〔定義〕
本発明において使用されるパラメータは以下の通り定義される。
「L*a*b*表色系」は、CIE(国際照明委員会)で規格化され、JIS Z 8781−4:2013で採用されている表色系を意味する。なお、L*a*b*表色系において、明度はL*で表され、色相及び彩度を示す色度はa*、b*で表される。
化粧シートにおける「L*a*b*表色系のL*値、a*値及びb*値」は、分光測色計(コニカミノルタホールディングス株式会社製CM−3700d)を使用し、化粧シートの表面保護層側表面に入射角8度(化粧シートの表面の法線方向を0度とする)で光を照射し、全光線反射光(鏡面反射光+拡散反射光)に基づいて測定する。
化粧シートにおける「波長域780〜2500nmの平均分光反射率(%)」は、波長780nmから波長2500nmまで波長を1nmずつ変化させながら、各波長(すなわち、波長780nm、781nm、782nm、・・・・2498nm、2499nm、2500nm)の分光反射率(%)を測定し、測定した1721個の分光反射率の和を1721で割ることにより算出する。「各波長の分光反射率(%)」は、JIS K 0115:2004に準拠する分光光度計(日本分光株式会社製V−670)を使用し、化粧シートの表面保護層側表面に入射角5度(化粧シートの表面の法線方向を0度とする)で各波長の光を照射し、平行入射光束に対する全反射光束の割合(すなわち全光線反射率)として測定する。全光線反射率の測定方法は、JIS K 7375:2008に準拠する。
化粧シートにおける「波長800nmの分光反射率(%)」は、JIS K 0115:2004に準拠する分光光度計(日本分光株式会社製V−670)を使用し、化粧シートの表面保護層側表面に入射角5度(化粧シートの表面の法線方向を0度とする)で波長800nmの光を照射し、平行入射光束に対する全反射光束の割合(すなわち全光線反射率)として測定する。全光線反射率の測定方法は、JIS K 7375:2008に準拠する。
化粧シートにおける「波長域300〜650nmの平均分光反射率(%)」は、波長300nmから波長650nmまで波長を1nmずつ変化させながら、各波長(すなわち、波長300nm、301nm、302nm、・・・・648nm、649nm、650nm)の分光反射率(%)を測定し、測定した351個の分光反射率の和を351で割ることにより算出する。「各波長の分光反射率(%)」は、JIS K 0115:2004に準拠する分光光度計(日本分光株式会社製V−670)を使用し、化粧シートの表面保護層側表面に入射角5度(化粧シートの表面の法線方向を0度とする)で各波長の光を照射し、平行入射光束に対する全反射光束の割合(すなわち全光線反射率)として測定する。全光線反射率の測定方法は、JIS K 7375:2008に準拠する。
基材シートにおける「波長域300〜2500nmの平均分光反射率(%)」、「波長800nmの分光反射率(%)」及び「波長域300〜650nmの平均分光反射率(%)」は、基材シートが単独で存在する状態(すなわち、基材シートの両面に何の層も積層されていない状態)で基材シートの表面側(表面保護層側)の分光反射率を測定する。したがって、基材シート上に印刷層、透明樹脂層及び表面保護層が積層された化粧シートの形態から基材シートの分光反射率を測定する場合には、化粧シートから基材シートの表面側(表面保護層側)に積層された全層(印刷層、透明樹脂層、及び表面保護層)を切削又は剥離して除去し、基材シートの表面を露出させた状態で基材シートの分光反射率を測定する。但し、基材シートの表裏両面の分光反射率が同一である場合には、化粧シートの裏面(表面保護層とは反対側の面)の分光反射率を測定して、これを基材シートにおける分光反射率とする。基材シートにおける「波長域300〜2500nmの平均分光反射率(%)」は、波長300nmから波長2500nmまで波長を1nmずつ変化させながら、各波長(すなわち、波長300nm、301nm、302nm、・・・・2498nm、2499nm、2500nm)の分光反射率(%)を測定し、測定した2201個の分光反射率の和を2201で割ることにより算出する。「各波長の分光反射率(%)」は、JIS K 0115:2004に準拠する分光光度計(日本分光株式会社製V−670)を使用し、基材シートの表面に入射角5度(基材シートの表面の法線方向を0度とする)で各波長の光を照射し、平行入射光束に対する全反射光束の割合(すなわち全光線反射率)として測定する。全光線反射率の測定方法は、JIS K 7375:2008に準拠する。基材シートにおける「波長800nmの分光反射率(%)」及び「波長域300〜650nmの平均分光反射率(%)」の測定方法は、化粧シートにおける「波長800nmの分光反射率(%)」及び「波長域300〜650nmの平均分光反射率(%)」と同様である。
透明樹脂層における「L*a*b*表色系のa*値及びb*値」は、透明樹脂層が単独で存在する状態(すなわち、透明樹脂層の両面に何の層も形成されていない状態)で測定する。測定方法は、化粧シートにおける「L*a*b*表色系のL*値、a*値及びb*値」と同様である。
化粧シートに対する耐候性試験は、UVランプ(岩崎電気株式会社製M04−L21WB/SUV)、ランプジャケット(岩崎電気株式会社製WJ50−SUV)及び照度計(岩崎電気株式会社製UVD−365PD)を備えた超促進耐候性試験装置(岩崎電気株式会社製アイ スーパー UVテスター SUV−W131)を使用し、ブラックパネル温度63℃、照度60mW/cm2の条件で20時間、化粧シートの表面保護層側表面に光を照射した後、4時間結露を行うサイクルを33回繰り返すことにより行う。なお、耐候性試験後の化粧シートの特性(例えば、L*a*b*表色系のL*値、a*値及びb*値)について言及する際、耐候性試験後の化粧シートの特性である旨を明記するが、耐候性試験前(初期状態)の化粧シートの特性について言及する際、耐候性試験前の化粧シートの特性である旨を明記しない。したがって、耐候性試験後の化粧シートの特性である旨が明記されていない場合、その特性は耐候性試験前(初期状態)の化粧シートの特性を意味する。
〔化粧シート〕
以下、図1を参照しながら、本発明の一実施形態に係る化粧シートについて説明する。図1は本発明の一実施形態に係る化粧シート10の構成を模式的に示す側面図である。
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る化粧シート10は、基材シート11と、印刷層12と、透明樹脂層13と、表面保護層14とを順に有する。
化粧シート10の表面保護層側表面に光を照射して測定されるL*a*b*表色系のL*値、a*値及びb*値は、L*値:30以下、a*値:0以上2.5以下、かつ、b*値:−2.5以上0以下である。これにより、化粧シート10は、人の目に純黒(真っ黒)又はそれに近い色として認識される黒色を呈することができる。L*値は30以下である限り特に限定されないが、好ましくは29以下である。L*値の下限値は特に限定されないが、通常20、好ましくは23である。a*値は0以上2.5以下である限り特に限定されないが、好ましくは0.1以上1.5以下、さらに好ましくは0.2以上1以下である。b*値は−2.5以上0以下である限り特に限定されないが、好ましくは−2.3以上−0.5以下、さらに好ましくは−2.0以上−0.7以下である。
a*値及びb*値が0に近い色ほど、純黒に近い色を呈する。化粧シート10では、赤外線吸収性が低い(赤外線透過性が高い)有機黒色顔料が使用され、a*値が0以上2.5以下、かつ、b*値が−2.5以上0以下に調整されているので、人の目に純黒又はそれに近い色として認識される黒色を呈することができるとともに、遮熱性能を発揮することができる。
化粧シート10に対して耐候性試験を行った後、耐候性試験後の化粧シート10の表面保護層側表面に光を照射して測定されるL*a*b*表色系のL*値、a*値及びb*値は、L*値:30以下、a*値:0以上2.5以下、かつ、b*値:−2.5以上0以下であることが好ましい。これにより、化粧シート10は、屋外で使用された場合にも、人の目に純黒(真っ黒)又はそれに近い色として認識される黒色を持続的に呈することができる。耐候性試験後の化粧シート10のL*値は、好ましくは29.5以下である。耐候性試験後の化粧シート10のL*値の下限値は特に限定されないが、通常20、好ましくは23である。耐候性試験後の化粧シート10のa*値は、好ましくは0.5以上2.3以下、さらに好ましくは0.8以上2.3以下である。耐候性試験後の化粧シート10のb*値は、好ましくは−2.3以上−0.5以下、さらに好ましくは−2.1以上−1以下である。
化粧シート10の表面保護層側表面に波長域780〜2500nmの光を照射して測定される波長域780〜2500nmの平均分光反射率は35%以上である。これにより、化粧シート10は、近赤外線反射性能に基づく遮熱性能を発揮することができる。化粧シート10における波長域780〜2500nmの平均分光反射率は35%以上である限り特に限定されないが、好ましくは38%以上、さらに好ましくは40%以上、さらに一層好ましくは43%以上、さらに一層好ましくは45%以上である。なお、化粧シート10における波長域780〜2500nmの平均分光反射率の上限値は特に限定されないが、通常100%である。
化粧シート10の表面保護層側表面に波長800nmの光を照射して測定される波長800nmの分光反射率は20%以上であることが好ましい。これにより、化粧シート10は、近赤外線反射性能に基づく遮熱性能を発揮することができる。化粧シート10における波長800nmの分光反射率は、好ましくは23%以上、さらに好ましくは25%以上、さらに一層好ましくは28%以上、さらに一層好ましくは30%以上である。なお、化粧シート10における波長800nmの分光反射率の上限値は特に限定されないが、通常100%、好ましくは95%、さらに好ましくは90%である。
化粧シート10の表面保護層側表面に波長域300〜650nmの光を照射して測定される波長域300〜650nmの平均分光反射率は6%以下であることが好ましい。これにより、化粧シート10は、人の目に純黒(真っ黒)又はそれに近い色として認識される黒色を呈することができる。化粧シート10における波長域300〜650nmの平均分光反射率は、好ましくは5.9%以下、さらに好ましくは5.8%以下、さらに一層好ましくは5.7%以下である。化粧シート10における波長域300〜650nmの平均分光反射率の下限値は特に限定されない。
化粧シート10は、化粧シート10の表面保護層側表面に波長800nmの光を照射して測定される波長800nmの分光反射率が20%以上であるという特徴と、化粧シート10の表面保護層側表面に波長域300〜650nmの光を照射して測定される波長域300〜650nmの平均分光反射率が6%以下であるという特徴を兼ね備えることが好ましい。これにより、化粧シート10の分光反射率は、波長域650〜800nmにおいて急な立ち上がりを有し、化粧シート10は、人の目に純黒(真っ黒)又はそれに近い色として認識される黒色の呈色と、遮熱性能の発揮とを効果的に両立することができる。
(基材シート)
基材シート11の分光反射率は、化粧シート10の分光反射率に影響を与える。したがって、基材シート11の分光反射率を調節することにより、化粧シート10における波長域300〜2500nmの平均分光反射率を調節することができる。
基材シート11における波長域300〜2500nmの平均分光反射率は、通常50%以上、好ましくは53%以上、さらに好ましくは55%以上である。なお、基材シート11における波長域300〜2500nmの平均分光反射率の上限値は特に限定されないが、通常100%、好ましくは90%、さらに好ましくは80%である。
基材シート11における波長750nmの分光反射率は、通常70%以上、好ましくは75%以上、さらに好ましくは80%以上である。なお、基材シート11における波長750nmの分光反射率の上限値は特に限定されないが、通常100%、好ましくは95%である。
基材シート11における波長800nmの分光反射率は、通常70%以上、好ましくは75%以上、さらに好ましくは80%以上である。なお、基材シート11における波長800nmの分光反射率の上限値は特に限定されないが、通常100%、好ましくは95%である。
基材シート11における波長域300〜650nmの平均分光反射率は、通常50%以上、好ましくは55%以上、さらに好ましくは60%以上である。なお、基材シート11における波長域300〜650nmの平均分光反射率の上限値は特に限定されないが、通常90%、好ましくは85%、さらに好ましくは80%である。
基材シート11の分光反射率は、基材シート11を構成する樹脂の種類、基材シート11の厚み、基材シート11が着色剤を含有する場合には着色剤の種類及び量等を適宜選択することにより調節することができる。
基材シート11を構成する樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂等が挙げられる。基材シート11を構成する樹脂は、1種単独であってもよいし、2種以上の組み合わせであってもよい。
基材シート11を構成するポリエステル樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」ということがある。)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート、ポリカーボネート、エチレンテレフタレート−イソフタレート共重合体、ポリアリレート等が挙げられ、これらのうち、ポリエチレンテレフタレート及びポリブチレンテレフタレートが好ましく、ポリエチレンテレフタレートがさらに好ましい。
基材シート11を構成するポリオレフィン樹脂としては、例えば、ポリエチレン(低密度、中密度、高密度)、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリブテン、エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−ブテン共重合体等が挙げられ、これらのうち、ポリエチレン及びポリプロピレンが好ましい。
基材シート11の厚さは、基材シート11における所望の分光反射率を実現する観点から、通常20〜200μm、好ましくは40〜150μm、さらに好ましくは60〜100μmである。
基材シート11は、着色された樹脂で構成される着色樹脂シートであることが好ましい。基材シート11として着色樹脂シートを使用することにより、化粧シート10を貼着する被着材の表面色相がばらついている場合であっても、被着材の表面色相を良好に隠蔽することができるので優れた意匠性が得られる。また、基材シート11上に設けられる印刷層12の色調の安定性を確保することができる。化粧シート10の優れた遮熱性能を実現する観点から、着色樹脂シートは、白色に着色されている(すなわち、白色顔料を含有する)ことが好ましい。
着色剤は、用途に応じて適宜選択すればよく、例えば、基材シート11を有色透明や、有色不透明に着色することができる。一般的には被着材の表面を隠蔽する観点から、有色不透明とすることが好ましい。
着色剤としては、例えば、鉄黒、チタン白、アンチモン白、黄鉛、チタン黄、弁柄、カドミウム赤、群青、コバルトブルー等の無機顔料;キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルー等の有機顔料又は染料;アルミニウム、真鍮等の鱗片状箔片からなる金属顔料;二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛等の鱗片状箔片からなる真珠光沢(パール)顔料等が挙げられる。
基材シート11が着色剤としてカーボンブラック(墨)を含有する場合、化粧シート10の優れた遮熱性能を実現する観点から、カーボンブラックの含有量は、基材シート11を形成する樹脂100質量部に対して5.0質量部以下が好ましく、1.0質量部以下がさらに好ましく、ゼロであること(カーボンブラックを添加しないこと)が最も好ましい。カーボンブラックは熱を吸収しやすい特性を有するため、化粧シート10にカーボンブラックが使用されることにより、化粧シート10が熱を吸収しやすくなり、遮熱性能が低下してしまうからである。
基材シート11が白色顔料として酸化チタンを含む場合、酸化チタンの結晶型は特に限定されるものではなく、ルチル型、アナターゼ型、ブルッカイト型等の公知の結晶形から適宜選択することができるが、優れた白色度、耐候性、遮熱性能等を有する観点から、ルチル型が好ましい。また、酸化チタンは、光触媒作用によって樹脂を劣化させる可能性があることから、光触媒作用を安定させる目的で、表面被覆剤で表面処理されていることが好ましく、該表面被覆剤の組成としては限定的ではないが、例えば、酸化ケイ素やアルミナ、又は、酸化亜鉛等の無機酸化物が挙げられる。表面被覆剤の被覆方法についても特に限定されたものではなく、公知の方法で得られた酸化チタンを使用することができる。
基材シート11に含有される着色剤の量は、基材シート11における所望の分光反射率を実現する観点から、基材シート11を構成する樹脂100質量部に対して、通常1〜70質量部、好ましくは1〜50質量部である。
基材シート11は、基材シート11と他の層との層間密着性や、各種の被着材との接着性の強化等のために、片面又は両面に酸化法、凹凸化法等の物理的又は化学的表面処理を施すことができる。酸化法としては、例えば、コロナ放電処理、クロム酸化処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線処理法等が挙げられ、凹凸化法としては、例えば、サンドブラスト法、溶剤処理法等が挙げられる。これらの表面処理は、基材の種類に応じて適宜選択されるが、一般にはコロナ放電処理法が効果及び操作性等の面から好ましく使用される。また、基材シート11と各層との層間密着性の強化等を目的として、プライマー層、裏面プライマー層を形成する等の処理を施してもよい。
基材シート11は、必要に応じて無機充填剤を含有してもよい。無機充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、クレー、タルク、シリカ(二酸化珪素)、アルミナ(酸化アルミニウム)等の粉末等が挙げられる。基材シート11に含有される無機充填剤の量は、通常、基材シート11を形成する樹脂100質量部に対して、1〜50質量部である。基材シート11は、必要に応じてその他の各種添加剤、例えば、発泡剤、難燃剤、滑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤等を含有してもよい。
(印刷層)
印刷層12は、有機黒色顔料及び無機黒色顔料を含有する。これにより、化粧シート10は、屋外で使用された場合にも、人の目に純黒(真っ黒)又はそれに近い色として認識される黒色を持続的に呈することができる。印刷層12は、化粧シート10に黒色を付与し、化粧シート10の意匠性を向上させる効果の他、基材シート11を隠蔽する効果も有する。印刷層12は、絵柄として認識されるように基材シート11の一方の表面に部分的に形成されていてもよいが、化粧シート10の全面が黒色として認識されるように基材シート11の一方の表面の全体に形成されていることが好ましい。印刷層12を形成するための印刷方法としては、例えば、グラビア印刷、フレキソ印刷、シルクスクリーン印刷等が挙げられる。
印刷層12に含有される有機黒色顔料としては、例えば、アゾメチンアゾ系黒色顔料、ペリレン系黒色顔料、アゾ系黒色顔料、アニリンブラック、アセチレンブラック、カーボンブラック、ランプブラック、ベンズイミダゾロンピグメントブラウン25(茶)とフタロシアニンブルー(青)との混合顔料等が挙げられるが、これらのうちアゾメチンアゾ系黒色顔料及びペリレン系黒色顔料が好ましい。印刷層12に含有される有機黒色顔料は、1種単独であってもよいし、2種以上の組み合わせであってもよい。
アゾメチンアゾ系黒色顔料は、メチン基及びアゾメチン基を有する限り特に限定されるものではないが、例えば、特開昭62−30202号公報、特開昭62−32149号公報(特公平4−15265号公報)、特開2002−256165号公報(特許第4084022号明細書)、特開2002−348491号公報(特許第4084023号明細書)等に記載のアゾメチンアゾ系黒色顔料が挙げられる。
アゾメチンアゾ系黒色顔料としては、例えば、下記式で表される化合物が挙げられる。
上記式中、
Xは、水素原子又はハロゲン原子を表し、
mは1〜4の整数を表し、
R
1は、ハロゲン原子、メチル基、メトキシ基及びニトロ基からなる群より選択される1又は2以上の置換基を有していてもよいフェニレン基、ナフチレン基又はビフェニレン基を表し、
nは1又は2を表し、
nが1を表す場合、R
2は、メチル基、エチル基、メトキシ基及びアニリノカルボニル基からなる群より選択される1又は2以上の置換基を有していてもよいフェニル基、
を表し、
nが2を表す場合、メチル基、エチル基、メトキシ基及びアニリノカルボニル基からなる群より選択される1又は2以上の置換基を有していてもよいフェニレン基、ナフチレン基又はビフェニレン基を表す。
また、アゾメチンアゾ系黒色顔料としては、例えば、下記式で表される化合物が挙げられる。
上記式中、
Rは、炭素数1〜3の低級アルキル基及び炭素数1〜3の低級アルコキシ基からなる群より選択される基を表し、
nは1〜5の整数を表し、
nが2以上の整数を表す場合、Rは同一であってもよいし異なっていてもよい。
アゾメチンアゾ系黒色顔料の具体例としては、1−[[4−[(4,5,6,7−テトラクロロ−3−オキソ−イソインドリン−1−イリデン)アミノ]フェニル]アゾ]−2−ヒドロキシ−N−(4−メトキシ−2−メチルフェニル)−11H−ベンゾ[a]カルバゾール−3−カルボキシアミド、(2−ヒドロキシ−N−(2’−メチル−4’−メトキシフェニル)−1−{[4−[(4,5,6,7−テトラクロロ−1−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール−3−イリデン)アミノ]フェニル]アゾ}−11H−ベンゾ[a]−カルバゾール−3−カルボキシアミド)等が挙げられる。
ペリレン系黒色顔料としては、例えば、下記式で表される化合物が挙げられる。
上記式中、
Rは、同一又は異なって、−(CH
2)
2−OH、−CH
2−CH
2−Y(Yはフェニル基、メチル基又はヒドロキシメチル基を表す。)、又は
を表す。
ペリレン系黒色顔料の具体例としては、例えば、下記式で表されるペリレン−3,4,9,10−テトラカルボン酸ジイミド等が挙げられる。
印刷層12に含有される無機黒色顔料としては、例えば、複合酸化物、鉄黒、チタンブラック等が挙げられるが、これらのうち複合酸化物が好ましい。印刷層12に含有される無機黒色顔料は、1種単独であってもよいし、2種以上の組み合わせであってもよい。
複合酸化物は、少なくとも2種の金属元素を含む酸化物である。複合酸化物は、少なくともマンガン元素を含む複合酸化物、すなわち、マンガン元素と、マンガン元素以外の少なくとも1種の金属元素を含む酸化物であることが好ましい。複合酸化物に含まれるマンガン元素以外の金属元素は、特に限定されるものではなく、より明度が低い落ち着いた意匠性を得る観点、遮熱性能を得る観点等から適宜選択することができる。複合酸化物に含まれるマンガン元素以外の金属元素は、1種単独であってもよいし、2種以上の組み合わせであってもよい。複合酸化物に含まれるマンガン元素以外の金属元素としては、例えば、カルシウム元素、バリウム元素等の第2族元素;イットリウム元素、ランタン元素、プラセオジム元素;ネオジム元素等の第3族元素、チタン元素、ジルコニウム元素等の第4族元素;ホウ素元素、アルミニウム元素、ガリウム元素、インジウム元素等の第13族元素;アンチモン元素、ビスマス元素等の第15族元素等の金属元素が挙げられる。これらのなかでも、第2族元素、第4族元素、第15族元素が好ましく、カルシウム元素、チタン元素、及びビスマス元素がより好ましく、カルシウム元素及びチタン元素がさらに好ましい。複合酸化物の特に好ましい具体例としては、マンガン元素、カルシウム元素及びチタン元素を含む複合酸化物が挙げられる。
複合酸化物の構造は、特に限定されるものではないが、構造として安定している観点、優れた遮熱性能及び意匠性を得る観点等から、ペロブスカイト構造、斜方晶構造、六方晶構造等であることが好ましく、ペロブスカイト構造であることがさらに好ましい。
印刷層12は、有機黒色顔料及び無機黒色顔料のみから構成されていてもよいし、有機黒色顔料及び無機黒色顔料以外の成分を含有してもよい。有機黒色顔料及び無機黒色顔料以外の成分としては、例えば、バインダーが挙げられる。バインダーは、特に制限されるものでなく、例えば、熱可塑性樹脂、1液硬化型樹脂、2液硬化型樹脂等の硬化性樹脂が挙げられる。具体的には、ウレタン樹脂、アクリルウレタン樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル/アクリル共重合体樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ブチラール樹脂、ポリスチレン樹脂、ニトロセルロース樹脂(硝化綿)、酢酸セルロース樹脂等の中から選択されたバインダーを1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。また、バインダー以外の成分としては、例えば、有機黒色顔料及び無機黒色顔料以外の着色剤、安定剤、可塑剤、触媒、硬化剤等が挙げられる。着色剤の具体例は、基材シート11に含有される着色剤に関して上記した具体例と同様である。印刷層12は、カーボンブラック(墨)を含有しないことが好ましい。カーボンブラックは熱を吸収しやすい特性を有するため、化粧シート10にカーボンブラックが使用されることにより、化粧シート10が熱を吸収しやすくなり、遮熱性能が低下してしまうからである。
印刷層12に含有される有機黒色顔料及び無機黒色顔料の量、印刷層12の厚さ等は、耐候性試験前及び耐候性試験後の化粧シート10におけるL*a*b*表色系のL*値、a*値及びb*値に影響を与える。したがって、印刷層12に含有される有機黒色顔料及び無機黒色顔料の量、印刷層12の厚さ等を調節することにより、耐候性試験前及び耐候性試験後の化粧シート10におけるL*a*b*表色系のL*値、a*値及びb*値を調節することができる。
印刷層12に含有される有機黒色顔料の量は、耐候性試験前及び耐候性試験後の化粧シート10における所望のL*値、a*値及びb*値並びに所望の波長域780〜2500nmの平均分光反射率を実現する観点から、印刷層12に含有される固形分総量に対して通常1〜50質量%、好ましくは5〜40質量%、さらに好ましくは5〜35質量%である。
印刷層12に含有される無機黒色顔料の量は、耐候性試験前及び耐候性試験後の化粧シート10における所望のL*値、a*値及びb*値並びに所望の波長域780〜2500nmの平均分光反射率を実現する観点から、印刷層12に含有される固形分総量に対して通常1〜29質量%、好ましくは1〜25質量%、さらに好ましくは3〜20質量%である。
印刷層12に含有される無機黒色顔料と有機黒色顔料との質量比(無機黒色顔料の質量:有機黒色顔料の質量)は、耐候性試験前及び耐候性試験後の化粧シート10における所望のL*値、a*値及びb*値並びに所望の波長域780〜2500nmの平均分光反射率を実現する観点から、通常0.1:1〜1:1、好ましくは0.1:1〜0.8:1である。
印刷層12の厚さは、耐候性試験前及び耐候性試験後の化粧シート10における所望のL*値、a*値及びb*値並びに所望の波長域780〜2500nmの平均分光反射率を実現する観点から、通常0.5〜15μm、好ましくは1〜10μm、さらに好ましくは3〜7μmである。
印刷層12を形成するために使用される印刷インキとしては、例えば、バインダーに有機黒色顔料及び無機黒色顔料を混合したものが挙げられる。印刷インキは、有機黒色顔料及び無機黒色顔料以外の着色剤、溶剤、安定剤、可塑剤、触媒、硬化剤等を含有してもよい。印刷インキに含有される着色剤の具体例は、基材シート11に含有される着色剤に関して上記した具体例と同様である。印刷インキは、カーボンブラック(墨)を含有しないことが好ましい。カーボンブラックは熱を吸収しやすい特性を有するため、化粧シート10にカーボンブラックが使用されることにより、化粧シート10が熱を吸収しやすくなり、遮熱性能が低下してしまうからである。なお、印刷インキに含有される有機黒色顔料、無機黒色顔料及びバインダーの量(固形分基準)は、それぞれ、印刷層12に含有される有機黒色顔料、無機黒色顔料及びバインダーの量(固形分基準)に相当する。
印刷層12を形成する際、印刷インキが塗布される面(例えば、基材シート11の一方の面)の単位面積当たりに塗布される印刷インキの量(固形分基準)は、耐候性試験前及び耐候性試験後の化粧シート10における所望のL*値、a*値及びb*値並びに所望の波長域780〜2500nmの平均分光反射率を実現する観点から、通常0.5〜15g/m2、好ましくは1〜10g/m2、さらに好ましくは3〜7g/m2である。
印刷層12は、単一の印刷層で構成されていてもよいし、複数の印刷層で構成されていてもよいが、印刷層12における有機黒色顔料及び無機黒色顔料の分布の均一性を向上させる観点から、複数の印刷層で構成されていることが好ましい。
本実施形態において、印刷層12は、有機黒色顔料を含有する第1印刷層121と、無機黒色顔料を含有する第2印刷層122とで構成されている。なお、第1印刷層121と第2印刷層122との境界は必ずしも明確であるとは限らない。例えば、第1印刷層121と第2印刷層122との境界には、第1印刷層121を構成する成分と第2印刷層122を構成する成分とが混在した領域が形成される場合がある。
第1印刷層121及び第2印刷層122の形成順序は特に限定されず、印刷層12は、基材シート11側から順に第1印刷層121及び第2印刷層122を有していてもよいし、基材シート11側から順に第2印刷層122及び第1印刷層121を有していてもよい。本実施形態において、印刷層12は、基材シート11側から順に第1印刷層121及び第2印刷層122を有する。印刷層12が、基材シート11側から順に第1印刷層121及び第2印刷層122を有する場合、印刷層12が、基材シート11側から順に第2印刷層122及び第1印刷層121を有する場合よりも、化粧シート10の耐候性を向上させることができる。
第1印刷層121に含有される有機黒色顔料は、印刷層12に含有される有機黒色顔料の一部であってもよいし、印刷層12に含有される有機黒色顔料の全部であってもよい。第1印刷層121に含有される有機黒色顔料が、印刷層12に含有される有機黒色顔料の一部である場合、第1印刷層121によって化粧シート10に所望の黒色を付与する観点から、第1印刷層121に含有される有機黒色顔料の量は、印刷層12に含有される有機黒色顔料の総量に対して、通常20質量%以上、好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは35質量%以上である。化粧シート10が屋外で使用された場合にも、第1印刷層121によって化粧シート10に所望の黒色を持続的に付与する観点から、第1印刷層121に含有される有機黒色顔料の量は、印刷層12に含有される有機黒色顔料の総量に対して、通常80質量%以下、好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは68質量%以下である。
第1印刷層121によって化粧シート10に所望の黒色を付与する観点から、第1印刷層121に含有される有機黒色顔料の量は、第1印刷層121に含有される固形分総量に対して、好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上、さらに一層好ましくは20質量%以上である。化粧シート10が屋外で使用された場合にも、第1印刷層121によって化粧シート10に所望の黒色を持続的に付与する観点及び第1印刷層121と他の層との密着性を向上させる観点から、第1印刷層121に含有される有機黒色顔料の量は、第1印刷層121に含有される固形分総量に対して、好ましくは60質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下、さらに一層好ましくは40質量%以下である。
第1印刷層121は、無機黒色顔料を含有してもよい。第1印刷層121に含有される無機黒色顔料は、印刷層12に含有される無機黒色顔料の一部である。第1印刷層121が無機黒色顔料を含有する場合、第1印刷層121に含有される無機黒色顔料の量は、印刷層12に含有される無機黒色顔料の総量に対して、通常5〜50質量%、好ましくは10〜45質量%、さらに好ましくは15〜40質量%である。第1印刷層121が無機黒色顔料を含有する場合、第1印刷層121に含有される無機黒色顔料と有機黒色顔料との質量比(無機黒色顔料の質量:有機黒色顔料の質量)は、通常0.5:1〜2:1、好ましくは1:1:1.5:1である。
第1印刷層121の厚さは、通常0.1〜5μm、好ましくは0.5〜4μm、さらに好ましくは0.5〜3μmである。
第1印刷層121を形成する際、印刷インキが塗布される面(例えば、基材シート11の一方の面)の単位面積当たりに塗布される印刷インキの量(固形分基準)は、耐候性試験前及び耐候性試験後の化粧シート10における所望のL*値、a*値及びb*値を実現する観点から、通常0.1〜5g/m2、好ましくは0.5〜4g/m2、さらに好ましくは0.5〜3g/m2である。
第2印刷層122に含有される無機黒色顔料は、印刷層12に含有される無機黒色顔料の一部であってもよいし、印刷層12に含有される無機黒色顔料の全部であってもよい。第2印刷層122に含有される無機黒色顔料が、印刷層12に含有される無機黒色顔料の一部である場合、第2印刷層122に含有される無機黒色顔料の量は、印刷層12に含有される無機黒色顔料の総量に対して、通常5〜60質量%、好ましくは10〜55質量%、さらに好ましくは15〜50質量%である。第2印刷層122に含有される無機黒色顔料の量は、第2印刷層122に含有される固形分総量に対して通常1〜65質量%、好ましくは5〜60質量%、さらに好ましくは5〜50質量%である。
第2印刷層122は、有機黒色顔料を含有してもよいし含有しなくてもよい。第2印刷層122に含有される有機黒色顔料は、印刷層12に含有される有機黒色顔料の一部である。第2印刷層122が有機黒色顔料を含有する場合、第2印刷層122によって化粧シート10に所望の黒色を付与する観点から、第2印刷層122に含有される有機黒色顔料の量は、印刷層12に含有される有機黒色顔料の総量に対して、好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上、さらに一層好ましくは35質量%以上である。化粧シート10が屋外で使用された場合にも、第2印刷層122によって化粧シート10に所望の黒色を持続的に付与する観点から、第2印刷層122に含有される有機黒色顔料の量は、印刷層12に含有される有機黒色顔料の総量に対して、好ましくは80質量%以下、さらに好ましくは70質量%以下、さらに一層好ましくは68質量%以下である。
第2印刷層122が有機黒色顔料を含有する場合、第2印刷層122に含有される無機黒色顔料と有機黒色顔料との質量比(無機黒色顔料の質量:有機黒色顔料の質量)は、通常0.1:1〜3:1、好ましくは0.1:1〜2.5:1である。
第2印刷層122の厚さは、通常0.1〜5μm、好ましくは0.5〜4μm、さらに好ましくは0.5〜3μmである。
印刷層12に含有される無機黒色顔料の総量に対する第1印刷層121及び第2印刷層122に含有される無機黒色顔料量の割合に関し、化粧シート10が屋外で使用された場合にも、化粧シート10に所望の黒色を持続的に付与する観点から、第1印刷層121よりも表面保護層側に位置する第2印刷層122における割合が、第1印刷層121における割合よりも大きいことが好ましい。
印刷層12に含有される有機黒色顔料の総量に対する第1印刷層121及び第2印刷層122に含有される有機黒色顔料量の割合に関し、化粧シート10に有機顔料特有の艶感を付与する観点から、第1印刷層121よりも表面保護層側に位置する第2印刷層122における割合が、第1印刷層121における割合よりも大きいことが好ましい。
第2印刷層122を形成する際、印刷インキが塗布される面(例えば、基材シート11の一方の面)の単位面積当たりに塗布される印刷インキの量(固形分基準)は、耐候性試験前及び耐候性試験後の化粧シート10における所望のL*値、a*値及びb*値を実現する観点から、通常0.1〜5g/m2、好ましくは0.5〜4g/m2、さらに好ましくは0.5〜3g/m2である。
印刷層12は、第1印刷層121及び第2印刷層122に加えて、1又は2以上の別の印刷層を有していてもよい。1又は2以上の別の印刷層は、第1印刷層121又は第2印刷層122と同様に構成することができる。1又は2以上の別の印刷層は、例えば、第1印刷層121と基材シート11との間、第1印刷層121と第2印刷層122との間、第2印刷層122と透明樹脂層13との間等に設けることができる。
(透明樹脂層)
透明樹脂層13は、印刷層12と表面保護層14の間に設けられる。透明樹脂層13には、化粧シート10におけるL*a*b*表色系のL*値、a*値及びb*値を補正する、色補正層としての機能を持たせることもできる。したがって、透明樹脂層13におけるL*a*b*表色系のL*値、a*値及びb*値を調節することにより、化粧シート10におけるL*a*b*表色系のL*値、a*値及びb*値を調節することができる。なお、透明樹脂層13は、印刷層12を保護して、耐傷性を向上させる効果も有する。
透明樹脂層13が印刷層12と表面保護層14の間に設けられている限り、印刷層12と透明樹脂層13との間及び/又は透明樹脂層13と表面保護層14との間には、他の層が設けられていてもよい。
透明樹脂層13におけるL*a*b*表色系のa*値及びb*値は、a*値:−1以上0以下、かつ、b*値:−3以上−2以下であることが好ましい。なお、透明樹脂層13におけるL*a*b*表色系のL*値は30〜50であることが好ましい。
透明樹脂層13におけるL*a*b*表色系のL*値、a*値及びb*値は、透明樹脂層13を構成する樹脂の種類、透明樹脂層13の厚み、透明樹脂層13が着色剤を含有する場合には着色剤の種類及び量等を適宜選択することにより調節することができる。
透明樹脂層13は、例えば、熱可塑性樹脂で構成することができる。透明樹脂層13を構成する樹脂としては、基材シート11を構成する樹脂に関して上記した具体例(ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂)の他、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリスチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂等が挙げられる。成型加工性の向上、耐傷性の向上の観点から、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂が好ましく、ポリオレフィン樹脂がより好ましい。また、これと同様の観点から、基材シート11及び透明樹脂層13を構成する樹脂がともにポリオレフィン樹脂であることが好ましい。
透明樹脂層13は、印刷層12を視認できる程度の透明性を有していればよく、無色透明の他、着色透明や半透明であってもよい。透明樹脂層13を構成する樹脂層が着色されている場合、樹脂層に含有される着色剤の具体例は、基材シート11に含有される着色剤に関して上記した具体例と同様である。透明樹脂層13を構成する樹脂層は、カーボンブラック(墨)を含有しないことが好ましい。カーボンブラックは熱を吸収しやすい特性を有するため、化粧シート10にカーボンブラックが使用されることにより、化粧シート10が熱を吸収しやすくなり、遮熱性能が低下してしまうからである。
透明樹脂層13の厚さは、化粧シート10における所望のL*値、a*値及びb*値を実現する観点から、通常20〜130μm、好ましくは30〜100μm、さらに好ましくは40〜90μmである。透明樹脂層13の厚さが上記範囲内であると、印刷層12の保護機能及び耐傷性の向上も望める。
透明樹脂層13は、各層との接着性を向上させる観点から、片面又は両面に酸化法、凹凸化法等の物理的又は化学的表面処理を施すことができる。これらの物理的又は化学的表面処理としては、基材シート11の表面処理と同様の方法が挙げられる。また、透明樹脂層13は、各層との接着性を向上させる観点から、プライマー層や裏面プライマー層を形成する等の処理を施すこともできる。
(表面保護層)
表面保護層14は、透明樹脂層13の上に設けられる。表面保護層14は、化粧シート10の最表面に位置する層であり、化粧シート10に耐傷性、耐摩耗性、耐薬品性等の表面特性を付与する層である。表面保護層14は、好ましくは硬化性樹脂を含有する樹脂組成物の硬化物で構成される。硬化性樹脂組成物の硬化物により構成されることで、化粧シート10の表面特性を向上させることができる。
表面保護層14の形成に使用される硬化性樹脂としては、2液硬化型樹脂等の熱硬化性樹脂の他、電離放射線硬化性樹脂等が挙げられ、これらを複数使用した、例えば、電離放射線硬化性樹脂と熱硬化性樹脂とを併用する、あるいは、硬化性樹脂と熱可塑性樹脂とを併用する、いわゆるハイブリッドタイプであってもよい。
表面保護層14を形成する樹脂の架橋密度を高め、表面の耐傷性や耐摩耗性を向上させ得るとの観点から、電離放射線硬化性樹脂が好ましく、また、無溶媒で塗布することができ、取り扱いが容易との観点から、電子線硬化性樹脂がより好ましい。
(電離放射線硬化性樹脂)
電離放射線硬化性樹脂とは、電磁波又は荷電粒子線の中で分子を架橋、重合させ得るエネルギー量子を有するもの、すなわち、紫外線又は電子線等を照射することにより、架橋、硬化する樹脂のことである。具体的には、従来電離放射線硬化性樹脂として慣用されている重合性モノマー及び重合性オリゴマーないしはプレポリマーの中から適宜選択して使用することができる。
代表的には、重合性モノマーとして、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つ(メタ)アクリレート系モノマーが好適であり、なかでも多官能性(メタ)アクリレートが好ましい。なお、ここで「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート又はメタクリレート」を意味する。多官能性(メタ)アクリレートとしては、分子内にエチレン性不飽和結合を2個以上有する(メタ)アクリレートであればよく、特に制限はない。これらの多官能性(メタ)アクリレートは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
次に、重合性オリゴマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つオリゴマー、例えばエポキシ(メタ)アクリレート系、ウレタン(メタ)アクリレート系、ポリエステル(メタ)アクリレート系、ポリエーテル(メタ)アクリレート系等が挙げられる。さらに、重合性オリゴマーとしては、他にポリブタジエンオリゴマーの側鎖に(メタ)アクリレート基をもつ疎水性の高いポリブタジエン(メタ)アクリレート系オリゴマー、主鎖にポリシロキサン結合をもつシリコーン(メタ)アクリレート系オリゴマー、小さな分子内に多くの反応性基をもつアミノプラスト樹脂を変性したアミノプラスト樹脂(メタ)アクリレート系オリゴマー、あるいはノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、脂肪族ビニルエーテル、芳香族ビニルエーテル等の分子中にカチオン重合性官能基を有するオリゴマー等がある。
前記多官能性(メタ)アクリレート等とともに、その粘度を低下させる等の目的で、単官能性(メタ)アクリレートを、本発明の目的を損なわない範囲で適宜併用することができる。これらの単官能性(メタ)アクリレートは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
表面保護層14の厚さは、優れた耐傷性とその持続性、さらには耐摩耗性、耐薬品性等の表面特性を得る観点から、2〜25μmが好ましく、2〜15μmがより好ましく、2〜10μmがさらに好ましい。
表面保護層14を形成する樹脂組成物中には、その性能を阻害しない範囲で、上記以外の各種添加剤を含有することができる。各種添加剤としては、例えば重合禁止剤、架橋剤、帯電防止剤、接着性向上剤、酸化防止剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、カップリング剤、可塑剤、消泡剤、充填剤、溶剤等が挙げられる。
(接着層)
化粧シート10は、必要に応じて接着層を有することができる。例えば、印刷層12と透明樹脂層13との間の接着性を向上させるために、印刷層12と透明樹脂層13との間に接着層を設けることができる。接着層を構成する接着剤としては、化粧シートにおいて一般的に使用されている接着剤を適宜選択して使用することができ、その厚さは0.1〜50μm程度であり、十分な接着性が得られる観点から1〜30μmの範囲が好ましい。
接着剤としては、特に制限されるものではないが、例えば、ウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤、ゴム系接着剤等が挙げられ、なかでも、ウレタン系接着剤が接着力の点で好ましい。なお、このようなウレタン系接着剤としては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール等の各種ポリオール化合物と、トリレンジイソシアネートやヘキサメチレンジイソシアネート等の各種ポリイソシアネート化合物とを含む2液硬化型ウレタン樹脂を利用した接着剤が挙げられる。また、アクリル−ポリエステル−塩酢ビ系樹脂等も加熱により容易に接着性を発現し、高温での使用でも接着強度を維持し得る好適な接着剤である。接着層は、これら樹脂等からなる接着剤組成物を使用して、塗工法等の公知の層形成法で形成することができる。
(プライマー層)
化粧シート10は、必要に応じて、各層間密着性を向上させるために、各層間のいずれかにプライマー層、裏面プライマー層を有することができる。例えば、被着材と基材シート11との間で、基材シート11側に裏面プライマー層としてプライマー層を設けることで、層間密着性に優れた化粧部材が得られる。また、透明樹脂層13と表面保護層14との間にプライマー層を設けることで、化粧部材の優れた耐傷性が得られる。
プライマー層は、透明又は半透明な層であり、例えば、印刷インキのバインダー樹脂として例示した樹脂等を使用して形成することができる。プライマー層の厚さは、通常0.5〜20μm程度、好ましくは0.5〜5μm、より好ましくは0.5〜3μmである。
(凹形状)
化粧シート10は、少なくとも表面保護層14に凹形状を有することが好ましい。化粧シート10が凹形状を有することで、特に質感(触感)に優れたものとなる。この凹形状は、少なくとも表面保護層14に存在していればよく、また基材シート11に至るものがあってもよい。優れた質感(触感)を得る観点から、表面保護層14内に留まるものだけでなく、透明樹脂層13まで至るもの、印刷層12まで至るもの、基材シート11まで至るものが組み合わされていることが好ましい。なお、本明細書において、表面保護層14等が上記凹形状を有する場合、表面保護層14等の厚みは、上記凹形状を有さない箇所で測定した厚みを意味する。
凹形状の最大深さは、化粧シート10の総厚さに対して15%以上100%未満が好ましく、15〜80%がより好ましく、25〜80%がさらに好ましい。また、凹形状の最大深さとしては、15μm以上が好ましく、20μm以上であることがより好ましく、30μm以上であることがさらに好ましい。このような最大深さを有することで、凹形状の加工、例えばエンボス加工の際に化粧シート10が破断してしまうことがなく、凹形状が潰れたように仕上がってしまうといったこともなく、優れた質感(触感)が得られ、結果として優れた意匠性が得られる。
ここで、凹形状の最大深さの測定は、任意の30点の凹形状について、該凹形状の最下点から表面保護層14の表面までの高さを、表面粗さ形状測定機を使用して、カットオフ値:2.50mm、カットオフフィルタの種類:2RC、傾斜補正方法:直線の測定条件で測定し、最も深いものを最大深さとした。
表面保護層14に凹形状を施す方法については特に制限はなく、例えば作業の容易さを考慮すると、エンボス加工を採用することが好ましい。エンボス加工は、公知の枚葉又は輪転式のエンボス機を使用する通常の方法により行えばよい。
(化粧シートの製造方法)
本発明の化粧シートの製造方法について、本発明の一実施形態に係る化粧シート10を例にとって、その製造方法を説明する。化粧シート10は、例えば、(a)基材シート11上に印刷層12を設ける工程、(b)印刷層12上に透明樹脂層13を設ける工程、(c)透明樹脂層13上に硬化性樹脂組成物を塗布し、硬化させて表面保護層14を形成して化粧シート10を作製する工程を順に経ることにより製造することができる。
工程(a)は、基材シート11上に印刷層12を設ける工程である。印刷層12は、基材シート11上に印刷層12の形成に使用される印刷インキを塗布して乾燥させることにより形成される。印刷インキの塗布は、グラビア印刷法、バーコート法、ロールコート法、リバースロールコート法、コンマコート法等の公知の方式、好ましくはグラビア印刷法により行う。
基材シート11側から順に第1印刷層121及び第2印刷層122を有する印刷層12は、基材シート11上に、第1印刷層121を形成するための印刷インキを塗布して乾燥させ、第1印刷層121を形成した後、第1印刷層121上に、第2印刷層122を形成するための印刷インキを塗布して乾燥させ、第2印刷層122を形成することにより形成される。
基材シート11に表面処理を施す場合は、印刷層12の形成に使用される印刷インキを塗布する前に表面処理を行えばよい。基材シート11と印刷層12との間にプライマー層を設ける場合も、印刷層12の形成に使用される印刷インキを塗布する前に設ければよく、また基材シート11の印刷層12を設ける面とは反対側の面(裏面)に裏面プライマー層を設ける場合は、印刷層12の形成に使用される印刷インキを塗布する際に設ければよい。プライマー層の形成は、プライマー層を形成する樹脂組成物を、例えば、グラビア印刷法、バーコート法、ロールコート法、リバースロールコート法、コンマコート法等の公知の方式で塗布して形成することができる。
工程(b)は、印刷層12上に透明樹脂層13を設ける工程である。透明樹脂層13は、印刷層12を有する基材シート11に必要に応じて接着剤を塗布して接着層を形成した後に、透明樹脂層13を形成する樹脂組成物を使用して、透明樹脂層13を押出ラミネーション、ドライラミネーション、ウエットラミネーション、サーマルラミネーション等の方法により接着及び圧着させて積層して形成することができる。
工程(c)は、透明樹脂層13上に硬化性樹脂組成物を塗布し、硬化させて表面保護層14を形成する工程である。表面保護層14は、電離放射線硬化性樹脂を含む電離放射線硬化性樹脂組成物を、透明樹脂層13上又は透明樹脂層13上に所望に応じて設けられたプライマー層の上に塗布し、硬化させて得られる。
表面保護層14を形成するための、樹脂組成物の塗布は、硬化後の厚さが通常1〜20μm程度となるように、好ましくはグラビアコート、バーコート、ロールコート、リバースロールコート、コンマコート等の公知の方式により、より好ましくはグラビアコートにより行う。
表面保護層14の形成に電離放射線樹脂組成物を使用する場合、該樹脂組成物の塗布により形成した未硬化樹脂層は、電子線、紫外線等の電離放射線を照射して硬化物とすることで、表面保護層14となる。ここで、電離放射線として電子線を使用する場合、その加速電圧については、使用する樹脂や層の厚みに応じて適宜選定し得るが、通常加速電圧70〜300kV程度で未硬化樹脂層を硬化させることが好ましい。
照射線量は、電離放射線硬化性樹脂の架橋密度が飽和する量が好ましく、通常5〜300kGy(0.5〜30Mrad)、好ましくは10〜50kGy(1〜5Mrad)の範囲で選定される。電子線源としては、特に制限はなく、例えばコックロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、あるいは直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器を使用することができる。また、電離放射線として紫外線を使用する場合には、波長190〜380nmの紫外線を含むものを放射する。紫外線源としては特に制限はなく、例えば高圧水銀燈、低圧水銀燈、メタルハライドランプ、カーボンアーク燈等が使用される。
表面保護層14の形成に熱硬化性樹脂組成物を使用する場合は、使用する樹脂組成物に応じた熱処理を施して、硬化させて表面保護層14を形成すればよい。
以上のようにして得られる化粧シートは、人の目に純黒(真っ黒)又はそれに近い色として認識される黒色を呈することができるとともに、遮熱性能を発揮することができるので、例えば、被着材と積層した形態で、壁、天井、床等の建築物の内外装用部材、窓枠、扉、手すり、幅木、廻り縁、モール等の建具の他、キッチン、家具又は弱電、OA機器等のキャビネットの表面化粧板、車両の内装、外装等の種々の用途の化粧部材として、好適に使用することができる。
〔化粧部材〕
以下、図2を参照しながら、本発明の一実施形態に係る化粧部材について説明する。図2は本発明の一実施形態に係る化粧部材20の構成を模式的に示す側面図である。
図2に示すように、本発明の一実施形態に係る化粧部材20は、被着材21と化粧シート10とを、被着材21と化粧シート10の基材シート11とが対向するように備える。
(被着材)
被着材21としては、例えば、各種素材の平板、曲面板等の板材、立体形状物品、シート(或いはフィルム)等が挙げられる。具体的には、木材単板、木材合板、パーティクルボード、MDF(中密度繊維板)等の木質繊維板等の板材や立体形状物品等として使用される木質部材;鉄、アルミニウム等の板材や鋼板、立体形状物品、あるいはシート等として使用される金属部材;ガラス、陶磁器等のセラミックス、石膏等の非セメント窯業系材料、ALC(軽量気泡コンクリート)板等の非陶磁器窯業系材料等の板材や立体形状物品等として使用される窯業部材;アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)樹脂、フェノール樹脂、塩化ビニル樹脂、セルロース系樹脂、ゴム等の板材、立体形状物品、あるいはシート等として使用される樹脂部材等が挙げられる。また、これらの部材は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
被着材21は、上記のなかから用途に応じて適宜選択すればよく、壁、天井、床等の建築物の内外装用部材、窓枠、扉、手すり、幅木、廻り縁、モール等の建具を用途とする場合は、木質部材、金属部材、樹脂部材、これらの組み合わせた部材が好ましい。
被着材21の厚さは、用途及び材料に応じて適宜選択すればよく、通常0.1〜5mmが好ましく、0.1〜3mmがより好ましい。
(接着剤層)
化粧部材20は、被着材21と化粧シート10との間に接着剤層22を有する。接着剤層22は省略可能であるが、優れた接着性を得るため、被着材21と化粧シート10とを接着剤層22を介して貼り合わせることが好ましい。
接着剤層22に含有される接着剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、感熱接着剤、感圧接着剤等の接着剤が挙げられる。接着剤を構成する樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合樹脂、スチレン−アクリル系共重合樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂等が挙げられる。イソシアネート等を硬化剤とする2液硬化型のポリウレタン系接着剤又はポリエステル系接着剤も適用し得る。接着剤層22には、粘着剤を使用することもできる。粘着剤としては、例えば、アクリル系、ウレタン系、シリコーン系、ゴム系等の粘着剤が挙げられる。
接着剤層22は、上記樹脂を溶液又はエマルジョン等の塗布可能な形態にしたものを、グラビア印刷法、スクリーン印刷法又はグラビア版を使用したリバースコーティング法等の手段により塗布、乾燥して形成することができる。接着剤層の厚さは特に制限はないが、通常1〜100μmの範囲である。この範囲とすることで、優れた接着性が得られる。
(化粧部材の製造方法)
発明の化粧部材の製造方法について、本発明の一実施形態に係る化粧部材20を例にとって、その製造方法を説明する。化粧部材20は、化粧シート10と被着材21とを、(d)化粧シート10の基材シート11と被着材21とを対向させて積層する工程を経て製造することができる。
被着材21と化粧シート10との積層する方法としては、例えば、接着剤を間に介して化粧シート10を板状の被着材に加圧ローラーで加圧して積層するラミネート方法、接着剤を間に介して化粧シート10を供給しつつ、複数の向きの異なるローラーにより、被着材21を構成する複数の側面に順次化粧シート10を加圧接着して積層してゆくラッピング加工、また、固定枠に固定した化粧シート10が軟化する所定の温度になるまでシリコーンゴムシートを介してヒーターで加熱し、加熱され軟化した化粧シート10に真空成形金型を押し付け、同時に真空成形金型から真空ポンプ等で空気を吸引し化粧シート10を真空成形金型にしっかりと密着させる真空成形加工等が好ましく挙げられる。
ラミネート加工やラッピング加工において、ホットメルト接着剤(感熱接着剤)を使用する場合、接着剤を構成する樹脂の種類にもよるが、加温温度は通常160〜200℃、反応性ホットメルト接着剤では通常100〜130℃程度である。また、真空成形加工の場合は加熱しながら行うことが一般的であり、通常80〜130℃程度、好ましくは90〜120℃程度で行われる。
以上のようにして得られる化粧部材は、任意切断し、表面や木口部にルーター、カッター等の切削加工機を使用して溝加工、面取加工等の任意加飾を施すことができる。そして種々の用途、例えば、壁、天井、床、バルコニー、ベランダ等の建築物の内装用部材又は外装用部材の表面化粧板;窓枠、扉、手すり、幅木、廻り縁、モール等の建具の表面化粧板;キッチン、家具、弱電機器、OA機器等のキャビネットの表面化粧板;車両の内装又は外装用の表面化粧板;携帯電話等の通信機器の表面化粧板;車道、歩道等の舗装道路用の表面化粧板(舗装道路の舗装面に積層して色彩、模様等を付与するための表面化粧板)等に使用することができる。
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明する。
〔実施例1〕化粧シートの製造及び評価
1.基材シートの準備
基材シートとして、両面にコロナ放電処理を施したポリプロピレン(PP)樹脂シートを準備した。このPP樹脂シートは、PP樹脂100質量部に対し、顔料として酸化チタン10質量部を含む、白色に着色された着色樹脂シート(厚さ:60μm)である。
基材シートが単独で存在する状態(すなわち、基材シートの両面に何の層も積層されていない状態)において、基材シートにおける波長域300〜2500nmの平均分光反射率(%)を測定した。波長域300〜2500nmの平均分光反射率(%)は、波長300nmから波長2500nmまで波長を1nmずつ変化させながら、各波長(すなわち、波長300nm、301nm、302nm、・・・・2498nm、2499nm、2500nm)の分光反射率(%)を測定し、測定した2201個の分光反射率(%)の和を2201で割ることにより算出した。各波長の分光反射率(%)は、JIS K 0115:2004に準拠する分光光度計(日本分光製V−670)使用し、各波長の光を基材シートの表面に入射角5度(基材シートの表面の法線方向を0度とする)で照射し、平行入射光束に対する全反射光束の割合(すなわち全光線反射率)として測定した。全光線反射率の測定方法は、JIS K 7375:2008に準拠した。
基材シートにおける波長域300〜2500nmの分光反射率曲線を図3に示す。
基材シートにおける波長域300〜2500nmの平均分光反射率は58.2%、波長750nmの分光反射率は83.9%、波長800nmの分光反射率は82.6%、波長域300〜650nmの平均分光反射率は65.8%であった。
2.第1印刷層の形成
第1印刷インキとして、2液硬化型アクリル−ウレタン樹脂をバインダーとして含むとともに、平均粒径0.2μmのアゾメチンアゾ系黒色顔料(大日精化工業株式会社製クロモファインブラックA−1103)を固形分基準で35質量%含む印刷インキを準備した。この印刷インキにおけるP/V比(アゾメチンアゾ系黒色顔料の質量/バインダー樹脂の質量)は、0.53である。
基材シートの一方の面に第1印刷インキをグラビア印刷法で塗布(塗布量:固形分基準で約3g/m2)し、硬化させ、第1印刷層(硬化後の厚さ:3μm)を形成した。
3.第2印刷層の形成
第2印刷インキとして、平均粒径0.2μmのアゾメチンアゾ系黒色顔料(大日精化工業株式会社製クロモファインブラックA−1103)と、マンガン元素、カルシウム元素及びチタン元素を含む複合酸化物系黒色顔料(石原産業株式会社製MPT−370)と、バインダーである2液硬化型アクリル−ウレタン樹脂とを、アゾメチンアゾ系黒色顔料:複合酸化物系黒色顔料:アクリル-ウレタン樹脂=1:1.18:2.32の質量比で含有する印刷インキを準備した。この印刷インキにおけるP/V比((アゾメチンアゾ系黒色顔料の質量+複合酸化物系黒色顔料の質量)/バインダー樹脂の質量)は、0.94である。
第1印刷層の上面に第2印刷インキをグラビア印刷法で塗布(塗布量:固形分基準で約3g/m2)し、硬化させ、第2印刷層(硬化後の厚さ:3μm)を形成した。
4.裏面プライマー層の形成
基材シートの他方の面に2液硬化型ウレタン−硝化綿混合樹脂組成物を塗布し、硬化させ、裏面プライマー層(硬化後の厚さ:2μm)を形成した。
5.接着層の形成
第2印刷層の上に透明なポリウレタン樹脂系接着剤を塗布し、乾燥させ、接着層(乾燥後の厚さ:3μm)を形成した。
6.透明樹脂層の形成
接着剤層の上に透明なポリプロピレン樹脂をTダイ押出機により加熱溶融押出し、透明樹脂層として透明樹脂層(厚さ:80μm)を形成した。
なお、上記と同様にして透明樹脂層を単独で形成し、透明樹脂層が単独で存在する状態(すなわち、透明樹脂層の両面に何の層も積層されていない状態)において、L*a*b*表色系におけるL*値、a*値及びb*値を測定した。L*a*b*表色系におけるL*値、a*値及びb*値は、分光測色計(コニカミノルタホールディングス株式会社製CM−3700d)を使用し、透明樹脂層の表面に入射角8度(透明樹脂層の表面の法線方向を0度とする)で光を照射し、全光線反射光(鏡面反射光+拡散反射光)に基づいて測定した。測定は透明樹脂層の表面の3箇所について行った。測定結果を表1に示す。
7.プライマー層の形成
透明樹脂層の表面にコロナ放電処理を施した後、コロナ放電処理表面に2液硬化型アクリル−ウレタン樹脂組成物をグラビア印刷法で塗布し、硬化させ、プライマー層(硬化後の厚さ:1μm)を形成した。
8.表面保護層の形成
プライマー層の表面に透明な電子線硬化性樹脂組成物(電子線硬化性樹脂:3官能ウレタンアクリレート)をグラビアコート法で塗布(固形分:3g/m2)し、乾燥させ、未硬化樹脂層を形成し、酸素濃度200ppmの環境下で電子線(加圧電圧:125KeV、5Mrad)を照射して該未硬化樹脂層を硬化させて、表面保護層(厚さ:3μm)を形成した。
9.エンボス加工
表面保護層側からエンボス加工を施して、最大深さ30μmの凹形状を有する木目導管模様の凹凸模様を形成し、実施例1の化粧シートを得た。
実施例1の化粧シートの第1印刷層及び第2印刷層の特徴を表2に示す。
10.化粧シートの評価
実施例1の化粧シートについて以下の評価を行った。耐候性試験前の化粧シートに関する評価結果を表19に、耐候性試験後の化粧シートに関する評価結果を表20に示す。
(1)化粧シートが呈する黒色の評価
化粧シートを表面保護層側から目視で観察し、化粧シートが呈する黒色を以下の基準で評価した。
A:化粧シートが呈する黒色が、純黒(真っ黒)又はそれに近い黒色として認識される。
B:化粧シートが呈する黒色が、純黒(真っ黒)又はそれに近い黒色として認識されない。
化粧シートが呈する黒色の評価は、耐候性試験前の化粧シート及び耐候性試験後の化粧シートについて行った。耐候性試験は、UVランプ(岩崎電気株式会社製M04−L21WB/SUV)、ランプジャケット(岩崎電気株式会社製WJ50−SUV)及び照度計(岩崎電気株式会社製UVD−365PD)を備えた超促進耐候性試験装置(岩崎電気株式会社製アイ スーパー UVテスター SUV−W131)を使用し、ブラックパネル温度63℃、照度60mW/cm2の条件で20時間照射を行った後、4時間結露を行うサイクルを33回繰り返すことにより行った。
目視による黒色の評価との関係性を考察するために、耐候性試験前及び耐候性試験後の化粧シートにおけるL*a*b*表色系のL*値、a*値及びb*値、並びに、耐候性試験前の化粧シートにおける波長域300〜650nmの平均分光反射率(%)を測定した。
L*a*b*表色系のL*値、a*値及びb*値は、分光測色計(コニカミノルタホールディングス株式会社製CM−3700d)を使用し、化粧シートの表面保護層側表面に入射角8度(化粧シートの表面の法線方向を0度とする)で光を照射し、全光線反射光(鏡面反射光+拡散反射光)に基づいて測定した。
波長域300〜650nmの平均分光反射率(%)は、波長300nmから波長650nmまで波長を1nmずつ変化させながら、各波長(すなわち、波長300nm、301nm、302nm、・・・・648nm、649nm、650nm)の分光反射率を測定し、測定した351個の分光反射率の和を351で割ることにより測定した。各波長の分光反射率は、JIS K 0115:2004に準拠する分光光度計(日本分光株式会社製V−670)を使用し、各波長の光を化粧シートの表面保護層側表面に入射角5度(化粧シートの表面の法線方向を0度とする)で照射し、平行入射光束に対する全反射光束の割合(すなわち全光線反射率)として測定した。全光線反射率の測定方法は、JIS K 7375:2008に準拠した。なお、各波長の分光反射率(%)は、化粧シートの両面に何の層も積層されていない状態で測定した。
(2)化粧シートの遮熱性能の評価
化粧シートの遮熱性能を評価するために、耐候性試験前の化粧シートにおける波長域780〜2500nmの平均分光反射率(%)を測定した。
化粧シートにおける波長域780〜2500nmの平均分光反射率(%)は、波長780nmから波長2500nmまで波長を1nmずつ変化させながら、各波長(すなわち、波長780nm、781nm、782nm、・・・・2498nm、2499nm、2500nm)の分光反射率(%)を測定し、測定した1721個の分光反射率の和を1721で割ることにより算出した。各波長の分光反射率(%)は、JIS K 0115:2004に準拠する分光光度計(日本分光株式会社製V−670)を使用し、化粧シートの表面保護層側表面に入射角5度(化粧シートの表面の法線方向を0度とする)で各波長の光を照射し、平行入射光束に対する全反射光束の割合(すなわち全光線反射率)として測定した。全光線反射率の測定方法は、JIS K 7375:2008に準拠した。なお、各波長の分光反射率(%)は、化粧シートの両面に何の層も積層されていない状態で測定した。
〔実施例2〕
第1印刷層及び第2印刷層の形成順序を逆にした点を除き、実施例1と同様の操作を行い、実施例2の化粧シートを得た。実施例2の化粧シートの第1印刷層及び第2印刷層の特徴を表3に示す。
実施例2の化粧シートについて実施例1の化粧シートと同様の評価を行った。耐候性試験前の化粧シートに関する評価結果を表19に、耐候性試験後の化粧シートに関する評価結果を表20に示す。
〔実施例3〕
第2印刷インキとして、アゾメチンアゾ系黒色顔料と、複合酸化物系黒色顔料と、2液硬化型アクリル−ウレタン樹脂とを、アゾメチンアゾ系黒色顔料:複合酸化物系黒色顔料:アクリル−ウレタン樹脂=1:0.24:1.92の質量比で含有する印刷インキを使用した点を除き、実施例1と同様の操作を行い、実施例3の化粧シートを得た。実施例3で使用した第2印刷インキにおけるP/V比((アゾメチンアゾ系黒色顔料の質量+複合酸化物系黒色顔料の質量)/バインダー樹脂の質量)は、0.64である。実施例3の化粧シートの第1印刷層及び第2印刷層の特徴を表4に示す。
実施例3の化粧シートについて実施例1の化粧シートと同様の評価を行った。耐候性試験前の化粧シートに関する評価結果を表19に、耐候性試験後の化粧シートに関する評価結果を表20に示す。
〔実施例4〕
第2印刷インキとして、アゾメチンアゾ系黒色顔料と、複合酸化物系黒色顔料と、2液硬化型アクリル−ウレタン樹脂とを、アゾメチンアゾ系黒色顔料:複合酸化物系黒色顔料:アクリル-ウレタン樹脂=1:2.13:2.64の質量比で含有する印刷インキを使用した点を除き、実施例1と同様の操作を行い、実施例4の化粧シートを得た。実施例4で使用した第2印刷インキにおけるP/V比((アゾメチンアゾ系黒色顔料の質量+複合酸化物系黒色顔料の質量)/バインダー樹脂の質量)は、1.18である。実施例4の化粧シートの第1印刷層及び第2印刷層の特徴を表5に示す。
実施例4の化粧シートについて実施例1の化粧シートと同様の評価を行った。耐候性試験前の化粧シートに関する評価結果を表19に、耐候性試験後の化粧シートに関する評価結果を表20に示す。
〔実施例5〕
第1印刷層の硬化後の厚さを4μmに変更した点、第2印刷層の硬化後の厚さを2μmに変更した点、並びに、第2印刷インキとして、アゾメチンアゾ系黒色顔料を含まず、複合酸化物系黒色顔料と2液硬化型アクリル−ウレタン樹脂とを、複合酸化物系黒色顔料:アクリル−ウレタン樹脂=0.494:1の質量比で含有する印刷インキを使用した点を除き、実施例1と同様の操作を行い、実施例5の化粧シートを得た。実施例5で使用した第2印刷インキにおけるP/V比(複合酸化物系黒色顔料の質量/バインダー樹脂の質量)は、0.494である。実施例5の化粧シートの第1印刷層及び第2印刷層の特徴を表6に示す。
実施例5の化粧シートについて実施例1の化粧シートと同様の評価を行った。耐候性試験前の化粧シートに関する評価結果を表19に、耐候性試験後の化粧シートに関する評価結果を表20に示す。
〔実施例6〕
第1印刷層及び第2印刷層の形成順序を逆にした点を除き、実施例5と同様の操作を行い、実施例6の化粧シートを得た。実施例6の化粧シートの第1印刷層及び第2印刷層の特徴を表7に示す。
実施例6の化粧シートについて実施例1の化粧シートと同様の評価を行った。耐候性試験前の化粧シートに関する評価結果を表19に、耐候性試験後の化粧シートに関する評価結果を表20に示す。
〔実施例7〕
第1印刷層の硬化後の厚さを4μmに変更した点、第2印刷層の硬化後の厚さを4μmに変更した点、並びに、第2印刷インキとして、アゾメチンアゾ系黒色顔料を含まず、複合酸化物系黒色顔料と2液硬化型アクリル−ウレタン樹脂とを、複合酸化物系黒色顔料:アクリル−ウレタン樹脂=0.125:1の質量比で含有する印刷インキを使用した点を除き、実施例1と同様の操作を行い、実施例7の化粧シートを得た。実施例7で使用した第2印刷インキにおけるP/V比(複合酸化物系黒色顔料の質量/バインダー樹脂の質量)は、0.125である。実施例7の化粧シートの第1印刷層及び第2印刷層の特徴を表8に示す。
実施例7の化粧シートについて実施例1の化粧シートと同様の評価を行った。耐候性試験前の化粧シートに関する評価結果を表19に、耐候性試験後の化粧シートに関する評価結果を表20に示す。
〔実施例8〕
第1印刷層の硬化後の厚さを4μmに変更した点、第2印刷層の硬化後の厚さを1μmに変更した点、並びに、第2印刷インキとして、アゾメチンアゾ系黒色顔料を含まず、複合酸化物系黒色顔料と2液硬化型アクリル−ウレタン樹脂とを、複合酸化物系黒色顔料:アクリル−ウレタン樹脂=0.736:1の質量比で含有する印刷インキを使用した点を除き、実施例1と同様の操作を行い、実施例8の化粧シートを得た。実施例8で使用した第2印刷インキにおけるP/V比(複合酸化物系黒色顔料の質量/バインダー樹脂の質量)は、0.736である。実施例8の化粧シートの第1印刷層及び第2印刷層の特徴を表9に示す。
実施例8の化粧シートについて実施例1の化粧シートと同様の評価を行った。耐候性試験前の化粧シートに関する評価結果を表19に、耐候性試験後の化粧シートに関する評価結果を表20に示す。
〔実施例9〕
アゾメチンアゾ系黒色顔料の代わりに、ペリレン系黒色顔料(製造元:BASF社製Paliogen Black FK4280)を使用した点を除き、実施例8と同様の操作を行い、実施例9の化粧シートを得た。実施例9の化粧シートの第1印刷層及び第2印刷層の特徴を表10に示す。
実施例9の化粧シートについて実施例1の化粧シートと同様の評価を行った。耐候性試験前の化粧シートに関する評価結果を表19に、耐候性試験後の化粧シートに関する評価結果を表20に示す。
〔実施例10〕
複合酸化物系黒色顔料の代わりに、Ni−Fe系黒色顔料(シェファード社製ARCTIC)を使用した点を除き、実施例8と同様の操作を行い、実施例10の化粧シートを得た。実施例10の化粧シートの第1印刷層及び第2印刷層の特徴を表11に示す。
実施例10の化粧シートについて実施例1の化粧シートと同様の評価を行った。耐候性試験前の化粧シートに関する評価結果を表19に、耐候性試験後の化粧シートに関する評価結果を表20に示す。
〔実施例11〕
複合酸化物系黒色顔料の代わりに、Bi−Mn系黒色顔料(アサヒ化成工業社製IRR Pigment)を使用した点を除き、実施例8と同様の操作を行い、実施例11の化粧シートを得た。実施例11の化粧シートの第1印刷層及び第2印刷層の特徴を表12に示す。
実施例11の化粧シートについて実施例1の化粧シートと同様の評価を行った。耐候性試験前の化粧シートに関する評価結果を表19に、耐候性試験後の化粧シートに関する評価結果を表20に示す。
〔比較例1〕
第2印刷インキとして、第1印刷インキを使用した点を除き、実施例1と同様の操作を行い、比較例1の化粧シートを得た。比較例1の化粧シートの第1印刷層及び第2印刷層の特徴を表13に示す。
比較例1の化粧シートについて実施例1の化粧シートと同様の評価を行った。耐候性試験前の化粧シートに関する評価結果を表19に、耐候性試験後の化粧シートに関する評価結果を表20に示す。
〔比較例2〕
第1印刷インキ及び第2印刷インキとして、アゾメチンアゾ系黒色顔料を含まず、複合酸化物系黒色顔料と2液硬化型アクリル−ウレタン樹脂とを、複合酸化物系黒色顔料:アクリル−ウレタン樹脂=2.28:1の質量比で含有する印刷インキを使用した点を除き、実施例1と同様の操作を行い、比較例2の化粧シートを得た。比較例2で使用した第1印刷インキ及び第2印刷インキにおけるP/V比(複合酸化物系黒色顔料の質量/バインダー樹脂の質量)は、2.28である。比較例2の化粧シートの第1印刷層及び第2印刷層の特徴を表14に示す。
比較例2の化粧シートについて実施例1の化粧シートと同様の評価を行った。耐候性試験前の化粧シートに関する評価結果を表19に、耐候性試験後の化粧シートに関する評価結果を表20に示す。
〔比較例3〕
第2印刷インキとして、アゾメチンアゾ系黒色顔料を含まず、複合酸化物系黒色顔料と2液硬化型アクリル−ウレタン樹脂とを、複合酸化物系黒色顔料:アクリル−ウレタン樹脂=2.28:1の質量比で含有する印刷インキを使用した点を除き、実施例1と同様の操作を行い、比較例3の化粧シートを得た。比較例3で使用した第2印刷インキにおけるP/V比(複合酸化物系黒色顔料の質量/バインダー樹脂の質量)は、2.28である。比較例3の化粧シートの第1印刷層及び第2印刷層の特徴を表15に示す。
比較例3の化粧シートについて実施例1の化粧シートと同様の評価を行った。耐候性試験前の化粧シートに関する評価結果を表19に、耐候性試験後の化粧シートに関する評価結果を表20に示す。
〔比較例4〕
第2印刷インキとして、アゾメチンアゾ系黒色顔料と、複合酸化物系黒色顔料と、2液硬化型アクリル−ウレタン樹脂とを、アゾメチンアゾ系黒色顔料:複合酸化物系黒色顔料:アクリル-ウレタン樹脂=1:3.56:3.28の質量比で含有する印刷インキを使用した点を除き、実施例1と同様の操作を行い、比較例4の化粧シートを得た。比較例4で使用した第2印刷インキにおけるP/V比((アゾメチンアゾ系黒色顔料の質量+複合酸化物系黒色顔料の質量)/バインダー樹脂の質量)は、1.4である。比較例4の化粧シートの第1印刷層及び第2印刷層の特徴を表16に示す。
比較例4の化粧シートについて実施例1の化粧シートと同様の評価を行った。耐候性試験前の化粧シートに関する評価結果を表19に、耐候性試験後の化粧シートに関する評価結果を表20に示す。
〔比較例5〕
第2印刷インキとして、アゾメチンアゾ系黒色顔料と、複合酸化物系黒色顔料と、2液硬化型アクリル−ウレタン樹脂とを、アゾメチンアゾ系黒色顔料:複合酸化物系黒色顔料:アクリル-ウレタン樹脂=1:10.7:6.24の質量比で含有する印刷インキを使用した点を除き、実施例1と同様の操作を行い、比較例5の化粧シートを得た。比較例5で使用した第2印刷インキにおけるP/V比((アゾメチンアゾ系黒色顔料の質量+複合酸化物系黒色顔料の質量)/バインダー樹脂の質量)は、1.87である。比較例5の化粧シートの第1印刷層及び第2印刷層の特徴を表17に示す。
比較例5の化粧シートについて実施例1の化粧シートと同様の評価を行った。耐候性試験前の化粧シートに関する評価結果を表19に、耐候性試験後の化粧シートに関する評価結果を表20に示す。
〔比較例6〕
第1印刷インキ及び第2印刷インキとして、アゾメチンアゾ系黒色顔料と、複合酸化物系黒色顔料と、2液硬化型アクリル−ウレタン樹脂とを、アゾメチンアゾ系黒色顔料:複合酸化物系黒色顔料:アクリル-ウレタン樹脂=1:10.7:6.24の質量比で含有する印刷インキを使用した点を除き、実施例1と同様の操作を行い、比較例5の化粧シートを得た。比較例6で使用した第1印刷インキ及び第2印刷インキにおけるP/V比((アゾメチンアゾ系黒色顔料の質量+複合酸化物系黒色顔料の質量)/バインダー樹脂の質量)は、1.87である。比較例6の化粧シートの第1印刷層及び第2印刷層の特徴を表18に示す。
比較例6の化粧シートについて実施例1の化粧シートと同様の評価を行った。耐候性試験前の化粧シートに関する評価結果を表19に、耐候性試験後の化粧シートに関する評価結果を表20に示す。
表19及び表20に示すように、目視による黒色の評価がA(化粧シートが呈する黒色が、純黒(真っ黒)又はそれに近い黒色として認識される)である化粧シートは、L*a*b*表色系のL*値、a*値及びb*値が、L*値:30以下、a*値:0以上2.5以下、かつ、b*値:−2.5以上0以下である一方、目視による黒色の評価がB(化粧シートが呈する黒色が、純黒(真っ黒)又はそれに近い黒色として認識されない)である化粧シートは、L*値:30以下、a*値:0以上2.5以下、及びb*値:−2.5以上0以下のうちの1以上を満たさない。したがって、L*a*b*表色系のL*値、a*値及びb*値を、L*値:30以下、a*値:0以上2.5以下、かつ、b*値:−2.5以上0以下に調節することにより、化粧シートが呈する黒色が、純黒(真っ黒)又はそれに近い黒色として認識されることが判明した。
表19に示すように、実施例1〜11及び比較例1の化粧シートは、波長域780〜2500nmの平均分光反射率が35%以上であり、十分な遮熱性能を有すると考えられる。一方、比較例2〜6の化粧シートは、波長域780〜2500nmの平均分光反射率が35%未満であり、十分な遮熱性能を有しないと考えられる。
表20に示すように、実施例1〜11及び比較例2〜6の化粧シートは、耐候性試験後の目視による黒色の評価がA(化粧シートが呈する黒色が、純黒(真っ黒)又はそれに近い黒色として認識される)であるとともに、耐候性試験後のL*a*b*表色系のL*値、a*値及びb*値が、L*値:30以下、a*値:0以上2.5以下、かつ、b*値:−2.5以上0以下である。一方、比較例1の化粧シートは、耐候性試験後の目視による黒色の評価がB(化粧シートが呈する黒色が、純黒(真っ黒)又はそれに近い黒色として認識されない)であるとともに、L*値:30以下、a*値:0以上2.5以下、及びb*値:−2.5以上0以下のうちの1以上を満たさない。
表19及び表20に示す結果から、実施例1〜11の化粧シートは、屋外で使用された場合にも黒色を持続的に呈するとともに、遮熱性能を発揮することが判明した。