JP6775988B2 - 筆記具 - Google Patents
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Description
このような二以上の部材を螺合させて形成した軸筒を備えた筆記具においては、リフィルを交換する場合には、軸筒を分解してリフィルを交換した後、再度二以上の部材を螺合させて組み立てる必要がある。そして、リフィルを複数回交換するなどして、軸筒の分解や、螺合による組み立ての工程を繰り返すことや、必要以上に強く部材を締め付けることや、軸筒表面に手指などの油分が付着すること等により、軸筒を構成する樹脂材料の耐久力が低下して、軸筒を構成する二以上の部材が螺合している箇所にひび割れが発生することがあった。
このとき、上記の方法で軸筒に導電性を付与した場合には、導電性の付与によって樹脂材料の耐久力が低下して、導電性を有しない軸筒と比べて、軸筒を構成する二以上の部材が螺合している箇所にひび割れが、より発生しやすくなっていた。
そこで、本発明は、軸筒に形成するネジの位置とネジの長さとを調整することで、軸筒を螺合により固定してもひび割れが発生しにくい筆記具を提供することを課題とする。
(第1の発明)
本発明のうち第1の発明は、二以上の部材を螺合することで形成される軸筒15を備えた筆記具10において、前記軸筒15は、該軸筒15を構成する一の部材30に形成された雄ネジ33と、該軸筒15を構成する他の部材20に形成された前記雄ネジ33と螺合可能な雌ネジ25とを備えており、前記他の部材20の口元26から前記雌ネジ25の開始位置までの長さが前記軸筒15の内径の20%以上150%以下であることを特徴とする。20%未満とするとひび割れが発生しやすくなり、150%より大きくするとひび割れは著しく抑制されるものの螺合しにくくなり、組み立て性に欠ける。
また、「雌ネジ25の開始位置」とは、他の部材20の口元26から最も近い位置にある雌ネジ25の端部を意味する。
本発明のうち第2の発明は、前記した第1の発明の特徴に加え、前記雌ネジ25の長さが前記軸筒15の内径の80%以上200%以下であることを特徴とする。80%未満とするとひび割れが発生しやすくなり、200%より大きくするとひび割れは著しく抑制されるものの螺合完了までに時間を要してしまい、組み立て性に欠ける。
ここで、「雌ネジ25の長さ」とは、軸筒15と平行に伸びる雌ネジ25の一端から他端までの長さを意味する。
本発明のうち第3の発明は、前記した第1又は第2の発明の特徴に加え、前記軸筒15の少なくとも一部は導電性を有しているとともに、導電性を有し、かつ、該軸筒15と導電しているタッチペン部材40を備えたことを特徴とする。
ここで、「タッチペン部材40」とは、導電性を有する素材で形成された部材である。このタッチペン部材40の素材は、導電性を有していれば特に限定されない。また、軸筒15の表面のインピーダンスは、測定周波数が1KHzにおいて、5.0×104Ωを超えて1.5×106Ω以下であることが望ましい。なお、測定周波数は、キーサイト・テクノロジー社製ハンドヘルドLCRメータU1733Cを用い、軸筒15の前端と後端に電極をセットして測定した値である。
また、雌ネジの長さが軸筒の内径の80%以上200%以下で形成されていることにより、軸筒を螺合により固定しても、よりひび割れが発生しにくい筆記具を提供することができる。
(全体構成)
本実施の形態に係る筆記具10は、図1(A)に示すように、先軸30と、先軸30と螺合することにより固定される後軸20とからなる軸筒15を備えている。また、本実施の形態に係る筆記具10は、後軸20の後端に装着された導電性を有するタッチペン部材40と、後軸20の後方に装着されたスライドノック部材50とを備えている。
ここで、本実施の形態においては、筆記具10から筆記先端61が突出している状態を「突出状態」とし、筆記先端61が筆記具10内に収容されている状態を「没入状態」とする。
図2(A)及び(B)に示すように、先軸30とは、軸筒15の前方側を構成し、その前方部分が先細り形状を呈した中空の部材である。この先軸30は、その先端面に設けられた開口である先端口34と、前方にかけて外径が縮径された略円錐形状の先軸前部31と、先軸前部31の後方に連設する筒形状の先軸後部32と、先軸後部32の中央付近の外周面に形成された先軸雄ネジ33とを備えている。なお、先軸30が本発明に係る筆記具10の「一の部材」に相当し、先軸雄ネジ33が本発明に係る筆記具10の「雄ネジ」に相当する。
図3(A)及び(B)に示すように、後軸20とは、先軸30と固定されることで軸筒15の後方側を構成する中空の筒形部材である。この後軸20は、その先端面に設けられた開口である口元26と、後軸20の胴部分を構成する後軸胴部21と、この後軸胴部21の後端に連設し、その後方にかけて外径が縮径された後軸後部22とを備えている。なお、後軸20が本発明に係る筆記具10の「他の部材」に相当する。
このとき、本実施の形態では、口元26から後軸雌ネジ25の開始位置までの長さβが後軸20の内径αの85%で形成されている。また、本実施の形態では、後軸雌ネジ25の長さγが後軸20の内径αの137%で形成されている。
そのため、本実施の形態に係る筆記具10を形成する上で、後軸20からタッチペン部材40までの間に介在する部材数を少なくすることができ、静電容量を減衰させずにタッチペン部材40への導電を行うことが可能となっている。
なお、先軸30を後軸20と同じく導電性材質で形成してもよいが、その場合には、筆記具10の内部機構を含めた部品成形が困難になることや、筆記中にタッチペン部材40が予期せずに静電容量型入力装置に触れたときに、誤作動を起こす懸念が生じる。
一方、後軸20及び先軸30を非導電性材質で形成し、後軸20の表面に金属製の筒部材を被覆したり、後軸20の表面に金属メッキや導電性フィルムを施したりすることによって、後軸20の表面のみが導電性を有するように形成してもよい。上記のいずれの場合においても、少なくとも、後軸後部22の表面は導電性を有するように形成されている。
図5に示すように、タッチペン部材40は、本実施の形態に係る筆記具10において、静電容量型入力装置の操作を行う部分である。
タッチペン部材40は、導電性を有する素材で断面逆U字状に形成された弾性部材41と、この弾性部材41の表面に静電植毛された導電性繊維42とから構成されている。
また、本実施の形態に係る弾性部材41は、導電性ゴムを用いて形成されている。なお、弾性部材41の素材は、導電性を有していれば特に限定されない。
図6に示すように、スライドノック部材50は、スリット24の一方に沿って移動するスライド突起51と、スライド突起51の後方側の側面に連設する板状の平板部55と、平板部55の先端に連設する挿入部54と、平板部55と挿入部54との間に形成されたスプリング受け段差56と、平板部55の後端付近から外方に向けて突出している係止突起53と、平板部55の後方側の側面から突出し、他方のスリット24に沿って移動する解除突起52とから構成されている。なお、スライドノック部材50は全構成部材が一体となっており、スライド突起51の前後への移動に伴って、その他の構成部材も連動して、スライド突起51と同一方向に移動する。
図6(A)及び(B)に示すように、スライド突起51とは、常に一方のスリット24から突出している部材であって(図1及び図4参照。)、使用者がこのスライド突起51を前方に移動させることで、筆記先端61が先端口34から突出する。
図6(A)に示すように、平板部55とは、スライドノック部材50の胴部分を構成するものであり、その全体が後軸20内に収容されている(図1(B)参照)。この平板部55は、スライド突起51の前後への移動に連動して後軸20内を移動する。
図6(A)に示すように、挿入部54とは、平板部55の先端に連設し、ボールペンリフィル60の後端に挿入される部材である。この挿入部54は、スライド突起51の前方への移動の際には、この移動に連動して、ボールペンリフィル60を前方に押し出しながら後軸20内を移動する。
図6(A)に示すように、スプリング受け段差56とは、平板部55と挿入部54との間に形成された段差であって、この段差に接触するようにスプリング62が装着される(図1(B)参照。)。スライド突起51が前方へ移動すると、この移動に連動して、スプリング受け段差56と先軸後部32の後端との間でスプリング62が圧縮される。
図6(A)及び(B)に示すように、係止突起53とは、その突起が後述するレール部23を乗り越え、かつ、スプリング62の弾性作用により係止突起53がレール部23に押圧されることで、突出状態の維持を図る部材である。なお、係止突起53の作用については後述する。
図6(A)及び(B)に示すように、解除突起52とは、筆記具10が没入状態から突出状態へ変化したことを契機に、他方のスリット24から突出し、その突起を押圧することで筆記先端61の没入に関与する部材である。なお、解除突起52の作用については後述する。
図7(A)及び(B)に示すレール部23は、後軸胴部21の内部に形成されたものであり、その外観が断面逆L字状を呈している。
図7(A)は、没入状態における後軸胴部21とスライドノック部材50との断面図であり、没入状態においては、レール部23と後軸胴部21の内周面との間に係止突起53が位置している。
以下、本実施の形態に係る筆記具10が没入状態から突出状態へ移動し、再び没入状態に戻るまでの流れを説明する。
図4(A)は筆記具10の没入状態を示した斜視図である。この状態からスライド突起51を前方へ移動させると、ボールペンリフィル60の後端に挿入された挿入部54が、スライド突起51の移動に連動して、ボールペンリフィル60を前方に押し出しながら後軸20内を移動する。その結果、先端口34から筆記先端61が突出し、筆記具10が図4(A)に示す「没入状態」から図4(B)に示す「突出状態」へ移動する。
すなわち、突出状態に至るまでスライド突起51を前方へ移動させると、この移動に連動してレール部23上を移動していた係止突起53がレール部23上から軸心方向へ陥落して、係止突起53がレール部23の直前に位置する。
なお、係止突起53がレール部23上から陥落するのと同時に、他方のスリット24から解除突起52が突出する。
図4(B)は筆記具10の突出状態を示した斜視図である。この状態から解除突起52を押圧すると、係止突起53がスプリング62によってレール部23に押圧されている状態が解除され、係止突起53がレール部23上に復帰する。その結果、スプリング受け段差56と先軸後部32の後端との間で圧縮されていたスプリング62が開放され、このスプリング62の弾性作用によりスライドノック部材50が後方へ移動して、筆記具10が図4(B)に示す「突出状態」から図4(A)に示す「没入状態」へ移動する。
第1の実施の形態におけるタッチペン部材40と後軸20との固定方法は、タッチペン部材40を直接、後軸20に固定するものである。以下、図5を参照して説明する。
図5は、後軸後部22の拡大断面図であり、タッチペン部材40と後軸20との固定方法を示したものである。
以下、図8を参照して、本発明の実施の形態に係る第2の実施の形態を説明する。また、第2の実施の形態において、第1の実施の形態と同一の構成要素には、第1の実施の形態において用いた符号と同一の符号を用いている。そして、第1の実施の形態と重複する部分は説明を省略し、第2の実施の形態における特徴点を中心に説明する。
第2の実施の形態におけるタッチペン部材40と後軸20との固定方法は、タッチペン部材40を直接、後軸20と固定させずに、タッチペン部材40の後軸20への固定を補助する筒形状の固定部材80を設け、この固定部材80を介してタッチペン部材40を後軸20に固定するものである。以下、図8を参照して説明する。
一方、固定部材80は、タッチペン部材40と係合すべく、固定部材80の後端に形成された内方段部81と、固定部材80の内周に形成され、後軸後部雄ネジ27と螺合可能な固定部材雌ネジ82とを備えている。
本実施の形態では、口元26から後軸雌ネジ25の開始位置までの長さβが後軸20の内径αの109%で形成されている。また、本実施の形態では、後軸雌ネジ25の長さγが後軸20の内径αの94%で形成されている。導電抵抗は1.01×105Ωである。なお、先軸30、後軸20との螺合を30N・cmで締め付けとし、後軸20の表面に市販のオリーブ油を塗布し、常温(25℃)環境下で3日間放置したところ、後軸20の表面にヒビは発生しなかった。
以下、図9を参照して、本発明の実施の形態に係る第3の実施の形態を説明する。また、第3の実施の形態において、第1、第2の実施の形態と同一の構成要素には、第1、第2の実施の形態において用いた符号と同一の符号を用いている。そして、第1、第2の実施の形態と重複する部分は説明を省略し、第3の実施の形態における特徴点を中心に説明する。
本実施の形態では、口元26から後軸雌ネジ25の開始位置までの長さβが後軸20の内径αの140%で形成されている。また、本実施の形態では、後軸雌ネジ25の長さγが後軸20の内径αの175%で形成されている。導電抵抗は1.32×106Ωである。なお、先軸30、後軸20との螺合を30N・cmで締め付けとし、後軸20の表面に市販のオリーブ油を塗布し、常温(25℃)環境下で3日間放置したところ、後軸20の表面にヒビは発生しなかった。
第3の実施の形態におけるタッチペン部材40と後軸20との固定方法は、タッチペン部材40を直接、後軸20と固定させずに、タッチペン部材40の後軸20への固定を補助する筒形状の介在部材90を設け、この介在部材90を介してタッチペン部材40を後軸20に固定するものである。以下、図9を参照して説明する。
比較例では、口元26から後軸雌ネジ25の開始位置までの長さβが後軸20の内径αの18%で形成されている。また、比較例では、後軸雌ネジ25の長さγが後軸20の内径αの76%で形成されている。導電抵抗は6.45×105Ωである。本比較例においては、先軸30、後軸20との螺合を30N・cmで締め付けとし、後軸20の表面に市販のオリーブ油を塗布し、常温(25℃)環境下で3日間放置したところ、後軸20の表面にヒビが発生した。
本実施の形態に係る筆記具10は、以上のように構成されているので、以下の作用効果を奏する。
第1、第2及び第3の実施の形態に係る筆記具10は、後軸20を導電性材質で一体的に成形したことにより、後軸20からタッチペン部材40までの間が単一部材となっている。そのため、タッチペン部材40へより多くの静電容量が供給可能となる結果、反応性に富み、スムーズな操作が可能なタッチペン付き筆記具10を提供することができる。
さらに、第1の実施の形態における筆記具10は、後軸20からタッチペン部材40までの間を単一部材としたことにより、タッチペン付き筆記具10に用いられる部材数を減少させることができたため、製作面及びコスト面にも優れたものとなる。
また、第1、第2及び第3の実施の形態に係る筆記具10は、口元26から後軸雌ネジ25の開始位置までの長さβが後軸20の内径αの20%以上150%以下、さらに、後軸雌ネジ25の長さγが後軸20の内径αの80%以上200%以下で形成されている。そのため、第1、第2及び第3の実施の形態によれば、軸筒15を螺合により固定しても、よりひび割れが発生しにくい筆記具10を提供することができる。
上記の実施の形態の他、本発明には、以下に示すような変形例も可能である。
タッチペン部材40は、導電性のある材質で形成されていればペン芯形状に限定されず、ブラシ状、ハケ状、スポンジ状、球状のゴムなどで形成することもできる。
さらに、上記の実施の形態とは異なり、タッチペンを備えていない筆記具においても本発明を採用することができる。
20 他の部材(後軸) 21 後軸胴部
22 後軸後部 23 レール部
24 スリット 25 雌ネジ(後軸雌ネジ)
26 口元 27 後軸後部雄ネジ
30 一の部材(先軸) 31 先軸前部
32 先軸後部 33 雄ネジ(先軸雄ネジ)
34 先端口
40 タッチペン部材 41 弾性部材
42 導電性繊維 43 外方突起
44 内方突起
50 スライドノック部材 51 スライド突起
52 解除突起 53 係止突起
54 挿入部 55 平板部
56 スプリング受け段差 57 クリップ
60 ボールペンリフィル 61 筆記先端
62 スプリング
70 ホルダー 71 係合溝
72 圧入溝
80 固定部材 81 内方段部
82 固定部材雌ネジ
90 介在部材 91 鍵山
92 鍵山挿入孔 93 鍵受け部
Claims (1)
- 二以上の部材を螺合することで形成される軸筒を備えた筆記具において、
前記軸筒は、該軸筒を構成する非導電性の非導電性部材に形成された非導電性部材雄ネジと、該軸筒を構成し、導電性を有する導電性部材に形成された前記非導電性部材雄ネジと螺合可能な導電性部材雌ネジとを備えており、
前記導電性部材に装着され、前記軸筒と導電しているタッチペン部材を備え、
前記導電性部材の口元から前記導電性部材雌ネジの開始位置までの長さが前記軸筒の内径の20%以上150%以下であり、
前記タッチペン部材は、外方に突出した外方突起を備え、
前記導電性部材の外周面には、導電性部材雄ネジが形成され、
前記タッチペン部材の前記導電性部材への固定を補助する固定部材を備え、
前記固定部材は、
前記外方突起と係合可能な内方段部と、
前記導電性部材雄ネジと螺合可能な固定部材雌ネジと、
を備えることを特徴とする筆記具。
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