JP6772968B2 - 二次電池システム - Google Patents
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Description
本開示は、二次電池システムに関し、より特定的には、水酸化ニッケルを含む正極を有する二次電池を備えた二次電池システムにおけるメモリ量を推定するための技術に関する。
水酸化ニッケルを含む正極を有する二次電池(たとえばニッケル水素電池であり、以下、二次電池とも略す)においてメモリ効果が生じることが知られている。メモリ効果とは、二次電池に蓄えられた電力が完全に消費されていない状態での充電(いわゆる継ぎ足し充電)が繰り返された場合に、二次電池の放電電圧が正常時(メモリ効果が生じていないとき)と比べて低くなる現象である。
二次電池のメモリ効果による電圧変化量(以下、「メモリ量」とも称する)を推定するための技術が提案されている。メモリ量を高精度に推定することによって、たとえば二次電池の充電状態(SOC:State Of Charge)の推定精度を向上させることが可能になるためである。
たとえば特開2007−333447号公報(特許文献1)は、ニッケル水素電池の開放電圧に基づいてニッケル水素電池の起電力を算出し、算出された起電力とSOCとの関係を用いて起電力からSOCを推定する充電状態推定装置を開示する。特許文献1に開示された充電状態推定装置では、SOCの推定に先立ちメモリ量に応じて開放電圧を補正することによってSOCの推定精度を向上させる。
詳細については後述するが、二次電池のメモリ量を推定する手法として、所定期間中に生じたメモリ量を逐次算出し、算出されたメモリ量を積算することによって、その積算値である総量としてのメモリ量(現在のメモリ量)を推定する手法が考えられる。
このようにメモリ量を逐次算出する際、本発明者らは、各所定期間における二次電池の開放電圧および温度の条件が重要である点に着目した。本発明者らの実験によれば、所定期間における開放電圧および温度が異なる場合には、その所定期間中に生じるメモリ量も異なるとの実験結果が得られたためである。
この知見に基づき、所定期間における開放電圧および温度と、その所定期間中に生じるメモリ量との対応関係を予め実験的に求め、たとえばマップまたは関係式を準備しておくことによって、所定期間中に生じるメモリ量の算出精度を向上させることができる。その結果、遂次算出されたメモリ量を積算することによって得られるメモリ量の積算値についても高精度に推定することが可能になる。
ここで、本発明者らは、所定期間中に生じるメモリ量を算出する際には、二次電池の開放電圧および温度に加えて、他のパラメータもさらに考慮することによって、所定期間中に生じるメモリ量の算出精度を一層向上させることが可能であることを実験的に見出した。
本開示は上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、水酸化ニッケルを含む正極を有する二次電池を備えた二次電池システムにおいて、メモリ量の推定精度を向上させることである。
本開示のある局面に従う二次電池システムは、水酸化ニッケルを含む正極を有する二次電池と、二次電池のメモリ量を二次電池の「使用条件」の区分が変化しない時間内で逐次算出するとともに、算出されたメモリ量を積算することによって二次電池の現在のメモリ量を推定する推定装置とを備える。使用条件は、二次電池の開放電圧および温度と、正極における塩濃度とを含んで定義される。
本発明者らは、さらなる実験の結果、二次電池の開放電圧および温度と、正極における塩濃度とを含んで定義される使用条件毎にメモリ量との対応関係を求めておくことによって、その使用条件での期間中に生じるメモリ量の算出精度を向上させることができるとの知見を得た。これにより、所定期間中に生じるメモリ量の算出精度をさらに向上させ、ひいてはメモリ量の積算値の推定精度を向上させることが可能になる。
本開示によれば、水酸化ニッケルを含む正極を有する二次電池を備えた二次電池システムにおいて、メモリ量の推定精度を向上させることができる。
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
以下では、本実施の形態に係る二次電池システムが電動車両に搭載される構成を例に説明する。しかし、二次電池システムの用途は車両用に限定されるものではなく、たとえば定置用であってもよい。
[実施の形態]
<二次電池システムの構成>
図1は、本実施の形態に係る二次電池システムが搭載された電動車両の全体構成を概略的に示すブロック図である。車両1は、電動車両(ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車、電気自動車または燃料自動車)であって、二次電池システム2と、モータジェネレータ(MG:Motor Generator)10と、動力伝達ギア20と、駆動輪30と、電力制御ユニット(PCU:Power Control Unit)40と、システムメインリレー(SMR:System Main Relay)50とを備える。二次電池システム2は、組電池100と、電圧センサ210と、電流センサ220と、温度センサ230と、電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)300とを備える。
<二次電池システムの構成>
図1は、本実施の形態に係る二次電池システムが搭載された電動車両の全体構成を概略的に示すブロック図である。車両1は、電動車両(ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車、電気自動車または燃料自動車)であって、二次電池システム2と、モータジェネレータ(MG:Motor Generator)10と、動力伝達ギア20と、駆動輪30と、電力制御ユニット(PCU:Power Control Unit)40と、システムメインリレー(SMR:System Main Relay)50とを備える。二次電池システム2は、組電池100と、電圧センサ210と、電流センサ220と、温度センサ230と、電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)300とを備える。
モータジェネレータ10は、たとえば三相交流回転電機である。モータジェネレータ10の出力トルクは、減速機および動力分割機構を含んで構成された動力伝達ギア20を介して駆動輪30に伝達される。モータジェネレータ10は、車両1の回生制動動作時には、駆動輪30の回転力によって発電することも可能である。モータジェネレータ10に加えてエンジン(図示せず)が搭載されたハイブリッド自動車では、エンジンおよびモータジェネレータ10を協調的に動作させることによって必要な車両駆動力を発生させる。なお、図1ではモータジェネレータが1つだけ設けられる構成が示されるが、モータジェネレータの数はこれに限定されず、モータジェネレータを複数(たとえば2つ)設ける構成としてもよい。
PCU40は、いずれも図示しないが、インバータとコンバータとを含む。組電池100の放電時には、コンバータは、組電池100から供給された電圧を昇圧してインバータに供給する。インバータは、コンバータから供給された直流電力を交流電力に変換してモータジェネレータ10を駆動する。一方、組電池100の充電時には、インバータは、モータジェネレータ10によって発電された交流電力を直流電力に変換してコンバータに供給する。コンバータは、インバータから供給された電圧を降圧して組電池100に供給する。
SMR50は、組電池100とPCU40とを結ぶ電流経路に電気的に接続されている。SMR50がECU300からの制御信号に応じて閉成されている場合、組電池100とPCU40との間で電力の授受が行なわれ得る。
組電池100は、再充電が可能に構成された直流電源であり、本実施の形態ではニッケル水素電池を含んで構成される。組電池100に含まれる各セル110の詳細な構成については図2にて説明する。
電圧センサ210は、組電池100に含まれる各セル110のセルの電圧Vbを検出する。電流センサ220は、組電池100に入出力される電流Ibを検出する。温度センサ230は、組電池100の温度Tbを検出する。なお、電圧センサ210は、隣接する複数(たとえば数個)のセル110を監視単位として電圧Vbを検出してもよい。また、温度センサ230は、セル110毎に設けられてもよいし、組電池100に対して複数個(セル数よりも少ない数)設けられ、隣接する複数(たとえば数個)のセル110を監視単位として温度Tbを検出してもよい。各センサは、その検出結果をECU300に出力する。
ECU300は、CPU(Central Processing Unit)301と、メモリ(ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory))302と、タイマ303と、入出力バッファ(図示せず)と等を含んで構成される。ECU300は、各センサから受ける信号、ならびにメモリ302に記憶されたマップおよびプログラムに基づいて、車両1および二次電池システム2が所望の状態となるように各機器を制御する。ECU300により実行される主要な処理として、組電池100に生じたメモリ効果による電圧変化量の推定処理が挙げられるが、この処理については後述する。
図2は、セル110の構成を示す図である。組電池100に含まれる各セル110の構成は共通であるため、図2では1つのセル110のみを代表的に示す。セル110は、たとえば角形密閉式のセルであり、ケース120と、ケース120に設けられた安全弁130と、ケース120内に収容された電極体140および電解液(図示せず)とを含む。なお、図2ではケース120の一部を透視して電極体140を示している。
ケース120は、いずれも金属からなるケース本体121および蓋体122を含み、蓋体122がケース本体121の開口部上で全周溶接されることにより密閉されている。なお、ケース120の材料は、樹脂であってもよい。安全弁130は、ケース120内部の圧力が所定値を超えると、ケース120内部のガス(水素ガス等)の一部を外部に排出する。
電極体140は、正極と、負極と、セパレータとを含む。正極は袋状のセパレータ内に挿入されており、セパレータ内に挿入された正極と、負極とが交互に積層されている。正極および負極は、図示しない正極端子および負極端子にそれぞれ電気的に接続されている。
電極体140および電解液の材料としては従来公知の各種材料を用いることができる。本実施の形態においては、一例として、正極には、水酸化ニッケル(Ni(OH)2またはNiOOH)を含む正極活物質層と、発泡ニッケルなどの活物質支持体とを含む電極板が用いられる。負極には、水素吸蔵合金を含む電極板が用いられる。セパレータには、親水化処理された合成繊維からなる不織布が用いられる。電解液には、水酸化カリウム(KOH)または水酸化ナトリウム(NaOH)を含むアルカリ水溶液が用いられる。
<組電池のメモリ効果>
以上のように構成された二次電池システム2において、組電池100のメモリ効果による電圧変化量(電圧降下量または電圧上昇量)である「メモリ量」を高精度に推定することが求められる。本実施の形態においては、所定期間中に生じたメモリ量(以下、「微小メモリ量」とも称する)を逐次積算することによって、その積算値である総量としてのメモリ量(以下、「積算メモリ量」とも称する)を推定する。微小メモリ量を逐次算出する際に、本発明者らは、組電池100の電圧Vb(より詳細には、開放電圧であるOCV(Open Circuit Voltage))と組電池100の温度Tbとを含んで定義される条件が重要である点に着目した。
以上のように構成された二次電池システム2において、組電池100のメモリ効果による電圧変化量(電圧降下量または電圧上昇量)である「メモリ量」を高精度に推定することが求められる。本実施の形態においては、所定期間中に生じたメモリ量(以下、「微小メモリ量」とも称する)を逐次積算することによって、その積算値である総量としてのメモリ量(以下、「積算メモリ量」とも称する)を推定する。微小メモリ量を逐次算出する際に、本発明者らは、組電池100の電圧Vb(より詳細には、開放電圧であるOCV(Open Circuit Voltage))と組電池100の温度Tbとを含んで定義される条件が重要である点に着目した。
図3は、様々な条件下での経過時間とメモリ量との対応関係を示すタイムチャートである。図3において、横軸は組電池100の使用開始時からの経過時間を表し、縦軸はメモリ量を表す。なお、組電池100の使用開始時(経過時間の初期値)とは、組電池100の製造時であってもよいし、組電池100のリフレッシュ充放電時(組電池100に生じたメモリ効果を解消するための充電時または放電時)であってもよい。
様々な条件(OCV,Tb)下での実験を実施することにより、図3に示すような曲線を条件(OCV,Tb)毎に取得することができる。なお、図3では、理解を容易にするため、3種類の条件P〜Rにそれぞれ対応する曲線CP〜CRが取得される例について説明するが、実際にはより多くの条件について同様の曲線が取得される。
<積算メモリ量推定処理>
曲線CP〜CRを参照することによって条件P〜R下で生じた「微小メモリ量」をそれぞれ算出し、算出された微小メモリ量を積算する処理を繰り返し実行することによって「積算メモリ量」を推定することができる。この処理を「積算メモリ量推定処理」とも称し、以下に詳細に説明する。
曲線CP〜CRを参照することによって条件P〜R下で生じた「微小メモリ量」をそれぞれ算出し、算出された微小メモリ量を積算する処理を繰り返し実行することによって「積算メモリ量」を推定することができる。この処理を「積算メモリ量推定処理」とも称し、以下に詳細に説明する。
図4は、積算メモリ量推定処理を説明するためのタイムチャートである。図4(A)において、横軸は組電池100の使用開始時からの経過時間を表し、縦軸は組電池100が置かれた条件((OCV,Tb)の組合せ)を表す。図4(A)では、所定期間Δt毎に条件が判定され、条件がP,Q,Rの順に変化する場合について説明する。条件P,Q,R下での期間をLP,LQ,LRでそれぞれ示す。
図4(B)において、横軸は組電池100の使用開始時からの経過時間を表し、縦軸はメモリ量を表す。まず、条件P下では、曲線CPを参照して所定期間Δt毎に微小メモリ量Mを逐次積算する。その結果、条件P下で期間LPが経過する間に生じたメモリ量はMPになる。微小メモリ量Mの積算結果を「積算メモリ量ΣM」と記載すると、期間LPが経過したときの積算メモリ量ΣMはMPである。
次に、条件がPからQへと変化すると、積算メモリ量ΣM=MPに対応する曲線CQ(図4に示した曲線CQを時間軸方向にLPだけ平行移動した曲線)上の点から曲線CQを参照して、所定期間Δt毎に微小メモリ量Mを逐次積算する。条件Q下で期間LQが経過する間に生じたメモリ量がMQである場合、期間LQが経過したときの積算メモリ量ΣMは、MPとMQとの和(MP+MQ)である。
さらに、条件がQからRへと変化すると、積算メモリ量ΣM=(MP+MQ)に対応する曲線CR(図4に示した曲線CRを時間軸方向に(LP+LQ)だけ平行移動した曲線)上の点から曲線CRを参照して、所定期間Δt毎に微小メモリ量Mを逐次積算する。条件R下で期間LRが経過する間に生じたメモリ量がMRである場合、全期間(LP+LQ+LRの期間)に生じた積算メモリ量ΣMは、MPとMQとMRとの和(MP+MQ+MR)である。
上記の推定手法は、漸化式を用いて説明することができる。すなわち、下記式(1)に示すように、N回目の積算処理での積算メモリ量ΣM(N)は、(N−1)回目の積算処理までの積算メモリ量ΣM(N−1)に、(N−1)回目の積算処理時からN回目の積算処理時までの間(所定期間Δtの間)の条件下での微小メモリ量M(N)を加算することによって算出することができる。なお、Nは自然数である。
ΣM(N)=ΣM(N−1)+M(N) ・・・(1)
このように、本実施の形態では、所定期間Δt毎に条件P〜Rに応じた微小メモリ量Mを算出し、算出された微小メモリ量Mを積算する処理を繰り返し実行することによって、全期間にわたって生じた積算メモリ量ΣMを算出することができる。
このように、本実施の形態では、所定期間Δt毎に条件P〜Rに応じた微小メモリ量Mを算出し、算出された微小メモリ量Mを積算する処理を繰り返し実行することによって、全期間にわたって生じた積算メモリ量ΣMを算出することができる。
<塩濃度分布>
上述の手法によれば、積算メモリ量ΣMを高精度に推定可能であるものの、組電池100の充放電の態様(たとえば連続的な充電、または充放電の繰り返しなど)によっては、積算メモリ量ΣMの推定精度に改善の余地が存在する場合がある。本発明者らは、微小メモリ量Mを算出する際には、組電池100のOCVおよび温度Tbに加えて、正極におけるKOHまたはNaOHの濃度(塩濃度)もさらに考慮することによって、微小メモリ量Mの算出精度(ひいては積算メモリ量ΣMの推定精度)を一層向上させることが可能であることを実験的に見出した。
上述の手法によれば、積算メモリ量ΣMを高精度に推定可能であるものの、組電池100の充放電の態様(たとえば連続的な充電、または充放電の繰り返しなど)によっては、積算メモリ量ΣMの推定精度に改善の余地が存在する場合がある。本発明者らは、微小メモリ量Mを算出する際には、組電池100のOCVおよび温度Tbに加えて、正極におけるKOHまたはNaOHの濃度(塩濃度)もさらに考慮することによって、微小メモリ量Mの算出精度(ひいては積算メモリ量ΣMの推定精度)を一層向上させることが可能であることを実験的に見出した。
図5は、組電池100の充放電が継続された場合における正極と負極との間の塩濃度分布を説明するための概念図である。図5において、横軸は、電極体140内における位置(正極と負極とを結ぶ方向に沿った位置)を示す。縦軸は、塩濃度ceを示す。図5(A)および図5(B)に示すように、組電池100の充電または放電を継続的に行なう場合には、時間が経過するに従って(図5(A)および図5(B)では時刻t0,t1,t2,t3の順に)電極体140内の電解液中における塩濃度分布の偏りが増大し得る。そして、所定期間経過後には塩濃度分布は定常状態となり得る。
図6は、本発明者らによる実験結果の一例を示す図である。この実験結果とは、より詳細には、温度50℃の環境下(組電池100の温度Tbを50℃に維持した状態)で組電池100(セル110)から取り出した正極を異なる濃度の電解液中に4日間放置した放置耐久試験の結果である。図6において、横軸は、正極における塩濃度ceを示す。縦軸は、メモリ量(より詳細には放電時の電圧降下量)を示す。図6より、塩濃度ceが高くなるに従ってメモリ量が増大することが分かる。このような実験結果に基づき、本実施の形態では、以下に説明するようなマップMPが準備される。
図7は、本実施の形態におけるマップMPの概念図である。マップMPは、図7に示すように、組電池100のOCVおよび温度Tbと、正極の塩濃度ceとの組合せにより定義される使用条件(OCV,Tb,ce)毎に、経過時間と微小メモリ量Mとの対応関係が規定された3次元マップである。図4にて説明したように、ECU300は、N回目の積算処理時には、マップMPを参照することによってN回目の積算処理時の使用条件に応じた曲線を選択し、(N−1)回目の積算処理時からN回目の積算処理時までの間(所定期間Δtの間)に新たに生じた微小メモリ量M(N)を算出することができる。
マップMP内の使用条件数が多いことは、(OCV,Tb,ce)が異なる実験(たとえば上述の放置耐久試験)をより多く実施して得られた結果をマップMPに反映させることができることを意味するので、微小メモリ量Mの推定精度が向上し得る。その一方で、マップMPはECU300のメモリ302に記憶されるところ、使用条件数が多くなるほどマップサイズ(マップMPのデータ量)が大きくなるので、メモリ302に必要な容量が大きくなるとともにCPU301の演算負荷が大きくなり得る。したがって、マップMP内の使用条件数は、微小メモリ量Mの推定精度とECU300の処理能力とのバランスを考慮した上で決定することが望ましい。なお、使用条件を規定するための手法はマップに限定されず、たとえば関数(関係式)であってもよい。
<機能ブロック図>
図8は、本実施の形態におけるECU300の機能ブロック図である。ECU300は、OCV算出部310と、塩濃度算出部320と、記憶部330と、微小メモリ量算出部340と、積算メモリ量算出部350と、制御部360とを含む。図8では、N回目の積算処理における各機能ブロックの機能について説明する。
図8は、本実施の形態におけるECU300の機能ブロック図である。ECU300は、OCV算出部310と、塩濃度算出部320と、記憶部330と、微小メモリ量算出部340と、積算メモリ量算出部350と、制御部360とを含む。図8では、N回目の積算処理における各機能ブロックの機能について説明する。
OCV算出部310は、電圧センサ210、電流センサ220および温度センサ230から組電池100の電圧Vb(N)、電流Ib(N)および温度Tb(N)をそれぞれ受ける。OCV算出部310は、電圧Vb(N)から過電圧(電流Ib(N)と組電池100の内部抵抗Rとの積)を充電時には減算し、放電時には加算して組電池100のOCV(N)を算出し、OCV(N)および温度Tb(N)を微小メモリ量算出部340に出力する。
塩濃度算出部320は、電流センサ220から組電池100の電流Ib(N)を受け、電流Ib(N)に基づいて正極の塩濃度ceを算出する。より詳細には、正極(正極活物質)と負極(負極活物質)との間の塩濃度差Δceは、電解液の実効拡散係数De eff、電解液の体積分率εeおよび水酸化物イオン(OH−)の輸率t− oに依存するため、たとえば下記式(2)〜式(4)に従って塩濃度差Δceを算出することができる(詳細については、たとえば特開2013−72659号公報参照)。なお、実効拡散係数De effは、温度(Tb)の関数である。
上記式(2)において、(t)が付されたパラメータは前回の演算周期((N−1)回目の積算処理)のものであることを示し、(t+Δt)が付されたパラメータは今回の演算周期(N回目の積算処理)のものであることを示す。初期状態における組電池100内の塩濃度は一定であり、塩濃度の初期値は、組電池100の設計時に定められた値(設計値)から決定することができる。したがって、塩濃度差Δceを逐次算出することによって、現在の正極の塩濃度ceを算出することができる。
記憶部330は、(N−1)回目の積算処理時に算出された積算メモリ量ΣM(N−1)を記憶している。記憶部330は、積算メモリ量ΣM(N−1)を微小メモリ量算出部340に出力するとともに、積算メモリ量ΣM(N−1)を積算メモリ量算出部350に出力する。
微小メモリ量算出部340は、図7に示したマップMPを記憶している。微小メモリ量算出部340は、(N−1)回目の積算処理時からN回目の積算処理時までの間(所定期間Δtの間)の使用条件(N回目の積算処理時の使用条件)として、OCV算出部310からOCV(N)および温度Tb(N)を受けるとともに塩濃度算出部320から正極の塩濃度ce(N)を受けると、マップMPを参照する。
時間経過に伴うメモリ量の増加は、図3および図4に示したような曲線で表される。N回目の積算処理において微小メモリ量M(N)を算出する際には、曲線のうちの参照すべき箇所を決定するために、(N−1)回目の積算処理時までの積算メモリ量ΣM(N−1)の情報が必要になる。微小メモリ量算出部340は、N回目の積算処理時のOCV(N)、温度Tbおよび塩濃度ceからN回目の積算処理時の使用条件に対応する曲線をマップMPから選択し、さらに、(N−1)回目の積算処理時までの積算メモリ量ΣM(N−1)を用いて、選択した曲線のうちの参照すべき箇所を決定する。そして、微小メモリ量算出部340は、決定した箇所を用いて微小メモリ量M(N)を算出し、算出された微小メモリ量M(N)を積算メモリ量算出部350に出力する。
積算メモリ量算出部350は、微小メモリ量算出部340からN回目の積算処理時の微小メモリ量M(N)を受けるとともに、記憶部330から(N−1)回目の積算処理時までの積算メモリ量ΣM(N−1)を受ける。積算メモリ量算出部350は、積算メモリ量ΣM(N−1)に微小メモリ量M(N)を加算することによって積算メモリ量ΣM(N)を算出し(上記式(1)参照)、算出された積算メモリ量ΣM(N)を制御部360に出力する。また、積算メモリ量算出部350は、積算メモリ量ΣM(N)を記憶部330に出力して記憶部330に記憶させる。
制御部360は、積算メモリ量算出部350からの積算メモリ量ΣM(N)に基づいて組電池100への充放電指令を出力する。たとえば、制御部360は、積算メモリ量ΣM(N)の絶対値が基準値以上になることを含む所定条件が成立した場合に、組電池100に生じたメモリ効果を解消するためにリフレッシュ充電指令またはリフレッシュ放電指令を出力する。なお、ECU300は本開示に係る「推定装置」に相当するが、本開示に係る「推定装置」に制御部360は必須の構成要素ではない。
<積算メモリ量推定処理フロー>
図9は、本実施の形態における積算メモリ量推定処理を示すフローチャートである。このフローチャートの処理は、所定周期毎または所定条件が成立する度にメインルーチン(図示せず)から呼び出されて実行される。これらのフローチャートに含まれる各ステップ(以下「S」と略す)は、基本的にはECU300によるソフトウェア処理によって実現されるが、その一部または全部がECU300内に作製されたハードウェア(電気回路)によって実現されてもよい。
図9は、本実施の形態における積算メモリ量推定処理を示すフローチャートである。このフローチャートの処理は、所定周期毎または所定条件が成立する度にメインルーチン(図示せず)から呼び出されて実行される。これらのフローチャートに含まれる各ステップ(以下「S」と略す)は、基本的にはECU300によるソフトウェア処理によって実現されるが、その一部または全部がECU300内に作製されたハードウェア(電気回路)によって実現されてもよい。
図9に示すフローチャートの処理が繰り返し実行されることにより、積算メモリ量ΣMが順次更新される。このフローチャートはN回目の積算処理を示し、(N−1)回目(前回)の積算処理時までの積算メモリ量ΣM(N−1)がメモリ302に記憶されている。
S10において、ECU300は、(N−1)回目の積算処理時までの積算メモリ量ΣM(N−1)をメモリ302から読み出す。
S20において、ECU300は、電圧センサ210および電流センサ220を用いて組電池100の電圧Vb(N)および電流Ib(N)を取得し、電圧Vb(N)から充放電電流による過電圧(Ib(N)×R)を考慮(減算または加算)してOCV(N)を算出する。
S30において、ECU300は、温度センサ230を用いて組電池100の温度Tb(N)を取得する。
S40において、ECU300は、電流センサ220から電流Ib(N)を取得し、上記式(2)〜式(4)にて説明した手法により、正極の塩濃度ce(N)を算出する。S20〜S40の処理により、組電池100の使用条件(OCV(N)と温度Tb(N)と塩濃度ce(N)との組合せ)が決定される。
S50において、ECU300は、タイマ303を用いて、所定期間Δtが経過するまで待機する。なお、微小メモリ量Mを適切に算出するためには、所定期間Δtだけ待機している間に使用条件の区分が変化しないことが求められる。よって、所定期間Δtは、待機中に使用条件の区分が変化しない時間に定めることが好ましい。
S60において、ECU300は、メモリ302に記憶されたマップMPから使用条件(OCV(N),Tb(N),ce(N))に対応する曲線を参照して、所定期間Δtに生じた微小メモリ量M(N)を算出する。この処理については図4(B)にて説明したため、詳細な説明は繰り返さない。
S70において、ECU300は、S10にて読み出した(N−1)回目の積算処理までの積算メモリ量ΣM(N−1)にS60にて算出された微小メモリ量M(N)を加算することによって、N回目の積算処理までの積算メモリ量ΣM(N)を算出する(上記式(1)参照)。なお、車両1の出荷時には積算メモリ量の初期値ΣM(0)が、たとえば0に設定されている。また、組電池100のリフレッシュ充放電の実施後にも積算メモリ量の初期値ΣM(0)を0に設定してもよい。
S80において、ECU300は、図9に示すフローチャートが次回呼び出された場合に備えて、S70にて算出された積算メモリ量ΣM(N)をメモリ302に記憶する。
以上のように、本実施の形態によれば、本発明者らの実験結果に基づいて決定された少なくとも3つのパラメータ、すなわち、組電池100のOCVおよび温度Tbならびに正極の塩濃度ceを含んで定義されるマップMPを用いて、所定期間Δt毎に生じた微小メモリ量Mが算出される。使用条件に上記パラメータを採用することにより、上記以外のパラメータを用いた場合(たとえばOCVおよび温度Tbのみを用いた場合)と比べて、微小メモリ量Mを高精度に算出することができる。その結果、微小メモリ量Mの積算により得られる積算メモリ量ΣMについても高精度に推定することが可能になる。
なお、本実施の形態では、「所定期間」Δt毎に微小メモリ量Mを推定する処理を例に説明したが、一定周期で微小メモリ量Mを算出することは必須ではない。所定期間Δtの長さは、たとえば組電池100の使用条件またはECU300の演算負荷の状況等に応じた可変値としてもよい。あるいは、組電池100の使用条件を監視し、使用条件が変化したことをトリガとして微小メモリ量Mを算出するようにしてもよい。これにより、微小メモリ量Mの算出回数を低減してECU300の演算負荷を低減することができる。
また、本実施の形態では、組電池100がニッケル水素電池である構成を例に説明した。しかし、組電池100は、水酸化ニッケルを含む正極を有する二次電池であればよく、たとえばニッケルカドミウム電池であってもよい。
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1 車両、2 二次電池システム、10 モータジェネレータ、20 動力伝達ギア、30 駆動輪、40 PCU、50 SMR、100 組電池、110 セル、120 ケース、121 ケース本体、122 蓋体、130 安全弁、140 電極体、210 電圧センサ、220 電流センサ、230 温度センサ、300 ECU、301 CPU、302 メモリ、303 タイマ、310 算出部、320 塩濃度算出部、330 記憶部、340 メモリ量算出部、350 積算メモリ量算出部、360 制御部。
Claims (1)
- 水酸化ニッケルを含む正極を有する二次電池と、
前記二次電池のメモリ効果による電圧変化量であるメモリ量を前記二次電池の使用条件の区分が変化しない時間内で逐次算出し、算出されたメモリ量を積算することによって前記二次電池の現在のメモリ量を推定する推定装置とを備え、
前記使用条件は、前記二次電池の開放電圧および温度と、前記正極における塩濃度とを含んで定義される、二次電池システム。
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