JP6765273B2 - シリマリン粉砕物 - Google Patents

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Description

本発明は、シリマリン粉砕物に関する。
近年、フラボノイドやカテキン、植物性色素のようなポリフェノール化合物の機能性に着目して、これらを含有する組成物が多く開発されている。
シリマリンは、このようなポリフェノール化合物をふくむ天然抽出物のひとつであり、マリアアザミ(学名:Silybum marianum (L.) Gaerth)と呼ばれる植物の種子から抽出されたエキスである。シリマリンは、その構成成分としてフラボノリグナンに分類されるシリビン、イソシリビン、シリジアニン、シリクリスチンを含むことが知られている。
シリマリンは肝臓機能強化や老化防止に有用であり、さらには紅斑、火傷、皮膚又は粘膜のジストロフィー状態、皮膚炎等の治療における治癒を促進し、外部環境からの刺激(放射線、風、太陽等)から皮膚を保護するのに有用であることが知られている(特許文献1)。また、シリマリンの皮脂分泌抑制効果(特許文献2)、表皮透過バリア強化効果(特許文献3)、乾癬及びアトピー性皮膚炎の治療効果(特許文献4)、表皮の扁平化改善効果(特許文献5)が知られている。一方、シリマリンは圧縮成型性が悪いため、シリマリンを組成物中に10質量%以上配合した場合、打錠に際してキャッピングが頻発して、目的とする錠剤の製造効率が悪化することが知られている。このため、シリマリンを高配合した経口剤を製造する場合、組成物を造粒し、ハードカプセルに充填したカプセル剤とすることが一般的に行われている。しかしこのような造粒した組成物を錠剤の原料として使用しても、シリマリンの錠剤中の配合量を40質量%以上とすることは、キャッピング等の打錠トラブルが頻発したり、適切な錠剤物性(硬度や崩壊時間)が得られないことから、実質的に生産は困難であった。
キャッピングは錠剤成型時の打錠圧力が高くなるほど発生頻度が増す。健康食品に用いられる錠剤は飲み易さの観点から直径8〜9mmであることが多く、そのような錠剤の実生産時には打錠圧1000kgfから1500kgf程度で錠剤成型することが一般的であるが、適した打錠粉末を用いなければ、これらの打圧ではキャッピングが発生しやすいといわれている。一方、500kgf程度の低打圧であればキャッピングが発生しにくいが、得られる錠剤硬度が低くなり、製品の流通中に錠剤が破損するなどの問題が発生する。健康食品業界では、錠剤を個々に包装せずに、アルミ袋にいれて流通させることが一般的であるため、直径8〜9mmの錠剤では、経験上5kgf以上の錠剤硬度が必要となる。このような問題から、シリマリンを40質量%以上配合した錠剤は提供されていない。
特開平1−100132号公報 特開2000−169332号公報 特開2000−169328号公報 特開平5−286864号公報 特開2004−91397号公報
本発明は、シリマリンを高含有した錠剤の打錠成型を容易にするためのシリマリン及び結晶セルロースの共粉砕物およびこれを配合したシリマリン高含有錠剤を提供することを課題とする。
本発明の主な構成は、次のとおりである。
(1)シリマリンと賦形剤の共粉砕物を含有する組成物であって、シリマリンを組成物中に80質量%以上含有する組成物。
(2)賦形剤が結晶セルロースである(1)に記載の組成物。
(3)シリマリンがフラボノリグナンをシリビン換算で80質量%以上含有する(1)又は(2)に記載の組成物。
(4)粉砕物中のシリマリン微小粒子の定方向最大径が0.1〜4.0μmである(1)〜(3)のいずれかに記載の組成物。
(5)(1)〜(4)のいずれかに記載の組成物を40質量%以上含有する錠剤。
本発明により、微細構造を有するシリマリン及び結晶セルロースの共粉砕物が提供される。この共粉砕物は、通常のシリマリン粉末や粉砕物、共粉砕物、あるいは、これらを造粒して形成された顆粒よりも打錠成型に適しており、賦形剤を多く添加せずに打錠成型が可能であり、さらにキャッピングやスティッキング等の打錠トラブルを起こしにくい特性を有している。また、この粉砕物を用いた錠剤は、粉砕物中に含有される結晶セルロースを除いて、製剤化に必要な賦形剤の添加を極力低減できるため、シリマリン含量が40質量%以上という極めて高含有の錠剤となる。したがって1錠当たりの錠剤形状を極めて小型化することや1日当たりの服用目安量(錠剤粒数)を削減できるため、服用性の向上が期待される。
また、錠剤の製造に際しては、この共粉砕物を含む混合末は成型性に優れることから、打錠障害(主にキャッピング)が生じにくいとされる低打圧で成型しても、容易に硬質の錠剤が得られる。コーティングを行う場合にも、コーティング工程中に錠剤の破損が発生せず、錠剤にフィルムコーティングや糖衣コーティングを施すことが容易である。
実施例1のシリマリンとセルロースの共粉砕物の走査型電子顕微鏡撮影画像を示す。尚、図中のa及びbは、倍率がそれぞれ、100倍及び500倍の観察画像であり、c及びdは、6000倍の観察画像である。 参考例で使用したシリマリンの粉砕物の走査型電子顕微鏡撮影画像を示す。尚、図中のa及びb、cは、倍率がそれぞれ、100倍及び500倍、6000倍の観察画像である。 実施例及び参考例、比較例で使用した結晶セルロースの走査型電子顕微鏡撮影画像を示す。尚、図中のa及びb、cは、倍率がそれぞれ、100倍及び500倍、6000倍の観察画像である。 比較例4〜6で使用したシリマリンのピンミル粉砕物の走査型電子顕微鏡撮影画像を示す。尚、図中のa及びb、cは、倍率がそれぞれ、100倍及び500倍、6000倍の観察画像である。
本発明は、シリマリン及び結晶セルロースの共粉砕物であって、シリマリンを80質量%以上含有している共粉砕物に関する。本発明の共粉砕物は、シリマリン微小粒子の凝集物と結晶セルロース表面にシリマリン微小粒子が付着した複合物から構成される共粉砕物である。
シリマリン(Silymarin;CAS No.65666−07−1)は、キク科マリアアザミ(学名シリバム・マリアナムSilybum marianum Gaerth、別名オオアザミ、オオヒレアザミ、ミルクアザミ;CAS No.84604−20−6)から抽出されるフラボノリグナンの総称であり、分子式C252210で表される、シリビン(Silybin;CAS No.22888−70−6)、シリジアニン(Silydianin;CAS No.29782−68−1)、シリクリスチン(Silychristin;CAS No.33889−69−9)、イソシリビン(Isosilybin;CAS No.72581−71−6)などを含有している組成物である(天然薬物事典、奥田拓男編、廣川書店、昭和61年3月3日発行参照)。
本発明においては、シリマリンを含む植物体から抽出した抽出物に含有されるこれらのフラボノリグナンを含有している組成物を、従来技術と同様シリマリンと呼ぶ。例えば、シリマリンを含む植物体から抽出した抽出物としては、マリアアザミ抽出物がある。シリビン、イソシリビン、シリジアニン、シリクリスチンなどの成分を、本発明においてはシリマリン類と総称する。
またシリマリンは前記の通りフラボノリグナンの混合物であり、シリマリンとしての植物抽出物や植物中の含有量は、分光光度計による測定に基づいた方法(Wagner,H.,et al.,Arznein.Forsch,18,696,1968.)、薄層クロマトグラフィーによる方法(Wagner,H.,et al.,Arznein.Forsch,24,466,1974.)、高速液体クロマトグラフィーによる方法(Tittel,G.,et al.,J.Chromatogr.,135,499,1977.、Tittel,G.,et al.,J.Chromatogr.,153,227,1978.、Quercia,V.,et al.,Chromatography in Biochemistry,Medicine and Enviromental Research,Frigerio A.(Ed).,Elsevier Scientific Publishing Company,Amsterdam,1983,p1.)により測定可能である。これらの測定法の中でも、分光光度計による測定に基づいた方法の一つである2,4−ジニトロヒドラジン分析は、ドイツ薬局方(Silybum marianumの果実に関するモノグラフ)に報告されており、広く用いられている。
シリマリンをマリアアザミの果実から高純度で単離する方法として、70〜80%の純度で単離する方法や、90〜96%の純度で単離する方法(特公昭63−41396号公報)が既に報告されている。シリマリンは通常マリアアザミの種実からエタノール、酢酸エチル、アセトンなどにより抽出し、スプレードライにより乾燥粉末として得ることができ、市販されている。本発明に使用するシリマリンは、このようにして調製され、市販されているシリマリンをそのまま用いることができる。また、マリアアザミからシリビン、イソシリビン、シリジアニン、シリクリスチンなどのシリマリンの構成成分を濃縮した抽出物及び抽出物からさらに単離、精製して化合物として用いることができる。
本発明におけるシリマリンを含む植物体は、葉、茎、芽、花、木質部、木皮部などの地上部、根、塊茎などの地下部、種子、樹脂などのすべての部位が使用可能である。
本発明におけるシリマリンは、植物体自体を乾燥させた乾燥物及び植物体を、各種溶媒を用いて抽出する。例えば、水又はエタノール、メタノールなどのアルコール類、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコールなどの多価アルコール、エーテル、アセトン、酢酸エチルなどの有機溶媒を用いて抽出し、これを各種方法で溶剤を除去した後、乾燥させた粉末を本発明のシリマリンの原料として使用できる。
本発明におけるシリマリン原料の植物体は、天然乾燥、熱風乾燥、凍結乾燥させたり、醗酵させたりし、常法により抽出する。また植物抽出物は、さらに常法に従って、再抽出、濃縮、粉末化などの処理を行って粉末として得ることができる。本発明にはこれらの粉末を使用することができる。また市販されているシリマリン粉末としては、「シリマリンET」や「シリマリンETG」など(いずれもインデナ社製)を例示できる。シリマリン中には、前記のシリビンなどのシリマリン類を50質量%以上含有するものが好ましく、フラボノリグナンをシリビン換算で80質量%以上含有するものが特に好ましい。
本発明において、結晶セルロースは、繊維性植物から得られたα−セルロースを酸で部分的に解重合して精製したものであって。医薬品添加物あるいは食品添加物として使用されているものであればどのようなものでも良い。旭化成株式会社から販売されている「セオラス」やデュポン株式会社より販売されている微結晶セルロース「MCC」などが例示できる。
本発明のシリマリン及び結晶セルロースの共粉砕物は質量比で、セルロース:シリマリン=2〜20:98〜80の比率で構成される。
本発明のシリマリンの共粉砕物を、錠剤中に10〜99質量%配合できるが、好ましくは40質量%〜80質量%である。
以下本明細書では、シリマリン及び結晶セルロースの共粉砕物を以下において、説明の便宜上「シリマリンとセルロースの共粉砕物」と呼ぶ。
本発明のシリマリンとセルロースの共粉砕物は、上記した抽出乾燥物と結晶セルロースの混合物に衝撃、圧縮、せん断の力を繰り返し作用させて、シリマリン粒子を特定の大きさまで微細化すると同時に、微細化されたシリマリン粒子を凝集(複合化)させる。そしてこのようにして形成されたシリマリン共粉砕物を必要に応じて篩い分けして粒子の大きさを揃えることができる。圧縮、せん断、衝撃の繰り返しによって微小粒子を調製しながら同時に複合化する装置は、乾式複合化装置の名称で市販されており、この装置を使用することができる。乾式複合化装置としては、ホソカワミクロン株式会社製の「ノビルタNOB(製品名)」を例示することができる。ノビルタNOBは、混合容器内でローターが高速回転しながら、原料に衝撃、圧縮、せん断の力を作用させ、原料を微細化し、この微細化粒子の表面形状を加工しながら自動的に複合粒子を製造する装置である(特開2010−180099号公報参照)。
シリマリンとセルロースの共粉砕物は、シリマリン微小粒子の凝集物と結晶セルロース表面にシリマリン微小粒子が付着した複合物から構成される粉末である。共粉砕物中のシリマリン微小粒子は、粒子の定方向最大径が0.1〜4.0μmであり、それらの粒子が物理的な力で結合している。シリマリン微小粒子の凝集体を走査型電子顕微鏡で観察すると、この構造を確認することができる。
シリマリンとセルロースの共粉砕物は、上記した乾式複合化装置により調製された微小粒子径を有する凝集物(複合化物)である。これを篩い分けすることによって所望の粒径を有する共粉砕物として得ることができる。また、通常の造粒法により顆粒化して用いることもできる。打錠法による原料とするためには、粒径が10〜700μmになるように篩い分けして分級する。このようにして分級された共粉砕物は、嵩密度が0.40〜0.50g/mLであり、圧縮成型性に非常に優れた特性を有している。
シリマリンとセルロースの共粉砕物は、少量の賦形剤を添加するだけで打錠成型することができるため、シリマリンを高含有する錠剤を得ることができる。本発明のシリマリンとセルロースの共粉砕物を含む錠剤には、必要に応じてセルロースやステアリン酸カルシウムなどの賦形剤や滑沢剤、その他の有効成分(生理活性成分)を添加することもできる。あるいは市販の複合賦形剤、例えば富士化学工業株式会社製「エフメルト」を配合することもできる。エフメルトは澱粉及び結晶セルロース、リン酸カルシウムから調製された流動性の良い顆粒状の紛体であり、質量比で、澱粉:結晶セルロース:リン酸カルシウム=82:15:3の比率で構成される。主に崩壊剤の用途で使用される。
打錠は、錠剤の製造に用いるロータリー式打錠機など一般的な成型打錠装置であれば良い。なお直径8〜9mmの錠剤の場合、打錠する際の打錠圧は、1000kgf以下が望ましく、特に好ましくは500kgf以下である。なお、シリマリンとセルロースの混合粉末は、700kgf以上の打錠圧でないと成型が困難であり、生産時にキャッピング等の打錠障害が懸念される。
以下、本発明を実施例及び参考例、比較例によりさらに具体的に説明する。
<シリマリンとセルロースの共粉砕物の製造例>
<実施例>
1.シリマリンとセルロースの共粉砕物の製造
シリマリンとして市販のシリマリン原末である「シリマリンETG」(インデナ社製、フラボノリグナン65質量%含有)及び結晶セルロース末「セオラス」(旭化成株式会社製)を用いてシリマリンとセルロースの共粉砕物を調製した。
またシリマリンとセルロースの共粉砕物の製造装置としてホソカワミクロン株式会社製乾式複合化装置「ノビルタNOB−MINI」を使用した。「ノビルタNOB−MINI」は、水平円筒状の混合容器内で、ブレードを有するロータが周速40m/s以上の高速で回転して、衝撃・圧縮・せん断の力が粒子個々に均一に作用するように設計されている。回転数と運転時間の調節により、微粒子化と複合化を同時に進行させることが可能な装置である。本体ケーシングは水冷ジャケット構造になっており、高いエネルギーを加えても品温の上昇を抑制できる。この装置に「シリマリンETG」と「セオラス」の混合物20gを投入し、装置の使用マニュアルに従い、水冷ジャケット温度20℃で0.2kWの条件で2分間運転し、衝撃・圧縮・せん断を繰り返し、約19gのシリマリンとセルロースの共粉砕物を回収した。
なおシリマリン及び結晶セルロースの混合比は、実施例1、実施例2、実施例3でそれぞれ、98:2、90:10、80:20とした。
2.シリマリン/結晶セルロース共粉砕物の嵩密度
実施例1〜3の嵩密度を常法により測定した。測定結果を下記の表1に示す。
<参考例>
1.参考例の調製
参考例として上記の「シリマリンETG」をホソカワミクロン株式会社製乾式複合化装置「ノビルタNOB−MINI」を用いて粉砕処理を行った後、得られたシリマリン粉砕物及び結晶セルロース「セオラス」を物理混合したものを調製し、参考例した。なおシリマリンと結晶セルロースの混合比は質量比で、98:2とした。粉砕処理は、この装置に「シリマリンETG」20gを投入し、装置の使用マニュアルにしたがって、水冷ジャケット温度20℃で0.2kWの条件で2分間運転し、衝撃・圧縮・せん断を繰り返し、約19gのシリマリン粉砕物を回収した。
2.参考例の嵩密度
参考例の嵩密度を常法により測定した。測定結果を下記の表2に示す。
<比較例>
1.比較例の調製
比較例1〜3として上記の「シリマリンETG」、及び比較例4〜6として「シリマリンETG」を株式会社奈良機械製作所製粉砕機「スーパークリーンミル」を用いて微粉砕した後、16メッシュのふるいを用いて分級した粉末(以下、シリマリンのピンミル粉砕物と略す)、参考例として「シリマリンETG」を上記「ノビルタNOB−MINI」を用いて微粉砕した粉末をそれぞれ結晶セルロース「セオラス」と物理混合したものを調製した。なおシリマリンと結晶セルロースの混合比は、比較例1及び比較例4、比較例2及び比較例5、比較例3及び比較例6でそれぞれ、98:2、90:10、80:20とした。
2.比較例の嵩密度
比較例の嵩密度を常法により測定した。測定結果を下記の表3に示す。
<粉体特性>
1.外観
実施例1〜3のシリマリンとセルロースの共粉砕物、参考例のシリマリン粉砕物及び結晶セルロースの物理混合物、比較例1〜3のシリマリン及び結晶セルロースの物理混合物、比較例4〜6のシリマリンのピンミル粉砕物及び結晶セルロースの物理混合物の外観を観察した。それぞれ黄白色の粉末であり、実施例1〜3及び参考例、比較例4〜6は、比較例1〜3と比べて、より白みが増していた。さらに実施例1〜3及び参考例は、比較例4〜6と比べて、さらに白みが増していた。シリマリンは黄色の粉末であるが、シリマリン粒子が微細になるほど薄くなることが考えられる。このことから、実施例1〜3及び参考例は、比較例1〜6と比べて、より微細な構造を形成して、粉末の白みが増したと予想される。
2.構造評価(走査型電子顕微鏡観察)
実施例1のシリマリンとセルロースの共粉砕物、参考例で使用したシリマリンの粉砕物、実施例及び参考例、比較例で使用した結晶セルロース、比較例4〜6で使用したシリマリンのピンミル粉砕物の観察結果を図1〜4にそれぞれ示す。尚、測定は走査型電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジーズ製、S−3400)を使用した。
図1より、実施例1のシリマリンとセルロースの共粉砕物は、棒状の小片と粒子の凝集物であることが確認された。棒状の小片は、図2のシリマリンの粉砕物では確認されなかった。一方、図3の結晶セルロースでは、棒状の小片が確認されたことから、図1の棒状の小片は結晶セルロースであることがわかる。この棒状の小片及び粒子の凝集物の拡大画像(図1c及びd)より、それぞれ微細粒子が付着(凝集)している様子が確認された。似たような微細粒子は、図2cのシリマリンの粉砕物でも確認されるため、この微細粒子はシリマリンであることがわかる。
従って、実施例1のシリマリンとセルロースの共粉砕物は、シリマリン粒子の表面にシリマリン微小粒子が付着した凝集物とシリマリン微小粒子のみから成る凝集物、結晶セルロース粒子表面にシリマリン微小粒子が付着した凝集物(複合化物)から形成されていることがわかる。図2より、参考例で使用したシリマリンの粉砕物は、数百μm程度の球状粒子であることが確認された。球状粒子を拡大すると、微細粒子が付着している様子が確認された(図2c)。球状の粒子は、粒子と微細粒子の複合物であることがわかる。図4より、比較例4〜6で使用したシリマリンのピンミル粉砕物は、百μm以下の角ばった粒子であることが確認された。角ばった粒子を拡大すると、微小粒子の付着が少ない滑らかな表面をしていることがわかる(図4c)。
以上により、実施例1のシリマリンとセルロースの共粉砕物は、参考例で使用したシリマリンの粉砕物及び比較例4〜6で使用したシリマリンのピンミル粉砕物とは異なる微細構造を有していることが確認された。
3. 構造評価(画像解析)
実施例1のシリマリンとセルロースの共粉砕物に含まれるシリマリン微小粒子の粒子径を定方向最大径により評価した。定方向最大径は、走査型電子顕微鏡により得られた画像中の粒子200個について、画像解析・計測ソフトウエア(三谷商事株式会社製、Win ROOF)を使用して測定した。測定結果を下記の表4に示す。
以上により、実施例1のシリマリンとセルロースの共粉砕物は、定方向最大平均径0.9μmの微小粒子からなる凝集体であり、極めて微細な構造体を形成していた。さらに、それらのシリマリン微小粒子は、ピンミル粉砕されたシリマリン粒子よりも、極めて微細に粉砕されていることがわかる。
<シリマリン含有錠剤の製造例>
1.打錠成型性評価
実施例1〜3のシリマリンとセルロースの共粉砕物、参考例のシリマリン粉砕物及び結晶セルロースの物理混合物、比較例1〜3のシリマリン及び結晶セルロースの物理混合物、比較例4〜6のシリマリンのピンミル粉砕物及び結晶セルロースの物理混合物について、賦形剤を添加・混合後、打錠末とした。次に各打錠末を単発打錠機(岡田精工株式会社製)により、錠剤形状8mm、錠剤重量200mg、錠剤硬度7kgfの錠剤に打錠成型した。表5に、各打錠末の処方及び錠剤物性(錠剤硬度7kgfを満たす打錠圧kgf)示す。
尚、各打錠末はシリマリンの含有量が40質量%となるように賦形剤を配合した。賦形剤は、崩壊剤としてエフメルト、滑沢剤としてステアリン酸カルシウム、その他賦形剤として、結晶セルロースを使用した。また、錠剤の硬度は硬度測定機(岡田精工株式会社製)を用いて測定した。錠剤の硬度は、流通時の欠けや割れ等を考量して、7kgfとした。
処方1〜3では、錠剤硬度7kgfを満たすのに必要な打錠圧は400kgf〜450kgfであり、処方4では、錠剤硬度7kgfを満たすのに必要な打錠圧は500kgfであった。一方、処方5及び6では、いずれの打錠圧においても錠剤硬度7kgfを満たす錠剤は得られなかった。また、処方7〜10では、錠剤硬度7kgfを満たすのに必要な打錠圧は700kgf〜1000kgfであり、処方10のシリマリンのピンミル粉砕物と結晶セルロースの物理混合物を含む打錠末で、最も低い打錠圧700kgfで錠剤硬度7kgf錠剤が得られた。
この結果から処方1〜3のシリマリンとセルロースの共粉砕物を含む打錠末は、優れた打錠適性を示し、また、キャッピングの生じにくいとされる低い打錠圧での成型が可能であることがわかった。さらに、処方1〜3のシリマリンとセルロースの共粉砕物を含む打錠末は、結晶セルロースの増減にかかわらず、同程度の低い打錠圧で、目的の硬度を満たす錠剤の成型が可能であることが確認された。これは、シリマリンとセルロースの共粉砕物が圧縮成型性に極めて優れた微細構造を形成しているためであると考えられる。
2.製剤設計に基づく製造例と評価
実施例1のシリマリンとセルロースの共粉砕物に、シリマリン含量が40質量%又は80質量%になるように、賦形剤を添加・混合後、打錠末とした。次に各打錠末を単発打錠機(岡田精工株式会社製)により、錠剤形状8mm、錠剤重量200mg、錠剤硬度7kgfの錠剤に打錠成型を行い、崩壊時間を測定した。表6に、各打錠末の処方及び賦形剤、錠剤物性(錠剤硬度7kgfを満たす打錠圧kgf)示す。尚、崩壊時間は日本薬局方に従い、試験に使用した錠剤は錠剤硬度7kgfの物性のものを使用した。
表6より、処方1及び処方11の錠剤では、錠剤硬度7kgfを満たすのに必要な打錠圧は両処方で400kgfであり、錠剤の崩壊時間は、処方1で60秒、処方11で120秒であった。この結果から、シリマリンを40質量%又は80質量%配合した錠剤の製造が打錠障害の生じにくいとされる低打圧で製造可能であり、それらの錠剤は適切な錠剤物性を示した。
従って、本発明のシリマリン及びセルロースの共粉砕物を錠剤中に配合することにより、1錠あたりのシリマリン含有量を40質量%〜80質量%含むシリマリン高含有錠剤を提供することができる。

Claims (2)

  1. セルロース:シリマリンの質量比が2〜20:98〜80であるシリマリンと結晶セルロースの共粉砕物を含有する粉末組成物であって、シリマリンを80質量%以上含有する粉末組成物であり、共粉砕物中のシリマリン微小粒子の定方向最大径が0.1〜4.0μmである粉末組成物を40〜80質量%含有する錠剤
  2. シリマリンがフラボノリグナンをシリビン換算で80質量%以上含有する請求項1に記載の錠剤
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