JP6750990B2 - フィルムの製造方法 - Google Patents

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本発明は、フィルムの製造方法に関する。
溶融製膜方法において、ダイから押し出されるフィルム状の溶融樹脂組成物に対し、静電印加することによりキャストロールに密着させ冷却させる静電密着法(静電ピニング)が知られている。静電密着法は、高い冷却効率が得られること、表面凹凸が少なく平滑性に優れるフィルムが得られることなどの利点を有し、フィルム端部を静電密着するエッジピニングや、フィルム全幅を静電密着するワイヤーピニングなどがある(例えば、特許文献1、2参照)。
特許文献3には、所定の位置でエッジピニングすることでゲージバンドを防止しつつ、フィルム幅変動やフィルム流れ方向の厚み変動を抑制する方法が開示されている。
特許文献4には、エッジピニングとワイヤーピニングとの組み合わせによりキャストロールの汚れを抑制する方法が開示されている。
特開2009−166325号公報 特開昭62−048522号公報 特開2014−069485号公報 特開2014−069486号公報
フィルムの製造においては、得られたフィルムをさらに延伸することにより、力学物性および光学物性に優れたフィルムを得る方法が知られている。延伸を前提とした原反フィルムにはある程度の厚さが必要であり、通常はダイから押し出されるフィルム状の溶融樹脂組成物を2本のロールに挟んで製膜する方法(ニップ)により製造される。しかしながら、ニップにより得られた原反フィルムを延伸した場合、面内位相差および厚さ方向位相差の絶対値、並びにこれらの延伸温度依存性が大きくなるという欠点があった。
ニップの代わりに静電密着法を用いて原反フィルムを製造すればそのような問題を解決できる可能性がある一方で、例えば200μm以上の厚さを有し、剛性の高い原反フィルムを、静電密着法を用いて製造する方法は知られていない。
すなわち本発明の課題は、ある程度の厚さを有し、剛性の高いフィルムを静電密着法によって製造する場合であっても、表面凹凸が少なく平滑性に優れるフィルムを得られる方法を提供すること、また、得られたフィルムをさらに二軸延伸することにより平滑性、力学物性及び光学物性に優れた薄膜フィルムを得られる方法を提供することにある。
本発明者らは鋭意検討した結果、静電印加によりキャストロールに密着させる際における溶融熱可塑性樹脂組成物の貯蔵弾性率E’をある一定の範囲内に制御することにより上記課題を解決可能であることを見出し、本発明を完成した。
本発明は、下記[1]〜[9]に関する。
[1]ダイから押し出された溶融状態の熱可塑性樹脂組成物を静電印加によりキャストロールに密着させ、連続的に引き取ることによるフィルムの製造方法であって、静電印加時における溶融熱可塑性樹脂組成物の貯蔵弾性率E’(Pa)が、
0.5×10≦E’≦5×10
であることを特徴とする、フィルムの製造方法。
[2]キャストロールの半径をr(mm)、ダイ吐出部から溶融状態の熱可塑性樹脂組成物がキャストロールに接触するまでの距離をL(mm)としたとき、
2≦r/L≦60
を満足することを特徴とする、[1]の製造方法。
[3]キャストロールの表面温度をT(℃)、熱可塑性樹脂組成物のガラス転移温度をT(℃)としたとき、
(T−50)≦T≦(T+20)
を満足することを特徴とする、[1]または[2]の製造方法。
[4]前記フィルムの厚さが20〜500μmである、[1]〜[3]のいずれかの製造方法。
[5]前記熱可塑性樹脂組成物が(メタ)アクリル系樹脂を含む、[1]〜[4]のいずれかの製造方法。
[6]前記(メタ)アクリル系樹脂が、三連子表示のシンジオタクティシティ(rr)が50%以上であり、重量平均分子量が80000〜200000であり、メタクリル酸メチルに由来する単量体単位の含有量が92質量%以上であるメタクリル樹脂(X)である、[5]の製造方法。
[7]前記熱可塑性樹脂組成物が、300℃、1.2kg荷重の条件で測定されるメルトボリュームフローレート(MVR)が130〜250cm/10minであるポリカーボネート樹脂(Y)をさらに含む、[5]または[6]の製造方法。
[8]さらに、得られたフィルムを二軸延伸する工程を含む、[1]〜[7]のいずれかの製造方法。
[9]前記フィルムが偏光子保護フィルムである、[1]〜[8]のいずれかの製造方法。
本発明の製造方法により、ある程度の厚さを有し、剛性の高いフィルムを静電密着法により製造する場合であっても、表面凹凸が少なく平滑性に優れるフィルムを得られる。また、これをさらに二軸延伸することにより、平滑性、力学物性及び光学物性に優れた薄膜フィルムを得られる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明はダイから押し出された溶融状態の熱可塑性樹脂組成物を静電印加によりキャストロールに密着させ、連続的に引き取ることによるフィルムの製造方法において、静電印加によりキャストロールに密着させる際における溶融熱可塑性樹脂組成物の貯蔵弾性率E’(Pa)が、
0.5×10≦E’≦5×10
であることを特徴とする。
[押出工程]
本発明の製造方法においては、溶融状態の熱可塑性樹脂組成物を形成するために押出機を用いることが好ましい。押出機としては、例えば単軸押出機、同方向噛合型二軸押出機、同方向非噛合型二軸押出機、異方向非噛合型二軸押出機、多軸押出機等が挙げられる。中でも、樹脂滞留部が少ないため押出中における樹脂の熱劣化を抑制できること、また設備費が安価になることから単軸押出機が好ましい。単軸押出機などで使用するスクリュとしては、圧縮比2〜3程度の一般的なフルフライト構成のものでもよく、未溶融物が存在しないようにバリアフライト等の特殊な混練機構を持たせたものでもよい。また、熱可塑性樹脂組成物中の残存揮発分や押出機における加熱発生物を除去するため、ベント機構を有する押出機を用いてもよい。
原料となる熱可塑性樹脂等は、通常、ペレット状などの固体状態で押出機のホッパーに供給する。原料となる樹脂は、加水分解や酸化劣化を生じさせないため、水分量が200ppm以下となるよう、窒素雰囲気下等で事前に加熱乾燥したものを用いてもよい。乾燥方法としては、押出機のホッパーに乾燥機構を設けるホッパー型乾燥機を用いる方法や、ホッパーに樹脂を供給する前に乾燥機を用いて乾燥し、吸湿しないようホッパーに供給する方法や、またはその両方を採用できる。
押出機を使用する場合の押出条件は、使用する熱可塑性樹脂組成物に応じて調整すればよい。例えば粘度平均分子量12000〜20000のポリカーボネート樹脂を使用する場合には、押出機出口における熱可塑性樹脂組成物の温度が220〜280℃、好ましくは240〜270℃となるように各シリンダー部の温度を設定するとよい。前記温度が220℃未満であると、溶融粘度が非常に大きくなり押出機のトルクオーバーやフィルム成形が困難となることがあり、280℃以上では熱可塑性樹脂組成物の熱劣化が生じ、フィルムに欠陥となって現れてしまう場合がある。
押出機のシリンダー部の温度は、後述するダイ吐出時の熱可塑性樹脂組成物の温度に対して好ましくは±20℃以内、より好ましくは±10℃以内、さらに好ましくは±5℃以内とする。±20℃以内とすることで、押出機を通過した後に所望の温度へとライン内で変更していくときに、熱可塑性樹脂組成物全体の温度を均一に変更することが容易となり、フィルムの均一性向上に繋がる。
押出機等の溶融手段により得られた溶融状態の熱可塑性樹脂組成物は、ギアポンプや異物除去装置等を経由してダイに供給してもよい。ギアポンプを用いることで、押出機における吐出量変動を吸収し、供給定量性が向上し、フィルム厚みの安定性を向上できる。また、異物除去装置を用いることで、原料中に含まれていた異物や、押出機やギアポンプ等で発生した異物をトラップし、フィルム中の異物欠陥を低減することが可能となる。このような異物除去装置としては、スクリーンメッシュ、プリーツ型フィルター、リーフディスク型フィルター等を用いることができる。
本発明の製造方法で用いるダイとしては特に制限はないが、一般的なコートハンガーダイなどのTダイが好ましい。Tダイとしては、製膜した溶融状態のフィルム状の熱可塑性樹脂組成物の厚みを測定して、リップ開度のボルトを自動で調整する機構を備える自動調整ダイを用いてもよい。
本発明の製造方法においては、キャストロールの半径をr(mm)、ダイ吐出部から溶融熱可塑性樹脂組成物がキャストロールに接触するまでの距離をL(mm)としたとき、
2≦r/L≦60
を満足することが好ましい。r/L≦60とすることで、ダイ吐出部とキャストロールとの距離を十分に保ち、静電ピニング装置を設置することが容易となり、また、装置の揺れ等に起因するダイとロールの接触を防ぐことができる。また、2≦r/Lとすることで、樹脂組成物がキャストロールに接触するまでに延伸・冷却されることを抑制し、得られるフィルム幅がダイ幅よりも小さくなることや、フィルムの平滑性低下を低減できる。
本発明の製造方法においては、キャストロールの表面温度をT(℃)、熱可塑性樹脂組成物のガラス転移温度をT(℃)としたとき、
(T−50)≦T≦(T+20)
を満足することが好ましい。T≦(T+20)とすることで、キャストロールからフィルムを剥離する際に剥離紋の発生を抑制できる。また、(T−50)≦Tとすることで、静電密着法によるキャストロールと溶融樹脂組成物との密着効果を向上でき、厚み変動を抑制できる。なお、係るTは、熱可塑性樹脂組成物を、JIS K7121に準拠して示差走査熱量測定(DSC)装置を用いて測定したときの、2回目の昇温時に測定されるDSC曲線から求めた中間点ガラス転移温度である。また、熱可塑性樹脂組成物が複数のTを有する場合、最も高いTの値を採用する。
[フィルム形成工程]
本発明の製造方法では、ダイから押し出された溶融状態の熱可塑性樹脂組成物を静電印加によりキャストロールに密着させる工程を有する。キャストロールに密着した熱可塑性樹脂組成物は冷却、固化されることで未延伸のフィルムを形成する。
本発明の製造方法では、静電印加時における溶融熱可塑性樹脂組成物の貯蔵弾性率E’(Pa)を
0.5×10≦E’≦5×10
とし、好ましくは
1×10≦E’≦2×10
とする。
E’≦5×10とすることで、熱可塑性樹脂組成物の歪みの残存が低減され、以降の工程や使用環境における加熱収縮を抑制できる。この効果は、特にガラス転移温度が120℃以上で剛性の高い熱可塑性樹脂組成物を用いた場合に顕著である。また、キャストロールに密着させる際の振動を抑制し、安定して密着させることができる。さらに、0.5×10≦E’とすることで、安定して製膜することが可能となる。なお、静電印加時における溶融熱可塑性樹脂組成物の貯蔵弾性率E’は、静電印加時における溶融熱可塑性樹脂組成物の温度を測定し、該温度における溶融熱可塑性樹脂組成物の貯蔵弾性率の値を採用する。
E’は熱可塑性樹脂組成物の組成および静電印加時の温度により制御可能である。具体的には、所望の熱可塑性樹脂組成物について一定周波数にて特定の温度範囲で動的粘弾性測定を行い、E'の温度依存性を評価し、それを基に静電印加時の温度を調節することで制御すればよい。
静電印加の方法は、エッジピニングでもワイヤーピニングでもよく、これらを併用してもよい。なお、ワイヤーピニングに用いるピニング装置は、例えば特許文献2や特許文献4に記載されたものが挙げられる。
ピニング装置の電極は、ダイの吐出口と、溶融状態のフィルム状の熱可塑性樹脂組成物がキャストロールに最初に接触する点(以下、単に「接触点」と称する)までの間に設置することが好ましく、ダイの吐出口と接触点との中間点から、接触点までの間に設置することがより好ましい。ダイの吐出口と接触点との中間点以前にピニング装置の電極を設置すると、電圧をかけた際にダイに対して火花放電が発生し、ピニングの効果が得られない場合や、ダイが破損する場合がある。また接触点以降にピニング装置の電極を設置すると、フィルム幅変動やフィルム流れ方向の厚み変動が発生する場合がある。
エッジピニングを用いる場合、溶融状態のフィルム状の熱可塑性樹脂組成物の幅方向に対するエッジピニング装置の電極の設置位置は、溶融状態のフィルム状の熱可塑性樹脂組成物の幅の範囲内であれば特に制限されないが、製品幅を確保する観点からは、出来る限りフィルム端部に設置することが好ましい。
溶融状態のフィルム状の熱可塑性樹脂組成物の表面からピニング装置の電極までの距離は、1〜10mmまでとすることが好ましい。前記距離を1mm以上とすることで、生産時の溶融状態のフィルム状の熱可塑性樹脂組成物の揺れによる熱可塑性樹脂組成物と電極との接触を防ぐことができる。また、前記距離を10mm以下とすることで、静電印加の効果を十分に発揮することができる。
静電印加の際の電圧は、溶融状態のフィルム状の熱可塑性樹脂組成物表面から電極までの距離によるが、熱可塑性樹脂組成物のキャストロールへの密着が確認できる電圧以上であり、かつ火花放電が発生する電圧未満であればよい。熱可塑性樹脂組成物のキャストロールへの密着が確認できる電圧とは、放電により付与された電荷が熱可塑性樹脂組成物上にたまり続けることのない電圧のことで、熱可塑性樹脂組成物とキャストロールとの間で静電密着が生じる電圧である。一方、印加電圧を高くしていくと熱可塑性樹脂組成物上に電荷が多く存在するようになり、限界を超えると火花放電が発生する。火花放電が起こる電圧以上ではもはや密着効果は向上せず、キャストロールの破損に繋がるおそれがある。
上記の方法で得られるフィルムの厚さに特に制限はないが、該フィルムを後述する延伸工程に供する場合、20μm〜500μmが好ましく、100〜500μmがより好ましく、150〜500μmがさらに好ましく、200〜500μmが特に好ましい。20μm未満の場合は延伸時に破断する可能性があり、また500μm超の場合は高速に延伸することが困難となる。一方、延伸されたフィルムの厚さは20μm〜500μmが好ましく、30〜200μmがより好ましく、40〜100μmがさらに好ましい。なお、本明細書において「フィルムの厚さ」とは、フィルムの幅方向における中央の位置から幅方向に左右50mmの平均値を指す。
本発明の製造方法は、特に200μm以上の厚さを有する未延伸のフィルムを得る際に好適に採用することができる。
未延伸のフィルムは、延伸工程の前に、易接着層を形成するためにプライマー等を塗工してもよい。プライマーとしては、例えばポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、フッ素含有樹脂、シリコーン系樹脂などが挙げられる。プライマーは、熱や活性エネルギー線等によって重合等の反応をする樹脂組成物であってもよい。
[延伸工程]
上記の方法で得られる未延伸のフィルム(以下、「延伸用フィルム原反」と称する)を長手方向および幅方向に二軸延伸することで、平滑性、力学物性及び光学物性に優れた薄膜フィルムを得られる。
二軸延伸は、延伸用フィルム原反を予熱する工程(I)と、延伸用フィルム原反を加熱しながら二軸延伸する工程(II)と、二軸延伸後のフィルムを降温する工程(III)と、フィルムを弛緩する工程(IV)を有する。
(工程(I)、(II))
工程(I)では、延伸用フィルム原反を貯蔵弾性率曲線におけるゴム状平坦領域内の温度に予熱する。工程(II)では、予熱された延伸用フィルム原反をゴム状平坦領域内の温度、好ましくは工程(I)と略同一の温度に保ちながら二軸延伸する。
工程(II)における二軸延伸は、長手方向および幅方向を同時に延伸する同時二軸延伸でもよいし、長手方向および幅方向を逐次延伸する(この場合の順序は問わない)逐次二軸延伸でもよい。同時二軸延伸装置としては、一般にテンターが用いられる。
工程(II)における延伸速度は、製造コストの観点から高速である方が好ましく、具体的には長手方向および幅方向共に500%/min以上とするのが好ましい。延伸速度の上限は特に制限されないが、延伸速度が過大である場合、製造されるフィルムの熱収縮が大きくなる恐れがある。この観点からは、延伸速度500〜3000%/minであることがより好ましく、1000〜3000%/minであることがさらに好ましい。
長さLB(mm)、幅WB(mm)のフィルムに対してT(min)の時間をかけて延伸して、長さLA(mm)、幅WA(mm)の二軸延伸フィルムが得られた場合、長手方向の延伸速度(%/min)は[{(LA−LB)/LB}/T]×100で表され、幅方向の延伸速度(%/min)は[{(WA−WB)/WB}/T]×100で表される。
(工程(III)、(IV))
工程(III)では、二軸延伸されたフィルムを貯蔵弾性率曲線のガラス−ゴム転移領域内またはガラス領域内まで、好ましくはガラス−ゴム転移領域内まで降温する。これにより、フィルム温度を工程(IV)の弛緩温度またはそれに近い温度に調整するだけでなく、ボーイング現象の低減効果も得られる。
工程容易性を考慮すれば、工程(III)の降温温度は工程(IV)の弛緩温度と同一とすることが好ましい。
工程(IV)では、二軸延伸された熱可塑性樹脂フィルムをガラス−ゴム転移領域内の温度で弛緩する。
各工程の温度調整方法については特に制限されず、各工程の温度に調温された熱風を用いる方法などを用いることができる。
工程(I)〜(IV)を実施した後の最終的な延伸倍率は、長手方向および幅方向共に1.5〜3倍とすることが好ましい。最終的な延伸倍率をこの範囲とすることで、延伸処理の効果、すなわち、フィルムの靭性向上およびこれによる取扱い性の向上効果が安定的に得られ、かつ、延伸工程でのフィルムの破断も抑制される。ここで、最終的な延伸倍率は次式で表される。
[長手方向の最終的な延伸倍率]=[工程(IV)後のフィルムの長さ]/[工程(II)前のフィルムの長さ]
[幅方向の最終的な延伸倍率]=[工程(IV)後のフィルムの幅]/[工程(II)前のフィルムの幅]
[熱可塑性樹脂組成物]
本発明の製造方法で用いる熱可塑性樹脂組成物に含まれる樹脂は特に制限されない。例えばノルボルネン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂等が挙げられる。偏光子保護フィルム等の用途では、透明性および位相差の観点から(メタ)アクリル系樹脂を含むことが好ましい。熱可塑性樹脂組成物に含まれる樹脂は1種でもよく、2種以上であってもよい。
なお、本明細書中において「(メタ)アクリル」とは「アクリル」または「メタクリル」を指し、「(メタ)アクリル系樹脂」とは(メタ)アクリル酸エステルに由来する少なくとも1種の単量体単位を含む樹脂を指す。
前記(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチルおよび(メタ)アクリル酸2−エチルへキシル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;(メタ)アクリル酸フェニル等の(メタ)アクリル酸アリールエステル;(メタ)アクリル酸シクロへキシル、および(メタ)アクリル酸ノルボルネニル等の(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
偏光子保護フィルム等の用途では、用いる(メタ)アクリル系樹脂はメタクリル酸メチル(MMA)に由来する単量体単位を90質量%以上含むものが好ましい。MMAの他に含むことのできる単量体単位としては、上記した(メタ)アクリル酸エステルの他、(メタ)アクリルアミドや(メタ)アクリロニトリル等の1分子中に重合性の炭素−炭素二重結合を有するビニル系単量体等に由来する単量体単位が挙げられる。
偏光子保護フィルム等の用途では、用いる(メタ)アクリル系樹脂は、三連子表示のシンジオタクティシティ(rr)が50%以上であり、質量平均分子量が80000〜200000であり、メタクリル酸メチルに由来する単量体単位の含有量が92質量%以上であるメタクリル樹脂(X)であることが好ましい。
上記範囲とすることで、透明性が高く、厚さ方向の位相差が小さく、熱収縮率が小さく、厚さが均一で、表面平滑性に優れるフィルムが得られる。
三連子表示のシンジオタクティシティ(rr)(以下、単に「シンジオタクティシティ(rr)」と称することがある)は、連続する3つの単量体単位の連鎖(3連子、triad)が有する2つの連鎖(2連子、diad)が、ともにラセモ(rrと表記する)である割合である。なお、ポリマー分子中の単量体単位の連鎖(2連子、diad)において立体配置が同じものをメソ(meso)、逆のものをラセモ(racemo)と称し、それぞれm、rと表記する。
メタクリル樹脂(X)のシンジオタクティシティ(rr)(%)は、重水素化クロロホルム中、30℃でH-NMRスペクトルを測定し、基準物質(TMS)を0ppmとした際の0.6〜0.95ppmの領域の面積をA、と0.6〜1.35ppmの領域の面積をAとしたとき、(A/A)×100から求めることができる。
メタクリル樹脂(X)のシンジオタクティシティ(rr)は好ましくは55%以上であり、より好ましくは58%以上であり、さらに好ましくは59%以上であり、特に好ましくは60%以上である。
製膜性の観点から、メタクリル樹脂(X)のシンジオタクティシティ(rr)は好ましくは99%以下であり、より好ましくは85%以下であり、さらに好ましくは77%以下であり、特に好ましくは65%以下であり、最も好ましくは64%以下である。
メタクリル樹脂(X)の重量平均分子量は好ましくは85000〜160000であり、より好ましくは85000〜120000である。
上記物性を有するメタクリル樹脂(X)の製造方法は特に制限されない。例えば、ラジカル重合法、あるいはアニオン重合法等の公知の重合法において、重合温度、重合時間、連鎖移動剤の種類や量、重合開始剤の種類や量等を調整することによって、質量平均分子量およびシンジオタクティシティ(rr)等の物性を調整できる。
熱可塑性樹脂組成物には、フィルムの厚みムラの低減等を目的として、必要に応じて、重量平均分子量200000以上の高分子量の(メタ)アクリル系樹脂を、例えば0.5〜6質量%添加してもよい。
偏光子保護フィルム等の用途では、熱可塑性樹脂組成物は、JIS K7210に準拠して、300℃、1.2kg荷重の条件で測定されるメルトボリュームフローレート(MVR)が130〜250cm/10minであるポリカーボネート樹脂(Y)をさらに含むことが好ましい。
メタクリル系樹脂(X)との相溶性および得られるフィルムの透明性および面内均一性の観点から、前記MVRは好ましくは150〜230cm/10minであり、より好ましくは180〜220cm/10minである。
メタクリル樹脂(X)とポリカーボネート樹脂(Y)は相溶性が高く、熱可塑性樹脂組成物中においてこれらの樹脂がナノオーダーで均一に相溶し、透明性の高いフィルムが得られる。また得られるフィルムは二軸延伸しても厚さ方向の位相差が小さく、厚さが均一で、表面平滑性に優れ、耐熱性が高く、二軸延伸後に熱収縮が小さいなどの特徴を有する(国際公開第2015/111682号参照)。
ポリカーボネート樹脂(Y)は、多官能ヒドロキシ化合物と炭酸エステル形成性化合物との反応によって得られる。メタクリル樹脂(X)との相溶性、および得られるフィルムの透明性の観点から、ポリカーボネート樹脂(Y)としては芳香族ポリカーボネート樹脂が好ましい。
芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法は特に制限されず、例えば、ホスゲン法(界面重合法)および溶融重合法(エステル交換法)等が挙げられる。
芳香族ポリカーボネート樹脂は、あらかじめ溶融重合法で製造されたポリカーボネート樹脂原料に、末端ヒドロキシ基量を調整する処理を施して製造されたものでもよい。
前記多官能ヒドロキシ化合物としては特に制限されず、4,4’−ジヒドロキシビフェニル類、ビス(ヒドロキシフェニル)アルカン類、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル類、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド類、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド類、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン類、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン類、ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン類、ジヒドロキシ−p−ターフェニル類、ジヒドロキシ−p−クォーターフェニル類、ビス(ヒドロキシフェニル)ピラジン類、ビス(ヒドロキシフェニル)メンタン類、ビス〔2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル〕ベンゼン類、ジヒドロキシナフタレン類、ジヒドロキシベンゼン類、ポリシロキサン類、およびジヒドロパーフルオロアルカン類等が挙げられる。
中でも、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−フェニルフェニル)プロパン、4,4'−ジヒドロキシビフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、α,ω−ビス〔3−(2−ヒドロキシフェニル)プロピル〕ポリジメチルシロキサン、レゾルシン、および2,7−ジヒドロキシナフタレンが好ましく、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンがより好ましい。
これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記炭酸エステル形成性化合物としては特に制限されず、ホスゲン等の各種ジハロゲン化カルボニル;クロロホーメート等のハロホーメート;およびビスアリールカーボネート等の炭酸エステル化合物等が挙げられる。
これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ポリカーボネート樹脂(Y)は、ポリカーボネート単位以外に、ポリエステル単位、ポリウレタン単位、ポリエーテル単位、もしくはポリシロキサン単位等の他のポリマー単位を1種以上含んでいてもよい。
偏光子保護フィルム等の用途では、熱可塑性樹脂組成物におけるメタクリル樹脂(X)とポリカーボネート樹脂(Y)との質量比(メタクリル樹脂(X)/ポリカーボネート樹脂(Y))は、好ましくは91/9〜99/1であり、より好ましくは94/6〜98/2である。
偏光子保護フィルム等の用途において、熱可塑性樹脂組成物におけるメタクリル樹脂(X)とポリカーボネート樹脂(Y)との合計量は、好ましくは80〜100質量%であり、より好ましくは90〜100質量%であり、さらに好ましくは94〜100質量%であり、特に好ましくは96〜100質量%である。
熱可塑性樹脂組成物は、その他必要に応じて酸化防止剤、熱劣化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、滑剤、離型剤、高分子加工助剤、帯電防止剤、難燃剤、染顔料、光拡散剤、有機色素、艶消し剤、耐衝撃性改質剤および蛍光体等の添加剤を好ましくは0.5質量%以下の範囲で、より好ましくは0.2質量%以下の範囲で含有してもよい。
[フィルム]
本発明の製造方法により得られるフィルムの用途に特に制限はなく、偏光子保護フィルム、液晶保護板、携帯型情報端末の表面材、携帯型情報端末の表示窓保護フィルム、導光フィルム、銀ナノワイヤーあるいはカーボンナノチューブを表面に塗布した透明導電フィルム、および各種ディスプレイの前面板用途等の光学用途の他、赤外線カットフィルム、防犯フィルム、飛散防止フィルム、加飾フィルム、太陽電池のバックシート、フレキシブル太陽電池用フロントシート、シュリンクフィルム、およびインモールドラベル用フィルム等にも利用できる。
中でも、本発明の製造方法により得られるフィルムは偏光子保護フィルムに特に好適に利用できる。
本発明の製造方法により得られる延伸フィルムを偏光子保護フィルム等として用いる場合、波長590nmの光に対する面内位相差Reは、フィルム厚さ40μmの条件で、好ましくは−5〜5nmであり、より好ましくは−4〜4nmであり、さらに好ましくは−3〜3nmであり、特に好ましくは−2〜2nmであり、最も好ましくは−1〜1nmである。
また波長590nmの光に対する厚さ方向位相差Rthは、フィルム厚さ40μmの条件で、好ましくは−5〜5nmであり、より好ましくは−4〜4nmであり、さらに好ましくは−3〜3nmであり、特に好ましくは−2〜2nm以下であり、最も好ましくは−1〜1nmである。
ReおよびRthが上記の範囲であれば、位相差に起因する液晶表示装置の表示特性への影響が顕著に抑制され得る。具体的には、干渉ムラおよび3Dディスプレイ用液晶表示装置に用いる場合の3D像の歪み等が顕著に抑制され得る。
なお、面内方向位相差Reおよび厚さ方向位相差Rthは、それぞれ、以下の式で定義される。
Re=(nx−ny)×d、
Rth=[{(nx+ny)/2}−nz]×d
ここで、nxはフィルムの遅相軸方向の屈折率、nyはフィルムの進相軸方向の屈折率、nzはフィルム厚さ方向の屈折率、d(nm)はフィルム厚さである。なお遅相軸はフィルム面内の屈折率が最大になる方向であり、進相軸は面内で遅相軸に垂直な方向である。
本発明の製造方法により得られるフィルムは、他の任意の樹脂フィルムや非樹脂材(金属や木材等)と積層してもよい。
また、本発明の製造方法により得られるフィルムは、表面処理により易接着層、ハードコート層、防眩ハードコート層、紫外線遮蔽層、赤外線遮蔽層、導電層、反射防止層などの機能層を設けてもよい。
以下、実施例および比較例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されない。
実施例および比較例は以下の方法により評価した。
(フィルム厚さおよび厚さ分布)
フィルム幅方向の中心より左右50mmをサンプリングし、1mm間隔で厚みt(μm)を測定(測定数n=100)し、平均厚さT(μm)、標準偏差σ(μm)および変動係数Cv(%)を次式にて算出した。
T=Σ(t)/n
σ=[{Σ(X−T)}/n]1/2
Cv=(σ/T)×100
(フィルムの外観)
フィルム幅方向の中心より左右・前後50mmを切り出し、100mm×100mmの試験片を作製し、以下の方法により評価した。
○:シワ、欠点がなく良好な外観
△:シワ、欠点がわずかにある
×:シワ、欠点が著しい
(貯蔵弾性率E’)
熱可塑性樹脂を220℃・50kgfにて熱プレスして厚さ180μmのフィルムを作製した。このフィルムから長さ20mm×幅5mm×厚さ180μmの短冊状試験片を切り出した。
UBM社製の粘弾性測定装置「Rheogel−E4000」を用い、昇温速度は3℃/分、測定温度範囲は25〜230℃、周波数は1Hz、ひずみ振幅は0.3%、引張りモードにて貯蔵弾性率を測定した。
(インパクト衝撃強さ)
フィルム幅方向の中心より左右・前後40mmを切り出し80mm×80mmの試験片を作製した。フィルムインパクトテスター(安田精機製;ASTM−D3420準拠)を用い、荷重3J、r=6.35mmの条件で測定を行った。
(加熱変形率)
フィルムの製膜方向(MD側)と平行に、長さ20mm、幅5mm、厚さ45μmの試験片を切り出した。
試験片の長手方向の両端部(両端から5mmの部分)をチャックし、チャック間距離10mmに対し引張り荷重2gfをかけ、応力・歪制御型熱機械分析装置(TMA)にて25℃から85℃まで2℃/分の昇温速度で昇温した。85℃に到達した時点での長さを測定した後、さらに85℃で30分間加熱保持し、長さ変化を測定した。
加熱保持の前後の試験片長さの差の絶対値をΔL(mm)とし、加熱変形率(%)を次式により算出した。
加熱変形率(%)=ΔL(mm)/10(mm)×100
(面内方向位相差値(Re)、厚さ方向位相差値(Rth))
フィルム幅方向の中心より左右・前後20mmを切り出し40mm×40mmの試験片を作製した。位相差測定装置(王子計測器(株)製「KOBRA−WR」)を用い、590nmの波長における位相差を測定した。
(製造例1)[メタクリル樹脂(X1)の製造]
攪拌機および採取管が取り付けられたオートクレーブ内を窒素で置換した。これに、蒸留精製されたMMA100質量部、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)(水素引抜能:1%、1時間半減期温度:83℃)0.0052質量部、およびn−オクチルメルカプタン0.225質量部を入れ、撹拌して原料液を得た。この原料液中に窒素を送り込み、原料液中の溶存酸素を除去した。
配管を介してオートクレーブに接続された槽型反応器に容量の2/3まで原料液を入れた。温度を140℃に維持した状態で、まずバッチ方式で重合反応を開始させた。重合転化率が55質量%になったところで、温度140℃に維持した状態で、平均滞留時間150分となる流量で原料液をオートクレーブから槽型反応器に供給し、同時に原料液の供給流量に相当する流量で槽型反応器から反応液を抜き出す連続流通方式の重合反応に切り替えた。連続流通方式に切り替えた後、定常状態における重合転化率は55質量%であった。
定常状態になった槽型反応器から抜き出される反応液を、平均滞留時間2分間となる流量で内温230℃の多管式熱交換器に供給して加温した。次いで加温された反応液をフラッシュ蒸発器に導入し、未反応単量体を主成分とする揮発分を除去して、溶融樹脂を得た。揮発分が除去された溶融樹脂を内温260℃の二軸押出機に供給してストランド状に吐出し、ペレタイザーでカットして、ペレット状のメタクリル系樹脂を得た。
得られたメタクリル樹脂(X1)の物性を表1に示す。
(製造例2)[メタクリル樹脂(X2)の製造]
撹拌翼と三方コックが取り付けられた5Lのガラス製反応容器内を窒素で置換した。これに、室温下にて、トルエン1600g、1,1,4,7,10,10−ヘキサメチルトリエチレンテトラミン2.49g(10.8mmol)、濃度0.45Mのイソブチルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウムのトルエン溶液53.5g(30.9mmol)、および濃度1.3Mのsec−ブチルリチウムの溶液(溶媒:シクロヘキサン95質量%、n−ヘキサン5質量%)6.17g(10.3mmol)を仕込んだ。これらの原料に対して、撹拌しながら、20℃にて、蒸留精製されたMMA550gを30分かけて滴下した。滴下終了後、20℃で90分間撹拌したところ、溶液の色が黄色から無色に変化した。この時点におけるMMAの重合転化率は100%であった。得られた溶液にトルエン1500gを加えて希釈した。次いで、希釈液をメタノール100kg中に注ぎ入れ、沈澱物を得た。得られた沈殿物を80℃、140Paにて24時間乾燥して、メタクリル樹脂(X2)を得た。得られたメタクリル樹脂(X2)の物性を表1に示す。
(製造例3)[メタクリル樹脂(X3)の製造]
製造例1で得られたメタクリル樹脂(X1)43質量部と製造例2で得られたメタクリル樹脂(X2)57質量部とを混ぜ合わせ、二軸押出機((株)テクノベル社製「KZW20TW-45MG-NH-600」)を用いて250℃にて混練押出して、メタクリル樹脂(X3)を得た。得られたメタクリル樹脂(X3)の物性を表1に示す。
Figure 0006750990
(製造例4)[熱可塑性樹脂組成物(B1)の製造]
メタクリル樹脂(X3)95質量部、ポリカーボネート樹脂(住化スタイロンポリカーボネート社製「SDPOLYCA TR−2001」)3質量部、およびダウ・ケミカル社製「パラロイドK125−P」を2質量部混合し、ベント付二軸押出機((株)テクノベル社製「KZW20TW-45MG-NH-600」)を用いて250℃にて混練押出して、ガラス転移温度Tgが122℃であるメタクリル系樹脂組成物(B1)を得た。
尚、「SDPOLYCA TR−2001」は300℃、1.2Kg荷重におけるメルトボリュームフローレート(MVR)が200cm/10minであり、質量平均分子量(M)が22100g/molであり、分子量分布が1.81である。
(実施例1)
熱可塑性樹脂組成物(B1)を、温度が265℃となるよう押出機で加熱溶融し、幅700mmのTダイからシート状に押出した。ダイ吐出部から溶融状態の熱可塑性樹脂組成物(B1)がキャストロールに接触するまでの距離を30mmとし、押出された熱可塑性樹脂組成物(B1)を静電印加(エッジピニング、電圧4V、キャストロールとの接触点から垂直方向に5mm、かつTダイ側に10mmの位置)により225mm径のキャストロールに密着させ、冷却して、引取速度4.2m/minの条件で幅650mm、厚さ242μmのフィルムを得た。この際、静電印加時の熱可塑性樹脂組成物(B1)の貯蔵弾性率E’は1.26×10Pa、キャストロール温度は85℃とした。得られたフィルムの厚さ分布および外観等を表2に示す。
(実施例2)
引取速度を3m/minとした以外は実施例1と同様の方法で、厚さ321μmのフィルムを得た。得られたフィルムの厚さ分布および外観等を表2に示す。
(実施例3)
静電印加の方式をワイヤーピニング(電圧10kV)とした以外は実施例1と同様の方法で、厚さ238μmのフィルムを得た。得られたフィルムの厚さ分布および外観等を表2に示す。
(実施例4)
Tダイ吐出部から熱可塑性樹脂組成物(B1)がキャストロールに接触するまでの距離を250mmとした以外は実施例1と同様の方法でフィルムを得た。得られたフィルムの厚さ分布および外観を表2に示す。
(比較例1)
ダイより吐出された熱可塑性樹脂組成物(B1)をエアシャワーにより冷却することで、静電印加時の貯蔵弾性率E’を10×10Paとした以外は実施例1と同様の方法でフィルムを得た。その結果、キャストロールに密着させる際に振動し、安定に密着させることができなかった。得られたフィルムの厚さ分布および外観等を表2に示す。
(比較例2)
ダイより吐出された熱可塑性樹脂組成物(B1)を保温することで、静電印加時の貯蔵弾性率E’を0.27×10Paとした以外は実施例1と同様の方法でフィルムを得た。その結果、キャストロールと十分に密着させることができず、フィルムに撓みが観察された。得られたフィルムの厚さ分布および外観を表2に示す。
(比較例3)
静電印加の代わりに、金属弾性ロールと金属剛体ロールの2本のロールに挟んで製膜する方法(ニップ)とした以外は実施例1と同様の方法で、厚さ239μmのフィルムを得た。得られたフィルムの厚さ分布および外観等を表2に示す。
Figure 0006750990
表2に示すように、実施例で得られたフィルムは、平滑性が高くかつ外観が良いことがわかる。
(実施例5)
実施例1で得られたフィルムをテンター式同時二軸延伸機へ搬送速度2m/minで連続供給し、空気循環式恒温オーブン内で以下の工程(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)の順に操作して二軸延伸フィルムの作製を行った。
工程(I):熱可塑性樹脂フィルムの幅方向の両端部を一対のテンタークランプにより把持した後に、これを140℃に予熱した。尚、個々のテンタークランプは、フィルムの幅方向の一端部に沿って走行する伸縮自在なパンタグラフと、このパンタグラフに設けられ、フィルムの一端部を把持する複数のクリップとを含むものである。
工程(II):上記フィルムを140℃の温度で、上記一対のテンタークランプを操作して、長手方向に2.1倍、幅方向に2.1倍、同時に延伸した。この工程において、延伸速度は、長手方向および幅方向共に1000%/minとした。
工程(III):上記フィルムを120℃まで冷却した。
工程(IV):上記フィルムを120℃の温度で弛緩させた。この際、弛緩後の長手方向の延伸倍率が2倍、幅方向の延伸倍率が2倍となるように、上記一対のテンタークランプを操作して、長手方向および幅方向共に5%の弛緩率でフィルムを弛緩させた。この際の弛緩速度は、長手方向および幅方向共に80%/minとした。
工程(V):上記フィルムを70℃まで冷却し、固化させた。
以上により、厚さ55μmの二軸延伸フィルムを得た。得られた二軸延伸フィルムの物性を表3に示す。
(実施例6)
熱可塑性樹脂組成物(B1)の代わりにメタクリル樹脂(X3)を用いた以外は実施例1と同様の方法で得られたフィルムを、工程(I)の予熱温度、工程(II)の延伸温度をそれぞれ135℃とした以外は実施例5と同様の方法で二軸延伸フィルムを得た。得られた二軸延伸フィルムの物性を表3に示す。
(実施例7)
工程(I)の予熱温度、工程(II)の延伸温度をそれぞれ145℃とした以外は実施例6と同様の方法で二軸延伸フィルムを得た。得られた二軸延伸フィルムの物性を表3に示す。
(実施例8)
工程(I)の予熱温度、工程(II)の延伸温度をそれぞれ135℃とした以外は実施例5と同様の方法で二軸延伸フィルムを得た。得られた二軸延伸フィルムの物性を表3に示す。
(実施例9)
工程(I)の予熱温度、工程(II)の延伸温度をそれぞれ145℃とした以外は実施例5と同様の方法で二軸延伸フィルムを得た。得られた二軸延伸フィルムの物性を表3に示す。
(実施例10)
工程(I)の予熱温度、工程(II)の延伸温度をそれぞれ155℃とした以外は実施例5と同様の方法で二軸延伸フィルムを得た。得られた二軸延伸フィルムの物性を表3に示す。
(比較例4)
比較例3で得られたフィルムを、工程(I)の予熱温度、工程(II)の延伸温度をそれぞれ135℃とした以外は実施例5と同様の方法で二軸延伸フィルムを得た。得られた二軸延伸フィルムの物性を表3に示す。
(比較例5)
工程(I)の予熱温度、工程(II)の延伸温度をそれぞれ145℃とした以外は比較例4と同様の方法で二軸延伸フィルムを得た。得られた二軸延伸フィルムの物性を表3に示す。
(比較例6)
工程(I)の予熱温度、工程(II)の延伸温度をそれぞれ155℃とした以外は比較例5と同様の方法で二軸延伸フィルムを得た。得られた二軸延伸フィルムの物性を表3に示す。
Figure 0006750990
実施例8〜10および比較例4〜6において得られた二軸延伸フィルムの面内方向位相差の延伸温度依存性を図1に、厚さ方向位相差の延伸温度依存性を図2に示す。
以上の実施例および比較例から、本発明の製造方法を用いることにより、ある程度の厚さを有し、剛性の高いフィルムを静電密着法により製造する場合であっても、表面凹凸が少なく平滑性に優れるフィルムを得られることがわかる。
また、これを二軸延伸することにより得られた二軸延伸フィルムは、平滑性および力学特性に優れるばかりでなく、面内位相差・厚さ方向位相差の絶対値が小さくかつ延伸温度依存性が少ないことから、本発明の製造方法により、低位相差の二軸延伸フィルムをより安定に生産できる。
実施例8〜10および比較例4〜6において得られた二軸延伸フィルムの面内方向位相差の延伸温度依存性を示す図である。 実施例8〜10および比較例4〜6において得られた二軸延伸フィルムの厚さ方向位相差の延伸温度依存性を示す図である。

Claims (4)

  1. ダイから押し出された溶融状態の熱可塑性樹脂組成物を静電印加によりキャストロールに密着させ、連続的に引き取ることによるフィルムの製造方法であって、
    前記熱可塑性樹脂組成物が、三連子表示のシンジオタクティシティ(rr)が50%以上であり、重量平均分子量が80000〜200000であり、メタクリル酸メチルに由来する単量体単位の含有量が92質量%以上であるメタクリル樹脂(X)である(メタ)アクリル系樹脂を含み、
    前記キャストロールの半径をr(mm)、ダイ吐出部から溶融状態の前記熱可塑性樹脂組成物が前記キャストロールに接触するまでの距離をL(mm)としたとき、
    2≦r/L≦60
    を満足し
    前記キャストロールの表面温度をT(℃)、前記熱可塑性樹脂組成物のガラス転移温度をTg(℃)としたとき、
    (Tg−50)≦T≦(Tg+20)
    を満足し、
    前記静電印加時における溶融熱可塑性樹脂組成物の貯蔵弾性率E’(Pa)が、
    0.5×10≦E’≦5×10
    であり、
    前記フィルムの厚さが20〜500μmであることを特徴とする、フィルムの製造方法。
  2. 前記熱可塑性樹脂組成物が、300℃、1.2kg荷重の条件で測定されるメルトボリュームフローレート(MVR)が130〜250cm3/10minであるポリカーボネート樹脂(Y)をさらに含む、請求項1に記載のフィルムの製造方法。
  3. さらに、得られたフィルムを二軸延伸する工程を含む、請求項1または2に記載のフィルムの製造方法。
  4. 前記フィルムが偏光子保護フィルムである、請求項1〜のいずれかに記載の製造方法。
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