以下、本実施形態について説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また本実施形態で説明される構成の全てが、本発明の必須構成要件であるとは限らない。
1.本実施形態の手法
まず、本実施形態の手法について、従来の手法と比較して説明する。印刷装置の動作中に、消費したインク量の累積値をカウントするカウント処理(ソフトカウント処理)を行い、インクタンク内のインクの推定のインク消費量を求める印刷装置が広く知られている。また、特許文献1の図6のように、インクが封入されるインク補充用容器(インクパック310)と、インク補充用容器に封入されたインクに関する情報、例えば、色や容量等の情報を記憶するメモリーユニット100とが別体で、印刷装置の一般の使用者(以降、ユーザーともいう)に提供される印刷装置も広く知られている。
印刷装置において、インク収容部のインクの残量を管理することは適切な印刷処理において重要であり、そのためにはカウント処理により求められたインク消費量を用いればよい。具体的にはメモリーユニット100に記憶された使用許可量情報により、使用可能なインクの量が規定されるため、使用許可量情報により規定される量のインクを消費したと判定されるまでは印刷動作を行い、使用許可量情報により規定される量のインクを消費したと判定された場合に、インクの補充をユーザーに指示したり、印刷動作の停止を行ったりすればよい。
しかしながら、インクパック310とメモリーユニット100とが別体となる場合、インクパック310から印刷装置のインク収容部(インクタンク)にインクが補充されるタイミングと、メモリーユニット100が印刷装置に装着されるタイミングとが一致するとは限らない。そのため、印刷装置本体(以下では、単に本体ともいう)側が使用できると判断しているインク量と、実際にインクタンクに入っているインク量とにずれが生じる可能性がある。
特許文献1は、このずれを抑えるための管理を想定した手法である。具体的には、インク消費量の差分がWTH1を超えるごとに、メモリーユニット100と印刷装置本体とでインク総消費量情報の互換性をとるためにインク総消費量情報の読み書きを行い、インク消費量を管理する。特許文献1の手法であれば、(1)インクパック310からインクを補充するとともにメモリーユニット100を装着し、(2)メモリーユニットへのインク総消費量の書き込みを行いつつ、本体側のインク総消費量がインク総消費量≧WTH2となるまで印刷を行い、(3)インク総消費量がWTH3>インク総消費量≧WTH2の状態で(1)に戻って、ベンダーが提供した新たなインクパック310からインクを補充するとともに、このインクパック310に同梱されていた新たなメモリーユニット100を装着し、本体側インク総消費量を新たなメモリーユニット100のメモリーユニット側のインク総消費量で書き換える、という使用形態により、ユーザーに印刷装置を利用させることが可能になる。
しかし、実際の使用形態は上記のようにならないことが本出願人の調査によりわかってきた。特許文献1に開示されているように、有効状態の新たなメモリーユニット100が装着されたことを条件に印刷装置は印刷動作を実行する。そのため、メモリーユニット100が適切に装着されなければ、インクパック310のインクをインクタンクに補充しても印刷を実行できない。
また、好ましい使用形態ではないが、有効状態であるメモリーユニット100さえあれば、実際に補充されるインクが印刷装置ベンダーが提供するインクではない(インクパックセット300に同梱されたものでない)としても一応の印刷動作が可能である。ベンダーが提供するインクを使用しない場合、インクパックセット300のうち、メモリーユニット100は相対的に価値が高く、インクパック310は相対的に価値が低いものとなる。
結果として、メモリーユニット100とインクパック310との管理体制には差が生じる。例えば、印刷装置が工場で使用される場合、印刷装置のユーザーは、管理者と、管理者のもとで働く一般従業員とである。インクパック310は厳重な管理を必要としないため、一般従業員がインクパック310を取り扱うことに制限が無く、適当なタイミングでインクタンクにインクを補充することが可能である。これに対して、メモリーユニット100は、管理者によって管理される。
このような場合、インクパック310に収容されたインクのインクタンクへの補充は、インクタンクからインクが溢れない限りいつでも実施できるのに対して、メモリーユニット100の装着は管理者が勤務している限定された時間にしか行えない。近年、インクパック310に含まれるインクは1Lの大容量のものが増えているが、印刷装置自体も大型化しており、インクパック310内のインクを全てインクタンクへ補充したとしても、例えば12時間程度の連続印刷しか行えない。そのため、上記のような管理体制とした場合、少数の管理者が少なくとも12時間おきに印刷装置に対するメモリーユニット100の装着を実行しなくてはならず、印刷装置で連続的に印刷を行う際のユーザー負担が大きくなってしまう。
以上のように、特許文献1の手法では、連続的に印刷を実行する場合、メモリーユニット100の交換タイミングに対する制限があり、結果として連続印刷のためのユーザー負担が大きい、或いは、連続印刷が難しいという課題がある。
このような課題に対しては、特許文献2や特許文献3のように、メモリーカード、別体メモリーを装着した際に、メモリーカード、別体メモリーに記憶された容量(インク容量)を、本体側の液体ストック量に加算する手法が考えられる。特許文献2や特許文献3では、メモリーカード、別体メモリーの情報が本体側に移されるため、その後にメモリーカード、別体メモリーを印刷装置から外しても印刷動作を継続可能である。さらに、複数のメモリーカード、別体メモリーを装着した場合にも、各メモリーの容量が本体側で加算して管理されるため、その後ある程度長い期間にわたって、新しいメモリーを装着しなくても連続印刷が可能である。
しかし、特許文献2や特許文献3では、記憶していた容量が本体側の液体ストック量に加算されたメモリーカード、別体メモリーについては無効状態に設定することが想定される。そのようにしなければ、1つのメモリーカード、別体メモリーを繰り返し使用できてしまい不合理なためである。そのため、本体側に容量が加算されたメモリーカード、別体メモリーは、それ以降の使用が想定されず、メモリーカード、別体メモリーに記憶されていた容量に対して実際に消費されたインクの量に関する情報を保持できない。
結果として、本体側に異常が生じ、本体側で管理していた液体ストック量の情報が失われた場合、どれだけの容量が加算されており、そのうちのどれだけを消費したかといった情報を復旧することができない。印刷装置の復旧(修理)後に、使用可能なインク量が0であるとしてしまえば、メモリーカード、別体メモリーに記憶されていた容量に対応するインクのうちの一部しか消費していなかったユーザーに不利益が生じる可能性がある。だからといって、液体ストック量をメモリーカード、別体メモリーに記憶されていた容量の総和(或いは本体側で加算可能な最大値)とすれば、ユーザーに対して過剰な補償をする可能性もある。つまり、特許文献2や特許文献3の手法は、故障時の適切な対応が難しいという課題がある。
以下、本実施形態に係る印刷装置200のシステム構成について説明する。図1は、本実施形態に係る印刷装置200のシステム構成例を示す図である。本実施形態に係る印刷装置200は、図1に示すように、メモリーユニット100が着脱可能なスロット230と、処理部210とを含む。メモリーユニット100は、インクの使用許可量情報(後述するインク補充容器に充填されたインク量に基づく情報)を記憶する。処理部210は、インク収容部220(図2参照)のインクの量を推定する情報であるインク推定量情報(インク収容部220内の推定のインク量情報)の更新処理を行う。
そして、処理部210は、メモリーユニット100がスロット230に装着された状態において、インク推定量情報によって表されるインク消費量(以下では、推定インク消費量という)が所与の閾値WTHを超えるか否かの判定処理に基づいて、メモリーユニット100の使用許可量情報によりインク推定量情報を更新するチャージ処理を行う。さらに、処理部210は、上記所与の閾値WTHを可変にする設定処理を行う。
ここで、使用許可量情報とは、メモリーユニット100に記憶される情報であって、当該メモリーユニット100を保有するユーザーに対して使用が許されるインクの量(使用許可量)を表す情報である。狭義には、使用許可量情報は、メモリーユニット100が同梱されるインクパック310(図10参照)に収容されるインクの初期充填量、および、その初期充填量に対して、既に、消費されたインク消費量の情報として記憶されている。インク消費量は、インクの初期充填量に対して消費された量の割合のデータとして記憶されている。ユーザーがインクパックセット300(図10参照)を購入した時点では、使用許可量情報およびインク消費量は0%が記憶される。
ユーザーはインクパックセット300を購入することで、インクパック310に含まれるだけのインクを使用する権利を購入したことになり、印刷装置200は、メモリーユニット100の使用許可量情報により、印刷装置200の印刷動作の続行/停止などの処理を実行する。
また、インク推定量情報は、インク収容部220のインク量を推定するための情報であり、印刷装置200の記憶部212に、書き換え可能に不揮発的に記憶される。本実施形態では、インク推定量情報はインク消費量で表され、ここでのインク消費量は、装着されたメモリーユニット100から読み出した初期充填量に対する、累積で消費した推定インク消費量の割合(本体側の総インク消費量情報WDともいう。)である。後述するように、本体側の総インク消費量情報WDは、メモリーユニット100装着時のチャージ処理において、メモリーユニット100のインク消費量で置換される。印刷装置200の処理部210は、インク推定量情報により、印刷装置200の動作の続行/停止を制御する。
つまり、インク推定量情報は、使用可能なインク量(使用許可量、初期充填量)に対するインクの消費度合いを表す情報として表される。メモリーユニット100が装着され、メモリーユニット100の使用許可量情報が本体にチャージされた以降のインクの消費量をカウントし、カウント処理によって求められた推定インク消費量が初期充填量のうちの何%に相当するかを表す情報を本体側の総インク消費量情報WDとする。
総インク消費量情報WDは、例えば、インクパック310に収容されたインク量(ここでは、インクパック310の収容量を1Lとする)を100%として、相対値(0〜100%)で表すことができる。処理部210は、メモリーユニット100からインクパック310の初期充填量を読み出し、初期充填量と消費したインク量とから相対値を計算し、これを推定インク消費量とする。
しかしながら、実際の印刷装置200は、ユーザー(使用者)によって多様な状況で使用されるため、インク消費効率(印刷効率)に公差がある。即ち、実際のインク消費量(以下では、実インク消費量という)が比較的多い状況で使用される印刷装置200、あるいは、実インク消費量が比較的少ない状況で使用される印刷装置200が存在するため、同一の印刷データにより印刷処理を行っても、実インク消費量(実際に消費されたインクの量)と、カウント処理によって求められた推定インク消費量とが一致しない場合がある。
そこで、本実施形態では、インク消費効率が所定の範囲の下限値である印刷装置(実インク消費量が最も多い印刷装置)200が、印刷装置ベンダーが推奨する使用環境で使用される場合を想定して、インクパック310に収容されるインクを消費した時に推定されるインク消費量を100%として、推定インク消費量を相対値で表す。
こうすれば、インク消費効率が最も悪い印刷装置200でも100%までは印刷可能であり、100%となったときに、ユーザーに対してインク補充を促すメッセージなどを表示する処理を行うことができる。
このようにすると、インク消費効率が標準である印刷装置200を標準環境で使用した場合に、インクパック310に充填されるインク量を実際に消費したときのインク消費量(インク消費量の割合)は、100%よりも多くなり、例えば117%となる。印刷装置ベンダーは、インク消費効率が標準である印刷装置200によって、インクパック310に充填されるインク量を全て消費したときの総インク消費量情報WD(ここでは117%)をあらかじめ処理部210の記憶部212に記憶させておく。処理部210は、この値と、メモリーユニット100から読み出した初期充填量(重量単位で表される)と、累積のインク消費量(重量単位で表される)とから総インク消費量情報WDを計算し、記憶部212に記憶する。
インクパック310は1L用のインクパックであるが、インクパック310毎に充填量に多少のばらつきがあり得る。しかしながら、インクパック310毎にメモリーユニット100に初期充填量を記憶させる初期充填量のばらつきは、インク消費効率のばらつきに比べて大きくないので、ベンダーがあらかじめ設定するインク消費効率が標準である印刷装置200によって、インクパック310に充填されるインク量1Lを全て消費したときの総インク消費量情報WD(117%)が初期充填量に対応するものとして、総インク消費量情報WDを計算すればよい。
ただし、インク推定量情報として、本体側のインク消費量の割合そのものを記憶することに替えて、本体側で、初期充填量と、累計のインク消費量重量とを記憶してもよい。この場合、処理部210は、総インク消費量情報WDとして、これらの情報をもとに、本体側のインク消費量の割合を適宜算出すればよい。
本実施形態のチャージ処理とは、スロット230に装着されているメモリーユニット100に記憶された使用許可量情報のインク消費量により、本体側のインク推定量情報の総インク消費量情報WD(推定インク消費量)の更新処理を行うとともに、メモリーユニット100に記憶されている初期充填量を、本体側の処理部210が総インク消費量情報WDを算出するための情報として記憶部212に設定する処理である。
なお、本実施形態の通り、本体側のインク推定量情報と、メモリーユニット100側の使用許可量情報の形式とが一致している場合、更新処理では、単純に使用許可量情報のインク消費量によりインク推定量情報の推定インク消費量を置換すればよい。ただし、インク推定量情報の形式と使用許可量情報の形式とが一致しない場合、例えば、メモリーユニット100は割合で記憶し、本体側は消費したインク容量そのもので記憶している場合には、使用許可量情報に対して何らかの変換処理を行った結果により、インク推定量情報を置換する処理を行ってもよい。本実施形態における「置換」とは、変換後の置換も含む処理と言える。
本実施形態の手法では、まずメモリーユニット100が装着された場合に、当該メモリーユニット100の使用許可量情報によりインク推定量情報を更新(置換)するチャージ処理を行う。
その際、チャージ処理を行うか否かを、所与の閾値WTHを用いた判定処理に基づいて決定する。チャージ処理が行われた場合、メモリーユニット100は無効状態に設定されることで、再使用が不可能となる。多数の印刷装置200を使用しているユーザーの場合、どの印刷装置200でどの程度印刷するかを事前に予想しきれない場合も考えられる。その場合、所与の印刷装置200に対してチャージした使用許可量情報を、他の印刷装置200に移したいという要求がある。その場合、特許文献2や特許文献3の手法では、チャージ済みのメモリーユニット100の再使用はできないため、印刷装置200本体間のチャージされた使用許可量情報(インク推定量情報)のやりとりを実現せねばならない。
その点、本実施形態では、本体側のインク推定量情報の推定インク消費量が所定の閾値を超えているかどうかの閾値判定がチャージ処理の条件となる。そのため、本体側の推定インク消費量によっては、所与のメモリーユニット100に関して、スロット230に装着されたがチャージ処理を行わないといった処理も可能であり、その場合、当該メモリーユニット100は、スロット230から取り外して再使用が可能とする。
以上からわかるように、本実施形態における所与の閾値WTHとは、スロット230に装着されたメモリーユニット100を無効状態とするか否か、言い換えれば再使用が可能な状態を維持するか再使用不可能とするか、を決定する重要なパラメーターとなる。本実施形態の手法では、所与の閾値WTHを可変に設定することができるため、状況に合わせた適切な処理を実現することが可能になる。
なお、全くチャージ処理が行われていない未チャージ状態(推定インク消費量が所与の閾値(WTH)を超えてしまっている状態)では印刷動作を行うことができないため、未チャージ状態でスロット230にメモリーユニット100が装着された場合には、閾値判定を行わずに、チャージ処理を実行する。
そして、本実施形態の処理部210は、メモリーユニット100(第1のメモリーユニット100−1)によるチャージ処理後に、新たなメモリーユニット100(第2のメモリーユニット100−2)がスロット230に装着された場合に、推定インク消費量が所与の閾値(WTH)を超えるまでは、第2のメモリーユニット100−2によるチャージ処理を行わない。この場合、処理部210は、推定インク消費量が所与の閾値を超えたときに、第2のメモリーユニット100−2によるチャージ処理を行う。
図2は、2個のメモリーユニット100によるチャージ処理、リザーブ処理の流れを示す模式図である。まず、チャージ処理が行われていない状態で第1のメモリーユニット100−1がスロット230に装着されることで、第1のメモリーユニット100−1の使用許可量情報により、印刷装置200の記憶部212に記憶されたインク推定量情報を更新するチャージ処理が実行される。チャージ処理後は、第1のメモリーユニット100−1を取り外したとしても印刷装置200のインク消費動作は影響を受けることなく、印刷動作が可能である。
第1のメモリーユニット100−1の使用許可量情報に基づく印刷装置200のインク消費動作を行っている間に、第2のメモリーユニット100−2がスロット230に装着されることで、処理部210は、第2のメモリーユニット100−2をリザーブ状態とするリザーブ処理を実行する。つまり、印刷装置200のユーザーは、スロット230に対して適宜メモリーユニット100の着脱を行うことで、チャージ処理やリザーブ処理を実現することが可能になる。
なお、第1のメモリーユニット100−1の使用許可量情報に基づくインク消費動作が実行されている間、第1のメモリーユニット100−1が取り付けられている場合には、第1のメモリーユニット100−1側のインク消費量と記憶部212に記憶している総インク消費量とが同期するように、第1のメモリーユニット100−1側のインク消費量を更新してもよい。
ここでは、本体のインク推定量情報による総インク消費量情報WDが所与の閾値WTH(使用許可量情報に相当)を超えるまでは、第2のメモリーユニット100−2が装着されても、チャージ処理が行われないままである。そのため、その状態で、本体側の記憶部212の故障等により、本体側のインク推定量情報がエラー状態となったとしても、失われるのは第1のメモリーユニット100−1の使用許可量情報に留まり、第2のメモリーユニット100−2は影響を受けない。つまり、チャージ処理前である第2のメモリーユニット100−2は未だ使用可能な状態であり、故障による影響を受けない。
また、総インク消費量情報WDが所与の閾値を超えれば、印刷装置200の処理部210は、ユーザーの指示によらず、第2のメモリーユニット100−2のチャージ処理を自動的に実行する。この自動的に実行されるチャージ処理は、第1のメモリーユニット100−1の使用許可量情報に基づく印刷装置200のインク消費動作から、第2のメモリーユニット100−2の使用許可量情報に基づく印刷装置200のインク消費動作への自動的な切り替わりであり、以下の本明細書では「自動チャージ」とも表記する。このように、第2のメモリーユニット100−2をスロット230に装着しておけば、チャージ処理はユーザーが関与しなくとも自動的に実行されるため、ユーザーにとっては第2のメモリーユニット100−2の装着タイミングが限定されないという利点がある。
第1のメモリーユニット100−1によってチャージされた総インク消費量情報WDが所与の閾値WTHを超えるまでの間の第2のメモリーユニット100−2の装着は、条件を満たせばチャージ処理の対象となるという意味で、チャージ処理の予約(リザーブ)が行われていると考えることができる。よって以下の本明細書では、第1のメモリーユニット100−1によってチャージされたインク推定量情報の総インク消費量情報WDが所与の閾値WTHを超える前までに装着された第2のメモリーユニット100−2は「リザーブ状態である」と表記し、第2のメモリーユニット100−2をリザーブ状態とする処理部210の処理を「リザーブ処理」と表記する。
本実施形態では、チャージ処理済みのメモリーユニット100と、リザーブ状態のメモリーユニット100との2個分の使用許可量情報に対応する量のインクの連続使用が可能であるため、インク収容部220に適宜インクを補充することにより、メモリーユニット100の1個分の使用時間に比べて長い時間(例えば24時間)の間、連続的に印刷を行うことが可能になる。
このように、第1のメモリーユニット100−1によるチャージ処理後の、第2のメモリーユニット100−2によるリザーブ処理、及び自動チャージ処理を考慮すれば、所与の閾値WTHは、第1のメモリーユニット100−1の使用許可量情報に対応する使用許可量を不足無くユーザーが使用できるような値に設定するとよい。そのようにすれば、第1のメモリーユニット100−1に対応するインク量(使用許可量であり、未使用の状態であれば初期充填量)をユーザーが使い切れなかったり、或いは当該インク量を大幅に超えるようなインクを使用させてしまったりといった不適切な使用を抑止可能である。つまり、所与の閾値WTHは、使用許可量を表す値、或いはそれに所与のマージンを持たせた値とするとよく、例えば上記のように使用許可量に対応する総インク消費量情報WDが117%であれば、117%〜120%といった値を用いればよい。
しかしながら、カウント処理でカウントされた推定インク消費量と実インク消費量との間に誤差が生じる場合には、不適切なタイミングで自動チャージが行われる可能性を否定できない。
例えば、適正な温度範囲よりも高温となる状況で印刷装置200が使用された場合、1回のインクの吐出により消費される(吐出される)インクの量は、適正な温度範囲で使用された場合のインク量に比べて多くなる。この場合、実インク消費量は、カウント処理により推定される推定インク消費量に比べて多くなるため、推定インク消費量が所与の閾値WTHに達した状態では、実際には初期充填量(上記の例では1L)よりも多いインクが消費されてしまっている。
自動チャージが行われるタイミングはユーザーにとってインク補充の目安となるところ、上述の場合、自動チャージのタイミングではすでに初期充填量以上のインクが消費されているため、場合によってはユーザーによるインク補充前にインク収容部220内のインクが無くなってしまい、印刷動作が停止してしまうおそれがある。このようなユーザーに対しては、所与の閾値WTHを小さくし、比較的早いタイミングで自動チャージが実行されるようにすればよい。例えば、WTH=110%に設定する。
一方、適正な温度範囲よりも低温となる状況で印刷装置200が使用された場合や、印刷ヘッドやインク収容部220から印刷ヘッドへのインク流路でインクの目詰まり等が起こった場合には、所定回数のインクの吐出により消費される(吐出される)インクの量は、正常な印刷状態に比べて少なくなり、場合によってはヘッドクリーニングが行われるまで0となることがある。
この場合、実インク消費量は、カウント処理により推定される推定インク消費量に比べて少なくなるため、推定インク消費量が所与の閾値WTHに達した状態では、初期充填量分のインクを消費しきれていない。結果として、ユーザーは使用許可量情報に対応する量のインクを使用する権利を正当に取得しているにもかかわらず、それよりも少ない量のインクしか使用できなくなってしまう。このようなユーザーに対しては、所与の閾値WTHを大きくし、比較的遅いタイミングで自動チャージが実行されるようにすればよい。例えば、WTH=130%に設定する。
以下、印刷装置200及びメモリーユニット100の構成例について説明する。
2.印刷装置、メモリーユニットの構成例
図3は、本実施形態に係る印刷装置200の構成例を示す斜視図である。図4は、印刷装置200のインクタンク221周辺を拡大して示す図である。図3に示すように、本実施形態の印刷装置200は、インク収容部220としての4個のインクタンク221−a〜221−d、4個の複数のスロット230−a〜230−d、4個のメモリーユニット100−a〜100−d(図11参照)、4個のスライダー240−a〜240−d、処理部210、操作部250、及び印刷ヘッドを備える印刷実行部(図示なし)を含む。本実施形態では、インクタンク221は4個であるが、これに限定されず、インクタンク221は2個や3個でもよいし、5個以上でもよい。
なお、以下の説明において、4個のインクタンク221−a〜221−dについて個々のインクタンクを区別する必要がないときは、適宜インクタンク221と記載する。スロット230−a〜230−d、メモリーユニット100−a〜100−d、スライダー240−a〜240−dについても、同様とする。
4個のインクタンク221−a〜221−dには、印刷装置ベンダーが提供するインクパック310(図4参照)に収容されたインクがそれぞれ充填される。例えば、図4に示すように、インクタンク221−aにはブラック(BK)、インクタンク221−bにはイエロー(Y)、インクタンク221−cにはマゼンタ(M)、そしてインクタンク221−dにはシアン(C)のインクが充填される。これらのインクは別々のインクパック310に収容されて、ユーザーに提供される。ユーザーは、必要とするインク色のインクパック310から、インク色に対応するインクタンク221にインクを充填(補充)することができる。
インクタンク221は、インクタンク内のインクの量がユーザーから視認可能である。例えば、図3に示すように、インクタンク221はその少なくとも一部が外部に露出することでユーザーから視認可能であり、且つユーザーから視認可能な部分を透明な部材により構成することで、内部のインクを視認可能に構成される。
インクタンク221には、下限線(図示なし)が設けられていてもよい。下限線は、内部のインクが視認可能なインクタンク221の面に水平方向に設けられる線状のマークであり、例えば、インクタンク221の底面から7cmの位置に設けられる。下限線までインク量が減っていれば(インク面が下限線の位置まで低下していれば)、インクパック310のインクを全て充填可能であることを表す。ユーザーは、インク量と下限線との関係を視認することで、印刷中でも適宜インク補充を行うことが可能となる。
また、インクタンク221に下限線が設けられる代わりに、図4に示すように、インクパック310の表面に下限線314を含む目盛312が印刷されていてもよい。この場合、ユーザーは、目盛312の基準線313がインクタンク221の底面の位置となるようにインクパック310をインクタンク221に当てることにより、インク面が下限線314の位置まで低下しているか否かを確認することができる。
印刷装置200は操作部250を備える。操作部250は、ユーザーが各種の指示や設定を行うための入力装置であり、ユーザーインターフェイス部(以下では、UI部という)252や操作ボタン等を備える。UI部252は、ユーザーに対してインク補充に関するインフォメーション等の表示を行うことや、ユーザーが選択可能なメニューを表示し、ユーザーの操作入力を受け付けることが可能である。
よって、ユーザーは、印刷装置200のUI部252及びインクタンク221内のインクを確認しながら、インクパック310からインクタンク221に対してインクの補充を行うことができる。ユーザーが、目視によりインク面が下限線を下回ったことを確認してインクを補充する場合もあれば、UI部252による警告を受けてインクを補充する場合も考えられる。実際のインク消費状況に応じて適切なタイミングでインクの補充を行う上では、目視によりインク面が下限線まで到達したらインクタンク221にインクを補充することが望ましい。
インクタンク221と印刷ヘッドとの間の流路には、インク有無を検知するセンサー(図示なし)があり、このセンサーがインク無しを検出した場合には、本体の総インク消費量情報WDの値によらず、印刷装置200は常に動作を停止する。このため、ユーザーがインクタンクへインクを補充することを忘れても、印刷ヘッドの空打ち(印刷ヘッドにインクが無い状態でのインク吐出動作)による印刷ヘッド故障を防ぐことができる。なお、適切なタイミングでインクの補充を行っていれば、センサーのインク無し検出により停止させることなく、印刷装置200の印刷動作を継続できる。
複数のスロット230−a〜230−dは、印刷装置200に着脱可能なスライダー240−a〜240−dを印刷装置200に装着するためのもので、上記インクタンク221−a〜221−dに対応して設けられる。例えば、4つのスロット230−a〜230−dは、ブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの各々のインクタンク221−a〜221−dの上に対応して設けられる。
メモリーユニット100−a〜100−dは、インクパック310と同梱されてユーザーに提供され、ユーザーによりスライダー240−a〜240−dに着脱可能に搭載される。メモリーユニット100−a〜100−dが取り付けられたスライダー240−a〜240−dが、スロット230−a〜230−dに装着されることで、メモリーユニット100はスロット230に装着される。図3では、各メモリーユニット100は対応する各スロット230に装着されているので、見ることができない。メモリーユニット100−a〜100−dは、記憶装置110−a〜110−d(図11参照)をそれぞれ有する。
メモリーユニット100がスロット230に装着される、すなわち、メモリーユニット100が印刷装置200に装着されると、印刷装置200の処理部210は、記憶装置110にアクセス可能となる。
記憶装置110は、記憶領域を備える。記憶装置110の記憶領域には、処理部210が通信相手を特定するために用いる通信用ID情報と、同梱されていたインクパック310のインク色に対応するインク色情報と、同梱されていたインクパック310のインク充填量に対応する使用許可量情報(前述した初期充填量およびインク消費量)とが、工場出荷時において書き込まれている。
記憶装置110は、このほかに、メモリーユニット100が、印刷装置200が使用できる有効な状態であるか、無効な状態であるかを示す、有効/無効情報(これについては、後述する)や、メモリーユニット100が適合可能な印刷装置200の情報などを記憶してもよい。有効/無効情報は、メモリーユニット100の工場出荷時に、メモリーユニット100が有効であることを示す有効情報が書き込まれる。記憶装置110は、EEPROM(電気的に消去可能なPROM:Electrically Erasable PROM)などの不揮発性メモリーで構成することができる。
処理部210は、CPU211、記憶部212、通信処理部213を含み(図11参照)、印刷装置200の印刷処理や各メモリーユニット100との通信処理を実行する。具体的には、処理部210は、スロット230−a〜230−dに装着されたメモリーユニット100−a〜100−dに対してデータの読み出し又は書き込みの制御を行う。また、処理部210は、メモリーユニット100−a〜100−dがスロット230−a〜230−dに装着されているか否かを検出する処理を行う。
処理部210は、インクパック310の1個分のインク容量に対する印刷実行中にインク色毎に、累積の推定インク消費量を求めるためのカウント処理(ソフトカウント処理)を行う。すなわち、チャージ処理の際に、メモリーユニット100から記憶部212に記憶した初期充填量に対する各インク色の累積のインク消費量の割合である総インク消費量情報WD(各色に対応するWDa〜WDd)を計算し、印刷実行に伴う所定量のインク消費毎に、自身の記憶部212の総インク消費量情報WDを更新する処理を行う。
処理部210がカウントする推定インク消費量は、印刷によるインク消費量の他に印刷ヘッドのクリーニングなどの印刷ヘッドのメンテナンスに使用されるインク消費量も含む。処理部210は、メンテナンス実行のタイミングで、適宜、総インク消費量情報WDを更新する。
記憶部212は、各インク色に対応した初期充填量、各インク色に対応した総インク消費量情報WD、自動チャージとなる総インク消費量情報WDの所与の閾値WTH、さらに、リザーブされていない場合にチャージのみで印刷続行可能な総インク消費量情報WDの第2の閾値WTH’(WTH’=WTH+α、α>0であり、第2の閾値WTH’は使用許可量よりも多い値が設定される)、後述するチャージ済みフラグ、リザーブ済みフラグが記憶される。記憶部212は、不揮発性メモリーから構成される。
図5は、本実施形態に係るUI部252の構成例を示す図である。図5に示すように、UI部252は、第1表示部(メニュー表示部ともいう)254と第2表示部(残量表示部ともいう)260とを含む。第1表示部254は、例えば、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等のディスプレイとタッチパネルとで構成される。第1表示部254には、インク補充に関するインフォメーションや各種の通知、ユーザーが操作するための操作メニュー等が表示される。第1表示部254の表示内容の詳細については後述する。なお、第1表示部254及び第2表示部260は、印刷装置200に接続される他の機器(例えばPC)の表示部等であってもよい。
第2表示部260は、例えば、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等のディスプレイで構成される。第2表示部260は、インクタンク221に収容されるインクの色ごとに、ブラック(BK)に対応する第2表示部260K、イエロー(Y)に対応する第2表示部260Y、マゼンタ(M)に対応する第2表示部260M、シアン(C)に対応する第2表示部260Cに区分されている。そして、第2表示部260K,260Y,260M,260Cのそれぞれは、推定インク残量表示部261と、リザーブ状態表示部264とを有している。なお、図5には各インク色に対してインクタンク221が1つの場合の第2表示部260を示しているが、各インク色に対してインクタンク221が複数ある場合は、第2表示部260がインクタンク221ごとに区分される。
図5に示す例では、推定インク残量表示部261に、メモリーユニット100によってチャージされたインク推定量情報(初期充填量)と、カウント処理により推定されるインク消費量(推定インク消費量)とに基づいて推定されるインク消費量の状況(インクタンク221内のインク残量)が、6個のブロックによって表示される。6個のブロックのうち、図5に示す例では、白いブロック262が点灯していないブロックであり、黒いブロック263が点灯しているブロックである。
黒いブロック263は、カウント処理により推定されるインク残量(推定インク残量)に対応して表示されるものであり、以下では、チャージブロック263ともいう。推定インク残量表示部261に表示されるチャージブロック263が多いほど、推定インク残量が多い(推定インク消費量が少ない)ことを意味する。印刷を実行してインクを消費し推定インク残量が減少する(推定インク消費量が増加する)にしたがって、白いブロック262の数が増加し、チャージブロック263の数は減少する。
本実施形態では、メモリーユニット100によってチャージされたインク推定量情報(初期充填量)に対して、推定インク消費量が100%未満の場合は2個以上のチャージブロック263が表示され、推定インク消費量が100%に達すると1個のチャージブロック263が表示される。したがって、推定インク残量表示部261に表示されるチャージブロック263が1個になった場合は、カウント処理上は、インク消費効率が最も悪い印刷装置200でインクパック310の1個分のインク(1L)を消費した状態に相当する。
例えば、イエロー(Y)のインクに対応する第2表示部260Yの推定インク残量表示部261にはチャージブロック263が6個表示されており、イエロー(Y)のインクの残量は十分であると推定される。一方、マゼンタ(M)のインクに対応する第2表示部260Mの推定インク残量表示部261にはチャージブロック263が1個のみ表示されている。この場合、インクパック310の1個分のインクを消費したと推定されるため、目視によりインク残量を確認して、インク面が下限線(インクタンク221の底面から7cm)以下になったら、インクパック310からインクを補充すればよい。
推定インク残量表示部261に表示されるチャージブロック263が無くなった場合は、推定インク消費量が初期充填量の120%以上となっており、インクが残り少なくなっていると推定される。この場合は、目視によりインク残量を確認して、インク面が下限線(インクタンク221の底面から7cm)以下となっていたら、インクパック310からインクを補充することが望ましい。このままの状態で印刷を継続した場合、インクタンク221内のインクが無くなって、印刷動作が停止するおそれがある。
なお、推定インク残量表示部261に表示されるチャージブロック263が無くなると、リザーブ済のメモリーユニット100が装着されている場合は、自動チャージ処理が実行される。チャージブロック263が無くなった状態からチャージ処理(自動チャージ処理を含む)が実行されると、イエロー(Y)のインクに対応する第2表示部260Yに示すように、推定インク残量表示部261に6個のチャージブロック263が表示される。
リザーブ状態表示部264には、メモリーユニット100によるチャージ状態やリザーブ状態が表示される。例えば、イエロー(Y)のインクに対応する第2表示部260Yのリザーブ状態表示部264には何も表示されていない。この場合は、イエロー(Y)のインクに対して、メモリーユニット100(図2に示す第1のメモリーユニット100−1)によるチャージ済みの状態であり、第1のメモリーユニット100−1がそのまま装着されているか、または、取り外されており、新たなメモリーユニット100(第2のメモリーユニット100−2)によるリザーブ処理はされていないことを示す。この状態で取り外した第1のメモリーユニット100−1は、チャージ処理済みであり無効化されている。また、この状態では、第2のメモリーユニット100−2をリザーブ処理することが可能である。
一方、シアン(C)のインクに対応する第2表示部260Cのリザーブ状態表示部264には、「C」のバーが表示されている。この場合は、シアン(C)のインクに対して、新たなメモリーユニット100(図2に示す第2のメモリーユニット100−2)が装着されてリザーブ処理済みであることを示す。この状態で第2のメモリーユニット100−2を取り外すと、リザーブ処理が解除されて、リザーブ状態表示部264には何も表示されない状態となる。この状態で取り外した第2のメモリーユニット100−2は、まだチャージ処理がされていないため使用可能である。
マゼンタ(M)のインクに対応する第2表示部260M、及び、ブラック(BK)のインクに対応する第2表示部260Kのリザーブ状態表示部264にも、「M」、「BK」のバーが表示されており、マゼンタ(M)のインク及びブラック(BK)のインクに対しても、第2のメモリーユニット100−2が装着されてリザーブ処理済みであることを示す。
なお、第2表示部260Cのリザーブ状態表示部264に「C」のバーが表示されているリザーブ状態で、第1のメモリーユニット100−1によってチャージされた初期充填量のインクを消費してインク推定量情報が所与の閾値WTHに達すると、自動チャージ処理が行われる。自動チャージ処理が行われると、第1のメモリーユニット100−1は無効化され、リザーブ状態表示部264は、第2表示部260Yのように何も表示されない状態となる。
図6は、本実施形態に係るインクタンク221及びスライダー240の構成例を示す側面図である。図6に示すように、インクタンク221はインク供給口222を備える。ユーザーは、インク供給口222からインクパック310に収容されたインクを充填することができる。インクタンク221は、印刷装置200のスロット230(図3参照)に固定されており、固定された状態でインクを充填することができる。スライダー240がスロット230に装着されている状態では、スライダー240のインク供給口カバー242を開けることでインクタンク221にインクを充填することができる。
スライダー240は、インクタンク221の上部をスライドすることで、印刷装置200から脱着可能である。ユーザーがメモリーユニット100をスロット230に装着する際には、スライダー240をスロット230から引き抜いて、メモリーユニット100をスライダー240の装着方向側の先端部に搭載し、スライダー240を装着方向に沿って再びスロット230に挿入する。図6は、メモリーユニット100がスライダー240に搭載された状態を示す。
図7は、本実施形態に係るスライダー240の構成例を示す斜視図である。図7に示すように、スライダー240の装着方向側の先端部にメモリーユニット100が搭載される。ここで、「搭載される」とは、メモリーユニット100がスライダー240の所定の場所に置かれることを意味する。メモリーユニット100がスライダー240の所定の場所に固着される必要はない。
図8は、本実施形態に係るメモリーユニット100の構成例を示す斜視図である。図8に示すように、メモリーユニット100は、記憶装置110(図11参照)、リセット端子TRST、クロック端子TSCK、データ端子TSDA、第1の電源端子TVDD、第2の電源端子TVSS、装着検出端子TCOを有する。これらの端子は、メモリーユニット100がスロット230に装着されることで、スロット230に設けられた印刷装置200の本体側端子CRST、CSCK、CSDA、CVDD、CVSS及びCCOにそれぞれ電気的に接続される。なお、リセット端子TRST、クロック端子TSCK、データ端子TSDA、第1の電源端子TVDD、第2の電源端子TVSSをまとめて「記憶装置用端子」とも呼ぶ。また、端子の個数及び配列は図8に示すものに限定されず、様々な個数、配列が可能である。
図9は、本実施形態に係るメモリーユニット100が搭載されたスライダー240の先端部の構成例を示す斜視図である。図9に示すように、メモリーユニット100は、スライダー240の装着方向側の先端部に搭載される。
図10は、本実施形態に係るインクパックセット300の構成例を示す模式図である。図10に示すように、インクパックセット300は、インクパック310(インク補充容器ともいう)及びメモリーユニット100を含み、これらが同梱されたものである。例えば、ブラックのインクパックセット300は、ブラックのインクが収容されたインクパック310とブラックのインク色情報が記憶されたメモリーユニット100とを含み、これらが同梱されたものである。インクパック310は、例えばラミネート加工されたフィルムで形成された袋(パウチパック)にインクを充填したものである。インクパックセット300は、印刷装置ベンダーから印刷装置200のユーザーに提供される。
図11は、本実施形態に係る印刷装置200のスロット230−a〜230−d、メモリーユニット100−a〜100−d、及び処理部210の構成例を示すブロック図である。
図11に示すように、メモリーユニット100−a〜100−dは、記憶装置用端子として、リセット端子TRST、クロック端子TSCK、データ端子TSDA、第1の電源端子TVDD、第2の電源端子TVSSをそれぞれ有する。これらの記憶装置用端子は、各メモリーユニット100が有する記憶装置110と電気的に接続される。
また、メモリーユニット100−a〜100−dは、装着検出端子TCOをそれぞれ有する。各メモリーユニット100において、装着検出端子TCOは第2の電源端子TVSSに電気的に接続される。
メモリーユニット100−aがスロット230−aに装着されることで、記憶装置用端子TRST、TSCK、TSDA、TVDD、TVSS及び装着検出端子TCOは、スロット230−aに設けられた本体側端子CRST、CSCK、CSDA、CVDD、CVSS及びCCOにそれぞれ電気的に接続される。メモリーユニット100−b〜100−dについても同様である。
スロット230−a〜230−dに設けられた本体側端子のうち、クロック端子CSCK、データ端子CSDA、第1の電源端子CVDD、第2の電源端子CVSSはそれぞれ処理部210のクロック端子SCK、データ端子SDA、第1の電源端子VDD、第2の電源端子VSSに共通接続される。処理部210は、クロック端子CSCKに対してクロック信号SCK、第1の電源端子CVDDに対して第1の電源電圧(高電位側電源電圧)VDD、第2の電源端子CVSSに対して第2の電源電圧(低電位側電源電圧)VSSをそれぞれ出力する。また、処理部210は、データ端子CSDAに対してデータ信号SDAを出力し、データ端子CSDAからのデータ信号SDAを受け取る。
処理部210は、スロット230−a〜230−dに設けられたリセット端子CRSTに対してリセット解除信号RSTa〜RSTdを出力する。処理部210がリセット解除信号を出力している記憶装置が、処理部210がアクセス対象とする記憶装置となる。
処理部210は、CPU211、記憶部212、通信処理部213を含む。処理部210は、通信処理部213を介して、各メモリーユニット100との通信処理などを実行する。
処理部210は、装着検出端子TCOによりスロット230にメモリーユニット100が装着されていることを検出することができる。例えば、スロット230−aに対して装着検出を行う場合には、処理部210は、第1の電源端子CVDDに対して第1の電源電圧VDDを出力し、装着検出信号COaの電圧レベルによりメモリーユニット100−a装着の有無を検出する。スロット230−aの本体側装着検出端子CCOは、抵抗素子Raを介して第1の電源端子CVDDに接続されているから、メモリーユニット100−aが装着されていない場合には装着検出信号COaの電圧レベルはHレベル(高電位レベル、VDDレベル)になる。
一方、メモリーユニット100−aが装着されている場合には、本体側装着検出端子CCO、メモリーユニット100−aの装着検出端子TCO及び第2の電源端子TVSSが電気的に接続されるから、装着検出信号COaの電圧レベルはLレベル(低電位レベル、VSSレベル)になる。従って、処理部210は、装着検出信号COaがHレベルである場合には非装着と判断し、Lレベルである場合には装着と判断することができる。このようにして、処理部210は、スロット230−a〜230−dの各々にメモリーユニット100が装着されているか否かを検出することができる。
図11に示す構成例では、処理部210がリセット解除信号RSTa〜RSTdのうちの1つをアクティブ(リセット解除)にすることで、1つのメモリーユニット100を選択して読み出し又は書き込みをすることができる。
3.チャージ処理とリザーブ処理
次にチャージ処理とリザーブ処理の詳細について説明する。なお、図3では4色のインクタンク221と、各色に対応する複数のスロット230とを有し、各スロットに対してメモリーユニット100が装着可能な印刷装置200の例を示した。ただし、図2に示すチャージ処理、リザーブ処理における第1のメモリーユニット100−1、第2のメモリーユニット100−2とは、所与の1つの色に対応するメモリーユニット100を表し、上記スロット230も所与の色の1つのスロットを対象としている。例えば、本実施形態の手法は、ブラック用のスロット230に、ブラック用のメモリーユニット100が装着され、且つ当該メモリーユニット100の取り外し後に、他のブラック用のメモリーユニット100がブラック用のスロット230に装着された場合の処理を規定するものである。
図12〜図14を用いて本実施形態に係るチャージ処理及びリザーブ処理について説明する。前述したように、記憶部212は、チャージ済みフラグとリザーブ済みフラグとを記憶している。
チャージ済みフラグとは、所与のメモリーユニット100の使用許可量情報により本体側のインク推定量情報が更新(チャージ)されたか否かを表すフラグである。チャージ済みフラグはチャージ処理によりオン状態となり、記憶部212のチャージ済みフラグのエリアには値1が記憶される。リザーブ処理はチャージ済みであることを前提として行われることから、チャージ済みフラグとはリザーブ待ちフラグであると考えてもよい。
リザーブ済みフラグとは、第1のメモリーユニット100−1によるチャージ処理後に、第2のメモリーユニット100−2が装着され、第2のメモリーユニット100−2によるチャージ処理の予約が行われたか否かを表すフラグである。リザーブ処理が行われることにより、リザーブ済みフラグはオン状態となり、記憶部212には値1が記憶される。以降、フラグ状態として、1もしくは0を記憶させることを、1もしくは0のフラグをセットするともいう。
図12は、メモリーユニット100の装着状態に応じたフラグを用いたチャージ処理及びリザーブ処理を説明するフローチャートである。これらの処理は、処理部210により実行される処理である。なお、各工程は処理内容に矛盾を生じない範囲で任意に順番を変更して又は並列に実行することができる。
この処理が開始されると、まずスロット230にメモリーユニット100が装着されているか否かを判定する(ステップS101)。これは、前述したように、端子COaの状態により判定する。メモリーユニット100が装着されている場合(ステップS101:YES)には、ステップS102に移行し、当該メモリーユニット100が適正であるか否かを判定する(ステップS102)。
ステップS102では、メモリーユニット100が有効状態か無効状態かを判定する。使用許可量情報が既に置換済み(チャージ済み)であるメモリーユニット100は再使用できないように、処理部210により無効状態に設定されている。装着されたメモリーユニット100が無効状態であれば、ステップS102において適正でないと判定し(ステップS102:NO)、ステップS108へ進む。
ステップS102では、装着されたメモリーユニット100とスロット230との対応関係を判定してもよい。例えば、ブラックのスロット230に他の色(シアン、マゼンタ、イエロー)に対応するメモリーユニット100が装着されている場合には、メモリーユニット100が適正でないと判定する。
また、メモリーユニット100に適合する印刷装置200が記憶されている場合には、印刷装置200との対応関係を判定する。印刷装置200とメモリーユニット100に記憶されている印刷装置200とが適合しない、あるいは、メモリーユニット100に適合する印刷装置200が記憶されていない場合、メモリーユニット100が適正でないと判定する。
すなわち、本実施形態における「適正か否か」の判定処理とは、「有効状態か無効状態か」という判定を少なくとも含む1つ又は複数の条件を判定する処理である。複数の条件判定を行う場合には、基本的には全ての条件で適正と判定されたら最終結果も適正と判定する処理を行う。
メモリーユニット100が適正であると判定された場合(ステップS102:YES)には、ステップS103に進み、チャージ済みフラグの判定を行う(ステップS103)。チャージ済みフラグの状態が0である場合(ステップS103:NO)、装着されている適正なメモリーユニット100(第1のメモリーユニット100−1)によるチャージ処理を行う。
具体的には、メモリーユニット100の使用許可量情報によりインク推定量情報を更新する(ステップS104)。また、これによりメモリーユニット100の使用許可量情報は印刷装置200本体側に移されたため、メモリーユニット100の再使用を禁止するために、メモリーユニット100に無効状態を記憶させる。(ステップS105)。そして、チャージ処理が完了したため、チャージ済みフラグを1に設定する(ステップS106)。
また、ステップS103でチャージ済みフラグが1であった場合(ステップS103:YES)には、既にチャージ処理が行われた状態において、さらに有効なメモリーユニット100が装着された状態に対応する。よって、装着されているメモリーユニット100(前述の第2のメモリーユニット100−2に相当)によるチャージ処理のリザーブが行われたものとして、リザーブ済みフラグを1に設定する(ステップS107)。
また、メモリーユニット100が装着されていない場合、又は装着されたメモリーユニット100が適正でない場合(ステップS101:NO、又は、ステップS102:NO)には、チャージ済みフラグの判定を行う(ステップS108)。
チャージ済みフラグが1の場合(ステップS108:YES)には、チャージ処理は行われているため、印刷動作は継続できる。上述したように、本実施形態ではチャージ済みのメモリーユニット100が取り外されたとしても、印刷動作に影響を与えないためである。また、チャージ済みではあるが、メモリーユニット100が装着されていない、もしくは装着されていても適正なメモリーユニット100ではないので、第2のメモリーユニット100−2によるリザーブ処理は実行できない。このため、リザーブ処理は完了しておらず、リザーブ済みフラグは0とする(ステップS109)。
なお、ステップS109はリザーブ済みフラグが1の状態で行われることもあれば、リザーブ済みフラグが0の状態で行われることもある。リザーブ済みフラグが1とは、チャージ処理後、一旦は適正なメモリーユニット100が装着されステップS107の処理が行われたが、その後、当該メモリーユニット100が取り外された(場合によってはさらにその後、別の不適正なメモリーユニット100が装着された)状態に対応する。この場合、リザーブ目的のメモリーユニット100が取り外されているため、リザーブ状態ではないので、ステップS109の処理は、1であったリザーブ済みフラグを0に戻す処理となる。
また、リザーブ済みフラグが0の状態でステップS109の処理が行われる場合とは、リザーブ処理が行われていないし、その後に有効なメモリーユニット100も装着されていない、という状況であるため、ステップS109では0であるリザーブ済みフラグを0の状態に維持する。
ユーザーに対する情報の表示を考慮した場合、ステップS109の(1)リザーブ済みフラグを1から0とする場合、(2)リザーブ済みフラグを0のままとする場合、の2つの処理を分けて考えてもよい。例えば、リザーブ済みフラグが1でステップS109の処理が行われる場合((1)の場合)には、既に行われていたリザーブ(予約)が解除された旨をユーザーに通知する。また、リザーブ済みフラグが0でステップS109の処理が行われる場合((2)の場合)には、ユーザーに正しくリザーブを行わせるための情報、例えば「予約を行うには、適正なメモリーユニットを装着してください」といったテキストを表示する。その際、色を指定する情報を合わせて表示することで、ユーザーによる操作を容易にしてもよい。
また、ステップS108の判定においてチャージ済みフラグが0であった場合(ステップS108:NO)、印刷動作を停止する(ステップS110)。図13や図14を用いて後述するように、本実施形態におけるチャージ済みフラグは、チャージ処理により1となるフラグであって、0となるのは推定インク消費量(総インク消費量情報WD)が所与の閾値WTHよりも大きい第2の閾値WTH’(=WTH+α)となった場合である。
この第2の閾値WTH’は、使用許可量に相当するインク量よりも多い値である。第2の閾値WTH’は、最もインク消費効率のよい印刷装置200で、インクパック1個分の初期充填量分のインクを使い切ることができる推定の総インク消費量情報WDの値(例えば135%)を目安に設定される。こうすれば、最もインク消費効率のよい印刷装置200で所与の閾値WTHを超えても、インクが残っている場合に印刷を続行させることができる。さらに、所与の閾値WTHでリザーブから自動チャージを行う動作が連続した後に、リザーブされていない状態で所与の閾値WTHを超えた場合、135%となってもインクが残っている場合が想定される。このため、第2の閾値WTH’は、170%程度に設定してもよい。
図13は、総インク消費量情報WDが所与の閾値WTHを超えた場合の処理を説明するフローチャートである。この処理は処理部210によって実行される処理である。この処理が開始されると、まずチャージ済みフラグ及びリザーブ済みフラグの判定が行われる(ステップS201、ステップS202、ステップS205)。
リザーブ済みフラグが1に設定され、且つチャージ済みフラグが1に設定されている場合(ステップS201:YES、且つ、ステップS202:YES)、有効な第2のメモリーユニット100−2が装着され、リザーブ済みの状態で総インク消費量情報WDが所与の閾値WTHを超えたことになる。よって、処理部210は、装着されているメモリーユニット100による自動チャージを行うことになる。
自動チャージ処理では、まず、リザーブ済みフラグ及びチャージ済みフラグの両方を0に設定(ステップS203)した後、図12のステップS104の処理に戻る。ステップS203で、リザーブ済みフラグを0とするのは、リザーブ用のメモリーユニット100がチャージ処理の対象となりリザーブ状態でなくなるためである(すなわち、第2のメモリーユニット100−2が第1のメモリーユニット100−1となる)。また、チャージ済みフラグを0とするのは、今、装着されているメモリーユニット100の前に装着されていたメモリーユニット100によるチャージ分のインクを使いきったからである。
また、図12の処理に戻った場合は、リザーブされていたメモリーユニット100によるチャージ処理(ステップS104)を行う準備である。また、図12の処理に戻った場合には、ステップS105、ステップS106の処理が行われるため、第2のメモリーユニット100−2(この時点では第2のメモリーユニット100−2ではなく、第1のメモリーユニット100−1に相当)が無効状態に設定され、チャージ済みフラグは再び1に設定されることになる。
また、リザーブ済みフラグが0に設定され、且つ、チャージ済みフラグが1に設定されている場合(ステップS201:NO、且つ、ステップS205:YES)、総インク消費量情報WDが所与の閾値WTHは超えたが、リザーブが行われていないため、自動チャージは行われない。そのため、使用許可量情報に相当する所与の閾値WTHから、さらに、インクの消費が進み、総インク消費量情報WDが第2の閾値WTH’を超えてしまうとそれ以上の印刷継続ができなくなるため、その旨の警告表示を行う(ステップS206)。
その上で、適正なメモリーユニット100が装着されたかの判定(ステップS207)、及び総インク消費量情報WDが第2の閾値WTH’以上であるかの判定(ステップS208)を行う。なお、ステップS207は、ステップS102と同じ処理である。ステップS208でYESの場合とは、適正なメモリーユニット100が装着されないまま、推定インク消費量が印刷動作を継続できないほどに多くなった状態である。
そのため、総インク消費量情報WDが第2の閾値WTH’以上となる前に適正なメモリーユニット100が装着されなかった場合(ステップS207:NO、且つ、ステップS208:YES)は、チャージ済みフラグ及びリザーブ済みフラグの両方を0にして(ステップS209)、印刷動作を停止する(ステップS210)。これは、図12のステップS101でメモリーユニットなしと判定され、ステップS108でチャージ済みフラグが0と判定され(ステップS209の工程によりステップS108でチャージ済みフラグが0と判定されることになる)、ステップS110に移行することに対応する処理である。
一方、総インク消費量情報WDが第2の閾値WTH’以上となる前に適正なメモリーユニット100が装着された場合(ステップS207:YES)には、チャージ済みフラグを0に設定し(ステップS211)、図12の処理に戻る。ステップS211は、すでに、チャージされた分は消費しており、新たに装着されたメモリーユニット100によるチャージ動作を行うための準備である。
なお、リザーブ済みフラグが1に設定され、且つ、チャージ済みフラグが0に設定されている場合(ステップS201:YES、且つ、ステップS202:NO)とは、本実施形態におけるフラグ管理では生じ得ない状態である。リザーブ処理はチャージ済みであることを前提として行われる処理であり、未チャージでありながらリザーブ状態となって、リザーブ済みフラグが1に設定されることがあり得ないためである。よって、この場合にはエラー処理を行う(ステップS204)。エラー処理の具体的な内容は種々考えられるが、例えばチャージ済みフラグとリザーブ済みフラグとの両方を0として印刷動作を停止する。
また、リザーブ済みフラグが0に設定され、且つ、チャージ済みフラグが0に設定されている場合(ステップS201:NO、且つ、ステップS205:NO)には、印刷動作を停止する(ステップS212)。ステップS212は、ステップS110と同じ工程である。
なお、上述したように、チャージ済みフラグが0となるのは、推定インク消費量が第2の閾値WTH’を超えた場合(ステップS209)か、チャージ処理の準備が整った場合(ステップS203、もしくは、ステップS211)である。そのため、チャージ済みフラグが0に設定されれば、印刷動作が停止するか(ステップS210)、すぐにチャージ済みフラグが1に復帰するか(ステップS106)のいずれかであり、チャージ済みフラグが0となりながら通常の印刷動作を継続するという状況は想定されない。
図14は、本実施形態に係る処理に対応する状態遷移図である。図14の各状態における4つのパラメーターは、左からそれぞれ、メモリーユニット100の装着状態、チャージ済みフラグの状態、リザーブ済みフラグの状態、印刷動作の可否を表す。例えば(無,0,0,不可)であれば、メモリーユニット100は装着されておらず、チャージ済みフラグとリザーブ済みフラグとの両方が0に設定され、印刷動作が不可であることを表す。
状態S0は、印刷ヘッドへの初期充填前の状態、すなわち、ユーザーが印刷装置200を購入した後で印刷装置200の使用前であり、印刷ヘッドにインクが充填されていない状態に対応する。状態S0では、メモリーユニット100は装着されておらず、チャージ済みフラグとリザーブ済みフラグとの両方が0であり、印刷動作が不可である。この場合は、チャージ処理も印刷動作も開始していないため、総インク消費量情報WD(推定インク消費量)は0%であり、適正なメモリーユニット100の装着を待機している。
状態S0で適正なメモリーユニット100が装着された場合には、チャージ処理を実行する状態S1に遷移する。状態S1では、メモリーユニット100が装着されており、当該メモリーユニット100は適正であるため、チャージ処理によりチャージ済みフラグが1となり、印刷動作が可能になる。リザーブ済みフラグについては0のままである。なお、ここで印刷動作が可能となるためには、ユーザーがインクタンク221にインクを補充し、センサーがインク有りを検出していなければならない。
また、状態S1では、適正なメモリーユニット100の装着が前提であるが、チャージ処理後であればメモリーユニット100は取り外しが可能である。よって、状態S1によるチャージ処理の実行後には、チャージ済みに対応する状態S2に自動的に移行する。
状態S2では、メモリーユニット100の装着状態が異なり、「無視」となっている。すなわち、状態S2では、メモリーユニット100は装着されていてもよいし、取り外されていてもよい。また、状態S2では、メモリーユニット100の装着状態は問わないが、状態S3への状態遷移の条件として適正なメモリーユニット100が装着されたかの監視を行う。
そして、状態S2において適正なメモリーユニット100が装着された場合には、状態S3に移行する。状態S3は、リザーブ済みの状態に対応する。したがって、状態S3では、装着された適正なメモリーユニット100によるリザーブ処理が行われるため、メモリーユニット100は装着されており、チャージ済みフラグとリザーブ済みフラグとの両方が1に設定され、印刷動作が可能である。
また、状態S3でメモリーユニット100が取り外された場合には、リザーブ用のメモリーユニット100が無くなるため、状態S2に戻る。すなわち、状態S2は、チャージ済み、且つ、未リザーブの状態に対応する。
さらに、状態S3で本体側で管理している推定インク消費量(総インク消費量情報WD)が所与の閾値WTH以上となった場合には、リザーブ目的のメモリーユニット100によるチャージ処理(自動チャージ)を行う。そのために、まず状態S4に遷移する。状態S4では、チャージ済みフラグ及びリザーブ済みフラグの両方が0となる。状態S4は、図13のステップS203に対応する。
そして、状態S4からは状態S1に自動的に遷移し、さらに状態S2に自動的に遷移することで、リザーブしていたメモリーユニット100によるチャージ処理が実行される。
一方、状態S2において総インク消費量情報WDが所与の閾値WTH以上となった場合には、状態S5に移行する。状態S5は、新たなメモリーユニット100によるチャージ処理が必要となっているにもかかわらず、適正なメモリーユニット100が装着されないため、チャージ処理を実行できない状態である。ただし、状態S5では、総インク消費量情報WDが第2の閾値WTH’に達していないため、印刷動作は継続できる。
状態S5において、適正なメモリーユニット100が装着された場合には状態S6に移行する。状態S6は、ユーザーの手動によるチャージ処理のための準備段階であり、チャージ済みフラグを1から0に変更し、状態S1に遷移する。この場合も、自動的に状態S2に遷移してチャージ処理が完了する。
つまり、状態S3→状態S4→状態S1→状態S2という遷移が、リザーブからの自動チャージであり、状態S2→状態S5→状態S6→状態S1→状態S2という遷移が、ユーザーのメモリーユニット100の装着による手動チャージを表すことになる。
また、状態S5において、適正なメモリーユニット100が装着されないまま、総インク消費量情報WDが第2の閾値WTH’(=WTH+α)以上となった場合には、カウント超過エラーに対応する状態S7に遷移する。状態S7では、メモリーユニット100の装着状態に関係なく、チャージ済みフラグ及びリザーブ済みフラグの両方を0にして、印刷動作を不可とする。なお、正常動作中であれば状態S5以外から状態S7への遷移は考えられないが、何らかの異常を考慮して状態S5以外から状態S7への状態遷移を許容してもよい。すなわち、総インク消費量情報WDが第2の閾値WTH’以上となった場合には、現状態がどの状態かを問わず状態S7に移行してもよい。
なお、以上の説明では、図12のステップS102に示したように、メモリーユニット100が有効状態か無効状態かの判定(広義にはメモリーユニット100が適正か否かの判定)をチャージ処理のタイミングとは無関係に行っている。本発明はこのような形態に限定されず、例えば、メモリーユニット100の装着時点で有効状態か無効状態かの判定を行い、自動チャージ時には再度の判定を省略する実施形態とすることも可能である。あるいは、メモリーユニット100装着時には有効状態か無効状態かの判定を行わず、チャージ処理時に当該判定を行ってもよい。
また、メモリーユニット100の不適切な再使用を抑止するためには、処理部210は、メモリーユニット100によるチャージ処理が行われた場合に、メモリーユニット100を無効状態に設定することになる。この設定を行う処理は、図12ではステップS105に対応する。
一度使用したメモリーユニット100の再使用を認めたのでは、適切なインク管理が不可能となる。本実施形態におけるメモリーユニット100の使用とは、使用許可量情報により本体側のインク推定量情報を更新(置換)したタイミング、すなわちチャージ処理が行われたタイミングを考えればよいため、このような状態管理を行うことで、適切な印刷装置200の利用が可能となる。
4.誤差を低減するための設定処理
上述したように、カウント処理により処理部210が推定した推定インク消費量と、実インク消費量との間に誤差が生じた場合には、インクを補充するタイミングに対して不適切なタイミングで自動チャージが行われるおそれがある。そこで、本実施形態に係る印刷装置200では、推定インク消費量と実インク消費量との間に誤差が生じた場合に、その誤差を低減し、適切なタイミングで自動チャージが行われるようにする設定を行うことが可能である。
ここで、本実施形態に係る印刷装置200では、同じ型番の印刷装置200であっても、ユーザーの印刷装置200の使用環境や使用状況により実インク消費量は異なり、実インク消費量を知ることができない。このため、ユーザー入力に基づいて設定処理を行うことが望ましい。ユーザーはインク量を目視で確認できるため、印刷装置200が推定する推定インク消費量と実インク消費量との間に誤差がある場合、ユーザーがその旨を印刷装置200に通知(教示)することが可能である。処理部210は、ユーザーが容易に教示できるように補助的な情報をUI部252に提示すればよく、例えばUI部252に入力指示のための情報を含む画面表示を行えばよい。以下、誤差を低減するための設定処理の具体例について説明する。
4.1 あらかじめ設定
まず、所与の閾値WTHの設定処理についての実施例を説明する。上述した高温下で使用するケースでは、ユーザーからすればインクの消費が進んでいるにもかかわらず自動チャージが実行されない、すなわち自動チャージのタイミングが遅いということを認識できる。また、低温下で使用するケースや目詰まり等のケースでは、ユーザーからすればインクが消費されていないにもかかわらず自動チャージが実行されてしまう、すなわち自動チャージのタイミングが早いということを認識できる。
具体的には、ユーザーは印刷装置200のUI部252(図5参照)を通じて、印刷装置200がチャージ状態であるか否か、リザーブ状態であるか否か、および、現在のインク推定量情報を取得可能であり、インクタンク221内の実際のインク量も目視で視認可能である。そのため、リザーブ済みの状態で目視によりインク面が下限線を下回る位置まで減少しているにもかかわらず、リザーブ用のメモリーユニット100がチャージ済みにならないときには、ユーザーは自動チャージのタイミングが遅いことを認識できる。また、インク面が下限線を下回る位置まで減少していないにもかかわらず、リザーブ用のメモリーユニット100がチャージ済みになったときには、ユーザーは自動チャージのタイミングが早いことを認識できる。
このようなユーザーの「早い」「遅い」という認識に基づく入力を、印刷装置200が受け付けることができれば、所与の閾値WTHの適切な設定が可能になる。
図15は、閾値の設定処理に用いられる表示画面の遷移例を示す図である。図15に示す表示画面のそれぞれは、処理部210が、図5に示すUI部252の第1表示部254に表示させるものである。例えば、UI部252の第1表示部254(図5参照)のメニュー項目の1つに、図15の画面A1に示すように「自動チャージ時期の設定」といった項目を設けておく。そして、当該メニュー画面に基づいて「自動チャージ時期の設定」を選択する入力を受け付けた場合には、処理部210は、第1表示部254に図15の画面A2に示す選択画面を表示する処理を行う。
図15の画面A2に示す例では、「あらかじめ設定」と「インク残量を見てから設定」という2つのモードが設けられており、いずれが選択されるかに応じて所与の閾値WTHの設定手法を切り替える。ここでの「あらかじめ設定」が、上述したユーザーの「早い」「遅い」という認識に基づく入力を受け付けるモードであり、「あらかじめ設定」を選択する入力を受け付けた場合には、処理部210は、第1表示部254に図15の画面A3に示す選択画面を表示する処理を行う。
図15の画面A3に示すように、「あらかじめ設定」では、ユーザーが自動チャージの時期を「早め」「標準」「遅め」の3つから選択可能とする。図15の画面A3で「早め」を選択すると、図15の画面A4に遷移し、「OK」を押下することで、標準の自動チャージ時期よりも早く自動チャージが実行されるようにする。具体的には、所与の閾値WTHを標準での値(基準値)よりも小さい値に設定すればよく、例えば基準値が120%である場合に、それよりも小さい第1の基準値(例えば110%)に設定する。上述した高温下で印刷装置200を使用するケースのように、自動チャージ時期が遅いと感じているユーザーは、「早め」を選択することで自動チャージ時期を早くすることができ、インクの過剰使用による印刷動作の停止を抑止できる。
図15の画面A3で「遅め」を選択すると、図15の画面A6に遷移し、「OK」を押下することで、標準の自動チャージ時期よりも遅く自動チャージが実行されるようにする。具体的には、所与の閾値WTHを基準値よりも大きい値に設定すればよく、例えば基準値が120%である場合に、それよりも大きい第2の基準値(例えば130%)に設定する。上述した印刷装置200が目詰まりした状態で使用しているケースのように、自動チャージ時期が早いと感じているユーザーは、「遅め」を選択することで自動チャージ時期を遅くすることができ、使用許可量(例えば初期充填量)分のインクを最後まで使用することが可能になる。
図15の画面A3で「標準」を選択する入力が行われた場合には、図15の画面A5に遷移し、所与の閾値WTHを基準値に戻す設定を行えばよい。
なお、標準の状態で問題ないユーザーが「早め」に設定してしまうとインクタンク221内のインクが余ってしまうことになるし、「遅め」に設定してしまうとインクタンク221内のインクが無くなって印刷動作が停止してしまうことになる。図15の画面A4、画面A6ではこの点を考慮し、「早め」「遅め」に設定する場合の問題点を表示画面で提示しておき、ユーザーの注意を喚起した上で設定変更を行うようにしている。
また、所与の閾値WTHを変更する幅は、推定インク消費量に許容されている公差範囲に基づいて設定すればよい。ここでは、変更する幅は±10%を想定しており、基準値を120%としているため、110〜130%の範囲で所与の閾値WTHを設定している。
このように、処理部210は、基準値と、基準値よりも小さい第1の基準値と、基準値よりも大きい第2の基準値とのいずれかを、所与の閾値WTHとしてユーザーに選択させるためのメニュー画面の表示処理を行う。
このようにすれば、あらかじめ設定されたいくつかの基準値の中から閾値の値を選択することができる。そのためユーザーにとって容易な入力により適切な閾値の設定が可能になる。
4.2 インク残量を見てから設定
上述の「あらかじめ設定」を用いる場合、わかりやすく容易なユーザー操作により設定を行えるが、実際の細かいインク消費量までユーザーに確認させているわけではなく、精度の高い閾値設定まで行うことは難しい。
よって、処理部210は、推定インク消費量を求めるためのカウント処理を行い、インクタンク221のインクが所定量消費されたと判定されたときの、カウント処理によって求められた推定インク消費量に基づいて、所与の閾値WTHを設定してもよい。
最も単純には、メモリーユニット100の使用許可量情報に対応するインク量(例えば初期充填量である1L)を上記所定量とする。上述したように、もともと実現したい処理は使用許可量情報に対応するインク量を過不足無く使い切ったタイミングで自動チャージを行うことである。このため、初期充填量を所定量とし、所定量だけインクを消費したときのカウント処理の結果をそのまま閾値設定に利用すればよい。
例えば、カウント処理に基づく推定インク消費量と実インク消費量との間に差がない場合、実インク消費量が1Lとなったときの、推定インク消費量も1L、或いは上述のように117%となる。この場合、所与の閾値WTH=117%とすればよい。
高温下で使用するケース等では、1Lのインクを実際に消費したときのカウント処理に基づく推定インク消費量は、117%よりも少なくなる。例えば、117%のときの実際に消費したインク体積は1.1Lとなる。この条件で1Lのインクを消費したときに自動チャージが実行される(0.1Lを消費させないようにする)ためには、117%×1L/1.1L=106%となる。すなわち、高温下で使用するケース等では、処理部210が所与の閾値WTH=106%とすれば、1Lのインク消費のタイミングでの自動チャージを実現できる。
目詰まり等が生じるケース等では、1Lのインクを実際に消費したときのカウント処理の結果は、117%よりも多くなる。例えば、117%のときの実際に消費したインク体積は0.91Lとなる。この条件で1Lのインクを消費したときに自動チャージが実行される(残り0.09Lを消費させる)ためには、117%×1L/0.91L=129%となる。すなわち、目詰まり等が生じるケース等では、処理部210が所与の閾値WTH=129%とすれば、1Lのインク消費のタイミングでの自動チャージを実現できる。
ここでの「所定量」は、メモリーユニット100の使用許可量情報に対応するインク量(使用許可量、初期充填量)には限定されず、種々の変形実施が可能である。例えば500mLを所定量としてもよく、この場合、実インク消費量が500mLとなる場合の推定インク消費量を2倍すれば、実インク消費量が1Lとなる場合のカウント処理の結果を推定できる。つまり、所定量と、メモリーユニット100の使用許可量情報に対応するインク量との比がわかれば、当該比に基づいて実際に1Lのインクを消費した場合のカウント処理の結果を推定できるため、適切な所与の閾値WTHの設定が可能である。以下では説明を簡略化するため、所定量=メモリーユニット100の使用許可量情報に対応するインク量=1Lであるものとして説明を行う。
しかし上述したように、本実施形態の印刷装置200は実インク消費量の情報は取得できない。そのため、どのタイミングからどのタイミングの間で、所定量のインクが実際に消費されたという情報は、ユーザーに教示してもらう必要がある。
よって処理部210は、インクタンク221のインクが第1のインク量であることを教示する第1の入力情報のユーザーによる入力と、インクタンク221のインクが第2のインク量であることを教示する第2の入力情報のユーザーによる入力と、を受け付ける。そして処理部210は、第1の入力情報の入力が検出されてから、第2の入力情報の入力が検出されるまでの期間のカウント処理によって求められた推定インク消費量に基づいて、所与の閾値WTHを設定する。
第1の入力情報、第2の入力情報を入力させるために、処理部210は、第1の入力情報をユーザーに入力させるための第1のメニュー画面と、第2の入力情報をユーザーに入力させるための第2のメニュー画面を表示部に表示する処理を行う。
例えば、インク収容部220のうち、ユーザーが目視可能な部分に、第1のインク量と第2のインク量とに対応する位置にインク残量を示すスケール(目盛り)を設ける。そして、図16に示した流れにより閾値を設定する。
図16は、閾値を設定するまでの処理部210での処理、表示画面、ユーザーによる操作、実際のインク量の変化、の時系列的な変化を説明する図である。図16に示すように、処理部210では、図15の画面A2で「インク残量を見てから設定」の選択入力が行われた場合に、図16のB1に示す画面の表示処理を行う。B1では、実際のインク量(実インク残量)が第1のインク量(ここでは1.1L)となった場合に入力を行うように、ユーザーに指示する表示を行っており、B1が第1のメニュー画面に対応する。
そして、ユーザーは実際のインク量が第1のインク量となったこと(あるいは、第1のインク量に対応する位置までインクを補充したこと)を目視で確認し、入力を行う(B2、B3)。処理部210は、この入力を第1の入力情報として検出したら、このタイミングでの累計インク消費量を記憶する(B4)。
本実施形態の印刷装置200では、印刷装置200の部品交換時期の目安とするために、インク推定量情報(推定インク消費量、総インク消費量情報WD)とは別に、チャージ処理では更新されない、印刷装置200の使用を開始してからのインク消費量の累計である累計インク消費量をカウント処理により計測している。よって、第1の入力情報の検出タイミング(以下、T1と記載)での累計インク消費量と、第2の入力情報の検出タイミング(以下、T2と記載)での累計インク消費量の差分は、当該2つのタイミングT1、T2間でのカウント処理の結果(所定量が消費されたときのカウントによる推定インク消費量)として利用可能である。
T1での累計インク消費量を記憶したら、B5に示す画面の表示処理を行う。B5では、実際のインク量が第2のインク量(ここでは100mL)となった場合に入力を行うように、ユーザーに指示する表示を行う。さらにB5では、第2のインク量となって入力を行うまで、インクの補充を行わないように指示する表示も行う。ここでは、T1とT2の間で所定量のインク(第1のインク量−第2のインク量)が消費される、ということを前提に処理部210の処理が行われる。
つまり、この間でインクが補充されてしまうと、実際の消費量が(第1のインク量+補充量−第2のインク量)であるにも関わらず、処理部210は、(第1のインク量−第2のインク量)のインクが消費されたと誤認してしまい適切な処理ができない。B5の表示は、このような事態となることを抑止するための表示である。B5が第2のメニュー画面に対応する。なお、B5の表示後、別途「自動チャージ時期の測定中」といった文字列の表示や、アイコンの表示を行い、ユーザーによるインクの補充を抑止してもよい。
ユーザーは、実際のインク量が第2のインク量となったことを目視で確認し、入力を行う(B6、B7)。処理部210は、この入力を第2の入力情報として検出したら、このタイミングT2での累計インク消費量を記憶する(B8)。
そして処理部210は、B4で記憶した累計インク消費量と、B8で記憶した累計インク消費量との差分値を、T1とT2との間でのカウント処理の結果得られた推定インク消費量とする(B9)。図16の例では、このカウント処理の結果は、実インク消費量が所定量である1Lとなった場合の推定インク消費量を表すため、上述したように当該結果から所与の閾値WTHを設定できる。
なお、図16では第1のメニュー画面、第2のメニュー画面で具体的なインクの体積を指定してユーザーに対して入力を促したが、これには限定されない。例えば、第1のメニュー画面では、インクタンク221にインクが充満されている場合に入力を行うように指示してもよい。インクタンク221のキャパシティは設計時点で決定されているため、充満されている場合のインク量は処理部210にとって既知となるためである。
また、目盛りの位置(例えば「タンクの底面から7cm」)を指定する画面を表示してもよい。インクタンク221の形状によっては体積で表記することで目盛り間隔が一定とならないこともあるため、目盛りの表示は体積ではなく底面等の基準位置からの距離で表記されてもよい。その場合、ユーザーが直感的に把握できるのはインク残量の体積ではなく、距離の情報となるため、メニュー画面で指定する情報も距離の情報とした方がわかりやすいインターフェイスを実現できる。
或いは、第1のメニュー画面としては、「タンクの底面から7cmとなったところでインクパックのインクを補充し、その後に↑を押してください」といった表示を行ってもよい。この場合、第1のインク量は、「タンクの底面から7cm」の時のインク量(例えば100mL)と、インクパック310に含まれるインク量(例えば1L)との和になるため、1.1Lであることがわかる。またこの際、第2のメニュー画面で「タンクの底面から7cm」となったタイミングでの入力を指示すればよい。この場合、上記所定量はインクパック310に含まれるインク量そのものとなるため、所定量をメモリーユニット100の使用許可量情報に対応する量とすることが容易となる。
4.3 インク残量を見てから設定する場合の変形例
上述の「インク残量を見てから設定」におけるユーザーからの第1の入力情報、第2の入力情報に基づく設定処理では、当該第1の入力情報、第2の入力情報が適切なタイミングで入力されていることを前提としている。そのため、ユーザーが誤った操作を行えば適切な設定処理を実行できない。
例えば、実際のインク量が第1のインク量ではないのに第1の入力情報を入力する、実際のインク量が第2のインク量ではないのに第2の入力情報を入力する、あるいは、B5の指示に従わずT1とT2との間でインクの補充を行う、といった操作が行われてしまうと、実インク消費量が上記所定量とは大きく異なってしまい、適切な閾値の設定ができない。
よって本変形例では、求めた閾値を用いてもよいか否かを確認する処理を行う。具体的には、処理部210は、第1の入力情報の入力が検出されてから、第2の入力情報の入力が検出されるまでの期間のカウント処理の結果(具体的には累計インク消費量の差分値)と、上記所定量との比較処理を行い、比較処理の結果に基づいて、所与の閾値WTHを設定するか否かを決定する。
カウント処理の結果と実インク消費量との間の誤差は、印刷装置200のベンダーが推奨する環境限界で印刷装置200を使用した場合には、ばらつきは概ね±10%程度であることがわかっている。当該ばらつきが公差範囲を超えるほど大きい場合には、何らかの異常が生じていると推定できる。つまり、カウント処理の結果と上記所定量との比較処理を行うことで、ユーザーが閾値設定において誤った操作を行っていないかの異常判定が可能となる。
具体的には、処理部210は、第1の入力情報の入力が検出されてから、第2の入力情報の入力が検出されるまでの期間のカウント処理によって求められた推定インク消費量と、所定量との誤差が所与の誤差閾値以下である場合には、カウント処理によって求められた推定インク消費量に基づいて、所与の閾値WTHを設定し、カウント処理によって求められた推定インク消費量と、所定量との誤差が所与の誤差閾値より大きい場合には、所与の閾値WTHの設定を行わない。
このようにすれば、ユーザーの誤った操作により求められた所与の閾値WTHを採用しないため、適切な処理が可能になる。上述したように、ここでのばらつきは公差に基づいて設定すればよく、例えば基準値(120%)に対し±20%である。もちろん、公差よりも厳しい条件にする、或いは緩い条件にするといった変形実施も可能であるし、異なる観点から上記誤差閾値を設定してもよい。
4.4 実際のインク残量を見た後で表示を見て設定(自動チャージ時期延長)
上述したように、ユーザーは、図5に示すUI部252の推定インク残量表示部261に表示されるチャージブロック263の数により、インクの補充を行うタイミングを知ることができる。具体的には、推定インク残量表示部261に表示されるチャージブロック263が1個になったら、カウント処理上はインクの補充を行うタイミングであることがわかる。
しかしながら、印刷装置200の使用環境(高温、低温等)や使用状態(目詰まり、印刷パターン等)に起因して、カウント処理上の推定インク消費量と実インク消費量との間に誤差が生じて、推定インク残量表示部261に表示されるチャージブロック263の数と実際のインクタンク221内のインク残量とが対応しなくなると、かえってユーザーを混乱させてしまうこととなる。
例えば、低温下で使用するケースや目詰まり等のケースで実インク消費量が推定インク消費量よりも少ないと、インク面がインクタンク221の底面から7cmよりも上にあるにもかかわらず、推定インク残量表示部261に表示されるチャージブロック263が無くなり、自動チャージが実行されてしまう場合がある。換言すれば、実インク消費量よりも推定インク消費量が先行している場合には、目視による実インク消費量に基づいたインクの補充を行うタイミング(以下では、インク補充タイミングという)に対して、自動チャージのタイミングが早くなってしまう。
このような場合に、インク補充タイミングに自動チャージのタイミングを合わせるため、操作者からの指示があった場合に、自動チャージが実行されるタイミングを遅らせる「自動チャージ時期延長(更新時期延長)」処理を実行することができる。図17は、自動チャージ時期延長処理を説明するフローチャートである。図18は、自動チャージ時期延長処理に用いられる表示画面の遷移例を示す図である。なお、図18に示す表示画面のそれぞれは、処理部210が、図5に示すUI部252の第1表示部254に表示させるものである。
上述したように、実インク消費量に基づく適切なタイミングでインクの補充を行う上では、ユーザーが目視で確認することにより、インク面が下限線まで到達したらインクタンク221にインクを補充することが望ましい。そこで、「自動チャージ時期延長」処理は、自動チャージ処理が実行された後インクを消費して、目視によりインク面がインクタンク221の底面から7cmの位置になったときに、ユーザーが実行することが推奨される処理である。
実際には、印刷装置200は、インク面がインクタンク221の底面から7cmの位置になったことの検出はしないため、また、印刷装置200にとって、ユーザーが目視で確認したかどうかは不明であるため、ユーザーが、メニュー画面より自動チャージ時期延長の処理の実行を選択することにより開始される。
ただし、カウント処理上ある程度のインクが消費されており、且つ、推定インク消費量が所与の閾値WTHの初期設定値である基準値(120%)未満である場合において、「自動チャージ時期延長」処理が実行できるものとする。本実施形態では、チャージブロック263の数が4個以下であって、且つ、チャージブロック263の数が2個以上である場合、すなわち、推定インク消費量が所与の閾値WTHの基準値よりも低い所定値(100%)未満である場合において、「自動チャージ時期延長」処理が実行できるものとする。
したがって、図17のフローチャートに示す「自動チャージ時期延長」処理は、ユーザーが印刷装置200の印刷動作を行って、推定インク残量表示部261に表示されるチャージブロック263の数が2個以上、且つ、4個以下である場合に、ユーザーの操作により開始される。
まず、図17のステップS301では、ユーザーは、図18の画面C1に示すユーザー(使用者)のためのメニュー画面から「チャージ設定」を選択し、画面C2に示すチャージ設定のメニュー画面から「自動チャージ時期延長」を選択する。画面C2は、ユーザーが自動チャージ時期延長を実行するかしないかを選択可能な画面であり、第3のメニュー画面に対応する。
画面C2でユーザーが自動チャージ時期延長を選択すると、ユーザーに対して、画面C3に示す「インク補充時にチャージブロックが2つ以上減っていたら実施してください」のインフォメーションが表示される。このインフォメーションは、推定インク残量表示部261に表示されるチャージブロック263の数が4個以下であることをユーザーに確認させるためのものである。換言すれば、画面C3は、インク消費量の使用状況に応じて自動チャージ時期延長が実行可能であるか否かをユーザーに通知するためのものであり、第4のメニュー画面に対応する。画面C3でユーザーが「OK(次へ)」を押すと画面C4に遷移する。
続いて、図17のステップS302で、ユーザーは、図18の画面C4から自動チャージ時期延長を実行する対象となるインクタンク221を選択する。なお、図18の画面C4は各インク色に対してインクタンク221が1つの場合の選択画面であるが、各インク色に対してインクタンク221が複数ある場合は、画面C4にインクタンク221ごとの選択画面が表示される。
ユーザーが対象となるインクタンク221を選択すると、図17のステップS303に移行し、処理部210(図11参照)は、対象となるインクタンク221に対して処理部210が推定したインク消費量が100%未満であるか否かを判定する。
図17のステップS303で、推定インク消費量が100%以上である場合(ステップS303:NO)は、ステップS304に移行し、処理部210は、図18の画面C5に示す「今はこの機能を実行できません」のような自動チャージ時期延長を実行できない旨のインフォメーションを表示する。この場合、ユーザーが目視でインク面がインクタンク221の底面から7cmの位置になったと確認したときに推定インク消費量が100%以上であり、推定インク消費量が実インク消費量よりも先行しているとはいえないからである。画面C5は、インク消費量の使用状況に応じて自動チャージ時期延長が実行可能であるか否かをユーザーに通知するためのものであり、第4のメニュー画面に対応する。
図17のステップS303で、推定インク消費量が100%未満である場合(ステップS303:YES)は、処理部210は、図18の画面C6に示す自動チャージ時期延長のON/OFFを選択する表示画面に遷移させて、ユーザーによりONが選択されたか否かを判定する(図17のステップS305)。デフォルトの状態では、画面C6に示すように、OFF(自動チャージ時期延長を実行しない)に設定されている。
図18の画面C6でユーザーがON(自動チャージ時期延長を実行する)を選択してOKを押した場合(ステップS305:YES)、処理部210は、図17のステップS306に移行し、所与の閾値WTHを、例えば第2の基準値(130%)に変更する。これにより、次に実行される自動チャージのタイミングが、所与の閾値WTHが基準値(120%)の場合よりも遅くなる。
また、図18の画面C6でユーザーがONを選択した場合(ステップS305:YES)、画面C7に示すインフォメーションが表示される。画面C7に示すインフォメーションは、インク面がインクタンク221の底面から7cmの位置になったときにチャージブロック263の数が満杯(5個以上)になった場合には、ONにした自動チャージ時期延長をOFFに設定するようにユーザーに促すためのものである。
自動チャージ時期延長が設定された(ONが選択された)状態のまま自動チャージが繰り返されると、実インク消費量よりも推定インク消費量が先行していた状態が解消されるだけでなく、インク補充タイミングに対して自動チャージのタイミングが遅れるようになってしまう場合がある。
例えば、インク面がインクタンク221の底面から7cmの位置になっているにもかかわらず、推定インク消費量が実インク消費量に追いつかず、推定インク残量表示部261にチャージブロック263の数が5個以上表示されるような状態になると、ユーザーを混乱させてしまうこととなる。このような状態になってしまった場合には、ユーザーは、図18の画面C1から操作して画面C6でOFFを選択することにより、自動チャージ時期延長の設定を解除することができる。
図18の画面C6でユーザーがOFF(自動チャージ時期延長を実行しない)を選択してOKを押した場合(ステップS305:NO)、処理部210は、図17のステップS307に移行し、所与の閾値WTHを基準値(120%)に変更する。これにより、自動チャージ時期延長の設定が解除され、インク補充タイミングに対する自動チャージのタイミングの遅れを解消することが可能となる。
4.5 実際のインク残量を見た後で表示を見てチャージを実行(強制チャージ)
上述の「自動チャージ時期延長」では、低温下で使用するケースや目詰まり等のケースで実インク消費量が推定インク消費量よりも少ないことにより、インク補充タイミングに対して自動チャージのタイミングが早くなってしまう場合に、自動チャージのタイミングを遅らせることができる。
一方、高温下での使用や印刷パターン等に起因して実インク消費量が推定インク消費量よりも多いと、実際のインク残量に対して推定インク残量表示部261に表示されるチャージブロック263の数が多めに表示され、インク面がインクタンク221の底面から7cm以下となっているにもかかわらず、自動チャージが実行されない場合がある。換言すれば、推定インク消費量よりも実インク消費量が先行している場合には、インク補充タイミングに対して自動チャージのタイミングが遅れてしまう。
このような状態で、ユーザーが、目視により実際のインク残量を確認することなく、推定インク残量表示部261に表示されるチャージブロック263の数からインクが残っていると判断して印刷動作が継続されると、インクが無くなり、センサーがインク無しを検出して印刷装置200が動作を停止してしまうこととなる。
また、上述の「自動チャージ時期延長」が設定された状態のまま自動チャージが繰り返されて、インク補充タイミングに対して自動チャージのタイミングが遅れるようになった場合に、自動チャージ時期延長の設定を解除するだけでは、インク補充タイミングに対する自動チャージのタイミングの遅れを解消することが困難な場合がある。
これらのような場合に、インク補充タイミングに自動チャージのタイミングを合わせるため、操作者からの指示があった場合に、強制的にチャージ処理を実行して現在のチャージ状態を破棄させる「強制チャージ」処理を実行することができる。
図19は、強制チャージ処理を説明するフローチャートである。図19による処理は、印刷装置200の処理部210により実行される処理である。図20は、ユーザー向けの強制チャージ処理に用いられる表示画面の遷移例を示す図である。図21は、メンテナンス向けの強制チャージ処理に用いられる表示画面の遷移例を示す図である。なお、図20及び図21に示す表示画面のそれぞれは、処理部210が、図5に示すUI部252の第1表示部254に表示させるものである。
ユーザー向けの強制チャージ処理は、自動チャージ処理が実行される前に、目視によりインク面がインクタンク221の底面から7cmの位置になったときに、ユーザーの指示により実行されることが推奨される処理である。強制チャージ処理は、新たなメモリーユニット100(第2のメモリーユニット100−2)からチャージを行う処理であるため、リザーブ済みの状態であることが前提となる。
ただし、ユーザーが目視でインク面がインクタンク221の底面から7cmの位置になったことを確認しないまま不用意に強制チャージ処理を実行してしまうと、現在の第1のメモリーユニット100−1によりチャージされたインクの使用許可量情報に基づくインク推定量情報が破棄されてしまうため、推定インク消費量があるにもかかわらずその推定インク消費量に対応する実際のインクを消費し切れなくなってしまうおそれがある。そこで、推定インク消費量が所与の閾値WTHよりも低い所定値以上であるときに、強制チャージ処理を実行できることとする。
本実施形態では、所与の閾値WTHを基準値である120%とし、所与の閾値WTHよりも低い所定値を100%とする。したがって、ユーザーは、対象となるインクタンク221に対して処理部210(図11参照)が推定した推定インク消費量が所定値の100%以上、且つ、所与の閾値WTHの120%未満であるときに、強制チャージ処理を実行できる。推定インク消費量が100%以上、且つ、120%未満であるとき、推定インク残量表示部261に表示されるチャージブロック263は1個となる。
ここで、印刷装置ベンダーによる印刷装置200のメンテナンスや修理においては、インク消費量の値によらず(インク推定量情報や実際のインク残量に関わらず)、強制チャージ処理が必要となる場合がある。例えば、長期間放置されて内部のインクが劣化したインクタンク221を破棄して交換する場合は、先にチャージされていたインク推定量情報を破棄する必要がある。
このような場合は、メンテナンスや修理を実施する技術者(以下では、メンテナンス者という)からの指示があった場合に、推定インク消費量が100%以上、且つ、120%未満であるか否かに関わらず、強制チャージ処理(以下では、「無制限強制チャージ」という)を実行できることとする。したがって、「無制限強制チャージ」処理を実行する際の操作者をメンテナンス者に限定できる構成とする。
まず、ユーザーにより実行される「強制チャージ」処理を説明する。図19のフローチャートに示す「強制チャージ」処理は、リザーブ状態で自動チャージ処理が実行される前に、目視によりインク面がインクタンク221の底面から7cmの位置になったときに、推定インク残量表示部261に表示されるチャージブロック263の数が1個である場合に、印刷装置200の操作者であるユーザーの操作(指示)により開始されることが推奨される処理である。実際には、印刷装置200は、インク面がインクタンク221の底面から7cmの位置になったことの検出はしないため、ユーザーが、メニュー画面より強制チャージ処理の実行を選択することにより開始される。
図19のステップS401では、ユーザーは、図20の画面C1に示すメニュー画面から「チャージ設定」を選択し、画面C2に示すチャージ設定のメニュー画面から「強制チャージ」を選択する。なお、本実施形態では、図20の画面C1,C2は、図18の画面C1,C2と共通である。ユーザーが、画面C2で「強制チャージ」を選択すると、画面D1に遷移する。
図19のステップS402で、ユーザーは、図20の画面D1から強制チャージを実行する対象となるインクタンク221を選択する。なお、図20の画面D1は各インク色に対してインクタンク221が1つの場合の選択画面であるが、各インク色に対してインクタンク221が複数ある場合は、画面D1にインクタンク221ごとの選択画面が表示される。
ユーザーが対象となるインクタンク221を選択すると、処理部210は、図19のステップS403に移行し、対象となるインクタンク221に対する推定インク消費量が所定値(100%)以上、且つ、所与の閾値WTH(120%)未満であるか否かを判定する。これは、推定インク残量表示部261に表示されるチャージブロック263が1個であることを確認することと同意である。
図19のステップS403で、推定インク消費量が所定値未満、または、所与の閾値WTH以上である場合(ステップS403:NO)は、強制チャージを実行できないこととしている。したがって、処理部210は、ステップS404に移行し、図20の画面D2(実行不可の場合)に示す「インク補充時にメモリーユニットが予約中でチャージブロックが残り1つになったらご使用ください」のような強制チャージを実行できない旨のインフォメーションを表示する。これにより、ユーザーに強制チャージを実行できない理由を通知できる。画面D2でユーザーがOK(閉じる)を押すと、第1表示部254の表示画面は図20の画面D1に戻る。
図19のステップS403で、推定インク消費量が所定値以上、且つ、所与の閾値WTH未満である場合(ステップS403:YES)は、強制チャージを実行することが可能である。したがって、処理部210は、ステップS407に移行し、リザーブ状態であるか否か(リザーブ済みフラグが1であるか否か)を判定する。
図19のステップS407で、リザーブ状態である(リザーブ済みフラグが1である)場合(ステップS407:YES)は、強制チャージを実行することが可能である。したがって、処理部210は、図20の画面D3に示すように、ユーザーに強制チャージを実行するか否かの確認を促す。これは、ユーザーが不用意に強制チャージ処理を実行してしまうことを抑止するためである。
図20の画面D3でユーザーがOK(実行)を押すと、処理部210は、図19のステップS408に移行してチャージ処理を実行し、リザーブされていたメモリーユニット100を無効化し(ステップS409)、リザーブ済みフラグを0に設定する(ステップS410)。これにより、第1表示部254の表示画面は図20の画面C1に戻る。
図19のステップS407で、リザーブ状態でない(リザーブ済みフラグが0である)場合(ステップS407:NO)は、強制チャージを実行できない。したがって、処理部210は、ステップS411で、ユーザーに対してリザーブを実行してから強制チャージ処理を開始するよう促すインフォメーションを表示する。このインフォメーションは、図20の画面D2に示すインフォメーションと同じであってもよい。
なお、上述の強制チャージ処理では、目視によりインク面がインクタンク221の底面から7cmの位置になっても、チャージブロック263が1個になる前(推定インク消費量が所定値未満)であると、図20の画面D2から画面D1に戻り、ユーザーは改めてインクタンク221を選択し直す必要がある。本発明はこのような形態に限定されず、例えば、推定インク消費量が所定値未満でもユーザーがインクタンク221を選択でき、選択されたインクタンク221の推定インク消費量が所与の所定値以上となったときにその旨を表示するようにしてもよい。このようにすれば、ユーザーは、インクタンク221を選択し直すことなく強制チャージ処理を実行することができる。
次に、メンテナンス者により実行される「無制限強制チャージ」処理を説明する。印刷装置200には、「無制限強制チャージ」処理を実行するために、ユーザー向けのメニューとは別に、メンテナンスメニューが用意されている。メンテナンスメニューは、一般のユーザーにより不用意に無制限強制チャージ処理が実行されることを抑止するため、例えば、複数のボタンを同時に押す等の特定の操作を行うことにより、UI部252の第1表示部254に表示される。
図19のフローチャートに示す「無制限強制チャージ」処理は、印刷装置200の操作者であるメンテナンス者用のメンテナンスメニューからの操作(指示)により開始される。図19のステップS405では、メンテナンス者は、図21の画面E1に示すメンテナンスメニュー画面から「無制限強制チャージ」を選択する。メンテナンス者が、画面E1で「無制限強制チャージ」を選択すると、画面E2に遷移する。
図19のステップS406で、メンテナンス者は、図21の画面E2から無制限強制チャージを実行する対象となるインクタンク221を選択する。無制限強制チャージ処理は、推定インク消費量の大小にかかわらず実行できるので、ステップS406でインクタンク221が選択されると、処理部210は、ステップS407に移行し、リザーブ状態であるか否か(リザーブ済みフラグが1であるか否か)を判定する。
無制限強制チャージにおけるステップS407以降の処理ステップは、ユーザー向けの強制チャージの場合と同じである。リザーブ状態であり実行可能な場合(ステップS407:YES)は、処理部210は、図21の画面E4でメンテナンス者に強制チャージを実行するか否かを確認し、メンテナンス者がOK(実行)を押すとチャージ処理を実行する。これにより、第1表示部254の表示画面は図21の画面E1に戻る。リザーブ状態でない場合(ステップS407:NO)は、処理部210は、図21の画面E3に示すインフォメーションを表示させる。
ここで、図19のフローチャートには図示されていないが、メンテナンス者がメンテナンスメニューから無制限強制チャージ処理を実行した場合には、処理部210は、無制限強制チャージ処理を実行した日を特定可能な情報(例えば、年月日)を記憶部212に記憶させる。これにより、印刷装置200に対してメンテナンス者によりメンテナンスや修理が実施された日を特定できるので、必要に応じて印刷装置200のトラブル発生状況やユーザーの誤使用の有無等を追跡することができる。
例えば、比較的短期間に繰り返し無制限強制チャージ処理が実施されている場合、印刷装置200に何らかのトラブルが発生している可能性がある。また、別途記録されたメンテナンスや修理の記録を参照して、無制限強制チャージ処理が実施された日にメンテナンスや修理が実施されていない場合は、ユーザーの誤使用の可能性が考えられ、必要に応じてユーザーへのフィードバックを行うことができる。
なお、上述した誤差を低減するための設定処理では、4.1から4.5までの複数の実施例をあげて説明したが、本実施形態は、4.1から4.4までの実施例のうち、いずれか一つが実行可能な構成としてもよいし、複数の実施例が実行可能な構成としてもよい。また、全ての実施例が実行可能な構成としてもよい。
5.変形例
上述した実施形態は、あくまでも本発明の一態様を示すものであり、本発明の範囲内で任意に変形及び応用が可能である。以下、いくつかの変形例について説明する。
本実施形態では、メモリーユニット100の記憶装置110に有効/無効状態を記憶するエリアがある場合を例に説明したが、メモリーユニット100を無効状態に設定する手法は種々考えられる。例えば、処理部210は、メモリーユニット100によるチャージ処理が行われた場合に、メモリーユニット100の記憶領域のうち、使用許可量情報が記憶される領域に対して、無効用データを書き込むことで、メモリーユニットを無効状態に設定してもよい。例えば、使用許可量情報としてメモリーユニット側のインク消費量(未使用の状態で0%となる情報)を記憶している場合、当該記憶領域に初期充填量に対応する値(117%)を超えるような値を書き込めばよい。このようにすれば、使用許可量情報の記憶領域を用いてメモリーユニット100を無効状態に設定することが可能になる。ただし、無効状態への設定手法はこれに限定されず、使用許可量情報を記憶する領域(アドレス)とは別に、有効フラグ(無効フラグ)を記憶する領域を設けておき、当該領域のデータを無効状態に対応する値に書き換えることで、メモリーユニット100を無効状態に設定してもよい。
なお、メモリーユニット100の記憶領域はアドレスによって管理されてもよい。例えば、アドレスad1に対応する記憶領域(例えばad1を先頭アドレスとする領域)の8ビットを用いてメモリーユニット100のID情報が記憶され、アドレスad2に対応する記憶領域の2ビットを用いてインクの色を表す色情報が記憶され、アドレスad3に対応する記憶領域の8ビットを用いて使用許可量情報が記憶されるようにしてもよい。使用許可量情報が、初期充填量と、初期充填量に対するインク消費量により表される場合、使用許可量情報を記憶する領域を2つの領域に区分し、第1の領域で初期充填量を記憶し、第2の領域でインク消費量を記憶するようにしてもよい。
また、本実施形態では、メモリーユニット100の使用許可量情報が、初期充填量及び初期充填量に対するインク消費量であり、印刷装置200のインク推定量情報が総インク消費量情報WD及び初期充填量であるとしたが、これに限定されない。例えば、消費量に関する情報ではなく、残量に関する情報を用いてもよい。具体的には、初期充填量のうち、使用されずに残っていると推定されるインク残量を用いてもよい。インク消費量情報でなくインク残量を用いる場合は、本実施形態における「所与の閾値を超える」との箇所を「所与の閾値を下回る」に置き換えればよい。
ここで、インク残量とは、一例としては、体積により表される情報である。この場合、初期充填量を参照せずとも、インク残量さえ参照すれば、使用可能なインクの量を体積や重量として直接的に把握可能である。よって、使用許可量情報によるインク推定量情報の更新(チャージ処理)は、使用許可量情報のインク残量により、使用許可量情報のインク残量を置換する処理により実現される。
また、インク残量は、初期充填量に対する残量の割合を表す情報であってもよい。この場合、チャージ処理は、使用許可量情報の初期充填量とインク残量の両方により、印刷装置200のインク推定量情報を更新する処理となる。
また、本実施形態の初期充填量は、容量(体積)により表されてもよいし、重量により表されてもよい。また、インク消費量、インク残量についても、割合や体積で表すものに限定されず、重量により表すことが可能である。
また、本実施形態では、インク消費効率が所定の範囲の下限値である場合であって、印刷装置ベンダーが推奨する使用環境での使用を想定して、初期充填量を消費した時に推定されるインク消費量を100%と表現した。しかし、インク消費量を割合で表す場合の基準はこれに限定されず、種々の変形実施が可能である。例えば、余裕を持って警告表示を行う場合であれば、基準を上記初期充填量よりも小さい値に設定してもよい。
また、処理部210においてインク推定量情報(推定インク消費量)を求める際に用いられる情報についても、種々の形式の情報を用いることができる。処理部210はインクの吐出回数をソフトカウント処理によりカウントし、カウント数をインク推定量情報としてもよいし、カウント数に1回の吐出により消費されると想定されるインク量を乗じた情報、すなわち吐出されたインクの体積を表す情報をインク推定量情報としてもよい。いずれの場合も、インク推定量情報は、対象とするインクの消費度合いを表す情報となる。
また、本実施形態では、インクパック310に充填されているインクの量にばらつきがある場合や、複数サイズのインクパック310(例えば1Lのものと2Lのもの)が存在する場合を考慮して、メモリーユニット100及び印刷装置200において初期充填量の情報を保持するものとした。しかし、インクパック310が所定容量のもののみであり、バラツキを考慮しなくてもよい場合、初期充填量を固定値とすることが可能である。この場合、固定値である初期充填量を、全てのインクパック310に同梱されるメモリーユニット100に記憶させておく意義は大きくない。よって、印刷装置200の記憶部212に、あらかじめ初期充填量(インクパック容量)及び初期充填量に対応させる割合を記憶させておくことができる。これにより、メモリーユニット100の使用許可量情報から初期充填量を省略することができる。この場合、チャージ処理では初期充填量の更新(置換)を考慮する必要がないため、インク消費量(インク残量)による更新(置換)を行えばよい。
また、本実施形態では、途中まで使用されたメモリーユニット100、具体的にはインク消費量が未使用の状態(0%)よりも大きく、初期充填量に対応する値(例えばWTH%)よりも小さいメモリーユニット100の装着も考えている。このようなメモリーユニット100は、例えば特許文献1の手法を併用した場合に生じうる。本実施形態では、チャージ処理において、メモリーユニット100のインク消費量を用いていたため、メモリーユニット100が未使用であるか、途中まで使用されているかによらず、適切な処理が可能である。
しかしながら、常に新品で有効なメモリーユニット100の使用が想定される場合もある。例えば、本実施形態の手法であれば、チャージ処理が行われたメモリーユニット100は無効状態となるため、インク消費量が0%とWTH%の間であり、且つ有効状態であるメモリーユニット100は存在しない。つまり、メモリーユニット100としては、新品且つ有効であるか、無効であるかの2つを考慮することになる。その場合、有効なメモリーユニット100については必ずインク消費量が0%となるため、インク消費量を全てのインクパック310に同梱されるメモリーユニット100に記憶させておく意義は大きくない。よって、本実施形態における使用許可量情報からインク消費量を省略し、初期充填量のみを用いてもよい。
また、初期充填量を印刷装置200にあらかじめ設定してある場合、且つ、常に新品で有効なメモリーユニット100の使用が想定される場合は、初期充填量及びインク消費量の両方を省略可能である。少なくともメモリーユニット100が有効であることさえ確認できれば、インク推定情報にチャージ(インク消費量をリセット)してもよいので、この場合の使用許可量情報はメモリーユニット100が有効であることを確認できる情報であればよい。
また、図3を用いて上述したように、カラー印刷の印刷装置200を想定し、インクタンク221、スロット230、メモリーユニット100及びスライダー240が複数であるものとして説明した。しかし、モノクロ印刷の印刷装置200であれば、インクタンク221、スロット230、メモリーユニット100及びスライダー240はそれぞれ1つであってもよい。
また、本実施形態では、インク有無を検知するセンサーがインク無しを検出した時点で印刷動作を停止するものとしたが、これには限定されず、センサーによるインク無しの検出後、処理部210により所定数のカウント処理が行われた場合(ソフトカウントが所与の閾値以上となった場合)に印刷動作を停止してもよい。また、センサーによるインク無しの検出に基づく印刷動作の停止後に、センサーによりインク有りが検出された場合には、印刷装置200は印刷動作の停止前の状態に復帰する。例えば、チャージ済みフラグやリザーブ済みフラグの状態は、印刷動作の停止前の値に設定される。図14の状態遷移図の例であれば、センサーによるインク無しの検出は、印刷動作中に行われることから、状態S1〜状態S6の各状態において、センサーによる印刷動作の停止が発生しうる。その場合、状態Si(iは1≦i≦6を満たす整数)から不図示の印刷停止状態に移行するとともに、停止前の状態である状態Siを保持(例えば記憶部212に記憶)しておき、インク有りの検出時には、印刷停止状態から状態Siに移行する処理を行う。
また、メモリーユニット100の装着検出の方法は、図11に示すものに限定されない。例えば、電気的に接続された2つの装着検出端子をメモリーユニット100に設けて、処理部210が、これら2つの装着検出端子に対応する2つの本体側(スロット側)装着検出端子間の電気的導通を検出することで、装着検出を行ってもよい。
また、処理部210が、アクセス対象であるメモリーユニット100を選択する方法は上記の実施形態に限定されない。例えば、処理部210がクロック信号SCKをスロット230毎に個別に出力する構成にすれば、所与のメモリーユニット100にのみクロック信号SCKを出力することで、当該メモリーユニット100を選択することができる。或いは、処理部210がデータ信号SDAをスロット230毎に個別に入出力する構成にすれば、所与のメモリーユニット100にのみデータ信号SDA(例えば読み出しコマンドなど)を出力することで、当該メモリーユニット100を選択することもできる。
また、インク補充用容器はインクパック310に限定されない。例えば、インク補充用容器は樹脂等の硬質の部材を用いた容器であってもよい。この場合であっても、インク補充用容器はインクタンク221に対するインクの補充までの使用に耐えればよく、インクタンク221に比べて耐久性等に対する要求を低くできる点に変わりはない。なお、インクパック310(パウチパック)を用いる場合、開封後には内部のインクを全てインクタンク221に補充する必要があることが想定される。言い換えれば、インクパック310は、一度開封してしまうと、インクを適切に保管する用途で用いることが難しい。これに対して、インク補充用容器に硬質の部材を用い、補充容器自体に栓ができるものとした場合、複数回に分けてインクを補充したりすることが可能になる。
なお、以上のように本実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また印刷装置200の構成、動作も本実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。