JP6764345B2 - リチウムベース電池用の電解質添加剤としてのアルキルベンゾエート誘導体 - Google Patents

リチウムベース電池用の電解質添加剤としてのアルキルベンゾエート誘導体 Download PDF

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Description

本発明は、少なくとも1種の式(I)の化合物
Figure 0006764345
(式中、RおよびRは以下で定義する)を含有する電解質組成物、電気化学セル用の電解質組成物において過放電保護添加剤としてそれを使用する方法、およびそのような電解質組成物を含む電気化学セルに関する。
電気エネルギーの貯蔵は、依然として関心が高まっている課題である。電気エネルギーの効率的な貯蔵により、有利なときに電気エネルギーを発生させ、必要なときに使用することが可能となる。この目的には、二次電気化学セルが、再充電可能であることから適している。二次リチウム電池はエネルギー貯蔵にとって特に興味深い。なぜなら、二次リチウム電池は、リチウムの原子量が小さく、リチウムのイオン化エネルギーが大きいことにより高いエネルギー密度をもたらし、携帯電話、ラップトップコンピュータ、小型カメラなど、多くの携帯電子機器用の電源として広く使用されているからである。
リチウムイオン電池が、たとえば充電所における欠陥によって、その公称電圧を超えて充電された場合、電池は熱くなる傾向があり、これにより最悪の場合は熱暴走を招く可能性がある。リチウムイオン電池は通常、電解質組成物やアノードなどの可燃性成分を含むため、過充電された場合に発生する熱が発火を招く可能性がある。
安全上の危険に対処するための可能性の1つは、セル動作を永久に停止させる過充電保護添加剤の添加である。このような添加剤は通常、カソードで重合してガスを放出する、ビフェニルおよびシクロへキシルフェニルのような芳香族化合物である。結果として生じるポリマーにより、さらなる過充電からカソードが隔離され、一方ガスにより電流遮断デバイスが作動する(S.S.Zhang,Journal of Power Sources 2006,162 1379−1394)。EP1335445には、電池が過充電された場合に電解質内で酸化的に重合する電解質添加剤としての芳香族化合物の組合せが開示されている。しかしながら、より高い電圧でリチウムイオン電池を使用することを可能にする新規のカソード活物質の開発には、過充電保護添加剤もより高い電圧で有効であることが必要となる。
EP1335445
S.S.Zhang,Journl of Power Sources 2006,162 1379−1394
本発明の目的は、代替の過充電保護添加剤を提供し、好ましくはリチウムイオン電池の安全性、特に、その電池の過充電保護効率をより高い電圧において増大させることである。同時に、前記過電流保護添加剤を含むリチウムイオン電池は、高い電気化学性能を示すはずである。
この目的は、少なくとも1種の式(I)の化合物
Figure 0006764345
(式中、
は、C〜C10アルキルから選択され、
は、O(C〜C10アルキル)、OC(O)(C〜C10アルキル)、OC(O)O(C〜C10アルキル)、OS(O)(C〜C10アルキル)およびS(O)O(C〜C10アルキル)から選択され、
〜C10アルキルは、1個または複数個のFで置換されていてもよく、C〜C10アルキルの、Oと直接は結合していない1個または複数個のCH基は、Oで置き換えられていてもよい)
を含有する電解質組成物によって実現される。
式(I)の化合物を電解質組成物中の過充電保護添加剤として使用する方法によって、および電解質組成物を含む電気化学セルによって、問題はさらに解決される。
一般式(I)の化合物は、セルのサイクル性能への望ましくない影響がない公知の過充電保護剤であるビフェニルよりも、過充電保護の開始電圧の値がより高い。
本明細書中で使用する用語「C〜C10アルキル」は、自由原子価を1つ有する炭素数1〜10の直鎖または分岐飽和炭化水素基を意味し、たとえば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソ−ペンチル、2,2−ジメチルプロピル、n−へキシル、イソ−へキシル、2−エチルへキシル、n−ヘプチル、イソ−ヘプチル、n−オクチル、イソ−オクチル、n−ノニル、n−デシル等が挙げられる。好ましくはC〜Cアルキル基、より好ましくはC〜Cアルキル基、最も好ましくはメチル、エチルならびにn−およびイソ−プロピルである。
以下に、式(I)の化合物について詳細に説明する。
は、C〜C10アルキルから選択され、C〜C10アルキルは、1個または複数個のFで置換されていてもよく、C〜C10アルキルの、Oと直接は結合していない1個または複数個のCH基は、Oで置き換えられていてもよく、より好ましいRは、C〜Cアルキルから選択され、C〜Cアルキルは、1個または複数個のFで置換されていてもよく、C〜Cアルキルの、Oと直接は結合していない1個または複数個のCH基は、Oで置き換えられていてもよい。Rの例は、メチル、エチル、イソプロピル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、n−へキシル、トリフルオロメチル、2,2,2−トリフルオロエチルおよび2−エトキシエチルであり、好ましくは、Rはメチルである。
はO(C〜C10アルキル)、OC(O)(C〜C10アルキル)、OC(O)O(C〜C10アルキル)、OS(O)(C〜C10アルキル)およびS(O)O(C〜C10アルキル)から選択され、C〜C10アルキルは、1個または複数個のFで置換されていてもよく、C〜C10アルキルの、Oと直接は結合していない1個または複数個のCH基は、Oで置き換えられていてもよい。好ましくは、RはO(C〜Cアルキル)、OC(O)(C〜Cアルキル)、OC(O)O(C〜Cアルキル)、OS(O)(C〜Cアルキル)およびS(O)O(C〜Cアルキル)から選択され、C〜Cアルキルは、1個または複数個のFで置換されていてもよく、C〜Cアルキルの、Oと直接は結合していない1個または複数個のCH基は、Oで置き換えられていてもよい。Rの例は、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、n−ブトキシ、2−メトキシエトキシ、2−エトキシエトキシなどのアルコキシ;ホルメート、アセテート、1−プロピオネート、1−ブタノエートなどのカルボキシレート;メチルカーボネート、エチルカーボネート、n−プロピルカーボネートおよびn−ブチルカーボネートのようなカーボネート基;ならびにメチルスルホネート、エチルスルホネート、n−プロピルスルホネートおよびn−ブチルスルホネートのようなアルキルスルホネートである。
本発明の一実施形態によれば、本発明による電解質組成物は少なくとも1種の式(I)の化合物を含み、式中RはC〜C10アルキルから選択され、RはO(C〜C10アルキル)から選択され、好ましくは、RはC〜Cアルキルから選択され、RはO(C〜Cアルキル)から選択され、アルキルは、1個または複数個のFで置換されていてもよく、Oと直接は結合していないアルキルの1個または複数個のCH基は、Oで置き換えられていてもよい。一例は2−メトキシ安息香酸メチルである。
本発明の別の実施形態によれば、電解質組成物は、少なくとも1種の式(I)の化合物を含み、式中RはC〜C10アルキルから選択され、RはOC(O)(C〜C10アルキル)から選択され、好ましくは、RはC〜Cアルキルから選択され、RはOC(O)(C〜Cアルキル)から選択され、アルキルは、1個または複数個のFで置換されていてもよく、Oと直接は結合していないアルキルの1個または複数個のCH基は、Oで置き換えられていてもよい。一例はアセチルサリチル酸メチルである。
本発明の別の実施形態によれば、電解質組成物は、少なくとも1種の式(I)の化合物を含み、式中RはC〜C10アルキルから選択され、RはOC(O)O(C〜C10アルキル)から選択され、好ましくは、RはC〜Cアルキルから選択され、RはOC(O)O(C〜Cアルキル)から選択され、アルキルは、1個または複数個のFで置換されていてもよく、Oと直接は結合していないアルキルの1個または複数個のCH基は、Oで置き換えられていてもよい。
本発明のさらなる実施形態によれば、本発明による電解質組成物は、少なくとも1種の式(I)の化合物を含み、式中RはC〜C10アルキルから選択され、RはOS(O)(C〜C10アルキル)およびS(O)O(C〜C10アルキル)から選択され、好ましくは、RはC〜Cアルキルから選択され、RはOS(O)(C〜Cアルキル)およびS(O)O(C〜Cアルキル)から選択され、アルキルは、1個または複数個のFで置換されていてもよく、C〜Cアルキルの、Oと直接は結合していない1個または複数個のCH基は、Oで置き換えられていてもよい。
たとえば、本発明による電解質組成物は、アセチルサリチル酸メチルおよび2−メトキシ安息香酸メチルから選択される少なくとも1種の式(I)の化合物を含有することができる。
本発明による電解質組成物中の少なくとも1種の式(I)の化合物の濃度は通常、電解質組成物の総質量に対して0.1〜20質量%の範囲にあるが、好ましくは電解質組成物の総質量に対して1〜10質量%の範囲、より好ましくは2〜5質量%の範囲にある。
式(I)の化合物
Figure 0006764345
(式中、
はC〜C10アルキルから選択され、
はO(C〜C10アルキル)、OC(O)(C〜C10アルキル)、OC(O)O(C〜C10アルキル)、OS(O)(C〜C10アルキル)およびS(O)O(C〜C10アルキル)から選択され、
〜C10アルキルは、1個または複数個のFで置換されていてもよく、C〜C10アルキルの、Oと直接は結合していない1個または複数個のCH基は、Oで置き換えられていてもよい)は、
好ましいとして上述したような化合物を含め、電解質組成物中の過充電保護添加剤として使用することができる。したがって、本発明のさらなる目的は、上述のような式(I)の化合物の、電解質組成物における過充電保護添加剤として使用することである。それに応じて、式(I)の化合物を電解質組成物における過充電保護添加剤として使用する場合、典型的な濃度は、電解質組成物の総質量に対して0.1〜20質量%、好ましくは1〜10質量%、最も好ましくは2〜5質量%である。電気化学セルにおいて、好ましくはリチウム電池において、より好ましくはリチウムイオン電池において電解質組成物を使用する。
本発明による電解質組成物は、少なくとも1種のさらなる添加剤を含有することができる。さらなる添加剤は、SEI形成添加剤、難燃剤、追加の過充電保護添加剤、湿潤剤、HFおよび/またはHO捕捉剤、LiPF塩用安定剤、イオン救済促進剤、腐食防止剤、ゲル化剤等から選択することができる。
難燃剤の例は、シクロホスファゼン、ホスホロアミド、アルキルおよび/またはアリール三置換ホスフェート、アルキルおよび/またはアリール二または三置換ホスファイト、アルキルおよび/またはアリール二置換ホスホネート、アルキルおよび/またはアリール三置換ホスフィン、ならびにこれらのフッ素化誘導体のような有機リン化合物である。
HFおよび/またはHO捕捉剤の例は、任意にハロゲン化環式および非環式シリルアミンである。
好ましくは、本発明による電解質組成物は、少なくとも1種のSEI形成添加剤および/または少なくとも1種の追加の過充電保護添加剤を含有する。
本発明によるSEI形成添加剤は、電極上で分解して電極上に不動態層を形成する化合物であって、この不動態層により電解質および/または電極の劣化が防止される。このようにして、電池の寿命が著しく延びる。SEI形成添加剤は多くの場合、膜形成添加剤とも称される。好ましくは、SEI形成添加剤により、アノード上に不動態層が形成される。アノードは、本発明の文脈において、電池の負極として理解される。好ましくは、アノードの還元電位は、リチウム挿入黒鉛アノードなどのリチウムに対して1ボルト以下である。化合物がアノード膜形成添加剤として適格であるかどうかを判断するために、黒鉛電極と、リチウムイオン含有カソード、たとえば、リチウム−コバルト酸化物と、前記化合物少量、典型的には電解質組成物の0.1〜10質量%、好ましくは電解質組成物の0.2〜5質量%とを含有する電解質とを備える電気化学セルを製造することができる。アノードとカソードとの間に電圧を印加すると、0.5V〜2Vで電気化学セルの微分容量が記録される。前記電圧範囲において、下記サイクルのいずれでもない、または原則的に下記サイクルのいずれでもない最初のサイクル中に有意な微分容量、たとえば、1Vで−150mAh/Vが観測された場合、化合物はSEI形成添加剤と見なされる。
本発明によれば、電解質組成物は好ましくは、少なくとも1種のSEI形成添加剤を含有する。SEI形成添加剤は、当業者には公知である。より好ましくは、電解質組成物は、炭酸ビニレンや炭酸メチルビニレンなど炭酸ビニレンおよびその誘導体、モノフルオロエチレンカーボネートやcis−およびtrans−ジフルオロカーボネートなどフッ素化炭酸エチレンおよびその誘導体、プロパンスルトンおよびその誘導体、亜硫酸エチレンおよびその誘導体、オキサレート含有化合物、たとえばシュウ酸リチウム、シュウ酸ジメチルを含むオキサラトボレート、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウム、ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウム、およびビス(オキサラト)ホウ酸アンモニウム、およびテトラフルオロ(オキサラト)リン酸リチウムを含むオキサラトリン酸塩、ならびに式(II)のカチオン
Figure 0006764345
(式中、
XはCHまたはNR’であり、
はC〜Cアルキルから選択され、
は−(CH−SO−(CH−R’’から選択され、
−SO−は−O−S(O)−または−S(O)−O−、好ましくは−SO−は−O−S(O)−であり、
uは1〜8の整数であり、好ましくは、uは2、3または4であり、−(CH−アルキレン鎖の、N原子および/またはSO基と直接は結合していない1個または複数個のCH基は、Oで置き換えられていてもよく、−(CH−アルキレン鎖の隣接する2個のCH基は、C−C二重結合で置き換えられていてもよいが、好ましくは−(CH−アルキレン鎖は置換されず、uuは1〜8の整数であり、好ましくは、uは2、3または4であり、
vは1〜4の整数であり、好ましくは、vは0であり、
R’はC〜Cアルキルから選択され、
R’’は、1個または複数個のFを含有していてもよいC〜C20アルキル、C〜C20アルケニル、C〜C20アルキニル、C〜C12アリールおよびC〜C24アラルキルから選択され、アルキル、アルケニル、アルキニルおよびアラルキルの、SO基と直接は結合していない1個または複数個のCH基は、Oで置き換えられていてもよく、好ましくは、R’’は、1個または複数個のFを含有していてもよいC〜Cアルキル、C〜CアルケニルおよびC〜Cアルキニルから選択され、アルキル、アルケニル、アルキニルおよびアラルキルの、SO基と直接は結合していない1個または複数個のCH基は、Oで置き換えられていてもよく、R’’の好ましい例としては、メチル、エチル、トリフルオロメチル、ペンタフルオロメチル、n−プロピル、n−ブチル、n−へキシル、エテニル、エチニル、アリルまたはプロパ−1−イン−イルが挙げられる)と
ビスオキサラトホウ酸イオン、ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸イオン、[FB(C2m+14−z、[FyP(C2m+16−y、(C2m+1P(O)O]、[C2m+1P(O)O2−、[O−C(O)−C2m+1、[O−S(O)−C2m+1、[N(C(O)−C2m+1、[N(S(O)−C2m+1、[N(C(O)−C2m+1)(S(O)−C2m+1)]、[N(C(O)−C2m+1)(C(O)F)]、[N(S(O)−C2m+1)(S(O)F)]、[N(S(O)F)、[C(C(O)−C2m+1、[C(S(O)−C2m+1(式中、mは1〜8の整数であり、zは1〜4の整数であり、yは1〜6の整数である)から選択されるアニオンとを含有するイオン化合物から選択される少なくとも1種のSEI形成を含有する。
好ましいアニオンは、ビスオキサラトホウ酸イオン、ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸イオン、[FB(CF)]、[FB(C)]、[PF、[FP(C、[FP(C、[FP(C、[FP(C、[FP(C、[FP(C、[FP(C)]、[FP(C)]または[FP(C)]、[(CP(O)O]、[(CP(O)O]または[(CP(O)O]、[CP(O)O2−、[CP(O)O2−、[CP(O)O2−、[O−C(O)CF、[O−C(O)C、[O−C(O)C、[O−S(O)CF、[O−S(O)、[N(C(O)C、[N(C(O)(CF、[N(S(O)CF、[N(S(O)、[N(S(O)、[N(S(O)CF)(S(O))]、[N(S(O)、[N(C(O)CF)(S(O)CF)]、[N(C(O)C)(S(O)CF)]または[N(C(O)CF)(S(O)−C)]、[N(C(O)CF)(C(O)F)]、[N(C(O)C)(C(O)F)]、[N(C(O)C)(C(O)F)]、[N(S(O)CF)(S(O)F)]、[N(S(O))(S(O)F)]、[N(S(O))(S(O)F)]、[C(C(O)CF、[C(C(O)Cまたは[C(C(O)C、[C(S(O)CF、[C(S(O)ならびに[C(S(O)である。
より好ましくは、アニオンは、ビスオキサラトホウ酸イオン、ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸イオン、CFSO および[PF(Cから選択される。
本明細書中で使用する用語「C〜C20アルケニル」とは、自由原子価を1つ有する炭素数2〜20の直鎖または分岐不飽和炭化水素基を指す。不飽和とは、アルケニル基がC−C二重結合を少なくとも1個含有することを意味する。C〜Cアルケニルとしては、たとえば、エテニル、1−プロペニル、2−プロペニル、1−n−ブテニル、2−n−ブテニル、イソ−ブテニル、1−ペンテニル、1−ヘキセニル、1−ヘプテニル、1−オクテニル、1−ノネニル、1−デセニル等が挙げられる。好ましくはC〜C10アルケニル基、より好ましくはC〜Cアルケニル基、さらにより好ましくはC〜Cアルケニル基、特に、エテニルおよび1−プロペン−3−イル(アリル)である。
本明細書中で使用する用語「C〜C20アルキニル」とは、自由原子価を1つ有する炭素数2〜20の直鎖または分岐不飽和炭化水素基であって、炭化水素基がC−C三重結合を少なくとも1個含有するものを指す。C〜Cアルキニルとしては、たとえば、エチニル、1−プロピニル、2−プロピニル、1−n−ブチニル、2−n−ブチニル、イソ−ブチニル、1−ペンチニル、1−ヘキシニル、−ヘプチニル、1−オクチニル、1−ノニニル、1−デチニル等が挙げられる。好ましくはC〜C10アルキニル、より好ましくはC〜Cアルキニル、さらにより好ましくはC〜Cアルキニル、特に、エチニルおよび1−プロピン−3−イル(プロパルギル)である。
本明細書中で使用する用語「C〜C12アリール」とは、自由原子価を1つ有する6〜12員芳香族炭化水素環または縮合環を示す。C〜C12アリールの例はフェニルおよびナフチルである。好ましくはフェニルである。
本明細書中で使用する用語「C〜C24アラルキル」とは、1個または複数個のC〜Cアルキルによって置換されている6〜12員芳香族炭化水素環または縮合環を示す。C〜C24アラルキル基は合計7〜24個のC原子を含有し、自由原子価を1つ有する。この自由原子価は、芳香族環に、またはC〜Cアルキル基に位置することができ、すなわち、C〜C24アラルキル基は、アラルキル基の芳香族部分またはアルキル部分を介して結合することができる。C〜C24アラルキルの例は、メチルフェニル、ベンジル、1,2−ジメチルフェニル、1,3−ジメチルフェニル、1,4−ジメチルフェニル、エチルフェニル、2−プロピルフェニル等である。
式(II)の化合物およびそれらの製造については、WO2013/026854A1に詳細に記載されている。本発明による好ましい式(II)化合物の例は、WO2013/026854A1の12ページ21行目から15ページ13行目に開示されている。
好ましいSEI形成添加剤は、オキサラトホウ酸塩、フッ素化炭酸エチレンおよびその誘導体、炭酸ビニレンおよびその誘導体、ならびに式(II)の化合物である。より好ましくは、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウム、炭酸ビニレン、モノフルオロエチレンカーボネートおよび式(II)の化合物、特に、モノフルオロエチレンカーボネートおよび式(II)の化合物である。
好ましくは、電解質組成物は、式(III)の化合物
Figure 0006764345
(Rは、F、Cl、Br、I、C〜C12アリールおよびC〜Cアルキルから互いに独立に選択される1種または複数種の置換基によって置換されていてもよいシクロへキシルまたはC〜C12アリールであり、C〜C12アリールおよびC〜Cアルキルは、F、Cl、BrおよびIから互いに独立に選択される1種または複数種の置換基によって置換されていてもよく、
、R、R、RおよびR10は同一であっても異なっていてもよく、H、F、Cl、Br、I、C〜C12アリールおよびC〜Cアルキルから互いに独立に選択され、C〜C12アリールおよびC〜Cアルキルは、F、Cl、BrおよびIから互いに独立に選択される1種または複数種の置換基によって置換されていてもよい)
から選択される少なくとも1種の追加の過充電保護添加剤を含有する。
式(III)の化合物の例は、シクロへキシルベンゼン、ビフェニル、o−テルフェニルおよびp−テルフェニルであるが、式(III)の好ましい化合物はシクロへキシルベンゼンおよびビフェニルである。
本発明によれば、電解質組成物は通常、電解質組成物の総質量に対して一般式(III)の化合物を少なくとも0.1質量%含有する。式(III)の化合物が、電解質組成物の総質量の10質量%を超えて存在する場合、さらなる改善を認めることができない。好ましくは、一般式(III)の化合物が電解質組成物の総質量の1〜10質量%、特に、電解質組成物の総質量の1〜5質量%存在する。
さらなる添加剤として添加する化合物は、電解質組成物において、また電解質組成物を含むデバイスにおいて複数の効果を有することがある。たとえば、オキサラトホウ酸リチウムは、SEI形成を増進する添加剤として添加することができるが、導電性塩として添加することもできる。
本発明の一実施形態によれば、電解質組成物は、少なくとも1種の式(I)の化合物と、少なくとも1種のSEI形成添加剤と、少なくとも1種の式(III)の追加の過充電保護添加剤とを、すべて上述のように、または好ましいとして記載されているように含有する。
化学的に見ると、電解質組成物は、自由イオンを含み、結果として導電性である任意の組成物である。最も典型的な電解質組成物はイオン溶液であるが、溶融電解質組成物および固体電解質組成物も同様に可能である。したがって、本発明の電解質が、主に、溶解および/または溶融状態で存在している少なくとも1種の物質の存在、すなわち、イオン種の移動によって支持される導電性により、導電媒体となる。
本発明の電解質組成物は、好ましくは作動状態で液体である。より好ましくは、電解質組成物は1バールおよび25℃で液体、さらにより好ましくは、電解質組成物は1バールおよび15℃で液体、特に、電解質組成物は1バールおよび−30℃で液体、さらにより好ましくは、電解質組成物は1バールおよび−50℃で液体である。
電解質組成物は、好ましくは少なくとも1種の非プロトン性有機溶媒を、より好ましくは少なくとも2種の非プロトン性有機溶媒を含有する。一実施形態によれば、電解質組成物は最大10種の非プロトン性有機溶媒を含有することができる。
この少なくとも1種の非プロトン性有機溶媒は、好ましくは環式および非環式有機カーボネート、ジ−C〜C10アルキルエーテル、ジ−C〜C−アルキル−C〜Cアルキレンエーテルおよびポリエーテル、環式エーテル、環式および非環式アセタールおよびケタール、オルトカルボン酸エステル、カルボン酸の環式および非環式エステル、環式および非環式スルホン、ならびに環式および非環式のニトリルおよびジニトリルから選択される。
より好ましくは、この少なくとも1種の非プロトン性有機溶媒は、環式および非環式カーボネート、ジ−C〜C10アルキルエーテル、ジ−C〜C−アルキル−C〜Cアルキレンエーテルおよびポリエーテル、環式および非環式アセタールおよびケタール、ならびにカルボン酸の環式および非環式エステルから選択され、さらにより好ましくは、電解質組成物は、環式および非環式カーボネートから選択される少なくとも1種の非プロトン性有機溶媒を含有し、最も好ましくは、電解質組成物は、環式および非環式カーボネートから選択される少なくとも2種の非プロトン性有機溶媒を含有し、特に好ましくは、電解質組成物は、環式カーボネートから選択される少なくとも1種の非プロトン性溶媒と、非環式カーボネートから選択される少なくとも1種の非プロトン性有機溶媒とを含有する。
非プロトン性有機溶媒は、部分的にハロゲン化してもよく、たとえば、部分的にフッ素化、部分的に塩素化、または部分的に臭素化してもよく、好ましくは部分的にフッ素化することができる。「部分的にハロゲン化する」とは、それぞれの分子の1個または複数個のHがハロゲン原子によって、たとえば、F、ClまたはBrによって置換されていることを意味する。Fによる置換が優先される。少なくとも1種の溶媒は、部分的にハロゲン化されている非プロトン性有機溶媒および非ハロゲン化非プロトン性有機溶媒から選択することができ、すなわち、電解質組成物は、部分的にハロゲン化されている非プロトン性有機溶媒および非ハロゲン化非プロトン性有機溶媒の混合物を含有することができる。
環式カーボネートの例は炭酸エチレン(EC)、炭酸プロピレン(PC)および炭酸ブチレン(BC)であるが、アルキレン鎖の1個または複数個のHが、Fおよび/またはC〜Cアルキル基によって置換されていてもよく、たとえば、4−メチルエチレンカーボネート、モノフルオロエチレンカーボネート(FEC)ならびにcis−およびtrans−ジフルオロエチレンカーボネートとなる。好ましい環式カーボネートは炭酸エチレン、モノフルオロエチレンカーボネートおよび炭酸プロピレン、特に、炭酸エチレンである。
非環式カーボネートの例はジ−C〜C10−アルキルカーボネートであるが、各アルキル基は互いに独立に選択され、好ましくはジ−C〜C−アルキルカーボネートである。例が、たとえば、炭酸ジエチル(DEC)、炭酸エチルメチル(EMC)、炭酸ジメチル(DMC)および炭酸メチルプロピルである。好ましい非環式カーボネートは、炭酸ジエチル(DEC)、炭酸エチルメチル(EMC)、炭酸ジメチル(DMC)である。
本発明の一実施形態において、電解質組成物は、非環式有機カーボネートと環式有機カーボネートとの混合物を、質量比1:10〜10:1、好ましくは3:1〜1:1で含有する。
本発明によれば、ジ−C〜C10−アルキルエーテルの各アルキル基は、他とは独立に選択される。ジ−C〜C10−アルキルエーテルの例は、ジメチルエーテル、エチルメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテルおよびジ−n−ブチルエーテルである。
ジ−C〜C−アルキル−C〜C−アルキレンエーテルの例は、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、ジグライム(ジエチレングリコールジメチルエーテル)、トリグライム(トリエチレングリコールジメチルエーテル)、テトラグライム(テトラエチレングリコールジメチルエーテル)およびジエチレングリコールジエチルエーテルである。
適切なポリエーテルの例は、ポリアルキレングリコール、好ましくはポリ−C〜C−アルキレングリコール、とりわけポリエチレングリコールである。ポリエチレングリコールは、1種または複数種のC〜C−アルキレングリコールを、共重合の形で最大20mol%含むことができる。ポリアルキレングリコールは、好ましくはジメチルまたはジエチルで末端が覆われているポリアルキレングリコールである。適切なポリアルキレングリコールの、とりわけ適切なポリエチレングリコールの分子量Mは、少なくとも400g/molでよい。適切なポリアルキレングリコールの、とりわけ適切なポリエチレングリコールの分子量Mは、最大で5000000g/mol、好ましくは最大2000000g/molでよい。
環式エーテルの例は、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、および2−メチルテトラヒドロフランのようなそれらの誘導体である。
非環式アセタールの例は、1,1−ジメトキシメタンおよび1,1−ジエトキシメタンである。環式アセタールの例は、1,3−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、およびメチルジオキソランなどのそれらの誘導体である。
非環式オルトカルボン酸エステルの例は、トリ−C〜Cアルコキシメタン、特にトリメトキシメタンおよびトリエトキシメタンである。適切な環式オルトカルボン酸エステルの例は、1,4−ジメチル−3,5,8−トリオキサビシクロ[2.2.2]オクタンおよび4−エチル−1−メチル−3,5,8−トリオキサビシクロ[2.2.2]オクタンである。
カルボン酸の非環式エステルの例は、ギ酸エチルおよびギ酸メチル、酢酸エチルおよび酢酸メチル、プロピオン酸エチルおよびプロピオン酸メチル、ブタン酸エチルおよびブタン酸メチル、ならびにプロパン二酸1,3−ジメチルのようなジカルボン酸のエステルである。カルボン酸の環式エステル(ラクトン)の一例は、γ−ブチロラクトンである。
環式および非環式スルホンの例は、エチルメチルスルホン、ジメチルスルホンおよびテトラヒドロチオフェン−S,S−ジオキシド(スルホラン)である。
環式および非環式ニトリルおよびジニトリルの例は、アジポニトリル、アセトニトリル、プロピオニトリルおよびブチロニトリルである。
本発明の電解質組成物の含水量は、好ましくは電解質組成物の質量に対して100ppm未満、より好ましくは50ppm未満、最も好ましくは30ppm未満である。含水量は、たとえば、DIN51777またはISO760:1978に詳細に記載されているカールフィッシャーによる滴定によって決定することができる。
本発明の電解質組成物のHF含有量は、好ましくは電解質組成物の質量に対して60ppm未満、より好ましくは40ppm未満、最も好ましくは20ppm未満である。HF含有量は、電位差測定またはポテンシオグラフ滴定法による滴定によって決定することができる。
本発明の電解質組成物は、少なくとも1種の導電性塩を含有する。電解質組成物は、電気化学セルにおいて起こる電気化学反応に関与するイオンを移動させる媒体として機能する。電解質内に存在する(1種または複数種の)導電性塩は通常、(1種または複数種の)非プロトン性有機溶媒中で溶媒和される。好ましくは、導電性塩はリチウム塩である。導電性塩は、好ましくは以下からなる群から選択される。
・xが0〜6の範囲の整数であり、yが1〜20の範囲の整数であるLi[F6−xP(C2y+1]、
各Rが、F、Cl、Br、I、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、OC〜Cアルキル、OC〜CアルケニルおよびOC〜Cアルキニルから互いに独立に選択され、アルキル、アルケニルおよびアルキニルは1個または複数個のORIIIによって置換されていてもよく、RIIIはC〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニルから選択され、
(ORIIO)が、1,2−もしくは1,3−ジオール、1,2−もしくは1,3−ジカルボン酸または1,2−もしくは1,3−ヒドロキシカルボン酸から得られる二価の基であり、この二価の基が、両方の酸素原子を介してB原子と5または6員環を形成する、Li[B(R]、Li[B(R(ORIIO)]およびLi[B(ORIIO)]、
・LiClO、LiAsF、LiCFSO、LiSiF、LiSbF、LiAlCl、Li(N(SOF))、テトラフルオロ(オキサラト)リン酸リチウム、シュウ酸リチウム、
・mおよびnが以下のように定義される一般式Li[Z(C2n+1SO]の塩。
Zが酸素および硫黄から選択される場合、m=1、
Zが窒素およびリンから選択される場合、m=2、
Zが炭素およびケイ素から選択される場合、m=3、
nは1〜20の範囲の整数である。
二価の基(ORIIO)が得られる適切な1,2−および1,3−ジオールは、脂肪族であっても芳香族であってもよく、たとえば、1個または複数のFによって、かつ/あるいは少なくとも1種の直鎖または分岐非フッ素化、部分フッ素化、または完全フッ素化C〜Cアルキル基によって任意に置換されている1,2−ジヒドロキシベンゼン、プロパン−1,2−ジオール、ブタン−1,2−ジオール、プロパン−1,3−ジオール、ブタン−1,3−ジオール、シクロへキシル−trans−1,2−ジオールおよびナフタレン−2,3−ジオールから選択することができる。そのような1,2−または1,3−ジオールについての一例は、1,1,2,2−テトラ(トリフルオロメチル)−1,2−エタンジオールである。
「完全フッ素化C〜Cアルキル基」とは、アルキル基のH原子がすべてFによって置換されていることを意味する。
二価の基(ORIIO)が得られる適切な1,2−または1,3−ジカルボン酸は、脂肪族であっても芳香族であってもよく、たとえば、シュウ酸、マロン酸(プロパン−1,3−ジカルボン酸)、フタル酸またはイソフタル酸でよく、好ましくはシュウ酸である。1,2−または1,3−ジカルボン酸は、1個または複数のFによって、かつ/あるいは少なくとも1種の直鎖または分岐非フッ素化、部分フッ素化、または完全フッ素化C〜Cアルキル基によって任意に置換されている。
二価の基(ORIIO)が得られる適切な1,2−または1,3−ヒドロキシカルボン酸は、脂肪族であっても芳香族であってもよく、たとえば、1個または複数のFによって、かつ/あるいは少なくとも1種の直鎖または分岐非フッ素化、部分フッ素化、または完全フッ素化C〜Cアルキル基によって任意に置換されているサリチル酸、テトラヒドロサリチル酸、リンゴ酸および2−ヒドロキシ酢酸でよい。そのような1,2−または1,3−ヒドロキシカルボン酸についての例は、2,2−ビス(トリフルオロメチル)−2−ヒドロキシ−酢酸である。
Li[B(R]、Li[B(R(ORIIO)]およびLi[B(ORIIO)]の例は、LiBF、ジフルオロオキサラトホウ酸リチウムおよびジオキサラトホウ酸リチウムである。
好ましくは、少なくとも1種の導電性塩はLiPF、LiBFおよびLiPF(CFCFから選択され、より好ましくは、導電性塩は、LiPFおよびLiBFから選択され、最も好ましい導電性塩はLiPFである。
少なくとも1種の導電性塩は通常、少なくとも0.1m/lの最小濃度で存在し、好ましくは少なくとも1種の導電性塩の濃度が、電解質組成物全体に対して0.5〜2mol/lである。
本発明の電解質組成物中に溶媒が存在する場合、ポリマーが含まれていることもあるが、このポリマーは、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体、ナフィオン(Nafion)、ポリエチレンオキシド、メタクリル酸ポリメチル、ポリアクリロニトリル、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリブタジエン、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリアニリン、ポリピロールおよび/またはポリチオフェンである。これらのポリマーは、液体電解質を擬固体または固体電解質に変換し、したがってとりわけエージング中の溶媒残留を改善するために電解質に添加される。
本発明の電解質組成物は、電解質の生成の分野における当業者に公知である方法によって、一般に、対応する溶媒混合物中に導電性塩を溶解させ、上述のように本発明による式(I)の化合物と、任意に追加の添加剤とを添加することによって製造する。
本発明はさらに、上述のように、または好ましいとして記載されているように電解質組成物を備える電気化学セルを提供する。この電気化学セルは、リチウム電池であっても、二重層コンデンサであっても、またはリチウムイオンコンデンサであってもよい。
このような電気化学および電気光学デバイスの一般的な構成は、たとえば、Linden’s Handbook of Batteries(ISBN978−0−07−162421−3)における電池についてなど、当業者にとって公知であってなじみ深い。
好ましくは、電気化学または電気光学デバイスはリチウム電池である。本明細書中で使用する用語「リチウム電池」は電気化学セルを意味し、アノードはリチウム金属を、またはセルの充電/放電中のある時点ではリチウムイオンを含む。アノードは、リチウム金属もしくはリチウム金属合金、リチウムを吸蔵および放出する材料、あるいは他のリチウム含有化合物を含むことができ、たとえば、リチウム電池は、リチウムイオン電池であっても、リチウム/硫黄電池であっても、またはリチウム/セレン硫黄電池であってよい。
特に好ましくは、電気化学デバイスはリチウムイオン電池、すばわち、リチウムイオンを可逆的に吸蔵および放出することができるカソード活物質を含むカソードと、リチウムイオンを可逆的に吸蔵および放出することができるアノード活物質を含むアノードとを備える二次リチウムイオン電気化学セルである。用語「二次リチウムイオン電気化学セル」および「(二次)リチウムイオン電池」は、本発明において区別なく使用する。
少なくとも1種のカソード活物質は、好ましくは、リチウム化遷移金属リン酸塩およびリチウムイオン挿入金属酸化物から選択されるリチウムイオンを吸蔵および放出することができる材料を含む。
リチウム化遷移金属リン酸塩の例はLiFePOおよびLiCoPOであり、リチウムイオン挿入金属酸化物の例はLiCoO、LiNiO、一般式Li(1+z)[NiCoMn(1−z)2+eの層構造を有する混合遷移金属酸化物(式中、zは0〜0.3、a、bおよびcは同じであっても異なっていてもよく、独立に0〜0.8であり、a+b+c=1および−0.1≦e≦0.1である)、ならびにLiMnOおよび一般式Li1+t2−t4−dのスピネル(式中、d=0〜0.4、tは0〜0.4、MはMnと、CoおよびNiからなる群から選択される少なくとも1種のさらなる金属とである)のようなマンガン含有スピネル、ならびにLi(1+g)[NiCoAl(1−g)2+kである。g、h、i、jおよびkについての典型的な値は、g=0、h=0.8〜0.85、i=0.15〜0.20、j=0.02〜0.03およびk=0である。
カソードは、導電性カーボンのような導電性材料と、バインダーのような通常成分とをさらに含むことができる。導電性材料およびバインダーとして適切である化合物は、当業者に公知である。たとえば、カソードは、たとえば、黒鉛、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェン、または上記物質のうち少なくとも2種の混合物から選択される導電性多形のカーボンを含むことができる。加えて、カソードは、1種または複数種のバインダー、たとえば、ポリエチレン、ポリアクリロニトリル、ポリブタジエン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリビニルアルコール、ポリイソプレン、ならびにエチレン、プロピレン、スチレン、(メタ)アクリロニトリルおよび1,3−ブタジエンから選択される少なくとも2種のコモノマーの共重合体、とりわけ、スチレン−ブタジエン共重合体、ならびにポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体、テトラフルオロエチレンと、フッ化ビニリデンと、ポリアクリロニトリルとの共重合体のようなハロゲン化(コ)ポリマーのような1種または複数種の有機ポリマーを含むことができる。
本発明のリチウム電池内に含まれるアノードは、リチウムイオンを可逆的に吸蔵および放出することができる、あるいはリチウムと合金を形成することが可能であるアノード活物質を含む。特に、リチウムイオンを可逆的に吸蔵および放出することができる炭素質材料を、アノード活物質として使用することができる。適切な炭素質材料が、黒鉛材料、特に、天然黒鉛、黒鉛化コークス、黒鉛化MCMB、黒鉛化MPCFなどの結晶性炭素、コークス、1500℃未満で焼成されたメソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、メソフェーズピッチをベースとする炭素繊維(MPCF)などの非晶質炭素、炭素複合材、燃焼された有機ポリマー、炭素繊維などの硬質炭素および炭素アノード活物質(熱分解された炭素、コークス、黒鉛)である。
さらなるアノード活物質が、リチウム金属、またはリチウムと合金を形成することが可能である元素を含有する材料である。リチウムと合金を形成することが可能である元素を含有する材料の非限定的な例として、金属、半金属またはその合金が挙げられる。本明細書中で使用する用語「合金」は、2種以上の金属の合金も、1種または複数種の金属の、1種または複数種の半金属との合金も共に指すことを理解されたい。合金が全体として金属特性を有する場合には、非金属元素を含有することもできる。この合金の構造では、固溶体、共晶(共晶混合物)、金属間化合物またはこれらのうち2種以上が共存する。このような金属または半金属元素の例として、チタン(Ti)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、アルミニウム、インジウム(In)、亜鉛(Zn)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)ガリウム(Ga)、ゲルマニウム(Ge)、ヒ素(As)、銀(Ag)、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)およびケイ素(Si)が挙げられるが、これらに限定されない。長周期型元素周期表における第4族または第14族の金属および半金属元素が好ましく、とりわけ好ましくはチタン、ケイ素およびスズであり、特にケイ素である。スズ合金の例として、ケイ素、マグネシウム(Mg)、ニッケル、銅、鉄、コバルト、マンガン、亜鉛、インジウム、銀、チタン(Ti)、ゲルマニウム、ビスマス、アンチモンおよびクロム(Cr)からなる群から選択される1種または複数種の元素を、スズ以外の第2の構成元素として有する合金が挙げられる。ケイ素合金の例として、スズ、マグネシウム、ニッケル、銅、鉄、コバルト、マンガン、亜鉛、インジウム、銀、チタン、ゲルマニウム、ビスマス、アンチモンおよびクロムからなる群から選択される1種または複数種の元素を、ケイ素以外の第2の構成元素として有する合金が挙げられる。
さらなる可能性のあるアノード活物質は、リチウムイオンを挿入することが可能なシリコンである。このシリコンは、様々な異なる形で、たとえば、ナノワイヤ、ナノチューブ、ナノ粒子、膜、ナノ多孔性シリコン、またはシリコンナノチューブの形で使用することができる。このシリコンは、集電体上に堆積させることができる。集電体は、金属線、金属グリッド、金属ウエブ、金属シート、金属箔または金属板でよい。好ましくは、集電体は金属箔、たとえば、銅箔である。当業者にとって公知である任意の技法によって、たとえば、スパッタリング技法によって、金属箔上にシリコンの薄膜を堆積させることができる。Si薄膜電極を製造する1つの可能性が、R.Elazariら、Electronchem.Comm.2012,14,21−24に記載されている。本発明によるアノード活物質として、シリコン/カーボン複合材を使用することも可能である。
他の可能性のあるアノード活物質が、Tiのリチウムイオン挿入酸化物である。
好ましくは、アノード活物質は、リチウムイオンを可逆的に吸蔵および放出することができる炭素質材料から選択され、特に好ましくは、リチウムイオンを可逆的に吸蔵および放出することができる炭素質材料は、結晶性炭素、硬質炭素および非晶質炭素から選択され、特に黒鉛が好ましい。別の好ましい実施形態において、アノード活物質は、リチウムイオンを可逆的に吸蔵および放出することができるシリコンから選択され、好ましくは、アノードはシリコンの薄膜またはシリコン/カーボン複合材を備える。さらなる好ましい実施形態において、アノード活物質は、Tiのリチウムイオン挿入酸化物から選択される。
アノードおよびカソードは、電溶媒中に極活物質と、バインダーと、任意で導電性材料と、必要に応じて増粘剤とを分散させ、集電体上にスラリー組成物をコーティングすることで、電極スラリー組成物を製造することによって作製することができる。集電体は、金属線、金属グリッド、金属ウエブ、金属シート、金属箔または金属板でよい。好ましくは、集電体は金属箔、たとえば、銅箔またはアルミニウム箔である。
本発明のリチウム電池は、それら自体は慣習的であるさらなる構成要素、たとえば、セパレータ、筐体、ケーブル接続等を含むことができる。筐体は任意の形状、たとえば、直方体または円柱状、プリズム状でよく、使用する筐体は、ポーチとして加工した金属−プラスチック複合膜である。適切なセパレータは、たとえば、ガラス繊維セパレータ、およびポリオレフィンセパレータのようなポリマーをベースとするセパレータである。
本発明のリチウム電池数個を、たとえば、直列接続または並列接続で互いに組み合わせることができる。直列接続が好ましい。本発明はさらに、デバイスにおいて、とりわけモバイル機器において上述のような本発明のリチウムイオン電池を使用する方法を提供する。モバイル機器の例は車両、たとえば、自動車、自転車、航空機、またはボートや船などの水上車両である。モバイル機器の他の例は、携帯用のデバイス、たとえば、コンピュータ、とりわけ、ラップトップコンピュータ、電話または電動工具、たとえば、工事セクター、とりわけドリル、電池駆動スクリュードライバまたは電池駆動タッカーである。しかしながら、本発明のリチウムイオン電池を、定常エネルギー貯蔵に使用することもできる。
さらなる記述がなくとも、当業者が上記説明をその最も広い範囲で利用することが可能であるものとする。したがって、好ましい所実施形態および実施例は、限定する効果が全くない単に記述的開示として解釈されるものとする。
本発明を、本発明に従うが本発明を限定しない実施例によって説明する。
1.電解質組成物
2−メトキシ安息香酸メチル(M2Mb)、アセチルサリチル酸メチル(MAS)、ビフェニル(BP)、モノフルオロエチレンカーボネート(FEC)、炭酸エチレン(EC)、六フッ化リン酸リチウム(LiPF)、炭酸エチルメチル(EMC)、および1−メチル−1−{2−[(メチルスルホニル)オキシ]エチル}ピロリジニウムビス(オキサラト)ボレート(S2B)から電解質組成物を製造した。前記電解質組成物の正確な組成を表1に示す。質量%は、電解質組成物の総質量に対してである。S2BはWO2013/026854A1に記載されているように製造したが、他の化合物はすべて市販の化合物であった。
Figure 0006764345
2.電気化学試験
容量2mAh/cmのリチウム−ニッケル−コバルト−マンガン酸化物(LiNi0.33Co0.33Mn0.33、NCM111)電極および容量2.15mAh/cmの黒鉛電極を用いて、ボタンセルを作製した。セパレータとして、ガラス繊維フィルタセパレータ(Whatmann GF/D)を使用し、このセパレータに、電解質組成物それぞれの100μlを染み込ませた。気候室内25℃で電気化学的測定を行った。電気化学試験には、表2に示す手順を使用した。
Figure 0006764345
過充電添加剤が反応し始める場合、サイクル実験の電圧対時間プロットにおいてプラトー部分が見られる。このプラトー部分は、過充電添加剤の分解により起こる酸化ファラデー反応によって生じる。反応が開始する電圧値を、開始電圧と称する。過充電添加剤のより高い開始電圧により、電池に対するより高いカットオフ電圧が可能となって、その結果として、より高いエネルギー密度を実現することができる。
過充電添加剤の分解により、電極が不動態化され、ガスが生成される。生成されるガスを使用して、電流遮断デバイスによってセルの動作を停止させることができる。過充電反応後のセルの可能性のある不動態化が、過充電試験後のサイクル中に見られる。サイクル容量(サイクル14〜18または20〜24または26〜30における)は、過充電反応後に劇的に減少する。電気化学試験の結果を表4に示す。
圧力センサを備える特注電気化学セルで、ガス生成を測定した。圧力測定には、容量2mAh/cmのリチウム−ニッケル−コバルト−マンガン酸化物(NCM111)電極および容量2.15mAh/cmの黒鉛電極を使用した。セパレータは、ガラス繊維フィルタ(Whatmann GF/D)で、このセパレータに、電解質組成物それぞれの200μlを染み込ませた。圧力測定には、表3に示す試験手順を使用した。過充電反応中に測定したガス生成を表4に示す。
Figure 0006764345
Figure 0006764345
過充電保護の開始電位は、過充電保護添加剤としてビフェニルを含有する比較組成物よりも、過充電保護添加剤として式(I)の化合物を含有する本発明の組成物でより高い。過充電保護添加剤なしの比較組成物は、最大5Vまで過充電保護を示さない。

Claims (14)

  1. 少なくとも1種の式(I)の化合物
    Figure 0006764345
    (式中、
    は、C〜C10アルキルから選択され、
    は、O(C〜C10アルキル)、およびOC(O)(C〜C10アルキル)から選択され、
    〜C10アルキルは、1個または複数個のFで置換されていてもよく、C〜C10アルキルの、Oと直接は結合していない1個または複数個のCH基は、Oで置き換えられていてもよい)
    過充電保護添加剤として含有する電気化学セル用電解質組成物。
  2. がC〜Cアルキルから選択され、RがO(C〜Cアルキル)から選択され、C〜Cアルキルが、1個または複数個のFで置換されていてもよく、C〜Cアルキルの、Oと直接は結合していない1個または複数個のCH基が、Oで置き換えられていてもよい、請求項1に記載の電気化学セル用電解質組成物。
  3. がC〜Cアルキルから選択され、RがOC(O)(C〜Cアルキル)から選択され、
    〜Cアルキルは、1個または複数個のFで置換されていてもよく、C〜Cアルキルの、Oと直接は結合していない1個または複数個のCH基は、Oで置き換えられていてもよい、請求項1に記載の電気化学セル用電解質組成物。
  4. がC〜Cアルキルから選択され、
    〜Cアルキルは、1個または複数個のFで置換されていてもよく、C〜Cアルキルの、Oと直接は結合していない1個または複数個のCH基は、Oで置き換えられていてもよい、請求項1に記載の電気化学セル用電解質組成物。
  5. 前記少なくとも1種の式(I)の化合物が、アセチルサリチル酸メチルおよび2−メトキシ安息香酸メチルから選択される、請求項1に記載の電気化学セル用電解質組成物。
  6. 電気化学セル用電解質組成物中の前記少なくとも1種の式(I)の化合物の濃度が、電気化学セル用電解質組成物の総質量に対して0.1〜20質量%の範囲にある、請求項1から5のいずれか一項に記載の電気化学セル用電解質組成物。
  7. 少なくとも1種のSEI形成添加剤および/または少なくとも1種の追加の過充電保護添加剤を含有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の電気化学セル用電解質組成物。
  8. 当該電気化学セル用電解質組成物が、炭酸ビニレンおよびその誘導体、フッ素化炭酸エチレンおよびその誘導体、プロパンスルトンおよびその誘導体、亜硫酸エチレンおよびその誘導体、オキサレート含有化合物、ならびに式(II)のカチオン
    Figure 0006764345
    (式中、
    XはCHまたはNR’であり、
    はC〜Cアルキルから選択され、
    は−(CH−SO−(CH−R’’から選択され、
    −SO−は−O−S(O)−または−S(O)−O−であり、
    uは1〜8の整数であり、−(CH−アルキレン鎖の、N原子および/またはSO基と直接は結合していない1個または複数個のCH基は、Oで置き換えられていてもよく、−(CH−アルキレン鎖の隣接する2個のCH基は、C−C二重結合で置き換えられていてもよく、
    vは1〜4の整数であり、
    R’はC〜Cアルキルから選択され、
    R’’は、1個または複数個のFを含有していてもよいC〜C20アルキル、C〜C20アルケニル、C〜C20アルキニル、C〜C12アリールおよびC〜C24アラルキルから選択され、アルキル、アルケニル、アルキニルおよびアラルキルの、SO基と直接は結合していない1個または複数個のCH基は、Oで置き換えられていてもよい)と
    ビス(オキサラト)ホウ酸イオン、ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸イオン、[FB(C2m+14−z、[FyP(C2m+16−y、(C2m+1P(O)O]、[C2m+1P(O)O2−、[O−C(O)−C2m+1、[O−S(O)−C2m+1、[N(C(O)−C2m+1、[N(S(O)−C2m+1、[N(C(O)−C2m+1)(S(O)−C2m+1)]、[N(C(O)−C2m+1)(C(O)F)]、[N(S(O)−C2m+1)(S(O)F)]、[N(S(O)F)、[C(C(O)−C2m+1、[C(S(O)−C2m+1(式中、mは1〜8の整数であり、zは1〜4の整数であり、yは1〜6の整数である)から選択されるアニオンとを含有するイオン化合物から選択される少なくとも1種のSEI形成添加剤を含有する、請求項1から7のいずれか一項に記載の電気化学セル用電解質組成物。
  9. 当該電気化学セル用電解質組成物が、式(III)の化合物
    Figure 0006764345
    (Rは、F、Cl、Br、I、C〜C12アリールおよびC〜Cアルキルから互いに独立に選択される1種または複数種の置換基によって置換されていてもよいシクロへキシルまたはC〜C12アリールであり、C〜C12アリールおよびC〜Cアルキルは、F、Cl、BrおよびIから互いに独立に選択される1種または複数種の置換基によって置換されていてもよく、
    、R、R、RおよびR10は同一であっても異なっていてもよく、H、F、Cl、Br、I、C〜C12アリールおよびC〜Cアルキルから互いに独立に選択され、C〜C12アリールおよびC〜Cアルキルは、F、Cl、BrおよびIから互いに独立に選択される1種または複数種の置換基によって置換されていてもよい)
    から選択される追加の過充電保護添加剤を含有する、請求項1から8のいずれか一項に記載の電気化学セル用電解質組成物。
  10. 当該電気化学セル用電解質組成物が、少なくとも1種の非プロトン性有機溶媒を含有する、請求項1から9のいずれか一項に記載の電気化学セル用電解質組成物。
  11. 当該電気化学セル用電解質組成物が、環式および非環式カーボネート、ジ−C〜C10アルキルエーテル、ジ−C〜C−アルキル−C〜Cアルキレンエーテルおよびポリエーテル、環式エーテル、環式および非環式アセタールおよびケタール、オルトカルボン酸エステル、カルボン酸の環式および非環式エステル、環式および非環式スルホン、ならびに環式および非環式のニトリルおよびジニトリルから選択される少なくとも1種の非プロトン性有機溶媒を含有する、請求項1から10のいずれか一項に記載の電気化学セル用電解質組成物。
  12. 電気化学セル用電解質組成物中の過充電保護添加剤として、式(I)の化合物
    Figure 0006764345
    (式中は、C〜C10アルキルから選択され、
    は、O(C〜C10アルキル)、およびOC(O)(C〜C10アルキル)から選択され、
    〜C10アルキルは、1個または複数個のFで置換されていてもよく、C〜C10アルキルの、Oと直接は結合していない1個または複数個のCH基は、Oで置き換えられていてもよい)
    を使用する方法。
  13. 請求項1から11のいずれか一項に記載の前記電気化学セル用電解質組成物を含む電気化学セル。
  14. 当該電気化学セルがリチウム電池である、請求項13に記載の電気化学セル。

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