以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
(第1の実施形態)
まず、本発明の一実施形態に係る電動工具の構成について、図面を使用しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る電動工具の外観を示す斜視図であり、図2は、本発明の一実施形態に係る電動工具に備わる本体に設けられる把持部の上端部分を示す斜視図である。
本発明の一実施形態に係る電動工具100は、駆動源となる不図示のモータの電源として、定格電圧が異なる複数種類の電池パック150の何れか1つを選択して本体110に装着可能な電気掃除機である。より具体的には、本体110の一端には、外気を吸引するための吸引口112が設けられている。この吸引口112には、細長略円筒状の延長管114が着脱可能に連通接続されている。また、この延長管114の先端には、例えば、室内の床面に載置させて、床面の塵埃を吸い込む吸引口体としての床ノズル116が着脱可能に連通接続されている。
本体110の側面には、粉塵が除去された空気を排出する排出口118が設けられている。本体110の他端側には、作業者の手によって把持される把持部120が設けられている。把持部120の上端部分には、電動工具100の作業者が把持部120を握った状態で電動工具100を操作できるように、操作部122が設けられている。
図2に示すように、操作部122には、作業者が電動工具100に駆動指令を入力するための駆動スイッチSW1が設けられている。この駆動スイッチSW1は、モータ駆動中に操作することで、後述する運転モードの切り替えが可能である。また、操作部122には、作業者が電動工具100に停止指令を入力するための停止スイッチSW2が設けられている。さらに、操作部122の前方には、電動工具100の状態を作業者に示すLED等からなる表示部124が設けられている。
本体110の内部には、図1に図示しないファン126(図6参照)と、モータ128(図6参照)が収容されている。ファン126は、外気を吸引口112から本体110内に吸引して、排出口118から排出させる機能を有する。ファン126は、吸引した外気から粉塵を除去するフィルタを挟んで、吸引口112との対向位置に配置されている。
モータ128は、ファン126の吸引口3と反対側に配置されている。そして、モータ128の回転軸には、ファン126が連結されている。このため、モータ128は、回転駆動によりファン126を回転させて、外気を本体110内に吸引させることができる。
把持部120の下端部分には、電池パック150が装着される後述する接続ターミナル130(図3参照)が設けられている。本実施形態では、本体110と電池パック150との接続箇所の態様を定格電圧に応じて変更されるように構成することによって、電池パック150を本体110に取り付けた際に、当該電池パック150が何れの定格電圧であるかを確実に判別可能にしたことを特徴とする。
次に、本発明の一実施形態に係る電動工具100の本体110と電池パック150との接続箇所の構成について、図面を使用しながら説明する。図3は、本発明の一実施形態に係る電動工具に備わる本体の把持部の下端部分に設けられる接続ターミナルの構成を示す平面図であり、図4は、本発明の一実施形態に係る電動工具に装着される定格電圧が18Vの電池パックの接続部の構成を示す平面図であり、図5は、本発明の一実施形態に係る電動工具に装着される定格電圧が14.4Vの電池パックの接続部の構成を示す平面図である。
本実施形態では、図3に示すように、本体110の他端側に設けられる把持部120の下端部分には、接続ターミナル130が収納されている。接続ターミナル130には、図3に示すように、左側から順に正極ターミナルT(+)、温度通信ターミナルTH、負極ターミナルT(−)、過放電ターミナルDS、及び過放電解除ターミナルVCCがそれぞれ設けられている。
また、電池パック150の接続ターミナル130との接続部152には、図4に示すように、接続ターミナル130の各通信ターミナルT(+)、TH,T(−)、DS、VCCに対応した正極端子B(+)、温度通信端子th、負極端子B(−)、過放電端子ds、及び過放電解除端子vccがそれぞれ設けられている。具体的には、電池パック150の接続部152を接続ターミナル130と接続させた際に、接続ターミナル130の各通信ターミナルT(+)、TH,T(−)、DS、VCCがスライドする溝部にそれぞれ凸状の正極端子B(+)、温度通信端子th、負極端子B(−)、過放電端子ds、及び過放電解除端子vccが設けられている。
そして、把持部120の下端部分に電池パック150を装着された時に、接続ターミナル130の正極ターミナルT(+)、負極ターミナルT(−)、過放電ターミナルDS、過放電解除ターミナルVCC、及び温度通信ターミナルTHは、それぞれ電池パック150の正極端子B(+)、負極端子B(−)、過放電端子ds、過放電解除端子vcc、及び温度通信端子thにそれぞれ接続される。
本実施形態の電動工具100で使用される電池パック150としては、図4に示す定格電圧が18Vの電池パック150aと、図5に示す定格電圧が14.4Vの電池パック150bの2種類が使用される。そして、この電池パック150a、150bのうち何れか1つを選択して本体110に電源として装着される。
本実施形態では、電池パック150の接続部152を本体110の基端側に設けられた接続ターミナル130と接続させた際に、接続部152の各端子B(+)、B(−)、ds、vcc、thとの接続順序で電池パック150の定格電圧の種類を判別することを特徴とする。すなわち、接続部152の各端子B(+)、B(−)、ds、vcc、thが電池パック150を本体110に接続した際に、当該電池パック150の定格電圧の情報を判別する定格電圧情報判別手段として機能する。
本体110に電池パック150を装着する場合、正極ターミナルT(+)と正極端子B(+)、負極ターミナルT(−)と負極端子B(−)が接続された後に、過放電ターミナルDSと過放電端子ds、過放電解除ターミナルVCCと過放電解除端子vcc、温度通信ターミナルTHと温度通信端子thが接続される。
本実施形態の電動工具100に使用する電池パック150は、本体110に電池パック150を装着する方向に関して、過放電端子dsと、過放電解除端子vccと、温度通信端子thとを異なる位置に設けて、本体110の接続ターミナル130に接続する順番を変えている。また、これら端子ds、vcc、thの接続の順番を定格電圧が異なる電池パック毎に変更している。
具体的には、定格電圧が18Vの電池パック150aは、図4に示すように、過放電解除端子vccを過放電端子dsより下側に設けることで、本体110に電池パック150aを装着する際に、過放電解除端子vcc、過放電端子dsの順番で接続される。一方、定格電圧が14.4Vの電池パック150bは、図5に示すように、過放電端子dsを過放電解除端子vccより下側に設けることで、本体110に電池パック150bを装着する際に、過放電端子ds、過放電解除端子vccの順番で接続される。
本実施形態では、電池パック150の電圧切替処理は、過放電通信の接続と、過放電解除通信の接続との順番を後述するマイコン162(図6参照)が検知するように構成されている。このため、過放電通信の接続が最初にされた場合は、定格電圧が18Vの電池パック150aが装着された旨が検知され、過放電解除通信の接続が最初にされた場合は、定格電圧が14.4Vの電池パック150bが装着された旨が検知される。
本実施形態では、過放電通信、過放電解除通信の信号端子が接続される順番によって、電池パック150a、150bの定格電池情報を判別しているので、電池パック150a、150bの取り付け時には、通信端子よりも先に電源端子を接続するようにしなければならない。具体的には、電源が接続されて、マイコン162(図6参照)が起動した後に、信号端子が接続されるようにするために、5mm程度に接触位置をずらしておく必要がある。かかる接触位置をずらすのに際しては、電池側の端子をずらしても良く、工具側の接続ターミナルをずらしても良い。
また、過放電通信や過放電解除通信の信号端子の配置は、マイコン162(図6参照)が認識できれば、僅かなずらし量であっても差し支えない。ただし、電池パック150と電動工具100の本体110とのガタツキ等を考慮して、少なくとも0.5mm以上をずらして配置した方が好ましい。
さらに、本実施形態の残量表示制御は、電圧切替制御の作動に応じて、残量表示で検知する電池電圧が変更され、電池パック150の定格電圧に応じた電池残量を表示できるようになっている。すなわち、本実施形態では、定格電圧が異なる電池パック150を使用しても、正確な電池残量の表示ができる。
次に、本発明の一実施形態に係る電動工具の動作制御の詳細について、図面を使用しながら説明する。図6は、本発明の一実施形態に係る電動工具の回路構成を示すブロック図である。
本発明の一実施形態に係る電動工具100の本体110の内部には、図6に示すように、前述したファン126、モータ128、接続ターミナル130に加えて、スイッチユニット121、LED123、及び制御回路160が収容されている。
モータ128は、ブラシ付き直流モータとして構成されている。モータ128のコイル巻線の一端は、接続ターミナル130の正極ターミナルT(+)に接続されている一方、モータ128のコイル巻線の他端は、後述のスイッチング素子168とシャント抵抗器R1とを介して、接続ターミナル130の負極ターミナルT(−)に接続されている。
スイッチユニット121は、前述した駆動スイッチSW1及び停止スイッチSW2を備えており、制御回路160と接続されて前述した操作部122を構成する。駆動スイッチSW1及び停止スイッチSW2の各々は、作業者が操作しているときにオン状態となり、作業者が操作していないときにオフ状態となる常開型の操作スイッチとして構成されている。本実施形態では、駆動スイッチSW1が操作される度に、モータ128の駆動力が切り替えられ、停止スイッチSW2が操作されると、モータ128が停止される。
LED123は、前述した表示部124を点灯や点滅をさせるための光源である。本実施形態のLED123として、赤と緑の2色を発光可能なものが使用されている。
制御回路160は、電源回路161、マイコン162、電池電圧検出回路163、表示LED回路164、駆動操作検出回路165、停止操作検出回路166、モータ駆動回路167、スイッチング素子168、電流検出回路169、及び残量切替回路170を備えている。
電源回路161は、ダイオードD1を介して電源回路161に入力される電池パック150の出力電圧(以下、「電池電圧」と称する。)から制御回路160の各部を動作させるための電圧VCCを生成するように構成されている。
マイコン162は、電動工具100の主制御処理の実行を司る機能を有し、少なくともCPU、メモリ、I/O、A/D変換器、及びクロック信号発生器を含む周知のマイクロコンピュータとして構成されている。
電池電圧検出回路163は、電池電圧の値を検出し、検出した値を示すアナログ形式の電池電圧信号をマイコン162に出力するように構成されている。
表示LED回路164は、マイコン162から表示LED回路164に入力される表示信号に従ってLED123を点灯又は消灯するように構成されている。
駆動操作検出回路165は、駆動スイッチSW1が操作されているか否かを示す検出信号をマイコン162に出力するように構成されている。
停止操作検出回路166は、停止スイッチSW2が操作されているか否かを示す検出信号をマイコン162に出力するように構成されている。
モータ駆動回路167は、マイコン162によって設定されたデューティ比を有するパルス幅変調信号(PWM信号)を出力するように構成されている。
スイッチング素子168は、モータ128を駆動又は停止するように構成されている。本実施形態のスイッチング素子168は、FETであるが、FET以外のスイッチング素子であってもよい。スイッチング素子168の入力段は、モータ駆動回路167に接続される一方で、スイッチング素子168の出力段は、モータ128のコイル巻線の他端と、接続ターミナル130の負極ターミナルT(−)との間に挿入されている。
すなわち、本実施形態では、スイッチング素子168は、上述のPWM信号によってオン/オフされ、電池パック150の正極端子B(+)からモータMを介して電池パック150の負極端子B(−)へと流れる電流を断続することで、モータ128を駆動又は停止するように構成されている。モータ128のコイル巻線の両端には、スイッチング素子168が合わされたときにモータ128のコイル巻線に流れている電流をコイル巻線に還流させることでスイッチング素子168をコイル巻線に発生する逆起電力から保護するためのダイオードD2が並列接続されている。
電流検出回路169は、スイッチング素子168の出力段と接続ターミナル130の負極ターミナルT(−)側との間に挿入された上述のシャント抵抗器R1の両端に発生する電圧値を検出することでモータ128に流れる電流の値を検出し、検出した値を示すアナログ形式の電流検出信号をマイコン162に出力するように構成されている。
残量切替回路170は、定格電圧情報判別手段となる電池パック150の接続部152と本体110の接続ターミナル130とを接続させた際における電池パック150の定格電圧の判別結果に基づいて、電池パック150の定格電圧に応じた電池残量を表示する電池電圧の検知電圧を切り替える機能を有する。
本実施形態では、残量切替回路170は、接続ターミナル130の過放電ターミナルDS,過放電解除ターミナルVCC、及び温度通信ターミナルTHに接続されている。このため、残量切替回路170は、これらのターミナルDS、VCC、THと接続される電池パック150の接続部152の過放電端子ds、過放電解除端子vcc、温度通信端子thの接続順序に基づいて、電池パック150の定格電圧に応じた電池残量を表示する電池電圧の検知電圧を切り替える。
上述のように構成された制御回路160では、マイコン162が主制御処理を実行することで電動工具100の動作を制御する。マイコン162は、作業者の駆動スイッチSW1の操作で駆動操作検出回路165から検出信号が入力されると、電動工具100の主制御処理を開始する。
具体的には、検出信号がマイコン162に入力されると、主制御処理は、モータ駆動回路167を実行して、モータ駆動回路167からPWM信号がスイッチング素子168に出力され、このPWM信号に応じてスイッチング素子168がオン/オフして、モータ128の回転を制御する。そして、この主制御処理は、モータ制御の他に、本体110に装着された電池パック150の過放電を防止する過放電防止制御と、電池パック150の電池残量をLED123に表示する残量表示制御とを実施する電池パック制御処理、運転中の運転モードを切り替える運転モード切替処理、及び残量表示で検知する電池電圧を変更する電圧切替処理を行っている。
電池パック制御処理における過放電防止処理は、電池パック150の電池電圧が放電等により閾値V0に達すると、電池パック150から過放電信号がマイコン162に出力され、モータ128の回転を停止する処理を行うものである。なお、この閾値V0は、装着された電池パック150の定格電圧毎に利用可能な電池電圧の範囲が異なるため、それぞれの利用可能な電池範囲の下限に応じた値を設定している。つまり、定格電圧が18Vの電池パック150aでは、放電閾値としてV0a、定格電圧が14.4Vの電池パック150bでは、V0bを設定して、過放電防止処理を行っている。
電池パック制御処理における残量表示処理は、電圧検出回路163で検出した電池電圧に応じて、LED123の点灯又は消灯を制御するものである。具体的には、下記の表1に示すように、電池パック150の利用可能な電圧範囲において、上限の満充電時の電圧V3を100%、下限の過放電時の電圧V0を0%として、100〜40%(V3〜V2)、40〜10%(V2〜V1)、10〜0%(V1〜V0)、0%(V0)の4つの帯域に応じてLED123の表示を変更するように設定している。
運転モード切替処理は、駆動スイッチSW1が操作される度に、モータ128の駆動力を「強」から「弱」、又は、「弱」から「強」に切り替える処理である。
本実施形態の特徴となる電圧切替処理は、本体110に電池パック150を装着した際に、本体110の接続ターミナル130の各通信ターミナルT(+)、T(−)、DS、VCC、THに対する接続部152の各端子B(+)、B(−)、ds、vcc、thの接続順序で電池パック150の定格電圧の種類を判別したら、残量表示で検知する電池電圧を変更するものである。
具体的には、残量表示の電圧範囲が定格電圧18Vの電池パック用で設定されていた場合に、本体110に電池パック150を装着した際に、定格電圧が14.4Vの電池パック150bである旨を判別すると、電圧切替制御が作動して、18V電池パック用の電圧表示から14.4V電池パック用の電圧表示に変更される。
また、本実施形態では、残量表示が変更された時に、LED123を緑で5秒間の点滅をさせて、作業者に残量表示の検知電圧が変更された旨を報知している。なお、電動工具100を使用中に、設定されている残量表示の電圧帯を作業者へ明確に認識させるために、下記の表2に示すように、電池パックの定格電圧に応じてLED123の点灯色を変更してもよい。
次に、本発明の一実施形態に係る電動工具100の作用・効果について、図面を使用しながら説明する。図7は、従来の電動工具に備わる電池パックの一態様の接続部の構成を示す平面図であり、図8は、従来の電動工具による利用可能な電圧範囲と電池残量の検知電圧を示す説明図であり、図9は、本発明の一実施形態に係る電動工具による利用可能な電圧範囲と電池残量の検知電圧を示す説明図である。
従来では、図7に示すように、電池パック50の定格電圧が異なる場合でも、電池パック50の接続部52に設けられる各端子B(+)、B(−)、ds、vcc、thのうち、過放電端子ds、過放電解除端子vcc、及び温度通信端子thが本体に電池パック50を装着する方向に対して同じ位置に設けられていた。このため、定格電圧が異なる電池パック50として、例えば、定格電圧が18Vの電池パックと定格電圧が14.4Vの電池パックを使用した場合、図8に示すように、各電池電圧の利用可能な範囲が異なっていた。
すなわち、利用範囲が重複した同じ電池電圧帯であっても、過放電閾値V0まで使用可能な残りの容量(電池残量)が異なっていた。このため、定格電圧が異なる電池パックを用いる電動工具において、定格電圧が18Vの電池パック用の電池残量の表示が設定されていた場合、定格電圧が18Vの電池パックよりも定格電圧が低い14.4Vの電池パックを使用すると、14.4V電池パックの過放電閾値まで十分利用可能な電池容量が残った状態であっても、電池残量が少なくなった旨を通知することになり、定格電圧が14.4Vの電池パックの電池残量を十分に利用することができなかった。このことから、各電池電圧の利用可能な範囲が異なるため、作業者に適切な電池残量を通知することが困難であった。
これに対して、本実施形態の電動工具100では、本体110に電池パック150を装着した際に、本体110の接続ターミナル130の各通信ターミナルT(+)、T(−)、DS、VCC、THに対する接続部152の各端子B(+)、B(−)、ds、vcc、thの接続順序で電池パック150の定格電圧の種類を判別したら、残量表示で検知する電池電圧を変更するようにしている。
具体的には、図9に示すように、残量表示の電圧範囲が定格電圧18Vの電池パック用で設定されていた場合に、本体110に定格電圧が14.4Vの電池パック150bを装着すると、過放電解除端子vcc、過放電端子dsの順番で接続されるので、これらの端子vcc、dsの接続順序の変更により、電圧切替制御が作動して、表示0で過放電を検知する電池電圧は、18V電池パック用のV0aから14.4V電池パック用のV0bに変更される。また、18V電池パック用のV1a及びV2aは、14.4V用のV1b及びV2bに変更される。
このように、本実施形態では、上記の構成とすることで、定格電圧が異なる複数の電池パック150a、150bを使用可能とされた電動工具100において、それぞれの電池パック150a、150bの利用可能な範囲と、本体110の表示部124に表示する電池残量との大きな差を解消し、定格電圧が異なる電池パック150a、150bを選択的に使用しても、作業者に適切な電池残量を通知することができる。すなわち、定格電圧が異なる電池パック150a、150bを使用しても、正確な残量表示ができるようになる。また、従来のように、余分な識別端子が不要となるので、電動工具100のコストアップや電池着脱荷重を低減することができる。
特に、本実施形態の電動工具100は、高機能化に伴い装着する電池パック150の定格電圧が14.4Vから18Vに増大された場合において、例えば、建設現場等のような商用電源の供給が困難な屋外で使用中に、18Vの電池パック150aの電池残量がなくなり、交換を余儀なくされたにも関わらず、18Vの電池パック150aのストックがないときに、14.4Vの電池パック150bを代用できる。
また、本実施形態の電動工具100は、本体110と電池パック150との接続箇所の態様を定格電圧の大きさに応じて変更しているので、電池パック150を本体110に取り付けた際に、当該電池パック150が何れの定格電圧であるかを確実に判別できる。このため、過放電を防ぐための放電下限電圧を適切な値に設定できるので、電池パック150の過放電を抑制して、電池パック150の劣化を防止した上で、過剰な電圧供給を防止して安全性を確保できる。
さらに、本実施形態の電動工具100は、上記の構成とすることで、定格電圧が異なる複数の電池パック150a、150bを使用可能としているので、使用する電池の判別結果に応じて実行可能な運転の内容を変えることができる。具体的には、使用する電池の定格電圧の大きさに応じて、電動工具100のモータ128の回転数の上限を変えたり、例えば、定格電圧が低いときは、強モードが使えないような実行可能な運転モードに制約を設けたりするように、使用する電池の定格電圧の大きさに応じて実行可能な運転の内容を変えられるので、極めて大きな工業的価値を有する。
なお、本実施形態では、電動工具100は、電池パック150の接続部152側の各端子B(+)、B(−)、ds、vcc、thの接続部位の位置を変更することによって、電池パック150の定格電圧の種類を判別できるようにしているが、本体110側の接続ターミナル130に設けられる通信端子によって、電池パック150の定格電圧の種類を判別できるようにしてもよい。
例えば、図10(A)に示すように、本体側の接続ターミナルの通信端子140として、14.4V用の接続端子140bを通信端子140の基端側、18V用の接続端子140aを通信端子140の先端側に設けて、各定格電圧に対応する通信端子を電池の挿入方向となる縦方向にそれぞれ配置して、電池側では、電圧に対応する位置に端子を配置するようにしてもよい。
従来では、図10(B)に示すように、14.4V用の接続端子40bと、18V用の接続端子40aを並列させて設けていたが、このように各定格電圧ごとの接続端子40a、40bを並列させると、基板の大型化につながるので、好ましくない。このため、本実施形態の変形例では、図10(A)に示すように、各定格電圧に対応する通信端子を電池の挿入方向となる縦方向にそれぞれ配置して、通信端子と接続される通信ターミナルの部位から定格電圧の情報を判別できるようにしている。
また、本実施形態では、判別用でない通信端子(vcc、ds、th)を用いて、電池パックの定格電圧情報を判別するようにしてもよい。例えば、過放電端子の出力電圧を18V電池では5Vに、14.4V電池では3Vにそれぞれ変えたり、温度検知用の通信端子THの抵抗を各定格電圧ごとに変えて、18V電池では、10kΩ〜30kΩ、14.4V電池では、100Ω〜1kΩとなるように、変えることによって、電池パックの定格電圧情報を判別してもよい。さらに、本体・工具の双方に無線通信モジュールを設けて、双方の間で定格電圧情報を送受信するようにしてもよい。
(第2の実施形態)
次に、本発明の他の実施形態に係る電動工具について、説明する。本実施形態の電動工具200の外観や操作部の構成は、第1の実施形態と同様なので、かかる説明は、省略する。
本実施形態の電動工具200は、本体に装着される電池パックの定格電圧情報を判別する態様が第1の実施形態の電動工具100と異なる。具体的には、本体に装着される電池パックの定格電圧情報を判別する定格電圧情報判別手段は、本体の把持部に設けられる駆動スイッチと停止スイッチの少なくとも何れかが長押し操作、すなわち、所定時間以上(例えば、5秒以上)の押圧を検知することによって、電池パックの定格電圧の情報を判別することを特徴とする。
次に、本発明の他の実施形態に係る電動工具の動作制御の詳細について、図面を使用しながら説明する。図11は、本発明の他の実施形態に係る電動工具の回路構成を示すブロック図である。
本発明の他の実施形態に係る電動工具200の本体210の内部には、第1の実施形態と同様に、図11に示すように、ファン226、モータ228、接続ターミナル230、スイッチユニット221、LED223、及び制御回路260が収容されている。ファン226、モータ228、接続ターミナル230、スイッチユニット221、及びLED223に関しては、第1の実施形態と同様であるので、これらの詳細な説明は、省略する。
制御回路260は、電源回路261、マイコン262、電池電圧検出回路263、表示LED回路264、駆動操作検出回路265、停止操作検出回路266、モータ駆動回路267、スイッチング素子268、電流検出回路269、及び残量切替回路270を備えている。このうち、電源回路261、マイコン262、電池電圧検出回路263、表示LED回路264、駆動操作検出回路265、停止操作検出回路266、モータ駆動回路267、スイッチング素子268、及び電流検出回路269に関しては、第1の実施形態と同様であるので、これらの詳細な説明は、省略する。
本実施形態では、残量切替回路270は、駆動スイッチSW1と停止スイッチSW2が同時に長押し操作されると、電池パック250の定格電圧が変更されたと判別されるので、当該判別結果に基づいて、電池パック250の定格電圧に応じた電池残量を表示する電池電圧の検知電圧を切り替える機能を有する。
また、本実施形態では、残量切替回路270は、図10に示すように、駆動スイッチSW1及び停止スイッチSW2に接続されている。このため、残量切替回路270は、駆動スイッチSW1及び停止スイッチSW2が同時に長押し操作された旨を検知すると、電池パック250の定格電圧に応じた電池残量を表示する電池電圧の検知電圧を切り替える。
上述のように構成された制御回路260では、マイコン262が主制御処理を実行することで電動工具200の動作を制御する。マイコン262は、作業者の駆動スイッチSW1の操作で駆動操作検出回路265から検出信号が入力されると、電動工具200の主制御処理を開始する。
具体的には、検出信号がマイコン262に入力されると、主制御処理は、モータ駆動回路267を実行して、モータ駆動回路267からPWM信号がスイッチング素子268に出力され、このPWM信号に応じてスイッチング素子268がオン/オフして、モータ228の回転を制御する。
そして、この主制御処理は、モータ制御の他に、本体210に装着された電池パック250の過放電を防止する過放電防止制御と、電池パック250の電池残量をLED223に表示する残量表示制御とを実施する電池パック制御処理、運転中の運転モードを切り替える運転モード切替処理、及び残量表示で検知する電池電圧を変更する電圧切替処理を行っている。主制御処理における電池パック制御処理及び運転モード切替処理に関しては、第1の実施形態と同様であるので、これらの詳細な説明は、省略する。
本実施形態の特徴となる電圧切替処理は、駆動スイッチSW1と停止スイッチSW2が同時に連続して操作(長押し)されると、残量表示で検知する電池電圧を変更するものである。
具体的には、残量表示の電圧範囲が定格電圧18Vの電池パック用で設定されていた場合に、駆動スイッチSW1と停止スイッチSW2が同時に長押し操作されると、定格電圧が14.4Vの電池パック150bに変更された旨が判別され、電圧切替制御が作動して、18V電池パック用の電圧表示から14.4V電池パック用の電圧表示に変更される。
なお、本実施形態では、駆動スイッチSW1と停止スイッチSW2が同時に長押し操作されると、定格電圧が14.4Vの電池パック150bに変更された旨が判別され、電圧切替制御が作動しているが、同時の長押しでなくても、駆動スイッチSW1と停止スイッチSW2の少なくともいずれか一方が長押し操作されていることを検知すれば、電圧切替制御が作動するようにしてもよい。
また、本実施形態では、第1の実施形態と同様に、残量表示が変更された時に、LED223を緑で5秒間の点滅をさせて、作業者に残量表示の検知電圧が変更された旨を報知している。なお、電動工具200を使用中に、設定されている残量表示の電圧帯を作業者へ明確に認識させるために、前述の表2に示すように、電池パックの定格電圧に応じてLED223の点灯色を変更してもよい。
以上のように構成された本実施形態の電動工具200では、定格電圧が異なる複数の電池パック250を使用可能とされた場合において、それぞれの電池パック250の利用可能な範囲と、本体210に表示する電池残量との大きな差を解消して、複数の異なる定格電圧の電池パック250を選択的に使用しても、作業者に適切な電池残量を通知することが可能となる。すなわち、定格電圧が異なる複数の電池パックを使用可能とされた電動工具において、それぞれの電池パック250の利用可能な範囲と、本体210の表示部となるLED223に表示する電池残量との大きな差を解消して、定格電圧が異なる電池パック250を選択的に使用しても、作業者に適切な電池残量を通知できる。
特に、本実施形態では、本体210に定格電圧の異なる電池パック250を取り付ける際に、駆動スイッチSW1と停止スイッチSW2の長押し操作によって、定格電圧が変更された旨を容易に報知されて、電池パック250が何れの定格電圧であるかを確実に判別できるので、極めて大きな工業的価値を有する。
なお、上記のように本発明の各実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項及び効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは、当業者には、容易に理解できるであろう。従って、このような変形例は、全て本発明の範囲に含まれるものとする。
例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義又は同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また、電動工具の構成、動作も本発明の各実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。