JP6749578B2 - 耐遅れ破壊特性及び冷間加工性に優れた高強度ボルト用鋼並びにそれを用いた高強度ボルトの製造方法 - Google Patents

耐遅れ破壊特性及び冷間加工性に優れた高強度ボルト用鋼並びにそれを用いた高強度ボルトの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、耐遅れ破壊特性及び冷間加工性に優れた高強度ボルト用鋼並びにそれを用いた高強度ボルトの製造方法に関する。
近年、車両(自動車)の燃費削減等を目的とした各部品の軽量化に伴い、部品の締結用ボルトについても高強度化のニーズが高まっている。しかし、ボルトの高強度化には、遅れ破壊の問題が付随してくる。経験上、鋼材の引張強度が1200MPa以上になると、遅れ破壊の危険性が高まることが知られており、ボルトの高強度化に対する最重要課題は遅れ破壊の防止であると言っても過言ではない。
遅れ破壊防止手法としては、P、Sなどの不純物元素の低下、粒界のフィルム状セメンタイトの球状化、合金炭化物による水素トラップなどが浸透している。しかし、不純物元素、フィルム状セメンタイト、合金炭化物など各要素の遅れ破壊に対する影響度に不明な点が多く、ボルトの成分設計に生かし難いのが現状である。また、ボルトの高強度化には、ボルトの高合金化に付随して冷間加工性が低下するという別の課題もあり、高合金化するとしても可能な限り素材強度の向上を抑えることが不可欠である。
具体的に、高強度ボルトに関する技術としては、例えば下記特許文献1〜4に記載の技術が知られている。
下記特許文献1、2では、ボルト表面にパルスレーザービームを照射し、あるいは超音波振動端子により打撃処理を施してボルト表面に圧縮残留応力を付与することで、それぞれ耐遅れ破壊特性の向上を図るようにしている。
一方、下記特許文献3では、焼戻し時の合金炭化物析出に関して、急速加熱後、短時間保持する処理を施し、合金炭化物の良好な二次析出により遅れ破壊が発現する臨界の水素量(限界拡散水素量)を増加させることで、耐遅れ破壊特性の向上を図るようにしている。さらに、下記特許文献4では、1700MPaの超高鋼材であっても、ねじ部における塑性ひずみ及び応力集中が低減されるようボルトの軸部の最適化を図ることで、水素許容量を増大化させ、ひいては耐遅れ破壊特性の向上を図るようにしている。
特許第4441434号公報 特許第4555749号公報 特許第4485424号公報 特開2013−139631号公報
しかし、上記特許文献1〜4に記載された技術は、いずれも特殊な製造技術によって耐遅れ破壊特性の向上を図るものであり、汎用性に乏しかった。このため、一般的な焼入れ、焼戻し処理により耐遅れ破壊特性に優れた高強度ボルトを製造する技術の開発が望まれていた。また、上記特許文献1〜4では、冷間加工性に対する言及がなされておらず、上記技術の開発に当たっては、冷間加工性を考慮に入れ、出来る限り素材強度を低くすることが求められていた。
本発明は以上のような事情を背景としてなされたものであり、その目的は一般的な焼入れ、焼戻し処理にて耐遅れ破壊特性のみならず冷間加工性に優れた高強度ボルト用鋼を提供し、併せて高強度ボルトの製造方法を提供することにある。
課題を解決するための手段及び発明の効果
上記目的を達成するために本発明の耐遅れ破壊特性及び冷間加工性に優れた高強度ボルト用鋼は、質量%で、C:0.35〜0.55%、Si:1.50〜2.60%、Mn:0.15〜0.85%、P:0.015%以下、S:0.015%以下、Cr:0.25〜1.15%、Mo:0.35〜1.25%、Al:0.020〜0.040%、N:0.010〜0.020%、を含有し、残部がFe及び不可避不純物からなり、下記式(1)〜(3)を満たすことを特徴とする。
2.202[C]+0.996[Mo]−0.041Wp≧1.50 …式(1)
式(1)の[C]、[Mo]、Wpは単位をいずれも質量%とし、[C]、[Mo]は930℃におけるC、Moの固溶量の計算値を示し、Wpは前記930℃における未固溶の炭化物量の計算値を示し、いずれも統合型熱力学計算システムであるThermo-Calc(Version S, Database fe6)により前記930℃を入力して求めた計算値である。
4.957C+3.541Si+1.372Cr+2.473Mo≦15.2 …式(2)
式(2)のC、Si、Cr、Moは単位をいずれも質量%とする添加量を示す。
19.304[C]+13.169[Mo]+3.434[Si]
+1.781[Cr]≧25.0 …式(3)
式(3)の[C]、[Mo]、[Si]、[Cr]は単位をいずれも質量%とする、前記930℃におけるC、Mo、Si、Crの固溶量の計算値を示し、いずれも前記Thermo-Calc(Version S, Database fe6)により前記930℃を入力して求めた計算値である。
また、本発明の高強度ボルトの製造方法は、上記高強度ボルト用鋼を用いて、A1点からA3点までの間の任意の温度で1時間以上保持し、670℃以下の任意の温度まで40℃/時間以下の冷却速度で冷却し、その後室温まで空冷する軟化熱処理を施した後にボルト形状に加工し、その後850℃〜950℃より焼入れ処理を施し、500℃以上で焼戻し処理を施すことを特徴とする。
本発明の発明者らは、遅れ破壊強度の指標となる遅れ破壊強度比が、焼入れ時におけるC及びMoの固溶量と、焼入れ時における未固溶炭化物量とを用いた式(1)に関連付けられること、軟化熱処理後の素材の硬さがC、Si、Cr、Moの添加量を用いた式(2)に関連付けられること、550℃における焼戻し硬さがC、Mo、Si、Crの各固溶量を用いた式(3)に関連付けられること、を見出した。すなわち、上記式(1)〜(3)を満たすように鋼材の各化学成分の含有量を調整することで、遅れ破壊強度比の向上、及び軟化熱処理後の硬さの低下を図りつつ、少なくとも550℃(場合によっては600℃程度まで)の焼戻しにおいて高硬さを有する高強度ボルト用鋼を得ることができる。
また、その高強度ボルト用鋼に上記熱処理を施しつつボルト形状に加工することで、遅れ破壊強度比に優れた、焼戻し後の硬さが47.5HRC以上(引張強度で1600MPa以上)の高強度ボルトを得ることができる。
式(1)の条件を説明するためのグラフ。 式(2)の条件を説明するためのグラフ。 式(3)の条件を説明するためのグラフ。 (a)〜(c)は遅れ破壊試験を示す説明図。 Thermo-Calcによる計算結果の1例を示す説明図。
以下、本発明の高強度ボルト用鋼における各化学成分(元素)の組成限定理由及び限定条件について説明する。
(1)C:0.35〜0.55%
Cは強度を確保するための必須元素である。C含有量が0.35%未満では所望の強度が得られない一方、0.55%を超えて添加すると加工性が低下するため、上限を0.55%とする。好ましくは0.40〜0.50%である。
(2)Si:1.50〜2.60%
Siは焼戻し軟化抵抗の上昇に寄与するとともに、耐応力緩和性を高めるのに有効な元素である。このために1.50%以上添加する。ただし、2.60%を超えて添加すると、加工性が低下するため、上限を2.60%とする。好ましくは2.00〜2.50%である。
(3)Mn:0.15〜0.85%
MnはMnSの形で靭性劣化元素であるSを固定する働きをするとともに、焼入れ性を改善する働きもする。これらのために0.15%以上添加する。ただし、Mnは焼戻し脆性を促進する元素であるため、上限を0.85%とする。好ましくは0.20〜0.30%である。
(4)P:0.015%以下
Pは遅れ破壊特性を低下させる不純物元素であるため、0.015%以下の含有量とする。
(5)S:0.015%以下
SはPと同様に遅れ破壊特性を低下させる不純物元素であるため、0.015%以下の含有量とする。
(6)Cr:0.25〜1.15%
Crは焼戻し軟化抵抗の上昇に有効であるとともに、焼入れ性の調整にも有効である。ただし、過度の添加は未固溶炭化物量の増加による遅れ破壊特性の低下及び加工性の低下を招くので、上限を1.15%とする。好ましくは0.50〜1.00%である。
(7)Mo:0.35〜1.25%
Moは高温焼戻し時の合金炭化物析出による水素トラップ効果を得るために、0.35%以上添加する。ただし、1.25%を超えて添加すると鋼材のコストが上昇する他、加工性が低下するため、上限を1.25%とする。好ましくは0.80〜1.10%である。
本発明では、更に以下の化学成分を添加することができる。
(8)N:0.010〜0.020%
NはAlとの窒化物を形成し、結晶粒(旧γ粒)の微細化を図るため、0.010〜0.020%の含有とする。
(9)Al:0.020〜0.040%
Alは溶鋼処理時の脱酸剤として作用する元素であるとともに、Nとの窒化物を形成し、結晶粒を微細化する。ただし、0.040%を超えて添加すると介在物が増加し、疲労強度の低下を招くため、0.020〜0.040%の含有とする。
(10)残部:Fe及び不可避不純物
なお、表1ではFe及び不可避不純物の記載を省略してある。
(11)下記式(1)を満たすこと
2.202[C]+0.996[Mo]−0.041Wp≧1.50
…式(1)
式(1)の[C]、[Mo]、Wpは単位をいずれも質量%とし、[C]、[Mo]は焼入れ時におけるC、Moの固溶量を示し、Wpは焼入れ時における未固溶の炭化物量を示す。上記式(1)において、[C]、[Mo]が多いほど遅れ破壊が抑制される一方、Wpが多いほど遅れ破壊が促進される。このため、[C]、[Mo]、Wpをバランスさせることで、後述する遅れ破壊強度比を向上させることができる。上記式(1)は、後述する実験データから導き出された(図1参照)。
(12)下記式(2)を満たすこと
4.957C+3.541Si+1.372Cr+2.473Mo≦15.2
…式(2)
式(2)のC、Si、Cr、Moは単位をいずれも質量%とする添加量を示す。上記式(2)において、C、Si、Cr、Moの添加量が少ないほど軟化熱処理後の硬さが低下する。このため、上記式(1)を踏まえた上で、C、Si、Cr、Moの添加量をバランスさせることで、遅れ破壊強度比を向上させつつも、軟化熱処理後の硬さを低くすることができる。上記式(2)は、後述する実験データから導き出された(図2参照)。
(13)下記式(3)を満たすこと
19.304[C]+13.169[Mo]+3.434[Si]
+1.781[Cr]≧25.0 …式(3)
式(3)の[C]、[Mo]、[Si]、[Cr]は単位をいずれも質量%とする、焼入れ時におけるC、Mo、Si、Crの固溶量を示す。上記式(3)において、[C]、[Mo]、[Si]、[Cr]が多いほど、550℃における焼戻し硬さが増加する。つまり、式(3)を満たすことにより、少なくとも550℃(場合によっては600℃程度まで)の焼戻しにおいて目標とする硬さ(47.5HRC以上)が得られ、合金炭化物析出による遅れ破壊特性の向上が可能となる。上記式(3)は、後述する実験データから導き出された(図3参照)。
また、上記高強度ボルト用鋼を用いた高強度ボルトは以下の条件で製造することができる。
(ア)A1点からA3点までの間の任意の温度で1時間以上保持し、670℃以下の任意の温度まで40℃/時間以下の冷却速度で冷却し、その後室温まで空冷する軟化熱処理
これは球状化焼きなましを意味する。
(イ)850℃〜950℃での焼入れ処理
これはA3点以上の温度から焼入れを行うことを意味する。より好ましくは900℃〜950℃である。
(ウ)500℃以上の高温での焼戻し処理
これは遅れ破壊特性を向上させるために、十分な量のMo炭化物を析出させる必要があるからである。より好ましくは550℃以上600℃以下である。
(実施例)
次に、本発明の実施例について説明する。
表1に示す化学成分の本発明の実施例A〜Fと比較例G〜Xをそれぞれ溶製した後、造塊し、各鋼を直径20mmの丸棒に鍛造した。鍛造温度は1200℃(鍛造終始温度は1000℃)とした。鍛造後に800℃で2.5時間保持した後に650℃まで15℃/時間で冷却し、その後室温まで空冷する球状化焼きなまし処理(spheroidizing
annealing)を施した。この処理後の硬さ試験の結果をSA硬さ(HRB)として表1に示す。
Figure 0006749578
続いて、球状化焼きなまし処理後の素材を図4(b),4(c)に示されるような所定の試験片形状に加工し、加工後の素材に対し850℃〜950℃の各種温度より焼入れ処理を施し、調質後硬さとして48HRC程度を狙い350℃〜600℃の各種温度で焼戻し処理を施して試験片11(例えば直径6mm×40mm程度の大きさ)を作製した。このような手順で作製した遅れ破壊試験用の試験片11における硬さ試験の結果を調質後硬さ(HRC)として表1に示す。また、上記とは別に、550℃で焼戻しを実施したものの硬さ試験の結果を550℃焼戻硬さ(HRC)として表1に示す。
そして、試験片11を用いて遅れ破壊試験(遅れ破壊特性評価試験)を行った。この遅れ破壊試験は、図4(a)に示されるように、片持ち曲げ型試験機20を構成するホルダー21とモーメントアーム22の基端部とを試験片11を介して接続した上で、モーメントアーム22の自由端に錘23による負荷をかけることで、試験片11の切り欠き部11a(図4(c)参照)に曲げ応力を作用させる促進試験である。この場合、0.1Nの塩酸水溶液を試験片11の切り欠き部11aに連続して滴下する試験環境とした。
各試験片11の耐遅れ破壊特性は、静曲げ応力(σSB)に対する遅れ破壊試験30時間後における強度(σ30)との比、すなわち遅れ破壊強度比(σ30/σSB)を求めて評価した。試験結果をσ30/σSBとして表1に示す。
次に、焼入れ時におけるC、Mo、Si、Crの固溶量を示す[C]、[Mo]、[Si]、[Cr]と、焼入れ時における未固溶の炭化物量を示すWp(いずれも質量%)をそれぞれThermo-Calc(統合型熱力学計算システム)の計算により求めた。ここで、Thermo-Calcは「Version
S」、「Database fe6」仕様のものを用いた。図5に、表1の鋼種Dを用いてWpと[C]を算出した計算結果の1例を示す。
前記式(1)の左辺の値(2.202[C]+0.996[Mo]−0.041Wp)と遅れ破壊強度比(σ30/σSB)との関係をプロットして、図1に示すグラフを得た。図1から、前記式(1)の左辺の値が1.5以上であると、遅れ破壊強度比がほぼ0.6以上となることが分かる。ここではボルトに必要な耐遅れ破壊特性として遅れ破壊強度比の下限を0.6に設定することが十分に妥当であると判断し、前記式(1)の右辺のしきい値を1.50に設定した。なお、図1中の白丸のプロット(鋼種V)は、固溶Mo量も多く、前記式(1)の条件を満たしているが、遅れ破壊強度比は低い値となっている((σ30/σSB)=0.33)。これは焼戻し温度が400℃と低く、焼戻し時にMo炭化物が析出しなかったことが要因と考えられる。また、後述する前記式(3)の条件を満たしていない。
前記式(2)の左辺の値(4.957C+3.541Si+1.372Cr+2.473Mo)と軟化熱処理後の硬さ(SA硬さ)との関係をプロットして、図2に示すグラフを得た。図2から、前記式(2)の左辺の値が15.2以下であると、軟化熱処理後の硬さが99HRB以下となることが分かる。冷間加工性に関して硬さは低ければ低いほどよいが、ここでは軟化熱処理後の硬さの上限を99HRBに設定することが十分に妥当であると判断し、前記式(2)の右辺のしきい値を15.2に設定した。
前記式(3)の左辺の値(19.304[C]+13.169[Mo]+3.434[Si]+1.781[Cr])と550℃焼戻硬さとの関係をプロットして、図3に示すグラフを得た。図3から、前記式(3)の左辺の値が25.0以上であると、少なくとも550℃(場合によっては600℃程度まで)の焼戻し温度で47.5HRC以上の硬さが確保できる。引張強度で1600MPa以上となるためには、焼戻し後の硬さが47.5HRC以上は必要であるため、ここでは焼戻し後の硬さの下限を47.5HRCに設定することが十分に妥当であると判断し、前記式(3)の右辺のしきい値を25.0に設定した。
表1に、各鋼種(実施例A〜F、比較例G〜X)に対応する式(1)〜(3)の計算結果、遅れ破壊強度比の試験結果、及び硬さの測定結果を示す。実施例A〜Fに示されるように、各化学成分が所定の範囲にあり、しかも式(1)〜(3)を満たすことにより、遅れ破壊強度比の向上、及び軟化熱処理後の硬さの低下を図りつつも、少なくとも550℃(場合によっては600℃程度まで)の焼戻しで所定の硬さ(47.5HRC)を確保することができる。
他方、比較例G,S,T,U,V,W,Xは式(1)及び式(3)を満たさないため、遅れ破壊強度比が0.6を下回り、焼戻し温度も500℃を下回ることとなった。また、比較例H,I,J,K,L,Mは式(1)を満たさないため、遅れ破壊強度比が0.6を下回ることとなった。また、比較例N,O,P,Q,Rは式(2)を満たさないため、軟化熱処理後の硬さが99HRBを上回ることとなった。
以上の説明からも明らかなように、本発明によれば、遅れ破壊強度比の向上、及び軟化熱処理後の硬さの低下を図りつつ、少なくとも550℃(場合によっては600℃程度まで)の焼戻しで十分な硬さを有する高強度ボルト用鋼を得ることができる。
また、その高強度ボルト用鋼に上記(ア)の熱処理を施し、ボルト形状に加工した後、(イ)(ウ)の熱処理を施すことで、遅れ破壊特性に優れ、かつ硬さが47.5HRC以上(引張強度で1600MPa以上)の高強度ボルトを得ることができる。
なお、本発明は上記実施例に限らず、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えた態様で実施することが可能である。
11 試験片
20 片持ち曲げ型試験機

Claims (2)

  1. 質量%で、
    C:0.35〜0.55%、
    Si:1.50〜2.60%、
    Mn:0.15〜0.85%、
    P:0.015%以下、
    S:0.015%以下、
    Cr:0.25〜1.15%、
    Mo:0.35〜1.25%、
    Al:0.020〜0.040%、
    N:0.010〜0.020%、
    を含有し、残部がFe及び不可避不純物からなり、下記式(1)〜(3)を満たすことを特徴とする耐遅れ破壊特性及び冷間加工性に優れた高強度ボルト用鋼。
    2.202[C]+0.996[Mo]−0.041Wp≧1.50 …式(1)
    前記式(1)の[C]、[Mo]、Wpは単位をいずれも質量%とし、[C]、[Mo]は930℃におけるC、Moの固溶量の計算値を示し、Wpは前記930℃における未固溶の炭化物量の計算値を示し、いずれも統合型熱力学計算システムであるThermo-Calc(Version S, Database fe6)により前記930℃を入力して求めた計算値である。
    4.957C+3.541Si+1.372Cr+2.473Mo≦15.2 …式(2)
    前記式(2)のC、Si、Cr、Moは単位をいずれも質量%とする添加量を示す。
    19.304[C]+13.169[Mo]+3.434[Si]
    +1.781[Cr]≧25.0 …式(3)
    前記式(3)の[C]、[Mo]、[Si]、[Cr]は単位をいずれも質量%とする、前記930℃におけるC、Mo、Si、Crの固溶量の計算値を示し、いずれも前記Thermo-Calc(Version S, Database fe6)により前記930℃を入力して求めた計算値である。
  2. 請求項1に記載の高強度ボルト用鋼を用いて、A1点からA3点までの間の任意の温度で1時間以上保持し、670℃以下の任意の温度まで40℃/時間以下の冷却速度で冷却し、その後室温まで空冷する軟化熱処理を施した後にボルト形状に加工し、その後850℃〜950℃より焼入れ処理を施し、500℃以上で焼戻し処理を施すことを特徴とする高強度ボルトの製造方法。
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