(第1実施形態)
以下、本開示の第1実施形態について、図面を参照して説明する。まず、本開示の第1実施形態に係る発電装置の構成を説明する。
図1は、本開示の第1実施形態に係る発電装置の構成を概略的に示す機能ブロック図である。
図1に示すように、本実施形態に係る発電装置1は、貯湯タンク60と、負荷100と、商用電源(grid)200に接続される。また、図1に示すように、発電装置1は、外部からガスおよび空気が供給されることにより発電し、発電した電力を負荷100等に供給する。
図1に示すように、発電装置1は、制御部10と、記憶部12と、燃料電池モジュール20と、供給部30と、インバータ40と、排熱回収処理部50と、循環水処理部52と、を備える。
発電装置1は、以下にさらに詳細に述べられるように、種々の機能を実行するための制御および処理能力を提供するために、制御部10として少なくとも1つのプロセッサを含む。種々の実施形態によれば、少なくとも1つのプロセッサは、単一の集積回路(IC)として、または複数の通信可能に接続された集積回路ICおよび/またはディスクリート回路(discrete circuits)として実行されてもよい。少なくとも1つのプロセッサは、種々の既知の技術に従って実行されることが可能である。
ある実施形態において、プロセッサは、1以上のデータ計算手続または処理を実行するために構成された、1以上の回路またはユニットを含む。例えば、プロセッサは、1以上のプロセッサ、コントローラ、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、特定用途向け集積回路(ASIC)、デジタル信号処理装置、プログラマブルロジックデバイス、フィールドプログラマブルゲートアレイ、またはこれらのデバイスもしくは構成の任意の組み合わせ、または他の既知のデバイスもしくは構成の組み合わせを含むことにより、以下に説明する機能を実行してもよい。
制御部10は、記憶部12と、燃料電池モジュール20と、供給部30、インバータ40とに接続され、これらの各機能部をはじめとして発電装置1の全体を制御および管理する。制御部10は、記憶部12に記憶されているプログラムを取得して、このプログラムを実行することにより、発電装置1の各部に係る種々の機能を実現する。制御部10から他の機能部に制御信号または各種の情報などを送信する場合、制御部と他の機能部とは、有線または無線により接続されていればよい。制御部10が行う本実施形態に特徴的な制御については、さらに後述する。また、本実施形態において、制御部10は、セルスタック24の稼働時間(例えば発電時間)を計測するなど、所定の時間を計測することができるものとする。
記憶部12は、制御部10から取得した情報を記憶する。また記憶部12は、制御部10によって実行されるプログラム等を記憶する。その他、記憶部12は、例えば制御部10による演算結果などの各種データも記憶する。さらに、記憶部12は、制御部10が動作する際のワークメモリ等も含むことができるものとして、以下説明する。記憶部12は、例えば半導体メモリまたは磁気ディスク等により構成することができるが、これらに限定されず、任意の記憶装置とすることができる。例えば、記憶部12は、光ディスクのような光学記憶装置としてもよいし、光磁気ディスクなどとしてもよい。
燃料電池モジュール20は、改質器22と、セルスタック24とを備えている。燃料電池モジュール20のセルスタック24は、供給部30から供給されるガス(燃料ガス)などを用いて発電し、発電した直流電力をインバータ40に出力する。燃料電池モジュール20は、ホットモジュールとも呼ばれる。燃料電池モジュール20において、セルスタック24は、発電に伴い発熱する。本開示において、実際に発電を行うセルスタック24を、適宜、「燃料電池」と記す。また、本開示において、セルスタック24を含めた任意の機能部も、適宜、「燃料電池」と総称することがある。例えば、「燃料電池」としては、他に、単体のセル、または燃料電池モジュールなどが挙げられる。
改質器22は、供給部30から供給されるガス、および改質水を用いて、水素および/または一酸化炭素を生成する。セルスタック24は、改質器22で生成された水素および/または一酸化炭素と、空気中の酸素とを反応させることにより、発電する。すなわち、本実施形態において、燃料電池のセルスタック24は、電気化学反応により発電する。なお、改質器としては、前述の水蒸気改質を行う改質器を例示しているが、他の改質器として、酸素を含む空気等を用いて水素を生成する部分酸化改質(Partial Oxidation(POX))を行う改質器等であってもよい。
以下、セルスタック24は、SOFC(固体酸化物型燃料電池)であるとして説明する。しかしながら、本実施形態に係るセルスタック24はSOFCに限定されない。本実施形態に係るセルスタック24は、例えば固体高分子形燃料電池(Polymer Electrolyte Fuel Cell(PEFC)))、りん酸形燃料電池(Phosphoric Acid Fuel Cell(PAFC))、および溶融炭酸塩形燃料電池(Molten Carbonate Fuel Cell(MCFC))などのような燃料電池で構成してもよい。また、本実施形態において、セルスタック24は、例えば単体で700W程度の発電ができるものを4つ備えてもよい。この場合、燃料電池モジュール20は、全体として3kW程度の発電を行うことができる。しかしながら、本実施形態に係るセルスタック24および燃料電池モジュール20は、このような構成に限定されるものではなく、種々の構成を採用することができる。例えば、本実施形態に係る燃料電池モジュール20は、セルスタック24を1つのみ備えるようにしてもよい。本実施形態において、発電装置1は、ガスを利用して発電を行う燃料電池を備えていればよい。したがって、例えば、発電装置1は、燃料電池として、セルスタック24ではなく、単に燃料電池セル1つのみを備えるものも想定できる。また、本実施形態に係る燃料電池は、例えばPEFCのように、モジュールのない燃料電池としてもよい。
供給部30は、ガス供給部32と、空気供給部34と、改質水供給部36とを備える。供給部30は、燃料電池モジュール20にガス、空気、および改質水を供給する。
ガス供給部32は、セルスタック24にガスを供給する。このとき、ガス供給部32は、制御部10からの制御信号に基づいて、セルスタック24に供給する燃料ガスの量を制御する。本実施形態において、ガス供給部32は、例えばガスラインによって構成することができる。またガス供給部32は、ガスの脱硫処理を行ってもよいし、ガスを予備的に加熱してもよい。ガスを加熱する熱源として、セルスタック24の排熱が利用されてもよい。ガスは、例えば、都市ガス、またはLPG等であるが、これらに限定されない。例えば、ガスは、燃料電池に応じて、天然ガスまたは石炭ガスなどとしてもよい。本実施形態において、ガス供給部32は、セルスタック24が発電する際の電気化学反応に用いられる燃料ガスを供給する。
また、本実施形態において、ガス供給部32は、燃料ガスをセルスタック24に供給するために、例えば燃料ガスポンプなどの供給機能を適宜有する機能部として説明する。この燃料ガスポンプは、制御部10と、有線または無線により接続され、制御部10からの制御信号を受信する。この接続により、制御部10は、ガス供給部32は、セルスタック24に供給する燃料ガスの流量を制御することができる。
さらに、本実施形態において、ガス供給部32は、上述した燃料ガスポンプからセルスタック24に供給される燃料ガスの流量を計測する燃料流量計も備えるものとして説明する。すなわち、ガス供給部32は、ガス供給部32が供給する燃料ガスの流量を計測することができる。ガス供給部32が計測した燃料ガスの流量は、制御部10に通知される。したがって、制御部10は、ガス供給部32からセルスタック24に供給される燃料ガスの流量値(燃料流量値)を把握することができる。したがって、本実施形態において、ガス供給部32は、セルスタック24に供給される燃料ガスの量を計測する「ガス計測部」としても機能する。
空気供給部34は、セルスタック24に空気を供給する。このとき、空気供給部34は、制御部10からの制御信号に基づいて、セルスタック24に供給する空気の量を制御する。本実施形態において、空気供給部34は、例えば空気ラインによって構成することができる。また空気供給部34は、外部から取り込んだ空気を予備的に加熱して、セルスタック24に供給してもよい。空気を加熱する熱源として、セルスタック24の排熱が利用されてもよい。本実施形態において、空気供給部34は、セルスタック24が発電する際の電気化学反応に用いられる空気を供給する。
改質水供給部36は、水蒸気を生成してセルスタック24に供給する。このとき、改質水供給部36は、制御部10からの制御信号に基づいて、セルスタック24に供給する水蒸気を生成し、供給する水蒸気の量を制御する。本実施形態において、改質水供給部36は、例えば改質水ラインによって構成することができる。改質水供給部36は、セルスタック24の排気から回収された水を原料として水蒸気を生成してもよい。水蒸気を生成する熱源として、セルスタック24の排熱が利用されてもよい。
インバータ40は、燃料電池モジュール20に接続される。インバータ40は、セルスタック24が発電した直流電力を、交流電力に変換する。インバータ40から出力される直流電力は、分電盤などを介して、負荷100に供給される。負荷100は、分電盤などを介して、インバータ40から出力された電力を受電する。図1において、負荷100は、1つのみの部材として図示してあるが、負荷を構成する任意の個数の各種電気機器とすることができる。また、負荷100は、分電盤などを介して、商用電源200から受電することもできる。図1に示すように、インバータ40は、制御部10に接続される。この接続により、制御部10は、インバータ40による交流電力の出力を制御することができる。
排熱回収処理部50は、セルスタック24の発電により生じる排気から、排熱を回収する。排熱回収処理部50は、例えば熱交換器等で構成することができる。排熱回収処理部50は、循環水処理部52および貯湯タンク60に接続される。
循環水処理部52は、貯湯タンク60から排熱回収処理部50へ水を循環させる。排熱回収処理部50に供給された水は、排熱回収処理部50で回収された熱によって加熱され、貯湯タンク60に戻る。排熱回収処理部50は、排熱を回収した排気を外部に排出する。また、上述のように、排熱回収処理部50で回収された熱は、ガス、空気、または改質水の加熱などに用いることができる。
貯湯タンク60は、排熱回収処理部50および循環水処理部52に接続される。貯湯タンク60は、燃料電池モジュール20のセルスタック24などから回収された排熱を利用して生成された湯を、貯えることができる。
図1に示すように、発電装置1は、セルスタック24が発電する電流を検出する電流センサ70を備えている。電流センサ70は、図1に示すように、燃料電池モジュール20からインバータ40に向けて出力される直流の電流を検出する位置に設置することができる。しかしながら、電流センサ70は、セルスタック24が発電する電流を検出可能な位置であれば、他の位置に設置してもよい。電流センサ70は、例えばCT(Current Transformer)などにより構成することができる。しかしながら、電流センサ70は、CTに限定されず、電流を計測できる部材であれば、任意のものを採用することができる。例えば、電流センサ70は、ホール素子方式、ロゴスキー方式、またはゼロフラックス方式など原理に基づくものとしてもよい。電流センサ70は、制御部10に接続される。電流センサ70は、検出した電流に基づく信号を制御部10に送信する。この信号を受信することで、制御部10は、セルスタック24が発電する電流の値(電流値)を把握することができる。
次に、本実施形態に係る発電装置1の動作を説明する。
まず、本実施形態における燃料流量の制御について説明する。本実施形態において、発電装置1は、燃料利用率の目標を設定する。この時、発電装置1は、発電効率を有利に高めることができるように、燃料利用率の上限を超えないようにして、燃料利用率の目標を設定する。そして、発電装置1は、このように設定した燃料利用率の目標に向けて、セルスタック24に供給する燃料の流量を制御する。以下、発電装置1の上述した動作を、より詳細に説明する。上述したように、燃料利用率とは、セルスタック24に供給される燃料ガスのうち、セルスタック24の発電に利用される燃料ガスの割合を意味する。
図2は、本実施形態に係る発電装置1の動作を示すフローチャートである。図2は、主として、発電装置1における燃料流量の制御について説明する図である。
図2に示す動作が開始する時点で、発電装置1は、すでに作動中で発電を行っているものとする。したがって、この時点で、ガス供給部32は、セルスタック24に燃料ガスを供給しており、セルスタック24は、発電による電流を出力しているものとする。このように、燃料電池が発電を行う動作は、一般的な燃料電池の制御と同様に行うことができるため、より詳細な説明は省略する。
図2に示す動作が開始すると、制御部10は、電流センサ70が検出した直流電流の値(電流値I)を取得する(ステップS11)。また、ステップS11において、制御部10は、ガス供給部32の燃料流量計(ガス計測部)が計測した燃料ガスの流量(燃料流量値F)も取得する。
ステップS11においてIおよびFを取得したら、制御部10は、燃料利用率の目標(目標利用率Ufref)を算出する(ステップS12)。ステップS12において、目標利用率Ufrefの算出は、例えば以下のように行うことができる。すなわち、まず、制御部10は、電流値Iを入力パラメータとして定義される目標利用率の初期値Ufref0を算出する。したがって、Ufref0は、Iに応じて変動する関数として表すことができる。次に、制御部10は、目標利用率の差分ΔUfrefを算出する。ΔUfrefは、後述する燃料利用率Ufの補正レベルをLとして、K1を係数として、電流値Iを用いて、次の式(1)のように表すことができる。
ΔUfref=L×I×K1 式(1)
ステップS12において、制御部10は、目標利用率Ufrefを、Ufref0とΔUfrefの和、すなわち、次の式(2)のように表すことができる。
Ufref=Ufref0+ΔUfref 式(2)
ステップS12において目標利用率が算出されたら、制御部10は、燃料利用率の上限値(利用率上限Ufmax)を算出する(ステップS13)。ステップS13において、利用率上限Ufmaxの算出は、例えば以下のように行うことができる。すなわち、まず、制御部10は、利用率上限の初期値Ufmax0を算出する。Ufmax0は、固定値として表すことができる。次に、制御部10は、利用率上限の差分ΔUfmaxを算出する。ΔUfmaxは、後述する燃料利用率Ufの補正レベルをLとして、K2を係数として、次の式(3)のように表すことができる。
ΔUfmax=L×K2 式(3)
ステップS13において、制御部10は、利用率上限Ufmaxを、Ufmax0とΔUfmaxの和、すなわち、次の式(4)のように表すことができる。
Ufmax=Ufmax0+ΔUfmax 式(4)
ステップS13において利用率上限が算出されたら、制御部10は、目標利用率Ufrefが利用率上限Ufmaxを超えているか否か判定する(ステップS14)。ステップS14において目標利用率Ufrefが利用率上限Ufmaxを超えている場合、制御部10は、目標利用率Ufrefの値を利用率上限Ufmaxの値に一致させる(ステップS15)。ステップS15の処理によって、発電装置1は、目標利用率Ufrefが利用率上限Ufmaxを超えた状態で発電を行うことはなくなる。
ステップS15において目標利用率Ufrefの値を利用率上限Ufmaxの値に一致させたら、制御部10は、燃料流量の目標値(燃料目標値Fref)を算出する(ステップS16)。ステップS16において、燃料目標値Frefの算出は、例えば以下のように行うことができる。すなわち、制御部10は、K3を係数として、上述の目標利用率Ufref、電流値I、および燃料平均価数を用いて、次の式(5)のように、Frefを算出することができる。
Fref=K3×I/(Ufref×燃料平均価数) 式(5)
一方、ステップS14において、目標利用率Ufrefが利用率上限Ufmaxを超えていない場合、制御部10は、ステップS15をスキップしてステップS16の処理を行う。
ステップS16において燃料目標値が算出されたら、制御部10は、燃料目標値Frefに向けて、燃料流量値Fを制御する。具体的には、制御部10は、ガス供給部32の燃料流量計(ガス計測部)が計測する燃料流量値Fが、燃料目標値Frefに近くなるように制御する。制御部10は、例えば、ガス供給部32の燃料ガスポンプの回転数を制御するなどして、セルスタック24に供給される燃料ガスの流量を調節することができる。この場合、例えば、制御部10は、燃料流量値Fと、燃料目標値Frefとの差ができるだけ小さくなるように、燃料ガスポンプのフィードバック制御を行うことができる。
本実施形態にかかる発電装置1において、制御部10は、図2に示す動作を定期的に行うのが好適である。
図2に示した動作を行うことで、発電装置1は、燃料利用率の上限値(利用率上限Ufmax)を超えないように目標利用率Ufrefを設定して、セルスタック24に供給するガスの燃料流量値Fを制御することができる。
一方、このような制御を行う際に、燃料利用率の上限値(利用率上限Ufmax)が正確でないと、発電装置1は、必ずしも発電効率を有利に高めることができないことが想定される。例えば、ガス供給部32の燃料流量計(ガス計測部)が誤差を発生する場合などは、燃料利用率の上限値(利用率上限Ufmax)が正しく算出できない。このような誤差を含め、種々の要因により、実際の燃料利用率Ufは、必ずしも目標利用率Ufrefに完全には一致しない。また、実際の燃料利用率Ufと、目標利用率Ufrefとの間の乖離は、セルスタック24をはじめ発電装置1を構成する各機能部の個体差または経年変化などによっても変化し得る。このように、燃料利用率の上限値(利用率上限Ufmax)が正確でないと、発電装置1の発電効率は低下することになり、要求性能を満たすことができなくなることも想定される。
そこで、本実施形態においては、利用率上限Ufmaxを動的に補正することにより、発電装置1の発電効率が高い状態を維持する。以下、このような動作について説明する。
図3は、本実施形態に係る発電装置1の動作を示すフローチャートである。図3は、主として、発電装置1における利用率上限の補正について説明する図である。
図3に示す利用率上限の補正動作は、図2において説明した燃料流量の制御動作とは、制御部10において並行する処理として行うのが望ましい。しかしながら、制御部10の性能によっては、例えば図3に示す利用率上限の補正動作を行う中で、所定の間隔で図2において説明した燃料流量の制御動作を割り込ませてもよい。
図3に示す利用率上限の補正動作が開始すると、制御部10は、前回の補正の処理から所定の時間が経過したか否かを判定する(ステップS21)。図3に示す例においては、所定の時間を24時間として、利用率上限の補正が1日に一度行われるようにしている。この所定の時間は、必要に応じて、適宜24時間よりも長くしてもよいし、短くしてもよい。以下、ステップS21における所定の時間は、24時間として説明する。
ステップS21において前回の補正の処理から24時間経過していない場合、制御部10は、前回の補正の処理から、ステップS21における所定の時間よりも短い時間が経過したか否かを判定する(ステップS22)。図3に示す例においては、所定の時間よりも短い時間を5時間としている。この所定の時間は、必要に応じて、適宜5時間よりも長くしてもよいし、短くしてもよいが、ステップS21における所定の時間よりも短い時間とする。以下、ステップS22における時間は、5時間として説明する。
ステップS22において前回の補正の処理から5時間経過していない場合、制御部10は、ステップS21に戻って処理を続行する。一方、ステップS22において前回の補正の処理から5時間経過している場合、制御部10は、電流値I、電力値P、および燃料流量値Fを、それぞれ積算する(ステップS23)。
ステップS23においては、制御部10は、電流センサ70が検出した直流電流の電流値Iを取得することができる。また、ステップS23において、制御部10は、例えばインバータ40から電力値Pを取得することができる。しかしながら、ステップS23において、制御部10は、セルスタック24が発電する電力の電力値Pを取得できるのであれば、他の手段によって取得してもよい。また、ステップS23において、制御部10は、ガス供給部32の燃料流量計(ガス計測部)が計測した燃料流量値Fを取得することができる。
ステップS21〜ステップS23において、制御部10は、要するに、前回の補正の処理から5時間経過するまでは、電流値I、電力値P、および燃料流量値Fを、それぞれ積算せずに無視する(演算において考慮しない)。そして、制御部10は、前回の補正の処理から5時間経過してから、前回の補正の処理から24時間経過するまでの間(19時間)、電流値I、電力値P、および燃料流量値Fを、それぞれ積算し続ける。発電装置1において、補正の処理を行ってから暫くの期間は、系が安定しないなど不都合が生じるおそれがある。したがって、本実施形態においては、補正の処理を行ってから暫くの期間(例えば5時間)が経過した後に、電流値I、電力値P、および燃料流量値Fを、それぞれ積算するようにしている。
ステップS21において前回の補正の処理から24時間経過した場合、制御部10は、その間に発電した電流の平均が定格の80%以上であるか否かを判定する(ステップS24)。ステップS24において、制御部10は、ステップS23において積算した電流値Iを、積算した時間で除することにより、電流の時間当たりの平均を算出することができる。
ステップS24において電流の平均が定格出力のうち所定の割合(例えば80%)以上である場合、制御部10は、ステップS25に進んで利用率上限の補正処理を行う(ステップS25)。ステップS25において行う利用率上限の補正処理については後述する。図3に示す例においては、定格出力のうち所定の割合を80%としている。この所定の割合は、必ずしも80%に限定されない。しかしながら、この所定の割合は、発電装置1の発電効率が良好である状態にするため、比較的高い割合とするのが好適である。以下、ステップS25における所定の割合は、80%として説明する。
一方、ステップS24において電流の平均が定格の80%以上でない場合、制御部10は、ステップS25の処理をスキップして、図3に示す動作を終了する。本実施形態において、制御部10は、要するに、発電した電流の平均が定格の80%以上である場合の(考慮に値する)データのみを用いて、ステップS25の利用率上限の補正処理を行う。このように、本実施形態において、制御部10は、セルスタック24が発電する電流が、定格出力のうち所定の割合以上または当該所定の割合を超えている場合に、利用率上限(上限値)を補正するのが好適である。また、本実施形態において、セルスタック24が発電する電流が、所定の時間において、所定の閾値以上または所定の閾値を超えている場合に、利用率上限(上限値)を補正してもよい。
本実施形態において、発電装置1は、図3に示す処理を常時行うのが好適である。このようにすれば、発電装置1においては、24時間ごとに、つまり毎日、(発電した電流の平均が定格の例えば80%以上であれば)利用率上限の補正処理が行われる。
以下、図3のステップS25における利用率上限の補正処理を、より詳細に説明する。
図4は、図3のステップS25における利用率上限の補正処理を、より詳細に説明する図である。図4は、主として、発電装置1における補正レベルの更新について説明している。
図4に示す補正レベルの更新動作が開始すると、制御部10は、前回の補正の処理を行ってから24時間の発電効率Eを算出する(ステップS31)。以下、前回の補正の処理を行ってから24時間の発電効率Eを、便宜的に、「今回の発電効率E」と記す。同様に、制御部10は、前々回の補正の処理を行ってから24時間の発電効率Eを、「前回の発電効率E」として算出しているものとする。ステップS31において、制御部10は、電力値Pの平均と、燃料流量値Fの平均とから、今回の発電効率Eを算出することができる。このように、本実施形態において、制御部10は、セルスタック24に供給される燃料ガスの量と、セルスタック24が発電する電流に基づいて、セルスタック24の発電効率を算出するのが好適である。また、ステップS31において、制御部10は、算出した今回の発電効率Eを、記憶部12に記憶する(ステップS31)。さらに、記憶部12には、同様にして算出された前回の発電効率Eも記憶しているものとする。
ここで、電力値Pの平均は、図3のステップS23において積算した電力値Pを、積算した時間で除することにより算出することができる。また、燃料流量値Fの平均は、図3のステップS23において積算した燃料流量値Fを、積算した時間で除することにより算出することができる。
ステップS31において今回の発電効率Eを算出したら、制御部10は、今回の発電効率Eが前回の発電効率Eを下回っているか否か判定する(ステップS32)。前回の発電効率Eとは、今回の24時間より前に経過した19時間(24時間のうち最初の5時間を除いた時間)の電力値Pの平均と、燃料流量値Fの平均とから、算出したものとする。
ステップS32において今回の発電効率Eが前回の発電効率Eを下回っている場合、制御部10は、次回の補正に用いる補正レベルLの方向を反転させる(ステップS33)。ここで、補正レベルLとは、燃料利用率の上限値(利用率上限Ufmax)を補正する際に、その補正の度合いを示す値である。補正レベルLは、利用率上限Ufmaxを増大させる補正に用いられる場合と、利用率上限Ufmaxを減少させる補正に用いられる場合とがある。したがって、補正レベルLは方向を有し、利用率上限Ufmaxを増大させる補正に用いる場合は正(+)方向とし、利用率上限Ufmaxを減少させる補正に用いる場合は負(−)方向とする。以下、補正レベルLの方向のことを、適宜、「補正方向」と略記することがある。
図5は、一連の補正レベルLの例を示す図である。
図5は、補正レベルLを−6から+6までの整数とする例を示す。また、図5は、それぞれの補正レベルLに対応する補正の度合いを、利用率上限の差分ΔUfmaxとして示す。上述したように、利用率上限の差分ΔUfmaxは、補正レベルLと、係数K2との積で表される(式(4)参照)。図5においては、K2=0.5として、各補正レベルLのそれぞれに対応する利用率上限の差分ΔUfmaxを示してある。
以下、本実施形態において、補正レベルLを判定して利用率上限の差分ΔUfmaxから、補正された利用率上限を算出する際の処理について説明する。以下説明する例においては、補正された利用率上限を算出する際に、毎回同じ初期値Ufmax0を用いて算出するものとする。
例えば、現在、補正前の状態であるとして、図5の中央段に示す補正レベルL=0であるとする。ここで、補正レベルLを正(+)方向に補正する場合、制御部10は、補正レベルL=1と判定して、利用率上限Ufmax(この場合、初期値Ufmax0)に、利用率上限の差分ΔUfmax=0.5を加える。次に、補正レベルLをさらに正(+)方向に補正する場合、制御部10は、補正レベルL=2と判定して、利用率上限Ufmax(この場合も、初期値Ufmax0とする)に、利用率上限の差分ΔUfmax=1.0を加える。また、例えば、現在、図5に示す補正レベルL=4であるとする。ここで、補正レベルLを負(−)方向に補正する場合、制御部10は、補正レベルL=3と判定して、利用率上限Ufmax(この場合も初期値Ufmax0とする)に、利用率上限の差分ΔUfmax=1.5を加える。
図4に示すステップS32において今回の発電効率Eが前回の発電効率Eを下回っている場合、制御部10は、ステップS33に進み、次回の補正に用いる補正レベルLの補正方向を反転させる。ステップS33において、次回の補正に用いる補正レベルLの方向を反転させるとは、今回の補正レベルの更新処理として正(+)方向に補正に行った場合、次回の補正レベルの更新処理は負(−)方向とする。同様に、ステップS33において、今回の補正レベルの更新処理として負(−)方向に補正に行った場合、次回の補正レベルの更新処理は正(+)方向とする。
ステップS33において次回の補正に用いる補正方向を反転させたら、制御部10は、補正方向に基づいて今回の補正に用いる補正レベルLを判定する(ステップS34)。ステップS34においては、制御部10は、前回の補正において用いた補正レベルLと、前回の補正において次回の補正に用いる補正方向として反転させた補正方向とに基づいて、今回の補正に用いる補正レベルLを判定する。例えば、図5に示すように、前回の補正レベルの更新処理において、正(+)方向の補正処理で補正レベルL=4になった場合、今回の補正レベルの更新処理においては、負(−)方向の補正処理で補正レベルLは3と判定する。同様に、例えば、前回の補正レベルの更新処理において、負(−)方向の補正処理で補正レベルLが1になった場合、今回の補正レベルの更新処理においては、正(+)方向の補正処理で補正レベルLは2と判定する。
一方で、ステップS32において今回の発電効率Eが前回の発電効率Eを下回っていない場合、制御部10は、ステップS33をスキップし(次回の補正に用いる補正レベルLの補正方向を反転させずに)、ステップS34に進む。この場合、例えば、図5に示すように、前回の補正レベルの更新処理において、正(+)方向の補正処理で補正レベルLが4になった場合、今回の補正レベルの更新処理においては、正(+)方向の補正処理で補正レベルLは5と判定する。同様に、例えば、前回の補正レベルの更新処理において、負(−)方向の補正処理で補正レベルLが1になった場合、今回の補正レベルの更新処理においては、負(−)方向の補正処理で補正レベルLは0と判定する。
ステップS34において補正レベルLを判定したら、制御部10は、判定された補正レベルLが許容範囲であるか否かを判定する(ステップS35)。ステップS35においては、補正レベルLが妥当な範囲になるように、制御部10は、ステップS34において判定された補正レベルLが、所定の上限値と所定の下限値との間に収まっているか否かを判定する。このため、本実施形態に係る発電装置1においては、補正レベルLが妥当な範囲になるような上限と下限とを、予め設定しておく。
ステップS35において判定された補正レベルLが許容範囲であれば、制御部10は、当該補正レベルLに基づいて利用率上限を算出して、記憶部12に記憶する(ステップS36)。ステップS36において、制御部10は、毎回同じ利用率上限の初期値Ufmax0に、図5に示す各補正レベルLに対応する利用率上限の差分ΔUfmaxを加算する。
ステップS36において利用率上限を算出して記憶したら、制御部10は、今回の補正における補正レベルLおよび次回の補正における補正方向を、記憶部12に記憶する(ステップS37)。ステップS37の後、制御部10は、図4に示す処理を終了する。制御部10は、ステップS37において記憶した今回の補正における補正レベルLおよび次回の補正における補正方向を、次回の補正レベルの更新に用いることができる。
一方、ステップS35において判定された補正レベルLが許容範囲でない場合、制御部10は、補正レベルLを修正して、さらに次回の補正に用いる補正方向を反転させる(ステップS38)。例えばステップS34において、例えば補正レベルLが負(−)方向であって、判定された補正レベルが許容範囲の下限を下回ったとする。この場合、ステップS38において、制御部10は、補正レベルLを正(+)方向に1レベル増大させ、さらに次回の補正に用いる補正方向を負(−)方向から正(+)方向に反転させる。そして、制御部10は、ステップS36において、この修正した補正レベルに基づいて、利用率上限を算出する。さらに、制御部10は、ステップS37において、この修正した補正レベルと、次回の補正に用いる反転させた補正方向とを、記憶部12に記憶する。例えばステップS34において、例えば補正レベルLが正(+)方向であって、判定された補正レベルが許容範囲の上限を上回ったとする。この場合、ステップS38において、制御部10は、補正レベルLを負(−)方向に1レベル減少させ、さらに次回の補正に用いる補正方向を正(+)方向から負(−)方向に反転させる。そして、制御部10は、ステップS36において、この修正した補正レベルに基づいて、利用率上限を算出する。さらに、制御部10は、ステップS37において、この修正した補正レベルと、次回の補正に用いる反転させた補正方向とを、記憶部12に記憶する。
以下、図3および図4に示した処理に基づく動作の具体例を示す。図6は、各期間ごとに判定された補正レベルを用いて算出された、利用率上限の例を示す図である。
図6の左端の列に示す期間(第1〜第8)とは、図3において説明したように、それぞれ24時間を表す。本実施形態においては、図3において説明したように、各期間においては、最初の5時間の各測定値は積算せずに、その後の19時間の各測定値を積算し、これらの値に基づいて、図4に示した利用率上限の補正処理を行う。
図6に示す期間の右隣の列は、図4のステップS31にて算出した各期間ごとの発電効率Eを示す。また、図6に示す発電効率Eの右隣の列は、図4のステップS32にて判定する、前回の期間の発電効率Eと、今回の期間の発電効率Eとの大小関係を示す。また、図6に示す発電効率Eの大小関係の右隣の列は、図4のステップS24に判定される補正レベルLを示す。そして、図6の右端の列は、ステップS36で算出される利用率上限を示す。
図6に示す各期間の発電効率Eの値から、制御部10は、図6に示す発電効率Eの大小関係を判定することができる。また、制御部10は、図6に示す発電効率Eの大小関係(図4のステップS32)から、補正レベルLの補正方向を判定することができる(図4のステップS33をスキップするか否か)。
図6に示す例では、利用率上限の初期値Ufmax0=71.0%としている。また、図6に示す例では、第2期間の発電効率Eは、第1期間の発電効率Eよりも大きい(ステップS32においてNo)。したがって、制御部10は、次回の補正に用いる補正方向を反転させない(今回の補正方向が維持される)。図6に示す例では、初期状態に用いる(すなわち今回の補正に用いる)補正方向は、正(+)方向とした。このため、制御部10は、ステップS34において、補正レベルLをゼロから正(+)方向に1つ増大させる。この時、図5から、補正レベルL=1に対応する利用率上限の差分ΔUfmax=0.5となる。したがって、上述の式(4)から、利用率上限Ufmaxは、図6に示すように71.0+0.5=71.5%となる。
次に、第3期間においても、前回よりも今回の方が、発電効率Eが大きい。したがって、制御部10は、次回の補正に用いる補正方向を反転させずに(正(+)方向のまま)、今回の補正に用いる補正レベルLをゼロから正(+)方向に1つ増大させる(補正レベルL=2)。図5から、補正レベルL=2に対応する利用率上限の差分ΔUfmax=1.0となる。したがって、上述の式(4)から、利用率上限Ufmaxは、図6に示すように71.0+1.0=72.0%となる。
このように、本実施形態において、制御部10は、セルスタック24に供給される燃料ガスのうちセルスタック24の発電に利用される燃料ガスの割合の上限値(利用率上限)を設定し、当該利用率上限を所定の期間ごとに補正するように制御する。特に、制御部10は、第1期間におけるセルスタック24の発電効率と、第1期間の後の第2期間におけるセルスタック24の発電効率とに基づいて、第2期間の後の第3期間における利用率上限を補正するのが好適である。また、制御部10は、各期間における利用率上限の補正レベルを設定し、この正レベルの増減に応じて、利用率上限を上昇または下降させる。ここで、制御部10は、補正を初回に行う場合、上限値の補正レベルを増やしてもよい。
図6に示す例では、第4期間においても、前回よりも今回の方が、発電効率Eが大きい。したがって、次回の補正に用いる補正方向を反転させずに(正(+)方向のまま)として、今回の利用率上限の補正処理において、補正レベルL=3となる。図5から、補正レベルL=3に対応する利用率上限の差分ΔUfmax=1.5となる。したがって、利用率上限Ufmaxは、図6に示すように71.0+1.5=72.5%となる。
次の第5期間においては、前回よりも今回の方が、発電効率Eが小さい(ステップS32においてYes)。したがって、制御部10は、次回の補正に用いる補正方向を反転させる(正(+)方向から負(−)方向にする)。また、制御部10は、ステップS34において、補正レベルLをゼロから正(+)方向に1つ増大させる(前回(第4期間)における補正処理で、次回(第5期間)の補正に用いる補正方向は正(+)方向となっている)。この時、図5から、補正レベルL=4に対応する利用率上限の差分ΔUfmax=2.0となる。したがって、上述の式(4)から、利用率上限Ufmaxは、図6に示すように71.0+2.0=73.0%となる。
次の第6期間においては、再び、前回よりも今回の方が、発電効率Eが大きい(ステップS32においてNo)。したがって、制御部10は、次回の補正に用いる補正方向を反転させない(負(−)方向のまま)。また、制御部10は、ステップS34において、補正レベルLをゼロから負(−)方向に1つ減少させる(前回(第5期間)における補正処理で、次回(第6期間)の補正に用いる補正方向は正(+)方向となっている)。この時、図5から、補正レベルL=3に対応する利用率上限の差分ΔUfmax=1.5となる。したがって、利用率上限Ufmaxは、図6に示すように71.0+1.5=72.5%となる。
次の第7期間においては、前回よりも今回の方が、発電効率Eが小さい(ステップS32においてYes)。したがって、制御部10は、次回の補正に用いる補正方向を反転させる(負(−)方向から正(+)方向にする)。また、制御部10は、ステップS34において、今回の補正に用いる補正レベルL=2とする。この時の利用率上限の差分ΔUfmax=1.0となる。したがって、利用率上限Ufmaxは、図6に示すように71.0+1.0=72.0%となる。
次の第8期間においては、前回よりも今回の方が、発電効率Eが大きい(ステップS32においてNo)。したがって、制御部10は、次回の補正に用いる補正方向を反転させない(正(+)方向のまま)。また、制御部10は、ステップS34において、今回の補正に用いる補正レベルL=3とする。この時の利用率上限Ufmaxは、71.0+1.5=72.5%となる。
このように、本実施形態において、制御部10は、第1期間におけるセルスタック24の発電効率よりも、第2期間におけるセルスタック24の発電効率の方が高い場合、第3期間において、利用率上限の補正レベルの増減のうち前回の補正と同じ方を行うのが好適である。一方、制御部10は、第1期間におけるセルスタック24の発電効率よりも、第2期間におけるセルスタック24の発電効率の方が低い場合、第3期間において、利用率上限の補正レベルの増減のうち前回の補正とは逆の方を行うのが好適である。
図7は、図6に示した発電効率Eと補正レベルLとの関係をグラフで示した図である。
図7において、横軸は補正レベルLを示し、縦軸は発電効率Eを示している。図6に示した第1期間から第2期間の間の変化を(1)と記し、これは図7に示すグラフ上における(1)の変化に対応する。同様に、図6に示した第2期間から第8期間の間の変化をそれぞれ(2)〜(7)と記し、これは図7に示すグラフ上における(2)〜(7)の変化にそれぞれ対応する。
図7の(1)から(3)に示すように、発電効率Eが上昇しているうちは、補正レベルLを徐々に大きくすることで、利用率上限を増大させる方向に補正している。一方、図7の(4)に示すように、発電効率Eが上昇から下降に転じると、その次に行われる補正は、補正レベルを増大させる正(+)方向から減少させる負(−)方向になる。その後、図7の(5)に示すように、発電効率Eが上昇しているうちは、補正レベルLを徐々に小さくすることで、利用率上限を増大させる方向に補正している。また、図7の(6)に示すように、発電効率Eが上昇から下降に転じると、その次に行われる補正は、補正レベルを減少させる負(−)方向から増大させる正(+)方向になる。
以上のように、本実施形態によれば、燃料電池に供給する燃料の流量を動的に補正することができる。したがって、セルスタック24をはじめ発電装置1を構成する各機能部の個体差または経年変化などが生じたとしても、実際の燃料利用率Ufと、目標利用率Ufrefとの間の乖離は動的に補正される。このため、本実施形態にかかる発電装置1によれば、発電効率を有利に高めることができる。
(第2実施形態)
次に、本開示の第2実施形態に係る発電装置について説明する。
第2実施形態に係る発電装置は、第1実施形態で説明した発電装置1と同じ構成を採用することができる。したがって、第2実施形態に係る発電装置の構成についての説明は省略する。以下、第1実施形態と同様の内容の説明は、適宜、簡略化または省略する。
第2実施形態に係る発電装置は、第1実施形態で説明した発電装置1において、その制御の一部を変更するものである。
図8は、主として、第2実施形態に係る発電装置における補正レベルの更新について説明している。第2実施形態においては、第1実施形態において説明した図4に示した動作の代わりに、図8に示す動作を実行する。
第1実施形態においては、図4に示したように、ステップS32において、今回の発電効率Eが前回の発電効率Eを下回っているか否か判定した。すなわち、ステップS32においては、前回と今回の発電効率E同士を比較した。これに対し、第2実施形態においては、図8に示すように、ステップS31の次に、発電効率Eを補正したもの同士を比較する(ステップS41)。
具体的には、第2実施形態において、制御部10は、各期間ごとに、発電効率Eから、補正レベルLの所定の係数倍を減じたもの同士を比較する。例えば、今回の発電効率Eを補正したものとして、今回の発電効率E−0.1×今回の補正レベルLを算出する。また、例えば、前回の発電効率Eを補正したものとして、前回の発電効率E−0.1×前回の補正レベルLを算出する。そして、図8に示すように、ステップS41で、今回の発電効率Eを補正したもの(E’)≦前回の発電効率Eを補正したもの(E’)である場合(Yes)、ステップS33に進み、そうでない場合(No)、ステップS33をスキップしてステップS34に進む。
図9は、図6と同様に、各期間ごとに判定された補正レベルを用いて算出された、利用率上限の例を示す図である。図9に示す各期間において、補正した発電効率E’=発電効率E−0.1×補正レベルLとして算出する。各期間における補正した発電効率E’を示すと、以下のようになる。
第1期間:補正した発電効率E’=52.00−0.1×0=52.00
第2期間:補正した発電効率E’=52.27−0.1×1=52.17
第3期間:補正した発電効率E’=52.46−0.1×2=52.26
第4期間:補正した発電効率E’=52.55−0.1×3=52.25
第5期間:補正した発電効率E’=52.46−0.1×2=52.26
第6期間:補正した発電効率E’=52.50−0.1×1=52.40
図8に示すように、制御部10は、ステップS41の後、第1実施形態と同様に、補正した発電効率E’の前回と今回との大小関係の比較に基づいて、次回の補正に用いる補正方向を判定する(図8のステップS33をスキップするか否か)。
また、第1実施形態においては、ステップS36において、制御部10は、毎回同じ利用率上限の初期値Ufmax0に、図5に示す各補正レベルLに対応する利用率上限の差分ΔUfmaxを加算した。これに対し、第2実施形態においては、ステップS42において、制御部10は、図5に示す各補正レベルLに対応する利用率上限の差分ΔUfmaxを加算する際に、それまでの利用率上限の値を引き継ぐものとする。さらに、図5に示す各補正レベルLに対応する利用率上限の差分ΔUfmaxについては、補正レベルLが変化した際に増減するぶんのみを、それまでの利用率上限の値に加算または減産することにより補正を行う。
例えば、図9に示すように、第2期間における利用率上限Ufmaxは71.5%である。この値は、第1期間の利用率上限Ufmax=71.0%に、利用率上限の増分0.5を加算したものである(第2期間において補正レベルLが1つ増大)。また、次回(第3期間)の補正方向は正(+)方向である。
また、第3期間における利用率上限Ufmaxは72.0%である。この値は、第2期間の利用率上限Ufmax=71.5%に、利用率上限の増分0.5を加算したものである(第3期間において補正レベルLが1つ増大)。また、次回(第4期間)の補正方向は正(+)方向である。
第4期間における利用率上限Ufmaxは72.5%である。この値は、第3期間の利用率上限Ufmax=72.0%に、利用率上限の増分0.5を加算したものである(第4期間において補正レベルLが1つ増大)。また、次回(第5期間)の補正方向は負(−)方向である。
第5期間における利用率上限Ufmaxは72.0%である。この値は、第4期間の利用率上限Ufmax=72.5%に、利用率上限の減少分0.5を減算したものである(第5期間において補正レベルLが1つ減少)。また、次回(第6期間)の補正方向は負(−)方向である。
第6期間における利用率上限Ufmaxは71.5%である。この値は、第5期間の利用率上限Ufmax=72.0%に、利用率上限の減少分0.5を減算したものである(第6期間において補正レベルLが1つ減少)。また、次回の補正方向は負(−)方向である。
このように、本実施形態において、制御部10は、各期間におけるセルスタック24の発電効率を、それぞれの期間における利用率上限の補正レベルに応じて補正した発電効率に基づいて、利用率上限を補正するのが好適である。その他の動作については、第1実施形態と同様に行うことができる。
図10は、第1実施形態において図7に示したのと同様に、図9に示した発電効率Eおよび補正した発電効率E’と補正レベルLとの関係をグラフで示した図である。
図9に示した第1期間から第6期間の間の変化をそれぞれ(1)〜(5)と記し、これは図10に示すグラフ上における(1)〜(5)の変化にそれぞれ対応する。また、図10においては、補正する前の発電効率Eによるグラフを、E(1)〜E(4)まで、E(L)として破線で示してある。また、図10においては、補正した発電効率E’によるグラフを、E’(1)〜E’(4)まで、E’(L)として実線で示してある。
以上説明したように制御しても、本実施形態にかかる発電装置によれば、発電効率を有利に高めることができる。特に、本実施形態においては、利用率上限Ufmaxが過度に高くならないように補正を行うことができる。利用率上限Ufmaxが高くなり過ぎないようにすることで、燃料電池に燃料ガスが充分に供給されるようにすることができる。
本発明を諸図面および実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形および修正を行うことが容易であることに注意されたい。したがって、これらの変形および修正は本発明の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各機能部、各手段、各ステップなどに含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の機能部およびステップなどを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。また、上述した本発明の各実施形態は、それぞれ説明した各実施形態に忠実に実施することに限定されるものではなく、適宜、各特徴を組み合わせたり、一部を省略したりして実施することもできる。
例えば、図1は、発電装置1を構成する各機能部を概略的に示すものである。上述した各実施形態において、燃料電池にガスが供給されるとは、例えばガス供給部32から燃料電池モジュール20にガスが供給されるものとしてもよい。また、上述した実施形態において、燃料電池にガスが供給されるとは、例えばガス供給部32からセルスタック24にガスが供給されるものとしてもよい。
また、図1に示した発電装置1においては、セルスタック24に供給される燃料ガスの量と、セルスタック24が発電する「電流」に基づいて、セルスタック24の発電効率を算出した。しかしながら、本実施形態にかかる発電装置においては、セルスタック24に供給される燃料ガスの量と、セルスタック24が発電する「電圧」に基づいて、セルスタック24の発電効率を算出してもよい。この場合、電流センサ70に代えて、セルスタック24が発電する電圧を検出可能な位置に、電圧計を設置するのが好適である。したがって、本開示において、電流センサ70または上述した電圧計を、単に「発電計測部」と記すことがある。すなわち、本開示において、発電計測部は、セルスタック24が発電する電流または電圧を計測する。
上述した各実施形態においては、ガス供給部32が「ガス計測部」としても機能する例について説明した。また、上述した各実施形態においては、ガス計測部として機能するガス供給部32は、セルスタック24に供給される燃料ガスの量を計測する例について説明した。このようにして、上述した各実施形態においては、ガス供給部32の燃料流量計(ガス計測部)が計測した燃料ガスの流量に基づいて、制御部10は、燃料流量値Fを取得した。
しかしながら、本実施形態において、ガス計測部として機能するガス供給部32が計測するのは、セルスタック24に供給される燃料ガスの量に限定されない。例えば、ガス計測部として機能するガス供給部32は、セルスタック24に供給される燃料ガスを改質する前の原燃料ガスの量を計測してもよい。この場合、制御部10は、ガス供給部32が計測した原燃料ガスの量と、セルスタック24が発電する電流または電圧とに基づいて、セルスタック24の発電効率を算出することができる。
また、上述した各実施形態においては、制御部10は、各期間における燃料利用率の上限値(利用率上限Ufmax)の補正レベルLを設定し、この補正レベルLの増減に応じて、利用率上限Ufmaxを上昇または下降させた。しかしながら、本実施形態において、燃料利用率の上限値を上昇または下降させる際に、上述のような補正レベルを設定する以外の制御を行ってもよい。例えば、制御部10は、補正レベルLを介さずに、直接、図5において説明した利用率上限の差分ΔUfmaxに基づいて、燃料利用率の上限値を上昇または下降させてもよい。
以上の開示においては、本実施形態として、セルスタック24を備える発電装置1について説明した。しかしながら、本開示の実施形態は、セルスタック24を備える発電装置1に限定されるものではない。
例えば、本開示の実施形態は、セルスタック24を備えずに、セルスタック24を外部から制御する、燃料電池の制御装置として実現することもできる。このような実施形態の一例を、図11に示す。図11に示すように、本実施形態に係る燃料電池の制御装置2は、例えば制御部10と、記憶部12とを含んで構成される。ここで、制御部10が内部メモリを有する場合には、制御装置2は記憶部12を備えなくてもよい。本実施形態にかかる燃料電池の制御装置2は、セルスタック24に供給される燃料ガスのうちセルスタック24の発電に利用される燃料ガスの割合の上限値を設定する。また、燃料電池の制御装置2は、このようにして設定された上限値を、所定の期間ごとに補正するように制御する。
さらに、本開示の実施形態は、例えば、上述したような燃料電池の制御装置(制御部10)に実行させる制御プログラムとして実現することもできる。すなわち、本実施形態にかかる燃料電池の制御プログラムは、セルスタック24に供給される燃料ガスのうちセルスタック24の発電に利用される燃料ガスの割合の上限値を設定する設定ステップを実行させる。また、この制御プログラムは、制御装置(制御部10)に、設定ステップにおいて設定された上限値を、所定の期間ごとに補正するように制御する補正制御ステップを実行させる。