以下、本発明について、その好ましい実施態様に基づき図面を参照しながら説明する。図1には、本発明のシート材容器の製造方法によって製造されるシート材容器の一実施態様であるシート材容器10が示されている。シート材容器10は、複数のフィルム層が積層され互いに接合されたシート材20を含み、シート材20で画成された内容物収容部12を有する容器本体11を具備する。シート材20は、可撓性を有し柔軟性に富んだ合成樹脂製の薄肉の軟包材であり、これを主体とする本実施態様のシート材容器10は軟包材容器である。
本実施態様のシート材容器10は、底ガゼット部を有するスタンディングパウチであり、シート材容器10の主体をなす容器本体11は、図1に示すように、胴部11Bと、容器本体11の載置面に対向配置される底部としての底ガゼット部11Uとを有する。胴部11Bは、前後一対の胴部シート13,13を含んで構成され、底ガゼット部11Uは、底ガゼットシート14を含んで構成されている。両シート13,14は、何れも軟包材であるシート材20からなる。
容器本体11は、相対向する一対の平面視略長方形形状の胴部シート13,13の底部に、底ガゼットシート14を逆V字形に2つ折りして挟み込み、これらのシート13,14の縁部を互いに接合することによって形成されている。容器本体11の周縁部には、シート13,14の接合部15が形成されている。接合部15の形成方法は特に制限されず、加熱されたヒートシールバーやロールによる熱封緘(ヒートシール)、超音波シール、高周波シール等の他、接着剤による接着でも良い。
内容物収容部12に内容物が充填されておらず、容器本体11が折り畳まれて扁平となった状態においては、底ガゼットシート14は、上方に向かって山折りされており、前後一対の胴部シート13,13に対して、内容物の充填により展開可能に接合されている。内容物収容部12に内容物が充填されると、折り畳まれていた底ガゼットシート14が展開して、一対の胴部シート13,13が前後方向に離間し、容器本体11の下部が前後方向に膨らんで自立性が発現する(図1参照)。
図1に示すように、シート材容器10の外面、より具体的には、容器本体11の胴部11Bの前側及び後側のうちの一方の側には、周辺部よりも容器外方に向けて突出した膨出状のエアバッグ部16が形成されている。本実施態様においては、エアバッグ部16は、容器本体11の高さ方向に延びる2本の平面視帯状の部分16aと、容器本体11の幅方向に延びる1本の平面視帯状の部分16bとを有し、2本の部分16aは、容器本体11の幅方向に間欠配置され、部分16bは、各部分16aの下端に連接されており、連続した1つの領域をなしている。このように、容器本体11の胴部11Bにエアバッグ部16が配されていることにより、内容物収容部12内の内容物の量が少ない場合であっても、内容物収容部12の立体保持性が高められ、また、胴部11Bを把持した場合の圧縮強度に対して一定の弾力性や剛性を持たせることが可能となり、さらにシート材容器10の自立安定性を向上することが可能となる。
図2には、シート材容器10の製造に用いられる容器用シート材料10Aが示されている。シート材容器10は、この容器用シート材料10Aを用いて製造され、具体的には後述するように、容器用シート材料10Aのエアバッグ部形成用非接合部23に空気を封入してエアバッグ部16を形成することで製造される。容器用シート材料10Aは、容器本体11と、該容器本体11に連接され、該容器本体11におけるエアバッグ部形成用非接合部23と連通する空気流路31を有する空気注入部30とを具備する。容器用シート材料10Aにおいては、容器本体11のエアバッグ部形成用非接合部23と空気注入部30の空気流路31とが連通していて、両者間を空気が流通可能になされているが、シート材容器10においては、図1に示すように、空気注入部30に空気流路31を幅方向(空気の流通方向と直交する方向)に横断するシール部31Sが形成され、該シール部31Sによって空気流路31が閉塞されており、そのため、容器本体11のエアバッグ部形成用非接合部23位置に形成されたエアバッグ部16と空気注入部30の空気流路31とは連通していない。空気注入部30は、容器用シート材料10Aのエアバッグ部形成用非接合部23に空気を封入してシート材容器10を得るための部材であり、シート材容器10の容器としての諸機能を果たす上では基本的には無関係の部材であるから、シート材容器10の製造後は、シール部31Sよりも上方位置で切断して除去しても構わない。
図3及び図4には、容器本体11の胴部11Bを構成する前後一対の胴部シート13,13のうちの一方(前側)の層構成、即ちシート材20の層構成が示されている。エアバッグ部16は、容器用シート材料10Aのシート材20における複数のフィルム層、具体的には外層21と内層22との層間に形成された、エアバッグ部形成用非接合部23に空気が封入されることで形成される。容器用シート材料10Aのエアバッグ部形成用非接合部23のパターン(図2参照)は、シート材容器10のエアバッグ部16のパターン(図1参照)と同じである。
シート材20は、複数のフィルム層が積層され互いに接合されたいわゆる積層フィルムであり、本実施態様においては図3及び図4に示すように、容器本体11の外面を形成する外層21と、容器10の内面を形成する内層22とからなる。内層22は、内容物収容部12内の内容物と直接接触する。また、内層22が単一のフィルム層であるのに対し、外層21は複数のフィルム層の積層体であり、具体的には図3及び図4に示すように、外側から順に(内容物収容部12から遠い順に)、第1外層21a及び第2外層21bを含んで構成されている。
シート材20を構成する複数のフィルム層21a,21b,22は、エアバッグ部16(エアバッグ部形成用非接合部23)以外の部分にて、接合手段によって互いに接合されている。このフィルム層どうしの接合手段としては、公知の接合手段を特に制限なく用いることができ、例えば、接着剤による接着の他、熱融着、あるいは超音波やレーザーを用いた融着、圧着が挙げられる。フィルム層の接合方法は、層構成を薄くする観点及び接合パターンの自由度の観点からは、接着剤による接着が好ましく、接着剤の材質によらず一定の強度を得る観点からは、融着が好ましい。例えば、シート材20は、ラミネート接着剤を用いて、ドライラミネーション、ノンソルベントドライラミネーション、ホットメルトラミネーション等の公知のラミネーション方法を利用して製造することができる。
本実施態様においては、エアバッグ部16(エアバッグ部形成用非接合部23)は、図3に示すように、外層21(第2外層21b)と内層22との層間に形成されている。
エアバッグ部形成用非接合部23においては、相対向するフィルム層どうし(第2外層21b,内層22)が互いに非接合状態であるところ、その非接合状態は、エアバッグ部形成用非接合部23の形成予定部位に対し、ラミネート接着剤などの接合手段を用いた接合処理を施さない方法の他、該形成予定部位に非接合処理を施す方法によっても形成することができる。具体的には例えば、シート材20を構成する複数のフィルム層21a,21b,22の層間を接着剤によって互いに接合するのに先立ち、エアバッグ部形成用非接合部23の形成予定部位に対しては、該形成予定部位にて相対向するフィルム層21b,22のうちの少なくとも一方における他方との対向面に、該接着剤による接着作用を阻害し得る非接着処理を施す。この非接着処理は、例えば、オフセット印刷、フレキソ印刷、レタープレス印刷(凸版印刷)などの各種印刷で使用される印刷用インキ、メジウムインキ、糊殺し専用インキなどの非接着剤をエアバッグ部形成用非接合部23の形成予定部位に塗布することで実施できる。
エアバッグ部形成用非接合部23の他の形成方法として、層間にエアバッグ部形成用非接合部23が形成される複数のフィルム層21b,22どうしを、エアバッグ部形成用非接合部23以外の部位で熱融着によって互いに接合させる場合に、両フィルム層21b,22を重ね合わせて積層体を得、該積層体を、エアバッグ部形成用非接合部23のパターンに対応した凸部を有する金型で加熱しつつ加圧する(ヒートシールする)方法が挙げられる。この方法では、金型の凸部で加圧された部分が接合部となり、凸部で加圧されなかった部分(金型の凹部に対応する部分)がエアバッグ部形成用非接合部23となる。
シート材20において最外層となる第1外層21aは、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレ−ト(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などのポリエステル;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)などのポリオレフィン;ナイロン−6、ナイロン−66などのポリアミド(PA)等の延伸又は無延伸フィルムを使用して形成することができる。第1外層21aの厚みは、好ましくは1μm以上、さらに好ましくは10μm以上、そして、好ましくは100μm以下、さらに好ましくは30μm以下である。
シート材20において中間層となる第2外層21b(バリアフィルム層)は、例えば、アルミ蒸着フィルム、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、アルミニウム箔、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、PVDCコートフィルム、セラミックス蒸着フィルム等を使用して形成することができる。第2外層21bの厚みは、好ましくは1μm以上、さらに好ましくは5μm以上、そして、好ましくは50μm以下、さらに好ましくは30μm以下である。
シート材20において最内層となる内層22(シーラントフィルム層)は、例えば、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)、中密度ポリエチレン樹脂(MDPE)、高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)、ポリプロピレン樹脂(PP)等を使用して形成することができる。内層22の厚みは、好ましくは1μm以上、さらに好ましくは10μm以上、そして、好ましくは100μm以下、さらに好ましくは50μm以下である。
空気注入部30について説明すると、本実施態様においては、空気注入部30は図1及び図2に示すように、容器本体11の上端の接合部15に連接されている。空気注入部30は平面視長方形形状をなし、その長手方向を鉛直方向(シート材容器10の高さ方向)に一致させて、容器本体11の上端の接合部15から上方に向かって突出している。
空気注入部30は、相対向する2枚の非通気性シート34,34を含んで構成されている。本実施態様においては、両シート34,34は、容器本体11を構成するシート材20(胴部シート13)とは別部材であり、図4に示すように、シート材20を構成する外層21(第2外層21b)と内層22との間に両シート34,34の下端部が挿入され挟持固定されている。非通気性シート34としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレ−ト(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリアミド(PA)等の合成樹脂製のフィルムを用いることができる。
尚、本発明においては、空気注入部30は、容器本体11と一体に形成されていても良く、即ちシート材20から形成されていても良い。その場合、空気注入部30を構成する2枚の非通気性シート34,34のうちの一方は、シート材20の外層21(第1外層21aと第2外層22aとの積層体)であり、他方は内層22であり、それら外層21と内層22との層間に空気流路31が形成される。
空気注入部30を構成する2枚の非通気性シート34,34は、容器本体11との接続部を除いて、それらの周縁で互いに接合されて周縁接合部32を形成している。この周縁接合部32に囲まれた両シート34,34どうしの非接合部が、前述したように、容器用シート材料10Aの容器本体11におけるエアバッグ部形成用非接合部23と連通する、空気流路31として機能する。周縁接合部32の形成方法は特に制限されず、ヒートシール、超音波シール、高周波シール等の他、接着剤による接着でも良い。非通気性シート34,34どうしの非接合部である空気流路31の形成には、前述したエアバッグ部形成用非接合部23の形成方法を適宜利用できる。
また、空気注入部30には、外部と空気流路31とを連通する注入穴33が穿設されている。この注入穴33は、エアバッグ部形成用非接合部23に空気を吹き込む際の空気の流入口として機能するもので、本実施態様においては、図6(a)に示すように、空気注入部30を厚み方向に貫通する貫通孔であり、空気注入部30を構成する2枚の非通気性シート34,34それぞれに穿設されている。
前述したように、シート材容器10は、図2に示す容器用シート材料10Aを用いて製造される。容器用シート材料10Aは、容器本体11のエアバッグ部形成用非接合部23に空気が封入されていない。また容器用シート材料10Aは、空気注入部30の空気流路31にシール部31S(図1参照)が形成されておらず、空気流路31とエアバッグ部形成用非接合部23とが連通していて空気の流通が可能な状態である。
図5には、シート材容器10の製造方法で使用する製造装置40の要部、図6には、製造装置40によるエアバッグ部形成工程(空気封入工程)の一部である空気注入工程が示されている。製造装置40は、シート材容器のエアバッグ部形成用空気封入装置であり、図2に示す容器用シート材料10Aに対し、その空気注入部30の注入穴33及び空気流路31を介して、該空気注入部30に連接されている容器本体11のエアバッグ部形成用非接合部23に空気を所定量注入し(空気注入工程)、しかる後、該空気流路31を閉塞する(空気流路閉塞工程)。斯かる製造装置40の動作によって、容器用シート材料10Aのエアバッグ部形成用非接合部23に空気が封入されてエアバッグ部16となり、シート材容器10が得られる。
尚、図中、符号Xで示す方向は、一対の固定手段41,41(挟圧面41a,41a)の対向方向であり、両固定手段41,41間に挟持固定される被加工物たる空気注入部30の厚み方向と同方向である。
また、符号Yで示す方向は、両固定手段41,41間に挟持固定される被加工物たる空気注入部30(空気流路31)における空気流通方向であり、また本実施態様においては、固定手段41の挟圧面41aの幅方向(短手方向)と同方向であり、方向Xと直交する。
また、符号Zで示す方向は、空気流通方向Yと直交する方向であり、また本実施態様においては、固定手段41の挟圧面41aの長手方向と同方向である。
製造装置40は、図5に示すように、対向配置され、容器用シート材料10Aの空気注入部30を挟持固定する一対の固定手段41,41と、対向配置され、該空気注入部30の空気流路31にシール部31Sを形成して、該空気流路31と容器本体11のエアバッグ部形成用非接合部23との連通を遮断する空気流路閉塞手段としての一対のヒートシール用熱板42,42とを具備する。
対向配置された一対の固定手段41,41は、それぞれ、金属等の剛体からなる矩形ブロック状の形態をなし、前記エアバッグ部形成工程において被加工物たる空気注入部30を挟んで互いに圧接される挟圧面41aを有し、該挟圧面41aの反対側の面にて支持ブロック43に固定されている。一対の支持ブロック43,43は、それぞれ、サーボモータやエアシリンダなどの図示しない駆動源に直接的に又は他の部材を介して間接的に接続されており、これにより一対の固定手段41,41は、支持ブロック43,43と共に、方向Xにおいて互いに逆方向に進退可能になされている。
また、対向配置された一対の熱板42,42は、一対の固定手段41,41と、被加工物たる空気注入部30が連接されている容器本体11との間に配されている。熱板42の少なくとも空気注入部30と接触してこれを加圧する先端部は、その方向Zの長さが、空気注入部30の同方向の長さよりも長く、本実施態様においては、空気流通方向Yにおいて隣り合う固定手段41(挟圧面41a)の同方向の長さと略同じである。一対の熱板42,42は、それぞれ、図示しない熱源によって加熱状態とされ、その加熱状態の一対の熱板42,42それぞれの先端部で空気注入部30を方向Xの両側から挟み付けて加圧することで、該空気注入部30にシール部31Sを形成して空気流路31を閉塞し得るようになされている。一対の熱板42,42は、それぞれ、その先端部とは反対側にて図示しない支持ブロックに固定され、該支持ブロックは、サーボモータやエアシリンダなどの図示しない駆動源に直接的に又は他の部材を介して間接的に接続されており、これにより一対の熱板42,42は、該支持ブロックと共に方向Xにおいて、互いに逆方向に進退可能になされている。一対の固定手段41,41と一対の熱板42,42とは、それぞれ独立に方向Xに移動可能になされている。
固定手段41の挟圧面41aは平面視長方形形状をなし、その幅方向は空気流通方向Yに一致し、また、長手方向は方向Zに一致し、本実施態様においては鉛直方向(上下方向)とも一致している。挟圧面41a(固定手段41)の長手方向の長さ(方向Zの長さ)は、該挟圧面41aにて挟持固定される空気注入部30の同方向の長さに比して長く、図6(b)に示すように、一対の固定手段41,41で空気注入部30を挟持固定した際には、それらの挟圧面41aが該空気注入部30を方向Zに横断し、さらに該空気注入部30の空気流通方向Yに延びる両側縁それぞれから方向Zの外方に延出する。
一対の固定手段41,41のうちの少なくとも一方における空気流路31に対応する部位、即ち固定手段41における、一対の固定手段41,41で空気注入部30を挟持固定したときに空気流路31と重なる部位には、空気流通方向Yに沿って延びる溝44が設けられている。この溝44は、図6に示す如き空気流通方向Yと直交する方向Zの断面視において、円弧状をなしている。
本実施態様においては、図5及び図6に示すように、一対の固定手段41,41それぞれの挟圧面41aにおける、被加工物たる空気注入部30が配置される部位、より具体的には該空気注入部30の空気流路31に対応する部位には、空気流通方向Yに延びる溝44が設けられている。図6(b)に示すように、一対の固定手段41,41で空気注入部30を挟持固定した際には、該空気注入部30の空気流路31を挟んでその両側に溝44が近接し、空気注入部30の少なくとも空気流路31の形成位置の周囲に一対の溝44,44からなる空間部44Sが形成される。
本実施態様においては、一対の溝44,44は互いに形状及び寸法が同じである。溝44は、挟圧面41aの空気流通方向Yの全長にわたって連続しており、溝44の幅(空気流通方向Yと直交する方向Zの長さ)は、空気流通方向Yに延びる溝44の全長にわたって一定である。尚、溝44の空気流通方向Yの両端部に関し、本実施態様においては図5に示すように、被加工物たる空気注入部30が連接されている容器本体11側及びこれとは反対側の何れの端部も開放しているが、例えば、容器本体11側とは反対側の溝44の端部については、図5に示す如き開放端部とせずに閉塞していても良く、あるいは開放しているものの、容器本体11側の溝44の端部に比して幅(空気流通方向Yと直交する方向Zの長さ)が短くても良い。溝44の変形例として、例えば、空気流通方向Yにおいて容器本体11側からその反対側に向かうに従って漸次幅が短い態様が挙げられる。一方、空気流通方向Yにおける容器本体11側の溝44の端部については、空気注入部30から容器本体11への空気の流通を阻害しないようする観点から、図5に示す如く開放端部とすることが好ましい。
また本実施態様においては、図5及び図6に示すように、一対の固定手段41,41のうちの一方の挟圧面41aには、溝44を挟んで方向Z(空気流通方向Yと直交する方向)の両側それぞれに固定ピン45が1個以上突出形成され、また、他方の挟圧面41aにおける固定ピン45に対応する位置には、固定ピン45が挿入可能なピン挿入穴46が固定ピン45と同数設けられており、図6(b)に示すように、一対の固定手段41,41で空気注入部30を挟持固定したときに、固定ピン45がピン挿入穴46に挿入可能になされている。溝44を挟んで方向Zの両側に位置する一対の固定ピン45のうち、溝44から最も近いもの(以下、溝最近接固定ピンともいう)どうしの間隔G(図6(a)参照)は、被加工物たる空気注入部30の方向Zの長さ即ち幅と略同じに設定されている。従って、エアバッグ部形成工程(空気封入工程)の実施に際しては、この溝最近接固定ピン45,45どうしの間隔Gに空気注入部30を配置するだけで、該空気注入部30を、その加工上適切な位置である、溝44の形成位置に配置することができ、溝最近接固定ピン45は、被加工物が加工上適切な位置に配置されるように誘導するガイド部材として機能し得る。
図6に示すように、一対の固定手段41,41のうちの一方には、被加工物たる空気注入部30に空気(圧縮空気)を注入する断面円形のパイプ状のノズル47が配されている。固定手段41における溝44の幅方向中央(方向Zの中央)には、図5に示すように、該固定手段41を厚み方向に貫通するノズル配置孔48が穿設されており、このノズル配置孔48内にノズル47が配されている。またノズル47は、図示しない駆動源に直接的に又は他の部材を介して間接的に接続されており、これによりノズル47は、方向X即ち一対の固定手段41,41の対向方向において、ノズル配置孔48内を進退可能になされている。また、ノズル47は図示しない圧縮空気供給源に接続されており、該圧縮空気供給源から供給される空気を先端の空気吹き出し口から噴出する。このノズル47の先端の空気吹き出し口は、溝44(空間部44S)に位置するようになされている。
以上のような構成を有する製造装置40を用いて、図2に示す容器用シート材料10Aからシート材容器10を製造する方法について説明する。斯かる本実施態様の製造方法は、空気注入部30をその両側から一対の固定手段41,41で挟持し、その状態で圧縮空気供給源に接続されたノズル47の先端の空気吹き出し口から注入穴33及び空気流路31を介して容器本体11のエアバッグ部形成用非接合部23に空気を所定量注入した後、空気流路31を閉塞してエアバッグ部形成用非接合部23に注入した空気を封入する工程(エアバッグ部形成工程)を有する。
具体的には先ず、図5に示すように、一対の固定手段41,41を方向Xにおいて所定距離離間させた状態で、両者間に容器用シート材料10Aの空気注入部30を挿入し、その空気注入部30を、図6(a)に示すように、一対の固定手段41,41のうちの一方の挟圧面41aの固定ピン(溝最近接固定ピン)45,45間に配置する。これにより、挟圧面41a上に配置された空気注入部30の空気流路31と、該挟圧面41aの溝44とが重なる。
次いで、一対の固定手段41,41で空気注入部30を挟持固定したときに、その一対の固定手段41,41間に形成される溝44からなる空間部44Sに、該空気注入部30の注入穴33及びその周辺部が位置するように該空気注入部30を挟持固定する。より具体的には、図6(a)に示す状態から、ピン挿入穴46を有する一方の固定手段41(ノズル47の配置側固定手段41)の支持ブロック43に接続されている図示しない駆動源を作動させて、該一方の固定手段41を、固定ピン45を有する他方の固定手段41(ノズル47の非配置側固定手段41)に向けて移動させ、図6(b)に示すように、空気注入部30をその両側から一対の固定手段41,41で挟持固定する。このとき空気注入部30は、その空気流通方向Yに沿って延びる一対の周縁接合部32,32が、一対の固定手段41,41間に挟み付けられることによってこれらの間に挟持固定され、該空気注入部30の空気流路31は、溝44を方向Z即ち空気流通方向Yと直交する方向に跨ぐように配され、注入穴33は、溝44の幅方向中央(方向Zの中央)に位置する。こうして固定された空気注入部30の空気流路31及び注入穴33の周囲には、一方の固定手段41の溝44と他方の固定手段41の溝44とからなる空間部44Sが形成される。
こうして一対の固定手段41,41間に形成された空間部44Sには、ノズル47の先端の空気吹き出し口が配置される。このノズル47の先端の空気吹き出し口は、該空気吹き出し口から供給される空気の空気流路31への注入を容易にする観点から、空気注入開始前において、注入穴33を介して空気流路31内に挿入された状態にあるか、又は空気流路31内に挿入されずに空気注入部30の外部に存在しているが、ノズル47の先端の仮想延長線上に注入穴33が位置する状態にあることが好ましい。また、空気注入開始前において、ノズル47が注入穴33を貫通し、該ノズル47の先端の空気吹き出し口が、該ノズル47の非配置側固定手段41の溝44に入っている状態でも構わないが、前記の状態の方がより好ましい。
そして、空間部44Sにノズル47の先端の空気吹き出し口から空気(圧縮空気)を注入する。これにより、空間部44S内の空気注入部30の注入穴33から空気が流入し、図6(c)に示すように、該空気注入部30の空気流路31が膨張し、その膨張した空気流路31を画成する2枚の非通気性シート34,34が、それぞれ、空間部44Sを画成する固定手段41の表面に密着する。このとき、膨張した空気流路31内にノズル47の先端の空気吹き出し口が位置するため、該空気吹き出し口から供給される空気を該空気流路31に効率良く注入することができる。こうして、空間部44Sのほぼ全域にわたって膨張した空気注入部30の空気流路31内にノズル47から空気が直接注入され、その注入された空気は、該空気注入部30が連接されている容器本体11に向かって流れ、該容器本体11のエアバッグ部形成用非接合部23内に流入する。
尚、空間部44Sにノズル47から空気を注入したときに、図6(c)に示すように、その空気注入前は空気注入部30を挟んだ状態で互いに実質的に密着していた一対の固定手段41,41の間に、隙間49が生じるところ、この隙間49の形成が、前記の空気流路31の膨張、非通気性シート34の空間部44Sを画成する壁面への密着を促すものと推察される。即ち、空気流路31は膨張し円柱状に変形しようとするため、隙間49により空気注入部30の固定が外れ、空気注入部30は方向Zに対して内側に縮み、方向Xに対して外側に膨らみ、注入穴33近傍の空気流路31を画成する2枚の非通気性シート34と溝44との接触面積が増え、空気注入時の空気漏れが低減される。斯かる空気注入時における一対の固定手段41,41間の隙間49の形成がより確実になされるようにする観点から、一対の固定手段41,41間の挟持力は、空間部44Sの空気注入時に空気注入部30の固定が外れる大きさであることが好ましい。
このように、本実施態様の製造方法においては、空気注入部30の空気流路31にノズル47から空気を注入するに際し、溝44を有する一対の挟圧面41a,41aによって、該空気注入部30をその厚み方向Xの両側から挟持固定し、該空気注入部30の空気流路31の周囲に該溝44からなる微小な空間部44Sを形成するようにしたので、該空間部44Sにノズル47から空気を注入する比較的簡単な操作を実施するだけで、空気流路31が大きく膨張し、その膨張した空気流路31内にノズル47の空気吹き出し口が位置するようになり、その結果、エアバッグ部形成用非接合部23内に必要量の空気を速やかに流入させることができる。従って、本実施態様の製造方法によれば、エアバッグ部16の形成工程を比較的短時間で完了することが可能であり、シート材容器10を効率良く製造することができる。
図6(c)に示す状態で空気流路31を介してエアバッグ部形成用非接合部23内に空気を注入し、その注入量が所定量に達したら、ノズル47からの空気注入を続けつつ、空気流路閉塞工程を実施する。この空気流路閉塞工程は具体的には、図5に示すように所定の待機位置にある一対の熱板42,42をそれぞれ加熱状態とし、図示しない駆動源を作動させて空気注入部30に向けて前進させ、その加熱状態の一対の熱板42,42それぞれの先端部で空気注入部30をその両側から挟み付けて加圧する。これにより、空気注入部30にシール部31S(図1参照)が形成され、空気流路31がシール部31Sにて閉塞されるので、エアバッグ部形成用非接合部23に注入された空気はそこに封入され、該エアバッグ部形成用非接合部23はエアバッグ部16(図1参照)となる。尚、ノズル47からの空気注入は、シール部31Sの形成が完了した時点で終了する。こうして、目的とするシート材容器10が得られる。
尚、シート材容器10に内容物を充填する工程は、常法に従って行うことができる。例えば、シート材容器10の胴部11Bを構成する一対の胴部シート13,13それぞれの上辺部分を互いに接合せずに非接合状態で残して注入口とし、この注入口から液体洗剤などの内容物を内容物収容部12内に充填すれば良い。内容物の充填後は、一対の胴部シート13,13どうしを斯かる注入口の形成位置でヒートシールなどによって接合し、内容物を内容物収容部12内に封入する。
前述した、空気注入時における空間部44Sの形成による作用効果をより確実に奏させるようにする観点から、固定手段41の溝44の各部の寸法等は次のように設定することが好ましい。
溝44の幅(方向Zの長さ)L1(図7(a)参照)は、好ましくは1mm以上、さらに好ましくは3mm以上、そして、好ましくは20mm以下、さらに好ましくは10mm以下である。
溝44の深さ(最大深さ)D(図7(a)参照)は、好ましくは0.1mm以上、さらに好ましくは0.5mm以上、そして、好ましくは2mm以下、さらに好ましくは1mm以下である。
溝44の曲率半径は、好ましくは1mm以上、さらに好ましくは3mm以上、そして、好ましくは20mm以下、さらに好ましくは10mm以下である。
また、溝44からなる空間部44Sにおける、一対の固定手段41,41の一方と他方との間の差し渡し長さ(最大差し渡し長さ)L2(図7(a)参照)は、好ましくは2mm未満、さらに好ましくは1.5mm未満である。差し渡し長さL2が2mm未満であると、空間部44Sに空気を注入したときに空間部44Sからの空気の漏れが少なくなる傾向があり、エアバッグ部形成工程に要する時間の短縮を図る上で好ましい。また、差し渡し長さL2の下限については、前述した作用効果の発現のために0mmを超えることを前提として、好ましくは0.5mm以上、さらに好ましくは1mm以上である。
また、溝44の幅L1、即ち空気流通方向Yと直交する幅方向(方向Z)の長さL1(図7(a)参照)は、ノズル47の空気吹き出し口の外径R1(図7(b)参照)に比して長く、且つ空気注入部30の注入穴33の形成位置における該幅方向(方向Z)の長さL4に比して短いことが好ましい。このような、ノズル47の空気吹き出し口の外径R1<溝44の幅L1<空気注入部30の注入穴33の形成位置での幅L4、という大小関係が成立することで、一対の固定手段41,41間に空気注入部30を挟持固定したときに、該空気注入部30の空気流路31のほぼ全域が溝44と重なり、且つその空気流路31に対してノズル47の空気吹き出し口が対向配置されるようになるため、前述したエアバッグ部形成工程をより一層確実に実施し得る。
ノズル47の外径R1と溝44の幅L1との比率は、R1/L1として、好ましくは0.1以上、さらに好ましくは0.3以上、そして、好ましくは0.9以下、さらに好ましくは0.8以下である。
溝44の幅L1と空気注入部30の幅L4との比率は、L1/L4として、好ましくは0.05以上、さらに好ましくは0.2以上、そして、好ましくは0.8以下、さらに好ましくは0.5以下である。
また、ノズル47による空間部44Sへの空気の注入によって空気注入部30の空気流路31が膨張したときに、該空気注入部30の注入穴33に、ノズル47の先端の空気吹き出し口が自動的に挿入されて、該空気吹き出し口が該空気流路31内に位置するようにする観点から、該空気吹き出し口の外径R1は、注入穴33の径R2(図7(b)参照)に比して短いことが好ましい。注入穴33の径R2は、注入穴33の最大差し渡し長さを意味し、注入穴33が図示の如き平面視円形状の場合は直径を意味する。
ノズル47の外径R1と注入穴33の径R2との比率は、R1/R2として、好ましくは0.1以上、さらに好ましくは0.5以上、そして、好ましくは0.9以下、さらに好ましくは0.8以下である。
注入穴33の径R2は、好ましくは1mm以上、さらに好ましくは2mm以上、そして、好ましくは10mm以下、さらに好ましくは5mm以下である。
図8(a)〜図8(c)には、溝44の幅方向(方向Z)に沿う断面、即ち、図8が記載された紙面に垂直な空気流通方向Yと直交する方向に沿う断面が示されている。本実施態様においては、溝44の斯かる幅方向に沿う断面視形状としては、図8(a)〜図8(c)の何れの態様も採用可能であるが、前述した空間部44Sへのノズル47からの空気注入時において、空間部44Sからの空気の漏れを低減し、エアバッグ部形成用非接合部23内に必要量の空気を注入するのに要する時間をより一層短縮する観点から、図8(a)及び図8(b)に示すように、斯かる幅方向に沿う断面視において中心角θが180度以下の円弧状をなすことが好ましい。溝44の中心角θは、好ましくは10度以上、さらに好ましくは30度以上、そして、好ましくは90度以下、さらに好ましくは60度以下である。
図9には、本発明に係る固定手段の挟圧面における溝の他の実施態様について、その幅方向(被加工物たる空気注入部を通る空気の流通方向と直交する方向)に沿う断面が示されている。後述する実施態様については、前記実施態様と異なる構成部分を主として説明し、同様の構成部分は同一の符号を付して説明を省略する。特に説明しない構成部分は、前記実施態様についての説明が適宜適用される。
図9(a)及び図9(b)に示す態様は何れも、空間部44Sを形成する一対の44A,44Bの幅方向(方向Z)に沿う断面視形状が互いに異なっている。一方の溝44Aの方が他方の溝44Bに比して、幅(図7(a)のL1に相当する長さ)が短い。溝44Aと溝44Bとは、それらの幅方向中央(方向Zの中央)が相対向するように配されている。図9(a)の態様と図9(b)の態様とは、ノズル47の配置が逆になっている点でのみ異なり、図9(a)の態様では、ノズル47の配置側固定手段41は相対的に幅狭の溝44Aを挟圧面41aに有し、ノズル47の非配置側固定手段41は相対的に幅広の溝44Bを挟圧面41aに有する。また、図9(b)の態様では、ノズル47の配置側固定手段41は相対的に幅広の溝44Bを挟圧面41aに有し、ノズル47の非配置側固定手段41は相対的に幅狭の溝44Aを挟圧面41aに有する。これに対し、図9(c)に示す態様は、一対の固定手段41,41のうちの一方の挟圧面41aのみに溝44が形成され、他方の挟圧面41aには溝は形成されておらず平坦である。図9(a)〜図9(c)に示す態様によっても、前記実施態様と同様の効果が奏される。
空気注入部30より空気を注入しエアバッグ部16に充填される空気の圧力は、設定圧力との誤差率が小さいことが製造する上で好ましい。誤差率は、{(設定圧力―平均充填圧力)/(設定圧力)}×100(%)として計算される値である。誤差率が小さくなることで、短時間でエアバッグ部形成用非接合部23への空気の充填を正確に行うことができ、無駄なくスムーズに実施できる。即ち誤差率は、「エアバッグ部を形成するための空気の注入操作を簡単な工程で比較的短時間で確実に行うことができ、シート材容器を効率良く製造し得る」という、本発明の効果の発現の有無の指標となり得る。誤差率は、好ましくは10%以下、さらに好ましくは5%以下、よりさらに好ましくは3%以下である。誤差率が10%を超える場合は、前記効果が発現しているとは言い難い。
また、空気充填工程を連続的に安定的に行う観点から、充填圧力の標準偏差の値は小さいことが好ましい。標準偏差は、好ましくは5kPa以下、さらに好ましくは3kPa以下、よりさらに好ましくは1kPa以下である。
本発明は、前記実施態様に制限されず適宜変更可能である。例えば前記実施態様では、空気注入部30の注入穴33は、空気注入部30を構成する2枚の非通気性シート34,34を一体的に貫通する貫通孔であったが(図6(a)参照)、両シート34,34のうちの一方のみを貫通するものであっても良い。
また、前記実施態様では、エアバッグ部16は、容器本体11の胴部11Bの前側及び後側のうちの一方の側に形成されていたが、前側及び後側の両方に形成されていてもよいし、底部や側部など他の部位に形成されていてもよい。
また、本発明が適用可能なシート材容器は、図1に示す如き、底ガゼット部を有するスタンディングパウチに限定されず、例えば、三方シール、四方シール、ピロー、ガゼットピロー、口栓付きパウチ等の軟包装袋容器に適用可能である。
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明は斯かる実施例に限定されるものではない。
〔実施例1〜10〕
図5に示す製造装置40と基本構成が同じ製造装置(シート材容器のエアバッグ部形成用空気封入装置)を用い、固定手段の挟圧面の溝の形状などを適宜変更して、図10に示す試験サンプルSに対して、その容器本体11のエアバッグ部形成用非接合部23への空気封入工程を実施した。この試験サンプルSは、前記実施態様における製造目的物たるシート材容器10の製造中間体である、容器用シート材料10Aに相当する。尚、図10では試験サンプルSについて、容器用シート材料10Aと同様の構成部分に同一の符号を付すと共に、各部の寸法を記載している。試験サンプルSにおける注入穴33の径(図7(b)のR2に相当する長さ)は4mmであった。この試験サンプルSを用いた空気封入工程は、基本的に前記実施態様の容器用シート材料10Aを用いた空気封入工程(エアバッグ部16の形成工程)と同じである。使用したノズルは、該ノズルの先端の空気吹き出し口の外径(図7(b)のR1に相当する長さ)3mm、内径2mmであり、また空気封入工程では該ノズルの先端を終始、試験サンプルSから0.5mm離間した位置に配置した。試験サンプルSのエアバッグ部形成用非接合部23に所定量の圧縮空気を注入した後、図10中点線で囲んだ領域をヒートシールして、幅5mmのシール部31Sを形成し、エアバッグ部形成用非接合部23に空気を封入してこれをエアバッグ部とした。
試験サンプルSを構成するシート材(軟包材)の層構成は、外側から順に、LLDPE40μm(最外層)/ONy15μm/VM−PET12μm/LLDPE40μm/エアバッグ部形成用非接合部23/LLDPE40μm/PET−VM12μm/ONy15μm/LLDPE40μm(最内層)であった。ここで、「ONy」は延伸ナイロン、「VM−PET」又は「PET−VM」はアルミ蒸着ポリエチレンテレフタレート等の金属蒸着されたポリエチレンテレフタレートをそれぞれ意味する。
〔試験例〕
前記の試験サンプルSを用いた空気封入工程において、図10中符号50で示す点線で囲んだ領域に圧力センサを設置し、該空気封入工程におけるエアバッグ部形成用非接合部23の、ノズルによる空気の注入開始から10秒経過時点での内圧(充填圧力)を測定した。その結果を下記表1に示す。尚、圧力センサを試験サンプルSに取り付けるための取付穴(直径4mm)は、図10中符号51で示す位置に穿設した。
下記表1の評価基準に関し、5回の試験を実施した際の平均充填圧力と設定圧力との誤差率を計算した。尚、誤差率は、{(設定圧力―平均充填圧力)/(設定圧力)}×100(%)として計算した値である。斯かる誤差率が小さいほど、短時間でエアバッグ部形成用非接合部への空気の充填を正確に行うことができ、無駄なくスムーズに実施できたことを示す。また、5回の試験を実施した際の充填圧力の標準偏差を計算した。斯かる標準偏差が小さいほど、空気封入工程を連続的に実施した場合に安定的に実施できたことを示す。誤差率、並びに標準偏差の値が小さい程、空気の注入操作を簡単な工程で短時間で確実に行うことができ、シート材容器を効率よく製造することができる。
実施例1〜10は何れも、空気注入部を固定する固定手段の挟圧面に溝を穿設し、該溝を幅方向(即ち、空気注入部を通る空気の流通方向と直交する方向)に沿う断面視において中心角180度以下の円弧状としたものであり、これによって、空気の注入操作を簡単な工程で短時間で確実に行うことができ、シート材容器を効率良く製造することができている。表1に示す通り、実施例1〜10は何れも誤差率、標準偏差が全て高いレベルで実現できるが、設定圧力が高く、流量が多いものでは一層良好であった。
実施例1〜3の群及び実施例4〜6の群は、それぞれ、空気充填時の設定圧力を150kPa又は100kPaに固定して、空気の流量のみを変更したものであるところ、両群共に、流量が多いほど誤差率が小さいという結果になった。これは、流量を多くすることで空気注入部と溝との密着性が向上し、空気漏れが少なくなったことに起因すると推察される。このことから、エアバッグ部を形成するための空気の注入操作を比較的短時間で確実に行うためには、充填する空気の流量を多く設定することが好ましいことがわかる。
また、実施例3、5及び7は、空気充填時の空気の流量は28L/min又は30L/minであって実質同等であるが、設定圧力が互いに異なるところ、設定圧力が最も高い実施例3が最も誤差率が小さいという結果になった。これは、設定圧力を高くすることで、流量を多くした場合と同じく、空気注入部と溝との密着性が向上し空気漏れが少なくなったことに起因すると推察される。このことから、エアバッグ部を形成するための空気の注入操作を比較的短時間で確実に行うためには、空気充填時の設定圧力を多く設定することが好ましいことがわかる。