以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態として示した回収砂冷却システム1の概略構成図である。回収砂とは、生型鋳造において、鋳型の中に鋳込まれた溶湯金属が凝固した後に、鋳型として使用された砂が鋳物から分離されたものである。回収砂は、異物除去や砂冷却が行われた後に混練調整されて、生型の造型に再度使用される。回収砂冷却システム1は、特に生型鋳型における生型回収砂を冷却し、冷却回収砂の水分を調整するシステムである。
回収砂冷却システム1は、回収砂の水分量と温度を測定する砂水分温度測定器2と、回収砂に加える水の量である、適正加水量を決定する制御装置3と、適正加水量の水を回収砂に加え、水の蒸発潜熱で冷却して冷却回収砂とする散水冷却装置4、5と、砂冷却装置に空気を導入する空気導入装置6と、砂冷却装置に導入される導入空気の温度と湿度を測定する導入空気温度湿度測定器7と、を備えている。
以下、回収砂冷却システム1を詳細に説明する。回収砂冷却システム1は、ホッパ8、及びベルトフィーダー9を備えている。ホッパ8には、鋳物から分離された回収砂が貯蔵されている。ベルトフィーダー9は、ホッパ8の下に設けられている。ホッパ8内に貯蔵されている回収砂は、ホッパ8に設けられた回収砂供給口(図示無し)から、ベルトフィーダー9に対して供給される。
ベルトフィーダー9は、インバータモータ10を備えており、このインバータモータ10によって駆動されている。インバータモータ10には、後述する制御装置3が電気的に接続されており、制御装置3からの信号に従い、インバータモータ10の回転速度が変化するように構成されている。これにより、ベルトフィーダー9に供給された回収砂は、散水冷却装置4、5へと搬送される。
砂水分温度測定器2は、ベルトフィーダー9上に設けられている。ベルトフィーダー9上を搬送される回収砂は、砂水分温度測定器2によって、水分量と温度が測定される。砂水分温度測定器2には、後述する制御装置3が電気的に接続されており、砂水分温度測定器2によって測定された回収砂の水分量と温度は、制御装置3に送信される。
散水冷却装置4、5は、散水装置4と、砂冷却装置5を備えている。回収砂冷却システム1は、水源11、及び水量調整弁12を備えており、水源11は散水装置4に接続されて、散水装置4に水を供給する。散水装置4は、ベルトフィーダー9から投入された回収砂に対して水源11から供給される水を散水した後に、回収砂を撹拌して、回収砂中に水分を分散させる。この、散水されて水分が分散された回収砂を、加水回収砂と呼称する。
水量調整弁12は、水源11と散水装置4の間に介装されている。水量調整弁12には、後述する制御装置3が電気的に接続されている。水量調整弁12は、水源11から散水装置4に供給される水の量が、制御装置3の算出した、回収砂に加える適正な水の量である適正加水量の値となるように、制御装置3によって制御される。これにより、散水装置4は、適正加水量の水を回収砂に加えて加水回収砂としている。
散水装置4により撹拌されて水分が分散された加水回収砂は、散水装置4から排出されて、砂冷却装置5に投入される。砂冷却装置5は、加水回収砂を砂冷却装置5内の空気に接触させることにより冷却する。冷却された回収砂を、冷却回収砂と呼称する。
回収砂冷却システム1は、空気加熱装置13と、集塵装置14を備えている。空気加熱装置13、砂冷却装置5、集塵装置14、及び空気導入装置6によって、空気がこの順に流れるように、1本の空気流路が形成されている。この空気流路の末端に設けられた空気導入装置6は、空気を上流の空気加熱装置13の方向から吸引することで空気流路内に空気の流れを作り出し、砂冷却装置5に空気を導入する、吸引型の装置である。
空気加熱装置13は、この空気流路の最上流に設けられている。空気加熱装置13は、空気導入装置6の吸引によって外気または室内雰囲気から取り込まれた空気を、必要に応じて加熱して、導入空気として砂冷却装置5へ空気を導入する。空気加熱装置13には、後述する制御装置3が電気的に接続されている。空気加熱装置13は、砂冷却装置5へ導入される導入空気の温度が、制御装置3の算出した適正な空気温度となるように、制御装置3によって制御されて、導入空気を加熱する。
砂冷却装置5において、加水回収砂からの水の蒸発と砂からの伝熱により温度、湿度が高まった排出空気は、集塵装置14に導入される。集塵装置14は、集塵装置14に導入された砂冷却装置5内を含む空気流路内の粉塵を除去する。粉塵が除去された空気は、空気導入装置6を介して外気へ排出される。
空気導入装置6は、インバータモータ15を備えており、このインバータモータ15によって駆動される。インバータモータ15には、後述する制御装置3が電気的に接続されている。インバータモータ15は、空気導入装置6の空気吸引量が、制御装置3の算出した適正な風量となるように、制御装置3によって制御されている。
回収砂冷却システム1は、上記した空気流路における空気の状態を測定するために、導入空気温度湿度測定器7、排出空気温度湿度測定器16、及び、風量測定器17を備えている。導入空気温度湿度測定器7は、空気加熱装置13と砂冷却装置5の間に設けられており、砂冷却装置5に導入される導入空気の温度と湿度を測定する。導入空気温度湿度測定器7には、後述する制御装置3が電気的に接続されている。導入空気温度湿度測定器7によって測定された導入空気の温度と湿度は、制御装置3に送信される。
排出空気温度湿度測定器16は、砂冷却装置5と集塵装置14の間に設けられており、砂冷却装置5から排出される排出空気の温度と湿度を測定する。排出空気温度湿度測定器16には、後述する制御装置3が電気的に接続されている。排出空気温度湿度測定器16によって測定された排出空気の温度と湿度は、制御装置3に送信される。
風量測定器17は、集塵装置14と空気導入装置6の間に設けられており、空気導入装置6によって吸入される空気の量、すなわち、砂冷却装置5へと導入される導入空気の風量を測定する。風量測定器17には、後述する制御装置3が電気的に接続されている。風量測定器17によって測定された導入空気の風量は、制御装置3に送信される。
回収砂冷却システム1は、砂冷却装置5の冷却回収砂排出口(図示無し)の下に、ベルトコンベア18を備えている。ベルトコンベア18は、モータ19を備えており、このモータ19によって駆動されている。ベルトコンベア18は、砂冷却装置5から排出された冷却回収砂を、混練装置(図示無し)等の、次の工程に搬送する。
回収砂冷却システム1は、冷却回収砂水分温度測定器20を備えている。冷却回収砂水分温度測定器20は、ベルトコンベア18上を搬送される冷却回収砂の水分量と温度を測定する。冷却回収砂水分温度測定器20には、後述する制御装置3が電気的に接続されている。冷却回収砂水分温度測定器20によって測定された冷却回収砂の水分量と温度は、制御装置3に送信される。
上記したように、砂水分温度測定器2によって測定された回収砂の水分量と温度、冷却回収砂水分温度測定器20によって測定された冷却回収砂の水分量と温度、導入空気温度湿度測定器7によって測定された導入空気の温度と湿度、排出空気温度湿度測定器16によって測定された排出空気の温度と湿度、及び、風量測定器17によって測定された導入空気の風量は、制御装置3に送信される。制御装置3は、これらの測定値を受信し、図3から図6を用いて後述する演算を行い、その結果を基に、ベルトフィーダー9のインバータモータ10、水量調整弁12、空気導入装置6のインバータモータ15、及び空気加熱装置13を制御する。
制御装置3は、適正加水量の決定と散水指示、冷却回収砂の水分量と温度による動作補正、及び、排出空気の温度と湿度による動作補正の、3種類の処理を行うことで、回収砂冷却システム1の動作を制御する。まず、適正加水量の決定と散水指示を実行するために必要な制御装置3の構成について説明する。
(適正加水量の決定と散水指示に関する制御装置3の構成)
制御装置3は、適正加水量を決定する。このために、制御装置3は、図2に示されるように、必要蒸発水量算出部31、蒸発許容水蒸気量算出部32、適正加水量決定部33、比較演算部34、及び制御部35を備えている。
必要蒸発水量算出部31は、回収砂の温度と回収砂の投入量を基に、必要蒸発水量を算出する。上記のように加水回収砂は、砂冷却装置5において、水の蒸発による蒸発潜熱によって主に冷却される。必要蒸発水量は、加水回収砂を蒸発潜熱によって目標温度に冷却するために必要な、単位時間当たりの蒸発水量である。砂水分温度測定器2によって測定された回収砂の温度をTs1(K)、加水回収砂の冷却目標温度をTs2(K)、回収砂の投入量、すなわち、砂冷却装置5に投入される単位時間当たりの回収砂量をGs(kg/min)、回収砂の比熱をCs(kJ/kg・K)、及び、水の蒸発潜熱をLw(kJ/kg)とすると、単位時間当たりの必要蒸発水量Qv(kg/min)は、次式によって表される。
必要蒸発水量算出部31は、上記した式(1)によって、単位時間当たりの必要蒸発水量Qvを算出する。
なお、砂冷却装置5に投入される単位時間当たりの回収砂量Gsは、本実施形態においては、ホッパ8からのベルトフィーダー9への回収砂供給量が単位時間あたり一定であること、及び、制御装置3はベルトフィーダー9のインバータモータ10に接続されており、インバータモータ10の駆動速度を認識、制御可能であることから、インバータモータ10の駆動速度を回収砂量Gsとして換算して用いている。
また、本実施形態においては、加水回収砂は、加水回収砂の水分の蒸発による蒸発潜熱と、砂から空気への伝熱によって冷却されるが、蒸発潜熱による冷却の効果が大きく支配的であるため、これを前提として演算装置3の各処理を定めている。
蒸発許容水蒸気量算出部32は、導入空気の温度と湿度、及び、風量を基に、蒸発許容水蒸気量を算出する。上記のように加水回収砂は、砂冷却装置5において、水の蒸発による蒸発潜熱によって主に冷却されるため、砂冷却装置5に導入される導入空気は、蒸発した水蒸気を受け入れた後、排出空気として砂冷却装置5から排出される。
加水回収砂を目標温度Ts2へ冷却するためには、式(1)として示した単位時間当たりの必要蒸発水量Qvに相当する分量の水分の蒸発が必要である。したがって、砂冷却装置5における冷却を効果的に行うために、制御装置3は、後述する比較演算部34によって、導入空気がこの単位時間当たりの必要蒸発水量Qvに相当する水蒸気を受け入れられるか否かを判断する。この判断のために、蒸発許容水蒸気量算出部32は、現状の導入空気によって砂冷却装置5で蒸発させることができる単位時間当たりの水蒸気量、すなわち、単位時間あたりに導入される導入空気が既に有する湿度に加えて持ち得る水蒸気量である、単位時間当たりの蒸発許容水蒸気量Wa(kg/min)を算出する。
単位時間当たりの蒸発許容水蒸気量Waを算出する前段階として、現状の導入空気が持ちうる単位時間当たりの水蒸気量の総量Wmax(kg/min)を検討する。導入空気が持ち得る湿度、すなわち水蒸気量は、相対湿度では100%となるが、これに対する絶対湿度は空気温度に依存して異なる。したがって、現状の導入空気が持ちうる単位時間当たりの水蒸気量の総量Wmaxは、導入空気温度湿度測定器7によって測定された導入空気の温度をTa1(K)、温度Ta1における相対湿度100%に相当する絶対湿度をXmax(kg/kg−air)、風量、すなわち、風量測定器17によって測定された導入空気の量をGa(kg−air/min)とすると、次式によって表される。
なお、上記したXmax、Gaの単位系における、kg−airの記載は、空気の量を表すためのものであり、水の量を表すために使用している単位kgと区別するための記載である。
導入空気の温度Ta1と絶対温度Xmaxの対応関係は、例えば制御装置3の内部などにテーブルや関数などの形式で保持しておき、導入空気が持ちうる水蒸気量の総量Wmaxの算出時に適宜参照するようにしておけばよい。
導入空気が持ちうる単位時間当たりの水蒸気量の総量Wmaxは上記した式(2)のように表されるため、導入空気温度湿度測定器7によって測定された導入空気の絶対湿度をX1(kg/kg−air)とすると、単位時間当たりの蒸発許容水蒸気量Wa(kg/min)は次式により算出することができる。
比較演算部34は、式(1)により表される単位時間当たりの必要蒸発水量Qv(kg/min)と、式(3)により表される単位時間当たりの蒸発許容水蒸気量Wa(kg/min)を比較する。これにより、砂冷却装置5における冷却を確実に行うことができるか、すなわち、単位時間あたりに導入される導入空気が、単位時間当たりの必要蒸発水量Qvだけの分量の水蒸気を受け入れられるか否かを判断する。
比較演算部34は、この比較結果を基に、風量、回収砂の投入量、導入空気の温度のいずれかまたはいずれかの組み合わせを制御するための制御操作を決定する。より具体的には、単位時間当たりの必要蒸発水量Qvと単位時間当たりの蒸発許容水蒸気量Waを比較すると、Qv>Waとなる場合(状態1)、Qv=Waとなる場合(状態2)、及び、Qv<Waとなる場合(状態3)の、いずれかの状態となるはずである。比較演算部34は、QvとWaが状態1〜3のどの関係にあるかにより、空気導入装置6のインバータモータ15、ベルトフィーダー9のインバータモータ10、空気加熱装置13のいずれかまたはいずれかの組み合わせを制御して、風量、回収砂の投入量、導入空気の温度のいずれかまたはいずれかの組み合わせを制御するための制御操作を決定する。以下、状態1〜3の各々の場合に決定される制御操作について、詳細に説明する。
まず、状態2の場合を説明する。状態2においては、Qv=Waとなっており、これは、単位時間当たりの蒸発すべき水蒸気量が、単位時間あたりに導入される導入空気が既に有する湿度に加えて持ち得る水蒸気量と等しい状態であり、最も理想的な状態である。したがって、比較演算部34は特別な制御操作を決定せず、現状を維持するように、制御部35に送信する。
次に、状態1の場合を説明する。状態1においては、Qv>Waとなっており、これは、単位時間当たりの蒸発すべき水蒸気量が、単位時間あたりに導入される導入空気が既に有する湿度に加えて持ち得る水蒸気量より大きい場合である。これは、蒸発すべき水蒸気量を、導入空気が全て受け入れられない状態であり、砂冷却装置5による加水回収砂の冷却が十分に行われない状態である。したがって、単位時間当たりの蒸発すべき水蒸気量を減らす、あるいは単位時間あたりに導入される導入空気が既に有する湿度に加えて持ち得る水蒸気量を増やして、上記した状態2の状態にする必要がある。すなわち、必要蒸発水量が蒸発許容水蒸気量より大きい場合に、風量の増加、回収砂の投入量の低減、導入空気の温度の上昇のいずれかまたはいずれかの組み合わせを行う操作である制御操作を決定する。
より具体的には、比較演算部34は、まず、空気導入装置6のインバータモータ15の回転速度を増加させて風量を増加させ、単位時間当たりに導入される導入空気量を増加させることにより、単位時間あたりに導入される導入空気が持ち得る水蒸気量を増加させることを検討する。状態2の状態にするためには、Qv=Waの関係を実現させればよいため、比較演算部34は、上記の式(1)と式(3)が等しくなる等式を立て、各測定値を代入した後に、風量、すなわち単位時間当たりに導入される導入空気の量Gaの値を導出する方程式を解くことにより、風量の適切な値を算出する。その後、比較演算部34は、風量が算出された値になるように空気導入装置6のインバータモータ15を調整させる制御操作を、制御部35に送信する。
比較演算部34の算出した風量の値が、空気導入装置6のインバータモータ15の能力限界を超える場合、あるいは、空気導入装置6のインバータモータ15の能力限界と同等の値まで上げたとしても、Qv=Waの関係を実現するには不十分である場合には、比較演算部34は、更に、ベルトフィーダー9のインバータモータ10の回転速度を低減させて、回収砂の投入量を低減させることにより、単位時間当たりの蒸発すべき水蒸気量を低減させることを検討する。そのために、上記の風量の場合と同様に、式(1)と式(3)による方程式を解くことにより、回収砂の投入量、すなわち、単位時間当たりの回収砂量Gsの適切な値を算出する。その後、比較演算部34は、空気導入装置6のインバータモータ15に関する制御操作に加えて、回収砂の投入量が算出された値になるようにベルトフィーダー9のインバータモータ10を調整させる制御操作を、制御部35に送信する。
ただし、回収砂の投入量を減らしすぎると、後工程である造型工程で必要とする砂量を下回り、決められた造型スピードを守るための最低限造型機に供給すべき砂量を確保できなくなるため、単位時間当たりの回収砂量Gsに予め設定された下限値GsLを下回る計算値が算出された場合は下限値GsLを設定値とする。なお、下限値GsLの設定は制御装置3に予め作業者が入力すること等で設定される。
上記によってもQv=Waの関係を実現するには不十分であると比較演算部34が判断した場合には、比較演算部34は、更に、空気加熱装置13における設定温度を上昇させて、導入空気の温度を上昇させることにより、単位時間あたりに導入される導入空気が持ち得る水蒸気量を増加させることを検討する。これは、上記の場合と同様に、式(1)と式(3)による方程式を解き、導入空気の温度Ta1に依存する値である、導入空気の絶対湿度X1の適切な値を算出することにより行われる。その後、比較演算部34は、空気導入装置6のインバータモータ15に関する制御操作、及び、ベルトフィーダー9のインバータモータ10に関する制御操作に加えて、空気加熱装置13を、導入空気の温度を算出された値に上昇させる制御操作を、制御部35に送信する。
ただし、空気加熱装置13の設定温度を上げる場合においては、過度に導入空気を加温すると、砂冷却装置5の温度が上昇し、砂冷却装置5が加水回収砂を効率的に冷却できなくなる。したがって、導入空気の温度の上限値は、例えば45℃程度となるようにするのが望ましい。
最後に、状態3の場合を説明する。状態3においては、Qv<Waとなっており、これは、単位時間当たりの蒸発すべき水蒸気量が、単位時間あたりに導入される導入空気が既に有する湿度に加えて持ち得る水蒸気量より小さい場合である。すなわち、状態3においては、単位時間あたりに導入される導入空気が十分に水蒸気を吸収しうる状態となっており、基本的にはこの状態を維持しても回収砂は十分に冷却される。しかし、状態3は、換言すれば、回収砂に対して過剰に多くの導入空気が導入されている状態であるため、風量を減らす、回収砂の投入量を増やす等により状態2の状態にすることで、光熱費の低減や、単位時間当たりの冷却処理量の増加が可能となる。すなわち、必要蒸発水量が蒸発許容水蒸気量より小さい場合に、風量の低減、回収砂の投入量の増加のいずれか一方または双方を行う操作である制御操作を決定する。
より具体的には、比較演算部34は、まず、空気導入装置6のインバータモータ15の回転速度を低減させて風量を低減させ、単位時間当たりに導入される導入空気量を低減させることにより、単位時間あたりに導入される導入空気が持ち得る水蒸気量を低減させることを検討する。風量の適切な値は、状態1において記載したものと同様な要領で算出される。その後、比較演算部34は、風量が算出された値になるように空気導入装置6のインバータモータ15を調整させる制御操作を、制御部35に送信する。
ただし、風量を減らしすぎて、砂冷却装置5内で発塵する粉塵を集塵できなくなることを防ぐため、風量は砂冷却装置5内の粉塵を集塵できる程度の値より低くならないようにする必要がある。
比較演算部34の算出した風量の値によって、Qv=Waの関係を実現するには不十分である場合には、比較演算部34は、更に、ベルトフィーダー9のインバータモータ10の回転速度を増加させて、回収砂の投入量を増加させることにより、単位時間当たりの蒸発すべき水蒸気量を増加させることを検討する。そのために、状態1の場合と同様に、回収砂の投入量、すなわち、単位時間当たりの回収砂量Gsの適切な値を算出する。その後、比較演算部34は、空気導入装置6のインバータモータ15に関する制御操作に加えて、回収砂の投入量が算出された値になるようにベルトフィーダー9のインバータモータ10を調整させる制御操作を、制御部35に送信する。
制御部35は、比較演算部34から送信された制御操作を実行する。より具体的には、ベルトフィーダー9のインバータモータ10、空気導入装置6のインバータモータ15、及び、空気加熱装置13を制御する。制御部35はまた、後述する適正加水量決定部33によって送信された制御操作を受信して、水量調整弁12を制御する。
適正加水量決定部33は、必要蒸発水量算出部31の算出した単位時間当たりの必要蒸発水量を基に、単位時間当たりの適正加水量を決定する。冷却後の回収砂である冷却回収砂は、再度砂型として使用されるために、混練調整前の段階において一定の水分量を有することが好ましい。すなわち、加水回収砂は、砂冷却装置5において蒸発潜熱により冷却されることにより、蒸発した水分が失われるが、その後の冷却回収砂が、なお一定の水分量を有することが好ましい。適正加水量は、冷却回収砂がこの一定の水分量を有するために必要な、散水装置4における単位時間当たりの散水量である。砂水分温度測定器2によって測定された回収砂の水分量をWs1(%)、冷却回収砂の目標水分量をWs2(%)とすると、単位時間当たりの適正加水量Qw(kg/min)は、次式によって表される。
適正加水量決定部33は、上記式(4)によって、単位時間当たりの適正加水量Qwを決定する。
なお、後に図3を用いて詳説するが、適正加水量決定部33による単位時間当たりの適正加水量Qwの決定は、単位時間当たりの必要蒸発水量Qvを2回算出した後に行われる。厳密には、単位時間当たりの必要蒸発水量Qvの1回目の算出の後に、ベルトフィーダー9のインバータモータ10、空気導入装置6のインバータモータ15、及び、空気加熱装置13に対して上記したような制御操作を送信し、制御部35がこれらの装置を制御する。単位時間当たりの適正加水量Qwは、この制御操作後に再測定された各測定値を基に決定される。すなわち、制御操作によって環境が適切に変化した状態で、各々の測定器によって測定値を再度測定し、この再測定値から単位時間当たりの必要蒸発水量Qvを再度算出し、再度算出された単位時間当たりの必要蒸発水量Qvと各再測定値を基に、単位時間当たりの適正加水量Qwが決定される。これにより、単位時間当たりの適正加水量Qwが適正な値として決定される。
以上のように、制御装置3は、回収砂の水分と温度、導入空気の温度と湿度、及び風量を基に、適正加水量を決定する。
(適正加水量の決定と散水指示方法)
次に、上記の回収砂冷却システム1を使用した回収砂冷却方法における、適正加水量の決定と散水指示方法を、図1から図4を用いて説明する。本方法は、回収砂を冷却し、冷却回収砂の水分を調整するものである。なお、図2に示される、制御装置3の第1補正量算出部36と第2補正量算出部37の詳細、及びこれらを使用した処理方法については後述する。
本方法は、回収砂の水分量と温度を測定し、回収砂に加える水の量である、適正加水量を決定し、適正加水量の水を回収砂に加え、空気を導入しながら水の蒸発潜熱で冷却して、冷却回収砂とし、導入される導入空気の温度と湿度を測定することを含むものであり、回収砂の水分量と温度、及び、導入空気の温度と湿度を基に、適正加水量を決定する。また、本方法は、導入空気の風量を測定することを含み、風量を更に基にして適正加水量を決定する。
より詳細には、まず、鋳物から分離された回収砂をホッパ8に投入する。ホッパ8は、回収砂をベルトフィーダー9に対して供給する。ベルトフィーダー9は、回収砂を散水装置4へと搬送する。砂水分温度測定器2が、ベルトフィーダー9上を搬送される回収砂の水分量と温度を測定し、測定結果を制御装置3に送信する。ベルトフィーダー9のインバータモータ10の駆動速度は、制御装置3によって制御されている。(ステップS1)。
制御装置3の必要蒸発水量算出部31が、砂水分温度測定器2から受信した回収砂の温度(Ts1)、及び、回収砂の投入量、すなわち、制御装置3の管理するインバータモータ10の駆動速度を換算して取得した、単位時間当たりの回収砂量(Gs)を基に、式(1)により単位時間当たりの必要蒸発水量Qvを算出する(ステップS2)。
次に、空気導入装置6がインバータモータ15によって駆動し、空気加熱装置13、砂冷却装置5、集塵装置14、及び空気導入装置6によって形成された空気流路に空気が流れる。これにより、砂冷却装置5内に導入空気が導入される。導入空気温度湿度測定器7が、導入空気の温度と湿度を測定し、測定結果を制御装置3に送信する。また、風量測定器17が、砂冷却装置5へと導入される導入空気の風量を測定し、測定結果を制御装置3に送信する(ステップS3)。
制御装置3の蒸発許容水蒸気量算出部32が、導入空気温度湿度測定器7から受信した導入空気の温度(Ta1)、絶対湿度(X1)、及び、風量測定器17から受信した風量(Ga)を基に、式(2)、式(3)により単位時間当たりの蒸発許容水蒸気量Waを算出する(ステップS4)。
制御装置の比較演算部34は、ステップS2において算出された単位時間当たりの必要蒸発水量Qvと、ステップS4において算出された単位時間当たりの蒸発許容水蒸気量Waを比較する(ステップS5)。これにより、砂冷却装置5において冷却を確実に行うことができるか、すなわち、単位時間あたりに導入される導入空気が、単位時間当たりの必要蒸発水量Qvだけの分量の水蒸気を受け入れられるか否かを判断する。
この比較の結果、Qv>Waとなっている場合(状態1)においては、単位時間当たりの蒸発すべき水蒸気量が、単位時間あたりに導入される導入空気が既に有する湿度に加えて持ち得る水蒸気量より大きい場合であるため、単位時間当たりの蒸発すべき水蒸気量を減らす、あるいは単位時間あたりに導入される導入空気が既に有する湿度に加えて持ち得る水蒸気量を増やして、QvがWaに等しい状態である状態2にするための制御操作を決定する(ステップS6)。
より具体的には、比較演算部34は、まず、空気導入装置6のインバータモータ15の回転速度を増加させて風量を増加させ、単位時間当たりに導入される導入空気量を増加させることにより、単位時間あたりに導入される導入空気が持ち得る水蒸気量を増加させることを検討する。比較演算部34は、上記した要領で式(1)〜(4)を用いて風量の適切な値を算出する。その後、比較演算部34は、風量が算出された値になるように空気導入装置6のインバータモータ15を調整させる制御操作を、制御部35に送信する。
比較演算部34の算出した風量の値が、空気導入装置6のインバータモータ15の能力限界を超える場合、あるいは、空気導入装置6のインバータモータ15の能力限界と同等の値まで上げたとしても、Qv=Waの関係を実現するには不十分である場合には、比較演算部34は、更に、ベルトフィーダー9のインバータモータ10の回転速度を低減させて、回収砂の投入量を低減させることにより、単位時間当たりの蒸発すべき水蒸気量を低減させることを検討する。そのために、上記の風量の場合と同様に、単位時間当たりの回収砂量の適切な値を算出する。その後、比較演算部34は、空気導入装置6のインバータモータ15に関する制御操作に加えて、回収砂の投入量が算出された値になるようにベルトフィーダー9のインバータモータ10を調整させる制御操作を、制御部35に送信する。
ただし、回収砂の投入量を減らしすぎると、後工程である造型工程で必要とする砂量を下回り、決められた造型スピードを守るための最低限造型機に供給すべき砂量を確保できなくなるため、単位時間当たりの回収砂量Gsに予め設定された下限値GsLを下回る計算値が算出された場合は下限値GsLを設定値とする。なお、下限値GsLの設定は制御装置3に予め作業者が入力すること等で設定される。
上記によってもQv=Waの関係を実現するには不十分であると比較演算部34が判断した場合には、比較演算部34は、更に、空気加熱装置13における設定温度を上昇させて、導入空気の温度を上昇させることにより、単位時間あたりに導入される導入空気が持ち得る水蒸気量を増加させることを検討する。そのために、上記の場合と同様に、導入空気の絶対湿度の適切な値を算出する。その後、比較演算部34は、空気導入装置6のインバータモータ15に関する制御操作、及び、ベルトフィーダー9のインバータモータ10に関する制御操作に加えて、空気加熱装置13を、導入空気の温度を算出された値に上昇させる制御操作を、制御部35に送信する。
制御部35は、制御操作を受信して、制御操作に基づいて、ベルトフィーダー9のインバータモータ10、空気導入装置6のインバータモータ15、及び空気加熱装置13を制御する。
ステップS5における比較の結果、Qv=Waとなっている場合(状態2)においては、単位時間当たりの蒸発すべき水蒸気量が、単位時間あたりに導入される導入空気が既に有する湿度に加えて持ち得る水蒸気量と等しくなっている。これは、最も理想的な状態であるため、比較演算部34は特別な制御操作を決定せず、現状を維持するように、制御部35に送信する(ステップS7)。
制御部35は、上記した現状維持の指示を、制御操作として受信する。ベルトフィーダー9のインバータモータ10、空気導入装置6のインバータモータ15、及び空気加熱装置13に対しては、現状を維持するように制御を続ける。
ステップS5における比較の結果、Qv<Waとなっている場合(状態3)においては、単位時間当たりの蒸発すべき水蒸気量が、単位時間あたりに導入される導入空気が既に有する湿度に加えて持ち得る水蒸気量より小さい場合であるため、光熱費の低減や、単位時間当たりの冷却処理量の増加のために、風量の低減、回収砂の投入量の増加のいずれか一方または双方により、状態2の状態にするための制御操作を決定する(ステップS8)。
より具体的には、比較演算部34は、まず、空気導入装置6のインバータモータ15の回転速度を低減させて風量を低減させ、単位時間当たりに導入される導入空気量を低減させることにより、単位時間あたりに導入される導入空気が持ち得る水蒸気量を低減させることを検討する。風量の適切な値は、状態1において記載したものと同様な要領で算出される。その後、比較演算部34は、風量が算出された値になるように空気導入装置6のインバータモータ15を調整させる制御操作を、制御部35に送信する。
ただし、風量を減らしすぎて、砂冷却装置5内で発塵する粉塵を集塵できなくなることを防ぐため、風量は砂冷却装置5内の粉塵を集塵できる程度の値より低くならないようにする必要がある。
比較演算部34の算出した風量の値によって、Qv=Waの関係を実現するには不十分である場合には、比較演算部34は、更に、ベルトフィーダー9のインバータモータ10の回転速度を増加させて、回収砂の投入量を増加させることにより、単位時間当たりの蒸発すべき水蒸気量を増加させることを検討する。そのために、状態1の場合と同様に、回収砂の投入量、すなわち、単位時間当たりの回収砂量Gsの適切な値を算出する。その後、比較演算部34は、空気導入装置6のインバータモータ15に関する制御操作に加えて、回収砂の投入量が算出された値になるようにベルトフィーダー9のインバータモータ10を調整させる制御操作を、制御部35に送信する。
制御部35は、制御操作を受信して、制御操作に基づいて、ベルトフィーダー9のインバータモータ10、及び空気導入装置6のインバータモータ15を制御する。
上記したステップS6〜S8における、ベルトフィーダー9のインバータモータ10、空気導入装置6のインバータモータ15、及び空気加熱装置13の制御の後には、回収砂冷却システム1における、回収砂の投入量、導入空気の風量、導入空気の温度が、Qv=Waの関係を満たすように、すなわち、単位時間当たりの蒸発すべき水蒸気量が、単位時間あたりに導入される導入空気が既に有する湿度に加えて持ち得る水蒸気量と等しい理想的な状態となるように、変化している。次に説明するステップS9以降においては、制御操作によって環境が理想に近く変化した状態における各測定値を各々の測定器により再度測定し、この再測定値から再度単位時間当たりの必要蒸発水量Qvを改めて算出し、再度算出された必要蒸発水量Qvと各再測定値を基に、この理想的な状態における単位時間当たりの適正加水量Qwを決定する。
具体的には、まず、砂水分温度測定器2が、ベルトフィーダー9上を搬送される回収砂の水分量と温度を測定し、測定結果を制御装置3に送信する。ベルトフィーダー9のインバータモータ10の駆動速度は、ステップS6〜S8によって算出された速度で回収砂を投入するように、制御装置3によって制御されている。(ステップS9)。
制御装置3の必要蒸発水量算出部31が、砂水分温度測定器2から受信した回収砂の温度(Ts1)、及び、回収砂の投入量、すなわち、制御装置3の管理するインバータモータ10の駆動速度を換算して取得した、単位時間当たりの回収砂量(Gs)を基に、式(1)により単位時間当たりの必要蒸発水量Qvを算出する(ステップS10)。
次に、導入空気温度湿度測定器7が、導入空気の温度と湿度を測定し、測定結果を制御装置3に送信する。また、風量測定器17が、砂冷却装置5へと導入される導入空気の風量を測定し、測定結果を制御装置3に送信する。導入空気の温度と風量は、ステップS6〜S8によって算出された値となるように、制御装置3によって制御されている(ステップS11)。
制御装置3の蒸発許容水蒸気量算出部32が、導入空気温度湿度測定器7から受信した導入空気の温度(Ta1)、絶対湿度(X1)、及び、風量測定器17から受信した風量(Ga)を基に、式(2)、式(3)により単位時間当たりの蒸発許容水蒸気量Waを算出する(ステップS12)。
制御装置3の適正加水量決定部33は、上記により算出された単位時間当たりの必要蒸発水量Qvを基に、単位時間当たりの適正加水量Qwを決定する。単位時間当たりの適正加水量Qwは、式(4)を用いて上記したように、単位時間当たりの必要蒸発水量Qvと、回収砂の投入時の水分量に加えて追加すべき水分量との和により算出されている。ステップS6〜S8の処理によって回収砂冷却システム1の環境が調整され、単位時間当たりの必要蒸発水量Qvが適切な値となっているため、これを基に式(4)を基に決定された単位時間当たりの適正加水量Qwも、同様に適切な値を有している。適正加水量決定部33は、単位時間当たりの適正加水量Qwが決定された値になるように水量調整弁12を調整させる制御操作を、制御部35に送信する(ステップS13)。
制御部35は、適正加水量決定部33から受信した制御操作に基づいて、水量調整弁12を制御する。これにより、水源11から散水装置4に供給される単位時間当たりの水量が適正加水量Qwに調整されて、適正な水分量を有する加水回収砂が生成される(ステップS14)。
散水装置4は、加水回収砂を撹拌して水分を分散させる。砂冷却装置5は、散水装置4が排出した、撹拌された加水回収砂を、砂冷却装置5内に導入された導入空気に接触させて、水の蒸発潜熱により冷却する。
砂冷却装置5は、冷却した冷却回収砂を、モータ19によって駆動されているベルトコンベア18上に排出する。ベルトコンベア18は、砂冷却装置5から排出された冷却回収砂を、混練装置(図示無し)等の、次の工程に搬送する。
砂冷却装置5において、水の蒸発と砂からの伝熱により温度、湿度が高まった排出空気は、集塵装置14に導入される。集塵装置14は、導入された空気の粉塵を除去し、粉塵が除去された空気を外気へ排出する。
図4においては、ステップS14の処理の後に、後述する、冷却回収砂の水分量と温度による動作補正を行うか否かを判定している。動作補正を行うか否かは、回収砂冷却システム1の、例えば制御装置3に予め作業者が入力した設定値等に基づいて判断される。動作補正を行う場合は、ステップS21として示されている動作補正処理に処理を移す(ステップS20)。
冷却回収砂の水分量と温度による動作補正を行わない場合は、後述する、排出空気の温度と湿度による動作補正を行うか否かを判定している。動作補正を行うか否かは、回収砂冷却システム1の、例えば制御装置3に予め作業者が入力した設定値等に基づいて判断される。動作補正を行う場合は、ステップS41として示されている動作補正処理に処理を移す(ステップS40)。
排出空気の温度と湿度による動作補正を行わない場合は、本回収砂冷却システム1の一連の処理を継続するか否かを判定する。処理を継続するか否かは、回収砂冷却システム1の、例えば制御装置3に予め作業者が入力した設定値等に基づいて判断される。処理を継続して実行する場合は、ステップS1に戻り、ステップS1以降の処理を繰り返す。ステップS1に戻ることにより、後述する補正操作等で回収砂量や風量等が変更された場合においては、各測定値が再度測定され、単位時間当たりの必要蒸発水量Qv、及び単位時間当たりの蒸発許容水蒸気量Waが再計算されて、値が更新される。実行しない場合は本回収砂冷却システム1の一連の処理を終了する(ステップS60)。
(冷却回収砂の水分量と温度による動作補正に関する制御装置3の追加構成)
次に、冷却回収砂の水分量と温度による動作補正に関する制御装置3の構成について説明する。冷却回収砂の水分量と温度による動作補正を行うために、制御装置3は、図2に示されるように、第1補正量算出部36を備えている。
上記したような適正加水量の決定と散水指示においては、単位時間当たりの必要蒸発水量Qvと単位時間当たりの蒸発許容水蒸気量Waを比較し、その比較結果によって、導入空気の風量、回収砂の投入量、導入空気の温度のいずれかまたはいずれかの組み合わせを調整し、その上で単位時間当たりの適正加水量Qwを決定している。しかし、この処理は、砂冷却装置5の、例えば冷却効率等の実際の能力を考慮したものではない。
砂冷却装置5の実際の能力を考慮するために、適正加水量決定部33が適正加水量Qwを決定し、水量調整弁12を制御して、水源11から散水装置4に供給される水量が適正加水量Qwに調整された、図3におけるステップS14に相当する処理の後に、第1補正量算出部36が、砂冷却装置5が排出する冷却回収砂の水分量と温度を基に、風量、回収砂の投入量、適正加水量のいずれかまたはいずれかの組み合わせの補正量を算出する。
第1補正量算出部36は、冷却回収砂水分温度測定器20から、冷却回収砂の水分量Ws3(%)と温度Ts3(K)を受信する。第1補正量算出部36は、これらの値を、上記した、冷却回収砂の目標水分量Ws2(%)、及び、冷却目標温度Ts2(K)と、それぞれ比較する。
後に第1補正量算出部36による動作補正方法を説明する際に使用される図5にも示されるように、この比較結果として、例えば、Ws3>Ws2かつTs3>Ts2が成立する場合(状態A)、Ws3<Ws2かつTs3>Ts2が成立する場合(状態B)、Ws3>Ws2かつTs3<Ts2が成立する場合(状態C)、及び、Ws3<Ws2かつTs3<Ts2が成立する場合(状態D)の、いずれかの状態となる可能性がある。第1補正量算出部36は、Ws3とWs2、及びTs3とTs2がどの関係にあるかにより、空気導入装置6のインバータモータ15、ベルトフィーダー9のインバータモータ10、水量調整弁12のいずれかまたはいずれかの組み合わせを制御して、風量、回収砂の投入量、適正加水量のいずれかまたはいずれかの組み合わせの補正量を算出し、算出された補正量分だけ各装置を制御するための補正制御操作を決定する。以下、状態A〜Dの各々の場合に決定される補正制御操作について、詳細に説明する。
状態Aにおいては、Ws3>Ws2かつTs3>Ts2となっており、砂冷却装置5が排出する冷却回収砂の水分量と温度が共に、目標値よりも高い状態である。これは、散水装置4における散水量は十分であるが、加水回収砂と導入空気が十分に接触していないために、砂冷却装置5における水分の蒸発が不十分であり、蒸発潜熱により加水回収砂が十分に冷却されていない状態である。
この状態Aにおいては、第1補正量算出部36は、まず、空気導入装置6のインバータモータ15の回転速度を増加させて風量を増加させ、単位時間当たりに導入される導入空気が持ち得る水蒸気量を増加させることを検討する。風量の増加量は、増加後に、Ws3がWs2に、かつ、Ts3がTs2に、それぞれ等しい状態になるように設定すればよい。したがって、風量の増加量は、式(1)〜(4)と、Ws3=Ws2、及び、Ts3=Ts2の各関係を基に算出する。その後、第1補正量算出部36は、風量が算出された値になるように空気導入装置6のインバータモータ15を調整させる補正制御操作を、制御部35に送信する。
第1補正量算出部36の算出した風量の値が、空気導入装置6のインバータモータ15の能力限界を超える場合、あるいは、空気導入装置6のインバータモータ15の能力限界と同等の値まで上げたとしても、上記目標値を実現するには不十分である場合には、第1補正量算出部36は、更に、ベルトフィーダー9のインバータモータ10の回転速度を低減させて、回収砂の投入量を低減させることを検討する。回収砂の投入量は、式(1)〜(4)を基に算出される。その後、第1補正量算出部36は、空気導入装置6のインバータモータ15に関する補正制御操作に加えて、回収砂の投入量が算出された値になるようにベルトフィーダー9のインバータモータ10を調整させる補正制御操作を、制御部35に送信する。
ただし、回収砂の投入量を減らしすぎると、後工程である造型工程で必要とする砂量を下回り、決められた造型スピードを守るための最低限造型機に供給すべき砂量を確保できなくなるため、単位時間当たりの回収砂量Gsに予め設定された下限値GsLを下回る計算値が算出された場合は下限値GsLを設定値とする。なお、下限値GsLの設定は制御装置3に予め作業者が入力すること等で設定される。
状態Bにおいては、Ws3<Ws2かつTs3>Ts2となっており、砂冷却装置5が排出する冷却回収砂の水分量が目標値より低く、温度が目標値よりも高い状態である。これは、散水装置4における散水量が不足しているために、砂冷却装置5において水分が十分に蒸発しておらず、蒸発潜熱による加水回収砂の冷却が不十分である状態である。
この状態Bにおいては、第1補正量算出部36は、水量調整弁12の開度を増加させて、散水装置4へ供給する水量を増加させることを検討する。水量は、状態Aの場合と同様に、式(1)〜(4)を基に算出される。その後、第1補正量算出部36は、水量が算出された値になるように水量調整弁12の開度を増加させる補正制御操作を、制御部35に送信する。
状態Cにおいては、Ws3>Ws2かつTs3<Ts2となっており、砂冷却装置5が排出する冷却回収砂の水分量が目標値より高く、温度が目標値よりも低い状態である。これは、散水装置4における散水量が多すぎるために、砂冷却装置5において加水回収砂が十分に冷却されている一方で、蒸発されなかった、目標を上回る余剰な水分が、冷却回収砂に多く残されている状態である。
この状態Cにおいては、第1補正量算出部36は、水量調整弁12の開度を低減させて、散水装置4へ供給する水量を低減させることを検討する。水量は、状態Aの場合と同様に、(1)〜(4)を基に算出される。その後、第1補正量算出部36は、水量が算出された値になるように水量調整弁12の開度を低減させる補正制御操作を、制御部35に送信する。
状態Dにおいては、Ws3<Ws2かつTs3<Ts2となっており、砂冷却装置5において加水回収砂は十分に冷却されているが、散水量が少ないために、冷却回収砂の水分量が低い状態である。
この状態Dにおいては、第1補正量算出部36は、水量調整弁12の開度を増加させて、散水装置4へ供給する水量を増加させることを検討する。水量は、状態Aの場合と同様に、式(1)〜(4)を基に算出される。その後、第1補正量算出部36は、水量が算出された値になるように水量調整弁12の開度を増加させる補正制御操作を、制御部35に送信する。
もしくは、第1補正量算出部36は、空気導入装置6のインバータモータ15の回転速度を低減させて風量を低減させ、これにより蒸発量を低減させることを検討する。風量の低減量は、状態Aの場合と同様に、式(1)〜(4)を基に算出される。その後、第1補正量算出部36は、風量が算出された値になるように空気導入装置6のインバータモータ15を調整させる補正制御操作を、制御部35に送信する。
ただし、風量を減らしすぎて、砂冷却装置5内で発塵する粉塵を集塵できなくなることを防ぐため、風量は砂冷却装置5内の粉塵を集塵できる程度の値より低くならないようにする必要がある。
制御部35は、第1補正量算出部36から送信された補正制御操作を受信し、実行して、ベルトフィーダー9のインバータモータ10、水量調整弁12、空気導入装置6のインバータモータ15のいずれかまたはいずれかの組み合わせを制御する。
(冷却回収砂の水分量と温度による動作補正方法)
次に、上記の回収砂冷却システム1における、上記した第1補正量算出部36を使用した、冷却回収砂の水分量と温度による動作補正方法を、図1から図5を用いて説明する。本方法は、図4に記載のステップS21に相当するものであり、適正加水量の決定と散水指示方法において説明した、ステップS1〜S20の後に実行されるものである。
まず、適正加水量の決定と散水指示方法(ステップS1〜S20)を実行する。ステップS20において、冷却回収砂の水分量と温度による動作補正を行うか否かが判定され、動作補正を行う旨の設定がなされている場合に、ステップS21として記載された補正処理を行う。図5は、補正処理S21の詳細を示すものである。
補正処理S21においては、まず、冷却回収砂水分温度測定器20が、ベルトコンベア18上を搬送される冷却回収砂の水分量と温度を測定し、測定結果を制御装置3に送信する(ステップS22)。
制御部35の第1補正量算出部36は、冷却回収砂水分温度測定器20から、冷却回収砂の水分量Ws3(%)、と温度Ts3(K)を受信し、これらの値を、上記した、冷却回収砂の目標水分量Ws2(%)、及び、冷却目標温度Ts2(K)と、それぞれ比較する(ステップS23)。これにより、砂冷却装置5が冷却回収砂の温度や水分量の目標を満たすように加水回収砂を冷却しているか否か、満たしている場合であっても目標よりも過剰に冷却していないか、等を判断する。
この比較の結果、Ws3>Ws2かつTs3>Ts2となっている場合(状態A)は、散水装置4における散水量は十分であるが、加水回収砂と導入空気が十分に接触していないために、砂冷却装置5における水分の蒸発が不十分であり、蒸発潜熱により加水回収砂が十分に冷却されていない状態である。したがって、Ws3がWs2に、かつ、Ts3がTs2に、それぞれ等しい状態にするための、制御操作を決定する(ステップS24)。
より具体的には、第1補正量算出部36は、まず、空気導入装置6のインバータモータ15の回転速度を増加させて風量を増加させ、単位時間当たりに導入される導入空気が持ち得る水蒸気量を増加させることを検討する。風量の増加量は、式(1)〜(4)を基に算出する。その後、第1補正量算出部36は、風量が算出された値になるように空気導入装置6のインバータモータ15を調整させる補正制御操作を、制御部35に送信する。
第1補正量算出部36の算出した風量の値が、空気導入装置6のインバータモータ15の能力限界を超える場合、あるいは、空気導入装置6のインバータモータ15の能力限界と同等の値まで上げたとしても、上記目標値を実現するには不十分である場合には、第1補正量算出部36は、更に、ベルトフィーダー9のインバータモータ10の回転速度を低減させて、回収砂の投入量を低減させることを検討する。回収砂の投入量は、式(1)〜(4)を基に算出される。その後、第1補正量算出部36は、空気導入装置6のインバータモータ15に関する補正制御操作に加えて、回収砂の投入量が算出された値になるようにベルトフィーダー9のインバータモータ10を調整させる補正制御操作を、制御部35に送信する。
ただし、回収砂の投入量を減らしすぎると、後工程である造型工程で必要とする砂量を下回り、決められた造型スピードを守るための最低限造型機に供給すべき砂量を確保できなくなるため、単位時間当たりの回収砂量Gsに予め設定された下限値GsLを下回る計算値が算出された場合は下限値GsLを設定値とする。なお、下限値GsLの設定は制御装置3に予め作業者が入力すること等で設定される。
ステップS23における比較の結果、Ws3<Ws2かつTs3>Ts2となっている場合(状態B)は、散水装置4における散水量が不足しているために、砂冷却装置5において水分が十分に蒸発しておらず、蒸発潜熱による加水回収砂の冷却が不十分である状態である。この場合においても、Ws3がWs2に、かつ、Ts3がTs2に、それぞれ等しい状態にするための、制御操作を決定する(ステップS25)。
より具体的には、第1補正量算出部36は、水量調整弁12の開度を増加させて、散水装置4へ供給する水量を増加させることを検討する。水量は、式(1)〜(4)を基に算出される。その後、第1補正量算出部36は、水量が算出された値になるように水量調整弁12の開度を増加させる補正制御操作を、制御部35に送信する。
ステップS23における比較の結果、Ws3>Ws2かつTs3<Ts2となっている場合(状態C)は、散水装置4における散水量が多すぎるために、砂冷却装置5において加水回収砂が十分に冷却されている一方で、蒸発されなかった、目標を上回る余剰な水分が、冷却回収砂に多く残されている状態である。この場合においても、Ws3がWs2に、かつ、Ts3がTs2に、それぞれ等しい状態にするための、制御操作を決定する(ステップS26)。
より具体的には、第1補正量算出部36は、水量調整弁12の開度を低減させて、散水装置4へ供給する水量を低減させることを検討する。水量は、式(1)〜(4)を基に算出される。その後、第1補正量算出部36は、水量が算出された値になるように水量調整弁12の開度を低減させる補正制御操作を、制御部35に送信する。
ステップS23における比較の結果、Ws3<Ws2かつTs3<Ts2となっている場合(状態D)は、砂冷却装置5において加水回収砂は十分に冷却されているが、散水量が少ないために、冷却回収砂の水分が低い状態である。この場合においても、Ws3がWs2に、かつ、Ts3がTs2に、それぞれ等しい状態にするための、制御操作を決定する(ステップS27)。
より具体的には、第1補正量算出部36は、水量調整弁12の開度を増加させて、散水装置4へ供給する水量を増加させることを検討する。水量は、式(1)〜(4)を基に算出される。その後、第1補正量算出部36は、水量が算出された値になるように水量調整弁12の開度を増加させる補正制御操作を、制御部35に送信する。
もしくは、第1補正量算出部36は、空気導入装置6のインバータモータ15の回転速度を低減させて風量を低減させ、これにより蒸発量を低減させることを検討する。風量の低減量は、式(1)〜(4)を基に算出される。その後、第1補正量算出部36は、風量が算出された値になるように空気導入装置6のインバータモータ15を調整させる補正制御操作を、制御部35に送信する。
ただし、風量を減らしすぎて、砂冷却装置5内で発塵する粉塵を集塵できなくなることを防ぐため、風量は砂冷却装置5内の粉塵を集塵できる程度の値より低くならないようにする必要がある。
制御部35は、補正制御操作を受信して、補正制御操作に基づいて、ベルトフィーダー9のインバータモータ10、水量調整弁12、空気導入装置6のインバータモータ15のいずれかまたはいずれかの組み合わせを制御する(ステップS28)。
その後、図4に示されたステップS40を実行する。既に説明したように、ステップS20において、図5を用いて説明した補正処理S21を実行しないと判断した場合においても、上記したように、ステップS40を実行する。ステップS40においては、後述する、排出空気の温度と湿度による動作補正を行うか否かを判定する。この動作補正を行うか否かは、回収砂冷却システム1の、例えば制御装置3に予め作業者が入力した設定値等に基づいて判断される。動作補正を行う場合は、ステップS41として示されている後述の動作補正処理に処理を移す。
排出空気の温度と湿度による動作補正を行わない場合は、本回収砂冷却システム1の一連の処理を継続するか否かを判定する。処理を継続するか否かは、回収砂冷却システム1の、例えば制御装置3に予め作業者が入力した設定値等に基づいて判断される。処理を継続して実行する場合は、ステップS1以降の処理を繰り返す。ステップS1に戻ることにより、本補正操作等で回収砂量や風量等が変更された場合においては、各測定値が再度測定され、単位時間当たりの必要蒸発水量Qv、及び単位時間当たりの蒸発許容水蒸気量Waが再計算されて、値が更新される。実行しない場合は本回収砂冷却システム1の一連の処理を終了する(ステップS60)。
なお、急激に回収砂冷却システム1内の環境を変えると、回収砂の品質劣化、システムの誤動作や破損等が発生する恐れがある。したがって、動作補正処理の実行においては、2〜10秒ほどの間に、各補正量の0.5〜2.0%程度の速度で、各装置を補正制御するのが望ましい。
(排出空気の温度と湿度による動作補正に関する制御装置3の追加構成)
次に、排出空気の温度と湿度による動作補正に関する制御装置3の構成について説明する。排出空気の温度と湿度による動作補正を行うために、制御装置3は、図2に示されるように、第2補正量算出部37を備えている。
本実施形態においては、図3におけるステップS1〜S14に相当する、適正加水量の決定と散水指示の後に、または、図4におけるステップS21に相当する、冷却回収砂の水分と温度による動作補正の後に、第2補正量算出部37が、砂冷却装置5が排出する排出空気の温度と湿度を基に、風量、回収砂の投入量、導入空気の温度のいずれかまたはいずれかの組み合わせの補正量を算出する。
より詳細には、第2補正量算出部37は、排出空気温度湿度測定器16から、排出空気の温度と湿度を受信する。第2補正量算出部37は、これらの値から、当該温度における相対湿度の値を算出する。
この相対湿度の値が、例えば95%以上の、100%に近い値である場合においては、砂冷却装置5や、空気流路を構成する送風管内で結露が発生する可能性がある。結露の防止のため、第2補正量算出部37は、まず、空気導入装置6のインバータモータ15の回転速度を増加させて風量を増加し、排出空気の相対湿度を、例えば90〜95%程度に低減することを検討する。風量の増加量は、式(1)〜(4)を基に算出される。その後、第2補正量算出部37は、風量が算出された値になるように空気導入装置6のインバータモータ15を調整させる補正制御操作を、制御部35に送信する。
空気導入装置6のインバータモータ15の補正操作による風量の変更によって結露が十分に防止できない場合には、第2補正量算出部37は、更に、ベルトフィーダー9のインバータモータ10の回転速度を低減させて、回収砂の投入量を低減させることを検討する。回収砂の投入量は、式(1)〜(4)を基に算出される。その後、第2補正量算出部37は、空気導入装置6のインバータモータ15に関する補正制御操作に加えて、回収砂の投入量が算出された値になるようにベルトフィーダー9のインバータモータ10を調整させる補正制御操作を、制御部35に送信する。
ただし、回収砂の投入量を減らしすぎると、後工程である造型工程で必要とする砂量を下回り、決められた造型スピードを守るための最低限造型機に供給すべき砂量を確保できなくなるため、単位時間当たりの回収砂量Gsに予め設定された下限値GsLを下回る計算値が算出された場合は下限値GsLを設定値とする。なお、下限値GsLの設定は制御装置3に予め作業者が入力すること等で設定される。
それでもなお、結露が十分に防止できない場合には、第2補正量算出部37は、更に、空気加熱装置13における設定温度を上昇させることを検討する。導入空気の温度は、式(1)〜(4)を基に算出される。その後、第2補正量算出部37は、空気導入装置6のインバータモータ15やベルトフィーダー9のインバータモータ10に関する補正制御操作に加えて、空気加熱装置13を、導入空気の温度を算出された値に上昇させる制御操作を、制御部35に送信する。
制御部35は、第2補正量算出部37から送信された補正制御操作を受信し、実行して、空気導入装置6のインバータモータ15、ベルトフィーダー9のインバータモータ10、空気加熱装置13のいずれかまたはいずれかの組み合わせを制御する。
(排出空気の温度と湿度による動作補正方法)
次に、上記の回収砂冷却システム1の、上記した第2補正量算出部37を使用した、排出空気の温度と湿度による動作補正方法を、図1から図4、及び図6を用いて説明する。本方法は、図4に記載のステップS41に相当し、適正加水量の決定と散水指示方法において説明した、図3におけるステップS1〜S14の後に、または、冷却回収砂の水分量と温度による動作補正方法において説明した、ステップS21の後に実行されるものである。
まず、適正加水量の決定と散水指示方法(ステップS1〜S20)、及び、冷却回収砂の水分と温度による動作補正方法(ステップS21、S40)を実行する。ステップS40において、排出空気の温度と湿度による動作補正を行うか否かが判定され、動作補正を行う旨の設定がなされている場合に、ステップS41として記載された本補正処理を行う。図6は、補正処理S41の詳細を示すものである。
補正処理S41においては、まず、排出空気温度湿度測定器16が、砂冷却装置5から排出される排出空気の温度と湿度を測定し、測定結果を制御装置3に送信する(ステップS42)。
制御部35の第2補正量算出部37は、排出空気温度湿度測定器16から、排出空気の温度と湿度を受信し、これらの値から、当該温度における相対湿度の値を算出する。更に、第2補正量算出部37は、算出した相対湿度の値が、例えば95%以上であるか判定する(ステップS43)。
この相対湿度の値が、例えば95%以上の、100%に近い値である場合においては、結露の防止のために適切な、風量、回収砂の投入量、導入空気の温度のいずれかまたはいずれかの組み合わせの補正量を算出する(ステップS44)。第2補正量算出部37は、まず、空気導入装置6のインバータモータ15の回転速度を増加させて、排出空気の相対湿度を、例えば90〜95%程度とすることを検討する。風量の増加量は、式(1)〜(4)を基に算出される。その後、第2補正量算出部37は、風量が算出された値になるように空気導入装置6のインバータモータ15を調整させる補正制御操作を、制御部35に送信する。
空気導入装置6のインバータモータ15の補正操作による風量の変更によって結露が十分に防止できない場合には、第2補正量算出部37は、更に、ベルトフィーダー9のインバータモータ10の回転速度を低減させて、回収砂の投入量を低減させることを検討する。回収砂の投入量は、式(1)〜(4)を基に算出される。その後、第2補正量算出部37は、空気導入装置6のインバータモータ15に関する補正制御操作に加えて、回収砂の投入量が算出された値になるようにベルトフィーダー9のインバータモータ10を調整させる補正制御操作を、制御部35に送信する。
ただし、回収砂の投入量を減らしすぎると、後工程である造型工程で必要とする砂量を下回り、決められた造型スピードを守るための最低限造型機に供給すべき砂量を確保できなくなるため、単位時間当たりの回収砂量Gsに予め設定された下限値GsLを下回る計算値が算出された場合は下限値GsLを設定値とする。なお、下限値GsLの設定は制御装置3に予め作業者が入力すること等で設定される。
それでもなお、結露が十分に防止できない場合には、第2補正量算出部37は、更に、空気加熱装置13における設定温度を上昇させることを検討する。導入空気の温度は、式(1)〜(4)を基に算出される。その後、第2補正量算出部37は、空気導入装置6のインバータモータ15やベルトフィーダー9のインバータモータ10に関する補正制御操作に加えて、空気加熱装置13を、導入空気の温度を算出された値に上昇させる制御操作を、制御部35に送信する。
制御部35は、補正制御操作を受信して、補正制御操作に基づいて、空気導入装置6のインバータモータ15、ベルトフィーダー9のインバータモータ10、空気加熱装置13のいずれかまたはいずれかの組み合わせを制御する(ステップS45)。
ステップS45の後、または、相対湿度の値が例えば95%以下であり結露を防止する補正を行う必要がないとステップS43で判断された場合はその直後に、既に説明した、図4に示されるステップS60を実行する。ステップS60において処理を継続して実行する場合は、ステップS1以降の処理を繰り返す。ステップS1に戻ることにより、本補正操作等で回収砂量や風量等が変更された場合においては、各測定値が再度測定され、単位時間当たりの必要蒸発水量Qv、及び単位時間当たりの蒸発許容水蒸気量Waが再計算されて、値が更新される。
なお、冷却回収砂の水分と温度による動作補正と同様に、本動作補正処理の実行においては、2〜10秒ほどの間に、各補正量の0.5〜2.0%程度の速度で、風量と回収砂の投入量を補正制御するのが望ましい。また、導入空気の温度に関しては、2〜10秒ほどの間に、補正量の0.5〜3℃程度の速度で補正制御するのが望ましい。
次に、上記の回収砂冷却システム1及び方法の作用、効果について説明する。
上記のような構成、方法においては、適正加水量の決定と散水指示において、比較演算部34が、式(3)により表される、導入空気の温度と湿度を基にした単位時間当たりの蒸発許容水蒸気量Wa(kg/min)と、式(1)により表される単位時間当たりの必要蒸発水量Qv(kg/min)とを比較して、加水回収砂の冷却を効果的に行うために、単位時間当たりの導入空気が必要蒸発水量Qv相当の水蒸気を受け入れられるか否かを判断している。
その結果、例えば単位時間当たりの必要蒸発水量が、単位時間当たりの蒸発許容水蒸気量より大きい場合(状態1)においては、単位時間当たりの必要蒸発水量を減らす、あるいは単位時間当たりの蒸発許容水蒸気量を増やすように、制御操作を行う。この制御操作による各装置の制御量は、式(1)〜(4)を基に、単位時間当たりの必要蒸発水量と単位時間当たりの蒸発許容水蒸気量が等しくなるように行われる。
すなわち、導入空気の温度と湿度を基に、導入空気が単位時間当たりにどれだけの量の水蒸気を持ち得るかを判断し、その結果に応じて、回収砂冷却システム内の、回収砂の投入量、散水量、導入空気の温度や風量等の環境を制御、変更している。これにより、導入空気の温度と湿度を考慮した、回収砂冷却システム内の適切な環境が実現可能であるため、例えば季節により温度や湿度が変化するような状況であったとしても、安定した冷却、含水効果を奏することが可能となる。したがって、導入空気の状態によらず、回収砂を確実に目標温度まで冷却することが可能となる。
また、目標温度まで冷却された冷却回収砂を得るための、すなわち、回収砂冷却システム内の、回収砂の目標温度への冷却に必要十分な環境を実現するための各装置の操作量を演算により求めて、各装置はこの操作量に応じて制御されるため、各装置が制御される回数を低減することが可能である。すなわち、各装置を経験的に制御する場合においては、各装置の制御調整と、その結果変更された環境における各測定器による再測定を何度も繰り返して、回収砂冷却システム内の環境が収束させる必要があるが、本実施形態においてはこのような繰り返しを何度も行う必要がない。したがって、回収砂の冷却をより容易に行うことができる。
また、単位時間当たりの必要蒸発水量が、単位時間当たりの蒸発許容水蒸気量より小さい場合(状態3)、すなわち、導入空気が十分に水蒸気を吸収しうる状態においても、単位時間当たりの必要蒸発水量と単位時間当たりの蒸発許容水蒸気量が等しくなるような制御操作を行っている。この制御操作として、回収砂の投入量を増やして、単位時間当たりの冷却処理量を増やすことができる場合がある。したがって、回収砂の冷却を効率的に行うことが可能となる。
また、上記状態3において、風量を減らす制御操作を行うことも可能であり、この場合においては、光熱費を低減することが可能である。
また、単位時間当たりの適正加水量Qwは、上記のように環境が一旦調整された回収砂冷却システムにおいて、式(4)によって、演算で決定されている。式(4)は、調整後の単位時間当たりの必要蒸発水量Qvに対して、冷却回収砂の目標水分と、散水前の回収砂の水分の差分を加算することにより、適正加水量を求めるものである。すなわち、冷却回収砂の水分は目標水分程度に調整されたものとなっており、冷却回収砂の水分量の調整を効率的に行うことが可能となる。
また、適正加水量の決定と散水指示処理において、適切な適正加水量Qwを決定し、散水したにもかかわらず、冷却回収砂の水分量と温度が目標値と異なっている場合がある。これは、砂冷却装置5の、例えば冷却能力等の、想定される能力と実際の能力とが異なっている場合が考えられるが、このような場合においても、適正加水量の決定と散水指示処理の後に、冷却回収砂の水分量と温度による動作補正を行い、冷却回収砂の水分量と温度を目標に近づける補正を行っている。したがって、このような場合においても、回収砂を確実に目標温度まで冷却、含水させることが可能となる。
また、排出空気の温度と湿度による動作補正においては、適正加水量Qwを決定した後に、排出空気の温度と湿度を基に、導入空気の相対湿度が例えば95%以上の、100%の近い値である場合に、例えば90〜95%程度とするための風量、回収砂の投入量、導入空気の温度のいずれかまたはいずれかの組み合わせの補正量を算出し、各装置を補正制御している。これにより、砂冷却装置5や、空気流路を構成する送風管内における結露を防止することが可能となる。
なお、本発明の回収砂冷却システム及び回収砂冷却方法は、図面を参照して説明した上述の実施形態に限定されるものではなく、その技術的範囲において他の様々な変形例が考えられる。
例えば、上記実施形態の、適正加水量の決定と散水指示においては、状態1の場合に、風量の増加、回収砂の投入量の低減、導入空気の温度の上昇を、この順に実施したが、順序はこれに限られず、例えば導入空気の温度の上昇を最初に試みるようにしてもよいし、他の順序であっても構わない。また、この場合において、空気導入装置6のインバータモータ15、ベルトフィーダー9のインバータモータ10、及び空気加熱装置13の、3種類の装置を制御するように制御操作を決定してもよいし、この内の1種類や2種類の装置を制御するように制御操作を決定してもよい。
適正加水量の決定と散水指示の状態3、冷却回収砂の水分と温度による動作補正における状態A及びD、及び、排出空気の温度と湿度による動作補正における各処理等の、制御対象となる装置が複数存在する、他の場合についても同様である。
また、上記実施形態においては、散水装置4と砂冷却装置5は個別に配されて、散水装置4において加水された加水回収砂が砂冷却装置5に供給されていたが、撹拌混合により回収砂に散水した水が分散し、併せて導入した空気と回収砂の接触が十分に行われるものであれば、これらを一体化した散水冷却装置を使用してもよい。
また、上記実施形態においては、空気導入装置6における風量は、インバータモータ15によって調整されていたが、これに替えて、空気流路にダンパを設けて、ダンパにより風量を調整する構成であってもよい。
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。