以下、各実施の形態について図面を参照して詳しく説明する。なお、同一または相当する部分には同一の参照符号を付して、その説明を繰り返さない。
実施の形態1.
実施の形態1〜3では、同一箇所に1台の電流検出器を設けた場合において、各電流検出器の故障判定が可能な方法について説明する。特に実施の形態1では、各アームに電流検出器を設けるが、直流線路および交流線路には電流検出器を設けない場合について説明する。
以下では、まず、実施の形態1〜6で共通する電力変換装置の構成について説明する。次に、実施の形態1〜3で用いられる電流検出器の故障判定式について説明する。故障判定式は、各電流検出器の故障の有無を判定するための条件式である。
[電力変換器の全体構成]
図1は、実施の形態1の電力変換装置の概略構成図である。図1を参照して、電力変換装置1Aは、互いに直列接続された複数の変換器セル7を含むモジュラーマルチレベル変換器によって構成される。なお、「変換器セル」は、「サブモジュール」、SM、または「単位変換器」とも呼ばれる。
電力変換装置1Aは、正極側直流端子12Pと負極側直流端子12Nとに接続された直流回路(不図示)と、U相、V相、およびW相の交流端子10U,10V,10Wに接続された交流回路(不図示)との間で電力変換を行なう。直流回路は、たとえば、直流送電網などを含む直流電力系統または他の電力変換装置の直流端子である。後者の場合、2台の電力変換装置を連結することによって定格周波数などが異なる交流電力系統間を接続するためのBTB(Back To Back)システムが構成される。交流回路は、たとえば、交流電源などを含む交流電力系統である。
電力変換装置1Aは、モジュラーマルチレベル変換器方式の電力変換器2と、電力変換器2を制御する制御装置3とを含む。
電力変換器2は、正極側直流端子12Pに接続された正極側直流線路13Pと、負極側直流端子12Nに接続された負極側直流線路13Nと、U相、V相、およびW相の交流端子10U,10V,10Wにそれぞれ接続された交流線路11U,11V,11Wと、U相、V相、およびW相の上アーム5U,5V,5Wと、U相、V相、およびW相の下アーム6U,6V,6Wとを含む。上アーム5U,5V,5Wは、それぞれ下アーム6U,6V,6Wが対応し、接続部NU,NV,NWをそれぞれ介して下アーム6U,6V,6Wに直接接続される。
以下、正極側直流端子12Pおよび負極側直流端子12Nについて総称する場合または不特定のものを示す場合に直流端子12と記載する。正極側直流線路13Pおよび負極側直流線路13Nについて総称する場合または不特定のものを示す場合に直流線路13と記載する。交流端子10U,10V,10Wおよび交流線路11U,11V,11Wについて総称する場合または不特定のものを示す場合に、それぞれ交流端子10および交流線路11と記載する。上アーム5U,5V,5Wおよび下アーム6U,6V,6Wについて総称する場合または不特定のものを示す場合に、それぞれ上アーム5および下アーム6と記載する。
U相上アーム5Uの一端は正極側直流線路13Pに接続され、その他端はU相交流線路11Uに電気的に接続される。同様に、V相上アーム5Vの一端は正極側直流線路13Pに接続され、その他端はV相交流線路11Vに電気的に接続される。W相上アーム5Wの一端は正極側直流線路13Pに接続され、その他端はW相交流線路11Wに電気的に接続される。
また、U相下アーム6Uの一端は負極側直流線路13Nに接続され、その他端はU相上アーム5Uの上記他端にU相接続部NUを介して接続される。同様に、V相下アーム6Vの一端は負極側直流線路13Nに接続され、その他端はV相上アーム5Vの上記他端にV相接続部NVを介して接続される。W相下アーム6Wの一端は負極側直流線路13Nに接続され、その他端はW相上アーム5Wの上記他端にW相接続部NWを介して接続される。
なお、図1には、交流回路が三相交流系統の場合が示され、U相、V相、W相にそれぞれ対応して3個の上アーム5U,5V,5Wと3個の下アーム6U,6V,6Wとが設けられている。図1の場合と異なるが、交流回路が単相交流系統の場合には、2個の上アームと2個の下アームとが設けられる。したがって、より一般的には、n本の交流線路11(nは2以上の整数)は、n本の上アーム5の他端にそれぞれ電気的に接続される。n本の下アーム6の他端は、n本の上アーム5の上記他端にそれぞれ接続される。
接続部NU,NV,NWと交流端子10U,10V,10Wとの間に変圧器(不図示)が設けられていてもよい。もしくは、接続部NU,NV,NWとU相交流端子10Uとの間に連系リアクトル(不図示)が設けられていてもよい。
また、図1では、接続部NU,NV,NWは交流線路11U,11V,11Wにそれぞれ直接接続されている。これと異なり、上アーム5U,5V,5Wと下アーム6U,6V,6Wとの接続部NU,NV,NWにそれぞれ一次巻線を設けることにより、この一次巻線と磁気結合する二次巻線を介して接続部NU,NV,NWが交流線路11U,11V,11Wにそれぞれ交流的に接続するようにしてもよい。この場合、一次巻線を下記のリアクトル8としてもよい。
上アーム5U,5V,5Wは互いに同様の構成を有し、下アーム6U,6V,6Wは互いに同様の構成を有するので、以下では、U相上アーム5UおよびU相下アーム6Uを代表的に説明する。
U相上アーム5Uは、カスケード接続された複数の変換器セル7と、リアクトル8とを含む。複数の変換器セル7およびリアクトル8は、直列に接続されている。同様に、U相下アーム6Uは、カスケード接続された複数の変換器セル7と、リアクトル8とを含む。複数の変換器セル7およびリアクトル8は、直列に接続されている。以下の説明では、U相上アーム5UおよびU相下アーム6Uの各々に含まれる変換器セル7の数をNcellとする。但し、Ncell≧2とする。
リアクトル8が挿入される位置は、U相上アーム5Uのいずれの位置であってもよく、U相下アーム6Uのいずれの位置であってもよい。リアクトル8はU相上アーム5UおよびU相下アーム6Uにそれぞれ複数個設けられてもよい。各リアクトル8のインダクタンス値は互いに異なっていてもよい。さらに、U相上アーム5Uのリアクトル8のみ、もしくは、U相下アーム6Uのリアクトル8のみを設けてもよい。また、交流線路11U,11V,11Wに変圧器を設ける場合には、変圧器結線を工夫して、直流分電流の磁束を打ち消すとともに、交流分電流に対して変圧器の漏れリアクタンスが作用することでリアクトルの代替としてもよい。リアクトル8を設けることにより、交流回路または直流回路等の事故時における事故電流の急激な増大を抑制できる。
電力変換装置1Aは、さらに、制御に使用される電気量(電流、電圧など)を計測する各検出器として、交流電圧検出器20と、直流電圧検出器24と、上アーム電流検出器22と、下アーム電流検出器23とを含む。これらの検出器によって検出された信号は、制御装置3に入力される。以下、各検出器について具体的に説明する。
交流電圧検出器20は、交流線路11U,11V,11Wにそれぞれ設けられる。交流電圧検出器20は、U相交流線路11Uの交流電圧vu、V相交流線路11Vの交流電圧vv、および、W相交流線路11Wの交流電圧vwを検出する。
直流電圧検出器24は、直流線路13P,13Nにそれぞれ設けられる。直流電圧検出器24は、正極側直流線路13Pの直流電圧vdcpおよび負極側直流線路13Nの直流電圧vdcnを検出する。
上アーム電流検出器22は、上アーム5U,5V,5Wにそれぞれ設けられる。上アーム電流検出器22は、U相上アーム5Uに流れる上アーム電流iup、V相上アーム5Vに流れる上アーム電流ivp、およびW相上アーム5Wに流れる上アーム電流iwpを検出する。
下アーム電流検出器23は、下アーム6U,6V,6Wにそれぞれ設けられる。下アーム電流検出器23は、U相下アーム6Uに流れる下アーム電流iun、V相下アーム6Vに流れる下アーム電流ivn、およびW相下アーム6Wに流れる下アーム電流iwnを検出する。
以下の説明において、正極側直流線路13Pを流れる直流電流をidcpとし、負極側直流線路13Nを流れる直流電流をidcnとする。直流電流idcpは、正極側直流線路13Pを介して直流回路から上アーム5U,5V,5Wに流入または上アーム5U,5V,5Wから直流回路に流出する電流である。直流電流idcnは、負極側直流線路13Nを介して直流回路から下アーム6U,6V,6Wに流入または下アーム6U,6V,6Wから直流回路に流出する電流である。なお、実施の形態2,3,5,6において、直流電流idcp,idcnを検出する直流電流検出器25P,25Nがさらに設けられる。
また、以下の説明において、U相交流線路11Uを流れる交流電流をiuとし、V相交流線路11Vを流れる交流電流をivとし、W相交流線路11Wを流れる交流電流をiwとする。なお、実施の形態3,6において、交流電流iu,iv,iwを検出する交流電流検出器21がさらに設けられる。
[変換器セルの構成例]
図2は、電力変換器2を構成する変換器セル7の構成例を示す回路図である。
図2(a)に示す変換器セル7は、ハーフブリッジ構成と呼ばれる回路構成を有する。この変換器セル7は、2つのスイッチング素子41pおよび41nを直列接続して形成した直列体と、蓄電素子42と、電圧検出器43と、入出力端子P1,P2とを備える。スイッチング素子41pおよび41nの直列体と蓄電素子42とは並列接続される。電圧検出器43は、蓄電素子42の両端間の電圧Vcを検出する。
スイッチング素子41nの両端子は、入出力端子P1,P2とそれぞれ接続される。変換器セル7は、スイッチング素子41p,41nのスイッチング動作により、蓄電素子42の電圧Vcまたは零電圧を、入出力端子P1およびP2の間に出力する。スイッチング素子41pがオン、かつスイッチング素子41nがオフとなったときに、変換器セル7からは、蓄電素子42の電圧Vcが出力される。スイッチング素子41pがオフ、かつスイッチング素子41nがオンとなったときに、変換器セル7は、零電圧を出力する。
図2(b)に示す変換器セル7は、フルブリッジ構成と呼ばれる回路構成を有する。この変換器セル7は、2つのスイッチング素子41p1および41n1を直列接続して形成された第1の直列体と、2つスイッチング素子41p2および41n2を直列接続して形成された第2の直列体と、蓄電素子42と、電圧検出器43と、入出力端子P1,P2とを備える。第1の直列体と、第2の直列体と、蓄電素子42とが並列接続される。電圧検出器43は、蓄電素子42の両端間の電圧Vcを検出する。
スイッチング素子41p1およびスイッチング素子41n1の中点は、入出力端子P1と接続される。同様に、スイッチング素子41p2およびスイッチング素子41n2の中点は、入出力端子P2と接続される。変換器セル7は、スイッチング素子41p1,41n1,41p2,41n2のスイッチング動作により、蓄電素子42の電圧Vc、−Vc、または零電圧を、入出力端子P1およびP2の間に出力する。
図2(a)および図2(b)において、スイッチング素子41p,41n,41p1,41n1,41p2,41n2は、たとえば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、GCT(Gate Commutated Turn−off)サイリスタなどの自己消弧型の半導体スイッチング素子にFWD(Freewheeling Diode)が逆並列に接続されて構成される。
図2(a)および図2(b)において、蓄電素子42には、フィルムコンデンサなどのキャパシタが主に用いられる。蓄電素子42は、以降の説明では、キャパシタと呼称することもある。以下では、蓄電素子42の電圧Vcをキャパシタ電圧Vcとも称する。
図1に示されるように、変換器セル7はカスケード接続されている。図2(a)および図2(b)の各々において、U相上アーム5Uに配置された変換器セル7では、入出力端子P1は、隣の変換器セル7の入出力端子P2または正極側直流線路13Pと接続され、入出力端子P2は、隣の変換器セル7の入出力端子P1またはU相接続部NUと接続される。同様に、U相下アーム6Uに配置された変換器セル7では、入出力端子P1は、隣の変換器セル7の入出力端子P2またはU相接続部NUと接続され、入出力端子P2は、隣の変換器セル7の入出力端子P1または負極側直流線路13Nと接続される。
以降では、変換器セル7を図2(a)に示すハーフブリッジセルの構成とし、スイッチング素子として半導体スイッチング素子、蓄電素子としてキャパシタを用いた場合を例に説明する。但し、電力変換器2を構成する変換器セル7を図2(b)に示すフルブリッジ構成とすることも可能である。また、上記で例示した構成以外の変換器セル、たとえば、クランプトダブルセルと呼ばれる回路構成などを適用した変換器セルを用いてもよく、スイッチング素子および蓄電素子も上記の例示に限定されるものではない。
[制御装置]
再び図1を参照して、制御装置3は機能的に見て、スイッチング制御部30と、故障検出部32Aとを含む。
スイッチング制御部30は、交流電圧検出器20、直流電圧検出器24、アーム電流検出器22,23、および各変換器セル7に設けられた蓄電素子42の電圧Vcの各検出値に基づいて、各変換器セル7のスイッチング素子41p,41nのオン、オフを制御する。図1では図解を容易にするために、制御装置3および各変換器セル7間で入出力される信号の信号線のみ示し、その他の検出器から制御装置3に入力される信号線の図示は省略している。各信号線は、たとえば、1本以上の光ファイバによって構成される。
故障検出部32Aは、アーム電流検出器22,23の各々の故障の有無を検出する。故障検出部32Aの詳細な動作については、図4を参照して後述する。
図3は、制御装置のハードウェア構成例を示すブロック図である。図3には、コンピュータによって制御装置3を構成する例が示される。
図3を参照して、制御装置3は、1つ以上の入力変換器50と、1つ以上のサンプルホールド(S/H)回路51と、マルチプレクサ(MUX)52と、A/D(Analog to Digital)変換器53とを含む。さらに、制御装置3は、1つ以上のCPU(Central Processing Unit)54と、RAM(Random Access Memory)55と、ROM(Read Only Memory)56とを含む。さらに、制御装置3は、1つ以上の入出力インターフェイス57と、補助記憶装置58と、上記の構成要素間を相互に接続するバス59を含む。
入力変換器50は、入力チャンネルごとに補助変成器(図示せず)を有する。各補助変成器は、図1の各電気量検出器による検出信号を、後続する信号処理に適した電圧レベルの信号に変換する。
サンプルホールド回路51は、入力変換器50ごとに設けられる。サンプルホールド回路51は、対応の入力変換器50から受けた電気量を表す信号を規定のサンプリング周波数でサンプリングして保持する。
マルチプレクサ52は、複数のサンプルホールド回路51に保持された信号を順次選択する。A/D変換器53は、マルチプレクサ52によって選択された信号をデジタル値に変換する。なお、複数のA/D変換器53を設けることによって、複数の入力チャンネルの検出信号に対して並列的にA/D変換を実行するようにしてもよい。
CPU54は、制御装置3の全体を制御し、プログラムに従って演算処理を実行する。揮発性メモリとしてのRAM55および不揮発性メモリとしてのROM56は、CPU54の主記憶として用いられる。ROM56は、プログラムおよび信号処理用の設定値などを収納する。補助記憶装置58は、ROM56に比べて大容量の不揮発性メモリであり、プログラムおよび電気量検出値のデータなどを格納する。
入出力インターフェイス57は、CPU54および外部装置の間で通信する際のインターフェイス回路である。
なお、図3の例とは異なり、制御装置3の少なくとも一部をFPGA(Field Programmable Gate Array)および、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の回路を用いて構成することも可能である。すなわち、図3に記載された各機能ブロックの機能は、図3に例示されたコンピュータをベースに構成することもできるし、その少なくとも一部をFPGAおよびASICなどの回路を用いて構成することもできる。また、各機能ブロックの機能の少なくとも一部は、アナログ回路によって構成することも可能である。
[電流検出器の故障判定式]
次に、実施の形態1〜3で用いられる電流検出器の故障判定式について説明する。故障判定式とは電流検出器の故障の有無を判定するための条件式であり、キルヒホッフの第一法則(電流則とも称する)、分流の法則、三相交流の原理、電力変換器の制御理論などに基づく。実施の形態1〜3では、以下の(a2)〜(k2),(m2)式のうちから選択された式が故障判定式として用いられる。
(1)キルヒホッフの第一法則より、上アーム5U,5V,5Wに流れる電流iup,ivp,iwpの総和は、正極側直流線路13Pを流れる直流電流idcpに等しい。したがって、
idcp=iup+ivp+iwp
が成立する。上記より、故障判定式は、
|idcp−(iup+ivp+iwp)|>ε …(a2)
で表される。なお、|A|はAの絶対値を表し、εは正の電流閾値を表す。
(2)キルヒホッフの第一法則より、下アーム6U,6V,6Wに流れる電流iun,ivn,iwnの総和は、負極側直流線路13Nを流れる直流電流idcnに等しい。したがって、
idcn=iun+ivn+iwn
が成立する。上記より、故障判定式は、
|idcn−(iun+ivn+iwn)|>ε …(b2)
で表される。なお、(b2)式の電流閾値εと(a2)式の電流閾値εとは必ずしも同じ値である必要はない。後述する他の故障判定式の電流閾値εについても同様に必ずしも同じ値である必要はない。
(3)三相交流の原理より各アームと連系される交流線路11U,11V,11Wの電流iu,iv,iwの総和は0となる。すなわち、
iu+iv+iw=0
が成り立つ。したがって、正極側直流線路13Pを流れる直流電流idcpと負極側直流線路13Nを流れる直流電流idcnとについて、
idcp−idcn=iu+iv+iw=0
が成り立つので、直流電流idcpと直流電流idcnとは等しい。すなわち、
idcp=idcn
が成り立つ。したがって、故障判定式は、
|idcp−idcn|>ε …(c2)
で表される。
(4)前記(1)〜(3)より、上アーム5U,5V,5Wに流れる電流iup,ivp,iwpの総和と、下アーム6U,6V,6Wに流れる電流iun,ivn,iwnの総和とは等しい。すなわち、
iup+ivp+iwp=iun+ivn+iwn
が成立する。したがって、故障判定式は、
|(iup+ivp+iwp)−(iun+ivn+iwn)|>ε …(d2)
で表される。
(5)キルヒホッフの第一法則より、U相交流線路11Uに連係されているU相上アーム5Uの電流iupとU相下アーム6Uの電流iunとの差は、U相交流線路11Uの交流電流iuに等しい。V相、W相についても同様である。したがって、
iup−iun=iu,ivp−ivn=iv,iwp−iwn=iw
が成立する。なお、交流線路11U,11V,11Wに変圧器が設けられた場合には、交流電流iu,iv,iwの値は、接続部NU,NV,NW側に換算した値となる。したがって、故障判定式は、
|iu−(iup−iun)|>ε …(e2)
|iv−(ivp−ivn)|>ε …(f2)
|iw−(iwp−iwn)|>ε …(g2)
で表される。
(6)MMC変換器の各アーム部のインピーダンスは等しい。また、変換器の制御理論によれば、正極側直流線路13Pと負極側直流線路13Nとを接続する各相の上アーム5および下アーム6の直列接続体は、互いに等価の電圧を出力する。したがって、分流の法則により、各相の上アーム5の直流電流成分は各相で均等に分担され、各相の下アーム6の直流電流成分は各相で均等に分担される。結果として、U相上アーム電流iupとU相下アーム電流iunとの和、V相上アーム電流ivpとV相下アーム電流ivnとの和、およびW相上アーム電流iwpとW相下アーム電流iwnとの和は、互いに等しい。すなわち、
iup+iun=ivp+ivn=iwp+iwn=(2/3)idcp=(2/3)idcn
が成立する。上記より、故障判定式は、
|(iup+iun)−(ivp+ivn)|>ε …(h2)
|(ivp+ivn)−(iwp+iwn)|>ε …(i2)
|(iwp+iwn)−(iup+iun)|>ε …(j2)
で表される。
ただし、各相の変換器セル7の蓄電素子42の電圧の和が相ごとに不均衡になっている場合には、循環電流成分が増加するため、上式(h2),(i2),(j2)が成り立たない。その場合は、循環電流成分を考慮して電流閾値εを、
ε’=ε+(アーム電流の直流成分の定格の10%)
に従って、ε’に変更する。
循環電流成分が増加したか否かは、相ごとの変換器セル7の蓄電素子42の平均値の比較に基づいて判定できる。具体的に、U相上アーム5UおよびU相下アーム6Uの各変換器セル7の蓄電素子42の電圧の平均値をVcapUとし、V相上アーム5VおよびV相下アーム6Vの各変換器セル7の蓄電素子42の電圧の平均値をVcapVとし、W相上アーム5WおよびW相下アーム6Wの各変換器セル7の蓄電素子42の電圧の平均値をVcapWとする。この場合、正の電圧閾値をεvとして、
|VcapU−VcapV|>εv
|VcapV−VcapW|>εv
|VcapW−VcapU|>εv
の判定式のうち1つでも成立すれば、電流閾値εが上記のε’に変更される。
(7)変換器の制御理論に基づいて、電力変換器2が起動後に定常状態になった場合には、直流電流指令値idcrefは、直流線路13P,13Nに流れる直流電流idcp,idcnに等しい。すなわち、
idcref=idcp=idcn
が成立する。さらに、前記(1)および(2)より、上アーム5U,5V,5Wに流れる電流iup,ivp,iwpの総和は正極側直流線路13Pを流れる直流電流idcpは等しく、下アーム6U,6V,6Wに流れる電流iun,ivn,iwnの総和は負極側直流線路13Nを流れる直流電流idcnに等しい。したがって、
idcref=iup+ivp+iwp=iun+ivn+iwn
が成立する。上記より、故障判定式は、
|idcref−(iup+ivp+iwp)|>ε …(k2)
|idcref−(iun+ivn+iwn)|>ε …(m2)
で表される。ただし、本判定式(k2)および(m2)は、電力変換器2の起動後、定常状態となるまでマスクされる。また、直流電圧制御を実施しているMMC変換器の場合には、直流電流指令値と直流電流との間にMMC変換器の損失に起因する誤差が発生するため、直流電流の誤差を考慮した補正を行う。
[アーム電流検出器22,23用の故障検出部32Aの動作]
次に、図1の電力変換装置1Aにおけるアーム電流検出器22,23用の故障検出部32Aの動作について説明する。
図4は、図1のアーム電流検出器の故障検出を行う故障検出部の機能ブロック図である。図4を参照して、故障検出部32Aは、d2式判定部101と、k2式判定部102と、m2式判定部103と、h2式判定部104と、i2式判定部105と、j2式判定部106と、論理積演算器111〜124と、否定演算器131〜133と、判定結果出力部141〜147とを含む。これらの各部の機能は、たとえば、図3のCPU54がプログラムに従って動作することによって実現される。
d2式判定部101は、各相の上アーム電流検出器22の検出値の総和と各相の下アーム電流検出器23の検出値との総和との比較に基づいて、前述(d2)式が成立しているか否かを判定する。以下、論理値が「真」の場合の式判定部および演算器の出力を「1」とし、論理値が「偽」の場合の式判定部および演算器の出力を「0」とする。(d2)式が成立している場合、すなわち、d2式判定部101の出力が「1」の場合、判定結果出力部141は、アーム電流検出器22,23のいずれかが故障であると出力する。
k2式判定部102は、直流電流指令値idcrefと各相の上アーム電流検出器22の検出値の総和との比較に基づく前述の(k2)式が成立しているか否かを判定する。論理積演算器111は、d2式判定部101の出力とk2式判定部102の出力との論理積を演算する。したがって、論理積演算器111の出力が「1」の場合、各相の上アーム電流検出器22のいずれかが故障していることになる。
m2式判定部103は、直流電流指令値idcrefと各相の下アーム電流検出器23の検出値の総和との比較に基づく前述の(m2)式が成立しているか否かを判定する。論理積演算器112は、d2式判定部101の出力とm2式判定部103の出力との論理積を演算する。したがって、論理積演算器112の出力が「1」の場合、各相の下アーム電流検出器23のいずれかが故障していることになる。
h2式判定部104は、U相の上アーム電流検出器22の検出値とU相の下アーム電流検出器23の検出値との和と、V相の上アーム電流検出器22の検出値とV相の下アーム電流検出器23の検出値との和との比較に基づいて、前述の(h2)式が成立しているか否かを判定する。i2式判定部105は、V相の上アーム電流検出器22の検出値とV相の下アーム電流検出器23の検出値との和と、W相の上アーム電流検出器22の検出値とW相の下アーム電流検出器23の検出値との和との比較に基づいて、前述の(i2)式が成立しているか否かを判定する。j2式判定部106は、W相の上アーム電流検出器22の検出値とW相の下アーム電流検出器23の検出値との和と、U相の上アーム電流検出器22の検出値とU相の下アーム電流検出器23の検出値との和との比較に基づいて、前述の(j2)式が成立しているか否かを判定する。
論理積演算器113は、h2式判定部104の出力とj2式判定部106の出力との論理積を演算する。論理積演算器114は、論理積演算器113の出力とi2式判定部105の出力の否定との論理積を演算する。したがって、論理積演算器114の出力が「1」の場合は、U相の上アーム電流検出器22またはU相の下アーム電流検出器23のいずれかが故障していることを示している。
論理積演算器115は、h2式判定部104の出力とi2式判定部105の出力との論理積を演算する。論理積演算器116は、論理積演算器115の出力とj2式判定部106の出力の否定との論理積を演算する。したがって、論理積演算器116の出力が「1」の場合は、V相の上アーム電流検出器22またはV相の下アーム電流検出器23のいずれかが故障していることを示している。
論理積演算器117は、i2式判定部105の出力とj2式判定部106の出力との論理積を演算する。論理積演算器118は、論理積演算器117の出力とh2式判定部104の出力の否定との論理積を演算する。したがって、論理積演算器118の出力が「1」の場合は、W相の上アーム電流検出器22またはW相の下アーム電流検出器23のいずれかが故障していることを示している。
論理積演算器119は、論理積演算器111の出力と論理積演算器114の出力との論理積を演算する。この結果、判定結果出力部142は、論理積演算器119の出力が「1」の場合に、U相の上アーム電流検出器22が故障である(すなわち、アーム電流iupの検出値が異常である)と出力する。
論理積演算器120は、論理積演算器111の出力と論理積演算器116の出力との論理積を演算する。この結果、判定結果出力部143は、論理積演算器120の出力が「1」の場合に、V相の上アーム電流検出器22が故障である(すなわち、アーム電流ivpの検出値が異常である)と出力する。
論理積演算器121は、論理積演算器111の出力と論理積演算器118の出力との論理積を演算する。この結果、判定結果出力部144は、論理積演算器121の出力が「1」の場合に、W相の上アーム電流検出器22が故障である(すなわち、アーム電流iwpの検出値が異常である)と出力する。
論理積演算器122は、論理積演算器112の出力と論理積演算器114の出力との論理積を演算する。この結果、判定結果出力部145は、論理積演算器122の出力が「1」の場合に、U相の下アーム電流検出器23が故障である(すなわち、アーム電流iunの検出値が異常である)と出力する。
論理積演算器123は、論理積演算器112の出力と論理積演算器116の出力との論理積を演算する。この結果、判定結果出力部146は、論理積演算器123の出力が「1」の場合に、V相の下アーム電流検出器23が故障である(すなわち、アーム電流ivnの検出値が異常である)と出力する。
論理積演算器124は、論理積演算器112の出力と論理積演算器118の出力との論理積を演算する。この結果、判定結果出力部147は、論理積演算器124の出力が「1」の場合に、W相の下アーム電流検出器23が故障である(すなわち、アーム電流iwnの検出値が異常である)と出力する。以上により、各相のアーム電流検出器22,23のうちで故障の検出器を特定できる。
[実施の形態1の効果]
以上をまとめると、実施の形態1の電力変換装置1Aでは、電流検出器としてアーム電流検出器22,23のみが設けられている。
制御装置3は、n個の上アーム電流検出器22およびn個の下アーム電流検出器23の各々の故障の有無を検出する第1の故障検出部32Aを備える。第1の故障検出部32Aは、第1の判定部(d2式判定部)101と、第2の判定部(k2式判定部)102と、第3の判定部(k3式判定部)103と、第4の判定部151(h2式判定部104、i2式判定部105、j2式判定部106、論理積演算器113〜118、否定演算器131〜133)とを含む。これらの判定部の判定原理は、キルヒホッフの電流則等に基づくものである。
具体的に、第1の判定部101は、n個の上アーム電流検出器の検出値の総和とn個の下アーム電流検出器の検出値の総和との比較に基づく判定を行う。第2の判定部102は、正極側直流線路13Pを流れる電流の指令値idcrefと、n個の上アーム電流検出器22の検出値の総和との比較に基づく判定を行う。第3の判定部103は、負極側直流線路13Nを流れる電流の指令値idcrefと、n個の下アーム電流検出器23の検出値の総和との比較に基づく判定を行う。第4の判定部151は、任意の第1の上アーム5に設けられた上アーム電流検出器22の検出値と上記第1の上アーム5に対応する下アーム6に設けられた下アーム電流検出器23の検出値との和を、他の第2の上アーム5に設けられた上アーム電流検出器22の検出値と上記第2の上アーム5に対応する下アーム6に設けられた下アーム電流検出器23の検出値との和と比較することに基づく判定を行う。
第1の判定部101の判定結果からアーム電流検出器で故障が生じているかを判定できる。第2および第3の判定部102,103の判定結果から、故障しているアーム電流検出器が正極側か負極側かを判定できる。第4の判定部104の判定結果から、故障しているアーム電流検出器がU相、V相、W相のいずれのアームに設けられているかを判定できる。したがって、上記の第1〜第4の判定部101〜104の判定結果を総合することにより、各アームに1個のアーム電流検出器のみが設けられている場合であっても、どのアーム電流検出器が故障しているかを判別できる。
実施の形態2.
実施の形態2では、アーム電流検出器22,23に加えて、さらに直流線路13P,13Nに直流電流検出器25P,25Nがそれぞれ設けられている場合について説明する。
[電力変換装置の構成]
図5は、実施の形態2の電力変換装置の概略構成図である。図5の電力変換装置1Bは、直流線路13P,13Nにそれぞれ設けられた直流電流検出器25P,25Nをさらに含む点で、図1の電力変換装置1Aと異なる。正極側直流線路13Pに設けられた直流電流検出器25P(正極側直流電流検出器とも称する)は、直流回路から上アーム5U,5V,5Wに流入または上アーム5U,5V,5Wから直流回路に流出する直流電流idcpを検出する。負極側直流線路13Nに設けられた直流電流検出器25N(負極側直流電流検出器とも称する)は、直流回路から下アーム6U,6V,6Wに流入または下アーム6U,6V,6Wから直流回路に流出する直流電流idcnを検出する。
また、図5の制御装置3のスイッチング制御部30は、さらに直流電流検出器25P,25Nによって検出された直流電流idcp,idcnの値に基づいて、各変換器セル7のスイッチング素子41p,41nのスイッチングを制御する。
さらに、図5の制御装置3は、アーム電流検出器22,23のための故障検出部32Bとともに、直流電流検出器25P,25Nの各々の故障の有無を検出する故障検出部33Bを含む点で、図1の制御装置3と異なる。図5のその他の点は、図1の場合と同様であるので、同一または相当する部分には同一の参照符号を付して説明を繰り返さない。
[直流電流検出器25P,25Nのための故障検出部33Bの動作]
次に、直流線路13P,13Nに設置された直流電流検出器25P,25Nのための故障検出部33Bの動作について説明する。故障判定式として、実施の形態1で説明した故障判定式から選択された判定式が用いられる。
図6は、図5の直流電流検出器の故障検出を行う故障検出部の機能ブロック図である。図6を参照して、故障検出部33Bは、a2式判定部201と、b2式判定部202と、c2式判定部203と、d2式判定部204と、論理積演算器211〜214と、論理和演算器221〜223と、否定演算器231,232と、判定結果出力部241〜243とを含む。これらの各部の機能は、たとえば、図3のCPU54がプログラムに従って動作することによって実現される。
a2式判定部201は、正極側直流線路13Pに設けられた直流電流検出器25Pの検出値と、各相の上アーム電流検出器22の検出値の総和との比較に基づいて、前述の(a2)式が成立しているか否かを判定する。
b2式判定部202は、負極側直流線路13Nに設けられた直流電流検出器25Nの検出値と、各相の下アーム電流検出器23の検出値の総和との比較に基づいて、前述の(b2)式が成立しているか否かを判定する。
c2式判定部203は、正極側直流線路13Pに設けられた直流電流検出器25Pの検出値と、負極側直流線路13Nに設けられた直流電流検出器25Nの検出値との比較に基づいて、前述の(c2)式が成立しているか否かを判定する。したがって、c2式判定部203の出力が「1」の場合、直流線路13P,13Nのいずれかに設けられた直流電流検出器25P,25Nが故障であることを示している。
d2式判定部204は、各相の上アーム電流検出器22の検出値の総和と各相の下アーム電流検出器23の検出値との総和との比較に基づいて、前述の(d2)式が成立しているか否かを判定する。したがって、d2式判定部204の出力が「1」の場合、上アーム電流検出器22および下アーム電流検出器23のいずれかが故障であることを示している。
論理積演算器211は、a2式判定部201の出力とc2式判定部203の出力との論理積を演算する。論理積演算器212は、b2式判定部202の出力とc2式判定部203の出力との論理積を演算する。論理和演算器223は、論理積演算器211の出力と論理積演算器212の出力との論理和を演算する。論理和演算器223の出力が「1」の場合、判定結果出力部241は、直流線路13P,13Nに設けられた直流電流検出器25P,25Nのいずれかが故障であると出力する。
論理和演算器221は、b2式判定部202の出力とd2式判定部204の出力との論理和を演算する。否定演算器231は、論理和演算器221の出力の否定を演算する。したがって、否定演算器231の出力が「1」の場合、b2式判定部202およびd2式判定部204の出力のいずれも「0」であること、すなわち、(b2)式および(d2)式のいずれも不成立であることを示している。
論理積演算器213は、論理積演算器211の出力と否定演算器231の出力との論理積を演算する。論理積演算器213の出力が「1」の場合、判定結果出力部242は、正極側直流線路13Pに設けられた直流電流検出器25Pが故障である(すなわち、直流電流idcpの検出値が異常である)と出力する。
論理和演算器222は、a2式判定部201の出力とd2式判定部204の出力との論理和を演算する。否定演算器232は、論理和演算器222の出力の否定を演算する。したがって、否定演算器232の出力が「1」の場合、a2式判定部201およびd2式判定部204の出力がいずれも「0」であること、すなわち、(a2)式および(d2)式がいずれも不成立であることを示している。
論理積演算器214は、論理積演算器212の出力と否定演算器232の出力との論理積を演算する。論理積演算器214の出力が「1」の場合、判定結果出力部243は、負極側直流線路13Nに設けられた直流電流検出器25Nが故障である(すなわち、直流電流idcnの検出値が異常である)と出力する。
[アーム電流検出器22,23用の故障検出部32Bの動作]
次に、図5の電力変換装置1Bにおけるアーム電流検出器22,23用の故障検出部32Bの動作について説明する。
図7は、図5のアーム電流検出器の故障検出を行う故障検出部の機能ブロック図である。図7を参照して、故障検出部32Bは、a2式判定部201と、b2式判定部202と、d2式判定部204と、c2式判定部203と、h2式判定部104と、i2式判定部105と、j2式判定部106と、論理積演算器113〜118,311,312,319〜326と、論理和演算器331〜333と、否定演算器341,342,131〜133と、判定結果出力部351〜357とを含む。これらの各部の機能は、たとえば、図3のCPU54がプログラムに従って動作することによって実現される。
図7のa2式判定部201、b2式判定部202、d2式判定部204、およびc2式判定部203は、図6のa2式判定部201、b2式判定部202、d2式判定部204、およびc2式判定部203にそれぞれ対応する。したがって、これらの説明を繰り返さない。
論理積演算器311は、a2式判定部201の出力とd2式判定部204の出力との論理積を演算する。論理積演算器312は、b2式判定部202の出力とd2式判定部204の出力との論理積を演算する。論理和演算器333は、論理積演算器311の出力と論理積演算器312の出力との論理和を演算する。論理和演算器333の出力が「1」の場合、判定結果出力部351は、上アーム電流検出器22または下アーム電流検出器23のいずれかが故障であると出力する。
論理和演算器331は、b2式判定部202の出力とc2式判定部203の出力との論理和を演算する。否定演算器341は、論理和演算器331の出力の否定を演算する。したがって、否定演算器341の出力が「1」の場合、b2式判定部202およびc2式判定部203の出力のいずれも「0」であること、すなわち、(b2)式および(c2)式のいずれも不成立であることを示している。
論理積演算器319は、論理積演算器311の出力と否定演算器341の出力との論理積を演算する。論理積演算器313の出力が「1」の場合は、U相、V相およびW相の上アーム電流検出器22のいずれかが故障であることを示している。
論理和演算器332は、a2式判定部201の出力とc2式判定部203の出力との論理和を演算する。否定演算器342は、論理和演算器332の出力の否定を演算する。したがって、否定演算器332の出力が「1」の場合、a2式判定部201およびc2式判定部203の出力がいずれも「0」であること、すなわち、(a2)式および(c2)式がいずれも不成立であることを示している。
論理積演算器320は、論理積演算器312の出力と否定演算器342の出力との論理積を演算する。論理積演算器論理積演算器320の出力が「1」の場合は、U相、V相およびW相の下アーム電流検出器23のいずれかが故障であることを示している。
図7のh2式判定部104、i2式判定部105、およびj2式判定部106は、図4のh2式判定部104、i2式判定部105、およびj2式判定部106にそれぞれ対応する。したがって、これらの説明を繰り返さない。
さらに、図7の式判定部104〜106と、論理積演算器113〜118と、否定演算器131〜133とによって構成される部分151は、図4の式判定部104〜106と、論理積演算器113〜118と、否定演算器131〜133とによって構成される部分151に対応する。したがって、これらの説明を繰り返さない。
したがって、論理積演算器114の出力が「1」の場合は、U相の上アーム電流検出器22またはU相の下アーム電流検出器23のいずれかが故障していることを示している。論理積演算器116の出力が「1」の場合は、V相の上アーム電流検出器22またはV相の下アーム電流検出器23のいずれかが故障していることを示している。論理積演算器118の出力が「1」の場合は、W相の上アーム電流検出器22またはW相の下アーム電流検出器23のいずれかが故障していることを示している。
以上に基づいて、論理積演算器321〜326および判定結果出力部352〜357の動作を説明する。
論理積演算器321は、論理積演算器319の出力と論理積演算器114の出力との論理積を演算する。この結果、判定結果出力部352は、論理積演算器321の出力が「1」の場合に、U相の上アーム電流検出器22が故障である(すなわち、アーム電流iupの検出値が異常である)と出力する。
論理積演算器322は、論理積演算器319の出力と論理積演算器116の出力との論理積を演算する。この結果、判定結果出力部353は、論理積演算器322の出力が「1」の場合に、V相の上アーム電流検出器22が故障である(すなわち、アーム電流ivpの検出値が異常である)と出力する。
論理積演算器323は、論理積演算器319の出力と論理積演算器118の出力との論理積を演算する。この結果、判定結果出力部354は、論理積演算器323の出力が「1」の場合に、W相の上アーム電流検出器22が故障である(すなわち、アーム電流iwpの検出値が異常である)と出力する。
論理積演算器324は、論理積演算器320の出力と論理積演算器114の出力との論理積を演算する。この結果、判定結果出力部355は、論理積演算器324の出力が「1」の場合に、U相の下アーム電流検出器23が故障である(すなわち、アーム電流iunの検出値が異常である)と出力する。
論理積演算器325は、論理積演算器320の出力と論理積演算器116の出力との論理積を演算する。この結果、判定結果出力部356は、論理積演算器325の出力が「1」の場合に、V相の下アーム電流検出器23が故障である(すなわち、アーム電流ivnの検出値が異常である)と出力する。
論理積演算器326は、論理積演算器320の出力と論理積演算器118の出力との論理積を演算する。この結果、判定結果出力部357は、論理積演算器326の出力が「1」の場合に、W相の下アーム電流検出器23が故障である(すなわち、アーム電流iwnの検出値が異常である)と出力する。以上により、各相のアーム電流検出器22,23のうちで故障の検出器を特定できる。
[実施の形態2の効果]
以上をまとめると、実施の形態2の電力変換装置1Bでは、電流検出器としてアーム電流検出器22,23と、直流線路13P,13Nに設置された直流電流検出器25P,25Nとが設けられている。制御装置3は、n個の上アーム電流検出器22およびn個の下アーム電流検出器23について各電流検出器の故障の有無を検出する第1の故障検出部32Bと、直流電流検出器25P,25Nの各々の故障の有無を検出する第2の故障検出部33Bとを含む。
第1の故障検出部32Bは、第1の判定部(d2式判定部)204と、第2の判定部(a2式判定部)201と、第3の判定部(b2式判定部)202と、第4の判定部151(h2式判定部104、i2式判定部105、j2式判定部106、論理積演算器113〜118、否定演算器131〜133)とを含む。第4の判定部151は、実施の形態1の場合と同じである。
第1の判定部204は、実施の形態1の第1の判定部101と同じであり、n個の上アーム電流検出器の検出値の総和とn個の下アーム電流検出器の検出値の総和との比較に基づく判定を行う。第2の判定部202は、正極側直流電流検出器25Pの検出値と、n個の上アーム電流検出器22の検出値の総和との比較に基づく判定を行う。第3の判定部202は、負極側直流電流検出器25Nの検出値と、n個の下アーム電流検出器23の検出値の総和との比較に基づく判定を行う。上記の第1〜第4の判定部201,202,204,151の判定結果を総合することにより、各アームに1個のアーム電流検出器のみが設けられている場合であっても、どのアーム電流検出器が故障しているかを判別できる。
ここで、実施の形態1における第1の故障検出部32Aと実施の形態2における第1の故障検出部32Bとを比較する。故障検出部32Aは、直流電流指令値idcrefと各相の上アーム電流検出器22の検出値の総和とを比較し、直流電流指令値idcrefと各相の下アーム電流検出器23の検出値の総和とを比較している。一方、故障検出部32Bは、正極側直流線路13Pに設置された直流電流検出器25Pの検出値と各相の上アーム電流検出器22の検出値の総和とを比較し、負極側直流線路13Nに設置された直流電流検出器25Nの検出値と各相の下アーム電流検出器23の検出値の総和とを比較している。したがって、実施の形態2における故障検出部32Bほうが、より誤差の少ない故障判定式を用いて電流検出器の故障発生の有無を判定できる。
第2の故障検出部33Bは、上記の第1の判定部(d2式判定部)204、第2の判定部(a2式判定部)201と、第3の判定部(b2式判定部)202と、第5の判定部(c2式判定部)203とを含む。第5の判定部203は、正極側直流電流検出器25Pの検出値と負極側直流電流検出器25Nの検出値との比較に基づく判定を行う。
上記の第1〜第3、第5の判定部201〜204の判定結果を総合することにより、各直流線路に1台の直流電流検出器のみが設けられている場合であっても、どの直流電流検出器25P,25Nが故障しているかを判別できる。
実施の形態3.
実施の形態3では、アーム電流検出器22,23と直流線路13P,13Nに設置された直流電流検出器25P,25Nとに加えて、さらに、交流線路11U,11V,11Wに交流電流検出器21が設けられている場合について説明する。
[電力変換装置の構成]
図8は、実施の形態3の電力変換装置の概略構成図である。図8の電力変換装置1Cは、交流線路11U,11V,11Wにそれぞれ設けられた交流電流検出器21をさらに含む点で、図5の電力変換装置1Bと異なる。U相交流線路11Uに設けられた交流電流検出器21は、U相の交流電流iuを検出する。V相交流線路11Vに設けられた交流電流検出器21は、V相の交流電流ivを検出する。W相交流線路11Wに設けられた交流電流検出器21は、W相の交流電流iwを検出する。また、図8の制御装置3のスイッチング制御部30は、さらに交流電流検出器21によって検出された交流電流iu,iv,iwの値に基づいて、各変換器セル7のスイッチング素子41p,41nのスイッチングを制御する。
さらに、図8の制御装置3は、アーム電流検出器22,23用の故障検出部32Cおよび直流電流検出器25P,25N用の故障検出部33Cとともに、各交流電流検出器21の故障の有無を検出する故障検出部34Cを含む点で、図5の制御装置3と異なる。図8のその他の点は、図1および図5の場合と同様であるので、同一または相当する部分には同一の参照符号を付して説明を繰り返さない。
[交流電流検出器21用の故障検出部34Cの動作]
次に、交流線路11U,11V,11Wに設置された交流電流検出器21の故障検出を行う故障検出部34Cの動作について説明する。故障検出部34Cで用いられる故障判定式は、実施の形態1で説明した故障判定式から選択される。
図9は、図8の交流電流検出器の故障検出を行う故障検出部の機能ブロック図である。図9を参照して、故障検出部34Cは、a2式判定部201と、b2式判定部202と、d2式判定部204と、e2式判定部404と、f2式判定部405と、g2式判定部406と、論理積演算器411〜413と、論理和演算器421〜423と、否定演算器431と、判定結果出力部441〜443とを含む。これらの各部の機能は、たとえば、図3のCPU54がプログラムに従って動作することによって実現される。
a2式判定部201、b2式判定部202、およびd2式判定部204は、図6のa2式判定部201、b2式判定部202、およびd2式判定部204にそれぞれ対応するので、説明を繰り返さない。
e2式判定部404は、U相の上アーム電流検出器22の検出値からU相の下アーム電流検出器23の検出値を減算した値と、U相の交流電流検出器21の検出値との比較に基づいて、前述の(e2)式が成立しているか否かを判定する。e2式判定部404の出力が「1」である場合は、U相の上アーム電流検出器22、U相の下アーム電流検出器23、およびU相の交流電流検出器21のいずれかが故障していることを示している。
f2式判定部405は、V相の上アーム電流検出器22の検出値からV相の下アーム電流検出器23の検出値を減算した値と、V相の交流電流検出器21の検出値との比較に基づいて、前述の(f2)式が成立しているか否かを判定する。f2式判定部405の出力が「1」である場合は、V相の上アーム電流検出器22、V相の下アーム電流検出器23、およびV相の交流電流検出器21のいずれかが故障していることを示している。
g2式判定部406は、W相の上アーム電流検出器22の検出値からW相の下アーム電流検出器23の検出値を減算した値と、W相の交流電流検出器21の検出値との比較に基づいて、前述の(f2)式が成立しているか否かを判定する。g2式判定部406の出力が「1」である場合は、W相の上アーム電流検出器22、W相の下アーム電流検出器23、およびW相の交流電流検出器21のいずれかが故障していることを示している。
論理和演算器421は、a2式判定部201の出力とd2式判定部204の出力との論理和を演算する。論理和演算器422は、b2式判定部202の出力とd2式判定部204の出力との論理和を演算する。論理和演算器423は、論理和演算器421の出力と4上アーム電流検出器22の出力との論理和を演算する。否定演算器431は、論理和演算器423の出力の否定を演算する。したがって、否定演算器431の演算結果が「1」の場合、(a2)式、(b2)式、および(d2)式のいずれも不成立であること、すなわち、アーム電流検出器22,23および直流電流検出器25P,25Nのいずれも故障していないことを示している。
以上に基づいて、論理積演算器411〜413および判定結果出力部441〜443の動作について説明する。
論理積演算器411は、否定演算器431の出力とe2式判定部404の出力との論理積を演算する。この結果、判定結果出力部441は、論理積演算器411の出力が「1」の場合、U相の交流電流検出器21が故障である(すなわち、交流電流iuの検出値が異常である)と出力する。
論理積演算器412は、否定演算器431の出力とf2式判定部405の出力との論理積を演算する。この結果、判定結果出力部442は、論理積演算器412の出力が「1」の場合、V相の交流電流検出器21が故障である(すなわち、交流電流ivの検出値が異常である)と出力する。
論理積演算器413は、否定演算器431の出力とg2式判定部406の出力との論理積を演算する。この結果、判定結果出力部443は、論理積演算器413の出力が「1」の場合、W相の交流電流検出器21が故障である(すなわち、交流電流iwの検出値が異常である)と出力する。以上により、交流線路11U,11V,11Wの各々に設けられた交流電流検出器21のうちで、故障の電流検出器を特定できる。
[直流電流検出器25P,25Nのための故障検出部33Cの動作]
図8の故障検出部33Cの機能ブロック図として、図6で説明した故障検出部33Bの機能ブロック図を利用できる。
[アーム電流検出器22,23のための故障検出部32Cの動作]
次に、図8の電力変換装置1Cにおけるアーム電流検出器22,23用の故障検出部32Cの動作について説明する。
図10は、図8のアーム電流検出器の故障検出を行う故障検出部の機能ブロック図である。図8を参照して、故障検出部32Cは、a2式判定部201と、b2式判定部202と、d2式判定部204と、c2式判定部203と、e2式判定部404と、f2式判定部405と、g2式判定部406と、論理積演算器511〜520と、論理和演算器531〜533と、否定演算器541,542と、判定結果出力部551〜557とを含む。これらの各部の機能は、たとえば、図3のCPU54がプログラムに従って動作することによって実現される。
図10のa2式判定部201、b2式判定部202、d2式判定部204、およびc2式判定部203は、図7のa2式判定部201、b2式判定部202、d2式判定部204、およびc2式判定部203にそれぞれ対応する。したがって、これらの説明を繰り返さない。
さらに、図10の式判定部201〜204と、論理積演算器511〜514と、論理和演算器531〜533と、否定演算器541,542とによって構成される部分は、図7の式判定部201〜204と、論理積演算器311,312,319,320と、論理和演算器331〜333と、否定演算器341,342とによって構成される部分に対応している。
したがって、図10の論理和演算器533の出力が「1」の場合、判定結果出力部551は、上アーム電流検出器22または下アーム電流検出器23のいずれかが故障であると出力する。論理積演算器513の出力が「1」の場合は、U相、V相およびW相の上アーム電流検出器22のいずれかが故障であることを示している。論理積演算器514の出力が「1」の場合は、U相、V相およびW相の下アーム電流検出器23のいずれかが故障であることを示している。
図10のe2式判定部404、f2式判定部405、およびg2式判定部406は、図9のe2式判定部404、f2式判定部405、およびg2式判定部406にそれぞれ対応する。したがって、e2式判定部404の出力が「1」である場合は、U相の上アーム電流検出器22、U相の下アーム電流検出器23、およびU相の交流電流検出器21のいずれかが故障していることを示している。f2式判定部405の出力が「1」である場合は、V相の上アーム電流検出器22、V相の下アーム電流検出器23、およびV相の交流電流検出器21のいずれかが故障していることを示している。g2式判定部406の出力が「1」である場合は、W相の上アーム電流検出器22、W相の下アーム電流検出器23、およびW相の交流電流検出器21のいずれかが故障していることを示している。
以上に基づいて、論理積演算器515〜520および判定結果出力部552〜557の動作を説明する。
論理積演算器515は、論理積演算器513の出力とe2式判定部404の出力の論理積を演算する。この結果、判定結果出力部552は、論理積演算器515の出力が「1」の場合に、U相の上アーム電流検出器22が故障である(すなわち、アーム電流iupの検出値が異常である)と出力する。
論理積演算器516は、論理積演算器513の出力とf2式判定部405の出力との論理積を演算する。この結果、判定結果出力部553は、論理積演算器516の出力が「1」の場合に、V相の上アーム電流検出器22が故障である(すなわち、アーム電流ivpの検出値が異常である)と出力する。
論理積演算器517は、論理積演算器513の出力とg2式判定部406の出力との論理積を演算する。この結果、判定結果出力部554は、論理積演算器517の出力が「1」の場合に、W相の上アーム電流検出器22が故障である(すなわち、アーム電流iwpの検出値が異常である)と出力する。
論理積演算器518は、論理積演算器514の出力とe2式判定部404の出力との論理積を演算する。この結果、判定結果出力部555は、論理積演算器518の出力が「1」の場合に、U相の下アーム電流検出器23が故障である(すなわち、アーム電流iunの検出値が異常である)と出力する。
論理積演算器519は、論理積演算器514の出力とf2式判定部405の出力との論理積を演算する。この結果、判定結果出力部556は、論理積演算器519の出力が「1」の場合に、V相の下アーム電流検出器23が故障である(すなわち、アーム電流ivnの検出値が異常である)と出力する。
論理積演算器520は、論理積演算器514の出力とg2式判定部406の出力との論理積を演算する。この結果、判定結果出力部557は、論理積演算器520の出力が「1」の場合に、W相の下アーム電流検出器23が故障である(すなわち、アーム電流iwnの検出値が異常である)と出力する。以上により、各相のアーム電流検出器22,23のうちで故障の電流検出器を特定できる。
[実施の形態3の効果]
以上をまとめると、実施の形態3の電力変換装置1Cでは、電流検出器としてアーム電流検出器22,23と、直流線路13P,13Nに設置された直流電流検出器25P,25Nと、交流線路11U,11V,11Wに設置された交流電流検出器21とが設けられている。制御装置3は、n個の上アーム電流検出器22およびn個の下アーム電流検出器23について各電流検出器の故障の有無を検出する第1の故障検出部32Cと、直流電流検出器25P,25Nの各々の故障の有無を検出する第2の故障検出部33Cと、n個の交流電流検出器の各々の故障の有無を検出する第3の故障検出部34Cとを含む。
第1の故障検出部32Cは、第1の判定部(d2式判定部)204と、第2の判定部(a2式判定部)201と、第3の判定部(b2式判定部)202と、第4の判定部451(e2式判定部404、f2式判定部405,g2式判定部406)とを含む。第1〜第3の判定部204,201,202は、実施の形態2の場合と同じである。
第4の判定部451は、実施の形態1,2における第4の判定部151と異なり、任意の第1の上アーム5に設けられた上アーム電流検出器22の検出値と上記第1の上アーム5に対応する下アーム6に設けられた下アーム電流検出器23の検出値との差を、上記第1の上アームに対応する交流線路11に設けられた交流電流検出器21の検出値と比較することに基づく判定を行う。上記の第1〜第4の判定部204,201,202,451の判定結果を総合することにより、各アームに1台のアーム電流検出器のみが設けられている場合であっても、どのアーム電流検出器が故障しているかを判別できる。
ここで、実施の形態1,2における第1の故障検出部32A,32Bと、実施の形態3における第1の故障検出部32Cとを比較する。実施の形態1,2における故障検出部32Bは、第4の判定部151において、U相の上アームおよび下アーム電流検出器22,23の検出値の和と、V相の上アームおよび下アーム電流検出器22,23の検出値の和と、W相の上アームおよび下アーム電流検出器22,23の検出値の和とを相互に比較している。この比較に基づく判定精度には、循環電流が影響する。一方、実施の形態3における故障検出部32Cは、第4の判定部451において、各相ごとに、上アーム電流検出器22の検出値と下アーム電流検出器23の検出値との差と、交流線路11に設置された交流電流検出器21の検出値とを比較している。したがって、実施の形態3の故障検出部32Cのほうが、より誤差の少ない故障判定式を用いて電流検出器の故障発生の有無を判定できる。
第2の故障検出部33Cの構成は、実施の形態2の第2の故障検出部33Bの構成と同じであるので説明を繰り返さない。
第3の故障検出部34Cは、上記の第1の判定部(d2式判定部)204と、第2の判定部(a2式判定部)201と、第3の判定部(b2式判定部)202と、第4の判定部451とを含む。上記の第1〜第4の判定部204,201,202,451の判定結果を総合することにより、各交流線路に1台の交流電流検出器21のみが設けられている場合であっても、どの交流電流検出器21が故障しているかを判別できる。
実施の形態4.
実施の形態4〜6では、同一箇所に2台の電流検出器を設けた場合において、故障した電流検出器を特定し、故障した電流検出器と同一箇所に設けられた他方の健全な電流検出器によって運転を継続可能な方法について説明する。特に実施の形態4では、各アームのみに電流検出器を設けた場合について説明する。
以下では、まず、実施の形態4の電力変換装置1Dの概略構成について説明する。次に、実施の形態4〜6で用いられる電流の故障判定式について説明する。故障判定式は、キルヒホッフの第一法則(電流則とも称する)および三相交流の原理に基づくものである。特に、同一箇所に設けられた2個の電流検出器の検出値を比較する判定式が含まれる。
[電力変換装置の構成]
図11は、実施の形態4の電力変換装置1Dの概略構成図である。図11の電力変換装置1Dは、アーム電流検出器22,23が同一箇所に2台設けられている点で、図1の電力変換装置1Aと異なる。以下では、一方のアーム電流検出器を第1のアーム電流検出器22,23と称し、他方のアーム電流検出器を第2のアーム電流検出器22’,23’と称する。図11に示すように、U相上アームの第1の上アーム電流検出器22によって検出されたアーム電流値をiupとし、U相上アームの第2の上アーム電流検出器22’によって検出されたアーム電流値をiup’とする。他の相のアーム電流検出器22,23,22’,23’の検出値についても同様である。
制御装置3の故障検出部32Dは、同一箇所に設けられた2台のアーム電流検出器の検出値の比較にさらに基づいて、電流検出器の故障検出を行う。図11のその他の点は図1の場合と同様であるので、同一または相当する部分には同一の参照符号を付して説明を繰り返さない。
[電流検出器の故障判定式]
次に、実施の形態4〜6で用いられる電流検出器の故障判定式について説明する。故障判定式は、キルヒホッフの第一法則(電流則とも称する)および三相交流の原理に基づくものであり、実施の形態1〜3の場合よりも判定精度が高い。実施の形態4〜6では、以下の(a3)〜(k3),(m3),(n3),(p3)〜(t3),(m3’),(n3’),(p3’)〜(t3’)式のうちから選択された式が故障判定式として用いられる。
(1)キルヒホッフの第一法則より、同一箇所に設置した電流検出器の検出値は互いに等しい。したがって、正極側直流線路13Pの直流電流idcp,idcp’、負極側直流線路13Nの直流電流idcn,idcn’について、
idcp=idcp'
idcn=idcn'
が成り立つ。U相上アーム5UおよびU相下アーム6Uの電流値iup,iup’,iun,iun’について、
iup=iup'
iun=iun'
が成り立つ。同様に、V相上アーム5VおよびV相下アーム6Vの電流値ivp,ivp’,ivn,ivn’について、
ivp=ivp'
ivn=ivn'
が成り立つ。W相上アーム5WおよびW相下アーム6Wの電流値iwp,iwp’,iwn,iwn’について、
iwp=iwp'
iwn=iwn'
が成り立つ。また、交流線路11U,11V,11Wの交流電流iu,iu’,iv,iv’,iw,iw’について、
iu=iu'
iv=iv'
iw=iw'
が成り立つ。
したがって、故障判定式は、
|idcp−idcp'|>ε …(a3)
|idcn−idcn'|>ε …(b3)
|iup−iup'|>ε …(c3)
|ivp−ivp'|>ε …(d3)
|iwn−iwn'|>ε …(e3)
|iun−iun'|>ε …(f3)
|ivn−ivn'|>ε …(g3)
|iwn−iwn'|>ε …(h3)
|iu−iu'|>ε …(i3)
|iv−iv'|>ε …(j3)
|iw−iw'|>ε …(k3)
で表される。なお、各故障判定式の正の電流閾値εは必ずしも同一の値である必要はない。後述する他の故障判定式の電流閾値εについても同様に必ずしも同じ値である必要はない。
(2)キルヒホッフの第一法則より、上アーム5U,5V,5Wに流れる電流iup,ivp,iwpの総和は、正極側直流線路13Pを流れる直流電流idcpに等しい。したがって、
idcp=iup+ivp+iwp
が成立する。上記より、故障判定式は、
|idcp−(iup+ivp+iwp)|>ε …(m3)
|idcp'−(iup'+ivp'+iwp')|>ε …(m3')
で表される。
(3)キルヒホッフの第一法則より、下アーム6U,6V,6Wに流れる電流iun,ivn,iwnの総和は、負極側直流線路13Nを流れる直流電流idcnに等しい。したがって、
idcn=iun+ivn+iwn
が成立する。上記より、故障判定式は、
|idcn−(iun+ivn+iwn)|>ε …(n3)
|idcn'−(iun'+ivn'+iwn')|>ε …(n3')
で表される。
(4)三相交流の原理より各アームと連系される交流線路11U,11V,11Wの電流iu,iv,iwの総和は0となる。すなわち、
iu+iv+iw=0
が成り立つ。したがって、正極側直流線路13Pを流れる直流電流idcpと負極側直流線路13Nを流れる直流電流idcnとについて、
idcp−idcn=iu+iv+iw=0
が成り立つので、直流電流idcpと直流電流idcnとは等しい。すなわち、
idcp=idcn
が成り立つ。したがって、故障判定式は、
|idcp−idcn|>ε …(p3)
|idcp'−idcn'|>ε …(p3')
で表される。
(5)前記(1)〜(3)より、上アーム5U,5V,5Wに流れる電流iup,ivp,iwpの総和と、下アーム6U,6V,6Wに流れる電流iun,ivn,iwnの総和とは等しい。すなわち、
iup+ivp+iwp=iun+ivn+iwn
が成立する。したがって、故障判定式は、
|(iup+ivp+iwp)−(iun+ivn+iwn)|>ε …(q3)
|(iup'+ivp'+iwp')−(iun'+ivn'+iwn')|>ε …(q3')
で表される。
(6)キルヒホッフの第一法則より、U相交流線路11Uに連係されているU相上アーム5Uの電流iupとU相下アーム6Uの電流iunとの差は、U相交流線路11Uの交流電流iuに等しい。V相、W相についても同様である。したがって、
iup−iun=iu,ivp−ivn=iv,iwp−iwn=iw
が成立する。なお、交流線路11U,11V,11Wに変圧器が設けられた場合には、交流電流iu,iv,iwの値は、接続部NU,NV,NW側に換算した値となる。したがって、故障判定式は、
|iu−(iup−iun)|>ε …(r3)
|iu'−(iup'−iun')|>ε …(r3')
|iv−(ivp−ivn)|>ε …(s3)
|iv'−(ivp'−ivn')|>ε …(s3')
|iw−(iwp−iwn)|>ε …(t3)
|iw'−(iwp'−iwn')|>ε …(t3')
で表される。
[アーム電流検出器22,23,22’,23’用の故障検出部32Dの動作]
次に、図11の電力変換装置1Dにおけるアーム電流検出器22,23,22’,23’用の故障検出部32Dの動作について説明する。
図12は、図11のアーム電流検出器の故障検出を行う故障検出部の機能ブロック図である。図12を参照して、故障検出部32Dは、c3式判定部601と、d3式判定部602と、e3式判定部603と、q3式判定部604と、q3’式判定部605と、f3式判定部606と、g3式判定部607と、h3式判定部608と、論理積演算器611〜622と、判定結果出力部631〜642とを含む。これらの各部の機能は、たとえば、図3のCPU54がプログラムに従って動作することによって実現される。
c3式判定部601は、U相上アーム5Uに設けられた2台の電流検出器22,22’の検出値の比較に基づく前述の(c3)式が成立しているか否かを判定する。したがって、(c3)式が成立している場合、すなわち、c3式判定部601の出力が「1」の場合は、U相上アーム5Uに設けられた2台の電流検出器22,22’のうちいずれかが故障であることを示している。
d3式判定部602は、V相上アーム5Vに設けられた2台の電流検出器22,22’の検出値の比較に基づく前述の(d3)式が成立しているか否かを判定する。したがって、(d3)式が成立している場合、すなわち、d3式判定部602の出力が「1」の場合は、V相上アーム5Vに設けられた2台の電流検出器22,22’のうちいずれかが故障であることを示している。
e3式判定部603は、W相上アーム5Wに設けられた2台の電流検出器22,22’の検出値の比較に基づく前述の(e3)式が成立しているか否かを判定する。したがって、(e3)式が成立している場合、すなわち、e3式判定部603の出力が「1」の場合は、W相上アーム5Wに設けられた2台の電流検出器22,22’のうちいずれかが故障であることを示している。
f3式判定部606は、U相下アーム6Uに設けられた2台の電流検出器23,23’の検出値の比較に基づく前述の(f3)式が成立しているか否かを判定する。したがって、(f3)式が成立している場合、すなわち、f3式判定部606の出力が「1」の場合は、U相下アーム6Uに設けられた2台の電流検出器23,23’のうちいずれかが故障であることを示している。
g3式判定部607は、V相下アーム6Vに設けられた2台の電流検出器23,23’の検出値の比較に基づく前述の(g3)式が成立しているか否かを判定する。したがって、(g3)式が成立している場合、すなわち、g3式判定部607の出力が「1」の場合は、V相下アーム6Vに設けられた2台の電流検出器23,23’のうちいずれかが故障であることを示している。
h3式判定部608は、V相下アーム6Vに設けられた2台の電流検出器23,23’の検出値の比較に基づく前述の(h3)式が成立しているか否かを判定する。したがって、(h3)式が成立している場合、すなわち、h3式判定部608の出力が「1」の場合は、W相下アーム6Wに設けられた2台の電流検出器23,23’のうちいずれかが故障であることを示している。
q3式判定部604は、上アーム5U,5V,5Wに設けられた第1の上アーム電流検出器22の検出値の総和と、下アーム6U,6V,6Wに設けられた第1の下アーム電流検出器23の検出値の総和との比較に基づいて、前述の(q3)式が成立しているか否かを判定する。したがって、(q3)式が成立している場合、すなわち、q3式判定部604の出力が「1」の場合は、上アーム5U,5V,5Wに設けられた第1の上アーム電流検出器22と下アーム6U,6V,6Wに設けられた第1の下アーム電流検出器23とのいずれかが故障であることを示している。
q3’式判定部605は、上アーム5U,5V,5Wに設けられた第2の上アーム電流検出器22’の検出値の総和と、下アーム6U,6V,6Wに設けられた第2の下アーム電流検出器23’の検出値の総和との比較に基づいて、前述の(q3’)式が成立しているか否かを判定する。したがって、(q3’)式が成立している場合、すなわち、q3’式判定部605の出力が「1」の場合は、上アーム5U,5V,5Wに設けられた第2の上アーム電流検出器22’と下アーム6U,6V,6Wに設けられた第2の下アーム電流検出器23’とのいずれかが故障であることを示している。
以上に基づいて、論理積演算器611〜622および判定結果出力部631〜642の動作を説明する。
論理積演算器611は、c3式判定部601の出力とq3式判定部604の出力との論理積を演算する。判定結果出力部631は、論理積演算器611の出力が「1」の場合に、U相上アーム5Uの第1の上アーム電流検出器22が故障である(すなわち、アーム電流iupの検出値が異常である)と判定する。
論理積演算器612は、d3式判定部602の出力とq3式判定部604の出力との論理積を演算する。判定結果出力部632は、論理積演算器612の出力が「1」の場合に、V相上アーム5Vの第1の上アーム電流検出器22が故障である(すなわち、アーム電流ivpの検出値が異常である)と判定する。
論理積演算器613は、e3式判定部603の出力とq3式判定部604の出力との論理積を演算する。判定結果出力部633は、論理積演算器613の出力が「1」の場合に、W相上アーム5Wの第1の上アーム電流検出器22が故障である(すなわち、アーム電流iwpの検出値が異常である)と判定する。
論理積演算器614は、c3式判定部601の出力とq3’式判定部605の出力との論理積を演算する。判定結果出力部634は、論理積演算器614の出力が「1」の場合に、U相上アーム5Uの第2の上アーム電流検出器22’が故障である(すなわち、アーム電流iup’の検出値が異常である)と判定する。
論理積演算器615は、d3式判定部602の出力とq3’式判定部605の出力との論理積を演算する。判定結果出力部635は、論理積演算器615の出力が「1」の場合に、V相上アーム5Vの第2の上アーム電流検出器22’が故障である(すなわち、アーム電流ivp’の検出値が異常である)と判定する。
論理積演算器616は、e3式判定部603の出力とq3’式判定部605の出力との論理積を演算する。判定結果出力部636は、論理積演算器616の出力が「1」の場合に、W相上アーム5Wの第2の上アーム電流検出器22’が故障である(すなわち、アーム電流iwp’の検出値が異常である)と判定する。
論理積演算器617は、f3式判定部606の出力とq3式判定部604の出力との論理積を演算する。判定結果出力部637は、論理積演算器617の出力が「1」の場合に、U相下アーム6Uの第1の下アーム電流検出器23が故障である(すなわち、アーム電流iunの検出値が異常である)と判定する。
論理積演算器618は、g3式判定部607の出力とq3式判定部604の出力との論理積を演算する。判定結果出力部638は、論理積演算器618の出力が「1」の場合に、V相下アーム6Vの第1の下アーム電流検出器23が故障である(すなわち、アーム電流ivnの検出値が異常である)と判定する。
論理積演算器619は、h3式判定部608の出力とq3式判定部604の出力との論理積を演算する。判定結果出力部639は、論理積演算器619の出力が「1」の場合に、W相下アーム6Wの第1の下アーム電流検出器23が故障である(すなわち、アーム電流iwnの検出値が異常である)と判定する。
論理積演算器620は、f3式判定部606の出力とq3’式判定部605の出力との論理積を演算する。判定結果出力部640は、論理積演算器620の出力が「1」の場合に、U相下アーム6Uの第2の下アーム電流検出器23’が故障である(すなわち、アーム電流iun’の検出値が異常である)と判定する。
論理積演算器621は、g3式判定部607の出力とq3’式判定部605の出力との論理積を演算する。判定結果出力部641は、論理積演算器621の出力が「1」の場合に、V相下アーム6Vの第2の下アーム電流検出器23’が故障である(すなわち、アーム電流ivn’の検出値が異常である)と判定する。
論理積演算器622は、h3式判定部608の出力とq3’式判定部605の出力との論理積を演算する。判定結果出力部642は、論理積演算器622の出力が「1」の場合に、W相下アーム6Wの第2の下アーム電流検出器23’が故障である(すなわち、アーム電流iwn’の検出値が異常である)と判定する。以上により、各相の第1のアーム電流検出器22,23および各相の第2のアーム電流検出器22’,23’のうちで故障の電流検出器を特定できる。
[実施の形態4の効果]
以上のとおり、実施の形態4の電力変換装置1Dでは、上アーム5U,5V,5Wの各々に第1の上アーム電流検出器22と第2の上アーム電流検出器22’とが設けられ、下アーム6U,6V,6Wの各々に第1の下アーム電流検出器23と第2の下アーム電流検出器23’とが設けられる。
制御装置3は、n個の第1の上アーム電流検出器22、n個の第2の上アーム電流検出器22’、n個の第1の下アーム電流検出器23、およびn個の第2の下アーム電流検出器23’について、各電流検出器の故障の有無を検出する第1の故障検出部32Dを備える。第1の故障検出部32Dは、第1の判定部651(601〜603)と、第2の判定部652(606〜608)、第3の判定部(q3式判定部)604と、第4の判定部(q3’式判定部)605とを含む。
第1の判定部651は、同一の上アーム5に設置された第1の上アーム電流検出器22の検出値と第2の上アーム電流検出器22’の検出値との比較に基づく判定を行う。第2の判定部652は、同一の下アーム6に設置された第1の下アーム電流検出器23の検出値と第2の下アーム電流検出器23’の検出値との比較に基づく判定を行う。第3の判定部604は、n個の第1の上アーム電流検出器22の検出値の総和とn個の第1の下アーム電流検出器23の検出値の総和との比較に基づく判定を行う。第4の判定部605は、n個の第2の上アーム電流検出器22’の検出値の総和とn個の第2の下アーム電流検出器23’の検出値の総和との比較に基づく判定を行う。
第1および第2の判定部651,652の判定結果から、どの設置箇所のアーム電流検出器の故障であるかが判別できる。そして、第3および第4の判定部604,605の判定結果から、第1のアーム電流検出器の故障であるか、それとも第2のアーム電流検出器の故障であるかを判別できる。したがって、上記の第1〜第4の判定部651,652,604,605の判定結果を総合することにより、どのアーム電流検出器が故障しているかを判別でき、故障した電流検出器と同一箇所に設けられた他方の健全な電流検出器によって運転を継続できる。
実施の形態5.
実施の形態5では、第1のアーム電流検出器22,23および第2のアーム電流検出器22’,23’に加えて、さらに正極側直流線路13Pに第1の直流電流検出器25Pと第2の直流電流検出器25P’とが設けられ、負極側直流線路13Nに第1の直流電流検出器25Nと第2の直流電流検出器25N’とが設けられている場合について説明する。
図13は、実施の形態5の電力変換装置の概略構成図である。図5の電力変換装置1Eは、直流線路13P,13Nにそれぞれ設けられた第1の直流電流検出器25P,25Nおよび第2の直流電流検出器25P’,25N’をさらに含む点で、図11の電力変換装置1Dと異なる。
また、図13の制御装置3のスイッチング制御部30は、さらに第1の直流電流検出器25P,25Nおよび第2の直流電流検出器25P’,25N’によって検出された直流電流idcp,idcn,idcp’,idcn’の値に基づいて、各変換器セル7のスイッチング素子41p,41nのスイッチングを制御する。
さらに、図13の制御装置3は、アーム電流検出器22,23,22’,23’用の故障検出部32Eとともに、直流電流検出器25P,25N,25P’,25N’用の故障検出部33Eを含む点で、図11の制御装置3と異なる。図13のその他の点は、図11の場合と同様であるので、同一または相当する部分には同一の参照符号を付して説明を繰り返さない。
[直流電流検出器のための故障検出部33Eの動作]
次に、直流線路13P,13Nに設置された直流電流検出器25P,25N,25P’,25N’用の故障検出部33Eの動作について説明する。故障判定式として、実施の形態4で説明した故障判定式から選択された判定式が用いられる。
図14は、図13の直流電流検出器の故障検出を行う故障検出部の機能ブロック図である。図14を参照して、故障検出部33Eは、a3式判定部701と、m3式判定部702と、p3式判定部703と、m3’式判定部704と、p3’式判定部705と、b3式判定部706と、n3式判定部707と、n3’式判定部708と、論理積演算器711〜714と、論理和演算器721〜724と、判定結果出力部731〜734とを含む。これらの各部の機能は、たとえば、図3のCPU54がプログラムに従って動作することによって実現される。
a3式判定部701は、正極側直流線路13Pに設けられた2台の直流電流検出器25P,25P’の検出値の比較に基づく前述の(a3)式が成立しているか否かを判定する。したがって、a3式判定部701の出力が「1」の場合は、正極側直流線路13Pに設けられた2台の直流電流検出器25P,25P’のうちのいずれかが故障していることを示している。
m3式判定部702は、正極側直流線路13Pに設けられた第1の直流電流検出器25Pの検出値と、上アーム5U,5V,5Wに設けられた第1の上アーム電流検出器22の検出値の総和との比較に基づいて、前述の(m3)式が成立しているか否かを判定する。したがって、m3式判定部702の出力が「1」の場合は、正極側直流線路13Pに設けられた第1の直流電流検出器25Pおよび上アーム5U,5V,5Wに設けられた第1の上アーム電流検出器22のいずれかが故障であることを示している。
p3式判定部703は、正極側直流線路13Pに設けられた第1の直流電流検出器25Pの検出値と、負極側直流線路13Nに設けられた第1の直流電流検出器25Nの検出値とに比較に基づいて、前述の(p3)式が成立しているか否かを検出する。したがって、p3式判定部703の出力が「1」の場合は、直流線路13P,13Nに設けられた第1の直流電流検出器25P,25Nのいずれかが故障していることを示している。
m3’式判定部704は、正極側直流線路13Pに設けられた第2の直流電流検出器25P’の検出値と、上アーム5U,5V,5Wに設けられた第2の上アーム電流検出器22’の検出値の総和との比較に基づいて、前述の(m3’)式が成立しているか否かを判定する。したがって、m3’式判定部704の出力が「1」の場合は、正極側直流線路13Pに設けられた第2の直流電流検出器25P’および上アーム5U,5V,5Wに設けられた第2の上アーム電流検出器22’のいずれかが故障であることを示している。
p3’式判定部705は、正極側直流線路13Pに設けられた第2の直流電流検出器25P’の検出値と、負極側直流線路13Nに設けられた第2の直流電流検出器25N’の検出値とに比較に基づいて、前述の(p3’)式が成立しているか否かを検出する。したがって、p3’式判定部705の出力が「1」の場合は、直流線路13P,13Nに設けられた第2の直流電流検出器25P’,25N’のいずれかが故障していることを示している。
b3式判定部706は、負極側直流線路13Nに設けられた2台の直流電流検出器25N,25N’の検出値の比較に基づく前述の(b3)式が成立しているか否かを判定する。したがって、b3式判定部706の出力が「1」の場合は、負極側直流線路13Nに設けられた2台の直流電流検出器25N,25N’のうちのいずれかが故障していることを示している。
n3式判定部707は、負極側直流線路13Nに設けられた第1の直流電流検出器25Nの検出値と、下アーム6U,6V,6Wに設けられた第1の下アーム電流検出器23の検出値の総和との比較に基づいて、前述の(n3)式が成立しているか否かを判定する。したがって、n3式判定部707の出力が「1」の場合は、負極側直流線路13Nに設けられた第1の直流電流検出器25Nおよび下アーム6U,6V,6Wに設けられた第1の下アーム電流検出器23のいずれかが故障であることを示している。
n3’式判定部708は、負極側直流線路13Nに設けられた第2の直流電流検出器25N’の検出値と、下アーム6U,6V,6Wに設けられた第2の下アーム電流検出器23’の検出値の総和との比較に基づいて、前述の(n3’)式が成立しているか否かを判定する。したがって、n3’式判定部708の出力が「1」の場合は、負極側直流線路13Nに設けられた第2の直流電流検出器25N’および下アーム6U,6V,6Wに設けられた第2の下アーム電流検出器23’のいずれかが故障であることを示している。
以上に基づいて、論理積演算器711〜714、論理和演算器721〜724、および判定結果出力部731〜734の動作を説明する。
論理和演算器721は、m3式判定部702の出力とp3式判定部703の出力との論理和を演算する。論理積演算器711は、a3式判定部701の出力と論理和演算器721の出力との論理積を演算する。したがって、判定結果出力部731は、論理積演算器711の出力が「1」の場合に、正極側直流線路13Pに設けられた第1の直流電流検出器25Pが故障である(すなわち、直流電流idcpの検出値が異常である)と出力する。
論理和演算器722は、m3’式判定部704の出力とp3’式判定部705の出力との論理和を演算する。論理積演算器712は、a3式判定部701の出力と論理和演算器722の出力との論理積を演算する。したがって、判定結果出力部732は、論理積演算器712の出力が「1」の場合に、正極側直流線路13Pに設けられた第2の直流電流検出器25P’が故障である(すなわち、直流電流idcp’の検出値が異常である)と出力する。
論理和演算器723は、n3式判定部707の出力とp3式判定部703の出力との論理和を演算する。論理積演算器713は、b3式判定部706の出力と論理和演算器723の出力との論理積を演算する。したがって、判定結果出力部733は、論理積演算器713の出力が「1」の場合に、負極側直流線路13Nに設けられた第1の直流電流検出器25Nが故障である(すなわち、直流電流idcnの検出値が異常である)と出力する。
論理和演算器724は、n3’式判定部708の出力とp3’式判定部705の出力との論理和を演算する。論理積演算器714は、b3式判定部706の出力と論理和演算器724の出力との論理積を演算する。したがって、判定結果出力部734は、論理積演算器714の出力が「1」の場合に、負極側直流線路13Nに設けられた第2の直流電流検出器25N’が故障である(すなわち、直流電流idcn’の検出値が異常である)と出力する。以上により、直流線路13P,13Nの各々に設けられた直流電流検出器25,25P’,25N’のうちで故障の電流検出器を特定できる。
[アーム電流検出器22,23,22’,23’用の故障検出部32Eの動作]
次に、図11の電力変換装置1Eにおけるアーム電流検出器22,23,22’,23’用の故障検出部32Eの動作について説明する。
図15は、図13のアーム電流検出器の故障検出を行う故障検出部の機能ブロック図である。図15を参照して、故障検出部32Eは、c3式判定部601と、d3式判定部602と、e3式判定部603と、m3式判定部702と、q3式判定部604と、m3’式判定部704と、q3’式判定部605と、n3式判定部707と、n3’式判定部708と、f3式判定部606と、g3式判定部607と、h3式判定部608と、論理積演算器821〜832と、論理和演算器841〜844と、判定結果出力部851〜862とを含む。
図15のc3式判定部601、d3式判定部602、e3式判定部603、q3式判定部604、q3’式判定部605、f3式判定部606、g3式判定部607、およびh3式判定部608は、図12のc3式判定部601、d3式判定部602、e3式判定部603、q3式判定部604、q3’式判定部605、f3式判定部606、g3式判定部607、およびh3式判定部608にそれぞれ対応している。したがって、詳しい説明を繰り返さない。
また、図15のm3式判定部702、m3’式判定部704、n3式判定部707、おおびn3’式判定部708は、図14のm3式判定部702、m3’式判定部704、n3式判定部707、およびn3’式判定部708にそれぞれ対応している。したがって、詳しい説明を繰り返さない。
論理和演算器841は、m3式判定部702の出力とq3式判定部604の出力との論理和を演算する。したがって、上アーム5U,5V,5Wに設けられた第1の上アーム電流検出器22のいずれかが故障している場合には、論理和演算器841の出力は「1」になる。
論理和演算器842は、m3’式判定部704の出力とq3’式判定部605の出力との論理和を演算する。したがって、上アーム5U,5V,5Wに設けられた第2の上アーム電流検出器22’のいずれかが故障の場合には、論理和演算器842の出力は「1」になる。
論理和演算器843は、n3式判定部707の出力とq3式判定部604の出力との論理和を演算する。したがって、下アーム6U,6V,6Wに設けられた第1の下アーム電流検出器23のいずれかが故障の場合には、論理和演算器843の出力は「1」になる。
論理和演算器844は、n3’式判定部708の出力とq3’式判定部605の出力との論理和を演算する。したがって、下アーム6U,6V,6Wに設けられた第2の下アーム電流検出器23’のいずれかが故障の場合には、論理和演算器844の出力は「1」になる。論理和演算器841〜844では、実施の形態4の場合よりも多くの判定式を組み合わせることによって判定精度が高められている。
以上に基づいて、論理積演算器821〜622および判定結果出力部851〜642の動作を説明する。
論理積演算器821は、c3式判定部601の出力と論理和演算器841の出力との論理積を演算する。判定結果出力部851は、論理積演算器821の出力が「1」の場合に、U相上アーム5Uの第1の上アーム電流検出器22が故障である(すなわち、アーム電流iupの検出値が異常である)と判定する。
論理積演算器822は、d3式判定部602の出力と論理和演算器841の出力との論理積を演算する。判定結果出力部852は、論理積演算器822の出力が「1」の場合に、V相上アーム5Vの第1の上アーム電流検出器22が故障である(すなわち、アーム電流ivpの検出値が異常である)と判定する。
論理積演算器823は、e3式判定部603の出力と論理和演算器841の出力との論理積を演算する。判定結果出力部853は、論理積演算器823の出力が「1」の場合に、W相上アーム5Wの第1の上アーム電流検出器22が故障である(すなわち、アーム電流iwpの検出値が異常である)と判定する。
論理積演算器824は、c3式判定部601の出力と論理和演算器842の出力との論理積を演算する。判定結果出力部854は、論理積演算器824の出力が「1」の場合に、U相上アーム5Uの第2の上アーム電流検出器22’が故障である(すなわち、アーム電流iup’の検出値が異常である)と判定する。
論理積演算器825は、d3式判定部602の出力と論理和演算器842の出力との論理積を演算する。判定結果出力部855は、論理積演算器825の出力が「1」の場合に、V相上アーム5Vの第2の上アーム電流検出器22’が故障である(すなわち、アーム電流ivp’の検出値が異常である)と判定する。
論理積演算器826は、e3式判定部603の出力と論理和演算器842の出力との論理積を演算する。判定結果出力部856は、論理積演算器826の出力が「1」の場合に、W相上アーム5Wの第2の上アーム電流検出器22’が故障である(すなわち、アーム電流iwp’の検出値が異常である)と判定する。
論理積演算器827は、f3式判定部606の出力と論理和演算器843の出力との論理積を演算する。判定結果出力部857は、論理積演算器827の出力が「1」の場合に、U相下アーム6Uの第1の下アーム電流検出器23が故障である(すなわち、アーム電流iunの検出値が異常である)と判定する。
論理積演算器828は、g3式判定部607の出力と論理和演算器843の出力との論理積を演算する。判定結果出力部858は、論理積演算器828の出力が「1」の場合に、V相下アーム6Vの第1の下アーム電流検出器23が故障である(すなわち、アーム電流ivnの検出値が異常である)と判定する。
論理積演算器829は、h3式判定部608の出力と論理和演算器843の出力との論理積を演算する。判定結果出力部859は、論理積演算器829の出力が「1」の場合に、W相下アーム6Wの第1の下アーム電流検出器23が故障である(すなわち、アーム電流iwnの検出値が異常である)と判定する。
論理積演算器830は、f3式判定部606の出力と論理和演算器844の出力との論理積を演算する。判定結果出力部860は、論理積演算器830の出力が「1」の場合に、U相下アーム6Uの第2の下アーム電流検出器23’が故障である(すなわち、アーム電流iun’の検出値が異常である)と判定する。
論理積演算器831は、g3式判定部607の出力と論理和演算器844の出力との論理積を演算する。判定結果出力部861は、論理積演算器831の出力が「1」の場合に、V相下アーム6Vの第2の下アーム電流検出器23’が故障である(すなわち、アーム電流ivn’の検出値が異常である)と判定する。
論理積演算器832は、h3式判定部608の出力と論理和演算器844の出力との論理積を演算する。判定結果出力部862は、論理積演算器832の出力が「1」の場合に、W相下アーム6Wの第2の下アーム電流検出器23’が故障である(すなわち、アーム電流iwn’の検出値が異常である)と判定する。以上により、各相の第1のアーム電流検出器22,23および第2のアーム電流検出器22’,23’のうちで故障の電流検出器を特定できる。
[実施の形態5の効果]
以上をまとめると、実施の形態5の電力変換装置1Eでは、第1のアーム電流検出器22,23および第2のアーム電流検出器22’,23’に加えて、直流線路13P,13Nに第1の直流電流検出器25P,25N(第1の正極側直流電流検出器25P、第1の負極側直流電流検出器25N)がそれぞれ設けられ、さらに第2の直流電流検出器25P’,25N’(第2の正極側直流電流検出器25P’、第2の負極側直流電流検出器25N’)がそれぞれ設けられる。
制御装置3は、第1の故障検出部32Eと、第2の故障検出部33Eとを含む。第1の故障検出部32Eは、n個の第1の上アーム電流検出器22、n個の第2の上アーム電流検出器22’、n個の第2の下アーム電流検出器23,およびn個の第2の下アーム電流検出器23’について、各電流検出器の故障の有無を検出する。第2の故障検出部33Eは、第1の正極側直流電流検出器25P、第2の正極側直流電流検出器25P’、第1の負極側直流電流検出器25N、第2の負極側直流電流検出器25N’の各々の故障の有無を検出する。
具体的に、第2の故障検出部33Eは、第5の判定部(a3式判定部)701、第6の判定部(b2式判定部)706、第7の判定部(p3式判定部)703、および第8の判定部(p3’式判定部)705を含む。第5の判定部701は、第1の正極側直流電流検出器25Pの検出値と第2の正極側直流電流検出器25P’の検出値との比較に基づく判定を行う。第6の判定部706は、第1の負極側直流電流検出器25Nの検出値と第2の負極側直流電流検出器25N’の検出値との比較に基づく判定を行う。第7の判定部703は、第1の正極側直流電流検出器25Pの検出値と第1の負極側直流電流検出器25Nの検出値との比較に基づく判定を行う。第8の判定部705は、第2の正極側直流電流検出器25P’の検出値と第2の負極側直流電流検出器25N’の検出値との比較に基づく判定を行う。
したがって、第5および第6の判定部701,706の判定結果から、どの設置箇所の直流電流検出器が故障しているかを判別できる。第7および第8の判定部703,705の判定結果から、第1の直流電流検出器が故障しているか、それとも第2の直流電流検出器が故障しているかを判別できる。よって、第5〜第8の判定部の判定結果を総合することにより、どの直流電流検出器が故障しているかを判別することができ、故障した電流検出器と同一箇所に設けられた他方の健全な電流検出器を利用することよって電力変換装置の運転を継続できる。
ただし、上記の構成の場合には、たとえば、第1の正極側直流電流検出器25Pと第2の負極側直流電流検出器25N’との両方が故障している場合には、故障している直流電流検出器を検出できない。したがって、より精度良く故障している直流電流検出器を判別するためには、第2の故障検出部33Bは、さらに、第9の判定部(m3式判定部)702、第10の判定部(m3’式判定部)704、第11の判定部(n3式判定部)707、および第12の判定部(n3’式判定部)708を含むほうが望ましい。
第9の判定部702は、第1の正極側直流電流検出器25Pの検出値とn個の第1の上アーム電流検出器22の検出値の総和との比較に基づく判定を行う。第10の判定部704は、第2の正極側直流電流検出器の検出値25P’とn個の第2の上アーム電流検出器22’の検出値の総和との比較に基づく判定を行う。第11の判定部707は、第1の負極側直流電流検出器25Nの検出値とn個の第1の下アーム電流検出器23の検出値の総和との比較に基づく判定を行う。第12の判定部708は、第2の負極側直流電流検出器23’の検出値とn個の第2の下アーム電流検出器の検出値の総和との比較に基づく判定を行う。第7および第8の判定部703,705の判定結果に、第9〜第12の判定部702,704,707,708の判定結果を組み合わせることにより、第1の直流電流検出器が故障しているか、それとも第2の直流電流検出器が故障しているかをさらに精度良く判定できる。
第1の故障検出部32Eは、実施の形態4の第1の故障検出部32Dの構成に、さらに、上記の第9〜第12の判定部702,704,707,708を含む。第3および第4の判定部604,605の判定結果に、第9〜第12の判定部702,704,707,708の判定結果を組み合わせることにより、第1のアーム電流検出器が故障しているか、それとも第2のアーム電流検出器が故障しているかをさらに精度良く判別できる。したがって、第1〜第4の判定部651,652,604,605および第9〜第12の判定部702,704,707,708の判定結果を総合することにより、どのアーム電流検出器が故障しているかをさらに精度良く判別でき、故障した電流検出器と同一箇所に設けられた他方の健全な電流検出器によって運転を継続できる。
実施の形態6.
実施の形態6では、第1のアーム電流検出器22,23、第2のアーム電流検出器22’,23’、第1の直流電流検出器25P,25N、および第2の直流電流検出器25P’,25N’に加えて、さらに交流線路11U,11V,11Wの各々に第1の交流電流検出器21および第2の交流電流検出器21’が設けられている場合について説明する。
図16は、実施の形態6の電力変換装置の概略構成図である。図16の電力変換装置1Fは、交流線路11U,11V,11Wの各々に設けられた第1の交流電流検出器21および第2の交流電流検出器21’をさらに含む点で、図13の電力変換装置1Eと異なる。
また、図16の制御装置3のスイッチング制御部30は、さらに第1の交流電流検出器21および第2の交流電流検出器21’によって検出されたiu,iu’,iv,iv’,iw,iw’の値に基づいて、各変換器セル7のスイッチング素子41p,41nのスイッチングを制御する。
さらに、図13の制御装置3は、アーム電流検出器22,23,22’,23’用の故障検出部32Fおよび直流電流検出器25P,25N,25P’,25N’用の故障検出部33Fとともに、交流電流検出器21,21’用の故障検出部34Fを含む点で、図13の制御装置3と異なる。図16のその他の点は、図13の場合と同様であるので、同一または相当する部分には同一の参照符号を付して説明を繰り返さない。
[交流電流検出器21,21’用の故障検出部34Fの動作]
次に、交流線路11U,11V,11Wの各々に設定された第1の交流電流検出器21および第2の交流電流検出器21’の故障検出を行う故障検出部34Fの動作について説明する。故障検出部34Fで用いられる故障判定式は、実施の形態4で説明した故障判定式から選択される。
図17は、図16の交流電流検出器の故障検出を行う故障検出部の機能ブロック図である。図17を参照して、故障検出部34Fは、i3式判定部901と、r3式判定部902と、r3’式判定部903と、j3式判定部904と、s3式判定部905と、s3’式判定部906と、k3式判定部907と、t3式判定部908と、t3’式判定部909と、論理積演算器911〜916と、判定結果出力部921〜926とを含む。これらの各部の機能は、たとえば、図3のCPU54がプログラムに従って動作することによって実現される。
i3式判定部901は、U相交流線路11Uに設けられた第1の交流電流検出器21の検出値と、U相交流線路11Uに設けられた第2の交流電流検出器21’の検出値とを比較して、前述(i3)式が成立しているか否かを判定する。i3式判定部901の出力が「1」の場合は、U相交流線路11Uの交流電流検出器21,21’のいずれかが故障していることを示す。
r3式判定部902は、U相上アーム5Uの第1の上アーム電流検出器22の検出値からU相下アーム6Uの第1の下アーム電流検出器23の検出値を減算した値と、U相交流線路11Uの第1の交流電流検出器21の検出値とを比較して、前述の(r3)式が成立しているか否かを判定する。したがって、r3式判定部902の出力が「1」の場合は、U相の第1のアーム電流検出器22,23およびU相の第1の交流電流検出器21のいずれかが故障していることを示している。
r3’式判定部903は、U相上アーム5Uの第2の上アーム電流検出器22’の検出値からU相下アーム6Uの第2の下アーム電流検出器23’の検出値を減算した値と、U相交流線路11Uの第2の交流電流検出器21’の検出値とを比較して、前述の(r3’)式が成立しているか否かを判定する。したがって、r3’式判定部903の出力が「1」の場合は、U相の第2のアーム電流検出器22’,23’およびU相の第2の交流電流検出器21’のいずれかが故障していることを示している。
論理積演算器911は、i3式判定部901の出力とr3式判定部902の出力との論理積を演算する。この結果、判定結果出力部921は、論理積演算器911の出力が「1」の場合に、U相の第1の交流電流検出器21が故障である(すなわち、交流電流iuの検出値が異常である)と出力する。
論理積演算器912は、i3式判定部901の出力とr3’式判定部903の出力との論理積を演算する。この結果、判定結果出力部922は、論理積演算器912の出力が「1」の場合に、U相の第2の交流電流検出器21’が故障である(すなわち、交流電流iu’の検出値が異常である)と出力する。
j3式判定部904は、V相交流線路11Vに設けられた第1の交流電流検出器21の検出値と、V相交流線路11Vに設けられた第2の交流電流検出器21’の検出値とを比較して、前述の(j3)式が成立しているか否かを判定する。j3式判定部904の出力が「1」の場合は、V相交流線路11Vの交流電流検出器21,21’のいずれかが故障していることを示す。
s3式判定部905は、V相上アーム5Vの第1の上アーム電流検出器22の検出値からV相下アーム6Vの第1の下アーム電流検出器23の検出値を減算した値と、V相交流線路11Vの第1の交流電流検出器21の検出値とを比較して、前述の(s3)式が成立しているか否かを判定する。したがって、s3式判定部905の出力が「1」の場合は、V相の第1のアーム電流検出器22,23およびV相の第1の交流電流検出器21のいずれかが故障していることを示している。
s3’式判定部906は、V相上アーム5Vの第2の上アーム電流検出器22’の検出値からV相下アーム6Vの第2の下アーム電流検出器23’の検出値を減算した値と、V相交流線路11Vの第2の交流電流検出器21’の検出値とを比較して、前述の(s3’)式が成立しているか否かを判定する。したがって、s3’式判定部906の出力が「1」の場合は、V相の第2のアーム電流検出器22’,23’およびV相の第2の交流電流検出器21’のいずれかが故障していることを示している。
論理積演算器913は、j3式判定部904の出力とs3式判定部905の出力との論理積を演算する。この結果、判定結果出力部923は、論理積演算器913の出力が「1」の場合に、V相の第1の交流電流検出器21が故障である(すなわち、交流電流ivの検出値が異常である)と出力する。
論理積演算器914は、j3式判定部904の出力とs3’式判定部906の出力との論理積を演算する。この結果、判定結果出力部924は、論理積演算器914の出力が「1」の場合に、V相の第2の交流電流検出器21’が故障である(すなわち、交流電流iv’の検出値が異常である)と出力する。
k3式判定部907は、W相交流線路11Wに設けられた第1の交流電流検出器21の検出値と、W相交流線路11Wに設けられた第2の交流電流検出器21’の検出値とを比較して、前述の(k3)式が成立しているか否かを判定する。k3式判定部907の出力が「1」の場合は、W相交流線路11Wの交流電流検出器21,21’のいずれかが故障していることを示す。
t3式判定部908は、W相上アーム5Wの第1の上アーム電流検出器22の検出値からW相下アーム6Wの第1の下アーム電流検出器23の検出値を減算した値と、W相交流線路11Wの第1の交流電流検出器21の検出値とを比較して、前述の(t3)式が成立しているか否かを判定する。したがって、t3式判定部908の出力が「1」の場合は、W相の第1のアーム電流検出器22,23およびW相の第1の交流電流検出器21のいずれかが故障していることを示している。
t3’式判定部909は、W相上アーム5Wの第2の上アーム電流検出器22’の検出値からW相下アーム6Wの第2の下アーム電流検出器23’の検出値を減算した値と、W相交流線路11Wの第2の交流電流検出器21’の検出値とを比較して、前述の(t3’)式が成立しているか否かを判定する。したがって、t3’式判定部909の出力が「1」の場合は、W相の第2のアーム電流検出器22’,23’およびW相の第2の交流電流検出器21’のいずれかが故障していることを示している。
論理積演算器915は、k3式判定部907の出力とt3式判定部908の出力との論理積を演算する。この結果、判定結果出力部925は、論理積演算器915の出力が「1」の場合に、W相の第1の交流電流検出器21が故障である(すなわち、交流電流iwの検出値が異常である)と出力する。
論理積演算器916は、k3式判定部907の出力とt3’式判定部909の出力との論理積を演算する。この結果、判定結果出力部926は、論理積演算器916の出力が「1」の場合に、W相の第2の交流電流検出器21’が故障である(すなわち、交流電流iw’の検出値が異常である)と出力する。以上により、交流線路11U,11V,11Wの各々に設けられた交流電流検出器21のうちで、故障の電流検出器を特定できる。
[直流電流検出器のための故障検出部33Fの動作]
図16の故障検出部33Fの機能ブロック図として、図14で説明した故障検出部33Eの機能ブロック図を利用できる。
[アーム電流検出器のための故障検出部32Fの動作]
図16の故障検出部32Fの機能ブロック図として、図15で説明した故障検出部32Eの機能ブロック図を利用できる。
[実施の形態6の効果]
以上をまとめると、実施の形態6の電力変換装置1Fでは、第1のアーム電流検出器22,23、第2のアーム電流検出器22’,23’、第1の直流電流検出器25P,25N、および第2の直流電流検出器25P’,25N’に加えて、n本の交流線路の各々に第1の交流電流検出器21および第2の交流電流検出器21’が設けられる。
制御装置3は、実施の形態5における第1の故障検出部32Eと同一構成の第1の故障検出部32Fと、実施の形態5における第2の故障検出部33Eと同一構成の第2の故障検出部33Fと、第3の故障検出部34Fとを含む。第3の故障検出部34Fは、n個の第1の交流電流検出器およびn個の第2の交流電流検出器について、各交流電流検出器の故障の有無を検出する。
第1の故障検出部32Fおよび第2の故障検出部33Fは、実施の形態5の電力変換装置1Eにおける第1の故障検出部32Eおよび第2の故障検出部33Fと同様の作用効果を奏する。第3の故障検出部34Fは、第13の判定部951(i3式判定部901、j3式判定部904、k3式判定部907)と、第14の判定部952(r3式判定部902、s3式判定部905、t3式判定部908)と、第15の判定部953(r3’式判定部903、s3’式判定部906、t3’式判定部909)とを含む。
具体的に、第13の判定部951は、同一の交流線路11に設置された第1の交流電流検出器21の検出値と第2の交流電流検出器21’の検出値との比較に基づく判定を行う。
第14の判定部952は、任意の第1の上アーム5に設けられた第1の上アーム電流検出器22の検出値と上記第1の上アーム5に対応する下アーム6に設けられた第1の下アーム電流検出器23の検出値との差を、上記第1の上アーム5に対応する交流線路11に設けられた第1の交流電流検出器21の検出値と比較すること基づく判定を行う。
第15の判定部953は、任意の第1の上アーム5に設けられた第2の上アーム電流検出器22’の検出値と上記第1の上アーム5に対応する下アーム6に設けられた第2の下アーム電流検出器23’の検出値との差を、上記第1の上アーム5に対応する交流線路11に設けられた第2の交流電流検出器21’の検出値と比較すること基づく判定を行う。
したがって、第13の判定部951の判定結果から、どの交流線路11に設けられた交流電流検出器21,21’が故障しているかを判別できる。第14および第15の判定部952,953の判定結果から、第1の交流電流検出器が故障しているか、それとも第2の交流電流検出器が故障しているかを判定できる。よって、第13〜第15の判定部951〜953の判定結果を総合することにより、どの故障電流検出器が故障しているかを判別することができ、故障した電流検出器と同一箇所に設けられた他方の健全な電流検出器を利用することよって電力変換装置の運転を継続できる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものでないと考えられるべきである。この発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。