JP6772461B2 - 積層体及び表示体カバーの製造方法 - Google Patents

積層体及び表示体カバーの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は耐傷付性、耐久性、硬度、耐クラック性、耐衝撃性、透明性等に優れた積層体に関する。また、本発明はこの積層体からなる表示体カバー及び該表示体カバーを備えたモジュールに関する。
プラスチック製品、例えばポリカーボネート(PC)樹脂;ポリメチルメタクリレート(PMMA)樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂;ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂、スチレン−メチルメタクリレート(MS)樹脂、アクリロニトリル−スチレン(AS)樹脂等のスチレン系樹脂;塩化ビニル系樹脂;トリアセチルセルロース等の酢酸セルロース樹脂等の各種樹脂基材は、軽量性、易加工性、耐衝撃性等が優れているため、容器、インストルメントパネル、包装材、各種ハウジング材、光デイスク基板、プラスチックレンズ、液晶ディスプレイやプラズマディスプレイ等の表示機器の基材等、種々の用途に用いられている。
携帯電話、PHS(Personal Handy−phone System)等の表示体を有する産業用電子機器では、デザインの多様化、薄型化、大面積化の進展に伴い、その表示体カバー自体にも薄型化、軽量化、安価化等の要求が高まっている。この表示体カバーとしてはガラス基材が一般的に使用されているが、表示体カバーそれ自体の薄型化、軽量化、安価化等の要求に伴い、現在では基材そのものが自立できる一定の厚みをもったPMMA樹脂シートやPC樹脂シート等の使用が種々検討されている。一方でこれらのプラスチック基材は従来使用されているガラス基材に比べて耐傷付性や硬度に劣るため、種々のハードコート材を被覆した樹脂シートが検討されている。
従来、主に携帯電話、PHS等の表示体カバー用の積層体として、次のような技術が開示されている。例えば、特許文献1において、PMMA基材にウレタンアクリレートとシリコーンオイルを含むハードコート材を被覆した積層体により表面の耐傷付性を改善することが開示されている。また、特許文献2において、PMMA基材に多官能アクリレートを含むハードコート材を被覆した積層体により表面の耐傷付性を改善することが開示されている。また、特許文献3において、重量平均分子量が10万以上であり、かつガラス転移温度が100℃以上であるPMMA基材に多官能アクリレートとシリコーンオイルを含むハードコート材を被覆した積層体により耐傷付性を改善することが開示されている。更に、特許文献4において、耐衝撃PMMA基材に2官能ウレタンアクリレートと多官能アクリレート及び/又は多官能ウレタンアクリレートとを含むハードコート材を被覆した積層体により耐衝撃性、カール性等を改善することが開示されている。
特開2004−299199号公報 特開2008−006811号公報 特開2008−049697号公報 特開2008−100422号公報
本発明者らの詳細な検討によれば、上記特許文献1〜4において開示されているような技術には次のような問題点があることがわかった。
これらの従来の技術はいずれも主として携帯電話やPHSの表示体カバーを志向したものであり、近年普及しているスマートフォン、タブレット等のタッチパネルに要求される耐衝撃性、耐傷付性、耐久性、硬度等の特性に対してはその機能が不十分である。即ち、スマートフォン、タブレット等のタッチパネルにおける表示体カバーはそれ自体が十分な耐衝撃性を有することが求められるだけではなく、指を滑らす動き(フリップ)が操作上、頻繁に行われるようになっており、従来の携帯電話、PHS用の表示体カバーでは耐傷付性、硬度等が不十分であり、これらの表示体カバーとしては機能が不十分である。
本発明者らは上記従来技術の諸問題点に鑑み更に検討を重ね、耐衝撃性、耐傷付性を維持しながら硬度を高めるために、PMMA基材等に対して高度の耐傷付性、硬度を付与し得る、シリコーン系やフッ素系添加剤を含むハードコート材を塗布することを検討したが、このようなハードコート材では耐久性が満足に向上しないという問題が見出された。
一方、硬度をさらに向上させるためにハードコート材を厚膜塗布することを検討したが、このようなハードコート材を単に厚膜塗布しようとするとハードコート層にクラックが入ってしまう場合があることがわかった。
本発明は以上に挙げたような種々の問題点を解決することを目的とするものである。即ち、本発明の課題は、耐傷付性、耐久性、硬度、耐衝撃性、耐クラック性、耐衝撃性、透明性等に優れた積層体、該積層体からなる表示体カバー、及び該表示体カバーを備えたモジュールを提供することにある。
本発明者らが上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の種類及び厚みを有する基材層に、特定の層構成を有する積層体が耐傷付性、耐久性、硬度、耐衝撃性、耐クラック性、耐衝撃性、透明性等に優れることを見出したものである。
即ち、本発明の要旨は以下の[1]〜[8]に存する。
[1] 基材層と、該基材層の一方の面に該基材層側から下記層(B)及び下記層(A)をこの順で少なくとも有し、該基材層の厚みが0.3〜30mmである積層体。
層(A):パーフルオロポリエーテル構造とアクリロイル基とを有する化合物を少なくとも含む硬化性組成物(α)及び/又はその硬化物からなる層
層(B):アクリロイル基を有する化合物(B−1)を少なくとも含む硬化性組成物(β)及び/又はその硬化物(ただし、上記硬化性組成物(α)及び/又はその硬化物を除く。)からなる層
[2] 硬化性組成物(α)が、前記化合物(A−1)を、硬化性組成物(α)中のアクリロイル基を有する化合物の合計量に対し、0.05〜10重量%含有する、[1]に記載の積層体。
[3] 硬化性組成物(β)が、多官能(メタ)アクリレート及び/又はアクリロイル基を有する化合物で修飾されたシリカを含む、[1]又は[2]に記載の積層体。
[4] 層(B)の厚みが、2〜100μmである、[1]〜[3]のいずれかに記載の積層体。
[5] 層(A)の厚みが、1〜100μmである、[1]〜[4]のいずれかに記載の積層体。
[6] 前記基材層が、少なくともポリメチルメタクリレートからなる層とポリカーボネートからなる層との2層で構成されるものである、[1]〜[5]のいずれかに記載の積層体。
[7] [1]〜[6]のいずれかに記載の積層体からなる表示体カバー。
[8] [7]に記載の表示体カバーを備えたモジュール。
本発明の積層体は、耐傷付性、耐久性、硬度、耐衝撃性、耐クラック性、耐衝撃性、透明性等に優れたものである。このため、本発明の積層体は、タッチパネル、液晶テレビ等の光学ディスプレイ用部品;ランプ関連物品、ウインドウ関連物品(リアウィンドウ、サイドウィンドウ、天窓等)等の自動車関連部品;各種電気機器の筐体、化粧板、家具等の生活関連物品等の幅広い物品の表面カバーに好適に用いることができる。これらの中でもタッチパネル、液晶テレビ等の光学ディスプレイ用部品の表面カバー、即ち表示体カバーとして特に好適に用いることができ、更にはこの表示体カバーを備えた、PDPモジュール、タッチパネルモジュール、有機ELモジュール等のモジュールとして好適に用いることができる。
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下の説明は、本発明の実施の形態の一例であり、本発明はその要旨を超えない限り、以下の記載内容に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」という表現を用いる場合、その前後の数値又は物性値を含む表現として用いるものとする。また、本発明において、「(メタ)アクリル」という表現を用いた場合、「アクリル」と「メタクリル」の一方又は両方を意味するものとする。「(メタ)アクリレート」「(メタ)アクリロイル」についても同様である。
また、以下の本発明における硬化性組成物(α)、硬化性組成物(β)、及び必要に応じて用いられる硬化性組成物(γ)のそれぞれにおける「アクリロイル基」とは、アクリロイル基そのもののみならず、アクリロイル基中のC=Cの炭素原子に直接結合した水素原子が他の原子又は置換基に置換されたものをも含む意味で用いることとする。例えば、アクリロイル基のC=Cに直接結合した水素原子がメチル基やハロゲン元素等で置換された基、より具体的にはメタクリロイル基やフルオロアクリロイル基等も「アクリロイル基」に含まれる意味で用いられるものとする。
〔積層体〕
本発明の積層体は、基材層と、該基材層の一方の面に該基材層側から下記層(B)及び下記層(A)をこの順で少なくとも有し、該基材層の厚みが0.3〜30mmである積層体である。
層(A):パーフルオロポリエーテル構造とアクリロイル基とを有する化合物を少なくとも含む硬化性組成物(α)及び/又はその硬化物からなる層
層(B):アクリロイル基を有する化合物を少なくとも含む硬化性組成物(β)及び/又はその硬化物(ただし、上記硬化性組成物(α)及び/又はその硬化物を除く。)からなる層
本発明の積層体は、耐傷付性、耐久性、耐衝撃性、透明性等に優れ、また、特に優れた硬度を有し、かつ耐クラック性にも優れるという効果を奏する。特に、本発明の積層体が耐傷付性、耐久性に優れる理由は、層(A)に用いる硬化性組成物(α)に含まれる化合物がパーフルオロポリエーテル構造を有することにより層(A)表面にフッ素原子が偏析する密度が高くなることによるものと考えられる。また、本発明の積層体が特に優れた硬度を有し、かつ耐クラック性に優れる理由は、硬度を高めるためにはある程度膜厚が必要になると考えられるが、層(A)の一層のみで厚膜にしようとすると硬化時の収縮が大きく、クラックが入ってしまうが、基材層と層(A)との間に層(B)を構成することによりこの点を解決することができるためであると考えられる。
[基材層]
本発明の積層体は基材層を有する。基材層の種類は特に制限されないが、通常、熱可塑性樹脂からなる層である。
基材層として用いることのできる熱可塑性樹脂は、例えば、ポリメチルメタクリレート樹脂(PMMA樹脂)、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET樹脂)、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂(PC樹脂)、トリアセチルセルロース樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS樹脂)、変性ポリオレフィン樹脂、水素化ポリスチレン樹脂、シクロオレフィン系樹脂等が挙げられる。これらの中でも積層体に耐衝撃性を付与する観点から好ましいのはポリメチルメタクリレート樹脂からなる層((以下、層(1)と称することがある。)、ポリカーボネート樹脂からなる層(以下、層(2)と称することがある。)である。
基材層は1種類の熱可塑性樹脂からなる層の単層構造であってもよいが、2種類以上の熱可塑性樹脂からなる層の積層構造としてもよい。基材層が2種類以上の熱可塑性樹脂からなる層の積層構造とする場合、層(1)と層(2)との積層構造とすることが硬度、耐衝撃性の観点からも好ましく、特に、この場合において、層(1)側に後述の層(B)を、層(2)側に後述の層(C)を形成することが好ましい。
本発明において、基材層は、常法に従って、例えば、熱可塑性樹脂シートを溶融押出法、溶液キャスティング法(流延法)等により成膜することにより製造することができる。また、本発明に係る基材層が、層(1)と層(2)との積層構造の場合、基材層は、常法に従って成膜した層(1)のポリメチルメタクリレート樹脂シートと層(2)のポリカーボネート樹脂シートを貼り合せることにより、或いは、2層の共押出成形により製造することができる。
なお、基材層には熱可塑性樹脂に通常配合される熱安定剤、紫外線吸収剤、難燃剤、酸化防止剤等の各種添加剤を含有していてもよい。また、本発明の目的を損なわない範囲において、熱可塑性樹脂以外の樹脂成分を含むものであってもよい。
また、本発明に係る基材層が層(1)と層(2)との両方を有する場合、層(1)及び層(2)以外の層を有する3層以上の積層構造のものであってもよい。例えば、層(1)と層(2)の間に接着層を有していてもよい。また、基材層の製造工程において、層(1)と層(2)との2層を共押出成形する際に、層(1)と層(2)との間に層(1)を構成するポリメチルメタクリレート樹脂と、層(2)を構成するポリカーボネート樹脂とが相溶して形成された中間層を有していてもよい。
基材層の総厚みは0.3〜30mmである。本発明の積層体そのものが自立したものとするために、基材層の総厚みは0.3mm以上であることが必要である。この観点から基材層の総厚みは0.4mm以上であることが好ましい。また、表示体等として用いるための薄型化、軽量化の観点から、基材層の総厚みは30mm以下であることが必要である。この観点から基材層の総厚みは3.0mm以下であることが好ましく、1.5mm以下であることがより好ましい。
また、本発明に用いる基材層が層(1)を有する場合、層(1)の厚みは30μm以上であることが好ましい。一方、層(1)の厚みは硬度の観点から1.2mm以下であることが好ましく、1.0mm以下であることがより好ましい。
また、本発明に用いる基材層が層(1)と層(2)の積層構造の場合、耐傷付性の観点から、基材層全体の厚みに対する層(1)の厚みの割合は、0.5%以上であることが好ましく、2.0%以上であることがより好ましい。一方、耐衝撃性の観点から、層(1)の厚みの割合は、20%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましい。
[層(A)]
本発明の積層体において、層(A)は、パーフルオロポリエーテル構造とアクリロイル基とを有する化合物(A−1)を少なくとも含む硬化性組成物(α)及び/又はその硬化物からなる層である。
なお、硬化性組成物(α)は化合物(A−1)を含むものであれば特に制限されないが、後述する化合物(C−1)を含まないか、その含有量が硬化性組成物(α)中のアクリロイル基を有する化合物の合計量に対し、20重量%未満であることが好ましく、15重量%以下であることがより好ましく、一方、その下限値は0重量%である。
<化合物(A−1)>
本発明の積層体は、硬化性組成物(α)が化合物(A−1)を含むことにより、層(A)側の硬度、耐傷付性が良好なものとなる。この観点から、硬化性組成物(α)は、硬化性組成物(α)中のアクリロイル基を有する化合物の合計量に対し、化合物(A−1)の含有量が、0.05重量%以上であることが好ましく、0.1重量%以上であることがより好ましい。一方、硬化性を良好なものとする観点から、化合物(A−1)の含有量は、10重量%以下であることが好ましく、8重量%以下であることがより好ましく、6重量%以下であることが更に好ましい。また、硬化性組成物は(α)は後述するように、化合物(A−1)以外の活性エネルギー線硬化性組成物(A−2)を含むことが好ましい。
硬化性組成物(α)に用いることのできる化合物(A−1)としては、例えば下記式(1)で表されるものが挙げられる。
Figure 0006772461
(上記式(1)中、Xは水素原子又はフッ素原子を表し、mは0〜100の数である。)
上記式(1)で示される化合物としては、その機能を十分に発揮するために、m=1〜20で、X=Fであることが好ましい。上記式(1)で示される化合物は、特開2009−9138号公報に記載の方法により製造することができる。
化合物(A−1)は市販品として入手することも可能であり、市販品の例としては、ダイキン工業社製「オプツール(登録商標) DAC−HP」、DIC株式会社製「メガファック(登録商標) RS−76−E」等が例示される。
なお、化合物(A−1)はパーフルオロポリエーテル構造に加えてシロキサン構造を有するものであることも好ましい態様である。
<活性エネルギー線硬化性化合物(A−2)>
硬化性組成物(α)に用いることのできる活性エネルギー線硬化性化合物(A−2)は、前記化合物(A−1)及び後述する化合物(A−3)以外の化合物であり、活性エネルギー線の照射により硬化反応しうる官能基を有するものであれば特に制限されない。
活性エネルギー線硬化性化合物(A−2)はアクリロイル基を含有する化合物であることが好ましく、また、硬化膜の硬度、傷付性が良好となり、また硬化時の反応性も高い点から、活性エネルギー線硬化性化合物(A−2)中のアクリロイル基の数は、2個以上であることが好ましく、3個以上であることがより好ましく、4個以上であることが更に好ましい。また、硬化前の粘度が塗工に適する観点から、9個以下であることが好ましく、7個以下であることがより好ましい。
アクリロイル基を有する活性エネルギー線硬化性化合物(A−2)としては、具体的には、多官能(メタ)アクリレート;エステル変性体、カーボネート変性体等の多官能(メタ)アクリレート誘導体;アクリロイル基を有する化合物で表面を修飾したシリカ等が挙げられる。
多官能(メタ)アクリレート及び多官能(メタ)アクリレート誘導体としては、例えば、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、無水コハク酸へのペンタエリスリトールトリアクリレート付加物、無水コハク酸へのジペンタエリスリトールペンタアクリレート付加物などの多官能アクリレート類;側鎖又は側鎖と末端にアクリロイル基を有するポリエステルオリゴマー(具体的には、東亞合成社製のM8030、M7100等)等のポリエステル(メタ)アクリレート類;ポリカーボネートジオールを用いたオリゴエステルとペンタエリスリトールトリアクリレートの反応物等のカーボネート結合を有するポリエステル(メタ)アクリレート類;これらのポリカプロラクトン変性物等が挙げられる。これらは1種のみで用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、粘度、硬化性、得られる硬化物表面の硬度等から、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート;これらのカプロラクトン変性体等が特に好ましい。なお、以上に挙げた化合物の他に活性エネルギー線硬化性化合物(A−2)として、後述の化合物(B−1)に該当するものが含まれていてもよいが、その含有量は前述の通りである。
硬化性組成物(α)は、硬化性組成物(α)中のアクリロイル基を有する化合物の合計量に対し、化合物(A−2)の含有量が、硬化性の観点からは90重量%以上であることが好ましく、92重量%以上であることがより好ましく、94重量%以上であることが更に好ましい。一方、化合物(A−1)や化合物(A−3)の含有量を確保して耐傷付性、硬度を得る観点からは、99.95重量%以下であることが好ましく、99.9重量%以下であることがより好ましい。
<化合物(A−3)>
本発明における硬化性組成物(α)において、前記化合物(A−1)に加え、化合物(A−1)以外のシロキサン構造と1つ以上のアクリロイル基を有する化合物(A−3)を含むことが好ましい。硬化性組成物(α)が化合物(A−3)を含むことにより、化合物(A−1)と同様に層(A)側の耐傷付性を高めることができる。化合物(A−3)としては、例えば下記式(2)で表されるものが挙げられる。
化合物(A−3)はシロキサン構造と1つ以上のアクリロイル基を有する化合物であれば特に制限されないが、例えば、シロキサン構造として、ポリジメチルシロキサン構造を有するものが好ましく、このような化合物としては、片末端にアクリロイル基を有するポリジメチルシロキサン(例えば、市販品としてはJNC社製サイラプレーン(登録商標) FM0711、FM0721、FM0725等)、両末端にアクリロイル基を有するポリジメチルシロキサン(例えば市販品としては信越化学社製のX−22−164A等)、両末端にエポキシ基を有し、かつ側鎖にアクリロイル基を有するポリジメチルシロキサン、主鎖及び/又は側鎖にポリジメチルシロキサンを有し、側鎖及び/又は末端に1〜2個のアクリロイル基を有する共重合体等が挙げられる。これらの中でも、片末端及び/又は両末端にアクリロイル基を有するポリジメチルシロキサンが好ましく、とりわけ、下記式(2)で表されるシリコーン含有(メタ)アクリレートとエポキシ基を有する(メタ)アクリレートとを共重合して得られた共重合体にカルボキシル基及びアクリロイル基を有する化合物を反応させて得られる(メタ)アクリル系共重合体(以下、「(メタ)アクリル系共重合体(a−1)」と称す場合がある。)が好ましい。
Figure 0006772461
(上記式(2)中、Rは水素原子又はメチル基であり、Rは炭素数1〜12のアルキレン基であり、R及びRはそれぞれ独立してメチル基又はフェニル基であり、Rは炭素数1〜12のアルキル基であり、nは平均値であり、10〜100の数である。)
式(2)中、Rは水素原子又はメチル基を表す。Rは、得られる(メタ)アクリル系共重合体(a−1)のガラス転移温度(Tg)が高くなり、層(A)を硬化させた際の表面の硬度が高くなるためにメチル基であることが好ましい。
式(2)中、Rは炭素数1〜12のアルキレン基である。原料を入手し易く、また、製造し易いために、その炭素数は、2以上であることが好ましく、3以上であることがより好ましく、一方、10以下であることが好ましく、8以下であることがより好ましい。
式(2)中、R及びRはそれぞれ独立してメチル基又はフェニル基である。原料を入手し易く、また、製造し易いためにメチル基であることが好ましい。
式(2)中、Rは炭素数1〜12のアルキル基である。Rの炭素数は、2以上であることが好ましく、3以上であることがより好ましく、一方、Rの炭素数は、10以下であることが好ましく、8以下であることがより好ましい。Rの炭素数が上記範囲であると、原料を入手し易く、また、製造し易いために好ましい。
式(2)中、nは平均値であり、10〜100の数である。nが10以上であると、硬化性組成物(α)を硬化させた硬化膜の表面易滑性が十分に発現して滑り性が良好となる。この効果をより良好なものとする観点から、nは25以上であることが好ましく、50以上であることがより好ましい。一方、nが100以下であると、溶媒への溶解性が良好となる。この効果をより良好なものとする観点から、nは90以下であることが好ましく、80以下であることがより好ましい。なお、nの値は数平均分子量(Mn)から計算により求めることができる。
式(2)で表されるシリコーン含有(メタ)アクリレートの数平均分子量(Mn)は、硬化性組成物(α)を硬化させた硬化膜の表面易滑性が十分に発現して滑り性を良好なものとする観点から、1,000以上であることが好ましく、2,000以上であることがより好ましく、3,000以上であることが更に好ましい。また、式(2)で表されるシリコーン含有(メタ)アクリレートの数平均分子量(Mn)は、溶媒への溶解性を良好なものとする観点から、50,000以下であることが好ましく、20,000以下であることがより好ましく、10,000以下であることが更に好ましい。
式(2)で表されるシリコーン含有(メタ)アクリレートの中でも、ポリジメチルシロキサン構造を有するものが好ましく、特に好ましいものとして片末端にメタクリロイル基を有するポリジメチルシロキサン(市販品の具体例としては、JNC社製「サイラプレーン(登録商標) FM0711」、「サイラプレーン(登録商標) FM0721」、「サイラプレーン(登録商標) FM0725」等が挙げられる。)等が挙げられる。なお、式(2)で表されるシリコーン含有(メタ)アクリレートは1種のみで用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(メタ)アクリル系共重合体(a−1)の原料として用いるエポキシ基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中でもグリシジル(メタ)アクリレートが好ましい。エポキシ基を有する(メタ)アクリレートは1種のみを用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
式(2)で表されるシリコーン含有(メタ)アクリレートとエポキシ基を有する(メタ)アクリレートとを共重合させる際には更にその他のモノマーを共重合させてもよい。その他のモノマーは炭素原子間二重結合を有し、式(2)で表されるシリコーン含有(メタ)アクリレート及びエポキシ基を有する(メタ)アクリレートと共重合させることができるものであれば特に制限されないが、例えば、これら以外の(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド等を挙げることができる。
その他のモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、iso−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、n−トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、シアノエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタレート等の(メタ)アクリレート;N−メチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N,N−エチルメチル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシ(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメトキシ(メタ)アクリルアミド、N−エトキシ(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエトキシ(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノメチル(メタ)アクリルアミド、N−(2−ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリルアミド、N,N−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、及びN,N−エチレンビス(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。これらは1種のみを用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。その他のモノマーとしては、炭素数4〜22のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートが好ましい。
式(2)で表されるシリコーン含有(メタ)アクリレート、エポキシ基を有する(メタ)アクリレート及び必要に応じて用いられるその他のモノマーを共重合させてアクリル系共重合体を製造する際の、各モノマーの使用量には特に制限はないが、好ましくは式(2)で表されるシリコーン含有(メタ)アクリレート5〜90重量%、エポキシ基を有する(メタ)アクリレート10〜95重量%、及び必要に応じて用いられるその他のモノマー0〜80重量%(ただし、式(2)で表されるシリコーン含有(メタ)アクリレート、エポキシ基を有する(メタ)アクリレート及び必要に応じて用いられるその他のモノマーの合計で100重量%とする。)、特に好ましくは式(2)で表されるシリコーン含有(メタ)アクリレート10〜80重量%、エポキシ基を有する(メタ)アクリレート20〜90重量%、及び必要に応じて用いられるその他のモノマー5〜60重量%の割合で用いるのが耐傷付性、防汚性の観点から好ましい。
式(2)で表されるシリコーン含有(メタ)アクリレート、エポキシ基を有する(メタ)アクリレート及び必要に応じて用いられるその他のモノマーを共重合させる反応は、通常、ラジカル重合反応であり、具体的には、有機溶媒中でラジカル重合開始剤の存在下で行うことができる。この反応の反応時間は通常、1〜50時間であり、好ましくは3〜12時間である。ここで用いることのできる有機溶媒、ラジカル重合開始剤は次の通りである。
有機溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)等のケトン系溶媒;エタノール、メタノール、イソプロピルアルコール(IPA)、イソブタノール等のアルコール系溶媒;エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル系溶媒;酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、2−エトキシエチルアセタート等のエステル系溶媒;トルエン等の芳香族炭化水素溶媒等が挙げられる。これらの有機溶媒は1種のみを用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ラジカル重合開始剤としては、例えば一般にラジカル重合に用いられる公知の開始剤を用いることができ、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキシド等の有機過酸化物;2,2’−アゾビスブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物が挙げられる。これらのラジカル重合開始剤は1種のみを用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明に用いる(メタ)アクリル系共重合体(a−1)は、少なくとも式(2)で表されるシリコーン含有(メタ)アクリレート、エポキシ基を有する(メタ)アクリレート及び必要に応じて用いられるその他のモノマーを共重合して得られた共重合体にカルボキシル基及びアクリロイル基を有する化合物を反応させて得られるものであり、この反応において、反応温度は好ましくは50〜110℃であり、より好ましくは55〜100℃である。また、反応時間は好ましくは3〜50時間であり、より好ましくは4〜30時間である。なお、この反応は通常、前記共重合体中のエポキシ基とカルボキシル基及びアクリロイル基を有する化合物中のカルボキシル基との反応である。
この反応で用いることのできるカルボキシル基及びアクリロイル基を有する化合物としては例えば、(メタ)アクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレートと無水コハク酸の付加物、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートと無水コハク酸の付加物、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートと無水フタル酸の付加物等が挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートと無水コハク酸の付加物が好ましい。なお、カルボキシル基及びアクリロイル基を有する化合物は1種のみを用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記のカルボキシル基及びアクリロイル基を有する化合物は、前記共重合体におけるエポキシ基に対するカルボキシル基のモル%として、好ましくは10〜150モル%、より好ましくは30〜130モル%、特に好ましくは50〜110モル%の割合で用いることが、反応を過不足なく進行させる観点と原料の残渣を少なくする観点から好ましい。
また、前記共重合体にカルボキシル基及びアクリロイル基を有する化合物を付加させる反応を促進させるため、触媒を用いることができる。触媒としては、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリエチレンジアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド、トリフェニルホスフィン等が挙げられる。触媒の使用量は原料の合計量に対して0.01〜2重量%であることが好ましく、0.05〜1重量%であることがより好ましい。なお、この反応においては前記共重合体の製造における反応に用いた有機溶媒をそのまま用いて反応させてもよいし、適宜有機溶媒を追加して反応させてもよい。この反応に用いることのできる有機溶媒は先に挙げたものと同様である。
シロキサン構造と1個以上のアクリロイル基を有する化合物の数平均分子量(Mn)は、好ましくは500以上であり、より好ましくは1,000以上であり、一方、好ましくは10,000以下であり、より好ましくは8,000以下である。この化合物の数平均分子量が上記下限値以上であると、防汚性や滑り性発現の観点で好ましく、一方、上記上限値以下であると他の成分との相溶性が維持される観点から好ましい。
硬化性組成物(α)は、硬化性組成物(α)中のアクリロイル基を有する化合物の合計量に対し、化合物(A−3)と前記化合物(A−1)との合計の含有量が0.05重量%以上であることが好ましく、0.1重量%以上であることがより好ましい。一方、硬化性を良好なものとする観点から、化合物(A−3)と前記化合物(A−1)との合計の含有量は、10重量%以下であることが好ましく、8重量%以下であることがより好ましく、6重量%以下であることが更に好ましい。
<光重合開始剤>
本発明に用いる硬化性組成物(α)は、硬化性を向上させるため、光重合開始剤を含むことが好ましい。光重合開始剤は公知のものを使用することができる。光重合開始剤としては例えば、光ラジカル発生剤、光酸発生剤等が挙げられる。
硬化性組成物(α)に用いることのできる光重合開始剤のうち、光ラジカル発生剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾインとそのアルキルエーテル類;アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン[例えば、商品名「イルガキュア(登録商標)184」、BASF製]、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−1−ブタノン等のアセトフェノン類;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド等のホスフィンオキシド類;2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−アミルアントラキノン等のアントラキノン類;ベンゾフェノン及びその各種誘導体;ベンゾイルギ酸メチル、ベンゾイルギ酸エチル等のギ酸誘導体等が挙げられる。これらは1種のみで用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの光ラジカル発生剤の中でも、硬化物の耐光性の観点から、好ましいのはアセトフェノン類、ホスフィンオキシド類、ギ酸誘導体であり、更に好ましいのは、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド、ベンゾイルギ酸メチルであり、特に好ましいのは、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾイルギ酸メチルである。
光酸発生剤としては公知のものが使用可能であるが、中でもジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩が硬化性、酸発生効率等から好ましい。具体例を挙げると、ジ(アルキル置換)フェニルヨードニウムのアニオン塩(具体的にはPF塩、SbF塩、テトラキス(パーフルオロフェニル)ボレート塩等)が例示できる。(アルキル置換)フェニルヨードニウムのアニオン塩の具体例としては、ジアルキルフェニルヨードニウムのPF塩[商品名「イルガキュア(登録商標)250」、BASF製]が特に好ましい。これらの光酸発生剤は1種のみで用いても2種以上を組み合わせてもよい。
硬化性組成物(α)が光重合開始剤を含む場合、その含有量は、硬化性組成物(α)中のアクリロイル基を有する化合物の合計100重量部に対して、硬化性を向上させる観点から、好ましくは0.01重量部以上であり、より好ましくは0.1重量部以上である。一方、硬化性組成物(α)を溶液としたときの液の安定性を維持する観点から、好ましくは10重量部以下であり、より好ましくは8重量部以下である。
<有機溶媒>
硬化性組成物(α)は、有機溶媒を含むことが好ましい。有機溶媒としては、特に限定されるものではなく、硬化性組成物(α)に含まれる成分の種類等を考慮して適宜選択することができる。用いることができる有機溶媒の具体例としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒;メチルエチルケトン(MEK)、アセトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)、アニソール、フェネトール等のエーテル系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、エチレングリコールジアセテート等のエステル系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等のアミド系溶媒;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール系溶媒;ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン系溶媒等が挙げられる。
これらの有機溶媒は1種を単独で使用してもよく、また2種以上を併用してもよい。これらの有機溶媒のうち、エステル系溶媒、エーテル系溶媒、アルコール系溶媒及びケトン系溶媒が好ましく使用される。
有機溶媒の使用量には特に制限はなく、調製される硬化性組成物(α)の塗布性、液の粘度・表面張力、固形分の相溶性等を考慮して適宜決定される。硬化性組成物(α)は、上述の溶媒を用いて、好ましくは固形分濃度が20〜95重量%、より好ましくは30〜80重量%の塗液として調製される。ここで、硬化性組成物(α)における「固形分」とは溶媒を除いた成分を意味するものであり、固体の成分のみならず、半固形や粘稠な液状物のものをも含むものとする。後述の硬化性組成物(β)及び硬化性組成物(γ)についても同様である。
<その他の成分>
本発明に用いる硬化性組成物(α)は、本発明の効果を阻害しない範囲で上記の化合物(A−1)、活性エネルギー線硬化性化合物(A−2)、化合物(A−3)、光重合開始剤及び有機溶媒以外のその他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤、充填剤、シランカップリング剤、反応性希釈剤、帯電防止剤、有機顔料、スリップ剤、分散剤、チクソトロピー性付与剤(増粘剤)、消泡剤、酸化防止剤、レベリング剤等が挙げられる。
<層(A)の厚み>
層(A)の厚みは、得られる積層体の硬度や耐傷付性の観点からは厚い方が好ましく、耐クラック性の観点からは薄い方が好ましい。従って、層(A)の厚みは、好ましくは1μm以上であり、より好ましくは2μm以上であり、更に好ましくは3μm以上であり、特に好ましくは4μm以上であり、一方、好ましくは100μm以下であり、より好ましくは35μm以下であり、更に好ましくは10μm以下であり、更に好ましくは8μm以下である。
[層(B)]
本発明の第二の態様にかかる積層体において、層(B)は、アクリロイル基を有する化合物(B−1)を少なくとも含む硬化性組成物(β)及び/又はその硬化物からなる層である。ここで硬化性組成物(β)は前述の硬化性組成物(α)に該当するものを除く意味で用いられる。
硬化性組成物(β)はアクリロイル基を有する化合物(B−1)を含有し、前記硬化性組成物(α)に該当するものでなければ特に制限されないが、そのアクリル当量が100g/mol以上であることが好ましい。また、アクリル当量の上限は特に制限されないが、通常、10,000g/mol以下であり、好ましくは6,000g/mol以下であり、より好ましくは3,000g/mol以下であり、更に好ましくは2,000g/mol以下であり、特に好ましくは1,000g/mol以下である。硬化性組成物(β)のアクリル当量が100g/mol以上であると層(B)を硬化させた際の耐クラック性の観点から好ましい。
<化合物(B−1)>
硬化性組成物(B)に含むことのできるアクリロイル基を有する化合物(B−1)としては、単官能(メタ)アクリレート及びその誘導体、多官能(メタ)アクリレート及びその誘導体、アクリロイル基を有する化合物で表面を修飾したシリカ等が挙げられる。これらの中でも層(B)の硬度を高める観点から、多官能(メタ)アクリレート及びその誘導体並びにアクリロイル基を有する化合物で表面を修飾したシリカ粒子からなる群のうちの少なくとも1つを含むことが好ましい。
単官能(メタ)アクリレート及びその誘導体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、iso−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、n−トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートおよびそのカチオン化剤による変性体、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートおよびそのカチオン化剤による変性体、シアノエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等のアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタレート、(メタ)アクリル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタレート、2−(メタ)アクリロイルプロピルフタレート、(メタ)アクリロイルオキシエチルサクシネート、2−イソシアネートエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは1種のみで用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
多官能(メタ)アクリレート及び多官能(メタ)アクリレート誘導体としては、例えば、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、無水コハク酸へのペンタエリスリトールトリアクリレート付加物、無水コハク酸へのジペンタエリスリトールペンタアクリレート付加物などの多官能アクリレート類;側鎖又は側鎖と末端にアクリロイル基を有するポリエステルオリゴマー(具体的には、東亞合成社製のM8030、M7100等)等のポリエステル(メタ)アクリレート類;イソホロンジイソシアネート(IPDI)のイソシアヌレート体、ポリテトラメチレングリコール(PTMG)及びヒドロキシエチルアクリレート(HEA)の反応物、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)のイソシアネート体とPTMG反応物へのペンタエリスリトールトリアクリレートの反応物等の多官能ウレタン(メタ)アクリレート類;ポリカーボネートジオールを用いたオリゴエステルとペンタエリスリトールトリアクリレートの反応物等のカーボネート結合を有するポリエステル(メタ)アクリレート類;IPDIとポリカーボネートジオールの反応物と、HEAの反応物などのカーボネート結合を有するポリウレタン(メタ)アクリレート類;ビスフェノールAのアクリル酸付加物(具体的には、新中村化学社製のEA−1025)等のポリエポキシ(メタ)アクリレート類;トリエトキシイソシアヌル酸ジアクリレート、トリエトキシイソシアヌル酸トリアクリレート(具体的には、東亞合成社製のアロニックスM315、M313)等のイソシアヌレート環を有するトリエトキシ(メタ)アクリレート類;これらのアルキレンオキサイド変性物;これらのポリカプロラクトン変性物等が挙げられる。これらは1種のみで用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、粘度、硬化性、得られる硬化物表面の硬度等から、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールトリアクリレート;これらのアルキレンオキサイド変性体;これらのカプロラクトン変性体等が特に好ましい。
アクリロイル基を有する化合物で表面を修飾したシリカ粒子は、例えば、溶媒に分散させたシリカ粒子と、アクリロイル基を有するシラン化合物とを加水分解縮合反応させることにより製造することができる。アクリロイル基を有する化合物で表面を修飾したシリカ粒子は例えば、特開2006−249322号に記載されている方法により製造することが可能であり、より具体的には、表面にアクリロイル基を有する化合物により修飾されてなるシリカ粒子は、まず、有機溶媒を分散媒とするシリカ粒子に、アクリロイル基を有するシラン化合物を加え、さらに水、アセチルアセトンアルミニウムを加水分解触媒として加えて、加熱下で攪拌しながら加水分解反応を進行させることで得ることができる。
溶媒に分散させたシリカ粒子としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、キシレン、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エチレングリコールモノn−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トルエン、シクロヘキサノン等の1種又は2種以上の溶媒に分散させたシリカ粒子が挙げられる。これらは市販品として入手することが可能であり、その例としては例えば、日産化学工業(株)製メタノールシリカゾルMA−ST−M、イソプロピルアルコールシリカゾルIPA−ST、エチレングリコールシリカゾルEG−ST、キシレン/ブタノールシリカゾルXBA−ST、ジメチルアセトアミドシリカゾルDMAC−ST、メチルエチルケトンシリカゾルMEK−ST、メチルイソブチルケトンシリカゾルMIBK−ST、エチレングリコールモノn−プロピルエーテルシリカゾルNPC−ST−30、プロピレングリコールモノメチルエーテルシリカゾルPGM−ST、酢酸エチルシリカゾルEAC−ST、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートPMA−ST、トルエンシリカゾルTOL−ST、シクロヘキサノンシリカゾルCHO−ST−M等を用いることができる。これらは1種のみで用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、前記溶媒に分散させたシリカ粒子は、平均一次粒子径が、1nm以上であることが好ましく、3nm以上であることがより好ましく、5nm以上であることが更に好ましく、一方、200nm以下であることが好ましく、100nm以下であることがより好ましく、50nm以下であることが更に好ましく、30nm以下であることが特に好ましい。前記シリカ粒子の平均一次粒子径が上記下限値以上であると耐傷付性、表面硬度が向上する傾向にあり、また、上記上限値以下であると硬化物の透明性が良好となる傾向にある。なお、本発明における溶媒に分散させたシリカ粒子の平均一次粒子径は、BET吸着法による比表面積測定値(JIS Z8830に準拠)を求め、以下の式から換算値として求められる値であるが、市販品についてはカタログ値を採用することができる。
[平均一次粒子径(nm)]=
6,000/〔[比表面積(m/g)]×[密度(g/cm)]〕
また、アクリロイル基を有するシラン化合物としては、例えば、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルメチルジメトキシシラン、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルメチルジエトキシシラン、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルジメチルメトキシシラン、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルジメチルエトキシシラン、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメトキシシラン、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルジメチルメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルジメチルエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等を用いることができる。これらは1種のみで用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
アクリロイル基を有する化合物で表面を修飾したシリカ粒子のシリカ粒子表面に修飾されるアクリロイル基の量(表面を(メタ)アクリロイル基を有する化合物により修飾されてなるシリカ粒子1g当りの二重結合量(mol))、仕込み値からの計算値で0.1〜2.0mmol/gであることが好ましく、0.2〜1.5mmol/gがより好ましく、0.3〜1.0mmol/gが更に好ましい。
なお、以上に挙げた硬化性組成物(β)に用いることのできる化合物のうち、後述する化合物(C−1)に該当するものを含む場合、その含有量は20重量%以下であることが好ましく、15重量%以下であることがより好ましい。また、硬化性組成物(β)は化合物(C−1)を含まなくともよい。
<光重合開始剤>
本発明に用いる硬化性組成物(β)は層(B)の硬化性を向上させるために光重合開始剤を用いることが好ましい。ここで用いることのできる光重合開始剤は硬化性組成物(α)において挙げたものと同様である。
硬化性組成物(β)が光重合開始剤を含む場合、その含有量は、活性エネルギー線硬化性化合物100重量部に対し、硬化性を向上させる観点から、好ましくは0.01重量部以上であり、より好ましくは0.1重量部以上である。一方、硬化性組成物(β)を溶液としたときの液の安定性、硬化性組成物(β)を硬化させた際の耐傷付性を維持する観点から、好ましくは10重量部以下であり、より好ましくは8重量部以下である。
<有機溶媒>
本発明に用いる硬化性組成物(β)は有機溶媒を用いることが好ましい。ここで用いることのできる有機溶媒の種類及びその量、即ち、硬化性組成物(β)の固形分濃度は、硬化性組成物(α)において挙げたものと同様である。
<その他の成分>
本発明に用いる硬化性樹脂組成物(β)は、本発明の効果を阻害しない範囲で化合物(B−1)、光重合開始剤及び有機溶媒以外のその他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤、充填剤、シランカップリング剤、反応性希釈剤、帯電防止剤、有機顔料、スリップ剤、分散剤、チクソトロピー性付与剤(増粘剤)、消泡剤、酸化防止剤等が挙げられる。
<層(B)の厚み>
層(B)の厚みは、硬度の観点から2μm以上であることが好ましく、4μm以上であることが特に好ましい。一方、耐クラック性の観点から、100μm以下であることが好ましく、60μm以下であることがより好ましく、30μm以下であることが更に好ましく、20μm以下であることが特に好ましい。
[層(C)]
本発明の積層体は、更に、以下の層(C)を、基材層上の層(A)とは反対側の面に有していることが耐衝撃性を向上させる観点から好ましい。
層(C)は、ウレタン(メタ)アクリレート又はその変性体、エポキシ(メタ)アクリレート又はその変性体、及びアルキレンオキサイド構造を有する(メタ)アクリレート又はその変性体からなる群のうちの少なくとも1つのアクリロイル基を有する化合物(C−1)を含み、かつ該化合物(C−1)の含有量が硬化性組成物(γ)中のアクリロイル基を有する化合物の合計量に対し20重量%以上である硬化性組成物(γ)及び/又はその硬化物からなる層である。
層(C)の硬化性組成物(γ)は、ウレタン(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート変性体、エポキシ(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート変性体アルキレンオキサイド構造を有する(メタ)アクリレート及びアルキレンオキサイド構造を有する(メタ)アクリレート変性体からなる群のうちの少なくとも1つのアクリロイル基を有する化合物(C−1)を含み、かつ該化合物(C−1)の含有量がアクリロイル基を有する化合物の合計量に対し20重量%以上であるものである。硬化性組成物(β)は化合物(C−1)以外の活性エネルギー線硬化性化合物(C−2)を含むものであってもよい。
<化合物(C−1)>
本発明の積層体は、硬化性組成物(γ)が化合物(C−1)を含むことにより、耐衝撃性が良好なものとなる。化合物(C−1)としては、具体的には以下のような化合物が挙げられる。
ウレタン(メタ)アクリレート又はその変性体としては、イソホロンジイソシアネート(IPDI)のイソシアヌレート体、ポリテトラメチレングリコール(PTMG)及びヒドロキシエチルアクリレート(HEA)の反応物、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)のイソシアネート体とPTMG反応物へのペンタエリスリトールトリアクリレートの反応物等の多官能ウレタン(メタ)アクリレート類;IPDIとポリカーボネートジオールの反応物と、HEAの反応物などのカーボネート結合を有するポリウレタン(メタ)アクリレート類;トリエトキシイソシアヌル酸ジアクリレート、トリエトキシイソシアヌル酸トリアクリレート等のイソシアヌレート環を有するトリエトキシ(メタ)アクリレート類;これらのポリカプロラクトン変性物等が挙げられる。このような化合物の市販品としては、例えば、新中村化学工業社製 UA−160TM、UA−122P、UA−2235PE、UA−4200、東亞合成社製 アロニックスM315、M313等が挙げられる。
エポキシ(メタ)アクリレート又はその変性体としては、エポキシ化合物を原料として反応させて得られる多官能エポキシ(メタ)アクリレート類又はそのポリカプロラクトン変性物等が挙げられ、より具体的には、例えば、ビスフェノールA構造を有するエポキシアクリレート等が挙げられる。このような化合物の市販品としては、例えば、栄社化学社製エポキシエステル3000A、3002A(N)、ダイセル・サイテック社製EBECRYL600等が挙げられる。
アルキレンオキサイド構造を有する(メタ)アクリレート又はその変性体としては、例えば、エチレンオキサイド(EO)変性トリメチル(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド(PO)変性トリメチル(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド(EO)変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド(PO)変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド(EO)変性グリセリントリ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド変性多官能(メタ)アクリレート及びこれらのポリカプロラクトン変性物等が挙げられる。このような化合物の市販品としては、例えば、新中村化学社製エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート(A−TMPT−3EO、A−TMPT−9EO等);新中村化学社製エトキシ化グリセリントリアクリレート(A−GLY−3E、A−GLY−9E等);日立化成社製EO変性ビスフェノールAジアクリレート(FA−321A、FA−324A等);日立化成社製 PO変性ビスフェノールAジアクリレートFA−P324A等が挙げられる。
化合物(C−1)のアクリロイル基の数は1個以上であるが、好ましくは2個以上である。アクリロイル基を2個以上有するものは、硬化性の点で好ましい。一方、塗工時の粘度の観点から、化合物(C−1)のアクリロイル基は7個以下であることが好ましい。
層(C)の硬化性組成物(γ)が化合物(C−1)を含むことにより、本発明の積層体に耐衝撃性が付与される。十分な耐衝撃性を得るため、化合物(C−1)の含有量は硬化性組成物(γ)中のアクリロイル基を有する化合物の合計量に対し、20重量%以上であり、好ましくは25重量%以上であり、より好ましくは30重量%以上である。一方、化合物(C−1)の含有量の上限は特に制限はなく、通常100重量%以下であるが、硬度の観点から、好ましくは90重量%以下であり、より好ましくは80重量%以下である。
<活性エネルギー線硬化性化合物(C−2)>
硬化性組成物(γ)は上記の化合物(C−1)以外の活性エネルギー線硬化性化合物(C−2)を含んでいてもよい。
硬化性組成物(γ)に含まれる活性エネルギー線硬化性化合物(C−2)は、前記化合物(C−1)以外の化合物であり、活性エネルギー線の照射により硬化反応しうる官能基を有するものであれば特に制限されない。
活性エネルギー線硬化性化合物(C−2)はアクリロイル基を含有する化合物であることが好ましく、また、硬化膜の硬度、傷付性が良好となり、また硬化時の反応性も高い点から、活性エネルギー線硬化性化合物(C−2)中のアクリロイル基の数は、2個以上であることが好ましく、3個以上であることがより好ましく、4個以上であることが更に好ましい。また、硬化前の粘度が塗工に適する観点から、9個以下であることが好ましく、7個以下であることがより好ましい。
アクリロイル基を有する活性エネルギー線硬化性化合物(C−2)としては、具体的には、多官能(メタ)アクリレート;エステル変性体、カーボネート変性体等の多官能(メタ)アクリレート誘導体;アクリロイル基を有する化合物で表面を修飾したシリカ等が挙げられる。
多官能(メタ)アクリレート及び多官能(メタ)アクリレート誘導体としては、例えば、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、無水コハク酸へのペンタエリスリトールトリアクリレート付加物、無水コハク酸へのジペンタエリスリトールペンタアクリレート付加物などの多官能アクリレート類;側鎖又は側鎖と末端にアクリロイル基を有するポリエステルオリゴマー(具体的には、東亞合成社製のM8030、M7100等)等のポリエステル(メタ)アクリレート類;ポリカーボネートジオールを用いたオリゴエステルとペンタエリスリトールトリアクリレートの反応物等のカーボネート結合を有するポリエステル(メタ)アクリレート類;これらのポリカプロラクトン変性物等が挙げられる。これらは1種のみで用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、粘度、硬化性、得られる硬化物表面の硬度等から、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート;これらのカプロラクトン変性体等が特に好ましい。
<光重合開始剤>
本発明に用いる硬化性組成物(γ)は、層(C)の硬化性を向上させるために、光重合開始剤を含むことが好ましい。ここで用いることのできる光重合開始剤は、硬化性組成物(α)において挙げたものと同様である。
硬化性組成物(γ)が光重合開始剤を含む場合、その含有量は、硬化性組成物(γ)中のアクリロイル基を有する化合物の合計100重量部に対し、硬化性を向上させる観点から、好ましくは0.01重量部以上であり、より好ましくは0.1重量部以上である。一方、硬化性組成物(γ)を溶液としたときの液の安定性、硬化性組成物(γ)を硬化させた際の耐傷付性を維持する観点から、好ましくは10重量部以下であり、より好ましくは8重量部以下である。
<有機溶媒>
本発明に用いる硬化性組成物(γ)は有機溶媒を含むことが好ましい。ここで用いることのできる有機溶媒の種類及びその量、即ち、硬化性組成物(γ)の固形分濃度は、硬化性組成物(α)において挙げたものと同様である。
<その他の成分>
本発明に用いる硬化性樹脂組成物(γ)は、本発明の効果を阻害しない範囲で上記の化合物(C−1)、活性エネルギー線硬化性化合物(C−2)、光重合開始剤及び有機溶媒以外のその他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤、充填剤、シランカップリング剤、反応性希釈剤、帯電防止剤、有機顔料、スリップ剤、分散剤、チクソトロピー性付与剤(増粘剤)、消泡剤、酸化防止剤、レベリング剤等が挙げられる。
<層(C)の厚み>
層(C)の厚みは、耐衝撃性の観点から1μm以上であることが好ましく、2μm以上であることがより好ましく、3μm以上であることが更に好ましく、4μm以上であることが特に好ましい。一方、耐カール性、耐衝撃性の観点から、100μm以下であることが好ましく、45μm以下であることがより好ましく、40μm以下であることが更に好ましく、35μm以下であることが特に好ましく、30μm以下であることが最も好ましい。
また、前述の層(A)と層(C)とは、その厚み比が層(A)の厚み:層(C)の厚みが0.5:2〜2:0.5の範囲となるように形成されることが好ましく、0.5:1.5〜1.5:0.5の範囲となるように形成されることがより好ましく、0.5:1〜1:0.5の範囲となるように形成されることが更に好ましい。
層(A)と層(C)の厚み比が上記範囲であることにより、本発明の積層体の耐カール性がより良好なものとなる傾向にある。
[積層体の製造方法]
本発明の積層体は、基材層上に各層を順次積層することにより製造することができる。本発明の積層体の製造方法は特に制限されないが、通常、基材層上に層(B)を形成し、次いで層(A)を形成することにより得ることができる。また、前述の層(C)を基材層上の層(A)と逆側の面に形成してもよく、その形成の順序は層(B)、層(A)の前後のいずれであってもよく、また、同時であってもよい。
層(B),(A)、必要に応じて形成される層(C)のそれぞれの層は、例えば、硬化性組成物(β)、硬化性組成物(α)、必要に応じて硬化性組成物(γ)を基材上(層(A)の場合は層(B)上)に塗布(塗工)し、必要に応じて40〜100℃程度で乾燥させた後、これに活性エネルギー線を照射して形成することができる。なお、基材層が前記層(1)と層(2)の積層構造の場合、硬化性組成物(β)は層(1)側に塗布し、硬化性組成物(γ)は層(2)側に塗布することが特に好ましい。これらの硬化性組成物を基材上に塗布(塗工)する方法としては、例えば、リバースコート法、グラビアコート法、ロッドコート法、バーコート法、マイヤーバーコート法、ダイコート法、スプレーコート法等が挙げられる。また、本発明のこれらの硬化性組成物を硬化させた硬化物の形態は特に制限されないが、通常、基材上で活性エネルギー線を照射して硬化させて得られた硬化物は基材の少なくとも片面の一部に硬化被膜(硬化膜)の状態として得ることができる。
なお、本発明の積層体において、基材層と層(B)との間、及び層(B)と層(A)との間、更に基材層と層(C)との間のそれぞれにおいて、本発明の効果を阻害しない範囲でその他の層が積層されていてもよい。
また、本発明の積層体の総厚みは、各層の厚みを確保して、各々の機能を十分に発揮させる観点から0.3mm以上であることが好ましく、0.4mm以上であることがより好ましく、0.5mm以上であることが特に好ましい。一方、本発明の積層体が適用される製品の薄型化、軽量化の観点から2.0mm以下であることが好ましく、1.9mm以下であることがより好ましく、1.8mm以下であることが特に好ましい。
本発明の積層体において、硬化性組成物(α),(β)、必要に応じて用いられる硬化性組成物(γ)を硬化させる際に用いることのできる活性エネルギー線には、紫外線、電子線、X線、赤外線及び可視光線が含まれる。これらの活性エネルギー線のうち硬化性と樹脂劣化防止の観点から好ましいのは紫外線及び電子線である。
本発明の積層体を製造する際、硬化性組成物(α),(β)、必要に応じて用いられる硬化性組成物(γ)を紫外線照射により硬化させる場合には、種々の紫外線照射装置を用いることができ、その光源としてはキセノンランプ、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、LED−UVランプ等を使用することができる。紫外線の照射量(単位はmJ/cm)は、通常10〜10,000mJ/cmであり、硬化性組成物(α),(β)、必要に応じて用いられる硬化性組成物(γ)の硬化性、硬化物(硬化膜)の可撓性等の観点から好ましくは15〜5,000mJ/cmであり、より好ましくは200〜3,000mJ/cmである。
なお、基材層上に硬化性組成物(β)により層(B)を形成した後、硬化性組成物(α)により層(A)を形成する際は、硬化性組成物(β)を基材層に塗布して硬化させる際に、20〜200mJ/cm程度の少ない照射量である程度硬化させた後、硬化性組成物(α)を塗布し、300〜500mJ/cm程度の照射量で層(B)と層(A)を共に完全硬化させるようにすることもできる。
また、本発明の積層体を製造する際、硬化性組成物(α),(β)、必要に応じて用いられる硬化性組成物(γ)を電子線照射で硬化させる場合は、種々の電子線照射装置を使用することができる。電子線の照射量(Mrad)は、通常、0.5〜20Mradであり、硬化性組成物(α),(β)、必要に応じて用いられる硬化性組成物(γ)の硬化性、硬化物の可撓性、基材の損傷防止等の観点から好ましくは1〜15Mradである。
〔用途〕
本発明の積層体は、耐傷付性、耐久性、硬度、耐衝撃性、耐クラック性、耐衝撃性、透明性等に優れたものである。このため、本発明の積層体は、タッチパネル、液晶テレビ等の光学ディスプレイ用部品;ランプ関連物品、ウインドウ関連物品(リアウィンドウ、サイドウィンドウ、天窓等)等の自動車関連部品;各種電気機器の筐体、化粧板、家具等の生活関連物品等の幅広い物品の表面カバーに好適に用いることができる。これらの中でもタッチパネル、液晶テレビ等の光学ディスプレイ用部品の表面カバー、即ち表示体カバーとして特に好適に用いることができ、更にはこの表示体カバーを備えた、PDPモジュール、タッチパネルモジュール、有機ELモジュール等のモジュールとして好適に用いることができる。なお、本発明の積層体を表示体カバーとして用いる場合、表示体は前面に高硬度、耐傷付性、防汚性の機能を有することが好ましく、また、裏面に耐衝撃性、加工工程に耐えうる硬度、耐傷付性の機能を有することが好ましいことから、本発明の積層体として、層(C)を有する場合、層(A)を表面側に有し、層(C)を裏面側に有する表示体カバーとすることが特に好ましい。
以下、実施例を用いて本発明の内容を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例によって限定されるものではない。以下の実施例における各種の製造条件や評価結果の値は、本発明の実施態様における上限又は下限の好ましい値としての意味をもつものであり、好ましい範囲は前記した上限又は下限の値と、下記実施例の値又は実施例同士の値との組み合わせで規定される範囲であってもよい。
〔合成例〕
<合成例1>
攪拌器、還流冷却器、滴下漏斗及び温度計を取り付けた反応器に、MEK−ST(メチルエチルケトン(MEK)分散コロイダルシリカゾル(日産化学工業社製 商品名MEK−ST、平均一次粒子径:15nm(カタログ値)、シリカ固形分:30重量%))を88重量部、KBM−5103(γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製 商品名KBM−5103))を12重量部入れ、更にメチルエチルケトンを入れ、固形分濃度が30重量%となるよう希釈して攪拌した後、メチルハイドロキノン0.05重量部、水1重量部、アセチルアセトンアルミニウム0.5重量部、メチルエチルケトン1重量部を入れてオイルバスにて70℃に加熱しながら4時間反応させ、表面がアクリロイル基を有する化合物により修飾されてなるシリカ粒子(F1)を得た。シリカ粒子表面に修飾されるアクリロイル基の量は0.51mmol/gであった。
〔基材・原料等〕
以下において、使用した基材、原料等とその略称は以下の通りである。
<基材>
PMMA/PCシート:日本ウェーブロック社製 ShineTech AW−10(厚み:1.0mm(PMMA層の厚み:0.054mm、PC層の厚み:0.95mm))
<化合物(A−1)>
・DAC−HP:ダイキン工業株式会社製 オプツール(登録商標) DAC−HP(パーフルオロポリエーテル構造とアクリロイル基とを有する化合物)
<化合物(C−1)>
・UA−160TM:新中村化学工業社製 UA−160TM(ポリテトラメチレングリコール構造を有するウレタンアクリレート、アクリロイル基が2個)
・M313:東亞合成株式会社製 アロニックスM313(イソシアヌル酸エチレンオキサイド(EO)変性ジアクリレート(ウレタンアクリレートの一種)及びイソシアヌル酸エチレンオキサイド(EO)変性トリアクリレート(ウレタンアクリレートの一種)の混合物、アクリロイル基が3個)
<化合物(A−1)と化合物(C−1)以外のアクリロイル基を有する化合物>
・DPHA:日本化薬株式会社製 KAYARAD DPHA(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとジペンタエリスリトールペンタアクリレートとの混合物)(活性エネルギー線硬化性化合物(A−2)、化合物(B−1)及び活性エネルギー線硬化性化合物(C−2)のいずれにも該当する化合物)
・シリカ粒子(F1):合成例1で得られた表面アクリロイル基修飾シリカ粒子(F1)(活性エネルギー線硬化性化合物(A−2)、化合物(B−1)及び活性エネルギー線硬化性化合物(C−2)のいずれにも該当する化合物)
〔硬化性組成物(α)の調製〕
<配合液1>
DAC−HP、DPHA及びM313を固形分重量比で1.5:86.5:12になるように配合し、更に光重合開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(BASF社製「Irgacure(登録商標)184」)を2.5重量部添加した後、[プロピレングリコールモノメチルエーテルの重量]/[メチルイソブチルケトンの重量]=1/1の混合溶媒で固形分が40重量%になるように希釈し、配合液1を得た。
〔硬化性組成物(β)の調製〕
<配合液2>
DPHA及びM313を固形分重量比で90:10になるように配合し、更に光重合開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(BASF社製「Irgacure(登録商標)184」)を2.5重量部添加した後、[プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの重量]/[メチルイソブチルケトンの重量]=1/1(重量比)の混合溶媒で固形分が60重量%になるように希釈し、配合液2を得た。この液のアクリル当量は105g/molであった。
<配合液3>
合成例1で得られた表面アクリロイル基修飾シリカ粒子(F1)の溶液、DPHA及びM313を固形分重量比で25:70:5になるように配合し、更に光重合開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(BASF社製「Irgacure(登録商標)184」)を2.5重量部添加した後、プロピレングリコールモノメチルエーテルの溶媒で固形分が60重量%になるように希釈し、配合液3を得た。この液のアクリル当量は566g/molであった。
〔硬化性組成物(γ)の調製〕
<配合液4>
DPHA及びUA−160TMを固形分比で60:40になるように配合し、更に光重合開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(BASF社製「Irgacure(登録商標)184」)を4.5重量部添加した後、[プロピレングリコールモノメチルエーテルの重量]/[メチルイソブチルケトンの重量]=1/1(重量比)の混合溶媒で固形分が40重量%になるように希釈し、配合液4を得た。
[積層体の評価方法]
以下の実施例・比較例で得られた積層体は以下の方法により評価した。
(1)耐傷付性
#0000のスチールウールを用い、加重160g/cmにて硬化させた層(A)の表面を300往復擦り、試験後の硬化膜の傷付きの程度を以下の通り評価した。
○:傷が100本以下であるもの
×:傷が100本より多いもの
(2)硬度(鉛筆硬度)
硬化させた層(A)、層(A)の逆側表面について、JIS準拠鉛筆硬度計(太佑機材社製)を用い、JIS K−5400の条件に基づき測定を行い、傷の入らない最も硬い鉛筆の番手を確認し、以下の基準で評価した。
(層(A)側)
○:鉛筆硬度が8H以上であるもの
△:鉛筆硬度が6H〜7Hであるもの
×:鉛筆硬度が5H以下であるもの
(層(A)の逆側)
◎:鉛筆硬度がHB以上であるもの
○:鉛筆硬度が2Bであるもの
×:鉛筆硬度が2Bより悪いもの
(3)耐久性
硬化させた層(A)の表面を、プラスチック消しゴム(シード社製「レーダーS−60」)で2,000g/cmにて500往復擦り、試験前後の硬化膜の傷付きの程度を水接触角測定機器(協和界面科学社製「Drop Master DM500」)にて以下の通り評価した。
○:試験前の水接触角が100°以上であり、且つ試験前後の水接触角低下が10°以下のもの
×:試験前の水接触角が100°未満のもの及び/又は試験前後の水接触角低下が10°超過のもの
(4)耐クラック性
硬化後、層(B)及び層(A)の硬化膜のクラック(ひび割れ)の有無を目視にて確認し、以下の通り評価した。
○:層(B)と層(A)の両方にクラックが入っていないもの
×:層(B)と層(A)の少なくとも一つの層にクラックが入っているもの
(5)耐衝撃性
層(A)側を上面に、基材側を下面に置いた、幅12.6cm、長さ22.4cmの試験片の中心に向って、50gの鋼球を上方から自然落下させる剛球落下試験を行い、耐衝撃性を以下の通り評価した。なお、鋼球を落下させる高さは5cmずつ変更して実施した。
○:20cmの上方から落下させても割れずにかつ傷が付かなかったもの
×:上方20cm以下の位置からの落下で割れた又は傷が付いたもの
(6)透明性(ヘーズ)
JIS K−7136に従ってヘーズメーター(村上色彩技術研究所製「HAZE METER HM−65W」)にてヘーズ値を測定し、0.3%以下を合格として以下の通り評価した。
○:ヘーズ値が0.3以下であるもの
×:ヘーズ値が0.3より大きいもの
[実施例・比較例]
<実施例1>
PMMA/PCシートのPMMA基材面に配合液2を乾燥後の塗膜が15μmとなるようにバーコーターにて塗布し、80℃で1.5分間加熱して塗膜を乾燥させた。その後、出力80W/cmの高圧水銀灯を使用し、100mW/cm、50mJ/cmの紫外線を照射して硬化膜を被覆させ、PMMA基材面上に層(B)を形成した。
次に、層(B)上に配合液1を乾燥後の塗膜が5μmとなるようにバーコーターにて塗布し、80℃で1.5分間加熱して塗膜を乾燥させた。その後、出力120W/cmの高圧水銀灯を使用し、450mW/cm、500mJ/cmの紫外線を照射して硬化膜を被覆させ、層(B)上に層(A)を形成して積層体を得た。この積層体について上記(1)〜(6)の評価を行い、これらの結果を表−1に示した。
<実施例2>
層(B)の形成に、配合液2の代わりに配合液3を用いた以外は実施例1と同様に実施して積層体を得た。この積層体について上記(1)〜(6)の評価を行い、これらの結果を表−1に示した。
<実施例3>
層(A)、(B)の形成の他、PC基材面に配合液4を用いて層(A)と同様にして基材のPC基材面上に層(C)を形成して積層体を得た。この積層体について上記(1)〜(6)の評価を行い、これらの結果を表−1に示した。
<比較例1>
PMMA/PCシートのPMMA基材面に層(B)は形成せずに、配合液1を乾燥後の塗膜が10μmとなるようにバーコーターにて塗布した。この塗膜を80℃で1.5分間加熱して乾燥させた後、出力120W/cmの高圧水銀灯を使用し、450mW/cm、500mJ/cmの紫外線を照射して硬化膜を被覆させ、基材のPMMA基材面上に層(A)を形成して積層体を得た。なお、この積層体は実施例1と同一の積層体である。この積層体について上記(1)〜(6)の評価を行い、これらの結果を表−1に示した。
<比較例2>
層(A)の形成にあたり、配合液1を乾燥後の塗膜が20μmとなるように形成した以外は比較例1と同様にして積層体を得た。この積層体について上記(1)〜(6)の評価を行い、これらの結果を表−1に示した。
Figure 0006772461
[評価結果]
表−1からわかるように、実施例1〜3の積層体は、層(A)側の耐傷付性、硬度、耐久性、耐クラック性、耐衝撃性に優れ、透明性も良好であった。特に、基材層と層(A)との間に層(B)を形成したことで、硬度が大きく向上したことがわかる。また、実施例3は層(C)を形成した為、層(C)側の硬度も良好であった。一方、比較例1では、層(B)を形成しなかったことで、硬度が満足に向上しなかった。比較例2では、層(B)を形成せず、層(A)を20μmの厚さに形成したことで硬度は向上したものの耐クラック性が悪化した。

Claims (7)

  1. 厚みが0.3〜30mmの基材層の一方の面に、アクリロイル基を有する化合物(B−1)及び有機溶媒を含む硬化性組成物(β)(ただし、下記硬化性組成物(α)を除く)を塗布し、活性エネルギー線を照射する操作を含む工程により硬化させて層(B)を形成し、当該層(B)の表面に、パーフルオロポリエーテル構造とアクリロイル基とを有する化合物(A−1)を少なくとも含む硬化性組成物(α)を塗布し、活性エネルギー線を照射する操作を含む工程により硬化させて厚みが1〜100μmの層(A)を形成する積層体の製造方法。
  2. 硬化性組成物(α)が、前記化合物(A−1)を、硬化性組成物(α)中のアクリロイル基を有する化合物の合計量に対し、0.05〜10重量%含有する、請求項1に記載の積層体の製造方法
  3. 硬化性組成物(β)が、多官能(メタ)アクリレート及び/又はアクリロイル基を有する化合物で修飾されたシリカを含む、請求項1又は2に記載の積層体の製造方法
  4. 層(B)の厚みが、2〜100μmである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の積層体の製造方法
  5. 前記基材層が、少なくともポリメチルメタクリレートからなる層とポリカーボネートからなる層との2層で構成されるものである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の積層体の製造方法
  6. 積層体からなる表示体カバーの製造方法であって、請求項1〜5のいずれか1項に記載の積層体の製造方法を含む表示体カバーの製造方法
  7. 表示体カバーを備えたモジュールの製造方法であって、請求項6に記載の表示体カバーの製造方法を含むモジュールの製造方法
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