JP6746955B2 - 化粧シート、化粧材及び化粧シートの製造方法 - Google Patents
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Description
また、引用文献2には、下台上に艶消層と艶向上層とを設け、艶向上層に含まれる樹脂の分子量や組成を規定することによって化粧シートの表面硬度、耐傷つき性及び意匠効果を高めることが記載されている。
本発明は、このような点に鑑みて行われたものであり、塩化ビニルを用いて意匠性の高いグロスマット印刷の化粧シート、この化粧シートを備えた化粧材及び化粧シートの製造方法を提供することを目的とする。
以下の図面の記載において、同一または類似の部分には同一または類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
<基材層>
図1は、本発明の一実施形態の化粧材及び化粧シートを説明するための断面図である。本実施形態は、化粧材を板状の化粧ボードとして構成した。ただし、本実施形態の化粧材は、板状の化粧ボードに限定されるものでなく、曲面に化粧シートを貼り付けたものであってもよい。
接着剤層22は、基材層21と化粧シート10の裏面とを接着するために使用される。本実施形態では、接着剤に水性ビニルレタン樹脂を用いている。なお、本実施形態は、接着剤層22に水性ビニルレタン樹脂を用いることに限定されるものではない。本実施形態の接着層は、化粧シート10の裏面となる塩化ビニルの下台と基材層21とを接着できるものであればどのようなものであってもよい。
次に、化粧シート10について説明する。化粧シート10は、塩化ビニルを含む基材シートを有している。本実施形態では、以降、基材シートを下台層11と記す。また、化粧シート10は、この下台層11の一方の面側に絵柄層13及び透明フィルム層と、がこの順に形成されている。本実施形態では、以降、透明フィルム層を上台層15と記す。
さらに、本実施形態の化粧シート10では、絵柄層13とマット導管層19との間に樹脂を塗工して形成される表面保護層17を有している。マット導管層19の光沢は、表面保護層17よりも低くなっている。
上記本実施形態の化粧シート10では、光沢の相対的に高い表面保護層17が突出して見え、光沢が相対的に低いマット導管層19が窪んで見える。このため、化粧シート10は、表面においてマット導管層19のパターンの凹部とマット導管層19から見える表面保護層17の凸部が形成されているような視覚的効果を生じる。
<下台層>
下台層11は、ポリ塩化ビニル(polyvinyl chloride)製のシートである。ポリ塩化ビニルは、難燃性や自己消火性及びコストの点で例えばポリオレフィンよりも優れた熱可塑性樹脂である。下台層11は、ポリ塩化ビニルに適宜他の樹脂を組み合わせたものであってもよい。
下台層11の厚みは、最終製品の用途、使用方法等により適宜設定できるが、一般には20μm以上、300μm以下程度が好ましい。
下台層11は、必要に応じて、絵柄層13を形成するインキの密着性を高めるために表面にコロナ放電処理を施してもよい。コロナ放電処理の方法、条件は、公知の方法に従って実施すれば良い。また、必要に応じて、基材シートの裏面にコロナ放電処理を施したり、後述する裏面プライマー層を形成したりしてもよい。
絵柄層13は、化粧シートに所望の絵柄(意匠)を付与する層である。絵柄としては、例えば、木目模様、レザー模様、石目模様、砂目模様、タイル貼模様、煉瓦積模様、布目模様、幾何学図形、文字、記号及び抽象模様等が挙げられる。
絵柄層13は、例えば、公知の着色剤を結着材樹脂とともに溶剤(または分散媒)中に溶解(または分散)して得られるインキを用いた印刷法によって下台層11上に形成される。
絵柄層13の厚みは特に限定されず、製品特性に応じて適宜設定できるが、インキの塗工時の層厚は1μm以上、15μm以下程度、乾燥後の層厚は0.1μm以上、10μm以下程度が好ましい。
上台層15は、透明の塩化ビニル樹脂製のシートである。上台層15の厚みに特に制限はないが、50μm以上、300μm以下程度の範囲が好ましい。
<表面保護層>
表面保護層17は、ウレタン樹脂によって形成されている。このウレタン樹脂は、アクリル変性樹脂のグロス樹脂とマット樹脂及び硬化剤を含んでいる。また、本実施形態は、ウレタン樹脂に紫外線硬化剤としてのイソシアネート樹脂を添加している。本実施形態は、このようなウレタン樹脂を二液ウレタン樹脂とした。グロス樹脂及びマット樹脂の組成や分量は、表面保護層17に要求される光沢に応じて適宜決定される。
表面保護層17の厚さは、特に限定されものではないが、一般的に0μm以上、6μm以下程度の範囲が好ましい。
マット導管層19は、ウレタン樹脂によって形成されている。このウレタン樹脂は、マットインキとしてのアクリル系樹脂と、硬化剤としてのイソシアネート樹脂と、を含んでいる。マットインキの組成及び分量は、マット導管層19に要求される光沢に応じて適宜決定される。
次に、本実施形態の化粧シート10の製造方法について説明する。
図2(a)から図2(d)は、本実施形態の化粧シート10の製造方法を説明するための工程図である。本実施形態の化粧シート10の製造方法では、先ず、図2(a)に示すように、下台層11上に絵柄層13が印刷によって形成される。絵柄層13を形成する際の印刷は、例えばグラビア印刷法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、凸版印刷法、インクジェット印刷法及び転写印刷法等によって実現することができる。また、絵柄が層の絵柄が一色の所謂ベタ印刷である場合、絵柄層13は、グラビアコート法等によって実現することができる。
次に、図2(c)に示すように、上台層15上に表面保護層17が形成される。表面保護層17は、上述したグロス樹脂、マット樹脂及び硬化剤を含む二液型のウレタン樹脂を塗布し、紫外線を照射して硬化させることによって形成される。上台層に絵柄はなく、絵柄層13の意匠が視認できるように透明である。このため、ウレタン樹脂の塗布は、ベタ印刷によって可能になる。
<第1実施例>
第1実施例の化粧シートは、図1に示した化粧シート10と同様の構成を有している。このため、第1実施例では化粧シートの図示を省く。第1実施例の化粧シートの各層の作製条件は、以下の通りである。
接着剤層:水性のビニルレタン樹脂、塗布量 6g/m2(乾燥後)
下台層:着色塩化ビニル樹脂、厚さ 80μm、組成 可塑材17PHR
絵柄層:アクリル樹脂,塩酢ビ樹脂,有機顔料、合計塗布量 3g/m2(乾燥後)
上台層:塩化ビニル樹脂、厚さ 80μm、組成 可塑材20PHR
表面保護層:二液ウレタン樹脂、塗布量 2.24g/m2(乾燥後)
マット導管層:二液ウレタン樹脂、塗布量 1.46g/m2(乾燥後)
図3は、本発明の第2実施例の化粧材3及び化粧シート30を説明するための断面図である。第2実施形態の化粧シート30は、本発明の実施形態の化粧シート10から表面保護層17を除いた構成を有している。このため、図3に示した化粧シート30の説明においては、各層の説明を略す。
また、本発明の発明者らは、第1実施例、第2実施例の化粧シートによって得られる効果を検証するため、本発明の範囲外の化粧シートを比較例として作製した。比較例の化粧シートは、現状で化粧シートに要求される基本的な機能を備えて実用化されているものである。以下、第1比較例、第2比較例の化粧シートについて説明する。
図4は、第1比較例の化粧材4及び化粧シート40を説明するための図である。第1比較例の化粧シート40は、第2実施例の化粧シート30からマット導管層19を除いた構成である。このため、図4に示した化粧シート40の説明にあっては、各層の説明を省くものとする。化粧シート40は、表面に上台層15が形成されていて、上台層15上に上台層15と光沢の異なる層が設けられていない。このような構成は、上台層15上に窪みが見られず、表面に凹凸があるように見える化粧シートを提供することはできない。
図5は、第2比較例の化粧材5及び化粧シート50を説明するための図である。第2比較例の化粧シート50は、実施形態の化粧シート10のマット導管層19を除き、上台層15と表面保護層17との間にワイピング層53を設けたものである。ワイピング層51は、上台層15上に塩化ビニルシートにエンボス加工を施したワイピング層53を設け、エンボ加工が施された前面にインク51を塗布した後に拭き取ることによってエンボスの凹部にインク51を埋め込んで形成される。このような処理によれば、インク51部分の光沢が下面にある上台層15よりも低くなる。
表1は、第1実施例、第2実施例、第1比較例及び第2比較例によって得られる視覚的な効果を説明するための図である。表1に示したように、本発明の発明者らは、第1実施例、第2実施例、第1比較例及び第2比較例について化粧シートの外観観察と、化粧シートとして一般的に必要とされる他の基本的な性能とを確認した。
化粧シートに必要とされる基本的な性能として、本発明の発明者らは、耐薬品性及び耐汚染性を調べた。耐薬品性の実験は、対象となる薬品の溶液を裁断した化粧シート表面に滴下し、時経皿にて6時間被覆することによって行った。そして、6時間が経過した後、発明者らは、化粧シートの被覆を解いて水洗し、拭き取りを行って化粧シート表面を観察した。あるいは被覆が解かれた化粧シートを乾燥した部材で拭き取って水洗した。
本実施例では、表面の観察結果を「〇」、「△」、「×」によって行った。「〇」は化粧シートの外観に変化がなかったと判断されたことを示す。「△」は化粧シート表面の艶に変化が見られたと判断されたことを示す。「×」は化粧シート表面に艶以外の変化が見られたと判断されたことを示す。
耐薬品性の実験の結果では、10%塩酸、n−ヘキサン、10%アンモニア水及び10%苛性ソーダにおいては、第1実施例、第2実施例、第1比較例及び第2比較例のいずれもが「〇」の評価を得ている。このような結果は、第1実施例及び第2実施例の化粧シートが第1比較例及び第2比較例と同等の耐薬品性を有していることを表している。なお、「〇」の評価を得た実験ではいずれも化粧シート表面を水洗した後に拭き取っているが、他の実験ではいずれも乾式で化粧シート表面を拭き取って水洗いしている。
耐汚染性の実験は、耐薬品性と同様に、対象となる試料を裁断した化粧シート表面に滴下し、時経皿にて6時間被覆することによって行った。そして、6時間が経過した後、発明者らは、化粧シートの被覆を解いて水洗または洗剤やアルコールで拭き取り、化粧シート表面を観察した。あるいは被覆が解かれた化粧シートを乾燥した部材で拭き取って水洗した。
本実施例では、表面の観察結果を「◎」、「〇」、「△」によって行った。「◎」は化粧シートに付着した試料が中性洗剤によって拭き取れたことを示す。「〇」は化粧シートに付着した試料がアルコールによって拭き取れたことを示す。「△」は化粧シートに付着した試料を拭き取っても若干のシミが残ることを示している。
次に、第1実施例、第2実施例、第1比較例及び第2比較例の外観観察の結果について説明する。外観観察は、観察者の目視によって行われ、化粧シートの意匠が表面に凹凸があるように感じられるか否かを判断するものである。外観観察において、観察者が化粧シートの表面に凹凸がある(グロスマット感がある)ように感じた場合には「〇」、凹凸があるように感じられなかった(グロスマット感がない)場合には「×」と評価される。
表1に示すように、第1実施例、第2実施例の化粧シートは、グロスマット感がある意匠であるとして「〇」の評価を得ている。しかし、比較例1及び比較例2は、表面にグロスマット感が感じられず、「×」と評価された。
以上のことから、第1実施例、第2実施例の化粧シートは、化粧シートとして必要な基本的機能と、グロスマット感との両方において必要な条件を満たすことが分かった。一方、第2比較例の化粧シートは、ワイピングによって上台層15表面に光沢が相違する層を設けたにも関わらずグロスマット感を得ることができなかった。
11 下台層
13 絵柄層
15 上台層
17 表面保護層
19 マット導管層
21 基材層
22 接着剤層
Claims (7)
- 塩化ビニルを含む基材シートと、当該基材シートの一方の面側に絵柄層及び塩化ビニルを含む透明フィルム層と、がこの順に形成され、
前記透明フィルム層の側に第1の樹脂を塗工して形成される導管層と、
前記透明フィルム層と前記導管層との間に第2の樹脂を塗工して形成される表面保護層と、を有し、
前記表面保護層は、前記透明フィルム層の全面に形成され、
前記導管層は、前記表面保護層の表面の一部に形成され、
前記導管層の光沢は、前記透明フィルム層及び前記表面保護層よりも低く、
前記第1の樹脂及び前記第2の樹脂は、ウレタン樹脂を含み、
前記第1の樹脂は、マットインキとしてのアクリル系樹脂と、硬化剤としてのイソシアネート樹脂と、を含む紫外線硬化樹脂であり、
前記第2の樹脂は、グロス樹脂としてのアクリル変性樹脂及びマット樹脂としてのアクリル変性樹脂と、硬化剤としてのイソシアネート樹脂と、を含む紫外線硬化樹脂である
ことを特徴とする化粧シート。 - 前記基材シートの厚さは、20μm以上300μm以下である
ことを特徴とする請求項1に記載の化粧シート。 - 前記絵柄層の厚さは、0.1μm以上10μm以下である
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の化粧シート。 - 前記透明フィルムの厚さは、50μm以上300μm以下である
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の化粧シート。 - 前記表面保護層の厚さは、6μm以下である
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の化粧シート。 - 請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の化粧シートと、
前記化粧シートの前記基材シートの前記絵柄層とは反対の面に設けられる接着剤層と、
前記接着剤層によって前記基材シートに接着される基材と、
を備えることを特徴とする化粧材。 - 請求項1に記載の化粧シートの製造方法であって、
塩化ビニル製の前記基材シートの一方の面側に前記絵柄層を形成する工程と、
前記絵柄層の上に塩化ビニルを含む前記透明フィルム層を形成する工程と、
前記透明フィルム層の側に前記第1の樹脂を塗工して前記導管層を形成する工程と、
前記透明フィルム層と前記導管層との間に前記第2の樹脂を塗工して前記表面保護層を形成する工程と、
を含むことを特徴とする化粧シートの製造方法。
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