JP6767737B2 - ヒト細胞の単離のためのマウス細胞のディプリーション - Google Patents

ヒト細胞の単離のためのマウス細胞のディプリーション Download PDF

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Description

本発明は、異種移植でのヒト細胞の総括的単離のためのマウス細胞のディプリーションに関する。
ヒト腫瘍異種移植は、医薬物質の発見、癌幹細胞生物学および転移予測などの研究分野にとっての中心的な標準的手法である。異種移植片は、ヒト原発腫瘍材料、累代移植された腫瘍組織または培養された細胞に由来しうる。インビトロの細胞培養モデルと比較して、ヒト腫瘍異種移植片は、殆どのアッセイについて比較的高い有効性を示す(非特許文献1(Rubio-Viqueira B and Hidalgo, M. (2009) Clin. Pharmacol. Ther. 85: 217〜221))。前記移植片の癌研究での応用の他に、ヒト細胞のマウスへの異種移植は、目的ポピュレーションの分化能力を決定するために幹細胞研究でもしばしば使用される。
インビボでの増殖段階の間には、異種移植された組織は、血管新生がなされ、そして異種リンパ球サブポピュレーション、線維芽細胞および内皮細胞を含むマウス由来の細胞によって浸潤される。浸潤の程度は、腫瘍サブタイプ、増殖速度および移植部位などの要因に大きく依存する。しかしながら、これらの要因を一定に保っても、浸潤するマウス細胞の量と組成は非常に様々であり、それにより、後続の正確な分子的分析が困難となる。コンタミネーションしているマウス細胞は、マイクロアレイにおいてマウス由来分子のヒトプローブへの交差ハイブリダイゼーションをもたらし、かつ/または次世代の配列決定分析もしくはプロテオーム分析の間にマウスのシグナルの測定によって引き起こされる大きな感度の低下をもたらす(非特許文献2(Wong, S.Q. et al. (2013) Sci. Rep. 3: 3494))。
更に、ヒト腫瘍細胞の培養は、しばしば、目的細胞にはびこるマウスの線維芽細胞によって妨げられる。マウス細胞またはマウス細胞の断片を所望のヒト移植片から分離するためには、マウス細胞をディプリーションする試みか、またはソフトウェアにより解析プロセスを強化する試みか、のいずれかがなされている。
異種移植の後にマウス細胞をディプリーションするために、C.C. Zhangらは、非特許文献3(Stem Cells Transl. Med. 2: 233〜242 (2013))において、マウスCD45を認識する抗体とMHCクラスIエピトープを認識する抗体との組み合わせを提案している。
S. B. WILLINGHAMらは、非特許文献4(PROCEEDINGS OF THE NATIONAL ACADEMY OF SCIENCES, 「CD47−シグナル調節タンパク質α(SIRPa)相互作用はヒト充実腫瘍についての治療ターゲットである(The CD47-signal regulatory protein alpha (SlRPa) interaction is a therapeutic target for human solid tumors)」, 第109巻, 第17号, 2012年3月26日, 第6662〜6667頁)において、マウス細胞によりコンタミネーションされたヒト細胞を濃縮するためにヒトエピトープに向けられた抗体の使用を開示している。マウス細胞のディプリーションは開示されていない。
マウス細胞を認識する抗体の更なる組み合わせは、先行技術で提案されており、例えば特許文献1(国際公開第2009/045201A1号)は、マウスエピトープCD45、CD31およびH−2Kbdを介したマウス細胞のディプリーションを開示している。同様に、特許文献2(国際公開第2008/115601A1号)は、マウス細胞のディプリーションのためのマウスMHC I抗体を記載している。特許文献3(国際公開第2012/010904A1号)では、マウス系統に特異的なマイクロビーズが開示されている。
しかしながら、これらのマーカーの組み合わせを使用しても、マウス細胞のサブセットしか検出できない。
更に、異種移植片からのヒト腫瘍細胞の培養は、しばしばマウス線維芽細胞によって妨げられる。それというのも、該線維芽細胞はより効果的に付着し拡張し、それにより目的細胞にはびこるからである。その目的細胞がより良好に付着し増殖するとしても、インビトロ細胞培養アッセイ(例えば医薬物質毒性試験または薬物動力学)は、コンタミネーションしているマウス細胞に由来する作用について算術的に補正することは殆どの場合に不可能であるため問題である。
異種移植片からヒト細胞を単離するためのもう一つの方策は、ヒト細胞でのみ発現されてマウス細胞では発現されないマーカーを、該異種移植片からヒト細胞をディプリーションするために利用することである。こうして単離されたヒト細胞はマーカーに結合されており、それは更なる精製/選択ステップを妨げることがある。
国際公開第2009/045201A1号 国際公開第2008/115601A1号 国際公開第2012/010904A1号
Rubio-Viqueira B and Hidalgo, M. (2009) Clin. Pharmacol. Ther. 85: 217〜221 Wong, S.Q. et al. (2013) Sci. Rep. 3: 3494 C.C. Zhang et al. Stem Cells Transl. Med. 2: 233〜242 (2013) S. B. WILLINGHAM et al. PROCEEDINGS OF THE NATIONAL ACADEMY OF SCIENCES, 「CD47−シグナル調節タンパク質α(SIRPa)相互作用はヒト充実腫瘍についての治療ターゲットである(The CD47-signal regulatory protein alpha (SlRPa) interaction is a therapeutic target for human solid tumors)」, 第109巻, 第17号, 2012年3月26日, 第6662〜6667頁
本発明の課題は、そのままのヒト異種移植片を宿主細胞から、特にマウス細胞からディプリーションする方法を提供することであった。
驚くべきことに、CD9は、マウス細胞とヒト細胞とを含有する混合物中でマウス細胞を検出およびディプリーションすることを可能にする好適なエピトープとして同定された。
従って、本発明の主題は、マウス宿主でのヒト細胞の異種移植片から宿主細胞をディプリーションする方法であって、
a)前記異種移植片を細分化して、単細胞の懸濁液を含む試料とし、
b)前記試料を、検出手段に結合された、マウスCD9エピトープに特異的な抗体にさらし、
c)前記試料を、前記CD9抗体によって結合された細胞から前記検出手段を使用してディプリーションし、
d)前記CD9抗体によって結合されていない細胞を目的細胞として回収する
ことを特徴とする前記方法である。
本発明の方法で得られた目的細胞は、好ましくは本質的に「そのまま」である、すなわちいかなる抗体にも結合されておらず、またはいかなる抗体にも本質的に結合されていない。
しかしながら、得られた細胞は、宿主細胞のディプリーションの後に、更なる精製のために抗体に結合されてよい。
マウス宿主からの膨大な細胞型がCD9抗体によって認識され、本発明の方法で目的細胞からディプリーションできる。マウス細胞は、ラットまたはマウスから得られる任意の細胞であってよい。これは、多数の器官、例えば皮膚、肺、脳、腎臓および骨格筋におよぶマウス細胞を含み、その全てが異種移植のための目的組織である。
本発明の方法は、あらゆる種類のヒト細胞、特にヒト腫瘍細胞、例えばヒト乳癌細胞、ヒト結腸癌細胞、ヒト肺癌細胞、ヒト前立腺癌細胞、ヒト膵癌細胞、ヒト黒色腫癌細胞、ヒト白血病癌細胞およびヒトリンパ腫癌細胞を単離するために有用である。
スクリーニングのために細胞表面エピトープを使用するときの非常に重要な点は、目的分子の分解を避けるために、組織解離のために穏やかな手順と純粋な酵素を使用することである。従って、本方法の第一ステップにおいて、前記異種移植片は、組織の機械的破壊によって、酵素を用いてまたは酵素を用いずに、本質的に単細胞の懸濁液へと細分化または解離される。
様々な例示的詳細を、以下の図面を参照して説明する。
図1は、マウスのCD45およびMHCIエピトープを認識する方法によっては、マウス細胞のサブセットしか検出できないことを示している。 図2は、CD9が、マウス細胞で広範に発現されるエピトープであることを示している。 図3は、本発明による抗体カクテルの、ある細胞分画におけるマウス細胞の排除についての効果を示している。 図4は、CD9がマウスの肺細胞上のエピトープとして同定され、そして肺組織上でMHCクラスIとCD45との組み合わせよりも更に広範に発現されたことを示している。 図5は、CD9がマウスの皮膚細胞上でMHCより広範に発現され、そしてMHCクラスIとCD45との組み合わせよりも更に広範に発現されることを示している。 図6Aは、CD45/MHC IおよびCD9をディプリーションのために使用することによってマウス細胞をディプリーションすることによりマウス脳からヒト膠芽細胞腫を単離することを示している。 図6Bは、CD9抗体では、マウス生細胞のディプリーションの次に、死細胞と残渣を試料から取り除くことができることを示しているが、それはCD45/MHCをディプリーションのために使用した場合には認められない。
詳細な説明
用語「本質的に単細胞」とは、組織が孤立した単細胞に解離されていることを意味する。完全に自動化された様式での解離または細分化は、例えばヒーターを備えたgentle MACS(商標)Octo Dissociatorおよびそれぞれの組織解離キット(例えばエピトープ保全のために最適なTumor Dissociation Kit humanのようなキット)を使用することによって可能である(両者ともMiltenyi Biotec GmbH社から入手できる)。
目的細胞の所望の純度に依存して、宿主細胞の少量の分画は、更なる抗体を添加することによって取り除くことができるが、これらの殆どについて発現型がCD9と重複している。
本発明のもう一つの実施形態においては、ステップa)またはステップb)またはステップc)の少なくとも1つにおいて得られる細胞懸濁液/試料は、マウスCD9エピトープに特異的な抗体に加えて、それぞれ検出手段に結合されたCD45、CD51、CD31、CD24、EpCAM、Sca1、CD81、CD44、CD11b、CD95、H2Kk、H2Kd、CD171、CD90.1、CD90.2およびTer119からなる群から選択される1つ以上のマウスエピトープに特異的な抗体にさらされる。この実施形態においては、前記異種移植片/細胞懸濁液は、マウスCD9抗体に結合された細胞と、これらの抗体に結合された細胞とからディプレーションされる。
マウスエピトープCD9、CD45、CD51、CD31およびTer119に特異的な抗体を含む抗体カクテルの使用が好ましく、それは本方法のステップb)で投与される。
前記検出手段は、本発明の方法で使用される全ての抗体について同じまたは異なってよい。好適な検出手段は、磁性粒子、蛍光色素または固体担体からなる群から選択できる。
磁性粒子は、当該技術分野において、超常磁性ナノ粒子(マイクロビーズ(Micro Beads))として知られており、それは、Miltenyi Biotec GmbHから得ることができる。好適な蛍光色素は、例えばFITC、PE、APC蛍光色素またはタンデム色素である。固体担体は、プラスチック皿またはフラスコならびにカラムまたはマイクロ流体エレメントであってよい。もちろん、前記抗体は、1つ以上の検出手段を保有していてよい。
ステップc)のディプリーションは、検出手段によって必要とされるように、例えば磁気分離として、パニングとして、またはFACSとして行われる。
先行技術は、異種移植片から、ある特定のヒト腫瘍サブポピュレーションを単離することを、例えば異種移植片から癌幹細胞(CSC)を単離することを提案している。しかしながら、サブポピュレーションがヒト細胞分画から単離された後に、マウス細胞は依然としてネガティブ分画をコンタミネーションしうるため、それは、下流側の全ての主要なタイプの解析に偏りのある結果をもたらす。目的細胞を機能特性および分子特性に関して、例えばマイクロアレイベースの発現プロファイリングまたは次世代配列決定によって解析する前に、非常に純粋な目的細胞の試料を得ることが不可欠である。
この欠点を避けるために、本発明の方法は、コンタミネーションするマウス宿主細胞を含まないヒト細胞ポピュレーションを得るために使用できる。本発明の更なる一実施形態においては、ステップe)において、ステップd)で得られた目的細胞は、検出手段に結合されたヒトマーカーに特異的な抗体にさらされ、そして更に前記検出手段を用いて、性質の異なる細胞サブポピュレーションを含む少なくとも2つの分画に分離される。
それらの性質の異なる細胞サブポピュレーションは、CSCまたはEpCam(CD326)などのある特定のマーカーを発現する細胞または発現しない細胞からなりうる。ステップe)で得られる一方の分画は、これらのマーカーを発現する細胞サブポピュレーションを含んでよく、もう一方の分画は、これらのマーカーを発現しない細胞サブポピュレーションを含む。
本発明のステップe)において、CSCは、例えばヒト乳癌細胞異種移植腫瘍、ヒト結腸癌異種移植腫瘍、ヒト肺癌異種移植腫瘍、ヒト前立腺癌異種移植腫瘍、ヒト膵癌異種移植腫瘍、ヒト黒色腫癌異種移植腫瘍、ヒト白血病癌異種移植腫瘍、ヒトリンパ腫癌異種移植腫瘍から単離できる。
方法全般的に、例えばヒーターを備えたgentleMACS Octo DissociatorをTumor Dissociation Kit, humanと組み合わせて使用することにより異種移植片を解離させ、それに引き続いて、その試料を既に議論された抗体へとさらし、単独のステップでマウス細胞を除去することを伴う。引き続き、第二のソートをCSCマーカーを用いて行い、こうして純粋なヒトCSCサブポピュレーションと非CSCサブポピュレーションが得られる。
比較例1
目的組織を、BL6マウスとCD1マウスから取り出し、それらを、プールし、そしてヒーターを備えたgentleMACS(商標)Octo Dissociatorとエピトープ保全に最適化された各々の組織解離キットとを使用することによって完全に自動的に解離させた。フローサイトメトリー解析のために、細胞を製造元の指示に従って指定の抗体で染色し、そしてMACSQuant(商標)Analyzer(Miltenyi Biotec GmbH)を使用して解析した。マウスのCD45とMHCクラスIエピトープを認識する抗体の公知の組み合わせを用いると、解析された全ての解離された組織において赤血球細胞の解離後でさえも、図1の左から1番目の皮膚組織(A)と肺組織(B)を示す欄に示されるように、マウス細胞のたった1つのサブセットだけしか検出できなかった。
比較例2
全ての器官からの全てのマウス細胞の完全な検出のために、図4と図5のプロットC)によって示されるように、CD45、CD31、CD51およびTer119に特異的な抗体を、CD9抗体と組み合わせて使用した。これらの4種の抗体とCD45に特異的な抗体およびMHCクラスIに特異的な抗体との組み合わせは、図4と図5のプロットD)によって示されるように効果的ではない。図4と図5のプロットE)は、CD45を認識する抗体、CD31を認識する抗体、CD51を認識する抗体、Ter119を認識する抗体およびCD9を認識する抗体(「抗マウス」で一致する)の組み合わせが、マウス細胞の検出のために、CD45およびMHCクラスI抗体の組み合わせよりもかなり効果的であることを指摘している。更に、CD9単独でさえも、CD45およびMHCクラスI抗体の組み合わせよりも既に効果的である。
比較例3
ヒト膠芽細胞腫細胞を、解離されたマウス脳のために単離した。図6Aに示されるように、異種移植片からのマウス細胞の間接的な磁気的ディプリーションのためには、CD45およびMHCクラスIの特異抗体の組み合わせ(左上と左下のドットプロット)は不十分であるが、一方で、殆ど全てのマウス細胞はCD45、CD31、CD51、Ter119およびCD9を認識する抗体の組み合わせ(右上と右下のドットプロット「MCDK」)を使用することで取り除かれる。図6Bは、CD9抗体では、マウス生細胞のディプリーションの次に、死細胞と残渣を試料から取り除くことができることを示しているが、それはCD45/MHCをディプリーションのために使用した場合には認められない。
マーカーとしてのCD9の同定
比較例の手順を、CD45およびMHCクラスIのエピトープの代わりに、マウスCD9を認識する抗体を使用して繰り返した。
CD9は、マウス細胞に広範に発現されるエピトープとして同定され、こうして解離された皮膚組織および肺組織についての図2に示されるようにより全般的な検出が可能となる。赤血球細胞だけは殆どの場合に検出されなかった。
全ての器官からの全てのマウス細胞の完全な検出のために、マウスCD9、CD45、CD51、CD31およびTer119のエピトープに特異的な抗体を添加し、こうして多くの抗体により全ての細胞の結合が可能となった。この抗体組成物をAPC蛍光色素と結合させて使用する(抗マウス−APC)ことで、皮膚組織(A)および肺組織(B)を含む図1(左から2番目と3番目の欄)に示されるように、赤血球細胞を含む全てのマウス由来の細胞を認識することができた。
本発明による例(1)
抗マウスCD9抗体、抗マウスCD45抗体、抗マウスCD51抗体、抗マウスCD31抗体および抗マウスTer119抗体と、超常磁性ナノ粒子(マイクロビーズ)のコンジュゲートを、マイクロビーズ上への抗体結合の技術分野で公知のようにして作製する。各々の抗体を個別のマイクロビーズへと結合させ、こうして得られたコンジュゲートを混ぜることによってそのカクテルを調製した。
これらのコンジュゲートの混合物を含むカクテルを、磁気的分離によるヒト腫瘍異種移植片からのマウス細胞のディプリーションのための最適化されたプロトコールの開発のために使用した。異種移植腫瘍の発生のために、5週齢の雌の胸腺欠損ヌードマウス(Hsd:Athymic Nude-Foxn1nu、Harlan)を特別な病原フリーな条件下に保った。ヒト癌異種移植片を、患者の原発腫瘍手術片から、腫瘍断片を胸腺欠損ヌードマウスの肩甲骨間の脂肪パッド中に移植することによって確立し、そして前記のようにインビボ継代を通じて保持した(Marangoni E et al., Clin Cancer Res. 2007 Jul 1;13(13):3989〜98.)。腫瘍組織を、単細胞懸濁液へと、Tumor Dissociation Kit, humanを、gentleMACS Octo Dissociator(両者ともMiltenyi Biotec GmbH)と組み合わせて製造元の指示に従って解離させた。解離の後に、それらの細胞を、磁気的細胞分離のためにPEBバッファー(PBS、pH7.2、0.5%ウシ血清アルブミン、および2mMのEDTA、MACS BSA Stock SolutionをautoMACS(登録商標)Rinsing Solutionで1:20希釈することによって調製した)中に再懸濁させた。
本発明の方法のステップb)の間のコンジュゲートカクテルを使用して、コンタミネーションしているマウス細胞の頻度が図3に示されるように約80%であったときでさえも、コンタミネーションしているマウス細胞の99%超を20分未満で排除することができた。細胞分画を、APCと結合されたpanマウス抗体(抗マウス−APC)と、この例でヒト腫瘍細胞のためのマーカーとして使用したヒトCD326(EpCAM)に対する抗体とで標識し、こうしてヒトおよびマウスの分画のより容易な定量化が可能となった。
本発明による例(2)
比較例3に記載したのと同じ手順を使用したが、それとは異なり、マイクロビーズに結合されたCD9抗体の利用はより効果的であるものの、高度に純粋なヒト腫瘍細胞分画をもたらさなかった。図6Aと図6Bを参照のこと。驚くべきことに、CD9抗体を使用することによって、死細胞と残渣は、細胞サイズ対細胞粒度を示すプロットにより示されるように効果的に除去できる。本発明のコンジュゲートカクテルを使用すると、コンタミネーションしているマウス細胞の99%超と残渣の60%超を排除することができた。この効果は、ディプリーションのためにCD45およびMHC Iを使用した場合には認められない。
従って、CD45とMHC Iをディプリーションのために使用した場合に、マウス細胞をディプリーションすることによりマウス脳からヒト膠芽細胞腫を単離することは効果的でない。ディプリーションマーカーとしてCD9を使用する場合に、その効果は大きく改善されるが、マウス細胞の少量の分画は試料中に残留する。本発明による抗体カクテルを使用した場合に、殆ど全てのマウス細胞がディプリーションされる。
様々な詳細を、前記概説した例示的実施とからめて説明したが、様々な代替、変更、選択肢、改良、および/または事実上の等価物は、それらが公知であろうと、またはそれが現在予見されようと、もしくは予見できようと、前記開示を再考することで明らかになろう。従って、上述の例示的実施は、説明を目的とするものであって、制限を目的とするものではない。
[本発明の態様]
1. マウス宿主でのヒト細胞の異種移植片から宿主細胞をディプリーションする方法であって、
a)前記異種移植片を細分化して、単細胞の懸濁液を含む試料とし、
b)前記試料を、検出手段に結合された、マウスCD9エピトープに特異的な抗体にさらし、
c)前記細胞懸濁液を、前記CD9抗体によって結合された細胞から前記検出手段を使用してディプリーションし、
d)前記CD9抗体によって結合されていない細胞を目的細胞として回収する
ことを特徴とする前記方法。
2. 1に記載の方法であって、ステップa)、ステップb)またはステップc)の少なくとも1つにおいて得られる細胞懸濁液を、更に、それぞれ検出手段に結合されたCD45、CD51、CD31、CD24、EpCAM、Sca1、CD81、CD44、CD11b、CD95、H2Kk、H2Kd、CD171、CD90.1、CD90.2およびTer119からなる群から選択される1つ以上のマウスエピトープに特異的な抗体にさらすことと、前記細胞懸濁液を、更に前記検出手段を使用してこれらの抗体に結合された細胞をディプリーションすることと、を特徴とする方法。
3. 1から3までのいずれかに記載の方法であって、ステップb)において、前記細胞懸濁液を、マウスエピトープCD9、CD45、CD51、CD31およびTer119に特異的な抗体にさらすことを特徴とする方法。
4. 1から4までのいずれかに記載の方法であって、前記抗体の検出手段が、磁性粒子、蛍光色素または固体担体からなる群から選択されることを特徴とする方法。
5. 1から4までのいずれかに記載の方法であって、ステップc)のディプリーションが、磁気的分離、パニングまたはFACSとして実施されることを特徴とする方法。
6. 1から5までのいずれかに記載の方法であって、マウスが宿主として使用されることを特徴とする方法。
7. 1から6までのいずれかに記載の方法であって、前記ヒト細胞がヒト腫瘍細胞であることを特徴とする方法。
8. 7に記載の方法であって、ステップe)として、ステップd)で得られた目的細胞を、検出手段に結合されたヒトマーカーに特異的な抗体にさらし、そして更に前記検出手段を用いて、性質の異なる細胞サブポピュレーションを含む少なくとも2つの分画に分離することを特徴とする方法。

Claims (6)

  1. マウス宿主でのヒト細胞の異種移植片から宿主細胞をディプリーションする方法であって、以下の工程a)〜d);
    a)前記異種移植片を細分化して、単細胞の懸濁液を含む試料とし、
    b)前記試料を、検出手段に結合された、マウスエピトープCD9、CD45、CD51、CD31およびTer119に特異的な抗体にさらし、
    c)前記細胞懸濁液を、前記抗体によって結合された細胞から前記検出手段を使用してディプリーションし、
    d)前記抗体によって結合されていない細胞を目的細胞として回収する、
    を含む、前記方法。
  2. 請求項1に記載の方法であって、前記抗体の検出手段が、磁性粒子、蛍光色素または固体担体からなる群から選択されることを特徴とする方法。
  3. 請求項1または2に記載の方法であって、ステップc)のディプリーションが、磁気的分離、パニングまたはFACSとして実施されることを特徴とする方法。
  4. 請求項1からまでのいずれか1項に記載の方法であって、マウスが宿主として使用されることを特徴とする方法。
  5. 請求項1からまでのいずれか1項に記載の方法であって、前記ヒト細胞がヒト腫瘍細胞であることを特徴とする方法。
  6. 請求項に記載の方法であって、ステップe)として、ステップd)で得られた目的細胞を、検出手段に結合されたヒトマーカーに特異的な抗体にさらし、そして更に前記検出手段を用いて、性質の異なる細胞サブポピュレーションを含む少なくとも2つの分画に分離することを特徴とする方法。
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