JP6738502B2 - 軟磁性扁平粉末の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、RFID等の10MHz帯前後で使用されるアンテナに用いられる軟磁性扁平粉末およびその製造方法に関する。
従来、軟磁性扁平粉末を含有する磁性シートは、電磁波吸収体、RFID(RadioFrequency Identification)用アンテナとして用いられてきた。また、近年では、デジタイザと呼ばれる位置検出装置にも用いられるようになってきている。このデジタイザには、例えば特開2011−22661号公報(特許文献1)のような電磁誘導型のものがあり、ペン形状の位置指示器の先に内蔵されるコイルより発信された高周波信号を、パネル状の位置検出器に内蔵されたループコイルにより読み取ることで指示位置を検出する。ここで、検出感度を高める目的で、ループコイルの背面には高周波信号の磁路となるシートが配置される。この磁路となるシートとしては、軟磁性扁平粉末を樹脂やゴム中に配向させた磁性シートや、軟磁性アモルファス合金箔を貼り合わせたものなどが適用される。磁性シートを用いる場合は、検出パネル全体を1枚のシートに出来るため、アモルファス箔のような貼り合せ部での検出不良などがなく優れた均一性が得られる。
また、従来、磁性シートには、Fe−Si−Al合金、Fe−Si合金、Fe−Ni合金、Fe−Al合金、Fe−Cr合金などからなる粉末を、アトリッションミル(アトライタ)などにより扁平化したものが添加されてきた。これは、高い透磁率の磁性シートを得るために、いわゆる「Ollendorffの式」からわかるように、透磁率の高い軟磁性粉末を用いること、反磁界を下げるため磁化方向に高いアスペクト比を持つ扁平粉末を用いること、磁性シート中に軟磁性粉末を高充填することが重要であるためである。軟磁性扁平粉末の長径を大きくし、アスペクト比の高い扁平状の粉末を作製する方法として、例えば、特許第4636113号公報(特許文献2)には、炭素数2〜4の1価アルコールを用いて扁平加工を実施する方法が開示されている。
デジタイザ機能はスマートフォンやタブレット端末などへ適用されるが、このようなモバイル電子デバイスは小型化の要求が厳しく、磁路シートとして用いられる磁性シートにも薄肉化の要求が高く、50μm以下程度の薄さのものが用いられるようになってきた。さらに、タブレット端末には液晶画面が10インチにもなるものがあり、磁性シートにも大面積が要求されるようになってきた。このような薄肉の磁性シートを一般的に適用される圧延やプレスによる方法で作製した場合、従来の厚さの磁性シートでは問題にならなかった。粉末のシート成形性が問題となるようになってきた。
すなわち、使用する軟磁性扁平粉末の長径が過大であるとき、50μm以下の薄さの磁性シートを作る際に、方向性が揃わなかったり、シート内の磁性粉末に粗密ができたりして、シート成型がうまくいかない場合が多い。シート成型時のこのようなトラブルをなくす為に、シート作製時の粉末充填率を下げるといった方法や成型後にシートをプレスするといった方法などが行われる。しかし、前者の方法などでは結果的にシートの透磁率を下げ性能を低下させる。また、後者の方法などではシート中の粉末に過大な応力がかかるために、粉末に歪が導入される。歪の導入は粉末の保磁力Hcの増大をもたらし、粉末の透磁率が低下するため、結果的に性能を低下させる。
特開2011−22661号公報 特許第4636113号公報
例えば、特許文献2に示すような、平均粒径D50が大きい軟磁性扁平粉末は、シート成型において困難である。
そこで、本発明は、平均粒径が小さくシート成形性に優れ、かつ高い透磁率を有する軟磁性扁平粉末及びその製造方法を提供することを目的とする。その発明の要旨とするところは、Fe−Si−Al合金からなる、軟磁性粉末を扁平化処理することにより得られた扁平粉末であって、平均粒子径D50とタップ密度TDの比(D50/TD)が35〜92であり、扁平粉末の長手方向に磁場を印加して測定した保磁力が239〜479A/m、扁平粉末の厚さ方向に磁場を印加して測定した保磁力が、扁平粉末の長手方向に磁場を印加して測定した保磁力の2〜4.5倍、XRDの測定磁性粒子に起因するピークの最強ピーク(2θ=44±2°)に関して半価幅が0.3〜0.6である軟磁性扁平粉末。
また、上記軟磁性扁平粉末は、水アトマイズ法またはガスアトマイズ法またはディスクアトマイズ法と、溶融による合金化後の粉砕法のいずれかによる原料粉末作製工程と、前記原料粉末を扁平化する扁平加工工程と、前記扁平加工された粉末を真空またはアルゴン、窒素雰囲気のいずれかで、200〜500℃で熱処理する工程により実現可能である。
上記条件を満足する軟磁性扁平粉末を用いることによって、RFID等の10MHz帯前後で、透磁率μの実数部μ′が大きく、虚数部μ″が小さいアンテナを作製することが出来る。実数部μ′が大きいと通信距離を長くする特性があり、虚数部μ″が小さいとエネルギーロスを小さくする特性がある。ここで、透磁率μは実数部μ′と虚数部μ″によって複素透磁率(μ=μ′―jμ″)で表すことができるが、μ′の最大値が大きいほどμ″の値も大きくなる傾向にある。
Si含有量は、5.5〜10.5質量%であることが好ましく、6.5〜9.5質量%がより好ましい。Si含有量が5.5質量%よりも小さい場合、結晶磁気異方性定数が過度に大きくなるため、磁性シートの透磁率が小さくなる。また、Si含有量が10.5質量%より大きい場合、粉末粒子の硬さを過度に上昇させてしまうため、偏平加工における結晶粒微細化を過度に促進させてしまい、粉末の保磁力が増大し、結果、磁性シートの透磁率が小さくなる。
Al含有量は、4.5〜8.0質量%であることが好ましく、5.5〜7.0質量%がより好ましい。Al含有量が4.5質量%よりも小さい場合、結晶磁気異方性定数が過度に大きくなるため、磁性シートの透磁率が小さくなる。また、Al含有量が8.0質量%より大きい場合、偏平粉末の飽和磁束密度が過度に低くなったため、磁性シートの透磁率が小さくなる。
平均粒径D50は、35〜55μmであることが好ましく、40〜50μmがより好ましい。平均粒径D50が35μmよりも小さい場合、扁平粉末のアスペクト比が小さくなるため、磁性シート形成時の透磁率が小さくなる。また、平均粒径D50が55μmよりも大きい場合、磁性シートの成形性が悪化する可能性がある。
タップ密度は、0.6〜1.0であることが好ましく、0.7〜0.9がより好ましい。タップ密度が0.6よりも小さい場合、扁平加工工程に時間を要するためコスト高になる。また、タップ密度が1.0よりも大きい場合、磁性シートへの扁平粉末の充填率が低くなり、磁性シートとしての透磁率μが小さくなる。上記の条件で軟磁性扁平粉末を製造することによって、シート成型性がよく、透磁率の高い粉末を作製することができる。
本発明の軟磁性扁平粉末は、平均粒径D50とタップ密度TDの比(D50/TD)が35〜92であることが好ましく、D50/TDが35〜80であることがより好ましく、D50/TDが40〜60であることが最も好ましい。D50/TDが35よりも小さい場合、扁平粉末のアスペクト比が小さく、更に磁性シートへの充填率が低くなるため、磁性シートとしての透磁率μが小さくなる。また、D50/TDが92よりも大きい場合、扁平粉末の
アスペクト比は大きく、磁性シートへの充填率は高くなるため、磁性シートの成形性が悪化する可能性がある。
本発明は、上記軟磁性扁平粉末の製造方法であって、アトマイズ法で作製された軟磁性合金粉末を、扁平化する扁平加工工程と、不活性ガス中で熱処理する熱処理工程とを備える軟磁性扁平粉末の製造方法を提供する。
<原料球状粉末準備工程>
本発明の軟磁性扁平粉末は、軟磁性合金粉末を扁平化処理することで作製することができる。また、軟磁性合金粉末は、飽和磁化の値が高い粉末であることがより好ましい。一般的に、保磁力と飽和磁化の値が優れているのは、Fe−Si−Al系合金である。
軟磁性合金粉末は、ガスアトマイズ法、水アトマイズ法、ディスクアトマイズ法といった各種アトマイズ法と溶融による合金化後の粉砕法のいずれかによって作製される。軟磁性合金粉末の含有酸素量は、少ないほうがより好ましいため、ガスアトマイズ法による製造が好ましく、さらに不活性ガスを用いての製造がより好ましい。ディスクアトマイズ法による方法でも問題なく製造出来るが、量産性の観点からは、ガスアトマイズ法が優れている。
本発明に用いられる軟磁性合金粉末の粒度は特に限定されないが、扁平後の平均粒径を調整する目的もしくは、含有酸素量の多い粉を除去する目的、その他、製造上の目的に応じて、分級されても良い。
<扁平加工処理工程>
次に、上記軟磁性合金粉末を扁平化する。扁平加工方法は、特に制限は無く、例えば、アトライタ、ボールミル、振動ミル等を用いて行うことができる。中でも、比較的扁平加工能力に優れるアトライタを用いることが好ましい。また、乾式で加工を行う場合は、不活性ガスを用いることが好ましい。湿式で加工する場合は、有機溶媒を用いることが好ましい。有機溶媒の種類については特に限定されない。
有機溶媒の添加量は、軟磁性合金粉末100質量部に対して、100質量部以上であることが好ましく、200質量部以上であることがより好ましい。有機溶媒の上限は特に限定されず、求める扁平粉の大きさ・形状と生産性のバランスに応じて適宜調整が可能である。また、酸素を低くするために、有機溶媒中の水分濃度は、有機溶媒100質量部に対して、0.002質量部以下での加工が好ましい。有機溶媒とともに扁平化助剤を用いてもよいが、酸化を抑えるために、軟磁性合金粉末100質量部に対して、5質量部以下であることが好ましい。
<熱処理工程>
次に、上記軟磁性扁平粉末を熱処理する。熱処理装置について特に制限は無いが、熱処理温度は200℃〜500℃の条件で熱処理されることが好ましい。該当温度で熱処理を行うことによって、保磁力が低下し、高透磁率の軟磁性扁平粉末となる。また、熱処理時間について特に制限は無く、処理量や生産性に応じて適宜選択されるとよい。長時間の熱処理の場合、生産性が低下するため、5時間以内が好適である。
本発明に用いられる軟磁性扁平粉末においては、酸化を抑えるために、真空中あるいは不活性ガス中で熱処理されることが好ましい。表面処理の観点から、窒素中ガス中で熱処理されてもよいが、その場合は保磁力の値が上昇し、透磁率は真空で熱処理された場合に比べて低下する傾向にある。
<作用>
軟磁性扁平粉末の平均粒径D50は35〜55μmであることが好ましく、40〜50μmであることがより好ましい。平均粒径が35μm未満では、アスペクト比の高い扁平粉が得られ難く、実部透磁率μ′が低くなる傾向がある。平均粒径が大きくなりすぎると、シート成型が困難になるため好ましくない。特に、平均粒径が55μmを超えると、シート表面の凹凸が目立つ傾向があり、これを防ぐために特別な処理が必要となり、性能面、コスト面で好ましくない。
軟磁性扁平粉末のタップ密度TDは0.6〜1.0g/ccであることが好ましく、0.7〜0.9g/ccであることがより好ましい。タップ密度は加工が進むほど単調低下する傾向にあり、0.6g/cc未満では、長時間の加工になり、平均粒径の低下と保磁力の上昇をもたらすため好ましくない。また、タップ密度が1.0g/ccを超えると、平均粒径が大きくなる傾向があり、シートへの充填率が低くなり性能面で好ましくない。
軟磁性扁平粉末の保磁力Hcは、239〜479A/mであることが好ましく、319〜439A/mであることがより好ましい。保磁力Hcが239A/m未満では、低周波数帯で複素透磁率(μ=μ′―jμ″)の虚数部μ″の値が大きくなるため、エネルギーロスが大きくなる。また、保磁力Hcが479A/mを超えると、複素透磁率(μ=μ′ ―jμ″)の実数部μ′の値が小さくなるため、アンテナ性能が悪くなる。
軟磁性扁平粉末の厚さ方向に磁場を印加して測定した保磁力が、長手方向に磁場を印加して測定した保磁力の2〜4.5倍であることが好ましく、2〜3.5倍であることがより好ましく、2〜3倍であることがさらに好ましい。2未満では透磁率が低くなり、4.5を超えるとシートの表面に突起が多く発生するため成形性が悪化する可能性がある。
軟磁性扁平粉末のXRDに起因するピークの最強ピーク(2θ=44±2°)に関して,半価幅が0.3〜0.6であることが好ましく、0.4〜0.5であることがより好ましい。半価幅が0.3未満では、扁平粉末に過剰な熱処理を施すことになるため、保磁力Hcが極端に小さくなる。そのため、複素透磁率(μ=μ′―jμ″)の虚数部μ″の値が大きくなり、エネルギーロスが大きくなる。また、半価幅が0.6を超えると、アトライタ加工により発生した扁平粉末中の格子欠陥の回復が不十分になるため、μ′が低くなり、アンテナとしての性能を発揮できない。
水アトマイズ法またはガスアトマイズ法またはディスクアトマイズ法と溶融による合金化後の粉砕法により、本発明の扁平粉末を作製しやすい。また、アトマイズにより製造された粉末は形状が球状に近いことからアトライタ加工による粉砕よりも扁平化が進行しやすい。粉砕法により製造された粉末は粒径がアトマイズ粉末よりも小さいことから、シート表面の突起発生が抑制される傾向がある。
本発明を真空またはアルゴン、窒素雰囲気のいずれかで熱処理することで、アトライタ加工で発生した扁平粉末中の格子欠陥を回復し、透磁率を回復する。熱処理雰囲気が大気の場合、酸化が進み、本発明の粉末が作製できない。したがって、真空または不活性雰囲気での熱処理が必要になる。また、窒素雰囲気での熱処理で窒化被膜を形成させ、表面抵抗の高い粉末の作製が可能である。これにより、うず電流の発生が抑えられ、RFID等の10MHz帯前後で使用されるアンテナとしての性能が向上する傾向がある。
軟磁性扁平粉末の熱処理温度は200〜500℃であることが好ましく、350〜450℃であることがより好ましい。本発明において、熱処理はアトライタ加工で発生した扁平粉末中の格子欠陥を回復し、保磁力を低下させるための工程であるため、200℃では不十分である。また、500℃を超えると、材料の組成によっては焼結を起こすことがあり、それが粗大な塊となってシートの表面に突起が多く発生する。
本発明の軟磁性扁平粉末においては、平均粒子径D50とタップ密度TDの比(D50/TD)、及び、扁平粉末の長手方向に磁場を印加して測定した保磁力が請求項1で表される条件を満足するものである。また、シート成型後の絶縁性を高めるなどの観点においては、表面処理された粉末が好適となる場合があり、本発明の扁平加工方法で製造された粉末について、熱処理工程中あるいは熱処理工程の前後において、表面処理工程を必要に応じて加えても良い。たとえば表面処理のために、活性ガスを微量に含む雰囲気下で熱処理されてもよい。
また、従来から提案されているシアン系カップリング剤に代表される表面処理により、耐食性やゴムへの分散性を改善することも可能である。また、磁性シートの製造方法も従来提案されている方法で可能である。例えば、トルエンに塩素化ポリエチレンなどを溶解したものに扁平粉末を混合し、これを塗布、乾燥させたものを各種のプレスやロールで圧縮することで製造可能である。
以下、本発明について、実施例によって具体的に説明する。
(扁平粉末の作製)
水アトマイズ法またはガスアトマイズ法またはディスクアトマイズ法と溶融による合金化後の粉砕法のいずれかにより所定の成分の粉末を作製し150μm以下に分級した。ガスアトマイズは、アルミナ製坩堝を溶解に用い、坩堝下の直径5mmのノズルから合金溶湯を出湯し、これに高圧アルゴンを噴霧することで実施した。これを原料粉末としアトライタにより扁平加工した。アトライタは、SUJ2製の直径4.8mmのボールを使用し、原料粉末と工業エタノールとともに攪拌容器に投入し、羽根の回転数を300rpmとして実施した。
工業エタノールの添加量は、原料粉末100質量部に対し、200〜500質量部とした。扁平化助剤は、添加しないか、もしくは原料粉末100質量部に対し、1〜5質量部とした。扁平加工後に攪拌容器から取り出した扁平粉末と工業エタノールをステンレス製の皿に移し、80℃で24時間乾燥させた。このようにして得た扁平粉末を真空中またはアルゴン中または窒素中で、200〜500℃で2時間熱処理し、各種の評価に用いた。
ディスクアトマイズは、アルミナ製坩堝を溶解に用い、坩堝下の直径1〜5mmのノズルから合金溶湯を出湯し、高速で回転するディスクの上に落とすことで実施した。回転速度は、40000rpmから60000rpmである。ディスクによって合金溶湯は急冷され、凝固して、粉末が得られる。アトライタによる扁平加工と熱処理は、ガスアトマイズの時と同様の条件であり、各種の評価に用いた。
(扁平粉末の評価)
得られた扁平粉末の平均粒径、タップ密度、保磁力、透磁率を評価した。平均粒径はレーザー回折法、真密度はガス置換法で評価した。タップ密度は、約20gの扁平粉末を、容積100cm3のシリンダーに充填し、落下高さ10mmタップ回数200回の時の充填密度で評価した。保磁力は直径6mm、高さ8mmの樹脂製容器に扁平粉末を充填し、この容器の高さ方向に磁化した場合と直径方向に磁化した場合の値を測定した。なお、扁平粉末は充填された円柱の高さ方向が厚さ方向となっているため、容器の高さ方向に磁化した場合が扁平粉末の厚さ方向、容器の直径方向に磁化した場合が扁平粉末の長手方向の保磁力となる。印加磁場は144kA/mで実施した。
(磁性シートの作製および評価)
トルエンに塩素化ポリエチレンを溶解し、これに得られた扁平粉末を混合、分散した。この分散液をポリエステル樹脂に厚さ100μm程度に塗布し、常温常湿で乾燥させた。その後、130℃、15MPaの圧力でプレス加工し、磁性シートを得た。磁性シートのサイズは150mm×150mmで厚さは50μmである。なお、磁性シート中の扁平粉末の体積充填率はいずれも約50%であった。次に、この磁性シートを、外径7mm、内径3mmのドーナツ状に切り出し、インピーダンス測定器により、室温で13.56MHzにおけるインピーダンス特性を測定し、その結果から透磁率(複素透磁率の実数部:μ′,複素透磁率の虚数部:μ″)を算出した。
以上、本発明を実施例に基づいて説明したが、本発明はこの実施例に特に限定されない。また、比較例は、後述の表1、2に示す条件を適宜異ならせて作製した。表1、2に評
価結果を示す。
Figure 0006738502
Figure 0006738502
表1、2に示すように、No.4〜6、No.11〜12、17、No.20〜22、No.27〜30は本発明例であり、No.1〜3、No.7〜10、No.13〜16、No.18〜19、No.23〜26、No.31〜46は比較例である。
表1、2に示す比較例No.1〜2は、平均粒径D50の値が小さいために、扁平粉末のアスペクト比が小さくなるため、磁性シート形成時の透磁率が小さくなる。また、平均粒径D50とタップ密度TDの比が小さく、かつ厚さ方向の保磁力に対する長手方向の保磁力の比が2未満のため透磁率が低くなる。比較例No.3は、平均粒径D50とタップ密度TDの比が小さく、かつ厚さ方向の保磁力に対する長手方向の保磁力の比が2未満のため透磁率が低くなる。
比較例No.7は、平均粒径D50とタップ密度TDの比が小さく、長手方向の保磁力が小さいために低周波数帯で複素透磁率の虚数部μ″の値が大きくなるためエネルギーロスが大きくなる。また、厚さ方向の保磁力に対する長手方向の保磁力の比が2未満のため透磁率が低くなる。さらに、XRDの最強ピーク(2θ=44±2°の半価幅)幅が0.3未満であるために、扁平粉末に過剰な熱処理を施すことになるため、保磁力のHcが極端に小さくなる。そのために、複素透磁率の虚数部μ〃の値が大きくなり、エネルギーロスが大きくなる。
比較例No.8は、No.7と同様に、平均粒径D50とタップ密度TDの比が小さく、長手方向の保磁力が小さいために低周波数帯で複素透磁率の虚数部μ″の値が大きくなるためエネルギーロスが大きくなる。また、厚さ方向の保磁力に対する長手方向の保磁力の比が2未満のため透磁率が低くなる。比較例No.9は、平均粒径D50とタップ密度TDの比が小さく、長手方向の保磁力が小さいために低周波数帯で複素透磁率の虚数部μ″の値が大きくなるためエネルギーロスが大きくなる。比較例No.10は、長手方向の保磁力が小さいために低周波数帯で複素透磁率の虚数部μ″の値が大きくなるためエネルギーロスが大きくなる。
比較例No.13〜14は、平均粒径D50とタップ密度TDの比が小さく、長手方向の保磁力が小さいために低周波数帯で複素透磁率の虚数部μ″の値が大きくなるためエネルギーロスが大きくなる。また、厚さ方向の保磁力に対する長手方向の保磁力の比が2未満のため透磁率が低くなる。比較例No.15は、長手方向の保磁力が小さいために低周波数帯で複素透磁率の虚数部μ″の値が大きくなるためエネルギーロスが大きくなる。また、厚さ方向の保磁力に対する長手方向の保磁力の比が2未満のため透磁率が低くなる。比較例No.16は、長手方向の保磁力が小さいために低周波数帯で複素透磁率の虚数部μ ″の値が大きくなるためエネルギーロスが大きくなる。
比較例No.18は、平均粒径D50とタップ密度TDの比が大きく、かつ平均粒径D50が大きいために、磁性シートの成形性が悪化する可能性がある。比較例No.19は、平均粒径D50が小さいために、扁平粉末のアスペクト比が小さくなるため、磁性シート形成時の透磁率が小さくなる。また、長手方向の保磁力が小さいために低周波数帯で複素透磁率の虚数部μ″の値が大きくなるためエネルギーロスが大きくなる。さらに、厚さ方向の保磁力に対する長手方向の保磁力の比が2未満のため透磁率が低くなる。さらにまた、XRDの最強ピーク(2θ=44±2°の半価幅)幅が0.6を超えるために、アトライタ加工により発生した偏平粉末中の格子欠陥の回復が不十分になるため、虚数部μ″の値が低くなり、アンテナとしての性能を発揮できない。
比較例No.23は、長手方向の保磁力が小さいために低周波数帯で複素透磁率の虚数部μ″の値が大きくなるためエネルギーロスが大きくなる。比較例No.24は、長手方向の保磁力が小さいために低周波数帯で複素透磁率の虚数部μ″の値が大きくなるためエネルギーロスが大きくなる。また、XRDの最強ピーク(2θ=44±2°の半価幅)幅が0.3未満であるために、扁平粉末に過剰な熱処理を施すことになるため、保磁力のHcが極端に小さくなる。そのために、複素透磁率の虚数部μ〃の値が大きくなり、エネルギーロスが大きくなる。
比較例No.25は、No.24と同様に、長手方向の保磁力が小さいために低周波数帯で複素透磁率の虚数部μ″の値が大きくなるためエネルギーロスが大きくなる。また、XRDの最強ピーク(2θ=44±2°の半価幅)幅が0.3未満であるために、扁平粉末に過剰な熱処理を施すことになるため、保磁力のHcが極端に小さくなる。そのために、複素透磁率の虚数部μ〃の値が大きくなり、エネルギーロスが大きくなる。
比較例No.26は、長手方向の保磁力が小さいために低周波数帯で複素透磁率の虚数部μ″の値が大きくなるためエネルギーロスが大きくなる。また、厚さ方向の保磁力に対する長手方向の保磁力の比が2未満のため透磁率が低くなる。比較例No.31、32、35は、平均粒径D50とタップ密度TDの比が小さく、かつ長手方向の保磁力Hcが479A/mを超えるため複素透磁率の実数部μ′の値が小さくなるため、アンテナ性能が悪くなる。また、厚さ方向の保磁力に対する長手方向の保磁力の比が2未満のため透磁率が低くなる。
比較例No.33、34、36は、長手方向の保磁力Hcが479A/mを超えるため複素透磁率の実数部μ′の値が小さくなるため、アンテナ性能が悪くなる。また、厚さ方向の保磁力に対する長手方向の保磁力の比が2未満のため透磁率が低くなる。比較例No.37〜42は、Fe−Si−Cr系合金での比較である。比較例No.43〜44は、Si含有量が小さい場合であって、その場合のAl含有量が小さい場合と大きい場合であって、これらいずれも結果的に磁性シートの透磁率が小さくなる。また、比較例No.45〜46は、逆に、Si含有量が大きい場合であって、その場合のAl含有量が小さい場合と大きい場合であって、これも同様に、結果的に磁性シートの透磁率が小さくなる。これに対して、本発明である、No.4〜6、No.11〜12、17、No.20〜22、No.27〜30は、いずれも本発明の条件を満足することから、いずれの効果をも達成することが出来ることが分かる。
以上のように、平均粒径D50とタップ密度TDの比(D50/TD)が35〜92であり、長手方向に磁場を印加して測定した保磁力が239〜479A/mである場合、RFID等の10MHz帯前後での透磁率は、実数部μ′が高く、虚数部μ″が小さい値が得られる。また、厚さ方向の保磁力が長手方向の保磁力の2〜4.5倍の場合、十分に高い複素透磁率を示し、さらに、シート表面の突起を抑制できる。さらに、XRDの最強ピーク(2θ=44±2°)の半価幅が0.3〜0.6の場合、高い複素透磁率を示す等の極めて優れた効果を奏するものである。

Claims (1)

  1. 水アトマイズ法またはガスアトマイズ法またはディスクアトマイズ法と、溶融による合金化後の粉砕法のいずれかによる原料粉末作製工程と、前記原料粉末を扁平化する扁平加工工程と、前記扁平加工された粉末を真空またはアルゴン、窒素雰囲気のいずれかで、200〜500℃で熱処理する工程と、を含み、
    Siが5.5〜10.5質量%、Alが4.5〜8.0質量%、残部がFe、および、不可避的不純物からなるFe−Si−Al系合金からなる扁平粉末であって、平均粒子径D50とタップ密度TDの比(D50/TD)が35〜92であり、扁平粉末の長手方向に磁場を印加して測定した保磁力が239〜479A/mである軟磁性扁平粉末を得るための製造方法。ただし、D50の単位はμm、TDの単位はMg/m3である。
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