JP6772815B2 - サイジング剤、ガラスストランド、及びセメント複合材 - Google Patents
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Description
セメント複合材用のガラス繊維の表面被膜形成用のサイジング剤であって、
水を含む溶媒と、前記被膜となる固形成分とを含み、前記固形成分の濃度が10質量%となるように濃度調整したときに、pHが3.5〜5.5を示すことにある。
なお、サイジング剤中の固形成分の濃度が10質量%より高いときは、サイジング剤中に水を添加することにより、10質量%より低いときは、サイジング剤を加熱して水分を蒸発させて減らすことにより固形成分の濃度を調整する。
ポリ酢酸ビニルと、ポリウレタンと、アミン化合物とを含有することが好ましい。
前記ポリウレタンは、ヘキサメチレンジイソシアネートとポリテトラメチレンエーテルグリコールとの反応物であることが好ましい。
前記ポリ酢酸ビニルの重量平均分子量が100000〜300000であり、前記ポリウレタンの重量平均分子量が50000〜100000であることが好ましい。
前記アミン化合物が第4級アミンであることが好ましい。
前記ポリ酢酸ビニルの含有量が3〜30質量%であり、前記ポリウレタンの含有量が2〜20質量%であり、前記アミン化合物の含有量が0.6〜3.0質量%であることが好ましい。
上記の何れか一つのサイジング剤中の前記固形成分からなる被膜が表面に形成されたガラス繊維の集合体である。
前記ガラス繊維がZrO2を12質量%以上、及びR2O(Rは、Li、Na、及びKからなる群から選択される少なくとも一種である。)を10質量%以上含有するガラスからなることが好ましい。
前記ガラス繊維の繊維径が13〜30μmであり、ストランド番手が80〜90texであり、ケーキ番手が560〜630texであることが好ましい。
サイジング剤中の固形成分からなる被膜が表面に形成されたセメント複合材用のガラスストランドであって、
糸硬度が160〜200gfであることにある。
上記の何れか一つのガラスストランドを含むことにある。
本発明のサイジング剤は、ガラス繊維に適用されるものであり、特に、セメント複合材用のガラス繊維の表面に塗布して使用される。サイジング剤は、固形成分中の主成分として、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、及びアミン化合物を含有する。以下、サイジング剤の各成分について、詳しく説明する。
ポリ酢酸ビニルは、水溶性の熱可塑性樹脂であり、酸やアルカリに対して溶解又は軟化するという特徴を有しており、接着性、酸素バリア性、耐薬品性等に優れている。そのため、ガラス繊維のサイジング剤にポリ酢酸ビニルを配合すると、ガラス繊維の表面に耐久性の高い被膜を形成することができる。また、ポリ酢酸ビニルは、セメント系材料との親和性が高いため、セメント系材料の補強効果を高めることができる。ポリ酢酸ビニルの重量平均分子量は、好ましくは100000〜300000であり、より好ましくは、120000〜300000である。重量平均分子量が100000未満の場合、ガラス繊維の被膜としての強度が低下し、十分な耐久性が得られない虞がある。一方、重量平均分子量が300000を超える場合、ポリ酢酸ビニルがサイジング剤中に十分に溶解できないため、ガラス繊維に塗布した際に均等な被膜を形成することが困難となる虞がある。サイジング剤中のポリ酢酸ビニルの含有量は、好ましくは3〜30質量%、より好ましくは15〜30質量%である。ポリ酢酸ビニルの含有量が3質量%未満の場合、被膜強度やセメント系材料との親和性が低下し、補強効果が低下する虞がある。一方、ポリ酢酸ビニルの含有量が30質量%を超えても、被膜強度やセメント系材料との親和性は大きく向上せず、経済性に不利となる。
ポリウレタンは、イソシアネート基と水酸基とを有する化合物の重付加により得られる重合体である。ポリウレタンは、様々な材料に対して高い接着性を有し、耐久性、防水性、耐薬品性等にも優れている。ポリウレタンを得るためのイソシアネート成分としては、比較的安価で且つ生成したポリウレタンの反応性が低いという観点から、ジシクロヘキサンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネートが好ましい。ポリウレタンを得るためのポリオール成分としては、比較的安価で且つ強靭な被膜を得ることができるという観点から、ポリテトラメチレンエーテルグリコールが好ましい。例えば、脂肪族イソシアネートであるヘキサメチレンジイソシアネートと、ポリオール成分であるポリテトラメチレンエーテルグリコールとの反応物は、本発明のサイジング剤のポリウレタン成分として好ましいものである。ヘキサメチレンジイソシアネートとポリテトラメチレンエーテルグリコールとの反応物は、ガラスストランドの集束性を高めるのに効果があり、また、ガラス繊維からアルカリ成分が溶出したとしてもアルカリ成分との反応性が低いため、ガラスストランドの高い集束性を維持することができる。さらに、ヘキサメチレンジイソシアネートとポリテトラメチレンエーテルグリコールとの反応物をサイジング剤に用いると、低摩擦性の被膜が得られ、ガラスストランドの滑性をより一層向上させることができる。従って、サイジング剤を塗布したガラスストランドとモルタルとを混合すると、ガラスストランドの滑性により、GRCの流動性をより一層向上させることができる。ポリウレタンの重量平均分子量は、好ましくは50000〜100000であり、より好ましくは80000〜100000である。重量平均分子量が50000未満の場合、サイジング剤の接着性が低下するため、それに伴って、ガラス繊維の耐久性、防水性、耐薬品性が低下する虞がある。一方、重量平均分子量が100000を超える場合、ポリウレタンがサイジング剤中において十分に溶解できないため、ガラス繊維にサイジング剤を均等に塗布することが困難となる虞がある。サイジング剤中のポリウレタンの含有量は、好ましくは2〜20質量%であり、より好ましくは10〜20質量%である。ポリウレタンの含有量が2質量%未満の場合、ガラス繊維の表面に均等な被膜を形成することができず、強靱な被膜を得ることが困難となる虞がある。一方、ポリウレタンの含有量が20質量%を超えると、例えば、カッターによりガラスストランドが切断され難くなり、ガラスチョップドストランドへの加工性が低下する虞がある。
アミン化合物は、サイジング剤の塗布によってガラス繊維の表面に形成される被膜を保護する機能を有する。アミン化合物はアルカリ性であるため、ガラス繊維に含まれるアルカリ成分と反応し難く、ガラス繊維からアルカリ成分が表面に溶出しても、被膜の機能が損なわれ難い。サイジング剤中のアミン化合物の含有量は、好ましくは0.6〜3.0質量%であり、より好ましくは1.0〜3.0質量%である。アミン化合物の含有量が0.6質量%未満の場合、ガラスストランドの糸質が硬くなり、モルタルとの含浸性が悪くなるため、加工性や外観が低下する虞がある。一方、アミン化合物の含有量が3.0質量%を超えると、ガラスストランドの集束性が低下する虞がある。アミン化合物としては、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン、第4級アミンの何れも使用可能であるが、第4級アミンが好ましい。第4級アミンとしては、ラウリルエチルジメチルアンモニウムサルフェート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド等が例示される。第4級アミンは、ガラス繊維から溶出したアルカリ成分と反応し難い効果をサイジング剤に与えるとともに、帯電防止効果も与えることができる。そのため、サイジング剤の長期安定性をより高めることが可能となる。
ガラス繊維を構成するガラスモノフィラメントの本数は、例えば、数十本から数百本程度とすることができる。ガラス繊維は、例えば、以下の方法により製造される。先ず、ガラス溶融炉にガラス原料を投入し、ガラスの融点以上に加熱して溶融ガラスを得る。この溶融ガラスを清澄槽で清澄化・均質化し、ブッシングを用いて繊維状のモノフィラメントに成形(紡糸)する。モノフィラメントは、表面にサイジング剤が塗布され、サイジング剤に含まれる固形成分に由来する被膜が形成され、これを複数本束ねて集束したものがガラスストランドとなる。ガラスストランドは、所定のカット長に切断され、ガラスチョップドストランドに加工される。ガラスストランドの切断は、ダイレクト法による直接カットでもよいが、本実施形態では、以下のインダイレクト法が用いられる。
セメント複合材は、本発明のサイジング剤の塗布による被膜が形成されたガラス繊維からなるガラスストランドを切断して得られたガラスチョップドストランドを原材料の一つとして使用するものである。例えば、オムニミキサーで混合したセメント、珪砂、及び水を含むモルタルに対し、上記のガラスチョップドストランドを混入し、これを再度オムニミキサーで混練すると、本発明のセメント複合材が得られる。本発明のセメント複合材によれば、本発明のガラス繊維を含んでいるため、ガラス繊維とセメント(モルタル)との間で摩擦が生じ難く、モルタルの流動性が維持される。従って、良好な施工性が得られる。
(サイジング剤の調製)
15質量%ポリ酢酸ビニルA(重量平均分子量120000)、15質量%ポリウレタンA(重量平均分子量80000)、3.0質量%第4級アンモニウム塩(第4級アミン)、0.5質量%アミノシランカップリング剤、0.5質量%パラフィンワックスからなる固形成分に、水を均質混合して、サイジング剤を調製した。ポリウレタンAは、ヘキサメチレンジイソシアネートとポリテトラメチレンエーテルグリコールとの反応物である。第4級アンモニウム塩として、ラウリルエチルジメチルアンモニウムサルフェートを用いた。アミノシランカップリング剤としては、γアミノプロピルトリエトキシシラン(サイラエースS330:チッソ株式会社製)を用いた。パラフィンワックスは、糸質を調整するために添加した。得られたサイジング剤を固形成分の濃度が10質量%となるように水を加えて水分散液として濃度調整したときのpHは、5.0であった。
(ガラス繊維の作製)
溶融ガラス(組成:SiO258.3質量%、ZrO217.7質量%、Li2O0.5質量%、Na2O14.3質量%、K2O2.0質量%、CaO0.7質量%、TiO26.5質量%)をブッシングから引き出してガラス繊維を得た。次に、得られたガラス繊維の表面にアプリケーターを用いて上記サイジング剤を塗布し、このガラス繊維を集束して番手が85texのガラスストランドとし、このガラスストランドをコレットに巻き取ってケーキを作製した。次に、ケーキを130℃、10時間の加熱条件で乾燥させてからガラスストランドを解舒しながら25mmのカット長に切断し、ガラスチョップドストランドに加工した。なお、得られたガラスチョップドストランドの強熱減量は、1.0質量%であった。
30質量%ポリ酢酸ビニルA、15質量%ポリウレタンA、3.0質量%第4級アンモニウム塩を用いたこと以外は、実施例1と同様にサイジング剤を調製し、さらに同様の手順によりガラス繊維(ガラスチョップドストランド)を作製した。なお、サイジング剤の10質量%水分散液のpHは、5.0であった。
20質量%ポリ酢酸ビニルA、10質量%ポリウレタンA、3.0質量%第4級アンモニウム塩を用いたこと以外は、実施例1と同様にサイジング剤を調製し、さらに同様の手順によりガラス繊維(ガラスチョップドストランド)を作製した。なお、サイジング剤の10質量%水分散液のpHは、5.0であった。
20質量%ポリ酢酸ビニルA、20質量%ポリウレタンA、3.0質量%第4級アンモニウム塩を用いたこと以外は、実施例1と同様にサイジング剤を調製し、さらに同様の手順によりガラス繊維(ガラスチョップドストランド)を作製した。なお、サイジング剤の10質量%水分散液のpHは、5.0であった。
20質量%ポリ酢酸ビニルA、15質量%ポリウレタンA、1.0質量%第4級アンモニウム塩を用いたこと以外は、実施例1と同様にサイジング剤を調製し、さらに同様の手順によりガラス繊維(ガラスチョップドストランド)を作製した。なお、サイジング剤の10質量%水分散液のpHは、4.0であった。
20質量%ポリ酢酸ビニルB(重量平均分子量300000)、15質量%ポリウレタンA、3.0質量%第4級アンモニウム塩を用いたこと以外は、実施例1と同様にサイジング剤を調製し、さらに同様の手順によりガラス繊維(ガラスチョップドストランド)を作製した。なお、サイジング剤の10質量%水分散液のpHは、5.0であった。
20質量%ポリ酢酸ビニルA、15質量%ポリウレタンB(重量平均分子量100000)、20.0質量%第4級アンモニウム塩を用いたこと以外は、実施例1と同様にサイジング剤を調製し、さらに同様の手順によりガラス繊維(ガラスチョップドストランド)を作製した。ポリウレタンBは、ヘキサメチレンジイソシアネートとポリエチレングリコールとの反応物である。なお、サイジング剤の10質量%水分散液のpHは、7.0であった。
20質量%ポリ酢酸ビニルA、15質量%ポリウレタンA、0.5質量%第4級アンモニウム塩を用いたこと以外は、実施例1と同様にサイジング剤を調製し、さらに同様の手順によりガラス繊維(ガラスチョップドストランド)を作製した。なお、サイジング剤の10質量%水分散液のpHは、3.0であった。
20質量%ポリ酢酸ビニルA、15質量%ポリウレタンA、10.0質量%第4級アンモニウム塩を用いたこと以外は、実施例1と同様にサイジング剤を調製し、さらに同様の手順によりガラス繊維(ガラスチョップドストランド)を作製した。なお、サイジング剤の10質量%水分散液のpHは、6.0であった。
ガラス繊維の性能評価を、モルタル成形品の曲げ強度測定、糸硬度測定、及び外観評価により行った。
実施例1〜6及び比較例1〜3の各ガラスチョップドストランドを用いてGRC(モルタル成形品)を作製し、その曲げ強度を測定した。GRCは、以下の手順で作製した。初めに、セメント10kg、珪砂5kg、及び水4.2kgをミキサーで混合してモルタルを調製し、次いで、実施例1〜6及び比較例1〜3の各ガラスチョップドストランドを混合物全体に占める割合が3質量%となるように添加し、混合物をミキサーでさらに混練し、所定の形状に成形した後、乾燥させてモルタル成形品であるGRCを得た。GRCの機械的強度は曲げ強度によって評価した。GRCの曲げ強度測定は、モルタル成形体を作製してから4週間経過したGRCを試験体(275mm×50mm×15mm)とし、実施例1〜6及び比較例1〜3の試験体について、3点載荷方式にて、スパン225mm、テストスピード2mm/分の条件で実施した。
ケーキから、3mのガラスストランドを切り出し、ガラスストランドを通す穴を有し、5cm間隔で配置された2つのガイド部材にガラスストランドを通す。次に、ガイド部材の間に配されたばねばかりのフックにガラスストランドを引っかける。その後、両方のガイド部材を1cm下方に移動させる。その際に、ばねばかりには荷重が加わるので、荷重値(gf)を記録する。ガイド部材を元の位置に戻した後、ガラスストランドを一方のガイド部材の方向に1cm移動させ、同様の測定を行う。この測定を、計42回測定し、21番目に大きな値の荷重値を糸硬度とする。糸の硬度が高いほど、大きな荷重値を示す。
GRCの表面からガラス繊維がはね出ているかの確認を目視で行い、モルタル成形品の外観評価を5段階評価にて行った。評価基準は以下のとおりである。
・レベル1:ガラス繊維がGRC表面からはね出ている箇所がモルタル体積4500cm3あたり21箇所以上である。
・レベル2:ガラス繊維がGRC表面からはね出ている箇所がモルタル体積4500cm3あたり10〜20箇所である。
・レベル3:ガラス繊維がGRC表面からはね出ている箇所がモルタル体積4500cm3あたり5〜9箇所である。
・レベル4:ガラス繊維がGRC表面からはね出ている箇所がモルタル体積4500cm3あたり4箇所以下である。
・レベル5:ガラス繊維がGRC表面から全くはね出ていない。
Claims (9)
- セメント複合材用のガラス繊維の表面被膜形成用のサイジング剤であって、
水を含む溶媒と、前記被膜となる固形成分とを含み、
前記固形成分は、ポリ酢酸ビニルと、ポリウレタンと、アミン化合物とを含有し、
サイジング剤中の前記ポリ酢酸ビニルの含有量が3〜30質量%であり、サイジング剤中の前記ポリウレタンの含有量が2〜20質量%であり、サイジング剤中の前記アミン化合物の含有量が0.6〜3.0質量%であり、
前記固形成分の濃度が10質量%となるように濃度調整したときに、pHが3.5〜5.5を示すサイジング剤。 - 前記ポリウレタンは、ヘキサメチレンジイソシアネートとポリテトラメチレンエーテルグリコールとの反応物である請求項1に記載のサイジング剤。
- 前記ポリ酢酸ビニルの重量平均分子量が100000〜300000であり、前記ポリウレタンの重量平均分子量が50000〜100000である請求項1又は2に記載のサイジング剤。
- 前記アミン化合物が第4級アミンである請求項1〜3の何れか一項に記載のサイジング剤。
- 請求項1〜4の何れか一項に記載のサイジング剤中の前記固形成分からなる被膜が表面に形成されたガラス繊維の集合体であるガラスストランド。
- 前記ガラス繊維がZrO2を12質量%以上、及びR2O(Rは、Li、Na、及びKからなる群から選択される少なくとも一種である。)を10質量%以上含有するガラスからなる請求項5に記載のガラスストランド。
- 前記ガラス繊維の繊維径が13〜30μmであり、ストランド番手が80〜90texであり、ケーキ番手が560〜630texである請求項5又は6に記載のガラスストランド。
- 請求項1〜4の何れか一項に記載のサイジング剤中の前記固形成分からなる被膜が表面に形成されたセメント複合材料用のガラスストランドであって、
糸硬度が160〜200gfであるに記載のガラスストランド。 - 請求項5〜8の何れか一項に記載のガラスストランドを含むセメント複合材。
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