JP2019195386A - 歯科ユニット用洗浄水供給装置、歯科ユニット及び歯科ユニットのメンテナンス方法 - Google Patents

歯科ユニット用洗浄水供給装置、歯科ユニット及び歯科ユニットのメンテナンス方法 Download PDF

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寛幸 川合
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啓雄 加藤
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Abstract

【課題】微生物コンタミに由来して水供給チューブに形成されるバイオフィルムの除去ないし形成防止を水道圧に基づく水流通のみで図ることができる洗浄水供給装置を提供する。【解決手段】歯科ユニッ用浄水供給装置は、水流開閉弁110の上流にて洗浄水主配管540上に、周方向の山部とキャビテーションポイントとなる谷部とが複数交互に連なるように形成された衝突部により、水道水を直接キャビテーション処理する液体処理ノズルを設けている。このようなノズルで処理されたキャビテーション水は、通常の水道水よりもはるかに強いバイオフィルム剥離能を有するサックバックによる汚染が問題になる歯科ユニットにおいても、水供給チューブの内面に付着したバイオフィルムを、ハンドピースの使用時における低水流量(例えば0.04L/分以上0.3L/分以下)の水流通により簡単に剥離することができる。【選択図】図2

Description

この発明は歯科ユニット用洗浄水供給装置、歯科ユニット及び歯科ユニットのメンテナンス方法に関するものである。
特許文献1によると、歯科治療の分野では、歯科ユニット内に残留水がある場合、残留水中の一般細菌数は増加傾向にあり、加圧水供給管路内では規定値を超える惧れがある。日本国内の水道法では、細菌に関して、一般細菌は100CFU/mL(CFU:Colony Forming Unit)以下、大腸菌類は0CF/mLという規定がある。このための対策として、毎日の診療前に最低3分以上、ハンドピースを含む全ての歯科用治療器具から残留水を排出する洗浄(フラッシング)を行なうことが推奨されている。特に、休診日等のように歯科用ユニットを使用しない場合、水回路内の残留水中に細菌が繁殖する事態が生じることがあり、その翌日は特に念入りに残留水の排出を行うことが推奨される。
特開2002−253583号公報 特開平6−98898号公報 特開2003−325546号公報 WO2008/072371号公報 特開2006−142046号公報 特開2008−295887号公報 特開2011−088842号公報 特開2014−140533号公報 特許6182715号公報 WO2016−195116号公報 スライム、有害微生物管理技術第II巻 第871−879頁 YAKUGAKU ZASSHI第137巻(6月号) 第707〜717頁 (2017)「バイオフィルムと酸化性殺菌剤 バイオフィルムモデルを用いた殺菌・除去効果評価」(著者:立川眞理子)
ところで、歯科ユニットには、水やエアを供給するチューブを介して種々のハンドピースが接続される。この場合、ハンドピースの動作を停止したとき、流通状態の水やエアが瞬時的に遮断されることで、流体負圧やロ−タの惰性回転によりハンドピースの開口から内部への汚染水の吸引逆流(「サックバック」と称される)が生じることがある(特許文献2、3)。特許文献2には、このような逆流が生じると、患者口腔内の汚染物質を吸引してしまい、他の患者や術者への交叉感染または診療室内汚染の危険性がある、と記載されている。
例えば、水やエアの開閉弁がハンドピース内部にその対策として実装されている場合は、流れを遮断停止するに伴うサックバックが起きても、その影響はハンドピース内部にとどまるため、診療終了時にハンドピースをチューブから取り外して加熱消毒することにより、高レベルの除菌対策が可能である。しかし、チューブ基端側となるユニット本体に水やエアの開閉弁が設けられる場合、上記のようなサックバックが生じると、逆流汚染水はハンドピースを通り超えてチューブ先端部にまで到達することがあり、ハンドピースを取り外しても、チューブ内面の細菌汚染は防ぎようがない問題がある。
特に、週末や、年末年始、お盆、ゴールデンウィークといった、歯科医院が長期間休業となる期間は、チューブ内に滞留している少量の洗浄水の消毒成分が抜け飛びやすく、上記の残留微生物に由来したバイオフィルムの形成が進行しやすい。例えば、休み明けに業務が再開されても、チューブ内を流通する洗浄水の流量が小さいので、水の流通のみで一旦形成された粘度の大きいバイオフィルムを完全に除去することは難しい。もとよりバイオフィルムは、細菌類が自らの繁殖を保護・活発化するための活動生成物に他ならず、ここに潜む細菌類は、塩素やオゾンなどの消毒成分を含む水が到来してもバイオフィルムが盾となって細菌類への作用が遅れ、除菌が思うように進まなくなる。結果、営業期間中の通水流をかいくぐって生き延びた細菌類は次に到来する休業期間に活動を活発化し、バイオフィルムを再構築しつつ繁殖を続けてしまうのである。
繰り返すが、チューブ基端側で水やエアが開閉されるタイプの歯科ユニットにあっては、バイオフィルム形成に由来した頑固な細菌汚染の根源が、サックバックによりチューブ先端側まで逆流した汚染水によりチューブ内面に付着する細菌類である点が重要である。
そして、上記特許文献1ないし2に開示された従来技術においては、ハンドピース内に逆流防止弁やシール機構を追加し、サックバックによるチューブ側への汚染水の吸い込みを機構的に遮断しようとする発想に基づいている。従って、逆止弁やシールをかいくぐってチューブ側に細菌が一旦進入してバイオフィルムが形成されてしまうと、以降の通水継続やフラッシングによる除菌対策では効果を望むべくもなくなる。
一方、歯科ユニットの洗浄水供給装置として、近年、マイクロバブルあるいはナノバブルなどの微細気泡を活用した装置が提案されている(特許文献3〜8)。具体的には、口腔内の洗浄やうがいに使用する洗浄水に微細気泡を導入することで、洗浄水の洗浄性能が向上し、供給配管内の清浄化を促進できる、というものである。また、口腔内のバイオフィルムやプラーク、あるいはそれらを媒介して繁殖する細菌類の洗い流しを促進する効果についても期待されている。
しかし、上記特許文献3〜8に開示された装置で採用されている微細気泡の発生機構は、ベンチュリ管などの気液混合ノズルに外気を吸引し、混合してマイクロバブル化するものや、空気等の加圧溶解を利用するものであり、空気をミキシングするためポンプ等の圧送機構や加圧機構が必要であり、また、処理済みの洗浄水を貯留するタンクも追加する必要がある。結果、装置コストが高騰し設置の手間がかかること、歯科医院のフロアでの設置スペース確保が難しいなどの理由により、ほとんど採用が進んでいないのが現状である。
そして、特許文献3〜8に開示された装置は、水道水圧のみでマイクロバブルないしナノバブルを発生できる能力を有するものではない。特に、ハンドピースから噴射される洗浄水の流量が毎分数十ccから高々200cc程度までと非常に小さい場合は、通常の方法では気泡発生効率が十分に確保できず、微細気泡特有の洗浄性向上効果は十分に得られない。さらに、特許文献3〜8の装置は、ハンドピースへの水ないしエアを遮断する開閉弁がチューブ基端側に設けられたものではなく、サックバックによるチューブ先端側内面への細菌汚染ひいてはバイオフィルム形成にかかる課題ついても何ら言及されてない。
本発明の課題は、ハンドピースが接続される水供給チューブの基端に開閉弁が設けられ、水流開閉弁を閉状態に移行する際のサックバックにより、水供給チューブの内側が逆流水に含まれる微生物によりコンタミを受けうる構造の歯科ユニットにおいて、極めて単純かつ小型の液体処理ノズルを機構上の要部とすることで、上記微生物コンタミに由来して水供給チューブに形成されるバイオフィルムの除去ないし形成防止を水道圧に基づく水流通のみで図ることができ、ひいては微生物による他の患者や術者への交叉感染または診療室内汚染を効果的に防止できる歯科ユニット用洗浄水供給装置と、それにハンドピースを接続した歯科ユニット、ならびに、該歯科ユニットのメンテナンス方法を提供することにある。
上記の課題を解決するために、本発明の歯科ユニット用洗浄水供給装置は、
先端にハンドピースを備えた水供給チューブの接続が予定されたハンドピース接続継手部と、
基端側が水道元配管に接続されるとともに、末端がハンドピース接続継手部につながる形で設けられ、前記水道元配管からの水道圧に基づいてハンドピース接続継手部に洗浄用水道水を供給する洗浄水主配管と、
洗浄水主配管上に設けられるとともに、ハンドピースの使用者が操作する水操作スイッチの入力信号を受けることにより、洗浄水主配管を開状態と閉状態との間で切り替える水流開閉弁と、
水流開閉弁の上流にて洗浄水主配管上に設けられ、一端に液体入口を、他端に液体出口を有する液体流路が形成されたノズル本体と、液体流路の内面から各々突出するとともに外周面に周方向の山部とキャビテーションポイントとなる谷部とが複数交互に連なるように形成された衝突部を有する処理コア部とを備えた液体処理ノズル(以下、キャビテーションノズルともいう)と、を備えたことを特徴とする。
また、本発明の歯科ユニットは、
上記本発明の歯科ユニット用洗浄水供給装置と、
該歯科ユニット用洗浄水供給装置の前記ハンドピース接続継手部に接続される水供給チューブと、
該水供給チューブの先端に設けられるハンドピースと、
ハンドピースの使用者が操作する水操作スイッチとを備え、
水流開閉弁を開状態として洗浄水主配管から水供給チューブを経てハンドピースに洗浄用水道水を流通している状態から、水操作スイッチの操作に基づき水流開閉弁を閉状態として水供給チューブ内の洗浄用水道水の流れを瞬時的に遮断することにより、ハンドピースの先端開口から水供給チューブ内に向かう負圧吸引力が生じることを特徴とする。
さらに、本発明の歯科ユニットのメンテナンス方法は、上記本発明の歯科ユニットのメンテナンス方法であって、
水流開閉弁を閉状態に移行する際のハンドピースの先端開口からの負圧吸引による逆流水により、ハンドピースないし水供給チューブの内側が逆流水に含まれる微生物によりコンタミを受け、該微生物に由来したバイオフィルムが形成された状態において、水流開閉弁が開状態となることにより、液体処理ノズルの通過によりキャビテーション処理を受けた洗浄用水道水(以下、キャビテーション水という)を水供給チューブに流通させ、バイオフィルムをキャビテーション水にて剥離除去することを特徴とする。
上記本発明の歯科ユニット用洗浄水供給装置は、ハンドピース用の水供給チューブの接続が予定されたハンドピース接続継手部(水供給チューブの基端側である)に水道元配管からの水道圧に基づいて洗浄用水道水を供給する洗浄水主配管が接続され、このハンドピース接続継手部に随伴する形で洗浄水主配管を開状態と閉状態との間で切り替える水流開閉弁が設けられている。このハンドピース接続継手部に水供給チューブを介してハンドピースを接続した本発明の歯科ユニットは、水流開閉弁を閉状態として水供給チューブ内の洗浄用水道水の流れを瞬時的に遮断することにより、ハンドピースの先端開口から水供給チューブ内に向かう負圧吸引力が生じ、前述したサックバックが生ずる。このサックバックは、例えば使用後のハンドピースをホルダに戻す際に、ハンドピース開口から水だれが生ずることを防止するために、積極的に利用することができる。
しかし、上記のように水供給チューブの基端側に水流開閉弁が設けられることで、サックバックの発生が前提となっている歯科ユニット用洗浄水供給装置においては、水供給チューブとハンドピースを接続して歯科ユニットとして使用した際に、すでに詳述したごとく、ハンドピース開口から水供給チューブ先端部に至る区間に、負圧吸引(サックバック)により汚染水(例えば。口腔内の唾液を含んだ使用済み洗浄水)が不可避的に逆流し、その内面が汚染水に含まれる微生物によりコンタミを受ける。
前述の通り、この微生物は水供給チューブ内面にバイオフィルムの形成を進行させる。しかし、本発明の歯科ユニット用洗浄水供給装置には、水流開閉弁の上流にて洗浄水主配管上に、周方向の山部とキャビテーションポイントとなる谷部とが複数交互に連なるように形成された衝突部により、水道水を直接キャビテーション処理する液体処理ノズルを設けている。このようなノズルで処理された水道水(以下、キャビテーション水という)は、本発明者の検討により通常の水道水よりもはるかに強いバイオフィルム剥離能を有することが判明している。従って、上記のようなサックバックによる汚染が問題になる歯科ユニットにおいても、水供給チューブ内面に付着したバイオフィルムを、ハンドピース使用時における低水流量(例えば0.04L/分以上0.3L/分以下)の水流通により簡単に剥離することができる。さらに、水供給チューブ内面への新たな微生物の付着ひいてはバイオフィルムの形成を極めて効果的に防止することができるようになる。
以下、さらに詳細に説明する。サックバックに伴う水供給チューブのコンタミは、例えば口腔内の微生物とプラークなどの有機汚れ物質を含んでおり、有機汚れ物質を餌とした微生物の活動を助長する。非特許文献1によると、これによるバイオフィルム形成のメカニズムが以下のように説明されている。
すなわち、水供給チューブなどを構成する固体(基質)の表面は、清浄な水中では負に帯電する。同様に微生物の細胞表面も中性付近ではリン酸やカルボキシル基などが解離し、負に帯電するため、静電的な反発が起こり、微生物の細胞は付着しにくい。しかし、コンタミ成分にタンパク質や塩類などが含まれている場合、それらが正に帯電しているため、負帯電する基質表面に静電気的吸着により捕捉される。そして、負帯電する微生物は、この正帯電する栄養成分を媒介として水供給チューブの内面に付着し、これを餌として活発な活動を継続する。
クーロン力的な吸着作用により、水供給チューブ内面への微生物の吸着力は強く、通常の水道水流のフラッシング等では残留しやすい傾向にある。こうして水供給チューブの内面に付着した微生物は細胞外に多糖類のポリマーを生成し、これに包まれることで細胞の脱離が抑えられるようになり、バイオフィルムが発達していくと考えられる。微生物の側に視点を移してみれば、「付着」は微生物の生活様式の一つであり、基質表面への付着に続くバイオフィルムの形成は微生物の諸活動、すなわち彼らの生き残りにとって重要な意味を持つ。
本発明にて採用するキャビテーションノズルは外周面に周方向の山部とキャビテーションポイントとなる谷部とが複数交互に連なるように形成された衝突部を用いるものであり、発明者の一人が考案したものである(例えば特許文献9、10)。発明者の当初の認識によれば、キャビテーションポイントにて減圧析出する溶存空気が平均径100〜200nm程度の微細気泡を形成し、その微細気泡の作用により水の浸透性が改善される機構を想定していた。そして、レーザー散乱式粒度計等により有意な数密度の微細気泡を発生させるには、衝突部を通過するときの水流速が十分大きく確保されていることが重要と考えていたのである。
しかし、本発明の適用対象となる歯科ユニット用洗浄水供給ユニットでは、ハンドピースに供給される水の流量は非常に小さく、得られるキャビテーション水の微細気泡測定を行っても、特許文献9、10に開示されているような平均径領域の微細気泡は計測にかからないか、計測されてもその持続時間は1〜2分と極めて短くなるケースが多い。ところがキャビテーションノズルを通過させた水道水は、数分留置して上記微細気泡が計測不能となった状態でも、水供給チューブ内面に形成されたバイオフィルムを顕著に除去できる能力を発揮することがわかったのである。
ただ、微細気泡が計測できないキャビテーション水が、どのような機構により顕著なバイオフィルム除去能力を発揮できるか、については未解明な部分が多い。例えば、計測限界以下のサイズの気泡か、気泡とは異なるガス分子(酸素・窒素)のクラスタ的集団がキャビテーションにより生成し、100〜200nm程度の微細気泡が再溶解により消滅したあとも、これが多数形成された水分子間に残留・介在することにより、結果として水分子場の集団的相互作用の広がりが縮小し、浸透性向上につながっている可能性が1つの仮説として提示できる。なお、ここでいう「微細気泡が計測できない」は、「微細気泡が絶対的に存在しない」、ということを意味するものではなく、未発見の極小ガス分子クラスタ等の存在等を積極的に排除するものではない。
いずれにしても、キャビテーション水は通常の水道水と比較して、バイオフィルム除去に有効な水の浸透力と水和力とが増強されたものとなる。その結果、バイオフィルムが一旦除去されたか、あるいは顕著なバイオフィルムが形成されるに至っていない水供給チューブも、その内面に静電吸着しようとする微生物は、キャビテーション水の使用により極性分子である水分子との水和が進みやすくなり、水供給チューブ内面への静電的な吸着が阻止される結果、新たなバイオフィルムの形成が極めて効果的に抑止できるようになると考えられる。
例えば、歯科ユニットを施術に使用するのに先立って、バイオフィルムを除去した後、予め定められた期間だけキャビテーション水の流通を継続することにより、該バイオフィルムとハンドピースないし水供給チューブの内面との間に潜伏している微生物を除去することができる。これは、休診等により長期間歯科ユニットを停止状態としていた場合、あるいは、キャビテーションノズルを有さない従来の歯科ユニットを長期にわたり使用継続した場合など、水供給チューブ内面へのバイオフィルムの堆積が顕著となったユニットに対して効果的に採用できるメンテナンス方法である。具体的には、キャビテーション水の流通によりバイオフィルムを速やかに除去しつつ、その後のキャビテーション水の流通継続により、バイオフォルムの下側に潜伏する微生物も洗い流すことができ、以降のバイオフィルムの再形成を極めて効果的に抑止することが可能となる。
また、バイオフィルムが除去された状態にて水流開閉弁が閉状態に移行し、ハンドピースの先端開口からの負圧吸引による逆流水(サックバック)により、ハンドピースないし水供給チューブの内側が逆流水に含まれる微生物によりコンタミを受けた場合は、キャビテーション水の流通を再開することにより、ハンドピースないし水供給チューブの内側にバイオフィルムが再形成されることを予防することができる。このとき、水道水として塩素又はオゾンを含有する消毒水を使用すれば、コンタミ要因となっている付着微生物を消毒成分によりアタックして死滅させることができ、バイオフィルム再形成の抑制をより効果的に図ることができる。
また、我が国の水道法では、水道水は残留塩素含有量が0.1ppm以上(上限は、例えば1ppm以下)確保されていることが義務付けられているが、水供給チューブの先端側に残留する水道水は、ハンドピース先端の開口より残留塩素が蒸散して濃度が下がり、十分な殺菌効果が発揮されなくなる。本発明においては、残留塩素含有量が0.1ppm以上の状態でキャビテーション水となってハンドピースに供給されても、逆流水を負圧吸引した状態にて水流開閉弁が閉状態に移行することにより、キャビテーション水は残留塩素濃度0.1ppm未満となる状態でハンドピースないし水供給チューブの内側に残留する場合もあり得る。しかし、キャビテーション水のバイオフィルム除去効果及び微生物に対する水和効果が高いことから、死滅しない微生物が水供給チューブ内に残留していても、水供給チューブ内面への微生物の強い吸着が起こりにくくなり、洗浄水の流通を再開することで、これを簡単に洗い流すことができる。
以下、本発明に付加可能な要件についてさらに説明する。
まず、本発明の歯科ユニット用洗浄水供給装置に接続されるハンドピースは、電動駆動される技工用回転ツールが、水流量0.04L/分以上0.1L/分以下の洗浄用水道水にて冷却されるエンジンハンドピースとすることができる。このようなエンジンハンドピースを使用する場合、水流開閉弁を閉状態として洗浄水の流通を止めた後も、技工用回転ツールは惰性回転を継続し、その排気作用に水供給チューブ内の負圧状態が強まって前述のサックバック、ひいては微生物汚染に伴うバイオフィルム形成がより進展しやすい。そして、ハンドピース使用時における水流通量は0.04L/分以上0.1L/分以下と非常に少ないが、キャビテーションノズルの採用により、そのような低流量であっても十分なバイオフィルム除去能力を有した洗浄水を水道送水圧のみにより問題なく水供給チューブに供給でき、ひいてはそのようなハンドピースの使用によりサックバックが継続的に生じることになっても、チューブ内面におけるバイオフィルムの除去及び形成予防を効果的に図ることができる。
また、ハンドピースは、技工用超音波振動子が水流量0.04L/分以上0.1L/分以下の洗浄用水道水にて冷却される超音波スケーラハンドピースとすることもできる。超音波スケーラハンドピースは技工用回転ツールを有さないので、サックバックの起こり方はエンジンハンドピースよりも幾分小さいが、微生物の巣窟となる口腔内の歯石やプラークの除去に使用されるツールであるため、多量の微生物が一度に吸引されてしまう可能性が高い。しかし、本発明のごとくキャビテーションノズルを採用することにより、チューブ内面におけるバイオフィルムの除去及び形成予防を効果的に図ることができる。
次に、本発明の歯科ユニット用洗浄水供給装置には、
ハンドピースにエア流を供給するためのエアチューブの接続が予定されたエアチューブ接続継手部と、
基端側がエア供給元管に接続され、末端がエアチューブ接続継手部につながる形で設けられ、エアチューブ接続継手部にエア流を供給するエア配管と、
エア配管上に設けられるとともに、ハンドピースの使用者が操作するエア操作スイッチの入力信号を受けることにより、エア配管を開状態と閉状態との間で切り替えるエア開閉弁とをさらに設けることができる。この場合、本発明の歯科ユニットは、上記構成の歯科ユニット用洗浄水供給装置を採用しつつ、ハンドピースは水供給チューブとエア流を供給するエアチューブとが接続されるようになっており、洗浄用水道水とともにエア流が先端側開口より流出するように構成される。
水流と比べて流速が格段に大きいエア流が洗浄水流と併用される場合、水流とエア流とがともに遮断されることで、水流のみが使用されるハンドピースの使用時よりもさらに大きなサックバックが生じうる。本発明の採用により、そのようなハンドピースが使用され、大きなサックバックが継続的に発生し続けた場合にあっても、チューブ内面におけるバイオフィルムの除去及び形成予防を効果的に図ることができる。
このようなハンドピースとして、水流量が0.07L/分以上0.3L/分以下のスリーウェイシリンジを使用できる。スリーウェイシリンジは口腔内洗浄に使用される水流とエア流とを独立して開閉操作できるハンドピースであり、特に水流量が大きく設定されることから大きなサックバックが発生しうる。しかし、本発明の採用により、チューブ内面におけるバイオフィルムの除去及び形成予防を効果的に図ることができる。
また、水流とエア流が併用されるハンドピースとしては、エア流にて技工用回転ツールが回転駆動され、かつ水流量0.04L/分以上0.1L/分以下の洗浄用水道水にて技工用回転ツールが冷却されるエアタービンハンドピースを使用することができる。エアタービンハンドピースは、水流開閉弁とエア開閉弁とにより水流とエアとの双方が遮断されること、また、遮断後に技工用回転ツールが惰性回転を継続することの両方により、サックバックの発生が顕著である。しかし、本発明の採用により、チューブ内面におけるバイオフィルムの除去及び形成予防を効果的に図ることができる。
この場合、水操作スイッチとエア操作スイッチとの間で入力信号が共用化され、ともに開状態の水流開閉弁とエア開閉弁とを入力信号を受けて閉状態に切り替える際に、エア開閉弁を水流開閉弁に対して遅延して閉状態とする弁制御部を備えるようにユニットを構成できる。水流が先に停止し、流速の大きいエアが遅れて停止することで、ハンドピース開口付近に残留する洗浄水が吹き飛ばされ、水だれを効果的に抑制できるが、エア流が遅れて止まるため、技工用回転ツールはエア流が残留している間、水流のない状態で高速回転を継続する。その結果、水供給チューブへのサックバックが深く生じやすい欠点がある。しかし、本発明の採用により、チューブ内面におけるバイオフィルムの除去及び形成予防を効果的に図ることができる。
歯科ユニットにおいては、0.3L/分以上2.0L/分以下程度の比較的大流量のうがい洗浄水と、0.04L/分以上0.3L/分以下程度の小流量のハンドピース洗浄水との、流量の大きく異なる2つの洗浄水供給系統の両立が求められる。このうち、うがい用洗浄水の供給配管については比較的流量もあり、塩素やオゾンで消毒がなされた水道水が十分流動することで、配管内での細菌類の繁殖やバイオフィルム形成による汚染は比較的起こりにくい。しかし、ハンドピースにつながる水供給チューブに関しては洗浄水の流量は極端に小さく、汚染が進みやすい状況にある。そこで、歯科ユニット用洗浄水供給装置において洗浄水主配管は、水道元配管に接続される主配管部と、該主配管部から分岐してハンドピース接続継手部につながるハンドピース配管部と、主配管部から分岐するハンドピース配管部よりも大流量のうがい洗浄水配管部とを備え、液体処理ノズルはハンドピース配管部に向かう洗浄用水道水を少なくとも通過させるものとして構成できる。これにより、汚染が進みやすいハンドピース配管ひいてはこれにつながる水供給チューブの内面を清浄に保つことができる。
この場合、液体処理ノズルは、配管部とハンドピース配管部のそれぞれに対し、液体流路内における衝突部に含まれる谷部の数がうがい洗浄水配管部及びハンドピース配管部の各水流量に応じて調整されたものを個別に設けるようにすれば、いずれの配管部においても使用時の流量に流通断面積と流速条件を適合させた液体処理ノズルが適用され、バイオフィルム除去の効果を高める観点においては理想的と言える。
しかし、ハンドピース種類によっては洗浄水の流量は0.04L/分以上0.1L/分以下と極めて小さく、これに適合した断面積の液体処理ノズル(キャビテーションノズル)は、衝突部による流通抵抗に由来した圧損が極度に大きくなり、通常の水道圧での流通が困難になる問題がある。
本発明者はこの問題について、鋭意検討を行った結果、例えば特許文献9,10に開示されているようなキャビテーションノズルのうち、うがい洗浄水の供給に適した比較的大きな流通断面積の液体処理ノズルについて、従来全く知られていなかった次のような使用形態を含む歯科ユニット用洗浄水供給装置の構成を見出すに至った。該液体処理ノズルは、例えば通常水道圧下でノズルが受けうる動水圧域(例えば0.03MPa以上0.15MPa以下)において、必要な流量域(0.3L/分以上2.0L/分以下程度)で通水したとき、平均径100nm以上200nm以下の微細気泡がレーザー散乱式粒度計により計測されるようなものである。
すなわち、液体処理ノズルを主配管部に設け、該主配管部上にて液体処理ノズルを通過後の洗浄用水道水を、うがい洗浄水配管部とハンドピース配管部とにそれぞれ分配する。液体処理ノズルの液体流路は、衝突部が設けられる区間が前後の区間よりも断面積が減じられた絞り孔とするが、該絞り孔の断面形状は内径Dが2.3mm以上3.0mm以下の円形とし、当該絞り孔の流通断面積の合計Sを2.0mm以上5.0mm以下に設定する。そして、絞り孔の断面において中心から半径の70%以内に位置する谷部の総数(以下、70%谷点数という)をn70とし、n70/Sの値を70%谷部密度VD70とし、液体処理ノズルに洗浄用水道水を動水圧0.07MPaにて供給したときの流量をJ(L/分)としたとき、
CVC0.05≡VD70×(0.05/J)
により定義される低流量キャビテーション係数CVC0.05の値が0.06以上0.17以下となるように、絞り孔における衝突部の谷部の数および配置を定める。
そして、通常水道圧(例えば、ノズルでの動水圧にて0.03MPa以上0.1MPa以下)を採用したとき、うがい用洗浄水に必要十分な水流量(例えば0.3L/分以上2.0L/分以下)を得るために必要な絞り孔の幾何学的な条件は、内径Dが2.3mm以上3.0mm以下の円形の断面を採用する場合、衝突部を除いた当該絞り孔の流通断面積の合計Sが2.0mm以上5.0mm以下となる。断面積の合計が2.0mm未満ではうがい用洗浄水の必要流量を通常水道圧では確保できなくなるからであり、同じく5.0mmを超えると絞り孔での流速が極度に不足し、バイオフィルム除去に必要な洗浄力を得られるキャビテーション水に付与できなくなるからである。
そして、前記70%谷部密度VD70と、通常水道圧の一つの目安となる動水圧0.07MPaの条件にて洗浄用水道水を供給したときの流量をJ(L/分)とを用いて、
CVC0.05≡VD70×(0.05/J)
により定義される低流量キャビテーション係数CVC0.05の値を0.06以上0.17以下となるように、絞り孔における衝突部の谷部の数および配置を定めておく。このように衝突部の谷部が定められたノズルは、通常水道圧においてうがい用洗浄水に必要な流量を確保できる大きな流通断面積を有しており、またその条件で水道水を流通した場合、平均径100nm以上200nm以下の微細気泡の発生をレーザー散乱式粒度計により確認することができる(例えば、特許文献10を参照)。他方、CVC0.05の値が上記範囲に確保される該大流通断面積のノズルは、うがい洗浄水流通時の数分の1以下となるハンドピース用の極端な低流量条件で洗浄水を流通したとき、レーザー散乱式粒度計による上記流径範囲の微細気泡はほとんど計測することができなくなる。しかしながら、得られるキャビテーション水は意外にも、歯科ユニットにおけるサックバックに由来した水供給チューブ内面のバイオフィルムを全く問題なく除去できる洗浄能力を有していることがわかったのである。
その結果、ハンドピース用の低流量の洗浄水とうがい用洗浄水との双方を、バイオフォルム除去能力を十分に確保しつつも1本のキャビテーションノズルで兼用することができるようになる。また、ハンドピースに特化した小流通断面積のノズルを用いる場合よりも圧損を大幅に減ずることができ、ハンドピース用洗浄水とうがい用洗浄水との双方を通常水道圧にて問題なく供給することができる。
本発明者の検討により、キャビテーションノズルを用いて得られるキャビテーション水のバイオフィルム除去力に有効に寄与するのは、絞り孔の断面において中心から半径の70%以内に位置する谷部であることが判明している。通常水道圧にてキャビテーションノズルに付加される動水圧を0.07MPaとし、この動水圧でキャビテーションノズルを通過する水流量をJ(L/分)とし、さらに、ハンドピース使用時に想定される水流量を0.05L/分と想定したとき、通常水道圧での流量Jから、ハンドピースでの圧損により流量が0.05L/分に低下したときの、70%谷点のバイオフィルム除去力への寄与は、70%谷点密度VD70の値に0.05/Jを乗じた値にて評価するのが妥当と考え、これを低流量キャビテーション係数CVC0.05として定義するのである。
低流量キャビテーション係数CVC0.05の値が0.06未満ではハンドピース用洗浄水流通時の低流量域にて、得られるキャビテーション水のバイオフィルム除去能力を十分に確保できなくなる場合がある。他方、CVC0.05の値が0.17を超えると、絞り孔に占める衝突部の面積率が大きくなりすぎて流通圧損が増大し、通常水道圧でのうがい用洗浄水の供給が困難になる場合がある。CVC0.05の値はより望ましくは0.07以上0.12以下に設定するのがよい。また、衝突部の谷部の深さは、谷部底でのキャビテーション効率を高める観点において、0.15mm以上0.3mm以下に設定されているのがよい。
上記の構成では、うがい洗浄水配管部における洗浄用水道水の流通が許容され、ハンドピース配管部における洗浄用水道水の流通が遮断されているときの液体処理ノズルの洗浄用水道水の流量は、うがい用洗浄水を患者が直接口に含んだり、あるいはうがい用のカップに注水する際にストレスなく水を使用したりできるよう、前述の流量域(0.5L/分以上2L/分以下)に調整することが望ましい。逆に、うがい洗浄水配管部における洗浄用水道水の流通が遮断され、ハンドピース配管部における洗浄用水道水の流通が許容されているときの液体処理ノズルの洗浄用水道水の流量は、前述のごとくハンドピース用に特化された0.04L/分以上0.3L/分以下に調整することができる。
また、液体処理ノズルは、液体流路を液体入口側の流入室と液体出口側の流出室とに区画する隔壁部と、隔壁部に貫通形成され流入室と流出室とを互いに別経路にて連通させる2個の絞り孔とを備えたものとして構成できる。このようにすると、絞り孔の一方が異物などの影響により流通確保しにくくなった場合に、他方の絞り孔により必要な洗浄水の流量を確保することが可能となる。この場合、低流量キャビテーション係数CVC0.05の値は0.06以上0.12以下となるように、絞り孔における衝突部の谷部の数および配置を定めることができる。
上記の構成において液体処理ノズルは、衝突部をねじ部材にて構成できる。ねじ部材を規格品であるJIS並目ピッチにより構成する場合、絞り孔を内径Dが2.3mm以上3.0mm以下の円形とし、当該絞り孔の流通断面積の合計Sを2.0mm以上5.0mm以下に設定して、前述のCVC0.05の値を0.06以上0.17以下に確保するためには、その外径Mは1.0mm以上1.4mm以下の範囲で選定することが望ましい(特にM1.0mm)。外径Mが1.0mm未満のねじはJIS並目ピッチねじの規格外となる。また、M1.4mmを超えるJIS並目ピッチねじは外径が太すぎて、CVC0.05の値を0.06以上に確保することが事実上不可能となる。
また、液体処理ノズルにおいてねじ部材は液体流路の中心軸線を取り囲む十字形態に4つ配置されるとともに、4つのねじ部材が形成する十字の中心位置にそれらねじ部材の先端面により液体流通ギャップが形成されてなるものを使用することが望ましい。十字の中心位置に液体流通ギャップを形成すると、最も高流速となる断面中央の流れ(中心流)が液体流通ギャップの形成により妨げられにくくなり、中心から半径の70%以内に位置する谷部でのキャビテーション効率が高められ、バイオフィルム除去効果の向上に寄与する。液体流通ギャップの形成による上記の効果は、4つの衝突部の液体流通ギャップを形成する先端面を平坦に形成し、前述の投影において液体流通ギャップが正方形状に形成されている場合に特に顕著である。このとき、隣接する衝突部の縁同士が作る内側及び外側の角部もキャビテーションポイントとして機能しうる。また、処理コア部にて液体流路に複数の衝突部を配置する場合、該液体流路の軸線方向(流れ方向)にて複数の衝突部を互いにずれた位置に配置することも可能である。このようにすると、衝突部を流れ方向に複数設けることができ、キャビテーションポイントとなる谷部に流れを繰り返し接触させることが可能となるので、微細気泡の発生効率向上に寄与する。
本発明の作用及び効果の詳細については、「課題を解決するための手段」の欄にすでに記載したので、ここでは繰り返さない。
本発明の歯科ユニット用洗浄水供給装置の第一例を示す斜視図。 図1の歯科ユニット用洗浄水供給装置の分配制御ボックスとその周辺の配管及び配線構造を示すブロック図。 エンジンハンドピースの一例を示す側面模式図。 超音波スケーラハンドピースの一例を示す側面模式図。 スリーウェイシリンジの一例を示す側面模式図。 エアタービンハンドピースの一例を示す側面模式図。 スリーウェイシリンジへの通水を遮断したときのサックバック発生状況を説明する図。 スリーウェイシリンジへの通水とエア供給とを遮断したときのサックバック発生状況を説明する図。 サックバックにより水供給チューブの内検にバイオフィルムが形成される様子を説明する図。 バイオフィルムの形成状態を模式的に示す断面図。 バイオフィルムの形成メカニズムを推定して示す説明図。 本発明に使用する液体処理ノズルの一例を示す横断面図。 図11の側面を拡大して示す詳細図。 図11の液体処理ノズルの絞り孔の拡大側面図。 図13の谷点配置を示す説明図。 図11の液体処理ノズルが接続される洗浄水主配管の具体的な構成例を示す図。 キャビテーション水によるバイオフィルム除去効果及び付着防止効果を説明する図。 実施例2の実験の評価結果を示すグラフ。
以下、本発明を実施するための形態を添付の図面を用いて説明する。
図1は、本発明の歯科ユニット用洗浄水供給装置及びそれを用いた歯科ユニットの一例を示す外観図である。歯科ユニット300は、歯科医院の診察室の床面に載置・固定される周知の歯科治療椅子400と、これに着座する被治療者がうがい可能な位置関係で該歯科治療椅子400に隣接配置され、うがいスピットン411が上部に設けられたユニット本体410と、歯科治療椅子400の傍らに立つ歯科医により被治療者への処置操作が可能となる位置関係で該歯科治療椅子400に隣接配置され、エアないし電動にて駆動されるタービン等のハンドピース421が複数配置された治療用テーブル420を備えている。
ハンドピース421は、手で握る本体に設けられたスイッチやフットペダルにて駆動・非区動が切り替えられるとともに、水供給チューブ502を介して洗浄水が供給される。水供給チューブ502は内径が3mm以上5mm以下程度のゴムないし樹脂製のチューブであり、ハンドピース421を駆動する際の洗浄水の通過流量は0.03L/分以上0.3L/分以下程度と小さい。他方、うがいスピットン411はうがい用洗浄水の吐出部511を備え、スイッチないしセンサにより駆動される図示しない給水バルブを有する供給配管510により洗浄水が、毎分0.5L以上2リットル以下程度と、ハンドピース421より大流量にて供給される。
うがい洗浄水配管部549と水供給チューブ502には、本発明の歯科ユニット用洗浄水供給装置310(歯科ユニット300から水供給チューブ502とハンドピース421を取り外したものに相当する)により洗浄用水道水が分配供給される。水道水は遊離塩素濃度が0.1ppm以上1ppm以下の消毒水道水である(溶存オゾン濃度が0.1ppm以上1ppm以下のオゾン消毒水道水であってもよい)。歯科ユニット用洗浄水供給装置500は、歯科治療椅子530に付随する配管ボックス(いわゆるジャンクションボックス)531と、上水道等の水道元配管431につながる洗浄水主配管540とを備え、その洗浄水主配管540の一部が配管ボックス531の筐体(対象筐体)に内蔵されている。
本実施形態では、配管ボックス531は歯科治療椅子400の下方にて床面上に固定され、配管ボックス531の外に延出する洗浄水主配管540に対し、ハンドピース配管部548及びうがい洗浄水配管部549が分配制御ボックス542を介して直結されており、各水供給チューブ502はハンドピース配管部548から分岐している。また、分配制御ボックス542にはエアコンプレッサ543からのエアがエア供給元配管544及び分配制御ボックス542を介して各ハンドピース421のうち、エアを必要とするものに分配供給される。
図2は、分配制御ボックス542に対する各配管及び信号線の接続系統を示すブロック図である。洗浄水主配管540は基端側が水道元配管431に接続され、末端がハンドピース接続継手部101につながっている。ハンドピース接続継手部101は先端にハンドピース421を備え、ここに水供給チューブ502が接続されるとともに、水道元配管431からの水道圧により洗浄用水道水が供給される。
浄水主配管540は、水道元配管431に接続される主配管部547を備え、該主配管部547から分岐継手547Jを介してハンドピース配管部548とうがい洗浄水配管部549とが分岐している。ハンドピース配管部548からは個別分岐継手548Jを介して複数の個別給水配管552が分岐し、各々対応するハンドピース接続継手部101につながっている。また、分岐継手547Jからはハンドピース配管部548よりも大流量のうがい洗浄水配管部549が分岐し、末端に形成されたうがい給水継手部102を介してうがいスピットン411(図1)側の配管延長部分につながっている。なお、洗浄用水道水の除菌力をさらに高めるため、図2に示すように、主配管部547の途上にて洗浄用水道水に1質量%未満の濃度の過酸化水素水を注入する過酸化水素水注入部を設けることも可能である。
一方、エア供給元管544にはエア分岐継手544Jを介してエア配管545の基端側が接続されている。該エア配管545からは個別分岐継手545Jを介して複数の個別エア配管553が分岐し、各々ハンドピース接続継手部(エアチューブ接続継手部に兼用されている)101につながっている。
次に、個々のハンドピース接続継手部101の上流側にて個別給水配管552(洗浄水主配管540の末端をなす一部である)上には、ハンドピースの使用者が操作する水操作スイッチの入力信号560を受けることにより、対応する個別給水配管552を開状態と閉状態との間で切り替える水流開閉弁110が設けられている。また、ハンドピース接続継手部101の上流側にて個別エア配管553上には、ハンドピースの使用者が操作するエア操作スイッチの入力信号560を受けることにより、各個別エア配管553を開状態と閉状態との間で切り替えるエア開閉弁112が設けられている。さらに、うがい洗浄水配管部549上にはうがい洗浄水開閉弁554が設けられて、うがいスピットン側からの入力信号を受けて開閉駆動される。そして、弁制御部546は、上記の入力信号(560等)を受けて水流開閉弁110、エア開閉弁112及びうがい洗浄水開閉弁554を開閉駆動する制御をおこなう。
なお、一般的な歯科施術の手順からも明らかなごとく、図1において、複数あるハンドピース421は、施術中はどれか1つだけが選択され、洗浄用水道水が供給される。また、うがいスピットン411とハンドピース421とは、両方が同時に通水状態となることはなく、どちらか一方だけが選ばれ通水状態となる。そして、うがい洗浄水配管部549における洗浄用水道水の流通が許容され、ハンドピース配管部548における洗浄用水道水の流通が遮断されているときの液体処理ノズル1の洗浄用水道水の流量が0.5L/分以上2L/分以下に調整される。また、うがい洗浄水配管部549における洗浄用水道水の流通が遮断され、ハンドピース配管部548における洗浄用水道水の流通が許容されているときの液体処理ノズル1の洗浄用水道水の流量が0.04L/分以上0.3L/分以下に調整される。つまり、ハンドピース421への給水流量は、うがいスピットン411への給水流量の数分の1〜1/20程度と、極端に少なく設定されている。
水流開閉弁110を開状態として洗浄水主配管540から水供給チューブ502を経てハンドピース421に洗浄用水道水を流通している状態から、水操作スイッチの操作に基づき水流開閉弁110を閉状態として水供給チューブ502内の洗浄用水道水の流れを瞬時的に遮断すると、ハンドピース421の先端開口から水供給チューブ502内に向かう負圧吸引力(サックバック)が生じる。以下、本発明に採用可能なハンドピース421の実例と、サックバックの発生状況について説明する。
図3は、エンジンハンドピース421Aを示すものである。エンジンハンドピース421Aは洗浄水のみを使用するものであり、伝達軸108を介してモータ107により電動駆動される技工用回転ツール580を先端に有する。本体側面に設けられた水操作スイッチ104を押すと図2の水流開閉弁110が開いて水が供給されるとともに、技工用回転ツール580が回転駆動される。水供給チューブ502からの洗浄用水道水は、水流量0.04L/分以上0.1L/分以下の流量にて、水流通路109を経て技工用回転ツール580の周囲に噴射され、切削屑を洗い流しながらこれを冷却する。エンジンハンドピース421Aを使用する場合、水流開閉弁110を閉状態として洗浄水の流通を止めた後も、技工用回転ツール580は惰性回転を継続し、その排気作用に水供給チューブ502内の負圧状態が強まり、口腔内の汚染水等をサックバックする結果、微生物汚染に伴うバイオフィルム形成がより進展しやすい。
図4は、超音波スケーラハンドピース421Bを示すものである。超音波スケーラハンドピース421Bも洗浄水のみを使用するものであり、超音波発生部117が発生する超音波が超音波伝達部119を介して先端も技工用超音波振動子581に伝達され、これが水流量0.04L/分以上0.1L/分以下の洗浄用水道水にて冷却される。超音波スケーラハンドピース421Bは回転ツールを有さないので、サックバックの起こり方はエンジンハンドピース421Aよりも幾分小さいが、微生物の巣窟となる口腔内の歯石やプラークの除去に使用されるツールであるため、多量の微生物が一度に吸引されてしまう可能性が高い。
図5は、スリーウェイシリンジ421Cを示すものである。スリーウェイシリンジ421は口腔内洗浄に使用されるものであり、先端に設けられる水流ノズル124とエアノズル123とに、水流通路109とエア流通路121とがそれぞれつながっており、水供給チューブ502及びエアチューブ602を介して洗浄用水道水とエアがそれぞれ供給される。水操作スイッチ104とエア操作スイッチ105とが個別に設けられており、それらの操作により水流とエア流とを独立して開閉操作できる。スリーウェイシリンジ421Cは、水流量が0.07L/分以上0.3L/分以下と、ハンドピース類の中では大きく設定され、停止時により大きなサックバックが発生しうる。
図7Aの上は、スリーウェイシリンジ421Cの水操作スイッチ104を押下して水流のみを噴出させている状況を示している。スリーウェイシリンジ421Cを流れる水はベルヌーイの定理により、大気圧よりも減圧された状態となるが、水流出ノズル124の先端開口は水が流出状態にあるため、逆流等は生じない。しかし、図7Aの下に示すように、この状態で水操作スイッチ104の押下を解除すると、流通状態の水の運動は瞬時に停止し、作用していた負圧に基づく圧力差により水流出ノズル124の先端開口から汚染水が吸い込まれるサックバックを生ずる。また、図7Bは、水操作スイッチ104とエア操作スイッチ105の双方を押下し、水流とエア流とを同時に噴出させている状況を示している。この状態で両スイッチ104、105の押下を同時に解除すると、水流だけでなく流速の大きいエア流も瞬時停止し、より大きなサックバックを生ずることとなる。
次に、図6は、エアタービンハンドピース421Dを示すものである。エアタービンハンドピース421Dは、技工用回転ツール580’を有するヘッド部に水流通路109とエア流通路121とがそれぞれつながっており、エア流にて技工用回転ツール580’を回転駆動する一方、かつ水流量0.04L/分以上0.1L/分以下の洗浄用水道水にて技工用回転ツール580’が冷却される構造である。エア操作スイッチに兼用された水操作スイッチ104により、水流開閉弁110とエア開閉弁112(図2)とが水流とエアとの双方を遮断すること、また、遮断後に技工用回転ツール580が惰性回転を継続することの両方により、サックバックの発生が顕著である。
また、水操作スイッチ104がエア操作スイッチに兼用されているため弁制御部546(図2)への入力信号も共用化されている。弁制御部546は、エアタービンハンドピース421Dについては、ともに開状態の水流開閉弁110とエア開閉弁112とを入力信号を受けて閉状態に切り替える際に、エア開閉弁112を水流開閉弁110に対して遅延して閉状態とする制御を行なう。水流が先に停止し、流速の大きいエアが遅れて停止することで、エアタービンハンドピース421Dの開口付近に残留する洗浄水が吹き飛ばされ、水だれを効果的に抑制できる。しかし、エア流が遅れて止まるため、技工用回転ツール580’はエア流が残留している間、水流のない状態で高速回転を継続する。その結果、水供給チューブ502への深いサックバックが生じやすい。
図8に示すように、上記のようなサックバックによりハンドピース421から汚染水SWが水供給チューブ502に逆流すると、これに含まれている微生物BCにより水供給チューブ502の先端側内面にバイオフィルムBFが形成される。図9は、その推定される形成メカニズムを示すものである。(a)に示すように、水供給チューブ502などを構成する固体(基質)の表面は、清浄な水中では負(−)に帯電する。同様に微生物bcの細胞表面も中性付近ではリン酸やカルボキシル基などが解離し、負に帯電するため、静電的な反発が起こり、微生物の細胞は付着しにくい。しかし、層流拡散層の形成により流れが滞る基質502の表面には、正(+)に帯電しやすいタンパク質や塩類などが含まれるコンタミ成分ODが負帯電する基質502の表面に静電気的吸着により捕捉される。そして、(b)に示すように、負帯電する微生物BCは、この正帯電するコンタミ成分層ODを媒介として水供給チューブ502の内面に付着し、これを餌として活発な活動を継続する。
クーロン力的な吸着作用により、水供給チューブ502内面への微生物の吸着力は強く、通常の水道水流のフラッシング等では残留しやすい傾向にある。こうして(c)に示すように、基質(水供給チューブ)502の内面に付着した微生物BCは細胞外に多糖類のポリマーを生成し、これに包まれることで細胞の脱離が抑えられるようになり、バイオフィルムBFが発達していくと考えられる。バイオフィルムBFは分子量が高く、通常の水道水フラッシングによる完全除去は難しい。したがって、(d)に示すように、洗い流せる微生物BCはバイオフィルムBFの表層付近に付着しているものに限られ、バイオフィルムBFの深層部に潜伏しているものは流されずに活動を継続し、バイオフォルムBFの再構築活動を行う。
こうした微生物の中でも、主要な炭素源として有機炭素源に依存する細菌類(いわゆる従属栄養細菌類)は、バイオフィルムを媒介とした繁殖を生じやすく、他の患者や術者への交叉感染または診療室内汚染の発生源として注意を払う必要がある。前述の非特許文献1には、バイオフィルムの菌同定によりpseudomonas mosselii(緑膿菌に代表される)が主要な微生物として含まれていた旨報告されているが、緑膿菌は院内感染の原因菌として、医学上も重要視されている。当然、歯科治療の場合、口腔内のプラーク形成源となるミュータンス菌や歯周病菌もバイオフィルム下で繁殖する可能性が高く、水供給チューブ502からの洗浄による排除は、院内感染等防止の観点から重要である。
次に、図1に戻り、洗浄水主配管540上には洗浄水の供給を開閉する手動式の止水栓541が設けられる一方、水供給チューブ502(につながるハンドピース配管部548)及びうがい洗浄水配管部549が各々分岐する給水分岐部542と止水栓541との間にて、洗浄水主配管540の配管ボックス531(の筐体)への内蔵区間上には液体処理ノズル(キャビテーションノズル)1が着脱可能に設けられている。洗浄水主配管540は、両端に形成された第一継手部551及び第二継手部552が各々配管ボックス531の流入側継手部532と液体処理ノズル1の液体入口側継手26とに接続される第一配管部材550と、両端に形成された第三継手部563及び第四継手部564が各々液体処理ノズル1の液体出口側継手27と対象筐体531の流出側継手部533とに接続される第二配管部材560とを備える。
配管ボックス531の内部にはこのほかにも、電磁バルブやライト、椅子の電動駆動部などへ給電する電気配線444(コネクタ430aを経て電源部430に接続される)、排水管445(排水管継手部432aにて排水部432に接続される)、口腔内吸引用の配管446(継手部433aにて吸引源433に接続される)などの一部が収容されている。配管ボックス531の寸法は種々であるが、例えば歯科治療椅子400の下部ないし後方の限られたスペースに配置可能なものであり、例えば高さ30cm以内、幅及び奥行きが40cm以内である。洗浄水主配管540の内蔵部分(第一配管部材550+第二配管部材560)周囲に確保できる液体処理ノズル1の設置スペースは相当狭小である。
以下、液体処理ノズル1の詳細について説明する。図11は、液体処理ノズル1の横断面を示し、図12は液体入口側の側面を拡大して示すものである。この液体処理ノズル1は、液体流路3が形成されたノズル本体2を備える。ノズル本体2は円筒状に形成され、その中心軸線Oの向きに円形断面の液体流路が貫通形成されている。液体流路3は一方の端(図面右側)に液体入口4を、他方の端に液体出口5を開口しており、その流れ方向中間位置には液体入口4及び液体出口5よりも径小の絞り孔9が形成されている。液体流路3は絞り孔9よりも液体入口4側が流入室6とされ、液体出口5側が流出室7とされるとともに、絞り孔9の内面からは衝突部10が突出形態で設けられ、処理コア部COREを形成している。
ノズル本体2の両端部はねじ継手で構成された流入側継手部26及び流出側継手部27とされている。ノズル本体の全長は例えば50mm以上120mm以下、外径は13mm以上35mm以下である。図15に示すように、第一配管部材550及び第二配管部材560はいずれも金属フレキ管で構成され、流入側継手部26及び流出側継手部27につながる第二継手部552及び第三継手部553(及び図1の第一継手部551及び第四継手部554)はいずれもナット継手として構成されている。
ノズル本体2には、液体流路3は隔壁部8により液体入口4側の流入室6と液体出口5側の流出室7とに区画されており、隔壁部8には、流入室6と流出室7とを互いに別経路にて連通させる複数の絞り孔9が貫通形成されている。処理コア部COREにおいて衝突部10は、それら絞り孔9の内面から各々突出する形で設けられている。図3に示すごとく、この実施形態では、隔壁部8に絞り孔9が中心軸線Oに関して軸対象となるように、同一内径にて2個形成されている。なお、2つの絞り孔9は、中心軸線O側にて断面の一部が重なる形で一体化していてもよい。
図13は絞り孔9の一方を側面視した場合の拡大図であり、衝突部10は外周面に周方向の山部11と高流速部となる谷部12とが複数交互に連なるように形成されている。衝突部10は、この実施形態では、脚部末端側が流路内に突出するねじ部材(以下、「ねじ部材10」ともいう)であり、結果、衝突部に形成される複数巻の山部11は、らせん状に一体形形成されている。ノズル本体2の材質は、たとえばABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)、ナイロン、ポリカーボネート、ポリアセタール、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ジュラコン(商標名)などの樹脂であるが、ステンレス鋼や真鍮などの金属、あるいはアルミナ等のセラミックスとしてもよい。
図12に戻り、絞り孔9にそれぞれ形成される衝突部の組は、ノズル本体2に形成されたねじ孔19にて、その壁部外周面側から先端が絞り孔9内へ突出するようにねじ込まれる4本のねじ部材により形成されている。ねじ孔19とねじ部材10との間は接着剤等によりセッティング固定され、ねじ部材(衝突部)10と絞り孔9内周面との間には主流通領域21が形成されている。また、各絞り孔9において、4つの衝突部10が形成する十字の中心位置には、液体流通ギャップ15が形成されている。液体流通ギャップ15を形成する4つの衝突部10の先端面は平坦に形成され、前述の投影において液体流通ギャップ15は正方形状に形成されている。
次に、処理コア部における液体流路の外周縁内側の全面積、ここでは、図12の2つの絞り孔9の円形軸断面の投影面積(内径をDとしてπDd/4)の合計をS1とし、衝突部10(4本のねじ部材)の投影面積をS2として、処理コア部の全流通断面積Stを、
St=S1−S2 (単位:mm
として定義したとき、この全流通断面積Stが2.0mm以上5.0mm以下に確保されている。本実施形態では、図4に示す主流通領域21と液体流通ギャップ15との合計面積(の2つの絞り孔9の間での和)が全流通断面積Stに相当する。図11に示すごとく、液体入口4及び液体出口5の開口径は、絞り孔9の内径よりも大きい。すなわち、液体入口4及び液体出口5の断面積は全流通断面積Stよりも大きく設定されている。また、流入室6及び流出室7の絞り孔9に連なる内周面はそれぞれテーパ部13,14とされている。各絞り孔9の内径Dは、例えば2.3mm以上3.0mm以下である
図14は図13と全く同一の投影図であり、符号を省略したものである(従って、各部の符号は図13のものを援用する)。ねじ部材(衝突部)10の投影外形線に現れる谷部12の深さhは0.2mm以上確保されている。また、中心軸線Oの投影点を中心として液体流路の内周縁までの距離の70%に相当する半径にて描いた円を基準円C70として定めるとともに、谷部12の最底位置を表す谷点のうち、基準円C70の内側に位置するもの(70%谷点)を白丸で表示している。
そして、絞り孔の断面において基準円C70の内側に位置する谷部12の総数をn70とし、n70/Sの値を70%谷部12密度VD70とし、液体処理ノズル1に洗浄用水道水を動水圧0.07MPaにて供給したときの流量をJ(L/分)としたとき、
CVC0.05≡VD70×(0.05/J)
により定義される低流量キャビテーション係数CVC0.05の値が0.06以上0.17以下となるように、絞り孔における衝突部10の谷部12の数および配置が定められている。
図12に戻り、絞り孔9にそれぞれ形成される衝突部の組は、ノズル本体2の壁部外周面側から先端が絞り孔9内へ突出するようにねじ込まれる4本のねじ部材により形成されている。図中破線で示すように、ねじ部材10は、ノズル本体2の壁部に貫通形成されたねじ孔19にねじ込まれ、各ねじ孔19のねじスラスト方向途中位置にはねじ頭下面を支持するための段付き面19rが形成されている。該段付き面19rの形成位置は、ねじ部材10をねじ込んだ時に、絞り孔9内に突出するねじ脚部(すなわち、衝突部となる部分)の長さが、液体流通ギャップ15を形成するのに適正となるように調整されている。ねじ孔19とねじ部材10との間は接着剤等によりセッティング固定されている。また、図11に示すように、複数の絞り孔9の間でねじ部材10の干渉を回避するために、各絞り孔9に組み込む4つのねじ部材10の組は、それら絞り孔9の間で軸線方向にて互いにずれた位置に配置されている。
以下、図1の、歯科ユニット用洗浄水供給装置310(及び歯科ユニット300)の作用・効果について説明する。歯科治療椅子400に着座した被処置者に対し、歯科医はハンドピース421を操作して口腔内の処置を行なう。また、被処置者は歯科医の指示に従い、うがい用洗浄水を吐出部511から口に含み、スピットン411に吐き出す。ハンドピース421の使用時には主洗浄配管540、ハンドピース配管部548及び水供給チューブ502を経て操作中のハンドピース421から洗浄水が口腔内に噴射される。他方、うがい時には主洗浄配管540から供給配管510を経て吐出部511から洗浄水が流出する。いずれの場合も洗浄水は主洗浄配管540上の液体処理ノズル1を通過した後、流出することとなる。
図11及び図12に示す液体処理ノズル1に洗浄用水道水を通水したときの作用について説明する。水道水は大気と平衡する濃度に空気が溶存しているものとする(たとえば、20℃(常温)での酸素濃度は約8ppm)。水流はまずテーパ部13及び絞り孔9で絞られ、ねじ部材10と絞り孔9内周面との間に形成される図4の主流通領域21と液体流通ギャップ15とからなる液流通領域にてねじ部材10に衝突しながらこれを通過する。
ねじ部材10の外周面を通過するときに、図10に示すように流れは谷部12に高速領域を、山部11に低速領域をそれぞれ形成する。すると、谷部12の高速領域はベルヌーイの定理により負圧領域となりキャビテーションが発生する。谷部はねじ部材10の外周に複数巻形成され、かつねじ部材10が絞り孔9内に4本配置されていることから、このキャビテーションは絞り孔9内の谷部にて同時多発的に起こることとなる。
液体処理ノズル1の処理コア部COREにおける全流通断面積の合計が2.2mm以上確保されていることで、うがい時の比較的流量の大きい使用時にも必要な洗浄水量を確保できる。この断面積設定は、例えば処理コア部COREに付加される動水圧レベルが0.07MPa程度のとき、目安として1L(リットル)/分以上の流量が確保できる程度のものである。しかし、ハンドピース421(図1)の使用時には、この流量は例えば0.3L/分以下と大幅に小さくなる。
本発明においては、うがい用洗浄水とハンドピース用洗浄水とに兼用される液体処理ノズル1を、絞り孔の流通断面積の合計Sが2.0mm以上5.0mm以下に確保することで、うがい用洗浄水供給に十分な水流量を確保できる。他方、液体処理ノズル1は、前述の低流量キャビテーション係数CVC0.05の値が0.06以上0.17以下となるように、絞り孔における衝突部10の谷部12の数および配置が定められていることにより、ハンドピース使用時の低流量通水時にも、図1のハンドピース421につながる水供給チューブ502の内面に付着するバイオフィルムの洗浄除去力が十分確保できるようになる。
歯科ユニット300は、処置のため洗浄水が直接口腔内に適用されるから、特に図1において、口腔内洗浄ノズル501やこれにつながる水供給チューブ502に対しては高い清浄性が求められる。前述のごとく処置時における口腔内洗浄ノズル501への通水流量は非常に小さく、チューブ内に滞留している少量の洗浄水の消毒成分も、週末や、年末年始、お盆、ゴールデンウィークといった、長期間医院が休業状態となる期間には抜け飛びやすい。このとき、水供給チューブ502内は上記のサックバックを要因として、細菌の繁殖ひいてはバイオフィルムの形成が進行しやすく、休み明けに業務が再開されても、チューブ内を流通する洗浄水の流量が小さいので、短時間の水の流通のみでは、一旦形成された粘度の大きいバイオフィルムを完全に除去することは難しい。
バイオフィルムは、細菌類が自らの繁殖を保護・活発化するための活動生成物に他ならず、ここに潜む細菌類は、塩素消毒等がなされた水道水が到来してもバイオフィルムが妨げとなって細菌類への作用が遅れ、除菌効果は十分に発揮されにくい。その結果、営業期間中の水流通をかいくぐって生き延びた細菌類は次の休業期間に活動を活発化し、バイオフィルムを再構築しつつ繁殖を続けてしまうことになる。チューブを含めた配管内は消毒液にて定期的に除菌することが推奨されているが、除菌の実施は休業時に限られやすく、多くの歯科医院では積極的に実施されていないのが現状である。
しかし、洗浄水主配管540上に上記のような液体処理ノズル1を組み込んでおけば、長期にわたる使用によりハンドピース421用の水供給チューブ502にバイオフィルムが相当量堆積した状態になっていても、通水流量が小さいにも関わらず、短時間の通水のみでこれを効果的に剥離除去することができる。
このとき、ハンドピース421に供給される水の流量は上記のごとく非常に小さく、得られるキャビテーション水の微細気泡測定を、レーザー散乱式粒計を用いて行っても、例えば平均径100〜200nm程度の微細気泡(いわゆるナノバブル)は計測にかからないか、計測されてもその持続時間は1〜2分と極めて短い。しかし、上記の条件でキャビテーションノズルを通過させた水道水(キャビテーション水)は、数分留置して上記微細気泡が再溶解して計測不能となった状態でも、通常の水道水と比較して、バイオフィルム除去に有効な水の浸透力と水和力とが増強されたものとなる。
その結果、図16(a)に示すように、バイオフィルムBFは膜表層部からの水浸透に加え、膜と基質502との界面への水浸透も活発に進み、高面積を覆うバイオフォルムBFが下地界面から浮き上がって一挙に離脱する形で除去が進む。このとき、(b)に示すように、浸透性の向上したキャビテーション水の使用により、バイオフィルムBFの下に潜伏していた微生物BCと下地のコンタミ層ODに対する水和が進みやすくなり、引き続きキャビテーション水の流通を行なうことで容易に除去することができ、以降のバイオフィルム再形成の要因が根源から駆逐される。特に、休診等により長期間歯科ユニット300を停止状態としていた場合、あるいは、キャビテーションノズルを有さない従来の歯科ユニット300を長期にわたり使用継続した場合など、水供給チューブ502内面へのバイオフィルムの堆積が顕著となったユニットに対しては、歯科ユニットを施術に使用するのに先立って、予め定められた期間だけキャビテーション水の流通を継続することにより、バイオフィルムと水供給チューブ502の内面との間に潜伏している微生物を除去することが有効である。
そして、図16(c)に示すように、バイオフィルムが除去された状態にて、ハンドピースないし水供給チューブの内側がサックバックにより微生物BCによりコンタミを受けた場合は、キャビテーション水の流通を再開することにより、新たなコンタミ層ODや微生物BCの付着がキャビテーション水の作用により抑制され、バイオフィルムの再形成を効果的に予防することができる。このとき、水道水として塩素又はオゾンを含有する消毒水を使用すれば、バイオフィルムが厚く形成されない状態でコンタミ要因となっている付着微生物を消毒成分によりアタックして死滅させることができ、バイオフィルム再形成の抑制をより効果的に図ることができる。
また、図1において、水供給チューブ502の先端側に残留する水道水は、ハンドピース421先端の開口より残留塩素が蒸散して濃度が下がり、十分な殺菌効果が発揮されなくなる。この場合、残留塩素含有量が0.1ppm以上の水道水がキャビテーション水となってハンドピース421に供給されても、逆流水を負圧吸引した状態にて水流開閉弁110が閉状態に移行することにより、キャビテーション水は残留塩素濃度0.1ppm未満となる状態でハンドピース421ないし水供給チューブ502の内側に残留する場合もあり得る。しかし、キャビテーション水のバイオフィルム除去効果及び微生物に対する水和効果が高いことから、死滅しない微生物が水供給チューブ502内に残留していても、水供給チューブ502内面への微生物の強い吸着が起こりにくくなり、再度洗浄水の流通を再開することで、これを簡単に洗い流すことができる。
(実施例1)
数年以上にわたって使用継続され、サックバックを生ずるハンドピースが取り付けられた水供給チューブの取り外し洗浄を行っていない、図1のタイプの設置済み歯科ユニットの配管ボックス531内に液体処理ノズル1を組み込んだ。液体処理ノズル1は、図11及び図12に示すものであり、絞り孔9の内径:φ2.5mm、衝突部:M1.0並目ピッチ0番1種なべ小ねじ(ステンレス鋼製)、全流通断面積:2つの絞り孔9の合計にて4.0mm、コア部COREの長さ5mm、隔壁部8の外径:φ5mm、ノズル全長70mmである。まず、液体処理ノズル1を取り付けない状態で口腔内洗浄ノズル501の1つを作動させつつ通常の水道水を50cc/分程度の流量で1L程度通じ、口腔内洗浄ノズル501から排出される水を回収した。この水の一般細菌、大腸菌、従属栄養細菌及び総菌数の分析を標準的な培養法と、市販の生菌数分析キット(Dental EZ-DIP:三愛石油株式会社)を用いた簡易培養法にて実施した。後者は、プラスチックトレーの中の培地に検体水を接種し、恒温槽内で37℃にて24時間以上保持した後、対照表比較により、生菌数を計測するものである。
次いで、液体処理ノズルを組み込んで毎日10Lの比率で通水を再開・継続し、所定期間ごとに採水と細菌分析を繰り返した。以上の結果を表1に示す。
Figure 2019195386
まず、液体処理ノズル設置前での回収水は透明のままであり、一般細菌数は30(CFU/ml)以下となり、大腸菌は検出されなかった。しかし、従属栄養細菌数は1.5×10(CFU/ml)に達した。液体処理ノズル1を設置する前の洗浄水の清浄度はこのレベルであったと推定され、歯科治療使用中の通水では細菌類を完全に除去できていないことが伺われる。
一方、液体処理ノズルを設置後の回収水は黄色に濁っていた。液体処理ノズル1を経由した短時間の通水により、チューブ内に堆積したバイオフィルムや汚れが速やかに除去されたことが容易に理解できた。この水の細菌数は、一般細菌数と大腸菌数には変化がなかったが、従属栄養細菌数は9.8×10(CFU/ml)に増加していた。また、EZ-DIP による生菌数測定においても、液体処理ノズルの設置直後にはバイオフィルムと思われる黄色の水が排出され、この検体からも生菌が検出された
その後さらに通水を継続したときの結果であるが、標準培養法によるテストでは従属栄養細菌数は液体処理ノズル1を経由した通水開始1日後にはさらに増加し、6.5×10(CFU/ml)に達したが、9日後には2.7×10(CFU/ml)に減じ、1カ月後には30以下と、ノズル組み込み前の1/5まで低減できた。ノズル設置後の通水初期にバイオフィルムが一気に剥離し、その剥離したチューブ内面等の潜在菌が放出されて一旦細菌数が高まった後、バイオフィルムの保護を失った後は減少に転じ、液体処理ノズル1による処理水を継続的に通水することで、ほぼ完全に除去できることを意味している。また、EZ-DIP による生菌数測定においても、25日後には検出されなくなった。
(実施例2)
同じ歯科医院内に設置されて同じ上水道水を使用している2つの歯科ユニット(いずれも、数年以上にわたって使用継続され、サックバックを生ずるハンドピースが取り付けられた水供給チューブの取り外し洗浄を行っていないもの)の一方に液体処理ノズルを取り付け、他方はノズルを取り付けない形で試験に供した。検体グループは、液体処理ノズルを取り付けたユニットにスリーウェイシリンジを取り付けて使用に供したものの回収水を検体A群と呼び、同じく液体処理ノズルを取り付けていないユニットにスリーウェイシリンジを取り付けて使用に供したものの回収水をコントロールとし検体B群と呼ぶことにする。検体採取は8つの歯科医院 で、同時刻同条件にて検体A群とB群とを採取し、計10組20検体を用意した。各検体は、前記のDental EZ-DIPを用いて38℃で48時間恒温槽培養し、対照表比較により生菌数測定を実施した。以上の結果を表2に示す。また、検体A群検体B群の生菌数の比較評価を、マン=ホイットニーのU検定により行った(有意水準5%以下)。結果を図17に示す。なお。歯科医院番号が同一のものは同一歯科医院から採取した検体であることを意味する。
Figure 2019195386
検体A群からは、生菌が検出された検体は存在せず、同じ原水を使っている検体B群(コントロール)からは、その90%から生菌が検出された。検出された菌数の比較において、検体A群は検体B群に対し、有意に生菌数が少ない結果(p<0.001)であった。本発明の歯科ユニットの除菌作用と有効性は明らかである。また、検体A群は液体処理ノズルを1カ月以上前に付けたユニットであることから、液体処理ノズルの使用による除菌効果は持続性があることがわかる。このとき、歯科ユニットの通水ラインはキャビテーション水で充填された状態が維持されており、細菌が混入してもバイオフィルムを生成させない予防的効果もあると考えられる。
(実施例3)
実施例2の番号4の歯科医院について、生菌が観察された検体B群を採取した歯科ユニット(A)と、別の歯科ユニット(B)に液体処理ノズルを取り付け、取付前、取付直後、及び4日経過後に検体を採取して実施例2と同様の評価を行なった。結果は表3の通りである。
Figure 2019195386
ユニットBではノズル取付前には生菌が観察されなかったにも関わらず、取付直後には10規模の大量の生菌が観察されたことから、一見きれいに見えるユニットでも、水供給チューブを含む配管には大量に生菌が潜んでいるリスクがあることがわかる。細菌が潜んでいる場所は、配管やチューブの内壁に形成されるバイオフィルムの下と考えるのが妥当である。そして、通常の水道水によるフラッシングではバイオフィルムは剥離されず、細菌がユニットの配管・チューブ内にバイオフィルムを形成してしまうと、除菌は困難であることもわかる。他方、キャビテーション水は、通常のフラッシングでは難しいバイオフィルムの剥離について、取付直後から効果を発揮することがわかる。キャビテーション水の浸透力によりバイオフィルムが剥離された結果、バイオフィルムの下に潜んでいた生菌が大量に排出したものと考えられる。
(実施例4)
縦3cm、横8cm、厚さ1mmガラススライド上に緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)由来のバイオフィルムを非特許文献2に開示の方法により形成し、食品用染料を用いてバイオフィルムを赤色に染色した試料を多数用意した。次いで、実施例1で使用した歯科ユニットを想定し、タンクに充てんした水道水(遊離塩素濃度:0.2ppm)を、内径1cmの配管を経て流量可変ポンプにより流出させるとともに、表4に示すM1.0〜M1.4の種々の外径の並目ピッチ0番1種なべ小ねじ(ステンレス鋼製)を用いて作成した液体処理ノズルを接続した試験ユニットを作成した。液体処理ノズルは実施例1で使用したものとノズル本体の外径形状は同一とし、絞り孔を種々の内径にて2個形成したもの(番号1〜6及び6’)と、同じく1個のみ形成したもの(番号7〜12及び12’)との二組を用意した。各ノズルのねじ外径(M)と、ねじピッチ及び深さ(p)、ノズルの絞り孔の内径、絞り孔における全流通断面積(S100:水が流通する領域の断面積であり、絞り孔の断面積からねじの投影領域の面積を減じた値)、70%谷点数(n70)を表4に合わせて記載している。
また、各ノズルは、ノズル入口側に介在させた動水圧計により通水圧が0.07MPaとなるように水道水をポンプ流通させた時の流量(J)を計測した。また、該流量(J)をノズルの流通断面積で除することにより、ノズル通過水流の平均流速(V)を算出した。他方、ポンプの出力を増加させることにより水流量が1L/分となるときの、各ノズルの動水圧を読み取った。これらの値を、低流量キャビテーション係数CVC0.05(≡VD70×(0.05/J))の値とともに表4に示している。
また、バイオフィルム除去能力試験を次のようにして行った。すなわち、各ノズルから流出する水の流量を流量調整弁にて0.05L/分に調整しつつ、該ノズルの出口側に接続した内径3mmのゴムチューブにより、チューブ出口からの高さが5cmとなるよう、水平に置いたガラススライドに対し垂直に水流を当て、ガラススライド上のバイオフィルムが完全に流失するまでの時間tcを計測した。該試験は、各ノズルについて5回繰り返し実施しするとともに、tcの平均値が2分以内であったものを「◎」、2分を超え4分以下であったものを「○」、4分を超え6分以下であったものを「△」、6分を経過してもバイオフィルムが残留していたものを×として評価を行なった。以上の結果を表4に示す。
Figure 2019195386
絞り孔が2個のノズルの場合においても、1個のノズルの場合においても、低流量キャビテーション係数CVC0.05の値が0.06以上のノズル(番号1〜5及び番号7〜11)を使用することにより、ハンドピース使用時の低流量(0.05L/分)でもバイオフィルム除去能力は十分に確保できていることがわかる。なお、これらのノズルに水道水を0.05L/分の流量で通水して得られるキャビテーション水を、レーザー散乱式粒度計(島津製作所:SALD2200H)により測定したところ、500nm以下の粒径域に属する微細気泡は計測限界以下となり測定不能であった。
他方、CVC0.05の値が0.06未満となる番号6及び番号12のノズルを用いた場合は、CVC0.05の値が0.06以上のノズルと比較してバイオフィルム除去能力が劣っていることわかる。また、参考のため、番号6及び番号12のノズルに対し、動水圧0.07MPaで水道水を通水して得られるキャビテーション水を、製造直後に上記レーザー散乱式粒度計により測定したところ、平均粒径200nmの微細気泡が計測された。しかし、そのキャビテーション水をタンクに集めて3分放置したところ、500nm以下の粒径域に属する微細気泡は計測限界以下となり測定不能となった。そして、その微細気泡の計測が不能となったキャビテーション水を、液体処理ノズルを通さずにバイオフィルム除去試験に供したところ(番号6’及び12’)、極めて良好なバイオフィルム除去能力を示すことがわかった。
他方、CVC0.05の値が0.17を超える番号1及び番号7のノズルは、うがい用洗浄水の供給に必要な1L/分程度の流量を得るために必要な通水動水圧がいずれも、通常水道圧の数倍以上となる1MPaを超え、ハンドピース用とうがい用との双方の給水に兼用するのには不向きであることがわかる。
1 液体処理ノズル
2 ノズル本体
O 中心軸線
3 液体流路
4 液体入口
5 液体出口
6 流入室
7 流出室
8 隔壁部
9 絞り孔
10 衝突部(ねじ部材)
CORE 処理コア部
11 山部
12 谷部
15 液体流通ギャップ
20 外接円
26 液体入口側継手
27 液体出口側継手
101 ハンドピース接続継手部
104 水操作スイッチ
105 エア操作スイッチ
110 水流開閉弁
300 歯科ユニット
310 歯科ユニット用洗浄水供給装置
431 水道元配管
421 ハンドピース
421A エンジンハンドピース
421B 超音波スケーラハンドピース
421C スリーウェイシリンジ
502 水供給チューブ
540 洗浄水主配管
544 エア供給元配管
545 エア配管
546 弁制御部
547 主配管部
548 ハンドピース配管部
549 うがい洗浄水配管部
580 技工用回転ツール
581 技工用超音波振動子
602 エアチューブ

Claims (20)

  1. 先端にハンドピースを備えた水供給チューブの接続が予定されたハンドピース接続継手部と、
    基端側が水道元配管に接続されるとともに、末端が前記ハンドピース接続継手部につながる形で設けられ、前記水道元配管からの水道圧に基づいて前記ハンドピース接続継手部に洗浄用水道水を供給する洗浄水主配管と、
    前記洗浄水主配管上に設けられるとともに、前記ハンドピースの使用者が操作する水操作スイッチの入力信号を受けることにより、前記洗浄水主配管を開状態と閉状態との間で切り替える水流開閉弁と、
    前記水流開閉弁の上流にて前記洗浄水主配管上に設けられ、一端に液体入口を、他端に液体出口を有する液体流路が形成されたノズル本体と、前記液体流路の内面から各々突出するとともに外周面に周方向の山部とキャビテーションポイントとなる谷部とが複数交互に連なるように形成された衝突部を有する処理コア部とを備えた液体処理ノズルと、
    を備えたことを特徴とする歯科ユニット用洗浄水供給装置。
  2. 前記ハンドピースにエア流を供給するためのエアチューブの接続が予定されたエアチューブ接続継手部と、
    基端側がエア供給元管に接続され、末端が前記エアチューブ接続継手部につながるように設けられ、前記エアチューブ接続継手部に前記エア流を供給するエア配管と、
    前記エア配管上に設けられるとともに、前記ハンドピースの使用者が操作するエア操作スイッチの入力信号を受けることにより、前記エア配管を開状態と閉状態との間で切り替えるエア開閉弁とをさらに備える請求項1記載の歯科ユニット用洗浄水供給装置。
  3. 前記水操作スイッチと前記エア操作スイッチとの間で前記入力信号が共用化されるとともに、ともに開状態の前記水流開閉弁と前記エア開閉弁とを前記入力信号を受けて閉状態に切り替える際に、前記エア開閉弁を前記水流開閉弁に対して遅延させて閉状態とする弁制御部を備える請求項2記載の歯科ユニット用洗浄水供給装置。
  4. 前記洗浄水主配管は、前記水道元配管に接続される主配管部と、該主配管部から分岐して前記ハンドピース接続継手部につながるハンドピース配管部と、前記主配管部から分岐する前記ハンドピース配管部よりも大流量のうがい洗浄水配管部とを備え、前記液体処理ノズルは前記ハンドピース配管部に向かう洗浄用水道水を少なくとも通過させるものである請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の歯科ユニット用洗浄水供給装置。
  5. 前記液体処理ノズルが前記主配管部に設けられ、該主配管部上にて前記液体処理ノズルを通過後の前記洗浄用水道水が前記うがい洗浄水配管部と前記ハンドピース配管部とにそれぞれ分配されるようになっており、
    前記液体処理ノズルの前記液体流路は、前記衝突部が設けられる区間が前後の区間よりも断面積が減じられた絞り孔とされ、該絞り孔の断面形状は内径Dが2.3mm以上3.0mm以下の円形であり、当該絞り孔の流通断面積の合計Sが2.0mm以上5.0mm以下に設定されてなり、さらに、
    前記絞り孔の断面において中心から半径の70%以内に位置する前記谷部の総数をn70とし、n70/Sの値を70%谷部密度VD70とし、前記液体処理ノズルに前記洗浄用水道水を動水圧0.07MPaにて供給したときの流量をJ(L/分)としたとき、
    CVC0.05≡VD70×(0.05/J)
    により定義される低流量キャビテーション係数CVC0.05の値が0.06以上0.17以下となるように、前記絞り孔における前記衝突部の前記谷部の数および配置が定められてなる請求項4に記載の歯科ユニット用洗浄水供給装置。
  6. 前記うがい洗浄水配管部における前記洗浄用水道水の流通が許容され、前記ハンドピース配管部における前記洗浄用水道水の流通が遮断されているときの前記液体処理ノズルの前記洗浄用水道水の流量が0.5L/分以上2L/分以下に調整され、前記うがい洗浄水配管部における前記洗浄用水道水の流通が遮断され、前記ハンドピース配管部における前記洗浄用水道水の流通が許容されているときの前記液体処理ノズルの前記洗浄用水道水の流量が0.04L/分以上0.3L/分以下に調整される請求項5記載の歯科ユニット用洗浄水供給装置。
  7. 前記液体処理ノズルは、前記液体流路を液体入口側の流入室と液体出口側の流出室とに区画する隔壁部と、前記隔壁部に貫通形成され前記流入室と前記流出室とを互いに別経路にて連通させる2個の前記絞り孔とを備え、前記低流量キャビテーション係数CVC0.05の値が0.06以上0.12以下となるように、前記絞り孔における前記衝突部の前記谷部の数および配置が定められてなる請求項5又は請求項6に記載の歯科ユニット用洗浄水供給装置。
  8. 前記液体処理ノズルは、前記衝突部は外径Mが1.0mm以上1.4mm以下のJIS並目ピッチによるねじ部材である請求項4ないし請求項6のいずれか1項に記載の歯科ユニット用洗浄水供給装置。
  9. 前記液体処理ノズルにおいて前記ねじ部材は前記液体流路の中心軸線を取り囲む十字形態に4つ配置されるとともに、4つの前記ねじ部材が形成する十字の中心位置にそれらねじ部材の先端面により液体流通ギャップが形成されてなる請求項8記載の歯科ユニット用洗浄水供給装置。
  10. 請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載の歯科ユニット用洗浄水供給装置と、
    該歯科ユニット用洗浄水供給装置の前記ハンドピース接続継手部に接続される水供給チューブと、
    該水供給チューブの先端に設けられるハンドピースと、
    前記ハンドピースの使用者が操作する水操作スイッチとを備え、
    前記水流開閉弁を開状態として前記洗浄水主配管から前記水供給チューブを経て前記ハンドピースに前記洗浄用水道水を流通している状態から、前記水操作スイッチの操作に基づき前記水流開閉弁を閉状態として前記水供給チューブ内の前記洗浄用水道水の流れを瞬時的に遮断することにより、前記ハンドピースの先端開口から前記水供給チューブ内に向かう負圧吸引力が生じることを特徴とする歯科ユニット。
  11. 前記ハンドピースは、電動駆動される技工用回転ツールが、水流量0.04L/分以上0.1L/分以下の前記洗浄用水道水にて冷却されるエンジンハンドピースである請求項10記載の歯科ユニット。
  12. 前記ハンドピースは、技工用超音波振動子が、水流量0.04L/分以上0.1L/分以下の前記洗浄用水道水にて冷却される超音波スケーラハンドピースである請求項11記載の歯科ユニット。
  13. 前記歯科ユニット用洗浄水供給装置は請求項2記載の要件を備えるものであり、
    前記ハンドピースは前記水供給チューブとエア流を供給するエアチューブとが接続されるようになっており、前記洗浄用水道水とともにエア流が先端側開口より流出するものである請求項10記載の歯科ユニット。
  14. 前記ハンドピースは、水流量が0.07L/分以上0.3L/分以下のスリーウェイシリンジである請求項13記載の歯科ユニット。
  15. 前記歯科ユニット用洗浄水供給装置は請求項3記載の要件を備えるものであり、前記ハンドピースは、前記エア流にて技工用回転ツールが回転駆動され、かつ水流量0.04L/分以上0.1L/分以下の前記洗浄用水道水にて前記技工用回転ツールが冷却されるエアタービンハンドピースである請求項13記載の歯科ユニット。
  16. 請求項10ないし請求項15のいずれか1項に記載の歯科ユニットのメンテナンス方法であって、
    前記水流開閉弁を閉状態に移行する際の前記ハンドピースの先端開口からの負圧吸引による逆流水により、前記ハンドピースないし前記水供給チューブの内側が前記逆流水に含まれる微生物によりコンタミを受け、該微生物に由来したバイオフィルムが形成された状態において、前記水流開閉弁が開状態となることにより、前記液体処理ノズルの通過によりキャビテーション処理を受けた前記洗浄用水道水(以下、キャビテーション水という)を前記水供給チューブに流通することにより、前記バイオフィルムを前記キャビテーション水にて剥離除去することを特徴とする歯科ユニットのメンテナンス方法。
  17. 前記歯科ユニットを施術に使用するのに先立って、前記バイオフィルムを除去した後、予め定められた期間だけ前記キャビテーション水の流通を継続することにより、前記該バイオフィルムと前記ハンドピースないし前記水供給チューブの内面との間に潜伏している微生物を除去する請求項16記載の歯科ユニットのメンテナンス方法。
  18. 前記バイオフィルムが除去された状態にて前記水流開閉弁が閉状態に移行し、前記ハンドピースの先端開口からの負圧吸引による逆流水により、前記ハンドピースないし前記水供給チューブの内側が前記逆流水に含まれる微生物によりコンタミを受けた場合に、前記水流開閉弁が再度開状態となることによって前記キャビテーション水の流通を再開することにより、前記ハンドピースないし前記水供給チューブの内側に前記バイオフィルムが再形成されることを予防する請求項16又は請求項17に記載の歯科ユニットのメンテナンス方法。
  19. 前記水道水として塩素又はオゾンを含有する消毒水が使用される請求項16ないし請求項18のいずれか1項に記載の歯科ユニットのメンテナンス方法。
  20. 前記水道水は残留塩素含有量が0.1ppm以上の状態で前記キャビテーション水となって前記ハンドピースに供給されるとともに、前記逆流水を負圧吸引した状態にて前記水流開閉弁が閉状態に移行することにより、前記キャビテーション水を残留塩素濃度0.1ppm未満となる状態で前記ハンドピースないし前記水供給チューブの内側に残留させる請求項19記載の歯科ユニットのメンテナンス方法。

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