以下に、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。ただし、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい限定がされているが、発明の範囲を以下に限定するものではない。なお、以下の実施形態の説明に用いる全図においては、特に理由がない限り、同様箇所には同一符号を付す。また、以下の実施形態において、同様の構成・動作に関しては繰り返しの説明を省略する場合がある。
(第1の実施形態)
〔構成〕
まず、本発明の第1の実施形態に係る避難誘導システムについて図面を参照しながら説明する。図1は、本実施形態の避難誘導システム1の構成を示すブロック図である。
避難誘導システム1は、圧力データ取得手段11と、解析制御手段12と、記憶手段13と、避難指示手段14とを備える。避難誘導システム1は、施設内の所定の位置に設置されている少なくとも一つの圧力センサ20に接続される。
圧力センサ20は、自身に加えられた圧力を計測するセンサである。圧力センサ20は、複数の感圧部が並べられた構造を有し、感圧部ごとに加えられた圧力の大きさ(圧力値)を計測する。圧力センサ20は、感圧部ごとに計測した圧力値を含むデータ(以下、圧力データ)を圧力データ取得手段11に出力する。
具体的には、圧力センサ20は、各感圧部に加えられた圧力値を各感圧部の位置情報(アドレス)に対応付けた圧力データを出力する。なお、圧力が加えられた感圧部によって計測された圧力値を、各感圧部のアドレスに対応付けた圧力データのまとまりのことを圧力パターンとも呼ぶ。例えば、圧力パターンは、図2のように、圧力値の大小を濃淡で示して2次元状にマッピングできるデータ形式であればよい。また、圧力パターンは、図3のように、感圧部のアドレスに圧力値を対応付けたグラフで表現できるデータ形式であってもよい。なお、圧力パターンのデータ形式には限定を加えない。
また、圧力センサ20は、感圧素子を含む感圧シートとして構成できる。感圧シートは、加えられた圧力を計測できるデバイスである。感圧シートは、加えられた圧力の大きさに応じて電気抵抗が変化する感圧材料を含む感圧素子を含み、感圧素子に加えられる圧力の大きさに応じた感圧材料の電気抵抗の変化に伴う電流値の変化を取得するためのセンサである。
圧力センサ20は、単一の感圧素子を含む感圧シートをマトリックス状に配置して構成してもよいし、複数の感圧素子がマトリックス状に配置された感圧シートで構成してもよい。以下においては、複数の感圧素子がマトリックス状に配置された構造を含む感圧シートを圧力センサ20として用いるものとする。複数の感圧素子を含む感圧シートでは、感圧素子に加えられる圧力に応じた感圧材料の抵抗値変化に伴う電流値の変化をアクティブマトリックス方式で取得できる。
印刷エレクトロニクスの進展により、大面積な感圧シートの低価格化が見込まれている。そのため、施設内の床面に感圧シートを設置することがコスト的に可能になりつつある。例えば、人の存在を識別するためには、感圧シートを構成する感圧素子間の距離を1センチメートル程度に設定すればよい。この場合、感圧シートは、1平方メートルあたり1万ピクセルを有する。
圧力センサ20に含まれる複数の感圧素子は、圧力センサ20の上に人がいるか否かを識別できる間隔で格子状に配置される。圧力センサ20は、センサ上の人の状態(立位、座位、臥位等)を検出できる解像度を有する。圧力センサ20は、センサ上の人が冷静な避難行動をとっているか、パニック行動をとっており右往左往しているか、倒れているか、座り混んでいるか、何かに寄りかかっているかなど、人の状態を解析するための圧力データを出力する。圧力センサ20は、圧力パターンを出力するように構成してもよい。
圧力センサ20は、施設内の所定の位置に少なくとも一つ設置される。圧力センサ20は、施設内の複数個所に設置されるのが好ましい。圧力センサ20の設置箇所は任意に設定できる。例えば、圧力センサ20は、施設の出入口近傍に設置される。出入口近傍に圧力センサ20を設置すれば、施設に出入りする人の数や、非常時に施設外に避難できた人の数を把握できる。また、例えば、圧力センサ20は、トイレなどのように監視カメラを設置しにくい位置に設置することもできる。通常、トイレなどにはプライバシーの観点から監視カメラを置くことができないが、圧力センサ20であれば問題なく設置できる。なお、圧力センサ20自体を避難誘導システム1に含めてもよい。
圧力データ取得手段11は、圧力センサ20に接続される。また、圧力データ取得手段11は、解析制御手段12および記憶手段13に接続される。
圧力データ取得手段11は、所定のタイミングで圧力センサ20から圧力データを取得する。圧力データ取得手段11は、平常時には、例えば30分ごとや1時間ごとなどといった所定の間隔で圧力センサ20から圧力データを取得する。圧力データ取得手段11は、人の出入りが頻繁になる時間帯や状況においては、圧力データの取得間隔を短くしてもよい。また、圧力データ取得手段11は、深夜のように施設内が無人となる時間帯においては、圧力データの取得間隔を長くしてもよい。また、圧力データ取得手段11は、施設内に人が存在しない状態において取得された圧力データをブランクデータとして取得してもよい。
圧力データ取得手段11は、平常時に取得した圧力データ(参照データとも呼ぶ)を記憶手段13に記憶させる。なお、圧力データ取得手段11は、自身に設けられた記憶領域(図示しない)やその他の記憶装置に参照データを記憶してもよい。
解析制御手段12は、圧力データ取得手段11、記憶手段13および避難指示手段14に接続される。
解析制御手段12は、非常事態が発生するとその機能を起動し、非常時に取得した圧力データ(以下、解析対象データ)と、平常時に取得された参照データとを比較して解析する。例えば、解析制御手段12の起動は、非常事態が発生した際に外部から行うように構成してもよいし、解析制御手段12自身が非常事態を検知して行うように構成してもよい。
解析制御手段12は、解析対象データと参照データとの比較結果から、圧力センサ20の上における人の有無や、圧力センサ20上に位置する人の状態を解析する。例えば、解析制御手段12は、圧力センサ20から出力された圧力データを典型的なパターンと比較して、圧力センサ20上の人の状態を解析する。解析制御手段12は、避難指示手段14に解析結果を出力する。
解析制御手段12は、圧力センサ20上の人が冷静な避難行動をとっているか、パニック行動をとっており右往左往しているかなどといった状態を圧力センサ20の出力データから解析する。例えば、解析制御手段12は、圧力センサ20上の人が倒れているか、座り混んでいるか、何かに寄り掛かっているかなどといった状態に関する典型的なパターンと解析対象データとを比較し、圧力センサ20上の人の状態を解析する。例えば、解析制御手段12は、圧力センサ20上における対象物の圧力センサ20との接地面積と、圧力センサ20から得られる圧力データと、圧力データの時間変化と、平常時に取得された参照データとを用いて人の状態を解析する。
また、解析制御手段12は、解析した人の状態から、室内の状況を推定することもできる。例えば、解析制御手段12は、複数の人が右往左往しているような状況であると解析すれば、室内でパニックが起きていると推定する。また、例えば、解析制御手段12は、複数の人が倒れているような状況であると解析すれば、室内に火事などの異常が起きていると推定する。
ここで、非常時における解析制御手段12の動作について説明する。
まず、解析制御手段12は、検出対象データと参照データとを比較し、参照データには含まれない圧力データ(以下、検出データ)を抽出する。解析制御手段12は、抽出した検出データを用いてその部屋に存在している物体が何かを認識する。
次に、解析制御手段12は、識別された物体が動いているか否かを認識する。解析制御手段12は、物体が動いている場合、その物体は人であると識別する。なお、本実施形態においては、圧力データに基づいて動いていると判定された物体は、その物体が人か否か判別がしにくい場合においても、安全性を考慮して人であると判定する。
続いて、解析制御手段12は、抽出された検出データと、接地面積から識別された物体の重量を算出する。例えば、解析制御手段12は、算出された物体の重量が人の体重の想定範囲内である場合は、その物体が人であると識別するように構成してもよい。一方、解析制御手段12は、算出された物体の重量が人の体重の想定範囲外である場合は、その物体が人以外の物体であると識別すればよい。
解析制御手段12は、人であると識別された物体と圧力センサ20との接地面積、圧力センサ20から得られる圧力データ(検出データ)、検出データの時間変化とを解析することによって、圧力センサ20上に位置する人の状況を識別する。
例えば、解析制御手段12は、検出データと、物体の圧力センサ20との接地面積とから算出された人の体重に基づいて、識別された人が大人であるか子供であるかを区別する。
例えば、解析制御手段12は、圧力データの時間変化からその人の状況を判別する。解析制御手段12は、人と識別された物体が通常想定される速度で移動していれば、その人は健常者であると認識する。一方、解析制御手段12は、人と識別された物体の移動速度が極端に遅い場合は、その人が怪我をしているか、障碍があるか、老人であるかなどと判別する。
また、解析制御手段12は、圧力センサ20上で人と識別された物体と圧力センサ20との接触面積や接触パターンに基づいて、その人が立っているか、座っているか、倒れているかなどの状態を識別する。例えば、解析制御手段12は、圧力センサ20と物体との接触面積から、足裏接地面積相当、体全体面積相当、臀部面積相当または体側面積相当であるかなどを判別する。
また、解析制御手段12は、平常時に取得される参照データを用いて、圧力センサ20上に椅子や机、ソファ、ベッドなどの家具が置かれている場所に人と想定される重量増加があるか否かを検出する。解析制御手段12は、重量増加が検出された家具が置かれている場所における圧力データに時間変化がない場合、人が家具の上で座っている、寄りかかっているまたは倒れていて動きが取れないといった状態を判別する。
記憶手段13は、圧力データ取得手段11および解析制御手段12に接続される。記憶手段13は、参照データや避難者の状況などに関するデータを記憶するための記憶装置である。記憶手段13は、圧力センサ20によって取得される圧力データ(参照データや圧力パターンを含む)に関する情報や、避難者の避難状況、解析結果などを記憶する。
避難指示手段14は、解析制御手段12に接続される。また、避難指示手段14は、圧力センサ20の近傍に設置されたディスプレイやスピーカなどの出力装置(図示しない)に接続される。避難指示手段14は、避難者の状態に応じた避難指示情報を出力装置に出力する。
避難指示手段14は、施設内に存在する人の状況に応じた避難指示情報をそれぞれの人に向けて出力する。すなわち、避難指示手段14は、避難者の状況に応じて、集中的、個別的かつ自動的に避難指示情報を出力する。避難指示手段14は、避難者に対して視覚的または聴覚的な情報を生成するための避難指示情報を出力する。
例えば、避難指示手段14は、避難指示する地点からの最適な避難経路に関する避難指示情報を出力する。例えば、避難指示手段14は、識別された人がパニック状態にある場合には、その人の精神を落ち着かせるために、「落ち着いてください」などといった音声を避難指示情報として出力する。その際、避難指示手段14は、解析制御手段12において識別された人の特徴および状態のデータを活用する。
避難指示手段14は、解析制御手段12の解析結果に基づいて、識別された人に怪我や障害があるために自力で避難できないと判断した場合には、速やかに救助を派遣するための避難指示情報を出力する。この場合、避難指示手段14は、外部のシステムに対して救助手配を示す避難指示情報を出力する。
以上が、本実施形態に係る避難誘導システム1の構成についての説明である。本実施形態の避難誘導システム1は、電力の節約および不要な個人情報取得の回避を目的として、平常時には圧力データ取得手段11のみを稼働させ、非常時のみシステムの全機能を稼働させることが好ましい。なお、平常時に圧力データ取得手段11以外の機能を稼動させて、システムチェックやデータ収集を行ってもよい。
〔動作〕
次に、本実施形態に係る避難誘導システム1の動作について、図4のフローチャートを用いて説明する。
図4において、まず、避難誘導システム1は、現在が非常時であるか否かを判別する(ステップS11)。避難誘導システム1は、施設内に設置された非常通報機器や煙探知装置、地震計、防犯システムなどからの情報を用いて、現時点が非常時であるか平常時であるかを判断する。例えば、外部の機器や装置、システムに解析制御手段12を接続し、非常時に起動するように構成すればよい。
平常時の場合(ステップS11でNo)、圧力データをチェックするならば(ステップS12でYes)、避難誘導システム1は、所定のタイミングで圧力センサ20の出力した圧力データをチェックする(ステップS13)。圧力データをチェックしないならば(ステップS12でNo)、ステップS11に戻る。
避難誘導システム1は、ステップS13でチェックした圧力データを参照データとして記憶手段13に記憶する(ステップS14)。ステップS11〜ステップS14のルーチンにおいて、避難誘導システム1は、主に、圧力センサ20の上に人物が位置しない場合の圧力データを取得する。なお、ステップS11〜ステップS14のルーチンにおいて、避難誘導システム1は、平常時において、圧力センサ20の上に人物が位置する場合の圧力データを取得するように構成してもよい。
一方、非常時の場合(ステップS11でYes)、避難誘導システム1は、圧力センサ20から出力された圧力データを解析し、圧力センサ20の上における人の有無を判定する(ステップS15)。
避難誘導システム1は、圧力センサ20上に人が位置すると判定した場合(ステップS15でYes)、圧力センサ20上の人に対して避難経路を指示する(ステップS16)。このとき、避難誘導システム1は、パニック状態にあると判定された人がいると判定した場合、その人の近傍に設置された出力装置から精神的な安定を促すアナウンスを流すなどの対応を行う。
ところで、避難誘導システム1が圧力センサ20上に人が位置しないと判定した場合(ステップS15でNo)、ステップS17に進む。
処理を継続する場合(ステップS17でYes)はステップS11に戻り、処理を終了する場合(ステップS17でNo)は図4のフローチャートに沿った処理を終了とする。すなわち、ステップS11で非常時と判断された場合は、ステップS15〜ステップS16のルーチンを繰り返す。
以上が、本実施形態に係る避難誘導システム1の動作についての説明である。なお、図4のフローチャートに基づいた動作は一例であって、本発明の範囲を限定するものではない。
〔感圧シート〕
ここで、本実施形態の避難誘導システム1が解析する圧力データを生成する圧力センサ20の一例について説明する。
図5は、圧力センサ20の一例である感圧シート200の構成を示す概念図である。本実施形態では、感圧素子210をマトリックス状に配置した感圧シート200を圧力センサ20として用いることを想定する。感圧シート200を構成する感圧素子210は、加圧された際に電気抵抗が変化する感圧層を含む。
図5のように、感圧シート200は、複数の感圧素子210がm行n列の二次元状に並べられたマトリックス回路201を有する(m、nは自然数)。図5の例では、マトリックス回路201を構成する感圧素子210は薄膜トランジスタと抵抗(感圧層)とを1つずつ含む。
各トランジスタに関して、ゲート電極はゲート線G1〜Gmに接続され、ソース電極はソース線S1〜Snに接続され、ドレイン電極は抵抗の一端に接続される。各抵抗に関して、一端はトランジスタのドレイン電極に接続され、他端は接地される。各ソース線S1〜Snと各ゲート線G1〜Gmとは互いに直行する。なお、図5においては、ソース線やゲート線に電圧を印加する走査回路や読み出し回路などの構成については省略する。また、図5には図示していないが、感圧シート200は、生成したデータを避難誘導システム1に送信する送信装置を含む。感圧シート200は、避難誘導システムに有線接続されていてもよいし、無線接続されていてもよい。
感圧素子210ごとに出力される電流値に対応する圧力値を二次元で諧調表示させると、感圧シート200に対して加えられた圧力の二次元分布が得られる。例えば、感圧素子210に加えられる圧力の大きさに応じて色や濃淡を変えるように階調表示させれば、直感的に把握しやすい圧力分布が得られる。
図6は、感圧素子210を半導体素子で構成する場合の一例である。感圧素子210は、第1基板211、ゲート電極212、ゲート酸化膜213、ソース電極214、ドレイン電極215、チャネル層216、中間層217、ビア218、第1電極219、感圧層220、第2電極221、第2基板222を備える。なお、図6は、感圧素子210の一例であって、本発明の範囲を限定するものではない。また、感圧シート200に要求される感度によっては、感圧素子210を半導体素子として形成せず、巨視的な大きさの電気回路で構成してもよい。その場合、各感圧素子210の感圧層220ごとに電気抵抗を計測できるように導線を配置すればよい。
ゲート電極212は、第1基板211上に形成される。ゲート電極212はゲート酸化膜213によって被覆される。ゲート酸化膜213上には、ゲート電極212上に隙間が開くように、ソース電極214とドレイン電極215とを間隔を開けて形成される。ソース電極214とドレイン電極215との間には、チャネル層216が形成される。チャネル層216は、ゲート酸化膜213を挟んでゲート電極212と対向する位置に形成される。ゲート電極212、ゲート酸化膜213、ソース電極214、ドレイン電極215およびチャネル層216が薄膜トランジスタを構成する。
ソース電極214、ドレイン電極215およびチャネル層216は、中間層217によって被覆される。中間層217の一部には、中間層217の表裏を貫通するビア218を設ける。中間層217の上には、第1電極219を形成する。ビア218は、ドレイン電極215と第1電極219とを電気的に接続する。薄膜トランジスタ、中間層217、ビア218および第1電極219の組み合わせた構成を感圧セルとも呼ぶ。なお、チャネル層216を保護層で被覆してもよい。
中間層217および第1電極219の上には、感圧層220を配置する。感圧層220の上には第2電極221が形成される。第2電極221の上には、第2基板222が形成される。
図6のように、感圧シート200を構成する各感圧素子210は、圧力が加えられると変形する感圧層220を含む。感圧層220の変形箇所では、変形量に応じて電気抵抗が変化する。感圧層220は、薄膜トランジスタ素子と感圧層220とが直列に接続された構造を有する。ON状態の薄膜トランジスタ素子には、感圧層220の変形量に応じた電流が流れる。
感圧シート200上に物体が乗ると、物体によって加圧された感圧素子210において圧力値が検出される。感圧シート200は、各感圧素子210において検出された圧力値を感圧素子210のアドレス(位置情報)と関連付けた圧力データを出力する。このとき、感圧シート200は、全ての感圧素子210の圧力データを出力してもよいし、加圧された感圧素子210の圧力データのみを出力してもよい。また、感圧シート200は、各感圧素子210における電流値を避難誘導システム1に出力するように構成してもよい。すなわち、感圧シート200は、各感圧素子210のアドレスと、圧力値および電流値の少なくともいずれかとを関連付けて出力する。
次に、感圧素子210を用いて圧力を検知する方法について説明する。
まず、圧力を検知する際には、ソース電極214と第2電極221との間に電圧を印加するとともに、ゲート電極212に電圧を印加し、薄膜トランジスタをオン状態にする。
感圧素子210に圧力が加えられていない状態では感圧層220が絶縁性を示すため、ソース電極214と第2電極221との間に電流が流れない。一方、感圧素子210に圧力が加えられた状態では、感圧層220が導電性を示すため、ソース電極214と第2電極221との間に電流が流れる。すなわち、ソース電極214と第2電極221との間を流れる電流値を計測することによって、感圧素子210に加えられた圧力値を計測できる。
図7は、感圧層220に加えられる圧力と、圧力が加えられた感圧層220の電気抵抗との関係を表すグラフの一例である。感圧層220は、加えられる圧力値に応じて電気抵抗が変化する。電気抵抗の変化は、ソース電極214と第2電極221との間を流れる電流値を計測することによって検出できる。なお、図5においては、ソース電極214と第2電極221との間を流れる電流値を計測する具体的な手段については省略している。
図8および図9は、感圧素子210に圧力が加えられた状態を示す概念図である。図8は、圧力P1が加えられた際の感圧層220、第2電極221および第2基板222の変形の程度を示す。図9は、圧力P2が加えられた際の感圧層220、第2電極221および第2基板222の変形の程度を示す。図8および図9の例では、圧力P2のほうが圧力P1よりも大きいものとする。なお、図8および図9の例では、加えられた圧力による感圧素子210の変形を誇張して示しており、実際の変形の度合いを反映したものではない。
図7のグラフを参照すると、圧力P1が加えられた際の感圧層220の電気抵抗はR1である。このとき、ソース電極214と第2電極221との間には、感圧層220の電気抵抗R1を反映した電流が流れる。一方、また、図7のグラフを参照すると、圧力P2が加えられた際の感圧層220の電気抵抗はR2である。このとき、ソース電極214と第2電極221との間には、感圧層220の電気抵抗R2を反映した電流が流れる。
すなわち、感圧層233に加えられた圧力値と、ソース電極214と第2電極221との間に流れる電流値との対応関係を求めておけば、感圧素子210に加えられた圧力値を計測できる。
次に、感圧シート200に加えられた圧力分布を検出する方法について説明する。
まず、第2電極221に電圧を印加した状態で、複数のゲート線G1〜Gmに順番に電圧を印加していく。
次に、ゲート線G1〜Gmに接続された薄膜トランジスタのソース電極214を流れる電流を測定し、いずれの感圧素子210が加圧されているのかを検出する。全ての感圧素子210について加圧の有無を検出することによって、感圧シート200上の物体の形状を二次元的に把握できる。
また、感圧シート200を用いれば、各感圧素子210への加圧の有無だけではなく、各感圧素子210に加えられた圧力値を計測できる。そのため、感圧シート200を用いれば、感圧シート200上の物体の形状に加えて、圧力分布を三次元的に表現できる。
次に、感圧素子210を構成する構成要素の具体例について詳細に説明する。
第1基板211および第2基板222は、ガラスやシリコンなどの無機材料、アクリル系樹脂やポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂のなどの高分子材料など、内部の構成要素を保持できる材料であれば特に限定されない。ただし、第1基板211および第2基板222は、加えられた圧力によって変形できる程度の柔軟さと、繰り返し踏まれても壊れない程度の頑強さを兼ね備えていることが好ましい。特に、感圧素子210の最表面に形成される第2基板222は、繰り返して圧力が加えられることを考慮すると、感圧層220に圧力を伝えやすく、フレキシブル性を有する高分子材料で形成することが望ましい。また、第2基板222には、布などの繊維体を使用してもよい。
ゲート電極212、ソース電極214、ドレイン電極215、ビア218、第1電極219および第2電極221などの電極材料には、一般的な金属を用いることができる。例えば、金、銀、白金、銅、インジウム、アルミニウム、マグネシウムなどの金属を電極材料として用いることができる。また、酸化インジウム錫合金やマグネシウム−インジウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金、アルミニウム−リチウム合金、アルミニウム−スカンジウム−リチウム合金、マグネシウム−銀合金などの合金を電極材料として用いることができる。また、酸化錫などの導電性酸化物や、導電性ポリマーなどの有機材料を電極材料として用いることもできる。感圧素子210を構成する電極材料は、感圧シート200に加えられた圧力に対する耐変形性を有していることが好ましい。
感圧素子210を構成する電極は、真空蒸着法やスパッタ法、エッチング法、リフトオフなどの一般的な電極形成プロセスで形成できる。また、有機材料や、銀ペースト、金属粒子を含んだ分散液、金属の有機化合物を原料として電極を形成する場合、スピンコート法やディップ法、ディスペンサ法、インクジェット法などの溶液プロセスも利用できる。また、一般的なフォトリソエッチング法やシャドウマスクを用いたパターニング法などを用いて電極を加工してもよい。溶液プロセスを用いて電極を形成する場合は、ディスペンサ法やインクジェット法によって直接電極を描画してもよい。
ゲート電極212、ソース電極214およびドレイン電極215は、薄すぎると電気伝導性が低下し、厚すぎると凹凸の高さからゲート酸化膜213の絶縁性が低下する。そのため、ゲート電極212、ソース電極214およびドレイン電極215の膜厚は、50ナノメートル以上、200ナノメートル以下とすることが好ましい。ビア218は、中間層217の膜厚と同程度の厚さにすればよい。第1電極219は、感圧層220との電気的接続を得るために、1マイクロメートル以上の膜厚にすることが好ましい。
ゲート酸化膜213および中間層217には、電気絶縁性を有し、チャネル層216の電気特性に影響を与えない材料を適用できる。例えば、二酸化ケイ素膜や窒化ケイ素膜のような無機化合物、アクリル樹脂やポリイミドのような有機絶縁性材料をゲート酸化膜213および中間層217の材料に使用できる。また、中間層217を形成する際にチャネル層216の特性低下を引き起こす可能性がある場合は、チャネル層216を保護するための保護層を形成してもよい。
ゲート酸化膜213および中間層217は、真空蒸着法やスパッタリング法などのドライプロセス、スピンコート法やディップ法、ディスペンサ法、インクジェット法などの溶液プロセスによって形成できる。
ゲート酸化膜213を厚くしすぎると、後で形成する電極などの成膜や特性の維持が困難になるとともに、薄膜トランジスタの動作時の印加電圧が大きくなる。一方、ゲート酸化膜213を薄くしすぎると、ソース電極またはドレイン電極と、ゲート電極との間の短絡する可能性がある。そのため、ゲート酸化膜213は、数十ナノメートルから数百ナノメートルの範囲内の膜厚にすることが望ましい。
中間層217は、ソース電極214またはドレイン電極215と、第1電極219との間の電気的な短絡を防ぐために、1マイクロメートルから10マイクロメートルの範囲内の膜厚にすることが好ましい。
チャネル層216は、縮合多環式芳香族化合物やフタロシアニン系化合物、アミン系化合物、フタロシアニン系化合物、ポリマー系半導体特性を有する有機化合物などの半導体特性を有する材料で形成できる。縮合多環式芳香族化合物の一例としては、テトラセンやペンタセンなどを挙げられる。フタロシアニン系化合物としては、銅フタロシアニンや亜鉛フタロシアニンなどを挙げられる。ポリマー系半導体特性を有する有機化合物としては、ポリチオフェンやポリビニルカルバゾールなどを挙げられる。また、カーボンナノチューブや、カーボンナノチューブを含有する混合物をチャネル層216に使用してもよい。
チャネル層216は、真空蒸着法等のドライプロセス、スピンコート法、ディップ法、ディスペンサ法、インクジェット法等の溶液プロセスを利用できる。チャネル層216は、薄すぎるとチャネル内を流れる電流が小さくなり、厚すぎるとチャネル内の抵抗成分が増加する要因になるので、数ナノメートルから数百ナノメートルの範囲の膜厚にすることが好ましい。
感圧層220は、圧力が印加された際に電気抵抗が変化する材料であれば特に限定されない。感圧層220は、圧力印加を繰り返しても絶縁性および導電性を安定して再現する必要があるため、導電性微粒子を混入したゴムが適している。感圧層220は、印加圧力の大小で電気抵抗を変化させるために、数マイクロメートルから数百マイクロメートルの範囲の膜厚にすることが好ましい。
感圧素子210の大きさは、人の状態を検知できるのであれば特に限定しない。例えば、高い解像度が要求されない場合、感圧素子210を1センチメートル以上の大きさにしてもよい。また、高い解像度が要求される場合、感圧素子210を1センチメートル以下の大きさにしてもよい。さらに高い解像度が要求される場合、感圧素子210を1マイクロメートルから1ミリメートル程度の大きさにしてもよい。
以上、感圧シート200を実現するための具体例を挙げたが、本発明の範囲は上述の具体例に限定されない。
ここで、解析制御手段12が、非常時に生成された圧力データと、記憶手段13に格納しておいた通常時に蓄積した参照データとを比較し、感圧シート200上の人の状態を解析することについて例を挙げて説明する。
図10〜図12は、感圧シート200上に人が加圧された際の圧力分布の一例である。なお、図10〜図12に示す感圧シート200のピクセルは一例であって、本実施形態の避難誘導システム1が利用する感圧シート200を限定するものではない。
図10は、感圧シート200の上に人が立っている状態で加圧された位置(破線部分)の感圧素子210に計測される圧力データに基づいて生成される圧力パターンの一例を示す。図11は、感圧シート200の上に人が座っている状態で加圧された位置(破線部分)の感圧素子210に計測される圧力データに基づいて生成される圧力パターンの一例を示す。図12は、感圧シート200上に人が横たわった状態で加圧された位置(破線部分)の感圧素子210に計測される圧力データに基づいて生成される圧力パターンの一例を示す。
解析制御手段12は、ある時刻に感圧シート200によって生成された圧力データから、その時刻における感圧シート200上の人の状態を判別する。解析制御手段12は、感圧シート200に加圧された部分の面積や圧力値などから、感圧シート200上の人の姿勢等を判別できる。
例えば、非常時において、時刻t1において図10の圧力パターン、時刻t2において図11の圧力パターン、時刻t3において図12の圧力パターンが得られたとする。このとき、解析制御手段12は、図10〜図12の圧力パターンを記憶手段13などに記憶された参照パターンと比較する。例えば、解析制御手段12は、図10の圧力パターンが立位であり、図11の圧力パターンが座位であり、図12の圧力パターンが臥位であると判別する。
また、解析制御手段12は、連続する時刻における感圧シート200上に位置する人の姿勢の変化から、感圧シート200上の人の状態を推測できる。
例えば、解析制御手段12は、時刻t1〜時刻t3において感圧シート200上の人が立っている状態から座った状態になり、さらに横たわった状態になったことから、感圧シート200上で人が倒れた可能性があると判断できる。
感圧シート200の各感圧素子210によって計測される圧力値は、そのまま使用してもよいし、図13および図14のようにデータ処理を加えてもよい。
図13は、感圧シート200によって生成される圧力パターンから輪郭を抽出する例である。例えば、圧力パターンの輪郭は、圧力値が急激に変化する部分において隣接する素子間の差分を取ることで抽出できる。なお、圧力パターンの輪郭の抽出方法は、ここで挙げた方法に限らず任意の手法を用いることができる。図13のように抽出された輪郭は、圧力パターンに設定できる。
図14は、感圧シート200上の圧力パターンを二値化して塗りつぶした後、圧力パターンの部分に加えられた圧力値の合計値を平均化して表示する例である。例えば、圧力パターンの領域を二値化で決定し、その領域に加えられた圧力の合計値を面積で割れば、その領域に加えられた圧力を平均化した情報を示すことができる。図14の例を用いれば、感圧シート200上の人が立位から座位、臥位に姿勢を変化させた際に、姿勢の変化だけではなく、それぞれの姿勢における詳細な状態を検証できる。
例えば、歩いている人が検出された際に、右足と左足とで圧力パターンの平均圧力が大きく異なることが検出されれば、片足を引きずって歩いているという状態を推定できる。また、横たわっている人が検出された際に、圧力パターンの平均圧力が全く変わらない状態が続けば、感圧シート200上で人が気を失っていると推定できる。また、横たわっている人が検出された際に、あまりにも大きい平均圧力が検出されれば、感圧シート200上で倒れている人が何かの下敷きになっていると推定できる。
図15は、感圧シート200を所定の位置(避難経路)に配置する一例を示す概念図である。図15の例では、感圧シート200を施設の出口の手前に配置する。また、感圧シート200の近傍には、避難指示手段14によって出力された避難指示情報を出力させる出力装置240を設置する。
本実施形態の避難誘導システム1は、図15のように所定の位置に配置された感圧シート200によって生成される圧力データを用いて、施設を出入りする人の状態や避難状況を取得する。施設内に存在する人は、出力装置240に出力された避難指示情報に応じることによって施設外に避難できる。
以上のように、本実施形態に係る避難誘導システムは、非常時において施設内に取り残されている不特定多数の人を、施設内の床面に二次元状に設置された圧力センサを用いて正確に検知して識別し、人の状態の判別を行う。その結果、本実施形態に係る避難誘導システムによれば、避難者の状態に応じて適切な避難指示を出し、安全、確実かつ迅速に避難者を施設外に誘導できる。
〔変形例〕
ここで、本実施形態に係る避難誘導システム1の変形例について説明する。
図16〜図18の感圧シート200Bは、図5〜図9に示した感圧シート200の変形例である。
図16の感圧シート200Bは、複数の配線R1〜Rnと、複数の配線L1〜Lnとが交差するように配置された構成を含む。複数の配線R1〜Rnと、複数の配線L1〜Lnとが交差する箇所が感圧素子230を形成する。感圧素子230が形成される箇所において、複数の配線R1〜Rnと複数の配線L1〜Lnとの間に感圧層を配置する。なお、図16においては、配線R1〜Rnや複数の配線L1〜Lnに接続する走査回路や読み出し回路などの構成については省略する。また、図16には図示していないが、感圧シート200Bは、生成した圧力データを避難誘導システム1に送信する送信装置を含む。感圧シート200Bは、避難誘導システム1に有線接続されていてもよいし、無線接続されていてもよい。
図17は、感圧素子230の断面構造を示す概念図である。感圧素子230は、第1基板231、第1電極232、感圧層233、第2電極234および第2基板235を含む。図17の感圧素子230に含まれる第1基板231、第1電極232、感圧層233、第2電極234および第2基板235の各々は、図6の感圧素子210の第1基板211、第1電極219、感圧層220、第2電極221および第2基板222に相当する。
図18は、感圧素子230に圧力Pが加えられた状態を示す概念図である。感圧層233に加えられた圧力値と、第1電極232と第2電極234との間に流れる電流値との対応関係を求めておけば、感圧素子230に加えられた圧力値を計測できる。なお、図18の例では、加えられた圧力による感圧素子230の変形を誇張して示している。
図19は、本実施形態の避難誘導システム1の利用に関する変形例である。図19にように、本変形例では、施設への入退場データを管理する入退場管理システム30を解析制御手段12に接続する。入退場管理システム30は、施設に設置された既存のシステムを流用できる。入退場管理システム30の要件の一つは、施設外に出た避難者の人数把握である。圧力センサ20により得られた施設内の避難者数の変化と、入退場管理システムから得られた退去者数との整合性を常時確認すれば、避難者数の把握精度が高まる。なお、後述する各実施形態に係るシステムに入退場管理システム30を接続してもよい。
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態に係る避難誘導システム2について図面を参照しながら説明する。図20は、本実施形態の避難誘導システム2の構成を示すブロック図である。
図20のように、避難誘導システム2は、第1の実施形態の避難誘導システム1を構成する圧力データ取得手段11、解析制御手段12、記憶手段13および避難指示手段14に加えて状態表示手段15を備える。
状態表示手段15は、解析制御手段12に接続される。また、状態表示手段15は、警備室や管理室に設置されたモニタなどの表示装置(図示しない)に接続される。
状態表示手段15は、施設内の避難者の避難状況やシステムの動作状況を含む情報、解析結果を解析制御手段12から取得する。状態表示手段15は、解析制御手段12から取得した施設内の避難者の避難状況やシステムの動作状況を含む情報を表示装置に出力する。また、状態表示手段15は、解析制御手段12による解析結果を表示装置に出力する。すなわち、状態表示手段15は、解析制御手段12の解析結果を用いて、圧力センサ20の上に位置する人の状態に関する情報を含む表示データを外部の表示装置(図示しない)に表示させる。本システムを利用する警備員や管理者は、表示装置に表示された表示データによって、システム全体の動作状態や、避難者の避難状況、解析制御手段12の解析結果を確認できる。
〔動作〕
次に、本実施形態に係る避難誘導システム2の動作について、図21のフローチャートを用いて説明する。
図21において、まず、避難誘導システム2は、現在が非常時であるか否かを判別する(ステップS21)。避難誘導システム2は、施設内に設置された非常通報機器や煙探知装置、地震計、防犯システムなどからの情報を用いて、現時点が非常時であるか平常時であるかを判断する。例えば、外部の機器や装置、システムに解析制御手段12を接続し、非常時に起動するように構成すればよい。
平常時の場合(ステップS21でNo)、圧力データをチェックするならば(ステップS22でYes)、避難誘導システム1は、所定のタイミングで圧力センサ20の出力した圧力データをチェックする(ステップS23)。圧力データをチェックしないならば(ステップS22でNo)、ステップS21に戻る。
避難誘導システム2は、ステップS23でチェックした圧力データを参照データとして記憶手段13に記憶する(ステップS24)。ステップS21〜ステップS24のルーチンにおいて、避難誘導システム2は、主に、圧力センサ20の上に人物が位置しない場合の圧力データを取得する。なお、ステップS21〜ステップS24のルーチンにおいて、避難誘導システム2は、平常時において、圧力センサ20の上に人物が位置する場合の圧力データを取得するようにしてもよい。
一方、非常時の場合(ステップS21でYes)、避難誘導システム2は、圧力センサ20から出力された圧力データを解析して、圧力センサ20の上における人の有無を判定する(ステップS25)。
避難誘導システム2は、圧力センサ20上に人が位置すると判定した場合(ステップS25でYes)、圧力センサ20上の人に対して避難経路を指示する(ステップS26)。このとき、避難誘導システム2は、パニック状態にあると判定された人がいると判定した場合、その人の近傍に設置された出力装置から精神的な安定を促すアナウンスを流すなどの対応を行う。
そして、避難誘導システム2は、避難者の人数およびその詳細な位置や状態を状態表示手段15によって図示しない表示装置に表示させる(ステップS27)。
ところで、避難誘導システム2が圧力センサ20上に人が位置しないと判定した場合(ステップS25でNo)、避難者がいないことを状態表示手段15によって図示しない表示装置に表示させる(ステップS28)。そして、ステップS29に進む。
処理を継続する場合(ステップS29でYes)はステップS21に戻り、処理を終了する場合(ステップS29でNo)は図21のフローチャートに沿った処理を終了とする。すなわち、ステップS21で非常時と判断された場合は、ステップS25〜ステップS28のルーチンを繰り返す。
以上が、本実施形態に係る避難誘導システム2の動作についての説明である。なお、図21のフローチャートに基づいた動作は一例であって、本発明の範囲を限定するものではない。
ここで、状態表示手段15が出力する情報を表示する例について説明する。図22は、避難者の避難状況や解析結果を表示装置のモニタ250に表示させる一例である。図22は、3階建ての施設内に避難者が取り残されている状況を想定している。
図22のモニタ250には、フロア表示欄251、避難状況表示欄252、アラーム表示欄253等を表示させる。フロア表示欄251には、感圧シート200を配置した箇所を斜線で示し、各感圧シート200の検出状況をポップアップで示している。図22の例では、トイレ前に設定された感圧シート200によって異常が検出されている。避難状況表示欄252には、施設内残存者数、2階に残存している人の数、アラームの数を表示させている。そして、アラーム表示欄253には、2階トイレ前で人が倒れているという状況と、確認を促すコメントが表示されている。
施設の管理者は、モニタ250に表示された情報を確認することによって、避難状況や解析結果を知ることができる。
以上のように、本実施形態に係る避難誘導システムによれば、第1の実施形態の効果に加えて、警備員や管理人に施設内の避難者の状況やシステムの解析結果を知らせることができる。
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態に係る避難誘導システムについて図面を参照しながら説明する。図23は、本実施形態の避難誘導システム3の構成を示すブロック図である。
図23のように、避難誘導システム3は、第1の実施形態の避難誘導システム1を構成する圧力データ取得手段11、解析制御手段12、記憶手段13、避難指示手段14に加えて、高セキュリティ記憶領域16を備える。なお、高セキュリティ記憶領域16は、第2の実施形態に係る避難誘導システム2に加えてもよい。
高セキュリティ記憶領域16は、平常時に取得される参照データを記憶するための記憶領域である。なお、高セキュリティ記憶領域16は、記憶手段13の内部に設けてもよい。
一般に、人の状態などを収集するシステムは、個人情報の管理の観点から問題が発生する場合があるため、個人情報に関するデータを他の情報よりもセキュリティレベルの高い場所に保存されていることが好ましい。そのため、本実施形態においては、平常時に取得される参照データを高セキュリティ記憶領域16に記憶させる。
高セキュリティ記憶領域16は、平常時には一切アクセスできなくし、非常時になって初めてアクセスできるように構成することが好ましい。平常時に一切アクセスできなければ、個人情報の管理の観点で好ましい。高セキュリティ記憶領域16のセキュリティレベルを上げれば、より高いレベルでの個人情報管理を実現できる。
高セキュリティ記憶領域16は、避難誘導システム3を構成する他の構成要素と同じハードウェア内に設置してもよいし、他の構成要素とは異なるハードウェア内に設置してもよい。例えば、避難誘導システム3の主な構成要素を設置したコンピュータやサーバとは異なるセキュリティの高い装置内に高セキュリティ記憶領域16を配置してもよい。
以上のように、本実施形態に係る避難誘導システムによれば、参照データを高セキュリティ記憶領域に記憶させることによって高いレベルの個人情報管理を実現できる。
(第4の実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態に係る避難誘導システムについて図面を参照しながら説明する。図24は、本実施形態の避難誘導システム4の構成を示すブロック図である。
図24のように、本実施形態の避難誘導システム4は、第1の実施形態の避難誘導システム1を構成する圧力データ取得手段11、解析制御手段12、記憶手段13および避難指示手段14に加えて、分散解析制御手段17を備える。なお、分散解析制御手段17は、第2の実施形態の避難誘導システム2または第3の実施形態の避難誘導システム3に追加してもよい。
分散解析制御手段17は、圧力センサ20と避難指示手段14との近傍に設置される。分散解析制御手段17は、解析制御手段12と同様に、非常時圧力データと平常時圧力データとの比較結果から圧力センサ20の上に位置する人の状態を解析する。分散解析制御手段17は、圧力センサ20が出力する圧力パターンをその場で解析し、状況に応じて避難指示手段14に避難指示情報を表示させて、避難者が必要とする情報を迅速に提供する。分散解析制御手段17は、必要に応じて解析制御手段12と通信し合う。
分散解析制御手段17は、圧力センサ20の数に合わせて設ける。分散解析制御手段17は、圧力センサ20を設置した箇所の近傍に配置され、圧力センサ20ごとに分散して圧力データを解析する。分散解析制御手段17の適用例については後述する。
以上のように、本実施形態の避難誘導システム4によれば、第1の実施形態の効果に加えて、感圧シート200ごとに分散的な処理が可能となる。なお、本実施形態においては、解析制御手段12によって集中制御する集中制御方式を適用したシステムについて説明したが、解析制御手段12を設けずに分散解析制御手段17のみで自律分散的なシステムを構成してもよい。
〔適用例〕
ここで、第4の実施形態に係る避難誘導システム4の適用例を示す。図25および図26は、感圧シート200を施設内の所定の位置に配置する適用例である。なお、図25および図26に関する以下の説明は、分散解析制御手段17を介さずに感圧シート200が生成する圧力パターンを解析制御手段12に出力すれば、第1および第3の実施形態の適用例とみなすこともできる。
図25および図26の適用例では、通路の左側の壁にある出入口の近傍の床に感圧シート200−1を配置し、感圧シート200−1の近傍に避難指示情報を含む音声情報を発するスピーカ241を設置する。そして、感圧シート200−1の近傍に分散解析制御手段17−1を設置する。また、図25および図26の例では、通路の突き当たりの近傍の床に感圧シート200−2を配置し、通路の突き当たりに避難指示情報を含む表示情報を表示する表示装置242を設置する。そして、感圧シート200−2の近傍に分散解析制御手段17−2を設置する。
図25は、平常時の状態を示す。例えば、感圧シート200−1は、トイレや会議室などの出入口の床上に配置され、感圧シート200−1によって生成される圧力データは、所定のタイミングで記憶手段13に記憶される。同様に、感圧シート200−2によって生成される圧力データは、所定のタイミングで記憶手段13に記憶される。通常時に蓄積された圧力データ(参照データ)は、非常時に取得される圧力データと比較される。
図26は、非常時の状態を示す。感圧シート200−1上には人が横たわっており、感圧シート200−2上には人が立ちすくんでいる。避難誘導システム4は、通常時に蓄積された圧力データ(参照データ)を参照して、非常時に取得される圧力データを用いて感圧シート200上の人の状態を判断する。例えば、図26において、避難誘導システム4は、感圧シート200−1上には避難者が横たわっていると判断し、感圧シート200−2上には人が立ちすくんでいると判定する。
感圧シート200上に人が乗ると、人が乗っている位置の感圧素子210の感圧層220が変形する。このとき、加圧される感圧素子210が複数あれば、加圧された各感圧素子210の感圧層220の電気抵抗が変化する。感圧層220は、加えられた圧力値が大きいほど電気抵抗が小さくなるので、感圧シート200から出力される圧力データの分布をパターン化すれば、感圧シート200上に人がいることを検知できる。
例えば、各感圧素子210に加わる圧力値の大小を濃淡で表して二次元状にマッピングし、マッピングした圧力分布を二次元の画像データを圧力データとすればよい。また、各感圧素子210にアドレスを付与し、各感圧素子210に加えられる圧力をアドレスに対応付けた符号列を圧力データとしてもよい。また、パターン化された圧力分布から特徴量を抽出し、抽出された特徴量を圧力データとしてもよい。なお、圧力データの生成方法に関しては、ここで挙げた手法に限らず任意の手法を選択できる。
避難指示手段14は、非常時において、避難者の状態に応じた避難指示情報をスピーカ241および表示装置242に送信する。
非常時においては、避難者の状態に応じて適切な避難指示に関する音声情報がスピーカ241から流される。特に、スピーカ241からは、感圧シート200−1によって検出された避難者の状態に応じた音声情報を流せばよい。例えば、スピーカ241からは、出口までの方向や距離などに関する情報を流したり、感圧シート200上に横たわっている人には起き上がることを促す音を流したりすればよい。また、スピーカ241からは、避難者の精神状態を安定させるための音や、避難者の避難を促すために切迫感のある音を流してもよい。なお、平常時において、施設を利用する利用者を適切な場所に誘導する音声情報をスピーカ241から流してもよい。
また、非常時において、避難者の状態に応じた適切な避難指示が表示装置242に表示される。特に、表示装置242には、感圧シート200−2によって検出された避難者の状態に応じた表示情報を表示すればよい。例えば、表示装置242には、出口までの方向や距離などを表示させることができる。避難者は、自身の状態に合わせて生成される避難指示を表示装置242で確認し、確認した避難指示に応じることによって施設外に誘導される。なお、平常時において、施設の利用者を適切な場所に誘導する表示情報を表示装置242に表示させてもよい。
以上のように、本適用例によれば、施設内の避難者の状態を検知し、避難者の状態に応じて適切な避難指示を出すことができる。
(ハードウェア)
ここで、図27を用いて、本発明の実施形態に係る評価装置を実現するためのハードウェア90について説明する。なお、ハードウェア90は、本実施形態の避難誘導システムを実現するための一例であって、本発明の範囲を限定するものではない。
図27のように、ハードウェア90は、プロセッサ91、主記憶装置92、補助記憶装置93、入出力インターフェース95およびネットワークアダプター96を備える。プロセッサ91、主記憶装置92、補助記憶装置93、入出力インターフェース95およびネットワークアダプター96は、バス99を介して互いに接続される。また、プロセッサ91、主記憶装置92、補助記憶装置93および入出力インターフェース95は、ネットワークアダプター96を介して、イントラネットやインターネットなどのネットワーク100に接続される。また、ハードウェア90は、ネットワーク100を介して、少なくとも一つの圧力センサ20や、別のシステム、装置に接続される。なお、ハードウェア90の構成要素のそれぞれは、単一であってもよいし、複数であってもよい。
プロセッサ91は、補助記憶装置93等に格納されたプログラムを主記憶装置92に展開し、展開されたプログラムを実行する中央演算装置である。本実施形態においては、ハードウェア90にインストールされたソフトウェアプログラムを用いる構成とすればよい。プロセッサ91は、種々の演算処理や制御処理を実行する。
主記憶装置92は、プログラムが展開される領域を有する。主記憶装置92は、例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory)などの揮発性メモリとすればよい。また、MRAM(Magnetoresistive Random Access Memory)などの不揮発性メモリを主記憶装置92として構成・追加してもよい。
補助記憶装置93は、種々のデータを記憶させるための記憶装置である。補助記憶装置93は、ハードディスクやフラッシュメモリなどのローカルディスクとして構成される。なお、主記憶装置92にデータを記憶させる構成とし、補助記憶装置93を省略してもよい。
入出力インターフェース95は、ハードウェア90と周辺機器とを接続規格に基づいて接続するインターフェース(I/F:Interface)である。
ハードウェア90には、必要に応じて、キーボードやマウス、タッチパネルなどの入力機器、ディスプレイや印刷機器などの出力機器を接続してもよい。それらの入力機器や出力機器は、情報や設定の入力に使用される。プロセッサ91と入力機器との間のデータ授受は、入出力インターフェース95に仲介させればよい。
ネットワークアダプター96は、規格や仕様に基づいてネットワーク100に接続するためのインターフェースである。入出力インターフェース95およびネットワークアダプター96は、外部機器と接続するインターフェースとして共通化してもよい。
また、ハードウェア90には、必要に応じて、リーダライタを備え付けてもよい。リーダライタは、バス99に接続される。リーダライタは、プロセッサ91と図示しない記録媒体(プログラム記録媒体)との間で、記録媒体からのデータ・プログラムの読み出し、ハードウェア90の処理結果の記録媒体への書き込みなどを仲介する。記録媒体は、例えばSD(Secure Digital)カードやUSB(Universal Serial Bus)メモリなどの半導体記録媒体などで実現できる。また、記録媒体は、フレキシブルディスクなどの磁気記録媒体、CD(Compact Disc)やDVD(Digital Versatile Disc)などの光学記録媒体やその他の記録媒体によって実現してもよい。
以上が、本発明の実施形態に係る避難誘導システムを実現するためのハードウェアの一例である。本発明の各実施形態の構成要素は、図27のハードウェアの構成要素のうち少なくともいずれかを含む回路として実現できる。また、本発明の各実施形態の構成要素は、図27のハードウェアの構成を有するコンピュータ上で動作するソフトウェアとして実現してもよい。
図27のハードウェア構成は、本実施形態の避難誘導システムを可能とするためのハードウェア構成の一例であって、本発明の範囲を限定するものではない。また、本実施形態の避難誘導システムによる処理をコンピュータに実行させるプログラムも本発明の範囲に含まれる。さらに、本発明の実施形態に係るプログラムを記録したプログラム記録媒体も本発明の範囲に含まれる。
本発明の各実施形態に係る避難誘導システムは、災害発生時の避難誘導以外の用途に使用されてもよい。例えば、各実施形態に係る避難誘導システムは、商業施設内で迷子になった子供を検出したり、迷子になった子供を安全に誘導したりする用途に用いることができる。また、各実施形態に係る避難誘導システムは、老人や病人などの利用者が起居する施設内において、利用者の異変を検知したり、利用者を適切な目的地に誘導したりする用途に用いることができる。また、各実施形態に係る避難誘導システムは、空港や鉄道などの公共機関において不審な行動をとる不審者を検知したり、不審者に対して注意喚起したりする用途に用いることができる。なお、各実施形態に係る避難誘導システムは、上述の用途に限らず、任意の施設内に存在する人の状態を判定し、特定の条件を満たす対象者に対して判定結果に基づいた何らかの指示を出すような用途であれば、その用途は限定されない。
以上、実施形態を参照して本発明を説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。