以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
[実施の形態1]
図1は、実施の形態1に従う車両1の全体構成図である。図1を参照して、車両1は、エンジン10と、第1モータジェネレータ(以下「第1MG」と称する。)20と、第2モータジェネレータ(以下「第2MG」と称する。)30と、動力分割装置40と、PCU(Power Control Unit)50と、蓄電装置60と、駆動輪80とを備える。この車両1は、エンジン10の動力及び第2MG30の動力の少なくとも一方によって走行するハイブリッド車両である。
エンジン10は、空気と燃料との混合気を燃焼させたときに生じる燃焼エネルギをピストンやロータなどの運動子の運動エネルギに変換することによって動力を出力する内燃機関である。動力分割装置40は、たとえば、サンギヤ、キャリア、リングギヤの3つの回転軸を有する遊星歯車機構を含む。動力分割装置40は、エンジン10から出力される動力を、第1MG20を駆動する動力と、駆動輪80を駆動する動力とに分割する。
第1MG20及び第2MG30は、交流電動機であり、たとえば、ロータに永久磁石が埋設された三相交流同期電動機である。第1MG20は、主として、動力分割装置40を経由してエンジン10により駆動される発電機として用いられる。第1MG20が発電した電力は、PCU50を介して第2MG30又は蓄電装置60へ供給される。
第2MG30は、主として電動機として動作し、駆動輪80を駆動する。第2MG30は、蓄電装置60からの電力及び第1MG20の発電電力の少なくとも一方を受けて駆動され、第2MG30の駆動力は駆動輪80に伝達される。一方、車両1の制動時や下り坂での加速度低減時には、第2MG30は、発電機として動作して回生発電を行なう。第2MG30が発電した電力は、PCU50を介して蓄電装置60に回収される。
PCU50は、蓄電装置60から受ける直流電力を、第1MG20及び第2MG30を駆動するための交流電力に変換する。また、PCU50は、第1MG20及び第2MG30により発電された交流電力を、蓄電装置60を充電するための直流電力に変換する。PCU50は、たとえば、第1MG20及び第2MG30に対応して設けられる2つのインバータと、各インバータに供給される直流電圧を蓄電装置60の電圧以上に昇圧するコンバータとを含んで構成される。
蓄電装置60は、再充電可能な直流電源であり、たとえばリチウムイオン電池やニッケル水素電池等の二次電池を含んで構成される。蓄電装置60は、第1MG20及び第2MG30の少なくとも一方が発電した電力を受けて充電される。そして、蓄電装置60は、その蓄えられた電力をPCU50へ供給する。なお、蓄電装置60として電気二重層キャパシタ等も採用可能である。
また、蓄電装置60には、蓄電装置60の電圧、入出力電流及び温度をそれぞれ検出する電圧センサ、電流センサ及び温度センサが設けられており、各センサの検出値がBAT−ECU110へ出力される。
車両1は、さらに、HV−ECU(Electronic Control Unit)100と、BAT−ECU110と、各種センサ120と、ナビゲーション装置130と、HMI(Human Machine Interface)装置140と、EVスイッチ145とを備える。
図2は、HV−ECU100、各種センサ120及びナビゲーション装置130について詳細な構成を示したブロック図である。図1とともに図2を参照して、HV−ECU100、BAT−ECU110、ナビゲーション装置130、及びHMI装置140は、CAN(Controller Area Network)150を通じて互いに通信可能に構成されている。
各種センサ120は、アクセルペダルセンサ122、車速センサ124、ブレーキペダルセンサ126等を含む。アクセルペダルセンサ122は、ユーザによるアクセルペダル操作量(以下「アクセル開度」ともいう)ACCを検出する。車速センサ124は、車両1の車速VSを検出する。ブレーキペダルセンサ126は、ユーザによるブレーキペダル操作量BPを検出する。これらの各センサは、検出結果をHV−ECU100へ出力する。
EVスイッチ145は、エンジン10を停止させて第2MG30のみを用いて走行するEV走行をユーザが選択するためのスイッチである。この車両1は、EV走行と、エンジン10を作動させて走行するHV走行とを切替えて走行可能であるところ、ユーザによりEVスイッチ145がオンされると、EVスイッチ145がオンされていないときよりもエンジン10の作動が抑制される(EV優先モード)。
HV−ECU100は、CPU(Central Processing Unit)、処理プログラム等を記憶するROM(Read Only Memory)、データを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)、各種信号を入出力するための入出力ポート(図示せず)等を含み、メモリ(ROM及びRAM)に記憶された情報や、各種センサ120からの情報、EVスイッチ145からの信号等に基づいて、所定の演算処理を実行する。そして、HV−ECU100は、演算処理の結果に基づいて、エンジン10、PCU50、ナビゲーション装置130、及びHMI装置140等の各機器を制御する。
また、HV−ECU100は、ナビゲーション装置130と協働して、車両1の走行予定経路において所定の条件を満たす制御対象区間(渋滞区間や下り坂/上り坂区間)を特定し、その特定された制御対象区間への進入前にその制御対象区間に応じて蓄電装置60のSOCを予め変更する「SOC制御」を実行する。
なお、以下では、制御対象区間は、単に「制御対象」とも称される。また、制御対象が渋滞区間の場合には、SOC制御は「渋滞SOC制御」と称され、制御対象が下り坂区間の場合には、SOC制御は「下り坂SOC制御」と称され、制御対象が上り坂区間の場合には、SOC制御は「上り坂SOC制御」と称される。また、渋滞SOC制御、下り坂SOC制御、及び上り坂SOC制御を纏めて単に「SOC制御」と称する場合もある。HV−ECU100により実行される、上記SOC制御を含む各種制御については、後程詳しく説明する。
BAT−ECU110も、CPU、ROM、RAM、入出力ポート等を含み(いずれも図示せず)、蓄電装置60の入出力電流及び/又は電圧の検出値に基づいて蓄電装置60のSOCを算出する。SOCは、たとえば、蓄電装置60の満充電容量に対する現在の蓄電量を百分率で表わしたものである。そして、BAT−ECU110は、SOCの算出値をHV−ECU100へ出力する。なお、HV−ECU100においてSOCを算出してもよい。
ナビゲーション装置130は、ナビゲーションECU132と、地図情報データベース(DB)134と、GPS(Global Positioning System)受信部136と、交通情報受信部138とを含む。
地図情報DB134は、ハードディスクドライブ(HDD)等によって構成され、地図情報を記憶している。地図情報は、交差点等を示す「ノード」、ノード同士を接続する「リンク」、及びリンク沿いにある「施設」(建物や駐車場等)に関するデータを含む。なお、各ノードには、ノードの位置情報が付随しており、各リンクには、そのリンクに対応する道路区間の勾配情報(平均勾配値やリンク両端の標高等)や距離情報等が付随している。
GPS受信部136は、GPS衛星(図示せず)からの信号(電波)に基づいて車両1の現在位置を取得し、その位置を示す信号をナビゲーションECU132へ出力する。
交通情報受信部138は、FM多重放送等によって提供されている道路交通情報(たとえばVICS(登録商標)情報)を受信する。この道路交通情報は、少なくとも渋滞情報を含み、その他交通規制情報や速度規制情報、駐車場情報等も含み得る。この道路交通情報は、たとえば5分毎に更新される。
ナビゲーションECU132は、CPU、ROM、RAM、入出力ポート(図示せず)等を含み、地図情報DB134、GPS受信部136及び交通情報受信部138から受ける各種情報や信号に基づいて、車両1の現在位置、並びにその周辺の地図情報及び渋滞情報等をHMI装置140及びHV−ECU100へ出力する。
また、ナビゲーションECU132は、HMI装置140においてユーザにより車両1の目的地が入力されると、車両1の現在位置から目的地までの経路(走行予定経路)を地図情報DB134に基づいて探索する。この走行予定経路は、車両1の現在位置から目的地までのノード及びリンクの集合によって構成される。そして、ナビゲーションECU132は、車両1の現在位置から目的地までの探索結果(ノード及びリンクの集合)をHMI装置140へ出力する。また、ナビゲーションECU132は、HV−ECU100からの求めに応じて、走行予定経路の探索結果のうち、現在位置から所定範囲(たとえば10km)内の経路情報をHV−ECU100へ出力する。なお、この経路情報は、HV−ECU100におけるSOC制御に用いられる(後述)。
HMI装置140は、車両1の運転を支援するための情報を搭乗者(代表的には運転者)に提供する装置である。HMI装置140は、代表的には、車両1の室内に設けられたディスプレイ(視覚情報表示装置)であり、スピーカ(聴覚情報出力装置)等も含む。HMI装置140は、視覚情報(図形情報、文字情報)や聴覚情報(音声情報、音情報)等を出力することによって様々な情報をユーザに提供する。
また、HMI装置140は、ナビゲーション装置130のディスプレイとして機能する。すなわち、HMI装置140は、車両1の現在位置、並びにその周辺の地図情報及び渋滞情報等をナビゲーション装置130からCAN150を通じて受信し、車両1の現在位置をその周辺の地図情報及び渋滞情報とともに表示する。
また、HMI装置140は、ユーザが操作可能なタッチパネルとしても作動し、ユーザは、タッチパネルに触れることによって、たとえば、表示されている地図の縮尺を変更したり、車両1の目的地を入力したりすることができる。HMI装置140において目的地が入力されると、その目的地の位置情報がCAN150を通じてナビゲーション装置130へ送信される。
上述のように、ナビゲーションECU132は、HV−ECU100からの求めに応じて(たとえば1分毎)、走行予定経路における、現在位置から所定範囲(たとえば10km)内の情報(以下「走行予定経路情報」と称する。)をHV−ECU100へ出力する。そして、HV−ECU100は、ナビゲーションECU132から走行予定経路情報を取得すると、その走行予定経路情報に基づいて、SOC制御を実行すべき制御対象(渋滞区間、下り坂区間、又は上り坂区間)を探索する。そして、SOC制御を実行すべき制御対象が存在する場合に、HV−ECU100は、探索された制御対象に対応するSOC制御(渋滞SOC制御、下り坂SOC制御、又は上り坂SOC制御)を実行する。この点については、制御対象毎に後ほど詳しく説明する。
以下では、SOC制御の詳細な説明に先立ち、HV−ECU100によって実行される車両1の走行制御について説明する。
<走行制御>
図3は、HV−ECU100によって実行される走行制御の処理手順を説明するフローチャートである。このフローチャートに示される一連の処理は、たとえば車両1のシステムスイッチ等がオンされている場合に所定時間毎に繰り返し実行される。
図3を参照して、HV−ECU100は、アクセルペダルセンサ122及び車速センサ124からそれぞれアクセル開度ACC及び車速VSの検出値を取得するとともに、蓄電装置60のSOCの算出値をBAT−ECU110から取得する(ステップS10)。
次いで、HV−ECU100は、取得されたアクセル開度ACC及び車速VSの検出値に基づいて、車両1に対する要求トルクTrを算出する(ステップS15)。たとえば、アクセル開度ACCと、車速VSと、要求トルクTrとの関係を示すマップを事前に準備してHV−ECU100のROMに記憶しておき、そのマップを用いて、アクセル開度ACC及び車速VSの検出値に対応する要求トルクTrを算出することができる。そして、HV−ECU100は、算出された要求トルクTrに車速VSを乗算することによって、車両1の走行パワーPd(要求値)を算出する(ステップS20)。
続いて、HV−ECU100は、蓄電装置60に対する充放電要求パワーPbを算出する(ステップS25)。この充放電要求パワーPbは、蓄電装置60のSOC(実績値)とその目標との差ΔSOCに基づいて算出される。充放電要求パワーPbが正の値であるときは、蓄電装置60に対して充電が要求されることを示し、充放電要求パワーPbが負の値であるときは、蓄電装置60に対して放電が要求されることを示す。
図4は、充放電要求パワーPbの算出方法の一例を示した図である。図4を参照して、蓄電装置60のSOC(実績値)と、SOCの制御目標を示す目標SOCとの差ΔSOCが正の値であるとき(SOC>目標SOC)、充放電要求パワーPbは負の値となり(放電要求)、ΔSOCの絶対値が大きいほど充放電要求パワーPbの絶対値も大きくなる。一方、ΔSOCが負の値であるとき(SOC<目標SOC)、充放電要求パワーPbは正の値となり(充電要求)、ΔSOCの絶対値が大きいほど充放電要求パワーPbの絶対値も大きくなる。なお、この例では、ΔSOCの絶対値が小さい場合には、充放電要求パワーPbを0とする不感帯が設けられている。
再び図3を参照して、HV−ECU100は、以下の式(1)に示されるように、ステップS20において算出された走行パワーPdと、ステップS25において算出された充放電要求パワーPbと、所定のシステム損失Plossとの合計値を、エンジン10に対して要求されるエンジン要求パワーPeとして算出する(ステップS30)。
Pe=Pd+Pb+Ploss …(1)
次いで、HV−ECU100は、算出されたエンジン要求パワーPeが所定のエンジン始動しきい値Pethよりも大きいか否かを判定する(ステップS35)。なお、エンジン始動しきい値Pethは、エンジン10が所定の運転効率よりも高い運転効率で運転され得る値に設定される。
ここで、EVスイッチ145がオンされている場合には、EVスイッチ145がオンされていない場合に対して、エンジン始動しきい値Pethが拡大される。これにより、EVスイッチ145がオンされている場合に、EVスイッチ145がオンされていない場合よりもエンジン10の作動が抑制される(EV優先モード)。
ステップS35においてエンジン要求パワーPeがしきい値Pethよりも大きいと判定されると(ステップS35においてYES)、HV−ECU100は、エンジン10を始動するようにエンジン10を制御する(ステップS40)。なお、エンジン10が既に運転中であれば、このステップはスキップされる。そして、HV−ECU100は、エンジン10及び第2MG30の双方からの出力を用いて車両1が走行するようにエンジン10及びPCU50を制御する。すなわち、車両1は、エンジン10及び第2MG30の出力を用いたハイブリッド走行(HV走行)を行なう(ステップS45)。
一方、ステップS35においてエンジン要求パワーPeがしきい値Peth以下であると判定されると(ステップS35においてNO)、HV−ECU100は、エンジン10を停止するようにエンジン10を制御する(ステップS50)。なお、エンジン10が既に停止中であれば、このステップはスキップされる。そして、HV−ECU100は、第2MG30の出力のみを用いて車両1が走行するようにPCU50を制御する。すなわち、車両1は、第2MG30の出力のみを用いた電動機走行(EV走行)を行なう(ステップS55)。
上述のように、EVスイッチ145がオンされている場合には、エンジン始動しきい値Pethが拡大されるので、EVスイッチ145がオンされていない場合に比べてエンジン10は始動されにくい状態となる(EV優先モード)。すなわち、ユーザは、EVスイッチ145をオンすることによってEV優先モードを選択することができる。
なお、特に図示しないが、HV−ECU100は、蓄電装置60のSOCが下限値SLまで低下した場合には、エンジン要求パワーPeがエンジン始動しきい値Peth以下であってもエンジン10を強制的に始動するようにエンジン10を制御し、第1MG20による蓄電装置60の強制充電を実行する。一方、蓄電装置60のSOCが上限値SUまで上昇した場合には、HV−ECU100は、蓄電装置60への入力電力の上限値を示す上限電力Winを0に設定する等して蓄電装置60の充電を抑制する。
上記において、SOC(実績値)が目標SOCよりも高いときは(ΔSOC>0)、充放電要求パワーPbは負の値となるので、SOCが目標SOCに制御されている場合に比べて、エンジン要求パワーPeが小さくなることによりエンジン10は始動されにくい状態となることが理解される。その結果、蓄電装置60の放電が促進され、SOCは低下傾向を示す。
一方、SOCが目標SOCよりも低いときは(ΔSOC<0)、充放電要求パワーPbは正の値となるので、SOCが目標SOCに制御されている場合に比べて、エンジン要求パワーPeが大きくなることによりエンジン10は始動され易い状態となることが理解される。その結果、蓄電装置60の充電が促進され、SOCは上昇傾向を示す。
次に、HV−ECU100により実行されるSOC制御について説明する。上述のように、HV−ECU100により実行されるSOC制御には、(1)走行予定経路に制御対象としての渋滞区間が存在する場合に実行される「渋滞SOC制御」、(2)走行予定経路に制御対象としての下り坂区間が存在する場合に実行される「下り坂SOC制御」、(3)走行予定経路に制御対象としての上り坂区間が存在する場合に実行される「上り坂SOC制御」がある。以下、各SOC制御について順に説明する。
<渋滞SOC制御>
図5は、渋滞SOC制御を説明するための図である。図5を参照して、横軸は、車両1の走行予定経路の各地点を示す。図示されている例では、走行予定経路の区間1〜区間8(リンク1〜リンク8)が示されており、隣接する区間同士の接続点はノードである。なお、この例では、区間1〜区間8は平坦路であるものとする。縦軸は、蓄電装置60のSOCを示す。
HV−ECU100は、車両1の現在位置、走行予定経路情報、及び道路交通情報(渋滞情報)をナビゲーション装置130から取得し、これらの情報に基づいて、渋滞SOC制御の制御対象となる渋滞区間(対象渋滞区間)を探索する。たとえば、走行予定経路において車両1の現在位置から所定範囲(たとえば10km)内に所定長以上の渋滞が発生している場合に、HV−ECU100は、その渋滞区間を対象渋滞区間として特定する。図5では、地点P10において、制御対象(対象渋滞区間)の探索が行なわれ、区間4〜区間6が対象渋滞区間であると特定された場合が示されている。
実線L11は、蓄電装置60の目標SOCを示す。また、実線L12は、渋滞SOC制御が実行される場合のSOCの推移を示し、点線L13は、比較例として、渋滞SOC制御が実行されない場合のSOCの推移を示す。
HV−ECU100は、通常走行時(SOC制御の非実行時)は、蓄電装置60の目標SOCをSnに設定する(たとえば区間1や区間7,8)。仮に、蓄電装置60のSOCがSnに制御されたままで車両1が渋滞区間(区間4〜区間6)に進入すると、渋滞区間では走行パワーが小さいことによりEV走行が主体的となるので、SOCはSnから低下する(点線L13)。そして、渋滞区間の走行中に地点P15aにおいてSOCが下限値SLまで低下すると(アンダーフローの発生)、エンジン10が最適動作点で運転できない状況であってもエンジン10が強制的に始動され、第1MG20による蓄電装置60の強制充電が行なわれる。なお、このような強制充電は、アンダーフローを回避して蓄電装置60の劣化を抑制するために実行される。
そこで、この実施の形態に従う車両1では、対象渋滞区間(区間4〜区間6)が特定され、その対象渋滞区間の開始地点P13より所定距離手前の地点P11aに車両1が到達すると、HV−ECU100は、目標SOCをSnからSnよりも高いShに変更する(実線L11)。そうすると、SOCが目標SOCよりも低い状態となり(ΔSOC<0)、上述のように、蓄電装置60の充電が促進され、SOCは上昇する(区間2,3における実線L12)。
なお、上記の所定距離は、対象渋滞区間の開始地点P13に車両1が到達するまでにSOCをShに近づけるために十分な距離に設定される。この図5では、対象渋滞区間の開始地点P13に車両1が到達するまでに、SOCがShまで上昇している。これにより、対象渋滞区間(区間4〜区間6)の走行中にSOCが下限値SLまで低下するのを抑制し、エンジン10の運転効率が低い状態で行なわれ得る蓄電装置60の強制充電が抑制される。
対象渋滞区間の終了地点P16に車両1が到達すると、HV−ECU100は、渋滞SOC制御を終了し、目標SOCをShからSnに復帰させる。なお、目標SOCがSnからShに変更される地点P11a(渋滞SOC制御の開始地点)から対象渋滞区間の開始地点P13までの区間は「プレチャージ区間」とも称される。また、プレチャージ区間と対象渋滞区間とを合わせた区間(目標SOCがSnからShに変更されている区間)は「渋滞SOC制御区間」とも称される。
<下り坂SOC制御>
図6は、下り坂SOC制御を説明するための図である。図6を参照して、横軸は、車両1の走行予定経路の各地点を示す。図6に示される例でも、図5と同様に、走行予定経路の区間1〜区間8が示されている。縦軸は、各区間の道路の標高、及び蓄電装置60のSOCを示す。
HV−ECU100は、車両1の現在位置及び走行予定経路情報をナビゲーション装置130から取得し、これらの情報に基づいて、下り坂SOC制御の制御対象となる下り坂区間(対象下り坂区間)を探索する。たとえば、走行予定経路において車両1の現在位置から所定範囲(たとえば10km)内に所定の標高差を有しかつ所定長以上の下り坂が存在する場合に、HV−ECU100は、その下り坂区間を対象下り坂区間として特定する。図6では、地点P20において、制御対象(対象下り坂区間)の探索が行なわれ、区間4〜区間6が対象下り坂区間であると特定された場合が示されている。
実線L21は、蓄電装置60の目標SOCを示す。また、実線L22は、下り坂SOC制御が実行される場合のSOCの推移を示し、点線L23は、比較例として、下り坂SOC制御が実行されない場合のSOCの推移を示す。
上述のように、通常走行時は、蓄電装置60の目標SOCをSnに設定する(区間1や区間7,8)。仮に、蓄電装置60のSOCがSnに制御されたままで車両1が下り坂区間(区間4〜区間6)に進入すると、下り坂区間では第2MG30により回生発電が行なわれることにより蓄電装置60が充電されるので、SOCはSnから上昇する(点線L23)。そして、下り坂区間の走行中に地点P25aにおいてSOCが上限値SUまで上昇すると(オーバーフローの発生)、下り坂を走行しているにも拘わらず第2MG30により回生発電された電力を蓄電装置60に蓄えることができず、回収可能なエネルギを捨てることになるとともに、蓄電装置60の劣化も促進され得る。
そこで、この実施の形態に従う車両1では、対象下り坂区間(区間4〜区間6)が特定され、その対象下り坂区間の開始地点P23より所定距離手前の地点P21aに車両1が到達すると、HV−ECU100は、目標SOCをSnからSnよりも低いSdに変更する(実線L21)。これにより、SOCが目標SOCよりも高い状態となり(ΔSOC>0)、上述のように、蓄電装置60の放電が促進され、SOCは低下する(区間2,3における実線L22)。
なお、上記の所定距離は、対象下り坂区間の開始地点P23に車両1が到達するまでにSOCをSdに近づけるために十分な距離に設定される。この図6では、対象下り坂区間の開始地点P23に車両1が到達するまでに、SOCがSdまで低下している。これにより、対象下り坂区間(区間4〜区間6)の走行中にSOCが上限値SUまで上昇するのを抑制し、蓄電装置60の劣化や回収可能なエネルギを捨てることによる燃費低下が抑制される。
対象下り坂区間の終了地点P26に車両1が到達すると、HV−ECU100は、下り坂SOC制御を終了し、目標SOCをSdからSnに復帰させる。なお、目標SOCがSnからSdに変更される地点P21a(下り坂SOC制御の開始地点)から対象下り坂区間の開始地点P23までの区間は「プレユース区間」とも称される。また、プレユース区間と対象下り坂区間とを合わせた区間(目標SOCがSnからSdに変更されている区間)は「下り坂SOC制御区間」とも称される。
<上り坂SOC制御>
図7は、上り坂SOC制御を説明するための図である。図7を参照して、横軸は、車両1の走行予定経路の各地点を示す。図7に示される例でも、図5と同様に、走行予定経路の区間1〜区間8が示されている。縦軸は、各区間の道路の標高、及び蓄電装置60のSOCを示す。
HV−ECU100は、車両1の現在位置及び走行予定経路情報をナビゲーション装置130から取得し、これらの情報に基づいて、上り坂SOC制御の制御対象となる上り坂区間(対象上り坂区間)を探索する。たとえば、走行予定経路において車両1の現在位置から所定範囲(たとえば10km)内に所定の標高差を有しかつ所定長以上の上り坂が存在する場合に、HV−ECU100は、その上り坂区間を対象上り坂区間として特定する。図7では、地点P30において、制御対象(対象上り坂区間)の探索が行なわれ、区間4〜区間6が対象上り坂区間であると特定された場合が示されている。
実線L31は、蓄電装置60の目標SOCを示す。また、実線L32は、上り坂SOC制御が実行される場合のSOCの推移を示し、点線L33は、比較例として、上り坂SOC制御が実行されない場合のSOCの推移を示す。
上述のように、通常走行時は、蓄電装置60の目標SOCをSnに設定する(区間1や区間7,8)。仮に、蓄電装置60のSOCがSnに制御されたままで車両1が上り坂区間(区間4〜区間6)に進入すると、上り坂区間では大きな走行パワーが要求されることにより蓄電装置60に蓄えられた電力が第2MG30によって消費されるので、SOCはSnから低下する(点線L33)。そして、上り坂区間の走行中に地点P35aにおいてSOCが下限値SLまで低下すると(アンダーフローの発生)、エンジン10が最適動作点を外れてより大きなパワーを出力するように運転され、第1MG20による蓄電装置60の強制充電が行なわれる。
そこで、この実施の形態に従う車両1では、対象上り坂区間(区間4〜区間6)が特定され、その対象上り坂区間の開始地点P33より所定距離手前の地点P31aに車両1が到達すると、HV−ECU100は、目標SOCをSnからSnよりも高いShに変更する(実線L31)。これにより、SOCが目標SOCよりも低い状態となり(ΔSOC<0)、上述のように、蓄電装置60の充電が促進され、SOCは上昇する(区間2,3における実線L32)。
なお、上記では、渋滞SOC制御が実行される場合と同様に、目標SOCをSnからShに変更するものとしたが、上り坂SOC制御を実行中の目標SOCは、渋滞SOC制御を実行中の目標SOCと異なってもよい。また、上記の所定距離は、対象上り坂区間の開始地点P33に車両1が到達するまでにSOCをSdに近づけるために十分な距離に設定される。この図7では、対象上り坂区間の開始地点P33に車両1が到達するまでに、SOCがShまで上昇している。これにより、対象上り坂区間(区間4〜区間6)の走行中にSOCが下限値SLまで低下するのを抑制し、エンジン10の運転効率が低い状態で行なわれ得る蓄電装置60の強制充電が抑制される。
対象上り坂区間の終了地点P36に車両1が到達すると、HV−ECU100は、上り坂SOC制御を終了し、目標SOCをShからSnに復帰させる。なお、目標SOCがSnからShに変更される地点P31a(上り坂SOC制御の開始地点)から対象上り坂区間の開始地点P33までの区間は「プレチャージ区間」であり、プレチャージ区間と対象上り坂区間とを合わせた区間(目標SOCがSnからShに変更されている区間)は「上り坂SOC制御区間」とも称される。
<SOC制御とEV優先モードとの関係>
上述のように、この実施の形態1に従う車両1においては、制御対象(対象渋滞区間、対象下り坂区間、又は対象上り坂区間)への進入前に蓄電装置60のSOCを予め変更するSOC制御が実行される。ここで、ユーザによりEVスイッチ145がオンされ、エンジン10の作動が抑制されるEV優先モード中に、上記の下り坂SOC制御が実行されると、制御対象(対象下り坂区間)への進入前にSOCが低下することにより、走行状況によってはSOCが下限値に達してしまい、SOCを回復させるために内燃機関が強制的に作動してしまう可能性がある(強制充電)。また、EVスイッチ145がオンされている場合(EV優先モード中)に、上記の渋滞SOC制御又は上り坂SOC制御が実行されると、SOCを高めるためにエンジン10が始動され易い状態となるので、EVスイッチ145をオンにしたユーザの意図に反してエンジン10が作動してしまう可能性がある。そこで、この実施の形態1に従う車両1では、EVスイッチ145がオンされている場合(EV優先モードの選択中)には、SOC制御を実行しないようにする。これにより、EVスイッチ145をオン操作したユーザの意図に反してエンジン10が作動するのを抑制することができる。
<各SOC制御の制御フローの説明>
図8は、HV−ECU100により実行される渋滞SOC制御の処理手順を説明するフローチャートである。なお、このフローチャートに示される一連の処理は、たとえば車両1のシステムスイッチ等がオンされている場合に所定時間毎に繰り返し実行される。
図8を参照して、HV−ECU100は、先読み情報の更新タイミングであるか否かを判定する(ステップS110)。先読み情報とは、走行予定経路において車両1の現在位置から所定範囲(たとえば10km)内における道路区間の情報、及びその道路区間において探索される制御対象(対象渋滞区間)に関する情報である。先読み情報の更新タイミングは、たとえば、車両1の走行経路が変更されたとき(走行予定経路から車両1が離脱したとき)、道路交通情報(渋滞情報)が更新されたとき、所定時間(たとえば1分)経過したとき、所定距離走行したとき、制御対象(対象渋滞区間)を通過したとき等である。
ステップS110において先読み情報の更新タイミングであると判定されると(ステップS110においてYES)、HV−ECU100は、ナビゲーション装置130から取得される走行予定経路情報及び道路交通情報(渋滞情報)に基づいて、制御対象(対象渋滞区間)の探索処理を実行する(ステップS115)。この探索処理については、後ほど説明する。なお、ステップS110において先読み情報の更新タイミングではないと判定されると(ステップS110においてNO)、HV−ECU100は、ステップS115の処理を実行することなくステップS120へ処理を移行する。
次いで、HV−ECU100は、走行予定経路に制御対象(対象渋滞区間)が存在するか否かを判定する(ステップS120)。より詳しくは、走行予定経路において車両1の現在位置から所定範囲(たとえば10km)内に制御対象(対象渋滞区間)が存在するか否かが判定される。走行予定経路に制御対象(対象渋滞区間)は無いと判定されると(ステップS120においてNO)、HV−ECU100は、以降の一連の処理を実行することなくリターンへと処理を移行する。
ステップS120において走行予定経路に制御対象(対象渋滞区間)が有ると判定されると(ステップS120においてYES)、HV−ECU100は、先読み情報に基づいて、車両1の現在位置から制御対象(対象渋滞区間)の開始地点までの距離dtagを算出する(ステップS125)。さらに、HV−ECU100は、先読み情報に基づいて、車両1の現在位置から制御対象(対象渋滞区間)を通過するまでの距離dendを算出する(ステップS130)。
そして、HV−ECU100は、ステップS125において算出された距離dtagが距離Dsocを下回っているか否かを判定する(ステップS135)。距離dtagが距離Dsoc以上である場合は(ステップS135においてNO)、HV−ECU100は、以降の処理を実行することなくリターンへと処理を移行する。
ステップS135において距離dtagが距離Dsocを下回っていると判定されると(ステップS135においてYES)、HV−ECU100は、EVスイッチ145(図1,2)がオンされているか否かを判定する(ステップS140)。
EVスイッチ145はオンされていないと判定されると(ステップS140においてNO)、すなわち、EVスイッチ145はオフであると判定されると、HV−ECU100は、渋滞SOC制御(プレチャージ制御)を開始する(ステップS145)。具体的には、図5で説明したように、HV−ECU100は、蓄電装置60の目標SOCをSnからSnよりも高いShに変更する。これにより、車両1が制御対象(対象渋滞区間)に進入する前に蓄電装置60のSOCが予め高められる。なお、渋滞SOC制御が既に実行中の場合には、渋滞SOC制御の実行が継続される。
一方、ステップS140においてEVスイッチ145はオンされていると判定されると(ステップS140においてYES)、HV−ECU100は、ステップS145の処理を実行することなくリターンへと処理を移行する。すなわち、EVスイッチ145がオンされている場合には、HV−ECU100は、渋滞SOC制御(プレチャージ制御)を実行しない。
次いで、HV−ECU100は、ステップS130において算出された距離dendが0以下であるか否かを判定する(ステップS150)。距離dendが0よりも大きい場合は(ステップS150においてNO)、HV−ECU100は、リターンへと処理を移行する。
ステップS150において距離dendが0以下であると判定されると(ステップS150においてYES)、HV−ECU100は、渋滞SOC制御(プレチャージ制御)を終了する(ステップS155)。具体的には、HV−ECU100は、蓄電装置60の目標SOCをShからSnに復帰させる。
以上のような一連の処理によって、EVスイッチ145がオフである場合には、車両1の現在位置から対象渋滞区間の開始地点までの距離dtagが距離Dsocを下回ると、渋滞SOC制御が開始される。一方、EVスイッチ145がオンされている場合には、距離dtagが距離Dsocを下回っても、渋滞SOC制御は実行されない。これにより、EVスイッチ145をオンにしたユーザの意図に反してエンジン10が作動するのを抑制することができる。
図9は、図8のステップS115において実行される制御対象探索処理の一例を説明するフローチャートである。図9を参照して、HV−ECU100は、走行予定経路情報をナビゲーション装置130から取得する(ステップS210)。走行予定経路情報は、詳細には、走行予定経路を構成する道路区間であって、車両1の現在位置から所定範囲(たとえば10km)内の道路区間に関する情報を含み、当該道路区間を構成するノード及びリンクの集合並びに各リンクの勾配情報等を含んで構成される。以下では、走行予定経路情報に含まれるリンク(区間)の総数を「先読みデータ総数」とも称する。さらに、HV−ECU100は、渋滞情報を含む道路交通情報をナビゲーション装置130から取得する(ステップS215)。
HV−ECU100は、走行予定経路情報として取得された道路区間に対して、車両1の現在位置が属する区間(リンク)を区間1と規定し、区間1に続く各区間を順次区間2、区間3・・・というように便宜上の順番を付す。そして、HV−ECU100は、カウンタiに初期値「1」を設定する(ステップS220)。
次いで、HV−ECU100は、ステップS215において取得した渋滞情報に基づいて、区間iにおいて渋滞が発生しているか否かを判定する(ステップS225)。具体的には、渋滞情報には、渋滞の発生地点及び渋滞度(渋滞の程度に応じた数値)に関する情報が含まれているところ、HV−ECU100は、たとえば、区間iの相当部分において所定値以上の渋滞度の渋滞が発生している場合に、区間iにおいて渋滞が発生しているものと判定する。
ステップS225において区間iで渋滞が発生しているものと判定されると(ステップS225においてYES)、HV−ECU100は、区間iの渋滞フラグをオンにする(ステップS230)。一方、ステップS225において区間iで渋滞は発生していないと判定されると(ステップS225においてNO)、HV−ECU100は、区間iの渋滞フラグをオフにする(ステップS235)。
そして、HV−ECU100は、走行予定経路情報として取得された道路区間において、区間iが最終であるか否かを判定する(ステップS240)。具体的には、HV−ECU100は、先読みデータ総数(走行予定経路情報に含まれる区間の総数)の値にカウンタiが達したか否かを判定する。区間iが最終でないと判定された場合は(ステップS240においてNO)、HV−ECU100は、カウンタiをカウントアップし(ステップS245)、ステップS225へ処理を戻す。
ステップS240において区間iが最終であると判定されると(ステップS240においてYES)、HV−ECU100は、各区間の渋滞フラグ及び距離情報に基づいて、制御対象(対象渋滞区間)を特定する(ステップS250)。たとえば、渋滞フラグがオンの区間が単数又は連続して複数存在し(以下「渋滞区間群」とも称する。)、当該渋滞区間群の長さ(渋滞長)が距離Lよりも長い等の所定の条件が成立する場合に、HV−ECU100は、その渋滞区間群を渋滞SOC制御の制御対象(対象渋滞区間)として特定する。詳細には、制御対象(対象渋滞区間)について、渋滞開始地点及び渋滞終了地点、並びに渋滞長(対象渋滞区間の長さ)等が特定される。
このようにして、図8のステップS115において、制御対象(対象渋滞区間)が探索される。
図10は、HV−ECU100により実行される下り坂SOC制御の処理手順を説明するフローチャートである。なお、このフローチャートに示される一連の処理も、たとえば車両1のシステムスイッチ等がオンされている場合に所定時間毎に繰り返し実行される。
図10を参照して、HV−ECU100は、先読み情報の更新タイミングであるか否かを判定する(ステップS310)。この処理は、図8のステップS110と同じであるので説明を繰り返さない。
ステップS310において先読み情報の更新タイミングであると判定されると(ステップS310においてYES)、HV−ECU100は、ナビゲーション装置130から取得される走行予定経路情報に基づいて、制御対象(対象下り坂区間)の探索処理を実行する(ステップS315)。この探索処理については、後ほど説明する。なお、ステップS310において先読み情報の更新タイミングではないと判定されると(ステップS310においてNO)、HV−ECU100は、ステップS315の処理を実行することなくステップS320へ処理を移行する。
次いで、HV−ECU100は、走行予定経路に制御対象(対象下り坂区間)が存在するか否かを判定する(ステップS320)。より詳しくは、走行予定経路において車両1の現在位置から所定範囲(たとえば10km)内に制御対象(対象下り坂区間)が存在するか否かが判定される。走行予定経路に制御対象(対象下り坂区間)は無いと判定されると(ステップS320においてNO)、HV−ECU100は、以降の一連の処理を実行することなくリターンへと処理を移行する。
ステップS320において走行予定経路に制御対象(対象下り坂区間)が有ると判定されると(ステップS320においてYES)、HV−ECU100は、先読み情報に基づいて、車両1の現在位置から制御対象(対象下り坂区間)の開始地点までの距離dtagを算出する(ステップS325)。さらに、HV−ECU100は、先読み情報に基づいて、車両1の現在位置から制御対象(対象下り坂区間)を通過するまでの距離dendを算出する(ステップS330)。
そして、HV−ECU100は、ステップS325において算出された距離dtagが距離Dsocを下回っているか否かを判定する(ステップS335)。距離dtagが距離Dsoc以上である場合は(ステップS335においてNO)、HV−ECU100は、以降の処理を実行することなくリターンへと処理を移行する。
ステップS335において距離dtagが距離Dsocを下回っていると判定されると(ステップS135においてYES)、HV−ECU100は、EVスイッチ145(図1,2)がオンされているか否かを判定する(ステップS340)。
EVスイッチ145はオンされていないと判定されると(ステップS340においてNO)、すなわち、EVスイッチ145はオフであると判定されると、HV−ECU100は、下り坂SOC制御(プレユース制御)を開始する(ステップS345)。具体的には、図6で説明したように、HV−ECU100は、蓄電装置60の目標SOCをSnからSnよりも低いSdに変更する。これにより、車両1が制御対象(対象下り坂区間)に進入する前に蓄電装置60のSOCが予め下げられる。なお、下り坂SOC制御が既に実行中の場合には、下り坂SOC制御の実行が継続される。
一方、ステップS340においてEVスイッチ145はオンされていると判定されると(ステップS340においてYES)、HV−ECU100は、ステップS345の処理を実行することなくリターンへと処理を移行する。すなわち、EVスイッチ145がオンされている場合には、HV−ECU100は、下り坂SOC制御(プレユース制御)を実行しない。
次いで、HV−ECU100は、ステップS330において算出された距離dendが0以下であるか否かを判定する(ステップS350)。距離dendが0よりも大きい場合は(ステップS350においてNO)、HV−ECU100は、リターンへと処理を移行する。
ステップS350において距離dendが0以下であると判定されると(ステップS350においてYES)、HV−ECU100は、下り坂SOC制御(プレユース制御)を終了する(ステップS355)。具体的には、HV−ECU100は、蓄電装置60の目標SOCをSdからSnに復帰させる。
以上のような一連の処理によって、EVスイッチ145がオフである場合には、車両1の現在位置から対象下り坂区間の開始地点までの距離dtagが距離Dsocを下回ると、下り坂SOC制御が開始される。一方、EVスイッチ145がオンされている場合には、距離dtagが距離Dsocを下回っても、下り坂SOC制御は実行されない。これにより、EVスイッチ145をオンにしたユーザの意図に反してエンジン10が作動するのを抑制することができる。
図11は、図10のステップS315において実行される制御対象探索処理の一例を説明するフローチャートである。図11を参照して、HV−ECU100は、走行予定経路情報をナビゲーション装置130から取得する(ステップS410)。この処理は、図10のステップS210と同じであるので説明を繰り返さない。そして、HV−ECU100は、カウンタiに値「1」を設定する(ステップS415)。
次いで、HV−ECU100は、区間iの勾配情報を読込む(ステップS420)。区間iの勾配情報は、区間iに対応するリンクの情報として地図情報DB134(図2)に記憶されており、ステップS410において取得される走行予定経路情報に含まれる区間iの情報に付随している。
そして、HV−ECU100は、走行予定経路情報として取得された道路区間において、区間iが最終であるか否かを判定する(ステップS425)。区間iが最終でない場合は(ステップS425においてNO)、HV−ECU100は、カウンタiをカウントアップし(ステップS430)、ステップS420へ処理を戻す。
ステップS425において区間iが最終であると判定されると(ステップS425においてYES)、HV−ECU100は、各区間の距離情報及び勾配情報に基づいて、制御対象(対象下り坂区間)を特定する(ステップS435)。たとえば、走行予定経路情報として取得された道路区間において、道路勾配が所定勾配未満の下り勾配を有する区間が単数又は連続して複数存在し(以下「下り区間群」とも称する。)、当該下り区間群の開始地点と終了地点との標高差が所定標高差以上であり、さらに、当該下り区間群の距離が所定距離以上である等の所定の条件が成立する場合に、HV−ECU100は、その下り区間群を下り坂SOC制御の制御対象(対象下り坂区間)として特定する。詳細には、制御対象(対象下り坂区間)について、下り坂開始地点及び下り坂終了地点、並びに下り坂長(対象下り坂区間の長さ)等が特定される。
このようにして、図10のステップS315において、制御対象(対象下り坂区間)が探索される。
図12は、HV−ECU100により実行される上り坂SOC制御の処理手順を説明するフローチャートである。なお、このフローチャートに示される一連の処理も、たとえば車両1のシステムスイッチ等がオンされている場合に所定時間毎に繰り返し実行される。
図12を参照して、上り坂SOC制御の処理手順は、上り坂と下り坂による違い以外は、図10に示した下り坂SOC制御の処理手順と基本的に同様である。具体的には、ステップS510,S525〜S540,S550の処理は、図10のステップS310,S325〜S340,S350の処理とそれぞれ同じであり、ステップS515,S520,S545,S555の処理が、図10のステップS315,S320,S345,S355の処理とそれぞれ異なる。
すなわち、ステップS510において先読み情報の更新タイミングであると判定されると(ステップS510においてYES)、HV−ECU100は、ナビゲーション装置130から取得される走行予定経路情報に基づいて、制御対象(対象上り坂区間)の探索処理を実行する(ステップS515)。この探索処理については、後ほど説明する。
また、ステップS520において、HV−ECU100は、走行予定経路に制御対象(対象上り坂区間)が存在するか否かを判定する。より詳しくは、走行予定経路において車両1の現在位置から所定範囲(たとえば10km)内に制御対象(対象上り坂区間)が存在するか否かが判定される。
また、ステップS540においてEVスイッチ145はオンされていないと判定されると(ステップS540においてNO)、すなわち、EVスイッチ145はオフであると判定されると、HV−ECU100は、上り坂SOC制御(プレチャージ制御)を開始する(ステップS545)。具体的には、図7で説明したように、HV−ECU100は、蓄電装置60の目標SOCをSnからSnよりも高いShに変更する。これにより、車両1が制御対象(対象上り坂区間)に進入する前に蓄電装置60のSOCが予め高められる。なお、上り坂SOC制御が既に実行中の場合には、上り坂SOC制御の実行が継続される。
一方、ステップS540においてEVスイッチ145はオンされていると判定されると(ステップS540においてYES)、HV−ECU100は、ステップS545の処理を実行することなくリターンへと処理を移行する。すなわち、EVスイッチ145がオンされている場合には、HV−ECU100は、上り坂SOC制御(プレチャージ制御)を実行しない。
また、ステップS550において距離dendが0以下であると判定されると(ステップS550においてYES)、HV−ECU100は、上り坂SOC制御(プレチャージ制御)を終了する(ステップS555)。具体的には、HV−ECU100は、蓄電装置60の目標SOCをShからSnに復帰させる。
以上のような一連の処理によって、EVスイッチ145がオフである場合には、車両1の現在位置から対象上り坂区間の開始地点までの距離dtagが距離Dsocを下回ると、上り坂SOC制御が開始される。一方、EVスイッチ145がオンされている場合には、距離dtagが距離Dsocを下回っても、上り坂SOC制御は実行されない。これにより、EVスイッチ145をオンにしたユーザの意図に反してエンジン10が作動するのを抑制することができる。
図13は、図12のステップS515において実行される制御対象探索処理の一例を説明するフローチャートである。図13を参照して、この制御対象(対象上り坂区間)の探索処理も、上り坂と下り坂による違い以外は、図11に示した制御対象(対象下り坂区間)の探索処理の手順と基本的に同様である。具体的には、ステップS635の処理が、図11のステップS435の処理と異なる。
すなわち、ステップS625において区間iが最終であると判定されると(ステップS625においてYES)、HV−ECU100は、各区間の距離情報及び勾配情報に基づいて、制御対象(対象上り坂区間)を特定する(ステップS635)。たとえば、走行予定経路情報として取得された道路区間において、道路勾配が所定勾配以上の上り勾配を有する区間が単数又は連続して複数存在し(以下「上り区間群」とも称する。)、当該上り区間群の終了地点と開始地点との標高差が所定標高差以上であり、さらに、当該上り区間群の距離が所定距離以上である等の所定の条件が成立する場合に、HV−ECU100は、その上り区間群を上り坂SOC制御の制御対象(対象上り坂区間)として特定する。詳細には、制御対象(対象上り坂区間)について、上り坂開始地点及び上り坂終了地点、並びに上り坂長(対象上り坂区間の長さ)等が特定される。
このようにして、図12のステップS515において、制御対象(対象上り坂区間)が探索される。
以上のように、この実施の形態1においては、エンジン10が作動するのを抑制することを意図してユーザによりEVスイッチ145がオンされている場合(EV優先モードの選択中)には、SOC制御を実行しないようにする。したがって、この実施の形態1によれば、EVスイッチ145をオンにしたユーザの意図に反してエンジン10が作動するのを抑制することができる。
[実施の形態2]
実施の形態2に従う車両は、CDモード及びCSモードのいずれかを選択して走行可能である。そして、CDモード中は、CSモード中に対してエンジン10の始動が抑制されるところ、この実施の形態2では、CDモード中は、SOC制御を実行しないようにする。これにより、CDモード中にエンジン10が作動するのを抑制することができる。なお、CDモード中は、CSモード中に対してエンジン10の始動が抑制されることから、CDモードもEV優先モードであるといえる。
図14は、実施の形態2に従う車両1Aの全体構成図である。図14を参照して、車両1Aは、図1に示した車両1に対して、EVスイッチ145を備えておらず、充電器70及び受電部72をさらに備え、HV−ECU100に代えてHV−ECU100Aを備える。
充電器70は、受電部72に電気的に接続される車両外部の電源(図示せず)からの電力を蓄電装置60の電圧レベルに変換して蓄電装置60へ出力する(以下、車両外部の電源を「外部電源」とも称し、外部電源による蓄電装置60の充電を「外部充電」とも称する。)。充電器70は、たとえば整流器やインバータを含んで構成される。なお、外部電源の受電方法は、受電部72を用いた接触受電に限定されず、受電部72に代えて受電用コイル等を用いて外部電源から非接触で受電してもよい。
HV−ECU100Aは、HV走行を許容しつつもEV走行を主体的に行なうことによって蓄電装置60のSOCを積極的に消費するCDモードと、HV走行とEV走行とを適宜切替えることによってSOCを所定範囲に制御するCSモードとを選択的に適用する。
図15は、CDモード及びCSモードを説明するための図である。図15を参照して、外部電源による外部充電により蓄電装置60が満充電状態(SOC=MAX)となった後、CDモードで走行が開始されたものとする。
CDモードは、蓄電装置60のSOCを積極的に消費するモードであり、基本的には、蓄電装置60に蓄えられた電力(主には外部充電による電気エネルギ)を消費するものである。CDモードでの走行時は、SOCを維持するためにはエンジン10は作動しない。具体的には、たとえば、CDモードの選択時には、蓄電装置60の充放電要求パワーPb(図3,4)が0以下に設定される。これにより、車両1Aの減速時等に回収される回生電力やエンジン10の作動に伴ない発電される電力により一時的にSOCが増加することはあるものの、結果的に充電よりも放電の割合の方が相対的に大きくなり、全体としては走行距離の増加に伴ないSOCが減少する。
CSモードは、蓄電装置60のSOCを所定範囲に制御するモードである。一例として、時刻t1において、SOCの低下を示す所定値StgにSOCが低下すると、CSモードが選択され、その後のSOCが所定範囲に維持される。具体的には、SOCが低下するとエンジン10が作動し(HV走行)、SOCが上昇するとエンジン10が停止する(EV走行)。すなわち、CSモードでは、SOCを維持するためにエンジン10が作動する。
この車両1Aでは、エンジン要求パワーPeがエンジン始動しきい値Peth以下のときは、エンジン10を停止して第2MG30によって走行する(EV走行)。一方、エンジン要求パワーPeがエンジン始動しきい値Pethを超えると、エンジン10を作動させて走行する(HV走行)。HV走行では、第2MG30の駆動力に加えて、又は第2MG30の代わりに、エンジン10の駆動力を用いて車両1Aが走行する。HV走行中にエンジン10の作動に伴ない第1MG20が発電した電力は、第2MG30に直接供給されたり、蓄電装置60に蓄えられたりする。
ここで、CDモードにおけるエンジン始動しきい値Pethは、CSモードにおけるエンジン始動しきい値Pethよりも大きい。すなわち、CDモードにおいて車両1AがEV走行する領域は、CSモードにおいて車両1AがEV走行する領域よりも大きい。これにより、CDモードにおいては、エンジン10が始動する頻度が抑制され、CSモードに比べてEV走行の機会が拡大される。一方、CSモードにおいては、エンジン10及び第2MG30の双方を用いて効率よく車両1Aが走行するように制御される。
CDモードにおいても、エンジン要求パワーPeがエンジン始動しきい値Pethを超えれば、エンジン10は作動する。なお、エンジン要求パワーPeがエンジン始動しきい値Pethを超えていなくても、エンジン10や排気触媒の暖機時などエンジン10の作動が許容される場合もある。一方、CSモードにおいても、SOCが上昇すればエンジン10は停止する。すなわち、CDモードは、エンジン10を常時停止させて走行するEV走行に限定されるものではなく、CSモードも、エンジン10を常時作動させて走行するHV走行に限定されるものではない。CDモードにおいても、CSモードにおいても、EV走行とHV走行とが可能である。
この実施の形態2に従う車両1Aにおいても、制御対象(対象渋滞区間、対象下り坂区間、又は対象上り坂区間)への進入前に蓄電装置60のSOCを予め変更するSOC制御が実行される。ここで、CDモード中に下り坂SOC制御が実行されると、制御対象(対象下り坂区間)への進入前にSOCが低下することにより、走行状況によってはSOCが下限値SLに達してしまい、SOCを回復させるために内燃機関が強制的に作動してしまう可能性がある(強制充電)。また、CDモード中に渋滞SOC制御又は上り坂SOC制御が実行されると、SOCを高めるためにエンジン10が始動され易い状態となるので、CDモードに反してエンジン10が作動してしまう可能性がある。そこで、この実施の形態2に従う車両1Aでは、CDモード中(EV優先モードの選択中)はSOC制御を実行しないようにする。これにより、CDモードに反してエンジン10が作動するのを抑制することができる。
図16は、実施の形態2におけるHV−ECU100Aにより実行される渋滞SOC制御の処理手順を説明するフローチャートである。図16を参照して、このフローチャートは、図8に示した実施の形態1における渋滞SOC制御の処理手順を示すフローチャートに対して、ステップS140に代えてステップS142を含むものである。
すなわち、ステップS135において、車両1Aの現在位置から制御対象(対象渋滞区間)の開始地点までの距離dtagが距離Dsocを下回っていると判定されると(ステップS135においてYES)、HV−ECU100Aは、CDモード中であるか否かを判定する(ステップS142)。
CDモード中ではない、すなわちCSモード中であれば(ステップS142においてNO)、HV−ECU100Aは、渋滞SOC制御(プレチャージ制御)を開始する(ステップS145)。具体的には、図5で説明したように、HV−ECU100Aは、蓄電装置60の目標SOCをSnからSnよりも高いShに変更する。これにより、車両1Aが制御対象(対象渋滞区間)に進入する前に蓄電装置60のSOCが予め高められる。なお、渋滞SOC制御が既に実行中の場合には、渋滞SOC制御の実行が継続される。
一方、ステップS142においてCDモード中であると判定されると(ステップS142においてYES)、HV−ECU100Aは、ステップS145の処理を実行することなくリターンへと処理を移行する。すなわち、HV−ECU100Aは、CDモード中は渋滞SOC制御(プレチャージ制御)を実行しない。これにより、CDモードに反してエンジン10が作動するのを抑制することができる。
図17は、実施の形態2におけるHV−ECU100Aにより実行される下り坂SOC制御の処理手順を説明するフローチャートである。図17を参照して、このフローチャートは、図10に示した実施の形態1における下り坂SOC制御の処理手順を示すフローチャートに対して、ステップS340に代えてステップS342を含むものである。
すなわち、ステップS335において、車両1Aの現在位置から制御対象(対象下り坂区間)の開始地点までの距離dtagが距離Dsocを下回っていると判定されると(ステップS335においてYES)、HV−ECU100Aは、CDモード中であるか否かを判定する(ステップS342)。
CDモード中ではない、すなわちCSモード中であれば(ステップS342においてNO)、HV−ECU100Aは、下り坂SOC制御(プレユース制御)を開始する(ステップS345)。なお、下り坂SOC制御が既に実行中の場合には、下り坂SOC制御の実行が継続される。
一方、ステップS342においてCDモード中であると判定されると(ステップS342においてYES)、HV−ECU100Aは、ステップS345の処理を実行することなくリターンへと処理を移行する。すなわち、HV−ECU100Aは、CDモード中は下り坂SOC制御(プレユース制御)を実行しない。これにより、CDモードに反してエンジン10が作動するのを抑制することができる。
図18は、実施の形態2におけるHV−ECU100Aにより実行される上り坂SOC制御の処理手順を説明するフローチャートである。図18を参照して、このフローチャートは、図12に示した実施の形態1における上り坂SOC制御の処理手順を示すフローチャートに対して、ステップS540に代えてステップS542を含むものである。
すなわち、ステップS535において、車両1Aの現在位置から制御対象(対象上り坂区間)の開始地点までの距離dtagが距離Dsocを下回っていると判定されると(ステップS535においてYES)、HV−ECU100Aは、CDモード中であるか否かを判定する(ステップS542)。
CDモード中ではない、すなわちCSモード中であれば(ステップS542においてNO)、HV−ECU100Aは、上り坂SOC制御(プレチャージ制御)を開始する(ステップS545)。なお、上り坂SOC制御が既に実行中の場合には、上り坂SOC制御の実行が継続される。
一方、ステップS542においてCDモード中であると判定されると(ステップS542においてYES)、HV−ECU100Aは、ステップS545の処理を実行することなくリターンへと処理を移行する。すなわち、HV−ECU100Aは、CDモード中は上り坂SOC制御(プレチャージ制御)を実行しない。これにより、CDモードに反してエンジン10が作動するのを抑制することができる。
なお、特に図示しないが、CDモード及びCSモードのいずれかをユーザが選択可能とするためのモードスイッチを設けてもよい。
また、上記においては、車両1Aは、外部充電用の充電器70及び受電部72を備えることによって外部充電可能であり、かつ、CDモード及びCSモードを切替可能なハイブリッド車両としたが、本開示を適用可能な車両は、必ずしも外部充電可能なハイブリッド車両に限定されるものではない。
以上のように、この実施の形態2においては、CDモード中(EV優先モードの選択中)には、SOC制御を実行しないようにする。したがって、この実施の形態2によれば、CDモードに反してエンジン10が作動するのを抑制することができる。
[その他の実施の形態]
上記の実施の形態1,2においては、EV優先モード(EVスイッチ145のオン中やCDモード中)が選択されている場合に、SOC制御を実行しないものとしたが、その他のモードが選択されている場合にも、SOC制御を実行しないものとしてもよい。
たとえば、ユーザが操作可能な所定のスイッチにより、ユーザのドライバビリティを優先してエンジン10を積極的に作動させて走行するパワーモードや、蓄電装置60のSOC確保を優先してエンジン10を作動させて蓄電装置60を充電するSOC充電モード等が選択されている場合には、SOC制御を実行しないようにしてもよい。パワーモードやSOC充電モードの選択中に下り坂SOC制御(プレユース制御)が実行されると、エンジン10の作動が抑制され、パワーモードやSOC充電モードを選択したユーザの意図に反するからである。このような理由から、パワーモードやSOC充電モードが選択されている場合に、下り坂SOC制御のみを実行しないようにし、渋滞SOC制御及び上り坂SOC制御の実行は許容してもよい。
なお、上記の各実施の形態では、渋滞SOC制御、下り坂SOC制御、及び上り坂SOC制御の全てが実装される車両について説明したが、本開示を適用可能な車両は、渋滞SOC制御、下り坂SOC制御、及び上り坂SOC制御の少なくとも1つが実装される車両であればよく、全てのSOC制御が実装される車両に限定されるものではない。
なお、上記において、第2MG30は、この発明における「電動機」の一実施例に対応し、HV−ECU100,100Aは、この発明における「制御装置」の一実施例に対応する。
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。