JP6777459B2 - ポリマーエマルション及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、エマルションに含まれる乳化剤などの水溶性成分が低減され、エマルション塗膜の耐水性や接着性が著しく改良されたポリマーエマルション、及びその製造方法に関する。
ポリマー微粒子は、エマルション塗料、粘接着剤、バインダー、繊維処理剤、インク、紙塗工剤、情報表示材料、記録材料、医療診断材料など、産業上の幅広い分野で使用されている。ポリマー微粒子の製造法としては、懸濁重合、分散重合、乳化重合、マイクロエマルション重合、ソープフリー乳化重合などが知られている。中でも乳化重合は、高い速度で高分子量ポリマーを製造することが可能で温度制御も容易なため、特にエマルション塗料や粘接着剤の工業的製造法として古くから利用されている(例えば非特許文献1参照)。
乳化重合では、モノマーを乳化するための乳化剤が不可欠であり、低分子量のアニオン性乳化剤、カチオン性乳化剤、両性乳化剤、あるいは高分子量のポリマー乳化剤(分散剤)が使用されている。これらの乳化剤は、エマルション粒子表面に物理吸着することによって、エマルション粒子の分散安定化に寄与している。しかしながら、これらの乳化剤は、重合媒体に硬水を用いた場合やエマルションに充填材、顔料、溶剤、pH調整剤などの各種配合剤を添加した際の化学的な刺激、あるいは、配合及び塗工時の機械的せん断力により脱着し、エマルションの不安定化を引き起こす場合がある。また、エマルション塗料や粘接着剤を基材に塗布、乾燥する過程で脱着した乳化剤は、接着性や密着性の低下、及び吸湿による塗膜の白化の原因になる(例えば非特許文献2参照)。
上記した乳化剤の課題を解決するための方法として、ソープフリー乳化重合が知られている。例えば、乳化剤の代わりに、水溶性モノマーあるいは重合性ビニル基を有する乳化剤(反応性乳化剤とも言う)を使用する試みが行われている(例えば非特許文献3参照)。例えば、水溶性のラジカル重合性モノマーであるスチレンスルホン酸ナトリウムは、乳化重合によるポリマーエマルションの製造において、エマルションの安定性を高める目的で工業的に使用されている。しかしながら、スチレンスルホン酸ナトリウムに代表される水溶性モノマーの界面活性は、上記した(従来型)乳化剤に比べて劣るため、水溶性モノマー単独では、モノマーの乳化が不十分であり、十分なエマルション安定性を得ることは困難、即ち、乳化剤の低減には限界があった。一方、乳化剤の分子内に重合性ビニル基を導入した、所謂、反応性乳化剤が知られており、工業的に使用されているが、重合反応性やエマルションの接着性に依然課題があった。そこで、エマルション安定性、塗膜の耐水性、接着性をより向上させるため、乳化剤をより低減できる方法が強く求められていた(例えば特許文献1参照)。
特許第5332141号公報
日本色材学会誌、2007年、80巻、11号、462〜476頁 日本画像学会誌、2005年、44巻、5号、369〜374頁 日本接着学会誌、1982年、18巻、12号、530〜535頁
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、乳化剤をより低減することによって、エマルション安定性を低下させることなく、エマルション塗膜の耐水性、接着性を改良したポリマーエマルション、及びその製造方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、水溶性モノマーであるジビニルベンゼンスルホン酸又はその塩(以下、ジビニルベンゼンスルホン酸又はその塩を「DVBS」と言う)が、優れた界面活性を有することを見出し、乳化剤の代わりにDVBSを用いることにより、ポリマーエマルションの安定性とエマルション塗膜の耐水性や接着性を改良できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、下記の繰り返し構造単位(A)、(B)及び(C)を含むポリマー100重量部に対して3重量部以下の乳化剤により水中又は水性媒体中に分散安定化されたポリマーエマルションに係る。
Figure 0006777459
〔繰り返し構造単位(A)中、Rは水素、メチル基又はエチル基を表し、Rはヘテロ原子で置換されていてもよい炭素数1〜10の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基を表し、
繰り返し構造単位(B)中、Rは水素又はメチル基を表し、Rは水素又はヘテロ原子で置換されていても良い炭素数1〜10の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基を表し、
繰り返し構造単位(C)中、Mはプロトン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン、アンモニウムイオン又は第四級アンモニウムイオンを表す。
ここで、xをポリマーに含まれる繰り返し構造単位(A)の数、yをポリマーに含まれる繰り返し構造単位(B)の数、zをポリマーに含まれる繰り返し構造単位(C)の数とするとき、1.0≦100x/(x+y+z)≦99.9、100y/(x+y+z)≦99.9、0.1≦100z/(x+y+z)≦5.0である。〕
また本発明は、前記構造単位(A)、(B)及び(C)に、さらに下記の繰り返し構造単位(D)を含む前記のポリマーエマルションに係る。
Figure 0006777459
〔繰り返し構造単位(D)中、R5、及びRは、各々独立に水素、ハロゲン、シアノ基又はヘテロ原子で置換されていてもよい炭素数1〜10の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基を表す。〕
また本発明は、次の(e)、(f)、(g)及び(h)を含むラジカル重合性モノマー100重量部に対して3重量部以下の乳化剤を用いてラジカル重合性モノマーを水中又は水性媒体中に乳化させ、ラジカル重合開始剤を加えて乳化重合する、ポリマーエマルションの製造方法に関する。
(e)下記式(E)で示されるアクリル酸エステル類及び/又はメタクリル酸エステル類を99.9〜1.0モル%、
(f)下記式(F)で示されるスチレン類(F)を99.9モル%以下、
(g)下記式(G)で示されるジビニルベンゼンスルホン酸又はその塩を0.1〜5.0モル%、及び
(h)下記式(H)で示され、式(E)、式(F)及び式(G)で示される化合物と共重合可能なラジカル重合性モノマーを20.0モル%以下
Figure 0006777459
〔式(E)中、Rは水素、メチル基又はエチル基を表し、Rはヘテロ原子で置換されていても良い炭素数1〜10の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基を表し、
式(F)中、Rは水素又はメチル基を表し、Rは水素又は、ヘテロ原子で置換されていても良い炭素数1〜10の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基を表し、
式(G)中、Mはプロトン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン、アンモニウムイオン又は第四級アンモニウムイオンを表し、
式(H)中、R5、及びRは、各々独立に水素、ハロゲン基、シアノ基又は、ヘテロ原子で置換されていても良い炭素数1〜10の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基を表す。〕
さらに本発明は、上記ポリマーエマルションを用いてなる、塗料、コーティング剤、粘接着剤、プライマー、バインダー、繊維処理剤、トナー、情報表示材料及び医療診断材料からなる群より選ばれる一つまたは複数の組合せへの利用に係る。
本発明のポリマーエマルションは、乳化剤の代わりにジビニルベンゼンスルホン酸又はその塩を用いることにより、エマルションの安定性と塗膜の耐水性を著しく改良したものであり、特にエマルション塗料、コーティング剤、粘接着剤、プライマーとして利用する際に、凝集物の抑制や塗膜及び粘接着剤層の耐久性向上が期待できる。その他、繊維処理剤、電池電極材料などの各種バインダー、インク、トナー、情報表示材料、医療診断材料など、産業上の幅広い分野への利用が期待できる。
参考例1に記載した、スチレンスルホン酸ナトリウム(以下、スチレンスルホン酸ナトリウムを「SS」と略称することがあり、図1に表示)水溶液及びジビニルベンゼンスルホン酸ナトリウム(以下、ジビニルベンゼンスルホン酸ナトリウムを「DVBS」と略称することがあり、図1に表示)水溶液の表面張力を測定した結果である。ここで、横軸は水溶液の濃度(wt%(重量%))、縦軸は水溶液の表面張力(dyn/cm)である。 参考例2に記載した、スチレンスルホン酸ナトリウム(図2に「SS」と表示)及びジビニルベンゼンスルホン酸ナトリウム(図2に「DVBS」と表示)の重合速度の測定結果である。横軸はモノマー溶液の加熱時間(h(時間))、縦軸はモノマーの重合転化率(%)である。
以下、本発明を詳しく説明する。
本発明は、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2,2,2−トルフロロエチルなどのメタクリル酸エステル系モノマー、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2,2,2−トリフロロエチルなどのアクリル酸エステル系モノマー、スチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン、シアノスチレン、アミノスチレン、メトキシスチレン、プトキシスチレン、アセトキシスチレンなどのスチレン系モノマーなどのラジカル重合性モノマーを乳化重合してポリマーエマルションを製造する際に、乳化剤の代わりにジビニルベンゼンスルホン酸又はその塩を用いることに特徴がある。即ち、DVBSを用いることにより、従来のエマルションで使用されている乳化剤を含まないか、その含有量を著しく低減したものである。
乳化剤の含有量が著しく低減されたものとは、上記したラジカル重合性モノマーに由来するポリマー分100重量部に対して3重量部以下の乳化剤を含有することをいう。3重量部を超えると、エマルションの耐水性や接着性などの低下が顕著になることがある。
乳化剤は、例えば以下の三つに分類できる。第一番目の分類としては、高級脂肪酸塩、アルケニルコハク酸塩、ロジン酸塩、アルキル硫酸ナトリウム、高級アルコール硫酸エステルナトリウム、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、高級脂肪酸アミドのスルホン酸塩、高級脂肪酸アルキロールアミドの硫酸エステル塩、アルキルスルホベタインなど最も一般的なアニオン性乳化剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、高級脂肪酸アルカノールアミド、ポリビニルアルコールなど最も一般的なノニオン性乳化剤、アルキルアミン塩、四級アンモニウム塩、アルキルエーテル型四級アンモニウム塩など最も一般的なカチオン性乳化剤、アルキルベタイン、アルキルスルホベタイン、アルキルアミンオキサイドなど最も一般的な両性乳化剤があげられる。これらの乳化剤は、エマルション粒子の表面に物理吸着することにより、エマルションを安定化するものであり、モノマーの乳化力は高いが、上記したように、(特に低分子量型の乳化剤は)化学的な刺激や機械的なせん断力によって脱着し易い欠点がある。一方、ポリビニルアルコールなどのポリマー型乳化剤は、優れたエマルション安定性を与えるが、耐水性や接着性に課題がある。
第二番目の分類としては、例えば、ラテムル(花王製)、エレミノール(三洋化成工業製)、アクアロン(第一工業製薬製)など、市販の反応性乳化剤があげられる。これらの乳化剤は、第一分類の乳化剤の欠点を補うため、乳化剤分子内にラジカル重合性ビニル基を導入したものであり、乳化力は優れるが、共重合性が十分ではなく、また、エマルション塗膜の接着性を阻害し易いなどの欠点がある。
第三番目の分類として、スチレンスルホン酸塩、ビニルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸、メタリルスルホン酸、2−スルホエチルメタクリレート、イソプレンスルホン酸、アクリル酸、メタクリル酸、ビニル安息香酸塩、N−メチロールメタクリルアミド、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ポリ(オキシエチレン)メタクリレートなどの水溶性モノマーがあげられる。これらは、上記第一及び二分類の乳化剤と比べて、大きな疎水基を含まず分子サイズが小さいため、エマルション粒子に効率良く導入できれば、エマルションの安定性だけでなく、塗膜の耐水性や接着性を大きく改良できることが期待されるが、モノマー乳化力(界面活性が)が不十分であったり、水相で単独重合し易いことなどから、上記第一及び二分類の乳化剤との併用が避けられない。
本発明者らは、水溶性モノマーであるDVBSの界面活性が、従来の水溶性モノマーの界面活性よりも遥かに高いことを見出し、本発明に至ったものである。
即ち、本発明は、繰り返し構造単位(A)、(B)及び(C)を含むポリマー100重量部に対して3重量部以下の乳化剤により水中又は水性媒体中に分散安定化されたポリマーエマルションに関する。
Figure 0006777459
〔繰り返し構造単位(A)中、Rは水素、メチル基又はエチル基を表し、Rはヘテロ原子で置換されていてもよい炭素数1〜10の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基を表し、繰り返し構造単位(B)中、Rは水素又はメチル基を表し、Rは水素又はヘテロ原子で置換されていても良い炭素数1〜10の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基を表し、繰り返し構造単位(C)中、Mはプロトン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン、アンモニウムイオン又は第四級アンモニウムイオンを表す。
ここで、xをポリマーに含まれる繰り返し構造単位(A)の数、yをポリマーに含まれる繰り返し構造単位(B)の数、zをポリマーに含まれる繰り返し構造単位(C)の数とするとき、1.0≦100x/(x+y+z)≦99.9、100y/(x+y+z)≦99.9、0.1≦100z/(x+y+z)≦5.0である。〕
また本発明は、前記構造単位(A)、(B)及び(C)に、さらに下記の繰り返し構造単位(D)を含む前記のポリマーエマルションである。
Figure 0006777459
〔繰り返し構造単位(D)中、R5、及びRは、各々独立に水素、ハロゲン、シアノ基又はヘテロ原子で置換されていてもよい炭素数1〜10の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基を表す。〕
また本発明は、次の(e)、(f)、(g)及び(h)を含むラジカル重合性モノマー100重量部に対して3重量部以下の乳化剤を用いてラジカル重合性モノマーを水中又は水性媒体中に乳化させ、ラジカル重合開始剤を加えて乳化重合する、ポリマーエマルションの製造方法に関する。
(e)下記式(E)で示されるアクリル酸エステル類及び/又はメタクリル酸エステル類を99.9〜1.0モル%、
(f)下記式(F)で示されるスチレン類(F)を99.9モル以下、
(g)下記式(G)で示されるジビニルベンゼンスルホン酸又はその塩を0.1〜5.0モル%、及び
(h)下記式(H)で示され、式(E)、式(F)及び式(G)で示される化合物と共重合可能なラジカル重合性モノマーを20.0モル%以下
Figure 0006777459
〔式(E)中、Rは水素、メチル基又はエチル基を表し、Rはヘテロ原子で置換されていても良い炭素数1〜10の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基を表し、
式(F)中、Rは水素又はメチル基を表し、Rは水素又は、ヘテロ原子で置換されていても良い炭素数1〜10の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基を表し、
式(G)中、Mはプロトン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン、アンモニウムイオン又は第四級アンモニウムイオンを表し、
式(H)中、R5、及びRは、各々独立に水素、ハロゲン基、シアノ基又は、ヘテロ原子で置換されていても良い炭素数1〜10の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基を表す。〕
ところで、DVBS及び乳化剤を用いて水中でスチレンなど、フェニル基を有するラジカル重合性モノマーを乳化重合することが、特開昭58−76762号公報により知られている。当該文献には、適度な安定性を有するラテックス(ポリマーエマルション)を製造するために、スルホン化されたフェニル基を有するモノマーと少量の乳化剤を用いてスチレンを乳化重合する旨記載されており、スルホン化されたフェニル基を有するモノマーの例として、DVBSやスチレンスルホン酸塩などが例示されている。しかし、DVBSとスチレンスルホン酸塩の重合性や界面活性などの違いについては一切言及されていない。また、ラジカル重合性モノマーとしては、フェニル基を有するラジカル重合性モノマーに限定されており、アクリル酸エステルやメタクリル酸エステルに関する記載は一切ない。
本発明のポリマーエマルションの製造方法は、DVBSを用いるほかは、上記した非特許文献に記載されている乳化重合、マイクロエマルション重合、ミニエマルション重合、分散重合、懸濁重合、逆相乳化重合と基本的に同じである。例えば、非特許文献3(日本接着学会誌、1982年、18巻、12号、530〜535頁)に記載されているように、反応器にイオン交換水、所定量のラジカル重合性モノマー、過硫酸カリウムなどの重合開始剤及び必要に応じてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムやエマルゲン920(花王株式会社製)などの乳化剤を仕込んだ後、窒素雰囲気下、加熱及び撹拌することにより乳化重合できる。また、非特許文献2(日本画像学会誌、2005年、44巻、5号、369〜374頁)に記載されているように、乳化剤水溶液にラジカル重合性モノマーを加えた後、超音波などのせん断力によってモノマー油滴を細分化した後、重合開始剤を加えて、窒素雰囲気下、加熱及び撹拌することによりミニエマルション重合できる。あるいは、乳化剤水溶液とラジカル重合性モノマーに適当な油を加え、モノマー油滴をさらに微細化することにより、マイクロエマルション重合することができる。上記した重合法におけるマトリックス(連続相)は水だが、非特許文献1(日本色材学会誌、2007年、80巻、11号、462〜476頁)に記載されているように、水の代わりにヘキサンやシクロヘキサンをマトリックスとして用い、HLB(親水性疎水性バランス)の低い界面活性剤を乳化剤として用いることにより、逆相乳化重合することもできる。
以下、最も一般的な乳化重合による製造法について説明する。
例えば、先ず、上記した(h)ラジカル重合性モノマー(式(H)に示される)と、DVBS又はDVBSと乳化剤を含む水溶液とを混合し、撹拌あるいはホモジナイザー処理して乳化することにより、モノマー乳化液を調製する。当該モノマー乳化液を反応器に仕込んで脱気した後、重合開始剤を添加しながら、所定温度で重合すれば良い。この際、急激な発熱を避けるため、モノマー乳化液の一部を反応器に仕込んで重合を開始し、残りのモノマー乳化液を連続的に添加しながら重合しても良い。あるいは、乳化剤を含む溶液に、ラジカル重合性モノマーを連続的に添加しながら重合しても良い。
また、特にDVBSの添加量を増やした際に、ポリマーエマルションの造膜性などを調整するため、ラジカル重合性モノマーに分子量調節剤(連鎖移動剤)を加えて、乳化重合しても良い。モノマーの重合転化率がほほ100%に達するまで重合を継続するか、もしくは目標とするモノマー転化率に到達したところで、重合禁止剤を添加し、重合を終了する。その後、未反応モノマーを減圧除去することにより、ポリマーエマルションが得られる。
ポリマー微粒子を製造する場合には、濾別した微粒子を適当な溶媒で洗浄し、不要な乳化剤や未反応モノマーを除去すれば良い。
ラジカル重合性モノマーは、上記した(e)アクリル酸エステル類及び/又はメタクリル酸エステル類、エタクリル酸エステル類、(f)スチレン類、(g)DVBSであり、用途毎に要求されるガラス転移温度、熱変形温度、硬度、耐溶剤性、比重、熱膨張率などの物性に応じて、モノマー組成を調整すれば良い。
式(H)で示され、前記式(E)、式(F)及び式(G)で示される化合物と共重合可能なラジカル重合性モノマー(h)は特に限定されるものではない。例えば、イソブチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、2−フェニルビニルアルキルエーテル、ニトロフェニルビニルエーテル、シアノフェニルビニルエーテル、クロロフェニルビニルエーテル、クロロエチルビニルエーテルなどのビニルエーテル類、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2−クロロ−1,3−ブタジエン、2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン、2−シアノ−1,3−ブタジエン、1−クロロ−1,3−ブタジエン、2−(N−ピペリジルメチル)−1,3−ブタジエン、2−トリエトキシメチル−1,3−ブタジエン、2−(N,N−ジメチルアミノ)−1,3−ブタジエン、N−(2−メチレン−3−ブテノイル)モルホリン、2−メチレン−3−ブテニルホスホン酸ジエチルなどの1,3−ブタジエン類、N−フェニルマレイミド、N-(クロロフェニル)マレイミド、N-(メチルフェニル)マレイミド、N-(イソプロピルフェニル)マレイミド、N-(スルフォフェニル)マレイミド、N−メチルフェニルマレイミド、N−ブロモフェニルマレイミド、N−ナフチルマレイミド、N−ヒドロキシフェニルマレイミド、N−メトキシフェニルマレイミド、N−カルボキシフェニルマレイミド、N−(ニトロフェニル)マレイミド、N−ベンジルマレイミド、N−(4−アセトキシ−1−ナフチル)マレイミド、N−(4−オキシ−1−ナフチル)マレイミド、N−(3−フルオランチル)マレイミド、N−(5−フルオレセイニル)マレイミド、N−(1−ピレニル)マレイミド、N−(2,3−キシリル)マレイミド、N−(2,4−キシリル)マレイミド、N−(2,6−キシリル)マレイミド、N−(アミノフェニル)マレイミド、N−(トリブロモフェニル)マレイミド、N−[4−(2−ベンゾイミダゾリル)フェニル]マレイミド、N−(3,5−ジニトロフェニル)マレイミド、N−(9−アクリジニル)マレイミド、マレイミド、N-(スルフォフェニル)マレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−メトキシフェニルマレイミドなどのマレイミド類、フマル酸ジブチル、フマル酸ジプロピル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジシクロヘキシル、フマル酸ビス2−エチルヘキシル、フマル酸ドデシルなどのフマル酸ジエステル類、フマル酸ブチル、フマル酸プロピル、フマル酸エチルなどのフマル酸モノエステル類、マレイン酸ジブチル、マレイン酸ジプロピル、マレイン酸ジエチルなどのマレイン酸ジエステル類、マレイン酸ブチル、マレイン酸プロピル、マレイン酸エチル、マレイン酸ジシクロヘキシルなどのマレイン酸モノエステル類、無水マレイン酸、無水シトラコン酸などの酸無水物、アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、2−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、イソプロピルアクリルアミド、N−メチロールアクリルミド、スルフォフェニルアクリルアミド、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−アクリルアミド−1−メチルスルホン酸、ジアセトンアクリルアミド、アクリルアミドアルキルトリアルキルアンモニウムクロライドなどのアクリルアミド類、メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、2−ヒドロキシエチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルメタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、メタクリロイルモルホリン、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、イソプロピルメタクリルアミド、2−メタクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、メタクリルアミドアルキルトリアルキルアンモニウムクロライドなどのメタクリルアミド類、その他、ビニルピロリドン、スルフォフェニルイタコンイミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、フマロニトリル、α−シアノエチルアクリレート、シトラコン酸、無水シトラコン酸、ビニル酢酸、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサミック酸ビニル、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、モノ2−(メタクリロイルオキシ)エチルフタレート、モノ2−(メタクリロイルオキシ)エチルサクシネート、モノ2−(アクリロイルオキシ)エチルサクシネート、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルジメトキシシラン、アクロレイン、ビニルメチルケトン、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルホルムアミド、ビニルエチルケトン、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、デヒドロアラニン、二酸化イオウ、イソブテン、N−ビニルカルバゾール、ビニリデンジシアニド、パラキノジメタン、クロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、ノルボルネン、N−ビニルカルバゾール、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリル酸、メタクリル酸、スチレンスルホン酸、スチレンスルホン酸塩等が挙げられる。
これらの式(H)で示され、前記式(E)、式(F)及び式(G)で示される化合物と共重合可能なラジカル重合性モノマー(h)は、上記したガラス転移温度、熱変形温度、硬度、耐溶剤性、比重、熱膨張率の他に、親水性、撥水性、硬化性、感温性などをポリマーエマルションに付与する目的で使用しても良い。
以上に挙げたモノマーが重合することで、ポリマー中に含まれる繰り返し構造単位である、モノマーに由来した各種の残基となる。
乳化剤は特に限定されるものではないが、アニオン性乳化剤としては、例えば、ロジン酸塩、脂肪酸塩、アルケニルコハク酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、アルキルサクシネートスルホン酸塩、ポリオキシエチレン多環式フェニルエーテル硫酸エステル塩、α−オレフィンスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物、タウリン誘導体、ポリスチレンスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸スチレン共重合体、ポリスチレンスルホン酸N−ビニルピロリド共重合体、ポリスチレンスルホン酸N−置換マレイミド共重合体、ポリスチレンスルホン酸メタクリル酸共重合体、ポリスチレンスルホン酸アクリル酸共重合体、ポリスチレンスルホン酸アクリル酸エステル共重合体、スチレンスルホン酸マレイン酸共重合体、スチレンスルホン酸アクリルアミド共重合体、スチレンスルホン酸メタクリルアミド共重合体、スチレンスルホン酸2−ヒドロキシエチルメタクリレート共重合体、ポリビニルホスホン酸共重合体、ポリビニルスルホン酸共重合体、ポリイソプレンスルホン酸共重合体、ポリアクリル酸エステルアクリル酸共重合体、ポリメタクリル酸エステルメタクリル酸共重合体、ポリアクリルアミドアクリル酸共重合体、ポリメタクリルアミドメタクリル酸共重合体、アルキルスルホコハク酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキルプロペニルフェノールポリエチレンオキサイド付加物の硫酸エステル塩、アリルアルキルフェノールポリエチレンオキサイド付加物の硫酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸エステル塩、高級脂肪酸アミドのスルホン酸塩、高級脂肪酸アルキロールアミドの硫酸エステル塩等があげられ、ノニオン性乳化剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルアミン、アルキルアルカノールアミド、アミンオキシド系ノニオン乳化剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレン多環式フェニルエーテル、アルキルプロペニルフェノールポリエチレンオキサイド付加物、アリルアルキルフェノールポリエチレンオキサイド付加物、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、アルキルポリグルコキシド、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリビニルアルコール、カルボキシルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシエチルセルロース、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリジメチルアミノエチルメタクリレート、ポリジメチルアミノエチルアクリレート、ポリジエチルアミノエチルメタクリレート、ポリジエチルアミノエチルアクリレート、ポリt−ブチルエチルアミノエチルメタクリレート、ポリt−ブチルアミノエチルアクリレート、ポリジメチルアミノエチルメタクリレート/メチルメタクリレート共重合体、ポリジメチルアミノエチルアクリレート/メチルメタクリレート共重合体、ポリジメチルアミノエチルメタクリレート/ブチルアクリレート共重合体、ポリジメチルアミノエチルアクリレート/エチルアクリレート共重合体等があげられ、両性乳化剤としては、例えば、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルジメチルアミノスルホベタイン、アルキルスルホベタイン等があげられる。さらに、従来型乳化剤として、上記した市販の反応性乳化剤や水溶性モノマーがあげられる。
なお、DVBSの使用量は、全ラジカル重合性モノマー100モル%中、0.1〜5.0モル%とすることが好ましい。0.1モル%未満では、エマルションを十分に安定化することが難しくなることがあり、5.0モル%を超えると、スルホン酸基や架橋度の増加により、エマルション塗膜の耐水性、接着性及び造膜性が低下することがある。
また、上記した乳化剤の使用量は、全ラジカル重合性モノマー100重量部に対して3重量部以下とするとよい。3重量部を超えると、エマルション塗膜の耐水性や接着性が低下する。
上記ラジカル重合開始剤としては、例えば、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジラウリルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−シクロヘキサン、シクロヘキサノンパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、クミルパーオキシオクトエート、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素などのパーオキサイド類、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、1−[(1−シアノ−1−メチルエチル)アゾ]ホルムアミド、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリックアシッド)、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1’−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス{2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス{2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジサルフェートジハイドレート、2,2’−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]}ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス(1−イミノ−1−ピロリジノ−2−メチルプロパン)ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]テトラハイドレート、1,1’−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルメタン)、4,4’−ジアゼンジイルビス(4−シアノペンタン酸)・α−ヒドロ−ω−ヒドロキシポリ(オキシエチレン)重縮合物などのアゾ化合物などがあげられる。また、必要に応じて、これらの重合開始剤とアスコルビン酸、エリソルビン酸、アニリン、三級アミン、ロンガリット、ハイドロサルファイト、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、次亜リン酸ナトリウムなどの還元剤を併用しても良い。
ラジカル重合開始剤の使用量は、全モノマー100重量部に対し、通常、0.1〜10重量部である。
上記した分子量調節剤としては、特に制限はないが、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィド、ジエチルキサントゲンジスルフィド、ジエチルチウラムジスルフィド、2,2’−ジチオジプロピオン酸、3,3’−ジチオジプロピオン酸、4,4’−ジチオジブタン酸、2,2’−ジチオビス安息香酸などのジスルフィド類、n−ドデシルメルカプタン、オクチルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、チオグリコール酸、チオリンゴ酸、2−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸、チオサリチル酸、3−メルカプト安息香酸、4−メルカプト安息香酸、チオマロン酸、ジチオコハク酸、チオマレイン酸、チオマレイン酸無水物、ジチオマレイン酸、チオグルタール酸、システイン、ホモシステイン、5−メルカプトテトラゾール酢酸、3−メルカプト−1−プロパンスルホン酸、3−メルカプトプロパン−1,2−ジオール、メルカプトエタノール、1,2−ジメチルメルカプトエタン、2−メルカプトエチルアミン塩酸塩、6−メルカプト−1−ヘキサノール、2−メルカプト−1−イミダゾール、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、システイン、N−アシルシステイン、グルタチオン、N−ブチルアミノエタンチオール、N,N−ジエチルアミノエタンチオールなどのメルカプタン類、ヨードホルムなどのハロゲン化炭化水素、ジフェニルエチレン、p−クロロジフェニルエチレン、p−シアノジフェニルエチレン、α−メチルスチレンダイマー、ベンジルジチオベンゾエート、2−シアノプロプ−2−イルジチオベンゾエート、有機テルル化合物、イオウ、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、重亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸カリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸カリウム、次亜リン酸ナトリウムなどがあげられる。分子量調節剤の使用量は、全モノマー100重量部に対し、通常、10重量部以下である。
上記した重合禁止剤は、モノマーをほぼ100%まで重合させる場合は必ずしも必要ではないが、フェノチアジン、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、トリス(ノニルフェニル)フォスファイト、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、N−フェニル−1−ナフチルアミン、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2−メルカプトベンズイミダゾール、ハイドロキノン、N,N−ジエチルヒドロキシルアミン、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸リチウム、安定ニトロキシルラジカル、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテルなどを用いることができる。
上記した重合開始剤、還元剤、分子量調節剤のほか、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウムなどのpH緩衝剤を添加しても良い。
重合条件は特に限定するものではないが、不活性ガス雰囲気下、10〜100℃で2〜12時間加熱すれば良く、モノマー及び乳化剤組成と重合開始剤種によって適宜調整すれば良い。
上記した一般的な乳化重合法の他に、例えば、DVBS及びDVBSと共重合可能なラジカル重合性モノマーを水中又は水性溶媒中で共重合することにより、界面活性を有するポリマー(ポリマー型乳化剤)を最初に形成させた後、さらにポリマーエマルションの主成分となるラジカル重合性モノマーを加えて乳化重合する(所謂、in Situ重合)こともできる。
本発明のポリマーエマルションは、エマルションの安定性と塗膜の耐水性や接着性を著しく改良したものであり、エマルション塗料、コーティング剤、粘接着剤、プライマー、繊維処理剤の他、電池電極材料などの各種バインダー、インク、トナーなど、産業上極めて有用である。
以下の実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何らの制限を受けるものではない。
<パラスチレンスルホン酸ナトリウムの純度測定>
酸化還元滴定法により、活性二重結合を定量し、試料中のスチレンスルホン酸ナトリウム含量とした。
(1)器具及び装置
1)秤量瓶:直径50mm、深さ70mm
2)500ml、1000mlメスフラスコ
3)500ml共栓付三角フラスコ
4)電子化学天秤
(2)試薬
1)臭素液:臭化カリウム(KBr)22.00g、臭素酸カリウム(KBrO)3.00gを純水に溶解し、全体を1000mlとした。
2)硫酸水溶液(濃硫酸/純水体積比=1/1)
3)ヨウ化カリウム水溶液(200g/L)
4)0.1mol/Lチオ硫酸ナトリウム水溶液
5)でんぷん水溶液:6.00gのでんぷんを純水に溶解し、全体を1000mlとした。
(3)操作
1)試料20gを0.1mgの桁まで秤量瓶に秤取る。
2)500mlメスフラスコに純水で洗い移し、液量を約400mlとする。
3)磁気回転子を入れて撹拌し、試料を溶解する。
4)回転子を取り出し、純水で標線を合わせて振り混ぜ、検液とする。
5)純水200mlを入れた500ml共栓付三角フラスコに臭素液25mlを加える。
6)検液5mlを加えた後、硫酸水溶液10mlを加えて密栓し、20分間放置する。
7)ヨウ化カリウム水溶液10mlを素早く加えて10分間放置する。
8)チオ硫酸ナトリウム水溶液で滴定し、溶液の黄色が薄くなってから、指示薬として、でんぷん溶液1mlを加え、生じたヨウ素でんぷんの青色が消えるまで滴定する。
9)別に空試験として、純水200mlを加えて共栓付三角フラスコに臭素液25mlを加え、ヨウ化カリウム水溶液10ml、硫酸水溶液10mlを素早く加え、8)の操作を行う。
(4)計算
次式によってスチレンスルホン酸ナトリウム含量を算出する。
A=100×[0.01031×(a−b)×f]/(S×5/500)
A:スチレンスルホン酸ナトリウム含量(%)
a:空試験に要したチオ硫酸ナトリウム水溶液(ml)
b:本試験に要したチオ硫酸ナトリウム水溶液(ml)
f:チオ硫酸ナトリウム水溶液の力価
S:試料量(g)
<ジビニルベンゼンスルホン酸塩の純度測定>
核磁気共鳴スペクトルにより純度を測定した。
(1)試料の調製
試料0.02gと内部標準物質としてトリエチルアミン又はメチルイソブチルケトン0.01gを0.1mgの桁まで秤量瓶(50mmφ×70mm)に秤取り、重水又は重アセトンを全量0.6gになるまで加えて溶解し、NMR測定用サンプルを調製した。
(2)測定機器
機種=Bruker製AV−400M
積算回数=16
(3)純度の算出
次式によって生成物の純度を算出した。
純度(wt%)=(B/M)×(a/a)/(b/b)×M/S×100
a:任意の目的物ピークの積分値
b:任意の内部標準物質の積分値
:aで選択した任意の生成物ピークの水素数
:bで選択した任意の生成物ピークの水素数
:目的物の分子量
:内部標準物質の分子量
B:内部標準の採取量(g)
S:試料の採取量(g)
<スチレン、メタクリル酸エステル及びアクリロニトリル重合転化率の測定>
活栓付ガラスフラスコにイソプロパノール約50gを精秤し、ここへ0.1〜0.5gの乳化重合溶液を精秤して良く振り混ぜた後、上澄み液をガスクロマトグラフィー(G−17A、島津製作所製)を用いて分析した(カラム=GLサイエンス社製NEUTRA BOND−5、水素炎イオン化検出器)。乳化重合の際に内部標準として添加した2−エトキシエタノールに対するモノマーのピーク面積から、重合転化率を算出した。
<DVBSとSSの重合性の分析>
装置:ブルカー・バイオスピン社製、 AV−400M
測定サンプルの調製方法:内部標準物質として約0.05%のテトラメチルアンモニウムブロマイドを含む重水(99.5%)10gに所定量のジビニルベンゼンスルホン酸ナトリウム(DVBS)又はスチレンスルホン酸ナトリウム(SS)、及び重合開始剤を溶解後、溶液をNMR測定用ガラスチューブに採取し、窒素フローにより脱気し、密閉した後、ガラスチューブを57℃の湯浴に浸漬して重合を開始した。所定時間毎にチューブを取り出してNMRスペクトルを測定し、DVBS及びSSに含まれる二重結合由来のシグナル強度を追跡した。
<ポリマーエマルションの粒径測定>
粒度分布計ナノトラック150(日機装製)を用いて測定した。
<重合後の凝集率の測定>
エマルションを常温まで冷却後、200メッシュのステンレス製金網を用いて凝集物を濾別し、金網ごと真空乾燥(100℃×3時間)し、下式より凝集率を算出した。
凝集率(wt%)=100×〔(金網+凝集物)の乾燥重量−元の金網重量〕/(仕込モノマー重量)
<ポリマーエマルションの耐水性評価>
黒色ABS(アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン樹脂)板にドクダーブレードを用いて約0.25mmの厚みとなるように固形分約45wt%に調整したポリマーエマルションを塗布後、常温で約2時間放置後、オーブン中90℃で10分乾燥した。この試験片を40℃の水中に2日間浸漬後、エマルジョンポリマー塗膜の状態から以下の通り判定した。
○:塗膜の白化及び水膨れ等が殆ど見られない。
△:塗膜の白化又は水膨れが少し見られる。
×:塗膜の白化又は水膨れ等が顕著である。
<ポリマーエマルションの接着性評価>
黒色ABS(アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン樹脂)板にドクダーブレードを用いて約0.25mmの厚みとなるように固形分約45wt%に調整したポリマーエマルションを塗布後、常温で約2時間放置後、オーブン中80℃で20分乾燥した。この試験片を常温で2日間静置した後、塗面上に2ミリ間隔で素地に達する100個の碁盤目をカッターナイフで作り、その上にセロハン粘着テープを密着させて180°方向に引き剥がし、残存した塗膜の割合(%)から接着性を評価した。
参考例1 ジビニルベンゼンスルホン酸ナトリウムの界面活性
スチレンスルホン酸ナトリウム(東ソー有機化学株式会社製、純度88.0wt%、以下、スチレンスルホン酸ナトリウム「SS」と言うことがある)とジビニルベンゼンスルホン酸ナトリウム(東ソー有機化学株式会社製、純度84.0wt%)をイオン交換水に溶かして所定濃度の水溶液(純分換算)を調製し、白金板を用いたウィルヘルミー法(協和科学製ESB−IV型、自動平衡式エレクトロ表面張力計)により、25℃の恒温室にて表面張力を測定した。
図1に示したように、本発明者らは、DVBSがSSよりも明らかに低い表面張力(高い界面活性)を示すことを見出した。即ち、DVBSはSSよりも優れたモノマー乳化力を示すことが期待された。
参考例2 ジビニルベンゼンスルホン酸ナトリウムの重合性
スチレンスルホン酸ナトリウム(東ソー有機化学株式会社製、純度88.0wt%)1.09mmol、ジビニルベンゼンスルホン酸ナトリウム(東ソー有機化学株式会社製、純度84.0wt%)2.17mmol、水溶性アゾ開始剤V−50(和光純薬工業株式会社製)0.09mmolを重水10.00gに溶解し、NMRガラスチューブに採取した。溶液に窒素をバブリングして脱気し、密閉後、57℃の湯浴で加熱を開始した。二重結合由来のシグナル積分値の減少から、重合転化率を算出した。図2に示したように、DVBSはSSと同等以上のラジカル重合性を示すことが判った。参考例1及び2の結果から、DVBSは反応性乳化剤としての利用が期待された。
参考例3(DVBS 1モル%にて検討)
還流冷却管、窒素導入管を取り付けた200mlガラスフラスコ反応器にイオン交換水80.00g、ジビニルベンゼンスルホン酸ナトリウム(東ソー有機化学株式会社製、純度84.0%)1.0700g、過硫酸カリウム(和光純薬工業株式会社製、一級)0.1304g、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(東京化成工業株式会社製)0.0820g、及び2−エトキシエタノール0.10gを仕込んだ後、アスピレーター吸引/窒素導入を5回繰り返して脱気した。ここへ、スチレン(和光純薬工業株式会社製、特級)40.00gを添加し、フットボール型PTFE撹拌子(φ10mm×25mm)を用いて撹拌(小池精密機器製作所製、HERACLES−20G、高レンジ、7目盛)しながら、窒素ガス(0.1L/min)を10分間流して脱気した。その後、反応器を65℃のオイルバスに浸漬し、上記の撹拌条件で5時間重合した。全ラジカル重合性モノマー中のDVBSは1.01モル%、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの添加量は0.21重量部である。
表1に示したように、水溶性モノマーを添加していない参考例4に対して、凝集物は圧倒的に少なく、重合速度も極めて高いことが明らかである。また、DVBSの代わりに等モルのSSを用いた参考例5と比較しても凝集率は低く、エマルション粒径が小さくて重合速度が高いことから、DVBSはSSよりも反応性乳化剤としてより有効であると期待できる。
Figure 0006777459
参考例4(参考例3の水溶性モノマーなしにて検討)
ジビニルベンゼンスルホン酸ナトリウムを使用しなかった他は、全て参考例3と同じ条件でスチレンの乳化重合を実施した。
表1に示したように、参考例3と比較して、凝集物が多く、重合速度は大きく劣った。
参考例5(SS 1モル%にて検討)
ジビニルベンゼンスルホン酸ナトリウムの代わりにスチレンスルホン酸ナトリウム(東ソー有機化学株式会社製、純度88.0%)0.9110g(全ラジカル重合性モノマー中の添加量は1.0モル%)を使用した他は、全て参考例3と同じ条件でスチレンの乳化重合を実施した。
表1に示したように、参考例3と比較して、凝集物が多く、エマルション粒径が大きくて重合転化率も低かったことから、SSはDVBSよりも反応性乳化剤としての効果が小さいと考えられる。
実施例1(DVBS 1モル%にて実施)
還流冷却管、窒素導入管を取り付けた200mlガラスフラスコ反応器にイオン交換水80.00g、ジビニルベンゼンスルホン酸ナトリウム(東ソー有機化学株式会社製、純度84.0%)1.0700g、過硫酸カリウム(和光純薬工業株式会社製、一級)0.1320g、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(東京化成工業株式会社製)0.0820g、及び2−エトキシエタノール0.10gを仕込んだ後、アスピレーター吸引/窒素導入を5回繰り返して脱気した。ここへ、スチレン(和光純薬工業株式会社製、特級)20.00g、アクリル酸n−ブチル(東京化成工業株式会社製、一級)24.60gを添加し、フットボール型PTFE撹拌子(φ10mm×25mm)を用いて撹拌(小池精密機器製作所製、HERACLES−20G、高レンジ、7目盛)しながら、窒素ガス(0.1L/min)を10分間流して脱気した。その後、反応器を65℃のオイルバスに浸漬し、上記の撹拌条件で10時間重合した。全ラジカル重合性モノマー中のDVBSは1.01モル%、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの添加量は0.18重量部である。
表2に示したように、DVBSを添加していない比較例1に対して、凝集物は圧倒的に少なく、重合速度も極めて高いことが明らかである。また、DVBSの代わりに等モルのSSを用いた比較例2と比較しても凝集率は低く、重合速度が高いことが明らかである。また、比較例2よりもエマルション粒径が小さく、接着性も優れることから、DVBSはSSよりも効率良くエマルション粒子に導入されたと考えられる。DVBSの重合転化率を測定するのは困難だが、参考例2の結果及び安定なエマルションが生成したことから、ほぼ100%重合したものと推測される。
Figure 0006777459
実施例2(実施例1の組成変更)
ジビニルベンゼンスルホン酸ナトリウムを2.1400gへ増量し、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを0.0400gへ減量し、1−ドデカンチオール(東京化成工業株式会社製、一級)0.15gを添加した他は、全て実施例1と同じ条件でスチレン及びアクリル酸n−ブチルの乳化重合を実施した。全ラジカル重合性モノマー中のDVBSは2.00モル%、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの添加量は0.09重量部である。
表2に示したように、実施例1と比較して、凝集物が僅かに多く、エマルション粒径も僅かに大きいが、比較例と比べて、凝集物が少なく、接着性や耐水性が優れることが明らかである。DVBSの重合転化率を測定するのは困難だが、参考例2の結果及び安定なエマルションが生成したことから、ほぼ100%重合したものと推測される。
実施例3(実施例1の組成変更)
ジビニルベンゼンスルホン酸ナトリウムを1.5000gへ増量し、スチレンを17.00gへ減量し、代わりにメタクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル(東京化成工業株式会社製、一級)3.00gを加えた他は、全て実施例1と同じ条件でスチレン、アクリル酸n−ブチル及びメタクリル酸2,2,2−トリフルオロエチルの乳化重合を実施した。全ラジカル重合性モノマー中のDVBSは1.45モル%、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの添加量は0.08重量部である。
表2に示したように、比較例と比べて、凝集物が少なく、接着性や耐水性が優れることが明らかである。DVBSの重合転化率を測定するのは困難だが、参考例2の結果及び安定なエマルションが生成したことから、ほぼ100%重合したものと推測される。
実施例4(実施例1の組成変更)
スチレンを18.00gへ減量し、代わりにアクリロニトリル(東京化成工業株式会社製、特級)2.00gを加えた他は、全て実施例1と同じ条件でスチレン、アクリル酸n−ブチル及びアクリロニトリルの乳化重合を実施した。全ラジカル重合性モノマー中のDVBSは0.99モル%、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの添加量は0.11重量部である。
表2に示したように、比較例と比べて、凝集物が少なく、接着性や耐水性が優れることが明らかである。DVBSの重合転化率を測定するのは困難だが、参考例2の結果及び安定なエマルションが生成したことから、ほぼ100%重合したものと推測される。
比較例1
ジビニルベンゼンスルホン酸ナトリウムを使用しなかった他は、全て実施例1と同じ条件でスチレン及びアクリル酸n−ブチルの乳化重合を実施した。スチレン及びアクリル酸n−ブチル100重量に対するドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの添加量は0.18重量部である。
表2に示したように、実施例1及び2と比較して、凝集物が多く、重合速度は大きく劣った。
比較例2(SS 1モル%にて検討)
ジビニルベンゼンスルホン酸ナトリウムの代わりにスチレンスルホン酸ナトリウム(東ソー有機化学株式会社製、純度88.0%)0.9110gを使用した他は、全て実施例1と同じ条件でスチレン及びアクリル酸n−ブチルの乳化重合を実施した。全ラジカル重合性モノマー中のSSは1.01モル%、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの添加量は0.18重量部である。
表2に示したように、実施例1及び2と比較して、凝集物が多く、接着性と耐水性が劣った。
比較例3(水溶性モノマーなし、従来型乳化剤を倍増)
ジビニルベンゼンスルホン酸ナトリウムを使用せず、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを1.5680gへ増量した他は、全て実施例1と同じ条件でスチレン及びアクリル酸n−ブチルの乳化重合を実施した。全ラジカル重合性モノマー100重量に対するドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの添加量は5.74重量部である。
表2に示したように、凝集物は少なく、重合速度も高かったが、実施例1〜4と比較して、接着性と耐水性が大きく劣った。
比較例4(DVBS過剰にて検討)
ジビニルベンゼンスルホン酸ナトリウムを6.5000gへ増量した他は、全て実施例1と同じ条件でスチレン及びアクリル酸n−ブチルの乳化重合を実施した。全ラジカル重合性モノマー中のDVBSは5.83モル%、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの添加量は0.18重量部である。
表2に示したように、凝集物は少なく、重合速度も高かったが、実施例1及び2と比較して、耐水性と接着性が大きく劣った。ポリマーエマルション中のスルホン酸基、及び架橋度の増大によると考えられる。
本発明のポリマーエマルションは、エマルションの安定性と塗膜の耐水性や接着性を著しく改良したものであり、エマルション塗料、コーティング剤、粘接着剤、プライマー、繊維処理剤の他、電池電極材料などの各種バインダー、インク、トナー、情報表示材料、医療診断材料など、産業上極めて有用である。

Claims (5)

  1. 下記の繰り返し構造単位(A)、(B)及び(C)を含むポリマー100重量部に対して3重量部以下の乳化剤により水中又は水性媒体中に分散安定化されたポリマーエマルション。
    Figure 0006777459
    〔繰り返し構造単位(A)中、Rは水素、メチル基又はエチル基を表し、Rはヘテロ原子で置換されていてもよい炭素数1〜10の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基を表し、繰り返し構造単位(B)中、Rは水素又はメチル基を表し、Rは水素又はヘテロ原子で置換されていても良い炭素数1〜10の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基を表し、繰り返し構造単位(C)中、Mはプロトン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン、アンモニウムイオン又は第四級アンモニウムイオンを表す。
    ここで、xをポリマーに含まれる繰り返し構造単位(A)の数、yをポリマーに含まれる繰り返し構造単位(B)の数、zをポリマーに含まれる繰り返し構造単位(C)の数とするとき、1.0≦100x/(x+y+z)≦99.9、100y/(x+y+z)≦99.9、0.1≦100z/(x+y+z)≦5.0である。〕
  2. 前記ポリマーエマルションが、前記構造単位(A)、(B)及び(C)に、さらに下記の繰り返し構造単位(D)を含む、請求項1に記載のポリマーエマルション。
    Figure 0006777459
    〔繰り返し構造単位(D)中、R5、及びRは、各々独立に水素、ハロゲン、シアノ基又はヘテロ原子で置換されていても良い炭素数1〜10の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基を表す。〕
  3. 前記繰り返し構造単位(A)がアクリル酸n−ブチル重合残基、アクリル酸エチル重合残基、アクリル酸プロピル重合残基、アクリル酸2−エチルヘキシル重合残基、メタクリル酸メチル重合残基、メタクリル酸エチル重合残基、メタクリル酸プロピル重合残基、メタクリル酸n−ブチル重合残基及びメタクリル酸2,2,2−トリフロロエチル重合残基からなる群より選ばれる1種又は2種以上の組合せとなるモノマー重合残基であり、繰り返し構造単位(B)がスチレン重合残基である、請求項1又は2に記載のポリマーエマルション。
  4. 次の(e)、(f)、(g)及び(h)を含むラジカル重合性モノマー100重量部に対して3重量部以下の乳化剤を用いてラジカル重合性モノマーを水中又は水性媒体中に乳化させ、ラジカル重合開始剤を加えて乳化重合する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリマーエマルションの製造法。
    (e)下記式(E)で示されるアクリル酸エステル類及び/又はメタクリル酸エステル類を99.9〜1.0モル%、
    (f)下記式(F)で示されるスチレン類(F)を99.9モル以下、
    (g)下記式(G)で示されるジビニルベンゼンスルホン酸又はその塩を0.1〜5.0モル%、及び
    (h)下記式(H)で示され、式(E)、式(F)及び式(G)で示される化合物と共重合可能なラジカル重合性モノマーを20.0モル%以下
    Figure 0006777459
    〔式(E)中、Rは水素、メチル基又はエチル基を表し、Rはヘテロ原子で置換されていても良い炭素数1〜10の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基を表し、
    式(F)中、Rは水素又はメチル基を表し、Rは水素又は、ヘテロ原子で置換されていても良い炭素数1〜10の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基を表し、
    式(G)中、Mはプロトン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン、アンモニウムイオン又は第四級アンモニウムイオンを表し、
    式(H)中、R5、及びRは、各々独立に水素、ハロゲン基、シアノ基又は、ヘテロ原子で置換されていても良い炭素数1〜10の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基を表す。〕
  5. 請求項1又は2に記載のポリマーエマルションの、塗料、コーティング剤、粘接着剤、プライマー、バインダー、繊維処理剤、トナー、情報表示材料及び医療診断材料からなる群より選ばれる一つまたは複数の組合せへの利用。
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