JP6754071B2 - メトホルミン及びジヒドロケルセチンを含む組み合わせ医薬、及びがんの治療のための使用 - Google Patents

メトホルミン及びジヒドロケルセチンを含む組み合わせ医薬、及びがんの治療のための使用 Download PDF

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Description

本発明は、メトホルミン又はその医薬的に許容しうる塩、及びジヒドロケルセチン又はその医薬的に許容しうる塩を組み合わせることを特徴とする医薬に関する。
特許文献1には、ピロン類似化合物又はその誘導体を、1つ以上のさらなる薬剤(例えば、脂質低下剤又はグルコース低下剤)と組み合わせて投与することによって、代謝性障害及び他の疾患を処置及び予防する方法が記載されており、ピロン類似化合物の例示の1つとしてタキシホリンが記載され、グルコース低下剤の例示の1つとしてメトホルミンが記載されている。しかし、該文献にはメトホルミンとタキシホリンとを組み合わせた具体的な実施例の開示はなく、これらを組み合わせた医薬の悪性腫瘍に対する相乗効果や乳酸アシドーシスの低減効果については記載されていない。
国際公開第2010/042886号パンフレット
メトホルミンは、その塩酸塩がビグアナイド系経口血糖降下剤として市販されており、また、AMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)を活性化する作用を有することが知られている。
近年、メトホルミン、フェンホルミン、オリゴマイシン、ジニトロフェノール、2−デオキシグルコース、5−アミノイミダゾール−4−カルボキシアミドリボヌクレオシド、過酸化水素、ソルビトール、カルシマイシン、4−ヒドロキシ−3−(2’−ヒドロキシビフェニル−4−イル)−6−オキソ−6,7−ジヒドロチエノ[2,3−b]ピリジン−5−カルボニトリル(A−769662)、ガレジン、トログリタゾン、フェノバルビタール、ケルセチン、レスベラトロール、ベルベリン等のAMPKを活性化する作用を有する化合物(AMPK活性剤)が単独又は既存の抗がん剤との併用で抗悪性腫瘍効果を有することが報告され、抗悪性腫瘍剤としての開発が検討されている。
しかし、上記のうち、メトホルミン、フェンホルミン、5−アミノイミダゾール−4−カルボキシアミドリボヌクレオシド、ソルビトール、カルシマイシン、A−769662、ガレジン、トログリタゾン等のAMPK活性剤は、投与した患者に重篤な乳酸アシドーシスを起こすことがあるという問題がある。
本発明は、メトホルミン又はその医薬的に許容しうる塩の副作用を軽減することができ、抗悪性腫瘍剤として有用な新規医薬の提供を目的とする。
メトホルミンは、癌幹細胞を抑制する作用を有することが知られている。このようながん幹細胞を抑制する薬剤は、抗悪性腫瘍効果だけでなく、癌の転移の防止や再発の防止につながることが期待される。
本発明は、がん幹細胞を抑制する作用を有し、抗悪性腫瘍剤として有用な新規医薬の提供もまた目的とする。
本発明者らは、上記の課題を解決するため鋭意検討した結果、メトホルミン又はその医薬的に許容しうる塩と、ジヒドロケルセチン又はその医薬的に許容しうる塩とを組み合わせることにより、メトホルミン又はその医薬的に許容しうる塩により誘導された血中乳酸
値の上昇が抑制されることを見出した。また、本発明者らは、メトホルミン又はその医薬的に許容しうる塩と、ジヒドロケルセチン又はその医薬的に許容しうる塩とを組み合わせることにより、メトホルミン又はその医薬的に許容しうる塩の抗悪性腫瘍作用が顕著に増強することを見出した。
本発明者らは、また、ジヒドロケルセチン又はその医薬的に許容しうる塩が、膵臓癌の予防及び治療に効果があることを見出した。
本発明者らは、また、ジヒドロケルセチン又はその医薬的に許容しうる塩が、膵臓がん幹細胞を抑制する効果があることを見出した。
本発明者らは、かかる知見に基づき、さらに研究を進めて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下の通りである。
[1]メトホルミン又はその医薬的に許容しうる塩と、ジヒドロケルセチン又はその医薬的に許容しうる塩とを組み合わせることを特徴とする医薬であって、メトホルミン又はその医薬的に許容しうる塩、及びジヒドロケルセチン又はその医薬的に許容しうる塩を一つの製剤中に含有するか、又は、メトホルミン又はその医薬的に許容しうる塩を含有する医薬組成物と、ジヒドロケルセチン又はその医薬的に許容しうる塩を含有する医薬組成物とを別々に製剤化して組み合わせて用いる、医薬。
[2]メトホルミン又はその医薬的に許容しうる塩、及びジヒドロケルセチン又はその医薬的に許容しうる塩を一つの製剤中に含有する、上記[1]に記載の医薬。
[3]メトホルミン又はその医薬的に許容しうる塩を含有する医薬組成物と、ジヒドロケルセチン又はその医薬的に許容しうる塩を含有する医薬組成物とを別々に製剤化して組み合わせて用いる、上記[1]に記載の医薬。
[4]悪性腫瘍を予防又は治療するための上記[1]〜[3]のいずれかに記載の医薬。[5]悪性腫瘍が、星細胞腫、悪性の髄芽腫、胚細胞腫瘍、頭蓋咽頭腫及び上衣腫からなる群から選ばれる小児の脳腫瘍;グリオーマ、神経膠腫、髄膜腫、下垂体腺腫及び神経鞘腫からなる群から選ばれる成人の脳腫瘍;上顎洞癌、咽頭癌、喉頭癌、口腔癌、口唇癌、舌癌及び耳下腺癌からなる群から選ばれる頭頚部癌;小細胞肺癌、非小細胞肺癌、胸腺腫及び中皮腫からなる群から選ばれる胸部癌及び腫瘍;食道癌、肝臓癌、原発性肝癌、胆嚢癌、胆管癌、胃癌、大腸癌、結腸癌、直腸癌、肛門癌、膵癌及び膵内分泌腫瘍からなる群から選ばれる消化器癌及び腫瘍;陰茎癌、腎盂・尿管癌、腎細胞癌、精巣腫瘍、前立腺癌、膀胱癌、ウイルムス腫瘍及び尿路上皮癌からなる群から選ばれる泌尿器癌及び腫瘍;外陰癌、子宮頸部癌、子宮体部癌、子宮内膜癌、子宮肉腫、絨毛癌、膣癌、乳癌、卵巣癌及び卵巣胚細胞腫瘍からなる群から選ばれる婦人科癌及び腫瘍;成人及び小児の軟部肉腫;骨肉腫及びユーイング腫瘍からなる群から選ばれる骨の腫瘍;副腎皮質癌及び甲状腺癌からなる群から選ばれる内分泌組織の癌及び腫瘍;悪性リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、ホジキン病、多発性骨髄腫、形質細胞性腫瘍、急性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、成人T細胞白血病リンパ腫、慢性骨髄性白血病及び慢性リンパ性白血病からなる群から選ばれる悪性リンパ腫及び白血病;又は、慢性骨髄増殖性疾患、悪性黒色腫、有棘細胞癌、基底細胞癌及び菌状息肉症からなる群から選ばれる皮膚の癌及び腫瘍である、上記[4]に記載の医薬。
[6]メトホルミン及びその医薬的に許容しうる塩、並びにジヒドロケルセチン及びその医薬的に許容しうる塩以外の抗悪性腫瘍薬では効果不十分な患者を治療するための、上記[1]〜[5]のいずれかに記載の医薬。
[7]1種又はそれ以上の、メトホルミン及びその医薬的に許容しうる塩、並びにジヒドロケルセチン及びその医薬的に許容しうる塩以外の抗悪性腫瘍薬を組み合わせることを特徴とする、上記[1]〜[5]のいずれかに記載の医薬。
[8]メトホルミン及びその医薬的に許容しうる塩、並びにジヒドロケルセチン及びその医薬的に許容しうる塩以外の抗悪性腫瘍薬が、分子標的薬、アルキル化剤、代謝拮抗剤、植物アルカロイド、抗がん性抗生物質、ホルモン剤又は免疫療法剤である上記[6]又は[7]に記載の医薬。
[9]上記[1]〜[8]のいずれかに記載の医薬と、該医薬が悪性腫瘍の予防又は治療に使用することができる、又は使用すべきであることを記載した、該医薬に関する記載物を含む、商業パッケージ。
[10]ジヒドロケルセチン又はその医薬的に許容しうる塩を有効成分とする、メトホルミン又はその医薬的に許容しうる塩の副作用軽減剤。
[11]ジヒドロケルセチン又はその医薬的に許容しうる塩を有効成分とする、メトホルミン又はその医薬的に許容しうる塩の抗悪性腫瘍作用の増強剤。
[12]メトホルミン又はその医薬的に許容しうる塩と併用するための、ジヒドロケルセチン又はその医薬的に許容しうる塩を有効成分とする、メトホルミン又はその医薬的に許容しうる塩の副作用軽減剤。
[13]メトホルミン又はその医薬的に許容しうる塩と併用するための、ジヒドロケルセチン又はその医薬的に許容しうる塩を有効成分する抗悪性腫瘍作用の増強剤。
[14]悪性腫瘍を予防又は治療するための医薬を製造するための、ジヒドロケルセチン又はその医薬的に許容しうる塩を、メトホルミン又はその医薬的に許容しうる塩と組み合わせた使用。
[15]悪性腫瘍の予防又は治療方法であって、それを必要とする対象に、メトホルミン又はその医薬的に許容しうる塩、及びジヒドロケルセチン又はその医薬的に許容しうる塩を投与することを含み、メトホルミン又はその医薬的に許容しうる塩、及びジヒドロケルセチン又はその医薬的に許容しうる塩が、一つの製剤又は別々の製剤として、同時に又は時間差をおいて別々に投与する方法。
[16]ジヒドロケルセチン又はその医薬的に許容しうる塩を有効成分とする、膵臓癌を予防又は治療するための医薬。
[17]膵臓癌の予防又は治療方法であって、それを必要とする対象に、ジヒドロケルセチン又はその医薬的に許容しうる塩を投与することを含む方法。
[18]ジヒドロケルセチン又はその医薬的に許容しうる塩の膵臓癌を予防又は治療するための医薬としての使用。
[19]膵臓癌の予防又は治療において使用するためのジヒドロケルセチン又はその医薬的に許容しうる塩。
[20]膵臓癌を予防又は治療するための医薬を製造するための、ジヒドロケルセチン又はその医薬的に許容しうる塩の使用。
[21]ジヒドロケルセチン又はその医薬的に許容しうる塩を有効成分とする、膵臓がん幹細胞抑制剤。
[22]膵臓がん幹細胞の抑制方法であって、それを必要とする対象に、ジヒドロケルセチン又はその医薬的に許容しうる塩を投与することを含む方法。
[23]ジヒドロケルセチン又はその医薬的に許容しうる塩の膵臓がん幹細胞抑制剤としての使用。
[24]膵臓がん幹細胞の抑制において使用するためのジヒドロケルセチン又はその医薬的に許容しうる塩。
[25]膵臓がん幹細胞抑制剤を製造するための、ジヒドロケルセチン又はこれらのその医薬的に許容しうる塩の使用。
[26]ジヒドロケルセチン又はその医薬的に許容しうる塩と併用するための、メトホルミン又はその医薬的に許容しうる塩を含有する医薬。
[27]メトホルミン又はその医薬的に許容しうる塩と併用するための、ジヒドロケルセチン又はその医薬的に許容しうる塩を含有する医薬。
本発明の医薬は、メトホルミン又はその医薬的に許容しうる塩と、ジヒドロケルセチン又はその医薬的に許容しうる塩とを組み合わせることにより、相乗的な抗悪性腫瘍効果を有し、抗悪性腫瘍薬として有用である。
本発明の医薬は、メトホルミン又はその医薬的に許容しうる塩により誘導される血中乳
酸値の上昇をジヒドロケルセチン又はその医薬的に許容しうる塩が抑制することにより、乳酸アシドーシスが軽減された安全な医薬である。
本発明の医薬は、相乗的な抗悪性腫瘍効果を有することから、低用量化が可能となり、ひいてはさらなる副作用の軽減が期待できる。
本発明のジヒドロケルセチン又はその医薬的に許容しうる塩を有効成分とする医薬は、膵臓癌の予防又は治療薬として有用である。
膵臓癌治療の第一選択薬であるゲムシタビンは、後述の実施例12の結果に示されるように、膵臓癌幹細胞については増殖させた。
本発明の医薬は、相乗的な膵臓癌幹細胞抑制効果を有することにより、膵臓癌の予防又は治療薬として特に有用である。また、本発明の医薬とゲムシタビンとの組み合わせは、ゲムシタビン治療による、がん幹細胞の増加、再発リスクの増大という臨床上の問題点を改善することが期待でき、ひいては膵臓癌の予防薬又は治療薬として特に有用である。
本発明のジヒドロケルセチン又はこれらの医薬的に許容しうる塩を有効成分とする医薬は、膵臓がん幹細胞の抑制効果を有することから、膵臓癌の予防又は治療薬として有用であり、さらには膵臓癌の転移の防止や再発の防止が期待される。
図1は実施例1の結果を示す。 図2は実施例2の結果を示す。 図3は実施例3の結果を示す。 図4は実施例10のラセミ体のジヒドロケルセチン((2R,3R)−ジヒドロケルセチン及び(2S,3S)−ジヒドロケルセチン)における結果を示す。 図5は実施例10の光学活性ジヒドロケルセチン((2R,3R)−ジヒドロケルセチン)における結果を示す。 図6は実施例11の結果を示す。 図7は実施例12の結果を示す。図中、Metはメトホルミン、DHQはジヒドロケルセチン、Gemはゲムシタビンを示す。
(I)メトホルミン又はその医薬的に許容しうる塩と、ジヒドロケルセチン又はその医薬的に許容しうる塩との併用
メトホルミンの医薬的に許容しうる塩としては、例えば、無機酸との塩、有機酸との塩、酸性アミノ酸との塩等が挙げられる。
無機酸との塩としては、例えば、塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸等との塩が挙げられる。有機酸との塩としては、例えば、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、フマル酸、シュウ酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等との塩が挙げられる。酸性アミノ酸との塩としては、例えばアスパラギン酸、グルタミン酸等との塩が挙げられる。なかでも、塩酸塩が好ましい。
ジヒドロケルセチンは、ケルセチンのピラン環部分の2位、3位の2重結合が還元された化合物であり、下記の式:

で示される。ジヒドロケルセチンには、2つの不斉炭素原子(クロマン環の2位及び3位)に基づく4つの立体異性体((2R,3R)−ジヒドロケルセチン、(2S,3S)−ジヒドロケルセチン、(2R,3S)−ジヒドロケルセチン、(2S,3R)−ジヒドロケルセチン)が存在するが、本発明におけるジヒドロケルセチンは、これらの異性体の1種又は2種以上の組み合わせ、及びこれらのラセミ体(例えば、(2R,3R)−ジヒドロケルセチン及び(2S,3S)−ジヒドロケルセチンの混合物)のいずれであってもよいが、(2R,3R)−ジヒドロケルセチン及び(2S,3S)−ジヒドロケルセチンのラセミ体、(2R,3R)−ジヒドロケルセチンが好ましく、(2R,3R)−ジヒドロケルセチンが特に好ましい。
該異性体のうち、下記の式:
で示される(2R,3R)−ジヒドロケルセチンは、シベリアカラマツに含まれることが知られており、タキシホリンとも称されている。本発明においては、公知の方法により抽出したタキシホリン等の天然物を使用してもよく、市販品を用いることもできる。
ジヒドロケルセチンの医薬的に許容しうる塩としては、例えば、無機塩基との塩、有機塩基との塩、塩基性アミノ酸との塩等が挙げられる。
無機塩基との塩としては、例えば、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属、アルミニウム、アンモニウム等との塩が挙げられる。有機塩基との塩としては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピコリン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、N,N−ジベンジルエチレンジアミン等との塩が挙げられる。塩基性アミノ酸との塩としては、例えば、アルギニン、リジン、オルニチン等との塩が挙げられる。好適な塩としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩が挙げられる。
本発明において用いられ得るメトホルミン及びその医薬的に許容しうる塩、ジヒドロケルセチン及びその医薬的に許容しうる塩は、また、1個又は複数の原子が、特定の原子質量又は質量数を有する1個又は複数の原子によって置き換わった同一の同位体標識化合物も包含する。これらの化合物に組み込むことができる同位体の例には、各々H、H、13C、14C、15N、18O、17O、33S、34S、36S、18F、36Cl等の水素、炭素、窒素、酸素、硫黄、フッ素、及び塩素同位体を包含する。上記の同位体及び/又は他の原子の他の同位体を含有する、特定の同位体標識された化合物、例えばH及び14C等の放射性同位体が組み込まれている化合物は、薬物組織分布アッセイ及び/又は基質組織分布アッセイにおいて有用である。トリチウム化(すなわち、H)、及び炭素−14(すなわち、14C)同位体は、調製の容易さ及び検出性によって特に好まれる。さらに、重水素(すなわち、H)等のより重い同位体による置換によって、代謝安定性の向上、例えばin vivo半減期の増大又は投与必要量の減少に起因する特定の治療上の利点をもたらすことが期待できる。
本発明の医薬は、メトホルミン又はその医薬的に許容しうる塩と、ジヒドロケルセチン又はその医薬的に許容しうる塩とを組み合わせて用いる。本発明の医薬において、メトホルミン又はその医薬的に許容しうる塩、及びジヒドロケルセチン又はその医薬的に許容しうる塩は、同時に製剤化し、同一の製剤中に含有してもよく、メトホルミン又はその医薬的に許容しうる塩、及びジヒドロケルセチン又はその医薬的に許容しうる塩を別々に製剤化し、同時にあるいは時間差をおいて別々に、同一経路あるいは別経路にて、同一対象に投与してもよい。すなわち、本発明の医薬には、メトホルミン又はその医薬的に許容しうる塩、及びジヒドロケルセチン又はその医薬的に許容しうる塩を一つの製剤中に含有する医薬、メトホルミン又はその医薬的に許容しうる塩を含有する医薬組成物と、ジヒドロケルセチン又はその医薬的に許容しうる塩を含有する医薬組成物とを別々に製剤化して組み合わせて用いる医薬が含まれる。
本発明の医薬は、例えば、メトホルミン若しくはその医薬的に許容しうる塩及び/又はジヒドロケルセチン若しくはその医薬的に許容しうる塩を公知の方法に従って、薬理学的に許容される担体と混合して医薬組成物、例えば錠剤(糖衣錠、フィルムコーティング錠を含む)、散剤、顆粒剤、カプセル剤(ソフトカプセルを含む)、液剤、注射剤、坐剤、徐放性製剤(例、徐放性マイクロカプセル剤)、速放性製剤等として、経口的又は非経口的(例えば、局所、直腸、静脈投与等)に安全に投与することができる。注射剤は、静脈内、筋肉内、皮下又は臓器内投与あるいは直接病巣に投与することができる。
本発明の医薬の製造に用いられてもよい薬理学的に許容される担体としては、慣用の各種有機又は無機担体物質が挙げられ、例えば固形製剤における賦形剤、滑沢剤、結合剤及び崩壊剤、あるいは液状製剤における溶剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤及び無痛化剤等が挙げられる。更に必要に応じ、通常の防腐剤、抗酸化剤、着色剤、甘味剤、吸着剤、湿潤剤等の添加物を適宜、適量用いることもできる。
賦形剤としては、例えば乳糖、ショ糖、D−マンニトール、デンプン、コーンスターチ、結晶セルロース、軽質無水ケイ酸等が挙げられる。
滑沢剤としては、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、コロイドシリカ等が挙げられる。
結合剤としては、例えば結晶セルロース、ショ糖、D−マンニトール、デキストリン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、デンプン、ゼラチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム等が挙げられる。
崩壊剤としては、例えばデンプン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、L−ヒドロキシプロピルセ
ルロース等が挙げられる。
溶剤としては、例えば注射用水、アルコール、プロピレングリコール、マクロゴール、ゴマ油、トウモロコシ油、オリーブ油等が挙げられる。
溶解補助剤としては、例えばポリエチレングリコール、プロピレングリコール、D−マンニトール、安息香酸ベンジル、エタノール、トリスアミノメタン、コレステロール、トリエタノールアミン、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム等が挙げられる。
懸濁化剤としては、例えばステアリルトリエタノールアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルアミノプロピオン酸、レシチン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、モノステアリン酸グリセリン等の界面活性剤;例えばポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等の親水性高分子等が挙げられる。
等張化剤としては、例えばブドウ糖、 D−ソルビトール、塩化ナトリウム、グリセリ
ン、D−マンニトール等が挙げられる。
緩衝剤としては、例えばリン酸塩、酢酸塩、炭酸塩、クエン酸塩等の緩衝液等が挙げられる。
無痛化剤としては、例えばベンジルアルコール等が挙げられる。
防腐剤としては、例えばパラオキシ安息香酸エステル類、クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、デヒドロ酢酸、ソルビン酸等が挙げられる。
抗酸化剤としては、例えば亜硫酸塩、アスコルビン酸、α−トコフェロール等が挙げられる。
本発明の医薬におけるメトホルミン又はその医薬的に許容しうる塩、ジヒドロケルセチン又はその医薬的に許容しうる塩の含有量は、製剤の形態等により適宜選択することができる。
例えば、メトホルミンとジヒドロケルセチンを一つの製剤中に含有する本発明の医薬におけるメトホルミンの含有量は、通常製剤全体に対して約0.01〜約99.99重量%、好ましくは約0.1〜約50重量%、ジヒドロケルセチンの含有量は、通常製剤全体に対して約0.01〜約99.99重量%、好ましくは約0.1〜約50重量%程度である。
本発明の医薬におけるメトホルミンとジヒドロケルセチンとの含有割合は、ジヒドロケルセチン1重量部に対してメトホルミンが0.0005〜300重量部程度である。好ましくは、ジヒドロケルセチン1重量部に対してメトホルミンが0.5〜300重量部程度である。より好ましくは、ジヒドロケルセチン1重量部に対してメトホルミンが0.5〜100重量部程度である。さらに好ましくは、ジヒドロケルセチン1重量部に対してメトホルミンが2.5〜50重量部程度である。特に好ましくは、ジヒドロケルセチン1重量部に対してメトホルミンが2.5〜10重量部程度である。
また、本発明の医薬におけるメトホルミンとジヒドロケルセチンとの含有割合は、ジヒドロケルセチン1モルに対してメトホルミンが1〜600モル程度である。好ましくは、ジヒドロケルセチン1モルに対してメトホルミンが1〜200モル程度である。より好ましくは、ジヒドロケルセチン1モルに対してメトホルミンが5〜100モル程度である。さらに好ましくは、ジヒドロケルセチン1モルに対してメトホルミンが5〜20モル程度である。
本発明の医薬における担体等の添加剤の含有量は、製剤の形態によって相違するが、通常製剤全体に対して約1〜約99.99重量%、好ましくは約10ないし約90重量%程度である。
また、メトホルミン及びジヒドロケルセチンをそれぞれ別々に製剤化する場合、メトホルミンを含有する製剤中のメトホルミンの含有量は、通常製剤全体に対して約0.01〜100重量%、好ましくは約0.1〜約90重量%、ジヒドロケルセチンを含有する製剤
中のジヒドロケルセチンの含有量は、通常製剤全体に対して約0.01〜約100重量%、好ましくは約0.1〜約90重量%程度である。担体等の添加剤の含有量は、上記した通りである。
メトホルミン及びジヒドロケルセチンをそれぞれ別々に製剤化する場合における両者の使用割合は、ジヒドロケルセチン1重量部に対して、メトホルミンが0.0005〜300重量部程度である。好ましくは、ジヒドロケルセチン1重量部に対してメトホルミンが0.5〜300重量部程度である。より好ましくは、ジヒドロケルセチン1重量部に対してメトホルミンが0.5〜100重量部程度である。さらに好ましくは、ジヒドロケルセチン1重量部に対してメトホルミンが2.5〜50重量部程度である。特に好ましくは、ジヒドロケルセチン1重量部に対してメトホルミンが2.5〜10重量部程度である。
また、メトホルミン及びジヒドロケルセチンをそれぞれ別々に製剤化する場合における両者の使用割合は、ジヒドロケルセチン1モルに対して、メトホルミンが0.001〜600重量部程度である。好ましくは、ジヒドロケルセチン1モルに対してメトホルミンが1〜600モル程度である。より好ましくは、ジヒドロケルセチン1モルに対してメトホルミンが1〜200モル程度である。さらに好ましくは、ジヒドロケルセチン1モルに対してメトホルミンが1〜100モル程度である。特に好ましくは、ジヒドロケルセチン1モルに対してメトホルミンが5〜20モル程度である。
メトホルミンの医薬的に許容しうる塩及び/又はジヒドロケルセチンの医薬的に許容しうる塩を使用する場合の製剤中の含有量、それらの含有割合についても、上記メトホルミン、ジヒドロケルセチンについて説明した範囲と同様の範囲が挙げられる。
これらの製剤は、製剤工程において通常一般に用いられる公知の方法により製造することができる。
例えば、注射剤の場合、メトホルミン若しくはその医薬的に許容しうる塩及び/又はジヒドロケルセチン若しくはその医薬的に許容しうる塩は、分散剤(例、ツイーン(Tween)80(アトラスパウダー社製、米国)、HCO 60(日光ケミカルズ製)、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、デキストリン等)、安定化剤(例、アスコルビン酸、ピロ亜硫酸ナトリウム等)、界面活性剤(例、ポリソルベート80、マクロゴール等)、可溶化剤(例、グリセリン、エタノール、カプチゾール(商品名、スルホブチルエーテル−β−シクロデキストリンナトリウム塩)等)、緩衝剤(例、クエン酸、リン酸及びそのアルカリ金属塩、クエン酸及びそのアルカリ金属塩等)、等張化剤(例、塩化ナトリウム、塩化カリウム、マンニトール、ソルビトール、ブドウ糖等)、pH調節剤(例、塩酸、水酸化ナトリウム等)、保存剤(例、パラオキシ安息香酸エチル、安息香酸、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸プロピル、ベンジルアルコール等)、溶解剤(例、濃グリセリン、メグルミン等)、溶解補助剤(例、プロピレングリコール、ショ糖等)、無痛化剤(例、ブドウ糖、ベンジルアルコール等)等と共に水性注射剤に、あるいはオリーブ油、ゴマ油、綿実油、コーン油等の植物油、プロピレングリコール等の溶解補助剤に溶解、懸濁又は乳化して油性注射剤に調製し、注射剤(例、カプチゾール製剤)とすることができる。
例えば、経口投与用製剤(錠剤)の場合、メトホルミン若しくはその医薬的に許容しうる塩及び/又はジヒドロケルセチン若しくはその医薬的に許容しうる塩は、賦形剤(例、乳糖、ショ糖、デンプン、コーンスターチ等)、崩壊剤(例、デンプン、炭酸カルシウム等)、結合剤(例、デンプン、アラビアゴム、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、ゼラチン等)、滑沢剤(例、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール 6000等)等を添加して圧縮成形し、次いで必要により、味のマスキング、腸溶性又は持続性の目的のため公知の方法でコーティングすることにより経口投与用製剤とすることができる。
ここで使用されるコーティング剤としては、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース
、ポリオキシエチレングリコール、ツイーン 80、プルロニック F68、セルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシメチルセルロースアセテートサクシネート、オイドラギット(ローム社製、ドイツ、メタアクリル酸・アクリル酸共重合体)及び色素(例、ベンガラ、二酸化チタン等)等が用いられる。糖衣コーティングとしては、例えば、ショ糖、タルク、アラビアゴム、色素(例、ベンガラ、二酸化チタン等)、艶出し剤(例、ミツロウ等)等が用いられる。
例えば、坐剤の場合、メトホルミン若しくはその医薬的に許容しうる塩及び/又はジヒドロケルセチン若しくはその医薬的に許容しうる塩は、油性基剤(例えば、高級脂肪酸のグリセリド〔例、カカオ脂、ウイテプゾール類(ダイナマイトノーベル社製、ドイツ)等〕、中級脂肪酸〔例、ミグリオール類(ダイナマイトノーベル社製、ドイツ)等〕、植物油(例、ゴマ油、大豆油、綿実油等)等)、水性基剤(例、ポリエチレングリコール類、プロピレングリコール等)、水性ゲル基剤(例、天然ガム類、セルロース誘導体、ビニル重合体、アクリル酸重合体等)等の基材を用いて公知の方法に従って、油性又は水性の固体状、半固体状あるいは液状の坐剤とすることができる。
本発明の医薬は、副作用が軽減されており、ヒト、動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ブタ、サル等)に安全に投与することができる。
本発明の医薬の投与量は、用法、患者の年齢、性別、疾患の程度等に応じて適宜選択すればよい。本発明の医薬の投与量は、成人(体重60kg)1日あたり、メトホルミン又はその医薬的に許容しうる塩が、通常250〜3000mg程度、好ましくは500〜2250mg程度であり、ジヒドロケルセチン又はその医薬的に許容しうる塩が、通常40〜1200mg程度、好ましくは50〜900mg程度である。該投与量を1日1回〜数回に分けて投与される。
本発明の医薬は、悪性腫瘍の予防又は治療剤として有用である。
悪性腫瘍としては、例えば、星細胞腫、悪性の髄芽腫、胚細胞腫瘍、頭蓋咽頭腫及び上衣腫からなる群から選ばれる小児の脳腫瘍;グリオーマ、神経膠腫、髄膜腫、下垂体腺腫及び神経鞘腫からなる群から選ばれる成人の脳腫瘍;上顎洞癌、咽頭癌(例えば、上咽頭癌、中咽頭癌、下咽頭癌)、喉頭癌、口腔癌、口唇癌、舌癌及び耳下腺癌からなる群から選ばれる頭頚部癌;小細胞肺癌、非小細胞肺癌、胸腺腫及び中皮腫からなる群から選ばれる胸部癌及び腫瘍;食道癌、肝臓癌、原発性肝癌、胆嚢癌、胆管癌、胃癌、大腸癌、結腸癌、直腸癌、肛門癌、膵癌及び膵内分泌腫瘍からなる群から選ばれる消化器癌及び腫瘍;陰茎癌、腎盂・尿管癌、腎細胞癌、精巣腫瘍(睾丸腫瘍とも称される)、前立腺癌、膀胱癌、ウイルムス腫瘍及び尿路上皮癌からなる群から選ばれる泌尿器癌及び腫瘍;外陰癌、子宮頸部癌、子宮体部癌、子宮内膜癌、子宮肉腫、絨毛癌、膣癌、乳癌、卵巣癌及び卵巣胚細胞腫瘍からなる群から選ばれる婦人科癌及び腫瘍;成人及び小児の軟部肉腫;骨肉腫及びユーイング腫瘍からなる群から選ばれる骨の腫瘍;副腎皮質癌及び甲状腺癌からなる群から選ばれる内分泌組織の癌及び腫瘍;悪性リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、ホジキン病、多発性骨髄腫、形質細胞性腫瘍、急性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、成人T細胞白血病リンパ腫、慢性骨髄性白血病及び慢性リンパ性白血病からなる群から選ばれる悪性リンパ腫及び白血病;又は、慢性骨髄増殖性疾患、悪性黒色腫、有棘細胞癌、基底細胞癌及び菌状息肉症からなる群から選ばれる皮膚の癌及び腫瘍が挙げられる。
本発明の医薬は、格別顕著な抗悪性腫瘍効果を有するので、メトホルミン及びその医薬的に許容しうる塩、並びにジヒドロケルセチン及びその医薬的に許容しうる塩以外の抗悪性腫瘍薬では効果不十分な患者に対して用いることにより、抗悪性腫瘍効果が期待できる。
本発明の医薬は、さらに、1種又はそれ以上の、メトホルミン及びその医薬的に許容し
うる塩、並びにジヒドロケルセチン及びその医薬的に許容しうる塩以外の抗悪性腫瘍薬を組み合わせてもよい。
メトホルミン及びその医薬的に許容しうる塩、並びにジヒドロケルセチン及びその医薬的に許容しうる塩以外の抗悪性腫瘍薬としては、例えば、分子標的薬、アルキル化剤、代謝拮抗剤、植物アルカロイド、抗がん性抗生物質、ホルモン剤、免疫療法剤等が挙げられる。
前記「分子標的薬」としては、例えば、イマチニブ、ゲフィチニブ、エルロチニブ、スニチニブ、ソラフェニブ、ブリバニブ、チバンチニブ、リニファニブ、ボルテゾミブ、ニロチニブ、ダサチニブ、レスタウルチニブ、ラパチニブ、サリドマイド、レナリドマイド、シロリムス、エベロリムス、テムシロリムス、ボリノスタット、トレチノイン、タミバロテン、リツキシマブ、ベバシズマブ、ラムシルマブ、パニツムマブ、セツキシマブ、トラスツズマブ、アレムツズマブ、ゲムツズマブ、オゾガマイシン、イブリツモマブ チウキセタン、アザシチジン、デシタビン、ゾレドロン酸、アルセニックトリオキサイド、オブリメルセン等が挙げられる。
前記「アルキル化剤」としては、例えば、メクロレタミン;シクロホスファミド;イホスファミド;カルムスチン;ブスルファン;テモゾロミド;プロカルバジン;ロムスチン;ダカルバジン;ベンダムスチン;メルファラン;ニムスチン;ラニムスチン;クロラムブシル;フォテムスチン;オキサリプラチン、シスプラチン、カルボプラチン等のプラチナ製剤等が挙げられる。
前記「代謝拮抗剤」としては、例えば、ゲムシタビン、メトトレキサート、カペシタビン、シタラビン、フルダラビン、クラドリビン、エノシタビン、カルモフール、テガフール、テガフール・ウラシル、テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム、5−フルオロウラシル、ドキシフルリジン、ネララビン、ヒドロキシカルバミド、ペントスタチン、メルカプトプリン、ロイコポリン、ペメトレキセド等が挙げられる。
前記「植物アルカロイド」としては、例えば、イリノテカン、トポテカン、ノギテカン、エトポシド、ソブゾキサン等のトポイソメラーゼ阻害剤(Topoisomerase inhibitor)
;パクリタキセル、アブラキサン(商品名)、ドセタキセル、イクサベピロン、ビンブラスチン、ビンデシン、ビンクリスチン、ビノレルビン、エリブリン等の分裂抑制剤(Mitotic inhibitor)等が挙げられる。
前記「抗がん性抗生物質」としては、例えば、ドキソルビシン、マイトマイシンC、ミトキサントロン、エピルビシン、イダルビシン、ダウノルビシン、アクラルビシン、アムルビシン、ピラルビシン、アクチノマイシンD、ブレオマイシン、ペプロマシン、サイクロスポリン等が挙げられる。
前記「ホルモン剤」としては、例えば、タモキシフェン、アナストロゾール、レトロゾール、エキセメスタン、フルベストラント、フルタミド、ビカルタミド、エストラムスチン、クロルマジノン、トレミフェン、ゴセレリン、プレドニゾン、リュープロレリン、アビラテロン、デキサメタゾン等が挙げられる。
前記「免疫療法剤」としては、例えば、GM−CSF、インターフェロンアルファ2b、インターロイキン2、フィルグラスチム、エポエチンアルファ等が挙げられる。
本発明はまた、上記した本発明の、「メトホルミン又はその医薬的に許容しうる塩と、ジヒドロケルセチン又はその医薬的に許容しうる塩とを組み合わせることを特徴とする医薬」と、該医薬が悪性腫瘍の予防又は治療に使用することができる、又は使用すべきであることを記載した、該医薬に関する記載物を含む、商業パッケージにも関する。
本発明はさらに、ジヒドロケルセチン又はその医薬的に許容しうる塩を有効成分とする、メトホルミン又はその医薬的に許容しうる塩の副作用(特に、乳酸アシドーシス)軽減剤、及び、ジヒドロケルセチン又はその医薬的に許容しうる塩を有効成分とする、メトホルミン又はその医薬的に許容しうる塩の抗悪性腫瘍作用の増強剤にも関する。本発明はまた、メトホルミン又はその医薬的に許容しうる塩と併用するための、ジヒドロケルセチン
又はその医薬的に許容しうる塩を有効成分とする、メトホルミン又はその医薬的に許容しうる塩の副作用(特に、乳酸アシドーシス)軽減剤、及び、メトホルミン又はその医薬的に許容しうる塩と併用するための、ジヒドロケルセチン又はその医薬的に許容しうる塩を有効成分する抗悪性腫瘍作用の増強剤にも関する。
該副作用軽減剤及び該抗悪性腫瘍作用の増強剤において、「メトホルミン」、「メトホルミン又はその医薬的に許容しうる塩」、「ジヒドロケルセチン又はその医薬的に許容しうる塩」の例示、投与形態、投与量、投与対象、対象疾患等は、上記本発明の医薬について例示したものと同様のものが例示される。
(II)ジヒドロケルセチン又はその医薬的に許容しうる塩を有効成分とする医薬
本発明はまた、ジヒドロケルセチン又はその医薬的に許容しうる塩を有効成分とする、膵臓癌を予防又は治療するための医薬、及び、ジヒドロケルセチン又はこれらの医薬的に許容しうる塩を有効成分とする、膵臓がん幹細胞抑制剤にも関する。
「ジヒドロケルセチン又はその医薬的に許容しうる塩」の例示、投与形態、投与対象等は、上記(I)で例示したものと同様のものが例示される。
本発明の医薬及び抑制剤は、例えば、ジヒドロケルセチン若しくはその医薬的に許容しうる塩を公知の方法に従って、薬理学的に許容される担体と混合して医薬組成物、例えば錠剤(糖衣錠、フィルムコーティング錠を含む)、散剤、顆粒剤、カプセル剤(ソフトカプセルを含む)、液剤、注射剤、坐剤、徐放性製剤(例、徐放性マイクロカプセル剤)、速放性製剤等として、経口的又は非経口的(例えば、局所、直腸、静脈投与等)に安全に投与することができる。注射剤は、静脈内、筋肉内、皮下又は臓器内投与あるいは直接病巣に投与することができる。薬理学的に許容される担体としては、上記(I)で例示したものと同様のものが例示される。
これらの製剤は、製剤工程において通常一般に用いられる公知の方法により製造することができる
本発明の医薬及び抑制剤における、ジヒドロケルセチン又はその医薬的に許容しうる塩の含有量は、製剤の形態等により適宜選択することができる。
例えば、ジヒドロケルセチン又はその医薬的に許容しうる塩の含有量は、通常製剤全体に対して約0.01〜約99.99重量%、好ましくは約0.1〜約90重量%程度である。
本発明の医薬及び抑制剤における担体等の添加剤の含有量は、製剤の形態によって相違するが、通常製剤全体に対して約1〜約99.99重量%、好ましくは約10〜約90重量%程度である。
本発明の医薬及び抑制剤は、メトホルミン又はその医薬的に許容しうる塩を含有することが相乗的な抗悪性腫瘍効果を有する点で好ましい。「メトホルミン又はその医薬的に許容しうる塩」の例示は、上記(I)で例示したものと同様のものが例示される。
メトホルミン又はその医薬的に許容しうる塩の含有量は、ジヒドロケルセチン1重量部に対して、通常約0.5〜約100重量%、好ましくは約2.5〜約50重量%、さらに好ましくは約2.5〜約10重量%程度である。
本発明の医薬及び抑制剤は、ゲムシタビンと組み合わせて用いることができる。
ゲムシタビンの投与量は、市販のゲムシタビン製剤の投与量に準じて決定することができる。
本発明の医薬及び抑制剤の投与量は、用法、患者の年齢、性別、疾患の程度等に応じて適宜選択すればよい。該投与量は、成人(体重60kg)1日あたり、ジヒドロケルセチン又はその医薬的に許容しうる塩が、通常40〜1200mg程度、好ましくは50mg〜900mg程度、さらに好ましくは100mg〜1050mg程度である。該投与量を1日1回〜数回に分けて投与される。
以下に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
[実施例1]ヒト肺癌細胞株(NCI−H1299)におけるメトホルミンとジヒドロケルセチンの併用による増殖関連シグナル伝達経路抑制効果(in vitro)
1)被験物質
メトホルミンは和光純薬工業株式会社から購入したものを使用した。ジヒドロケルセチン((2R,3R)−ジヒドロケルセチン及び(2S,3S)−ジヒドロケルセチンのラセミ体)は、Bionet社から購入したものを使用した。
2)被験物質の調製
メトホルミンは10%の非働化(56℃、30分処理)したウシ胎児血清を含むRPMI−1640培地(以下、10%FBS−RPMI1640培地と略す)(NACALAI TESQUE,INC.)に溶解し、200mmol/Lのメトホルミン(最終濃度20mmol/L)を調製した。ジヒドロケルセチンは、エタノールに溶解した後、培地で希釈し5mmol/Lのジヒドロケルセチン(最終濃度0.5mmol/L)を調製した。
3)細胞
ヒト肺癌由来細胞株NCI−H1299はAmerican Type Culture Collection(ATCC)(カタログ番号CRL−5803、Cancer
Res. 1992;52(9 Suppl):2732s−2736s)より入手した。細胞は10%FBS−RPMI1640培地を用いて、37℃、5%COの条件下で培養した。
4)被験物質の添加及び測定
細胞播種翌日に被験物質を添加し6時間培養後、細胞を回収し、調製した全細胞溶解液中に含まれるリン酸化4E−BP1相対蛋白量を測定し、評価した。それぞれの群(N=3)を下記のように処理した。
(1)対照(媒体コントロール)群:1%エタノール含有培地
(2)メトホルミン単独群:メトホルミン 20mmol/L
(3)ジヒドロケルセチン単独群:ジヒドロケルセチン 0.5mmol/L
(4)併用群:メトホルミン 20mmol/L+ジヒドロケルセチン 0.5mmol/L
継代培養しているNCI−H1299細胞をトリプシンで解離し、新鮮培地に懸濁した。この細胞懸濁液の細胞密度を血球計数器で測定し、細胞密度を1×10cells/mLに調製した。これを12wellマルチウエル培養プレート(IWAKI)の各ウエルに0.5mL分注し、37℃、5%COの条件下で一夜培養した。翌日に、各ウエルにメトホルミンを所定の濃度含む培地、ジヒドロケルセチンを所定の濃度含む培地又はメトホルミンとジヒドロケルセチンを所定の濃度含む培地を加えた。6時間培養後に各ウエルの細胞をダルベッコ変法リン酸緩衝生理食塩水(D−PBS)で2回洗浄し、細胞溶解バッファ(Cell Signaling Technology,Inc.)を用いて全細胞溶解液を調製した。遠心後、上清を分取し、リン酸化4E−BP1(Thr37/Thr46)相対蛋白量をELISAキット(Cell Signaling Technology,Inc.)カタログ番号7854を用いて定量した。細胞抽出液中の総蛋白濃度はBCAプロテインアッセイ(Pierce)を用いて測定し、各ウエルのリン酸化4E−BP1相対蛋白量を総蛋白量で補正した。
5)統計解析
結果は、平均値(MEAN)±標準偏差(SD)で示した。
併用群のリン酸化4E−BP1相対蛋白量に対する影響を評価する目的で、併用群と各単剤処理群の間で、それぞれDunnett検定を行った。各単剤処理群に対して併用群
に有意差が認められた場合、メトホルミン単独群(1、2群)とジヒドロケルセチン単独群(3、4群)の間の相乗効果を評価する目的で、2元配置分散分析(両側)(two−way ANOVA(two−tailed))(要因:群及び濃度)を行った。分析にはSAS Software Release 9.3(SAS Institute Japan)を用いた。p値が0.05未満の場合に統計的に有意差ありとした。
6)結果
メトホルミンとジヒドロケルセチンの併用により、各単独化合物群よりもリン酸化4E−BP1相対蛋白量を有意に強く抑制した(図1)。
7)結論
NCI−H1299細胞において、メトホルミンとジヒドロケルセチンの併用による増殖関連シグナル伝達経路抑制の相乗的併用効果が認められた。これは、がん化学療法におけるメトホルミンとジヒドロケルセチンとの併用の有用性を示した。
[実施例2]ヒト膵臓癌細胞株(AsPC−1)におけるメトホルミンとジヒドロケルセチンの併用によるがん細胞増殖関連シグナル伝達経路抑制効果(in vitro)
1)被験物質
メトホルミンは和光純薬工業株式会社から購入したものを使用した。ジヒドロケルセチン((2R,3R)−ジヒドロケルセチン及び(2S,3S)−ジヒドロケルセチンのラセミ体)は、Bionet社から購入したものを使用した。
2)被験物質の調製
メトホルミンは10%FBS−RPMI1640培地に溶解し、200mmol/Lのメトホルミン(最終濃度20mmol/L)を調製した。ジヒドロケルセチンは、エタノールに溶解した後、培地で希釈し2mmol/Lのジヒドロケルセチン(最終濃度0.2mmol/L)を調製した。
3)細胞
ヒト膵臓癌由来細胞株AsPC−1は大日本製薬株式会社(現DSファーマバイオメディカル株式会社、In Vitro. 1982;18:24−34)より入手した。細胞は10%FBS−RPMI1640培地を用いて、37℃、5%COの条件下で培養した。
4)被験物質の添加及び測定
細胞播種翌日に被験物質を添加し6時間培養後、細胞を回収し、調製した全細胞溶解液中に含まれるリン酸化4E−BP1相対蛋白量を測定し、評価した。それぞれの群(N=3)を下記のように処理した。
(1)対照(媒体コントロール)群:1%エタノール含有培地
(2)メトホルミン単独群:メトホルミン 20mmol/L
(3)ジヒドロケルセチン単独群:ジヒドロケルセチン 0.2mmol/L
(4)併用群:メトホルミン 20mmol/L+ジヒドロケルセチン 0.2mmol/L
継代培養しているAsPC−1細胞をトリプシンで解離し、新鮮培地に懸濁した。この細胞懸濁液の細胞密度を血球計数器で測定し、細胞密度を1×10cells/mLに調製した。これを12wellマルチウエル培養プレートの各ウエルに0.5mL分注し、37℃、5%COの条件下で一夜培養した。翌日に、各ウエルにメトホルミンを所定の濃度含む培地、ジヒドロケルセチンを所定の濃度含む培地又はメトホルミンとジヒドロケルセチンを所定の濃度含む培地を加えた。6時間培養後に各ウエルの細胞をD−PBSで2回洗浄し、細胞溶解バッファを用いて全細胞溶解液を調製した。遠心後、上清を分取し、リン酸化4E−BP1(Thr37/Thr46)相対蛋白量を実施例1と同様にELISAキットを用いて定量した。全細胞溶解液中の総蛋白濃度はBCAプロテインアッセイを用いて測定し、各ウエルのリン酸化4E−BP1相対蛋白量を総蛋白量で補正した。
5)統計解析
結果は、平均値(MEAN)±標準偏差(SD)で示した。
併用群のリン酸化4E−BP1相対蛋白量に対する影響を評価する目的で、併用群と各単剤処理群の間で、それぞれDunnett検定を行った。各単剤処理群に対して併用群に有意差が認められた場合、メトホルミン単独群(1、2群)とジヒドロケルセチン単独群(3、4群)の間の相乗効果を評価する目的で、2元配置分散分析(両側)(two−way ANOVA(two−tailed))(要因:群及び濃度)を行った。分析にはSAS Software Release 9.3(SAS Institute Japan)を用いた。p値が0.05未満の場合に統計的に有意差ありとした。
6)結果
メトホルミンとジヒドロケルセチンの併用により、各単独化合物群よりもリン酸化4E−BP1相対蛋白量を有意に強く抑制した(図2)。
7)結論
AsPC−1細胞において、メトホルミンとジヒドロケルセチンの併用による増殖関連シグナル伝達経路抑制の相乗的併用効果が認められた。これは、がん化学療法におけるメトホルミンとジヒドロケルセチンとの併用の有用性を示す。
[実施例3]ヒト肺線維芽細胞株(WI−38)における、メトホルミン誘導乳酸産生に対するジヒドロケルセチンの抑制効果(in vitro)
1)被験物質
メトホルミンは和光純薬工業株式会社から購入したものを使用した。ジヒドロケルセチン((2R,3R)−ジヒドロケルセチン及び(2S,3S)−ジヒドロケルセチンのラセミ体)は、Bionet社から購入したものを使用した。
2)被験物質の調製
メトホルミンは10%FBS−RPMI1640培地に溶解し、200mmol/Lのメトホルミン(最終濃度20mmol/L)を調製した。ジヒドロケルセチンは、エタノールに溶解した後、培地で希釈し10mmol/Lのジヒドロケルセチン(最終濃度1mmol/L)を調製した。
3)細胞
ヒト肺線維芽細胞由来細胞株WI−38はATCC(カタログ番号CCL−75、Exp. Cell Res. 25:585−621,1961)より入手した。細胞は10%FBS−RPMI1640培地を用いて、37℃、5%COの条件下で培養した。4)被験物質の添加及び測定
細胞播種翌日にジヒドロケルセチンを加えて1時間培養後、更にメトホルミンを加えて6時間培養後、培地を回収し、培地中に含まれる乳酸濃度を測定し、評価した。それぞれの群(N=3)を下記のように処理した。
(1)対照(媒体コントロール)群:1%エタノール含有培地
(2)メトホルミン単独群:メトホルミン 20mmol/L
(3)ジヒドロケルセチン及びメトホルミン併用群:メトホルミン 20mmol/L+ジヒドロケルセチン 1mmol/L
継代培養しているWI−38細胞をトリプシンで解離し、新鮮培地に懸濁した。この細胞懸濁液の細胞密度を血球計数器で測定し、細胞密度を2.5×10cells/mLに調製した。これを24wellマルチウエル培養プレート(IWAKI)の各ウエルに0.5mLずつ分注し、37℃、5%COの条件下で一夜培養した。各ウエルにジヒドロケルセチンを所定の濃度含む培地を加え1時間培養後、メトホルミンを所定の濃度含む培地を加え、さらに6時間培養後に各ウエルの培養上清を分取した。分取した培地は分画分子量10kDaのフィルターに通しろ液を分取後、Lactate Assay Kit II(BioVision)カタログ番号K627−100を用いて乳酸濃度を測定した。培養上清分取後の細胞は、D−PBSで2回洗浄後、細胞溶解バッファを加えて全細胞溶解液を調製した。全細胞溶解液中の蛋白濃度はBCAプロテインアッセイを用いて測定し、各ウエルの乳酸濃度を蛋白濃度で補正した。
5)統計解析
結果は、平均値(MEAN)±標準偏差(SD)で示した。
ジヒドロケルセチンのメトホルミン誘導乳酸産生量に対する影響を評価する目的で、培地中乳酸濃度に関してメトホルミン単独群と併用群との間で、Studentのt検定を行った。併用群の値がメトホルミン単独群に比較して有意に低い場合に、ジヒドロケルセチンは産生量に対して抑制効果ありとした。分析にはSAS Software Release 9.3(SAS Institute Japan)を用いた。p値が0.05未満の場合に統計的に有意差ありとした。
6)結果
メトホルミンは、WI−38細胞からの乳酸産生を誘導した。ジヒドロケルセチンはメトホルミンが誘導した乳酸産生を有意に抑制した(図3)。
7)結論
WI−38細胞において、メトホルミン誘導乳酸産生に対するジヒドロケルセチンの抑制効果が認められた。これは、ジヒドロケルセチンがメトホルミン投与による乳酸アシドーシスのリスクを減らすという臨床での有用性を示した。
[実施例4]ヒト肝臓癌細胞株(HuH−7)におけるメトホルミンとジヒドロケルセチンの併用によるがん細胞増殖関連シグナル伝達経路抑制効果(in vitro)
1)被験物質
メトホルミンは和光純薬工業株式会社から購入したものを使用した。ジヒドロケルセチン((2R,3R)−ジヒドロケルセチン及び(2S,3S)−ジヒドロケルセチンのラセミ体)は、Bionet社から購入したものを使用した。
2)被験物質の調製
メトホルミンは10%FBS−RPMI1640培地に溶解し、50mmol/Lのメトホルミン(最終濃度5mmol/L)を調製した。ジヒドロケルセチンは、エタノールに溶解した後、培地で希釈し2mmol/Lのジヒドロケルセチン(最終濃度0.2mmol/L)を調製した。
3)細胞
ヒト肝臓癌由来細胞株HuH−7はヒューマンサイエンス研究資源バンク(Cancer Res.1982;42(9):3858−63)より入手した。細胞は10%FBS−RPMI1640培地を用いて、37℃、5%COの条件下で培養した。
4)被験物質の添加及び測定
細胞播種翌日に被験物質を添加し6時間培養後、細胞を回収し、調製した全細胞溶解液中に含まれるリン酸化4E−BP1相対蛋白量を測定し、評価した。それぞれの群(N=3)を下記のように処理した。
(1)対照(媒体コントロール)群:1%エタノール含有培地
(2)メトホルミン単独群:メトホルミン 5mmol/L
(3)ジヒドロケルセチン単独群:ジヒドロケルセチン 0.2mmol/L
(4)併用群:メトホルミン 5mmol/L+ジヒドロケルセチン 0.2mmol/L
継代培養しているHuH−7細胞をトリプシンで解離し、新鮮培地に懸濁した。この細胞懸濁液の細胞密度を血球計数器で測定し、細胞密度を2.5×10cells/mLに調製した。これを12wellマルチウエル培養プレートの各ウエルに1mL分注し、37℃、5%COの条件下で一夜培養した。翌日に、各ウエルにメトホルミンを所定の濃度含む培地、ジヒドロケルセチンを所定の濃度含む培地又はメトホルミンとジヒドロケルセチンを所定の濃度含む培地を加えた。6時間培養後に各ウエルの細胞をD−PBSで2回洗浄し、細胞溶解バッファを用いて全細胞溶解液を調製した。遠心後、上清を分取し、リン酸化4E−BP1(Thr37/Thr46)相対蛋白量を実施例1と同様にELISAキットを用いて定量した。全細胞溶解液中の総蛋白濃度はBCAプロテインアッセイを用いて測定し、各ウエルのリン酸化4E−BP1相対蛋白量を総蛋白量で補正した。5)統計解析
結果は、平均値(MEAN)±標準偏差(SD)で示した。
併用群のリン酸化4E−BP1相対蛋白量に対する影響を評価する目的で、併用群と各単剤処理群の間で、それぞれDunnett検定を行った。各単剤処理群に対して併用群に有意差が認められた場合、メトホルミン単独群(1、2群)とジヒドロケルセチン単独群(3、4群)の間の相乗効果を評価する目的で、2元配置分散分析(両側)(two−way ANOVA(two−tailed))(要因:群及び濃度)を行った。分析にはSAS Software Release 9.3(SAS Institute Japan)を用いた。p値が0.05未満の場合に統計的に有意差ありとした。
6)結果
結果を表1に示す。
メトホルミンとジヒドロケルセチンの併用により、各単独化合物群よりもリン酸化4E−BP1相対蛋白量を有意に強く抑制した。
7)結論
HuH−7細胞において、メトホルミンとジヒドロケルセチンの併用によるがん細胞増殖関連シグナル伝達経路抑制の相乗併用効果が認められた。これは、がん化学療法におけるメトホルミンとジヒドロケルセチンとの併用の有用性を示した。
[実施例5]ヒト乳癌細胞株(MDA−MB−231)におけるメトホルミンとジヒドロケルセチンの併用によるがん細胞増殖関連シグナル伝達経路抑制効果(in vitro)
1)被験物質
メトホルミンは和光純薬工業株式会社から購入したものを使用した。ジヒドロケルセチン((2R,3R)−ジヒドロケルセチン及び(2S,3S)−ジヒドロケルセチンのラセミ体)は、Bionet社から購入したものを使用した。
2)被験物質の調製
メトホルミンは10%FBS−RPMI1640培地に溶解し、50mmol/Lのメトホルミン(最終濃度5mmol/L)を調製した。ジヒドロケルセチンは、エタノールに溶解した後、培地で希釈し2mmol/Lのジヒドロケルセチン(最終濃度0.2mmol/L)を調製した。
3)細胞
ヒト乳癌由来細胞株MDA−MB−231はATCC(J Natl Cancer Inst.1974;53(3):661−74)より入手した。細胞は10%FBS−RPMI1640培地を用いて、37℃、5%COの条件下で培養した。
4)被験物質の添加及び測定
細胞播種翌日に被験物質を添加し6時間培養後、細胞を回収し、調製した全細胞溶解液中に含まれるリン酸化4E−BP1相対蛋白量を測定し、評価した。それぞれの群(N=3)を下記のように処理した。
(1)対照(媒体コントロール)群:1%エタノール含有培地
(2)メトホルミン単独群:メトホルミン 5mmol/L
(3)ジヒドロケルセチン単独群:ジヒドロケルセチン 0.2mmol/L
(4)併用群:メトホルミン 5mmol/L+ジヒドロケルセチン 0.2mmol/L
継代培養しているMDA−MB−231細胞をトリプシンで解離し、新鮮培地に懸濁した。この細胞懸濁液の細胞密度を血球計数器で測定し、細胞密度を2.5×10cells/mLに調製した。これを12wellマルチウエル培養プレートの各ウエルに1mL分注し、37℃、5%COの条件下で一夜培養した。翌日に、各ウエルにメトホルミンを所定の濃度含む培地、ジヒドロケルセチンを所定の濃度含む培地又はメトホルミンとジヒドロケルセチンを所定の濃度含む培地を加えた。6時間培養後に各ウエルの細胞をD−PBSで2回洗浄し、細胞溶解バッファを用いて全細胞溶解液を調製した。遠心後、上清を分取し、リン酸化4E−BP1(Thr37/Thr46)相対蛋白量を実施例1と同様にELISAキットを用いて定量した。全細胞溶解液中の総蛋白濃度はBCAプロテインアッセイを用いて測定し、各ウエルのリン酸化4E−BP1相対蛋白量を総蛋白量で補正した。
5)統計解析
結果は、平均値(MEAN)±標準偏差(SD)で示した。
併用群のリン酸化4E−BP1相対蛋白量に対する影響を評価する目的で、併用群と各単剤処理群の間で、それぞれDunnett検定を行った。各単剤処理群に対して併用群に有意差が認められた場合、メトホルミン単独群(1、2群)とジヒドロケルセチン単独群(3、4群)の間の相乗効果を評価する目的で、2元配置分散分析(両側)(two−way ANOVA(two−tailed))(要因:群及び濃度)を行った。分析にはSAS Software Release 9.3(SAS Institute Japan)を用いた。p値が0.05未満の場合に統計的に有意差ありとした。
6)結果
結果を表2に示す。
メトホルミンとジヒドロケルセチンの併用により、各単独化合物群よりもリン酸化4E−BP1相対蛋白量を有意に強く抑制した。
7)結論
MDA−MB−231細胞において、メトホルミンとジヒドロケルセチンの併用による増殖関連シグナル伝達経路抑制の相乗併用効果が認められた。これは、がん化学療法におけるメトホルミンとジヒドロケルセチンとの併用の有用性を示した。
[実施例6]ヒト前立腺癌細胞株(22Rv1)におけるメトホルミンとジヒドロケルセチンの併用によるがん細胞増殖関連シグナル伝達経路抑制効果(in vitro)
1)被験物質
メトホルミンは和光純薬工業株式会社から購入したものを使用した。ジヒドロケルセチ
ン((2R,3R)−ジヒドロケルセチン及び(2S,3S)−ジヒドロケルセチンのラセミ体)は、Bionet社から購入したものを使用した。
2)被験物質の調製
メトホルミンは10%FBS−RPMI1640培地に溶解し、100mmol/Lのメトホルミン(最終濃度10mmol/L)を調製した。ジヒドロケルセチンは、エタノールに溶解した後、培地で希釈し2mmol/Lのジヒドロケルセチン(最終濃度0.2mmol/L)を調製した。
3)細胞
ヒト前立腺癌由来細胞株22Rv1はATCC(In Vitro Cell Dev
Biol Anim.1999;35(7):403−9)より入手した。細胞は10%FBS−RPMI1640培地を用いて、37℃、5%COの条件下で培養した。
4)被験物質の添加及び測定
細胞播種翌日に被験物質を添加し6時間培養後、細胞を回収し、調製した全細胞溶解液中に含まれるリン酸化4E−BP1相対蛋白量を測定し、評価した。それぞれの群(N=3)を下記のように処理した。
(1)対照(媒体コントロール)群:1%エタノール含有培地
(2)メトホルミン単独群:メトホルミン 10mmol/L
(3)ジヒドロケルセチン単独群:ジヒドロケルセチン 0.2mmol/L
(4)併用群:メトホルミン 10mmol/L+ジヒドロケルセチン 0.2mmol/L
継代培養している22Rv1細胞をトリプシンで解離し、新鮮培地に懸濁した。この細胞懸濁液の細胞密度を血球計数器で測定し、細胞密度を2.5×10cells/mLに調製した。これを12wellマルチウエル培養プレートの各ウエルに1mL分注し、37℃、5%COの条件下で一夜培養した。翌日に、各ウエルにメトホルミンを所定の濃度含む培地、ジヒドロケルセチンを所定の濃度含む培地又はメトホルミンとジヒドロケルセチンを所定の濃度含む培地を加えた。6時間培養後に各ウエルの細胞をD−PBSで2回洗浄し、細胞溶解バッファを用いて全細胞溶解液を調製した。遠心後、上清を分取し、リン酸化4E−BP1(Thr37/Thr46)相対蛋白量を実施例1と同様にELISAキットを用いて定量した。全細胞溶解液中の総蛋白濃度はBCAプロテインアッセイを用いて測定し、各ウエルのリン酸化4E−BP1相対蛋白量を総蛋白量で補正した。5)統計解析
結果は、平均値(MEAN)±標準偏差(SD)で示した。
併用群のリン酸化4E−BP1相対蛋白量に対する影響を評価する目的で、併用群と各単剤処理群の間で、それぞれDunnett検定を行った。各単剤処理群に対して併用群に有意差が認められた場合、メトホルミン単独群(1、2群)とジヒドロケルセチン単独群(3、4群)の間の相乗効果を評価する目的で、2元配置分散分析(両側)(two−way ANOVA(two−tailed))(要因:群及び濃度)を行った。分析にはSAS Software Release 9.3(SAS Institute Japan)を用いた。p値が0.05未満の場合に統計的に有意差ありとした。
6)結果
結果を表3に示す。
メトホルミンとジヒドロケルセチンの併用により、各単独化合物群よりもリン酸化4E−BP1相対蛋白量を有意に強く抑制した。
7)結論
22Rv1細胞において、メトホルミンとジヒドロケルセチンの併用による増殖関連シグナル伝達経路抑制の相乗併用効果が認められた。これは、がん化学療法におけるメトホルミンとジヒドロケルセチンとの併用の有用性を示した。
[実施例7]ヒト胆管癌細胞株(HuH−28)におけるメトホルミンとジヒドロケルセチンの併用によるがん細胞増殖関連シグナル伝達経路抑制効果(in vitro)
1)被験物質
メトホルミンは和光純薬工業株式会社から購入したものを使用した。ジヒドロケルセチン((2R,3R)−ジヒドロケルセチン及び(2S,3S)−ジヒドロケルセチンのラセミ体)は、Bionet社から購入したものを使用した。
2)被験物質の調製
メトホルミンは10%FBS−RPMI1640培地に溶解し、200mmol/Lのメトホルミン(最終濃度20mmol/L)を調製した。ジヒドロケルセチンは、エタノールに溶解した後、培地で希釈し2mmol/Lのジヒドロケルセチン(最終濃度0.2mmol/L)を調製した。
3)細胞
ヒト胆管癌由来細胞株HuH−28はヒューマンサイエンス研究資源バンク(Res Exp Med (Berl).1988;188(5):367−75)より入手した。細胞は10%FBS−RPMI1640培地を用いて、37℃、5%COの条件下で培養した。
4)被験物質の添加及び測定
細胞播種翌日に被験物質を添加し6時間培養後、細胞を回収し、調製した全細胞溶解液中に含まれるリン酸化4E−BP1相対蛋白量を測定し、評価した。それぞれの群(N=3)を下記のように処理した。
(1)対照(媒体コントロール)群:1%エタノール含有培地
(2)メトホルミン単独群:メトホルミン 20mmol/L
(3)ジヒドロケルセチン単独群:ジヒドロケルセチン 0.2mmol/L
(4)併用群:メトホルミン 20mmol/L+ジヒドロケルセチン 0.2mmol/L
継代培養しているHuH−28細胞をトリプシンで解離し、培地に懸濁した。この細胞懸濁液の細胞密度を血球計数器で測定し、細胞密度を2.5×10cells/mLに調製した。これを12wellマルチウエル培養プレートの各ウエルに1mL分注し、37℃、5%COの条件下で一夜培養した。翌日に、各ウエルにメトホルミンを所定の濃度含む培地、ジヒドロケルセチンを所定の濃度含む培地又はメトホルミンとジヒドロケルセチンを所定の濃度含む培地を加えた。6時間培養後に各ウエルの細胞をD−PBSで2回洗浄し、細胞溶解バッファを用いて全細胞溶解液を調製した。遠心後、上清を分取し、リン酸化4E−BP1(Thr37/Thr46)相対蛋白量を実施例1と同様にELI
SAキットを用いて定量した。全細胞溶解液中の総蛋白濃度はBCAプロテインアッセイを用いて測定し、各ウエルのリン酸化4E−BP1相対蛋白量を総蛋白量で補正した。
5)統計解析
結果は、平均値(MEAN)±標準偏差(SD)で示した。
併用群のリン酸化4E−BP1相対蛋白量に対する影響を評価する目的で、併用群と各単剤処理群の間で、それぞれDunnett検定を行った。各単剤処理群に対して併用群に有意差が認められた場合、メトホルミン単独群(1、2群)とジヒドロケルセチン単独群(3、4群)の間の相乗効果を評価する目的で、2元配置分散分析(両側)(two−way ANOVA(two−tailed))(要因:群及び濃度)を行った。分析にはSAS Software Release 9.3(SAS Institute Japan)を用いた。p値が0.05未満の場合に統計的に有意差ありとした。
6)結果
結果を表4に示す。
メトホルミンとジヒドロケルセチンの併用により、各単独化合物群よりもリン酸化4E−BP1相対蛋白量を有意に強く抑制した。
7)結論
HuH−28細胞において、メトホルミンとジヒドロケルセチンの併用による増殖関連シグナル伝達経路抑制の相乗併用効果が認められた。これは、がん化学療法におけるメトホルミンとジヒドロケルセチンとの併用の有用性を示した。
[実施例8]ヒト卵巣癌細胞株(Caov−3)におけるメトホルミンとジヒドロケルセチンの併用によるがん細胞増殖関連シグナル伝達経路抑制効果(in vitro)
1)被験物質
メトホルミンは和光純薬工業株式会社から購入したものを使用した。ジヒドロケルセチン((2R,3R)−ジヒドロケルセチン及び(2S,3S)−ジヒドロケルセチンのラセミ体)は、Bionet社から購入したものを使用した。
2)被験物質の調製
メトホルミンは10%FBS−RPMI1640培地に溶解し、200mmol/Lのメトホルミン(最終濃度20mmol/L)を調製した。ジヒドロケルセチンは、エタノールに溶解した後、培地で希釈し2mmol/Lのジヒドロケルセチン(最終濃度0.2mmol/L)を調製した。
3)細胞
ヒト卵巣癌由来細胞株Caov−3はATCC(GYNECOL ONCOL.1994;53(1):70−7)より入手した。細胞は10%FBS−RPMI1640培地を用いて、37℃、5%COの条件下で培養した。
4)被験物質の添加及び測定
細胞播種翌日に被験物質を添加し6時間培養後、細胞を回収し、調製した全細胞溶解液
中に含まれるリン酸化4E−BP1相対蛋白量を測定し、評価した。それぞれの群(N=3)を下記のように処理した。
(1)対照(媒体コントロール)群:1%エタノール含有培地
(2)メトホルミン単独群:メトホルミン 20mmol/L
(3)ジヒドロケルセチン単独群:ジヒドロケルセチン 0.2mmol/L
(4)併用群:メトホルミン 20mmol/L+ジヒドロケルセチン 0.2mmol/L
継代培養しているCaov−3細胞をトリプシンで解離し、新鮮培地に懸濁した。この細胞懸濁液の細胞密度を血球計数器で測定し、細胞密度を2.5×10cells/mLに調製した。これを12wellマルチウエル培養プレートの各ウエルに1mL分注し、37℃、5%COの条件下で一夜培養した。翌日に、各ウエルにメトホルミンを所定の濃度含む培地、ジヒドロケルセチンを所定の濃度含む培地又はメトホルミンとジヒドロケルセチンを所定の濃度含む培地を加えた。6時間培養後に各ウエルの細胞をD−PBSで2回洗浄し、細胞溶解バッファを用いて全細胞溶解液を調製した。遠心後、上清を分取し、リン酸化4E−BP1(Thr37/Thr46)相対蛋白量を実施例1と同様にELISAキットを用いて定量した。全細胞溶解液中の総蛋白濃度はBCAプロテインアッセイを用いて測定し、各ウエルのリン酸化4E−BP1相対蛋白量を総蛋白量で補正した。
5)統計解析
結果は、平均値(MEAN)±標準偏差(SD)で示した。
併用群のリン酸化4E−BP1相対蛋白量に対する影響を評価する目的で、併用群と各単剤処理群の間で、それぞれDunnett検定を行った。各単剤処理群に対して併用群に有意差が認められた場合、メトホルミン単独群(1、2群)とジヒドロケルセチン単独群(3、4群)の間の相乗効果を評価する目的で、2元配置分散分析(両側)(two−way ANOVA(two−tailed))(要因:群及び濃度)を行った。分析にはSAS Software Release 9.3(SAS Institute Japan)を用いた。p値が0.05未満の場合に統計的に有意差ありとした。
6)結果
結果を表5に示す。
メトホルミンとジヒドロケルセチンの併用により、各単独化合物群よりもリン酸化4E−BP1相対蛋白量を有意に強く抑制した。
7)結論
Caov−3細胞において、メトホルミンとジヒドロケルセチンの併用による増殖関連シグナル伝達経路抑制の相乗併用効果が認められた。これは、がん化学療法におけるメトホルミンとジヒドロケルセチンとの併用の有用性を示した。
[実施例9]ヒト膵臓癌細胞株(AsPC−1)におけるメトホルミンとジヒドロケルセ
チンの併用によるがん細胞増殖関連シグナル伝達経路抑制効果(in vitro)
1)被験物質
メトホルミンは和光純薬工業株式会社から購入したものを使用した。ジヒドロケルセチン((2R,3R)−ジヒドロケルセチン及び(2S,3S)−ジヒドロケルセチンのラセミ体)は、Bionet社から購入したものを使用した。
2)被験物質の調製
メトホルミンは10%FBS−RPMI1640培地に溶解し、15、30及び60mmol/Lのメトホルミン(最終濃度1.5、3及び6mmol/L)を調製した。ジヒドロケルセチンは、エタノールに溶解した後、培地で希釈し3mmol/Lのジヒドロケルセチン(最終濃度0.3mmol/L)を調製した。
3)細胞
ヒト膵癌由来細胞株AsPC−1は、DSファーマバイオメディカル株式会社より入手した。細胞は10%FBS−RPMI1640培地を用いて、37℃、5%COの条件下で培養した。
4)被験物質の添加及び測定
それぞれの群(N=3)を下記のように処理した。
(1)対照(媒体コントロール)群:1%エタノール含有培地
(2)メトホルミン単独群:メトホルミン 1.5、3及び6mmol/L
(3)ジヒドロケルセチン単独群:ジヒドロケルセチン 0.3mmol/L
(4)併用群:メトホルミン 1.5、3及び6mmol/L+ジヒドロケルセチン 0
.3mmol/L
継代培養しているAsPC−1細胞をトリプシンで解離し、新鮮培地に懸濁した。この細胞懸濁液の細胞密度を血球計数器で測定し、細胞密度を2.5×10cells/mLに調製した。これを12wellマルチウエル培養プレートの各ウエルに1mL分注し、37℃、5%COの条件下で一夜培養した。翌日に、各ウエルにメトホルミンを所定の濃度含む培地、ジヒドロケルセチンを所定の濃度含む培地又はメトホルミンとジヒドロケルセチンを所定の濃度含む培地を加えた。37℃、5%COの条件下で24時間培養後に各ウエルの細胞をD−PBSで2回洗浄し、細胞溶解バッファを用いて全細胞溶解液を調製した。遠心後、上清を分取し、リン酸化4E−BP1(Thr37/Thr46)相対蛋白量を実施例1と同様にELISAキットを用いて定量した。全細胞溶解液中の総蛋白濃度はBCAプロテインアッセイを用いて測定し、各ウエルのリン酸化4E−BP1相対蛋白量を総蛋白量で補正した。
5)統計解析
結果は、平均値(MEAN)±標準偏差(SD)で示した。
併用群のリン酸化4E−BP1相対蛋白量に対する影響を評価する目的で、併用群と各単剤処理群の間で、それぞれDunnett検定を行った。各単剤処理群に対して併用群に有意差が認められた場合、メトホルミン単独群(1、2群)とジヒドロケルセチン単独群(3、4群)の間の相乗効果を評価する目的で、2元配置分散分析(両側)(two−way ANOVA(two−tailed))(要因:群及び濃度)を行った。分析にはSAS Software Release 9.3(SAS Institute Japan)を用いた。p値が0.05未満の場合に統計的に有意差ありとした。
6)結果
結果を表6〜8に示す。
メトホルミンとジヒドロケルセチンの併用により、各単独化合物群よりもリン酸化4E−BP1相対蛋白量を有意に強く抑制した。
7)結論
AsPC−1細胞において、メトホルミンとジヒドロケルセチンの併用による増殖関連シグナル伝達経路抑制の相乗併用効果が認められた。これは、がん化学療法におけるメトホルミンとジヒドロケルセチンとの併用の有用性を示した。
[実施例10]ヒト肺線維芽細胞株(WI−38)における、メトホルミン誘導乳酸産生に対するジヒドロケルセチンの抑制効果(in vitro)
1)被験物質
メトホルミンは和光純薬工業株式会社から購入したものを使用した。ラセミ体のジヒドロケルセチン((2R,3R)−ジヒドロケルセチン及び(2S,3S)−ジヒドロケルセチン)は、Bionet社から、光学活性ジヒドロケルセチン((2R,3R)−ジヒドロケルセチン)はSIGMA社から購入したものを使用した。
2)被験物質の調製
メトホルミンは10%FBS−RPMI1640培地に溶解し、200mmol/Lの
メトホルミン(最終濃度20mmol/L)を調製した。ジヒドロケルセチンは、エタノールに溶解した後、培地で希釈し10mmol/Lのジヒドロケルセチン(最終濃度1mmol/L)を調製した。
3)細胞
ヒト肺線維芽細胞由来細胞株WI−38はATCC(カタログ番号CCL−75、Exp.Cell.Res,25:585−621,1961)より入手した。細胞は10%FBS−RPMI1640培地を用いて、37℃、5%COの条件下で培養した。
4)被験物質の添加及び測定
細胞播種翌日にジヒドロケルセチンを加えて1時間培養後、更にメトホルミンを加えて6時間培養後、培地を回収し、培地中に含まれる乳酸濃度を測定し、評価した。それぞれの群(N=3)を下記のように処理した。
(1)対照(媒体コントロール)群:1%エタノール含有培地
(2)ジヒドロケルセチン単独群:ジヒドロケルセチン 1mmol/L
(3)メトホルミン単独群:メトホルミン 20mmol/L
(4)併用群:メトホルミン 20mmol/L+ジヒドロケルセチン 1mmol/L
継代培養しているWI−38細胞をトリプシンで解離し、新鮮培地に懸濁した。この細胞懸濁液の細胞密度を血球計数器で測定し、細胞密度を2.5×10cells/mLに調製した。これを24wellマルチウエル培養プレート(IWAKI)の各ウエルに0.5mLずつ分注し、37℃、5%COの条件下で一夜培養した。これにジヒドロケルセチンを所定の濃度含む培地を加え1時間培養後、メトホルミンを所定の濃度含む培地を加え、6時間培養後に各ウエルの培養上清を分取した。分取した培地は分画分子量10kDaのフィルターに通しろ液を分取後、Lactate Assay Kit II(BioVision)カタログ番号K627−100を用いて乳酸濃度を測定した。培養上清分取後の細胞は、D−PBSで2回洗浄後、細胞溶解バッファを加えて全細胞溶解液を調製した。全細胞溶解液中の蛋白濃度はBCAプロテインアッセイを用いて測定し、各ウエルの乳酸濃度を蛋白濃度で補正した。
5)統計解析
結果は、平均値(MEAN)±標準偏差(SD)で示した。
ジヒドロケルセチンのメトホルミン誘導乳酸産生量に対する影響を評価する目的で、培地中乳酸濃度に関して対照群とジヒドロケルセチン単独群、及び対照群とメトホルミン単独群との間で、それぞれStudentのt検定を行った。また、補正された乳酸産生量に関してジヒドロケルセチンとメトホルミンの併用の影響を評価する目的で、ジヒドロケルセチン単独群(1、2群)とメトホルミン単独群(3、4群)の間で、2元配置分散分析(両側)(two−way ANOVA(two−tailed))(要因:群及び濃度)を行った。ジヒドロケルセチン単独群の補正された乳酸産生量が対照群に比較して有意である場合に、乳酸産生に対する抑制効果を有すると判定された。メトホルミン単独群の補正された乳酸産生量が対照群に比較して有意である場合に、乳酸産生に対する誘導効果を有すると判定された。併用群とメトホルミン単独群の間の補正された乳酸産生量の差が、対照群とジヒドロケルセチン単独群の補正された乳酸産生量の差よりも有意に大きい場合に、ジヒドロケルセチンは乳酸産生量に対する抑制効果を有すると定義された。分析にはSAS Software Release 9.3(SAS Institute
Japan)を用いた。p値が0.05未満の場合に統計的に有意差ありとした。
6)結果
ラセミ体及び光学活性のジヒドロケルセチンは共に、対照群と比べてWI−38からの乳酸産生を抑制した。メトホルミンは、細胞からの乳酸産生を誘導した。ラセミ体及び光学活性のジヒドロケルセチンは共にメトホルミンが誘導した乳酸産生を有意に抑制した(ラセミ体;図4、光学活性;図5)。
7)結論
WI−38細胞において、メトホルミン誘導乳酸産生に対するジヒドロケルセチンの抑制効果がラセミ体及び光学活性のジヒドロケルセチン共に認められた。これは、ジヒドロ
ケルセチンがメトホルミン投与による乳酸アシドーシスのリスクを減らすという臨床での有用性を示した。
[実施例11]ヒト膵臓癌細胞株(AsPC−1)におけるジヒドロケルセチン単剤によるがん細胞増殖関連シグナル伝達経路抑制効果(in vitro)
1)被験物質
ジヒドロケルセチン((2R,3R)−ジヒドロケルセチン及び(2S,3S)−ジヒドロケルセチンのラセミ体)は、Bionet社から購入したものを使用した。
2)被験物質の調製
ジヒドロケルセチンは、エタノールに溶解した後、培地で希釈し5及び10mmol/Lのジヒドロケルセチン(最終濃度0.5及び1mmol/L)を調製した。
3)細胞
ヒト膵臓癌由来細胞株AsPC−1は大日本製薬株式会社(現DSファーマバイオメディカル株式会社、In Vitro.1982;18:24−34)より入手した。細胞は10%FBS−RPMI1640培地を用いて、37℃、5%COの条件下で培養した。
4)被験物質の添加及び測定
細胞播種翌日に被験物質を添加し6時間培養後、細胞を回収し、調製した全細胞溶解液中に含まれるリン酸化4E−BP1相対蛋白量を測定し、評価した。それぞれの群(N=3)を下記のように処理した。
(1)対照(媒体コントロール)群:1%エタノール含有培地
(2)ジヒドロケルセチン単独群:ジヒドロケルセチン 0.5mmol/L
(3)ジヒドロケルセチン単独群:ジヒドロケルセチン 1mmol/L
継代培養しているAsPC−1細胞をトリプシンで解離し、新鮮培地に懸濁した。この細胞懸濁液の細胞密度を血球計数器で測定し、細胞密度を1×10cells/mLに調製した。これを12wellマルチウエル培養プレートの各ウエルに0.5mL分注し、37℃、5%COの条件下で一夜培養した。翌日に、各ウエルにジヒドロケルセチンを所定の濃度含む培地を加えた。6時間培養後に各ウエルの細胞をD−PBSで2回洗浄し、細胞溶解バッファを用いて全細胞溶解液を調製した。遠心後、上清を分取し、リン酸化4E−BP1(Thr37/Thr46)相対蛋白量を実施例1と同様にELISAキットを用いて定量した。全細胞溶解液中の総蛋白濃度はBCAプロテインアッセイを用いて測定し、各ウエルのリン酸化4E−BP1相対蛋白量を総蛋白量で補正した。
5)統計解析
結果は、平均値(MEAN)±標準偏差(SD)で示した。
リン酸化4E−BP1相対蛋白量に対するジヒドロケルセチンの用量依存性を評価する目的で、直線回帰分析を行った。その結果、用量依存性が認められたので、対照群と単剤処理群との間でWilliams検定(片側)を行った。その結果、0.5mmol/L
以上のジヒドロケルセチンによる有意なリン酸化4E−BP1相対蛋白量の抑制作用が認められた。ジヒドロケルセチン単独群のリン酸化4E−BP1相対蛋白量が、対照群に比較して有意である場合に、該量に対する抑制効果を有すると判定された。分析にはSAS
Software Release 9.3(SAS Institute Japan)を用いた。p値が0.05未満の場合に統計的に有意差ありとした。
6)結果
ジヒドロケルセチンは、リン酸化4E−BP1相対蛋白量に対して用量依存的な抑制効果を示した(図6)。
7)結論
AsPC−1細胞において、ジヒドロケルセチン単剤による用量依存的な増殖関連シグナル伝達経路抑制効果が認められた。これは、がん化学療法におけるジヒドロケルセチンの有用性を示した。
[実施例12]ヒト膵癌細胞株(AsPC−1)における、メトホルミンとジヒドロケルセチンの併用による癌幹細胞表面マーカー発現抑制効果(in vitro)
1)被験物質
メトホルミンは和光純薬工業株式会社から購入したものを使用した。ジヒドロケルセチン((2R,3R)−ジヒドロケルセチン及び(2S,3S)−ジヒドロケルセチンのラセミ体)は、Bionet社から購入したものを使用した。ゲムシタビンは、Toronto Research Chemicals Inc.社から購入したものを使用した。
2)被験物質の調製
メトホルミンは蒸留水に溶解した後、10%FBS−RPMI−1640培地で希釈し、15mmol/Lのメトホルミンを調製した。ジヒドロケルセチンは、エタノールに溶解した後、培地で希釈し0.3mmol/Lのジヒドロケルセチンを調製した。ゲムシタビンは、ジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解した後、培地で希釈し100nmol/Lのゲムシタビンを調製した。
3)細胞
ヒト膵癌由来細胞株AsPC−1は、DSファーマバイオメディカル株式会社より入手した。細胞は10%FBS−RPMI1640培地を用いて、37℃、5%COの条件下で培養した。
4)被験物質の添加及び測定
それぞれの群(N=10)を下記のように処理した。
(1)対照(媒体コントロール)群:1.5%蒸留水、0.3%エタノール及び0.1%DMSO含有培地
(2)メトホルミン単独群:メトホルミン 15mmol/L
(3)ジヒドロケルセチン単独群:ジヒドロケルセチン 0.3mmol/L
(4)メトホルミン・ジヒドロケルセチン併用群:メトホルミン 15mmol/L+ジヒドロケルセチン 0.3mmol/L
(5)ゲムシタビン単独群:ゲムシタビン 100nmol/L
(6)メトホルミン・ジヒドロケルセチン・ゲムシタビン併用群:メトホルミン 15mmol/L+ジヒドロケルセチン 0.3mmol/L+ゲムシタビン 100nmol/L
継代培養しているAsPC−1細胞をトリプシンで解離し、新鮮培地に懸濁した。この細胞懸濁液の細胞密度を血球計数器で測定し、細胞密度を2×10cells/mLに調製した。これを6wellマルチウエル培養プレート(IWAKI)の各ウエルに3mLずつ分注し、37℃、5%COの条件下で一夜培養した。翌日、培地を各被験物質を所定の濃度含む培地に交換し、該細胞を72時間培養後、トリプシンで解離し、新鮮培地に懸濁した。FACS(fluorescence activated cell sorting)バッファで洗浄後、細胞をFITC標識した抗ヒトCD44抗体及びAPC標識した抗ヒトCD24抗体で染色し、4℃で30分処理した。その後、FACSバッファで細胞を洗浄し、40ミクロンメッシュのフィルターに通した後、フローサイトメーター(日本ベクトンディッキンソン)にて、CD44及びCD24二重陽性細胞の割合を測定した。
5)統計解析
結果は、平均値(MEAN)±標準偏差(SD)で示した。
CD44及びCD24二重陽性細胞の割合に対する、メトホルミンとジヒドロケルセチンの各単独処理群及び併用群の影響を評価する目的で、対照群と各薬剤の単独群及び併用群の間で、対応のない二元配置分散分析(unpaired two−way ANOVA)を行った。CD44及びCD24二重陽性細胞の割合に対する、ゲムシタビン単独群の影響を評価する目的で、対照群とゲムシタビン単独群の間で、Studentのt検定を行った。また、ゲムシタビン単独群のCD44及びCD24二重陽性細胞の割合に対する、ゲムシタビン、メトホルミン及びジヒドロケルセチン併用群の影響を評価する目的で
、ゲムシタビン単独群とゲムシタビン、メトホルミン及びジヒドロケルセチン併用群との間で、Studentのt検定を行った。分析にはSAS Software Release 9.3(SAS Institute Japan)を用いた。p値が0.05未満の場合に統計的に有意差ありとした。
6)結果
ジヒドロケルセチン単独群及びメトホルミンとジヒドロケルセチンの併用群は、AsPC−1細胞のCD44及びCD24二重陽性細胞の割合を、対照群に比べて有意に低下させた。ゲムシタビン単独群は、AsPC−1細胞のCD44及びCD24二重陽性細胞の割合を、対照群に比べて有意に増加させた。CD44及びCD24二重陽性細胞の割合のゲムシタビン単独添加による増加は、メトホルミン及びジヒドロケルセチンの補充的な添加により、有意に抑制された(図7)。
7)結論
膵臓がん幹細胞として決定されたCD44及びCD24二重陽性細胞の割合の評価後、膵癌細胞株AsPC−1において、ジヒドロケルセチン単独添加及びメトホルミンとジヒドロケルセチン併用添加により有意な低下が認められた。一方、ゲムシタビンにより二重陽性細胞の割合の有意な増加が認められた。また、上記CD44及びCD24二重陽性細胞のゲムシタビン単独添加による増加が、メトホルミン及びジヒドロケルセチンとの併用添加により有意に低下する作用が認められた。これらの結果から、ゲムシタビン治療に関連する、がん幹細胞の増加による再発リスクの増大という臨床上の問題が、ゲムシタビンとジヒドロケルセチンの併用あるいはゲムシタビン、メトホルミン及びジヒドロケルセチンの併用により解決される可能性が示唆された。
本発明によれば、メトホルミン又はその医薬的に許容しうる塩と、ジヒドロケルセチン又はその医薬的に許容しうる塩とを組み合わせることにより、相乗的な抗悪性腫瘍効果を有し、かつ副作用の軽減された、抗悪性腫瘍薬として有用な医薬を提供できる。
本出願は、日本で出願された特願2013−110278を基礎としており、その内容は本明細書にすべて包含されるものである。

Claims (1)

  1. ゲムシタビンと併用するための、ジヒドロケルセチン又はその医薬的に許容しうる塩及びメトホルミン又はその医薬的に許容しうる塩を有効成分とする、膵臓がん幹細胞抑制剤。
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