以下、本開示の実施形態について、図面を参照して説明する。まず、本開示の実施形態に係る発電装置の構成を説明する。
図1は、本開示の実施形態に係る発電装置の構成を概略的に示す機能ブロック図である。
図1に示すように、本開示の実施形態に係る発電装置1は、貯湯タンク60と、負荷100と、商用電源(grid)200に接続される。また、図1に示すように、発電装置1は、外部からガスおよび空気が供給されることにより発電し、発電した電力を負荷100等に供給する。
図1に示すように、発電装置1は、制御部10と、記憶部12と、燃料電池モジュール20と、供給部30と、インバータ40と、排熱回収処理部50と、循環水処理部52と、を備える。
発電装置1は、以下にさらに詳細に述べられるように、種々の機能を実行するための制御および処理能力を提供するために、制御部10として少なくとも1つのプロセッサを含む。種々の実施形態によれば、少なくとも1つのプロセッサは、単一の集積回路(IC)として、または複数の通信可能に接続された集積回路ICおよび/またはディスクリート回路(discrete circuits)として実行されてもよい。少なくとも1つのプロセッサは、種々の既知の技術に従って実行されることが可能である。
ある実施形態において、プロセッサは、1以上のデータ計算手続または処理を実行するために構成された、1以上の回路またはユニットを含む。例えば、プロセッサは、1以上のプロセッサ、コントローラ、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、特定用途向け集積回路(ASIC)、デジタル信号処理装置、プログラマブルロジックデバイス、フィールドプログラマブルゲートアレイ、またはこれらのデバイスもしくは構成の任意の組み合わせ、または他の既知のデバイスもしくは構成の組み合わせを含むことにより、以下に説明する機能を実行してもよい。
制御部10は、記憶部12と、燃料電池モジュール20と、供給部30とに接続され、これらの各機能部をはじめとして発電装置1の全体を制御および管理する。制御部10は、記憶部12に記憶されているプログラムを取得して、このプログラムを実行することにより、発電装置1の各部に係る種々の機能を実現する。制御部10から他の機能部に制御信号または各種の情報などを送信する場合、制御部と他の機能部とは、有線または無線により接続されていればよい。制御部10が行う本実施形態に特徴的な制御については、さらに後述する。また、本実施形態において、制御部10は、セルスタック24の稼働時間(例えば発電時間)を計測するなど、所定の時間を計測することができるものとする。
記憶部12は、制御部10から取得した情報を記憶する。また記憶部12は、制御部10によって実行されるプログラム等を記憶する。その他、記憶部12は、例えば制御部10による演算結果などの各種データも記憶する。さらに、記憶部12は、制御部10が動作する際のワークメモリ等も含むことができるものとして、以下説明する。記憶部12は、例えば半導体メモリまたは磁気ディスク等により構成することができるが、これらに限定されず、任意の記憶装置とすることができる。例えば、記憶部12は、光ディスクのような光学記憶装置としてもよいし、光磁気ディスクなどとしてもよい。
燃料電池モジュール20は、改質器22と、セルスタック24とを備えている。燃料電池モジュール20のセルスタック24は、供給部30から供給されるガス(燃料ガス)などを用いて発電し、発電した直流電力をインバータ40に出力する。燃料電池モジュール20は、ホットモジュールとも呼ばれる。燃料電池モジュール20において、セルスタック24は、発電に伴い発熱する。本開示において、実際に発電を行うセルスタック24を、適宜、「燃料電池」と記す。また、本開示において、セルスタック24を含めた任意の機能部も、適宜、「燃料電池」と総称することがある。例えば、「燃料電池」としては、他に、単体のセル、または燃料電池モジュールなどが挙げられる。
改質器22は、供給部30から供給されるガスおよび改質水を用いて、水素および/または一酸化炭素を生成する。セルスタック24は、改質器22で生成された水素および/または一酸化炭素と、空気中の酸素とを反応させることにより、発電する。すなわち、本実施形態において、燃料電池のセルスタック24は、電気化学反応により発電する。なお、改質器としては、前述の水蒸気改質を行う改質器を例示しているが、他の改質器として、酸素を含む空気等を用いて水素を生成する部分酸化改質(Partial Oxidation(POX))を行う改質器等であってもよい。
以下、セルスタック24は、SOFC(固体酸化物型燃料電池)であるとして説明する。しかしながら、本実施形態に係るセルスタック24はSOFCに限定されない。本実施形態に係るセルスタック24は、例えば固体高分子形燃料電池(Polymer Electrolyte Fuel Cell(PEFC))、りん酸形燃料電池(Phosphoric Acid Fuel Cell(PAFC))、および溶融炭酸塩形燃料電池(Molten Carbonate Fuel Cell(MCFC))などのような燃料電池で構成してもよい。また、本実施形態において、セルスタック24は、例えば単体で700W程度の発電ができるものを4つ備えてもよい。この場合、燃料電池モジュール20は、全体として3kW程度の電力を出力することができる。しかしながら、本実施形態に係るセルスタック24および燃料電池モジュール20は、このような構成に限定されるものではなく、種々の構成を採用することができる。例えば、本実施形態に係る燃料電池モジュール20は、セルスタック24を1つのみ備えるようにしてもよい。本実施形態において、発電装置1は、ガスを利用して発電を行う燃料電池を備えていればよい。したがって、例えば、発電装置1は、燃料電池として、セルスタック24ではなく、単に燃料電池セル1つのみを備えるものも想定できる。また、本実施形態に係る燃料電池は、例えばPEFCのように、モジュールのない燃料電池としてもよい。
供給部30は、ガス供給部32と、空気供給部34と、改質水供給部36とを備える。すなわち、供給部30は、セルスタック24にガス、空気、および改質水を供給する。
ガス供給部32は、セルスタック24にガスを供給する。このとき、ガス供給部32は、制御部10からの制御信号に基づいて、セルスタック24に供給するガスの量を制御する。本実施形態において、ガス供給部32は、例えばガスラインによって構成することができる。またガス供給部32は、ガスの脱硫処理を行ってもよいし、ガスを予備的に加熱してもよい。ガスを加熱する熱源として、セルスタック24の排熱が利用されてもよい。ガスは、例えば、都市ガス、またはLPG等であるが、これらに限定されない。例えば、ガスは、燃料電池に応じて、天然ガスまたは石炭ガスなどとしてもよい。本実施形態において、ガス供給部32は、セルスタック24が発電する際の電気化学反応に用いられる燃料ガスを供給する。
空気供給部34は、セルスタック24に空気を供給する。このとき、空気供給部34は、制御部10からの制御信号に基づいて、セルスタック24に供給する空気の量を制御する。本実施形態において、空気供給部34は、例えば空気ラインによって構成することができる。また空気供給部34は、外部から取り込んだ空気を予備的に加熱して、セルスタック24に供給してもよい。空気を加熱する熱源として、セルスタック24の排熱が利用されてもよい。本実施形態において、空気供給部34は、セルスタック24が発電する際の電気化学反応に用いられる空気を供給する。
改質水供給部36は、水蒸気を生成してセルスタック24に供給する。このとき、改質水供給部36は、制御部10からの制御信号に基づいて、セルスタック24に供給する水蒸気の量を制御する。本実施形態において、改質水供給部36は、例えば改質水ラインによって構成することができる。改質水供給部36は、セルスタック24の排気から回収された水を原料として水蒸気を生成してもよい。水蒸気を生成する熱源として、セルスタック24の排熱が利用されてもよい。
インバータ40は、燃料電池モジュール20に接続される。インバータ40は、セルスタック24が発電した直流電力を、交流電力に変換する。インバータ40から出力される直流電力は、分電盤などを介して、負荷100に供給される。負荷100は、分電盤などを介して、インバータ40から出力された電力を受電する。図1において、負荷100は、1つのみの部材として図示してあるが、負荷を構成する任意の個数の各種電気機器とすることができる。また、負荷100は、分電盤などを介して、商用電源200から受電することもできる。図1において、インバータ40と制御部10との接続は図示していないが、インバータ40と制御部10とを接続してもよい。この接続により、制御部10は、インバータ40による交流電力の出力を制御することができる。
排熱回収処理部50は、セルスタック24の発電により生じる排気から、排熱を回収する。排熱回収処理部50は、例えば熱交換器等で構成することができる。排熱回収処理部50は、循環水処理部52および貯湯タンク60に接続される。
循環水処理部52は、貯湯タンク60から排熱回収処理部50へ水を循環させる。排熱回収処理部50に供給された水は、排熱回収処理部50で回収された熱によって加熱され、貯湯タンク60に戻る。排熱回収処理部50は、排熱を回収した排気を外部に排出する。また、上述のように、排熱回収処理部50で回収された熱は、ガス、空気、または改質水の加熱などに用いることができる。
貯湯タンク60は、排熱回収処理部50および循環水処理部52に接続される。貯湯タンク60は、燃料電池モジュール20のセルスタック24などから回収された排熱を利用して生成された湯を、貯えることができる。
図1に示すように、発電装置1は、セルスタック24が発電する電流を検出する電流センサ70を備えている。電流センサ70は、図1に示すように、燃料電池モジュール20からインバータ40に向けて出力される直流の電流を検出する位置に設置することができる。しかしながら、電流センサ70は、セルスタック24が発電する電流を検出可能な位置であれば、他の位置に設置してもよい。電流センサ70は、例えばCT(Current Transformer)などにより構成することができる。しかしながら、電流センサ70は、CTに限定されず、電流を測定できる部材であれば、任意のものを採用することができる。例えば、電流センサ70は、ホール素子方式、ロゴスキー方式、またはゼロフラックス方式など原理に基づくものとしてもよい。電流センサ70は、制御部10に接続される。電流センサ70は、検出した電流に基づく信号を制御部10に送信する。この信号を受信することで、制御部10は、セルスタック24が発電する電流を把握することができる。
本実施形態において、制御部10は、セルスタック24の温度を制御する。また、本実施形態において、制御部10は、改質器22およびセルスタック24を含めた燃料電池モジュール20の系全体などの温度を制御してもよい。このような、セルスタック24の温度制御によって、セルスタック24の発電効率は変化し得る。制御部10によるセルスタック24の温度制御については、さらに後述する。
また、図1に示すように、発電装置1は、セルスタック24近傍の温度を検出する温度センサ80を備えている。温度センサ80は、図1に示すように、セルスタック24近傍の温度を検出する位置に設置することができる。ここで、温度センサ80が温度を検出するセルスタック24近傍とは、発電装置1においてセルスタック24の温度制御を行うための基準となる温度の測定に好適な位置、例えばセルスタック24が発生する熱が適度に伝導する位置とすることができる。また、本実施形態において、温度センサ80が温度を検出するセルスタック24近傍とは、セルスタック24そのものが存在する位置であってもよい。また、温度センサ80が温度を検出するセルスタック24近傍とは、例えばセルスタック24の全体、またはセルスタック24内部の一部(例えばセル)などであってもよい。
温度センサ80は、例えば熱電対などにより構成することができる。この場合、例えば、セルスタック24に空気を導入する導入板の中に、熱電対が挿入されるようにしてもよい。一方、温度センサ80は、当該温度センサ80を構成する素材によっては、過度の高熱を計測できない場合も想定される。このような場合、温度センサ80は、例えばセルスタック24から離れているが、セルスタック24が発生する熱が伝導する位置における温度を検出してもよい。温度センサ80がセルスタック24から離れている場合、温度センサ80が温度を検出するセルスタック24近傍とは、例えばセルスタック24上方の燃焼部に位置してもよい。また、温度センサ80がセルスタック24から離れている場合、温度センサ80が温度を検出するセルスタック24近傍とは、前記燃焼部上方から少し離れていても、セルスタック24付近の温度を十分に測定できる位置であればよい。
温度センサ80は、熱電対に限定されず、温度を測定できる部材であれば、任意のものを採用することができる。例えば、温度センサ80は、サーミスタまたは白金測温抵抗体としてもよい。温度センサ80は、制御部10に接続される。温度センサ80は、検出した温度に基づく信号を制御部10に送信する。この信号を受信することで、制御部10は、セルスタック24近傍の温度を把握することができる。
温度センサ80は、図1に示すように1つのみ設置する構成に限定されない。例えば、燃料電池モジュール20がセルスタック24を4つ備える場合、それぞれのセルスタック24に温度センサ80を設置してもよい。この場合、制御部10は、それぞれのセルスタック24の温度を個別に把握してもよいし、4つのセルスタック24の温度の平均を把握してもよい。
次に、本開示の実施形態に係る発電装置1の動作を説明する。
本実施形態において、発電装置1は、セルスタック24の積算発電時間に応じて、セルスタック24近傍の温度を制御する。ここで、発電装置1が温度を制御するセルスタック24近傍とは、発電装置1においてセルスタック24の温度制御を行うのに好適な位置、例えば上述した温度センサ80が温度を検出する位置とすることができる。また、燃料電池としての一例が単体セルの場合、発電装置1が温度を制御する単体セル近傍は、単体セルが発生する熱が適度に伝導する位置とすることができる。例えば、単体セルそのものが存在する位置であってもよいし、単体セルの全体、または単体セル内部の一部などであってもよい。また、単体セルが過度の高熱になるため温度を計測できない場合、発電装置1が温度を制御する単体セル近傍とは、例えば単体セルから離れているが、単体セルが発生する熱が伝導する位置であってもよい。燃料電池としての一例がセルスタック24の場合、発電装置1が温度を制御するセルスタック24近傍は、セルスタック24が発生する熱が適度に伝導する位置とすることができる。例えば、セルスタック24そのものが存在する位置であってもよいし、セルスタック24の内部全体、またはセルスタック24のうちいずれかのセルが存在する付近の位置であってもよい。
上述したように、セルスタック24が発電する際の作動温度は、セルスタック24の発電効率に影響する。特に、セルスタック24が発電を開始した初期においては、セルスタック24の初期劣化が発生する。したがって、セルスタック24が発電する際の作動温度を適切に制御しないと、発電効率が充分高くならない。このため、本実施形態においては、セルスタック24の発電効率を高めるために、セルスタック24が発電する際の作動温度を制御する。以下、発電装置1の動作をより詳細に説明する。
図2は、本実施形態に係る発電装置1の動作を示すフローチャートである。
まず、本実施形態における目標温度の算出処理について説明する。本実施形態において、発電装置1の制御部10は、セルスタック24が発電する電流と、セルスタック24の発で時間とに応じて、セルスタック24の温度制御を行うための目標温度を算出する。
図2に示す動作が開始するのは、発電装置1が発電を開始する時点、すなわちセルスタック24が発電を開始する時点とすることができる。図2に示す動作が開始すると、制御部10は、セルスタック24が発電を開始するように制御する(ステップS11)。ステップS11においては、制御部10は、セルスタック24が発電を開始するように、改質器22および供給部30などを制御する。このように、セルスタック24が発電を開始する動作は、一般的な燃料電池の制御と同様に行うことができるため、より詳細な説明は省略する。
ステップS11においてセルスタック24が発電を開始したら、制御部10は、電流センサ70が検出した直流電流の電流値を取得する(ステップS12)。
ステップS12において電流値を取得したら、制御部10は、セルスタック24の積算発電時間を取得する(ステップS13)。ステップS13においてセルスタック24の積算発電時間を取得するために、制御部10は、セルスタック24が発電を開始してからの発電時間を、所定のタイミングで検出する。本実施形態において、セルスタック24の発電時間とは、厳密にセルスタック24が発電を行っている時間に限定されるものではない。例えば、セルスタック24が発電している時間の代わりに、燃料電池モジュール20が作動している時間、または燃料電池セルが発電している時間などとしてもよい。本開示において、ステップS13で取得するのは、「燃料電池の積算稼働時間」のように総称することができる。具体的には、本実施形態において、燃料電池の稼働時間とは、セルスタック24が発電している発電時間とすることができる。この発電時間は、セルスタック24などの温度が所定以上となった際にカウントされる時間とすることができる。また、この発電時間は、例えばセルスタック24が発電する電流(または電力)が所定以上となった際にカウントされる時間とすることができる。
また、本実施形態において、セルスタック24の積算発電時間とは、セルスタック24から電力が出力されている時間のみを積算したものに限定されない。例えば、燃料電池は、所定期間連続で運転を継続した場合、安全機能を正常に作動させる等の目的で、発電を停止することがある。したがって、本実施形態において、積算発電時間とは、例えば、このような発電が停止している時間を含めたものとしてもよいし、このような発電が停止している時間を除いたものとしてもよい。
制御部10は、このようにして検出したセルスタック24の発電時間を、記憶部12に記憶しておくことができる。この場合、制御部10は、記憶部12から、セルスタック24の積算発電時間を取得することができる。また、例えば、セルスタック24において、発電時間を積算して記録する機構を備えるようにしてもよい。この場合、制御部10は、セルスタック24から、積算発電時間を直接取得することができる。
ステップS13において積算発電時間を取得したら、制御部10は、ステップS12で取得した電流値、およびステップS13で取得した積算発電時間に基づいて、これらに対応する目標温度を算出する(ステップS14)。ここで、目標温度とは、セルスタック24の温度制御を行う際に到達を目指す温度である。目標温度に向けて行うセルスタック24の温度制御の具体例については、後述する。
ステップS14において目標温度を算出するために、発電装置1は、セルスタック24が発電している電流値と、セルスタック24の積算発電時間と、に対応する目標温度を設定し、記憶部12に記憶しておく。ここで、発電装置1は、セルスタック24が発電している電流の電流値と、セルスタック24の積算発電時間とに応じた目標温度を、ルックアップテーブル(LUT)のような対応表として、記憶部12に記憶することができる。また、発電装置1は、セルスタック24が発電している電流の電流値に応じて、目標温度の計算式を、セルスタック24の積算発電時間の関数として、記憶部12に記憶してもよい。さらに、発電装置1は、セルスタック24が発電している電流の電流値に応じて、代表的ないくつかの積算発電時間についての目標温度を記憶部12に記憶してもよい。この場合、制御部10は、現在のセルスタック24の積算発電時間に最も近い代表的な積算発電時間の目標温度を読み出し、実際の積算発電時間を考慮して、読み出した目標温度を補正してもよい。
図3は、ステップS14において算出する目標温度の具体例を説明する図である。以下、本実施形態における目標温度について、さらに説明する。
図3は、セルスタック24が発電している電流の代表的ないくつかの電流値について、セルスタック24の積算発電時間に対応する目標温度の例を、グラフで示している。図3に示すグラフの横軸は、セルスタック24の積算発電時間を示している。また、図3に示すグラフの縦軸は、セルスタック24の目標温度を示している。
図3においては、セルスタック24が発電する電流の代表的ないくつかの電流値として、0[A]の場合、5[A]の場合、そして定格出力の場合(約11[A])について、積算発電時間に応じた目標温度を示してある。図3において、電流値が0[A]の場合の目標温度のグラフは、細かい破線で示してある。また、電流値が5[A]の場合の目標温度のグラフは、粗い破線で示してある。また、電流値が定格(約11[A])の場合の目標温度のグラフは、実線で示してある。
図3に示すように、本実施形態においては、セルスタック24の積算発電時間に応じて、目標温度が上昇する大きさが異なるように設定する。図3に示す例では、セルスタック24の積算発電時間を3つの時間区分に分割して、それぞれの時間区分で目標温度が上昇する大きさが異なるようにしている。以下の説明において、セルスタック24の積算発電時間が0〜5000時間の時間区分を、「第1区分」と記す。また、セルスタック24の積算発電時間が5000〜30000時間の時間区分を、「第2区分」と記す。また、セルスタック24の積算発電時間が30000時間以降の時間区分を、「第3区分」と記す。
図3に示す例では、セルスタック24が発電する電流が0[A]の場合、各時間区分において、目標温度を以下のように設定している。
第1区分:640℃から645℃まで上昇
第2区分:645℃から650℃まで上昇
第3区分:650℃に保つ
同様に、図3に示す例では、セルスタック24が発電する電流が5[A]の場合、各時間区分において、目標温度を以下のように設定している。
第1区分:655℃から665℃まで上昇
第2区分:665℃から675℃まで上昇
第3区分:675℃に保つ
同様に、図3に示す例では、セルスタック24が発電する電流が定格(約11[A])の場合、各時間区分において、目標温度を以下のように設定している。
第1区分:670℃から685℃まで上昇
第2区分:685℃から700℃まで上昇
第3区分:700℃に保つ
図3に示す例においては、いずれの電流値の場合も、例えば所定時間におけるセルスタック24の目標温度の上昇(例えば、温度上昇率)は、第1区分の方が、第2区分よりも大きくなっている。上述したように、セルスタック24が発電を開始した初期においては、セルスタック24の初期劣化が発生する。このため、セルスタック24が発電を開始した初期(稼働初期)の時間区分(第1区分)においては、その次の時間区分(第2区分)よりも、セルスタック24の目標温度の上昇が大きくなるように設定する。このような設定に従ってセルスタック24近傍の温度を制御することで、セルスタック24の発電効率を高めることができる。したがって、セルスタック24が発電を開始した初期の時間区分(第1区分)は、セルスタック24の初期劣化が発生し易い発電を開始した初期の時間区分(例えば積算発電時間0〜5000時間)とするのが好適である。また、セルスタック24の目標温度が上昇する大きさは、セルスタック24の特性など各種要因を考慮して、発電効率が高くなるように適宜設定するのが望ましい。例えば、セルスタック24と同種のセルスタックを稼働(発電)させる試験の結果に基づいて、目標温度が上昇する大きさを適切に設定することができる。
図3においては、セルスタック24が発電する電流の電流値として、0[A]の場合、5[A]の場合、そして定格出力の場合の例を示してある。上記以外の電流値についても、発電装置1において、図3に示す例と同様に、各時間区分における目標温度を設定して、記憶部12に記憶してもよい。この場合、各電流値について、それぞれの目標温度の値を記憶部12に記憶してもよい。また、それぞれの区分における目標温度の計算式を、各電流値についての関数として記憶してもよい。また、図3に示す例のようないくつかの電流値についての目標温度の値を、各電流値について補正して用いてもよい。また、図3に示されていない電流値または積算発電時間についての目標温度は、例えば線形に内挿する処理などにより算出してもよい。
ステップS14において算出する目標温度は、燃料電池モジュール20が複数のセルスタック24を備える場合、それぞれのセルスタックに応じて異ならせてもよいし、全てのセルスタックにおいて同じにしてもよい。また、燃料電池モジュール20がセルスタック24を例えば4つなど複数備える場合、制御部10は、複数のセルスタック24のうち、最も温度が高いと測定されたものの目標温度を算出してもよい。この場合、セルスタック24内の温度むらを考慮して、負荷が小さい時はセルスタック24内(例えばセルスタック24の中心)の目標温度を下げてもよい。
ステップS14において目標温度を算出したら、制御部10は、セルスタック24の発電を終了する指示がされたか否かを判定する(ステップS15)。ステップS15において発電終了の指示がされている場合、制御部S15は、セルスタック24の発電を終了し、図2に示す動作を終了する。一方、ステップS15において発電終了の指示がされていない場合、制御部S15は、ステップS11に戻って処理を続行する。
このように、本実施形態において、制御部10は、セルスタック24の発電時間およびセルスタック24が発電する電流に基づいて、目標温度を設定する。ここで、制御部10は、電流センサ70が検出したセルスタック24が発電する電流に基づいて、目標温度を設定することができる。このような目標温度を参照することにより、制御部10は、セルスタック24近傍の温度を制御する。また、制御部10は、セルスタック24が発電する電流が一定である場合に、セルスタック24が発電を開始した初期の時間区分(第1区分)において、その次の時間区分(第2区分)よりも、目標温度の上昇が大きくなるように設定するのが好適である。
発電装置1が例えば負荷100の消費電力に追従して発電している場合などは、セルスタック24が発電する電力は頻繁に変化し得る。このような場合、目標温度も頻繁に変化し得る。このため、制御部10は、図2に示す目標温度の算出動作を、例えば数ミリ秒ごと等の比較的高頻度のサイクルで行ってもよい。
次に、本実施形態における温度制御の動作について説明する。発電装置1において、制御部10は、上述のようにして目標温度を算出したら、算出した目標温度に、セルスタック24近傍の温度が近くなるように制御する。
図4は、本実施形態に係る発電装置1の動作を示すフローチャートである。
図4の動作が開始する時点で、図2および図3において説明したようにして、セルスタック24の目標温度が算出されているものとする。図4に示す動作が開始すると、まず、制御部10は、セルスタック24近傍の温度を取得する(ステップS21)。ステップS21においては、制御部10は、温度センサ80が検出した温度を取得することができる。
ステップS21においてセルスタック24近傍の温度を取得したら、制御部10は、ステップS21で取得した温度が、図2のステップS14で算出した目標温度よりも大きいか否か判定する(ステップS22)。
ステップS22において、取得した温度が目標温度よりも高いと判定された場合、制御部10は、セルスタック24近傍の温度を下げるのが望ましい。したがって、この場合、制御部10は、セルスタック24に供給される空気の空気利用率を下降させる(ステップS23)。ここで、空気利用率とは、セルスタック24に供給される空気のうち、実際に発電に利用される空気の割合である。セルスタック24において実際に発電に利用される空気の量は、一般的には、あまり急激に変化しない。このため、セルスタック24において空気利用率が下降するとは、セルスタック24に供給される空気の全体量が多くなることを意味する。セルスタック24に供給される空気の全体量が多くなると、余剰の空気が増大するため、セルスタック24近傍の温度は下がることになる。このように、ステップS23において、制御部10は、空気供給部34がセルスタック24に供給する空気を調整することにより、セルスタック24近傍の温度を制御することができる。
また、ステップS22において、セルスタック24近傍の温度を下げるために、制御部10は、セルスタック24に供給されるガスの流入量を減少させてもよい(ステップS23)。セルスタック24に供給されるガス(燃料ガス)の流入量が減少すると、セルスタック24における燃焼が抑制されるため、セルスタック24近傍の温度は下がることになる。このように、ステップS23において、制御部10は、ガス供給部32が供給するガスを調整することにより、セルスタック24近傍の温度を制御してもよい。この場合、セルスタック24に供給されるガスの流入量が減少し過ぎると、失火のおそれがあることを踏まえた上で、温度制御を行うのが望ましい。
ステップS23においてセルスタック24近傍の温度を下げるための処理を行ったら、制御部10は、ステップS21に戻って動作を継続する。
一方、ステップS22において、取得した温度が目標温度よりも高くないと判定された場合、制御部10は、ステップS21で取得した温度が、図2のステップS14で算出した目標温度よりも小さいか否か判定する(ステップS24)。
ステップS24において、取得した温度が目標温度よりも小さいと判定された場合、制御部10は、セルスタック24近傍の温度を上げるのが望ましい。したがって、この場合、制御部10は、ステップS23とは逆に、セルスタック24に供給される空気の空気利用率を上昇させる(ステップS25)。ここで、セルスタック24において空気利用率が上昇するとは、ステップS23とは逆に、セルスタック24に供給される空気の全体量が少なくなることを意味する。セルスタック24に供給される空気の全体量が少なくなると、余剰の空気が減少するため、セルスタック24近傍の温度は上がることになる。また、ステップS24において、セルスタック24近傍の温度を上げるために、制御部10は、セルスタック24に供給されるガスの流入量を増大させてもよい(ステップS25)。
ステップS25においてセルスタック24近傍の温度を上げるための処理を行ったら、制御部10は、ステップS21に戻って動作を継続する。また、ステップS24において、取得した温度が目標温度よりも小さくないと判定された場合も、制御部10は、ステップS21に戻って動作を継続する。
図2に示す目標温度の算出動作は、例えば数ミリ秒ごと等の比較的高頻度のサイクルで行ってもよいと説明した。一方、図4において説明した温度制御の動作に伴うセルスタック24近傍の温度は、急激に変化させることは困難である。このため、制御部10は、図4に示す説明した温度制御の動作を、例えば1分につき1℃程度のように、比較的穏やかに変化させるようにしてもよい。
また、図2において説明した目標温度の算出動作と、図4において説明した温度制御の動作とは、制御部10において並行する処理として行うのが望ましい。しかしながら、制御部10の性能によっては、例えば図2に示す目標温度の算出動作を高い頻度で行う中で、所定の間隔で図4において説明した温度制御の動作を割り込ませてもよい。
このように、本実施形態において、制御部10は、図2のステップS14において算出した目標温度、および図4のステップS21において温度センサ80が検出した温度に基づいて、セルスタック24近傍の温度を制御する。すなわち、本実施形態において、制御部10は、図2のステップS14において算出した目標温度に向けて、セルスタック24近傍の温度を制御する。したがって、制御部10は、セルスタック24の発電時間に応じて、セルスタック24近傍の温度を制御する。また、制御部10は、第1区分においては、第2区分よりも、セルスタック24近傍の温度の上昇が大きくなるように制御する。ここで、第1区分は、セルスタック24の初期劣化の影響に基づいて設定されるのが好適である。
以上説明したように、本実施形態にかかる発電装置1によれば、発電効率を高めることができる。
次に、図2のステップS14において算出する目標温度の他の具体例について説明する。
図5は、図3と同様に、セルスタック24が発電している電流の代表的ないくつかの電流値について、セルスタック24の積算発電時間に対応する目標温度の例を、グラフで示している。以下、図3と同様になる説明は、適宜、簡略化または省略する。
図3において説明した例では、セルスタック24の初期劣化を考慮して、第1区分においては、第2区分よりも、セルスタック24の目標温度の上昇が大きくなるように設定した。一方、例えばSOFCのような燃料電池においては、積算発電時間が90000時間程度で寿命となるものがある。そして、このような燃料電池においては、発電可能な時間の末期に近くなると、セルスタック24の劣化の進行が速くなる傾向にある。このため、セルスタック24が発電可能な時間の末期に近くなる時間区分においては、それまでの時間区分よりも、セルスタック24の目標温度の上昇が大きくなるように設定するのが好適である。このような設定に従ってセルスタック24近傍の温度を制御することで、発電可能な時間の末期が近付いたセルスタック24の発電効率を高めることができる。
図5は、図3よりも長期の積算発電時間に対応する目標温度の例を示している。図5に示す例では、セルスタック24の積算発電時間を4つの時間区分に分割して、それぞれの時間区分で目標温度の上昇の大きさを設定してある。図5において、セルスタック24の積算発電時間が0〜5000時間の時間区分を、図3と同様に「第1区分」と記す。また、図5において、セルスタック24の積算発電時間が5000〜30000時間の時間区分を、図3と同様に「第2区分」と記す。
一方、図5においては、セルスタック24の積算発電時間が30000〜70000時間の時間区分を、「第3区分」と記す。さらに、図5においては、図3とは異なり、セルスタック24の積算発電時間が発電可能な時間の末期に近づく70000時間〜90000時間程度の時間区分を、「第4区分」と記す。
図5に示す例において、セルスタック24が発電する電流の電流値が11[A]の場合、第1区分から第3区分までの間は、図3に示した定格出力の場合に近い目標温度を設定してある。また、図5に示す例において、セルスタック24が発電する電流の電流値が5[A]の場合、第1区分から第3区分までの間は、図3に示した5[A]の場合に近い目標温度を設定してある。また、図5に示す例において、セルスタック24が発電する電流の電流値が0[A]の場合、第1区分から第4区分までの間において、同じ目標温度を設定してある。
すなわち、図5に示す例では、セルスタック24が発電する電流が0[A]の場合、各時間区分において、目標温度を以下のように設定している。
第1区分〜第4区分:660℃に保つ
また、図5に示す例では、セルスタック24が発電する電流が5[A]の場合、各時間区分において、目標温度を以下のように設定している。
第1区分:665℃から670℃まで上昇
第2区分:670℃から675℃まで上昇
第3区分:675℃に保つ
第4区分:675℃から680℃まで上昇
同様に、図5に示す例では、セルスタック24が発電する電流が定格(約11[A])の場合、各時間区分において、目標温度を以下のように設定している。
第1区分:670℃から680℃まで上昇
第2区分:680℃から690℃まで上昇
第3区分:690℃に保つ
第4区分:690℃から700℃まで上昇
このように、本実施形態において、制御部10は、第2区分よりも後の時間区分(例えば第4区分)においては、第2区分よりも、セルスタック24の近傍の温度の上昇が大きくなるように制御してもよい。ここで、第2区分よりも後の時間区分(例えば第4区分)は、セルスタック24の発電可能な時間に基づいて設定されてもよい。また、第4区分は、セルスタック24の発電可能な時間の末期が近付いたことに起因する劣化が発生し易い時間区分(例えば積算発電時間70000時間〜90000時間程度)とするのが好適である。さらに、セルスタック24の目標温度の上昇の大きさは、セルスタック24の特性など各種要因を考慮して、発電効率が高くなるように適宜設定するのが望ましい。例えば、セルスタック24と同種のセルスタックを発電可能な時間の末期まで稼働させた試験の結果に基づいて、目標温度の上昇の大きさを適切に設定することができる。
以上説明したように制御しても、本実施形態にかかる発電装置1によれば、発電効率を高めることができる。
本発明を諸図面および実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形および修正を行うことが容易であることに注意されたい。したがって、これらの変形および修正は本発明の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各機能部、各手段、各ステップなどに含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の機能部およびステップなどを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。また、上述した本発明の各実施形態は、それぞれ説明した各実施形態に忠実に実施することに限定されるものではなく、適宜、各特徴を組み合わせたり、一部を省略したりして実施することもできる。
例えば、図3および図5に示した目標温度は、各時間区分ごとに直線状(線型的)に変化するグラフとして示した。しかしながら、図3および図5に示した目標温度は、あくまでも例示であり、例えば、各時間区分ごとに曲線的に変化するグラフとして示すことが可能なように変化してもよい。また、図3および図5において、各電流値ごとに示した目標温度の値も、あくまでも例示である。実際にセルスタックに発電させた試験の結果などを考慮して、セルスタックが行う発電の効率が高くなるように、適宜目標温度を設定するのが好適である。
また、図1に示した発電装置1においては、電流センサ70によって検出される、セルスタック24が発電する「電流」に基づいて、目標温度を設定した。しかしながら、本実施形態にかかる発電装置においては、セルスタック24が発電する「電圧」に基づいて、目標温度を設定してもよい。この場合、電流センサ70に代えて、セルスタック24が発電する電圧を検出可能な位置に、電圧計を設置するのが好適である。また、制御部10は、セルスタック24が発電する電圧が一定である場合に、第1区分において、第2区分よりも、目標温度の上昇が大きくなるように設定してもよい。
以上の開示においては、本実施形態として、SOFCとするセルスタック24を備える発電装置1について説明した。しかしながら、上述したように、本実施形態に係る発電装置1は、SOFCを備えるものに限定されず、例えばモジュールのないPEFCなど、各種の燃料電池を備えるものとすることができる。本開示において「燃料電池」とは、例えば発電システム、発電ユニット、燃料電池モジュール、ホットモジュール、セルスタック、またはセルなどを意味する。したがって、本開示において、燃料電池近傍とは、例えばセルスタック24の近傍などとすることができる。また、本開示において、燃料電池の稼働時間とは、例えばセルスタック24または燃料電池モジュール20の稼働時間などとすることができる。
また、以上の開示においては、本実施形態として、燃料電池を備える発電装置1について説明した。しかしながら、本開示の実施形態は、燃料電池を備える発電装置1に限定されるものではない。
例えば、本開示の実施形態は、燃料電池を備えずに、燃料電池を外部から制御する、燃料電池の制御装置として実現することもできる。このような実施形態の一例を、図6に示す。図6に示すように、本実施形態に係る燃料電池の制御装置2は、例えば制御部10と、記憶部12とを含んで構成される。制御装置2は、外部の燃料電池1を制御する。すなわち、本実施形態にかかる燃料電池の制御装置2は、燃料電池の稼働時間に応じて燃料電池近傍の温度を制御する。また、燃料電池の制御装置2は、第1区分においては、第2区分よりも、燃料電池近傍の温度の上昇が大きくなるように制御する。
さらに、本開示の実施形態は、例えば、上述したような燃料電池の制御装置2に実行させる制御プログラムとして実現することもできる。すなわち、本実施形態にかかる燃料電池の制御プログラムは、燃料電池を制御する制御装置2に、燃料電池の稼働時間に応じて燃料電池近傍の温度を制御するステップを実行させる。また、この制御プログラムは、制御装置2に、第1区分においては、第2区分よりも、燃料電池近傍の温度の上昇が大きくなるように制御するステップを実行させる。