以下に、本発明の実施の形態にかかる制御装置、放電加工機、および機械学習装置を図面に基づいて詳細に説明する。なお、これらの実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
実施の形態1.
図1は、実施の形態1にかかる放電加工機の構成を示す図である。放電加工機1は、形彫放電加工を行う装置である。放電加工機1は、加工電極である工具電極Eと被加工物17との間に高周波パルス電圧を印加することで、工具電極Eと被加工物17との間に放電を発生させる。放電加工機1は、発生させた放電によって被加工物17を微少量ずつ除去して被加工物17を、工具電極Eの形状に対応する形状に加工する。なお、以下の説明では、被加工物17への放電加工を加工という場合がある。
放電加工機1は、ベッド19と、制御装置2と、駆動部12と、表示部13と、定盤18とを備えている。制御装置2は、機械制御部14と、電源制御部15と、加工結果評価部16Aとを有している。放電加工機1は、駆動部12に取り付けられた工具電極Eを用いて、ベッド19上の定盤18に載せられた被加工物17を加工する。工具電極Eは、被加工物17に対向する位置に配置される。
電源制御部15および機械制御部14は、制御対象を制御する制御部である。電源制御部15の制御対象は電力であり、機械制御部14の制御対象は駆動部12等である。
電源制御部15は、工具電極Eと被加工物17との間に供給する電力を制御する。電源制御部15は、加工結果評価部16Aから送られてくる加工条件に基づいて、工具電極Eと被加工物17との間の放電を制御する。
機械制御部14は、加工結果評価部16Aから送られてくる加工条件に基づいて、駆動部12の位置等を制御する。機械制御部14は、駆動部12を制御することによって、工具電極Eと被加工物17との間に放電が発生するよう、工具電極Eと被加工物17との間隔を制御する。
加工結果評価部16Aは、放電加工の作業者によって入力される加工位置、加工深さ等に基づいて、機械制御部14および電源制御部15に加工条件を出力する。加工結果評価部16Aが機械制御部14に出力する加工条件の例は、工具電極Eの座標である。放電加工機1は、工具電極Eの座標に対応する位置を加工する。加工結果評価部16Aが、電源制御部15に出力する加工条件の例は、放電加工に用いる高周波パルス電圧の電圧値である。
加工結果評価部16Aは、機械制御部14および電源制御部15の少なくとも一方から送られてくる制御結果に基づいて、加工結果を評価する。機械制御部14から送られてくる制御結果は、機械制御部14が加工の際に実際に用いた加工の条件または制御値である。電源制御部15から送られてくる制御結果は、電源制御部15が加工の際に実際に用いた加工の条件または制御値である。機械制御部14および電源制御部15の少なくとも一方から加工結果評価部16Aへは、区間毎の制御結果が送られてくる。ここでの区間は、加工深さまたは加工時間で規定されている。すなわち、加工結果評価部16Aは、加工深さ毎の制御結果または加工時間(加工に要した時間)毎の制御結果を取得する。加工結果評価部16Aは、機械制御部14および電源制御部15の少なくとも一方から送られてくる制御結果に基づいて、加工実績を算出する。加工結果評価部16Aは、特定区間の制御結果として加工深さ毎(加工深さの特定範囲)の制御結果を取得した場合には、加工時間等の加工実績を算出する。また、加工結果評価部16Aは、特定区間の制御結果として加工時間毎(加工時間の特定範囲)の制御結果を取得した場合には、加工深さの加工実績を算出する。
加工結果評価部16Aは、被加工物17の加工領域毎に加工結果を評価する。すなわち、加工結果評価部16Aは、加工結果の評価を示す評価点を、被加工物17の加工領域毎に算出する。評価点は、目標に近い加工が行われた場合に高くなる。評価点は、例えば、加工時間が目標の時間に近いほど高くなる。また、評価点は、例えば、加工深さが目標の加工深さに近いほど高くなる。また、評価点は、設定された加工時間との差のばらつきが、加工領域間で小さいほど高くなる。以下では、被加工物17に設定された加工時間が、各加工領域で同じである場合、または被加工物17に設定された加工深さが、各加工領域で同じである場合について説明する。加工領域については、後述する。なお、前述したように、加工実績は、加工深さであってもよいし、加工時間であってもよい。
加工結果評価部16Aは、加工結果の評価を示す評価点を算出すると、評価点に基づいて、加工条件を修正する。評価点が低い場合、加工結果評価部16Aは、加工実績としての加工時間が、加工領域間で同じになるよう、加工領域毎に加工条件を修正する。
駆動部12は、機械制御部14からの指令に従ってX方向、Y方向、およびZ方向に移動する。本実施の形態では、Z方向が鉛直方向であり、XY平面が水平面である場合について説明する。
表示部13は、加工結果評価部16Aから送られてくる種々の情報を表示する。表示部13の例は、液晶モニタである。表示部13は、例えば、加工結果評価部16Aが算出した評価点、加工結果評価部16Aが修正した加工条件等を表示する。なお、表示部13は、機械制御部14および電源制御部15から送られてくる情報を表示してもよい。
図2は、実施の形態1にかかる制御装置の構成を示す図である。図2では、制御装置2の構成要素である加工結果評価部16A、電源制御部15、および機械制御部14に加えて、表示部13および加工諸元を図示している。加工結果評価部16Aは、入力部21と、加工条件記憶部25と、加工条件出力部27と、評価算出部22と、実績算出部23と、加工条件修正部24Aと、評価出力部26とを具備している。
入力部21は、被加工物17が放電加工される際に用いられる加工諸元を受付けて、加工条件出力部27に送る。加工諸元は、被加工物17が放電加工される際の物理量である。加工諸元の例は、加工位置、加工深さ、仕上面粗さ、および縮小代である。なお、入力部21へは、これら以外の加工諸元が入力されてもよい。加工内容によって、工具電極Eの電極本数、工具電極Eの諸元、被加工物17の諸元、工具電極Eの位置を補正するための情報、揺動方法、ジャンプ方法などが異なるので、加工内容毎に種々の加工諸元が入力部21に入力される。
加工位置は、工具電極EのXY平面内における位置である。加工位置は、被加工物17の上面における位置に対応しており、被加工物17の中心位置に対する工具電極Eの中心位置で示される。加工深さは、被加工物17への加工の深さである。加工深さは、被加工物17の加工前の上面からの距離で示される。
仕上面粗さは、被加工物17を加工した後の仕上面の面粗さである。縮小代は、工具電極Eに対する被加工物17への加工拡大率である。形彫放電加工では、工具電極Eの形状を反転させた形状が被加工物17へ加工されるが、この時の加工の拡大率が加工拡大率である。
加工条件記憶部25は、加工諸元に対応付けされた加工条件を記憶する。加工条件は、放電加工時に用いられる加工の条件である。加工条件には、工具電極Eの位置を規定した位置条件と、高周波パルス電圧を発生させる電力を規定した電力条件とが含まれている。
電力条件には、例えば、電流ピーク値、電流のオンタイム、電流の休止時間、電圧値、工具電極Eを被加工物17からジャンプさせる高さ、工具電極Eのジャンプ速度、工具電極Eを被加工物17に近付けて放電させる時間(ダウンタイム)、電圧値の平均値等が含まれている。ダウンタイムは、工具電極Eのジャンプ動作から次のジャンプ動作までの間の時間間隔である。
また、位置条件には、工具電極EのX座標、Y座標、およびZ座標が含まれている。X座標およびY座標は、加工諸元で規定されている加工位置に対応し、Z座標は、加工諸元で規定されている加工深さに対応している。
加工条件出力部27は、加工諸元に対応する加工条件を加工条件記憶部25から読み出す。加工条件出力部27は、加工条件のうちの位置条件を機械制御部14に出力し、加工条件のうちの電力条件を電源制御部15に出力する。
実績算出部23は、機械制御部14および電源制御部15の少なくとも一方から送られてくる制御結果に基づいて加工領域毎に加工実績を算出する。制御結果は、例えば、加工条件で制御した結果である、位置情報、電力情報等である。実績算出部23は、機械制御部14から送られてくる位置情報に基づいて、加工済みの加工領域を特定し、機械制御部14および電源制御部15の少なくとも一方から送られてくる制御結果に基づいて、加工済みの加工領域に対する加工実績を算出する。実績算出部23は、位置情報に基づいて加工済みのXY平面内の領域および加工済みのZ方向の領域を算出し、加工済みのXY平面内の領域および加工済みのZ方向の領域に基づいて、加工済みの加工領域を特定する。機械制御部14から送られてくる制御結果は、工具電極Eの位置を示す位置情報であり、電源制御部15から送られてくる制御結果は、工具電極Eに供給された電力を示す電力情報である。実績算出部23は、機械制御部14から送られてくる制御結果から位置情報の推移情報(加工速度など)を算出し、算出した推移情報を機械制御部14による制御結果として用いる。なお、実績算出部23は、機械制御部14から送られてくる位置条件に基づいて、加工済みの加工領域を特定してもよい。この場合、機械制御部14から送られてくる位置条件は、機械制御部14が、工具電極Eの位置を制御する際に用いた位置条件である。実績算出部23が算出する加工実績の例は、被加工物17における加工領域毎の加工時間である。実績算出部23は、加工領域毎の加工実績を評価算出部22に送る。
形彫放電加工では、Z方向の加工が行われながら、XY平面内での揺動加工が行われる。この場合において、縮小代が大きいほど、揺動加工時におけるX方向およびY方向への工具電極Eの移動量が大きくなる。揺動加工での工具電極Eは、被加工物17のXY平面内での中心位置、すなわち工具電極EのXY平面内における初期位置での中心位置から、プラスX方向、プラスY方向、マイナスX方向、またはマイナスY方向に移動する。形彫放電加工では、例えば、深さ方向への加工と同時に、深さ方向に垂直な2次元平面方向へ揺動加工が行われる。また、形彫放電加工では、深さ方向への加工と同時に、任意の方向への揺動加工が行われてもよい。放電加工では、例えば、半球体など表面に沿った方向に揺動加工されてもよい。
揺動加工が行われる2次元平面内の全体の加工領域は、2次元平面内で複数の加工領域に分割されている。分割後の加工領域の例は、加工象限である。工具電極EのXY平面内における初期位置での中心位置を(X,Y)=(0,0)とした場合、2次元平面内の全体の加工領域は、X軸とY軸とによって4分割される。分割後の4つの領域が、第1から第4の加工象限である。
ワイヤ放電加工の場合、ワイヤ電極が、設定されている加工経路通りに進むが、揺動加工を含んだ形彫放電加工の場合、加工条件に対応する加工状態の安定度に応じて工具電極Eの進み方が変化する。すなわち、形彫放電加工の場合、各加工象限に同じ加工条件を設定した場合であっても、加工屑などの影響によって、加工象限毎に加工時間といった加工実績が異なる場合がある。したがって、加工象限の中には、加工時間が短くなる加工象限、または加工時間が長くなる加工象限が含まれる場合がある。
評価算出部22は、加工象限毎の加工時間に基づいて、加工象限毎に加工結果の評価点を算出する。評価算出部22は、例えば、他の加工象限との間の加工時間の差が小さいほど高い評価点を与える。また、評価算出部22は、加工時間が目標値に近いほど高い評価点を与える。評価算出部22は、算出で得られた加工象限毎の評価点に基づいて、加工象限毎に加工状態を良否判定する。評価算出部22は、評価点が閾値よりも高い加工象限を合格であると判定し、評価点が閾値以下の加工象限を不合格であると判定する。
評価算出部22は、算出で得られた加工象限毎の評価点および加工象限毎の加工実績を、評価出力部26および加工条件修正部24Aに送る。また、評価算出部22は、良否判定の判定結果を評価出力部26に送る。なお、加工象限毎の加工実績は、実績算出部23が、評価出力部26および加工条件修正部24Aに送ってもよい。
加工条件修正部24Aは、電源制御部15から送られてくる電力条件または機械制御部14から送られてくる位置条件を、評価点に基づいて修正する。電源制御部15から送られてくる電力条件は、電源制御部15が、電力を制御する際に用いた電力条件である。機械制御部14から送られてくる位置条件は、機械制御部14が、工具電極Eの位置を制御する際に用いた位置条件である。すなわち、加工条件修正部24Aは、放電加工に用いられた加工条件を修正する。なお、以下の説明では、加工条件修正部24Aが、加工条件のうちの電力条件を修正する場合について説明する。
加工条件修正部24Aは、加工象限毎の評価点に基づいて、加工象限毎に加工条件を修正する。加工条件修正部24Aは、各加工象限の評価点が上がるよう、加工条件を修正する。例えば、特定の加工象限における加工時間と、他の加工象限における加工時間との間に差がある場合、加工条件修正部24Aは、加工時間の差が小さくなるよう加工条件を修正する。例えば、加工象限が4つである場合、加工条件修正部24Aは、4つの加工象限の加工時間が同じになるよう、各加工象限の加工条件を修正する。
加工時間が他の加工象限よりも長い加工象限が有る場合、加工条件修正部24Aは、例えば、工具電極Eを被加工物17からジャンプさせる高さが低くなるよう加工条件を修正することで加工時間を短くする。
加工条件修正部24Aは、修正した加工条件を加工条件記憶部25に送り、加工条件記憶部25で記憶させる。また、加工条件修正部24Aは、修正した加工条件を評価出力部26に送る。評価出力部26は、加工実績、評価点、良否判定の判定結果、および修正後の加工条件の少なくとも1つを表示部13に送り、表示部13に表示させる。
また、加工条件修正部24Aは、評価点を用いることなく、加工実績に基づいて、加工象限毎に加工条件を修正してもよい。この場合、評価算出部22は不要となる。
図3は、実施の形態1にかかる放電加工機が放電加工する際の加工象限を説明するための図である。図3では、XY平面上での全体の加工領域A0に含まれる加工象限と、工具電極Eの初期位置とを示している。
加工領域A0は、第1の加工象限である加工象限A1と、第2の加工象限である加工象限A2と、第3の加工象限である加工象限A3と、第4の加工象限である加工象限A4とからなる。加工領域A0の中心位置が(X,Y)=(0,0)である場合、加工象限A1は、X≧0かつY≧0の領域であり、加工象限A2は、X<0かつY≧0の領域である。加工象限A3は、X<0かつY<0の領域であり、加工象限A4は、X≧0かつY<0の領域である。
工具電極Eの初期位置は、工具電極EのXY平面内における中心位置Cが、加工領域A0の中心となる位置である。工具電極Eは、加工領域A0からはみ出さないよう、加工領域A0内を移動することで揺動加工を行う。
なお、図3では、加工象限が、座標平面が直交座標軸によって分けられるXY方向の加工象限A1〜A4である場合について説明したが、加工象限は、XYZ軸または他の駆動軸から構成された座標平面の加工象限が用いられてもよい。また、全体の加工領域A0は、任意の分割数に細分化されてもよい。すなわち、全体の加工領域A0は、2つまたは3つに分割されてもよいし、5つ以上に分割されてもよい。
図4は、実施の形態1にかかる放電加工機が実行する揺動加工を説明するための図である。ここでは、揺動加工が行われる際の加工象限A1〜A4上での工具電極Eの移動経路の一例について説明する。
揺動加工が開始される時点では、工具電極Eの中心位置Cが、加工領域A0の中心位置(0,0)にある(ST1)。揺動加工が開始されると、工具電極Eは、加工領域A0の中心位置からプラスX方向に移動する。これにより、工具電極EのプラスX方向の端部が、加工領域A0のプラスX方向の端部に到達する(ST2)。
この後、工具電極Eは、プラスY方向に移動する。これにより、工具電極EのプラスY方向の端部が、加工領域A0のプラスY方向の端部に到達する(ST3)。
この後、工具電極Eは、マイナスX方向に移動する。これにより、工具電極EのマイナスX方向の端部が、加工領域A0のマイナスX方向の端部に到達する(ST4)。
この後、工具電極Eは、マイナスY方向に移動する。これにより、工具電極EのマイナスY方向の端部が、加工領域A0のマイナスY方向の端部に到達する(ST5)。
この後、工具電極Eは、プラスX方向に移動する。これにより、工具電極EのプラスX方向の端部が、加工領域A0のプラスX方向の端部に到達する(ST6)。
この後、工具電極Eは、プラスY方向に移動する。これにより、工具電極Eの中心位置Cが、Y座標が0となる位置に到達する(ST7)。このST7における工具電極Eの位置は、ST2における工具電極Eの位置と同じである。
この後、工具電極Eは、上述したST3からST7の処理を繰り返す。工具電極Eは、深さ方向への加工を行いながら、ST3からST7の処理を繰り返すので、らせん状に移動しながら被加工物17を加工することとなる。
工具電極Eが特定の加工深さまで加工を完了すると、工具電極Eは、ST7の位置からマイナスX方向に移動する。これにより、工具電極Eの中心位置Cが、加工領域A0の中心位置に到達する(ST8)。
揺動加工の経路は、図4に示した経路に限られない。揺動加工の経路は、円形でもよい。また、揺動加工の経路は、加工領域A0の中心から加工領域A0の外周部までの往復であってもよい。この場合、工具電極Eは、加工領域A0の中心から加工領域A0の外周部に向かって放射状に往復する。
図5は、図4で説明した揺動加工における加工実績を説明するための図である。なお、本実施の形態では、加工象限A1,A4の境界線は、加工象限A1に含まれるものとし、加工象限A2,A1との境界線は、加工象限A1に含まれるものとする。同様に、加工象限A3,A2との境界線は、加工象限A2に含まれ、加工象限A4,A3との境界線は、加工象限A4に含まれるものとする。
揺動加工が開始される時点では、工具電極Eの中心位置Cが、加工領域A0の中心位置にある(ST11)。揺動加工が開始されると、工具電極Eは、加工領域A0の中心位置からプラスX方向に移動する。工具電極Eは、工具電極EのプラスX方向の端部が、加工象限A1,A4のプラスX方向の端部に到達する(ST12)。
この後、工具電極Eは、プラスY方向に移動し、工具電極EのプラスY方向の端部が、加工象限A1のプラスY方向の端部に到達する(ST13)。さらに、工具電極Eは、マイナスX方向に移動する。これにより、工具電極Eの中心位置Cが、加工象限A1と加工象限A2との境界線に到達する(ST14)。
揺動加工が開始されてから、工具電極Eの中心位置Cが、加工象限A1と加工象限A2との境界線に到達するまでは、加工象限A1の加工が行われる。すなわち、工具電極Eの中心位置Cが加工象限A1内に位置している間が、加工象限A1での加工時間となる。
なお、加工象限A1〜A4までの1周目の揺動加工では、ST11からST12までの加工時間が加工象限A1の加工時間に含まれるが、2周目以降の揺動加工ではST11からST12までの加工時間は加工象限A1の加工時間に含まれない。また、工具電極Eが特定の加工深さまで加工を完了した後、前述のST7からST8までの加工時間は、加工象限A1の加工時間に含まれる。
実績算出部23は、機械制御部14から送られてくる位置情報などの制御結果に基づいて、加工領域A0内における工具電極Eの位置を算出し、算出した位置に基づいて、各加工象限A1〜A4の加工時間を算出する。すなわち、実績算出部23は、工具電極Eの中心位置Cが加工象限A1〜A4に滞在している時間に基づいて、各加工象限A1〜A4での加工条件毎の累積の加工時間を算出する。
なお、加工象限A1,A4の境界線上の加工時間は、加工象限A4の加工時間としてもよい。同様に、加工象限A2,A1との境界線上の加工時間は、加工象限A1の加工時間とし、加工象限A3,A2との境界線上の加工時間は、加工象限A2の加工時間とし、加工象限A4,A3との境界線上の加工時間は、加工象限A3の加工時間としてもよい。
また、加工象限A1,A4の境界線上の加工時間は、加工象限A1,A4に特定の割合ずつ分配されてもよい。同様に、加工象限A2,A1との境界線上の加工時間は、加工象限A2,A1に特定の割合ずつ分配され、加工象限A3,A2との境界線上の加工時間は、加工象限A3,A2に特定の割合ずつ分配され、加工象限A4,A3との境界線上の加工時間は、加工象限A4,A3に特定の割合ずつ分配されてもよい。
図6は、実施の形態1にかかる放電加工機による、加工結果の評価処理手順を示すフローチャートである。加工が開始される前に、被加工物17を加工するために必要な加工諸元が、作業者によって入力部21に入力される。
加工条件出力部27は、加工諸元に対応する加工条件を、加工条件記憶部25内で選択する。すなわち、加工条件出力部27は、加工諸元を用いた加工に最適な加工条件を選択し、加工条件記憶部25から読み出す。加工条件出力部27は、加工条件のうちの位置条件を機械制御部14に出力し、加工条件のうちの電力条件を電源制御部15に出力する。
放電加工機1は、位置条件および電力条件を用いて加工を開始する(ステップS11)。加工に使用される加工条件は、生産性と仕上面粗さとの組合せなどに応じて、複数の加工条件を含んでいる。すなわち、加工の際には、加工手順に従って、種々の加工条件が順番に用いられる。ここでは、N個(Nは自然数)の加工条件が用いられる場合について説明する。すなわち、放電加工機1は、n=1,2,・・・,Nの加工条件を順番に用いて加工を実行するものとする。換言すると、最初の加工条件は、n=1の加工条件であり、最後の加工条件は、n=Nである。
加工結果評価部16Aは、n=1の加工条件を機械制御部14および電源制御部15に設定する(ステップS12)。放電加工機1は、n=1の加工条件を用いて加工象限A1〜A4の加工を順番に実行する。加工象限A1の加工は、図5で説明したST11からST14までの処理である。加工象限A1〜A4までの一連の加工は、図4で説明したST2からST7までの処理である。
実績算出部23は、加工象限A1の加工が完了したか否かを判定する(ステップS13)。加工象限A1の加工が完了していない場合(ステップS13、No)、放電加工機1は、加工象限A1の加工を継続する。加工象限A1の加工が完了した場合(ステップS13、Yes)、実績算出部23は、加工象限A1の加工実績を算出する(ステップS14)。放電加工機1は、加工象限A1の加工に続いて、加工象限A2を加工する。
実績算出部23は、加工象限A2の加工が完了したか否かを判定する(ステップS15)。加工象限A2の加工が完了していない場合(ステップS15、No)、放電加工機1は、加工象限A2の加工を継続する。加工象限A2の加工が完了した場合(ステップS15、Yes)、実績算出部23は、加工象限A2の加工実績を算出する(ステップS16)。放電加工機1は、加工象限A2の加工に続いて、加工象限A3を加工する。
実績算出部23は、加工象限A3の加工が完了したか否かを判定する(ステップS17)。加工象限A3の加工が完了していない場合(ステップS17、No)、放電加工機1は、加工象限A3の加工を継続する。加工象限A3の加工が完了した場合(ステップS17、Yes)、実績算出部23は、加工象限A3の加工実績を算出する(ステップS18)。放電加工機1は、加工象限A3の加工に続いて、加工象限A4を加工する。
実績算出部23は、加工象限A4の加工が完了したか否かを判定する(ステップS19)。加工象限A4の加工が完了していない場合(ステップS19、No)、放電加工機1は、加工象限A4の加工を継続する。加工象限A4の加工が完了した場合(ステップS19、Yes)、実績算出部23は、加工象限A4の加工実績を算出する(ステップS20)。
このように、制御装置2は、最初の加工条件であるn=1の加工条件を選択し、加工象限A1の加工が完了するまで加工を継続し、加工が完了した段階で加工実績を算出する。その後、制御装置2は、加工象限A2〜A4についても加工象限A1と同様に加工実績を算出する。すなわち、実績算出部23は、加工象限A1〜A4毎に、加工実績としての加工時間を算出する。
この後、実績算出部23は、加工象限A1〜A4毎に加工時間の割合を算出する(ステップS21)。加工時間の割合は、加工象限A1〜A4の全体の加工時間に対する、各加工象限A1〜A4の加工時間の割合である。
評価算出部22は、各加工象限A1〜A4の加工時間の割合に基づいて、評価点を算出する(ステップS22)。評価算出部22は、例えば、加工象限A1〜A4毎に評価点を算出する。また、実績算出部23は、被加工物17への加工が、設定されている加工深さに到達したか否かを判定する(ステップS23)。具体的には、実績算出部23は、放電加工機1が備えるモータのエンコーダ(図示せず)等から実際の加工深さの情報を取得し、取得した情報に基づいて、被加工物17への加工が、加工条件に設定されている加工深さに到達したか否かを判定する。ここでの実績算出部23は、n=1の加工条件に設定されている加工深さに到達したか否かを判定する。
設定されている加工深さに到達していない場合(ステップS23、No)、放電加工機1は、設定されている加工深さに到達するまでステップS13からS23までの処理を繰り返す。
設定されている加工深さに到達すると(ステップS23、Yes)、加工条件修正部24Aは、加工条件を用いた加工が完了したと判断し、設定されている加工深さに到達した加工条件を修正する。ここでの、加工条件修正部24Aは、n=1の加工条件を修正する。加工条件修正部24Aは、評価点に基づいて、加工条件を修正する(ステップS24)。加工条件修正部24Aは、例えば、加工象限A1〜A4毎の評価点に基づいて、加工象限A1〜A4毎に加工条件を修正する。なお、加工条件修正部24Aは、加工実績を算出した加工条件が適切な加工条件である場合には、加工条件を修正しなくてもよい。
加工条件修正部24Aは、修正した加工条件を加工条件記憶部25に送り、加工条件記憶部25で記憶させる。これにより、加工条件記憶部25は、n=1の修正前の加工条件と、加工条件修正部24Aが修正したn=1の加工条件とを記憶する(ステップS25)。
また、表示部13は、加工条件修正部24Aが修正したn=1の加工条件を表示する(ステップS26)。また、表示部13は、実績算出部23が算出した加工実績を表示する(ステップS27)。ここでの表示部13は、n=1の修正前の加工条件で加工された場合の加工実績を表示する。表示部13は、加工実績として、加工時間を表示する。なお、表示部13は、加工実績として、加工時間の割合を表示してもよい。また、表示部13は、評価算出部22が算出した評価点を表示する(ステップS28)。
制御装置2は、n=Nの加工条件に対して加工条件を修正したか否かを判定する(ステップS29)。すなわち、制御装置2は、加工諸元に対応する全ての加工条件に対して加工実績を算出したか否かを判定する。
n=Nの加工条件に対して加工条件を修正していない場合(ステップS29、No)、制御装置2は、n=n+1とし(ステップS30)、ステップS13からS29の処理を実行する。ここでの制御装置2は、n=2の加工条件に対してステップS13からS29の処理を実行し、その後、n=3の加工条件に対してステップS13からS29の処理を実行する。制御装置2は、n=Nの加工条件に対してステップS13からS29の処理を実行すると(ステップS29、Yes)、揺動加工の制御を終了する。なお、表示部13は、加工条件、加工実績、および評価点を何れの順番で表示させてもよい。
このように、制御装置2は、揺動加工を伴う複雑な加工に対しても加工象限A1〜A4毎に加工実績を評価し、評価結果に基づいて加工象限A1〜A4毎に加工条件を修正することができる。また、加工象限A1〜A4毎に加工実績を評価できるので、単純形状の加工だけでなく複雑形状の加工に対しても容易に加工条件を適切な加工条件に修正することができる。また、加工時間を加工の良否判定の指標とすることで、加工の効率を直接的に判断することが可能となる。
また、制御装置2は、加工象限A1〜A4毎に加工を評価するので、加工象限A1〜A4毎に加工条件、加工実績、および評価点を表示部13に表示させることができる。また、制御装置2は、形彫放電加工における加工屑の影響、または電極剛性の影響、加工面積の変化の影響などが大きい場合であっても、加工象限A1〜A4毎に加工実績を評価するので、短時間で適切に加工条件を修正することができる。
なお、実績算出部23は、加工象限Ap(pは1から4の何れか)の加工が完了した後であれば、何れのタイミングで加工象限Apの加工実績を算出してもよい。実績算出部23は、例えば、1周分の加工象限A1〜A4への加工が完了した後に、加工象限A1〜A4の加工実績をまとめて算出してもよい。また、実績算出部23は、設定されている加工深さに到達した後に加工象限A1〜A4の加工実績を算出してもよい。
また、評価算出部22は、n番目(nは1〜Nの何れか)の加工条件に対して加工実績を算出した後であれば、何れのタイミングでn番目の加工条件に対して評価点を算出してもよい。評価算出部22は、例えば、全ての加工条件に対して加工実績を算出した後に、各加工条件の評価点を算出してもよい。
また、加工条件修正部24Aは、n番目の加工条件に対して評価点を算出した後であれば、何れのタイミングでn番目の加工条件を修正してもよい。加工条件修正部24Aは、例えば、全ての加工条件に対して評価点を算出した後に、各加工条件を修正してもよい。なお、加工結果評価部16Aは、加工象限A1〜A4毎の加工深さの割合に基づいて評価点を算出してもよい。
図7は、実施の形態1にかかる制御装置が算出した、加工時間の割合と評価点との関係を説明するための図である。ここでは、各加工象限A1〜A4で同一の加工条件が用いられた場合について説明する。例えば、加工条件Q1が用いられる場合には、全ての加工象限A1〜A4で加工条件Q1が用いられる。すなわち、図7に示す評価点は、同一の加工条件で加工象限A1〜A4を加工した場合の加工実績(図7の場合は加工時間の割合)に基づいて算出された評価点である。図7では、加工条件と、評価点と、加工象限A1〜A4毎の加工時間の割合との対応関係を示している。加工時間の割合は、ある加工条件において、各加工象限での加工時間が占める割合である。すなわち、加工時間の割合は、全体の加工時間に対して各加工象限の加工時間が占める割合である。以下の説明では、各加工象限の加工時間の割合を加工時間比率という場合がある。
評価算出部22は、例えば、加工条件Q1における全体の加工時間を100%とした場合の加工象限A1〜A4の加工時間比率(%)を算出する。図7に示す例の場合、加工条件Q1では、加工象限A1での加工時間比率が60%であり、加工象限A2での加工時間比率が20%である。また、加工条件Q1では、加工象限A3での加工時間比率が10%であり、加工象限A4での加工時間比率が10%である。
評価算出部22は、各加工象限の加工時間比率に基づいて各加工時間比率の相対的な差分を算出し、差分に基づいて評価点を算出する。評価算出部22は、例えば、加工時間比率間のばらつきが小さい加工条件に高い評価点を与える。各加工時間比率が均等であることが理想の条件である場合、評価算出部22は、加工象限A1〜A4の加工時間比率が全て25%である場合に、最高の評価点を与え、理想の条件からの差が大きくなるほど小さな評価点を与える。評価算出部22は、加工条件Q1に対し、例えば「6」の評価点を与える。
例えば、1または複数の特定の加工象限の加工時間比率が、他の加工象限の加工時間比率に対して極端に小さい場合、評価算出部22は、特定の加工象限は加工量が少ない形状であると判定する。この場合、加工条件修正部24Aは、特定の加工象限に用いる加工条件の、揺動方向、軸の移動速度等を変更する。
一方、1または複数の特定の加工象限の加工時間比率が、他の加工象限の加工時間比率に対して極端に大きい場合、評価算出部22は、特定の加工象限は加工が不安定であると判定する。この場合、加工条件修正部24Aは、不安定な加工を解消するよう、特定の加工象限に用いる加工条件を変更する。このように、制御装置2は、加工象限A1〜A4毎に加工時間比率に基づいて加工実績を評価するので、加工象限A1〜A4毎の良否判定を緻密に行うことが可能となる。
本実施の形態の評価算出部22は、加工象限A1〜A4毎に評価点を算出してもよい。すなわち、本実施の形態の評価算出部22は、加工条件毎に評価点を算出してもよいし、加工象限毎に評価点を算出してもよい。図8は、実施の形態1にかかる制御装置が算出した、加工象限毎の評価点を説明するための図である。図8では、加工条件と、加工象限A1〜A4毎の評価点との対応関係を示している。
図8は、評価算出部22が、図7に示す加工象限毎の加工時間の割合に基づいて算出した、加工象限毎の評価点を示している。評価算出部22は、例えば、加工条件Q1に対し、加工象限A1〜A4の各加工時間比率を比較し、比較結果に基づいて加工条件Q1における加工象限A1〜A4の評価点を算出する。加工条件修正部24Aは、各加工象限A1〜A4の評価点が向上するよう、加工象限A1〜A4毎に加工条件を変更する。
評価出力部26は、評価算出部22が算出した評価点を加工象限A1〜A4毎に表示部13に表示させる。表示部13は、例えば、図8に示した対応関係を表示する。また、加工条件修正部24Aは、加工象限A1〜A4毎に修正した加工条件を表示部13に表示させる。表示部13が、加工象限A1〜A4毎に評価点を表示することで、作業者には精度の高い正確な評価点を提供することが可能となる。
また、実績算出部23は、加工経過時間と加工深さとの対応関係を算出してもよい。図9は、実施の形態1にかかる制御装置が算出した、加工経過時間と加工深さとの対応関係を示す図である。図9に示すグラフの横軸は、加工象限A1〜A4全体(加工領域A0)の加工経過時間であり、縦軸は加工深さである。
実績算出部23は、加工経過時間と加工深さとの対応関係を示す図9のようなグラフを算出し、表示部13に表示させる。また、実績算出部23は、加工経過時間と加工深さとの対応関係を示すグラフを加工象限A1〜A4毎に算出し、表示部13に表示させてもよい。
また、加工条件修正部24Aは、加工深さ毎の評価点に基づいて、加工条件を修正してもよい。図10は、実施の形態1にかかる制御装置が加工深さ毎の評価点に基づいて修正した加工条件を示す図である。図10では、加工象限A1〜A4の何れかにおける、加工深さと、評価点と、修正後の加工条件との対応関係の例を示している。
加工深さは、特定の寸法ずつに区切られている。図10では、加工深さが2mmずつに区切られている場合を示している。加工深さの「0」は、加工深さが0mmから2mmまでを示し、この場合の評価点は「7」となっている。同様に、加工深さの「−2」は、加工深さが2mmから4mmまでを示し、この場合の評価点は「3」となっている。
評価算出部22は、加工象限A1〜A4毎の、加工経過時間と加工深さとの対応関係に基づいて、加工象限A1〜A4毎に評価点を算出する。評価算出部22は、加工象限A1に対し、各加工深さに対応する加工時間を、加工象限A1における加工経過時間と加工深さとの対応関係に基づいて算出する。
同様に、評価算出部22は、加工象限A2〜A4に対しても、加工深さに対応する加工時間を、加工象限A2〜A4における加工経過時間と加工深さとの対応関係に基づいて算出する。そして、評価算出部22は、加工象限A1〜A4における加工経過時間に基づいて、各加工象限A1〜A4の評価点を算出する。
図10に示す、「IP」、「ON」、「OFF」、「Volt」、「JUMP」、「UP」、「DN」、および「SV」が加工条件である。「IP」は、電流ピーク値であり、「ON」は、電流のオンタイムであり、「OFF」は、電流の休止時間であり、「Volt」は、電圧値である。
また、「JUMP」は、工具電極Eのジャンプ速度であり、「UP」は、工具電極Eを被加工物17からジャンプさせる高さである。「DN」は、工具電極Eを被加工物17に近付けて放電させる時間であり、「SV」は、電圧値の平均値である。
例えば、「IP」、「ON」、「OFF」、「Volt」、「JUMP」、「UP」、「DN」、および「SV」の初期値がそれぞれ「10」、「6」、「6」、「100」、「10」、「10」、「10」、「50」であるとする。なお、加工条件の初期値は、加工深さ毎に異なっていてもよい。
加工条件修正部24Aは、これらの初期値に対して、評価点に基づいた加工条件の修正を行う。加工条件修正部24Aは、例えば、評価点が「10」の加工条件に対しては、加工条件の修正を行わない。一方、加工条件修正部24Aは、評価点が「3」のように小さい加工条件に対しては、加工条件を大きく修正する。
なお、加工結果評価部16Aは、加工実績として算出した加工時間と、目標の加工時間である目標時間と、の比較結果に基づいて、加工象限A1〜A4毎に評価点を算出してもよい。
図11は、実施の形態1にかかる制御装置が算出した、加工時間と評価点との関係を説明するための図である。図11では、加工条件と、評価点と、加工象限A1〜A4毎の加工時間との対応関係を示している。
評価算出部22は、例えば、加工条件毎に加工象限A1〜A4の加工時間(分)を算出する。図11に示す例の場合、加工条件Q1では、加工象限A1での加工時間が60分であり、加工象限A2での加工時間が20分である。また、加工条件Q1では、加工象限A3での加工時間が10分であり、加工象限A4での加工時間が10分である。
評価算出部22は、加工象限A1〜A4毎の加工時間と、加工象限A1〜A4毎の目標時間とを比較し、各加工象限A1〜A4での比較結果に基づいて評価点を算出する。評価算出部22は、実際の加工時間と目標時間との差に基づいて評価点を算出してもよいし、実際の加工時間と目標時間との割合に基づいて評価点を算出してもよい。評価算出部22は、例えば、加工実績としての実際の加工時間と、目標時間との差が小さい加工象限ほど高い評価点を与える。
評価算出部22は、例えば、加工象限A1での加工時間と加工象限A1での目標時間との差、加工象限A2での加工時間と加工象限A2での目標時間との差、加工象限A3での加工時間と加工象限A3での目標時間との差、および加工象限A4での加工時間と加工象限A4での目標時間との差に基づいて、加工条件Q1における評価点を算出する。図11に示す例の場合、加工条件Q1における評価点は、「6」である。なお、目標時間は加工象限A1〜A4毎に異なってもよい。また、目標時間は、加工条件毎に異なってもよい。
また、評価算出部22は、目標時間に基づいて評価点を算出する場合も加工象限A1〜A4毎に評価点を算出する。図12は、実施の形態1にかかる制御装置が目標時間に基づいて算出した、加工象限毎の評価点を説明するための図である。図12では、加工条件と、加工象限毎の評価点と、加工象限A1〜A4毎の目標時間と、加工象限A1〜A4毎の加工時間との対応関係を示している。
評価算出部22は、例えば、加工条件Q1に対し、加工象限A1での目標時間である20分と、加工象限A1での実際の加工時間である60分とを比較し、比較結果に基づいて加工条件Q1における加工象限A1の評価点を算出する。同様に、評価算出部22は、加工条件Q1における加工象限A2〜A4の評価点を算出する。
加工条件修正部24Aは、各加工象限A1〜A4の評価点が向上するよう、加工象限A1〜A4毎に加工条件を変更する。加工条件修正部24Aは、加工時間が目標時間に近付くよう加工条件を修正する。すなわち、加工条件修正部24Aは、加工時間が目標時間よりも短い場合は、加工時間が長くなるよう加工条件を修正し、加工時間が目標時間よりも長い場合は、加工時間が短くなるよう加工条件を修正する。加工条件修正部24Aは、加工時間が目標時間よりも長い場合、すなわち加工速度が遅い場合、例えば、電流ピーク値を上げる。
評価出力部26は、評価算出部22が算出した評価点を加工象限A1〜A4毎に表示部13に表示させる。また、加工条件修正部24Aは、加工象限A1〜A4毎に修正した加工条件を表示部13に表示させる。
なお、加工条件修正部24Aは、加工時間毎の評価点に基づいて、加工条件を修正してもよい。図13は、実施の形態1にかかる制御装置が加工時間毎の評価点に基づいて修正した加工条件を示す図である。図13では、加工象限A1〜A4の何れかにおける、加工時間と、評価点と、修正後の加工条件との対応関係を示している。
加工時間は、特定の時間ずつに区切られている。図13では、加工時間が20分ずつに区切られている場合を示している。加工時間の「0」は、加工経過時間が0分から20分までを示し、この場合の評価点は「7」となっている。同様に、加工時間の「20」は、加工経過時間が20分から40分までを示し、この場合の評価点は「3」となっている。
評価算出部22は、加工象限A1〜A4毎の、加工経過時間と加工深さとの対応関係に基づいて、加工象限A1〜A4毎に評価点を算出する。評価算出部22は、加工象限A1に対し、加工時間に対応する加工深さを、加工象限A1における加工経過時間と加工深さとの対応関係に基づいて算出する。
同様に、評価算出部22は、加工象限A2〜A4に対しても、加工時間に対応する加工深さを、加工象限A2〜A4における加工経過時間と加工深さとの対応関係に基づいて算出する。そして、評価算出部22は、加工象限A1〜A4における加工深さに基づいて、各加工象限A1〜A4の評価点を算出する。この場合、加工条件修正部24Aは、各加工象限A1〜A4の加工時間毎の評価点に基づいて、加工条件を修正する。例えば、評価算出部22は、加工象限毎の加工深さの割合に基づいて、各加工象限A1〜A4の評価点を算出する。この場合、評価算出部22は、加工象限の加工深さが、他の加工象限の加工深さに対して極端に浅い場合または極端に深い場合に、評価点を下げる。また、評価算出部22は、加工象限A1〜A4毎の目標とする加工深さと、実際の加工象限A1〜A4毎の加工深さとの差に基づいて、各加工象限A1〜A4の評価点を算出してもよい。
このように実施の形態1では、加工結果評価部16Aが、加工象限A1〜A4の各加工条件に基づいて、加工象限A1〜A4毎に加工実績を算出し、加工象限A1〜A4の加工実績に基づいて、評価点を算出している。したがって、形彫放電加工に対し加工象限A1〜A4毎に加工結果を良否判定することができる。また、複雑に変化する2次元平面内の加工象限A1〜A4毎の加工結果を考慮して加工結果を良否判定することができる。
実施の形態2.
つぎに、図14から図17を用いてこの発明の実施の形態2について説明する。実施の形態2では、加工実績としての加工速度と、目標の加工速度である目標速度との比較結果に基づいて、加工条件を修正する。
図14は、実施の形態2にかかる制御装置の構成を示す図である。図14の各構成要素のうち図2に示す実施の形態1の制御装置2と同一機能を達成する構成要素については同一符号を付しており、重複する説明は省略する。
図14では、制御装置2の構成要素である加工結果評価部16B、電源制御部15、および機械制御部14に加えて、表示部13および加工諸元を図示している。加工結果評価部16Bは、加工結果評価部16Aの構成要素に加えて、目標速度記憶部28と、速度差分算出部35とを具備している。
目標速度記憶部28は、加工条件毎に各加工象限A1〜A4に対する加工の目標速度を記憶しておく。速度差分算出部35は、機械制御部14から送られてくる位置情報などの制御結果に基づいて、加工実績としての加工速度を加工象限A1〜A4毎に算出する。加工速度は、単位時間あたりに加工される加工深さである。
速度差分算出部35は、実績算出部23と同様の処理によって加工象限A1〜A4毎の加工時間を算出する。また、速度差分算出部35は、放電加工機1が備えるモータのエンコーダ等から実際の加工深さの情報を取得する。速度差分算出部35は、取得した加工深さの情報に基づいて、加工実績としての加工速度を算出する。さらに、速度差分算出部35は、加工実績としての加工速度と、目標速度記憶部28が記憶している目標速度との差分(以下、速度差分という)を算出する。加工実績としての加工速度が目標速度より大きい場合に、速度差分はプラスの値となり、加工実績としての加工速度が目標速度より小さい場合に、速度差分はマイナスの値となる。
なお、加工実績としての加工速度は実績算出部23が算出してもよい。また、実績算出部23が加工象限A1〜A4毎の加工時間を算出し、速度差分算出部35が加工実績としての加工速度を算出してもよい。
速度差分算出部35は、算出した速度差分を評価出力部26に送り、表示部13に表示させる。また、速度差分算出部35は、算出した速度差分を評価算出部22に送る。
評価算出部22は、加工象限A1〜A4毎の速度差分に基づいて、加工象限A1〜A4毎の評価点を算出する。評価算出部22は、評価する加工象限の速度差分が大きいほど低い評価点とする。
評価算出部22は、算出した評価点を評価出力部26に送り、表示部13に表示させる。表示部13は、例えば、図12に示した表形式で、加工象限A1〜A4毎に評価点を表示する。また、表示部13は、加工象限A1〜A4毎に、加工実績としての加工速度、目標速度、および速度差分を表示する。これにより、加工条件毎の加工実績に差異が発生しにくい加工内容に対しても、ユーザは加工の良否判定を正確に行うことが可能となる。
また、評価算出部22は、算出した評価点を加工条件修正部24Aに送る。加工条件修正部24Aは、評価算出部22から送られてきた評価点に基づいて、加工象限A1〜A4毎に加工条件を修正する。加工条件修正部24Aは、各加工象限A1〜A4の速度差分が0に近付くよう、加工象限A1〜A4毎に加工条件を修正する。
図15は、実施の形態2にかかる放電加工機による、加工結果の評価処理手順を示すフローチャートである。図15の各処理のうち図6で説明した処理と同様の処理については、同一のステップ番号を付しており、その説明は省略する。
図15に示すフローチャートのうち、ステップS11からS21までの処理は、図6で説明したフローチャートと同一の処理である。ステップS21において、実績算出部23が、加工象限A1〜A4毎に、加工時間の割合を算出した後、速度差分算出部35が、加工象限A1〜A4毎に速度差分を算出する(ステップS31)。
この後、加工結果評価部16Bは、図6で説明したステップS22からS27の処理と同様の処理を実行する。図15のステップS22では、評価算出部22は、各加工象限A1〜A4の速度差分に基づいて、評価点を算出する。評価算出部22は、例えば、加工象限A1〜A4毎に評価点を算出する。また、図15のステップS24では、加工条件修正部24Aは、速度差分に基づいて算出された評価点に基づいて、加工条件を修正する。加工条件修正部24Aは、例えば、加工象限A1〜A4毎の評価点に基づいて、加工象限A1〜A4毎に加工条件を修正する。
ステップS27において、表示部13が、加工実績を表示した後、表示部13は、加工象限A1〜A4毎に速度差分を表示する(ステップS32)。また、表示部13は、評価算出部22が算出した評価点を表示する(ステップS28)。
制御装置2は、n=Nの加工条件に対して加工条件を修正したか否かを判定する(ステップS29)。
n=Nの加工条件に対して加工条件を修正していない場合(ステップS29、No)、制御装置2は、n=n+1とし(ステップS30)、ステップS13からS29の処理を実行する。制御装置2は、n=Nの加工条件に対してステップS13からS29の処理を実行すると(ステップS29、Yes)、揺動加工の制御を終了する。なお、表示部13は、加工条件、加工実績、速度差分、および評価点を何れの順番で表示させてもよい。
表示部13は、加工実績としての加工速度をグラフ表示してもよい。また、表示部13は、加工条件が修正される前の加工速度、および加工条件が修正された後の加工速度をグラフ表示してもよい。また、表示部13は、加工実績としての速度差分をグラフ表示してもよい。また、表示部13は、加工条件が修正される前の速度差分、および加工条件が修正された後の速度差分をグラフ表示してもよい。
図16は、実施の形態2にかかる放電加工機が修正した加工条件に対応する加工速度を説明するための図である。図17は、実施の形態2にかかる放電加工機が修正した加工条件に対応する加工象限毎の加工速度を説明するための図である。ここでは、加工速度が一定となり、かつ速度差分が一定となるよう、加工条件が修正される場合について説明する。
図16に示すグラフ51は、図9に示したグラフと同様のグラフである。図16に示すグラフ51,52の横軸は加工経過時間であり、縦軸は加工深さである。また、図16に示すグラフ61,62は、横軸が加工深さであり、縦軸が速度差分である。
グラフ51では、加工条件が修正される前の、加工経過時間と加工深さとの対応関係である加工速度情報71を示している。グラフ52では、加工条件が修正された後の、加工経過時間と加工深さとの対応関係である加工速度情報72を示している。
加工速度情報71,72は、単位時間あたりに加工される加工深さの情報である。加工速度が一定となり、かつ速度差分が一定となる場合には、加工深さが、加工経過時間に比例する。加工速度情報71では、加工深さが加工経過時間に比例していない。
グラフ61では、加工条件が修正される前の、加工深さと速度差分との対応関係である速度差分情報81を示している。グラフ62では、加工条件が修正された後の、加工深さと速度差分との対応関係である速度差分情報82を示している。
速度差分情報81,82では、加工領域A0の加工深さのブロック毎に速度差分を示している。加工深さの各ブロック(以下、深さブロックという)は、ある加工深さから、ある加工深さまでの範囲を示している。各深さブロックでは、加工領域A0の速度差分を示している。例えば、速度差分情報81,82では、加工深さが2mmから4mmまでの深さブロックにおける速度差分、加工深さが4mmから6mmまでの深さブロックにおける速度差分のように、2mm幅の深さブロックに対する速度差分が示されている。
グラフ61における縦軸の「0」は、修正前の加工条件で加工を行った場合の速度差分の予測値である。すなわち、修正前の加工条件で加工を行った場合、速度差分の予測値は「0」である。換言すると、修正前の加工条件で加工を行った場合、加工速度は、目標速度と同じになる。実際の加工では、グラフ61に示すように、加工開始時と加工終了時に速度差分がプラスになる場合があり、加工中に速度差分がマイナスになる場合がある。
グラフ62における縦軸の「0」は、修正後の加工条件で加工を行った場合の速度差分の予測値である。すなわち、修正後の加工条件で加工を行った場合、速度差分の予測値は「0」である。実際の加工では、グラフ62に示すように、速度差分が0とはならない場合が多い。
加工条件修正部24Aは、速度差分情報81において速度差分がプラスになっている加工深さに対しては、加工速度が遅くなるよう加工条件を修正する。一方、加工条件修正部24Aは、速度差分情報81において速度差分がマイナスになっている加工深さに対しては、加工速度が速くなるよう加工条件を修正する。
加工条件修正部24Aが、グラフ51に対応する加工条件を修正することで、加工速度情報71が加工速度情報72となり、速度差分情報81が速度差分情報82となる。速度差分情報81に示されるように、加工条件が修正される前の速度差分は、速度差分の予測値との差が大きい。速度差分情報82に示されるように、加工条件が修正された後の速度差分は、加工条件が修正される前よりも速度差分の予測値との差が小さくなっている。
加工条件修正部24Aは、速度差分が「0」に近付くよう、加工条件の修正を繰り返す。すなわち、加工条件修正部24Aは、速度差分情報82において速度差分がプラスになっている加工深さに対しては、加工速度が遅くなるよう加工条件を修正する。一方、加工条件修正部24Aは、速度差分情報82において速度差分がマイナスになっている加工深さに対しては、加工速度が速くなるよう加工条件を修正する。
これにより、実際の速度差分が、速度差分の予測値に近付く。制御装置2は、速度差分の予測値が0となるよう加工条件を修正していくので、加工条件の修正を繰り返すことで、実際の速度差分も0に近付いていく。すなわち、実際の加工速度が目標速度に近付いていく。表示部13は、グラフ51,52,61,62を表示する。
図17に示すグラフ53は、図16に示したグラフと同様のグラフである。図17に示すグラフ53,54の横軸は加工経過時間であり、縦軸は加工深さである。また、図17に示すグラフ63,64は、横軸が加工深さであり、縦軸が速度差分である。
グラフ53では、加工条件が修正される前の、加工経過時間と加工深さとの対応関係である加工速度情報73を示している。グラフ54では、加工条件が加工象限A1〜A4毎に修正された後の、加工経過時間と加工深さとの対応関係である加工速度情報74を示している。
加工速度情報73,74は、単位時間あたりに加工される加工深さの情報である。加工速度情報73では、加工深さが加工経過時間に比例していない。
グラフ63では、加工条件が修正される前の、加工深さと速度差分との対応関係である速度差分情報83を示している。グラフ64では、加工条件が加工象限A1〜A4毎に修正された後の、加工深さと速度差分との対応関係である速度差分情報84を示している。
速度差分情報83,84では、各加工象限A1〜A4の深さブロック毎に速度差分を示している。各深さブロックでは、加工象限A1〜A4毎の速度差分、すなわち4つの速度差分を示している。
各深さブロックに示される左端の棒グラフが加工象限A1の速度差分であり、各深さブロックに示される左から2番目の棒グラフが加工象限A2の速度差分である。また、各深さブロックに示される左から3番目の棒グラフが加工象限A3の速度差分であり、各深さブロックに示される右端の棒グラフが加工象限A4の速度差分である。
グラフ63における縦軸の「0」は、修正前の加工条件で加工を行った場合の速度差分の予測値である。すなわち、修正前の加工条件で加工を行った場合、速度差分の予測値は「0」である。実際の加工では、グラフ63に示すように、特定の深さブロックの特定の加工象限で速度差分がプラスまたはマイナスになる場合がある。
グラフ64における縦軸の「0」は、加工象限A1〜A4毎に加工条件を修正した後の速度差分の予測値である。すなわち、修正後の加工条件で加工を行った場合、速度差分の予測値は「0」である。実際の加工では、グラフ64に示すように、速度差分が0とはならない場合が多い。
加工条件修正部24Aは、速度差分情報83において速度差分がプラスになっている深さブロックの加工象限に対しては、加工速度が遅くなるよう加工条件を修正する。一方、加工条件修正部24Aは、速度差分情報83において速度差分がマイナスになっている深さブロックの加工象限に対しては、加工速度が速くなるよう加工条件を修正する。
加工条件修正部24Aが、グラフ53に対応する加工条件を加工象限A1〜A4毎に修正することで、加工速度情報73が加工速度情報74となり、速度差分情報83が速度差分情報84となる。速度差分情報83に示されるように、加工条件が修正される前の速度差分は、速度差分の予測値との差が大きい。速度差分情報84に示されるように、加工象限A1〜A4毎に加工条件が修正された後の速度差分は、加工条件が修正される前よりも速度差分の予測値との差が小さくなっている。
加工条件修正部24Aは、速度差分が「0」に近付くよう、加工象限A1〜A4毎に加工条件の修正を繰り返す。これにより、実際の速度差分が、速度差分の予測値に近付く。制御装置2は、速度差分の予測値が0となるよう加工条件を修正していくので、加工象限A1〜A4毎に加工条件の修正を繰り返すことで、各加工象限A1〜A4における実際の速度差分も0に近付いていく。表示部13は、グラフ53,54,63,64を表示する。
このように実施の形態2では、加工結果評価部16Bが、加工実績としての加工速度と、目標速度との比較結果に基づいて、加工条件を修正するので、形彫放電加工の加工条件を目標速度に対応する加工条件に修正することができる。また、加工結果評価部16Bは、加工象限A1〜A4毎に加工条件を修正するので、目標の加工を実現することができる加工条件を加工象限A1〜A4毎に導出することが可能となる。
実施の形態3.
つぎに、図18を用いてこの発明の実施の形態3について説明する。実施の形態3では、加工条件修正部が機械学習装置を備えており、機械学習装置が、実際の加工に用いられた加工条件と、実際の加工で取得された加工実績とに基づいて、加工象限A1〜A4毎に目標の加工を実現することができる加工条件を学習する。本実施の形態では、加工実績が、加工時間である場合について説明する。なお、以下の説明では、加工時間と目標時間との差分を時間差分という場合がある。加工時間が目標時間よりも長い場合は、時間差分はプラスの値であり、加工時間が目標時間以下の場合は、時間差分はマイナスの値である。
図18は、実施の形態3にかかる制御装置の構成を示す図である。図18の各構成要素のうち図2に示す実施の形態1の制御装置2と同一機能を達成する構成要素については同一符号を付しており、重複する説明は省略する。
図18では、制御装置2の構成要素である加工結果評価部16C、電源制御部15、および機械制御部14に加えて、表示部13および加工諸元を図示している。加工結果評価部16Cは、加工結果評価部16Aと比較して、加工条件修正部24Aの代わりに加工条件修正部24Bを具備している。
加工条件修正部24Bは、機械学習装置29と、意思決定部33とを有している。機械学習装置29は、学習部30と、状態観測部40とを備えている。状態観測部40は、評価算出部22から加工象限A1〜A4毎の評価点を取得する。状態観測部40が取得する評価点は、加工条件見直し前の評価点、および加工条件見直し後の評価点である。また、状態観測部40は、機械制御部14から加工象限A1〜A4毎の位置条件を取得し、電源制御部15から加工象限A1〜A4毎の電力条件を取得する。すなわち、状態観測部40は、機械制御部14および電源制御部15から加工象限A1〜A4毎の加工条件を取得する。状態観測部40が取得する加工条件は、加工条件見直し前の加工条件、および加工条件見直し後の加工条件である。状態観測部40は、取得した加工象限A1〜A4毎の評価点、および取得した加工象限A1〜A4毎の加工条件を状態変数として観測し、学習部30に送る。
学習部30は、状態変数に従って、加工象限A1〜A4毎に次回に用いる加工条件を学習する。すなわち、学習部30は、時間差分が小さくなる、すなわち評価点が高くなる加工条件を加工象限A1〜A4毎に学習する。具体的には、学習部30は、加工条件と評価点とを含んだ状態変数に基づいて作成されるデータセットに従って、次回の加工条件である行動を学習する。
学習部30は、関数更新部31と、報酬計算部32とを備えている。報酬計算部32は、状態変数に基づいて報酬を計算する。すなわち、報酬計算部32は、加工条件および評価点に基づいて、加工条件の報酬を計算する。報酬計算部32は、評価点が高いほど加工条件の報酬を増大させる。すなわち、報酬計算部32は、加工条件見直し前と見直し後の評価点を比較して、評価点の高い加工条件に高い報酬を与える。
関数更新部31は、行動を決定するための関数を記憶しており、報酬に基づいて行動を決定するための関数を更新する。行動を決定するための関数の例は、後述する行動価値関数Q(st,at)である。本実施の形態の関数更新部31は、放電加工機1が放電加工を行うたびに、評価点が高くなる加工条件を決定するように、行動価値関数Q(st,at)を更新する。関数更新部31は、算出した行動を意思決定部33に送る。
すなわち、放電加工機1は、ある加工条件で放電加工を実行してみて、評価点の大きさに応じて、加工条件のうちの特定項目を特定値だけ変更する。なお、状態観測部40は、加工条件および時間差分を状態変数として観測してもよい。この場合、学習部30は、加工条件と時間差分とを含んだ状態変数に基づいて作成されるデータセットに従って、次回の加工条件である行動を学習する。
機械学習装置29は、評価点が基準値よりも低い場合には、評価点が基準値を超えるよう、加工条件を修正する。例えば、機械学習装置29は、時間差分がマイナスの値である場合には、加工条件のうち加工時間に影響を与える項目の数値を、加工時間が長くなるよう特定値だけ上げる。一方、機械学習装置29は、時間差分がプラスの値である場合には、加工条件のうち加工時間に影響を与える項目の数値を、加工時間が短くなるよう特定値だけ下げる。機械学習装置29は、これらの処理を繰り返して学習し、学習した結果を利用して、次の放電加工を制御する。このように、機械学習装置29は、加工時間が目標時間に近付くよう加工条件を学習していく。
意思決定部33は、関数更新部31で更新された行動価値関数Q(st,at)、すなわち、学習済みモデルを用いて行動を算出する。具体的には、意思決定部33は、評価点と、状態観測部40で観測された加工条件とが入力されると、行動価値関数Q(st,at)を用いて、現在の評価点よりも評価点が高くなるような最適な見直し後の加工条件を算出する。意思決定部33は、算出した行動、すなわち加工条件を加工条件記憶部25および評価出力部26に送る。この場合、加工条件記憶部25は、学習部30が学習した加工条件を記憶し、評価出力部26は学習部30が学習した加工条件を表示部13に表示させる。加工条件が許容範囲外であれば、意思決定部33は、加工条件を加工条件記憶部25には送らず、評価出力部26に送る。この場合も評価出力部26は、学習部30が学習した加工条件を表示部13に表示させる。
なお、関数更新部31が算出した加工条件を許容するか否かは、ユーザが判定してもよい。この場合、意思決定部33は、ユーザによって加工結果評価部16Cに入力される指示(許容する指示、または許容しない指示)に従って、加工条件を許容するか否かを決定する。
ここで学習部30による行動の学習処理について説明する。学習部30に用いる学習アルゴリズムは、何れの学習アルゴリズムであってもよい。ここでは、学習アルゴリズムに、強化学習(Reinforcement Learning)を適用した場合について説明する。強化学習は、ある環境内における行動主体であるエージェントが、状態変数で示される現在の状態を観測し、観測結果に基づいて取るべき行動を決定するというものである。エージェントは、行動を選択することで環境から報酬を得て、一連の行動を通じて報酬が最も多く得られるような方策を学習する。強化学習の代表的な手法として、Q学習(Q-Learning)およびTD学習(TD-Learning)が知られている。例えば、Q学習の場合、行動価値関数Q(st,at)の一般的な更新式(行動価値テーブル)は、以下の式(1)で表される。すなわち、行動価値テーブルの一例は、式(1)の行動価値関数Q(st,at)である。
式(1)において、stは時刻tにおける環境を表し、atは時刻tにおける行動を表す。行動atにより、環境はst+1に変わる。rt+1はその環境の変化によってもらえる報酬を表し、γは割引率を表し、αは学習係数を表す。Q学習を適用した場合、次回の加工条件が行動atとなる。
式(1)で表される更新式は、時刻t+1における最良の行動aの行動価値が、時刻tにおいて実行された行動aの行動価値Qよりも大きければ、行動価値Qを大きくし、逆の場合は、行動価値Qを小さくする。換言すれば、時刻tにおける行動aの行動価値Qを、時刻t+1における最良の行動価値に近づけるように、行動価値関数Q(st,at)を更新する。それにより、ある環境における最良の行動価値が、それ以前の環境における行動価値に順次伝播していくようになる。
例えば、放電加工機1が、見直し前の加工条件で加工し、制御装置2が見直し前の加工条件での評価点(ここでは第1の評価点とする)を算出したとする。さらに、制御装置2が、第1の評価点に基づいて加工条件を見直し、放電加工機1が、見直し後の加工条件で加工し、制御装置2が、見直し後の加工条件での評価点(ここでは第2の評価点とする)を算出したとする。この場合、報酬計算部32は、第2の評価点が第1の評価点よりも高ければ、見直し後の加工条件に対して報酬を増大させる。このとき、報酬計算部32は、見直し後の加工条件に対して、例えば「1」の報酬を与える。一方、報酬計算部32は、第2の評価点が第1の評価点よりも小さければ、見直し後の加工条件に対して報酬を低減させる。このとき、報酬計算部32は、見直し後の加工条件に対して、例えば「−1」の報酬を与える。報酬計算部32は、例えば、評価点が最高点であるときは、報酬を最大報酬とする。報酬計算部32は、計算した報酬を関数更新部31に送る。
関数更新部31は、報酬計算部32によって計算された報酬に従って行動を決定するための関数を更新する。例えばQ学習の場合、式(1)で表される行動価値関数Q(st,at)が、行動を計算するための関数であり、関数更新部31によって更新される。
なお、加工実績は、加工象限A1〜A4毎の、実際の加工時間比率と目標の加工時間比率との差分であってもよいし、加工象限A1〜A4毎の、実際の加工深さと目標の加工深さとの差分であってもよい。また、加工実績は、加工象限A1〜A4毎の、実際の加工速度と目標の加工速度との差分であってもよい。
なお、実施の形態3で説明した加工条件修正部24Bを、実施の形態2で説明した加工結果評価部16Bに適用してもよい。図19は、実施の形態3にかかる制御装置の別構成例を示す図である。図19の各構成要素のうち、実施の形態1,2で説明した制御装置2と同一機能を達成する構成要素については同一符号を付しており、重複する説明は省略する。
図19では、制御装置2の構成要素である加工結果評価部16D、電源制御部15、および機械制御部14に加えて、表示部13および加工諸元を図示している。加工結果評価部16Dは、加工結果評価部16Bと比較して、加工条件修正部24Aの代わりに加工条件修正部24Bを具備している。加工結果評価部16Dの加工条件修正部24Bも、加工結果評価部16Cの加工条件修正部24Bと同様に、意思決定部33および機械学習装置29を備えている。
加工結果評価部16Dの機械学習装置29も、加工結果評価部16Cの機械学習装置29と同様に、実際の加工で取得された加工実績に基づいて、加工象限A1〜A4毎に目標の加工を実現することができる加工条件を学習する。
本実施の形態では、機械学習装置29が、強化学習を利用して機械学習する場合について説明したが、機械学習装置29は、他の公知の方法、例えばニューラルネットワーク、遺伝的プログラミング、機能論理プログラミング、サポートベクターマシンなどに従って機械学習を実行してもよい。
このように実施の形態3では、機械学習装置29が、加工条件および評価点を状態変数として観測し、状態変数に基づいて作成されるデータセットに従って、加工象限A1〜A4毎に評価点が高くなる加工条件を学習している。したがって、機械学習装置29は、目標の加工を実現することができる加工条件を加工象限A1〜A4毎に学習することができる。
ここで、加工結果評価部16A〜16Dのハードウェア構成について説明する。図20は、実施の形態1から3にかかる制御装置が備える加工結果評価部のハードウェア構成例を示す図である。なお、加工結果評価部16A〜16Dは、同様のハードウェア構成を有しているので、ここでは、加工結果評価部16Aのハードウェア構成について説明する。
加工結果評価部16Aは、図20に示した入力装置151、プロセッサ152、メモリ153、および出力装置154により実現することができる。プロセッサ152の例は、CPU(Central Processing Unit、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、プロセッサ、DSP(Digital Signal Processor)ともいう)またはシステムLSI(Large Scale Integration)である。メモリ153の例は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)である。
加工結果評価部16Aは、プロセッサ152が、メモリ153で記憶されている、加工結果評価部16Aの動作を実行するための、コンピュータで実行可能な加工結果評価プログラムを読み出して実行することにより実現される。加工結果評価部16Aの動作を実行するためのプログラムである加工結果評価プログラムは、加工結果評価部16Aの手順または方法をコンピュータに実行させるものであるともいえる。
加工結果評価部16Aで実行される加工結果評価プログラムは、評価算出部22と、実績算出部23と、加工条件修正部24Aとを含むモジュール構成となっており、これらが主記憶装置上にロードされ、これらが主記憶装置上に生成される。
メモリ153は、プロセッサ152が各種処理を実行する際の一時メモリに使用される。メモリ153は、例えば、加工結果評価プログラム、加工条件などを記憶する。出力装置154は、加工実績、評価点、加工条件などを表示部13などの外部装置に出力する。
加工結果評価プログラムは、インストール可能な形式または実行可能な形式のファイルで、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体に記憶されてコンピュータプログラムプロダクトとして提供されてもよい。また、加工結果評価プログラムは、インターネットなどのネットワーク経由で加工結果評価部16Aに提供されてもよい。
なお、加工結果評価部16Aの機能について、一部を専用回路などの専用のハードウェアで実現し、一部をソフトウェアまたはファームウェアで実現するようにしてもよい。また、制御装置2を、加工結果評価部16Aと同様のハードウェア構成としてもよい。
以上の実施の形態に示した構成は、本発明の内容の一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。