。したがって、組換え抗体のVH領域およびVL領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖系列のVH配列およびVL配列に由来し関連してはいるものの、インビボにおいてヒト抗体生殖系列レパートリー内に天然には存在し得ない配列である。
本明細書の目的のための「アクセプターヒトフレームワーク」とは、下記に定義するように、ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークに由来する軽鎖可変ドメイン(VL)フレームワークまたは重鎖可変ドメイン(VH)フレームワークのアミノ酸配列を含むフレームワークである。ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワーク「に由来する」アクセプターヒトフレームワークは、その同じアミノ酸配列を含んでもよく、またはアミノ酸配列変更を含んでもよい。いくつかの態様において、アミノ酸変更の数は、10個もしくはそれ以下、9個もしくはそれ以下、8個もしくはそれ以下、7個もしくはそれ以下、6個もしくはそれ以下、5個もしくはそれ以下、4個もしくはそれ以下、3個もしくはそれ以下、または2個もしくはそれ以下である。いくつかの態様において、VLアクセプターヒトフレームワークは、VLヒト免疫グロブリンフレームワーク配列またはヒトコンセンサスフレームワーク配列と配列が同一である。
「フレームワーク」または「FR」は、超可変領域(HVR)残基以外の可変ドメイン残基を意味する。一般に、可変ドメインのFRは、4つのFRドメイン、すなわちFR1、FR2、FR3、およびFR4からなる。したがって、一般に、HVR配列およびFR配列は、VH(またはVL)中に次の順序で現われる:FR1-H1(L1)-FR2-H2(L2)-FR3-H3(L3)-FR4。
「ヒトコンセンサスフレームワーク」は、ヒト免疫グロブリンのVLまたはVHのフレームワーク配列の選抜物(selection)において最も多く存在するアミノ酸残基に相当するフレームワークである。一般に、ヒト免疫グロブリンVL配列またはVH配列の選抜物は、可変ドメイン配列のサブグループに由来する。一般に、配列のサブグループは、Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, NIH Publication 91-3242, Bethesda MD (1991), vols. 1-3に記載されているようなサブグループである。1つの態様において、VLについて、サブグループは、前記Kabat et al.に記載されているようなサブグループκIである。1つの態様において、VHについて、サブグループは、前記Kabat et al.に記載されているようなサブグループIIIである。
「ヒト化」抗体とは、非ヒトHVRに由来するアミノ酸残基およびヒトFRに由来するアミノ酸残基を含むキメラ抗体を意味する。特定の態様において、ヒト化抗体は、HVR(例えばCDR)のすべてまたは実質的にすべてが非ヒト抗体のものに相当し、FRのすべてまたは実質的にすべてがヒト抗体のものに相当する、少なくとも1つ、および典型的には2つの可変ドメインの実質的にすべてを含む。ヒト化抗体は、ヒト抗体に由来する抗体定常領域についての少なくとも1つの部分を任意で含んでよい。抗体、例えば、非ヒト抗体の「ヒト化型」とは、ヒト化を受けた抗体を意味する。本発明によって包含される「ヒト化抗体」の他の形態は、特にC1q結合および/またはFc受容体(FcR)結合に関して本発明に従う特性を生じるように、定常領域が元の抗体のものからさらに改変または変更されたものである。
本明細書において使用される「超可変領域」または「HVR」という用語は、配列が超可変性であり、かつ/または特徴的な構造の(structurally defined)ループ(「超可変ループ」)を形成する、抗体可変ドメインの各領域を意味する。一般に、天然の4鎖抗体は6個のHVRを含む。3個はVH中にあり(H1、H2、H3)、3個はVL中にある(L1、L2、L3)。一般に、HVRは、超可変ループおよび/または「相補性決定領域」(CDR)に由来するアミノ酸残基を含み、後者は、配列の可変性が最も高く、かつ/または抗原認識に関与している。例示的な超可変ループは、アミノ酸残基26〜32(L1)、50〜52(L2)、91〜96(L3)、26〜32(H1)、53〜55(H2)、および96〜101(H3)に存在する。(Chothia and Lesk, J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987))。例示的なCDR(CDR-L1、CDR-L2、CDR-L3、CDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3)は、L1のアミノ酸残基24〜34、L2のアミノ酸残基50〜56、L3のアミノ酸残基89〜97、H1のアミノ酸残基31〜35B、H2のアミノ酸残基50〜65、およびH3のアミノ酸残基95〜102に存在する。(Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (1991))。超可変領域(HVR)は、相補性決定領域(CDR)とも呼ばれ、これらの用語は、抗原結合領域を形成する可変領域の一部分に関して、本明細書において同義的に使用される。この特別な領域は、Kabat et al., U.S. Dept. of Health and Human Services, "Sequences of Proteins of Immunological Interest" (1983)およびChothia et al., J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987)によって説明されており、それらの中で、定義は、互いに比較した場合に重複するアミノ酸残基またはアミノ酸残基の部分集合を含む。それでもなお、抗体またはその変種のCDRに言及するためにいずれかの定義を適用することは、本明細書において定義され使用される用語の範囲内であると意図される。上記に引用した各参照文献によって定義されるCDRを含む適切なアミノ酸残基を、比較物として下記の表Aに示す。個々のCDRを含む厳密な残基番号は、CDRの配列および大きさによって変わる。当業者は、抗体の可変領域アミノ酸配列が与えられれば、どの残基が個々のCDRを構成するかをごく普通に判定することができる。
(表A)CDRの定義1
Figure 0006782716
1表A中のすべてのCDR定義の番号付与は、Kabatらによって説明される番号付与の慣例に従っている(下記を参照されたい)。
2表A中で使用される、小文字の「b」を含む「AbM」は、Oxford Molecularの「AbM」抗体モデリングソフトウェアによって定義されるCDRを意味する。
Kabatらはまた、任意の抗体に適用可能である、可変領域配列のための番号付与方式も定めた。当業者は、任意の可変領域配列に「Kabatの番号付与」のこの方式を、その配列それ自体以外のいかなる実験データにも頼らずに、明快に割り当てることができる。本明細書において使用される場合、「Kabatの番号付与」とは、Kabat et al., U.S. Dept. of Health and Human Services, "Sequence of Proteins of Immunological Interest" (1983)によって説明されている番号付与方式を意味する。別段の指定が無い限り、抗体可変領域中の特定のアミノ酸残基位置の番号付与への言及は、Kabatの番号付与方式に従っている。
VH中のCDR1は例外として、一般に、CDRは、超可変ループを形成するアミノ酸残基を含む。また、CDRは、抗原に接触する残基である「特異性決定残基」または「SDR」も含む。SDRは、短縮CDRまたはa-CDRと呼ばれるCDR領域内に含まれる。例示的なa-CDR(a-CDR-L1、a-CDR-L2、a-CDR-L3、a-CDR-H1、a-CDR-H2、およびa-CDR-H3)は、L1のアミノ酸残基31〜34、L2のアミノ酸残基50〜55、L3のアミノ酸残基89〜96、H1のアミノ酸残基31〜35B、H2のアミノ酸残基50〜58、およびH3のアミノ酸残基95〜102に存在する。(Almagro and Fransson, Front. Biosci. 13:1619-1633 (2008)を参照されたい)。別段の定めが無い限り、本明細書において、可変ドメイン中のHVR残基および他の残基(例えばFR残基)は前記Kabat et al.に従って番号を付与する。
「免疫結合体」とは、限定されるわけではないが細胞障害性物質を含む1種または複数種の異種分子に結合された抗体である。
「個体」または「対象」は哺乳動物である。哺乳動物には、飼い慣らされた動物(例えば、雌ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ、およびウマ)、霊長類(例えば、ヒトおよび非ヒト霊長類、例えばサル)、ウサギ、およびげっ歯動物(例えば、マウスおよびラット)が含まれるが、それらに限定されるわけではない。特定の態様において、個体または対象はヒトである。
「単離された」抗体とは、その天然環境の構成要素から分離された抗体である。いくつかの態様において、抗体は、例えば、電気泳動(例えば、SDS-PAGE、等電点電気泳動(IEF)、キャピラリー電気泳動)またはクロマトグラフィー(例えば、イオン交換もしくは逆相HPLC)によって測定した場合に95%または99%を超える純度まで精製される。抗体純度を評価するための方法を再検討するためには、例えばFlatman et al., J. Chromatogr. B 848:79-87 (2007)を参照されたい。
「単離された」核酸とは、その天然環境の構成要素から単離された核酸分子を意味する。単離された核酸は、その核酸分子を通常含む細胞に含まれる核酸分子を含むが、その核酸分子は、染色体外に存在するか、または天然の染色体位置とは異なる染色体位置に存在する。
本明細書において使用される「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に同種の抗体集団から得られた抗体を意味する。すなわち、この集団を構成する個々の抗体は、存在し得る変種抗体を除いて、同一であり、かつ/または同じエピトープに結合する(例えば、天然に存在する変異を含むか、またはモノクローナル抗体調製物を作製する間に発生するこのような変種は、通常、少量で存在する)。様々な決定基(エピトープ)を対象とする様々な抗体を典型的に含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体調製物の各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基を対象とする。したがって、「モノクローナル」という修飾語は、実質的に同種の抗体集団から得られたものであるという抗体の特徴を示し、いずれかの特定の方法による抗体の作製を必要とすると解釈されるべきではない。例えば、本発明に従って使用するためのモノクローナル抗体は、限定されるわけではないが、ハイブリドーマ法、組換えDNA法、ファージディスプレイ法、およびヒト免疫グロブリン遺伝子座の全部または一部分を含むトランスジェニック動物を使用する方法を含む、様々な技術によって作製することができ、モノクローナル抗体を作製するためのこのような方法および他の例示的な方法は、本明細書において説明される。
「裸抗体」とは、異種部分(例えば細胞障害性部分)にも放射性標識物質にも結合されていない抗体を意味する。裸抗体は、薬学的製剤中に存在してよい。
「天然抗体」とは、様々な構造を有している天然に存在する免疫グロブリン分子を意味する。例えば、天然IgG抗体は、ジスルフィド結合されている2つの同一の軽鎖および2つの同一の重鎖から構成される、約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。N末端からC末端に向かって、各重鎖は、可変重鎖(heavy)ドメインまたは重鎖可変ドメインとも呼ばれる可変領域(VH)とそれに続く3つの定常ドメイン(CH1、CH2、およびCH3)を有している。同様に、N末端からC末端に向かって、各軽鎖は、可変軽鎖(light)ドメインまたは軽鎖可変ドメインとも呼ばれる可変領域(VL)とそれに続く軽鎖定常(CL)ドメインを有している。抗体の軽鎖は、定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)およびラムダ(λ)と呼ばれる2つのタイプの内の1つに割り当てることができる。
「添付文書」という用語は、治療的製品の市販用パッケージに習慣的に含まれる、適応症、用法、投薬量、投与、併用療法、禁忌、および/またはそのような治療的製品の使用に関する警告についての情報を含む取扱い説明書を意味するのに使用される。
「実質的な交差反応性がない」とは、分子(例えば抗体)が、特にその標的抗原と比較した場合に、その分子の実際の標的抗原とは異なる抗原(例えば、標的抗原に密接な関係がある抗原)を認識もせず、特異的に結合もしないことを意味する。例えば、抗体は、実際の標的抗原とは異なる抗原に約10%未満〜約5%未満の量で結合し得るか、または実際の標的抗原とは異なる抗原の約10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.2%、もしくは0.1%未満、好ましくは約2%、1%、もしくは0.5%未満、および最も好ましくは約0.2%もしくは0.1%未満からなる量で、実際の標的抗原とは異なる該抗原に結合し得る。
参照ポリペプチド配列に対する「アミノ酸配列同一性パーセント(%)」とは、配列を整列させ、かつ必要な場合にはギャップを導入して、最大の配列同一性パーセントを実現した後の、かつ、いかなる保存的置換も配列同一性の一部分とみなさない、参照ポリペプチド配列中のアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基のパーセンテージと定義される。アミノ酸配列同一性パーセントを決定するためのアライメントは、当技術分野の技能の範囲内である様々な方法において、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGN、またはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなど公的に利用可能なコンピューターソフトウェアを用いて、実現することができる。当業者は、比較される配列の全長に渡って最大限のアライメントを実現するために必要とされる任意のアルゴリズムを含む、配列を整列させるための適切なパラメーターを決定することができる。しかしながら、本明細書における目的のためには、配列比較コンピュータープログラムALIGN-2を用いて、アミノ酸配列同一性パーセント(%)の値を得る。配列比較コンピュータープログラムALIGN-2は、Genentech, Inc.の著作物であり、ソースコードはユーザー向け文書と共にU.S. Copyright Office(Washington D.C.、20559)に提出され、米国著作権登録番号(U.S. Copyright Registration No.)TXU510087として登録されている。ALIGN-2プログラムは、Genentech, Inc.(South San Francisco, California)から公的に入手可能であり、またはソースコードからコンパイルされ得る。ALIGN-2プログラムは、デジタルUNIX V4.0Dを含むUNIXオペレーティング・システムにおける使用向けにコンパイルされるべきである。配列比較パラメーターはすべて、ALIGN-2プログラムによって設定され、変動しない。
ALIGN-2がアミノ酸配列比較のために使用される状況において、所与のアミノ酸配列Bに対する、との、または比較しての(to、with、or against)所与のアミノ酸配列Aのアミノ酸配列同一性%(あるいは、所与のアミノ酸配列Bに対する、との、または比較してある特定のアミノ酸配列同一性%を有しているか、または含む所与のアミノ酸配列Aと表現することもできる)は、次のようにして算出される:
100×比X/Y
上式で、Xは、配列アラインメントプログラムALIGN-2によって、そのプログラムによるAおよびBのアラインメントにおいて同一のマッチとして採点されたアミノ酸残基の数であり、Yは、B中のアミノ酸残基の総数である。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さに等しくない場合、Bに対するAのアミノ酸配列同一性%は、Aに対するBのアミノ酸配列同一性%と等しくならないことが認識されるであろう。別段の記載が特に無い限り、本明細書において使用されるアミノ酸配列同一性%の値はすべて、すぐ前の節で説明したようにして、ALIGN-2コンピュータープログラムを用いて得られる。
「薬学的製剤」という用語は、その中に含まれる有効成分の生物活性が有効になるのを可能にするような形態で存在し、かつその製剤が投与されると思われる対象に対して許容されないほど毒性である追加成分を含まない、調製物を意味する。
「薬学的に許容される担体」とは、対象にとって非毒性である、薬学的製剤中の有効成分以外の成分を意味する。薬学的に許容される担体には、緩衝剤、賦形剤、安定化剤、または保存剤が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
本明細書において使用される場合、「治療(treatment)」(およびその文法的変形、例えば「治療する(treat)」または「治療すること(treating)」)とは、治療される個体の自然経過を変化させようとする臨床的介入を意味し、予防のため、または臨床的病状の過程の間に実施され得る。治療の望ましい効果には、疾患の発生または再発の予防、症状の軽減、疾患の直接的または間接的な任意の病理学的転帰の減少、転移の予防、疾患の進行速度の低下、疾患状態の改善または緩和、および寛解または予後改善が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
「可変領域」または「可変ドメイン」という用語は、抗体が抗原に結合するのに関与している抗体重鎖または抗体軽鎖のドメインを意味する。一般に、天然抗体の重鎖および軽鎖の可変ドメイン(それぞれVHおよびVL)は、4つの保存されているフレームワーク領域(FR)および3つの超可変領域(HVR)を各ドメインが含む、類似した構造を有している。(例えば、Kindt et al. Kuby Immunology, 6th ed., W.H. Freeman and Co., page 91 (2007)を参照されたい)。1つのVHドメインまたはVLドメインは、抗原結合特異性を与えるのに十分であり得る。さらに、特定の抗原に結合する抗体は、その抗原に結合する抗体に由来するVHドメインまたはVLドメインを用いて、相補的なVLドメインまたはVHドメインのライブラリーをそれぞれスクリーニングして、単離することができる。例えば、Portolano et al., J. Immunol. 150:880-887 (1993); Clarkson et al., Nature 352:624-628 (1991)を参照されたい。
「抗体の抗原結合部位」という用語は、本明細書において使用される場合、抗原結合を担っている抗体のアミノ酸残基を意味する。抗体の抗原結合部分は、「相補性決定領域」または「CDR」に由来するアミノ酸残基を含む。「フレームワーク」領域または「FR」領域とは、本明細書において定義する超可変領域残基以外の可変ドメイン領域である。したがって、抗体の軽鎖可変ドメインおよび重鎖可変ドメインは、N末端からC末端に向かって、ドメインFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、およびFR4を含む。特に、重鎖のCDR3は、抗原結合に最も寄与し、抗体の特性を定める領域である。CDR領域およびFR領域は、Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th ed., Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (1991)の標準的な定義および/または「超可変ループ」に由来する残基に基づいて決定される。
抗体特異性とは、抗原の特定のエピトープに対する抗体の選択的認識を意味する。例えば、天然の抗体は単一特異性である。
本明細書において使用される「単一特異性」抗体という用語は、1つまたは複数の結合部位を有しており、各結合部位が同じ抗原の同じエピトープに結合する、抗体を意味する。
本明細書において使用される「二重特異性」抗体という用語は、同じ抗原または異なる抗原の異なるエピトープにそれぞれが結合する少なくとも2つの結合部位を有している抗体を意味する。多重特異性抗体を作製するための技術には、異なる特異性を有している2つの免疫グロブリン重鎖-軽鎖対の組み換え同時発現(Milstein and Cuello, Nature 305: 537 (1983))、WO 93/08829、およびTraunecker et al., EMBO J. 10: 3655 (1991)を参照されたい)および「ノブインホール(knob-in-hole)」操作(例えば、米国特許第5,731,168号を参照されたい)が含まれるが、それらに限定されるわけではない。また、抗体Fcヘテロ二量体分子を作製するための静電気的操縦(electrostatic steering)効果を操作すること(WO 2009/089004);2つまたはそれ以上の抗体または断片を架橋すること(例えば、米国特許第4,676,980号、およびBrennan et al., Science, 229: 81 (1985)を参照されたい);二重特異性抗体を作製するためのロイシンジッパーを用いること(例えば、Kostelny et al., J. Immunol., 148(5):1547-1553 (1992)を参照されたい);二重特異性抗体断片を作製するための「ダイアボディ」技術を用いること(例えば、Hollinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:6444-6448 (1993)を参照されたい);および単鎖Fv(sFv)二量体を用いること(例えば、Gruber et al., J. Immunol., 152:5368 (1994)を参照されたい);ならびに例えばTutt et al. J. Immunol. 147: 60 (1991)で説明されているようにして、三重特異性抗体を調製することによって、多重特異性抗体を作製することもできる。
「オクトパス抗体(Octopus antibodies)」を含む、3つまたはそれ以上の機能的抗原結合部位を有している操作された抗体もまた、本明細書に含まれる(例えば、US 2006/0025576 A1を参照されたい)。
また、本明細書の抗体または断片には、「二重作用性Fab」または「DAF」も含まれる(例えばUS2008/0069820を参照されたい)。
本出願内で使用される「価」という用語は、抗体分子中に特定の数の結合部位が存在することを意味する。したがって、「二価」、「四価」、および「六価」という用語は、1つの抗体分子中に2個の結合部位、4個の結合部位、および6個の結合部位が存在することをそれぞれ意味する。本発明による二重特異性抗体は、少なくとも「二価」であり、「三価」または「多価」(例えば、「四価」もしくは「六価」)であってよい。
本発明の抗体は、2つまたはそれ以上の結合部位を有しており、二重特異性である。すなわち、これらの抗体は、2つより多い結合部位がある(すなわち、抗体が三価または多価である)場合でさえ、二重特異性であってよい。本発明の二重特異性抗体には、例えば、多価単鎖抗体、ダイアボディおよびトリボディ、ならびに完全長抗体の定常ドメイン構造を有しており、この定常ドメイン構造に別の抗原結合部位(例えば、単鎖Fv、VHドメインおよび/もしくはVLドメイン、Fab、または(Fab)2)が1つまたは複数のペプチドリンカーを介して連結されている抗体が含まれる。抗体は、単一の種に由来する完全長であってもよく、またはキメラ化もしくはヒト化されていてもよい。
本明細書において使用される「ベクター」という用語は、それが連結されている別の核酸を増殖させることができる核酸分子を意味する。この用語は、自己複製する核酸構造体としてのベクター、ならびに導入された先の宿主細胞のゲノム中に組み入れられるベクターを含む。ある種のベクターは、それらが機能的に連結されている核酸配列の発現を指示することができる。このようなベクターは、本明細書において「発現ベクター」と呼ばれる。
本出願内で使用される「アミノ酸」という用語は、アラニン(3文字記号:ala、1文字記号:A)、アルギニン(arg、R)、アスパラギン(asn、N)、アスパラギン酸(asp、D)、システイン(cys、C)、グルタミン(gln、Q)、グルタミン酸(glu、E)、グリシン(gly、G)、ヒスチジン(his、H)、イソロイシン(ile、I)、ロイシン(leu、L)、リジン(lys、K)、メチオニン(met、M)、フェニルアラニン(phe、F)、プロリン(pro、P)、セリン(ser、S)、トレオニン(thr、T)、トリプトファン(trp、W)、チロシン(tyr、Y)、およびバリン(val、V)を含む、天然に存在するカルボキシαアミノ酸の群を意味する。
本明細書において使用される場合、「細胞」、「細胞株」、および「細胞培養物」という表現は同義的に使用され、このような呼称はすべて、子孫を含む。したがって、「トランスフェクタント」および「トランスフェクトされた細胞」という単語は、初代対象細胞、および移入(transfer)の回数に関係なくそれに由来する培養物を含む。意図的な変異または偶発性の変異が原因で、すべての子孫のDNA内容物が全く同一というわけではない場合があることもまた、理解されている。最初に形質転換された細胞においてスクリーニングされたのと同じ機能または生物活性を有している変種子孫が含まれる。
「親和性」とは、ある分子(例えば抗体またはリガンド)の1つの結合部位とその結合相手(例えば、抗原)の間の非共有結合性相互作用の総合計の強さを意味する。別段の定めが無い限り、本明細書において使用される場合、「結合親和性」とは、結合対のメンバー(例えば、抗体および抗原/リガンドおよび受容体)間の1:1相互作用を反映する固有の結合親和性を意味する。通常、分子Xの相手Yに対する親和性は、解離定数(Kd)によって表すことができる。親和性は、本明細書において説明するものを含む、当技術分野において公知の一般的な方法によって測定することができる。結合親和性を測定するための具体的な説明的かつ例示的態様を以下に説明する。
本明細書において使用される場合、「結合すること」または「特異的に結合すること」という用語は、インビトロアッセイ法における、好ましくは蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)に基づく、抗原のエピトープへの抗体の結合または受容体へのリガンドの結合を意味する。
「エピトープ」という用語は、抗体に特異的に結合することができる任意のポリペプチド決定基を含む。特定の態様において、エピトープ決定基は、アミノ酸、糖側鎖、ホスホリル、またはスルホニルなど分子の化学的に活性な表面基(grouping)を含み、いくつかの態様において、特殊な三次元構造特徴、およびまたは特殊な荷電特性を有している場合がある。エピトープとは、抗体が結合する抗原領域である。
本明細書において使用される場合、特に接頭辞「グリコ(glyco)-」を伴う「操作する(engineer)、操作された(engineered)、操作すること(engineering)」という用語、ならびに「グリコシル化操作」という用語は、天然に存在するポリペプチドもしくは組換えポリペプチドまたはその断片のグリコシル化パターンの任意の操作を含むとみなされる。グリコシル化操作は、細胞で発現される糖タンパク質のグリコシル化変化を実現するためにオリゴ糖合成経路を遺伝子操作することを含む、細胞のグリコシル化の仕組みを対象とする代謝操作(metabolic engineering)を含む。さらに、グリコシル化操作は、グリコシル化に対する変異および細胞環境の影響も含む。1つの態様において、グリコシル化操作は、グリコシルトランスフェラーゼ活性の変更である。特定の態様において、操作の結果、グルコサミニルトランスフェラーゼ活性および/またはフコシルトランスフェラーゼ活性が変化する。
II. 新規なアッセイ法
本発明者らは、1つのウェルまたはバイアル中で抗体またはリガンドの結合および機能性を一緒に解析することを可能にする、ハイスループット形式(384ウェル)に適しているアッセイ法を開発した。抗体またはリガンドの機能性(例えば、抗体またはリガンドの生物活性、例えば、抗体またはリガンドが細胞応答を誘発して、例えば標的抗原を活性化または阻害する能力)を、応答エレメントが活性化されると発現されるレポーター遺伝子を有しているトランスフェクトされたレポーター細胞を用いることによって評価する。1つの態様において、該レポーター遺伝子は、蛍光タンパク質(例えば、緑色蛍光タンパク質、GFP)をコードしている遺伝子および/またはその触媒活性を検出できる酵素(例えばルシフェラーゼ)をコードしている遺伝子より選択される。結合を検討するために、細胞ベースのFRET法、BRET、またはアルファスクリーンを適用する。
1つの態様において、以下の段階を含む、標的抗原に特異的に結合する抗体またはリガンドの結合および機能性を明らかにするためのインビトロアッセイ法が提供される
i)細胞を提供する段階であって、該細胞が
a)該細胞の表面で標的抗原を発現し、
b)エネルギードナー化合物で共有結合的または非共有結合的に標識されており、かつ
c)標的抗原の応答エレメントの制御下にあるレポーター遺伝子を含む、
段階;
ii)試験しようとする抗体またはリガンドを添加する段階;
iii)エネルギー移動を測定することによって標的抗原への結合を測定する段階であって、エネルギーアクセプター化合物が、試験しようとする抗体かまたは一次抗体(第1の抗体)に結合する二次抗体のいずれかに共有結合的または非共有結合的に結合している、段階;および
iv)レポーター遺伝子の発現レベルと標的抗原の活性化レベルまたは阻害レベルとの相関関係を明らかにすることによって、抗体またはリガンドの機能性を明らかにする段階。
1つの態様において、エネルギードナー化合物およびエネルギーアクセプター化合物は、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)エネルギードナー化合物およびエネルギーアクセプター化合物であり、段階iii)で測定されるエネルギー移動は、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)である。1つの態様において、FRETは時間分解FRETである。
マイクロプレート形式でタンパク質-タンパク質相互作用を研究するための技術は、時間分解FRETである。時間分解蛍光共鳴エネルギー移動(TR-FRET)適用は、ドナー分子とアクセプター分子の間のエネルギー移動に基づいている。FRETは、蛍光性ドナー分子から適切なアクセプター分子への無放射エネルギー移動である。ドナー分子は、光源によって励起されると、蛍光を発する。アクセプター分子が近接しており、かつドナー分子の発光スペクトルがアクセプター分子の励起スペクトルと部分的に重なる場合、ドナー分子は、蛍光を発する代わりに、その励起エネルギーをアクセプター分子に移動させることができる。次に、アクセプター分子は、アクセプター発光波長で蛍光を発する。エネルギー移動が起こるためにはドナー分子とアクセプター分子との距離が約20nm未満、例えば距離が5〜10nmである必要があるため、アクセプター発光波長で蛍光が出現することから、ドナー分子およびアクセプター分子が互いに近接していることが示唆される。典型的には、ドナー分子およびアクセプター分子の近接は、生物親和性相互作用、例えば、タンパク質-タンパク質結合、抗原-抗体結合、リガンド-受容体結合、DNAハイブリダイゼーション、およびDNA-タンパク質結合によって実現する。
多種多様なドナー分子およびアクセプター分子が存在する。典型的には、FRETアッセイ法で使用されるドナー分子およびアクセプター分子は、半減期が短い蛍光体である。従来のFRET化学反応の性能は、緩衝液、タンパク質、化学的化合物、および細胞溶解物などの試料構成要素に由来するバックグラウンド蛍光によって低下し得る。検出された蛍光強度に、この自己蛍光に対する補正を施さなければならず、このことによってアッセイ法感度が低下し、結果の解釈が複雑になり得る。このタイプのバックグラウンド蛍光は一時的であり(存続期間はナノ秒範囲)、したがって、時間分解方法論を用いて排除することができる。
TR-FRETは、ユウロピウム(Eu)イオン、テルビウム(Tb)イオン、サマリウム(Sm)イオン、およびジスプロシウム(Dy)イオンなどのランタニドイオンの独特の特性を利用する。希土類イオンの錯体は、特殊な光物理的特性およびスペクトル特性を有しているため、生物学における蛍光応用のための関心対象である。具体的には、これらは、より伝統的な蛍光体と比べた場合、大きなストークスシフトおよび長い発光半減期(マイクロ秒〜ミリ秒)を有している。
FRETエネルギーアクセプターはPerkinElmer(例えばLANCE(登録商標)製品)、Invitrogen(例えばLanthaScreen(登録商標)製品)、およびCisbio Bioassays(例えばHTRF(登録商標)製品)から市販されている。
いくつかの態様において、FRETエネルギードナーおよびFRETエネルギーアクセプターは、下記の表に挙げる蛍光体の内の1つまたは複数に基づいて選択されてよい。
(表B):FRETエネルギードナー分子およびエネルギーアクセプター分子の例
Figure 0006782716
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下記の情報もまた、FRETエネルギードナーおよびFRETエネルギーアクセプターの組合せを選択する際に考慮に入れてもよい。参照により本明細書に組み入れられる米国特許第5,998,146号では、蛍光体またはクエンチャーと組み合わせた、ランタニドキレート錯体、特にユウロピウム錯体およびテルビウム錯体の使用を説明している。この特許はまた、寿命が長いランタニドキレート錯体の特性も説明している。
エネルギードナーとしての金属錯体およびエネルギーアクセプターとしてのフィコビリタンパク質の種類に由来する色素に基づくFRET系は、当技術分野において公知である(EP 76695; Hemmilae, Chemical Analysis 117, John Wiley & Sons, Inc., (1991) 135-139)。(例えば、Wallac, OYまたはCis Bio Packardによる)確立された市販の系は、金属錯体としてのランタニドキレートおよびフィコビリタンパク質からなるFRETペアを使用する。ランタニドキレート錯体、特にユウロピウム錯体またはテルビウム錯体の特性は公知であり、蛍光体と組み合わせるだけでなく、クエンチャーとも組み合わせて使用され得る。
ルテニウム錯体は、それ自体が、特に電気化学発光のための蛍光体または発光団として使用される。ルテニウムキレート錯体は、例えば、EP178450およびEP772616によって公知であり、その中で、これらの錯体を生体分子に結合するための方法も説明されている。FRET系においてエネルギードナーとしてそれらを使用することは、これらの特許では考察されていない。
アロフィコシアニンは、異常に高い吸光係数(約700000L/M cm)およびまた極度に高い発光係数などの特性を有している。これらは、FRET系において蛍光体アクセプターとしてそれらを使用するために有用な前提条件である。さらに、これらの色素は、水に容易に溶解でき、安定であることが公知である。
低分子蛍光体という用語は、分子量が300〜3000Daの間である蛍光色素を意味する。このような低分子蛍光体の群、例えば、キサンテン、シアニン、ローダミン、およびオキサジンは、重要な特徴に関してAPCと比べてかなり不利な点がある。すなわち、例えば、それらの吸光係数はかなり小さく、約100000L/M cmの範囲である。
いくつかの態様において、本発明の方法およびアッセイ法は、ホモジニアスTR-FRETアッセイ法技術を利用する。TR-FRETは、時間分解蛍光(TRF)およびFRETの組合せである。TRFは、蛍光シグナルの読取りを例えば約10ナノ秒遅延させることによって、バックグラウンド蛍光を減少させる。この遅延(すなわちゲート期間(gating period))の後、試料中でより長く持続している蛍光が測定される。したがって、TR-FRETを用いることによって、例えば試料中の妨害物質が原因であり得る妨害バックグラウンド蛍光が同時に検出されるのではなく、逆に、エネルギー移動によって生成または抑制された蛍光のみが測定される。TR-FRET系の結果として生じる蛍光は、適切な測定装置を用いて測定される。このような時間分解検出系は、例えば、パルスレーザーダイオード、発光ダイオード(LED)、またはパルスダイレーザーを励起光源として使用する。測定は、適切な時間遅延の後に、すなわち、妨害バックグラウンドシグナルが減衰した後に、行われる。時間分解FRETシグナルを測定するための装置および方法は、当技術分野において説明されている。
この技術の必要条件は、関心対象のシグナルが、長い蛍光寿命を有している化合物に対応していなければならないということである。このような寿命が長い蛍光性化合物は希土類ランタニドである。例えば、Eu3+は、ミリ秒程度の蛍光寿命を有している。TR-FRETは、前述したように、FRETエネルギードナーおよびFRETエネルギーアクセプターを必要とする。FRETと同様に、TR-FRETのエネルギードナーとアクセプターのペアは、次の内のすべてを含む、1つまたは複数に基づいて選択することができる:(1)FRETエネルギードナーの発光スペクトルは、FRETエネルギーアクセプターの励起スペクトルと部分的に重なることが望ましい;(2)FRETパートナー(すなわち、FRETエネルギードナーおよびFRETエネルギーアクセプター)の発光スペクトルは、重なり部分がない蛍光を示すことが望ましい;(3)FRET量子収率(すなわちFRETドナーからFRETアクセプターに移動されるエネルギー)はできるだけ高いことが望ましい(例えば、FRETは、1〜20nm、例えば5〜10nmの測定距離に渡って約1〜100%、例えば、30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、98%、および99%の効率を有していることが望ましい);(4)FRETシグナル(すなわち蛍光)は、試料によって生じる蛍光、例えば自己蛍光と区別することが可能でなければならない;ならびに(5)FRETドナーおよびFRETアクセプターは、FRETシグナルの検出を可能にする半減期を有していることが望ましい(例えば、FRETは、10-9秒〜10-4秒の範囲の時間尺度で光を発してよく(be bright)、起こってよい)。
いくつかの態様において、TR-FRETドナーおよびTR-FRETアクセプターは、上記の表に挙げた蛍光体の内の1つまたは複数に基づいて選択されてよい。
いくつかの態様において、TR-FRETドナーは、ランタニドイオン、例えばキレートに結合したランタニドイオンであってよい。いくつかの態様において、ランタニドイオンは、ユウロピウムイオン、テルビウムイオン、サマリウムイオン、またはジスプロシウムイオンであってよい。本明細書において使用される場合、Euには、EuおよびあらゆるEuイオン、例えばEu3+が含まれる。いくつかの態様において、TR-FRETドナーはDsRedであってよい。いくつかの態様において、TR-FRETドナーはRi2であってよい。適切なTR-FRETドナーの選択は、上記に挙げた基準および選択される個々のTR-FRETアクセプターを考慮する必要があることを理解すべきである。
いくつかの態様において、TR-FRETアクセプターは、フルオレセイン、Cy5、アロフィコシアニン(APC―例えば、XL665、d2(Cisbio)、およびBG-647)ならびに蛍光タンパク質(例えば、GFP、CFP、YFP、BFP、RFP、および他のGFP変種)からなる群より選択されてよい。
いくつかの態様において、TR-FRETドナーはテルビウムであってよく、TR-FRETアクセプターはフルオレセインであってよい。いくつかの態様において、TR-FRETドナーはEuであってよく、TR-FRETアクセプターは、Cy5またはAPC(例えば、XL665、d2(Cisbio)、BG-647、およびCy5に関連したTR-FRETアクセプター)であってよい。1つの態様において、FRETエネルギードナー化合物はテルビウムクリプテートであり、かつ/またはFRETエネルギーアクセプター化合物はd2である。
いくつかの態様において、TR-FRETドナーおよびTR-FRETアクセプターは、TR-FRETドナーおよび/またはTR-FRETアクセプターの機能を高める第2の化合物と組み合わせられてよい。例えば、TR-FRETドナーおよびTR-FRETアクセプターは、蛍光体半減期を延ばすためのクリプテート封入と組み合わせられてよい。あるいは、またはさらに、TR-FRETドナーおよびTTR-FRETアクセプターは、例えばDELFIA(登録商標)高感度系と組み合わせられてもよい。いくつかの態様において、TR-FRETドナーおよびTR-FRETアクセプターは、TR-FRETシグナルの寿命または検出を増強または延長する、例えば、緩衝剤、塩、増強物質、キレート剤、および安定剤(例えば光安定剤)と組み合わせられてよい。
上記に説明し、かつ参照により本明細書に組み入れられる米国特許第4,925,804号、米国特許第5,637,509号、米国特許第4,761,481号、米国特許第4,920,195号、米国特許第5,032,677号、米国特許第5,202,423号、米国特許第5,324,825号、米国特許第5,457,186号、米国特許第5,571,897号、米国特許第7,250,517号、US2005/0202565において説明されているように、分子、例えばタンパク質は、適切なFRETまたはTR-FRETのドナーおよびアクセプターによって直接的にまたは間接的に標識されてよい。
時間分解FRETは、ドナーの励起とアクセプターの発光測定の間に約50〜150μsの時間遅延を導入することによって時間分解様式で測定される。したがって、媒体、生物学的調製物、またはアクセプターの直接的励起によって生じる短寿命のバックグラウンド蛍光は測定されず、アッセイ法の感度が上昇する。一般に使用されるアクセプター分子は、d2と呼ばれる赤色蛍光有機色素であり、これはXL665の100分の1の小ささであり、XL665に非常に似た光物理的特性を示す。(Amoravain M, Lyotard S, Jaga D, Lebreton ML, Servent F, Bomer U. Introduction of a new HTRF acceptor, d2: Development of a complete GPCR platform for a Gs, Gi and Gq screening. SBS; 11th Annual Conference; Geneva. 2005.)。
様々な発光および光検知機器のいずれかを用いて、FRETを開始し(例えば、FRETドナーを励起するか、もしくはFRETドナーを励起することができる試薬を励起する)、かつ/または該FRETによって生じる発光を検知することができる。前記方法論の結果としてFRETペアの第1のメンバーおよび第2のメンバーによってもたらされる発光は、視覚によって、写真によって、光量測定によって、分光測定によって、または媒体中の各構成要素の量に関係しているその量を測定するための他の任意の便利な手段によって、検知または測定することができる。
標的抗原への抗体またはリガンドの結合は、定性的に、すなわちFRETシグナルの存在または非存在に基づいて判定することができ、FRETシグナルがまったく存在しないことは結合がないことを示唆する。通常、「FRETシグナルの非存在」は、特定の閾値に基づいて、すなわち、任意のバックグラウンドシグナルを差し引いた後に、定められる。通常、バックグラウンドシグナルは、試験しようとする抗体またはリガンド以外の全試薬を用いてFRETアッセイ法を実施することによって測定される。標的抗原への抗体またはリガンドの結合は、定量的に(quantitavely)測定することができ、すなわちFRET法を用いて結合のレベルまたは強度を測定することができる。この目的のために、試験しようとする抗体またはリガンドを様々な濃度で試験し、最大半量有効濃度(EC50)を決定する。EC50とは、抗体またはリガンドの結合が、ベースラインと指定曝露時間後の最大値との中間レベルである(halfway)、抗体またはリガンドの濃度を意味する。したがって、用量反応曲線のEC50は、最大結合の50%が観察される、抗体またはリガンドの濃度に相当する。KD(解離定数)は、当技術分野において公知の方法によって、用量反応曲線から算出することができる。
1つの態様において、標的抗原への抗体またはリガンドの結合は、生物発光共鳴エネルギー移動(BRET)を用いて測定される。したがって、1つの態様において、エネルギードナー化合物およびエネルギーアクセプター化合物は、生物発光エネルギー移動(BRET)エネルギードナー化合物およびエネルギーアクセプター化合物であり、段階iii)で測定されるエネルギー移動は、生物発光エネルギー移動(BRET)である。BRETアッセイ技術は、生物発光ドナー部分と蛍光アクセプター部分の間の効率的な共鳴エネルギー移動(RET)に基づいている。BRETは、天然に存在する現象であり、ルシフェラーゼをドナーとして使用するという点で、FRETと異なる。1つの態様において、ウミシイタケのレニラ・レニホルミス(Renilla reniformis)から単離されたルシフェラーゼ(Rluc)およびDeepBlueC(DBC)と名付けられたセレンテラジン基質がドナーとして使用される。酸素の存在下で、Rlucは、DBCがセレンテラジンに変換するのを触媒し、それに付随して395nmでピークになる発光が起こる(青色光)。適切なアクセプターが近接している場合、この青色光エネルギーはRETによって捕捉される。1つの態様において、BRETのアクセプターは、Rluc/DBC反応によって放出されるエネルギーを最大限に吸収するように操作されたGFP変種(GFP2)である。RETによってGFP2が励起されると、510nmでの緑色光の放出が起こる。Rluc/DBCとGFP2の間のエネルギー移動効率は、アクセプター発光強度をドナー発光強度で割ることにより比率計測によって決定される。この比率計測値は、BRETシグナルと呼ばれ、RlucのGFPへの近接を反映する。別の態様において、Rlucはドナーとして使用され、セレンテラジン誘導体がその基質としてされ、黄色蛍光タンパク質(YFP)がアクセプターとして使用される。
1つの態様において、標的抗原への抗体またはリガンドの結合は、アルファスクリーン(増幅発光近接ホモジニアスアッセイ法(Amplified Luminescent Proximity Homogeneous Assay))を用いて測定される。したがって、1つの態様において、エネルギードナー化合物およびエネルギーアクセプター化合物は、アルファスクリーンドナービーズおよびアルファスクリーンアクセプタービーズであり、段階iii)で測定されるエネルギー移動は、一重項酸素からアクセプタービーズ内のチオキセン誘導体へのエネルギー移動である。アルファスクリーンは、「アクセプター」および「ドナー」ビーズを用いる非放射性の近接ホモジニアスアッセイ法である。アルファスクリーンは、マイクロプレート形式で生体分子相互作用を研究するのに使用される、ビーズをベースとする検出系である。ビーズ上に捕捉された分子の結合により、一方のビーズから他方のビーズへのエネルギー移動が起こり、最終的に、発光/蛍光シグナルを生じる。アルファスクリーンアッセイ法はすべて、2つのビーズタイプ、すなわちドナービーズおよびアクセプタービーズを含む。どちらのビーズタイプも、非特異的結合および自己会合を最小限にし、かつ生体分子をビーズ表面に結合させるための反応性アルデヒド基を提供するヒドロゲルでコーティングされる。
アルファスクリーンアッセイ法はすべて、2つのビーズタイプ、すなわちドナービーズおよびアクセプタービーズを含む。各ビーズタイプは、異なる化学物質の組合せを含み、これらの化学物質がアルファスクリーン技術の鍵となる要素である。ドナービーズは、光増感剤であるフタロシアニンを含み、これは、680nmのレーザー光で照射されると、周囲の酸素を励起された形態の一重項酸素に変換する。他の励起された分子と同様に、一重項酸素は、基底状態に戻るまでの存続期間が限られている。その4秒の半減期内に、一重項酸素は溶液中で約200nm拡散することができる。アクセプタービーズがその近接した範囲に存在する場合、一重項酸素からアクセプタービーズ内のチオキセン誘導体へのエネルギー移動が起こり、続いて520〜620nmで光を生じることになる。アクセプタービーズの非存在下では、一重項酸素は基底状態に落ち、シグナルは生じない。1つの態様において、このアッセイ法で使用される細胞は、ストレプトアビジンでコーティングされたドナービーズに結合されたビオチン標識WGAで標識される。1つの態様において、アクセプタービーズはプロテインAに結合される。プロテインAは抗体のFcドメインに結合するため、これらのアクセプタービーズを用いて、試験しようとする抗体を容易に標識することができる。
細胞表面および試験しようとする抗体もしくはリガンド、またはBRET、FRET、もしくはアルファスクリーンのための二次抗体を標識するための方法は、当技術分野において公知である。例えば、結合相手は、直接的にまたは間接的に(例えば、ビオチン、ジゴキシゲニン、フルオレセイン、ジニトロフェノールなどの非ペプチドタグおよびまたFLAG、HisTag、cmyc、HA、V5、strepタグ、ACP/MCPタグなどのペプチドタグのようなタグを介して、またはアビジン-ストレプトアビジン相互作用を用いて)標識することができ、これらは、例えば、参照により本明細書に組み入れられるYang et al., Analytical Biochemistry 351:158-160, 2006によって説明されている。ACPタグおよびMCPタグは、アシルキャリアータンパク質に基づく小型タンパク質タグである。ACPタグまたはMCPタグと、補酵素Aの誘導体であるそれらの基質とが共有結合を形成するためには、添加されるシンターゼの存在が必要である。標識反応において、CoAに結合された基が、組換えシンターゼによってACPタグまたはMCPタグに共有結合される。ACPタグ標識のためのACPシンターゼ(NEB P9301番)またはACPタグおよびMCPタグ二重標識のためのSFPシンターゼ(NEB P9302番)のいずれかを用いて、標識をタグに共有結合させることができる。
1つの態様において、標的抗原は、エネルギードナー化合物によって共有結合的または非共有結合的に標識される。例えば、解析しようとするタンパク質(例えば、本明細書において解析しようとする抗体またはリガンドの標的抗原)は、20kDaのDNA修復酵素であるヒトO6-アルキルグアニン-DNA-アルキルトランスフェラーゼ(AGT)にそれを連結することによって標識することができる。この酵素は、ドナーまたはアクセプターの蛍光色素にそれ自体が結合しているO6-ベンジルグアニン(BG)誘導体への共有結合を作ることができる。関心対象の標識された標的抗原を発現する細胞を作製する場合、関心対象のタンパク質に融合されたヒトO6-アルキルグアニン-DNA-アルキルトランスフェラーゼ(AGT)をコードするプラスミドで細胞をトランスフェクトする。トランスフェクション後、細胞表面で発現される融合タンパク質をBG-蛍光体によって標識し、次いで、FRETに基づく相互作用研究のために使用することができる。好ましくは、標的抗原は、FRETドナー分子で標識される。(細胞表面で発現される標識された標的抗原に結合する)解析しようとする抗体またはリガンドは、エネルギードナー化合物またはエネルギーアクセプター化合物、例えば、蛍光色素またはアルファスクリーンビーズを用いて共有結合的または非共有結合的に標識することができる。解析しようとする抗体またはリガンドに結合する二次抗体(例えば抗ヒトIgG)を標識することもまた、可能である。
標識はまた、FRETのドナー分子またはアクセプター分子で標識されたコムギ胚芽凝集素(WGA)を通じて実現することもできる。それゆえ、1つの態様において、エネルギードナー化合物は、コムギ胚芽凝集素(WGA)に共有結合的または非共有結合的に連結される。したがって、前述したようにして細胞をトランスフェクトし融合タンパク質を標識する代わりに、細胞それら自体をドナー分子で標識することができる。WGAは、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)およびN-アセチルノイラミン酸(シアル酸とも呼ばれる)などの炭水化物に高い親和性で結合する。このような糖タイプが細胞表面に遍在するため、ドナー蛍光体またはアクセプター蛍光体と結合したWGAを結合させることにより、細胞表面のランダムな標識が可能になる。次いで、細胞膜に埋もれ込んでいる関心対象の抗原に結合する抗体またはリガンドの相互作用を、評価しようとする抗体もしくはリガンドまたは検出用の二次抗体に直接的に結合したアクセプター標識へのWGA-テルビウムからのエネルギー移動に基づいて、検出することができる。
1つの態様において、レポーター遺伝子は、蛍光タンパク質をコードしている遺伝子、またはその触媒活性を検出することができる酵素をコードしている遺伝子より選択される。1つの態様において、蛍光タンパク質は、緑色蛍光タンパク質(GFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)、赤色蛍光タンパク質(RFP)、青色蛍光タンパク質(BFP、Heim et al. 1994, 1996)、CFPとして公知であるシアン蛍光変種(Heim et al. 1996; Tsien 1998); YFPとして公知である黄色蛍光変種(Ormo et al. 1996; Wachter et al. 1998);サファイア(Sapphire)として公知であるバイオレット励起可能な緑色蛍光変種(Tsien 1998; Zapata-Hommer et al. 2003);および高感度緑色蛍光タンパク質またはEGFPとして公知であるシアン励起可能な緑色蛍光を発する変種(Yang et al. 1996) 高感度緑色蛍光タンパク質(EGFP)からなる群より選択され、例えば生細胞画像化(例えばIncucyte)または蛍光分光法によって測定することができる。1つの態様において、その触媒活性を検出できる酵素は、ルシフェラーゼ、βガラクトシダーゼ、アルカリホスファターゼからなる群より選択される。1つの好ましい態様において、レポーター遺伝子は、GFPをコードしている。
1つの態様において、レポーター遺伝子は、ルシフェラーゼをコードしている。ルシフェラーゼの活性は、市販されているアッセイ法、例えばルシフェラーゼ1000アッセイシステム(またはONE-Glo(商標)ルシフェラーゼアッセイシステム)(どちらもPromega)によって検出することができる。ルシフェラーゼ1000アッセイシステムは、基質としてのルシフェリンに加えて補酵素A(CoA)を含み、その結果、少なくとも1分間持続する強い光強度が得られる。細胞内ルシフェラーゼを分析する場合、検出に先立って細胞を溶解する必要がある。したがって、ルシフェラーゼ1000アッセイシステムとは別に、細胞溶解緩衝液が提供された。比較すると、ONE-Glo(商標)ルシフェラーゼアッセイシステムは、ルシフェラーゼ基質を細胞溶解試薬と組み合わせ、より安定なシグナルも示す。反応の副産物として生じる光は、可視スペクトル全体からルミノメーターによって集められる。本明細書において示す例において、シグナルは、産生されたルシフェラーゼの量に比例し、したがって、NFκBプロモーター(promotor)の活性化の強さに比例していた。別の態様において、ルシフェラーゼアッセイ法は、ルシフェラーゼが細胞から分泌される場合に使用される。したがって、このアッセイ法は、細胞を溶解せずに実施することができる。
レポーター遺伝子の発現は、試験しようとするリガンドまたは抗体の機能性と直接的な相関関係があり得る。例えば、蛍光タンパク質をコードする遺伝子またはルシフェラーゼをコードする遺伝子をレポーター遺伝子として使用する場合、細胞から検出される光の量は、試験しようとする抗体またはリガンドの標的抗原の活性化または阻害と直接的な相関関係がある。1つの態様において、抗体またはリガンドは、様々な濃度で試験され、レポーター遺伝子の活性化または阻害の最大半量有効濃度(EC50)が決定される。EC50とは、抗体またはリガンドが、ベースラインと指定曝露時間後の最大値との中間レベルまで(halfway)、レポーター遺伝子を活性化または阻害する、抗体またはリガンドの濃度を意味する。したがって、用量反応曲線のEC50は、標的抗原に対する最大活性化作用または最大阻害作用の50%が観察される、抗体またはリガンドの濃度に相当する。
1つの態様において、細胞は、標的抗原を天然に発現する。1つの態様において、標的抗原は、細胞表面受容体である。別の態様において、細胞は、標的抗原をコードする遺伝子コピーをトランスフェクトされた後に、該標的抗原を発現している。別の態様において、標的抗原を天然に発現している細胞は、該標的抗原をコードする付加的な遺伝子コピーをトランスフェクトされる。1つの態様において、細胞は、ヒトO6-アルキルグアニン-DNA-アルキルトランスフェラーゼ(AGT)をコードする遺伝子コピーに融合された標的抗原をコードする遺伝子コピーをトランスフェクトされる。1つの態様において、細胞は真核細胞、好ましくはヒト細胞または霊長類細胞である。
1つの態様において、結合は、上記に概説したKD値およびEC50値を決定するために、希釈曲線として測定される。
標的抗原への抗体またはリガンドの結合は、細胞応答を誘発し、その結果、直接的にまたは細胞シグナル伝達カスケードを通じて、応答エレメントの活性が調節される。応答エレメントとは、転写因子などによって発現停止または活性化され得るDNAエレメントである。応答エレメントは当技術分野において公知であり、例えばレポーターベクターに組み込まれて(in)、市販されている。通常、応答エレメントは、DNAリピートエレメントを含み、転写因子が結合するとレポーター遺伝子の発現を推進する最小プロモーターの上流に位置しているシス作用性エンハンサーエレメントである。本明細書において有用な応答エレメントおよびそれらの転写因子の例を、下記の表に挙げる。
Figure 0006782716
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1つの態様において、標的抗原の前記応答エレメントは、細胞の核内の核内応答エレメントである。別の態様において、前記応答エレメントは、細胞中のプラスミド上に位置している。1つの態様において、アッセイ法は、標的抗原応答エレメントの制御下にあるレポーター遺伝子をコードしているDNA配列を含む発現ベクターを用いて細胞をトランスフェクションする予備段階を含む。1つの態様において、標的抗原は、細胞表面受容体である。1つの態様において、抗体またはリガンドの標的抗原への結合および機能性は、同じバイアルまたはウェル中で測定される。1つの態様において、抗体またはリガンドの標的抗原への結合および機能性は、同じ試験培地中で測定される。本明細書において説明する新しいアッセイ法の利点は、洗浄段階が必要とされないということである。好ましくは、試験培地は、細胞が最高で48時間生存可能である条件を提供する培地である。適切な培地は、実施例で概説するように、例えばFluoroBriteまたはDMEMである。1つの態様において、アッセイ法は、マイクロタイタープレートにおいて実施される。1つの態様において、マイクロタイタープレートは、ハイスループットなスクリーニングに適している。本発明のアッセイ法は、迅速な調製、処理、および複数の反応の解析を可能にする任意の形式で実施されてよい。これは、例えば、マルチウェルアッセイプレート(例えば、96ウェルまたは386ウェル)で行われてよい。様々な薬剤の保存溶液は、手作業でまたは自動装置によって(robotically)作製することができ、後続のピペット操作、希釈、混合、分配、洗浄、インキュベーション、試料読取り、データ収集、および解析はすべて、市販の解析ソフトウェア、ロボット工学、およびFRET、BRET、またはアルファスクリーンシグナルを検出できる検出機器を用いて自動装置によって実施することができる。
1つの態様において、段階iii)およびiv)は、連続的または同時に実施される。1つの態様において、FRETは時間分解FRETである。1つの態様において、FRETエネルギードナー化合物はテルビウムクリプテートであり、かつ/またはFRETエネルギーアクセプター化合物はd2である。1つの態様において、標的抗原および応答エレメントは、NF-κB経路の一部分である。1つの態様において、標的抗原は、Toll様受容体、TNF受容体、T細胞受容体、およびB細胞受容体上の標的抗原より選択される。その標的に結合するとNF-κBの活性の変化をもたらす抗体の非限定的な例は、抗CD40抗体、抗DR5抗体、抗DR4抗体、抗41BB抗体、抗Ox40抗体、および抗GITR抗体である。
1つの態様において、応答エレメントは、NF-κB応答エレメントである。1つの態様において、該応答エレメントは、次のDNAリピートのうちの1つまたは複数を含む
Figure 0006782716
。1つの態様において、該応答エレメントは、前述のDNAリピートのうちの3〜6個、3個、または6個を含む。1つの態様において、該応答エレメントは、前述のDNAリピートのうちの3〜6個、3個、または6個、および1個、2個、3個、または4個の付加的なヌクレオチドを含む。
1つの態様において、前記応答エレメントは、
Figure 0006782716
のDNA配列を含む。
1つの態様において、抗体またはリガンドの結合および/または機能性は、ベンチマーク抗体またはリガンドの結合および/または機能性と比較される(どちらも、本明細書において説明するアッセイ法を用いて測定する)。ベンチマーク抗体またはリガンドは、試験しようとする抗体またはリガンドと同じ抗原に結合し、公知の特性(例えば、結合および/または機能性)を有している、先行技術の抗体またはリガンドである。
1つの態様において、アッセイ法は、標的抗原応答エレメントの制御下にあるレポーター遺伝子をコードしているDNA配列を含む発現ベクターを用いて細胞をトランスフェクションする予備段階を含む。
1つの態様において、ウェル当たり1000〜40000個の細胞が、段階i)で提供される。好ましい態様において、ウェル当たり5000〜30000個の細胞または5000〜10000個の細胞が、段階i)で提供される。
1つの態様において、抗体またはリガンドは、段階ii)で提供されて、ウェル当たり濃度120〜0.02nMの抗体またはリガンドを達成する。
III. 実施例
以下は、本発明の方法および組成物の例である。上記に提供した一般的説明を前提として、他の様々な態様が実行され得ることが理解される。
前述の本発明は、理解を明確にするために、例示および例としていくらか詳しく説明してきたが、これらの説明および例は、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。本明細書に引用されるあらゆる特許および科学文献の開示は、その全体が参照により明確に組み入れられる。
機能性評価および結合評価を組み合わせるために、2つのアッセイ法をまず最適化し、次に組み合わせた:抗体の機能性に関する情報を提供するルシフェラーゼアッセイ法およびタンパク質-タンパク質相互作用の研究を可能にするFRETアッセイ法のようなアッセイ法。両方のアッセイ法の組合せのために、SNAPタグに融合しドナー蛍光体で標識した「受容体X」と名付けられた標的抗原をトランスフェクトしたレポーター細胞株が必要となる。トランスフェクションに先立って、ルシフェラーゼアッセイ法を実施することによって、レポーター細胞株HeLa NFκB-LucおよびHEK NFκB-Luc-GFPのNFκB活性化を評価した。抗受容体X抗体の代わりにTNFαを用いて、ルシフェラーゼ発現をもたらすNFκB経路活性化を試験した。
(表1)略語の一覧表
Figure 0006782716
Figure 0006782716
(表2)材料
Figure 0006782716
実施例1:SNAP-受容体X融合物を用いる細胞の一過性トランスフェクションおよび標識
HeLa NFκB-Luc細胞の一過性トランスフェクションの最適化
HeLa NFκB-Luc細胞は、SNAPタグ(登録商標)受容体X融合物をコードする遺伝子を有しているプラスミドでトランスフェクトしなければならなかった。最良のトランスフェクション方法を明らかにするために、ウェル当たりの播種細胞数ならびに3種の異なるトランスフェクション試薬(Lipofectamine(登録商標)2000、Lipofectamine(登録商標)LTX、およびX-tremeGene HP DNAトランスフェクション試薬)を評価した。
細胞数の評価
6通りの異なる細胞数を6ウェルプレートに播種して(ウェル当たり300000個、400000個、最大800000個の生細胞)、24時間のインキュベーション期間後に70%の集密度を達成するのに使用すべき最適数を見つけた。
トランスフェクション試薬の評価
トランスフェクション試薬を評価するために、ウェル当たり500000個のHeLa NFκB-Luc生細胞を6ウェルプレートに播種し、37℃、5% CO2で24時間、インキュベートした。細胞をPBS 1mlで洗浄し、予め温めた増殖培地2mlを加え、次いで各ウェルを異なるトランスフェクション試薬で処理した。
第1のトランスフェクション混合物は、Opti-MEM(登録商標)I低血清培地150μlおよびLipofectamine(登録商標)2000 DNAトランスフェクション試薬10μlを滅菌済み1.5ml容エッペンドルフ反応チューブ中で混合することによって調製した。2つめのチューブ中で、Opti-MEM(登録商標)I低血清培地150μlをSNAP-受容体Xプラスミド3.5μgと混合した。室温で少なくとも5分間のインキュベーション期間後、両チューブの内容物を混合し、室温で25分間インキュベートした。
第2のトランスフェクション混合物の場合、プラスミド1.25μgをOpti-MEM(登録商標)I低血清培地500μlで希釈した。続いて、Lipofectamine(登録商標)LTX 5μlを添加し、穏やかに混合し、室温で25分間インキュベートした。
第3のトランスフェクション混合物は、プラスミド2μgをOpti-MEM(登録商標)I低血清培地200μlで希釈することによって調製した。次いで、X-tremeGENE HP DNAトランスフェクション試薬6μlを添加し、室温で30分間インキュベートした。
各トランスフェクション混合物を細胞に滴下して加えた。6ウェルプレートを穏やかに回転させて、ウェル全体に均等に分布するように徹底した。次いで、37℃かつ5% CO2の加湿インキュベーター中で24時間、これらの細胞をインキュベートした。
インキュベーション後、トランスフェクション混合物を含む培地を慎重に除去し、トランスフェクトされた細胞をPBS 3mlで1回洗浄した。細胞をSNAP-Lumi4-Tbで標識するために、希釈した標識試薬(Tag-lite(登録商標)緩衝液中、100nM)1.5mlをトランスフェクトされた細胞に添加し、加湿インキュベーター中で1時間インキュベートした。その後、標識試薬を除去し、細胞解離緩衝液500μlを用いて細胞を剥離した。剥離した細胞をPBS 2.5ml中に再懸濁し、15ml容Falconチューブに移し、300gで5分の遠心分離段階によってリン酸緩衝生理食塩水(PBS)5mlで3回洗浄した。Tag-lite(登録商標)反応緩衝液140μl中に細胞ペレットを再懸濁した。この細胞懸濁液から100μlを1:5希釈のために使用して、Beckmann Coulter製Vi-cell(商標)XRによって細胞生存率および生細胞濃度を測定した。トランスフェクション後のタンパク質発現を評価するために、細胞懸濁液の残り40μlを平底の白色384ウェルプレートの2つのウェルに分配して、プレートリーダー(Victor3(商標))において波長615nmでのテルビウムシグナルを測定した。異なるトランスフェクション方法間でのトランスフェクションレベルを比較するために、ウェル当たり生細胞10000個の細胞数に対してテルビウムシグナルを標準化した。
結果
最良のトランスフェクション方法を明らかにするために、3種の異なるトランスフェクション試薬、すなわちLipofectamine 2000、Lipofectamine LTX、およびXtreme Gene HPを6ウェルプレートにおいて試験した。各試薬について、ウェル当たり500000個の生細胞を播種した。その後、SNAPタグ融合タンパク質をドナー蛍光体テルビウムで標識して、プロスペクティブなTag-lite(登録商標)実験を実施した。さらに、テルビウム標識によって、波長615nmでの蛍光を測定する場合、トランスフェクション効率の測定が可能になる。さらに、トランスフェクションおよび標識後の細胞生存率も測定した(図1)。図1は、Lipofectamine LTXがHeLa細胞をトランスフェクトするための最良の試薬であったことを示している。トランスフェクションおよび標識後の細胞生存率が最も優れていたことに加えて、最大のテルビウムシグナルも達成することができた。一方、Xtreme Gene HPならびにLipofectamine 2000は、より多くの細胞を死滅させ、トランスフェクションのレベルは低かった。
6ウェルプレートからT150細胞培養フラスコへのトランスフェクションの規模拡大
最良のトランスフェクション方法を決定した後、進行中のプロジェクトのために計画された実験用に、より多くの数の細胞をトランスフェクトし標識しなければならなかった。HeLa NFκB-Luc細胞のほかに、HEK NFκB-Luc-GFP細胞もトランスフェクトしなければならなかった。したがって、15×106(Mio)個のHeLa NFκB-Luc生細胞および11×106個のHEK NFκB-Luc-GFP生細胞を、トランスフェクションの1日前に、T150細胞培養フラスコに入れた25mlのDMEM+10%FBS中に播種した。HeLa細胞のトランスフェクション複合物(complex)は、SNAP-受容体Xプラスミド18.75μgをOpti-MEM(登録商標)I低血清培地7.5mlに添加することによって調製し、一方、HEK細胞の場合は、DNA 37.5μgを同じ体積のトランスフェクション培地中に希釈した。希釈物を穏やかに混合した後、Lipofectamine(登録商標)LTX DNAトランスフェクション試薬75μlを添加した。細胞をT150細胞培養フラスコ中で洗浄した後、トランスフェクション複合物を滴下して加え、加湿インキュベーター中で24時間インキュベートした。その後、トランスフェクトされた細胞を再び洗浄し、加湿インキュベーター中で37℃で1時間インキュベーションすることによって100nM標識試薬希釈物10mlで標識した。これらの細胞をPBS中で3回洗浄し、Beckmann Coulter Vi-cell(商標)XRを用いて計数した。次いで、細胞を300gで5分間遠心分離し、Tag-lite(登録商標)反応緩衝液中に再懸濁して、タンパク質発現を測定した。したがって、ウェル当たり10000個の生細胞を、体積20μlのTag-lite(登録商標)反応緩衝液中で使用した。テルビウムシグナルは、615nmの波長で2ウェルずつ測定した。細胞懸濁液を再び遠心分離し、上清を廃棄し、90%の加熱不活性化FBSおよび10%のDMSOである適切な体積の凍結培地中にペレットを再懸濁して、1×106細胞/mlとなるようにした。イソプロパノールを含むNalgene(登録商標)低温貯蔵用バイアル凍結箱を用いて凍結保存用バイアル(cryovial)中で、-80℃で0.5mlおよび1mlの分取物を凍結した。
受容体X-SNAPを含む安定な受容体X発現細胞の一過性トランスフェクションを前述したのと同じ方法で、ただし、T75フラスコ1個につき4×106個の細胞、ならびにOpti MEM(登録商標)I低血清培地4mlで希釈した10μgのDNA、および37.5μlのLipofectamine(登録商標)LTXを用いて、実施した。これらの細胞は、その点で「スーパートランスフェクトされた」と呼ばれる。
結果
進行中のプロジェクトのために、より多量の細胞が必要であった。したがって、HEK NFκB-Luc-GFP細胞およびHeLa NFκB-Luc細胞を、Lipofectamine LTXを用いてT150細胞培養フラスコ中でトランスフェクトし、テルビウムシグナルを測定した(図2)。
テルビウムシグナルならびに生存率は、両方の細胞株について同様の結果を示している。したがって、細胞表面でのSNAP-受容体X融合タンパク質の発現が類似しており、したがって、これらの細胞株を用いるプロスペクティブなアッセイ法の結果を比較できると想定された。
実施例2:Tag-lite(登録商標)による間接的結合アッセイ法
一般的なTag-lite(登録商標)プロトコール
Tag-lite(登録商標)反応緩衝液に溶かした抗体Iと呼ばれる抗ヒト受容体X抗体の2倍希釈系列を、100nM〜0.2nMの範囲で調製した。抗ヒトIgG-d2検出抗体を同じ緩衝液で希釈して、最終濃度が150nM/ウェルになるようにした。SNAP-受容体Xプラスミドで一過性にトランスフェクトしテルビウムで標識したHEK NFκB-Luc-GFP細胞を、各アッセイ法で使用した。細胞株を解凍し、350 gで5分間遠心分離することによってPBS 10mlで洗浄した。上清を廃棄し、Tag-lite(登録商標)反応緩衝液にペレットを再懸濁して、1×106細胞/mlを得た。Tag-lite(登録商標)アッセイ法では、これらの細胞は一定の細胞数で使用されず、その代わりに、一定のTbシグナルに合わせられる。このアッセイ法でウェル当たり何個の細胞を使用しなければならないかを明らかにするために、再懸濁した細胞10μl(10000細胞/ウェル)を384ウェルプレート中でTag-lite(登録商標)反応緩衝液10μlと3ウェルずつ混合し、615nmでのテルビウムシグナルをVictor3(商標)プレートリーダーで測定した。次いで、Tag-lite(登録商標)アッセイ法のために、Victor3(商標)プレートリーダーで測定されるテルビウムシグナルが20000〜30000カウント/ウェルの間になるように細胞数を調整した。Tag-lite(登録商標)アッセイ法では、10μlの希釈細胞、5μlの抗ヒトIgG-d2、および5μlの抗体希釈系列を用いてピペット分注した(pipetted)。ブランクとして、10μlの細胞、5μlの二次抗体、および5μlの緩衝液をピペット分注した。測定はいずれも、3ウェルずつ実施した。室温で0時間、2時間、および4時間インキュベーションした後、Tecan Infinite(登録商標)M1000 Proプレートリーダーを用いてプレートを測定した。
異なる抗受容体X IgGおよび構築物の比較、様々な検出抗体濃度、インキュベーション温度、およびインキュベーション媒体の影響の評価を含む以下のTag-lite(登録商標)実験はすべて、このプロトコールを用いてピペット分注した。一般的プロトコールとは異なる例外または変更は、結果のセクションで記載する。
結果
トランスフェクションおよび標識の後、受容体Xを標的とする2種の異なるIgG(抗体Iおよび抗体II)を用いる間接的Tag-lite(登録商標)結合アッセイ法で、両方の細胞株を試験した(図3)。図3は、抗体Iの方が抗体IIよりも両方の細胞株(受容体Xを発現するHEK NFκB-Luc-GFP細胞およびHeLa NFκB-Luc細胞)にうまく結合することを示している。抗体Iの結合シグナルは、両方の細胞株に対して同じ強さであった。抗体IIの場合、HeLa NFκB-Luc-受容体X-Tb細胞に対しては弱いシグナルしか検出することができず、HEK NFκB-Luc-GFP-受容体X-Tb細胞では結合を認めることができない。したがって、進行中の実験のために抗体Iを使用した。
二次抗体として使用するd2標識抗ヒトIgGは、一次抗体と比べて少なくとも3倍モル濃度過剰であるべきである。先のアッセイ法の場合のように濃度150nMを用いる代わりに、最終濃度(final)75nM/ウェルを試験し、結果を比較した(図4)。図4は、濃度150nMまたは75nMの二次抗体の間で有意な差はなかったことを示している。150nMの際の結合曲線の場合、0.19nM±0.05nM(R2=0.93)のKD値が測定されたのに対し、濃度75nMの場合、0.16nM±0.03nM(R2=0.95)のKDが認められた。したがって、最高20nMの濃度の一次抗体を使用する場合、進行中の実験すべてにおいて、二次抗体に対しては75nMを使用した。
IgGである抗体Iを使用する代わりに、2種の異なる受容体X抗体構築物、すなわち抗体IIIおよび抗体IVの結合も試験した(図5)。
いずれの抗体および抗体様構築物も同様の結合を示し、KD値は、抗体Iの場合は0.11nM±0.03nM(R2=0.85)であり、抗体IIIの場合は0.18nM±0.02nM(R2=0.97)であり、抗体IVの場合は0.28nM±0.04nM(R2=0.98)である。
ルシフェラーゼアッセイ法とTag-lite(登録商標)結合アッセイ法の組合せの場合、結合アッセイ法のために一般に使用される室温(RT)ではなく37℃で細胞をインキュベートすることが必要である場合がある。したがって、37℃での結合を評価しなければならなかった(図6)。室温でのインキュベーションの場合に測定されたKD値は0.18nM±0.02nM(R2=0.97)であり、37℃でのインキュベーションの場合(KDは0.43nM±0.18nM(R2=0.85)であった)よりも少しだけ小さかった。しかし、どちらの場合の結合も、低ナノモル濃度範囲であり、したがって比較的強かった。
結合アッセイ法にTag-lite(登録商標)緩衝液またはPBSを使用する代わりに、ルシフェラーゼアッセイ法に対する適性が高い可能性がある他の媒体を試験した(図7)。図7は、PBSおよびDMEMが、受容体に対する抗体構築物の結合を減少させたことを示している。DMEM/10%FBSまたはFluoroBrite DMEM/10%FBSは、一般に使用されるTag-lite(登録商標)緩衝液と比べて同様の結果を示した。したがって、これらは組合せアッセイ法のための適切な代替物である。
一過性にトランスフェクトされた細胞上の受容体Xの解凍後の時間依存的安定性
HEK NFκB-Luc-GFP細胞をSNAP-受容体Xプラスミドで一過性にトランスフェクションした後、これらの細胞を凍結し、日々の実験のために使用した。解凍した一過性にトランスフェクションした細胞を培養状態にした後の受容体の安定性を明らかにするために、間接的Tag-lite(登録商標)結合アッセイ法を3日間、毎日実施した。したがって、解凍した細胞を6ウェルプレートの4つのウェル中に分け、4mlのFluoroBrite(商標)DMEM+10%FBS中で培養した。毎日、この6ウェルプレートの1つのウェルの細胞を剥離し、350gで5分間遠心分離し、FluoroBrite(商標)DMEM+10%FBS中に再懸濁して、最終濃度を1×106細胞/mlにした。次いで、ウェル当たり10000個の細胞を、FluoroBrite(商標)DMEM+10%FBS媒体に溶かした抗体IIIの80nM〜0.16nMの範囲の2倍希釈系列と混合して、結合を試験した。抗ヒトIgG-d2検出抗体を同じ媒体で希釈して、最終濃度が75nM/ウェルになるようにした。テルビウムシグナルを毎日モニターした。
結果
一過性にトランスフェクトされた細胞の細胞表面の受容体の存在を経時的にモニターした。細胞の解凍直後(0日目)およびまたその後の3日間、10000個/ウェルの解凍細胞または培養細胞を用いて、間接的Tag-lite(登録商標)結合アッセイ法(図8)ならびに細胞のテルビウムシグナル測定(図9)を実施した。図8は、0日目から1日目に結合シグナルが有意に減少し、2日目および3日目では、まったくなかったことを示している。0日目時点の比665nm/620nm×10000は約10000であったのに対し、1日後、Bmaxは約3000であった。これは元のシグナルの70%に相当する。0日目および1日目時点のKD値はどちらもナノモル濃度範囲であり、それぞれ0.49nM±0.08nM(R2=0.98)、および0.12nM±0.03nM(R2=0.87)であった。
図9は、図8で示した結果と一致しており、テルビウムシグナルの経時的減少を示している。一方、生存率は日ごとに上昇した。
Tag-lite(登録商標)アッセイ法のためのパラメーターを綿密に評価した後、ルシフェラーゼアッセイ法のための条件を最適化しなければならなかった。
HTRF生データの評価
これらのアッセイ法の解析のために、生データをMicrosoft Excelによって最初に編集した。HTRFアッセイ法において、結果の変動は、細胞、媒体添加物のピペット分注段階が原因で、およびウェル当たりの溶解細胞数に起因して、ウェルごとに起こり得る。そのような変動を最小限にするために、665nmと620nmの比を算出することによって、アクセプターの発光を各ウェルのドナーシグナルの発光に対して標準化した:
比 = 665nm/620nm×10000。
GraphPad Prism 6.0と呼ばれるソフトウェアによって、算出された比の値を評価した。非線形回帰を用いて結合曲線を当てはめた。BmaxおよびKDは、次の式を用いる「一部位特異的結合」モデルを用いて決定した。
Y =(Bmax × X)/(KD + X)。
実施例3:ルシフェラーゼアッセイ法
2種の異なる細胞株のルシフェラーゼ活性化の評価
一過性トランスフェクションのために使用されるHeLa NFκB-Luc細胞ならびに既に安定にトランスフェクトされたNFκB-Luc-受容体X細胞を、TNFαによって刺激した際のルシフェラーゼ活性について比較した。
使用した方法は、ルシフェラーゼ1000アッセイシステム(Promega)であった。したがって、活性化の前日に、両方の細胞株を、白色96ウェルプレートに入れた増殖培地(DMEM+10%FBS+1% GlutaMax-I+200μg/mlヒグロマイシンB)100μl中に20000細胞/ウェルの細胞数で播種した。さらに、同じ細胞を透明96ウェルプレートの3つのウェルにも播種して、活性化の前に集密度、付着状態、および汚染状態を顕微鏡によって明らかにした。37℃、5% CO2で24時間インキュベーションした後、TNFαの25ng/ml〜0.8ng/mlの範囲の2倍希釈系列を調製した。各希釈物100μlを3ウェルずつ細胞に添加し、続いて、37℃および5% CO2で6時間のインキュベーション段階を行った。その後、350gで5分間の遠心分離段階によって、これらの細胞を200μl/ウェルのPBSで3回洗浄した。産生されたルシフェラーゼを検出するためには、細胞を溶解しなければならなかった。したがって、溶解緩衝液40μlを各ウェルに添加し、-80℃で2時間インキュベートして、確実に溶解するようにした。これらの細胞を室温に適応させた後、ルシフェラーゼ1000アッセイ試薬100μlを暗所で各ウェルに添加し、可視スペクトル全体の全波長における発光を、500msの積分時間を用いてSpectraMax M5/M5eプレートリーダーによって直ちに測定した。ブランクとして、ルシフェラーゼ試薬を含む溶解細胞のシグナルを引いた。
反応の副産物として生じる光を、可視スペクトル全体からルミノメーターによって集めた。
HeLa NFκB-Luc細胞をHEK NFκB-Luc-GFP細胞株と比較するためにも、同じプロトコールを使用した。
様々な活性化方法の比較
前述したのと同じアッセイ法を、ただしDMEM+10%FBS中に80000細胞/ウェルで播種した一過性にトランスフェクトされたHEK NFκB-Luc-GFP-SNAP-受容体X細胞のみを用いて、3ウェルずつ実施した。TNFα受容体を介した活性化に加えて、オリゴマー化するとNFκB経路を同様に活性化することができるはずである受容体Xに結合させるために、抗体Iを使用した。したがって、抗体Iの120〜0.03nMの範囲の4倍希釈系列を調製し、各濃度50μlを細胞に添加し、続いて、37℃および5% CO2で15分間のインキュベーション段階を行った。NFκB経路を活性化するのに必要とされる受容体を高度架橋(hypercrosslinking)するために、二次抗体(抗hu IgG Fcγ特異的ヤギIgG F(ab)2)50μlを使用した。この二次抗体の濃度は480nMで一定に保った。この濃度は、一次抗体と比べて少なくとも4倍モル濃度過剰となる。
ルシフェラーゼ1000アッセイシステムおよびONE-Glo(商標)ルシフェラーゼアッセイシステムの比較
ルシフェラーゼ1000アッセイシステムに加えて、ONE-Glo(商標)ルシフェラーゼアッセイシステムも試験し、結果を比較した。したがって、一過性にトランスフェクトされたHEK NFκB-Luc-GFP-SNAP-受容体X細胞を、陽性対照としての機能を果たす安定にトランスフェクトされたHEK NFκB-Luc-GFP-受容体X細胞と比較して試験した。さらに、TNFαならびに受容体Xによる活性化も解析した。
活性化の前日に、両方の細胞株を、2枚の白色96ウェルプレート(各アッセイシステムに対して1枚のプレート)に入れた150μlのDMEM+10%FBS中に30000細胞/ウェルの細胞数で播種した。さらに、同じ細胞を透明96ウェルプレートの3つのウェルにも播種して、活性化の前に集密度、付着状態、および汚染状態を顕微鏡によって明らかにした。37℃、5% CO2で24時間インキュベーションした後、10nMの一次抗体IIIをウェルに添加し、受容体Xの活性化について試験した。さらに15分間インキュベーションした後、40nMの二次抗体または50ng/ml TNFαを添加した。37℃および5% CO2で48時間、プレートをインキュベートした。
一方のプレートを、ルシフェラーゼ1000アッセイシステムのために前述したように処理した。簡単に説明すると、細胞を洗浄し、溶解し、凍結し、解凍し、ルシフェラーゼ試薬添加後に測定した。ブランクとして、活性化しなかった溶解細胞のシグナルを引いた。もう一方のプレートを、ONE-Glo(商標)ルシフェラーゼアッセイシステムのために使用した。したがって、各ウェルの適切な体積の上清を除去して、最終体積が100μl/ウェルとなるようにした。ウェル当たり100μlのONE-Glo(商標)ルシフェラーゼ試薬を添加した。暗所で5分間のインキュベーション後、500msの積分時間を用いてSpectraMax M5/M5eプレートリーダーによって、発光を測定した。ブランクとして、ルシフェラーゼ試薬を含む非活性化溶解細胞のシグナルを引いた。測定は、3ウェルずつ実施した。
結果
最初に、ルシフェラーゼアッセイ法でHeLa NFκB-Luc細胞をHeLa NFκB Luc-受容体X細胞と比較した。後者は、TNFα受容体によってNFκB経路を活性化する能力が公知であり、したがって、それらを陽性対照として使用した(データ不掲載)。陽性対照によるものとほぼ同じ発光シグナルが、HeLa NFκB-Luc細胞によって達成された(reached)。したがって、NFκB経路はTNFαによって活性化されることができ、このことは、SNAP-受容体Xをコードする遺伝子を有しているプラスミドをトランスフェクションするためにこれらの細胞を使用できることを意味した。
HEK NFκB-Luc-GFP細胞を試験し、HeLa NFκB-Luc細胞と比較した。この細胞株は、遺伝子発現を検出するための付加的なツールを有効にするその第2のレポーター遺伝子の寄与により、好ましくは、組合せアッセイ法を開発するのに使用されるであろう。HEK NFκB-Luc-GFP細胞は、HeLa NFκB-Luc細胞よりも高いシグナルを示した。どちらの細胞株もルシフェラーゼアッセイ法に使用できるため、それぞれをSNAP-受容体Xプラスミドでトランスフェクトした。
HEK NFκB-Luc-GFP細胞を受容体X-SNAPでトランスフェクションおよび標識した後、抗体Iを最初のルシフェラーゼアッセイ法のために使用し、TNFαによる活性化と比較した。一次抗体としての抗体Iならびに二次抗体を、陰性対照として単独で使用した(図10)。図10は、TNFαによるNFκB経路の強い活性化を示している。抗体Iおよび二次抗体は、単独ではこの経路を活性化することができなかった。両方の抗体の組合せに対して、非常に弱い発光シグナルしか検出されなかった。結論として、抗体Iは、最良の結合体であることが明らかになったが、この設定では良好な機能性を示さなかった。
さらに、2つの異なるルシフェラーゼアッセイシステム、すなわちONE-Glo(商標)システムおよびルシフェラーゼ1000システムを評価した(図11)。したがって、安定にトランスフェクトされた受容体X発現HEK NFκB-Luc-GFP細胞および一過性にトランスフェクトされた受容体X発現HEK NFκB-Luc-GFP細胞のNFκB経路を活性化するために、TNFαを使用した。活性化後に6時間インキュベーションする代わりに、48時間を使用して、ルシフェラーゼを発現するためにより長い時間を細胞に与えた。図11は、ONE-Glo(商標)ルシフェラーゼアッセイシステムの方が、ルシフェリンからオキシルシフェリンへのルシフェラーゼ触媒反応によって放出される光に対して感度が高かったことを示している。発光シグナルが高レベルであること、ならびにアッセイ手順の実施がより迅速かつ容易であることから、ONE-Glo(商標)ルシフェラーゼアッセイシステムを、進行中の実験のために使用した。
以下の実験において、以前の実験と同じ細胞を用いることによって、6時間および48時間のインキュベーション期間を比較した。一次抗体としての抗体IIIは濃度10nMで使用し、二次抗体(抗hu IgG Fcγ特異的ヤギIgG F(ab)2)を濃度40nMで使用した(図12)。
安定にトランスフェクトされたHEK NFκB-Luc-GFP-受容体X細胞は、48時間のインキュベーション後、より多くのルシフェラーゼが細胞によって産生され、その結果、より強い生物発光シグナルを生じることを明らかに示した。抗体III単独では、経路を活性化したがその程度は低く、抗体IIIはその時までに(already)受容体を三量体化し得るため、このことは予想どおりであった。一過性にトランスフェクトされた細胞のシグナルは、有意に低かった。特に6時間のインキュベーションの場合、両方の抗体の組合せと各抗体それ自体とで生物発光に大きな差はなかったが、48時間の場合の値には少しの差があった。
96ウェルプレートから384ウェルプレートへの「規模縮小」
機能性および結合の組合せアッセイ法のために、通常は96ウェルプレートで実施されるルシフェラーゼアッセイ法を384ウェルプレートに移す必要があった。ONE-Glo(商標)ルシフェラーゼアッセイ法を96ウェルプレートで実施したが、ウェル当たり30000個の細胞を使用する代わりに、わずか5000個の細胞を使用した。一次抗体および二次抗体をそれぞれ10nMおよび40nMの一定濃度に保ち、一方、TNFαは濃度50ng/mlで使用した。37℃および5% CO2で24時間インキュベーションした後、適切な体積の上清を除去して、各ウェルに体積15μlが残るようにした。ウェル当たり15μlのONE-Glo(商標)ルシフェラーゼ試薬を添加した。測定は、安定なHEK NFκB-Luc-GFP-受容体X細胞を用いて3ウェルずつ実施した。
さらに、前述したのと同じプロトコールを用いて、2つの異なる細胞数(5000細胞/ウェルおよび10000細胞/ウェル)を評価した。
結果
機能性および結合の評価を組み合わせることは、ハイスループットなスクリーニング(HTS)のために使用されると考えられた。こういう理由で、またコストが理由で、ルシフェラーゼアッセイ法をTag-lite(登録商標)実験と調和させるために、96ウェルプレートから384ウェルへの「規模縮小」を試験した(図13)。
全体として、図13は、384ウェルプレートよりも96ウェルプレートに対して、若干強いシグナルを示している。それでもなお、384ウェルプレートにおけるシグナルは96ウェルよりも小さかったにもかかわらず、活性化または機能性に関する結果は同じままである。したがって、進行中のルシフェラーゼアッセイ法は、384ウェルプレートで実施した。
ルシフェラーゼアッセイ法を規模縮小するためには、ウェル当たり5000個の生細胞という細胞数を算出したが、結合実験の場合、FRETシグナルのためにドナー蛍光体の十分な高い蛍光シグナルを有するために、ウェル当たり10000個の細胞が必要とされることがある。5000または10000のいずれかを使用する可能性を、安定にトランスフェクトされたHEK NFκB-Luc-GFP-受容体X細胞を用いるONE-Glo(商標)ルシフェラーゼアッセイシステムによって試験した(図14)。図14は、ウェル当たり10000個の生細胞を使用した場合、より強い生物発光シグナルさえ存在したことを示す。添加する抗体の量などの他のパラメーターを一定に保ったにもかかわらず、より多くのルシフェラーゼが細胞によって産生されることができ、その結果、より強い生物発光シグナルが生じた。
これで、結合アッセイ法およびルシフェラーゼアッセイ法の組合せのためのパラメーターがすべて調整された。あいにく、どちらの細胞株も、組合せアッセイ法には適していなかった。安定にトランスフェクトされたHEK NFκB-Luc-GFP-受容体X細胞が利用可能であったが、これらは機能アッセイ法において良好な結果を示すが、ドナー蛍光体を欠くために、通常のTag-lite(登録商標)アッセイ法には使用することができない。一過性にトランスフェクトされたHEK NFκB-Luc-GFP-受容体X-Tb細胞が利用可能であったが、これらは結合アッセイ法において良好な結果を示すが、あまり上手く活性化することができない。したがって、2つのアプローチを試験した。一方では、安定にトランスフェクトされた細胞に対してWGAに基づくFRETアッセイ法を行い、他方では、安定にトランスフェクトされた細胞を受容体X-SNAP構築物でスーパートランスフェクションした。
一次抗体の濃度の最適化
ルシフェラーゼアッセイ法はすべて、10nMの一次抗体および40nMの二次抗体を用いて実施した。このアッセイ法の目的は、5種の希釈物を用いて一次抗体(第1の抗体)を用量設定すること、および検出のために二次抗体を1:4の比で保つことであった。
一過性にトランスフェクトされたHEK NFκB-Luc-GFP SNAP-受容体X細胞、安定にトランスフェクトされたHEK NFκB-Luc-GFP-受容体X細胞、ならびに一過性にスーパートランスフェクトされた細胞を用いて、ONE-Glo(商標)ルシフェラーゼアッセイ法を実施した。3種の細胞株すべてについて、ウェル当たり5000個の細胞を、384ウェルプレートに入れた15μlのDMEM+10%FBS中に播種し、活性化する前に37℃および5% CO2で少なくとも12時間、インキュベートした。一次抗体IIIの2倍希釈系列を調製し、40nM/ウェル〜2.5nM/ウェルの範囲でウェルに添加した。15分間のインキュベーションの後、二次抗体(抗hu IgG Fcγ特異的ヤギIgG F(ab)2)を160nM/ウェル〜10nM/ウェルの範囲の濃度でウェルに添加して、一次抗体と比べて二次抗体が4倍モル濃度過剰となるように保った。これらのプレートを37℃および5% CO2でインキュベートした。24時間のインキュベーション後、適切な体積の上清を除去して、ウェル当たり最終体積15μlが残るようにした。ウェル当たり15μlのONE-Glo(商標)ルシフェラーゼ試薬を添加した。暗所で5分間のインキュベーション後、500msの積分時間を用いてSpectraMax M5/M5eプレートリーダーによって、発光を測定した。ブランクとして、ルシフェラーゼ試薬を含む非活性化溶解細胞のシグナルを引いた。測定は、3ウェルずつ実施した。
架橋抗体の比の最適化
機能性アッセイ法のために、二次抗体(抗hu IgG Fcγ特異的ヤギIgG F(ab)2)を架橋のために使用した。ルシフェラーゼアッセイ法と結合アッセイ法を組み合わせるために、アクセプター蛍光体d2で標識されている抗体が必要であった。抗hu IgG Fcγ特異的ヤギIgG F(ab)2を標識しなければならないか、またはCisBio製の抗ヒトIgG-d2を使用できるかのどちらかであった。一次抗体は、先にアッセイ法で最適化されていた40nMの一定濃度で保ったのに対し、一次抗体と二次抗体の比は1:1から1:5の比に変わった。
実施例4:間接的WGA-HTRF
抗ヒトIgG-d2検出抗体をTag-lite(登録商標)反応緩衝液で希釈して、最終濃度が75nM/ウェルになるようにした。Tag-lite(登録商標)反応緩衝液に溶かした抗体IIIの2倍希釈系列を、1.56nM〜0.01nMの範囲で調製した。安定なHEK NFκB-Luc-GFP受容体X細胞を解凍し350gで5分間遠心分離することによってPBS 10mlで洗浄した。上清を廃棄し、Tag-lite(登録商標)反応緩衝液にペレットを再懸濁して、1×106細胞/mlとなるようにした。0.05ng/μlのWGA-テルビウムを細胞懸濁液に添加し、室温で30分間インキュベートした。その後、細胞を再び洗浄し、適切な体積のTag-lite(登録商標)反応緩衝液に再懸濁して、最終濃度が1×106細胞/mlとなるようにした。
再懸濁したWGA-テルビウム標識細胞10μlを、384ウェルプレート中でTag-lite(登録商標)反応緩衝液10μlと混合した。テルビウムシグナルは、Victor3(商標)プレートリーダーを用いて615nmの波長で3つ1組にして測定した。このアッセイ法では、一定のテルビウムシグナルを有している10μlの細胞、5μlの抗ヒトIgG-d2、および滴定のために5μlの抗体希釈物を用いてピペット分注した。ブランクとして、10μlの細胞、5μlの二次抗体、および5μlの緩衝液をピペット分注した。このアッセイ法では、384ウェルプレートに3ウェルずつピペット分注し、室温で0時間、2時間、および4時間インキュベーションした後、Tecan Infinite(登録商標)M1000 Proプレートリーダーを用いて測定した。生データの評価は、前述したようにして行った。
結果
安定にトランスフェクトされた細胞を、テルビウムが結合されたレクチンWGAと共にインキュベートし、抗ヒトIgG-d2をアクセプター標識された二次抗体として用いることによって間接的HTRFアッセイ法を設定した(図15)。
図15において、抗体IIIの結合シグナルを、陰性対照と比較して検出した。KD値を決定し比較できるように、Tag-lite(登録商標)実験を用いて、測定値を同様に当てはめた。この実験のKD値は、0.15nM±0.03nM(R2=0.97)であった。
実施例5:組合せアッセイ法
組合せアッセイ法のために、FluoroBrite DMEM+10%FBSに溶かした抗体IIIの2倍希釈系列を、200nM〜0.1nMの範囲で調製した。これは、40nM〜0.02nMの範囲のウェル当たり最終濃度をもたらす。抗ヒトIgG-d2検出抗体を同じ媒体で希釈して、最終濃度が120nM/ウェルになるようにした。SNAP-受容体Xプラスミドで一過性にスーパートランスフェクトしテルビウムで標識したHEK NFκB-Luc-GFP細胞を使用した。細胞株を解凍し、350gで5分間遠心分離することによってPBS 10mlで洗浄した。上清を廃棄し、FluoroBrite DMEM+10%FBSにペレットを再懸濁した。このアッセイ法では、ウェル1つにつき、媒体15μlに溶かした10000個の細胞、5μlの抗ヒトIgG-d2、および5μlの抗体希釈系列を用いて、384ウェルプレートにピペット分注した。ブランクとして、15μlの細胞、5μlの二次抗体、および5μlの緩衝液をピペット分注した。測定はいずれも、3ウェルずつ実施した。37℃および5% CO2で0時間、2時間、および4時間インキュベーションした後、Tecan Infinite(登録商標)M1000 Proプレートリーダーを用いてプレートを測定した。24時間のインキュベーション後、上清10μlを除去して、ウェル当たり最終体積15μlが残るようにした。ウェル当たり15μlのONE-Glo(商標)ルシフェラーゼ試薬を添加した。暗所で5分間のインキュベーション後、500msの積分時間を用いてSpectraMax M5/M5eプレートリーダーによって、発光を測定した。ブランクとして、ルシフェラーゼ試薬を含む非活性化溶解細胞のシグナルを引いた。
結果
機能性および結合の評価を組み合わせるのに適した細胞株の評価
新しいアプローチは、安定にトランスフェクトされたHEK NFκB-Luc-GFP-受容体X細胞を「一過性にスーパートランスフェクトする」ことである。これは、SNAP-受容体Xをコードしているプラスミドを用いて、SNAPタグ(登録商標)に融合された受容体Xを再びHEK NFκB-Luc-GFP-受容体X細胞にトランスフェクトすることを意味する。その後、これらの細胞をテルビウムで標識し、通常の間接的Tag-lite(登録商標)結合実験に使用することができた(図16)。一過性にトランスフェクトされた細胞は、最初の実験で抗体IIIとの良好な結合を示したことから、これらを対照として使用した。図16は、一過性にトランスフェクトされた細胞と比べて一過性にスーパートランスフェクトされた細胞の場合に比が小さかったことを示している。しかし、シグナルは、正確な(nice)曲線当てはめを実現しKD値を決定するのに十分な大きさであった。KDは両方の細胞型について同じであった。スーパートランスフェクトされたHEK NFκB-Luc-GFP受容体X-Tb細胞およびトランスフェクトされたHEK NFκB-Luc-GFP受容体X-Tb細胞についてそれぞれ、0.09nM±0.02nM(R2=0.92)および同じく0.09nM±0.02nM(R2=0.96)であった。
したがって、これらのスーパートランスフェクトされた細胞は、機能性および結合の評価を組み合わせるアッセイ法においてモデルとして使用される見込みがある。
Tag-lite(登録商標)アッセイ法をルシフェラーゼアッセイ法と組み合わせる前の最終実験において、一次抗体および二次抗体の最適濃度をルシフェラーゼアッセイ法で明らかにした。最初に、一次抗体としての抗体IIIを2.5〜40nMの間の5種の濃度で滴定し、一方、一次抗体と二次抗体の比は1:4の比で一定に保った。安定にトランスフェクトされた受容体X発現HEK NFκB-Luc-GFP細胞および一過性にトランスフェクトされた受容体X発現HEK NFκB-Luc-GFP細胞に加えて、一過性にスーパートランスフェクトされた細胞も試験した(図17)。
一過性にスーパートランスフェクトされた細胞は、他の2種の細胞株と比べて非常に高い生物発光シグナルを示す。さらに、すべての細胞株において、濃度40nMの一次抗体が最も良い結果を示したことを明らかに認めることができる。したがって、抗体IIIについてはこの濃度を後続のアッセイ法で一定に保ち、一方、二次抗体に対する比は1:1の比から1:5の比に変更した。さらに、架橋のためにルシフェラーゼアッセイ法で通常使用される二次抗体(抗ヒトIgG Fcγ特異的ヤギIgG F(ab)2断片)を、Tag-lite(登録商標)実験で一般に使用されるd2標識二次抗体(抗ヒトIgG-d2)と比較した(図18)。図18は、d2標識抗ヒトIgGと架橋した場合、生物発光シグナルが強くなったことを示す。その際、二次抗体の濃度120nM(比1:3)は、すでに十分である。抗hu IgG Fcγ特異的ヤギIgG F(ab)2については、濃度200nM(比1:5)が最良の結果を示した。
最終的条件を用いる組合せアッセイ法
結合アッセイ法を機能性アッセイ法と組み合わせるための必要なパラメーターすべてを評価し、定めた。
一過性にスーパートランスフェクトされた受容体X発現HEK NFκB-Luc-GFP細胞を用いて、組合せアッセイ法を実施した。したがって、ウェル当たり10000個の細胞を384ウェルプレート中で抗体IIIおよび二次抗体と混合した。間接的Tag-lite(登録商標)結合アッセイ法を4時間に渡って実施した(図19)。受容体Xの活性化後24時間目に、ONE-Glo(商標)ルシフェラーゼ試薬を用いて細胞を溶解した。この試薬はルシフェラーゼ基質も含むため、ルシフェリンからオキシルシフェリンへの酸化によって放出される光をルミノメーターによって測定した(図20)。図28で決定されたKDは、スーパートランスフェクトされたHEK NFκB-Luc-GFP受容体X-Tb細胞について0.10nM±0.01nM(R2=0.98)であった。
図20は、一次抗体の濃度が10nMまで上昇するにつれ、発光シグナルも増大したことを示している。したがって、一次抗体と二次抗体を組み合わせることにより、NFκB経路が活性化された。
結論として、抗体IIIは、受容体Xに結合することができ、また良好な機能性も示した。
今、本発明の好ましい態様を示し説明しているが、本発明はそれらに限定されず、別の状況では以下の特許請求の範囲内で多様に具体化され実践されてよいことを明確に理解すべきである。
考察
細胞株の評価
SNAP-受容体Xプラスミドのトランスフェクションに先立って、ルシフェラーゼアッセイ法でHEK NFκB-Luc-GFPおよびHeLa NFκB-Lucを試験した。HEK NFκB-Luc-GFP細胞のシグナルは、HeLa NFκB-Luc細胞の場合に検出されたものよりも有意に高かったが、これら2種の細胞株の増殖速度は全く異なるため、これらを比較すべきではない。活性化の前日に、同じ量の細胞を播種した。HEK NFκB-Luc-GFP細胞の方がずっと速く分割するため、より多くの細胞を翌日に活性化することができた。さらに別の実験をする場合、HEK NFκB-Luc-GFP細胞よりも多い細胞数のHeLa NFκB-Luc細胞を播種しなければならない。しかし、どちらの細胞株もうまく活性化することができたため、SNAPタグ(登録商標)に融合された標的受容体のトランスフェクションのためにそれらを使用した。
タンパク質-タンパク質相互作用研究
間接的Tag-lite(登録商標)結合アッセイ法において、抗体Iを抗体IIと比較した。これらの抗体の差異は、抗体Iの軽鎖の相補性決定領域(CDR)中の1つのアミノ酸の交換であった。このことが、抗体Iが抗体IIとは違って標的に結合する理由であるに違いない。
Tag-lite(登録商標)反応緩衝液を使用する代わりに、FluoroBrite DMEM/10%FBSおよびDMEM/10%FBSもまた、使用することができる。一方、PBSまたはDMEMは、標的受容体に対する抗体の結合を支援しない。DMEMおよびDMEM/10%FBSの比較は、FBSが結合を増大させることの良い例であった。培地補助成分としてのFBSは、細胞のための栄養物を届け、増殖因子を含有している。FBS含有培地を用いた場合に結合が増大するのは、単に細胞死が少ないこと、または細胞増殖が優れていることに起因する可能性が高かった。PBSが結合を減少させる理由の説明は同じである可能性が高かった。PBS中で細胞を4時間インキュベートした場合、細胞は結合を開始する可能性がある。Tag-lite(登録商標)反応緩衝液の組成は公知ではないが、2種のタンパク質の結合を支援し、細胞を生存状態で保ったようである。
HEK NFκB-Luc-GFP細胞に対してSNAP-受容体Xプラスミドを一過性トランスフェクションした後、細胞解凍後に毎日Tag-lite(登録商標)アッセイ法を実施することによって、受容体安定性を試験した。0日目(解凍直後)から1日目までに大きな減少が観察された。しかし、このことは、細胞表面の受容体が失われたことを必ずしも意味しない。これらの細胞は一過性にトランスフェクトされたにすぎず、したがって、増殖後、娘細胞は受容体Xを発現するための遺伝子を有していない。同じ量の細胞を毎日用いてアッセイ法を実施したため、1日目にアッセイ法で使用した細胞の多くは、この受容体を有していないこのような娘細胞である可能性がある。2日目および3日目の受容体X発現細胞は、受容体X非発現娘細胞によって完全に駆逐された。この仮説は、テルビウムシグナルおよび生存率の日々の測定値とも合致する。0日目に、高いテルビウムシグナルが測定されたが、生存率は低かった。したがって、凍結直後の細胞はそれほど健康ではなかったが、それらの細胞のほとんどは受容体Xを発現した。日ごとに細胞は増殖し、その結果、より健康な娘細胞が生じたが、標識された標的受容体を細胞表面に有していなかった。別の仮説は、受容体の内在化および分解であろう。
結合および機能性の組合せアッセイ法の場合、細胞は凍結直後に活性化されるため、この結果はまったく重要ではなかった。その場合、4時間に渡って結合を測定し、機能性の測定については数時間後に行い、細胞表面の受容体の存在はいかなる役割も果たさない。細胞を活性化し機能性を測定した後のインキュベーション期間は、高いルシフェラーゼ発現を得るために必要であった。
ルシフェラーゼアッセイ法
Tag-lite(登録商標)アッセイ法で良好な結合を示した抗体Iを、一過性トランスフェクションおよび標識後に、最初のルシフェラーゼアッセイ法のために使用した。さらに、NFκB経路がTNFαによって活性化されるかも試した。TNFαによる活性化はかなり上手く機能した。このことから、細胞のトランスフェクションおよび標識によって細胞は改変されず、NFκB経路は引き続き機能することが実証された。また、活性化を行わずにアッセイ法で使用された細胞もあり、これらはシグナルから引かれるブランクとして役立った。これにより、細胞はいかなるルシフェラーゼも構成的に発現しないことが確認された。抗体Iおよび二次抗体を用いて細胞を活性化した場合、弱い発光シグナルしか観察されなかった。抗体Iは最良の結合体の内の1つであることが判明しているため、このことは、組合せアッセイ法を実施する必要性を示す良い例であった。
別のルシフェラーゼアッセイ法において、安定にトランスフェクトされた受容体X発現HEK NFκB-Luc-GFP細胞および一過性にトランスフェクトされた受容体X発現HEK NFκB-Luc-GFP細胞を用いて、2種の異なるインキュベーション期間(6時間および48時間)を比較した。48時間後に、より多くのルシフェラーゼが、安定にトランスフェクトされた細胞で発現され、その結果、より強い発光シグナルを生じることが、はっきりと分かった。あいにく、一過性にトランスフェクトされた細胞は、非常に弱い発光シグナルしか示さなかった。一過性にトランスフェクトされた細胞は、SNAPタグ(登録商標)に融合された受容体Xのみを発現する。NFκB経路の活性化は、受容体Xがオリゴマー化した場合にのみ起こるため、SNAPタグ(登録商標)(20kDa)の大きさが、立体障害およびオリゴマー化の阻害を招く可能性がある。
間接的WGA-HTRF
WGAは、細胞表面で発現された受容体の直接的標識を避けることにより、新しい方法で、細胞ベースのタンパク質-タンパク質相互作用測定を実施することを可能にする。SNAPタグ(登録商標)を避け、かつ安定にトランスフェクトされた細胞を組合せアッセイ法に使用することを可能にするためのアプローチは、WGAを用いることによってそれらをテルビウムで標識することであった。したがって、間接的HTRFアッセイ法を実施することができた。KD値は、0.15nM±0.03nMであった。これは、一過性にトランスフェクトされた受容体X発現HEK NFκB-Luc-GFP細胞に対する通常のTag-lite(登録商標)実験で測定されたのと同じ範囲であった。したがって、標識ツールとしてのWGAは、組合せアッセイ法を実施するためのこの設定においても有用であると思われるが、時間的制約のため、それ以上評価することはできなかった。
機能性および結合の評価を組み合わせるのに適した細胞株の評価
安定にトランスフェクトされたHEK NFκB-Luc-GFP-受容体X細胞の一過性スーパートランスフェクションは第2のアプローチであった。このアプローチは、通常の間接的Tag-lite(登録商標)結合実験を実施することを可能にする。結合アッセイ法でそれらを試験することに加えて、ルシフェラーゼアッセイ法も、この細胞株を用いて評価した。したがって、これらの細胞を用いて、一次抗体の最適濃度を明らかにし、同時に、それらを、一過性にトランスフェクトされた受容体X発現HEK NFκB-Luc-GFP細胞および安定にトランスフェクトされた受容体X発現HEK NFκB-Luc-GFP細胞と比較した。抗体IIIのどの濃度に対しても、スーパートランスフェクトされた細胞が、最も強い発光シグナルをはっきりと示している。スーパートランスフェクトされた細胞の方が、安定な細胞と比べて高いシグナルを示す1つの理由は、より多くの標的受容体が細胞表面に存在していたということである。したがって、より多くの抗体が結合することができ、より多くの架橋が起こることができ、その結果、NFκB経路がより強く活性化された。通常、安定にトランスフェクトされた細胞のシグナルは、このアッセイ法では極めて低い。その理由は、細胞を継代する際の誤った取り扱いである可能性が高かった。非常に遅くに分けられ、それらの細胞が高い集密度を有している場合には、それほど上手くそれらの細胞を活性化できないことが観察された。一部の細胞が細胞表面の受容体を失ったか、それらがシグナル伝達事象をどういうわけか下方調節したかのいずれかであった。
一過性にスーパートランスフェクトされた細胞のシグナルの方が、立体障害が原因で、一過性にトランスフェクトされた細胞よりも高かったとも想定されている。スーパートランスフェクトされた細胞は、細胞表面で受容体Xを過剰発現する。それらの一部は、SNAP-受容体Xプラスミドで一過性にトランスフェクトされたため、SNAPタグ(登録商標)に融合されている。しかし、それらの一部は、安定にトランスフェクトされた受容体X発現HEK NFκB-Luc-GFP細胞株がSNAP-受容体Xの一過性トランスフェクションのために使用されたため、SNAPタグ(登録商標)を有していない。SNAPタグ(登録商標)を有している受容体とSNAPタグ(登録商標)を有していない受容体とのオリゴマー化が起こった場合、立体障害が少ないという理由で、これらの細胞の活性化が優れていた可能性が高い。
さらに、一過性にスーパートランスフェクトされた受容体X発現HEK NFκB-Luc-GFP細胞に対して、2種の二次抗体を比較した。ルシフェラーゼアッセイ法で通常使用されるもの(抗ヒトIgG Fcγ特異的ヤギIgG F(ab)2断片)の方が、Tag-lite(登録商標)実験で一般に使用されるd2標識二次抗体(抗ヒトIgG-d2)と比べて、低いシグナルを示した。考え得る理由は、抗ヒトIgG-d2がポリクローナル抗体であるということである。ポリクローナル抗体は、標的表面の1つのエピトープに限定されず、したがって、様々な構築物と同時に架橋できるため、これらは二次抗体としてこのうえなく適している。かつて使用された二次抗体は、1つの特異的エピトープにのみ結合するモノクローナル(Fab)2断片であり、これは、十分な高度架橋を実現するには理想的ではない。
最終的に、一過性にスーパートランスフェクトされた受容体X発現HEK NFκB-Luc-GFP細胞を、組合せアッセイ法のモデルとして使用した。
結論
両方の個別のアッセイ法、すなわちルシフェラーゼアッセイ法およびTag-lite(登録商標)アッセイ法のパラメーターを調整して、1つのウェル中で両方を組み合わせる新しいアッセイ法を開発することが可能であった。例えば、Tag-lite(登録商標)アッセイ法は、室温でのインキュベーションの代わりに37℃で実施することができる。さらに、Tag-lite(登録商標)反応緩衝液の代わりに培地を使用することができ、また1つのウェルに播種される細胞の量も、大幅に変動することができ、それによって結果は変わらない。さらに、ONE-Glo(商標)ルシフェラーゼアッセイシステムの規模縮小は、上手く機能した。したがって、組合せアッセイ法を、過去にTag-lite(登録商標)実験のためにも使用された384ウェルプレート中で実施することができた。この規模の利点は、必要とされる試薬の量が少ないことから全費用が減少することだけでなく、さらに、HTSを実施するのに適していることである。
標的受容体に加えてSNAPタグを含む安定な細胞が入手可能ではなかったため、最終的な組合せアッセイ法は、一過性にスーパートランスフェクトされた細胞を用いて実施した。組合せアッセイ法を用いる今後の実験のためには、そのタグを有している細胞株を作製すること、またはそれらをスーパートランスフェクトすることも同様に、可能であると思われる。さらに、WGA-HTRFを実施することによって、SNAPタグ(登録商標)を有していない細胞を使用することもできた。
結論として、組合せアッセイ法の開発は、NFκBシグナル伝達経路にとって有用であるだけでなく、そのアッセイ法を他の機能性読取り、例えば、サイトカイン放出またはその他のシグナル伝達経路に拡大適用する可能性もある。
実施例6:アルファスクリーン
様々なアッセイ法を評価するために、huDR5特異的抗体ドロジツマブを使用した。HuDR5は、HEK EBNA細胞によって発現された。アルファスクリーンに基づく方法のために、ビオチン標識WGAをストレプトアビジンドナービーズ(PerkinElmer)に結合させ、DR5へのドロジツマブの結合を、抗体のFc部分に結合するProtAアクセプタービーズ(PerkinElmer)を用いて検出した。ビーズは感光性であるため、すべてのピペット分注段階および測定を暗所で実施したことは注目に値する。
アルファスクリーンのアッセイウィンドウの決定
アッセイウィンドウを決定するために、1.4nMのWGA-ビオチンおよび10000個の細胞を用いてアルファスクリーンアッセイ法を実施した。PerkinElmer社は、各ビーズ、すなわちアクセプターおよびドナーについて濃度10μg/mlを推奨した。最初に、10μg/mlのストレプトアビジンドナービーズを1.4nMのWGA-ビオチンと混合し、30分間インキュベートした。その間に、濃度1200nMから始まる0.0011nMまでのドロジツマブの希釈系列(dilution row)を4倍希釈段階で調製した。huDR5 SNAPタグを発現するHEK EBNA細胞を解凍し、10mlの1×PBSで洗浄し、350gで8分間遠心分離した。上清を廃棄した。ペレットを適切な体積に再懸濁して、1×106細胞/mlとなるようにした。再懸濁した細胞にWGA-ビオチンで標識したストレプトアビジンビーズを添加し、室温で30分間インキュベートした。細胞をインキュベートしている間、希釈した抗体5μlを384ウェルプレートに2ウェルずつ移し、5μlのプロテインAアクセプタービーズ(10μg/ml)を添加した。この384プレートを30分間インキュベートした。これらの細胞に10mlになるまで1×反応緩衝液を加え、350gで8分間遠心分離した。上清を廃棄し、ペレットを1×反応緩衝液を用いて適切な体積に再懸濁して、1.0×106細胞/mlになるようにした。WGA-ストレプトアビジンビーズで標識した細胞10μlを384ウェルプレートの各ウェルに移した。10μlのWGA-ストレプトアビジン標識細胞、5μlのプロテインAアクセプタービーズ、および5μlの1×反応緩衝液を用いてブランクを調製した。測定はいずれも、2ウェルずつ実施した。1時間、2時間、3時間、および4時間後に、アルファスクリーンテンプレートを用いてTecan M1000 Proリーダーによって384ウェルプレートを測定した。ブランクを引き、GraphPad Prismでさらに解析することによって、生データをExcelで評価した。
ウェル当たりの細胞数およびWGA-ビオチンの評価
最初に、10μg/mlのストレプトアビジンドナービーズを1.4nMまたは2.8nMいずれかのWGA-ビオチンと混合し、30分間インキュベートした。その間に、濃度6.25nMから始まる0.020nMまでのドロジツマブの希釈系列を2倍希釈段階で調製した。huDR5 SNAPタグを発現するHEK EBNA細胞を解凍し、2本の15ml容Falconチューブに分け、10mlの1×PBSで洗浄し、350gで8分間遠心分離した。上清を廃棄した。これら2本のバイアルのペレットを適切な体積に再懸濁して、1×106細胞/mlまたは2.0×106細胞/mlとなるようにした。再懸濁した細胞にWGA-ビオチンで標識したストレプトアビジンビーズを移し、室温で30分間インキュベートした。細胞をインキュベートしている間、希釈した抗体5μlを384ウェルプレートに2ウェルずつ移し、5μlのプロテインAアクセプタービーズ(10μg/ml)を添加した。この384プレートを30分間インキュベートした。これらの細胞に10mlになるまで1×反応緩衝液を加え、350gで8分間遠心分離した。上清を廃棄し、ペレットを1×反応緩衝液を用いて適切な体積に再懸濁して、1.0×106細胞/mlおよび2.0×106細胞/mlになるようにした。WGA-ストレプトアビジンビーズで標識した細胞10μlを384ウェルプレートに移した。10μlのWGA-ストレプトアビジン標識細胞、5μlのプロテインAアクセプタービーズ、および5μlの1×反応緩衝液を用いてブランクを調製した。測定はいずれも、2ウェルずつ実施した。1時間、2時間、3時間、および4時間後に、アルファスクリーンテンプレートを用いてTecan M1000 Proリーダーによって384ウェルプレートを測定した。生データを、ブランクを引くことによってExcelで評価し、さらにGraphPad Prismで解析する(analyses)。
様々なアクセプター/ドナーペアの評価
どのアクセプター/ドナーペアが一番良く機能するかを明確にするために、2.8nMのWGA-ビオチンおよび20000個の細胞を用いてアルファスクリーンアッセイ法を実施した。最初に、10μg/mlのストレプトアビジンドナービーズまたは10μg/mlのストレプトアビジンアクセプタービーズを2.8nMのWGA-ビオチンと混合し、30分間インキュベートした。その間に、濃度25nMから始まる0.024nMまでのドロジツマブおよびAbYの希釈系列を2倍希釈で調製した。huDR5 SNAPタグを発現するHEK EBNA細胞を解凍し、2本の15ml容Falconチューブ、すなわち各ストレプトアビジンビーズ(ドナーまたはアクセプター)用の1本ずつに分けた。これらの細胞を10mlの1×PBSで洗浄し、350gで8分間遠心分離した。上清を廃棄した。これら2本のバイアルのペレットを適切な体積に再懸濁して、2.0×106個細胞/mlとなるようにした。再懸濁した細胞にWGA-ビオチンで標識したストレプトアビジンビーズを移し、室温で30分間インキュベートした。細胞をインキュベートしている間、希釈した抗体5μlを384ウェルプレートに2ウェルずつ移し、5μlのプロテインAドナービーズ(10μg/ml)またはプロテインAアクセプタービーズ(10μg/ml)のいずれかを添加した。この384プレートを30分間インキュベートした。これらの細胞に10mlになるまで1×反応緩衝液を加え、350gで8分間遠心分離した。上清を廃棄し、両方のバイアルのペレットを1×反応緩衝液を用いて適切な体積に再懸濁して、2.0×106細胞/mlになるようにした。WGA-ストレプトアビジンビーズで標識した細胞10μlを384ウェルプレートに移した。10μlのWGA-ストレプトアビジン標識細胞、5μlのプロテインAビーズ、および5μlの1×反応緩衝液を用いてブランクを調製した。測定はいずれも、2ウェルずつ実施した。1時間、2時間、3時間、および4時間後に、アルファスクリーンテンプレートを用いてTecan M1000 Proリーダーによって384ウェルプレートを測定した。生データを、ブランクを引くことによってExcelで評価し、かつGraphPad Prismで解析した。
最終的条件を用いるアルファスクリーン
最初に、10μg/mlのストレプトアビジンアクセプタービーズを2.8nMのWGA-ビオチンと混合し、30分間インキュベートした。その間に、濃度2.5nMから始まる0.020nMまでのドロジツマブの希釈系列を調製した。この希釈は、2倍希釈段階で行った。huDR5 SNAPタグを発現するHEK EBNA細胞を解凍し、10mlの1×PBSで洗浄し、350gで8分間遠心分離した。上清を廃棄した。ペレットを適切な体積に再懸濁して、2.0×106細胞/mlとなるようにした。再懸濁した細胞にWGA-ビオチンで標識したストレプトアビジンビーズを移し、室温で30分間インキュベートした。細胞をインキュベートしている間、希釈した抗体5μlを384ウェルプレートに2ウェルずつ移し、5μlのプロテインAドナービーズ(10μg/ml)を添加した。この384プレートを30分間インキュベートした。これらの細胞に10mlになるまで1×反応緩衝液を加え、350gで8分間遠心分離した。上清を廃棄し、ペレットを1×反応緩衝液を用いて適切な体積に再懸濁して、2.0×106細胞/mlになるようにした。WGA-ストレプトアビジンビーズで標識した細胞10μlを384ウェルプレートに移した。10μlのWGA-ストレプトアビジン標識細胞、5μlのプロテインAドナービーズ、および5μlの1×反応緩衝液を用いてブランクを調製した。測定はいずれも、3ウェルずつ実施した。1時間、2時間、3時間、および4時間後に、アルファスクリーン テンプレートを用いてTecan M1000 Proリーダーによって384ウェルプレートを測定した。ブランクを引くことによって生データをExcelで評価した。非線形回帰によってKD値を算出した。
アルファスクリーン生データの評価
データをバックグラウンドに対して標準化した。標準化したデータを非線形回帰によって評価して、ソフトウェアGraphPad Prism 6.0によって結合曲線およびKD値を明らかにした。以下の式に従うシグモイド用量応答(可変勾配)を用いて、結合曲線を適合させた。
Figure 0006782716
以下の式に従う一部位結合モデルを用いて、KDを明らかにした。
Figure 0006782716
結果
アルファスクリーンのアッセイウィンドウの決定
最初のアッセイ法において、huDR5を発現するHEK EBNA細胞のウェル当たりの数、ビオチン標識WGAのウェル当たりの量、およびWGA-ビオチンと細胞とのインキュベーション期間は、WGA-HTRFでのものを採用した。10000細胞/ウェルおよび1.4nM/ウェルのWGA-ビオチンを使用した。両方の抗体を、ウェル中で4倍希釈して、300nMから始めて最終的に3.0×104nMまで希釈した。アルファスクリーンアッセイ法の最初の試験は、このアッセイ設定の考えがうまくいくはずであることを示した。しかし、ドロジツマブの曲線は、濃度0.018nMから始まり19nMまでの比較的小さなアッセイウィンドウを示した。
ウェル当たりの細胞数およびWGA-ビオチンの評価
次の段階でこのアッセイ法を改善するために、細胞数を10000細胞/ウェルおよび20000細胞/ウェルに設定し、WGA-ビオチンの量を1.4nM/ウェルまたは2.8nM/ウェルのいずれかに設定した。より優れたアッセイウィンドウを得るために、希釈段階を5倍希釈ではなく2倍希釈に減らし、ウェル中の最終濃度50nMから始まる希釈系列とした。両方の抗体を、ウェル中で2倍希釈して、50nMから始めて最終的に0.049nMまで希釈した。1.4nM/ウェルのWGA-ビオチンを用いるどちらのアッセイ設定も、少ししか結合シグナルを示さないか、または結合シグナルを示さなかった。10000細胞/ウェルおよび2.8nM/ウェルのWGA-ビオチンを用いたアッセイ設定は、弱い結合曲線を示した。20000細胞/ウェルおよび2.8nM/ウェルのWGA-ビオチンを用いた場合、最も良い結果が得られた。
様々なアクセプター/ドナーペアの評価
アルファスクリーンアッセイ法を実施するために、ストレプトアビジンドナービーズをProtAアクセプタービーズと共に使用すること、またはストレプトアビジンアクセプタービーズをProtAドナービーズと共に使用することのいずれも可能である。最良のドナー/アクセプターペアを明らかにするために、それらを互いに比較した。両方の抗体を、ウェル中で2倍希釈して、1.6nMから始めて最終的に0.006nMまで希釈した。これら2種の異なるドナー/アクセプターペアは、ほぼ同じ結合曲線を示した。R2値の差さえも、ほぼ同じであった。ストレプトアビジンドナービーズおよびProtAアクセプタービーズを用いて測定したアッセイ法では、R2値が0.99であり、ProtAアクセプタービーズとペアにしたストレプトアビジンアクセプタービーズを用いて測定したアッセイ法では、R2値が0.99であった。
最終的条件を用いるアルファスクリーン
アルファスクリーンの評価の結果は、アルファスクリーンを以下の設定で実行するということであった(表2)。
(表2)アルファスクリーンアッセイ法を実施するための最終的に値を決められた(evaluated)パラメーター。
Figure 0006782716
アルファスクリーンアッセイ法に関して値を決めた最終的条件を用いて、huDR5へのドロジツマブの結合に関するKD値を決定した(図21)。ドロジツマブのシグモイドフィッティングにより、シグモイド形の結合曲線が示された。非線形回帰によって決定したKDは0.084nM+/-0.0053nMであった。AbYはhuDR5に対する結合を示さなかったため、KD値は算出されなかった。WGA-HTRFアッセイ法の場合のように、アッセイ法評価の結果は、別の抗体および抗原を用いて確認しなければならず、標的受容体Zに対するAbZのKDを決定した(図22)。
以前のアッセイ法の場合のように、陰性対照である抗体AbYは、結合を示さなかった。KD値は、非線形回帰によって決定した。AbZ-受容体Z結合のKDは、0.26nM+/-0.068nMであり、R2値は0.96であった。AbYは受容体Zに対する非結合体であるため、KDは測定されなかった。
実施例7:ジャーカットNFATレポーター細胞株を用いる、1つのウェル中でのCD3結合および機能性の測定
ジャーカットNFAT-ルシフェラーゼレポーター細胞株は、活性化T細胞核内因子(NFAT)の活性の変化をもたらすT細胞活性化をモニターするように設計されている。
転写因子NFATは、T細胞の発達および機能において重要な役割を有している。非活性化T細胞では、NFATは、高リン酸化型で細胞質中に主に位置している。TCR/CD3受容体複合体を介した抗原性T細胞刺激の後、Ca2+依存性ホスファターゼであるカルシニューリンがNFAT上の複数のホスホセリンを脱リン酸化して、その核内移行およびT細胞活性化遺伝子の下流遺伝子発現をもたらす。
NFAT-ルシフェラーゼレポーターベクターを用いて安定にトランスフェクトされたジャーカット細胞のクローン選択によってNFATレポーター細胞を作製した。このベクターは、NFAT応答エレメントの複数のリピートおよびホタルルシフェラーゼコード領域の上流の最小プロモーターを含む。PMA/イオノマイシンを用いたレポーター細胞の誘導後に、NFATの活性化が確認されている。
方法
WGA-TbによるジャーカットNFATレポーター細胞の標識
ジャーカットNFAT細胞を遠心沈殿し、PBS/1%FCSまたは増殖培地のいずれかに再懸濁して、4×106細胞/mlを得た。続いて、0.5ng/μlのWGA-テルビウムを添加することによって1×106個の細胞を標識し、室温で30分間インキュベートした。インキュベーション後、280gで8分間遠心分離することによってPBSで細胞を2回洗浄した。最後に、細胞をPBS/1%FCSまたは増殖培地のいずれかに再懸濁して、4×106細胞/mlという最終数を得た。
結合
CD3に結合するd2標識抗体ならびに結合しないd2標識対照IgGをPBS/1%FCSまたは増殖培地のいずれかに再懸濁し、1:2希釈段階で、最終的に50〜0.1nMの範囲の段階希釈物を作製した。40000個(10μl)の標識細胞を、384ウェル中で5μlの標識抗体および5μlのPBS/1%FCSまたは増殖培地と混合した。結合アッセイ法は、37℃で5時間インキュベートした。M1000 Proリーダーを用いて、60秒の遅延時間後に665nmならびに615nmでの吸光度を測定することによって、TR-FRETシグナルを測定した。40000個のWGA-Tb標識ジャーカット-NFAT細胞が、ブランクとしての機能を果たした。665nm/615nmの比を各ウェルについて決定して、各ウェルのドナーシグナルに対する個々のFRETシグナルを標準化した。さらに、GraphPad Prism 6.0でKD値およびEC50値を決定する前に、ブランクの比を試料の比から引いた。非線形回帰を用いて結合曲線を当てはめた。BmaxおよびKDは、式Y =(Bmax × X)/(KD + X)を用いる「一部位特異的結合」モデルを用いて決定した。
評価
HTRF生データの評価。これらのアッセイ法の解析のために、生データをMicrosoft Excelによって最初に編集した。HTRFアッセイ法において、結果の変動は、細胞、媒体添加物のピペット分注段階が原因で、およびウェル当たりの溶解細胞数に起因して、ウェルごとに起こり得る。そのような変動を最小限にするために、665nmと620nmの比を計算することによって、アクセプターの発光を各ウェルのドナーシグナルの発光に対して標準化した:比=665nm/620nm×10000。GraphPad Prism 6.0と呼ばれるソフトウェアによって、算出された比の値を評価した。非線形回帰を用いて結合曲線を当てはめた。BmaxおよびKDは、式Y =(Bmax × X)/(KD + X)を用いる「一部位特異的結合」モデルを用いて決定した。
機能アッセイ法 ― ルシフェラーゼアッセイ法
37℃で6時間のインキュベーション後に細胞を溶解することによって、結合アッセイ法と同じウェルからCD3シグナル伝達を測定した。したがって、ウェル当たり5μlのアッセイ混合物を取り出し、続いて15μのOne-Gloルシフェラーゼ試薬を添加した。暗所、室温で5〜10分間インキュベーションした後、1000msの積分時間を用いてM1000 Proプレートリーダーによって発光シグナルを測定した。ブランクとして、ルシフェラーゼ試薬を含む非活性化溶解細胞のシグナルを引いた。測定は、3ウェルずつ実施した。
結果
結合アッセイ法
増殖培地(図23a)ならびにPBS/1%FCS(図23b)において、CD3結合を検出することができた。非結合対照は、このアッセイシステムにおいていかなる結合も示さない。増殖培地におけるCD3への抗CD3の結合に関するKD値は、PBS/1%おける当該KD値と比べて約7倍大きく、それぞれ7nMと0.98nMである。
機能アッセイ法:
これらの結果から、両方の条件下で同様の結合が観察されたものの、CD3結合の際のシグナル伝達は増殖培地(図24a)中でのみ機能し、PBS/1%FCS(図24b)中では機能しなかったことが示される。ルシフェラーゼ活性のEC50は1.4nMであった。
結論:
ジャーカットNFATレポーター細胞株におけるCD3結合および機能性評価実験は、1つのウェル中でハイスループットな形式で結合および機能性を測定できるアッセイシステムの追加例である。

Claims (15)

  1. 以下の段階を含む、標的抗原に特異的に結合する抗体またはリガンドの結合および機能性を明らかにするためのインビトロアッセイ法:
    i)細胞を提供する段階であって、該細胞が
    a)該細胞の表面で該標的抗原を発現し、
    b)エネルギードナー化合物で共有結合的または非共有結合的に標識されており、かつ
    c)該標的抗原の応答エレメントの制御下にあるレポーター遺伝子を含む、
    段階;
    ii)試験しようとする該抗体またはリガンドを添加する段階;
    iii)エネルギー移動を測定することによって該標的抗原への結合を測定する段階であって、エネルギーアクセプター化合物が、試験しようとする該抗体もしくはリガンド、または一次抗体もしくはリガンドに結合する二次抗体のいずれかに共有結合的または非共有結合的に結合している、段階;および
    iv)該レポーター遺伝子の発現レベルと標的抗原の活性化レベルまたは阻害レベルとの相関関係を明らかにすることによって、該抗体またはリガンドの機能性を明らかにする段階
    であって、該抗体またはリガンドの該標的抗原への結合および機能性が、同じバイアル中で測定される、前記アッセイ法
  2. 前記エネルギードナー化合物および前記エネルギーアクセプター化合物が、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)エネルギードナー化合物および蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)エネルギーアクセプター化合物であり、段階iii)で測定されるエネルギー移動が、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)である、請求項1記載のアッセイ法。
  3. 前記FRETが時間分解FRETである、請求項2記載のアッセイ法。
  4. 前記エネルギードナー化合物および前記エネルギーアクセプター化合物が、生物発光エネルギー移動(BRET)エネルギードナー化合物および生物発光エネルギー移動(BRET)エネルギーアクセプター化合物であり、段階iii)で測定されるエネルギー移動が、生物発光エネルギー移動(BRET)である、請求項1記載のアッセイ法。
  5. 前記エネルギードナー化合物および前記エネルギーアクセプター化合物が、増幅発光近接ホモジニアスアッセイ法アクセプタービーズおよび増幅発光近接ホモジニアスアッセイ法ドナービーズであり、段階iii)で測定されるエネルギー移動が、一重項酸素から該アクセプタービーズ内のチオキセン誘導体へのエネルギー移動である、請求項1記載のアッセイ法。
  6. 前記標的抗原が、前記エネルギードナー化合物によって共有結合的または非共有結合的に標識される、請求項1〜5のいずれか一項記載のアッセイ法。
  7. 前記エネルギードナー化合物が、コムギ胚芽凝集素(WGA)に共有結合的または非共有結合的に連結される、請求項1〜5のいずれか一項記載のアッセイ法。
  8. 前記レポーター遺伝子が、蛍光タンパク質をコードしている遺伝子、またはその触媒活性を検出することができる酵素をコードしている遺伝子より選択される、請求項1〜7のいずれか一項記載のアッセイ法。
  9. 前記レポーター遺伝子が、緑色蛍光タンパク質(GFP)またはルシフェラーゼをコードしている、請求項8記載のアッセイ法。
  10. 前記標的抗原が細胞表面受容体である、請求項1〜9のいずれか一項記載のアッセイ法。
  11. 段階iii)およびiv)が、連続的または同時に実施される、請求項1〜10のいずれか一項記載のアッセイ法。
  12. 前記標的抗原および前記応答エレメントが、NF-κB経路の一部分である、請求項1〜11のいずれか一項記載のアッセイ法。
  13. 前記応答エレメントが、SEQ ID NO: 1、2、3、4、または5のDNA配列を有している少なくとも1つのDNAリピートを含む、請求項12記載のアッセイ法。
  14. 前記応答エレメントが、SEQ ID NO: 6、7、8、または9のDNA配列を含む、請求項12または13記載のアッセイ法。
  15. 前記標的抗原の応答エレメントの制御下にあるレポーター遺伝子をコードしているDNA配列を含む発現ベクターを用いて細胞をトランスフェクションする予備段階を含む、請求項1〜14のいずれか一項記載のアッセイ法。
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