しかし、上記の文献に開示された装置で採用されている微細気泡の発生機構は、ベンチュリ管などの気液混合ノズルに外気を吸引し、混合してマイクロバブル化するものや、空気等の加圧溶解を利用するものであり、空気をミキシングするためポンプ等の圧送機構や加圧機構が必要であり、また、処理済みの洗浄水を貯留するタンクも追加する必要がある。結果、特許文献3の図1のごとく、大掛かりな微細気泡発生装置を歯科ユニット本体の外に設置せざるを得なくなり、装置コストが高騰し設置の手間がかかること、歯科医院のフロアでの設置スペース確保が難しいなどの理由により、ほとんど採用が進んでいないのが現状である。
また、口腔洗浄用のノズルから噴射される洗浄水の流量が毎分数十ccから高々200cc程度までと非常に小さく、通常の方法では気泡発生効率が十分に確保できず、微細気泡特有の洗浄性向上効果が十分に得られないケースがほとんどである。
本発明の課題は、極めて単純かつ小型の液体処理ノズルを機構上の要部とし、歯科ユニット周辺の組み込みスペースや施工上の問題も容易に解決できるとともに、口腔内洗浄の低流量レベルでも配管内の清浄化や、口腔内のバイオフィルムないしプラークの除去効果が高レベルにて達成できる歯科ユニット用洗浄水供給装置と、それに用いる液体処理ノズルとを提供することにある。
上記の課題を解決するために、本発明の歯科ユニット用洗浄水供給装置は、
複数の口腔内洗浄ノズルにつながる洗浄水供給チューブと、うがい用洗浄水の供給配管とに洗浄水を分配供給する歯科ユニット用洗浄水供給装置であって、
うがい用洗浄水の吐出部を備えたユニット本体の筐体、又は該ユニット本体に隣接配置された歯科治療椅子に付随する配管ボックス筐体のいずれかを対象筐体として、該対象筐体に全部または一部が内蔵される主洗浄水配管と、
主洗浄水配管への洗浄水の供給を開閉する止水栓と、
主洗浄水配管の対象筐体の内蔵区間上にて、洗浄水供給チューブ及びうがい用洗浄水の供給配管が各々分岐する給水分岐部と止水栓との間に着脱可能に設けられる液体処理ノズルであって、一端に液体入口を、他端に液体出口を有する液体流路が形成されたノズル本体と、液体流路の内面から各々突出するとともに外周面に周方向の山部と高流速部となる谷部とが複数交互に連なるように形成された衝突部を有する処理コア部とを備えた液体処理ノズルと、を備えたことを特徴とする。
また、本発明の液体処理ノズルは、本発明の歯科ユニット用洗浄水供給装置に組み込んで使用され、一端に液体入口を、他端に液体出口を有する液体流路が形成されるとともに、主洗浄水配管側の継手部に着脱可能に係合するノズル側係合部が液体入口側及び液体出口側に各々設けられたノズル本体と、液体流路の内面から各々突出するとともに外周面に周方向の山部と高流速部となる谷部とが複数交互に連なるように形成された衝突部を有する処理コア部とを備えた液体処理ノズルと、を備えたことを特徴とする。
なお、主洗浄水配管に液体処理ノズルは1個ないし並列形態に複数個取り付けることができるが、並列形態に複数個取り付ける場合、全流通断面積はそれら複数の液体処理ノズルについて合計した値を意味する。複数の液体処理ノズルを直列に接続することも可能であるが、この場合の全流通断面積は、それら直列の液体処理ノズルのうち最小のものの値として定義する。
歯科ユニットの場合、上水道ライン等を水供給源として、毎分300cc以上2リットル以下程度の比較的大流量のうがい洗浄水と、毎分30cc程度から300cc以下程度の小流量の口腔内処置時洗浄水との、流量の大きく異なる2つの洗浄水供給系統の両立が求められる。このうち、うがい用洗浄水の供給配管については比較的流量もあり、塩素やオゾンで消毒がなされた水道水が十分流動することで、配管内での細菌類の繁殖やバイオフィルム形成による汚染は比較的起こりにくい。しかし、口腔内洗浄ノズルにつながる洗浄水供給チューブに関しては洗浄水の流量は極端に小さく、汚染が進みやすい問題を抱えている。
特に、週末や、年末年始、お盆、ゴールデンウィークといった、歯科医院が長期間休業となる期間は、チューブ内に滞留している少量の洗浄水の消毒成分が抜け飛びやすく、バイオフィルムの形成が進行しやすい。例えば、休み明けに業務が再開されても、チューブ内を流通する洗浄水の流量が小さいので、水の流通のみで一旦形成された粘度の大きいバイオフィルムを完全に除去することは難しいと言われている。もとよりバイオフィルムは、細菌類が自らの繁殖を保護・活発化するための活動生成物に他ならず、ここに潜む細菌類は、消毒成分を含む水が到来してもバイオフィルムが妨げとなって細菌類への作用が遅れ、除菌が思うように進まなくなる。結果、営業期間中の通水流をかいくぐって生き延びた細菌類は次に到来する休業期間に活動を活発化し、バイオフィルムを再構築しつつ繁殖を続けてしまうのである。
しかし、本発明が採用する液体処理ノズルは、口腔内洗浄ノズル使用時の小流量流通時においても、微細気泡の効率的に発生させることができ、水の浸透性が大幅に向上する結果、チューブ内面のバイオフィルム剥離効果及び形成抑制効果が顕著となり、口腔内洗浄水の清浄性維持に大きく貢献する。また、口腔内に発生する粘々も一種のバイオフィルムであるが、本発明の装置による洗浄水を歯科治療処置時に使用すれば、口腔内へのバイオフィルムないしプラーク等の除去を促進するとともに再付着の予防も図ることができ、治療効果を高めることができる。
すなわち、本発明においては、溶存空気を減圧析出(いわゆるキャビテーション)させ、洗浄性向上に寄与する改質を水自体に対して行う液体処理ノズルを採用する。具体的には、外周面に周方向の山部と高流速部となる谷部とが複数交互に連なるように形成された衝突部を、ノズル本体の液体流路の内面から突出させて処理コア部となし、これに洗浄水を衝突させる構造を採用する。処理コア部は衝突部の占有により流路断面積が縮小し、洗浄水はここを増速されつつ通過する。この時、衝突部に形成された周方向の谷部の底で水流束がさらに絞られて高速化されるのでキャビテーションは極めて起こりやすく、谷部が断面内に複数存在することから気泡発生効率はベンチュリ管よりもはるかに高い。また、絞られた流束が微小な谷部を通過する時間は極めて短く、析出した気泡の成長が抑制されることから気泡微細化効果は著しくなり、洗浄性改善に大きく寄与する。
また、液体処理ノズルの主な構成要素は、流通路の一部をなすノズル本体及び衝突部のみを要部とする処理コア部のみであり、流通容量も歯科ユニットにおける洗浄水の通過を許容できる程度であればよいから、特に寸法等を規定するまでもなく全体の大きさが縮小できることは容易に理解される。その結果、微細気泡発生を利用した高性能の洗浄機構の歯科ユニットへの組み込みは従来ほとんど不可能と思われていたところ、上記液体処理ノズルであれば、ユニット本体の筐体や歯科治療椅子に付随する配管ボックス(いわゆるジャンクションボックス)の筐体など、空間的に極めて制約された主洗浄水配管の内蔵区間にも容易に組み込むことができる。そして、気液混合ポンプも不要であるから極めて安価に高性能な洗浄機能を享受することができる。
他方、液体処理ノズルの主洗浄水配管上の設置位置については、本発明では止水栓から、洗浄水供給チューブ及びうがい用洗浄水の供給配管が各々分岐する給水分岐部に至る区間に設置することを必須の要件としている。この構成によると、例えば本発明の歯科ユニットの設置後において、何らかの理由により液体処理ノズルの交換や修理が必要となったとき、止水栓を閉鎖することにより主給水管からの給水が遮断されるので作業を容易に行うことができる利点がある。また、すでに設置済みの既存の歯科ユニットに液体処理ノズルを新たに組み込んで、本発明の歯科ユニット用洗浄水供給装置に転換する場合にも、この構成の有益性が発揮される。
例えば複数のユニットが設置された歯科医院の場合、転換対象となる既設歯科ユニットの止水栓を閉鎖することによりその歯科ユニットだけを切り離すことができ、他の歯科ユニットの利用に全く影響を与えることなく液体処理ノズルの組込み作業を実施することができる。また、各歯科ユニットへの液体処理ノズルの組み込みは断水を前提としない独立した個別作業の形で実施できるから、他の歯科ユニットの利用を継続しつつ、液体処理ノズルの組み込みないし更新工事を段階的に進めることができる。
本発明に使用する液体処理ノズルは、液体流路の中心軸線と直交する平面への投影において、処理コア部における液体流路の投影領域の外周縁内側の全面積をS1、衝突部の投影領域面積をS2として、処理コア部の全流通断面積Stを、
St=S1−S2 (単位:mm2)
として定義したとき、該全流通断面積の合計が2.2mm2以上確保されてなり、液体入口及び液体出口の断面積が全流通断面積Stよりも大きく設定され、谷部の最底位置を表す谷点のうち、中心軸線の投影点を中心として液体流路の内周縁までの距離の70%に相当する半径にて描いた基準円の内側に位置するものの数をN70(個)、基準円の外側に位置するものの数をNc70(個)とし、谷深さ補正係数αを
h≧0.35mmのときα=1、
h<0.35mmのとき、α=−60h2+41h−6 (式(1))
として定め、衝突部の投影外形線に現れる谷部の深さhが0.2mm以上に設定されるとともに、上記の投影にて全流通断面積の領域のうち基準円の内側に位置する部分の面積をS70(単位:mm2)として、70%断面比率σ70を、
σ70=S70/St×100(%)
として定め、有効谷点数Neを
Ne=α・(0.38Nc70+(σ70/50)・N70) (式(2))
として定義したとき、Ne/Stで表される有効谷点密度が1.5個/mm2以上確保されたものを使用することができる。
また、本発明は、複数の口腔内洗浄ノズルにつながる洗浄水供給チューブと、うがい用洗浄水の供給配管とに洗浄水を分配供給する歯科ユニット用洗浄水供給装置であって、
止水栓を有し、該止水栓よりも下流にて洗浄水供給チューブとうがい用洗浄水の供給配管に洗浄水を分配する主洗浄水配管と、
該主洗浄水配管上にて、洗浄水供給チューブ及びうがい用洗浄水の供給配管が各々分岐する給水分岐部と止水栓との間に着脱可能に設けられ、一端に液体入口を、他端に液体出口を有する液体流路が形成されたノズル本体と、液体流路の内面から各々突出するとともに外周面に周方向の山部と高流速部となる谷部とが複数交互に連なるように形成された衝突部を有する処理コア部とを備え、液体流路の中心軸線と直交する平面への投影において、処理コア部における液体流路の投影領域の外周縁内側の全面積をS1、衝突部の投影領域面積をS2として、処理コア部の全流通断面積Stを、
St=S1−S2 (単位:mm2)
として定義したとき、液体入口及び液体出口の断面積が全流通断面積Stよりも大きく設定され、谷部の最底位置を表す谷点のうち、中心軸線の投影点を中心として液体流路の内周縁までの距離の70%に相当する半径にて描いた基準円の内側に位置するものの数をN70(個)、基準円の外側に位置するものの数をNc70(個)とし、谷深さ補正係数αを
h≧0.35mmのときα=1、
h<0.35mmのとき、α=−60h2+41h−6
として定め、衝突部の投影外形線に現れる谷部の深さhが0.2mm以上に設定されるとともに、投影にて全流通断面積の領域のうち基準円の内側に位置する部分の面積をS70(単位:mm2)として、70%断面比率σ70を、
σ70=S70/St×100(%)
として定め、有効谷点数Neを
Ne=α・(0.38Nc70+(σ70/50)・N70)
として定義したとき、Ne/Stで表される有効谷点密度が1.5個/mm2以上確保されてなる液体処理ノズルと、を備えた歯科ユニット用洗浄水供給装置も提供する。
液体処理ノズルを洗浄水が通過する際に、気泡析出の効率が低下しないようにするためには、処理コア部における流路の単位断面積当たりの谷点の数密度(谷点密度)が極度に小さくならないよう、衝突部に形成する谷点を増加させることが必要である。本発明者はこの点に関しても検討した結果、処理コア部に配置する谷点は、流路内壁面との摩擦損失の影響やねじ谷の深さなどの影響を受ける結果、単純に数を増加させても気泡析出効率を向上できることにはつながらないことが判明した。ノズル本体において液体の流れは、衝突部に衝突してその下流に迂回する際に、谷部内にて絞られることにより増速してキャビテーションを起こし、その減圧沸騰作用により気泡を生じつつ液体を激しく撹拌する。これに、衝突部を高速流が迂回する際に生ずる渦流が加わり、衝突部の周辺及び直下流域には非常に顕著な撹拌領域が形成されることとなる。気泡を析出する減圧域は衝突部周囲の谷底付近に限られており、高速の液体流はほとんど瞬時的に該領域を通過してしまうから、発生した気泡はそれほど成長せずに上記の撹拌領域に巻き込まれ、微細気泡が発生する。キャビテーションが発生するのは上記のごとく主として衝突部の谷部であり、この谷部を流れに対して一つでも数多く接触させることが、微細気泡の発生効率を高める上では重要である。したがって、処理コア部の断面内に配置するねじ谷の数を増大させることが、キャビテーションひいては微細気泡の発生効率向上に有効と思われる。しかし、問題はそれほど簡単ではなく、谷部の数を機械的に増やしても微細気泡の発生効率改善には単純にはつながらない。本発明者らは、その要因を次のような項目に分けて検討した。
(1)衝突部の谷部の形成間隔を一定にすれば、処理コア部における液体流路の断面を増加させ、衝突部の突出高さを増加させることで、断面内に存在する谷点数は増える。しかし、この場合は流路の断面積も増え、同じ液体供給圧力であれば流量も増えてしまうから、単位流量あたりに割り振られる谷点数は必ずしも増加するとは限らないし、場合によっては単位流量あたりの谷点数が却って減じてしまい、キャビテーション効率が低下することも実際にあり得る。従って、キャビテーション効率ひいては微細気泡発生効率の大小を支配するのは、処理コア部に形成する谷点の絶対数ではなく、これを流路断面積で規格化した谷点密度のほうである。これは、洗浄水が通過する際に単位体積の水が何個の谷点と接するか、ということとも密接に関係している。
(2)管路内の流速は、管軸断面中心付近で最大となり管内壁面位置で最小となる形で、半径方向に放物線状の分布を示す。流路断面内の谷部はどの位置にあるものも等価に微細気泡発生に寄与するのではなく、断面中心に近い谷部ほどキャビテーションに必要な流速を確保しやすく、微細気泡発生にもより大きく貢献する。したがって、谷点数を評価する場合は、断面中心からの距離により異なる重みを考慮する必要がある。
(3)断面中心付近に位置する谷点が実際にキャビテーション効果に有効に寄与するためには、当該断面中心付近で期待通りの流速が得られている場合に限る。一見、これは自明な事項のようにも思えるが、断面中心付近に谷部を配置するということは、その谷部を形成する衝突部の少なからぬ部分が断面中心領域を占有するということであり、断面中心付近の谷点数を増やせば増やすほど流れが妨げられて流速が確保できなくなるジレンマが生ずる。断面中心領域で障害物に妨げられた流れは、断面外縁領域に回り込み、もともと流量が不足しがちな該領域での流速向上に貢献する可能性はもちろんあるが、断面中心領域を妨げられることなく通過できた場合と比較して、大幅な流れ損失は避けがたくなる。従って、断面中心付近に配置された谷点数は、断面中心付近の流通面積により重み付けを付与して評価する必要がある。
(4)衝突部に形成する谷部の形成間隔を狭くすれば、同じ流路断面積であっても谷点数を増やすことができる。しかし、谷部の形成間隔とともに谷部の深さが減少すると、谷底での流れ絞り効果が減じ、キャビテーション効率の低下につながる懸念がある。したがって、谷点数をより多く確保するために谷部深さの小さい衝突部を採用する場合は、谷深さに応じた重みづけにより谷点数を評価する必要がある。
本発明者らは、衝突部の寸法と谷部の形成深さ、衝突部の個数と配置形態、さらに衝突部を配置する処理コア部での流路断面寸法を種々に設定した多数の液体処理ノズルを製作し、微細気泡の平均径や濃度、洗浄能力などを詳細に検討した。その結果、上記(1)で述べた処理コア部における衝突部の谷点密度を、(2)〜(4)の3つの要因を反映した形で的確に重みづけする手法に到達し、そのように重みづけした谷点密度(有効谷点密度)において、洗浄能力向上がより顕著化する数値範囲が存在することを見出した。
以下、順に説明する。まず前提として、液体入口及び液体出口の断面積を処理コア部の全流通断面積Stよりも大きく設定する。これは、液体入口及び液体出口の断面積がStよりも小さくなると、液体入口及び液体出口での流量損失が大きくなりすぎて、処理コア部にて十分なキャビテーションを発生させるための流速が確保できなくなるからである。液体入口及び液体出口の断面積は、処理コア部における液体流路の投影領域の外周縁内側の全面積S1よりも大きく設定しておくことが、より望ましい。また、液体処理ノズルに洗浄水を流通させる場合の動水圧としては、0.05MPaから0.2MPa程度までを想定している。
要因(2)については、中心軸線の投影点を中心として液体流路の内周縁までの距離の70%に相当する半径にて基準円を設定する。障害物のない管路にて上記の水圧範囲では、基準円外側の平均流速と基準円内側の流速比はおおむね0.38:1となることから、本発明者が検討した結果、基準円外側の谷点数Nc70の寄与を、基準円の内側の谷点数N70の寄与の0.38倍程度に小さくなるよう重みづけするのが適当であると判断した。
要因(3)については、70%断面比率σ70=S70/St×100(%)の値は、もし衝突部が存在しなければ50%となるから、衝突部を配置した場合も、この70%断面比率の値が50%に近づくほど基準円内側の谷点はより高流速の流れを受けることとなる。そこで、基準円内側の谷点数N70に対しては、σ70/50の値により重みづけするのが適当であると考えた。
要因(4)については、谷部の深さの影響を種々に検討した結果、衝突部の投影外形線に現れる谷部の深さhが0.2mm未満となる場合には、微細気泡の発生効率が低下することがわかった。そして、谷部の深さhの値が0.2mm以上に増大すると、hの増大とともに洗浄力改善への貢献が次第に顕著となることから、谷深さhの微細気泡発生への影響を、h=0.25mm、0.3mm、0.35mmの各場合について0.5:0.9:1.0の比率にて谷点数に対し重み付けしたときに、ノズル通過後の水の浸透性や洗浄性改善(ひいては、微細気泡発生効率)にかかる結果を良く説明できることが判明した。また、谷深さhが0.35mm以上では、該hの影響は頭打ちとなることもわかった。そこで、上記のごとく、重み付けされた基準円内側の谷点数N70と基準円外側の谷点数Nc70の合計に対する重み付けとして、谷深さ補正係数αを前記(1)式により定める。(1)の2番目の式にかかるhの二次式は、hを0.25mm、0.3mmないし0.35mmとした場合のαの値として、上記のごとく、それぞれ0.5、0.9ないし1.0が適当であることの経験則を二次式により近似したものであり、0.2〜0.35mmという比較的狭い数値範囲内にて、hが上記以外の値をとった場合のαの適切な値を合理的に算出することができる。
こうして、上記3つの要因ごとにそれぞれ適正化された係数により重み付けされた谷点数Neは、前述の(2)式のごとくとなる。そして、この有効谷点数Neを前述の処理コア部の全流通断面積Stで規格化した有効谷点密度Ne/Stは、液体処理ノズルの微細気泡発生能力を客観的に数値化する指標となる。そして、該値が1.5個/mm2以上確保されている場合に、歯科ユニットの洗浄水処理に適用した場合に、洗浄水供給チューブへのバイオフィルム等の剥離や付着抑制に関する効果が、さらに顕著となることを見出した。有効谷点密度は、望ましくは2.0個/mm2以上、さらに望ましくは2.5個/mm2以上確保されているのがよい。液体流路の軸断面形状はたとえば円形にすることが望ましいが、過度の損失を生じない限り、楕円や正多角形状(正方形、正六角形、正八角形等)の軸断面を有するものとして形成することも可能である。
衝突部に形成する複数巻の山部は、らせん状に一体形成することができる。このようにすると、山部の形成が容易になるほか、流れに対し山部が傾斜することで、山部の稜線部を横切る流れ成分が増加し、流れ剥離に伴う乱流発生効果が著しくなるので、気泡のさらなる微細化を図ることができる。この場合、衝突部は、脚部末端側が流路内に突出するねじ部材にて形成しておくと、ねじ山を山部として利用でき、製造が容易である。
処理コア部における有効谷点密度の上限に制限はないが、前述のごとくキャビテーション効率確保の観点から谷部深さを0.20mm以上確保する必要があることから、無制限に大きくすることは現実的には難しい(例えば、3.0個/mm2程度が限界であると思われる)。また、谷部の深さに関しては、前述のごとく0.35mm以上で流れの絞り効果は飽和し、谷深さ補正係数αは一律に1.0に設定されるから、谷点密度を大きくする観点においては、谷部の深さの上限は0.50mm程度にとどめるのが好適である。すなわち、衝突部の谷部の深さは0.20mm以上0.50mm以下に設定するのがよく、より望ましくは0.25mm以上0.35mm以下に設定するのがよい。
液体処理ノズルの処理コア部における全流通断面積の合計を2.2mm2以上確保することで、歯科用ユニットに適用した場合に必要な水量を通常の水圧で確保することができる。この断面積設定は、例えば処理コア部に付加される動水圧レベルが0.07MPa程度のとき、目安として1L(リットル)/分以上の流量が確保できる程度のものである。この場合、処理コア部における液体流路の断面形状を円形とし、全流通断面積の合計を2.2mm2以上確保する前提にて、有効谷点密度Neを1.5個/mm2以上確保するためには、その内径Dを2.0mm以上4.5mm以下(望ましくは2.5mm以上3.5mm以下)とするのがよく、全流通断面積Stはこのとき、2.5mm2以上10mm2以下(望ましくは3.0mm2以上8mm2以下)の範囲で確保できる。
衝突部をたとえばJIS並目ピッチのねじ部材で構成する場合、衝突部は外径Mを1.0mm(谷部の深さは0.25mm)以上2.0mm(谷部の深さは0.40mm)以下とするのがよく、より望ましくは1.0mm(谷部の深さは0.30mm)以上1.6mm(谷部の深さは0.35mm)以下とするのがよい。
液体流路内への衝突部の配置形態としては、たとえばもっとも単純なものとして、流路断面を二分する形で直径方向に配置する形態を例示できる。この構成は、たとえば断面中心付近にギャップを形成しないか、形成してもギャップ間隔を小さく設定することで、基準円内側の谷点数を増やすことができる一方、流路の内径が大きくなると有効谷点密度が急速に減少するという幾何学的な特性を有する。
一方、衝突部は投影において中心軸線を取り囲む形態で3以上配置すること、たとえば十字形態に4つ配置することも可能である。この構成では、衝突部の先端部が3つ以上の方向から集合する関係上、基準円内側の流路断面の中心付近には谷点の配置が幾何学的に不能となる領域が存在するが、前段落の構成よりも衝突部の数が増えることで、有効谷点密度を大きくできる利点がある。絞り孔にそれぞれ形成される十字形態の衝突部の組は、たとえばノズル本体の壁部外周面側から先端が絞り孔内へ突出するようにねじ込まれる複数本のねじ部材により容易に形成できる。4本以外では、3本、5本、6本、7本、8本の中から選択することができる。
この場合、複数の衝突部の先端が集合する断面中心位置に液体流通ギャップを形成することができる。たとえば十字の中心位置に液体流通ギャップを形成すると、最も高流速となる断面中央の流れ(中心流)が液体流通ギャップの形成により妨げられにくくなり、前述の70%断面比率σ70が拡大される結果、同じ谷点数でも有効谷点数を増加することができる。また、この液体流通ギャップの形成により、70%断面比率σ70を40%以上確保することも容易となる。いずれも、バイオフィルム等に対する洗浄性改善(微細気泡の発生効率向上)への貢献が顕著である。液体流通ギャップの形成による上記の効果は、4つの衝突部の液体流通ギャップを形成する先端面を平坦に形成し、前述の投影において液体流通ギャップが正方形状に形成されている場合に特に顕著である。また、処理コア部にて液体流路に複数の衝突部を配置する場合、該液体流路の軸線方向(流れ方向)にて複数の衝突部を互いにずれた位置に配置することも可能である。このようにすると、衝突部を流れ方向に複数設けることができ、キャビテーションポイントとなる谷部に流れを繰り返し接触させることが可能となるので、微細気泡の発生効率向上に寄与する。
本発明の液体処理ノズルにおいては、ノズル本体に形成する絞り孔を単一とすることができる。しかし、1つしかない絞り孔に、異物等により詰まりが生ずると、洗浄水の供給に直ちに支障が生ずるリスクもある。この場合、分岐継手等によりノズルを複数並列に接続して用いることができるが、ノズルの前後に分岐継手を接続する構成が必須となるから、並列ノズルユニット全体の長さや幅が大きくなり、歯科ユニットに組み込む際の寸法的なメリットは犠牲となる。また、継手から分岐する個々のノズルの分岐流路長が長くなれば、それら複数の並列ノズルのいずれかに水流が偏る偏流現象が起きる可能性もあり、水流の減じた側のノズルでは微細気泡の発生効率が下がり、洗浄効果の向上代が低下する懸念もある。
上記のような問題は、次のようなノズル構成を採用することで解決することができる。すなわち、液体流路を液体入口側の流入室と液体出口側の流出室とに区画する隔壁部と、隔壁部に貫通形成され流入室と流出室とを互いに別経路にて連通させる複数の絞り孔とを設け、処理コア部において各絞り孔の内面から突出する形で衝突部を形成するようにする。すなわち、複数のノズルを並列接続する場合は、衝突部が配置される処理コア部の前後の流路が各ノズルに独立して配置される構造になるが、上記の構成では、隔壁部に複数の絞り部を形成し、その前後の流路区間を、該隔壁部が区画する流入室ないし流出室に集約して、それら複数の絞り部により共有化させる形とするのである。これにより、絞り孔の一部につまりを生じても、残余の絞り孔により洗浄水の流通を確保することができる。また、複数のノズルを並列接続した場合と同等の機能を単一のノズルで実現することができ、ノズル前後の分岐継手なども不要になる結果、全体をきわめてコンパクトに構成することが可能となる。また、流路が複数系統に分岐する区間を、隔壁部に形成された絞り孔のみに短縮することができ、分岐流路が長くなることに由来した偏流発生の防止にも貢献する。
上記の液体処理ノズルの構成においては、絞り孔は、それら絞り孔の軸断面積の合計と等価な円の直径をde、絞り孔の長さをLとして、L/deにて定義される絞り孔アスペクト比が3.5以下に設定され、かつ、ノズル本体の軸線と直交する平面への投影において、隔壁部の投影領域の中心位置に定められた基準点から複数の絞り孔の内周縁までの距離Tが該絞り孔の内径Dよりも小さくなる程度に近接配置するのがよい。隔壁部の厚みが大きくなれば断面積の小さい絞り孔自体の長さが大きくなり、その前後の区間が流入室ないし流出室に集約されていたとしても、偏流が発生しやすくなる場合がある。また、隔壁部に形成する複数の絞り孔が、管内壁との流体摩擦により低流速化する隔壁部外周領域に形成されていると、その流速低下の影響により偏流が発生しやすくなる場合がある。そこで、絞り孔アスペクト比を3.5以下に設定することにより、偏流の原因となる分岐区間の長さ、すなわち、衝突部を配置する絞り孔の長さを十分短くすることができる。また、絞り孔を基準点周りに近接配置することにより、絞り孔は高流速となる隔壁部の中央に集約される。換言すれば、すべての絞り孔が隔壁部の中心に近い位置に集めて配置される。その結果、絞り孔内での流速の低下ないし不均一化が抑制され、偏流を確実に防止することができる。絞り孔アスペクト比L/deの値は、望ましくは3以下であること、より望ましくは2.5以下であるのがよい。また、絞り孔変位Tは、望ましくは絞り孔の内径Dの1/2以下であるのがよい。
なお、絞り孔内の流量損失を抑え、かつ、偏流を防止する観点にあっては、衝突部配置に必要なスペースを絞り孔内面に確保できる範囲内で、L/deにて定義される絞り孔アスペクト比の値をなるべく小さく設定することが望ましいといえる(流入室と流出室の内面を、各々隔壁部に向けて縮径するテーパ面とする場合は、両側のテーパ面同士を直結し、その結合位置に衝突部を形成する構成もあり得るが、この場合の絞り孔の長さは、衝突部の突出基端位置での外径と等しい値として定義する)。また、絞り孔変位Tの値も、絞り孔内の流速を高める観点から、なるべく小さく設定することが望ましく、たとえば隔壁部中心位置で2つの絞り孔が互いに接する(あるいは、一部重なる)ように形成される場合など、ゼロとなることを妨げない。
なお、絞り孔は流れ軸線方向に均一な断面を有する孔としてもよいし、中間部で縮径する不均一断面を有する孔としてもよい。本明細書において、「絞り孔の軸断面積」とは、流れ軸線方向にて最もその値が小さくなる位置での軸断面積を意味するものとする。複数の絞り孔は、軸断面積を異ならせることも可能であるが、この場合、絞り孔の内径Dは、それら複数の絞り孔についての平均値を意味するものとする。絞り孔の長さについても同様である。さらに、隔壁部の投影領域の中心位置とは、投影領域が円形の場合はその中心を意味する。しかし、隔壁部の投影領域が正多角形状や楕円状となることも発明概念上は許容され、この場合は当該投影領域の幾何学的重心位置を中心位置として定める。
また、絞り孔の衝突部よりも下流に位置する区間の長さ(以下、残区間という)をLpとし、絞り孔の軸断面積の合計と等価な円の直径をdeとしたとき、Lp/deにて定義される残区間アスペクト比は1.0以下に設定されていることが望ましい。これにより、複数の絞り孔にてそれぞれ衝突部を通過した液体が流出室にて合流するまでに、析出気泡を含んだ流れの、流体抵抗の大きい絞り孔の残区間の通過距離が短くなり、ひいては個々の絞り孔の衝突部下流に生ずる強撹拌領域も流出室内で一体化し、気泡の微細化効果が一層高められ、ひいては歯科ユニットのさらなる洗浄改善に貢献する。
さらに、絞り孔に関しては、隔壁部の中央付近(基準点周り)に近接配置する要件を以下のように具体化することができる。すなわち、ノズル本体の軸線と直交する平面への投影において、複数の絞り孔の内周縁に対する外接円の面積をSt、絞り孔の投影領域の合計面積をSrとしたとき、K≡Sr/Stにて定義される絞り孔集約率Kを0.2以上とする。例えば、寸法と形成個数とが一致する複数の絞り孔の組同士の場合、絞り孔変位Tが大きくなるほど外接円面積も大きくなる。したがって、上記絞り孔集約率Kは隔壁部中央領域への絞り孔の集中度を表すパラメータとなりえ、該絞り孔集約率Kを0.2以上とすることにより、偏流抑制効果は一層顕著となり、微細気泡の発生効率の更なる向上に貢献する。
なお、「外接円」は、前記投影における複数の絞り孔(最小径部)の内周縁に対し、そのすべてと外接する円として定義する。また、すべての絞り孔の内周縁に外接する円が幾何学的に描けない場合は、「1以上の絞り孔の内周縁と外接し、残余の絞り孔の内周縁とは交わらない最大の円」として定義する。
上記の外接円の面積Stは、隔壁部の投影面積の90%以上であることが望ましい。これにより、隔壁部にて絞り孔の外側に形成される流れ遮断領域の面積を小さくでき、こうした領域に特有に発生する流れのよどみや渦流に基づく損失を軽減することができる。絞り孔に対する外接円径が、液体入口の開口径よりも絞られている場合は、隔壁部の投影面積を90%以上とする上で、液体入口に続く流入室の内周面を、隔壁部に向けて縮径するテーパ面とすることが有効である。外接円の面積Stは、隔壁部の投影面積と等しくすることもできる。
この場合も、処理コア部において複数の絞り孔のそれぞれに、ノズル本体の軸線と直交する平面への投影において衝突部が孔中心軸線を取り囲む十字形態に4つ配置し、それら4つの衝突部が形成する十字の中心位置に液体流通キャップが形成された構成とすることができる。絞り孔にそれぞれ形成される十字形態の衝突部の組は、ノズル本体の壁部外周面側から先端が絞り孔内へ突出するようにねじ込まれる4本のねじ部材により容易に形成できる。しかし、複数の絞り孔のそれぞれに、ノズル本体の外側からそれぞれ4本ものねじ部材をねじ込もうとしたとき、幾何学的なレイアウトを誤ると、ねじ同士の干渉や、ある絞り孔に向けてねじ込まれたねじ部材が別の絞り孔内を貫通したりするなど、不具合を生じる。本発明者らが検討した結果、ノズル本体の壁部外周面側から絞り孔に向けてねじ込まれるねじ部により衝突部を形成する場合、こうした不具合を生じることなく最も多くの絞り孔を隔壁部の中心領域に近接して形成する構成としては、処理コア部には絞り孔を、液体流路の中心軸線を挟んで互いに対称な位置関係で2〜4個のいずれかで形成するのが最適であることがわかった。そして、前述のねじ部材の干渉を回避するには、各絞り孔に組み込む4つのねじ部材の組は、それら絞り孔の間で軸線方向にて互いにずれた位置に配置することが適当である。偏流と流量損失を抑制する観点から、この場合の絞り孔の配置個数は2個ないし3個が好適であり、ノズル作製の容易性を考慮すれば2個とするのが最適である。
本発明に採用する液体処理ノズルは、洗浄水に対する微小気泡発生処理にかかる要部が、つまるところ溶存空気の減圧析出を担う処理コア部に集約されている。従って、該処理コア部は、たとえ上記の好ましい要件をもれなく網羅するように構成したとしても、これが寸法的に肥大化する技術的要因は皆無に等しいといえる。液体処理ノズルにおける処理コア部の流通方向長さは、具体的には15mm以下(断面縮小による圧損を軽減する観点から、望ましくは10mm以下)に形成することができる。すなわち、処理コア部の寸法が流通方向に15mm程度まで確保されていれば、洗浄水に顕著な洗浄能力を付与可能な衝突部の構成を、設計的に余裕を持って組み込むことができる。その結果、ノズル本体の処理コア部を除く構成要素は、液体入口から処理コア部に洗浄水を導く入口流路部分と、処理コア部を通過した洗浄水を液体出口に流出させる出口流路部分くらいであるから、主洗浄水配管に対する接続部の形成を考慮しても、全長にして120mm以下(望ましくは100mm以下、さらに望ましくは80mm以下)の寸法に十分納めることができる。その結果、液体処理ノズルは、歯科ユニットのスペース的に限られた前述の対象筐体内にも簡単に取り付けることができるのである。
例えば、歯科ユニットの主洗浄水配管は、両端に形成された第一継手部及び第二継手部が各々対象筐体の流入側継手部と液体処理ノズルの液体入口側継手とに接続される第一配管部材と、両端に形成された第三継手部及び第四継手部が各々液体処理ノズルの液体出口側継手と対象筐体の流出側継手部とに接続される第二配管部材とを備えるものとして構成できる。主洗浄水配管を上記のように2つの配管部材に分割し、液体処理ノズルの両端に形成されたノズル側の継手部に対し、かつ配管部材の対応する継手部を接続することにより液体処理ノズルの設置を簡単に行うことができる。
例えば、既存の歯科ユニットに液体処理ノズルを新たに組み込みたい場合は、次のようにする。すなわち、歯科ユニットの既設配管部材は、対象筐体の流入側継手部と流出側継手部とを直結する形で設けられている。この場合、止水栓を占めて洗浄水の供給を一時的に遮断するとともに、既設配管部材の継手部のうち、対象筐体側の流入側継手部と流出側継手部とのどちらかにつながる側を取り外して、液体処理ノズルの対応する継手部を接続する。そして、液体処理ノズルの残余の継手部と、対象筐体側の流入側継手部及び流出側継手部のうち、既設配管部材が取り外された側のものとを結合する新たな配管部材を追加することで、液体処理ノズルの設置を簡単に完了できる。この場合、上記構成の第一配管部材および第二配管部材の一方は、対象筐体の流入側継手部と流出側継手部とを直結していた既設配管部材が流用されたものとなる。
本発明の作用及び効果の詳細については、「課題を解決するための手段」の欄にすでに記載したので、ここでは繰り返さない。
以下、本発明を実施するための形態を添付の図面を用いて説明する。
図1は、本発明の歯科ユニット用洗浄水供給装置の第一例を示すものである。歯科ユニット300は、歯科医院の診察室の床面に載置・固定される周知の歯科治療椅子400と、これに着座する被治療者がうがい可能な位置関係で該歯科治療椅子400に隣接配置され、うがいスピットン411が上部に設けられたユニット本体410と、歯科治療椅子400の傍らに立つ歯科医により被治療者への処置操作が可能となる位置関係で該歯科治療椅子400に隣接配置され、エアないし電動にて駆動されるタービン等の処置用ツール421が複数配置された治療用テーブル420を備えている。
処置用ツール421は腔内洗浄ノズル501及び洗浄水の供給を開閉する図示しないバルブを内蔵しており、手で握るツール本体や図示しないフットペダルにてツールを駆動すると、洗浄水供給チューブ502を介して洗浄水が供給される。洗浄水供給チューブ502は内径が3mm以上8mm以下程度のゴムないし樹脂製のチューブであり、処置用ツール421を駆動する際の洗浄水の通過流量は30cc/分以上300cc/分以下程度と小さい。他方、うがいスピットン411はうがい用洗浄水の吐出部511を備え、スイッチないしセンサにより駆動される図示しない給水バルブを有する供給配管510により洗浄水が、毎分300cc以上2リットル以下程度と、腔内洗浄ノズル501よりは大流量にて供給される。うがい用洗浄水の供給配管510と洗浄水供給チューブ502には、本発明の歯科ユニット用洗浄水供給装置500により洗浄水が分配供給される。歯科ユニット用洗浄水供給装置500は、歯科治療椅子530に付随する配管ボックス(いわゆるジャンクションボックス)531と、上水道等の洗浄水供給源431につながる主洗浄水配管540とを備え、その主洗浄水配管540の一部が配管ボックス531の筐体(対象筐体)に内蔵されている。
本実施形態では、配管ボックス531は歯科治療椅子400の下方にて床面上に固定され、配管ボックス531の外に延出する主洗浄水配管540に対し、うがい用洗浄水の供給配管510がこれに直結される一方、洗浄水供給チューブ502はノズル分配用集約配管503を介して主洗浄水配管540につながっている。また、主洗浄水配管540上には洗浄水の供給を開閉する手動式の止水栓541が設けられる一方、洗浄水供給チューブ502(につながるノズル分配用集約配管503)及びうがい用洗浄水の供給配管510が各々分岐する給水分岐部542と止水栓541との間にて、主洗浄水配管540の配管ボックス531(の筐体)への内蔵区間上には液体処理ノズル1が着脱可能に設けられている。なお、図1においては、図面の読み取りを明瞭化する都合上、配管ボックス531は、歯科治療椅子400の外に引き出した形で大きさを誇張して描いている。
主洗浄水配管540は、両端に形成された第一継手部551及び第二継手部552が各々配管ボックス531の流入側継手部532と液体処理ノズル1の液体入口側継手26とに接続される第一配管部材550と、両端に形成された第三継手部563及び第四継手部564が各々液体処理ノズル1の液体出口側継手27と対象筐体531の流出側継手部533とに接続される第二配管部材560とを備える。
配管ボックス531の内部にはこのほかにも、電磁バルブやライト、椅子の電動駆動部などへ給電する電気配線444(コネクタ430aを経て電源部430に接続される)、排水管445(排水管継手部432aにて排水部432に接続される)、口腔内吸引用の配管446(継手部433aにて吸引源433に接続される)などの一部が収容されている。配管ボックス531の寸法は種々であるが、例えば歯科治療椅子400の下部ないし後方の限られたスペースに配置可能なものであり、例えば高さ30cm以内、幅及び奥行きが40cm以内である。主洗浄水配管540の内蔵部分(第一配管部材550+第二配管部材560)周囲に確保できる液体処理ノズル1の設置スペースは相当狭小である。
以下、液体処理ノズル1の詳細について説明する。図2は、液体処理ノズル1の横断面を示し、図3は液体入口側の側面を拡大して示すものである。この液体処理ノズル1は、液体流路3が形成されたノズル本体2を備える。ノズル本体2は円筒状に形成され、その中心軸線Oの向きに円形断面の液体流路が貫通形成されている。液体流路3は一方の端(図面右側)に液体入口4を、他方の端に液体出口5を開口しており、その流れ方向中間位置には液体入口4及び液体出口5よりも径小の絞り孔9が形成されている。液体流路3は絞り孔9よりも液体入口4側が流入室6とされ、液体出口5側が流出室7とされるとともに、絞り孔9の内面からは衝突部10が突出形態で設けられ、処理コア部COREを形成している。
ノズル本体2の両端部はねじ継手で構成された流入側継手部26及び流出側継手部27とされている。ノズル本体の全長は例えば50mm以上120mm以下、外径は13mm以上35mm以下である。図9に示すように、第一配管部材550及び第二配管部材560はいずれも金属フレキ管で構成され、流入側継手部26及び流出側継手部27につながる第二継手部552及び第三継手部553(及び図1の第一継手部551及び第四継手部554)はいずれもナット継手として構成されている。
ノズル本体2には、液体流路3は隔壁部8により液体入口4側の流入室6と液体出口5側の流出室7とに区画されており、隔壁部8には、流入室6と流出室7とを互いに別経路にて連通させる複数の絞り孔9が貫通形成されている。処理コア部COREにおいて衝突部10は、それら絞り孔9の内面から各々突出する形で設けられている。図3に示すごとく、この実施形態では、隔壁部8に絞り孔9が中心軸線Oに関して軸対象となるように、同一内径にて2個形成されている。
図4は絞り孔9の一方を側面視した場合の拡大図であり、衝突部10は外周面に周方向の山部11と高流速部となる谷部12とが複数交互に連なるように形成されている。衝突部10は、この実施形態では、脚部末端側が流路内に突出するねじ部材(以下、「ねじ部材10」ともいう)であり、結果、衝突部に形成される複数巻の山部11は、らせん状に一体形形成されている。ノズル本体2の材質は、たとえばABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)、ナイロン、ポリカーボネート、ポリアセタール、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ジュラコン(商標名)などの樹脂であるが、ステンレス鋼や真鍮などの金属、あるいはアルミナ等のセラミックスとしてもよい。
図3に戻り、絞り孔9にそれぞれ形成される衝突部の組は、ノズル本体2に形成されたねじ孔19にて、その壁部外周面側から先端が絞り孔9内へ突出するようにねじ込まれる4本のねじ部材により形成されている。ねじ孔19とねじ部材10との間は接着剤等によりセッティング固定され、ねじ部材(衝突部)10と絞り孔9内周面との間には主流通領域21が形成されている。また、各絞り孔9において、4つの衝突部10が形成する十字の中心位置には、液体流通ギャップ15が形成されている。液体流通ギャップ15を形成する4つの衝突部10の先端面は平坦に形成され、前述の投影において液体流通ギャップ15は正方形状に形成されている。
次に、処理コア部における液体流路の外周縁内側の全面積、ここでは、図3の2つの絞り孔9の円形軸断面の投影面積(内径をdとしたとき、πd2/4)の合計をS1、衝突部10(4本のねじ部材)の投影面積をS2として、処理コア部の全流通断面積Stを、
St=S1−S2 (単位:mm2)
として定義したとき、この全流通断面積Stが2.5mm2以上(10mm2以下)に確保されている。本実施形態では、図4に示す主流通領域21と液体流通ギャップ15との合計面積(の2つの絞り孔9の間での和)が全流通断面積Stに相当する。図2に示すごとく、液体入口4及び液体出口5の開口径は、絞り孔9の内径よりも大きい。すなわち、液体入口4及び液体出口5の断面積は全流通断面積Stよりも大きく設定されている。また、流入室6及び流出室7の絞り孔9に連なる内周面はそれぞれテーパ部13,14とされている。各絞り孔9の内径は、例えば2.0mm以上4.5mm以下である
図5は図4と全く同一の投影図であり、符号を省略したものである(従って、各部の符号は図4のものを援用する)。ねじ部材(衝突部)10の投影外形線に現れる谷部12の深さhは0.2mm以上確保されている。また、中心軸線Oの投影点を中心として液体流路の内周縁までの距離の70%に相当する半径にて描いた円を基準円C70として定めるとともに、谷部12の最底位置を表す谷点のうち、基準円C70の内側に位置するもの(70%谷点:○で表示)の数をN70(個)、基準円C70の外側に位置するもの(70%補谷点:黒で表示)の数をNc70(個)とする。
そして、谷深さ補正係数αを、採用するねじ谷深さhに応じて前述の(1)式のごとく定める。さらに、図3に示す投影にて、全流通断面積Stの領域のうち基準円C70の内側に位置する部分の面積をS70(単位:mm2)として、70%断面比率σ70を、
σ70=S70/St×100(%)
として定める。以上を前提として、図2の液体処理ノズル1は、前述の(2)式にて定義される有効谷点数Neを全流通断面積Stで規格化した有効谷点密度(Ne/St)が1.5個/mm2以上に確保されている。
図3に戻り、絞り孔9にそれぞれ形成される衝突部の組は、ノズル本体2の壁部外周面側から先端が絞り孔9内へ突出するようにねじ込まれる4本のねじ部材により形成されている。図中破線で示すように、ねじ部材10は、ノズル本体2の壁部に貫通形成されたねじ孔19にねじ込まれ、各ねじ孔19のねじスラスト方向途中位置にはねじ頭下面を支持するための段付き面19rが形成されている。該段付き面19rの形成位置は、ねじ部材10をねじ込んだ時に、絞り孔9内に突出するねじ脚部(すなわち、衝突部となる部分)の長さが、液体流通ギャップ15を形成するのに適正となるように調整されている。ねじ孔19とねじ部材10との間は接着剤等によりセッティング固定されている。
また、図6に示すように、複数の絞り孔9の間でねじ部材10の干渉を回避するために、各絞り孔9に組み込む4つのねじ部材10の組は、それら絞り孔9の間で軸線方向にて互いにずれた位置に配置されている。同一の絞り孔9内の複数のねじ部材10A,10Bと10C,10Dとは、該絞り孔9の軸線方向(流れ方向)にて互いにずれた位置に配置されている。具体的には、各絞り孔9において、同一平面上で互いに直交する位置に配置されたねじ部材の対10A,10B及び10C,10Dが、それぞれ流れ方向において互いに異なる位置(図中、上側の絞り孔9については下流側のA及びBの位置に、下側の絞り孔については上流側のC及びD位置)に配置されている。A及びBの位置の4つのねじ部材10A,10B、及びC及びD位置の4つのねじ部材10C,10Dは、中心軸線Oと直交する平面への投影では図3に示すごとく、それぞれ十字形態をなすように配置されることとなる。
次に、絞り孔9は、それら絞り孔9の軸断面積の合計と等価な円の直径をde、絞り孔9の長さをLとして、L/deにて定義される絞り孔アスペクト比が3.5以下に設定されている(なお、2つの絞り孔9の内径が互いに異なる一般の場合(d1,d2)は、絞り孔アスペクト比は、L/(d12+d22)1/2となる)。図3では、2個の絞り孔9は内径と長さが互いに等しい円筒面をなすように形成されており、2つの絞り孔9の内径をdとして、絞り孔アスペクト比は0.71L/dである。絞り孔アスペクト比L/deの値は、望ましくは3以下であること、より望ましくは2.5以下であるのがよい。
また、ノズル本体2の軸線Oと直交する平面への投影において、隔壁部8の投影領域の中心位置に定められた基準点(上記軸線の投影点)Oから複数の絞り孔9の内周縁までの距離(絞り孔変位)Tは、該絞り孔9の内径Dよりも小さくなるように設定されている。絞り孔変位Tは絞り孔9の内径Dの望ましくは1/2以下であるのがよい。さらに、本実施形態では、同じ投影において、複数の絞り孔9の内周縁に対する外接円20の面積をSt、絞り孔9の投影領域の合計面積をSrとしたとき、K≡Sr/Stにて定義される絞り孔集約率Kが0.2以上確保されている。
すなわち、液体処理ノズル1は、以下の条件を充足するものとなっている。
・L/deにて定義される絞り孔アスペクト比が3.5以下;
・絞り孔変位Tが絞り孔9の内径Dよりも小;
・絞り孔集約率Kが0.2以上。
また、上記の外接円20の面積Stは、隔壁部8の投影面積の90%以上(図3では100%)とされている。隔壁部8にて絞り孔9の外側に形成される流れ遮断領域の面積が小さいので、こうした領域にて特有に発生する流れのよどみや渦流に基づく損失が軽減されている。図2からも明らかなごとく、絞り孔9に対する外接円20の径は、液体入口4の開口径よりも絞られており、液体入口4に続く流入室6の内周面が隔壁部8に向けて縮径するテーパ面13とされている。また、流出室7の内周面は、液体出口5に向けて拡径するテーパ面14とされている。
また、図7に示す如く、絞り孔9の衝突部10よりも下流に位置する区間の長さ(以下、残区間という)をLp(Lp2〜Lp4の平均値)とし、絞り孔9の軸断面積の合計と等価な前述の円の直径をdeとして、Lp/deにて定義される残区間アスペクト比は1.0以下に設定されている。図7では、最も下流側に位置するねじ部材10Aに関しては、残区間の長さがゼロであるが、図8に示す如く、ねじ部材10Aに関し残区間がゼロでない長さLp1を有する場合は、上記残区間長さLpはLp1〜Lp4の平均値となる。
以下、図1の、歯科ユニット用洗浄水供給装置500の作用・効果について説明する。歯科治療椅子400に着座した被処置者に対し、歯科医は処置用ツール421を操作して口腔内の処置を行なう。また、被処置者は歯科医の指示に従い、うがい用洗浄水を吐出部511から口に含み、スピットン411に吐き出す。処置用ツール421の使用時には主洗浄配管540、ノズル分配用集約配管503及び洗浄水供給チューブ502を経て操作中の処置用ツール421の腔内洗浄ノズル501から洗浄水が口腔内に噴射される。他方、うがい時には主洗浄配管540から供給配管510を経て吐出部511から洗浄水が流出する。いずれの場合も洗浄水は主洗浄配管540上の液体処理ノズル1を通過した後、流出することとなる。
図2及び図3の液体処理ノズル1に洗浄水を通水したときの作用について説明する。この水はたとえば水道水であり、大気と平衡する濃度に空気が溶存しているものとする(たとえば、20℃(常温)での酸素濃度は約8ppm)。水流はまずテーパ部13及び絞り孔9で絞られ、ねじ部材10と絞り孔9内周面との間に形成される図4の主流通領域21と液体流通ギャップ15とからなる液流通領域にてねじ部材10に衝突しながらこれを通過する。
ねじ部材10の外周面を通過するときに、図10に示すように流れは谷部12に高速領域を、山部11に低速領域をそれぞれ形成する。すると、谷部12の高速領域はベルヌーイの定理により負圧領域となり、キャビテーションすなわち溶存空気の減圧析出により、気泡FBが発生する。谷部はねじ部材10の外周に複数巻形成され、かつねじ部材10が絞り孔9内に4本配置されていることから、この減圧析出は絞り孔9内の谷部にて同時多発的に起こることとなる。
すると、図11に示すように、水流がねじ部材10に衝突する際に谷部での減圧析出が沸騰的に激しく起こり、さらにねじ部材10の下流に迂回する際に生ずる渦流にこれを巻き込んで激しく撹拌する。これにより、衝突部10の周辺及び直下流域には、微小渦流FEを無数に含んだ顕著な強撹拌領域SMが形成されることとなる。気泡を析出する減圧域は衝突部10周囲の谷底付近に限られており、高速の液体流はほとんど瞬時的に該領域を通過してしまうから、発生した気泡FBはそれほど成長せずに上記の撹拌領域に巻き込まれ、気泡径が1μm未満(特に500nm未満)の微細気泡が効率的に発生する。
キャビテーション効率ひいては微細気泡発生効率の大小を支配するのは、谷点の絶対数を流路断面積で規格化した谷点密度であるが、管路内の流速は、管軸断面中心付近で最大となり管内壁面位置で最小となる形で、半径方向に放物線状の分布を示す。そこで、全断面内の流速分布を有限要素法によるコンピュータ・シミュレーション等により算出し、谷点の位置ごとに流速に応じた重み係数を定めるのが理想的であるが、シミュレーションには非常な長時間を要する。そこで、この発明では簡易な方式として、衝突部のない断面内で流速が断面中心での最大値のおおむね50%となる位置に上記基準円C70を定め、その基準円の内側の谷点数(70%谷点数)N70に対し、外側の谷点数(70%補谷点数Nc70)を0.38倍に重み付けして加算する。
また、断面中心付近に位置する谷点が実際にキャビテーション効果に有効に寄与するためには、該断面中心付近で期待通りの流速が得られている必要があり、断面中心付近に配置された谷点数は、断面中心付近の流通面積により重み付けを付与して評価する必要がある。70%断面比率σ70の値は、もし衝突部が存在しなければ50%となるから、衝突部を配置した場合も、この70%断面比率の値が50%に近づくほど基準円内側の谷点はより高流速の流れを受けると考え、70%谷点数N70は、σ70/50の値により重みづけされる。そして、谷部の深さhの影響については、基準円の内側・外側に関係なく、前述の(1)式の谷深さ補正係数αにより重み付けされ、有効谷点数Neとして前述の(3)式として算出できる。この有効谷点数Neを前述の処理コア部の全流通断面積Stで規格化した有効谷点密度Ne/Stは、液体処理ノズルの微細気泡発生能力を客観的に数値化する指標となり、該値が1.5個/mm2以上確保されているとき、キャビテーション効率ひいては微細気泡の発生効率が、歯科ユニットに洗浄に必要なレベルに確保される。
また、図2の液体処理ノズル1においては、隔壁部8に複数の絞り部を形成し、その前後の流路区間を、該隔壁部8が区画する流入室6ないし流出室7に集約して、それら複数の絞り部により共有化させる構造を採用することにより、流路が複数系統に分岐する区間は隔壁部8に形成された絞り孔9のみとなる。
この構成によれば、絞り孔9の一部につまりを生じても、残余の絞り孔により洗浄水の流通を確保することができる。また、L/deにて定義される絞り孔アスペクト比(図7参照)が3.5以下に設定され、偏流の原因となる分岐区間の長さ、すなわち、衝突部10を配置する絞り孔9の長さを十分短くできる。また、絞り孔変位T(図3参照)が該絞り孔9の内径Dよりも小さくなる程度に、それら絞り孔9が基準点Oの周りに近接配置されており、絞り孔9は、高流速となる隔壁部8の中央に集約されている。その結果、絞り孔9内での流速の低下ないし不均一化が抑制され、偏流を確実に防止することができる。すなわち、衝突部10を有する絞り孔9を複数形成することで十分なキャビテーション効果と十分な流量とを両立することができ、かつ、複数の絞り孔9間での偏流が効果的に抑制され、キャビテーション効果に基づいた微細気泡発生を安定に継続することができる。
さらに、液体処理ノズル1では、Lp/deにて定義される残区間アスペクト比(図7参照)が1.0以下に設定されている。絞り孔9にてそれぞれ衝突部10を通過した液体が流出室7にて合流するまでに、析出気泡を含んだ流れの、流体抵抗の大きい絞り孔9の残区間の通過距離が短くなり、ひいては個々の絞り孔9の衝突部10の下流に生ずる強撹拌領域が流出室7内で一体化するので、気泡の微細化効果がさらに高められる。
液体処理ノズル1の処理コア部COREにおける全流通断面積の合計が2.2mm2以上確保されていることで、うがい時の比較的流量の大きい使用時にも必要な洗浄水量を確保できる。この断面積設定は、例えば処理コア部COREに付加される動水圧レベルが0.07MPa程度のとき、目安として1L(リットル)/分以上の流量が確保できる程度のものである。一方、口腔内洗浄ノズル501(図1)の使用時には、この流量は300cc/分以下と大幅に小さくなる。
液体処理ノズル1は前述の有効谷点密度Ne/Stが1.5個/mm2以上(望ましくは2.0個/mm2以上)確保されていることにより、上記のごとき低流量での通水時にも洗浄性向上効果が十分確保できるので、通水時の配管内部(特に、洗浄水供給チューブ502の内部)へのバイオフィルム等の剥離除去が顕著に進み、またその新たな付着を効果的に抑制できる。また、口腔内に洗浄水が供給されることで、口腔内のバイオフィルムやプラークの除去促進を図ることもできる。
歯科ユニットは、処置のため洗浄水が直接口腔内に適用されるから、特に図1において、口腔内洗浄ノズル501やこれにつながる洗浄水供給チューブ502に対しては高い清浄性が求められる。前述のごとく処置時における口腔内洗浄ノズル501への通水流量は非常に小さく、チューブ内に滞留している少量の洗浄水の消毒成分も、週末や、年末年始、お盆、ゴールデンウィークといった、長期間医院が休業状態となる期間には抜け飛びやすい。このとき、細菌の繁殖ひいてはバイオフィルムの形成が進行しやすく、休み明けに業務が再開されても、チューブ内を流通する洗浄水の流量が小さいので、短時間の水の流通のみでは、一旦形成された粘度の大きいバイオフィルムを完全に除去することは難しい。バイオフィルムは、細菌類が自らの繁殖を保護・活発化するための活動生成物に他ならず、ここに潜む細菌類は、消毒成分を含む水が到来してもバイオフィルムが妨げとなって細菌類への作用が遅れ、除菌効果は十分に発揮されにくい。その結果、営業期間中の水流通をかいくぐって生き延びた細菌類は次の休業期間に活動を活発化し、バイオフィルムを再構築しつつ繁殖を続けてしまうことになる。チューブを含めた配管内は消毒液にて定期的に除菌することが推奨されているが、除菌の実施は休業時に限られやすく、多くの歯科医院では積極的に実施されていないのが現状である。
しかし、主洗浄水配管540上に液体処理ノズル1を組み込んでおけば、長期にわたる使用により洗浄水供給チューブ502等にバイオフィルムその他の汚れが相当量堆積した状態になっていても、本発明によると通水流量が小さいにも関わらず、短時間の通水のみでこれを効果的に剥離除去することができる。例えば本発明者らは、これを裏付ける次のような実験を行っている。
すなわち、数年以上にわたって使用継続され、洗浄水供給チューブ502の取り外し洗浄も行っていない、図1のタイプの設置済み歯科ユニットの配管ボックス531内に液体処理ノズル1を組み込んだ。液体処理ノズル1は、図2及び図3に示すものであり、絞り孔9の内径:φ2.5mm、衝突部:M1.0並目ピッチ0番1種なべ小ねじ(ステンレス鋼製)、全流通断面積:2つの絞り孔9の合計にて4.0mm2、コア部COREの長さ5mm、隔壁部8の外径:φ5mm、ノズル全長70mmである。まず、液体処理ノズル1を取り付けない状態で口腔内洗浄ノズル501の1つを作動させつつ通常の水道水を50cc/分程度の流量で1L程度通じ、口腔内洗浄ノズル501から排出される水を回収した。この水の一般細菌、大腸菌、従属栄養細菌及び総菌数の分析を周知の方法にて実施した。回収水は透明のままであり、一般細菌数は30(CFU/ml)以下、大腸菌は検出されず、であったが、従属栄養細菌数は1.5×102(CFU/ml)、総菌数は104〜105(CFU/ml)に達した。液体処理ノズル1を設置する前の洗浄水の清浄度はこのレベルであったと推定され、歯科治療使用中の通水では細菌類を完全に除去できていないことが伺われる。
次に、液体処理ノズル1を組み込んで毎日10Lの比率で通水を再開・継続し、所定期間ごとに採水と細菌分析を繰り返した。まず、液体処理ノズル1組み込み後、通水再開直後の水を1L採水したところ、回収水は黄色に濁っていた。液体処理ノズル1を経由した短時間の通水により、チューブ内に堆積したバイオフィルムや汚れが速やかに除去されたことが容易に理解できた。この水の細菌数は、一般細菌数と大腸菌数には変化がなかったが、従属栄養細菌数は9.8×102(CFU/ml)に増加していた。従属栄養細菌数は液体処理ノズル1を経由した通水開始1日後にはさらに増加し、6.5×104(CFU/ml)に達したが、9日後には2.7×103(CFU/ml)に減じ、1カ月後には30以下と、ノズル組み込み前の1/5まで低減できた。また、総菌数も102(CFU/ml)未満となった。ノズル設置後の通水初期にバイオフィルムが一気に剥離し、その剥離したチューブ内面等の潜在菌が放出されて一旦細菌数が高まった後、バイオフィルムの保護を失った後は減少に転じ、液体処理ノズル1による処理水を継続的に通水することで、ほぼ完全に除去できることを意味している。
次に、図1の歯科ユニット用洗浄水供給装置500においては、主洗浄水配管540から洗浄水が各部に分配供給されるので、その設置施工上の便宜を図るため、主洗浄水配管540の給水分岐部542と止水栓541との間にて、配管ボックス531内に液体処理ノズル1が組み込まれた構造になっている。止水栓541から給水分岐部102に至る区間は短く、配管ボックス531内の空間も電気配線や他の配管等により、歯科ユニットの洗浄改善を図る機構を組み込む上での空間的な制約は多い。
ところが、歯科ユニット用洗浄水供給装置500における前述の顕著な洗浄能力は、つまるところ、主洗浄水配管540に組み込まれた液体処理ノズル1のみのよってもたらされている。該液体処理ノズル1は、その機能的な要部が、図2に示す溶存空気の減圧析出を担う処理コア部COREに集約されている。該処理コア部COREの流通方向寸法は大きくても10mm程度までであり、洗浄水に顕著な洗浄能力を付与可能するために必要な数の衝突部10(ねじ部材:本実施形態では8本)を、設計的に十分な余裕を持って組み込むことができる。その結果、ノズル本体2の全長も120mm以下程度の寸法に納めることができ、図1に示すごとく、周囲にほとんど空間的な余裕のない1にも、問題なく組み込むことができる。
既存の歯科ユニットに液体処理ノズル1を新たに組み込みたい場合は、次のようにする。すなわち、図1の配管ボックス(対象筐体)531の流入側継手部532と流出側継手533とは既設配管部材、施工前の状態では例えば金属製のフレキ管等で直結されている。この状態で止水栓541を閉めて洗浄水の供給を一時的に遮断するとともに、配管ボックス531側の流入側継手部532と流出側継手533とのどちらかにつながる側、例えば流入側継手部532につながる側を取り外して、液体処理ノズル1の対応する継手部(ここでは流入側継手部26)を接続する。こうして既設配管部材は図9の第一配管部材550となる。そして、液体処理ノズル1の残余の継手部27と、配管ボックス531側の残余の継手、ここでは流出側継手533とを、図9の第二配管部材560となる新たな配管部材(例えばフレキ管)で接続することにより、液体処理ノズル1の設置を完了できる。
以下、液体処理ノズルの変形例について列挙する。図2及び図3の液体処理ノズルとの共通点も多いので、共通の構成要素には同一の符号を付与しつつ、おもにその相違点について説明する。まず、図12に示すように、衝突部は、直径方向にねじ込まれる2本のねじ部材10で形成してもよい。この構成では、2本のねじ部材10,10の先端面の間に液体流通ギャップ15を形成している。この構成では、ねじ部材10の先端が絞り孔9の断面中心に近づく分だけ、図13に示すように、基準円C70の内側にて、より中心に近い位置に谷点を配置できていることがわかる。また、衝突部を直径方向の1本のねじ部材130で構成することもできるし、らせん状に一体化されない周方向に閉じた山部及び谷部を複数密接配列したものとして形成してもよい。
図14に示すごとく、複数の絞り孔9は、前述の投影において、隔壁部8の中心を含む領域において一部重なるように一体形成してもよい。その重なり領域の投影面積は、各々の絞り孔9の面積の30%以内に収まっていることが望ましい。
図15に示す液体処理ノズル151では、各絞り孔9に配置する4本のねじ部材10の組を、A−A及びB−B断面に示すごとく、各々同一平面上に配置している。なお、ノズル本体2の両端は雄ねじ継手部16,17としており、外周面はカバー18で覆っているが、ねじ部材10の配置を除いて図5と全く同様に構成することももちろん可能である。
図16は、隔壁部8に対して絞り孔9を3つ形成する例である。3つの絞り孔9の間でねじ部材10の流れ方向の位置は互いにずれて定められている。また、3つの絞り孔9は、前述の投影において、ねじ孔9の内径よりも大きい距離をもって正三角形の各頂点をなす位置に配置されており、十字状の配置をなす4つのねじ部材10の組が、1つの絞り孔9にて残余の絞り孔9の対の側に延びるねじ孔19がそれら絞り孔9の対の間を貫くように、ねじ部材10の組の配置角度が定められている。これにより、すべてのねじ孔19が、絞り孔9と干渉することなく、かつノズル本体2の外周面に開口するように形成できる。
図17は、衝突部10Fを、ノズル本体2の隔壁部8と一体に射出成型により形成した例を示す。複数の絞り孔9の衝突部10Fを一体に射出成型するには、すべての衝突部10Fの中心軸線が同一平面上に位置するようにして、流入室を形成するための第一の金型コアと、流出室を形成するための第二の金型コアとの各先端面に衝突部10F及び隔壁部8の成型キャビティを設け、上記平面を分割面としてこれら金型コアを突き合わせた状態で成型を行えばよいのである。なお、衝突部10Fを金属製のねじ部材とし、インサート成型によりノズル本体2と一体化するようにしてもよい。
図18は、隔壁部8に対して絞り孔9を4つ形成した例である。4つの絞り孔9は、それぞれ直径方向に1本のねじ部材10がねじ込まれて衝突部が形成されている。具体的には4つの絞り孔9は、前述の投影において正方形の各頂点をなす位置に配置されており、ノズル本体2の外周面側から各絞り孔9に対し、ノズル本体2の中心軸線Oに向けて絞り孔9の直径方向にねじ部材10がねじ込まれている。なお、ねじ部材10はインサート成型によりノズル本体2に組み込んでもよく、図17と同様に、ノズル本体2とともに衝突部を射出成型により一体化してもよい。
図19は、各ねじ部材の対の配置にかかる変形例を示すものである。ここでは、ねじ部材の2つの対10A,10Bのそれぞれにおいて、一方のねじ部材の脚部末端10bを絞り孔9の中央に位置させる一方、その脚部末端10bの周側面に他方のねじ部材の先端面10eを接触(又はギャップを介して対向)させ、絞り孔9の中央に位置する側の脚部末端10b同士を、両対の間でノズル本体2(図2)の軸線方向に互いにずらせて配置している。このようにすると、流速の大きい絞り孔9の中心付近にも、脚部末端10bの谷部を配置することができ、キャビテーション効果、ひいては気泡微細化効果をより高められる。さらに、山部及び谷部は、衝突部の周方向に全周形成されている必要は必ずしもなく、図20に示すように、キャビテーションポイントとしての機能を発揮しにくい流れ方向(白矢印)の下流側において、衝突部10の外周面に軸線方向の溝部10a等を形成することにより、山部11及び谷部12を周方向の一部区間で切り欠いた構成としてもよい。
また、図21は、絞り孔9が1個のみ形成された液体処理ノズル251を示すものである。ここでも、ノズル本体2の両端は雄ねじ継手部16,17としている。
なお、ねじ部材(衝突部)の先端部は図3等に示すものに限らず、他の種々の形態を採用可能である。たとえば、ねじ部材10の先端部は円錐状に形成してもよく、この場合、液体流通ギャップは十字状に形成される。
次に、図22の歯科ユニット用洗浄水供給装置700のごとく、液体処理ノズル1はユニット本体410の筐体に内蔵するようにしてもよい。なお、図22においては、ブロー用のエア供給源434から処置ツール421へエアを供給するためのエア供給部435が、洗浄水供給チューブ502につながる分配配管上に設けられている(図1の歯科ユニット用洗浄水供給装置500においても、図示しない同様のエア供給機構が組み込まれている)。残余の構成については図1と同様であり、共通の部分には同じ符号を付与して詳細な説明は略する。