以下、本発明の各実施形態について、図面等を参照しつつ説明する。但し、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲において様々な態様で実施することができ、以下に例示する実施形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
また、図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して説明したものと同様の機能を備えた要素には、同一の符号を付して、重複する説明を省略することがある。
本発明に係る実施形態において、ある一つの膜を加工して複数の膜を形成した場合、これら複数の膜は異なる機能、役割を有することがある。しかしながら、これら複数の膜は同一の工程で同一層として形成された膜に由来する。したがって、これら複数の膜は同一層に存在しているものと定義する。
以下に記載する各実施形態の態様によりもたらされる作用効果とは異なる他の作用効果であっても、本明細書の記載から明らかなもの、又は、当業者において容易に予測し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと解される。
(第1実施形態)
本実施形態では、本発明の一実施形態の半導体装置100、ならびにその電源パターン(配線構造)を図1乃至図4を用いて説明する。図1(A)は半導体装置100の上面図であり、鎖線A−Bに沿った断面図が図2である。図1(B)は図1(A)から第1の電源プレーン120と半導体チップ110を除いた上面図である。なお、本明細書および請求項で用いる電源プレーンは、電源層、あるいは単に電極と呼ばれることもある。
図1(A)、図2に示すように、半導体装置100は半導体チップ110を有する。半導体チップ110としてはシリコンやガリウム、シリコンカーバイド、窒化ガリウムなどの半導体が有する半導体特性を利用したデバイスなどを用いることができる。例えば整流ダイオードやトランジスタなどが挙げられ、大電圧大電流で駆動されるパワートランジスタやサイリスタなどのパワー半導体デバイスでもよい。半導体チップ110には、少なくともチップ両面の一方に端子(取り出し電極)が形成されている。図2では一方の面に形成された第1の端子102と、もう一方の面に形成された二つの端子(第2の端子104、第3の端子106)を有する例が描かれている。
半導体装置100は半導体チップ110上に接着層200を介して第1の電源プレーン120を有している。接着層200は半導体チップ110と第1の電源プレーン120を互いに接合して電気的に接続する機能を有する。例えば亜鉛やスズなどの融点の比較的低い金属やその合金などを含む導電性フィルムを用いることができる。導電性フィルムは数%(例えば3%から10%、あるいは5%から8%)のりんを含んでいてもよい。あるいは金、銀、銅などの導電性金属を含むペースト(以下、導電ペーストと記す)を第1の端子102と第1の電源プレーン120の間に塗布して焼結して接着層200形成してもよい。
半導体チップ110の下には第2の電源プレーン130、第3の電源プレーン140、第4の電源プレーン150が設けられている。第2の電源プレーン130は第1の接続ビア160(第1のビア160_1乃至第4のビア160_4)を介して第1の電源プレーン120と電気的に接続されている。第3の電源プレーン140と第4の電源プレーン150はそれぞれ、第2の接続ビア162を介して半導体チップ110の第2の端子104と第3の端子106と電気的に接続されている。なお、第2の電源プレーン130、第3の電源プレーン140、第4の電源プレーン150は同一層に存在することができる。第1の接続ビア160、第2の接続ビア162は導電ペーストを用いて形成してもよく、あるいは電解めっき法を用いて銅や金などで形成してもよい。第2の電源プレーン130、第3の電源プレーン140、および第4の電源プレーン150は電解めっき法を用いて形成してもよく、あるいは第1の接続ビア160、第2の接続ビア162を形成した後に金属板を張り合わせ、その後エッチング加工を行って形成してもよい。あるいは、電解めっき法を用いて第1の接続ビア160、第2の接続ビア162、第2の電源プレーン130、第3の電源プレーン140、第4の電源プレーン150を同時に形成してもよい。これら第1の電源プレーン120、第2の電源プレーン130、第3の電源プレーン140、第4の電源プレーン150は電源プレーン、あるいは電源層とも呼ばれる。
半導体装置100はさらに、第2の電源プレーン130、第3の電源プレーン140、第4の電源プレーン150の端部を覆うレジスト層190を有していてもよい。レジスト層190は第2の電源プレーン130、第3の電源プレーン140、第4の電源プレーン150の端部を保護する機能を有し、また、例えばはんだ層180を選択的に第2の電源プレーン130、第3の電源プレーン140、第4の電源プレーン150と接触できるよう、はんだとの親和性が低くてもよい。レジスト層190はスピンコート法、ディップ―コーティング法、印刷法、インクジェット法などの湿式成膜法で形成することができる。はんだ層180は半導体装置100を外部回路、例えば他の半導体装置やプリント配線基板などと電気的に接続することができる。
第1の電源プレーン120と、第2の電源プレーン130、第3の電源プレーン140、第4の電源プレーン150の間には絶縁膜210が設けられている。絶縁膜210は半導体チップ110を保護し、半導体装置100に物理的強度を与える機能を有する。半導体チップ110は絶縁膜210の中に埋め込まれている。絶縁膜210は例えばエポキシやポリイミド、ポリシロキサンなどの有機材料に代表される絶縁材料を用いて形成することができる。また、これらの絶縁材料にガラスの粒子や繊維が混合されていてもよい。絶縁膜210の上には、任意の構成として、絶縁膜212を有していてもよい。絶縁膜212は第1の電源プレーン120を保護する機能を有し、絶縁膜210で使用可能な材料を用いることができる。絶縁膜210、絶縁膜212は上述した湿式法や、ラミネート法などによって形成することができる。
図1(B)に示すように、本実施の形態に係る半導体装置100は、4列に互いに略平行に配列した複数の第1の接続ビア160を有している。各列に複数の第1のビア160_1、第2のビア160_2、第3のビア160_3、第4のビア160_4が設けられている。ただし、半導体装置100はこのような構成に限られることはなく、少なくとも二つのビアが、それぞれ半導体チップ110から異なる距離で形成されていればよい。また、第1の接続ビア160が5列以上の配列を形成していてもよい。図1(B)に示した構成では各列でビアの数が異なるが、半導体装置100はこのような構成に限られることはなく、各列におけるビアの数は任意に決めることができる。また、第1の接続ビア160は複数の列が規則的に配置される必要はなく、第1のビア160_1、第2のビア160_2、第3のビア160_3、第4のビア160_4を含む複数の第1の接続ビア160が不規則的に配置していてもよい。
図1(A)に示すように、第1の電源プレーン120には、第1の電源プレーン120の抵抗を調整するためのパターン(抵抗調整パターン)170が形成されている。具体的には、半導体チップ110に近い方の三つの列に整列した第1のビア160_1乃至第3のビア160_3の近傍に、かつ第1のビア160_1乃至第3のビア160_3の一部を取り囲むようにU字型の第1のスリット170_1乃至第3のスリット170_3が設けられている。これらの第1のスリット170_1乃至第3のスリット170_3は第1の電源プレーン120を貫通している。
図1(A)に示すように、一つの第1のスリット170_1は一つの第1のビア160_1と対をなし、これが複数配列している。一つの第2のスリット170_2は一つの第2のビア160_2と対をなし、これが複数配列している。また、一つの第3のスリット170_3は一つの第3のビア160_3と対をなし、これが複数配列している。第4のビア160_4にはスリットは設けられていない。なお本実施形態では、スリットが設けられていないビア(第4のビア160_4)は一列のみ設けられているが、半導体装置100は複数の列にスリットが設けられていないビアをそれぞれ複数有していてもよい。
第1のスリット170_1は第1のビア160_1と第1の端子102間に位置している。したがって第1のスリット170_1は、第1のビア160_1と、第1の電源プレーン120のうち第1の端子102と重なる領域を結ぶ最も短い直線を横断している。第2のスリット170_2は第1のビア160_1と第2のビア160_2の間に位置している。したがって第2のスリット170_2は、第1のビア160_1と第2のビア160_2間の直線を横断している。第3のスリット170_3は第2のビア160_2と第3のビア160_3の間に位置している。したがって第3のスリット170_3は、第2のビア160_2と第3のビア160_3間の直線を横断している。
第1のスリット170_1乃至第3のスリット170_3は、第1の電源プレーン120の上面において開いた形状を有している。例えば図1(A)では、開いた形状であるU字形状を有している。このため、第1のビア160_1と第2のビア160_2間の直線が第1のスリット170_1の開いた形状の開口部を横断している。同様に、第2のビア160_2と第3のビア160_3間の直線が第2のスリット170_2の開いた形状の開口部を横断している。また、第3のビア160_3と第4のビア160_4間の直線が第3のスリット170_3の開いた形状の開口部を横断している。
第1のスリット170_1、第2のスリット170_2、第3のスリット170_3の長さは互いに異なってもよい。半導体チップ110に最も近い第1のスリット170_1が最も長く、半導体チップ110から遠ざかるにつれて、短くなっていることが好ましい。図1(A)に示す構成では、第1のスリット170_1、第2のスリット170_2、第3のスリット170_3の順で短くなっている。
抵抗調整パターン170の断面積は、第1の接続ビア160の断面積より大きいことが好ましい。ここで抵抗調整パターン170の断面積とは、図3(A)に示すように、パターン170のスリット(図1ではスリット170_1乃至スリット170_3)の開口部の端部の幅Wと、第1の電源プレーン120の厚さの積であり、開口部端部に沿った断面C−Dにおいて、スリット170に挟まれた領域172の面積である。第1の接続ビア160の断面積とは、接続ビア160の、第1の電源プレーン120の上面に平行な面の面積である。このような構成を用いることで、抵抗調整パターン170において発生するジュール熱を小さくすることができる。
抵抗調整パターン170に設けられるスリット(第1のスリット170_1乃至第3のスリット170_3)の幅は、10μm以上200μm以下、好ましくは10μm以上50μm以下である。これにより、第1の電源プレーン120自体の熱伝導の低下を防ぐことができる。
このような構成により、第1の電源プレーン120を経由して第1のビア160_1乃至第3のビア160_3と半導体チップ110間を流れる電流は、図3(B)の点線で示すように、第1のスリット170_1乃至第3のスリット170_3を回避するように流れる。したがって、図3(C)の等価回路で示すように、抵抗調整パターン170、すなわち第1のスリット170_1乃至第3のスリット170_3によって、それぞれ第1のビア160_1乃至第3のビア160_3から半導体チップ110への導電ルートに新たに抵抗(Rcontrol-1乃至Rcontrol-3)が形成される。この抵抗は、第1のスリット170_1乃至第3のスリット170_3によって囲まれた領域(図3(B)中、点線で囲まれた領域)で第1の電源プレーン120が作り出すものである。
一方、このような抵抗調整パターン170が形成されていない場合の半導体装置を図4(A)、(B)に示すが、図4(B)に示すように、抵抗調整パターン170が無い場合には第1のビア160_1乃至第4のビア160_4を経由する電流はほぼ直線的に半導体チップ110へ、あるいは半導体チップ110から流れることができる。この時の導電ルートの等価回路を図4(C)に示す。
図4(C)に示すように、第4のビア160_4を経由する電流i4が受ける抵抗は、第4のビア160_4の抵抗(Rvia-4)と、第1の電源プレーン120における第4のビア160_4と半導体チップ110(あるいは第1の端子102、以下同様)間の抵抗(R4、R3、R2、R1の和)の和となる。同様に、第3のビア160_3を経由する電流i3が受ける抵抗は、第3のビア160_3の抵抗(Rvia-3)と、第1の電源プレーン120における第3のビア160_3と半導体チップ110間の抵抗(R3、R2、R1の和)の和となる。第2のビア160_2を経由する電流i2が受ける抵抗は、第2のビア160_2の抵抗(Rvia-2)と、第1の電源プレーン120における第2のビア160_2と半導体チップ110間の抵抗(R2、R1の和)の和となる。同様に、第1のビア160_1を経由する電流i1が受ける抵抗は、第1のビア160_1の抵抗(Rvia-1)と、第1の電源プレーン120における第1のビア160_1と半導体チップ110間の抵抗(R1)の和となる。すなわち、抵抗調整パターン170を形成しない場合、i1、i2、i3、i4が受ける抵抗は以下のようになる。
i1:Rvia-1+R1
i2:Rvia-2+R1+R2
i3:Rvia-3+R1+R2+R3
i4:Rvia-4+R1+R2+R3+R4
第1のビア160_1乃至第4のビア160_4が同じサイズであり、同じ材料で形成されている場合、Rvia-1、Rvia-2、Rvia-3、Rvia-4は互いにほぼ同じとみなすことができる。同様に、第1の電源プレーン120がほぼ均一な膜厚であり、第1の接続ビア160の間隔がほぼ同じであれば、R1、R2、R3、R4も互いにほぼ同じであるとみなすことができる。したがって、半導体チップ110から最も遠いビアである第4のビア160_4を経由する導電ルートが最も抵抗が高く、第3のビア160_3、第2のビア160_2、第1のビア160_1を経由する導電ルートの順で抵抗が低くなる。すなわち、以下の関係が容易に導かれる。
i1>i2>i3>i4
このため、第1のビア160_1に最も電流が集中することとなる。電流による発熱(ジュール熱)Pは以下の式で決まり、電流値の二乗に比例する。
P=i2×R
ここでiは電流、Rは抵抗である。
したがって、電流が集中する第1のビア160_1の発熱量は第2のビア160_2、第3のビア160_3、第4のビア160_4と比較して非常に大きくなる。また、第1のビア160_1は半導体チップ110に最も近いことから、半導体チップの温度上昇を加速することになる。
これに対して本実施形態で示した構成では、図3(B)に示すように、第4のビア160_4を経由する電流はほぼ直線的に半導体チップ110へ、あるいは半導体チップ110から流れることができるのに対し、第1のビア160_1乃至第3のビア160_3を経由する電流は、矢印で示すように、第1のスリット170_1乃至第3のスリット170_3によって囲まれた領域を経由した後に半導体チップ110へ流れることになる。すなわち、第1のスリット170_1乃至第3のスリット170_3によって囲まれた領域によって、1のビア160_1乃至第3のビア160_3を経由する導電ルート対し、抵抗(Rcontrol-1乃至Rcontrol-3)が追加される。
この効果を、等価回路(図3(C))を用いてより具体的に説明する。第4のビア160_4を経由する電流i4が受ける抵抗は、第4のビア160_4の抵抗Rvia-4と、第1の電源プレーン120における第4のビア160_4と半導体チップ110間の抵抗(R4、R3、R2、R1の和)の和となる。一方、第3のビア160_3を経由する電流i3が受ける抵抗は、第3のビア160_3の抵抗Rvia-3と、第1の電源プレーン120における第3のビア160_3と半導体チップ110間の抵抗(R3、R2、R1の和)の和、および抵抗調整パターン170によってもたらされた抵抗Rcontrol-3の和となる。同様に、第2のビア160_2を経由する電流i2が受ける抵抗は、第2のビア160_2の抵抗Rvia-2と、第1の電源プレーン120における第2のビア160_2と半導体チップ110間の抵抗(R2、R1の和)の和、および抵抗調整パターン170によってもたらされた抵抗Rcontrol-2の和となる。また、第1のビア160_1を経由する電流i1が受ける抵抗は、第1のビア160_1の抵抗Rvia-1と、第1の電源プレーン120における第1のビア160_1と半導体チップ110間の抵抗(R1)の和、および抵抗調整パターン170によってもたらされた抵抗Rcontrol-1の和となる。すなわち、i1、i2、i3、i4が受ける抵抗は以下のように表される。
i1:Rvia-1+Rcontrol-1+R1
i2:Rvia-2+Rcontrol-2+R1+R2
i3:Rvia-3+Rcontrol-3+R1+R2+R3
i4:Rvia-4+R1+R2+R3+R4
抵抗調整パターンが形成されていない場合(図4(A)乃至図4(C))と同様、Rvia-1、Rvia-2、Rvia-3、Rvia-4は互いにほぼ同じとみなすことができ、同様にR1、R2、R3、R4もほぼ同じであるとみなすことができる。したがって図3(B)に示すように、第1のスリット170_1乃至第3のスリット170_3の長さを互いに変え、Rcontrol-3をR4と同程度に、Rcontrol-2をR3+R4と同程度に、Rcontrol-1をR2+R3+R4と同程度に調整することにより、各導電ルートが受ける抵抗をほぼ同じにすることが可能となる。より具体的には、半導体チップ110に近いほど抵抗が大きくなるように、抵抗調整パターン170を調整する。つまり、以下の関係が満たされるように抵抗調整パターン170を調整する。
Rcontrol-1>Rcontrol-2>Rcontrol-3
これにより、第1のビア160_1乃至第4のビア160_4に対してほぼ均等の電流を分配し、電流集中による発熱を抑制することが可能となる。
このように、本発明の実施形態に係る電源パターンを採用することで、半導体装置100において電流集中を防止することができ、これに伴い局所的なジュール発熱を抑制することができる。このため、半導体装置100に搭載さる半導体チップ110の発熱が抑制され、半導体チップ110ならびに半導体装置100の駆動の安定化、信頼性向上、安全性の改善などに寄与することができる。同時に、このような半導体装置100が搭載された各種半導体パッケージや電子機器の発熱の抑制、駆動の安定化、信頼性向上、安全性の改善を実現することが可能である。
(第2実施形態)
本実施形態では、第1実施形態と異なる抵抗調整パターン170を図5乃至図8を用いて記述する。なお、第1実施形態と同じ構成に関しては記述を割愛する。
第1実施形態で示した抵抗調整パターン170は、U字型の第1のスリット170_1乃至第3のスリット170_3を有しているが、本実施形態における抵抗調整パターン170では、スリットの構造、あるいは向きが異なっている。
具体的には図5(A)に示すように、抵抗調整パターン170はJ字型のスリットを有していてもよい。また、図5(B)に示すようにコの字型、もしくは直線によって構成される開いた形状を有するスリットを有していてもよい。あるいは抵抗調整パターン170は、図(C)に示すように、対称軸を持たないスリットを有していてもよい。あるいは図5(D)に示すように直線形状のスリットを有していてもよい。直線形状の場合、図5(E)に示すように、一つの第1の接続ビア160を挟むような二本の直線状のスリットで抵抗調整パターン170が形成されていてもよい。
二本の直線状のスリットで抵抗調整パターン170を形成した場合(図5(E))の、第1の電源プレーン120の上面図、およびその際の導電ルートの等価回路を図6(A)と図6(B)にそれぞれ示す。図6(A)に示すように抵抗調整パターン170は、半導体チップ110に近い側から第1のスリット170_1、第2のスリット170_2、第3のスリット170_3を有している。各第1のスリット170_1、第2のスリット170_2、第3のスリット170_3は二つの直線状のスリットで構成され、これらが第1の接続ビア160(第1のビア160_1乃至第3のビア160_3)をそれぞれ挟むように配置されている。また、第1のスリット170_1、第2のスリット170_2、第3のスリット170_3の順でスリットの長さが小さくなっている。
この場合、図6(B)に示すように、抵抗調整パターン170によって付加される抵抗Rcontrol-1乃至Rcontrol-3は並列に接続された二つの抵抗で表される。第1実施形態と同様に、これらの抵抗Rcontrol-1乃至Rcontrol-3の大きさを第1のスリット170_1乃至第3のスリット170_3の長さを制御することで調整することができる。また、一つのスリットでは目的とする抵抗が得られない場合、二つのスリットを用いて抵抗を調整することができる。これによって、第1のビア160_1乃至第3のビア160_3を経由する電流値を均等にすることができ、電流集中を抑制することができる。
抵抗調整パターン170が有するスリットの開いた形状の開口部は、半導体チップ110の方向に向いていてもよい。例えば図7(A)に示すように、抵抗調整パターン170はU字型のスリットで構成され、その開口部が半導体チップ110の方向に向いていてもよい。同様に図7(B)で示すように、抵抗調整パターン170がJ字型のスリットで構成され、その開口部が半導体チップ110の方向に向いていてもよい。また、抵抗調整パターン170は直線によって構成された開いた形状のスリットを有していてもよい(図7(C)、(D))。
図7(A)から図7(D)に示した配置を実施形態1で示した半導体装置100に適用した場合、第1のスリット170_1は第1のビア160_1と第2のビア160_2の間に位置することができる。また、第2のスリット170_2は第2のビア160_2と第3のビア160_3の間に位置することができる。したがって、第1のビア160_1と第1の端子102を結ぶ最も短い直線が、第1のスリット170_1の開いた形状の開口部を横断する。同様に、第1のビア160_1と第2のビア160_2間の直線が、第2のスリット170_2の開いた形状の開口部を横断する。また、第1のスリット170_1は第1のビア160_1と第2のビア160_2間の直線を横断し、第2のスリット170_2は第2のビア160_2と第3のビア160_3間の直線を横断する。
さらに図8に示すように、抵抗調整パターン170が有する複数のスリットは、互いに方向が異なっていてもよい。例えば図8に示した構造では、第1のスリット170_1に対し、第2のスリット170_2や第3のスリット170_3は傾いている。この場合でも、第1のスリット170_1乃至第3のスリット170_3は、直線形状でもよく、また、開いた形状を有していてもよい。さらに、開いた形状が直線で構成されていてもよい。
抵抗調整パターン170が半導体チップ110に対してこのような配置であっても、第1の接続ビア160と半導体チップ110の間に抵抗を追加することができるため、各第1の接続ビア160を経由する導電ルートの抵抗を、互いにほぼ同じにすることができる。そのため電流集中を抑制することができ、これに伴う局所的なジュール発熱を抑制することができる。このため、半導体装置100に搭載さる半導体チップ110の発熱が抑制され、半導体チップ110ならびに半導体装置100の駆動の安定化、信頼性向上、安全性の改善などに寄与することができる。同時に、このような半導体装置100が搭載された各種半導体パッケージや電子機器の発熱の抑制、駆動の安定化、信頼性向上、安全性の改善を実現することが可能である。
(第3実施形態)
本実施形態では、第1、第2実施形態と異なる抵抗調整パターン170を有する半導体装置300を図9乃至図12を用いて記述する。なお、第1、第2実施形態と同じ構成に関しては記述を割愛する。
第1、第2実施形態では、抵抗調整パターン170は第1の電源プレーン120のみに設けられている。これに対して本実施形態に係る半導体装置300では、第1の電源プレーン120と第2の電源プレーン130の両方に抵抗調整パターン170、175が設けられている。
具体的には図9(A)に示すように、第1の電源プレーン120には複数の第1のスリット170_1と複数の第3のスリット170_3が設けられている。複数の第1のスリット170_1と複数の第3のスリット170_3はそれぞれ直線上に配列している。また、第1の電源プレーン120と第2の電源プレーン130の間に設けられる複数の第1のビア160_1は、各々対応する第1のスリット170_1と対を形成している。同様に、複数の第3のビア160_3は、各々対応する第3のスリット170_3と対を形成している。
一方第2の電源プレーン130には、抵抗調整パターン175として複数の第1のスリット175_1が直線上に配列しており、複数の第2のビア160_2は、各々対応する第1のスリット175_1と対を形成している。また、複数の第1のスリット175_1が配列する直線は、複数の第1のスリット170_1と複数の第3のスリット170_3が配列する直線の間に位置している。
半導体装置300における導電ルートの等価回路を図10に示す。第1実施形態と異なり半導体装置300では、第1のスリット175_1で付与される抵抗Rcontrol-2が第2の電源プレーン130側に与えられる。第1実施形態と同様、第2のビア160_2を経由する電流i2にかかる抵抗は、第2のビア160_2の抵抗Rvia-2と、第1の電源プレーン120における第2のビア160_2と半導体チップ110間の抵抗(R2、R1の和)の和、および第1のスリット175_1によってもたらされた抵抗Rcontrol-2の和となる。したがって、第1実施形態の構成と同じ効果を得ることができる。本実施形態の電源パターンは、例えば第1の接続ビア160が密集し、一方の電源プレーンのみでは抵抗調整パターンの形成が困難な時に有利である。
本実施形態に係る半導体装置は上述した構造に限られることはなく、第1の電源プレーン120に形成される抵抗調整パターン170と第2の電源プレーン130に形成される抵抗調整パターン175が、互いにすべて、あるいは一部が重なっていてもよい。例えば図11(A)、(B)に示す半導体装置310のように、第1の電源プレーン120と第2の電源プレーン130の両方に、同じ形状の抵抗調整パターン170、175を設けることができる。なお、図11(B)は図11(A)から第1の電源プレーン120と半導体チップ110を除いた図である。ここでは第1の電源プレーン120において、複数の第1のスリット170_1、複数の第2のスリット170_2、および複数の第3のスリット170_3がそれぞれ異なる直線上に配列している。同様に、第2の電源プレーン130において、複数の第1のスリット175_1、複数の第2のスリット175_2、および複数の第3のスリット175_3がそれぞれ異なる直線上に配列している。また、第1の電源プレーン120と第2の電源プレーン130の間に設けられる複数の第1のビア160_1は、各々対応する第1の電源プレーン120と第2の電源プレーン130の第1のスリット170_1、175_1と対を形成している。同様に、複数の第2のビア160_2は、各々対応する第1の電源プレーン120と第2の電源プレーン130の第2のスリット170_2、175_2と対を形成している。また、複数の第3のビア160_3は、各々対応する第1の電源プレーン120と第2の電源プレーン130の第3のスリット170_3、175_3と対を形成している。
このような抵抗調整パターン170、175を有する半導体装置310における導電ルートの等価回路を図12に示す。第1実施形態と異なり半導体装置300では、各抵抗調整パターン170、175で付与される抵抗は、第1の電源プレーン120におけるRcontro-xa、および第2の電源プレーン130におけるRcontro-xb(Xは1、2、あるいは3)の和である。付与される抵抗は第1の電源プレーン120と第2の電源プレーン130の両方に形成された抵抗調整パターン170、175で形成されることから、それぞれのスリットの大きさを小さくすることができる。
第1実施形態と同様、このような構成を採用することで、半導体装置300や310の電源プレーンにおいて電流集中を抑制することができ、これに伴い局所的なジュール発熱を抑制することができる。このため、半導体装置300や310に搭載さる半導体チップ110の発熱が抑制され、半導体チップ110ならびに半導体装置300や310の駆動の安定化、信頼性向上、安全性の改善などに寄与することができる。同時に、このような半導体装置300や310が搭載された各種半導体パッケージや電子機器の発熱の抑制、駆動の安定化、信頼性向上、安全性の改善を実現することが可能である。
(第4実施形態)
本実施形態では、第1、第2実施形態と異なる抵抗調整パターン470を有する半導体装置400を図13、図14を用いて記述する。本実施形態の半導体装置400はボールグリッドアレイ(BGA)の半導体パッケージにおいて有効な電源パターンを有している。図14(A)、(B)はそれぞれ、図13における鎖線A−B、およびC−Dに沿った断面図である。第1乃至第3実施形態と同じ構成に関しては記述を割愛する。なお、図14の断面図では、理解を容易にするため電源パターンのみを模式的に示しており、各種信号を伝達するため、あるいは接地電位と接続される配線層などは図示していない。
図13、14(A)、14(B)に示すように本実施形態の半導体装置400は、第1の電源プレーン420の上に、絶縁膜502、およびアンダーフィル490を介して半導体チップ410を有している。絶縁膜502は第1実施形態の絶縁膜210や212と同様の構成をとることができる。アンダーフィル490は絶縁物を使用して形成することができ、例えば絶縁性ダイアタッチフィルム(DAF)などを用いることができる。第1の電源プレーン420は第2の接続ビア450、電極パッド454、およびバンプ452を介して半導体チップ410の端子(図示せず)と電気的に接続されている。バンプ452は、例えばはんだや銅などの金属を含むことができる。第1の電源プレーン420には貫通孔480を設け、種々の信号を伝達する配線や接地電位との接続に用いることができる。第2の接続ビア450は電解めっき法などを用いて作製することができる。
第1の電源プレーン420の下には絶縁膜500を介して第2の電源プレーン430が備えられている。第2の電源プレーン430は、第1のビア460_1乃至第3のビア460_3を含む第1の接続ビア460を介して第1の電源プレーン420と電気的に接続されている。
第2の電源プレーン430の下には、絶縁膜504、および外部電極510が設けられていてもよい。絶縁膜504は絶縁膜500や502と同様の構成を持つことができる。外部電極510は例えば電解めっき法などを用いて形成することができる。半導体装置400はさらに、外部電極510の端部を覆うように、はんだとの親和性の低いレジスト層530を有していてもよく、外部電極510の露出部ははんだボール520と接触していてもよい。はんだボール520を介して半導体装置400が外部電源や他の半導体装置、あるいはプリント配線基板などと接続される。
図13、14(A)、14(B)に示すように、半導体チップ410と重なる領域、およびその近傍の第1のビア460_1乃至第3のビア460_3には、それと対をなすように、第1のスリット470_1乃至第3のスリット470_3がそれぞれ設けられている。より具体的には、第1のビア460_1の一部を取り囲むように第1のスリット470_1が設けられている。この第1のビア460_1を取り囲むように設けられた複数の第2のビア460_2のそれぞれに、第2のビア460_2の一部を取り囲むように第2のスリット470_2が設けられている。さらに第2のビア460_2を取り囲むように設けられた複数の第3のビア460_3のそれぞれに、第3のビア460_3の一部を取り囲むように第3のスリット470_3が設けられている。
図13では、第1のスリット470_1の直線部が半導体チップ410の辺方向に対して傾いているが、この角度は任意であり、辺方向と平行であってもよい。また、第2のスリット470_2は、第1のビア460_1と第2のビア460_2間の直線を横断するように設けられているが、第2のスリット470_2の開いた形状の開口部が第1のビア460_1と第2のビア460_2間の直線を横断するように設けてもよい。同様に図13の半導体装置400では、第3のスリット470_3の開いた形状の開口部が第2のビア460_2と第3のビア460_3間の直線を横断するように設けてられているが、第3のスリット470_3が第2のビア460_2と第3のビア460_3間の直線を横断するように設けられていてもよい。
抵抗調整パターン470は、半導体チップ410の端子の中心に近いほど、長さが長く、中心から離れるほど短いことが好ましい。すなわち、第1のスリット470_1、第1のスリット470_2、第3のスリット470_3に囲まれる領域の面積は、半導体チップ410の端子の中心に近いほど大きいことが好ましい。
抵抗調整パターン470の断面積は、第1の接続ビア460の断面積より大きくてもよい。これらの断面積の定義は実施形態1で述べたとおりである。
このような抵抗調整パターン470を形成することで、第1のビア460_1乃至第3のビア460_3を流れる電流を互いにほぼ同じにすることができる。そのため電流集中を抑制することができ、これに伴う局所的なジュール発熱を抑制することができる。このため、半導体装置400に搭載さる半導体チップ410の発熱が抑制され、半導体チップ410ならびに半導体装置400の駆動の安定化、信頼性向上、安全性の改善などに寄与することができる。同時に、このような半導体装置400が搭載された各種半導体パッケージや電子機器の発熱の抑制、駆動の安定化、信頼性向上、安全性の改善を実現することが可能である。
本実施例では、半導体チップが搭載された半導体装置において、各ビアに流れる電流量とジュール発熱量をシミュレーションによって検証した。シミュレーションに用いた半導体デバイスの構造を図15(A)、(B)に示す。半導体デバイスは、半導体チップ110を挟持する第1の電源プレーン120、第2の電源プレーン130を有し、第1の電源プレーン120と第2の電源プレーン130は複数のビア(複数の第1のビア160_1乃至第4のビア160_4)によって互いに電気的に接続されている。第1の電源プレーン120は図15(A)、(B)に示すような抵抗調整パターン170を有し、抵抗調整パターン170は、図15(B)の表に示したサイズの複数の第1のスリット170_1乃至第3のスリット170_3を有している。ここでパターン幅とは、図15(B)に示すように、各第1のスリット170_1乃至第3のスリット170_3の開いた形状の開口部の幅である。パターン長とは、第1のビア160_1乃至第3のビア160_3の中心からパターン幅方向に対して平行に下ろした直線が対応する第1のスリット170_1乃至第3のスリット170_3と交わる点から開口部までの長さである。複数の第1のスリット170_1乃至第3のスリット170_3は各々、対応する複数の第1のビア160_1乃至第3のビア160_3と対になっている。これらの複数の第1のビア160_1乃至第4のビア160_4、および複数の第1のスリット170_1乃至第3のスリット170_3を特定するための座標は図15(A)に示したとおりである。なお、半導体チップ110と第1のビア160_1との距離は3mmとした。
この半導体装置に対し、電源電流が100A、各ビアの抵抗を7.50×10-4Ω、周辺温度を20℃とし、電気シミュレーションソフト(ANSYS社製、Q3D Extractor)、および熱シミュレーションソフト(ANSYS社製、Icepac)を用いて各ビアに流れる電流、ならびに半導体素子の温度とその分布を計算した。なお、抵抗調整パターン170を持たない構造の半導体装置(図4参照)を比較の対象として用いた。
図16(A)に、第1の電源プレーン120に流れる電流の分布を示す。ここに示すように、抵抗調整パターン170を持たない場合(図16(A)左側)、半導体チップ110に近いビア(第1のビア160_1)に電流が集中していることが確認された。これに対し図15(A)、(B)に示した抵抗調整パターン170を持つ場合、流れる電流が平均化され、特定のビアへの電流集中を抑制できることが分かった。
図16(B)に熱シミュレーションの結果を示す。ここに示すように抵抗調整パターン170を持たない場合、第1のビア160_1においてが最も温度が高くなり、その最大温度は27.7℃、チップ温度は23.9℃まで上昇することが分かった。また、等温線が示すように、発熱は第1のビア160_1を中心とする狭い範囲に集中することが分かった。これに対して抵抗調整パターン170を導入することにより(図16(B)右側)、発熱の中心は第1のビア160_1ではあるものの、等温線は非常に緩やかになっており、発熱が広い範囲にわたって分散されていることが確認された。また、最大温度が25.5℃、チップ温度が21.6℃となり、それぞれ2℃以上低下できることが分かった。これらの結果の具体的なデータを表1に示す。
例えばビアA6とA7の場合、抵抗調整パターン170を導入することで、電流値は約半分に低下していることが分かる。ジュール発熱は電流量の二乗に比例するため、この差はジュール発熱の低減に大きく寄与する。具体的にはビアA6とA7の場合、ジュール発熱は74%低減することが分かる。また、全てのビアに流れる電流の合計値は抵抗調整パターン170の有無によって大きく変わらないが、全体のジュール発熱は32%低下することが確認された。
図17に、実装基板220上に固定された半導体チップ110を想定し、半導体チップ110自身の発熱を2Wとし、各ビアから発生するジュール熱を合わせて解析を行った結果を示す。ここでは、半導体装置の断面の温度勾配を等温線で示されている。抵抗調整パターン170を持たない場合、図17の左図に示すように、半導体チップ110の温度は101.4℃となるのに対し、抵抗調整パターン170を導入することで98.4℃まで低下することが分かった。さらに、抵抗調整パターン170がある場合には、半導体チップ110の全体にジュール発熱が均等に分布することが分かった。
本実施例で検証されたように、本発明の実施形態に係る抵抗調整パターン170を導入することにより、半導体装置の電源プレーンにおいて電流集中を抑制することができ、これに伴い局所的なジュール発熱を抑制することができる。このため、半導体装置に搭載さる半導体チップの発熱が抑制され、半導体チップならびに半導体装置の駆動の安定化、信頼性向上、安全性の改善などに寄与することができる。同時に、このような半導体装置が搭載された各種半導体パッケージや電子機器の発熱の抑制、駆動の安定化、信頼性向上、安全性の改善を実現することが可能である。
なお、本発明に係る電源パターン(配線構造)は、パワーデバイスが搭載された半導体装置のみならず、複数のコンタクトホールあるいはビアを経由して接続された積層配線を有するデバイスや基板に広く用いることが可能である。例えば積層配線構造を有するプリント配線基板などにも適用可能である。