JP6756331B2 - 炭素膜およびその製造方法、ならびに、繊維状炭素ナノ構造体分散液およびその製造方法 - Google Patents

炭素膜およびその製造方法、ならびに、繊維状炭素ナノ構造体分散液およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、炭素膜およびその製造方法、ならびに、繊維状炭素ナノ構造体分散液およびその製造方法に関するものである。
近年、導電性、熱伝導性および機械的特性に優れる材料として、カーボンナノチューブ(以下、「CNT」と称することがある。)等の繊維状炭素ナノ構造体が注目されている。
しかし、CNT等の繊維状炭素ナノ構造体は直径がナノメートルサイズの微細な構造体であるため、単体では取り扱い性や加工性が悪い。そこで、例えば、複数本のCNTを膜状に集合させて「バッキーペーパー」と称されることもあるカーボンナノチューブ膜(以下、「CNT膜」と称することがある。)を形成し、当該CNT膜を導電膜などとして用いることが提案されている。具体的には、溶媒とCNT等の繊維状炭素ナノ構造体とを混ぜ、撹拌等により繊維状炭素ナノ構造体を分散させた分散液を調製し、この分散液から溶媒を除去することにより成膜した炭素膜を、太陽電池やタッチパネルなどの電極を構成する部材(例えば、導電膜や触媒層など)として用いることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
そして、上述したような繊維状炭素ナノ構造体を膜状に集合させてなる炭素膜は、導電性、熱伝導性および機械的特性などの特性に優れる膜状材料として注目されている。
特開2010−105909号公報
しかし、単に撹拌等により繊維状炭素ナノ構造体を溶媒中に分散させた分散液から溶媒を除去することにより得られる従来の炭素膜は、導電性が不足し、太陽電池やタッチパネルなどの電極としての性能が十分に良好なものとならない場合があった。
そこで、本発明は、導電性に優れる炭素膜、およびその製造方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、導電性に優れる炭素膜を得ることが可能な繊維状炭素ナノ構造体分散液、およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を行った。そして、本発明者らは、表面が所定の光沢性を有する炭素膜が導電性に優れていること、および、所定条件での遠心分離の前後における上澄み液の吸光度の比が所定値以上である繊維状炭素ナノ構造体分散液を用いることにより、導電性に優れる炭素膜を得られることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の炭素膜は、60度における表面の光沢度が2以上500以下であることを特徴とする。このような炭素膜は、導電性に優れている。
ここで、本発明の炭素膜は、繊維状炭素ナノ構造体を含むことが好ましい。炭素膜が繊維状炭素ナノ構造体を含んでいれば、表面の光沢度がより高くなり、導電性を一層向上させることができる。
また、本発明の炭素膜は、前記繊維状炭素ナノ構造体が、吸着等温線から得られるt−プロットが上に凸な形状を示すことが好ましい。このようなt−プロットが上に凸な形状を示す繊維状炭素ナノ構造体を含むことにより、炭素膜の導電性をより優れたものとすることができる。
また、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明に係る炭素膜の製造方法は、上述した本発明の炭素膜を製造する方法であって、繊維状炭素ナノ構造体と溶媒とを含有する繊維状炭素ナノ構造体分散液から前記溶媒を除去して、炭素膜を成膜する工程を含むことを特徴とする。本発明に係る炭素膜の製造方法によれば、導電性に優れる、上述した本発明の炭素膜が得られる。
ここで、本発明に係る炭素膜の製造方法は、前記繊維状炭素ナノ構造体分散液が、当該分散液の吸光度をAとし、当該分散液を10000Gで1時間の条件で遠心分離した後の上澄み液の吸光度をBとしたとき、B/A×100で求められる分散率(%)が80%以上であることが好ましい。このように、繊維状炭素ナノ構造体分散液の分散率(%)が80%以上であれば、分散液中での繊維状炭素ナノ構造体の分散性が極めて高く、このような分散性に優れた繊維状炭素ナノ構造体を用いて炭素膜を形成すれば、導電性に優れる炭素膜を得ることができる。
そして、本発明に係る炭素膜の製造方法は、前記繊維状炭素ナノ構造体が、吸着等温線から得られるt−プロットが上に凸な形状を示すことが好ましい。このような繊維状炭素ナノ構造体を用いることにより、導電性により優れる炭素膜を得ることができる。
また、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の繊維状炭素ナノ構造体分散液は、繊維状炭素ナノ構造体と溶媒とを含有する繊維状炭素ナノ構造体分散液であって、当該分散液の吸光度をAとし、当該分散液を10000Gで1時間の条件で遠心分離した後の上澄み液の吸光度をBとしたとき、B/A×100で求められる分散率(%)が80%以上であることを特徴とする。このように、B/A×100で求められる分散率(%)が80%以上であれば、分散液中での繊維状炭素ナノ構造体の分散性が極めて高く、このような分散性に優れた繊維状炭素ナノ構造体を用いて炭素膜を形成すれば、導電性に優れる炭素膜を得ることができる。
ここで、本発明の繊維状炭素ナノ構造体分散液は、前記繊維状炭素ナノ構造体が、吸着等温線から得られるt−プロットが上に凸な形状を示すことが好ましい。このような繊維状炭素ナノ構造体を繊維状炭素ナノ構造体分散液に用いることにより、導電性により優れる炭素膜を得ることができる。
そして、本発明の繊維状炭素ナノ構造体分散液は、繊維状炭素ナノ構造体の分散性を高めて自立性および導電性の高い炭素膜を得る観点から、分散剤をさらに含有することが好ましい。
また、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の繊維状炭素ナノ構造体分散液の製造方法は、溶媒中に繊維状炭素ナノ構造体を添加してなる粗分散液を圧力を加えることにより細管流路に送り込み、前記粗分散液にせん断力を与えて繊維状炭素ナノ構造体を分散させる分散処理を実施して、繊維状炭素ナノ構造体分散液を得る工程を含み、
前記分散処理は、粗分散液に加える圧力を60〜250MPaとした第1分散処理と、前記第1分散処理後の、粗分散液に加える圧力を5〜30MPaとした第2分散処理とを含み、
前記第1分散処理における平均分散処理回数θが5〜30であり、前記第2分散処理における平均分散処理回数θが1〜20である、ことを特徴とする。このようにして製造した繊維状炭素ナノ構造体分散液を用いることにより、導電性に優れる炭素膜を得ることが可能である。
さらに、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の繊維状炭素ナノ構造体分散液の製造方法は、溶媒中に繊維状炭素ナノ構造体を添加してなる粗分散液を圧力を加えることにより細管流路に送り込み、前記粗分散液にせん断力を与えて繊維状炭素ナノ構造体を分散させる分散処理を実施して、繊維状炭素ナノ構造体分散液を得る工程を含み、
前記分散処理では、前記粗分散液に加える圧力を50〜250MPaとし、且つ、せん断力が与えられた粗分散液への背圧の負荷を行うとともに、前記せん断力が与えられた粗分散液の背圧を少なくとも2段階で降圧し、
前記分散処理における平均分散処理回数θが3〜20である、ことを特徴とする。このようにして製造した繊維状炭素ナノ構造体分散液を用いることにより、導電性に優れる炭素膜を得ることが可能である。
本発明によれば、導電性に優れる炭素膜、およびその製造方法を提供することができる。
また、本発明によれば、導電性に優れる炭素膜を得ることが可能な繊維状炭素ナノ構造体分散液、およびその製造方法を提供することができる。
本発明に従う代表的な繊維状炭素ナノ構造体分散液の製造方法において使用し得る分散システムの概略構成を示す図である。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
ここで、本発明の炭素膜は、本発明に係る炭素膜の製造方法を用いて製造することができる。また、本発明の繊維状炭素ナノ構造体分散液は、本発明に係る繊維状炭素ナノ構造体分散液の製造方法を用いて製造することができ、本発明の炭素膜を製造するのに用いることができる。更に、本発明の繊維状炭素ナノ構造体分散液は、本発明に係る炭素膜の製造方法における繊維状炭素ナノ構造体分散液として用いることができる。
(炭素膜)
本発明の炭素膜は、60度における膜表面の光沢度が、2以上500以下であることを特徴とする。このように、炭素膜の膜表面の60度における光沢度を2以上500以下とすることにより、炭素膜の導電性を高いものとすることができる。ここで、表面の60度における光沢度が2以上500以下である炭素膜が導電性に優れる理由は、明らかではないが、上述した範囲の光沢度を有する炭素膜は、金属に近い性質を有しているところ、このような性質は、炭素材料同士が互いに密に且つ均一に絡まり合って微細な網目状構造を形成することにより達成されるものであり、結果として導電性の向上も達成されていると推察される。
同様の観点から、本発明の炭素膜は、60度における膜表面の光沢度が、4以上であることが好ましく、10以上であることがより好ましく、15以上であることが更に好ましい。また、本発明の炭素膜は、60度における膜表面の光沢度が500以下であり、また、必要に応じて、60度における膜表面の光沢度を200以下、150以下、40以下、30以下とすることができる。
なお、炭素膜の光沢度は、JIS Z8741に準拠し、入射角度60度の条件で測定することができる。また、炭素膜の光沢度は、炭素膜の形成に使用する炭素材料の種類および量、並びに、炭素膜の製造に使用する分散液の製造方法を調整することなどにより調節することができる。
本発明の炭素膜は、表面の光沢度が上述した範囲内である限り、任意の炭素材料を含んでもよいが、その中でも、繊維状炭素材料、特に繊維状炭素ナノ構造体を含むことが好ましい。炭素膜が繊維状炭素ナノ構造体を含んでいれば、表面の光沢度がより高くなり、導電性を一層向上させることができる。
<繊維状炭素ナノ構造体>
そして、繊維状炭素ナノ構造体としては、特に限定されることなく、例えば、カーボンナノチューブ(CNT)、気相成長炭素繊維などを用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
中でも、繊維状炭素ナノ構造体としては、CNTを含む繊維状炭素ナノ構造体を用いることがより好ましい。CNTを含む繊維状炭素ナノ構造体を使用すれば、得られる炭素膜の導電性および自立性を高めることができる。
ここで、繊維状炭素ナノ構造体として好適に使用し得る、CNTを含む繊維状炭素ナノ構造体は、CNTのみからなるものであってもよいし、CNTと、CNT以外の繊維状炭素ナノ構造体との混合物であってもよい。
なお、繊維状炭素ナノ構造体中のCNTとしては、特に限定されることなく、単層カーボンナノチューブおよび/または多層カーボンナノチューブを用いることができるが、CNTは、単層から5層までのカーボンナノチューブであることが好ましく、単層カーボンナノチューブであることがより好ましい。単層カーボンナノチューブを使用すれば、多層カーボンナノチューブを使用した場合と比較し、炭素膜の自立性を更に向上させることができる。
また、繊維状炭素ナノ構造体としては、平均直径(Av)に対する、直径の標準偏差(σ)に3を乗じた値(3σ)の比(3σ/Av)が0.20超0.60未満の炭素ナノ構造体を用いることが好ましく、3σ/Avが0.25超の炭素ナノ構造体を用いることがより好ましく、3σ/Avが0.50超の炭素ナノ構造体を用いることが更に好ましい。3σ/Avが0.20超0.60未満の繊維状炭素ナノ構造体を使用すれば、得られる炭素膜の強度および自立性を更に高めることができる。
なお、「繊維状炭素ナノ構造体の平均直径(Av)」および「繊維状炭素ナノ構造体の直径の標準偏差(σ:標本標準偏差)」は、それぞれ、透過型電子顕微鏡を用いて無作為に選択した繊維状炭素ナノ構造体100本の直径(外径)を測定して求めることができる。そして、繊維状炭素ナノ構造体の平均直径(Av)および標準偏差(σ)は、繊維状炭素ナノ構造体の製造方法や製造条件を変更することにより調整してもよいし、異なる製法で得られた繊維状炭素ナノ構造体を複数種類組み合わせることにより調整してもよい。
そして、繊維状炭素ナノ構造体としては、前述のようにして測定した直径を横軸に、その頻度を縦軸に取ってプロットし、ガウシアンで近似した際に、正規分布を取るものが通常使用される。
更に、繊維状炭素ナノ構造体は、ラマン分光法を用いて評価した際に、Radial Breathing Mode(RBM)のピークを有することが好ましい。なお、三層以上の多層カーボンナノチューブのみからなる繊維状炭素ナノ構造体のラマンスペクトルには、RBMが存在しない。
また、繊維状炭素ナノ構造体は、ラマンスペクトルにおけるDバンドピーク強度に対するGバンドピーク強度の比(G/D比)が1以上20以下であることが好ましい。G/D比が1以上20以下であれば、得られる炭素膜の強度および自立性を更に高めることができる。
更に、繊維状炭素ナノ構造体の平均直径(Av)は、0.5nm以上であることが好ましく、1nm以上であることが更に好ましく、15nm以下であることが好ましく、10nm以下であることが更に好ましい。繊維状炭素ナノ構造体の平均直径(Av)が0.5nm以上であれば、繊維状炭素ナノ構造体の凝集を抑制し、繊維状炭素ナノ構造体分散液を用いて炭素膜を製造する場合における当該分散液中での繊維状炭素ナノ構造体の分散性を高めることができる。また、繊維状炭素ナノ構造体の平均直径(Av)が15nm以下であれば、得られる炭素膜の強度を十分に高めることができる。従って、繊維状炭素ナノ構造体の平均直径(Av)を上記範囲内とすれば、得られる炭素膜の強度および自立性を更に高めることができる。
また、繊維状炭素ナノ構造体は、合成時における構造体の平均長さが100μm以上5000μm以下であることが好ましい。なお、合成時の構造体の長さが長いほど、分散時に破断や切断などの損傷が発生し易いので、合成時の構造体の平均長さは5000μm以下であることが好ましい。
更に、繊維状炭素ナノ構造体のBET比表面積は、400m/g以上であることが好ましく、800m/g以上であることがより好ましく、2500m/g以下であることが好ましく、1200m/g以下であることがより好ましい。繊維状炭素ナノ構造体のBET比表面積が400m/g以上であれば、得られる炭素膜の強度および自立性を更に高めることができる。また、繊維状炭素ナノ構造体のBET比表面積が2500m/g以下であれば、繊維状炭素ナノ構造体分散液を用いて炭素膜を製造する場合における当該分散液中での繊維状炭素ナノ構造体の分散性を高めることができる。
なお、本発明において、「BET比表面積」とは、BET法を用いて測定した窒素吸着比表面積を指す。
ここで、上述した繊維状炭素ナノ構造体は、後述のスーパーグロース法によれば、カーボンナノチューブ成長用の触媒層を表面に有する基材上に、基材に略垂直な方向に配向した集合体(配向集合体)として得られるが、当該集合体としての、繊維状炭素ナノ構造体の質量密度は、0.002g/cm以上0.2g/cm以下であることが好ましい。質量密度が0.2g/cm以下であれば、液中での繊維状炭素ナノ構造体同士の結びつきが弱くなるので、繊維状炭素ナノ構造体分散液を用いて炭素膜を製造する場合に、当該分散液中で繊維状炭素ナノ構造体を均質に分散させることができる。また、質量密度が0.002g/cm以上であれば、繊維状炭素ナノ構造体の一体性を向上させ、バラけることを抑制できるため取り扱いが容易になる。
更に、繊維状炭素ナノ構造体は、複数の微小孔を有することが好ましい。繊維状炭素ナノ構造体は、中でも、孔径が2nmよりも小さいマイクロ孔を有するのが好ましく、その存在量は、下記の方法で求めたマイクロ孔容積で、好ましくは0.40mL/g以上、より好ましくは0.43mL/g以上、更に好ましくは0.45mL/g以上であり、上限としては、通常、0.65mL/g程度である。繊維状炭素ナノ構造体が上記のようなマイクロ孔を有することで、液中での繊維状炭素ナノ構造体の凝集が抑制され、得られる炭素膜の強度および自立性を更に高めることができる。なお、マイクロ孔容積は、例えば、繊維状炭素ナノ構造体の調製方法および調製条件を適宜変更することで調整することができる。
ここで、「マイクロ孔容積(Vp)」は、繊維状炭素ナノ構造体の液体窒素温度(77K)での窒素吸着等温線を測定し、相対圧P/P0=0.19における窒素吸着量をVとして、式(I):Vp=(V/22414)×(M/ρ)より、算出することができる。なお、Pは吸着平衡時の測定圧力、P0は測定時の液体窒素の飽和蒸気圧であり、式(I)中、Mは吸着質(窒素)の分子量28.010、ρは吸着質(窒素)の77Kにおける密度0.808g/cmである。マイクロ孔容積は、例えば、「BELSORP(登録商標)−mini」(日本ベル(株)製)を使用して求めることができる。
また、繊維状炭素ナノ構造体は、吸着等温線から得られるt−プロットが上に凸な形状を示すことが好ましい。中でも、繊維状炭素ナノ構造体がCNTを含み、当該CNTの開口処理が施されておらず、t−プロットが上に凸な形状を示すことがより好ましい。このようなt−プロットが上に凸な形状を示す繊維状炭素ナノ構造体を含むことにより、炭素膜の導電性をより優れたものとすることができる。
なお、「t−プロット」は、窒素ガス吸着法により測定された繊維状炭素ナノ構造体の吸着等温線において、相対圧を窒素ガス吸着層の平均厚みt(nm)に変換することにより得ることができる。すなわち、窒素ガス吸着層の平均厚みtを相対圧P/P0に対してプロットした、既知の標準等温線から、相対圧に対応する窒素ガス吸着層の平均厚みtを求めて上記変換を行うことにより、繊維状炭素ナノ構造体のt−プロットが得られる(de Boerらによるt−プロット法)。
ここで、表面に細孔を有する物質では、窒素ガス吸着層の成長は、次の(1)〜(3)の過程に分類される。そして、下記の(1)〜(3)の過程によって、t−プロットの傾きに変化が生じる。
(1)全表面への窒素分子の単分子吸着層形成過程
(2)多分子吸着層形成とそれに伴う細孔内での毛管凝縮充填過程
(3)細孔が窒素によって満たされた見かけ上の非多孔性表面への多分子吸着層形成過程
そして、上に凸な形状を示すt−プロットは、窒素ガス吸着層の平均厚みtが小さい領域では、原点を通る直線上にプロットが位置するのに対し、tが大きくなると、プロットが当該直線から下にずれた位置となる。かかるt−プロットの形状を有する繊維状炭素ナノ構造体は、繊維状炭素ナノ構造体の全比表面積に対する内部比表面積の割合が大きく、繊維状炭素ナノ構造体を構成する炭素ナノ構造体に多数の開口が形成されていることを示している。
なお、繊維状炭素ナノ構造体のt−プロットの屈曲点は、0.2≦t(nm)≦1.5を満たす範囲にあることが好ましく、0.45≦t(nm)≦1.5の範囲にあることがより好ましく、0.55≦t(nm)≦1.0の範囲にあることが更に好ましい。
なお、「屈曲点の位置」は、前述した(1)の過程の近似直線Aと、前述した(3)の過程の近似直線Bとの交点である。
更に、繊維状炭素ナノ構造体は、t−プロットから得られる全比表面積S1に対する内部比表面積S2の比(S2/S1)が0.05以上0.30以下であるのが好ましい。
また、繊維状炭素ナノ構造体の全比表面積S1および内部比表面積S2は、特に限定されないが、個別には、S1は、400m/g以上2500m/g以下であることが好ましく、800m/g以上1200m/g以下であることが更に好ましい。一方、S2は、30m/g以上540m/g以下であることが好ましい。
ここで、繊維状炭素ナノ構造体の全比表面積S1および内部比表面積S2は、そのt−プロットから求めることができる。具体的には、まず、(1)の過程の近似直線の傾きから全比表面積S1を、(3)の過程の近似直線の傾きから外部比表面積S3を、それぞれ求めることができる。そして、全比表面積S1から外部比表面積S3を差し引くことにより、内部比表面積S2を算出することができる。
因みに、繊維状炭素ナノ構造体の吸着等温線の測定、t−プロットの作成、および、t−プロットの解析に基づく全比表面積S1と内部比表面積S2との算出は、例えば、市販の測定装置である「BELSORP(登録商標)−mini」(日本ベル(株)製)を用いて行うことができる。
そして、上述した繊維状炭素ナノ構造体は、例えば、カーボンナノチューブ製造用の触媒層を表面に有する基材上に、原料化合物およびキャリアガスを供給して、化学的気相成長法(CVD法)によりCNTを合成する際に、系内に微量の酸化剤(触媒賦活物質)を存在させることで、触媒層の触媒活性を飛躍的に向上させるという方法(スーパーグロース法;国際公開第2006/011655号参照)に準じて、効率的に製造することができる。なお、以下では、スーパーグロース法により得られる繊維状炭素ナノ構造体としてのカーボンナノチューブを「SGCNT」と称することがある。
なお、スーパーグロース法により製造した繊維状炭素ナノ構造体は、SGCNTのみから構成されていてもよいし、SGCNTと、非円筒形状の炭素ナノ構造体とから構成されていてもよい。具体的には、繊維状炭素ナノ構造体には、内壁同士が近接または接着したテープ状部分を全長に亘って有する単層または多層の扁平筒状の炭素ナノ構造体(以下、「グラフェンナノテープ(GNT)」と称することがある。)が含まれていてもよい。
ここで、GNTは、その合成時から内壁同士が近接または接着したテープ状部分が全長に亘って形成されており、炭素の六員環ネットワークが扁平筒状に形成された物質であると推定される。そして、GNTの形状が扁平筒状であり、かつ、GNT中に内壁同士が近接または接着したテープ状部分が存在していることは、例えば、GNTとフラーレン(C60)とを石英管に密封し、減圧下で加熱処理(フラーレン挿入処理)して得られるフラーレン挿入GNTを透過型電子顕微鏡(TEM)で観察すると、GNT中にフラーレンが挿入されない部分(テープ状部分)が存在していることから確認することができる。
そして、GNTの形状は、幅方向中央部にテープ状部分を有する形状であることが好ましく、延在方向(軸線方向)に直行する断面の形状が、断面長手方向の両端部近傍における、断面長手方向に直交する方向の最大寸法が、いずれも、断面長手方向の中央部近傍における、断面長手方向に直交する方向の最大寸法よりも大きい形状であることがより好ましく、ダンベル状であることが特に好ましい。
ここで、GNTの断面形状において、「断面長手方向の中央部近傍」とは、断面の長手中心線(断面の長手方向中心を通り、長手方向線に直交する直線)から、断面の長手方向幅の30%以内の領域をいい、「断面長手方向の端部近傍」とは、「断面長手方向の中央部近傍」の長手方向外側の領域をいう。
なお、非円筒形状の炭素ナノ構造体としてGNTを含む繊維状炭素ナノ構造体は、触媒層を表面に有する基材を用いてスーパーグロース法によりCNTを合成する際に、触媒層を表面に有する基材(以下、「触媒基材」と称することがある。)を所定の方法で形成することにより、得ることができる。具体的には、GNTを含む繊維状炭素ナノ構造体は、アルミニウム化合物を含む塗工液Aを基材上に塗布し、塗布した塗工液Aを乾燥して基材上にアルミニウム薄膜(触媒担持層)を形成した後、アルミニウム薄膜の上に、鉄化合物を含む塗工液Bを塗布し、塗布した塗工液Bを温度50℃以下で乾燥してアルミニウム薄膜上に鉄薄膜(触媒層)を形成することで得た触媒基材を用いてスーパーグロース法によりCNTを合成することで得ることができる。
<炭素膜の組成および性状>
ここで、上述した炭素膜は、所定範囲の光沢度以外に、以下の組成および性状を有していることが好ましい。
[繊維状炭素ナノ構造体の含有量]
本発明の炭素膜は、75質量%以上が繊維状炭素ナノ構造体で構成されていることが好ましく、製造時に不可避的に混入する不純物以外の成分を含まないことがより好ましい。繊維状炭素ナノ構造体の含有量が75質量%以上であれば、繊維状炭素ナノ構造体の特性を良好に発揮させ、導電性などの特性を十分に高めることができるからである。同様の観点から、本発明の炭素膜は、75質量%以上がCNTで構成されていることが好ましい。
[密度]
更に、本発明の炭素膜の密度は、0.4g/cm以上であることが好ましく、0.6g/cm以上であることがより好ましく、また、1.0g/cm以下であることが好ましい。
なお、本発明の炭素膜の密度は、炭素膜の質量、面積および厚さを測定し、炭素膜の質量を体積で割って求めることができる。
[自立性]
更に、本発明の炭素膜は、支持体が存在していなくとも膜としての形状を保つことができる自立膜であることが好ましい。具体的には、本発明の炭素膜は、厚さが10nm〜3μm、面積が1mm〜100cmのサイズにおいて支持体無しで膜としての形状を保つことがより好ましい。
(炭素膜の用途)
本発明の炭素膜は、太陽電池やタッチパネルなどの導電膜として特に好適に用いることができる。
なお、本発明の炭素膜は、成膜基材上に形成した状態のままで、或いは、成膜基材から剥離してから使用することができる。また、本発明の炭素膜は、任意にオーバーコート層等の既知の機能層を積層してから各種製品に使用することもできる。ここで、オーバーコート層等の機能層の炭素膜上への積層は、既知の手法を用いて行なうことができる。
<タッチパネル>
具体的には、本発明の炭素膜は、透明基板上に形成されて静電容量式タッチパネルなどのタッチパネルのタッチセンサーを構成する導電層として好適に用いることができる。
<太陽電池>
また、本発明の炭素膜は、色素増感型太陽電池などの太陽電池の電極を構成する導電層や触媒層として用いることができる。より具体的には、本発明の炭素膜は、色素増感型太陽電池の光電極を構成する導電層や、色素増感型太陽電池の対向電極(触媒電極)を構成する導電層および/または触媒層として用いることができる。
(炭素膜の製造方法)
本発明に係る炭素膜の製造方法は、繊維状炭素ナノ構造体と溶媒とを含有する繊維状炭素ナノ構造体分散液から溶媒を除去して、炭素膜を成膜する工程(成膜工程)を含むことを大きな特徴の一つとする。そして、本発明に係る炭素膜の製造方法によれば、導電性に優れる、上述した本発明の炭素膜が得られる。
<繊維状炭素ナノ構造体分散液>
本発明に係る炭素膜の製造方法に用いられる繊維状炭素ナノ構造体分散液は、繊維状炭素ナノ構造体と溶媒とを含有する混合物である。
なお、繊維状炭素ナノ構造体分散液としては、表面の光沢度が高く導電性に優れる炭素膜を容易に得る観点から、後述する本発明に係る繊維状炭素ナノ構造体分散液の製造方法により製造した繊維状炭素ナノ構造体分散液を用いることが好ましい。
[繊維状炭素ナノ構造体]
ここで、繊維状炭素ナノ構造体分散液に含有される繊維状炭素ナノ構造体としては、特に限定されることなく、本発明の炭素膜の説明で既述した繊維状炭素ナノ構造体を用いることができる。特に、本発明に係る炭素膜の製造方法において用いられる繊維状炭素ナノ構造体は、吸着等温線から得られるt−プロットが上に凸な形状を示すことが好ましい。このような繊維状炭素ナノ構造体を用いることにより、導電性により優れる炭素膜を得ることができる。
なお、「t−プロット」の詳細は、本発明の炭素膜の説明で既述した通りである。
[溶媒]
また、繊維状炭素ナノ構造体分散液に含有される溶媒(繊維状炭素ナノ構造体の分散媒)としては、特に限定されることなく、例えば、水、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、アミルアルコールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル類、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド系極性有機溶媒、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、オルトジクロロベンゼン、パラジクロロベンゼンなどの芳香族炭化水素類などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
[繊維状炭素ナノ構造体分散液の性状]
ここで、本発明に係る炭素膜の製造方法に用いられる繊維状炭素ナノ構造体分散液は、当該分散液の吸光度をAとし、当該分散液を10000Gで1時間の条件で遠心分離した後の上澄み液の吸光度をBとしたとき、B/A×100で求められる分散率(%)が、80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましく、90%以上であることが更に好ましく、95%以上であることが特に好ましい。このように、B/A×100で求められる分散率(%)が80%以上であれば、分散液中での繊維状炭素ナノ構造体の分散性が極めて高く、このような分散性に優れた繊維状炭素ナノ構造体を用いて炭素膜を形成すれば、導電性に優れる炭素膜を得ることができる。
なお、吸光度は、例えば、光路長:1mm、波長:500nmとして測定することができる。
<成膜工程>
本発明に係る炭素膜の製造方法における成膜工程では、上述した繊維状炭素ナノ構造体分散液から溶媒を除去して、炭素膜を成膜する。具体的には、成膜工程では、例えば下記(A)および(B)の何れかの方法を用いて、繊維状炭素ナノ構造体分散液から溶媒を除去し、炭素膜を成膜する。
(A)繊維状炭素ナノ構造体分散液を成膜基材上に塗布した後、塗布した繊維状炭素ナノ構造体分散液を乾燥させる方法。
(B)多孔質の成膜基材を用いて繊維状炭素ナノ構造体分散液をろ過し、得られたろ過物を乾燥させる方法。
[成膜基材]
ここで、成膜基材としては、特に限定されることなく、製造する炭素膜の用途に応じて既知の基材を用いることができる。
具体的には、上記方法(A)において繊維状炭素ナノ構造体分散液を塗布する成膜基材としては、樹脂基材、ガラス基材などを挙げることができる。ここで、樹脂基材としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、アラミド、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ乳酸、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、脂環式アクリル樹脂、シクロオレフィン樹脂、トリアセチルセルロースなどよりなる基材を挙げることができる。また、ガラス基材としては、通常のソーダガラスよりなる基材を挙げることができる。
また、上記方法(B)において繊維状炭素ナノ構造体分散液をろ過する成膜基材としては、ろ紙や、セルロース、ニトロセルロース、アルミナ等よりなる多孔質シートを挙げることができる。
[塗布]
上記方法(A)において繊維状炭素ナノ構造体分散液を成膜基材上に塗布する方法としては、公知の塗布方法を採用できる。具体的には、塗布方法としては、ディッピング法、ロールコート法、グラビアコート法、ナイフコート法、エアナイフコート法、ロールナイフコート法、ダイコート法、スクリーン印刷法、スプレーコート法、グラビアオフセット法などを用いることができる。
[ろ過]
上記方法(B)において成膜基材を用いて繊維状炭素ナノ構造体分散液をろ過する方法としては、公知のろ過方法を採用できる。具体的には、ろ過方法としては、自然ろ過、減圧ろ過、加圧ろ過、遠心ろ過などを用いることができる。
[乾燥]
上記方法(A)において成膜基材上に塗布した繊維状炭素ナノ構造体分散液または上記方法(B)において得られたろ過物を乾燥する方法としては、公知の乾燥方法を採用できる。乾燥方法としては、熱風乾燥法、真空乾燥法、熱ロール乾燥法、赤外線照射法等が挙げられる。乾燥温度は、特に限定されないが、通常、室温〜200℃、乾燥時間は、特に限定されないが、通常、0.1〜150分である。
<炭素膜の後処理>
ここで、上述のようにして成膜した炭素膜は、通常、繊維状炭素ナノ構造体分散液に含まれていた成分を繊維状炭素ナノ構造体分散液と同様の比率で含有している。そこで、本発明に係る炭素膜の製造方法において、繊維状炭素ナノ構造体分散液に分散剤を配合した場合には、任意に、成膜工程において成膜した炭素膜を洗浄して炭素膜から分散剤を除去してもよい。炭素膜から分散剤を除去すれば、炭素膜の導電性などの特性を更に高めることができる。
なお、炭素膜の洗浄は、分散剤を溶解可能な溶媒と接触させ、炭素膜中の分散剤を溶媒中に溶出させることにより行なうことができる。そして、炭素膜中の分散剤を溶解可能な溶媒としては、特に限定されることなく、繊維状炭素ナノ構造体分散液の溶媒として使用し得る前述した溶媒、好ましくは繊維状炭素ナノ構造体分散液の溶媒と同じものを使用することができる。また、炭素膜と溶媒との接触は、炭素膜の溶媒中へ浸漬、または、溶媒の炭素膜への塗布により行なうことができる。更に、洗浄後の炭素膜は、既知の方法を用いて乾燥させることができる。
また、本発明に係る炭素膜の製造方法では、任意に、成膜工程において成膜した炭素膜をプレス加工して密度を更に高めてもよい。但し、繊維状炭素ナノ構造体の損傷または破壊による特性低下を抑制する観点からは、プレス加工する際のプレス圧力は3MPa未満であることが好ましく、プレス加工を行なわないことがより好ましい。
(繊維状炭素ナノ構造体分散液)
本発明の繊維状炭素ナノ構造体分散液は、繊維状炭素ナノ構造体と溶媒とを含有し、更に必要に応じて分散剤を含有する。そして、本発明の繊維状炭素ナノ構造体分散液は、当該分散液の吸光度をAとし、当該分散液を10000Gで1時間の条件で遠心分離した後の上澄み液の吸光度をBとしたとき、B/A×100で求められる分散率(%)が、80%以上であることを特徴とし、85%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、95%以上であることが更に好ましい。このように、B/A×100で求められる分散率(%)が80%以上であれば、分散液中での繊維状炭素ナノ構造体の分散性が極めて高く、このような分散性に優れた繊維状炭素ナノ構造体を用いて炭素膜を形成すれば、導電性に優れる炭素膜を得ることができる。
なお、吸光度は、例えば、光路長:1mm、波長:500nmとして測定することができる。
<繊維状炭素ナノ構造体>
繊維状炭素ナノ構造体分散液に含まれる繊維状炭素ナノ構造体としては、特に限定されることなく、本発明の炭素膜の説明で既述した繊維状炭素ナノ構造体を用いることができる。特に、繊維状炭素ナノ構造体分散液に含まれる繊維状炭素ナノ構造体は、吸着等温線から得られるt−プロットが上に凸な形状を示すことが好ましい。このような繊維状炭素ナノ構造体を繊維状炭素ナノ構造体分散液に用いることにより、導電性により優れる炭素膜を得ることができる。
なお、「t−プロット」の詳細は、本発明の炭素膜の説明で既述した通りである。
<溶媒>
また、繊維状炭素ナノ構造体分散液に含まれる溶媒(繊維状炭素ナノ構造体の分散媒)としては、特に限定されることなく、本発明に係る炭素膜の製造方法の説明で既述した溶媒を用いることができる。
<その他の添加剤>
なお、本発明の繊維状炭素ナノ構造体分散液には、製造する炭素膜の用途に応じて、分散剤、充填材、安定化剤、着色剤、電荷調整剤、滑剤などの既知の添加剤を配合してもよい。特に、本発明の繊維状炭素ナノ構造体分散液は、繊維状炭素ナノ構造体の分散性を高めて自立性および導電性の高い炭素膜を得る観点から、分散剤を含有していることが好ましい。
[分散剤]
そして、繊維状炭素ナノ構造体分散液が好適に含有し得る分散剤としては、繊維状炭素ナノ構造体を分散可能であり、繊維状炭素ナノ構造体を分散させる溶媒に溶解可能であれば、特に限定されることなく、界面活性剤、合成高分子または天然高分子を用いることができる。
ここで、界面活性剤としては、ドデシルスルホン酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム、コール酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどが挙げられる。
また、合成高分子としては、例えば、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、ポリカーボネートジオール、ポリビニルアルコール、部分けん化ポリビニルアルコール、アセトアセチル基変性ポリビニルアルコール、アセタール基変性ポリビニルアルコール、ブチラール基変性ポリビニルアルコール、シラノール基変性ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−ビニルアルコール−酢酸ビニル共重合樹脂、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、アクリル系樹脂、エポキシ樹脂、変性エポキシ系樹脂、フェノキシ樹脂、変性フェノキシ系樹脂、フェノキシエーテル樹脂、フェノキシエステル樹脂、フッ素系樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、フェノール樹脂、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドンなどが挙げられる。
更に、天然高分子としては、例えば、多糖類であるデンプン、プルラン、デキストラン、デキストリン、グアーガム、キサンタンガム、アミロース、アミロペクチン、アルギン酸、アラビアガム、カラギーナン、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、カードラン、キチン、キトサン、セルロース、並びに、その塩または誘導体が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
そして、繊維状炭素ナノ構造体分散液中の分散剤の濃度は、0.1質量%以上であることが好ましく、0.2質量%以上であることがより好ましく、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。分散剤の濃度が0.1質量%以上10質量%以下であれば、分散剤が不純物として挙動する影響を抑えつつ、繊維状炭素ナノ構造体の分散性を高めて自立性および導電性に優れる炭素膜を得ることができる。
<繊維状炭素ナノ構造体分散液中の繊維状炭素ナノ構造体の濃度>
また、繊維状炭素ナノ構造体分散液中の繊維状炭素ナノ構造体の濃度は、0.005質量%以上であることが好ましく、0.01質量%以上であることがより好ましく、5質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがより好ましい。繊維状炭素ナノ構造体の濃度が0.005質量%以上であれば、炭素膜を効率的に製造することができる。また、繊維状炭素ナノ構造体の濃度が5質量%以下であれば、繊維状炭素ナノ構造体の凝集を抑制して、自立性に優れる炭素膜を得ることができる。
<繊維状炭素ナノ構造体分散液の粘度>
更に、繊維状炭素ナノ構造体分散液の粘度は、0.001Pa・s以上であることが好ましく、0.01Pa・s以上であることが更に好ましく、また、0.8Pa・s以下であることが好ましく、0.6Pa・s以下であることが更に好ましい。繊維状炭素ナノ構造体分散液の粘度が0.001Pa・s以上0.8Pa・s以下であれば、炭素膜を製造する際に繊維状炭素ナノ構造体を良好に成膜して、得られる炭素膜の導電性、熱伝導性および機械的特性などの特性を十分に高めることができると共に、炭素膜を容易に製造することができるからである。なお、繊維状炭素ナノ構造体分散液の粘度は、例えば、繊維状炭素ナノ構造体および分散剤の配合量や種類を変更することにより調整することができる。
ここで、本発明において、繊維状炭素ナノ構造体分散液の粘度は、B型粘度計を使用し、JIS K7117−1に準拠して、温度:23℃、ローター:M4、回転数:60rpmの条件下で測定することができる。
(繊維状炭素ナノ構造体分散液の製造方法)
本発明に係る繊維状炭素ナノ構造体分散液の製造方法では、溶媒中に繊維状炭素ナノ構造体を添加してなる粗分散液に対し、所定の分散処理を施し、繊維状炭素ナノ構造体分散液を得る。具体的には、本発明に係る繊維状炭素ナノ構造体分散液の製造方法は、溶媒中に繊維状炭素ナノ構造体を添加してなる粗分散液を圧力を加えることにより細管流路に送り込み、粗分散液にせん断力を与えて繊維状炭素ナノ構造体を分散させる分散処理を実施して、繊維状炭素ナノ構造体分散液を得る工程(分散工程)を含むことを大きな特徴の一つとする。この分散工程における分散処理では、粗分散液を加圧し、細管流路に送り込んで粗分散液にせん断力を与えることにより、繊維状炭素ナノ構造体の損傷の発生を抑制しつつ、繊維状炭素ナノ構造体を分散させる。また、この分散処理における粗分散液の加圧および送り込みによる粗分散液へのせん断力の付与は、例えば、高圧ポンプ等で加圧した粗分散液をノズルから噴出させる等の任意の方法により、細管流路内で粗分散液の高速流を発生させることにより行うことができる。
なお、本発明に係る繊維状炭素ナノ構造体分散液の製造方法の分散工程では、上述の分散処理を実施した後に、得られた分散液を遠心分離し、繊維状炭素ナノ構造体の一部を沈殿させる処理(遠心分離処理)と、遠心分離した分散液から上澄み液を分取する処理(分取処理)とを実施して、当該上澄み液を繊維状炭素ナノ構造体分散液として得てもよい。
<粗分散液>
本発明に係る繊維状炭素ナノ構造体分散液の製造方法に用いられる粗分散液は、溶媒中に繊維状炭素ナノ構造体を添加し、任意にミキサー等を用いて常圧下で混合して調製することができる。なお、粗分散液の調製は、できるだけ繊維状炭素ナノ構造体に損傷を与えない処理方法を用いて行うことが好ましい。ここで、溶媒としては、特に限定されることなく、本発明に係る炭素膜の製造方法の説明で既述した溶媒を用いることができ、繊維状炭素ナノ構造体としては、特に限定されることなく、本発明の炭素膜の説明で既述した繊維状炭素ナノ構造体を用いることができる。
そして、粗分散液には、任意に、分散剤などの添加剤を含有させてもよい。
<細管流路>
ここで、粗分散液を送り込む細管流路は、単一の細管流路であっても、下流の任意の位置に合流部を有する複数の細管流路であってもよい。但し、粗分散液同士をより効果的に衝突させてせん断力を付与する観点から、粗分散液を送り込む細管流路は、下流の任意の位置に合流部を有する複数の細管流路であることが好ましい。
また、粗分散液を送り込む細管流路の直径としては、特に限定されないが、粗分散液が目詰まりすることなく粗分散液に高速流せん断を効果的に付与する観点から、50μm以上500μm以下であることが好ましく、50μm以上300μm以下であることがより好ましく、50μm以上200μm以下であることが更に好ましい。
ここで、本発明に係る繊維状炭素ナノ構造体分散液の製造方法として、具体的には、本発明に係る第1の繊維状炭素ナノ構造体分散液の製造方法(以下、単に「第1の製造方法」と称することがある。)および第2の繊維状炭素ナノ構造体分散液の製造方法(以下、単に「第2の製造方法」と称することがある。)を挙げることができる。
以下、第1の製造方法および第2の製造方法について、順次説明する。
<第1の製造方法>
本発明に係る第1の製造方法は、上述の分散処理が、粗分散液に加える圧力を60〜250MPaとした第1分散処理と、第1分散処理後の、粗分散液に加える圧力を5〜30MPaとした第2分散処理とを含み、第1分散処理における平均分散処理回数θが5〜30であり、第2分散処理における平均分散処理回数θが1〜20であることを特徴とする。
[分散処理]
第1の製造方法における分散処理では、粗分散液を、圧力を加えることにより細管流路に送り込み、粗分散液にせん断力を与えて繊維状炭素ナノ構造体を分散させる。この分散処理は、例えば、細管流路を備える湿式ジェットミルを用いて実施することができる。この湿式ジェットミルでは、液体に高エネルギーを付与した際、水に生じた真空の気泡が破裂すること(いわゆるキャビテーション効果)により衝撃波を生じさせることができるとともに、細管流路内で、粗分散液同士の衝突衝撃、および/または粗分散液と細管流路の流路壁との衝突衝撃を生じさせることができる。そして、上述した衝撃波や衝突衝撃により、粗分散液における繊維状炭素ナノ構造体の分散性を向上させることができる。
なお、粗分散液に圧力を加える方法としては、特に限定されることはなく、例えば、高圧ポンプにより粗分散液に圧力を加える方法や、湿式ジェットミルにおける細管流路の前段にピストン構造を有するシリンダを設け、粗分散液をシリンダの容量分だけ投入し、ピストンを所定の圧力で押し出す方法、を用いることができる。なお、後者に関しては、ピストンの押し出し操作を断続的かつ瞬間的に繰り返すことにより、実質上連続的に、粗分散液を細管流路に送り込むことができる。
湿式ジェットミルとしては、例えば、製品名「JN5」、「JN10」、「JN20」、「JN100」、「JN1000」(いずれも株式会社常光製)などが市販されている。但し、分散処理は、上述した製品以外の湿式ジェットミルを用いて実施してもよい。
また、第1の製造方法における分散処理では、具体的には、粗分散液を貯留する貯留タンクと、貯留タンク内の粗分散液が供給されるように接続された湿式ジェットミルと、湿式ジェットミルから流出した処理済み分散液を貯留タンクへと返送する返送ラインとを備える分散システムを用いることにより、粗分散液を繰り返し処理することができる。
そして、第1の製造方法では、粗分散液に加える圧力を60〜250MPaとした第1分散処理を、平均分散処理回数θが5〜30となるように実施し、その後、粗分散液に加える圧力を5〜30MPaとした第2分散処理を、平均分散処理回数θが1〜20となるように実施する。これにより、溶媒中に繊維状炭素ナノ構造体が高度に分散した繊維状炭素ナノ構造体分散液を得ることができる。
ここで、本発明において、分散処理における「平均分散処理回数θ」とは、粗分散液の総量に対する、分散処理において細管流路に送り込んだ粗分散液の量の比を指す。具体的には、単位時間あたりの細管流路に送り込む粗分散液の量をQ[L/h]、粗分散液全量をV[L]、処理時間をT[h]とすると、
平均分散処理回数θ=(Q[L/h]/V[L])×T[h]
として求めることができる。
なお、上述したように、第1分散処理および第2分散処理を含む分散処理を実施することで、溶媒中に繊維状炭素ナノ構造体が高度に分散した繊維状炭素ナノ構造体分散液が得られる理由は、明らかではないが、粗分散液に加える圧力を少なくとも2段階で変化させて分散処理を実施することにより、2段階の大きさのせん断力を粗分散液に与えることができ、結果として繊維状炭素ナノ構造体を高度かつ効率的に分散させることができるためであると推察される。
ここで、第1分散処理において粗分散液に加える圧力は、60〜250MPaとする限り、特に限定されないが、粗分散液にせん断力を効果的に与えて繊維状炭素ナノ構造体の分散性を更に向上させる観点からは、60〜200MPaとすることが好ましく、80〜150MPaとすることがより好ましい。
また、第1分散処理の平均分散処理回数θは、5〜30回とする限り、特に限定されないが、第2分散処理と組み合わせることによる繊維状炭素ナノ構造体の分散性の効果的な向上を図る観点からは、8〜28回とすることが好ましく、10〜25回とすることがより好ましい。
更に、第2分散処理において粗分散液に加える圧力は、5〜30MPaとする限り、特に限定されないが、粗分散液にせん断力を効果的に与えて繊維状炭素ナノ構造体の分散性を更に向上させる観点からは、10〜28MPaとすることが好ましく、15〜25MPaとすることがより好ましい。
そして、第2分散処理の平均分散処理回数θは、1〜20回とする限り、特に限定されないが、第1分散処理と組み合わせることによる繊維状炭素ナノ構造体の分散性の効果的な向上を図る観点からは、5〜15回とすることが好ましく、5〜10回とすることがより好ましい。
<第2の製造方法>
本発明に係る第2の製造方法は、上述の分散処理で、粗分散液に加える圧力を50〜250MPaとし、且つ、せん断力が与えられた粗分散液への背圧の負荷を行うとともに、せん断力が与えられた粗分散液の背圧を少なくとも2段階で降圧すること、ならびに、上述の分散処理における平均分散処理回数θが3〜20であることを特徴とする。
[分散処理]
第2の製造方法における分散処理では、粗分散液を、圧力を加えることにより細管流路に送り込み、粗分散液にせん断力を与えて繊維状炭素ナノ構造体を分散させ、その際、せん断力が与えられた粗分散液への背圧の負荷を行うとともに、当該粗分散液の背圧を降圧する。この分散処理は、例えば、図1に示すような構成の分散システム10を用いて実施することができる。但し、上述した分散システム10以外の分散システムを使用してもよい。
図1に示す分散システム10は、粗分散液を貯留するタンク1と、タンク1に貯留された粗分散液を加圧し、分散器3へと送る圧送手段2と、加圧された粗分散液中の繊維状炭素ナノ構造体を分散させる、細管流路を有する分散器3とを備えている。また、分散システム10は、分散器3で得た分散液の圧力(背圧)を多段階に分けて降圧する多段降圧器4を備えている。更に、分散システム10は、多段降圧器4で降圧された分散液をタンク1へと返送する返送ライン5と、多段降圧器4で降圧された分散液の流路を切り替える流路切り替え弁(三方弁)6とを備えている。
ここで、圧送手段2としては、特に限定されることなく、例えば、高圧ポンプや、分散器3の細管流路に接続可能なピストン構造を有するシリンダを用いることができる。なお、後者に関しては、粗分散液をシリンダの容量分だけ投入し、ピストンを所定の圧力で押し出す操作を断続的かつ瞬間的に繰り返すことにより、実質上連続的に、粗分散液を細管流路に送り込むことができる。
分散器3では、流入した高圧の粗分散液が、細管流路を通過することで、高流速の流体となって高速で流動し、その際にせん断力を受ける。その結果、粗分散液中の繊維状炭素ナノ構造体が良好に分散する。そして、終端部からは、流入した粗分散液の圧力よりも低い圧力(背圧)の分散液が流出する。
なお、せん断力が与えられた粗分散液への背圧は、粗分散液の流れに負荷をかけることで負荷することができ、例えば、後述する多段降圧器4を分散器3よりも下流側に配設することにより、せん断力が与えられた粗分散液に所望の背圧を負荷することができる。また、分散器3は、粗分散液を冷却するための熱交換器や冷却液供給機構を備えていてもよい。
ここで、この分散器3では、粗分散液にせん断力を与えて繊維状炭素ナノ構造体を分散させる際に背圧を負荷しているので、背圧を負荷しない場合と比較し、圧力降下に起因する液中での気泡の発生を抑制することができる。その結果、キャビテーション(気泡の発生および消滅)に起因した繊維状炭素ナノ構造体の損傷、特に、気泡が消滅する際の衝撃波に起因した繊維状炭素ナノ構造体の損傷を抑制することができる。また、繊維状炭素ナノ構造体への気泡の付着や、気泡の発生によるエネルギーロスを抑制して、均一かつ効率的に繊維状炭素ナノ構造体を分散させることができる。
なお、上述した分散器3では、繊維状炭素ナノ構造体のサイズに対し十分に大きな内径の細管流路を使用しているので、繊維状炭素ナノ構造体の含有量が多い高濃度の粗分散液(例えば、繊維状炭素ナノ構造体の濃度が0.5質量部以上である粗分散液)を用いた場合であっても、繊維状炭素ナノ構造体により流路が閉塞する虞が少ない。
ここで、分散処理において粗分散液に加える圧力は、50〜250MPaとする限り、特に限定されないが、粗分散液にせん断力を効果的に与えて繊維状炭素ナノ構造体の分散性を更に向上させる観点からは、60〜200MPaとすることが好ましく、80〜150MPaとすることがより好ましい。
また、分散処理の平均分散処理回数θは、3〜20回とする限り、特に限定されないが、繊維状炭素ナノ構造体の分散性の効果的な向上を図る観点からは、5〜18回とすることが好ましく、8〜15回とすることがより好ましい。
そして、第2の製造方法における分散処理では、せん断力が与えられた粗分散液の背圧を、少なくとも2段階で降圧する。この降圧は、例えば、図1における多段降圧器4により実施することができる。このように、せん断力が与えられた粗分散液の背圧を少なくとも2段階で降圧することにより、分散システム10の出口で繊維状炭素ナノ構造体分散液を大気圧に開放した際に、繊維状炭素ナノ構造体分散液中に気泡が発生するのを抑え、繊維状炭素ナノ構造体の損傷の発生を抑制することができる。ここで、繊維状炭素ナノ構造体分散液中での気泡の発生を十分に抑制し、繊維状炭素ナノ構造体の損傷の発生を抑制する観点からは、背圧は、繊維状炭素ナノ構造体分散液を大気圧中に開放した際に気泡が発生しない圧力まで低下させることが好ましい。
そして、最終的に多段降圧器4から排出された繊維状炭素ナノ構造体分散液は、流路切り替え弁(三方弁)6を用いて繊維状炭素ナノ構造体分散液の流路を分散システム10の出口側に切り替えることにより、回収することができる。なお、繊維状炭素ナノ構造体の分散が不十分な場合には、任意に、流路切り替え弁(三方弁)6を用いて繊維状炭素ナノ構造体分散液の流路を返送ライン5へと切り替え、繊維状炭素ナノ構造体分散液を循環させて再び分散処理を実施してもよい。
以上のような構成を有する分散システムとしては、例えば、製品名「BERYU SYSTEM PRO」(株式会社美粒製)として市販されている分散システムを用いることができる。そして、本発明に係る第2の製造方法は、当該分散システムの使用説明に従って適宜分散条件を設定して、実施することができる。
<遠心分離処理および分取処理>
なお、本発明に係る第1の製造方法及び第2の製造方法における分散工程では、分散処理を実施した後に、得られた分散液を遠心分離し、繊維状炭素ナノ構造体の一部を沈殿させる処理(遠心分離処理)と、遠心分離した分散液から上澄み液を分取する処理(分取処理)とを実施して、当該上澄み液を繊維状炭素ナノ構造体分散液として得てもよい。
[遠心分離処理]
分散処理を実施して得られた分散液の遠心分離は、特に限定されることなく、既知の遠心分離機を用いて行うことができる。
中でも、得られる上澄み液中に分散性に優れる繊維状炭素ナノ構造体を適度に残存させ、強度および自立性に優れる炭素膜を得る観点からは、繊維状炭素ナノ構造体分散液を遠心分離する際の遠心加速度は、2000G以上であることが好ましく、5000G以上であることがより好ましく、20000G以下であることが好ましく、15000G以下であることがより好ましい。
また、得られる上澄み液中に分散性に優れる繊維状炭素ナノ構造体を適度に残存させ、強度および自立性に優れる炭素膜を得る観点からは、繊維状炭素ナノ構造体分散液を遠心分離する際の遠心分離時間は、20分間以上であることが好ましく、30分間以上であることがより好ましく、120分間以下であることが好ましく、90分間以下であることがより好ましい。
[分取処理]
次に、遠心分離した分散液からの上澄み液の分取は、例えば、デカンテーションやピペッティングなどにより、沈殿層を残して上澄み液を回収することにより行うことができる。具体的には、例えば、遠心分離後の分散液の液面から5/6の深さまでの部分に存在する上澄み液を回収すればよい。
ここで、遠心分離後の分散液から分取した上澄み液は、遠心分離により沈殿しなかった繊維状炭素ナノ構造体を含んでいるので、B/A×100で求められる分散率(%)が高い。そして、この上澄み液を繊維状炭素ナノ構造体分散液として用いることで、より良好な光沢度を有する炭素膜、即ち導電性により優れる炭素膜を得ることができる。
以下、本発明について実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の説明において、量を表す「%」、「ppm」および「部」は、特に断らない限り、質量基準である。
実施例および比較例において、各種の測定は、以下の方法に従って行った。
<繊維状炭素ナノ構造体のBET比表面積>
全自動比表面積測定装置((株)マウンテック製、製品名「Macsorb(登録商標) HM model−1210」)専用のセルを、110℃、5hr以上の熱処理で十分乾燥させた後、繊維状炭素ナノ構造体20mgを秤量し、セル内に入れた。その後、セルを測定装置の所定の位置に備え付け、自動操作によりBET比表面積を測定した。なお、この装置の測定原理は、液体窒素の77Kでの吸着等温線を測定し、この吸着等温曲線から、BET(Brunauer−Emmett−Teller)法にて比表面積を測定する方法に従うものである。
<繊維状炭素ナノ構造体におけるt−プロット>
上述のBET比表面積の測定で得られた吸着等温線において、相対圧を窒素ガス吸着層の平均厚みt(nm)に変換することにより測定した。なお、t−プロットの測定原理は、de Boerらによるt−プロット法に従うものである。
<繊維状炭素ナノ構造体の平均直径(Av)>
0.1mgの繊維状炭素ナノ構造体および3mLのエタノールを、10mLスクリュー管瓶中に秤量し、超音波洗浄器(BRANSON社製、製品名「5510J−DTH」)にて、振動出力180W、温度10℃〜40℃、30分間の条件で、スクリュー管瓶ごと超音波処理を行い、繊維状炭素ナノ構造体をエタノール中に均一分散させ、分散液を得た。次に、得られた分散液50μLを、透過型電子顕微鏡用のマイクログリッド(応研商事株式会社製、製品名「マイクログリッド タイプA STEM 150 Cuグリッド」)に滴下した後、1時間以上静置し、更に、25℃で5時間以上真空乾燥し、マイクログリッドに繊維状炭素ナノ構造体を保持させた。次いで、マイクログリッドを透過型電子顕微鏡(株式会社トプコンテクノハウス製、製品名「EM−002B」)に設置し、150万倍の倍率で、繊維状炭素ナノ構造体の観察を行った。
なお、繊維状炭素ナノ構造体の観察は、マイクログリッドのランダムな位置で、10か所行った。そして、1か所あたり10本の繊維状炭素ナノ構造体をランダムに選択し、各々の直径を計測して、合計100本の平均値を繊維状炭素ナノ構造体の平均直径(Av)として算出した。
<吸光度>
分光光度計(日本分光(株)製、製品名「U−670」)を用い、専用の幅1mm液体用測定セルに分散液を入れ、波長500nmの光の吸光度を測定した。
<炭素膜の膜厚>
炭素膜の膜厚は、マイクロメータ((株)ミツトヨ製、製品名「293シリーズ MDH−25」)を用いて測定した。
<60度における膜表面の光沢度>
炭素膜を一辺約30mmの正方形となるように成形し、光沢度計((株)堀場製作所製、ハンディ光沢計グロスチェッカ、波長890nm)を用いることにより、60度における炭素膜の膜表面の光沢度を測定した。
<炭素膜の導電率>
炭素膜を一辺約30mmの正方形となるように成形した後、10mm×10mmの正方形状試験片を4個切り出し、測定サンプルとした。次いで、測定サンプルを絶縁ボードの上に固定し、測定サンプルの中心位置(縦5mm横5mmの位置)に、低抵抗率計(三菱化学アナリテック社製、製品名「ロレスターGX MCP−T700」、四端針プローブとしてPSPプローブを選択)のプローブを押し当て、10Vの電圧をかけて導電率を測定した。4個の測定サンプルの導電率を測定し、その平均値を、炭素膜の導電率とした。
(実施例1)
<繊維状炭素ナノ構造体の調製>
特許第4,621,896号公報に記載のスーパーグロース法に従い、以下の条件において、繊維状炭素ナノ構造体としてのSGCNT(CNT1)を合成した。
・原料炭素化合物:エチレン;供給速度50sccm
・雰囲気(ガス):ヘリウム/水素混合ガス;供給速度1000sccm
・圧力:1大気圧
・水蒸気添加量:300ppm
・反応温度:750℃
・反応時間:10分
・金属触媒:鉄薄膜(厚さ1nm)
・基板:シリコンウェハー。
得られたCNT1は、BET比表面積が1050m/gであり、t−プロットが上に凸の形状を示しており、ラマン分光光度計での測定において、単層カーボンナノチューブに特長的な100〜300cm−1の低周波数領域にラジアルブリージングモード(RBM)のスペクトルが観察された。また、CNT1は、平均直径(Av)が3.3nmであった。
<繊維状炭素ナノ構造体分散液の調製>
分散剤としてデオキシコール酸ナトリウム(DOC)を含む濃度0.5質量%の水溶液1000mLに対し、上述したCNT1を2.0g加え、粗分散液を得た。そして、このCNT1および分散剤を含む粗分散液を、直径200μmの細管流路部を有する高圧分散処理部と、当該高圧分散処理部に連結した多段圧力制御装置(多段降圧器)とを有する多段降圧型高圧ホモジナイザー(株式会社美粒製、製品名「BERYU SYSTEM PRO」)に充填し、断続的かつ瞬間的に120MPaの圧力を粗分散液に加えて粗分散液を細管流路に送り込み、分散処理を実施した。なお、この分散処理では、高圧ホモジナイザーから流出した処理済み分散液を再び高圧ホモジナイザーに返送した。そして、平均分散処理回数θが10となるように分散処理を継続し、繊維状炭素ナノ構造体分散液としてのCNT分散液1を得た。
得られたCNT分散液1の吸光度(A)を測定したところ、1.72であった。次いで、超遠心分離機(日立工機(株)製、製品名「himac CS150NX」)を使用し、10000Gで1時間の条件で、CNT分散液1を遠心分離した。遠心分離後の上澄み液の吸光度(B)を測定したところ、1.67であった。これらより、CNT分散液1は、B/A×100で求められる分散率が97.1%であった。
<炭素膜の形成>
50mLのCNT分散液1を、多孔質の成膜基材としての目開き0.1μm、90mmΦのメンブレンフィルターを備えた減圧ろ過装置を用い、0.09MPaの条件下にてろ過した。ろ過終了後、それぞれ100mLのメタノールおよび水を減圧ろ過装置に通過させることで、メンブレンフィルター上に形成された炭素膜を洗浄し、その後15分間空気を通過させた。次いで、作製した炭素膜/メンブレンフィルターをエタノール中へ浸漬した後、湿潤状態の炭素膜1を剥離し取り出した。取り出した炭素膜1を、100℃、24時間、真空乾燥機にて真空乾燥し、揮発分を除去し、炭素膜1を得た。得られた炭素膜1は、膜厚が50μmであり、60度における膜表面の光沢度が27であり、導電率が330S/cmであり、非常に光沢のある導電率の高い膜であった。
(実施例2)
実施例1の繊維状炭素ナノ構造体分散液の調製において、粗分散液に加える圧力を250MPaとし、且つ、平均分散処理回数θが5となるように分散処理を実施したこと以外は実施例1と同様にして、繊維状炭素ナノ構造体分散液としてのCNT分散液2および炭素膜2を得た。
なお、CNT分散液2は、分散率が93.2%であった。また、炭素膜2は、膜厚が47μmであり、60度における膜表面の光沢度が15であり、導電率が250S/cmであった。
(実施例3)
実施例1の繊維状炭素ナノ構造体分散液の調製において、粗分散液に加える圧力を50MPaとし、且つ、平均分散処理回数θが20となるように分散処理を実施したこと以外は実施例1と同様にして、繊維状炭素ナノ構造体分散液としてのCNT分散液3および炭素膜3を得た。
なお、CNT分散液3は、分散率が97.2%であった。また、炭素膜3は、膜厚が52μmであり、60度における膜表面の光沢度が28であり、導電率が340S/cmであった。
(実施例4)
実施例1のCNT1に代えて、CNT2(JEIO.Co.,Ltd製、製品名「JC−142」)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、繊維状炭素ナノ構造体分散液としてのCNT分散液4および炭素膜4を得た。
なお、CNT2は、BET比表面積が500m/gであり、t−プロットが上に凸の形状を示しており、平均直径(Av)が9.5nmであった。また、CNT2は、ラマン分光光度計での測定においてラジアルブリージングモード(RBM)のスペクトルが観察されず、透過型電子顕微鏡での観察からも、多層カーボンナノチューブであった。
更に、CNT分散液4は、分散率が95.3%であった。また、炭素膜4は、膜厚が60μmであり、60度における膜表面の光沢度が18であり、導電率が140S/cmであった。
(実施例5)
実施例1の繊維状炭素ナノ構造体分散液の調製において、多段降圧型高圧ホモジナイザーに代えて、直径200μmの細管流路部を2経路有し(これら2経路は合流する)、高速流せん断、キャビテーション効果および衝突衝撃による分散効果で分散処理可能な湿式ジェットミル分散装置(常光社製、製品名「JN−20」)を用い、粗分散液に加える圧力を200MPaとした第1分散処理を、平均分散処理回数θが10となるように実施した後、引き続き、粗分散液に加える圧力を15MPaとした第2分散処理を、平均分散処理回数θが5となるように実施したこと以外は、実施例1と同様にして、繊維状炭素ナノ構造体分散液としてのCNT分散液5および炭素膜5を得た。
なお、CNT分散液5は、分散率が85.5%であった。また、炭素膜5は、膜厚が47μmであり、60度における膜表面の光沢度が10であり、導電率が150S/cmであった。
(実施例6)
実施例5の繊維状炭素ナノ構造体分散液の調製において、粗分散液に加える圧力を60MPaとした第1分散処理を、平均分散処理回数θが25となるように実施した後、引き続き、粗分散液に加える圧力を25MPaとした第2分散処理を、平均分散処理回数θが10となるように実施したこと以外は、実施例5と同様にして、繊維状炭素ナノ構造体分散液としてのCNT分散液6および炭素膜6を得た。
なお、CNT分散液6は、分散率が84.9%であった。また、炭素膜6は、膜厚が52μmであり、60度における膜表面の光沢度が4であり、導電率が155S/cmであった。
(実施例7)
実施例6の炭素膜の形成において、CNT分散液6に代えて、当該CNT分散液6を2000Gで1時間の条件で遠心分離した後の上澄み液であるCNT分散液7を用いたこと以外は、実施例6と同様にして、炭素膜7を得た。
なお、CNT分散液7は、分散率が98.5%であった。また、炭素膜7は、膜厚が40μmであり、60度における膜表面の光沢度が30であり、導電率が360S/cmであった。
(比較例1)
実施例1の繊維状炭素ナノ構造体分散液の調製において、平均分散処理回数θが1となるように分散処理を実施したこと以外は実施例1と同様にして、CNT分散液8および炭素膜8を得た。
なお、CNT分散液8は、分散率が30.2%であった。また、炭素膜8は、膜厚が70μmであり、60度における膜表面の光沢度が0.5であり、導電率が60S/cmであった。
(比較例2)
実施例1の繊維状炭素ナノ構造体分散液の調製において、粗分散液に加える圧力を40MPaとしたこと以外は実施例1と同様にして、CNT分散液9および炭素膜9を得た。
なお、CNT分散液9は、分散率が70.2%であった。また、炭素膜9は、膜厚が68μmであり、60度における膜表面の光沢度が1.0であり、導電率が78S/cmであった。
(比較例3)
実施例6の繊維状炭素ナノ構造体分散液の調製において、第1分散処理で粗分散液に加える圧力を40MPaとしたこと以外は、実施例6と同様にして、CNT分散液10および炭素膜10を得た。
なお、CNT分散液10は、分散率が73.0%であった。また、炭素膜10は、膜厚が55μmであり、60度における膜表面の光沢度が1.5であり、導電率が85S/cmであった。
(比較例4)
実施例6の繊維状炭素ナノ構造体分散液の調製において、粗分散液に加える圧力を60MPaとした第1分散処理を、平均分散処理回数θが35となるように実施し、引き続きの第2分散処理を実施しなかったこと以外は、実施例6と同様にして、CNT分散液11および炭素膜11を得た。
なお、CNT分散液11は、分散率が65.8%であった。また、炭素膜11は、膜厚が58μmであり、60度における膜表面の光沢度が0.8であり、導電率が79S/cmであった。
(比較例5)
比較例1のCNT1に代えて、CNT3(Nanocyl製、製品名「NC7000」)を用いたこと以外は、比較例1と同様にして、CNT分散液12および炭素膜12を得た。
なお、CNT3は、BET比表面積が265m/gであり、t−プロットが下に凸の形状を示しており、平均直径(Av)が10.1nmであった。また、CNT3は、ラマン分光光度計での測定においてラジアルブリージングモード(RBM)のスペクトルが観察されず、透過型電子顕微鏡での観察からも、多層カーボンナノチューブであった。
更に、CNT分散液12は、分散率が35.5%であった。また、炭素膜12は、膜厚が47μmであり、60度における膜表面の光沢度が0.1であり、導電率が8S/cmであった。
(実施例8)
実施例6の炭素膜の形成において、CNT分散液6を用い、炭素膜6とは厚みの異なる炭素膜13を得た。炭素膜13は、膜厚が6μmであり、60度における膜表面の光沢度が150であり、導電率が540S/cmであった。
(実施例9)
実施例6の炭素膜の形成において、CNT分散液6を用い、炭素膜6とは厚みの異なる炭素膜14を得た。炭素膜14は、膜厚が33μmであり、60度における膜表面の光沢度が125であり、導電率が300S/cmであった。
上述した実施例および比較例の各種条件、ならびに各種測定の結果を、表1および2に示す。
Figure 0006756331
Figure 0006756331
表1および2から、60度における膜表面の光沢度が2以上500以下である実施例の炭素膜は、導電率が100S/cmを超えており、金属に近い性質をもつ一方で、光沢度が2未満である比較例の炭素膜は、実施例の炭素膜と同一の材料を用いているにも関わらず、導電率が1桁のオーダーで低く、導電性が十分でないことが分かる。
また、60度における膜表面の光沢度が2以上500以下である炭素膜を形成するためには、使用する繊維状炭素ナノ構造体分散液の分散率が80%以上である必要があり、そのような繊維状炭素ナノ構造体分散液の製造は、公知の範囲の分散方法では達成できず、ある特定範囲の分散処理を実施することで初めて達成可能であることが明らかである。
本発明によれば、導電性に優れる炭素膜、およびその製造方法を提供することができる。
また、本発明によれば、導電性に優れる炭素膜を得ることが可能な繊維状炭素ナノ構造体分散液、およびその製造方法を提供することができる。
1 タンク
2 圧送手段
3 分散器
4 多段降圧器
5 返送ライン
6 流路切り替え弁(三方弁)
10 分散システム

Claims (11)

  1. 60度における膜表面の光沢度が2以上500以下であ繊維状炭素ナノ構造体を含み、自立膜である、炭素膜。
  2. 前記繊維状炭素ナノ構造体は、吸着等温線から得られるt−プロットが上に凸な形状を示す、請求項に記載の炭素膜。
  3. 繊維状炭素ナノ構造体と溶媒とを含有する繊維状炭素ナノ構造体分散液から前記溶媒を除去して、炭素膜を成膜する工程を含む、請求項1又は2に記載の炭素膜の製造方法。
  4. 前記溶媒の除去を、前記繊維状炭素ナノ構造体分散液をろ過し、得られたろ過物を乾燥させることにより行う、請求項3に記載の炭素膜の製造方法。
  5. 前記繊維状炭素ナノ構造体分散液が、当該分散液の吸光度をAとし、当該分散液を10000Gで1時間の条件で遠心分離した後の上澄み液の吸光度をBとしたとき、B/A×100で求められる分散率(%)が80%以上である、請求項3又は4に記載の炭素膜の製造方法。
  6. 前記繊維状炭素ナノ構造体は、吸着等温線から得られるt−プロットが上に凸な形状を示す、請求項3〜5のいずれかに記載の炭素膜の製造方法。
  7. 繊維状炭素ナノ構造体と溶媒とを含有する繊維状炭素ナノ構造体分散液であって、当該分散液の吸光度をAとし、当該分散液を10000Gで1時間の条件で遠心分離した後の上澄み液の吸光度をBとしたとき、B/A×100で求められる分散率(%)が80%以上である、繊維状炭素ナノ構造体分散液。
  8. 前記繊維状炭素ナノ構造体は、吸着等温線から得られるt−プロットが上に凸な形状を示す、請求項7に記載の繊維状炭素ナノ構造体分散液。
  9. 分散剤をさらに含有する請求項7または8に記載の繊維状炭素ナノ構造体分散液。
  10. 溶媒中に繊維状炭素ナノ構造体を添加してなる粗分散液を圧力を加えることにより細管流路に送り込み、前記粗分散液にせん断力を与えて繊維状炭素ナノ構造体を分散させる分散処理を実施して、繊維状炭素ナノ構造体分散液を得る工程を含み、
    前記分散処理は、粗分散液に加える圧力を60〜250MPaとした第1分散処理と、前記第1分散処理後の、粗分散液に加える圧力を10〜30MPaとした第2分散処理とを含み、
    前記第1分散処理における平均分散処理回数θが5〜30であり、前記第2分散処理における平均分散処理回数θが1〜20である、繊維状炭素ナノ構造体分散液の製造方法。
  11. 溶媒中に繊維状炭素ナノ構造体を添加してなる粗分散液を圧力を加えることにより細管流路に送り込み、前記粗分散液にせん断力を与えて繊維状炭素ナノ構造体を分散させる分散処理を実施して、繊維状炭素ナノ構造体分散液を得る工程を含み、
    前記分散処理では、前記粗分散液に加える圧力を50〜150MPaとし、且つ、せん断力が与えられた粗分散液への背圧の負荷を行うとともに、前記せん断力が与えられた粗分散液の背圧を少なくとも2段階で降圧し、
    前記分散処理における平均分散処理回数θが〜20である、繊維状炭素ナノ構造体分散液の製造方法。
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