JP6754417B2 - 食器用塗工紙 - Google Patents

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Description

本発明は、食器用塗工紙に関する。
従来、使い捨ての食器としては、プラスチック樹脂を成形されたものが広く用いられている。また、従来のプラスチック樹脂や竹、木製としては、ナイフ用途に特別に成形加工する必要から製造コストが高いという課題を有する。また、プラスチック製品は海洋汚染や海洋生物の生態系に影響を与えるため、近年、環境保護の観点から、プラスチック製食器の代替技術の確立が求められている。特に欧州では、環境に優しく再資資源可能な紙製製品が求められている。これに対し、従来技術においては、代替材料として耐水性及び耐熱水性を向上させた紙製の攪拌用スティックやスプーンが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特開2003−79505号公報
しかしながら、上記従来の技術においては、食器やナイフ等の刃物用途において要求される強靭性や耐久性の付与についてはまだ十分ではない。従って、紙を食器やナイフ等の刃物用途へ利用するためには、強靭性や耐久性の向上が求められる。
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、強靭性や耐久性に優れ、従来のプラスチック製ペーパーナイフに置き換わる紙製食器に利用できる食器用塗工紙を提供することを目的とする。
上記課題を解決するためになされた発明は、1対の表層と、上記1対の表層の間に配置される複数の中層とを備え、上記表層及び中層が針葉樹晒クラフトパルプ及び広葉樹晒クラフトパルプを主成分とし、上記表層における上記針葉樹晒クラフトパルプの上記広葉樹晒クラフトパルプに対する質量比が5/95以上15/85以下であり、上記中層における上記針葉樹晒クラフトパルプの上記広葉樹晒クラフトパルプに対する質量比が30/70以上40/60以下であり、上記表層が完全鹸化ポリビニルアルコールを含有する表面塗工層を表面に有する食器用塗工紙である。
当該食器用塗工紙は、針葉樹晒クラフトパルプ及び広葉樹晒クラフトパルプを混合して配合することで、紙厚が大きくなり、剛度及び耐久性を向上できる。また、表層における上記針葉樹晒クラフトパルプの上記広葉樹晒クラフトパルプに対する質量比を5/95以上15/85以下にすることで、比較的剛直で高密度化しやすい広葉樹クラフトパルプを多く含有するので、一対の表層は高密度で剛直な特性を得ることができ、強度に優れる。さらに、表層は、食品等の被対象物由来の水分又は油成分の内部への浸透抑制効果が高い。一方、上記中層における上記針葉樹晒クラフトパルプの上記広葉樹晒クラフトパルプに対する質量比を30/70以上40/60以下にすることで、柔軟性に富む針葉樹クラフトパルプを多く含有するので、中層は良好な柔軟性を備える。当該食器用塗工紙は、硬いが折れ易いという特性を有する剛度を有する一対の表層と、柔軟性を有する中層とを組み合わせる多層抄き合わせ構造とすることで、表層が比較的高密度ながら弾性を確保しつつ、歪みや折れを抑制できる。さらに、当該食器用塗工紙は、表層の表面に完全鹸化ポリビニルアルコールを含有する表面塗工層を有することで、食器用塗工紙に良好な表面強度を付与できる。従って、当該食器用塗工紙は、強靭性や耐久性に優れ、従来の樹脂製使い捨て食器に置き換わる紙製食器に好適である。
上記表面塗工層の塗工量が1g/m以上5g/m以下であることが好ましい。このように、上記表面塗工層の塗工量が上記範囲であることで、当該食器用塗工紙は、強靭性や耐久性をより向上できる。
全坪量に対する上記1対の表層の合計の坪量の割合が25.0%以上35.0%以下であることが好ましい。剛直性を有する1対の表層と柔軟性を有する中層を備える当該食器用塗工紙において、1対の表層の合計の坪量の割合を上記範囲とすることで、折れ曲がり難い特性を付与することができる。
上記中層の総数が4層以上であることが好ましい。上記中層の総数が4層以上であることで、食器用塗工紙の強靭性や耐久性をより向上できる。
また、上記課題を解決するためになされた他の発明は、当該食器用塗工紙から構成される紙製食器である。当該紙製食器は、当該食器用塗工紙から構成されるので、強靭性及び耐久性に優れる。
本発明によれば、強靭性や耐久性に優れ、従来のプラスチック製食器に置き換わる紙製食器に利用できる食器用塗工紙を提供できる。
以下、本発明の一実施形態に係る食器用塗工紙について詳説する。
<食器用塗工紙>
当該食器用塗工紙は、1対の表層と、上記1対の表層の間に配置される複数の中層とを備える。なお、本発明における「食器」は、皿、椀、箸、カップ、コースター、トレー、マドラー、スプーン、フォーク等の食器のみならず、ナイフ、包丁等の調理器具を含む広い概念である。当該食器用塗工紙は、特にナイフ、包丁等の刃物類に好適である。
[表層]
当該食器用塗工紙は、1対の表層を備える。上記表層は、針葉樹晒クラフトパルプ及び広葉樹晒クラフトパルプを主成分とする。なお、「主成分」とは、質量基準で最も含有量の多い成分をいう。
上記表層における上記針葉樹晒クラフトパルプの上記広葉樹晒クラフトパルプに対する質量比としては、5/95以上15/85以下である。上記針葉樹晒クラフトパルプの上記広葉樹晒クラフトパルプに対する質量比を上記範囲にすることで、比較的剛直で高密度化しやすい広葉樹クラフトパルプを多く含有するので、表層は高密度で剛直な特性を得ることができ、強度に優れる。さらに、表層は、食品等の被対象物由来の水分又は油成分の内部への浸透抑制効果が高い。また、柔軟性を有する中層と合わせることで、弾性を確保しつつ、歪みや折れを抑制できる。
当該食器用塗工紙の各層は、必要に応じて、例えばECF(Elemental Chlorine Free)パルプ、TCF(Total Chlorine Free)パルプ、未晒しクラフトパルプ(UKP)、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)、広葉樹半晒クラフトパルプ(LSBKP)、針葉樹半晒クラフトパルプ(NSBKP)、広葉樹亜硫酸パルプ、針葉樹亜硫酸パルプ等の化学パルプ、あるいは、ケナフ、麻、葦等の非木材繊維から化学的にまたは機械的に製造されたパルプ等の公知の種々のパルプを適宜組合せて使用することができる。当該食器用塗工紙は、紙製食器に用いられ、食品等の被対象物に直接接触されるものである。このため、当該食器用塗工紙に使用するその他のパルプとしては、化学パルプであることが好ましく、中でも、ECFパルプ、TCFパルプ、未晒しクラフトパルプ(UKP)がより好ましい。ECFパルプとは、塩素(Cl)を使用せず、二酸化塩素(ClO)で漂白して製造した無塩素漂白化学パルプである。TCFパルプとは、塩素(Cl)を使用せず、酸素(O)や過酸化水素(P)、オゾン(Z)で漂白して製造した完全無塩素漂白化学パルプである。すなわち、ECFパルプ及びTCFパルプは、塩素イオンの含有量が微量または0であるため、低温焼却によってもダイオキシン類等の有機塩素化合物が生成される危険が少ないとの利点があり、結果として環境負荷を軽減できる。また、未晒しクラフトパルプは、使用することで木材(アイスバー等)の色目に似せる事ができ、漂白工程を省く事でエネルギーの削減及びCOの削減といった環境負荷の軽減を図ることができる。
当該食器用塗工紙の表層に用いるパルプのカナディアンスタンダードフリーネス(CSF)の下限としては、410mlが好ましい。上記表層に用いるパルプのCSFが410ml未満である場合、当該食器用塗工紙の剛性が低下するおそれがある。一方、上記表層に用いるパルプのCSFの上限としては、470mlが好ましい。CSFが470mlを超えると抄紙機でのパルプ繊維配向性の調整が難しくなることで食器用塗工紙の地合が悪くなり、また、紙器として用いるには紙力が低下するおそれがある。当該食器用塗工紙は、フリーネスの高い針葉樹晒クラフトパルプ及び広葉樹晒クラフトパルプを混合して配合することで、より紙厚が大きくなり、剛度を向上できる。ここで、カナディアンスタンダードフリーネス(CSF)は、JIS−P8220−1(2012)のパルプの離解方法に準拠して離解することによって離解パルプとし、この離解パルプをJIS−P8121−2(2012)のカナダ標準ろ水度試験方法に準拠して測定される値である。
[中層]
上記1対の表層の間に配置される複数の中層を備える。中層は、針葉樹晒クラフトパルプ及び広葉樹晒クラフトパルプを主成分とする。また、上記中層における上記針葉樹晒クラフトパルプの上記広葉樹晒クラフトパルプに対する質量比としては、30/70以上40/60以下である。上記中層における上記針葉樹晒クラフトパルプの上記広葉樹晒クラフトパルプに対する質量比を上記範囲とすることで、柔軟性に富む針葉樹クラフトパルプを多く含有するので、中層は良好な柔軟性を備える。従って、上述したように剛度を有し、硬いが折れ易い傾向の一対の表層に柔軟な中層を組み合わされるので、当該食器用塗工紙は強靭性や耐久性に優れる。
当該食器用塗工紙の中層に用いるパルプのカナディアンスタンダードフリーネス(CSF)の下限としては、375mlが好ましい。上記CSFが375ml未満である場合、抄紙機での脱水性が悪くなり、さらに、パルプ繊維配向性の調整が難しくなるおそれがある。一方、上記中層に用いるパルプのCSFの上限としては、465mlが好ましい。上記CSFが465mlを超える場合、フィブリル化が少なく層間強度の低下を招くおそれがある。さらに、中層に用いるパルプのカナディアンスタンダードフリーネスが、1対の表層に用いるパルプのカナディアンスタンダードフリーネスよりも小さいことが、中層のZ軸強度を維持しつつ、弾性力を確保する観点から好ましい。
上記中層の総数としては、4層以上が好ましい。上記中層の総数が4層以上であることで、食器用塗工紙の強靭性や耐久性をより向上できる。上記中層の総数の上限としては、層間強度を維持する観点から、8層以下であることが好ましい。
[添加剤]
当該食器用塗工紙は、表層及び中層に製紙用添加剤としてサイズ剤及び紙力増強剤を含有することが好ましい。
(サイズ剤)
当該食器用塗工紙は、食品等の被対象物由来の水分又は油成分の内部への浸透をより抑制するために、各層にサイズ剤を添加することができる。サイズ剤としては、スチレン系サイズ剤、アルキルケテンダイマー(AKD)、アルケニル無水琥珀酸(ASA)、中性ロジンサイズ剤、ロジンサイズ剤、変性ロジンエマルジョンサイズ剤などが挙げられる。これらの中でもロジンサイズ剤及び変性ロジンエマルジョンサイズ剤が好ましい。
上記ロジンサイズ剤は、製紙分野で従来公知のものであって、特に限定されない。ロジン系の物質は、例えば、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン等のロジン類をフマル酸、マレイン酸、アクリル酸等のα,β−不飽和カルボン酸あるいはその無水物で変性した強化ロジンや、上記ロジン類をグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジグリセリン等の多価アルコールを反応させて得られるロジンエステルを挙げることができる。また、本発明において、ロジン系サイズ剤には、これらの単独またはその混合物をエマルジョン化したもの、単独でエマルジョン化した後に混合したものも含まれる。さらに、上記エマルジョン化したものに、サイズ発現性をより向上させるために各種ポリマーを添加したものも含まれる。
表層のサイズ剤の含有量としては、固形分で0.5kg/t以上5.0kg/t以下が好ましい。また、中層のサイズ剤の含有量としては、固形分で2.0kg/t以上5.0kg/t以下が好ましい。なお、「kg/t」はパルプ1tあたりの質量(kg)を示す。サイズ剤の含有量を上記範囲とすることで、耐水性を向上できる。
(紙力増強剤)
当該食器用塗工紙は、各層に紙力増強剤サイズ剤を添加することができる。紙力増強剤を添加することで、各層に紙製食器として用いるために適切な諸強度を付与できる。
紙力増強剤としては、ポリアクリルアミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアミン系樹脂、アクリル樹脂系、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂など公知の種々のものを使用できる。これらの中でも、両性紙力増強剤を使用することが好ましい。両性ポリアクリルアミドとしては、アクリルアミドと上記のアニオン性モノマー及びカチオン性モノマーの共重合物、アクリルアミドと上記のアニオン性モノマーとの共重合物のマンニッヒ変性物、ホフマン分解物等が挙げられる。本発明者らの知見では、特に両性ポリアクリルアミドが好ましく、両性ポリアクリルアミドは、自己定着機能を有しているため、紙間強度を向上させるべく増添したとしても、カチオン過多になることがなく、変性ロジンエマルジョンサイズ剤を安定的に定着させることができる。
各層の紙力増強剤の含有量としては、固形分で12kg/t以上20kg/t以下が好ましい。上記紙力増強剤の含有量を上記範囲とすることで、食器用塗工紙の層間強度などの各種紙力を付与することができる。紙力増強剤の含有量が上記範囲を下回ると層間強度が十分でないおそれがある。一方、紙力増強剤の含有量が上記範囲を超えると層間強度の向上はほぼ横ばいとなり、さらに、添加した紙力増強剤の歩留りが低下することで、抄紙機系内の汚れ、発泡などが発生し、操業性が低下するおそれがある。
(その他の添加剤)
また、当該食器用塗工紙は、本発明の目的とする効果を損ねない範囲でその他の各種製紙用添加剤を含有させてもよい。当該食器用塗工紙に添加可能なその他の添加剤としては、例えば、公知の製紙用薬剤などが挙げられる。
[表面塗工層]
当該食器用塗工紙は、表層の表面に完全鹸化ポリビニルアルコールを含有する表面塗工層を有する。食品等の被対象物由来の水分又は油成分の内部への浸透抑制と表面強度保持のため、食品等の被対象物と接触する表層表面には比較的強い被膜形成が必要であるが、当該食器用塗工紙が上記表面塗工層を有することにより、食器用塗工紙に良好な表面強度を有するとともに、水分又は油成分の内部への浸透抑制効果が高い。
上記完全鹸化ポリビニルアルコールの塗工量としては、良好な表面強度を付与する観点から、0.5g/m以上5.0g/m以下が好ましい。
上記表面塗工層は、ワックス系サイズ剤を含有することが好ましい。ワックス系サイズ剤としては、パラフィンワックス系サイズ剤、マイクロクリスタリンワックス系サイズ剤、カルナウバワックス(カルナバワックス)系サイズ剤等を用いることが可能であり、これらワックス系サイズ剤の中でも、良好な撥水性及び耐水性を付与することができることから、パラフィンワックス系サイズ剤を含有させることが好ましい。
ワックス系サイズ剤の塗工量としては、撥水性及び耐水性向上の観点から、0.1g/m以上0.5g/m以下が好ましい。
上記表面塗工層は、表面サイズ剤を含有することが好ましい。表面サイズ剤としては、例えばスチレン−アクリル系サイズ剤、アルキルケテンダイマー(AKD)、アルケニル無水琥珀酸(ASA)、中性ロジンサイズ剤、ロジンサイズ剤などが挙げられる。これらのサイズ剤のほかアクリル系サイズ剤が好適に用いられる。
表面サイズ剤の塗工量としては、食器用途として使用する際の水分による強度不足を抑制するの観点から、0.2g/m以上1.0g/m以下が好ましい。
上記表面塗工層は、ポリビニルアルコール、パラフィンワックス及び表面サイズ剤以外に澱粉、ポリアクリルアマイド等を含有してもよい。また、上記表面塗工層は、さらに、例えば、公知の製紙用途の添加剤を含有することができる。
上記表面塗工層としては、(1)表層の表面の繊維に水性組成物が含浸される形態、(2)表層の表面上に水性組成物による樹脂層が形成される形態、(3)表層の繊維の表面が水性組成物により被覆される形態、又は(4)これらが組み合わさった形態等が含まれると推測される。また、表面塗工層用組成物の一部が含浸されていてもよい。
上記表面塗工層の塗工量の下限としては、表面強度向上の観点から、1.0g/mが好ましく、2.0g/mがより好ましい。上記表面塗工層の塗工量の上限としては、紙としての質感低下及び加工工程時のブロッキングによる汚損発生を抑制する観点から、5.0g/mが好ましく、4.0g/mがより好ましい。
[食器用塗工紙の物性]
(坪量)
坪量は、JIS−P8124(2011)に準拠して測定される。当該食器用塗工紙の各層の坪量は均等である必要はなく、表層及び中層の坪量は、特に限定されるものではないが、表層1層の坪量としては、90.0g/m以上300.0g/m以下が好ましい。また、中層全体の坪量としては、450.0g/m以上925.0g/m以下が好ましい。
当該食器用塗工紙全体の坪量の下限としては、十分な剛度を得る観点から、700.0g/mが好ましく、750.0g/mがより好ましい。当該食器用塗工紙全体の坪量の上限としては、1000.0g/mが好ましく、900.0g/mがより好ましい。上記坪量が1000.0g/mを超えると、十分な剛度は得やすくなるが、抄造時にペーパーロールを通過することで折れジワが発生しやすくなるおそれがある。
当該食器用塗工紙全体の坪量に対する上記1対の表層の合計の坪量の割合としては、25.0%以上35.0%以下であることが好ましい。剛直性を有する1対の表層と柔軟性を有する中層を備える当該食器用塗工紙において、1対の表層の合計の坪量の割合を上記範囲とすることで、折れ曲がり難い特性を付与することができる。
(紙厚)
紙厚は、JIS−P8118(2014)に記載の「紙及び板紙−厚さ及び密度の試験方法」に準拠して測定される。当該食器用塗工紙の紙厚としては、950μm以上1,300μm以下が好ましい。当該食器用塗工紙の紙厚が上記範囲であることで、当該食器用塗工紙の紙層の剥がれを抑制できる。
(密度)
当該食器用塗工紙の密度としては、0.73g/cm以上0.88g/cm以下が好ましい。当該食器用塗工紙の密度が上記範囲であることで、低坪量及び軽量化を可能にしつつ、剛性が優れる。
(水分)
JIS−P8127(2010)に準拠して測定される当該食器用塗工紙の水分としては、9.0%以上11.0%以下であることが好ましい。当該食器用塗工紙の上記水分が上記範囲であることで、柔軟性が向上するので、当該食器用塗工紙を用いて食器を製造する場合の折機での作業性及び折部の断裂抑制効果を向上できる。
(灰分)
灰分は、JIS−P8251(2003)に準拠して測定される。当該食器用塗工紙の密度としては、0.1%以上10.0%以下が好ましい。当該食器用塗工紙の密度が上記範囲であることで、カールをフラットに調整でき、かつ、層間強度の低下を抑制できる。
(表面強度)
表面強度は、JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法No.1 m−72による「表面強度試験方法」に準拠して測定される。当該食器用塗工紙の表面強度の下限としては、10Aが好ましい。当該食器用塗工紙の表面強度が上記範囲であることで、表層の脱落や搬送、加工段階での耐擦傷性を向上できる。
(コブサイズ度)
コブサイズ度は、JIS−P8140(1998)に準拠して23℃の蒸留水を使用して測定される。当該食器用塗工紙のコブサイズ度の上限としては、50g/mが好ましい。当該食器用塗工紙のコブサイズ度が上記上限以上の場合、当該食器用塗工紙が吸湿により波うちやシワの発生を招くおそれがある。
(Z軸強度)
当該耐水耐油紙のZ軸強度としては、JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法No.18−1:2000に準拠して測定されるZ軸強度で380kN/m以上が好ましい。上記Z軸強度を有することで、食器成形時における層間剥離や皺の発生を抑制できる。
当該食器用塗工紙によれば、強靭性や耐久性に優れ、従来のプラスチック製食器に置き換わる紙製食器に利用できる。
[食器用塗工紙の製造方法]
食器用塗工紙の製造方法は特に限定されないが、例えば以下の工程により、公知の多層抄き抄紙機を用いて製造することができる。
(1)パルプ繊維を水に分散させて得たスラリーに、各紙層に対応した添加剤を必要に応じ添加して混合し、各紙層の紙料を調製する。
(2)次に、これらの原料スラリーを用いて、食器用塗工紙のpHが6以上8以下になるように中性域で抄紙機にて表層、単層又は複層の中層及び表層の抄合せで抄紙する。
抄紙方法は特に限定されるものではなく、公知の抄紙機、すなわち長網、円網、ハイブリッドフォーマー、ギャップフォーマー等の抄紙機を使用し、3層以上の多層で抄紙される。抄紙工程では、サイズプレス、メタリングサイズプレス、ゲートロールコーターなどの塗工装置等を使用して、表層の表面に塗工液を塗工して表面塗工層を形成することができる。
(3)次に、加圧ロールによりプレスし、水分を除去する。
(4)次に、ドライヤーシリンダーにて乾燥する。
乾燥後には、ニップキャレンダー、スーパーキャレンダー、マシンキャレンダー、ソフトキャレンダー等のキャレンダー装置を用いて平滑化処理を行なってもよい。平滑化処理を行うことにより、食器用塗工紙に高い光沢度が付与されて高級感を有する紙製食器に好適に用いることができる。
(5)最後にリールに巻き取り、食器用塗工紙を得る。
<紙製食器>
当該紙製食器は、当該食器用塗工紙から構成される。当該紙製食器は、当該食器用塗工紙から構成されるので、強靭性及び耐久性に優れる。
当該食器用塗工紙によれば、強靭性や耐久性に優れ、従来のプラスチック製食器に置き換わる紙製食器に利用できる。
<その他の実施形態>
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、上記態様の他、種々の変更、改良を施した態様で実施することができる。
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
実施例及び比較例の物性値の測定方法は以下のとおりである。
[フリーネス(mL)]
得られた食器用塗工紙をJIS−P8220−1(2012)のパルプの離解方法に準拠して離解することによって離解パルプとし、この離解パルプをJIS−P8121−2(2012)のカナダ標準ろ水度試験方法に準拠して測定した。
[坪量(g/m)]
JIS−P8142(1998)に記載の「紙及び板紙−坪量測定方法」に準拠して測定した。
[紙厚(μm)]
JIS−P8118(2014)に記載の「紙及び板紙−厚さ及び密度の試験方法」に準拠して測定した。
[密度(g/cm)]
JIS−P8118(2014)に記載の「紙及び板紙−厚さ及び密度の試験方法」に準拠して測定した。
[水分]
JIS−P8127(2010)に準拠して測定した。
[灰分]
JIS−P8251(2003)に準拠して測定した。
[表面強度]
JAPAN TAPPI No.1のワックスによる表面強度試験方法に準拠して測定した。
[コブサイズ度]
JIS−P8140(1998)に準拠して測定した。
[Z軸強度]
JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法No.18−1:2000に準拠して測定した。
[折り曲げ強度]
折り曲げ強度は、デジタルフォースゲージ(株式会社イマダ製)により測定し、試験条件は以下の通りとした。当該食品用塗工紙を3点折り曲げ治具に固定し、フォースゲイジを下降させた。その際の、荷重を折り曲げ強度(N)とした。なお、試験環境は、温度26℃、湿度70%で行った。
[実施例1]
(1)以下に表層及び中層の配合を示す。
(表層)
フリーネス440mLのNBKP:LBKPが10:90の100部のパルプスラリー中に、以下の原料を添加した。
変性ロジンエマルジョン系サイズ剤(星光PMC社の「AL1344」):
固形分で2.5kg/パルプt
アクリルアミド系紙力増強剤(ハリマ化成社の「ハーマイドRB−28」):
固形分で16.0kg/パルプt
(中層)
フリーネス440mLのNBKP:LBKPが35:65の100部のパルプスラリー中に、以下の原料を添加した。
変性ロジンエマルジョン系サイズ剤(星光PMC社の「AL1344」):
固形分で3.5kg/パルプt
アクリルアミド系紙力増強剤(ハリマ化成社の「ハーマイドRB−28」):
固形分で16.0kg/パルプt
(2)このパルプスラリーをワイヤーパートが円網多層抄紙機を用いて表層、5層の中層及び表層の7層構造で抄き合わせた。各層の坪量は表層125g/m、中層626.5g/m、裏層125g/mとし、全坪量880.0g/mとした。
(3)表層の表面に、以下の塗工量となるようにポリビニルアルコール及びパラフィンワックスを含有する塗工液3.5g/mをカレンダー塗工して表面塗工層を形成し、実施例1の食器用塗工紙を得た。
ポリビニルアルコール(日本合成化学社製「ゴーセノールN300」):2.7g/m
パラフィンワックス(ハリマ化成社製「ハリコートRK」):0.2g/m
スチレン・メタクリル酸共重合体樹脂表面サイズ剤(質量平均分子量9,000、融点100℃、近代化学工業社製「ケイコートSA20」SP値10.0):0.6g/m
[実施例2〜実施例2及び比較例1〜比較例6]
原料の種類、含有量及び物性値を表1及び表2に示すとおりとしたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜実施例12及び比較例1〜比較例6の食器用塗工紙を得た。比較例6は部分ケン化80%のポリビニルアルコールを用いた。なお、以下の表1中の「−」は、該当する成分を用いなかったことを示す。
Figure 0006754417
Figure 0006754417
[評価]
得られた各食器用塗工紙の評価結果を表3に示す。
Figure 0006754417
上記表3に示されるように、当該食器用塗工紙の実施例1〜実施例12は、表面強度、コブサイズ度、Z軸強度及び折り曲げ強度の全てにおいて良好な結果が得られた。
一方、表層における上記針葉樹晒クラフトパルプの広葉樹晒クラフトパルプに対する質量比が5/95未満若しくは15/85超、中層における針葉樹晒クラフトパルプの広葉樹晒クラフトパルプに対する質量比が30/70未満若しくは40/60超、又は表層が部分鹸化ポリビニルアルコールを含有する比較例1〜比較例6は、いずれかの強度が劣っていた。
本発明の食器用塗工紙は、紙製食器に好適に用いることができる。

Claims (5)

  1. 1対の表層と、上記1対の表層の間に配置される複数の中層とを備え、
    上記表層及び中層が針葉樹晒クラフトパルプ及び広葉樹晒クラフトパルプを主成分とし、
    上記表層における上記針葉樹晒クラフトパルプの上記広葉樹晒クラフトパルプに対する質量比が5/95以上15/85以下であり、
    上記中層における上記針葉樹晒クラフトパルプの上記広葉樹晒クラフトパルプに対する質量比が30/70以上40/60以下であり、
    上記表層が完全鹸化ポリビニルアルコールを含有する表面塗工層を表面に有する食器用塗工紙。
  2. 上記表面塗工層の塗工量が1.0g/m以上5.0g/m以下である請求項1に記載の食器用塗工紙。
  3. 全坪量に対する上記1対の表層の合計の坪量の割合が25.0%以上35.0%以下である請求項1又は請求項2に記載の食器用塗工紙。
  4. 上記中層の総数が4層以上である請求項1、請求項2又は請求項3に記載の食器用塗工紙。
  5. 請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の食器用塗工紙から構成される紙製食器。
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