以下、添付図面を参照して、本願の開示する洗浄水タンク装置および水洗大便器の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
<洗浄水タンク装置>
図1は、実施形態に係る洗浄水タンク装置10の概要説明図である。図1に示すように、洗浄水タンク装置10は、タンク本体11と、開口部12と、導水管13とを備える。タンク本体11は、たとえば、便器の後方に配置される。タンク本体11は、便器へ供給する洗浄水を内部に貯留する。
開口部12は、タンク本体11の側部に、タンク本体11の外部と内部とを連通するように設けられる。導水管13は、開口部12に取り付けられる。導水管13は、たとえば、タンク本体11の上方に配置された給水源から供給される洗浄水を、タンク本体11の側部からタンク本体11の内部へ導入する。
ここで、従来の洗浄水タンク装置では、導水管が、たとえば、タンク本体の上面に配置される蓋に取り付けられていた。このため、従来の洗浄水タンク装置は、全体の高さが高いものであった。
また、従来の洗浄水タンク装置では、導水管が、タンク本体の上方から供給される洗浄水を、タンク本体の上部からタンク本体の内部へ導入する。このため、従来の洗浄水タンク装置のように導水管が蓋に取り付けられている場合、上方から供給される洗浄水の落差が小さく、導水管内において洗浄水に十分な水勢が付与されない。このため、導水管内の残水が増加していた。
また、タンク本体の内部に配置される導水管の先端部からタンク本体に貯留される洗浄水(「貯留水」ともいう)の最大水位WLMAXの水面(「喫水面」ともいう)までの高さが高くなり、タンク本体の内部において洗浄水の水はねが発生することがあった。このような水はねは、汚れの原因となることがあり、衛生面においても好ましくない。
実施形態に係る洗浄水タンク装置10では、導水管13を、タンク本体11の側部に設けられた開口部12に取り付け、タンク本体11の上方から供給される洗浄水を、タンク本体11の側部からタンク本体11の内部へ導入することとした。
実施形態に係る洗浄水タンク装置10によれば、高さを抑えることができる。また、洗浄水に十分な水勢を付与することができる。これにより、導水管13内の残水を減らすことができる。また、導水管13の先端部からタンク本体11に貯留される洗浄水の最大水位WLMAXの水面までの高さを抑えることができる。これにより、洗浄水の水はねを抑えることができる。
なお、実施形態に係る洗浄水タンク装置10では、洗浄水の流入口131が側方を向き、洗浄水の流出口132が下方を向くように導水管13を取り付ける。また、開口部12は、タンク本体11の上面の端縁部11aに形成された切欠きとする。また、開口部12となる切欠きに挿入され、導水管13を固定する固定部材20を備える。また、タンク本体11の側周面を、平面視において楕円形状に形成する。これらの詳細については、図2〜図6を用いて後述する。
なお、導水管13を、タンク本体11の左右いずれか一方に寄せた配置としてもよい。また、導水管13を左右に寄せた配置とする場合、給水源の位置に応じて左右いずれかを選択可能に構成して、左右のいずれか選択された方に導水管13を取り付けるようにしてもよい。
以下、図2〜図6を参照して実施形態に係る洗浄水タンク装置10についてさらに詳細に説明する。図2は、実施形態に係る洗浄水タンク装置10の斜視図である。図3は、実施形態に係る洗浄水タンク装置10の平面図である。図4Aは、第1開口部12Aの説明図である。図4Bは、第2開口部12Bの説明図である。図5Aおよび図5Bは、固定部材20の説明図である。図6は、固定部材20および導水管13の配置説明図である。
なお、図2などにおいて、説明をわかりやすくするために、鉛直上向きを正方向とするZ軸を含む3次元の直交座標系を図示している。かかる直交座標系は、他の図においても図示している場合がある。また、かかる直交座標系は、Y軸の負方向側を正面と規定し、X軸の正方向側を右側面、X軸の負方向側を左側面、Z軸の正方向側を平面(「上面」ともいう)と規定している。
図2に示すように、洗浄水タンク装置10において、タンク本体11は、上面に開口を有する容器であり、上記したように、便器、詳細には後述する便器本体2(図7参照)のボウル部へ供給する洗浄水を内部に貯留する。また、タンク本体11は、平面視において、楕円形状である(図3参照)。すなわち、タンク本体11は、側周面が曲面となる。
また、タンク本体11は、上面に蓋111が配置される。タンク本体11は、蓋111が配置されることで、上面の開口が閉塞される。なお、タンク本体11および蓋111は、樹脂製であることが好ましい。また、タンク本体11の上部には、洗浄水タンク装置10における、後述する操作部14などが配置される。
また、洗浄水タンク装置10において、開口部12(図1参照)となる第1開口部12Aおよび第2開口部12Bは、上記したように、タンク本体11の側部に設けられる。このうち、第1開口部12Aは、タンク本体11の上面の端縁部11aに設けられた切欠きである。かかる切欠きは、上面の端縁部11aから下方へ向けて切り欠かれたものである。このため、第1開口部12Aは、タンク本体11の側部に位置するようになる。
また、第2開口部12Bは、タンク本体11の側端部(図示の例では、右側端部)に設けられ、操作部14の半部(図示の例では、右側半部)が配置される空間部141に設けられる。空間部141は、タンク本体11の右側端部が切り欠かれたように、タンク本体11に切欠き状に設けられる。第2開口部12Bは、空間部141を形成している側面141aおよび底面141bのうち、底面141bに設けられる。なお、空間部141を形成している側面141aおよび底面141bは、タンク本体11の上面を閉塞するカバー機能を有する。
第1開口部12Aおよび第2開口部12Bは、いずれか一方(図示の例では、第1開口部12A)がタンク本体11の左側に寄せて配置され、他方(図示の例では、第2開口部12B)がタンク本体11の右側に寄せて配置される。このように、第1開口部12Aおよび第2開口部12Bは、タンク本体11の左右に設けられる。なお、第1開口部12Aおよび第2開口部12Bのさらに詳細な構成については、図4Aおよび図4Bを用いて後述する。
導水管13は、タンク本体11に供給する洗浄水の給水源の位置に応じて、第1開口部12Aおよび第2開口部12Bのいずれか一方に取り付けられる。導水管13は、たとえば、給水源が左側にある場合には第1開口部12Aに取り付けられ、給水源が右側にある場合には第2開口部12Bに取り付けられる。
また、導水管13は、上記したように、タンク本体11の上方に配置された給水源から供給される洗浄水を、タンク本体11の側部からタンク本体11の内部へ導入する。なお、導水管13のさらに詳細な構成については、図4Aおよび図4Bを用いて後述する。
また、洗浄水タンク装置10は、固定部材20をさらに備える。固定部材20は、導水管13が第1開口部12Aに取り付けられる場合、導水管13を固定した状態で第1開口部12Aに取り付けられる。言い換えると、固定部材20は、第1開口部12Aと導水管13との間に介在して、第1開口部12Aにおいて導水管13を固定する。なお、固定部材20のさらに詳細な構成については、図5Aおよび図5Bを用いて後述する。
また、図3に示すように、洗浄水タンク装置10は、操作部14と、給水部15と、排水部(図示省略)とを備える。操作部14は、操作レバーハンドル142、排水弁駆動装置143、支持部材144を備える。操作レバーハンドル(以下、「操作レバー」という)142は、タンク本体11の外側部(図示の例では、右外側部)に設けられる。操作レバー142は、回動軸142aまわりに、Y軸の正方向または負方向へと回動する。
また、操作レバー142は、回動軸142aを介して、空間部141に配置された排水弁駆動装置143に連動可能に連結される。また、排水弁駆動装置143は、操作レバー142を所定の洗浄モード(大洗浄、小洗浄)を実行させる方向に回動操作することで、操作レバー142に連動する。そして、排水弁駆動装置143は、操作レバー142の操作に連動することで、排水部の排水弁(図示省略)を引き上げる。
なお、排水弁駆動装置143には、たとえば、ワイヤによって排水弁を駆動するワイヤ装置がある。図示しないが、ワイヤ装置では、複数のギヤの連動によって、排水弁に接続されたワイヤを進退させて排水弁を開閉駆動する。また、排水弁駆動装置143としては、ワイヤ装置の他、たとえば、スピンドルに玉鎖などの紐体が接続されたものがある。
支持部材144は、一対の腕部145,145によってタンク本体11の端縁部11aに固定され、平面視において、タンク本体11の中央部に位置するように設けられる。支持部材144は、タンク本体11の内部側から操作レバー142および排水弁駆動装置143を支持する。
給水部15は、給水源としての後述する手洗い器4(図7参照)の排水による給水とは別系統の給水系であり、給水装置151を備える。給水装置151は、給水タンクと、給水フロート(いずれも、図示省略)とを備える。また、給水装置151の給水口(図示省略)には、手洗い器4へ水を供給するために、タンク本体11の上方において側方へ延伸する給水管41から分岐した給水分岐管152が接続される。
図示しないが、給水装置151の上部には、給水弁が設けられる。給水弁は、たとえば、ダイアフラム式であり、洗浄水の給水と止水とを切り換える。給水タンクは、たとえば、略矩形の容器である。給水フロートは、給水タンク内に配置され、給水タンク内の水位に応じて上下動する。そして、給水装置151は、給水フロートの上下動によって給水弁を開閉する。
また、図示しないが、排水部は、支持部材144の下方に配置される。排水部は、排水装置などを備える。排水装置は、排水弁を備える。なお、タンク本体11の底面には、便器本体2(図7参照)の導水路へ連通し、洗浄水を導水路へ供給する排水口が設けられる。排水装置では、排水弁の駆動によって排水口を開閉する。
なお、タンク本体11は、操作部14、給水部15および排水部の他、オーバーフロー管(図示省略)を備える。図示しないが、オーバーフロー管は、円筒状であり、タンク本体11の内部に直立して設けられる。また、オーバーフロー管は、排水口へ連通する流路となり、タンク本体11の洗浄水が最大水位WLMAX(図6参照)を超えた場合などに、上端開口から管内に流入してきた洗浄水を排水口へ送り込む。かかるオーバーフロー管は、タンク本体11から洗浄水が溢れることを防止する。
次に、図4A、図4Bを参照して、第1開口部12A、第2開口部12Bおよび導水管13の詳細について説明する。図4Aに示すように、第1開口部12Aは、導水管13を介して、タンク本体11に設けられてタンク本体11の内部へ洗浄水を導入する導入口(第1導入口21)に連通する。すなわち、第1開口部12Aに導水管13が取り付けられることで、第1開口部12Aを、タンク本体11の内部へ洗浄水を導入する「導入部」と言い換えてもよい。
また、第1導入口21は、洗浄水を導入するための穴であり、第1導入口21には、固定部材20の円筒状の挿入部202(図5A参照)が挿入される。さらに、挿入部202には、導水管13の後述する先端部が挿入される。導水管13に流入してきた洗浄水は、第1導入口21を通過して、導水管13の先端部から流出する。
図4Bに示すように、第2開口部12Bは、タンク本体11の空間部141を形成している底面141b(図2参照)に設けられた導入口(第2導入口22)を囲むように円筒状に形成される。また、第2導入口22は、上記した第1導入口21と同様、洗浄水を導入するための穴である。すなわち、第2開口部12Bに導水管13が取り付けられることで、第2開口部12Bを、洗浄水をタンク本体11の内部へ導入する「導入部」と言い換えてもよい。
また、図4Aおよび図4Bに示すように、導水管13は、第1開口部12Aおよび第2開口部12Bのいずれか一方に上方から取り付けられる。導水管13は、給水源とタンク本体11との間を接続して、上記したように、給水源から供給される洗浄水をタンク本体11の内部へ導入する。
導水管13は、鉤状に屈曲形成され、流入口131と、流出口132とを備える。流入口131は、洗浄水が導水管13内に流入する入口となり、導水管13の基端部に設けられる。また、流出口132は、洗浄水が導水管13から流出する出口となり、導水管13の先端部に設けられる。
また、導水管13は、基端部に、山折り部と谷折り部とが繰り返されて形成された蛇腹部133が設けられる。かかる蛇腹部133が設けられることで、基端部の屈曲や伸縮が可能となり、給水源との間を接続する管の取り回しが容易となる。これにより、施工性が向上する。導水管13は、たとえば、一体成形された樹脂製であることが好ましい。
ここで、図3に戻り、導水管13は、第1開口部12Aに取り付らけれた状態では、平面視において、中心線L1がタンク本体11のY軸と平行な中心線L0に対して外側へ向けて所定の傾斜角度αを有する。たとえば、図示の例では、導水管13が第1開口部12Aに取り付けられる場合は給水源が左側にある場合であり、このように、導水管13が外側(左側)へ傾斜していることで、給水源との間を接続する管の取り回しが容易となる。これにより、施工性が向上する。なお、傾斜角度αは、45°程度が好ましい。
また、導水管13は、第2開口部12Bに取り付けられた状態でも、平面視において、中心線がタンク本体11のY軸と平行な中心線L0に対して外側へ向けて所定の傾斜角度を有する。たとえば、図示の例では、導水管13が第2開口部12Bに取り付けられる場合は給水源が右側にある場合であり、導水管13が外側(右側)へ傾斜していることで、給水源との間を接続する管の取り回しが容易となる。これにより、施工性が向上する。
次に、図5A、図5Bを参照して固定部材20の詳細について説明する。図5Aに示すように、固定部材20は、上記した挿入部202の他、基部201と、壁部203と、固定部204(図4A参照)とを備える。基部201は、平板状に形成されており、一端部に第1導入口21に連通する穴部201aを有する。また、基部201は、他端部に後述する固定部204が取り付けられる取付部201bを有する。
挿入部202は、基部201の下方に突出して設けられる。挿入部202は、上記したように、円筒状に形成されており、基部201の穴部201aに連通する。また、挿入部202は、下端部に基部201側へ向けて開口する排出穴202aを有する。壁部203は、基部201の端縁部に設けられるとともに、基部201を囲むように設けられる。壁部203は、タンク本体11の上面の端縁部11aに設けられた切欠きである第1開口部12Aに挿入される挿入部となる。
固定部204(図4A参照)は、基部201の他端部に設けられる。固定部204は、導水管13を基部201に固定するものである。かかる固定部204としては、たとえば、ケーブルクリップがある。固定部204がケーブルクリップの場合、導水管13の基端部を挟み込むことで、導水管13を基部201に固定するとともに、導水管13の左右方向の回転を防止する。なお、固定部204は、第2開口部12B付近にも設けられ、第2開口部12Bに取り付けられた導水管13を固定するとともに、導水管13の左右方向の回転を防止する。
なお、固定部材20は、第1開口部12Aに上方から取り付けられ、図5Bに示すように、取り付けられた状態において、基部201がタンク本体11の外側へ向けて傾いている。これにより、導水管13を、所定の傾斜角度α(図3参照)を有して取り付けることができる。
次に、図6を参照して、タンク本体11に取り付けられた固定部材20および導水管13の配置について説明する。図6に示すように、導水管13をタンク本体11の第1開口部12Aに取り付けた状態において、固定部材20に固定された導水管13は、流入口131が側方を向き、流出口132が下方を向くように配置される。
このように、導水管13が、流入口131が側方を向き、かつ、流出口132が下方を向くように配置されることで、タンク本体11の側方から流入する洗浄水W1が、タンク本体11の内部においては下方へ向きを変えて流出する。また、導水管13から流出する洗浄水W2は、挿入部202の排出穴202aからタンク本体11の内部へ排出される。
導水管13から流出した洗浄水W2は、排出穴202aから排出されるときに、排出穴202aに沿って基部201側へ向きを変えて排出される。すなわち、洗浄水W2は、タンク本体11の内壁側へ向けて排出される。このため、洗浄水W2が排水弁から離れて排出されるようになり、排水弁に排出時の水圧が加わることで排水弁の動作が不安定になるのを防止することができる。
そして、上記した実施形態に係る洗浄水タンク装置10によれば、タンク本体11の側部に導水管13があることで、高さを抑えることができる。また、タンク本体11の側部に導水管13があるため、上方から供給される洗浄水の落差が大きくなり、洗浄水に十分な水勢を付与することができる。これにより、導水管13内の残水を減らすことができる。また、導水管13からタンク本体11に貯留される洗浄水の最大水位WLMAXの水面までの高さが抑えられ、洗浄水の水はねを防止することができる。この結果、節水性、衛生性が向上する。
また、タンク本体11の側方から流入された洗浄水が下方へ流出され、導水管13の流出口132からタンク本体11に貯留される洗浄水の水面(たとえば、最大水位WLMAXの水面)までの高さが抑えられ、流出口132から流出した洗浄水の水はねを防止することができる。この結果、衛生性が向上する。
また、第1開口部12Aが切欠きであるため、第1開口部12Aに対して導水管13を上方から取り付けることができる。この結果、導水管13の組み付けが容易となり、施工性が向上する。
また、導水管13が固定部材20に固定された状態で切欠きである第1開口部12Aに取り付けられることで、第1開口部12Aに対して固定部材20を上方から取り付けることができ、導水管13の組み付けが容易となり、施工性が向上する。また、導水管13が固定部材20に固定されるため、導水管13を安定させることができる。
また、タンク本体11が平面視において楕円形状であり、タンク本体11の側周面が曲面となるため、導水管13に接続される管をタンク本体11の側周面に沿わせることで、導水管13に接続される管の長さを短くすることができる。この結果、コストを抑えることができる。また、導水管13に接続される管の取り回しが容易となり、施工性が向上する。
なお、上記した実施形態に係る洗浄水タンク装置10では、第1開口部12Aを切欠き、第2開口部12Bを穴としているが、第1開口部12Aおよび第2開口部12Bの双方を切欠きとして、左右対称に構成してもよい。この場合、固定部材20も兼用可能となり、導水管13を安定させることができるうえ、コストを抑えることができる。
また、上記した実施形態に係る洗浄水タンク装置10では、第1開口部12Aおよび第2開口部12Bのいずれかに導水管13を取り付けるが、この場合、固定部204も兼用することで、導水管13を安定させるためのコストを抑えることができる。
また、上記した実施形態に係る洗浄水タンク装置10では、タンク本体11および蓋111を樹脂製としているが、これに限定されず、たとえば、陶器製であってもよい。
<水洗大便器>
次に、図7〜図9Bを参照して実施形態に係る水洗大便器1について説明する。図7は、実施形態に係る水洗大便器1の正断面図である。図8Aは、キャビネット5上部の正断面図である。図8Bは、比較例のキャビネット5C上部の正断面図である。図9Aは、手洗い器4および第1開口部12Aの接続状態を示す平断面図である。図9Bは、手洗い器4および第2開口部12Bの接続状態を示す平断面図である。
図7に示すように、実施形態に係る水洗大便器1は、便器本体2と、上記した洗浄水タンク装置10とを備える。便器本体2は、図示の例では、トイレ室の床面Fに設置される。なお、便器本体2は、床置き式に限らず、壁掛け式であってもよい。
図示しないが、便器本体2は、汚物を受けるボウル部と、洗浄水タンク装置10から供給される洗浄水をボウル部へ導く導水路と、ボウル部の下部に入口が接続され、ボウル部内の汚物を排水管路3へ排出するトラップ管路とを備える。なお、便器本体2は、たとえば、陶器製である。
また、ボウル部は、上縁部において内側にオーバーハングしたリム部に設けられ、導水路から供給される洗浄水を吐水する第1吐水口と、ボウル部内の溜水面の上方位置に設けられ、導水路を流れる洗浄水を吐水する第2吐水口とを備える。
トラップ管路は、管路入口から上方へ延びる上昇路部分と、上昇路部分の末端から下方へ延伸して、トイレ室の床下に配管された排水管路3に接続される下降路部分とを備える。なお、ボウル部からトラップ管路の上昇路部分にかけては、水封状態を形成するための洗浄水が貯水される。なお、貯水された洗浄水を「溜水」といい、溜水の水面が溜水面である。
水洗大便器1は、サイホン作用を利用してボウル部内の汚物を引き込んでトラップ管路から排出する、いわゆるサイホン式である。また、水洗大便器1では、第1吐水口から吐水された洗浄水が旋回しながら下降してボウル部を洗浄する。また、水洗大便器1では、第2吐水口から吐水された洗浄水が水流を発生させる。
なお、水洗大便器1は、サイホン式に限定されず、たとえば、ボウル部内の洗浄水の落差による流水作用で汚物を押し流す、いわゆる洗い落し式でもよいし、その他の形式でもよい。
また、水洗大便器1は、手洗い器4が洗浄水タンク装置10の上方、かつ、側方に配置されたタイプである。手洗い器4と洗浄水タンク装置10との間は、手洗い器4の排水管42(図9A、図9B参照)によって接続される。詳細には排水管42は、上記した導水管13に接続される。すなわち、手洗い器4からの排水が洗浄水タンク装置10のタンク本体11に供給され、水洗大便器1の洗浄水となる。
手洗い器4は、手洗いボウル部43と、手洗い吐水部44とを備える。手洗いボウル部43は、手洗い吐水部44から吐出される水を受ける。手洗いボウル部43の底部には、排水口(図示省略)が設けられる。手洗い吐水部44は、手洗いボウル部43から上方へ突出して設けられる。
手洗い器4には、洗浄水タンク装置10に供給される洗浄水の一部が、給水管41(図2、図3参照)を流れて手洗い吐水部44へ供給される。これにより、給水部15によってタンク本体11に洗浄水が供給される場合に、供給される洗浄水の一部が手洗い吐水部44から吐出される。
また、上記した水洗大便器1では、洗浄水タンク装置10がキャビネット5に収納されている。そして、キャビネット5の上面には手洗い器4が配置される。キャビネット5は、たとえば、トイレ室の壁面に沿って設けられる。図7に示すように、キャビネット5は、キャビネット本体51と、一対の仕切り板52L,52Rと、背板53(図9A、図9B参照)とを備える。
キャビネット本体51は、前板511(図9A,図9B参照)と、一対の扉板512L,512Rと、天板513とを備える。前板511は、洗浄水タンク装置10の前面に設けられる。一対の扉板512L,512Rは、前板511に対してヒンジを介して開閉可能に連結される。天板513は、キャビネット5の上面を形成しており、天板513の上面には手洗い器4が設置される。
なお、キャビネット5に収納される洗浄水タンク装置10は、上記したように、タンク本体11および蓋111が樹脂製であることが好ましい。この場合、蓋111は、天板513に結露が付着することを防止するためのカバー機能を有する。
また、キャビネット5は、一対の仕切り板52L,52Rの外側に物品を収納可能な収納空間が形成される。キャビネット5では、扉板512L,512Rを開閉することで、収納空間に物品を出し入れすることができる。
図8Aに示すように、実施形態に係る水洗大便器1では、導水管13がタンク本体11の側部に取り付けられることで、蓋111とキャビネット5の天板513とを近接させることができる。このため、蓋111と天板513との間隔H1が狭くなる。図示の例では、かかる間隔H1は、たとえば、10mm程度となる。
なお、図8Bに示すように、比較例としての従来のキャビネット5C付きの水洗大便器1Cでは、導水管13Cがタンク本体11Cの上部に取り付けられることで、スペースを確保するために蓋111Cと天板513Cとを引き離す必要がある。このため、蓋111Cと天板513Cとの間隔H2が広くなる。図示の例では、かかる間隔H2は、たとえば、70mm程度となる。
次に、図9A、図9Bを参照して、手洗い器4と、第1開口部12Aおよび第2開口部12Bとのそれぞれの接続状態について説明する。なお、図9A、図9Bでは、便器本体2を省略している。
図9Aに示すように、手洗い器4が左側に位置する場合、導水管13が取り付けられる開口部12(図1参照)として、タンク本体11の左側に配置された第1開口部12Aが選択される。そして、手洗い器4の排水管42は、第1開口部12Aに取り付けられた導水管13に接続される。
この場合、上記したように、キャビネット5内において、導水管13に接続された排水管42は、タンク本体11の側周面の曲面に沿って配置される。また、第1開口部12Aに取り付けられた導水管13は、タンク本体11の左側に配置される。このため、排水管42を短くすることができるとともに、排水管42の取り回しが容易となる。
また、図9Bに示すように、手洗い器4が右側に位置する場合、導水管13が取り付けられる開口部12として、タンク本体11の右側に配置された第2開口部12Bが選択される。そして、手洗い器4の排水管42は、第2開口部12Bに取り付けられた導水管13に接続される。
この場合も、上記したように、キャビネット5内において、導水管13に接続された排水管42は、タンク本体11の側周面の曲面に沿って配置される。また、第2開口部12Bに取り付けられた導水管13は、タンク本体11の右側に配置される。このため、排水管42を短くすることができるとともに、排水管42の取り回しが容易となる。
上記した実施形態に係る水洗大便器1によれば、洗浄水タンク装置10の高さが抑えられるため、水洗大便器1の高さも抑えることができる。また、導水管13内の残水が減少するため、節水性、衛生性が向上する。また、導水管13の組み付けが容易となるため、施工性が向上する。
また、キャビネット5内において、タンク本体11の側部に取り付けられた導水管13に手洗い器4の排水管42が接続されるため、手洗い器4とタンク本体11とを近接させることができる。これにより、キャビネット5の高さを抑えることができる。
なお、上記した実施形態に係る水洗大便器1では、キャビネット5の全ての面を板材で形成しているが、たとえば、トイレ室の壁面を左右の側面または背面として利用することで、板材を少なくすることができる。
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。