JP6770681B2 - 密閉型二次電池 - Google Patents
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Description
ここで開示される密閉型二次電池は、正極シートと負極シートとをセパレータを介して複数枚積層させることによって構成された積層電極体と、積層電極体を収容する電池ケースと、積層電極体と電気的に接続された電極端子と、積層電極体と電極端子との間の導電経路に配設され、電池ケース内の圧力が上昇した際に導電経路を切断する電流遮断機構とを備えている。
そして、ここで開示される密閉型二次電池では、正極シートに対向するセパレータの表面に正極シートとセパレータとを接着させる接着層が形成されており、当該接着層に正極シートの正極活物質層の質量に対して0.1wt%〜10wt%の炭酸リチウムが含まれている。
この接着層は、積層電極体を作製するに際して正極シートと負極シートとを高速で積層させても各々のシート状部材がずれることがないように、セパレータの表面に設けられる層であり、正極シートの正極活物質層に対向するように形成されている。
本発明者は、この接着層に炭酸リチウムを添加すれば、過充電の初期において十分な量のガスを発生させることができ、かつ、正極活物質に直接添加した場合のような正極のエネルギー密度や出力の低下も生じないと考えた。そして、種々の実験を重ねた結果、正極シートの正極活物質層の質量に対して0.1wt%〜10wt%の割合で接着層に炭酸リチウムを含有させることによって、正極のエネルギー密度や出力を低下させることなく、過充電の初期に十分な量のガスを発生させることができることを見出した。
なお、本明細書において「リチウムイオン二次電池」とは、電解質イオンとしてリチウムイオンを利用し、リチウムイオンの移動に伴う正負極間の電荷の移動により充放電が実現される二次電池をいう。また、本明細書において「活物質」とは、正極側又は負極側において蓄電に関与する物質(化合物)をいう。即ち、電池の充放電時において電子の吸蔵および放出に関与する物質をいう。
図1は本実施形態に係るリチウムイオン二次電池の外形を模式的に示す斜視図である。本実施形態に係るリチウムイオン二次電池10は、図1に示すような扁平な角型の電池ケース12の内部に、積層電極体(図示省略)が電解液と共に収容されることにより構成されている。
電池ケース12は、一端(通常の使用状態における上端部に相当する。)に開口部を有する箱形(すなわち有底直方体状)のケース本体14と、矩形の板状部材である封口板16を備えている。そして、この封口板16がケース本体14上端の開口部を塞ぐように、ケース本体14上端に溶接されることにより角型の電池ケース12が構成されている。このリチウムイオン二次電池10では、かかる電池ケース12の内部に積層電極体と電解液が収納されている。
電解液には、従来からリチウムイオン二次電池に用いられる非水電解液と同様のものを特に限定なく使用することができる。この電解液の好適例としては、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとの混合溶媒(例えば質量比1:1)にLiPF6を約1mol/Lの濃度で含有させた非水電解液が挙げられる。なお、電解液の代わりに固体状やゲル状の電解質を採用してもよい。
図2は本実施形態における積層電極体を構成する各部材を模式的に示す説明図であり、図3は本実施形態における積層電極体の構成を模式的に示す斜視図である。
図2に示すように、本実施形態における積層電極体50は、矩形状の正極シート51と、該正極シート51と同様の矩形状の負極シート55とを、同様の矩形シート状のセパレータ58を間に介在させつつ交互に複数枚積層することにより構成されている。
正極シート51は、シート状の正極集電体52の両面に正極活物質層53が形成されることによって構成される。一方、負極シート55は、シート状の負極集電体56の両面に負極活物質層57が形成されることによって構成される。しかし、図示されるように、矩形状の正極集電体52の長辺方向の一方の端部には、短辺方向に沿って帯状に正極活物質層53を有しない正極集電体露出部52Aが形成されている。同様に、矩形状の負極集電体56の長辺方向の他方の端部には、短辺方向に沿って帯状に負極活物質層57を有しない負極集電体露出部56Aが形成されている。
上記した通り、正極シート51は、アルミニウム箔などのシート状の正極集電体52と、当該正極集電体52の両面に形成された正極活物質層53とから構成されている。この正極活物質層53には、正極活物質が含まれている。かかる正極活物質には、従来からリチウムイオン二次電池に用いられる物質の一種または二種以上を特に限定なく使用することができる。具体的には、正極活物質には、リチウムと遷移金属元素とを主要構成金属元素として含むリチウム遷移金属複合酸化物であるリチウムニッケル系複合酸化物(例えばLiNiO2)や、リチウムコバルト系複合酸化物(例えばLiCoO2)や、リチウムマンガン系複合酸化物(例えばLiMn2O4)や、リチウムニッケルコバルトマンガン系複合酸化物(例えばLiNi1/3Co1/3Mn1/3O2)等を用いることができる。また、正極活物質の他の例としては、一般式がLiMPO4(式中のMはCo、Ni、Mn、Feのうちの少なくとも一種以上の元素)で表記されるポリアニオン系(例えばオリビン系)の化合物(例えばLiFePO4、LiMnPO4)等も挙げられる。
負極シート55は、上記したように、銅箔等のシート状の負極集電体56と、当該負極集電体56の両面に形成された負極活物質層57とから構成されている。この負極活物質層57に含まれる負極活物質についても、従来からリチウムイオン二次電池に用いられる物質の一種または二種以上を特に限定なく使用することができる。負極活物質の好適例としては、グラファイトカーボン、アモルファスカーボン等の炭素系材料、リチウム遷移金属酸化物、リチウム遷移金属窒化物等が挙げられる。
セパレータ58は、正極シート51と負極シート55との間に配置される多孔質の絶縁部材である。かかるセパレータ58の種類は、特に限定されず、従来公知の微多孔質シートからなるセパレータを特に制限なく使用することができる。例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン樹脂から成る多孔質シート(フィルム、不織布等)が挙げられる。かかる多孔質シートは、単層構造であってもよく、二層以上の複数構造(例えば、PE層の両面にPP層が積層された三層構造)であってもよい。
また、セパレータ58の片面または両面に、多孔質の絶縁性耐熱層(HRL層:Heat Resistance Layer)を備える構成のものであってもよい。この耐熱層は、例えば、無機フィラーとバインダとを含む層(フィラー層ともいう。)であり得る。無機フィラーとしては、例えばアルミナ、ベーマイト、シリカ等を好ましく採用し得る。かかるセパレータの厚みは限定されないが、例えば10μm〜40μmの範囲内で設定することが好ましい。
かかる接着層には、所定の接着性(または粘着性)を有し、かつ、後述する炭酸リチウムの分解を阻害しないような材料を用いることができる。例えば、フッ素系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂等の接着性(若しくは粘着性)の樹脂組成物を用いることができる。なお、接着層の厚みは特に限定されないが、0.5μm〜3.0μm程度が適当である。
この接着層に含まれた炭酸リチウムは、高温環境において分解されて炭酸ガスを生成するため、過充電によって電池内部の温度が上昇した際に電池ケース12内の圧力を早期に上昇させることができる。後に詳しく説明するが、本実施形態では、このように接着層に炭酸リチウムが含まれているため、過充電の初期に十分な量のガスを発生させて電流遮断機構を適切なタイミングで作動させることができる。
次に、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池10の電流遮断機構80を説明する。かかる電流遮断機構80は、上記した積層電極体50(図3参照)と正極端子20(図1参照)との間の導電経路に配設されている。図4は本実施形態に係るリチウムイオン二次電池の電流遮断機構を模式的に示す断面図であり、図1のIV−IV断面図である。
本実施の形態に係るリチウムイオン二次電池10は、図1に示すように、上記した積層電極体に電気的に接続された外部接続用の電極端子として、負極端子19と正極端子20を備えている。具体的には、負極端子19は、図3に示す積層電極体50の負極集電体露出部56Aに接続されており、正極端子20は積層電極体50の正極集電体露出部52Aに接続されている。
そして、本実施の形態に係るリチウムイオン二次電池10では、集電部材72と電流遮断弁(反転板)30とを備えた電流遮断機構80が正極端子20の下方に設けられている。この電流遮断機構80は、積層電極体50(図3参照)と正極端子20との間の導電経路に配設されており、過充電によって電池ケース12の内圧が上昇した際に、集電部材72と電流遮断弁30とを離間させることにより、積層電極体と正極端子20との間の導電経路を遮断するように構成されている。以下、電流遮断機構80について具体的に説明する。
集電部材72は、電池ケース12の一つの壁面を構成する封口板16と積層電極体との間に配置された板状の部材である。この集電部材72は、導電性に優れた材料(アルミニウムなど)により構成されており、図示は省略するが、電池ケース12内部に収納された積層電極体50の正極集電体露出部52A(図3参照)と電気的に接続されている。また、集電部材72には、周囲よりも相対的に薄肉に形成された薄肉部74が設けられており、この薄肉部74に積層電極体側(図4中の紙面下方)から封口板16側にガスの流通が可能なガス流通孔76が形成されている。
電流遮断弁30は、上記封口板16と集電部材72との間に配置されており、正極端子20と電気的に接続されているリング状のフランジ部30aと、封口板16側からみて中央部30b1が周縁部よりも凹んだ椀状の反転板30bを備えている。そして、電流遮断弁30の反転板30bの中央部30b1の一部は、集電部材72の薄肉部74に接合されてガス流通孔76を塞いでいる。
次に、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池10において、過充電が生じた場合について説明する。
例えば、図5(a)の点線に示すように、一般的なリチウムイオン二次電池では、充電量(SOC:State of Charge)が過剰に上昇して過充電状態となった場合に電解液の分解に由来するガスのみが発生するため、電池内圧(MPa)の上昇が遅く、CID(電流遮断機構)の作動内圧まで到達するまでに時間が掛かる。
これに対して、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池10では、過充電が発生した場合に、電解液の分解に由来するガスだけでなく、炭酸リチウムの分解に由来する炭酸ガスも発生するため、図5(b)に示すように、SOCが過剰に上昇して過充電状態になると、直ちに電池内圧(MPa)が上昇する。この結果、過充電の初期において電流遮断機構を作動させて過充電の進行を防止することができる。
以下、本発明に関する試験例を説明するが、かかる説明は本発明を限定することを意図したものではない。
(1)試験例1〜試験例8
試験例1〜試験例8では、セパレータ表面の接着層に炭酸リチウム(Li2CO3)が添加されたリチウムイオン二次電池を構築した。なお、表1に示すように、試験例1〜試験例8の各々で、正極シートの正極活物質層の質量に対する炭酸リチウムの添加量を異ならせた。
先ず、正極活物質として平均粒径6μmのリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(LiNi0.33Co0.33Mn0.33O2)を用い、当該正極活物質と導電材(粒状アセチレンブラック)とバインダ(PVDF)とを93:4:3の割合で混合した後、得られた混合物と分散媒(NMP:N−メチル−2−ピロリドン)とを混練して固形分率70%の正極ペーストを調製した。
次に、調製した正極ペーストを、ダイコーターを用いて正極集電体(厚さ12μmのアルミ箔)の両面に塗布した後、乾燥炉で乾燥させて正極活物質層を形成した。このとき、乾燥後の正極活物質層の片面当たりの目付量が20mg/cm2となるように正極ペーストの塗布量を調製した。そして、総厚が155μm、正極活物質層の密度が2.80g/cm3となるように正極シートを圧延プレス機で圧延した。
試験例9では、比較対象として、電池内部に炭酸リチウムが添加されていないリチウムイオン二次電池を構築した。なお、その他の条件は試験例1〜試験例8と同じ条件に設定した。
試験例10では、正極シートの正極活物質層に炭酸リチウムが添加されたリチウムイオン二次電池を構築した。なお、その他の条件は試験例7と同じ条件に設定しており、炭酸リチウムの添加量についても、試験例7と同じ10wt%に設定した。
試験例11では、正極活物質層の表面に炭酸リチウムを含む混合液を塗布し、当該混合液を乾燥させることによって、正極活物質層の表面に炭酸リチウムの層が形成されたリチウムイオン二次電池を構築した。なお、その他の条件は試験例7と同じ条件に設定しており、炭酸リチウムの添加量についても、試験例7と同じ10wt%に設定した。
試験例12では、セパレータの表面に、多孔質の無機フィラーで形成されたHRL層を形成し、かかるHRL層に炭酸リチウムを含有させた。なお、その他の条件は試験例7と同じ条件に設定しており、炭酸リチウムの添加量についても、試験例7と同じ10wt%に設定した。
(1)過充電時のガス発生量
上記した試験例1〜試験例12で構築した各々のリチウムイオン二次電池に対して、以下の手順に従って、過充電におけるガス発生量を測定した。
試験例1〜試験例12で作製した電池に対して、以下の条件で初期充放電(コンディショニング)を行った。なお、コンディショニング中の環境温度は25℃に設定した。
1サイクル目は電流密度0.33mA/cm2(C/4相当)の定電流で上限電圧4.1Vまで充電した後に7時間保持した。そして、電流密度0.33mA/cm2の定電流で下限電圧3.0Vまで放電した。
2から4サイクル目までは、電流密度1.3mA/cm2(1C相当)の定電流で上限電圧4.1Vまで充電した後に2.5時間保持した。そして、電流密度1.3mA/cm2の定電流で下限電圧3.0Vまで放電した。
5サイクル目は、電流密度0.33mA/cm2の定電流で上限電圧4.1Vまで充電した後に7時間保持した。そして、電流密度0.33mA/cm2の定電流で下限電圧3.0Vまで放電した。
試験例1〜試験例12で構築した電池を60℃の環境温度の下でSOC140%まで過充電し、過充電中に発生したガスの量をアルキメデス法によって測定した。
具体的には、まず、構築直後の電池をフッ素系不活性液体で満たした容器の中に浸漬して、浸漬前後の重量変化からセルの体積A(cm3)を測定した。次に、上記したコンディショニングを行った後のセルの体積B(cm3)を測定し、体積Bから体積Aを差し引くことによって、コンディショニングで生じたガス発生量(B−A(cm3))を算出した。そして、コンディショニング後の電池を、上記したように60℃の環境温度の下でSOC140%まで過充電し、上記と同様の手順で過充電後のセルの体積C(cm3)を測定し、体積Cから体積Bを差し引くことによって過充電におけるガス発生量(C−B(cm3))を算出した。結果を表1に示す。
試験例1〜試験例12で構築した各々の電池について、以下の手順に基づいて初期容量(mAh/g)と抵抗(mΩ)を測定した。
上記したコンディショニング処理の1サイクル目の放電における放電容量を測定し、かかる1サイクル目の放電容量を、試験例1〜試験例12の電池の初期容量とした。結果を表1に示す。
25℃の温度条件下、1Cの充電レートでSOC60%の充電状態に調整した後、25℃の温度条件下、15Cの放電レートで10秒間の定電流放電を行い、0秒〜10秒間で降下した電池電圧ΔVを測定し、その電圧ΔVと放電電流とからオームの法則により試験例1〜試験例12の電池の抵抗値(mΩ)を求めた。結果を表1に示す。
以上の結果より、試験例7のように、セパレータ表面の接着層に炭酸リチウムを添加することによって、通常の充放電において正極のエネルギー密度や出力を低下させることなく、過充電状態において十分な量のガスを発生させることができることが確認できた。
一方、炭酸リチウムの含有量が10wt%を超えた試験例8では、他の試験例1〜試験例7の電池と比較して、抵抗値が上昇していた。このことから、セパレータ表面の接着層における炭酸リチウムの含有量は、正極シートの正極活物質層の質量に対して0.1wt%〜10wt%にする必要があることが分かった。
12 電池ケース
14 ケース本体
16 封口板
16A 正極装着孔
19 負極端子
20 正極端子
26 絶縁材
30 電流遮断弁
30a フランジ部
30b 反転板
30b1 反転板の中央部
50 積層電極体
51 正極シート
52 正極集電体
52A 正極集電体露出部
53 正極活物質層
55 負極シート
56 負極集電体
56A 負極集電体露出部
57 負極活物質層
58 セパレータ
72 集電部材
74 薄肉部
76 ガス流通孔
80 電流遮断機構
Claims (1)
- 正極シートと負極シートとをセパレータを介して複数枚積層させることによって構成された積層電極体と、
前記積層電極体を収容する電池ケースと、
前記積層電極体と電気的に接続された電極端子と、
前記積層電極体と前記電極端子との間の導電経路に配設され、前記電池ケース内の圧力が上昇した際に前記導電経路を切断する電流遮断機構とを備えた密閉型二次電池であって、
前記セパレータの両面に接着層が形成されており、前記積層電極体を構成する前記正極シートと前記負極シートと前記セパレータとが前記接着層を介して接着され、
当該接着層に前記正極シートの正極活物質層の質量に対して0.1wt%〜10wt%の炭酸リチウムが含まれている、密閉型二次電池。
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