上述した特許文献1の接合構造では、接合される木質部材に埋設される接合用治具に加えて、木質部材の外側に配置された2本の緊定材によって、両木質部材が強固に接合される。しかし、この接合構造では、接合用治具が外部から見えないものの、金属製の緊定材が外部に露出した状態で設けられるため、木質部材同士の接合箇所の見栄えが悪くなる。また、外部に露出する緊定材を取り外すことにより、見栄えを改善することが可能であるものの、その場合には、接合すべき2つの木質部材が、埋設された棒状の接合用治具とその周囲に導入された接着剤のみで接合されることになるため、両木質部材を互いに離隔する方向に外力が作用する場合には、十分な接合強度が確保できないおそれがある。
一方、特許文献2の接合構造では、柱及び横木のほぞ穴にほぞロッドを埋設しかつ柱に横木を当接させた状態で、複数のドリフトピンをピン孔にそれぞれ打ち込む。ほぞロッド及びドリフトピンは金属製であるのに対し、柱及び横木は木質材であるため、ドリフトピンをほぞロッドの周溝に係合させるとともに、ほぞロッドの周面に近接させるためには、ほぞ穴及びピン孔を精度良く形成する必要があり、手間がかかってしまう。また、ほぞ穴及び複数のピン孔を柱及び横木に精度良く形成したとしても、柱及び横木のピン孔の位置やサイズが乾湿の影響を受け、適正な位置やサイズに対してずれてしまうことがある。この場合には、ほぞロッドと複数のドリフトピンを適切に係合させることができず、その結果、十分な接合強度が確保できないおそれがある。
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたものであり、良好な外観を確保しながら、2以上の木質部材を容易にかつ強固に接合することができる木質部材の接合構造を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するために、請求項1に係る発明は、2以上の木質部材を、互いに交差するように延びかつ木質部材に埋設される棒状の第1緊結部材及び第2緊結部材、並びに接着剤を用いて接合する木質部材の接合構造であって、第1緊結部材は、横断面が所定の径を有するように形成され、2以上の木質部材のうちの互いに当接する所定の2つの木質部材にそれぞれ形成されかつ互いに連通し直線状に延びる第1埋設穴に、これに沿ってかつ所定の2つの木質部材にわたって延びるように埋設され、第2緊結部材は、各々の横断面が第1緊結部材よりも小さい径を有する複数の小径緊結部材で構成され、複数の小径緊結部材が、所定の2つの木質部材の少なくとも1つに形成されかつ第1埋設穴を横切って延びるように形成された単一の第2埋設穴に、これに沿ってかつ第1緊結部材を間にした状態に延び、所定のスペーサを介して互いに所定間隔を隔てた状態に保持されるように埋設され、接着剤は、第1埋設穴及び第2埋設穴に液体の状態で充填された後、硬化することにより、第1緊結部材及び複数の小径緊結部材を内包しかつ第1埋設穴及び第2埋設穴に対応する一体形状の接合硬化体を形成し、接合硬化体を介して、2以上の木質部材を接合することを特徴とする。
この構成によれば、2以上の木質部材のうちの互いに当接する所定の2つの木質部材には、両木質部材にそれぞれ形成されかつ互いに連通し直線状に延びる第1埋設穴に、横断面が所定の径を有する第1緊結部材が、両木質部材にわたって延びるように埋設されている。また、互いに当接する所定の2つの木質部材の少なくとも1つには、第1埋設穴を横切って延びる単一の第2埋設穴に、第2緊結部材を構成しかつ各々の横断面が第1緊結部材よりも小さい径を有する複数の小径緊結部材が、第1緊結部材を間にした状態に延び、所定のスペーサを介して互いに所定間隔を隔てた状態に保持されるように埋設されている。そして、第1埋設穴及び第2埋設穴に液体の状態で充填された接着剤が硬化することにより、第1緊結部材及び複数の小径緊結部材を内包しかつ第1埋設穴及び第2埋設穴に対応する一体形状の接合硬化体が形成され、この接合硬化体を介して、2以上の木質部材が接合される。
第1緊結部材及び第2緊結部材の複数の小径緊結部材は、これらを内包する接合硬化体と一体に、接合すべき2以上の木質部材に埋設されるので、それらの木質部材を接合するための金具などが外部に露出することなく、木質部材の接合構造として良好な外観を確保することができる。また、ほぞロッドとドリフトピンを互いに係合させるためのほぞ穴及びピン孔を精度良く形成しなければならない従来の接合構造と異なり、第1緊結部材が埋設される第1埋設穴、及び複数の小径緊結部材が埋設される単一の第2埋設穴を、木質部材に容易に形成することができる。
また、互いに接合した2つの木質部材において引張荷重が作用する場合でも、第1緊結部材の引張強度、及び接合硬化体のうちの第1緊結部材を内包しかつ第1埋設穴に対応する部分(以下、本欄において「第1接合硬化部」という)と第1埋設穴の周面との接着力が、引張荷重に対する抵抗力として作用する。加えて、接合硬化体のうちの複数の小径緊結部材を内包しかつ第2埋設穴に対応する部分(以下、本欄において「第2接合硬化部」という)がアンカーとして作用することで、第2接合硬化部による支圧力が、上記の引張荷重に対する大きな抵抗力として作用する。以上により、互いに接合した2つの木質部材は、高い接合度合いで強固に接合される。さらに、上記のように、第2接合硬化部がアンカーとして作用することにより、第2接合硬化部が埋設された木質部材において、上記の引張荷重に対する第1接合硬化部による抵抗力を低減でき、その分、第1緊結部材の長さを短くすることが可能になる。以上のように、本発明の接合構造によれば、2以上の木質部材を容易にかつ強固に接合することができる。
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の木質部材の接合構造において、第1埋設穴と第2埋設穴は、互いに直交して延びるように形成されていることを特徴とする。
この構成によれば、第1埋設穴と第2埋設穴が互いに直交しているので、接合硬化体における第1接合硬化部と第2接合硬化部は、互いに直交した状態に形成される。これにより、第2接合硬化部が第1接合硬化部に対して傾斜する場合に比べて、第2接合硬化部による支圧力を大きくすることができ、それにより、互いに接合する2つの木質部材を、より一層強固に接合することができる。
請求項3に係る発明は、請求項2に記載の木質部材の接合構造において、第2埋設穴は、2以上の木質部材のうちの互いに当接する所定の2つの木質部材にそれぞれ形成されかつ互いに連通し直線状に延びており、第2埋設穴に埋設される複数の小径緊結部材は、所定の2つの木質部材にわたって延びていることを特徴とする。
この構成によれば、第2埋設穴が、2以上の木質部材のうちの互いに当接する所定の2つの木質部材にそれぞれ形成されかつ互いに連通し直線状に延びており、この第2埋設穴に埋設される複数の小径緊結部材が、上記の所定の2つの木質部材にわたって延びている。これにより、接合硬化体の第1接合硬化部を介して、2つの木質部材を接合できるのに加えて、その一方の木質部材と他の木質部材を、接合硬化体の第2接合硬化部を介して、接合することができる。つまり、接合硬化体の第1接合硬化部と第2接合硬化部との交差部分が埋設される木質部材を介して、複数の木質部材を互いに直交する2方向に容易に接合することができる。また、複数の小径緊結部材による第2緊結部材を介して接合される木質部材の接合面の中心を、その木質部材が接合される他の木質部材の接合面の中心に一致させることにより、第1緊結部材と第2緊結部材の交差部分を含む木質部材の接合面の幅(厚さ)を最小化することができる。さらに、互いに接合される複数の木質部材の接合面の中心同士を比較的容易に一致させることができ、それにより、各木質部材に対し、偏心曲げモーメントなどの荷重を作用しにくくすることができる。
請求項4に係る発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載の木質部材の接合構造において、2以上の木質部材のうちの第1埋設穴が形成された木質部材には、第1埋設穴の先端部から第1埋設穴に対して直交するように外部に延び、第1埋設穴への接着剤の注入又は充填を確認するための第1接着剤注入・確認用通路が形成されるとともに、第2埋設穴が形成された木質部材には、第2埋設穴の先端部から第2埋設穴に対して直交するように外部に延び、第2埋設穴への接着剤の注入又は充填を確認するための第2接着剤注入・確認用通路が形成されていることを特徴とする。
この構成によれば、2以上の木質部材において、第1埋設穴が形成された木質部材には第1接着剤注入・確認用通路が形成され、第2埋設穴が形成された木質部材には第2接着剤注入・確認用通路が形成されている。第1及び第2埋設穴に接着剤を充填する際には、第1及び第2接着剤注入・確認用通路のいずれか1つから、接着剤を注入する。この場合、第1及び第2接着剤注入・確認用通路はそれぞれ、第1及び第2埋設穴に対して直交するように延びているので、第1及び第2埋設穴の全体に接着剤が十分に行き渡って充填された後でないと、接着剤の注入に利用した以外の接着剤注入・確認用通路から接着剤が流出することはない。したがって、接着剤の注入開始後に、接着剤の注入に利用した以外の接着剤注入・確認用通路からの接着剤の流出を確認することにより、第1埋設穴及び第2埋設穴に接着剤が充填されたことを容易に確認することができる。
請求項5に係る発明は、請求項3又は4に記載の木質部材の接合構造において、棒状の第3緊結部材をさらに用いて接合する木質部材の接合構造であって、第3緊結部材は、各々の横断面が第1緊結部材よりも小さい径を有する複数の小径緊結部材で構成され、複数の小径緊結部材が、木質部材において第1埋設穴を横切りかつ第2埋設穴に交差して延びるように形成された第3埋設穴に、これに沿ってかつ第1緊結部材を間にした状態に延びるように埋設され、接着剤は、第1埋設穴及び第2埋設穴に加えて第3埋設穴にも液体の状態で充填された後、硬化することにより、第1緊結部材、並びに第2緊結部材及び第3緊結部材の複数の小径緊結部材を内包しかつ第1埋設穴、第2埋設穴及び第3埋設穴に対応する一体形状の接合硬化体を形成することを特徴とする。
この構成によれば、第3緊結部材の複数の小径緊結部材が、木質部材において第1埋設穴を横切りかつ第2埋設穴に交差して延びるように形成された第3埋設穴に、第1緊結部材を間にした状態に延びるように埋設されている。そして、第1埋設穴及び第2埋設穴に加えて、第3埋設穴にも、液体の状態で充填された接着剤が硬化することにより、第1緊結部材、並びに第2緊結部材及び第3緊結部材の複数の小径緊結部材を内包しかつ第1埋設穴、第2埋設穴及び第3埋設穴に対応する一体形状の接合硬化体が形成され、この接合硬化体を介して、2以上の木質部材を接合する。
第3緊結部材の複数の小径緊結部材は、第1緊結部材及び第2緊結部材の複数の小径緊結部材とともに内包する接合硬化体と一体に、接合すべき2以上の木質部材に埋設されるので、それらの木質部材を接合するための金具などが外部に露出することなく、木質部材の接合構造として良好な外観を確保することができる。また、互いに接合した2つの木質部材において、第1緊結部材の長さ方向に沿って引張荷重が作用する場合、接合硬化体のうちの第3緊結部材の複数の小径緊結部材を内包しかつ第3埋設穴に対応する部分(以下、本欄において「第3接合硬化部」という)が、前記第2接合硬化部とともにアンカーとして作用する。これにより、第2接合硬化部に加えて第3接合硬化部による支圧力が、上記の引張荷重に対してより一層大きな抵抗力として作用し、その結果、互いに接合する2つの木質部材を、より一層強固に接合することができる。
請求項6に係る発明は、請求項5に記載の木質部材の接合構造において、第3埋設穴は、第1埋設穴に加えて、第2埋設穴を横切って延びるように形成されており、第3埋設穴に埋設される第3緊結部材の複数の小径緊結部材は、第2緊結部材の複数の小径緊結部材の内側を通って延びていることを特徴とする。
この構成によれば、第3埋設穴が、第1埋設穴に加えて、第2埋設穴を横切って延びるように形成されているので、第3緊結部材の複数の小径緊結部材は、第1緊結部材と第2緊結部材の複数の小径緊結部材との交差部分において、その小径緊結部材の内側を通って延びるように、第3埋設穴に埋設される。つまり、第1緊結部材が埋設される第1埋設穴、第2緊結部材の複数の小径緊結部材が埋設される第2埋設穴、及び第3緊結部材の複数の小径緊結部材が埋設される第3埋設穴は、接合すべき木質部材の所定の1箇所において交差した状態になる。これにより、第1埋設穴に対し、第2埋設穴及び第3埋設穴がそれぞれ異なる位置で横切って延びるように形成される場合に比べて、埋設穴同士の重なり部分の容積が少なくなり、その分、埋設穴に充填すべき接着剤の量を少なくできることで、接合構造に要するコストを低減することができる。
請求項7に係る発明は、請求項5又は6に記載の木質部材の接合構造において、第3埋設穴は、2以上の木質部材のうちの互いに当接する所定の2つの木質部材にそれぞれ形成されかつ互いに連通し直線状に延びており、第3埋設穴に埋設される第3緊結部材の複数の小径緊結部材は、所定の2つの木質部材にわたって延びていることを特徴とする。
この構成によれば、第3埋設穴が、2以上の木質部材のうちの互いに当接する所定の2つの木質部材にそれぞれ形成されかつ互いに連通し直線状に延びており、この第3埋設穴に埋設される第3緊結部材の複数の小径緊結部材が、上記の所定の2つの木質部材にわたって延びている。これにより、接合硬化体の第1接合硬化部及び第2接合硬化部を介して、複数の木質部材を、互いに直交する2方向に加えて、これらに交差する方向に接合することができる。つまり、接合硬化体の第1接合硬化部、第2接合硬化部及び第3接合硬化部の交差部分が埋設される木質部材を介して、複数の木質部材を互いに交差する3方向に容易に接合することができる。また、第3緊結部材を介して接合される木質部材の接合面の中心を、その木質部材が接合される他の木質部材の接合面の中心に一致させることにより、第1緊結部材と第3緊結部材の交差部分を含む木質部材の接合面の幅(厚さ)を最小化することができる。さらに、互いに接合される複数の木質部材の接合面の中心同士を比較的容易に一致させることができ、それにより、各木質部材に対し、偏心曲げモーメントなどの荷重を作用しにくくすることができる。
請求項8に係る発明は、請求項7に記載の木質部材の接合構造において、2以上の木質部材のうちの第3埋設穴が形成された木質部材には、第3埋設穴の先端部から第3埋設穴に対して直交するように外部に延び、第3埋設穴への接着剤の注入又は充填を確認するための第3接着剤注入・確認用通路が形成されていることを特徴とする。
この構成によれば、2以上の木質部材において、第3埋設穴が形成された木質部材には、前述した第1及び第2接着剤注入・確認用通路と同様の第3接着剤注入・確認用通路が、第3埋設穴の先端部から直交して外部に延びるように形成されている。これにより、第1及び第2接着剤注入・確認用通路と同様の効果を得ることができる。すなわち、第3接着剤注入・確認用通路から接着剤を注入することにより、第1埋設穴、第2埋設穴及び第3埋設穴に接着剤を充填することができ、また、第1及び第2接着剤注入・確認用通路に加えて、第3接着剤注入・確認用通路からの接着剤の流出を確認することにより、第1埋設穴、第2埋設穴及び第3埋設穴に接着剤が充填されたことを容易に確認することができる。
請求項9に係る発明は、請求項8に記載の木質部材の接合構造において、第1埋設穴、第2埋設穴及び第3埋設穴のうち、外部に開口する埋設穴には、埋設穴を閉鎖する栓部材が取り付けられることを特徴とする。
この構成によれば、第1埋設穴、第2埋設穴及び第3埋設穴のうち、外部に開口する埋設穴には、それを閉鎖する栓部材が取り付けられるので、第1緊結部材、並びに第2緊結部材及び第3緊結部材の複数の小径緊結部材が外部から見えることがなく、木質部材の接合構造における良好な外観を確保することができる。
請求項10に係る発明は、請求項9に記載の木質部材の接合構造において、栓部材には、栓部材が取り付けられる埋設穴への接着剤の注入又は充填を確認するための接着剤注入・確認用孔が形成されていることを特徴とする。
この構成によれば、第1埋設穴、第2埋設穴及び第3埋設穴のうちの外部に開口する埋設穴に取り付けられた栓部材に、接着剤注入・確認用孔が形成されている。これにより、栓部材の接着剤注入・確認用孔を利用して、第1埋設穴、第2埋設穴及び第3埋設穴に接着剤を充填することができ、また、第1、第2及び第3接着剤注入・確認用通路に加えて、接着剤注入・確認用孔からの接着剤の流出を確認することにより、第1埋設穴、第2埋設穴及び第3埋設穴に接着剤が充填されたことを容易に確認することができる。
以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態による接合構造を適用して接合される複数(同図では4つ)の木質部材の一部、具体的には、接合される部分としての角部を示している。各木質部材1は、CLT材など、厚さを大きくしにくい木質部材から成り、例えば正面形状が矩形状で比較的厚い板状に形成されている。なお、以下の説明において、複数の木質部材1を特に区別する場合には、左側、右側、上側及び前側の木質部材1をそれぞれ、「左木質部材1A」、「右木質部材1B」、「上木質部材1C」及び「前木質部材1D」というものとする。
図2(a)及び(b)は、第1実施形態による接合構造を示しており、具体的には、2つの木質部材1を左右方向に接合する接合構造を示している。両図に示すように、この接合構造では、いずれも金属製の丸棒などから成り、比較的大きい所定の径(例えば16〜25mm)を有する大径緊結部材2(第1緊結部材)と、各々がこれよりも小さい所定の径(例えば10〜13mm)を有する複数(本実施形態では4本)の小径緊結部材3(第2緊結部材)が、両木質部材1、1に埋設されるとともに、それらの大径緊結部材2及び複数の小径緊結部材3の周囲に所定種類の合成樹脂(例えばエポキシ樹脂)から成る接着剤が充填されることによって、左木質部材1Aと右木質部材1Bが接合されている。
なお、上記の大径緊結部材2及び小径緊結部材3は、単純な丸棒で構成される他、外周面に螺旋状の凸部や複数の凹凸が形成されたものなどを使用することも可能である。それらの場合には、大径緊結部材2及び小径緊結部材3の表面積が拡大することで、接着剤との接着面積が拡大し、それにより、接着度合を高めることができる。
図2(a)及び(b)に示すように、左木質部材1Aの所定位置には、右方に開放しかつ所定の径(例えば32mm)及び長さを有する水平な埋設穴11aが形成される一方、右木質部材1Bの所定位置には、左方に開放しかつ所定の径(例えば32mm)及び長さを有する水平な埋設穴11bが形成されている。左木質部材1Aと右木質部材1Bが互いに当接しかつ両埋設穴11a、11bが合致した状態では、両埋設穴11a、11bは、互いに連通し、左右方向に直線状に延びた状態になる。
なお、以下の説明では、上記の埋設穴11a及び11bを含めて、これらが連通することによって構成される埋設穴を適宜、「第1埋設穴11」というものとする。
上記の第1埋設穴11には、前述した大径緊結部材2が挿入され、第1埋設穴11に沿ってかつ左木質部材1A及び右木質部材1Bにわたって延びるように埋設されている。
また、左木質部材1Aの所定位置には、第1埋設穴11に直交し、これを横切って延びる埋設穴12が形成されている。具体的には、図2(a)に示す接合構造では、左木質部材1Aの所定位置において、上方に開放するとともに上下方向に延び、第1埋設孔11よりも大きい所定の径(例えば60mm)を有する埋設穴12aが形成されている。一方、図2(b)に示す接合構造では、左木質部材1Aの所定位置において、前方に開放するとともに前後方向に延び、上記の埋設穴12aと同様、第1埋設孔11よりも大きい所定の径(例えば60mm)を有する埋設穴12bが形成されている。
なお、以下の説明では、上記の埋設穴12a及び12bを、特に区別しない場合には適宜、「第2埋設穴12」というものとする。
上記の第2埋設穴12には、前述した4本の小径緊結部材3が挿入され、第2埋設穴12に沿ってかつ大径緊結部材2を間にした状態に延びるように埋設されている。具体的には、図2(c)に示すように、大径緊結部材2を間にした状態で、その両側(図2(c)の上側及び下側)にそれぞれ、互いに所定間隔を隔てた2本の小径緊結部材3、3が配置されている。なお、これらの小径緊結部材3は、プラスチックなどから成る所定形状のスペーサ(図示せず)を介して連結されており、これにより、互いに所定間隔を隔てた状態に保持されている。
また、左木質部材1A及び右木質部材1Bには、接着剤を第1埋設穴11及び第2埋設穴12に注入するとともに、それらの埋設穴11、12への接着剤の充填を確認するための複数の接着剤注入・確認用通路21、22が形成されている。具体的には、図2(a)及び(b)に示すように、第1埋設穴11に連通し、その両端部から第1埋設穴11に対して直交するように前方にそれぞれ延びる第1接着剤注入・確認用通路21a、21bが設けられている。また、図2(a)に示す接合構造ではさらに、埋設穴12aに連通し、その下端部から埋設穴12aに対して直交するように前方に延びる第2接着剤注入・確認用通路22aが設けられている。
さらに、左木質部材1Aには、第2埋設穴12の開口部を閉鎖する木製の栓部材20が取り付けられるようになっている。この栓部材20には、貫通孔20a(接着剤注入・確認用孔)が形成されており、この貫通孔20aは、上述した接着剤注入・確認用通路21、22と同様の機能を有するものである。
そして、大径緊結部材2及び複数の小径緊結部材3がそれぞれ埋設された第1埋設穴11及び第2埋設穴12には、前記接着剤が充填される。具体的には、この接着剤の充填は、複数の接着剤注入・確認用通路21、22及び栓部材20の貫通孔20aのいずれか1つから、液体状の接着剤を注入することによって行われる。その接着剤の注入開始後、接着剤の注入に利用した以外の接着剤注入・確認用通路21、22及び栓部材20の貫通孔20aの全てから、接着剤が外部に流出するのを確認して、接着剤の注入を終了する。これにより、第1埋設穴11及び第2埋設穴12の全体に接着剤が充填され、その後、接着剤が硬化する。その結果、左木質部材1A及び右木質部材1Bの内部には、大径緊結部材2及び複数の小径緊結部材3を内包しかつ第1埋設穴11及び第2埋設穴12に対応する一体形状の接合硬化体15が形成される。
図3(a)、(b)及び(c)は、図2(a)、(b)及び(c)にそれぞれ対応し、左木質部材1A及び右木質部材1Bの内部に形成される接合硬化体15を示している。なお、実際には、接着剤注入・確認用通路21、22及び栓部材20の貫通孔20aにも、硬化した接着剤が、接合硬化体15に連なる突起状に形成されるが、そのような突起状の硬化した接着剤については、図3を含め、後述する図面においても、省略するものとする。
図3(a)に示す接合硬化体15は、大径緊結部材2を内包するとともに第1埋設穴11に対応し、左木質部材1A及び右木質部材1Bにわたって左右方向に延びる第1接合硬化部15aと、複数の小径緊結部材3を内包するとともに第2埋設穴12に対応し、左木質部材1Aにおいて第1接合硬化部15aに直交した状態で交差し、上下方向に延びる第2接合硬化部15bとによって構成されている。一方、図3(b)に示す接合硬化体15は、前記第1接合硬化部15aと、これに直交した状態で交差し、前後方向に延びる第2接合硬化部15cとによって構成されている。
上記のように構成された接合硬化体15により、第1接合硬化部15aが、左木質部材1Aと右木質部材1Bの第1埋設穴11の周面全体に強固に密着することで、両木質部材1A、1Bを強固に接合するとともに、第2接合硬化部15b、15cが、左木質部材1Aの第2埋設穴12の周面全体に強固に密着するとともに、左木質部材1Aに埋設された第1接合硬化部15aのアンカーとして作用する。
以上のように、本実施形態によれば、大径緊結部材2及び複数の小径緊結部材3が、これらを内包する接合硬化体15と一体に、接合すべき左木質部材1A及び右木質部材1Bに埋設されるので、木質部材1を接合するための金具などが外部に露出することなく、木質部材1の接合構造として良好な外観を確保することができる。また、ほぞロッドとドリフトピンを互いに係合させるためのほぞ穴及びピン孔を精度良く形成しなければならない従来の接合構造と異なり、大径緊結部材2が埋設される第1埋設穴11、及び複数の小径緊結部材3が埋設される第2埋設穴12を、左木質部材1A及び右木質部材1Bに容易に形成することができる。
また、互いに接合した左木質部材1A及び右木質部材1Bにおいて引張荷重が作用する場合でも、大径緊結部材2の引張強度、及び接合硬化体15の第1接合硬化部15aと第1埋設穴11の周面との接着力が、引張荷重に対する抵抗力として作用する。加えて、接合硬化体15の第2接合硬化部15b又は15cがアンカーとして作用することで、第2接合硬化部15b、15cによる支圧力が、引張荷重に対する大きな抵抗力として作用する。以上により、互いに接合した左木質部材1Aと右木質部材1Bは、高い接合度合いで強固に接合される。以上のように、本実施形態の接合構造によれば、互いに接合する2つの木質部材1、1を容易にかつ強固に接合することができる。
なお、上述した第1実施形態では、複数の小径緊結部材3を、左木質部材1Aにのみ埋設することにより、第2接合硬化部15b又は15cを左木質部材1Aの内部にのみ形成したが、複数の小径緊結部材3を、右木質部材1Aにのみ埋設したり、左右の木質部材1A、1Bの両方に埋設したりすることも可能である。また、第1実施形態では、大径緊結部材3を1本のみ用いたが、2本以上の大径緊結部材3を用い、これらの大径緊結部材3を、互いに前後方向に間隔を隔てて、左木質部材1A及び右木質部材1Bにわたって左右方向に延びるように埋設することも可能である。さらに、第1実施形態では、第2埋設穴12に4本の小径緊結部材3を埋設したが、この本数は特に限定されるものではなく、2本以上の小径緊結部材3を、大径緊結部材2を間にした状態で、第2埋設穴12に埋設すればよい。
図4(a)及び(b)は、第2実施形態による接合構造を示している。この接合構造は、3つの木質部材1を接合するものであり、具体的には、2つの木質部材1を左右方向に接合するとともに、他の木質部材1を、上側又は前側に接合するものである。なお、以下の説明では、第1実施形態の接合構造と同一の構成部分については、同じ符号を付して、その説明を省略するものとする。
図4(a)に示す接合構造では、左木質部材1Aと右木質部材1Bが左右方向に接合されるとともに、左木質部材1Aの上側に上木質部材1Cが接合されており、一方、図4(b)に示す接合構造では、上記の上木質部材1Cに代えて、左木質部材1Aの前側に前木質部材1Dが接合されている。
図4(a)の接合構造に示すように、左木質部材1Aには、前述した図2(a)と同様、上方に開放するとともに上下方向に延び、所定の径を有する埋設穴12aが形成されている。一方、上木質部材1Cには、下方に開放するとともに上下方向に延び、上記埋設穴12aと同じ径を有する埋設穴12cが形成されている。左木質部材1Aと上木質部材1Cが互いに上下方向に当接しかつ両埋設穴12a、12cが合致した状態では、両埋設穴12a、12cは、互いに連通し、上下方向に直線状に延びた状態になる。
一方、図4(b)の接合構造に示すように、左木質部材1Aには、前述した図2(b)と同様、前方に開放するとともに前後方向に延び、所定の径を有する埋設穴12bが形成される一方、前木質部材1Dには、後方に開放するとともに前後方向に延び、上記埋設穴12bと同じ径を有する埋設穴12dが形成されている。左木質部材1Aと前木質部材1Dが互いに前後方向に当接しかつ両埋設穴12b、12dが合致した状態では、両埋設穴12b、12dは、互いに連通し、前後方向に直線状に延びた状態になる。
なお、以下の説明では、上記の埋設穴12a、12c、及び12b、12dを含めて、これらが連通することによって構成される埋設穴を適宜、「第2埋設穴12」というものとする。
上記の第2埋設穴12には、第1実施形態と同様にして、4本の小径緊結部材3が挿入され、第2埋設穴12に沿ってかつ、左木質部材1A及び上木質部材1Cにわたって上下方向に延びるように、又は左木質部材1A及び前木質部材1Dにわたって前後方向に延びるように、埋設されている。
なお、図4(a)に示すように、上木質部材1Cには、第2埋設穴12cに連通し、その端部から第2埋設穴12cに対して直交するように前方に延びる第2接着剤注入・確認用通路22cが設けられている。一方、図4(b)に示すように、前木質部材1Dには、第2埋設穴12dに連通し、その端部から第2埋設穴12dに対して直交するように右方に延びる第2接着剤注入・確認用通路22dが設けられている。
そして、第1実施形態と同様にして、複数の接着剤注入・確認用通路21、22のいずれか1つから、液体状の接着剤を注入し、第1埋設穴11及び第2埋設穴12に充填する。これにより、左木質部材1A、右木質部材1B及び上木質部材1C、並びに左木質部材1A、右木質部材1B及び前木質部材1Dの内部には、大径緊結部材2及び複数の小径緊結部材3を内包しかつ第1埋設穴11及び第2埋設穴12に対応する一体形状の接合硬化体16が形成される。
図5(a)及び(b)は、図4(a)及び(b)にそれぞれ対応し、左木質部材1A、右木質部材1B及び上木質部材1C、並びに左木質部材1A、右木質部材1B及び前木質部材1Dの内部に形成される接合硬化体16を示している。
図5(a)に示す接合硬化体16は、前記第1実施形態における接合硬化体15の第1接合硬化部15aと同様の第1接合硬化部16aと、4本の小径緊結部材3を内包するとともに第2埋設穴12に対応し、左木質部材1Aにおいて第1接合硬化部16aに直交した状態で交差するとともに、左木質部材1A及び上木質部材1Cにわたって上下方向に延びる第2接合硬化部16bとによって構成されている。一方、図5(b)に示す接合体16は、前記第1接合硬化部16aと、これに直交した状態で交差するとともに、上記第2接合硬化部16bと同様に4本の小径緊結部材3を内包し、左木質部材1A及び前木質部材1Dにわたって前後方向に延びる第2接合硬化部16cとによって構成されている。
上記のように構成された接合硬化体16により、第1接合硬化部16aを介して、左木質部材1Aと右木質部材1Bを強固に接合するとともに、第2接合硬化部16b又は16cを介して、左木質部材1Aと上木質部材1C、又は左木質部材1Aと前木質部材1Dを強固に接合する。またこの場合、第1接合硬化部16a、及び第2接合硬化部16b、16cの一方が、他方のアンカーとして作用する。
以上のように、本実施形態によれば、前述した第1実施形態と同様の効果を得ることができることに加えて、接合硬化体16の第1接合硬化部16aと第2接合硬化部16b、16cとの交差部分が埋設された左木質部材1Aを介して、複数の木質部材1を、互いに直交する2方向に容易に接合することができる。
図6(a)及び図7(a)は、上述した第2実施形態における図4(a)及び(b)のそれぞれの接合構造において、左右方向に延びる大径緊結部材2及び/又は上下方向に延びる複数の小径緊結部材3に対し、複数の小径緊結部材4(第3緊結部材)を、前後方向に延びた状態で交差するよう、左木質部材1Aに追加したものである。
具体的には、図6(a)の接合構造では、左木質部材1Aにおいて、第2埋設穴12aの左方に、前方に開放するとともに前後方向に水平に延び、第2埋設穴12aと同程度の所定の径(例えば60mm)を有する埋設穴13aが形成されている。一方、図7(a)の接合構造では、左木質部材1Aにおいて、第2埋設穴12aに交差し、前方に開放するとともに前後方向に水平に延び、第2埋設穴12aよりも小さい所定の径(例えば43mm)を有する埋設穴13bが形成されている。
なお、以下の説明では、上記の埋設穴13a及び13bを、特に区別しない場合には適宜、「第3埋設穴13」というものとする。
上記の第3埋設穴13には、前記第2埋設穴12に埋設された小径緊結部材3と同様に構成された複数(本実施形態では4本)の小径緊結部材4が、第3埋設穴13に沿ってかつ大径緊結部材2を間にした状態に延びるように埋設されている。具体的には、図6(a)の接合構造では、同図(b)に示すように、左右方向に延びる大径緊結部材2の上下にそれぞれ、互いに所定間隔を隔てた2本の小径緊結部材4、4が配置されている。一方、図7(a)の接合構造では、同図(b)に示すように、互いに近接する2本の小径緊結部材4、4が、左右方向に延びる大径緊結部材2の上下にそれぞれ配置されるとともに、上下方向に延びる左右の小径緊結部材3、3の間を通るように配置されている。なお、図6(a)及び図7(a)に示すように、左木質部材1Aには、第1実施形態と同様、貫通孔20aを有する栓部材20が、第3埋設穴13の開口部に取り付けられている。
そして、第1実施形態と同様にして、複数の接着剤注入・確認用通路21、22及び栓部材20の貫通孔20aのいずれか1つから、液体状の接着剤を注入し、第1埋設穴11、第2埋設穴12及び第3埋設穴13に充填する。これにより、左木質部材1A、右木質部材1B及び上木質部材1Cの内部には、大径緊結部材2、複数の小径緊結部材3、4を内包しかつ第1埋設穴11、第2埋設穴12及び第3埋設穴13に対応する一体形状の接合硬化体17が形成される。
図8(a)及び(b)は、図6(a)及び図7(a)にそれぞれ対応し、左木質部材1A、右木質部材1B及び上木質部材1Cの内部に形成される接合硬化体17を示している。図8(a)及び(b)に示す接合硬化体17は、前述した図5(a)に示す接合硬化体16の第1接合硬化部16a及び第2接合硬化部16bとそれぞれ同一の第1接合硬化部17a及び第2接合硬化部17bを有している。また、図8(a)の接合硬化体17は、第1接合硬化部17aにのみ直交した状態で交差し、前後方向に延びる第3接合硬化部17cをさらに有する一方、図8(b)の接合硬化体17は、第1接合硬化部17a及び第2接合硬化部17bに直交した状態で交差し、前後方向に延びる第3接合硬化部17dをさらに有している。
上記のように構成された接合硬化体17により、第1接合硬化部17aを介して、左木質部材1Aと右木質部材1Bを強固に接合するとともに、第2接合硬化部17bを介して、左木質部材1Aと上木質部材1Cを強固に接合する。またこの場合、図8(a)に示す接合硬化体17の第3接合硬化部17cは、左木質部材1Aに埋設された第1接合硬化部17aのアンカーとして作用する一方、図8(b)に示す接合硬化体17の第3接合硬化部17dは、第1接合硬化部17aに加えて、左木質部材1Aに埋設された第2接合硬化部17bのアンカーとしても作用する。
図9(a)及び(b)は、第3実施形態による接合構造を示している。この接合構造は、4つの木質部材1を接合するものであり、具体的には、3つの木質部材1を上下方向及び左右方向に接合するとともに、他の木質部材1を、前側に接合するものである。なお、以下の説明では、第1実施形態及び第2実施形態の接合構造と同一の構成部分については、同じ符号を付して、その説明を省略するものとする。
図9(a)の接合構造に示すように、左木質部材1Aには、前述した図6(a)と同様、前方に開放するとともに前後方向に延び、所定の径を有する埋設穴13aが形成される一方、前木質部材1Dには、後方に開放するとともに前後方向に延び、上記埋設穴13aと同じ径を有する埋設穴13cが形成されている。左木質部材1Aと前木質部材1Dが互いに前後方向に当接しかつ両埋設穴13a、13cが合致した状態では、両埋設穴13a、13bは、互いに連通し、前後方向に直線状に延びた状態になる。
一方、図9(b)の接合構造に示すように、左木質部材1Aには、前述した図7(a)と同様、前方に開放するとともに前後方向に延び、所定の径を有する埋設穴13bが形成される一方、前木質部材1Dには、後方に開放するとともに前後方向に延び、上記埋設穴13bと同じ径を有する埋設穴13dが形成されている。左木質部材1Aと前木質部材1Dが互いに前後方向に当接しかつ両埋設穴13b、13dが合致した状態では、両埋設穴13b、13dは、互いに連通し、前後方向に直線状に延びた状態になる。
なお、以下の説明では、上記の埋設穴13a、13c、及び13b、13dを含めて、これらが連通することによって構成される埋設穴を適宜、「第3埋設穴13」というものとする。
上記の第3埋設穴13には、第1及び第2実施形態と同様にして、4本の小径緊結部材4が挿入され、第3埋設穴13に沿ってかつ、左木質部材1A及び前木質部材1Dにわたって前後方向に延びるように埋設されている。
また、前木質部材1Dには、接着剤を第3埋設穴13に注入するとともに、その接着剤の充填を確認するための接着剤注入・確認用通路23が形成されている。具体的には、図9(a)及び(b)に示すように、第3埋設穴13c、13dに連通し、その端部から第3埋設穴13c、13dに対して直交するように右方に延びる第3接着剤注入・確認用通路23a、23bが設けられている。
そして、第1実施形態及び第2実施形態と同様にして、複数の接着剤注入・確認用通路21、22、23のいずれか1つから、液体状の接着剤を注入し、第1埋設穴11、第2埋設穴12及び第3埋設穴13に充填する。これにより、左木質部材1A、右木質部材1B、上木質部材1C及び前木質部材1Dの内部には、大径緊結部材2、複数の小径緊結部材3、4を内包しかつ第1埋設穴11、第2埋設穴12及び第3埋設穴13に対応する一体形状の接合硬化体18が形成される。
図10(a)及び(b)は、図9(a)及び(b)にそれぞれ対応し、左木質部材1A、右木質部材1B、上木質部材1C及び前木質部材1Dの内部に形成される接合硬化体18を示している。図10(a)及び(b)に示す接合硬化体18は、前述した第2実施形態の図5(a)に示す接合硬化体16の第1接合硬化部16a及び第2接合硬化部16bとそれぞれ同一の第1接合硬化部18a及び第2接合硬化部18bを有している。また、図10(a)の接合硬化体18は、第1接合硬化部18aにのみ直交した状態で交差するとともに、左木質部材1A及び前木質部材1Dにわたって前後方向に延びる第3接合硬化部18cをさらに有している。一方、図10(b)の接合硬化体18は、第1接合硬化部18a及び第2接合硬化部18bに直交した状態で交差し、前後方向に延びる第3接合硬化部18dをさらに有している。
上記のように構成された接合硬化体18により、第1接合硬化部18aを介して、左木質部材1Aと右木質部材1Bを強固に接合するとともに、第2接合硬化部18bを介して、左木質部材1Aと上木質部材1Cを強固に接合し、さらに、第3接合硬化部18c又は18dを介して、左木質部材1Aと前木質部材1Dを強固に接合する。
この場合、図10(a)の接合硬化体18では、左木質部材1Aに埋設された第1接合硬化部18aに対し、第2接合硬化部18b及び第3接合硬化部18cがアンカーとして作用し、同様に、左木質部材1Aに埋設された第2接合硬化部18b及び第3接合硬化部18cに対し、第1接合硬化部18aがアンカーとして作用する。また、図10(b)の接合硬化体18では、左木質部材1Aに埋設された第1接合硬化部18a、第2接合硬化部18b及び第3接合硬化部18dの1つの接合硬化部に対し、他の2つの接合硬化部がアンカーとして作用する。
以上のように、本実施形態によれば、前述した第1実施形態及び第2実施形態と同様の効果を得ることができることに加えて、接合硬化体18の第1接合硬化部18a、第2接合硬化部18b及び第3接合硬化部18c又は18dの交差部分が埋設された左木質部材1Aを介して、右木質部材1B、上木質部材1C及び前木質部材1Dを、互いに直交する3方向に容易に接合することができる。
以上の第1、第2及び第3実施形態による接合構造ではいずれも、第1埋設穴11に埋設された大径緊結部材2と、第2埋設穴12に埋設された複数の小径緊結部材3、及び/又は第3埋設穴13に埋設された複数の小径緊結部材4とが、左木質部材1Aの内部において直交した状態で交差するように設定したが、これに加えて、他の木質部材1B、1C、1Dの内部において、大径緊結部材2又は複数の小径緊結部材3、4の端部に、アンカーを設けることも可能である。
図11(a)及び(b)はそれぞれ、前述した図9(a)及び(b)に対応し、それらの大径緊結部材2及び小径緊結部材3、4の端部に、アンカーとしての緊結部材を追加した状態を示している。
具体的には、図11(a)及び(b)の接合構造では、右木質部材1Bにおいて、大径緊結部材2の右端部に直交した状態で交差し、前記小径緊結部材3、4と同様に構成された4本の小径緊結部材5が、前後方向に延びる埋設穴14aに埋設されている。また、上木質部材1Cにおいて、4本の小径緊結部材3の上端部に直交した状態で交差し、前記大径緊結部材2と同様に構成された大径緊結部材6が、前後方向に延びる埋設穴14bに埋設されている。さらに、前木質部材1Dにおいて、4本の小径緊結部材4の前端部に直交した状態で交差し、前記大径緊結部材2と同様に構成された大径緊結部材7が、左右方向に延びる埋設穴14cに埋設されている。なお、図示は省略するが、前述した実施形態と同様、埋設穴14a、14b、14cにも接着剤が充填され、全ての埋設穴に対応する一体形状の接合硬化体が形成される。
上記のように、小径緊結部材5及び大径緊結部材6、7を、大径緊結部材2及び小径緊結部材3、4に対するアンカーとして、右木質部材1B、上木質部材1C及び前木質部材1Dに設けることにより、接合度合を高めることができ、4つの木質部材1をより一層強固に接合することができる。
また、上記のようなアンカーを設けることにより、所望の接合強度を確保しながら、アンカーが設けられる緊結部材の長さを短縮することが可能である。例えば、図12(a)は、2つの木質部材1E、1Fを、それぞれに形成された、左右方向に延びる第1埋設穴11、11に、大径緊結部材2を埋設した状態を示している。一方、図12(b)は、2つの木質部材1E、1Fの所定位置に、前後方向に延びる第2埋設穴12、12をそれぞれ形成し、各第2埋設穴12に、大径緊結部材2を間にして、4つの小径緊結部材3を埋設した状態を示している。
図12(a)の第1埋設穴11に接着剤が充填されることによって形成され、大径緊結部材2を内包する接合硬化体(図示せず)による両木質部材1E、1Fの接合強度は、図12(b)の第1埋設穴11及び第2埋設穴12に接着剤が充填されることによって形成され、大径緊結部材2及び4つの小径緊結部材3を内包する接合硬化体(図示せず)による両木質部材1E、1Fの接合強度とほぼ同じである。つまり、同図(b)に示すように、大径緊結部材2の両端部に直交した状態で交差する小径緊結部材3をアンカーとして設けることにより、大径緊結部材2の長さを短縮することができる。これにより、例えば、左右方向に長さが比較的短い木質部材同士を接合する場合でも、十分な接合度合を確保しながら、それらの木質部材を左右方向に強固に接合することができる。
また、図13及び図14は、左右方向に接合される2つの木質部材に対し、追加でその上側に木質部材を継ぎ足すように接合する場合の手順を順に示している。図13(a)は、前述した第1実施形態の図2(a)に示す接合構造と同じである。この接合構造における左木質部材1Aの上側に、上木質部材1Cを追加で接合する場合には、図13(b)に示すように、前記大径緊結部材2と同じ径、及び所定長さを有する大径緊結部材8を用意するとともに、第2埋設穴12c及び第2接着剤注入・確認用通路22cを有する上木質部材1Cを用意する。
次いで、上記の大径緊結部材8を、左木質部材1Aの埋設穴12aに上方から挿入するとともに、上木質部材1Cの埋設穴12cに下方から挿入し、上木質部材1Cを左木質部材1A上に載置する。そして、図14(a)に示す状態において、前述した各実施形態と同様、複数の接着剤注入・確認用通路21、22のいずれか1つから、液体状の接着剤を注入し、第1埋設穴11及び第2埋設穴12に充填する。
これにより、図14(b)に示すように、左木質部材1A、右木質部材1B及び上木質部材1Cの内部には、前記第2実施形態における図5(a)の接合硬化体16と同様の接合硬化体19が形成される。このように、木質部材1を追加で継ぎ足す場合でも、複数の木質部材1を容易にかつ強固に接合することができる。
なお、本発明は、説明した実施形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。例えば、小径緊結部材を用いる場合、木質部材の埋設穴に4本ずつ埋設するようにしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、大径緊結部材を間にした状態で、小径緊結部材を2本以上埋設すればよい。また、実施形態で示した大径緊結部材及び小径緊結部材の細部の構成や、これらの緊結部材の組み合わせやその数などは、あくまで例示であり、接合すべき木質部材のサイズや構成などに応じて、本発明の趣旨の範囲内で適宜、変更することができる。