JP6746929B2 - コーティング用組成物、コート層付集電板及び燃料電池 - Google Patents

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Description

本発明は、コーティング用組成物、それを使用するコート層付集電板及び燃料電池に関する。
燃料電池は、電気化学システムを用いて化学エネルギーを電気エネルギーに直接変換できるシステムであり、高効率であるため次世代エネルギーとして期待されている。特に、固体高分子型燃料電池は作動温度が低く、高効率である点から自動車用、定置用、小型モバイル用に活発に開発が進められている。
燃料電池の基本的な単位構成(単セル)は、固体高分子電解質膜を挟んで、対面するようにアノード触媒層とカソード触媒層が設けられており、該触媒層の表面にガス拡散性を有する導電性支持体、セパレータが順次積層されたものが一般的である。実際に燃料電池デバイスとして使用される際には、必要な電力に応じて単セルを複数スタックさせて使用されることも多く、通常、電流の取出しにはデバイスの両端に集電板を設けることが多い。
集電板は、燃料電池から得られた電流を効率的に取り出す必要があるため、導電性が求められる。また、固体高分子型燃料電池では湿潤雰囲気あるいは酸性雰囲気下に晒されることもあるため、集電板表面の腐食や酸化抑制も求められる。そこで、金属製(ステンレス、銅、アルミなど)の集電板表面に金メッキ処理を行う提案がなされている(特許文献1〜5)。しかしながら、これらの発明では比較的厚めの金メッキ処理を行うため、集電板の量産性に乏しく、安価に製造することは困難であった。また、メッキ処理ではピンホールを生じてしまうため、さらなる改善が求められていた。さらなる導電性や耐久性の改善に向けて、特許文献6ではアルミ基材に貴金属メッキを施し、さらに金メッキ処理を行う提案がなされている。しかしながら、ピンホールの問題を完全に解決することは難しく、燃料電池の普及にあたっては、コストの観点から高価な金メッキ処理を出来るだけ使用しないことが望ましいため、さらなる改善が求められている。
特開2003−217644号公報 WO2003/088395号パンフレット 特開2008−78104号公報 特開2009−152112号公報 特開2010−287542号公報 特開2013−105629号公報
本発明の目的は、炭素材料の分散性や耐酸化性に優れる燃料電池用コート層付集電板に使用するコーティング用組成物であり、また、本発明のコーティング用組成物を使用することで長期耐久性を有するコート層付集電板と、電池特性に優れた燃料電池を提供することである。
本発明は、燃料電池用のコート層付集電板に使用する炭素材料(A)と、水溶性樹脂バインダー(B)と、水分散性樹脂微粒子バインダー(C)と、水性液状媒体(D)とを含有するコーティング用組成物であり、炭素材料(A)の分散性を損なうことなく、集電板の導電性や耐酸化性、さらには燃料電池の電池特性を向上出来たものである。
即ち、燃料電池用コート層付集電板に使用するコーティング用組成物であって、コート層がコーティング用組成物から形成され、 コーティング用組成物が、炭素材料(A)と、水溶性樹脂バインダー(B)と、水分散性樹脂微粒子バインダー(C)と、水性液状媒体(D)とを含有することを特徴とする、燃料電池用コート層付集電に使用するコーティング用組成物に関する。
また、本発明は、コーティング用組成物の固形分の合計100質量%中、炭素材料(A)の含有量が、10質量%以上、65質量%以下である上記の燃料電池用コート層付集電に使用するコーティング用組成物に関する。
また、本発明は、コーティング用組成物が、水溶性樹脂バインダー(B)の固形分および水分散性樹脂微粒子バインダー(C)の固形分の合計100質量%中、水溶性樹脂バインダー(B)の含有量が、1質量%以上、40質量%未満である上記の燃料電池用コート層付集電に使用するコーティング用組成物に関する。
また、本発明は、上記のコーティング用組成物から形成されたコート層を有する燃料電池用コート層付集電に関する。
また、本発明は、上記の燃料電池用コート層付集電を使用した燃料電池に関する。
炭素材料(A)と、水溶性樹脂バインダー(B)と、水分散性樹脂微粒子バインダー(C)と、水性液状媒体(D)とを含むことにより、コーティング用組成物中の炭素材料の分散性を損ねることなく、集電板への導電性や耐酸化性に優れるコート層を形成でき、燃料電池が使用される環境下においても良好な発電特性を有する燃料電池を提供できる。さらには、炭素材料(A)と、水溶性樹脂バインダー(B)と、水分散性樹脂微粒子バインダー(C)とを特定の比率で含むコーティング用組成物を使用することにより、良好な発電特性を有する燃料電池を提供できる。
<コーティング用組成物>
ここで、本発明で用いられるコート層を形成するコーティング用組成物について説明する。コーティング用組成物は、炭素材料(A)と水溶性樹脂バインダー(B)と、水分散性樹脂微粒子バインダー(C)と、水性液状媒体(D)とを含有する。
コーティング用組成物の総固形分に占める炭素材料(A)の割合は、10質量%以上、65質量%以下が好ましく、より好ましくは20質量%以上、50質量%以下、さらに好ましくは25質量%以上、50質量%以下である。
また、水溶性樹脂バインダー(B)および水分散性樹脂微粒子バインダー(C)の固形分の合計に占める水溶性樹脂バインダー(B)の割合が、1質量%以上、40質量%未満であり、好ましくは1質量%以上、20%質量以下である。
また、コーティング用組成物の適正粘度は、コーティング用組成物の塗工方法によるが、一般には、10mPa・s以上、30,000mPa・s以下とするのが好ましい。
このようなコーティング用組成物は、種々の方法で得ることができる。
炭素材料(A)と水性樹脂バインダー(B)と水分散性樹脂微粒子バインダー(C)と水性液状媒体(D)とを含有する、コーティング用組成物の場合を例にとって説明する。
例えば、
(X−1) 炭素材料(A)と水性樹脂バインダー(B)と水性液状媒体(D)とを含有する炭素材料の水性分散体を得、該水性分散体に水分散性樹脂微粒子バインダー(C)とを加え、コーティング用組成物を得ることができる。
(X−2) 炭素材料(A)と水性樹脂バインダー(B)と水分散性樹脂微粒子バインダー(C)と水性液状媒体(D)と含有する炭素材料の水性分散体を得、コーティング用組成物を得ることができる。
(X−3) 水性樹脂バインダー(B)と水分散性樹脂微粒子バインダー(C)と水性液状媒体(D)とを含有する溶液を得、さらに炭素材料(A)を加え、コーティング用組成物を得ることができる。
まず、炭素材料(A)について説明する。
本発明で使用される炭素材料(A)としては、導電性を有する炭素材料であれば特に限定されるものではないが、グラファイト、カーボンブラック、導電性炭素繊維(カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンファイバー)、フラーレン等を単独で、もしくは2種類以上併せて使用することができる。導電性、入手の容易さ、およびコスト面から、カーボンブラックの使用が好ましい。
カーボンブラックとしては、気体もしくは液体の原料を反応炉中で連続的に熱分解し製造するファーネスブラック、特にエチレン重油を原料としたケッチェンブラック、原料ガスを燃焼させて、その炎をチャンネル鋼底面にあて急冷し析出させたチャンネルブラック、ガスを原料とし燃焼と熱分解を周期的に繰り返すことにより得られるサーマルブラック、特にアセチレンガスを原料とするアセチレンブラックなどの各種のものを単独で、もしくは2種類以上併せて使用することができる。また、通常行われている酸化処理されたカーボンブラックや、中空カーボン等も使用できる。
カーボンブラックの酸化処理は、カーボンブラックを空気中で高温処理したり、硝酸や二酸化窒素、オゾン等で二次的に処理することより、例えばフェノール基、キノン基、カルボキシル基、カルボニル基の様な酸素含有極性官能基をカーボンブラック表面に直接導入(共有結合)する処理であり、カーボンブラックの分散性を向上させるために一般的に行われている。しかしながら、官能基の導入量が多くなる程カーボンの導電性が低下することが一般的であるため、酸化処理をしていないカーボンブラックの使用が好ましい。
用いるカーボンブラックの比表面積は、値が大きいほど、カーボンブラック粒子どうしの接触点が増えるため、電極の内部抵抗を下げるのに有利となる。具体的には、窒素の吸着量から求められる比表面積(BET)で、20m2/g以上、1500m2/g以下が好ましく、より好ましくは50m2/g以上、1500m2/g以下、更に好ましくは100m2/g以上、1500m2/g以下のものを使用することが望ましい。
また、用いるカーボンブラックの粒径は、一次粒子径で0.005〜1μmが好ましく、特に、0.01〜0.2μmが好ましい。ただし、ここでいう一次粒子径とは、電子顕微鏡などで測定された粒子径を平均したものである。
炭素材料(A)のコーティング用組成物中の分散粒径は、0.03μm以上、5μm以下に微細化することが望ましい。
ここでいう分散粒径とは、体積粒度分布において、粒子径の細かいものからその粒子の体積割合を積算していったときに、50%となるところの粒子径(D50)であり、一般的な粒度分布計、例えば、動的光散乱方式の粒度分布計(日機装社製「マイクロトラックUPA」)等で測定される。
市販のカーボンブラックとしては、例えば、トーカブラック#4300、#4400、#4500、#5500等(東海カーボン社製、ファーネスブラック)、プリンテックスL等(デグサ社製、ファーネスブラック)、Raven7000、5750、5250、5000ULTRAIII、5000ULTRA等、Conductex SC ULTRA、Conductex 975 ULTRA等、PUER BLACK100、115、205等(コロンビヤン社製、ファーネスブラック)、#2350、#2400B、#2600B、#30050B、#3030B、#3230B、#3350B、#3400B、#5400B等(三菱化学社製、ファーネスブラック)、MONARCH1400、1300、900、VulcanXC−72R、BlackPearls2000等(キャボット社製、ファーネスブラック)、Ensaco250G、Ensaco260G、Ensaco350G、SuperP−Li(TIMCAL社製)、ケッチェンブラックEC−300J、EC−600JD(アクゾ社製)、デンカブラック、デンカブラックHS−100、FX−35(電気化学工業社製、アセチレンブラック)等、グラファイトとしては、例えば人造黒鉛や燐片状黒鉛、塊状黒鉛、土状黒鉛などの天然黒鉛が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、2種以上を組み合わせて用いても良い。
導電性炭素繊維としては石油由来の原料から焼成して得られるものが良いが、植物由来の原料からも焼成して得られるものも用いることができる。例えば石油由来の原料で製造される昭和電工社製のVGCFなどを挙げることができる。
次に、水溶性樹脂バインダー(B)について説明する。
本発明で使用される水溶性樹脂バインダー(B)とは、25℃の水99g中に水溶性樹脂バインダー(B)1g混合して撹拌し、25℃で24時間放置した後、分離・析出せずに水中でバインダーが完全に溶解可能なものである。
水溶性樹脂バインダー(B)としては、上述の通り水溶性を示す樹脂であれば特に限定されるものではないが、例えば、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアリルアミン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、ホルムアルデヒド樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂、カルボキシメチルセルロース等の多糖類の樹脂を含む高分子化合物が挙げられる。また、水溶性であれば、これらの樹脂の変性物、混合物、又は共重合体でも良い。これらバインダーは、1種または複数を組み合わせて使用することも出来る。
水溶性樹脂バインダー(B)の分子量は特に限定されないが、好ましくは重量平均分子量が5,000〜2,000,000である。重量平均分子量(Mw)とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)におけるポリスチレン換算分子量を示す。
次に、水分散性樹脂微粒子バインダー(C)について説明する。
本発明で使用される水分散性樹脂微粒子バインダー(C)とは、一般的に水性エマルションとも呼ばれるものであり、バインダー樹脂が水中で溶解せずに、微粒子の状態で分散されているものである。
使用するエマルションは特に限定されないが、(メタ)アクリル系エマルション、ニトリル系エマルション、ウレタン系エマルション、オレフィン系エマルション、ジエン系エマルション(SBRなど)、フッ素系エマルション(PVDFやPTFEなど)等が挙げられる。水溶性高分子と異なり、エマルションは粒子間の結着性と柔軟性(膜の可とう性)に優れるものが好ましい。
(エマルションの粒子構造)
また、水分散性樹脂微粒子バインダー(C)の粒子構造は、多層構造、いわゆるコアシェル粒子にすることもできる。例えば、コア部、またはシェル部に官能基を有する単量体を主に重合させた樹脂を局在化させたり、コアとシェルによってTgや組成に差を設けたりすることにより、硬化性、乾燥性、成膜性、バインダーの機械強度を向上させることができる。
(エマルションの粒子径)
水分散性樹脂微粒子バインダー(C)の平均粒子径は、結着性や粒子の安定性の点から、10〜500nmであることが好ましく、10〜300nmであることがより好ましい。また、1μmを超えるような粗大粒子が多く含有されるようになると粒子の安定性が損なわれるので、1μmを超える粗大粒子は多くとも5%以下であることが好ましい。なお、本発明における平均粒子径とは、体積平均粒子径のことを表し、動的光散乱法により測定された値である。
次に、(メタ)アクリル系エマルションについて説明する。(メタ)アクリル系エマルションとは、エチレン性不飽和単量体を乳化重合して得られたものであり、(メタ)アクリロイル基を有する単量体を10質量部以上含有する乳化重合物であり、好ましくは30質量部以上、更に好ましくは50質量部以上含有されているとよい。アクリロイル基を有する単量体は反応性に優れるため、樹脂微粒子を比較的容易に作製することができる。
(メタ)アクリル系エマルションを使用する場合、以下で説明する架橋型樹脂微粒子を含むことが好ましい。架橋型樹脂微粒子とは、内部架橋構造(三次元架橋構造)を有する樹脂微粒子を示す。架橋型樹脂微粒子が架橋構造をとることにより耐電解液溶出性を確保することができ、粒子内部の架橋を調整することでその効果を高めることができる。また、架橋型樹脂微粒子が特定の官能基を含有することにより集電板との密着性に寄与することができる。さらには架橋構造や官能基の量を調整することで、燃料電池の耐久性に優れたコーティング用組成物を得ることができる。
また、架橋には粒子同士の架橋(粒子間架橋)を併用することもできるが、この場合、多くは架橋剤をあとで添加するため、コート層作製時のバラツキや、燃料電池の高温、高湿、酸性条件下で架橋剤成分の漏出が生じる場合もある。このため、架橋剤は耐水性、耐酸性を損なわない程度に用いるのがよい。
本発明で好適に使用される(メタ)アクリル系エマルション中の架橋型樹脂微粒子は、エチレン性不飽和単量体を水中にて界面活性剤の存在下、ラジカル重合開始剤によって乳化重合して得られる樹脂微粒子である。本発明で好適に使用される(メタ)アクリル系エマルションは、下記単量体群(C1)および(C2)を下記割合で含むエチレン性不飽和単量体を乳化重合することにより得ることが好ましい。
(C1)単官能または多官能アルコキシシリル基を有するエチレン性不飽和単量体(c1)、および1分子中に2つ以上のエチレン性不飽和基を有する単量体(c2)からなる群より選ばれる少なくとも1つの単量体:0.1〜5質量%
(C2)前記単量体(c1)〜(c2)以外のエチレン性不飽和単量体(c3):95〜99.9質量%
(但し、前記(c1)〜(c3)の合計を100質量%とする)
本発明で好適に使用される(メタ)アクリル系エマルション中の架橋型樹脂微粒子を構成するエチレン性不飽和単量体のうち(c1)、(c3)は、特に断らない限り、1分子中に1つのエチレン性不飽和基を有する単量体のことを示す。
<単量体群(C1)について>
単量体群(C1)に含まれる単量体の有する官能基(アルコキシシリル基、エチレン性不飽和基)は、自己架橋型反応性官能基であり、主に粒子合成中における粒子内部架橋を形成する効果がある。粒子の内部架橋を十分に行うことで、耐電解液性を向上させることができる。したがって、単量体群(C1)に含まれる単量体を使用することで架橋型樹脂微粒子とすることができる。また、粒子架橋を十分に行うことで、耐水性、耐酸性を向上させることができる。
1分子中に1つのエチレン性不飽和基と、アルコキシシリル基とを有する単量体(c1)としては、例えば、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリブトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシメチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシランなどがあげられる。
1分子中に2つ以上のエチレン性不飽和基を有する単量体(c2)としては、例えば、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸1−メチルアリル、(メタ)アクリル酸2−メチルアリル、(メタ)アクリル酸1−ブテニル、(メタ)アクリル酸2−ブテニル、(メタ)アクリル酸3−ブテニル、(メタ)アクリル酸1,3−メチル−3−ブテニル、(メタ)アクリル酸2−クロルアリル、(メタ)アクリル酸3−クロルアリル、(メタ)アクリル酸o−アリルフェニル、(メタ)アクリル酸2−(アリルオキシ)エチル、(メタ)アクリル酸アリルラクチル、(メタ)アクリル酸シトロネリル、(メタ)アクリル酸ゲラニル、(メタ)アクリル酸ロジニル、(メタ)アクリル酸シンナミル、ジアリルマレエート、ジアリルイタコン酸、(メタ)アクリル酸ビニル、クロトン酸ビニル、オレイン酸ビニル,リノレン酸ビニル、(メタ)アクリル酸2−(2’−ビニロキシエトキシ)エチルなどのエチレン性不飽和基含有(メタ)アクリル酸エステル類;ジ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸トリエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸テトラエチレングリコール、トリ(メタ)アクリル酸トリメチロールプロパン、トリ(メタ)アクリル酸ペンタエリスリトール、ジアクリル酸1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタン、トリアクリル酸1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタン、1,1,1−トリスヒドロキシメチルプロパントリアクリル酸などの多官能(メタ)アクリル酸エステル類;ジビニルベンゼン、アジピン酸ジビニルなどのジビニル類;イソフタル酸ジアリル、フタル酸ジアリル、マレイン酸ジアリルなどのジアリル類などがあげられる。
単量体(c1)または単量体(c2)中のアルコキシシリル基またはエチレン性不飽和基は、主に重合中にそれぞれが自己縮合、または重合して粒子に架橋構造を導入することを目的としているが、その一部が重合後にも粒子内部や表面に残存していてもよい。残存したアルコキシシリル基、またはエチレン性不飽和基は、バインダー組成物の粒子間架橋に寄与する。特にアルコキシシリル基は集電板への密着性向上に寄与する効果があるため好ましい。
本発明では、単量体群(C1)に含まれる単量体は、乳化重合に使用するエチレン性不飽和単量体全体(合計100質量%)中に0.1〜5質量%使用されることを特徴とする。好ましくは0.5〜3質量%である。
<単量体群(C2)について>
本発明で好適に使用される(メタ)アクリル系エマルション中の架橋型樹脂微粒子は、上述した1分子中に1つのエチレン性不飽和基と、アルコキシシリル基とを有する単量体(c1)、および1分子中に2つ以上のエチレン性不飽和基を有する単量体(c2)に加えて、単量体群(C2)として、単量体(c1)、(c2)以外の、エチレン性不飽和基を有する単量体(c3)を同時に乳化重合することで得ることができる。
この単量体(c3)としては、単量体(c1)、(c2)以外であって、エチレン性不飽和基を有する単量体であれば特に限定されないが、例えば、
1分子中に1つのエチレン性不飽和基と、単官能または多官能エポキシ基とを有する単量体(c4)、1分子中に1つのエチレン性不飽和基と、単官能または多官能アミド基とを有する単量体(c5)、および1分子中に1つのエチレン性不飽和基と、単官能または多官能水酸基とを有する単量体(c6)からなる群より選ばれる少なくとも1つの単量体、および、単量体(c1)、(c2)、(c4)〜(c6)以外の、エチレン性不飽和基を有する単量体(c7)を使用することができる。
単量体(c4)〜(c6)を使用することにより、エポキシ基、アミド基、または水酸基を架橋型樹脂微粒子の粒子内や表面に残存させることができ、これにより集電板の密着性などの物性を向上させることができる。単量体(c4)〜(c6)は、粒子合成後でもその官能基が粒子内部や表面に残存しやすく、少量でも集電板への密着性効果が大きい。また、その一部が架橋反応に使用されてもよく、これらの官能基の架橋度合いを調整することで、耐水性、耐酸性と密着性のバランスをとることができる。
1分子中に1つのエチレン性不飽和基と、単官能または多官能エポキシ基とを有する単量体(c4)としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレートなどがあげられる。
1分子中に1つのエチレン性不飽和基と、単官能または多官能アミド基とを有する単量体(c5)としては、例えば、(メタ)アクリルアミドなどの第一アミド基含有エチレン性不飽和単量体;N−メチロールアクリルアミド、N,N−ジ(メチロール)アクリルアミド、N−メチロール−N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミドなどのアルキロール(メタ)アクリルアミド類;N−メトキシメチル−(メタ)アクリルアミド、N−エトキシメチル−(メタ)アクリルアミド、N−プロポキシメチル−(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル−(メタ)アクリルアミド、N−ペントキシメチル−(メタ)アクリルアミドなどのモノアルコキシ(メタ)アクリルアミド類;N,N−ジ(メトキシメチル)アクリルアミド、N−エトキシメチル−N−メトキシメチルメタアクリルアミド、N,N−ジ(エトキシメチル)アクリルアミド、N−エトキシメチル−N−プロポキシメチルメタアクリルアミド、N,N−ジ(プロポキシメチル)アクリルアミド、N−ブトキシメチル−N−(プロポキシメチル)メタアクリルアミド、N,N−ジ(ブトキシメチル)アクリルアミド、N−ブトキシメチル−N−(メトキシメチル)メタアクリルアミド、N,N−ジ(ペントキシメチル)アクリルアミド、N−メトキシメチル−N−(ペントキシメチル)メタアクリルアミドなどのジアルコキシ(メタ)アクリルアミド類;N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピルアクリルアミドなどのジアルキルアミノ(メタ)アクリルアミド類;N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミドなどのジアルキル(メタ)アクリルアミド類;ダイアセトン(メタ)アクリルアミドなどのケト基含有(メタ)アクリルアミド類などがあげられる。
1分子中に1つのエチレン性不飽和基と、単官能または多官能水酸基とを有する単量体(c6)としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタル酸、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシビニルベンゼン、1−エチニル−1−シクロヘキサノール、アリルアルコールなどがあげられる。
単量体(c4)〜(c6)に含まれる単量体の官能基は、その一部が粒子重合中に反応し、粒子内架橋に使われても構わない。本発明では、単量体(c4)〜(c6)に含まれる単量体は、乳化重合に使用するエチレン性不飽和単量体全体(合計100質量%)中に0.1〜20質量%使用されることが好ましく、より好ましくは1〜15質量%であり、特に好ましくは2〜10質量%である。
単量体(c7)としては、単量体(c1)、(c2)、(c4)〜(c6)以外であって、エチレン性不飽和基を有する単量体であれば特に限定されないが、例えば、1分子中に1つのエチレン性不飽和基と、炭素数8〜18のアルキル基とを有する単量体(c8)、1分子中に1つのエチレン性不飽和基と、環状構造とを有する単量体(c9)などがあげられる。単量体(c7)として、該単量体(c8)および/または単量体(c9)を乳化重合に使用する場合には(単量体(c7)としてそれら以外の単量体を含んでいてもよい)、該単量体(c8)および(c9)が、エチレン性不飽和基を有する単量体全体((c1)、(c2)、(c4)〜(c6)および(c7))中に合計で30〜95質量%含まれることが好ましい。単量体(c8)や単量体(c9)を使用することで粒子合成時の粒子安定性や耐水性、耐酸性に優れるため好ましい。
1分子中に1つのエチレン性不飽和基と、炭素数8〜18のアルキル基とを有する単量体(c8)としては、例えば、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ミリスチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートなどがあげられる。
1分子中に1つのエチレン性不飽和基と、環状構造とを有する単量体(c9)としては、脂環式エチレン性不飽和単量体や芳香族エチレン性不飽和単量体などがあげられる。脂環式エチレン性不飽和単量体としては、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレートなどがあげられ、芳香族エチレン性不飽和単量体としては、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、クロロスチレン、アリルベンゼン、エチニルベンゼンなどがあげられる。
上記単量体(c8)、単量体(c9)以外の単量体(c7)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレートなどのアルキル基含有エチレン性不飽和単量体;(メタ)アクリロニトリルなどのニトリル基含有エチレン性不飽和単量体;パーフルオロメチルメチル(メタ)アクリレート、パーフルオロエチルメチル(メタ)アクリレート、2−パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、2−パーフルオロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、2−パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート、2−パーフルオロイソノニルエチル(メタ)アクリレート、2−パーフルオロノニルエチル(メタ)アクリレート、2−パーフルオロデシルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロプロピルプロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルプロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルアミル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルウンデシル(メタ)アクリレートなどの炭素数1〜20のパーフルオロアルキル基を有するパーフルオロアルキル基含有エチレン性不飽和単量体;パーフルオロブチルエチレン、パーフルオロヘキシルエチレン、パーフルオロオクチルエチレン、パーフルオロデシルエチレンなどのパーフルオロアルキル、アルキレン類などのパーフルオロアルキル基含有エチレン性不飽和化合物;ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、プロポキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、n−ブトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、n−ペンタキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、プロポキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、n−ブトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、n−ペンタキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリテトラメチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、ヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレートなどのポリエーテル鎖を有するエチレン性不飽和化合物;ラクトン変性(メタ)アクリレートなどのポリエステル鎖を有するエチレン性不飽和化合物;(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルメチルクロライド塩、トリメチル−3−(1−(メタ)アクリルアミド−1,1−ジメチルプロピル)アンモニウムクロライド、トリメチル−3−(1−(メタ)アクリルアミドプロピル)アンモニウムクロライド、およびトリメチル−3−(1−(メタ)アクリルアミド−1,1−ジメチルエチル)アンモニウムクロライドなどの四級アンモニウム塩基含有エチレン性不飽和化合物;酢酸ビニル、酪酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ヘキサン酸ビニル、カプリル酸ビニル、ラウリル酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニルなどの脂肪酸ビニル系化合物;ブチルビニルエーテル、エチルビニルエーテルなどのビニルエーテル系エチレン性不飽和単量体;1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセンなどのα−オレフィン系エチレン性不飽和単量体;酢酸アリル、シアン化アリルなどのアリル単量体;シアン化ビニル、ビニルシクロヘキサン、ビニルメチルケトンなどのビニル単量体;アセチレン、エチニルトルエンなどのエチニル単量体などがあげられる。
また、上記単量体(c8)、単量体(c9)以外の単量体(c7)としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、または、これらのアルキルもしくはアルケニルモノエステル、フタル酸β−(メタ)アクリロキシエチルモノエステル、イソフタル酸β−(メタ)アクリロキシエチルモノエステル、テレフタル酸β−(メタ)アクリロキシエチルモノエステル、コハク酸β−(メタ)アクリロキシエチルモノエステル、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、けい皮酸などのカルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体;ターシャリーブチル(メタ)アクリレートなどのターシャリーブチル基含有エチレン性不飽和単量体;ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸などのスルホ基含有エチレン性不飽和単量体;(2−ヒドロキシエチル)メタクリレートアッシドホスフェートなどのリン酸基含有エチレン性不飽和単量体;ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、アクロレイン、N−ビニルホルムアミド、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシプロピル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシブチル(メタ)アクリレートなどのケト基含有エチレン性不飽和単量体(1分子中に1つのエチレン性不飽和基と、ケト基とを有する単量体)などがあげられる。
単量体(c7)として、ケト基含有エチレン性不飽和単量体を使用する場合、架橋剤としてケト基と反応しうるヒドラジド基を2個以上有する多官能ヒドラジド化合物をバインダー組成物に混合すると、ケト基とヒドラジド基との架橋により強靱な塗膜を得ることができる。このことにより優れた耐水性、耐酸性、結着性を有する。さらに、高温環境下における耐性と可とう性とを両立することができるため、長期耐久性に優れた燃料電池を得ることができる。
また、単量体(c7)の中でもカルボキシ基、ターシャリーブチル基(熱によりターシャリーブタノールが脱離してカルボキシ基になる。)、スルホ基、およびリン酸基を有するエチレン性不飽和単量体を共重合して得られた樹脂微粒子は、重合後にも粒子内や表面に前記官能基が残存し、集電板の密着性などの物性を向上させる効果があると同時に、合成時の凝集を防いだり、合成後の粒子安定性を保持したりする場合あるため好ましく使用することができる。
カルボキシ基、ターシャリーブチル基、スルホ基、およびリン酸基は、その一部が重合中に反応し、粒子内架橋に使われても構わない。カルボキシ基、ターシャリーブチル基、スルホ基、およびリン酸基を含む単量体を用いる場合には、乳化重合に使用するエチレン性不飽和単量体全体(合計100質量%)中に0.1〜10質量%含まれることが好ましく、さらには1〜5質量%含まれることがより好ましい。さらにこれらの官能基は、乾燥時に反応して粒子内や粒子間の架橋に使われても構わない。
例えばカルボキシ基は、重合中および乾燥時にエポキシ基と反応して樹脂微粒子に架橋構造を導入できる。同様に、ターシャリーブチル基も一定温度以上の熱が加わるとターシャリーブチルアルコールが生成するとともにカルボキシ基が形成されるため、前記同様エポキシ基と反応することができる。
これらの単量体(c7)は、粒子の重合安定性やガラス転移温度、さらには成膜性や塗膜物性を調整するために、上記にあげたような単量体を2種以上併用して用いることができる。また、例えば(メタ)アクリロニトリルなどを併用することでゴム弾性が発現する効果がある。
<本発明で好適に使用される(メタ)アクリル系エマルション中の架橋型樹脂微粒子の製造方法>
本発明で好適に使用される(メタ)アクリル系エマルション中の架橋型樹脂微粒子は、従来既知の乳化重合方法により合成される。
<乳化重合で用いられる乳化剤>
本発明において乳化重合の際に用いられる乳化剤としては、エチレン性不飽和基を有する反応性乳化剤やエチレン性不飽和基を有しない非反応性乳化剤など、従来公知のものを任意に使用することができる。
エチレン性不飽和基を有する反応性乳化剤はさらに大別して、アニオン系、非イオン系のノニオン系のものが例示できる。特にエチレン性不飽和基を有するアニオン系反応性乳化剤若しくはノニオン性反応性乳化剤を用いると、共重合体の分散粒子径が微細となるとともに粒度分布が狭くなるため、コート層付集電板用バインダーとして使用した際に耐水性、耐酸性を向上することができ好ましい。このエチレン性不飽和基を有するアニオン系反応性乳化剤若しくはノニオン性反応性乳化剤は、1種を単独で使用しても、複数種を混合して用いてもよい。
エチレン性不飽和基を有するアニオン系反応性乳化剤の一例として、以下にその具体例を例示するが、本願発明において使用可能とする乳化剤は、以下に記載するもののみに限定されるものではない。
乳化剤としては、アルキルエーテル系(市販品としては、例えば、第一工業製薬株式会社製アクアロンKH−05、KH−10、KH−20、株式会社ADEKA製アデカリアソープSR−10N、SR−20N、花王株式会社製ラテムルPD−104など);スルフォコハク酸エステル系(市販品としては、例えば、花王株式会社製ラテムルS−120、S−120A、S−180P、S−180A、三洋化成株式会社製エレミノールJS−2など);アルキルフェニルエーテル系もしくはアルキルフェニルエステル系(市販品としては、例えば、第一工業製薬株式会社製アクアロンH−2855A、H−3855B、H−3855C、H−3856、HS−05、HS−10、HS−20、HS−30、株式会社ADEKA製アデカリアソープSDX−222、SDX−223、SDX−232、SDX−233、SDX−259、SE−10N、SE−20N、など);(メタ)アクリレート硫酸エステル系(市販品としては、例えば、日本乳化剤株式会社製アントックスMS−60、MS−2N、三洋化成工業株式会社製エレミノールRS−30など);リン酸エステル系(市販品としては、例えば、第一工業製薬株式会社製H−3330PL、株式会社ADEKA製アデカリアソープPP−70など)などがあげられる。
本発明で用いることのできるノニオン系反応性乳化剤としては、例えばアルキルエーテル系(市販品としては、例えば、株式会社ADEKA製アデカリアソープER−10、ER−20、ER−30、ER−40、花王株式会社製ラテムルPD−420、PD−430、PD−450など);アルキルフェニルエーテル系もしくはアルキルフェニルエステル系(市販品としては、例えば、第一工業製薬株式会社製アクアロンRN−10、RN−20、RN−30、RN−50、株式会社ADEKA製アデカリアソープNE−10、NE−20、NE−30、NE−40など);(メタ)アクリレート硫酸エステル系(市販品としては、例えば、日本乳化剤株式会社製RMA−564、RMA−568、RMA−1114など)などがあげられる。
本発明で好適に使用される(メタ)アクリル系エマルション中の架橋型樹脂微粒子を乳化重合により得るに際しては、前記したエチレン性不飽和基を有する反応性乳化剤とともに、必要に応じエチレン性不飽和基を有しない非反応性乳化剤を併用することができる。非反応性乳化剤は、非反応性アニオン系乳化剤と非反応性ノニオン系乳化剤とに大別することができる。
非反応性ノニオン系乳化剤の例としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル類;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類;ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリオレエートなどのソルビタン高級脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレートなどのポリオキシエチレンソルビタン高級脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノステアレートなどのポリオキシエチレン高級脂肪酸エステル類;オレイン酸モノグリセライド、ステアリン酸モノグリセライドなどのグリセリン高級脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン・ブロックコポリマー、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテルなどを例示することができる。
また、非反応性アニオン系乳化剤の例としては、オレイン酸ナトリウムなどの高級脂肪酸塩類;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルアリールスルホン酸塩類;ラウリル硫酸ナトリウムなどのアルキル硫酸エステル塩類;ポリエキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウムなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類;ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸ナトリウムなどのポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル硫酸エステル塩類;モノオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルスルホコハク酸ナトリウムなどのアルキルスルホコハク酸エステル塩およびその誘導体類;ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル硫酸エステル塩類などを例示することができる。
本発明において用いられる乳化剤の使用量は、必ずしも限定されるものではなく、架橋型樹脂微粒子が最終的なバインダーとして使用される際に求められる物性にしたがって適宜選択できる。例えば、エチレン性不飽和単量体の合計100質量部に対して、乳化剤は通常0.1〜30質量部であることが好ましく、0.3〜20質量部であることがより好ましく、0.5〜10質量部の範囲内であることがさらに好ましい。
本発明で好適に使用される(メタ)アクリル系エマルション中の架橋型樹脂微粒子の乳化重合に際しては、水溶性保護コロイドを併用することもできる。水溶性保護コロイドとしては、例えば、部分ケン化ポリビニルアルコール、完全ケン化ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコールなどのポリビニルアルコール類;ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース塩などのセルロース誘導体;グアガムなどの天然多糖類などがあげられ、これらは、単独でも複数種併用の態様でも利用できる。水溶性保護コロイドの使用量としては、エチレン性不飽和単量体の合計100質量部当り0.1〜5質量部であり、さらに好ましくは0.5〜2質量部である。
<乳化重合で用いられる水性媒体>
本発明で好適に使用される(メタ)アクリル系エマルション中の架橋型樹脂微粒子の乳化重合に際して用いられる水性媒体としては、水があげられ、親水性の有機溶剤も本発明の目的を損なわない範囲で使用することができる。
<乳化重合で用いられる重合開始剤>
本発明で好適に使用される(メタ)アクリル系エマルション中の架橋型樹脂微粒子を得るに際して用いられる重合開始剤としては、ラジカル重合を開始する能力を有するものであれば特に制限はなく、公知の油溶性重合開始剤や水溶性重合開始剤を使用することができる。
油溶性重合開始剤としては特に限定されず、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシ(2−エチルヘキサノエート)、tert−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、ジ−tert−ブチルパーオキサイドなどの有機過酸化物;2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、1,1’−アゾビス−シクロヘキサン−1−カルボニトリルなどのアゾビス化合物などをあげることができる。これらは1種類または2種類以上を混合して使用することができる。これら重合開始剤は、エチレン性不飽和単量体100質量部に対して、0.1〜10.0質量部の量を用いるのが好ましい。
本発明においては水溶性重合開始剤を使用することが好ましく、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過酸化水素、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジハイドロクロライドなど、従来既知のものを好適に使用することができる。また、乳化重合を行うに際して、所望により重合開始剤とともに還元剤を併用することができる。これにより、乳化重合速度を促進したり、低温において乳化重合を行ったりすることが容易になる。このような還元剤としては、例えば、アスコルビン酸、エルソルビン酸、酒石酸、クエン酸、ブドウ糖、ホルムアルデヒドスルホキシラートなどの金属塩などの還元性有機化合物、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウムなどの還元性無機化合物、塩化第一鉄、ロンガリット、二酸化チオ尿素などを例示できる。これら還元剤は、全エチレン性不飽和単量体100質量部に対して、0.05〜5.0質量部の量を用いるのが好ましい。
<乳化重合の条件>
なお、前記した重合開始剤によらずとも、光化学反応や、放射線照射などによっても重合を行うことができる。重合温度は各重合開始剤の重合開始温度以上とする。例えば、過酸化物系重合開始剤では、通常70℃程度とすればよい。重合時間は特に制限されないが、通常2〜24時間である。
<反応に用いられるその他の材料>
さらに必要に応じて、緩衝剤として、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、重炭酸ナトリウムなどが、また、連鎖移動剤としてのオクチルメルカプタン、チオグリコール酸2−エチルヘキシル、チオグリコール酸オクチル、ステアリルメルカプタン、ラウリルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタンなどのメルカプタン類が適量使用できる。
本発明で好適に使用される(メタ)アクリル系エマルション中の架橋型樹脂微粒子の重合にカルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体などの酸性官能基を有する単量体を使用した場合、重合前や重合後に塩基性化合物で中和することができる。中和する際、アンモニアもしくはトリメチルアミン、トリエチルアミン、ブチルアミンなどのアルキルアミン類;2−ジメチルアミノエタノール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、アミノメチルプロパノールなどのアルコールアミン類;モルホリンなどの塩基で中和することができる。ただし、乾燥性に効果が高いのは揮発性の高い塩基であり、好ましい塩基はアミノメチルプロパノール、アンモニアである。
<本発明で好適に使用される(メタ)アクリル系エマルション中の架橋型樹脂微粒子の特性>
(ガラス転移温度)
また、本発明で好適に使用される(メタ)アクリル系エマルション中の架橋型樹脂微粒子のガラス転移温度(以下、Tgともいう)は、−50〜70℃が好ましく、−30〜30℃がさらに好ましい。なお、ガラス転移温度は、DSC(示差走査熱量計)を用いて求めた値である。
(粒子構造)
また、本発明で好適に使用される(メタ)アクリル系エマルション中の架橋型樹脂微粒子の粒子構造を多層構造、いわゆるコアシェル粒子にすることもできる。例えば、コア部、またはシェル部に官能基を有する単量体を主に重合させた樹脂を局在化させたり、コアとシェルによってTgや組成に差を設けたりすることにより、硬化性、乾燥性、成膜性、バインダーの機械強度を向上させることができる。
(粒子径)
本発明で好適に使用される(メタ)アクリル系エマルション中の架橋型樹脂微粒子の平均粒子径は、炭素材料の結着性や粒子の安定性の点から、10〜500nmであることが好ましく、30〜300nmであることがより好ましい。なお、本発明における平均粒子径とは、体積平均粒子径のことを表し、動的光散乱法により測定できる。
<重合した樹脂微粒子に添加する未架橋の化合物(E)>
本発明で好適に使用される(メタ)アクリル系エマルションは、架橋型樹脂微粒子に加えて、さらに、未架橋のエポキシ基含有化合物、未架橋のアミド基含有化合物、未架橋の水酸基含有化合物、および未架橋のオキサゾリン基含有化合物からなる群より選ばれる少なくとも1つの未架橋の化合物(E)[以下、化合物(E)と表記する場合がある]とを含むことが好ましい。化合物(E)は、水性液状媒体に溶解することがなく、分散する化合物である。
化合物(E)である「未架橋の官能基含有化合物」とは、単量体群(C1)に含まれる単量体のように本発明で好適に使用される(メタ)アクリル系エマルションの内部架橋構造(三次元架橋構造)を形成する化合物とは異なり、樹脂微粒子が乳化重合(ポリマー形成)された後に添加される(樹脂微粒子の内部架橋形成に関与しない)化合物のことのことをいう。すなわち、「未架橋」とは、本発明で好適に使用される(メタ)アクリル系エマルションの内部架橋構造(三次元架橋構造)の形成に関与していないことを意味する。
本発明で好適に使用される(メタ)アクリル系エマルションが架橋構造をとることにより耐電解液性が確保され、また、化合物(E)を使用することで、化合物(E)中のエポキシ基、アミド基、水酸基、およびオキサゾリン基から選ばれる少なくとも1つの官能基が、集電板との密着性に寄与することができる。さらには架橋構造や官能基の量を調整することで、コート層付集電板の耐久性に優れたコーティング用組成物を得ることができる。
なお、本発明で好適に使用される(メタ)アクリル系エマルション中の架橋型樹脂微粒子は、粒子内部で架橋していることが必要である。粒子内部の架橋を適度に調整することによって、耐水性、耐酸性を確保することができる。さらに、官能基含有架橋型樹脂微粒子に未架橋のエポキシ基含有化合物、未架橋のアミド基含有化合物、未架橋の水酸基含有化合物、および未架橋のオキサゾリン基含有化合物からなる群より選ばれる少なくとも1つの未架橋の化合物(E)を添加することで、エポキシ基、アミド基、水酸基またはオキサゾリン基が集電板に作用し、密着性を効果的に向上させることができる。化合物(E)に含まれる上記官能基は、長期保存時や塗膜作製時の熱によっても安定であるため、少量の使用でも集電板への密着性効果が大きい。さらには保存安定性にも優れている。化合物(E)は、バインダーの可とう性や耐水性、耐酸性を調整する目的で架橋型樹脂微粒子中の官能基と反応してもよいが、官能基含有架橋型樹脂微粒子中の官能基との反応のために化合物(E)中の官能基が使われすぎると、集電板と相互作用し得る官能基が少なくなってしまう。このため、本発明で好適に使用される(メタ)アクリル系エマルション中の架橋型樹脂微粒子と化合物(E)との反応は、集電板への密着性を損なわない程度である必要がある。また、化合物(E)に含まれる上記官能基の一部が架橋反応に用いられる場合[化合物(E)が多官能化合物の場合]には、これらの官能基の架橋度合いを調整することで、耐水性、耐酸性と密着性のバランスをとることができる。
<未架橋のエポキシ基含有化合物>
未架橋のエポキシ基含有化合物としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレートなどのエポキシ基含有エチレン性不飽和単量体;前記エポキシ基含有エチレン性不飽和単量体を含むエチレン性不飽和単量体を重合して得られるラジカル重合系樹脂;エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、1,3−ビス(N,N’−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサンなどの多官能エポキシ化合物;ビスフェノールA−エピクロロヒドリン型エポキシ樹脂、ビスフェノールF−エピクロロヒドリン型エポキシ樹脂などのエポキシ系樹脂などがあげられる。
エポキシ基含有化合物の中でも特にビスフェノールA−エピクロロヒドリン型エポキシ樹脂、ビスフェノールF−エピクロロヒドリン型エポキシ樹脂などのエポキシ系樹脂や、エポキシ基含有エチレン性不飽和単量体を含むエチレン性不飽和単量体を重合して得られるラジカル重合系樹脂が好ましい。エポキシ系樹脂は、ビスフェノール骨格を有することで耐水性、耐酸性を向上させ、また、骨格に含まれる水酸基により集電板密着性を向上させるという相乗効果が期待できる。また、エポキシ基含有エチレン性不飽和単量体を含むエチレン性不飽和単量体を重合して得られるラジカル重合系樹脂は、樹脂骨格内により多くのエポキシ基を有することにより集電板密着性を向上させ、また、樹脂であることにより、単量体に比べて耐水性、耐酸性を向上させる効果が期待できる。
<未架橋のアミド基含有化合物>
未架橋のアミド基含有化合物としては、例えば、(メタ)アクリルアミドなどの第一アミド基含有化合物;N−メチロールアクリルアミド、N,N−ジ(メチロール)アクリルアミド、N−メチロール−N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミドなどのアルキロール(メタ)アクリルアミド系化合物;N−メトキシメチル−(メタ)アクリルアミド、N−エトキシメチル−(メタ)アクリルアミド、N−プロポキシメチル−(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル−(メタ)アクリルアミド、N−ペントキシメチル−(メタ)アクリルアミドなどのモノアルコキシ(メタ)アクリルアミド系化合物;N,N−ジ(メトキシメチル)アクリルアミド、N−エトキシメチル−N−メトキシメチルメタアクリルアミド、N,N−ジ(エトキシメチル)アクリルアミド、N−エトキシメチル−N−プロポキシメチルメタアクリルアミド、N,N−ジ(プロポキシメチル)アクリルアミド、N−ブトキシメチル−N−(プロポキシメチル)メタアクリルアミド、N,N−ジ(ブトキシメチル)アクリルアミド、N−ブトキシメチル−N−(メトキシメチル)メタアクリルアミド、N,N−ジ(ペントキシメチル)アクリルアミド、N−メトキシメチル−N−(ペントキシメチル)メタアクリルアミドなどのジアルコキシ(メタ)アクリルアミド系化合物;N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピルアクリルアミドなどのジアルキルアミノ(メタ)アクリルアミド系化合物;N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミドなどのジアルキル(メタ)アクリルアミド系化合物;ダイアセトン(メタ)アクリルアミドなどのケト基含有(メタ)アクリルアミド系化合物など、以上のアミド基含有エチレン性不飽和単量体;前記アミド基含有エチレン性不飽和単量体を含むエチレン性不飽和単量体を重合して得られるラジカル重合系樹脂などがあげられる。
アミド基含有化合物の中でも、特にアクリルアミドなどのアミド基含有エチレン性不飽和単量体を含むエチレン性不飽和単量体を重合して得られるラジカル重合系樹脂が好ましい。樹脂骨格内に、より多くのアミド基を有することにより集電板密着性を向上させ、また、樹脂であることにより、単量体に比べて耐水性、耐酸性を向上させる効果が期待できる。
<未架橋の水酸基含有化合物>
未架橋の水酸基含有化合物としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート4−ヒドロキシビニルベンゼン、1−エチニル−1−シクロヘキサノール、アリルアルコールなどの水酸基含有エチレン性不飽和単量体;前記水酸基含有エチレン性不飽和単量体を含むエチレン性不飽和単量体を重合して得られるラジカル重合系樹脂;エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなどの直鎖脂肪族ジオール類;プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオールなどの分岐鎖脂肪族ジオール類;1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサンなどの環状ジオール類などがあげられる。
水酸基含有化合物の中でも、特に水酸基含有エチレン性不飽和単量体を含むエチレン性不飽和単量体を重合して得られるラジカル重合系樹脂、または環状ジオール類が好ましい。水酸基含有エチレン性不飽和単量体を含むエチレン性不飽和単量体を重合して得られるラジカル重合系樹脂は、樹脂骨格内に、より多くの水酸基を有することにより集電板密着性を向上させ、また、樹脂であることにより、単量体に比べて耐水性、耐酸性を向上させる効果が期待できる。また、環状ジオール類は、骨格に環状構造を有することにより、耐水性、耐酸性を向上させる効果が期待できる。
<未架橋のオキサゾリン基含有化合物>
未架橋のオキサゾリン基含有化合物としては、例えば、2’−メチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−エチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−エチレンビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2’−プロピレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−テトラメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−ヘキサメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−オクタメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−p−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−p−フェニレンビス(4,4’−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2’−p−フェニレンビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2’−p−フェニレンビス(4−フェニル−2−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレンビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレンビス(4,4’−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレンビス(4−フェニレンビス−2−オキサゾリン)、2,2’−o−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−o−フェニレンビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2’−ビス(2−オキサゾリン)、2,2’−ビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2’−ビス(4−エチル−2−オキサゾリン)、2,2’−ビス(4−フェニル−2−オキサゾリン)、さらにはオキサゾリン基含有ラジカル重合系樹脂などがあげられる。
オキサゾリン基含有化合物の中でも、特に、2’−p−フェニレンビス(2−オキサゾリン)などのフェニレンビス型オキサゾリン化合物、または、オキサゾリン基含有エチレン性不飽和単量体を含むエチレン性不飽和単量体を重合して得られるラジカル重合系樹脂が好ましい。フェニレンビス型オキサゾリン化合物は、骨格内にフェニル基を有することにより耐水性、耐酸性を向上させる効果がある。また、オキサゾリン基含有エチレン性不飽和単量体を含むエチレン性不飽和単量体を重合して得られるラジカル重合系樹脂は、樹脂骨格内により多くのオキサゾリン基を有することにより集電板への密着性を向上させ、また、樹脂であることにより、単量体に比べて耐水性、耐酸性を向上させることができる。
<化合物(E)の添加量、分子量>
化合物(E)は、架橋型樹脂微粒子の固形分100質量部に対して0.1〜50質量部添加するのが好ましく、5〜40質量部添加するのがさらに好ましい。さらに、化合物(E)は2種類以上併用することも可能である。
化合物(E)の分子量は特に限定されないが、重量平均分子量が1,000〜1,000,000であるのが好ましく、さらには5,000〜500,000がより好ましい。なお、上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定したポリスチレン換算の値である。
<オレフィン系エマルション>
次に、オレフィン系エマルションについて説明する。本発明で用いられるオレフィン成分としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、イソブチレン、イソブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン等の炭素数2以上、好ましくは炭素数2〜9のオレフィン化合物が挙げられ、これらオレフィン成分の単一の重合体あるいは2成分以上の共重合体を用いることが出来る。また、本発明のオレフィン系エマルションは、これらオレフィン化合物を40質量%以上、好ましくは60質量%以上含有しており、その他の構成成分としては、不飽和カルボン酸またはその無水物、(メタ)アクリル酸エステル類、マレイン酸エステル類、ビニルエステル類、(メタ)アクリルアミド類等を用いることが出来る。
不飽和カルボン酸またはその無水物としては、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、フマル酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、アコニット酸、無水アコニット酸、クロトン酸等が挙げられる。不飽和カルボン酸またはその無水物は、オレフィン系エマルション全体の10質量%未満、好ましくは5質量%未満である。
(メタ)アクリル酸エステル類としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸−4−ヒドロキブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸、ジ(メタ)アクリル酸(ジ)エチレングリコ− ル、ジ(メタ)アクリル酸−1 ,4−ブタンジオ−ル、ジ( メタ)アクリル酸−1 ,6−ヘキサンジオ− ル、トリ(メタ)アクリル酸トリメチロ−ルプロパン、ジ(メタ)アクリル酸グリセリン、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。
マレイン酸エステル類としては、例えば、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル等が挙げられる。
ビニルエステル類としては、例えば、ぎ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等が挙げられる。
(メタ)アクリルアミド類としては、例えば、N−メチロールアクリルアミド、N,N−ジ(メチロール)アクリルアミド、N−メチロール−N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル−(メタ)アクリルアミド、N−エトキシメチル−(メタ)アクリルアミド、N−プロポキシメチル−(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル−(メタ)アクリルアミド、N−ペントキシメチル−(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ(メトキシメチル)アクリルアミド、N−エトキシメチル−N−メトキシメチルメタアクリルアミド、N,N−ジ(エトキシメチル)アクリルアミド、N−エトキシメチル−N−プロポキシメチルメタアクリルアミド、N,N−ジ(プロポキシメチル)アクリルアミド、N−ブトキシメチル−N−(プロポキシメチル)メタアクリルアミド、N,N−ジ(ブトキシメチル)アクリルアミド、N−ブトキシメチル−N−(メトキシメチル)メタアクリルアミド、N,N−ジ(ペントキシメチル)アクリルアミド、N−メトキシメチル−N−(ペントキシメチル)メタアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
以上のようなオレフィン系エマルションは市販品を用いることも可能であり、市販品としては東邦化学社製のハイテックS−3121、ユニチカ社製のアローベースSB−1200、SD−1200、SE−1200、TC−4010、TD−4010、住友化学社製のザイクセンAC、A、AC−HW−10,L、NC、Nなど、三井化学社製のケミパールS100、S200、S300、V100、V200、V300、W100、W200、W300、W400、W4005、WP100、東洋紡社製のハードレンNZ−1004、NZ−1015などが挙げられるが、これらに限定されるものではなく、2種以上を組み合わせて用いても良い。
つぎに、水性液状媒体(D)について説明する。
本発明に使用する水性液状媒体(D)としては、水を使用することが好ましいが、必要に応じて、例えば、集電板への塗工性向上のために、水と相溶する有機溶剤を使用しても良い。
水と相溶する有機溶剤としては、アルコール類、グリコール類、セロソルブ類、アミノアルコール類、アミン類、ケトン類、カルボン酸アミド類、リン酸アミド類、スルホキシド類、カルボン酸エステル類、リン酸エステル類、エーテル類、ニトリル類等が挙げられ、水と相溶する範囲で使用しても良い。
さらに、コーティング用組成物には、成膜助剤、消泡剤、レベリング剤、防腐剤、pH調整剤、粘性調整剤などを必要に応じて配合できる。
(分散機・混合機)
本発明のコーティング用組成物や後述する燃料電池用触媒インキ組成物を得る際に用いられる装置としては、顔料分散等に通常用いられている分散機、混合機が使用できる。
例えば、ディスパー、ホモミキサー、若しくはプラネタリーミキサー等のミキサー類;エム・テクニック社製「クレアミックス」、若しくはPRIMIX社「フィルミックス」等のホモジナイザー類;ペイントコンディショナー(レッドデビル社製)、ボールミル、サンドミル(シンマルエンタープライゼス社製「ダイノミル」等)、アトライター、パールミル(アイリッヒ社製「DCPミル」等)、若しくはコボールミル等のメディア型分散機;湿式ジェットミル(ジーナス社製「ジーナスPY」、スギノマシン社製「スターバースト」、ナノマイザー社製「ナノマイザー」等)、エム・テクニック社製「クレアSS−5」、若しくは奈良機械社製「MICROS」等のメディアレス分散機;または、その他ロールミル等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、分散機としては、分散機からの金属混入防止処理を施したものを用いることが好ましい。
例えば、メディア型分散機を使用する場合は、アジテーター及びベッセルがセラミック製又は樹脂製の分散機を使用する方法や、金属製アジテーター及びベッセル表面をタングステンカーバイド溶射や樹脂コーティング等の処理をした分散機を用いることが好ましい。そして、メディアとしては、ガラスビーズ、または、ジルコニアビーズ、若しくはアルミナビーズ等のセラミックビーズを用いることが好ましい。また、ロールミルを使用する場合についても、セラミック製ロールを用いることが好ましい。分散装置は、1種のみを使用しても良いし、複数種の装置を組み合わせて使用しても良い。また、強い衝撃で粒子が割れたり、潰れたりしやすい炭素材料や燃料電池用触媒材料の場合は、メディア型分散機よりは、ロールミルやホモジナイザー等のメディアレス分散機が好ましい。
(セパレータ)
燃料電池用のセパレータは、その形状が、通常、シート状もしくは板状であり、その片面もしくは両面に凹凸状の溝が形成されている。燃料電池用のセパレータの該溝部は、後述する燃料電池用電極膜接合体の導電性支持体と密着することで、該溝部をガス流路として、燃料ガス(水素)や酸化剤ガス(酸素)等の反応ガスの供給を行う。通常、溝の深さは0.05〜2.0mmであり、溝の幅やリブ幅も同様である。セパレータの厚さとしては、燃料電池の大きさや用途に応じて特に制限されるものではないが、通常0.1〜3.0mm程度である。
燃料電池用セパレータの材質としては、特に限定されないが、炭素、アルミニウム、チタン、ステンレス、鉄、鋼、銅、亜鉛、スズ、マグネシウム、マンガン、シリコン、ニッケル、鉛、ビスマス、リチウム、バナジウム、モリブデン、ジルコニウム、パラジウム、及びこれらの合金を使用することができる。また、該材質表面には必要応じて表面処理、プライマーなどを施すことができる。
燃料電池用セパレータのガス流路形状としては、燃料電池セルのガス供給口からガス排出口までを一本の蛇行状流路で繋いだサーペンタイン流路が一般的であるが、これに限定するものではない。
(集電板)
燃料電池用の集電板は、その形状が、通常、シート状もしくは板状であるが、燃料電池の大きさや用途に応じて特に制限されるものではない。集電板の材質としては、特に限定されないが、炭素、アルミニウム、チタン、ステンレス、鉄、鋼、銅、亜鉛、スズ、マグネシウム、マンガン、シリコン、ニッケル、鉛、ビスマス、リチウム、バナジウム、モリブデン、ジルコニウム、パラジウム、及びこれらの合金を使用することができる。また、耐酸化性などの耐久性を向上させるために、表面に金やロジウムなどの貴金属メッキ、あるいはダイヤモンドライクカーボン(DLC)などを表面処理したものも使用することが出来る。
(集電板へのコーティング用組成物の塗工方法)
集電板上にコーティング用組成物を塗工する方法としては、特に制限はなく公知の方法を用いることができる。
具体的には、グラビアコーティング法、ダイコーティング法、ディップコーティング法、ロールコーティング法、ドクターコーティング法、ナイフコーティング法、スプレーコティング法、スクリーン印刷法または静電塗装法等が挙げる事ができる。
乾燥方法としては放置乾燥、送風乾燥機、温風乾燥機、赤外線加熱機、遠赤外線加熱機などが使用できるが、特にこれらに限定されるものではない。
又、塗布後に平版プレスやカレンダーロール等による圧延処理を行っても良い。
<燃料電池>
燃料電池は使用する電解質により、いくつかのタイプに分類することができるが、本発明の燃料電池としては、固体高分子形燃料電池がより好ましく、前記のコート層付集電板も好適に使用することができる。
(固体高分子形燃料電池)
固体高分子形燃料電池は、固体高分子電解質5を挟むように、対向配置された集電板1、セパレータ2、ガス拡散層3、アノード触媒層(燃料極)4、カソード触媒層(空気極)6、ガス拡散層7、及びセパレータ8、集電板9とから構成される(図1)。
上記セパレータ2、8は、燃料ガス(水素)や酸化剤ガス(酸素)等の反応ガスの供給、排出を行う。そして、アノード及びカソード触媒層4、6に、ガス拡散層3、7を通じてそれぞれ均一に反応ガスが供給されると、両電極に備えられた触媒と固体高分子電解質5との境界において、気相(反応ガス)、液相(固体高分子電解質膜)、固相(両電極が持つ触媒)の三相界面が形成される。そして、電気化学反応を生じさせることで直流電流が発生し、集電板1、9を通して外部へ電流を取り出すことが出来る。
上記電気化学反応において、
カソード側:O2+4H++4e-→2H2
アノード側:H2→2H++2e-
の反応が起こり、アノード側で生成されたH+イオン(プロトン)は固体高分子電解質5中をカソード側に向かって移動し、e-(電子)は外部の負荷を通ってカソード側に移動する。
一方、カソード側では酸化剤ガス中に含まれる酸素と、アノード側から移動してきたH+イオン及びe-とが反応して水が生成される。この結果、上述の燃料電池は、水素と酸素とから直流電力を発生し、水を生成することになる。
(燃料電池用触媒材料)
燃料電池用触媒材料は、公知もしくは市販のものを使用することができる。例えば、触媒粒子が、触媒担持体としての炭素粒子、酸化物粒子、あるいは窒化物粒子上に担持してなるものが挙げられる。
触媒粒子としては、例えば、白金、金、銀、パラジウム、イリジウム、ロジウム、ルテニウム又はこれらの合金等が挙げられる。
触媒担持体としては、例えば、下記のものが挙げられる。
炭素粒子としては、炭素材料(A)と同様のものが挙げられる。
酸化物粒子としては、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化チタン、シリカ、アルミナ等が挙げられる。
窒化物粒子としては、例えば、窒化チタン、窒化ジルコニウム、窒化ニオブ、窒化タンタル、窒化クロム、窒化バナジウム等が挙げられる。
これら触媒担持体は、要求性能に合わせて最適な材料を選択することができる。
触媒粒子の触媒担持体上への担持率は特に限定されない。触媒粒子として白金、触媒担持体として炭素粒子を用いた場合は、触媒粒子100質量%に対して、通常1〜70質量%程度までの担持が可能である。
市販の燃料電池用触媒材料としては、例えば、
TEC10E50E、TEC10E70TPM、TEC10V30E、TEC10V50E、TEC66E50等の白金担持炭素粒子;
TEC66E50、TEC62E58等の白金−ルテニウム合金担持炭素粒子;
をいずれも田中貴金属工業社より購入することができるが、これらに限定されるものではない。
(燃料電池用バインダー)
燃料電池用のバインダーとしては、プロトン伝導性ポリマーが好ましい。プロトン伝導性ポリマーとしては、親水性官能基を有するバインダーを指し、プロトン伝導度として100%RH、25℃で10-3Scm-1以上を示すものが好ましい。
ここで、親水性官能基としては、スルホ基、カルボキシ基、リン酸基等の酸性官能基、水酸基、アミノ基等の塩基性官能基が挙げられるが、プロトン解離性の観点から、スルホ基、カルボキシ基、リン酸基、及び水酸基がより好ましい。
プロトン伝導性を示すポリマーとしては、スルホ基を導入した、オレフィン系樹脂(ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸等)、ポリイミド系樹脂、フェノール樹脂、ポリエーテルケトン系樹脂、ポリベンズイミダゾール系樹脂、及びポリスチレン系樹脂、スチレン・エチレン・ブチレン・スチレン共重合体のスルホン酸ドープ品、パーフルオロスルホン酸系樹脂等のスルホン酸を有する樹脂;
ポリアクリル酸、カルボキシメチルセルロース等のカルボン酸を有する樹脂;
ポリビニルアルコール等の水酸基を有する樹脂;
ポリアリルアミン、ポリジアリルアミン、ポリジアリルジメチルアンモニウム塩、イミダゾール部分で酸と塩形成したポリベンズイミダゾール系樹脂等のアミノ基を有する樹脂;
ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルイミダゾール等の、その他の親水性官能基を有する樹脂が挙げられる。特に、パーフルオロスルホン酸系樹脂は、電気陰性度の高いフッ素原子を導入する事で化学的に非常に安定し、スルホ基の解離度が高く、高いプロトン導電性が実現できる。このようなプロトン伝導性ポリマーの具体例としては、デュポン社製の「Nafion」等が挙げられる。通常、プロトン伝導性ポリマーは、ポリマーを5〜30質量%程度含むアルコール水溶液として使用される。アルコールとしては、例えば、メタノール、プロパノール、エタノールジエチルエーテル等が使用される。
(溶剤)
燃料電池用触媒インキ組成物に使用される溶剤としては、上述の水性液状媒体(D)と同様のものが使用されるが、これらに限られているものではない。
(燃料電池用触媒インキ組成物)
燃料電池用触媒インキ組成物は、燃料電池用触媒層を形成するための組成物であって、燃料電池用触媒材料、燃料電池用バインダー及び溶剤を含む組成物である。
触媒インキ組成物中に含まれる触媒材料、およびプロトン伝導性ポリマー、溶剤の種類および割合は、限定されるものではなく、広い範囲内で適宜選択することができる。好ましい範囲としては例えば、触媒材料を100質量部に対して、プロトン伝導性ポリマーが10〜300質量部、好ましくは20〜250質量部である。
触媒インキ組成物の調製方法も特に限定されるものではない。調製は、各成分を同時に分散しても良いし、予め、触媒材料を溶剤中で分散後、プロトン伝導性ポリマー成分を添加してもよく、使用する触媒材料、プロトン伝導性ポリマーや、溶剤種により最適化することができる。
(燃料電池用電極膜接合体)
燃料電池用電極膜接合体とは、プロトン伝導性の固体高分子電解質膜の片面もしくは両面に、燃料電池用触媒層が密着して形成され、さらに、その片面もしくは両面に、ガス拡散性の導電性支持体が密着して具備したものである。
燃料電池用電極膜接合体の製造方法としては、固体高分子電解質膜の片面もしくは両面に、転写基材上に予め形成された燃料電池用触媒層を転写後、導電性支持体を熱圧着することで燃料電池用電極膜接合体を作製する方法が挙げられる。また、固体高分子電解質膜の片面もしくは両面に、導電性支持体上に予め形成された燃料電池用触媒層を、熱圧着することで燃料電池用電極膜接合体を作製してもよい。
(固体高分子電解質膜)
固体高分子電解質膜としては、例えば、パーフルオロスルホン酸系のフッ素イオン交換樹脂等が挙げられる。電気陰性度の高いフッ素原子を導入する事で化学的に非常に安定し、スルホ基の解離度が高く、高いイオン導電性が実現できる。具体例としてはデュポン社製の「Nafion」、旭硝子社製の「Flemion」、旭化成社製の「Aciplex」、ゴア(Gore)社製の「Gore Select」等が挙げられる。電解質膜の膜厚としては、通常20〜250μm程度、好ましくは10〜80μm程度である。
燃料電池用撥水層は、導電性支持体上に形成された微多孔質の層である。この層は、撥水層やMPL(micro porous layer、マイクロポーラスレイヤー)とも呼ばれ、触媒層へのガス供給の均一化や、導電性の向上に加え、カソード側で発電時に発生する水の排水性を向上させる等の役割を持つ。また、燃料電池の構成上、導電性支持体と触媒層の間に位置するため、触媒層の一部として取り扱われる場合もある。
撥水層あるいはMPLは、例えば、炭素材料と、撥水性材料を含むインキ組成物をカーボンペーパ基材上に塗工後、300℃程度で焼成することにより形成できる。
(転写基材)
転写基材は触媒インキ組成物を塗布することで燃料電池用触媒層を形成し、転写基材上にある触媒層をナフィオンなどの固体高分子電解質膜に転写するためのフィルム基材である。転写基材としては、安価で入手が容易な高分子フィルムが好ましく、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート等がより好ましい。具体例としてはテフロン(登録商標)シート等が挙げられる。転写基材の厚さは、取り扱い性及び経済性の観点から、通常6〜100μm程度、好ましくは10〜50μm程度、より好ましくは15〜30μm程度とするのがよい。
(導電性支持体)
導電性支持体は、アノード又はカソードを構成する各種の導電性支持体を使用できるが、固体高分子形燃料電池に代表される多くの燃料電池では、カソード側では空気中の酸素を取り入れ、アノード側では水素を取り込めるように、気体が通過および拡散できるような多孔質または繊維状の支持体であることが好ましい。更に電子の出し入れが必要なため導電性を有する材料を用いらなければならない。好ましくは炭素素材からなるカーボンペーパや、カーボンフェルト、カーボンクロスなどがよい。具体例としては東レ社製の「TGP−H−090」等が挙げられる。これら導電性支持体は、燃料電池ではガス拡散層あるいはGDLとも呼ばれる。
以下に、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、以下の実施例は本発明の権利範囲を何ら制限するものではない。尚、実施例および比較例における「部」は「質量部」を、「%」とは「質量%」を表す。
<水分散性樹脂微粒子バインダー(C)の調製>
[合成例1]
攪拌器、温度計、滴下ロート、還流器を備えた反応容器に、イオン交換水40部と界面活性剤としてアデカリアソープSR−10(株式会社ADEKA製)0.2部とを仕込み、別途、メチルメタクリレート48.5部、ブチルアクリレート50部、アクリル酸1部、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン0.5部、イオン交換水53部および界面活性剤としてアデカリアソープSR−10(株式会社ADEKA製)2部をあらかじめ混合しておいたプレエマルジョンのうちの1%をさらに加えた。内温を70℃に昇温し十分に窒素置換した後、過硫酸カリウムの5%水溶液10部の10%を添加し重合を開始した。反応系内を70℃で5分間保持した後、70℃に保ちながらプレエマルジョンの残りと過硫酸カリウムの5%水溶液の残りを3時間かけて滴下し、さらに2時間攪拌を継続した。固形分測定にて転化率が98%超えたことを確認後、温度を30℃まで冷却した。25%アンモニア水を添加して、pHを8.5とし、さらにイオン交換水で固形分を40%に調整して水分散性樹脂微粒子バインダー(C)を得た。なお、固形分は、150℃20分焼き付け残分により求めた。
<化合物(E)の製造[エポキシ基含有化合物の製造]>
[製造例1]
攪拌器、温度計、滴下ロート、還流器を備えた反応容器にイソプロピルアルコール20部、水20部を仕込み、別途、メチルメタクリレート40部、メチルアクリレート40部、グリシジルメタクリレート20部を滴下槽1に、また、過硫酸カリウム2部をイソプロピルアルコール30部および水30部に溶解させて滴下槽2に仕込んだ。内温を80℃に昇温し十分に窒素置換した後、滴下槽1、2を2時間かけて滴下し、重合を行った。滴下終了後、内温を80℃に保ったまま1時間攪拌を続け、固形分測定にて転化率が98%超えたことを確認後、温度を30℃まで冷却し、固形分40%のエポキシ基含有化合物(メチルメタクリレート/メチルアクリレート/グリシジルメタクリレート共重合体)溶液を得た。なお、固形分は、150℃20分焼き付け残分により求めた。
<化合物(E)の製造[アミド基含有化合物の製造]>
[製造例2]
攪拌器、温度計、滴下ロート、還流器を備えた反応容器に、水90部を仕込み、別途、アクリルアミド20部を滴下槽1に、また、過硫酸カリウム2部を水90部に溶解させて滴下槽2に仕込んだ。内温を80℃に昇温し十分に窒素置換した後、滴下槽1、2を2時間かけて滴下し、重合を行った。滴下終了後、内温を80℃に保ったまま1時間攪拌を続け、固形分測定にて転化率が98%超えたことを確認後、温度を30℃まで冷却し、固形分40%のアミド基含有化合物(ポリアクリルアミド)溶液を得た。なお、固形分は、150℃20分焼き付け残分により求めた。
[製造例3]
攪拌器、温度計、滴下ロート、還流器を備えた反応容器に、水40部を仕込み、別途、2−エチルヘキシルアクリレート40部、スチレン40部、ジメチルアクリルアミド20部を滴下槽1に、また、過硫酸カリウム2部を水60部に溶解させて滴下槽2に仕込んだ。内温を80℃に昇温し十分に窒素置換した後、滴下槽1、2を2時間かけて滴下し、重合を行った。滴下終了後、内温を80℃に保ったまま1時間攪拌を続け、固形分測定にて転化率が98%超えたことを確認後、温度を30℃まで冷却し、固形分40%のアミド基含有化合物(2−エチルヘキシルアクリレート/スチレン/ジメチルアクリルアミド共重合体)溶液を得た。なお、固形分は、150℃20分焼き付け残分により求めた。
<化合物(E)の製造[水酸基含有化合物の製造]>
[製造例4]
攪拌器、温度計、滴下ロート、還流器を備えた反応容器に、イソプロピルアルコール20部、水20部を仕込み、別途、メチルメタクリレート40部、ブチルアクリレート40部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート20部を滴下槽1に、また、過硫酸カリウム2部をイソプロピルアルコール30部および水30部に溶解させて滴下槽2に仕込んだ。内温を80℃に昇温し十分に窒素置換した後、滴下槽1、2を2時間かけて滴下し、重合を行った。滴下終了後、内温を80℃に保ったまま1時間攪拌を続け、固形分測定にて転化率が98%超えたことを確認後、温度を30℃まで冷却し、固形分40%の水酸基含有化合物(メチルメタクリレート/ブチルアクリレート/2−ヒドロキシエチルメタクリレート共重合体)溶液を得た。なお、固形分は、150℃20分焼き付け残分により求めた。
[合成例2〜21]
表1、3に示す材料および組成に変更した以外は、合成例1と同様の方法で、それぞれ合成例2〜10、18〜21の水分散性樹脂微粒子バインダー(C)を得た。
また、表2の合成例11〜17の水分散性樹脂微粒子バインダー(C)は、予め合成例1と同様の手法で合成して得た合成例1〜10の水分散性樹脂微粒子バインダー(C)のうちのいずれか1種をベースとして使用し、化合物(E)と混合することで、合成した。尚、表1〜3中の数値は質量部を表す。ただし、合成例20、21は乳化重合時に樹脂が凝集し、目的の水分散性樹脂微粒子バインダー(C)を得ることができなかった。
なお、表1および表3中の製品名の説明は以下のとおりである。
アデカリアソープSR−10:アルキルエーテル系アニオン界面活性剤(株式会社ADEKA製)
アデカリアソープER−20:アルキルエーテル系ノニオン界面活性剤(株式会社ADEKA製)
エポキシ樹脂:製品名アデカレジンEM−1−60L、株式会社ADEKA製、エポキシ当量320、ビスフェノールA−エピクロロヒドリン型エポキシ樹脂
オキサゾリン含有アクリル・スチレン樹脂:製品名エポクロスK−2020E、株式会社日本触媒製、オキサゾリン当量550
<コーティング用組成物>
(実施例1)
導電性の炭素材料としてアセチレンブラック(A−1:デンカブラックHS−100)
10部、水溶性樹脂バインダーとしてポリアリルアミン20%水溶液(B−1)を5部(固形分として1部)、水分散性樹脂微粒子バインダーとしてポリテトラフルオロエチレン30−J(三井・デュポンフロロケミカル社製)60%水系分散液(C−1)を31部(固形分として18.6部)、水104部をミキサーに入れて混合し、更にサンドミルに入れて分散を行い、コーティング用組成物(1)を得た。得られたコーティング用組成物の分散度をグラインドゲージによる判定(JISK5600−2−5に準ず)より求めた。評価結果を表4に示す。表中の数字は粗大粒子の大きさを示し、数値が小さいほど分散性に優れ、均一で良好な状態であることを示している。
(実施例2〜実施例17、比較例1、2)
表4に示す材料および組成比に変更した以外は、実施例1と同様の方法により、それぞれコーティング用組成物(2)〜(19)を得た。また、実施例1と同様に、グラインドゲージによる分散度を表4に示す。
実施例で使用した材料を下記に示す。
〈導電性の炭素材料(A)〉
・A−1:デンカブラックHS−100(電気化学工業社製)
・A−2:ミツビシカーボン#3050B(三菱化学社製)
・A−3:デンカブラック粒状品(電気化学工業社製)
・A−4:FBF葉状黒鉛(中越黒鉛社製)
・A−5:VGCF−H(昭和電工社製)
〈水溶性樹脂バインダー(B)〉
・B−1:ポリアリルアミンPAA−05(20%水溶液)(日東紡績社製、平均分子量15000)
・B−2:カルボキシルメチルセルロース(和光純薬工業社製、平均分子量100000)
・B−3:ポリアクリル酸(和光純薬工業社製、平均分子量5000)
・B−4:スチレンアクリル共重合体(スチレン75%アクリル酸25%の共重合体
20%水溶液、平均分子量10000)
〈水分散性樹脂微粒子バインダー(C)〉
・C−1:ポリテトラフルオロエチレン30−J(固形分60%水分散液)
(三井・デュポンフロロケミカル社製)
・C−2:ウレタンエマルジョンディスコパールU−53(固形分30%水分散液)
(住化バイエルウレタン社製)
・C−3:スチレンブタジエンエマルジョンSR−103(固形分48%水分散液)( NIPPON A&L社製)
・C−4:ハイテックS−3121(固形分25%水分散液)
(東邦化学社製)
・C−5:ケミパールW4005(固形分40%水分散液)
(三井化学社製)
実施例で使用される水溶性樹脂バインダー(B)B−1〜B−4については、25℃の水99g中に水溶性樹脂バインダー(B)1g混合して撹拌し、25℃で24時間放置した後、分離・析出せずに水中でバインダーが完全に溶解していることを確認した。
表4に示すように、本発明のコーティング用組成物(1)〜(13)、(16)〜(19)は、炭素材料の分散性に優れ、均一なコーティング用組成物であることが明らかとなった。
<コート層付集電板の作製、および集電板の耐酸化性評価>
[実施例A−1:コート層付集電体(1)]
容器中に燃料電池用コート層付集電板に使用するコーティング用組成物(1)を加え、その中に集電板(材質:Cu(C1020)、大きさ:80mm×100mm×厚み2mm)を一定時間浸漬して引き上げた後、120℃で1時間乾燥させて溶媒を完全に除去し、コート層付集電板(1)を得た。コート層の平均厚みは8μmであった。次に得られたコート層付集電板の耐酸化性を評価するため、コート層付集電板(1)を80℃、pH=2の硫酸水溶液中で72時間浸漬後、イオン交換水で十分に洗浄し、100℃1時間で乾燥して耐酸化性評価用コート層付集電板(1’)を得た。次に、後述の耐酸化性評価方法に基づき、耐酸化性評価を行った。評価結果を表5に示す。
[実施例A−2〜A−19:コート層付集電板(2)〜(15)、(18)〜(21)、比較例B−1、B−2:コート層付集電板(16)、(17)]
表5に記載の集電板に使用するコーティング用組成物、あるいは材質の異なる集電板に変更した以外は、実施例A−1と同様の方法により、それぞれコート層付集電板(2)〜(21)を得た。また、耐酸化性評価は実施例A−1と同様にして行った。
[比較例B−3〜B−8]
表5に記載の集電板を使用して、耐酸化性評価を実施例A−1と同様にして行った。
(集電板の耐酸化性評価方法)
集電板の酸化は、燃料電池作動時の湿潤雰囲気あるいは酸性雰囲気下に晒されることにより発生するため、促進試験として集電板の酸性水溶液中における耐久性を確認することで評価を行うことが出来る。従って、耐酸化性評価は、集電板の硫酸水溶液への浸漬前後の変化について、集電板の表面状態の目視確認と集電板の抵抗変化率の確認により判定した。評価基準を下記に示し、耐酸性の評価結果を表5に示す。
(集電板の表面状態)
集電板の表面状態を目視確認して判定した。
○:「変化なし(良好)」
○△:「一部腐食が見られる(使用可能)」
△:「半分程度腐食が見られる(不良)」
×:「ほとんどの部分で腐食が見られる(極めて不良)」
(集電板の抵抗変化率)
集電板表面の抵抗をロレスタGP(三菱化学アナリテック社製)を用いて4端子法で測定(JIS−K7194)して判定した。
◎:「抵抗値が200%以下(極めて良好)」
○:「抵抗値が300%以下(良好)」
○△:「抵抗値が300%より高く、900%以下(使用可能)」
△:「変化率が900%より高く、1500%以下(不良)」
×:「変化率が1500%以上で、実用上問題あり(極めて不良)」
表5に示すように、本発明のコート層付集電板(1)〜(15)は、酸性水溶液への浸漬後も耐腐食性が良好で、耐酸化性や導電性に優れることが明らかであった。燃料電池用(特に固体高分子形燃料電池)の集電体は、高温、湿潤、酸性雰囲気条件下での使用が想定されるため、該条件でコート層が維持できていることは非常に重要である。
(燃料電池用触媒インキ組成物の作製)
触媒材料として白金触媒担持カーボン4質量部(田中貴金属社製、白金量46%、TEC10E50E)、溶剤として2−プロパノール56質量部、およびイオン交換水20質量部をディスパーにて攪拌混合することで触媒ペースト組成物(固形分濃度4質量%)を調製した後、プロトン伝導性ポリマーとして20質量%ナフィオン分散溶液(デュポン社製、CStypeDE2020)20質量部を添加し、ディスパーにて攪拌混合することで燃料電池用触媒インキ組成物(固形分濃度8質量%、触媒インキ組成物100質量%としたときの触媒材料とプロトン伝導性ポリマーの合計した割合)を作製した。
(燃料電池用電極膜接合体の作製)
上述の燃料電池用触媒インキ組成物を、白金触媒の目付け量が0.1mg/cm2になるようにテフロン(登録商標)フィルム上に塗布し、加熱真空乾燥することにより、燃料電池用触媒層が形成されたテフロン(登録商標)フィルムを得た。続いて、燃料電池用触媒層が形成されたテフロン(登録商標)フィルムから5cm角の打ち抜き片を2枚作製し、8cm角の固体高分子電解質膜(ナフィオン NR−212、デュポン社製、膜厚51μm)の中心に両面から密着して、150℃、5MPaの条件で狭持した後、テフロン(登録商標)フィルムを剥離することで、固体高分子電解質膜上へ触媒層を転写形成した。更に、触媒層の表面へ、5cm角の炭素繊維からなるカーボンペーパ基材(SGL24−BCH、SGLカーボン社製)を密着することで、電極面積が5cm角の燃料電池用電極膜接合体を作製した。
<燃料電池用評価セルの作製>
[実施例C−1〜C−19、比較例D−1〜D−8]
上述の燃料電池用電極膜接合体の電極部を、ガスケットを用いて取り囲み、次いでサーペンタイン型の一本流路が片面に形成されたセパレータのガス流路部が電極と重なるように両面から挟み込んだ。最後に、集電板2枚を両側に装着して燃料電池用評価セルを作製した。使用した集電板を表5に示す。
(燃料電池の特性評価)
得られた燃料電池用評価セルを用いて、セル温度を80℃とし、カソード側から温度60℃、相対湿度42%で加湿した空気を流量800mL/minで供給し、アノード側から温度77℃、相対湿度88%で加湿した水素ガスを流量550mL/min供給し、電流密度500mA/cm2で3時間保持した後の抵抗値を記録した。上述した耐酸性評価の前後における集電板を用いて作製した燃料電池における抵抗値の変化率(耐酸性評価後の集電板を用いて作製した燃料電池の抵抗値÷耐酸性評価前の集電板を用いて作製した燃料電池の抵抗値×100)を算出した。値が小さいほど良好な結果であり、判定基準を下記に示す。また、測定はすべてAutoPEMシリーズ「PEFC評価システム」(東陽テクニカ社製)を用いて実施した。評価結果を表5に示す。
◎:「抵抗値が105%以下(極めて良好)」
○:「変化率が110%以下(良好)」
○△:「変化率が110%より高く、120%以下(使用可能)」
△:「変化率が120%より高く、130%以下(不良)」
×:「変化率が130%以上で、実用上問題あり(極めて不良)」
表5に示すように、本発明のコート層付集電板は耐酸化性に優れることが分かり、その結果、燃料電池の発電特性においても抵抗値変化が少なく優れていることが分かった。これらの結果から、コート層を使用しない比較例B−3〜B−8、D−3〜D−8やコート層を使用した比較例B−1、B−2、D−1、D−2では、集電板表面に酸化被膜が形成され、導電性が悪化してしまったが、本発明のコート層付集電板では集電板表面の酸化抑制が可能であったと考えている。従って、コート層を構成する材料は、炭素材料と、水溶性樹脂バインダーと、水分散性樹脂微粒子バインダーと含むことが重要であった。
また、表4の結果と併せて考察すると、コート層を構成する水溶性樹脂バインダーおよび水分散性樹脂微粒子バインダー固形分の合計に占める水分散性樹脂微粒子バインダーの含有量が特定の範囲である場合にコーティング組成物の分散状態が特に良好であり、コート層付集電板の耐酸化性や燃料電池デバイス全体を通した導電状態も良好であることが分かる。従って、炭素材料の分散状態が影響を及ぼしているのではないかと考察している。
図1は、燃料電池の構造の模式図である。
1 集電板
2 セパレータ
3 ガス拡散層
4 アノード電極触媒(燃料極)
5 固体高分子電解質
6 カソード電極触媒(空気極)
7 ガス拡散層
8 セパレータ
9 集電板

Claims (5)

  1. 炭素材料(A)と、水溶性樹脂バインダー(B)と、水分散性樹脂微粒子バインダー(C)と、水性液状媒体(D)とを含有することを特徴とする、燃料電池用コート層付集電に使用するコーティング用組成物。
  2. コーティング用組成物の固形分の合計100質量%中、炭素材料(A)の含有量が、10質量%以上、65質量%以下である請求項1に記載の燃料電池用コート層付集電に使用するコーティング用組成物。
  3. コーティング用組成物が、水溶性樹脂バインダー(B)の固形分および水分散性樹脂微粒子バインダー(C)の固形分の合計100質量%中、水溶性樹脂バインダー(B)の含有量が、1質量%以上、40質量%未満である請求項1または2に記載の燃料電池用コート層付集電に使用するコーティング用組成物。
  4. 請求項1〜3いずれか記載のコーティング用組成物から形成されたコート層を有する燃料電池用コート層付集電
  5. 請求項4に記載の燃料電池用コート層付集電を使用した燃料電池。
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