JP6759587B2 - d14圧電定数を有する圧電フィルムおよびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明はポリアミノ酸を用いたd14圧電定数を有する圧電フィルムおよびその製造方法に関し、より詳しくは、フィルムの機械的特性が改善されたd14圧電定数を有する圧電フィルムおよびその製造方法に関する。
加圧等の形状変化によって電荷を発生する材料を圧電体と言い、各種センサーやアクチュエーターに幅広く応用されている。従来より圧電体としてはPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)を始めとしたセラミックが利用されていたが、鉛を含有すること、高温焼成が必要なこと、可とう性を持たないこと、大面積化できないことなどに課題があった。このため、近年、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニリデン三フッ化エチレン共重合体(P(VDF/TrFE))などの高分子圧電材料(特許文献1〜3等)、圧電材料ではないが加圧によって電荷を発生するエレクトレット(特許文献4等)等の各種材料が提案されている。これらは、従来のセラミック圧電体では実現することができない大面積化や可とう性といった特徴を生かした用途で応用が期待されている。
しかしながら、これらの高分子圧電材料およびエレクトレットは温度変化に依る電荷発生(これを、焦電効果という)を伴うために、例えば、タッチセンサーなどに使用した場合は体温による焦電効果で発生する信号と、加圧による圧電効果で発生する信号とが混在してしまい、純粋に加圧を測定することが困難であるという問題がある。また、製造方法に関しても、専用の装置を用いた延伸と分極、或いは、分極が必要であり、そのためにコストが高くなるという問題があった。
一方、ポリ乳酸やポリアミノ酸のような光学活性を有する高分子を配向させてD∞対称とすると、ずり方向の力による電荷を発生する圧電体である、d14圧電定数を有する圧電体(以下、「d14圧電体」とも略称する)になることが知られている(特許文献5、6等参照)。d14圧電体は分極を持たないために焦電効果を有さず、タッチセンサーなど温度が変化する用途でも純粋な加圧を測定できるという利点がある。
しかしながら、特許文献5、6に記載されている、ポリ乳酸やポリアミノ酸からなるd14圧電体は、ポリ乳酸やポリアミノ酸の未延伸のフィルムを一軸方向に延伸して高分子を配向させることで得られており、延伸により得られたフィルムは延伸方向(高分子の配向方向)と垂直な方向に力を加えた場合に極端に裂け易い(すなわち、配向方向と直交する方向でのフィルムの破断伸度が小さい)。このため、強度や耐久性に問題が生じる可能性が懸念される。特に、実際に各種センサーやアクチュエーター等に圧電フィルムを適用することを想定した場合、折り曲げや荷重がかかることが想定されるため、十分な破断伸度を有することが好ましい。また、延伸後にフィルムの幅(一軸方向と直交する方向の幅)が狭まるなどの問題もあった。すなわち、延伸フィルムにおいてd14圧電定数と破断伸度はトレードオフの関係にあり、d14圧電定数が十分に大きく、かつ、十分な破断伸度を有する圧電フィルムは得られていなかった。
特許第5078362号公報 特公平2−26091号公報 特開2014−101465号公報 特開2013−210367号公報 特許第4934235号公報 特公昭46−8548号公報 特許第5259026号公報
上記の事情に鑑み、本発明が解決しょうとする課題は、d14圧電定数が十分に大きく、かつ、十分な破断伸度を有する圧電フィルムおよびその製造方法を提供することにある。
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の製法により、d14圧電定数と破断伸度がともに十分な圧電フィルムを得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1] ポリアミノ酸を含むフィルムであって、フィルムの破断伸度の最低値が2%以上であり、かつd14圧電定数の最高値が3pC/N以上の圧電フィルム。
[2] 破断伸度の最低値が4%以上である、上記[1]記載の圧電フィルム。
[3] 未延伸フィルムである上記[1]または[2]記載の圧電フィルム。
[4] ポリアミノ酸を含むフィルムが、(A)ポリアミノ酸および(B)重量平均分子量5,000以上の高分子化合物を含む、上記[1]〜[3]のいずれか1つに記載の圧電フィルム。
[5] (B)高分子化合物が、ポリビニルアセタール樹脂、フェノキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル樹脂、およびポリウレタン樹脂からなる群から選択される1種以上である、上記[4]記載の圧電フィルム。
[6] ポリアミノ酸が、グルタミン酸、アスパラギン酸、リジン、およびそれらの誘導体からなる群から選択される1種以上の単量体単位を含む、上記[1]〜[5]のいずれか1つに記載の圧電フィルム。
[7] フィルム中の(A)ポリアミノ酸および(B)高分子化合物のそれぞれの質量をA、Bとし、これらの合計を100質量%としたときに、下記式1を満たす、上記[4]〜[6]のいずれか1つに記載の圧電フィルム。
式1:50%≦A/(A+B)<100%
[8] フィルムの片面または両面に電極が形成されている、上記[1]〜[7]のいずれか1つに記載の圧電フィルム。
[9] (A)ポリアミノ酸および(C)有機液状媒体を含むポリアミノ酸組成物を支持体上に塗工する第1工程および該第1工程で得られたポリアミノ酸組成物層を乾燥してフィルムとする第2工程を含む、d14圧電定数の最高値が3pC/N以上の圧電フィルムの製造方法。
[10] 第2工程は磁場を作用させておらず、かつ、第2工程後に、フィルムの延伸工程を含まない、上記[9]記載の方法。
[11] ポリアミノ酸組成物が、さらに(B)重量平均分子量が5,000以上の高分子化合物を含む、上記[9]または[10]記載の方法。
[12] (B)高分子化合物が、重量平均分子量が5,000以上、200,000以下の高分子化合物である、上記[11]記載の方法。
[13] (B)高分子化合物が、ポリビニルアセタール樹脂、フェノキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル樹脂、およびポリウレタン樹脂からなる群から選択される1種以上である、上記[11]または[12]記載の方法。
[14] (C)有機液状媒体が、構成元素として、炭素及び水素を含む化合物か、或いは、炭素及び水素とともに酸素またはハロゲンを含む化合物であって、分子量が1000以下の化合物から選択される1種以上である、上記[9]〜[13]のいずれか1つに記載の方法。
[15] (C)有機液状媒体が沸点40℃以上、150℃以下の有機液状媒体を1種以上含む、上記[9]〜[14]のいずれか1つに記載の方法。
[16] (C)有機液状媒体が、1,4−ジオキサン、1,2−ジクロロエタン、ジブロモエタン、トルエン、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトン、1−メチルナフタレン、2−メチルナフタレン、ナフタレンおよびクレゾールからなる群から選択される1種以上である、上記[9]〜[15]のいずれか1つに記載の方法。
[17] (A)ポリアミノ酸が、グルタミン酸、アスパラギン酸、リジンおよびそれらの誘導体からなる群から選択される1種以上の単量体単位を含む、上記[9]〜[16]のいずれか1つに記載の方法。
[18] ポリアミノ酸組成物中の(A)ポリアミノ酸及び(B)高分子化合物のそれぞれの質量をA、Bとし、これらの合計を100質量%としたときに、下記の式1を満たし、
ポリアミノ酸組成物中の(A)ポリアミノ酸、(B)高分子化合物及び(C)有機液状媒体のそれぞれの質量をA、B、Cとし、これらの合計を100質量%としたときに、下記の式2を満たす、上記[11]〜[17]のいずれか1つに記載の方法。
式1:50%≦A/(A+B)<100%
式2:10%≦(A+B)/(A+B+C)≦50%
[19] 第1工程において、ポリアミノ酸組成物の塗り厚が500μm以下となるようにポリアミノ酸組成物を塗工する、上記[9]〜[18]のいずれか1つに記載の方法。
[20] ポリアミノ酸組成物が複屈折を有する、上記[9]〜[19]のいずれか1つに記載の方法。
[21] ポリアミノ酸組成物の25℃における粘度が500mPa・s以上10000mPa・s以下である、上記[9]〜[20]のいずれか1つに記載の方法。
[22] (A)ポリアミノ酸、(B)重量平均分子量が5,000以上の高分子化合物および(C)有機液状媒体を含むことを特徴とする、d14圧電定数の最高値が3pC/N以上の圧電フィルムの製造に用いられるポリアミノ酸組成物。
[23] (B)高分子化合物が、重量平均分子量が5,000以上、200,000以下の高分子化合物である、上記[22]記載のポリアミノ酸組成物。
[24] (B)高分子化合物が、ポリビニルアセタール樹脂、フェノキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル樹脂、およびポリウレタン樹脂からなる群から選択される1種以上である、上記[22]または[23]記載のポリアミノ酸組成物。
[25] (C)有機液状媒体が、構成元素として、炭素及び水素を含む化合物か、或いは、炭素及び水素とともに酸素またはハロゲンを含む化合物であって、分子量が1000以下の化合物から選択される1種以上である、上記[22]〜[24]のいずれか1つに記載のポリアミノ酸組成物。
[26] (C)有機液状媒体が沸点40℃以上、160℃以下の有機液状媒体を1種以上含む、上記[22]〜[25]のいずれか1つに記載のポリアミノ酸組成物。
[27] (C)有機液状媒体が、1,4−ジオキサン、1,2−ジクロロエタン、ジブロモエタン、トルエン、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトン、1−メチルナフタレン、2−メチルナフタレン、ナフタレンおよびクレゾールからなる群から選択される1種以上である、上記[22]〜[26]のいずれか1つに記載のポリアミノ酸組成物。
[28] (A)ポリアミノ酸が、グルタミン酸、アスパラギン酸、リジン、およびそれらの誘導体からなる群から選択される1種以上の単量体単位を含む、上記[22]〜[27]のいずれか1つに記載のポリアミノ酸組成物。
[29] ポリアミノ酸組成物中の(A)ポリアミノ酸及び(B)高分子化合物のそれぞれの質量をA、Bとし、これらの合計を100質量%としたときに、下記の式1を満たし、
ポリアミノ酸組成物中の(A)ポリアミノ酸、(B)高分子化合物及び(C)有機液状媒体のそれぞれの質量をA、B、Cとし、これらの合計を100質量%としたときに、下記の式2を満たす、請求項22〜28のいずれか1つに記載のポリアミノ酸組成物。
式1:50%≦A/(A+B)<100%
式2:10%≦(A+B)/(A+B+C)≦50%
[30] 上記[1]〜[7]のいずれか1つに記載の圧電フィルムの片面または両面に電極が形成されており、前記電極に配線が接続されていることを特徴とする、センサーまたはアクチュエーター。
[31] 被検査物に貼付して使用され、被検査物の曲げや歪みを検知する、上記[30]に記載のセンサーまたはアクチュエーター。
[32] 圧電体として、上記[1]〜[7]のいずれか1つに記載の圧電フィルムを具備する、モノモルフ、バイモルフ、片持ち梁構造からなる群から選択される構造のセンサーまたはアクチュエーター。
本発明によれば、ポリアミノ酸を含むフィルムであって、d14圧電定数が十分に大きく、しかも、フィルムの破断伸度が改善された圧電フィルム(例えば、フィルムの破断伸度の最低値が2%以上の圧電フィルム)を得ることができる。
また、本発明の圧電フィルムの製造方法であれば、フィルムの延伸工程を含まないため、延伸後にフィルムの幅が狭まるなどの問題を生じることもない。このため、意図した設計幅の圧電フィルムを製造することができ、無機圧電体にはなく、有機圧電体オリジナルの特徴である、大面積化が可能である。
また、従来の圧電フィルムの製造方法では、延伸して得られた圧電フィルムに電極を形成してセンサーとしていたが、本発明方法であれば、例えば、金属箔等の導電体を支持体として、ポリアミノ酸組成物を塗工、乾燥することで、圧電フィルムの製造と同時に電極として前記金属箔等の導電体を備えるセンサーを作製することができる。このため、従来では考えられなかったプロセスによってセンサーを作製することができる。
以下、本発明をその好適な実施形態に即してより詳しく説明する。
本発明の圧電フィルムは、ポリアミノ酸を含むフィルムであって、フィルムの破断伸度の最低値が2%以上であり、かつ、d14圧電定数の最高値が3pC/N以上であることが主たる特徴である。
「d14圧電定数」とは、圧電テンソルの一つであり、ずり応力を印加したときに発生する電荷の量から求められる。単位ずり応力あたりの発生電荷量がd14圧電定数となる。「d14圧電定数の最高値」とは、ずり応力をかける方向を変えて測定した場合に得られるd14圧電定数のうちの最高値を意味するものとし、例えば、フィルムに対するずり応力をかける方向を10°毎(好ましくは5°毎、より好ましくは1°毎)変更して測定することで決定することができる。ここでいう「ずり応力をかける方向」とはフィルムの主面内に描かれる、主面の中心を通る仮想直線の方向であり、例えば、「10°毎変更する」とは、フィルムの主面の中心を軸として回転角が10°相違する仮想直線を放射状に設定することを意味する。
なお、d14圧電定数を有するフィルムは、理論上、フィルムを構成する分子の配向方向に対して交差角度が45°となる方向からフィルムに周期的な引張り応力を加えて圧電定数を測定する場合に最大の値が出る。従って、分子の配向方向に対する交差角が45°となる方向からずり応力を加えて発生する電荷の量を測定することでd14圧電定数の最高値を決定することができる。
一般的に、d14圧電体フィルムにおけるフィルムを構成する分子の配向方向は、フィルムを力学的に延伸した方向やフィルムに外部からかけた電磁場の方向など、d14圧電体フィルムの製造方法から特定することができる。通常、フィルムを力学的に延伸してd14圧電体フィルムを製造した場合はフィルムの延伸方向が配向方向とされ、フィルムに外部から電磁場をかけてd14圧電体フィルムを製造した場合は電磁場の方向が配向方向とされる。本発明においては、フィルム製造時のポリアミノ酸組成物の塗工方向が配向方向であると特定した。なお、製法が分からないd14圧電体フィルムの場合、偏光顕微鏡、X線結晶回折、IR2色比などの分析から分子の向きを実際に確認して配向方向を決定することができる。この場合、フィルム中の個々の分子の向きを確認して、同一方向を向いている分子の数が最も多い分子群を構成する分子の向きが配向方向と定められるが、このようにして定められた配向方向は、例えば、d14圧電体フィルムがフィルムを力学的に延伸することで製造されたものである場合は、通常、フィルムの延伸方向と一致し、d14圧電体フィルムがフィルムに電磁場をかけて製造されたものである場合は、通常、電磁場の方向と一致する。本発明において、ポリアミノ酸組成物の塗工、乾燥により得られるd14圧電体フィルムも、偏光顕微鏡、X線結晶回折、IR2色比などの分析から分子の向きを実際に確認して配向方向を決定すれば、その配向方向は、通常、ポリアミノ酸組成物の塗工方向と一致する。
本発明においてd14圧電定数の最高値は、3pC/N以上が好ましく、4pC/N以上がより好ましく、5pC/N以上がさらに好ましい。圧電定数は高ければ高いほど好ましく、上限値には特に制限はない。
「破断伸度」は、フィルムに特定の力を加えて引っ張ったとき、破壊されるまでの伸びを測定するもので、JIS K7127に規定されている方法により測定することができる。「破断伸度の最低値」とは、引っ張る方向を変えて測定した場合に得られる破断伸度のうち最低値を意味するものとし、例えば、フィルムを引っ張る方向を10°毎(好ましくは5°毎、より好ましくは1°毎)変更して測定することで決定することができる。ここでいう「引っ張る方向」とはフィルムの主面内に描かれる、主面の中心を通る仮想直線の方向であり、例えば、「10°毎変更する」とは、フィルムの主面の中心を軸として回転角が10°相違する仮想直線を放射状に設定することを意味する。
なお、理論上、フィルムの配向方向に対して直交する方向にフィルムを引っ張った場合に最も破断伸度が低い。従って分子の配向方向が特定可能な場合は、分子の配向方向に対して90°となる方向から力を加えて測定することで破断伸度の最低値を決定することができる。
好ましくは、破断伸度の最低値は4%以上であり、より好ましくは5%以上である。
各種センサーやアクチュエーター等に圧電フィルムを適用する場合、通常、フィルムの破断伸度はいずれの引張方向においても少なくとも2%以上が必要であり、4%以上であれば、折り曲げや、引張りに対する耐久性等の点において、極めて良好である。本発明の圧電フィルムにおける、ポリアミノ酸分子の配向方向と直交する方向は、引っ張り特性が最低となる方向であり、従って、かかる方向でのフィルムの破断伸度はフィルムが示す最小の破断伸度であり、かかる方向での破断伸度が2%以上(好ましくは4%以上)であれば各種センサーやアクチュエーターに良好に利用可能である。
本発明では、従来の延伸という手法を用いることなく、ポリアミノ酸および有機液状媒体を含むポリアミノ酸組成物を支持体上に塗工する第1工程および該第1工程で得られたポリアミノ酸組成物層を乾燥してフィルムとする第2工程を含む方法により、d14圧電定数の最高値が3pC/N以上のフィルムを得る。すなわち、α−ヘリックス構造を採り、α−ヘリックスが棒状のポリアミノ酸の分子は、ポリアミノ酸および有機液状媒体を含むポリアミノ酸組成物を支持体上に塗工するという操作のみで高度に配向し得ることを見出したことから、本発明では、フィルムを延伸する、あるいは、電磁場を用いて配向させることなく、ポリアミノ酸分子が高度に配向して、d14圧電定数の最高値が3pC/N以上のフィルムを製造することに成功した。このため、本発明の圧電フィルムは、未延伸フィルムでありながら、d14圧電定数の最高値が、3pC/N以上であり、かつ引張特性が優れたものとなり、ポリアミノ酸分子の配向方向と直交する方向においても高い破断強度(2%以上、好ましくは4%以上)を有する。
なお、本発明における「塗工」とは、組成物を支持体表面に塗り広げることであり、支持体表面と平行な方向にせん断が作用する。
以下、本発明において使用する材料について説明する。
[(A)ポリアミノ酸]
本発明において使用するポリアミノ酸(以下、「A成分」ともいう)は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、シスチン、システイン、グルタミン、グルタミン酸、ヒスチジン、リジン、オルニチン、セリン、スレオニン、トリプトファン、メチオニン、フェニルアラニン、チロシン等のα−アミノ酸および該α−アミノ酸の誘導体からなる群から選択される1種類以上を単量体単位とするポリマー(すなわち、ポリα−アミノ酸)であればよい。なお、「誘導体」としては、アミノ酸のアシル化誘導体、アミノ酸のエステル化誘導体、アミノ酸のアミド化誘導体、保護基により保護されたアミノ酸等が挙げられる。
中でも、ポリアミノ酸組成物中での溶解性乃至分散性の観点から、ポリアミノ酸は、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、グルタミン、グルタミン酸、ヒスチジン、リジン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシンおよびこれらの誘導体からなる群から選択される1種類以上を単量体単位とするポリマーが好ましく、より好ましくは、グルタミン酸、アスパラギン酸、リジンおよびこれらの誘導体からなる群から選択される1種類以上を単量体単位とするポリマーである。
ポリマー(ポリα−アミノ酸)は、ホモポリマー、コポリマーのいずれであってもよい。好ましいホモポリマーの具体例としては、例えば、ポリ(γ−メチル−L−グルタミン酸)、ポリ(γ−ベンジル−L−グルタミン酸)、ポリ(N−ε−ベンジルオキシカルボニル−L−リジン)、ポリ(β−メチル−L−アスパラギン酸)、ポリ(β−ベンジル−L−アスパラギン酸)等が挙げられる。
好ましいコポリマーの具体例としては、γ−メチル−L−グルタミン酸/γ−ドデシル−L−グルタミン酸共重合体、γ−メチル−L−グルタミン酸/γ−ヘキシル−L−グルタミン酸共重合体、γ−ベンジル−L−グルタミン酸/γ−ドデシル−L−グルタミン酸共重合体、γ−ベンジル−L−グルタミン酸/γ−メチル−L−グルタミン酸共重合体、γ−メチル−L−グルタミン酸/γ−2,2,2−トリフルオロエチル−L−グルタミン酸共重合体、γ−メチル−L−グルタミン酸/γ−2−ノルボニルメチル−L−グルタミン酸共重合体、またはγ−ベンジル−L−グルタミン酸/γ−2−ノルボニルメチル−L−グルタミン酸共重合体、γ−メチル−L−グルタミン酸/Nε−ベンジルオキシカルボニル−L−リジン共重合体、γ−ベンジル−L−グルタミン酸/Nε−ベンジルオキシカルボニル−L−リジン共重合体、γ−メチル−L−グルタミン酸/γ−(6−(p−メトキシフェノキシ)−1−ヘキシル)−L−グルタミン酸共重合体、γ−メチル−L−グルタミン酸/γ−(6−(p−ヘキシルカルボニルフェノキシ)−1−ヘキシル)−L−グルタミン酸共重合体、γ−メチル−L−グルタミン酸/γ−(10−(p−メトキシフェノキシ)−1−デシル)−L−グルタミン酸共重合体、γ−メチル−L−グルタミン酸/γ−(6−(p−ブトキシフェノキシ)−1−ヘキシル)−L−グルタミン酸共重合体、γ−メチル−L−グルタミン酸/γ−(6−(p−ヘキシルオキシフェノキシ)−1−ヘキシル)−L−グルタミン酸共重合体、またはγ−メチル−L−グルタミン酸/γ−(6−(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェノキシ)−1−ヘキシル−L−グルタミン酸共重合体等が挙げられる。
(ポリアミノ酸の製造方法)
ポリアミノ酸の製造方法は、特に限定されず、自体公知のポリアミノ酸の製造方法を採用できる。一般的にはN−カルボキシ−アミノ酸無水物またはN−カルボキシ−アミノ酸誘導体無水物を適宜混合して有機溶剤または水に溶解または懸濁させ、必要に応じてこれに重合開始剤を加えて重合する方法を挙げることができる。例えば、上記例示のα−アミノ酸またはその誘導体を単量体単位として含むコポリマーを製造する場合、各単位となるN−カルボキシ−α−アミノ酸またはその誘導体の無水物を任意の割合で適宜混合して有機溶剤または水に溶解または懸濁させ、必要に応じてこれに重合開始剤を加えて共重合する方法を挙げることができる。また、例えば、グルタミン酸誘導体、アスパラギン酸誘導体及びリジン誘導体から選ばれる1種または2種以上を単量体単位とするホモポリマーまたはコポリマーを製造する場合、グルタミン酸誘導体、アスパラギン酸誘導体及びリジン誘導体から選ばれる1種または2種以上を単量体単位とするホモポリマーまたはコポリマーを製造した後、目的のエステル単位に対応するアルコールをポリアミノ酸(ホモポリマーまたはコポリマー)に対して適量加え、必要に応じて触媒を加えて、エステルを変換することで調整する方法を挙げることが出来る。
重合開始剤の例としては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン、1,2−シクロヘキサンジアミン、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、トルエン−2,4−ジアミン、4,4’−ジフェニルメタンジアミン、イソホロンジアミン等の一級ジアミン;メチルアミン、エチルアミン、および1−プロピルアミン等の一級モノアミン;メタノールアミン、エタノールアミン、およびジエタノールアミン等のアルコールアミン;ジメチルアミン、ジエチルアミン、およびジプロピルアミン等の二級アミン;N,N−ジメチルエチレンジアミン、およびN,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン等の一級三級ジアミン;トリメチルアミン、トリエチルアミン、およびトリブチルアミン等の三級アミン;ポリエーテルジアミン、およびポリエステルジアミン等のアミノ基含有ポリマー;メタノール、およびエタノール等の一級アルコール;イソプロパノール等の二級アルコール;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、およびヘキサメチレングリコール等のグリコール類;ポリエーテルジオール、およびポリエステルジオール等の水酸基含有ポリマー;チオール類等を挙げることができる。重合開始剤は、1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
また、合成時の有機溶媒の例としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、石油エーテル、1,4−ジオキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、ヘキサン、シクロヘキサン、酢酸エチル、酢酸ブチル、トリフルオロ酢酸、酢酸、ギ酸、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、トリフルオロエタン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、2,2,2−トリフルオロエタノール、ヘキサフルオロアセトン、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、ピリジン、アセトニトリル、カルビトールアセテート、γ−ブチルラクトン、トリエチレングリコールジメチルエーテル(トリグライム)、トリメチルアミン、トリエチルアミン、およびトリブチルアミンを挙げることができる。有機溶媒は1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
前記触媒の例としては、塩酸、硫酸、硝酸、p−トルエンスルホン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムt−ブトキシド、カリウムメトキシド、カリウムt−ブトキシド、シアン化カリウム、二酸化炭素、チタン(IV)テトライソプロポキシド、1,3−置換型テトラアルキルジスタンノキサンスズ(IV)錯体、テトラシアノエチレン、4−ジメチルアミノピリジン、およびジフェニルアンモニウムトリフラート−トリメチルシリルクロリドを挙げることができる。触媒は1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。触媒量は、反応により適宜設定されるが一般には、適切な反応時間を実現し、反応後の触媒除去が困難とならない範囲で適宜選択することができ、例えば、使用するアミノ酸無水物のモル数に対して0.0001〜1当量、好ましくは0.01〜0.75当量、より好ましくは0.1〜0.5当量とすることができる。
本発明において、ポリアミノ酸の分子量特性は特に制限はされないが、フィルムの破断伸度向上の観点から、重量平均分子量(Mw)は20,000以上であることが好ましく、30,000以上がより好ましい。また、ポリアミノ酸の重合反応の再現性の観点から、重量平均分子量(Mw)は300,000以下であることが好ましく、250,000以下がより好ましい。また、分子量分布の幅を意味する、重量平均分子量と数平均分子量との比である分散度(Mw/Mn)は、ポリアミノ酸組成物の粘度の観点から、2.5以下が好ましく、2.0以下がより好ましい。ここでいう、重量平均分子量及び数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定されるポリスチレン換算値である。
本発明において、ポリアミノ酸は1種または2種以上を使用できる。
[(B)重量平均分子量が5,000以上の高分子化合物]
本発明における、重量平均分子量が5,000以上の高分子化合物(以下、「B成分」ともいう)は、A成分に含まれない高分子化合物であって、有機液状媒体中にて、ポリアミノ酸との間で一様な混合状態を形成し得るポリアミノ酸以外の有機高分子化合物であれば特に制限なく使用することができる。好ましくは、主鎖が炭化水素であるか、或いは、主鎖の繰り返し単位中に、エーテル結合、ケトン結合、ウレタン結合及びエステル結合からなる群より選ばれる少なくとも1種の結合を含む樹脂またはエラストマーであり、溶解性や機械特性の観点から、ポリパラビニルフェノール系樹脂、ポリビニルアセテート系樹脂、フェノキシ系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル系樹脂及びポリウレタン系樹脂(ポリエステルポリウレタン、ポリエーテルポリウレタン)からなる群より選ばれる1種または2種以上であることがより好ましい。より具体的には、ポリビニルアセタール樹脂、フェノキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル樹脂、およびポリウレタン樹脂からなる群から選択される1種以上であることが好ましい。
本発明の圧電フィルムは、当該B成分を含有することで、高いd14圧電定数の維持性および破断伸度の向上が図られる。
当該B成分の重量平均分子量は好ましくは7,000以上であり、より好ましくは10,000以上である。また、ポリアミノ酸との相溶性の観点から、重量平均分子量は300,000以下が好ましく、200,000以下がより好ましい。
ここでいう、重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定されるポリスチレン換算値である。
当該B成分は、市販品を使用することができ、例えば、ポリエステル樹脂(東洋紡株式会社製のバイロン200、630)、ポリエステルウレタン樹脂(東洋紡株式会社製のバイロンUR−1410、6100)、ポリパラビニルフェノール系樹脂(丸善石油化学株式会社のマルカリンカーCMM、S−2P、ポリビニルアセテート樹脂(シグマアルドリッチ社製)、ポリアリレート樹脂(ユニチカ株式会社製のユニファイナーM−2040、M−2040H)、ポリメタクリル酸メチル(シグマアルドリッチ社製)、フェノキシ樹脂(新日鉄住金株式会社製のフェノトートYP−50、YP−50S)等を挙げることが出来る。
[(C)有機液状媒体]
本発明における、有機液状媒体(以下、「C成分」ともいう)は、それを媒体としてA成分及びB成分が溶解乃至分散状態を形成し得る、25℃で液状の有機化合物であれば、特に制限なく使用できる。なお、ポリアミノ酸の合成に使用した溶媒をそのままC成分として用いても良い。
具対的には、クロロホルム、ジクロロメタン、塩化メチレン、トリクロロエチレン、二塩化エチレン、1,2−ジクロロエタン、テトラクロロエタン、クロロベンゼンなどのクロロ炭化水素系化合物;パーフルオロ−tert−ブタノール、ヘキサフルオロ−2−メチルイソプロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロパノール、2,2,2−トリフルオロエタノール、ヘキサフルオロアセトン等のフッ素含有分岐アルコール系又はケトン系化合物;ホルムアミド、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ピリジン、アセトニトリルなどの含窒素極性化合物;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトフェノン、シクロヘキサノンなどのアルキルケトン系化合物;安息香酸メチル、安息香酸エーテル、安息香酸ブチルなどの安息香酸エステル系化合物:ベンゼン、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、ソルベントナフサ、1−メチルナフタレン、2−メチルナフタレン、ナフタレンなどの芳香族炭化水素系化合物;ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコールエーテル系化合物;チルセロソルブアセテート、メトキシプロピルアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテートなどのグリコールエステル系化合物;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、メチルt−ブチルエーテル、石油エーテルなどのエーテル系化合物;ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホンなどのスルホキシド・スルホン系化合物;γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン等のラクトン系化合物;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、フェノール、クレゾール、ポリエチレングリコールなどのアルコール・フェノール系化合物;ノルマルヘキサン、シクロヘキサン、ノルマルヘプタン、イソオクタン、ノルマルデカンなどの炭化水素系化合物;トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン等のアミン系化合物;酢酸エチル、酢酸ブチル、トリフルオロ酢酸、酢酸、ギ酸等が挙げられる。
これらの中でも、A成分(ポリアミノ酸)との相溶性、及び、支持体上のポリアミノ酸組成物層を乾燥してフィルムとする際の乾燥のしやすさ等の観点から、構成元素として、炭素及び水素を含む化合物か、或いは、炭素及び水素とともに酸素またはハロゲンを含む化合物であって、分子量が1000以下の化合物から選択される1種以上であることが好ましい。また、かかる好適化合物は、エーテル系化合物、ハロゲン化炭化水素系化合物、芳香族炭化水素系化合物、アルキルケトン系化合物、ラクトン系化合物、及びフェノール系化合物からなる群から選択される1種以上であることがより好ましい。さらにこれらの中でも、A成分(ポリアミノ酸)及びB成分(重量平均分子量が5,000以上の高分子化合物)との相溶性、および、ポリアミノ酸組成物層の乾燥過程でのポリアミノ酸分子の配向状態の保持性の観点から、1,4−ジオキサン、1,2−ジクロロエタン、ジブロモエタン、トルエン、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトンおよびクレゾールからなる群から選択される1種以上が特に好ましい。
本発明において、(C)有機液状媒体は1種または2種以上を使用できるが、沸点が低すぎると安全性や塗工性の点で問題があり、沸点が高すぎると乾燥性や十分な圧電性が得られないという点で問題がある。(C)有機液状媒体は沸点40℃以上160℃以下の有機液状媒体を1種以上を含む態様が好ましく、有機液状媒体全体の50〜100重量%が、沸点40℃以上160℃以下の有機液状媒体であることがより好ましい。
<圧電フィルムの製造>
[ポリアミノ酸組成物の調製]
支持体上に塗工する塗工液として、(A)ポリアミノ酸および(C)有機液状媒体を含むポリアミノ酸組成物を調製する。好ましくは、さらに(B)重量平均分子量が5,000以上の高分子化合物を含む。
ポリアミノ酸組成物には、本発明の作用効果(すなわち、フィルムを構成するポリアミノ酸分子の配向、フィルムの破断伸度)を大きく損なわない範囲内で、A〜C成分以外の成分を含有させることができる。かかる任意の配合成分としては、例えば、無機フィラー、有機フィラー、顔料、結晶核剤、消泡剤、酸化防止剤、増粘剤などの各種添加剤、重量平均分子量が5,000未満の高分子化合物が挙げられる。これらの任意の配合成分は、(A)ポリアミノ酸に対して10質量%以下の範囲内で使用される。
ポリアミノ酸組成物は、公知の攪拌機や分散機を用いて調製することができる。すなわち、(A)ポリアミノ酸および(C)有機液状媒体、或いは、(A)ポリアミノ酸、(B)重量平均分子量が5,000以上の高分子化合物および(C)有機液状媒体を、任意の配合成分を含有させる場合は任意の配合成分とともに、公知の攪拌機や分散機により混合することで調製される。攪拌機や分散機の例としては、ディゾルバー、プラネタリミキサー、ロールミル、サンドミル、ボールミル、ビーズミル、ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、アジホモミキサー、自転・公転ミキサーなどが挙げられる。
本発明におけるポリアミノ酸組成物が、(A)ポリアミノ酸、(B)重量平均分子量が5,000以上の高分子化合物および(C)有機液状媒体を含む組成物である場合、好適な組成として、以下の態様が挙げられる。
すなわち、(A)ポリアミノ酸及び(B)重量平均分子量が5,000以上の高分子化合物のそれぞれの質量をA、Bとし、これらの合計を100質量%としたときに、下記の式1を満たし、かつ、
(A)ポリアミノ酸、(B)重量平均分子量が5,000以上の高分子化合物及び(C)有機液状媒体のそれぞれの質量をA、B、Cとし、これらの合計を100質量%としたときに、下記の式2を満たす、組成物とする。
式1:50%≦A/(A+B)<100%
式2:10%≦(A+B)/(A+B+C)≦50%
上記式1は、好ましくは、60%≦A/(A+B)≦95%であり、より好ましくは、70%≦A/(A+B)≦95%である。また、式2は、好ましくは、10%≦(A+B)/(A+B+C)≦45%であり、より好ましくは、15%≦(A+B)/(A+B+C)≦45%である。
後述するポリアミノ酸組成物を支持体上に塗工する際の塗り厚、ポリアミノ酸組成物の複屈折、ポリアミノ酸組成物の粘度等にもよるが、一般に、ポリアミノ酸組成物がかかる式1および式2を満たす組成であれば、塗工液としての取扱いが容易であり、また、それから形成されるフィルムは十分な圧電性が得られる膜となる。
また、このときに、(C)有機液状媒体全体の50〜100重量%が、沸点40℃以上160℃以下の化合物であれば、さらに安全性、塗工性、乾燥性のバランスが良い塗工液となり、しかも、それから形成されるフィルムの圧電性がさらに良好となる。
本発明において、ポリアミノ酸組成物の粘度(25℃)は、塗工性、乾燥性、フィルムとしたときの圧電性の観点から、500mPa・s以上、10000mPa・s以下が好ましく、500mPa・s以上、5000mPa・s以下がより好ましく、500mPa・s以上、2000mPa・s以下が特に好ましい。
また、ポリアミノ酸組成物の形態は溶液でも分散液でもよいが、大きなd14圧電定数の発現の観点から、ポリアミノ酸組成物の形態は溶液であることが好ましく、ポリアミノ酸組成物が溶液の場合、複屈折を有することが好ましい。一般的にポリアミノ酸溶液が複屈折を持つ場合、溶液状態で分子が何らかの規則構造を取っている。このため、せん断力が加わると各ドメイン毎で向きが揃いやすく、ポリアミノ酸分子が全体として配向して、より大きなd14圧電定数が得られやすい。本発明において複屈折を有するとは、クロスニコルの状態の2枚の偏光板の間に溶液を置いて観察した場合に明るい部分を持つ場合をいう。
[ポリアミノ酸組成物の塗工、乾燥]
ポリアミノ酸組成物を支持体上に塗工し(第1工程)、得られたポリアミノ酸組成物層を乾燥する(第2工程)ことで、ポリアミノ酸を含むフィルム(未延伸フィルム)が得られる。第1工程でのポリアミノ酸組成物の塗工方法は、ポリアミノ酸組成物に一方向にせん断力が作用すれば良く、具体的な塗工手法としてはバーコート、カンマコート、ダイコート、ブレードコート、グラビアコート、グラビアオフセット印刷など公知の塗工方法が挙げられる。塗工に当たってコーターが動いても、支持体が動いても、両方動いても良く、塗工は、一方向にせん断力が作用するように、支持体に対して所定の一方向に向けてポリアミノ酸組成物が塗り進められていけばよい。この所定の一方向に向けてポリアミノ酸組成物が塗り進められていく方向がポリアミノ酸分子の配向方向になる。なお、「塗工方向」とは、この所定の一方向に向けてポリアミノ酸組成物が塗り進められていく方向のことである。
また、塗工(第1工程)と乾燥(第2工程)を一回行う、一回塗りでも良いし、塗工(第1工程)と乾燥(第2工程)を複数回繰り返す、重ね塗りを行っても良い。一回塗りの方がコスト的に優位だが、塗工における「塗り厚」が大きすぎると、ポリアミノ酸組成物にせん断力が作用しにくくなり、ポリアミノ酸分子が配向しにくくなる。このため、圧電フィルムの膜厚を厚くしたい場合は重ね塗りをするのが好ましい。
ポリアミノ酸組成物の塗工における「塗り厚」とは、塗工時の支持体とコーターの間の最短距離である。例えば、支持体上にバーコートにより塗工を行う場合、支持体とバーの最短距離である。例えば、バーが丸みを帯びるなどしてバー全体の高さが均一でない場合、支持体とバーの最短距離は、バーの支持体に最近接する部分と支持体の間の距離を指す。塗り厚が大きいとポリアミノ酸組成物に作用するせん断力が小さくなり、かつ塗工から乾燥後までに塗工直後の配向状態が保持されにくい傾向となる。これは、ポリアミノ酸組成物層の厚さが大きくなると単にポリアミノ酸組成物層が乾燥されにくくなるだけでなく、ポリアミノ酸組成物層内の棒状のポリアミノ酸分子の運動性が上がるためと考えられる。従って、塗り厚は500μm以下が好ましく、200μm以下がより好ましく、75μm以下が特に好ましい。なお、塗り厚が小さすぎると、均一に塗工することが困難となるため、塗り厚は0.1μm以上が好ましく、1μm以上がより好ましい。
通常、「塗り厚」と乾燥して得られるフィルムの膜厚とは異なる。このため、塗り厚を500μm超にしなければ、一回の塗工、乾燥によって得ることができない厚さの圧電フィルムを得たい場合、500μm以下の塗り厚にて、重ね塗りをして、所望の厚さのフィルムを製造するのが好ましい。
また、ポリアミノ酸組成物の粘度等にもよるが、より好ましい塗り厚は5〜200μm、特に好ましい塗り厚は5〜75μmであり、かかる塗り厚での塗工と乾燥を少なくとも2回以上繰り返して、所望厚さのフィルムを、多層構成のフィルムとすることで、圧電性を維持したままピンホールの少ない厚膜を得ることが得ることができる。
ポリアミノ酸組成物が塗工される支持体は、塗工におけるせん断力に耐え得る機械強度と乾燥に耐え得る耐熱性があれば良く、絶縁体であっても導電体であっても良い。絶縁体の場合は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド等のプラスチックが挙げられる。導電体の場合、銅箔、銅箔付きポリイミド、ITOガラス、金属を蒸着あるいはスパッタしたPETなどが挙げられる。
(乾燥方法)
支持体上に形成されたポリアミノ酸組成物層の乾燥方法は、塗工後のポリアミノ酸組成物層におけるポリアミノ酸分子の配向状態を保持しつつ有機液状媒体を除去できる方法であればどんな方法でも良く、常温、常圧での乾燥(自然乾燥)でも良いし、加熱乾燥でも減圧乾燥でも良い。加熱乾燥の場合、バッチオーブン、熱風乾燥炉、ベルト式連続炉、遠赤外線乾燥炉など公知の加熱機器を用いることが出来る。
(アニール処理)
乾燥後のポリアミノ酸フィルムには適切な温度と時間のアニール処理を施しても良いし、しなくとも良い。
ポリアミノ酸組成物の塗工、乾燥により形成された本発明の圧電フィルム(ポリアミノ酸を含むフィルム)は、支持体から分離しても良いし、支持体をそのまま電極、補強材などに用いて、電極付き圧電フィルムや補強材付き圧電フィルムとしても良い。このため、支持体には離型処理、防錆処理、密着向上処理などの表面処理が行われていても良い、未処理でも良い。
本発明の圧電フィルムの厚さは、特に限定はされないが、フレキシブルな圧電体としての用途を考えると、1〜500μmの厚さが好ましく、2〜100μmがより好ましい。また、可とう性や後述する本発明の圧電フィルムを用いたセンサー全体の軽薄短小化の観点から、20〜50μmが特に好ましい。厚さが1μm未満では、十分に高い絶縁信頼性が得られない恐れがある。
本発明の圧電フィルムをセンサーやアクチュエーターとして利用する際の好適なフィルムの形態としては、例えば、塗工、乾燥して得られた圧電フィルム(ポリアミノ酸を含むフィルム)から、フィルムの軸線(中心線)が、ポリアミノ酸分子の配向方向に対して45度の交差角度をなすように切り出されたフィルムが挙げられる。また、本発明の圧電フィルムの平面形状は特に限定されず、例えば、正方形、矩形等である。
(電極)
本発明の圧電フィルムをセンサーやアクチュエーターとして利用するためには、フィルムの対向した2面に電極を形成する必要がある。電極の厚さは10nm〜25μm程度が好ましく、100nm〜12.5μm程度がより好ましい。厚さが25μmを超えるとフィルムの変形を阻害し、10nmより薄いと電気伝導性やピンホールなどの問題が発生する。電極形成は蒸着、スパッタなどの既存の圧電フィルムで利用される公知の方法で形成することが出来る。また、電極あるいは電極形成した絶縁体を支持体にして、これにポリアミノ酸組成物の塗工、乾燥を行うことで、電極付きの圧電フィルムを効率良く製造することもできる。電極の素材は十分な電気伝導性が担保されるのであれば金、銀、銅、白金、ニッケル、錫、アルミニウムなどの金属でも良いし、ITO、FTOなどの金属酸化物でも良いし、ポリチオフェン、ポリアニリンなどの有機導電材料でも良い。
[センサー素子]
本発明の圧電フィルムはその両面に電極を備えることによりセンサーやアクチュエーターとして利用できる。例えば、両面に電極が形成された圧電フィルムはそのまま歪みや引張りセンサーとして使用できる。また、電極が形成された本発明の圧電フィルムを被検査物に、貼りつけることで、被検査物の曲げや歪みを検知するセンサーとして使用できる。ここで、「被検査物」とは、例えば、人体、自動車、道路、橋梁等である。また、両面に電極が形成された圧電フィルムは、モノモルフ、バイモルフ、片持ち梁構造に用いられることで押圧、振動などを検知することが出来るセンサーやアクチュエーターとして利用することができる。電極が形成された本発明の圧電フィルムと圧電性を有しない別のフィルム(例えば、ゴム製フィルム等)とを端面を合わせて互いの表面(圧電フィルムにおける電極表面と、圧電性を有しないフィルムの表面)が同一の平面を成すように接合することで引張りセンサーとして利用しても良い。
電極からの信号引出しの回路は既知の方法が利用できる。例えば、予め配線を具備させた電極と本発明の圧電フィルムを接合する方法、両面に電極が形成された本発明の圧電フィルムの電極にフレキシブルプリント基板などの配線を接合する方法などが挙げられる。
両面に電極が形成された本発明の圧電フィルムのさらに外側に電磁波シールド層を用いることができる。電磁波シールド層は銅やアルミの金属箔をそのまま用いる方法や、蒸着、スパッタなどで絶縁層や接着層上に形成する方法など既知の方法を用いることが出来る。電磁波シールド層はグラウンドと接続(アース)するのが好ましい。また、電磁波シールド層は本発明のフィルムに形成された電極の一方と接続しても良い。
センサー素子に力学的負荷がかかって発生する信号(電荷)はチャージアンプなど既知の回路を用いて取り出すことが出来る。また、バンドパスフィルターなどを用いてノイズを除去したり、A/D変換を用いて信号をデジタル変換することが出来る。
本発明のセンサーは引張り、歪み、曲げ、振動、音波などを定量的に評価することが出来るので様々なものを測定することが可能である。例えば心拍や呼吸などの生体信号、橋や道路などのインフラの歪みや振動、自動車や飛行機などの機体の歪み、押圧や歪みを検知するパネルなどの新しいユーザーインターフェースなどに利用することができる。
以下、実施例を示して本発明をより詳しく説明するが、本発明は以下に記載の実施例によって限定されるものではない。
まず、本発明での物性や特性の測定方法および評価方法(試験方法)について説明する。
1.分子量測定
重量平均分子量Mw、数平均分子量Mn、分子量分布(Mw/Mn)はゲル濾過クロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した。
−GPC測定装置−
日立社製 LaChrom Elite
−カラム−
東ソー株式会社製
TSKgel Super AWM−H 6.0×150(mm) 2本
−サンプルの調製−
ポリアミノ酸を0.6〜1mg/mlの濃度で10mM臭化リチウム/DMF溶液に溶解させサンプルを調製した。
−分析条件−
以下の条件で分析を実施した。
注入量:サンプル溶液10μl、溶媒:10mM臭化リチウム/DMF溶液、流速:0.3ml/分、カラム保持温度:40℃、検出器:示唆屈折計
−解析−
予めポリスチレン標準試料にて保持時間と分子量間で検量線を作成し、ポリアミノ酸の保持時間と比較することで分子量および分子量分布を算出した。
2.ポリアミノ酸組成物の粘度測定
−測定装置−
ブルックフィールド社製のコーンプレート粘度計を使用した。
LVDV−II+Pro
RVDV−II+Pro
コーンスピンドル CPE−52
−測定方法−
JIS Z8803に準拠し、25℃にてポリアミノ酸組成物の粘度を測定した。ポリアミノ酸組成物を円すいと平円板の組み合わせから必要量(0.5ml)を測り取り、粘度計を作動させた。測定値が安定したことを確認した後、2分後の粘度値を採用した。
なお、25℃において粘度が1,000mPa・sより小さい時は50rpmの値を、1,000mPa・s以上10,000Pa・sより小さい時は10rpmの値を採用した。
3.ポリアミノ酸組成物の複屈折の確認
50μmの隙間を有するガラス板2枚にポリアミノ酸組成物を入れ、上下の偏光板がクロスニコルの状態でポリアミノ酸溶液の複屈折の有無を調べた。視野が一様に暗いときを複屈折無、明るい部分を有する時を複屈折有と判断した。
4.d14圧電定数(最高値)の測定
−測定サンプルの作成−
フィルムから、長手の軸線が、塗工方向に対して45度の交差角度をなすように、22(mm)×8(mm)のサイズの短形のフィルムを切り出した。そして、フィルムの両面の中央部に11×5(mm)の電極を形成させた。電極は金スパッタまたはアルミニウム蒸着で形成させた。金スパッタはHITACHI社製のイオンスパッタ(E−1030型)、アルミニウム蒸着は日本電子社製の真空蒸着装置(JEE−4C)を用いた。片面の電極の端にドーダイトD−362(藤倉化成社製)を用いてアルミ箔のリード線(50×2(mm))を接着した。もう片面には先にリード線を接着した側と反対側にリード線を接着し測定サンプルとした。
−測定−
東洋精機社製のレオログラフソリッドS1に測定サンプルを固定し、周波数10Hzで25℃にて、測定サンプルに印加されるせん断ひずみが0.1%〜1%の範囲に収まるように、おおよそ2×10N/m〜6×10N/mのせん断応力をフィルムの長手の軸線方向に印加し、該測定サンプルの複素圧電率d14の実数部を測定した。
5.破断伸度の測定
ポリアミノ酸フィルムから、フィルムの長手の軸線が、塗工方向に対して直交する方向となるように、試験片タイプ5の形状のフィルムを切り出し、JIS K7127に準拠し、これを試験片として引張速度5mm/minでオリエンテック社製引張試験機RTC−1250Aを用いて引張強度測定を行い、23℃における破断伸度を求めた。
6.フィルムの厚さ
フィルムの厚さはミツトヨ社製マイクロメーターを用いて塗膜1枚(約250平方センチメートル)につき10点を測定し、1μmまでを読み取り、その平均値と標準偏差値を算出した。
7.ポリアミノ酸の合成
(合成例1)
ポリ−γ−ベンジル−L−グルタミン酸(PBLG(II))の合成
1,2−ジクロロエタン(関東化学社製)400mlにN−カルボキシ−γ−ベンジル−L−グルタミン酸無水物(60.14g、228.4mmol)を入れた後、0℃まで冷却し、重合開始剤としてN,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン(143μl、1.14mmol)を加え、室温(25℃)で24時間撹拌を行った。この溶液を約200mlになるまで減圧濃縮し、ジイソプロピルエーテル1750mlに滴下した。生じた白色沈殿を減圧濾過し、50℃にて16時間減圧乾燥を行い目的とする、ポリ−γ−ベンジル−L−グルタミン酸(PBLG(II))を48.4g得た。
(合成例2〜5)
PBLG(I)、(III)、(IV)及び(V)の合成
重合開始剤の添加量を変更した以外は合成例1と同様にして、PBLG(II)とは重合度が異なるPBLG(I)、(III)、(IV)及び(V)を合成した。
(合成例6)
PLLZ(ポリε−(ベンジルオキシカルボニル)−L−リジン)の合成
N−カルボキシ−γ−ベンジル−L−グルタミン酸無水物に代えてN−カルボキシ−ε−(ベンジルオキシカルボニル)−L−リジン無水物を原料とした以外は合成例1と同様にしてPLLZを合成した。
(合成例7)
PB−b−M−LG(ポリ−γ−ベンジル−L−グルタミン酸とポリ−γ−メチル−L−グルタミン酸のブロック共重合体)の合成
1,2−ジクロロエタン(関東化学社製)100mlにN−カルボキシ−γ−ベンジル−L−グルタミン酸無水物(10g、38mmol)を入れた後、0℃まで冷却し、重合開始剤としてN,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン(9μl、0.072mmol)を加え、室温(25℃)で24時間撹拌を行った。次にN−カルボキシ−γ−メチル−L−グルタミン酸無水物(3.56g、19mmol)を加え、室温(25℃)で24時間撹拌を行った。この溶液を約60mlになるまで減圧濃縮し、ジイソプロピルエーテル500mlに滴下した。生じた白色沈殿を減圧濾過し、50℃にて16時間減圧乾燥を行い目的とするPB−b−M−LGを10.0g得た。
8.圧電フィルムの製造
(実施例1、2、比較例1,2,3,4)
表1に示す配合でポリアミノ酸(A成分)と1,4−ジオキサン(C成分)を容器に入れ、ポリアミノ酸が溶解するまで混合した。混合にはTHYNKY社製のあわとり錬太郎(ARE−310)を用いた。
ポリアミノ酸組成物をスポイトで銅箔上部に垂らし、ヨシミツ精機株式会社製のYBA型ベーカーアプリケーター(3型)を用いてポリアミノ酸組成物を銅箔上部から下部に塗工した。「塗り厚」は50μmに設定した。銅箔は三井金属鉱業社製の3EC−III(18μm)を用いた。
1,4−ジオキサンを室温(25℃)で1時間揮発させた後、同様の操作を繰り返し塗工した。その後室温で1晩(15時間以上)乾燥させフィルムを形成した。このフィルムから銅箔を除去するために塩化鉄III(関東化学社製)を30%の水溶液とし、ここに浸漬してエッチアウトを行った。このフィルムを水で洗浄し60℃のオーブンにて真空乾燥を行い、ポリアミノ酸フィルムを得た。
(実施例3〜12)
表1に示す配合でポリアミノ酸(A成分)、重量平均分子量が5,000以上の高分子化合物(B成分)、溶剤(C成分)を容器に入れ、すべての成分が均一になるまで混合した。なお、溶液の状態で入手したバイロンUR−1410は固形成分の含有量をB成分に反映させた。
塗工方法は実施例1と同様に行った。2度目の塗工後、室温で3時間乾燥したのち80℃のオーブンにて溶剤臭がなくなるまで真空乾燥を行った。エッチアウト、フィルムの洗浄、乾燥は実施例1と同様に行った。
表1中の実施例および比較例のA〜C成分の配合量の「重量部」である。また、表1における「塗り厚(μm)*塗工回数」の表記は「50*2」は塗り厚50μmの設定で2度塗り、「50*3,75*1」は塗り厚50μmの設定で3度塗りした後、塗り厚75μmの設定で1度塗り、「530*1」は塗り厚530μmの設定で1度塗りを意味する。
Figure 0006759587
表1中、「バイロンUR−1410」は東洋紡株式会社製のポリエステルウレタン樹脂、「バイロン630」は東洋紡株式会社製のポリエステル樹脂、「マルカリンカーCMM」はシグマアルドリッチ社製のポリビニルアセテート樹脂、「UNIFINER2040H」はユニチカ株式会社製のポリアリレート樹脂、「フェノトートYP-50」は新日鉄住金株式会社製のフェノキシ樹脂である。

Claims (29)

  1. (A)ポリアミノ酸および(B)重量平均分子量5,000以上の高分子化合物を含むフィルムであって、フィルムの破断伸度の最低値が2%以上であり、かつd14圧電定数の最高値が3pC/N以上の圧電フィルム。
  2. 破断伸度の最低値が4%以上である、請求項1記載の圧電フィルム。
  3. 未延伸フィルムである請求項1または2記載の圧電フィルム。
  4. (B)高分子化合物が、ポリビニルアセタール樹脂、フェノキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル樹脂、およびポリウレタン樹脂からなる群から選択される1種以上である、請求項1〜3のいずれか1項記載の圧電フィルム。
  5. ポリアミノ酸が、グルタミン酸、リジン、およびそれらの誘導体からなる群から選択される1種以上の単量体単位を含む、請求項1〜4のいずれか1項記載の圧電フィルム。
  6. フィルム中の(A)ポリアミノ酸および(B)高分子化合物のそれぞれの質量をA、Bとし、これらの合計を100質量%としたときに、下記式1を満たす、請求項1〜5のいずれか1項記載の圧電フィルム。
    式1:75%≦A/(A+B)<100%
  7. フィルムの片面または両面に電極が形成されている、請求項1〜6のいずれか1項記載の圧電フィルム。
  8. (A)ポリアミノ酸、(B)重量平均分子量が5,000以上の高分子化合物および(C)有機液状媒体を含むポリアミノ酸組成物を支持体上に塗工する第1工程、および該第1工程で得られたポリアミノ酸組成物層を乾燥してフィルムとする第2工程を含む、d14圧電定数の最高値が3pC/N以上の圧電フィルムの製造方法。
  9. (B)高分子化合物が、重量平均分子量が5,000以上、200,000以下の高分子化合物である、請求項8記載の方法。
  10. (B)高分子化合物が、ポリビニルアセタール樹脂、フェノキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル樹脂、およびポリウレタン樹脂からなる群から選択される1種以上である、請求項8または9記載の方法。
  11. (C)有機液状媒体が、構成元素として、炭素及び水素を含む化合物か、或いは、炭素及び水素とともに酸素またはハロゲンを含む化合物であって、分子量が1000以下の化合物から選択される1種以上である、請求項8〜10のいずれか1項記載の方法。
  12. (C)有機液状媒体が沸点40℃以上、150℃以下の有機液状媒体を1種以上含む、請求項8〜11のいずれか1項記載の方法。
  13. (C)有機液状媒体が、1,4−ジオキサン、1,2−ジクロロエタン、ジブロモエタン、トルエン、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトン、1−メチルナフタレン、2−メチルナフタレン、ナフタレンおよびクレゾールからなる群から選択される1種以上である、請求項8〜12のいずれか1項記載の方法。
  14. (A)ポリアミノ酸が、グルタミン酸、リジンおよびそれらの誘導体からなる群から選択される1種以上の単量体単位を含む、請求項8〜13のいずれか1項記載の方法。
  15. ポリアミノ酸組成物中の(A)ポリアミノ酸及び(B)高分子化合物のそれぞれの質量をA、Bとし、これらの合計を100質量%としたときに、下記の式1を満たし、
    ポリアミノ酸組成物中の(A)ポリアミノ酸、(B)高分子化合物及び(C)有機液状媒体のそれぞれの質量をA、B、Cとし、これらの合計を100質量%としたときに、下記の式2を満たす、請求項8〜14のいずれか1項記載の方法。
    式1:75%≦A/(A+B)<100%
    式2:20%≦(A+B)/(A+B+C)≦40%
  16. 第1工程において、ポリアミノ酸組成物の塗り厚が500μm以下となるようにポリアミノ酸組成物を塗工する、請求項8〜15のいずれか1項記載の方法。
  17. ポリアミノ酸組成物が複屈折を有する、請求項8〜16のいずれか1項記載の方法。
  18. ポリアミノ酸組成物の25℃における粘度が500mPa・s以上10000mPa・s以下である、請求項8〜17のいずれか1項記載の方法。
  19. (A)ポリアミノ酸、(B)重量平均分子量が5,000以上の高分子化合物および(C)有機液状媒体を含むことを特徴とする、d14圧電定数の最高値が3pC/N以上の圧電フィルムの製造に用いられるポリアミノ酸組成物。
  20. (B)高分子化合物が、重量平均分子量が5,000以上、200,000以下の高分子化合物である、請求項19記載のポリアミノ酸組成物。
  21. (B)高分子化合物が、ポリビニルアセタール樹脂、フェノキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル樹脂、およびポリウレタン樹脂からなる群から選択される1種以上である、請求項19または20記載のポリアミノ酸組成物。
  22. (C)有機液状媒体が、構成元素として、炭素及び水素を含む化合物か、或いは、炭素及び水素とともに酸素またはハロゲンを含む化合物であって、分子量が1000以下の化合物から選択される1種以上である、請求項19〜21のいずれか1項記載のポリアミノ酸組成物。
  23. (C)有機液状媒体が沸点40℃以上、160℃以下の有機液状媒体を1種以上含む、請求項19〜22のいずれか1項記載のポリアミノ酸組成物。
  24. (C)有機液状媒体が、1,4−ジオキサン、1,2−ジクロロエタン、ジブロモエタン、トルエン、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトン、1−メチルナフタレン、2−メチルナフタレン、ナフタレンおよびクレゾールからなる群から選択される1種以上である、請求項19〜23のいずれか1項記載のポリアミノ酸組成物。
  25. (A)ポリアミノ酸が、グルタミン酸、リジン、およびそれらの誘導体からなる群から選択される1種以上の単量体単位を含む、請求項19〜24のいずれか1項記載のポリアミノ酸組成物。
  26. ポリアミノ酸組成物中の(A)ポリアミノ酸及び(B)高分子化合物のそれぞれの質量をA、Bとし、これらの合計を100質量%としたときに、下記の式1を満たし、
    ポリアミノ酸組成物中の(A)ポリアミノ酸、(B)高分子化合物及び(C)有機液状媒体のそれぞれの質量をA、B、Cとし、これらの合計を100質量%としたときに、下記の式2を満たす、請求項19〜25のいずれか1項記載のポリアミノ酸組成物。
    式1:75%≦A/(A+B)<100%
    式2:20%≦(A+B)/(A+B+C)≦40%
  27. 請求項1〜6のいずれか1項記載の圧電フィルムの片面または両面に電極が形成されており、前記電極に配線が接続されていることを特徴とする、センサーまたはアクチュエーター。
  28. 被検査物に貼付して使用され、被検査物の曲げや歪みを検知する、請求項27に記載のセンサーまたはアクチュエーター。
  29. 圧電体として、請求項1〜6のいずれか1項記載の圧電フィルムを具備する、モノモルフ、バイモルフ、片持ち梁構造からなる群から選択される構造のセンサーまたはアクチュエーター。
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