JP6735539B2 - 電極及びそれを用いて構成される電池 - Google Patents

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Description

本発明は、電極及びそれを用いて構成される電池に関する。より詳しくは、亜鉛種等を活物質とする電極として好適に用いることができる電極、及び、それを用いて構成される電池に関する。
近年、小型携帯機器から自動車等大型用途まで多くの産業において、電池の重要性が急速に高まっており、主にその容量、エネルギー密度や二次電池化の面において優位性を持つ新たな電池系が種々開発・改良されている。
それら種々の電池の中で、近年、空気電池が注目されている。電池を高容量化するためには、電極活物質の量を増やす必要があるが、正極活物質として空気中の酸素を用いる空気電池では、電池内に正極活物質を充填する必要がなく、その分、負極活物質の充填量を多くすることができるため、高容量化しやすい利点がある。
空気電池の容量を大きくするためには、負極活物質の充填量を増やす必要がある。一般に、電極活物質の量を増加させる方法としては、正極、負極を交互に積層させる方法と電極の厚みを厚くする方法とがあるが、空気電池の場合、空気極を開放する必要があるため、積層構造をつくることはできない。このため、電極の厚みを厚くする方法を用いることになるが、空気電池に用いられる活物質の中には、酸化亜鉛のように電子伝導性が低いものがあり、それらを用いる場合、活物質量を増やしても反応面積が増加せず、充放電の電流値を増加させることができないという問題が生じる。
電池の電極におけるこのような問題を解決する方法として、活物質層に電子伝導性が高い金属種や炭素材料を加える試みがなされており、正極活物質と炭素材料もしくは金属材料が担持又は融合した複合材料を正極として用いたリチウム二次電池が開示されている(特許文献1参照)。
特開平10−125323号公報
しかしながら、活物質層に電子伝導性が高い金属種や炭素材料を加える従来の方法を、亜鉛種を活物質とする電極に用いた場合、電子伝導性のある部分から金属亜鉛が析出してデンドライトになりやすい。とりわけ厚みのある大容量電極では、電極の表面部分で充電初期から亜鉛金属の析出が生じ、電極の表面部分の活物質のみが使用されることになって、電極中の活物質の利用率が低下し、充分な充放電レート特性が得られない。このように、従来の方法は、亜鉛種を活物質として用いる電池にも充分に適用できるとはいえないものであった。
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、電子伝導性に優れ、厚みのある電極とした場合にも、活物質を有効に利用して優れた充放電レート特性を実現でき、更に、亜鉛種を活物質として用いる場合にも不具合の発生を抑制して優れた特性を発揮する電極を提供することを目的とする。
本発明者は、電子伝導性に優れて、厚みのある電極とした場合にも、活物質を有効に利用して優れた充放電レート特性を実現できる電極について種々検討したところ、活物質及び導電助剤を含む活物質層と集電体とを含んで構成される電極において、活物質層中における導電助剤を、集電体に接する側から集電体とは反対の活物質層の表面側に向けて、導電助剤の濃度が少なくなるように分布させると、導電助剤の作用により電子伝導性に優れるとともに、活物質層の表面付近の活物質だけでなく、活物質中に含まれる活物質全体の利用率を高めることができ、充放電レート特性に優れた電極とすることができること、及び、このような電極の構成とすることで集電体周辺の電流密度を分散し、過電圧を低下させることができることを見出した。更に、このような電極とすることで、活物質層表面の特定の箇所へ電流が集中することが抑制され、亜鉛種等を活物質として用いた場合のデンドライトの成長も抑制されることを見いだし、上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明に到達したものである。
すなわち本発明は、活物質及び導電助剤を含む活物質層と集電体とを含んで構成される電極であって、上記活物質層は、集電体に接する側から集電体とは反対の活物質層の表面側に向けて、活物質層中に含まれる導電助剤の濃度が少なくなるように分布していることを特徴とする電極である。
以下に本発明を詳述する。
なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本発明の好ましい形態である。
<活物質層>
本発明の電極は、活物質及び導電助剤を含む活物質層と集電体とを含んで構成され、活物質層は、集電体に接する側から集電体とは反対の活物質層の表面側に向けて、活物質層中に含まれる導電助剤の濃度が少なくなるように分布していることを特徴とする。ここで、集電体に接する側から集電体とは反対の活物質層の表面側に向けて、活物質層中に含まれる導電助剤の濃度が少なくなるように分布している形態には、集電体に接する側から集電体とは反対の活物質層の表面側に向けて、活物質層中における導電助剤の濃度が連続的に少なくなるように分布している形態(第1の形態)だけでなく、活物質層が、複数の層から構成されており、集電体に接する側から集電体とは反対側に向けて、導電助剤の濃度が少なくなってゆくように複数の層が積層されている形態(第2の形態)であってもよく、第1の形態と第2の形態とを組み合わせたものであってもよい。
なお、第2の形態の場合、活物質層中の隣接する2層のうち集電体とは反対側の層のほうが導電助剤の濃度が大きくなっているような層が存在しない限り、活物質層を構成する層の中に、隣接する2層の導電助剤の濃度が同じである層を含んでいてもよい。第1の形態と第2の形態との組合せの場合も同様である。
なお、本発明において、導電助剤の濃度とは、導電助剤の質量濃度を意味する。
上記第2の形態の場合、積層する活物質層の数を多くするほど導電助剤の濃度分布を細かく調整することが可能となるが、活物質の製造工程が多くなり、煩雑なものとなる。導電助剤の濃度分布をもたせることの効果と、活物質層の製造のしやすさの両方を考慮すると、積層する活物質層の数は、2〜10層であることが好ましい。より好ましくは、2〜3層である。
上記第2の形態の場合、積層する活物質層の厚みの比は特に制限されないが、積層される層のうち、最も薄い層の厚みと最も厚い層の厚みとの比が1/100〜1/1であることが好ましい。この比を外れる薄い層があると、当該層を有することの効果が発揮されなくなり、この比を外れる厚い層があると、活物質層全体に対する当該層の影響が大きくなりすぎ、活物質層に導電助剤濃度の分布をもたせることの効果が充分に発揮できなくなる。最も薄い層の厚みと最も厚い層の厚みとの比は、より好ましくは、1/10〜1/1であり、更に好ましくは、1/5〜1/1である。
活物質層の厚みは、マイクロメータにより測定することができる。
本発明の電極が含む活物質層は、厚みが500μm以上であることが好ましい。上記のとおり、本発明の電極は、活物質層中の導電性を調整して活物質層中に含まれる活物質を有効利用するものである。このような本発明の電極の特徴は、厚みが500μm以上であるような比較的厚い活物質層を形成する場合により充分に発揮されることになる。活物質層の厚みは、1mm以上であることがより好ましい。更に好ましくは、1.5mm以上である。また、活物質層の厚みが厚すぎると、活物質層が集電体から脱落するおそれがあるため、活物質層の厚みは、1cm以下であることが好ましい。
なお、ここでいう活物質層の厚みは、活物質層全体の厚みを意味し、複数の活物質層が積層された構造の活物質層の場合、それら積層された複数の活物質層全体の厚みを意味する。
活物質層の厚みは、マイクロメータにより測定することができる。
上記活物質層は、導電助剤濃度が最も高い層中の導電助剤の濃度に対する、導電助剤濃度が最も低い層中の導電助剤の濃度が0〜90%であることが好ましい。導電助剤の濃度がこのような割合を満たすように活物質層中での導電助剤濃度に差を設けると、活物質層中の活物質の有効利用率が高くなり、電極の容量をより大きくすることができる。導電助剤濃度が最も高い層中の導電助剤の濃度に対する、導電助剤濃度が最も低い層中の導電助剤の濃度は、より好ましくは、0〜50%であり、更に好ましくは、0〜30%である。
なお、導電助剤濃度が最も高い層又は最も低い層が、1つの活物質層の中に導電助剤の濃度分布を有する層である場合(上記第1の形態の場合)、「導電助剤濃度が最も高い層中の導電助剤の濃度」は、集電体側から活物質層全体の厚みの10%分の層中の導電助剤濃度の平均とし、「導電助剤濃度が最も低い層中の導電助剤の濃度」は、集電体とは反対の活物質層の表面側から活物質層全体の厚みの10%分の層中の導電助剤濃度の平均とする。
本発明の電極が含む活物質は、亜鉛種又はカドミウム種であることが好ましい。上記のとおり、本発明の電極は、活物質層中の導電性を調整して活物質層中に含まれる活物質を有効利用するものであり、活物質層表面の特定の箇所への電流が集中することを抑制することができるため、亜鉛種又はカドミウム種のようなデンドライトの成長が生じやすい活物質を用いた場合にも、デンドライトの成長を抑制することができる。本発明の電極が含む活物質としてより好ましくは、亜鉛種である。
なお、亜鉛種とは、亜鉛の金属単体又は亜鉛化合物を意味し、カドミウム種とはカドミウムの金属単体又はカドミウム化合物を意味する。
本発明の電極の活物質層中の活物質の割合は、活物質層全体100質量%に対して、40〜100質量%であることが好ましい。より好ましくは、60〜100質量%であり、更に好ましくは、80〜100質量%である。
本発明の電極の活物質層が含む導電助剤としては、特に制限されないが、例えば、導電性カーボン、導電性セラミックス、亜鉛・亜鉛末・亜鉛合金・(アルカリ)(蓄)乾電池や空気電池に使用される亜鉛(以下、纏めて金属亜鉛とも称する)、銅・真鍮・ニッケル・銀・ビスマス・インジウム・鉛・錫等の金属等の1種又は2種以上を用いることができる。
上記導電性カーボンとしては、天然黒鉛・人造黒鉛等の黒鉛、グラッシーカーボン、アモルファス炭素、易黒鉛化炭素、難黒鉛化炭素、カーボンナノフォーム、活性炭、グラフェン、ナノグラフェン、グラフェンナノリボン、フラーレン、カーボンブラック、黒鉛化カーボンブラック、ケッチェンブラック、気相法炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、メソカーボンマイクロビーズ、金属によりコートしたカーボン、カーボンコートした金属、ファイバー状カーボン、ホウ素含有カーボン、窒素含有カーボン、多層/単層カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、バルカン、アセチレンブラック、酸素含有官能基を導入することにより親水処理したカーボン、SiCコートカーボン、分散・乳化・懸濁・マイクロサスペンジョン重合等により表面処理したカーボン、マイクロカプセルカーボン等が挙げられる。
上記導電性セラミックスとしては、例えば、酸化亜鉛と共に焼成したBi、Co、Nb、及び、Yから選ばれる少なくとも1種を含有する化合物等が挙げられる。
上記導電助剤の中でも、天然黒鉛、人造黒鉛等の黒鉛、易黒鉛化炭素、難黒鉛化炭素、グラフェン、カーボンブラック、黒鉛化カーボンブラック、ケッチェンブラック、気相成長炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、メソカーボンマイクロビーズ、ファイバー状カーボン、多層/単層カーボンナノチューブ、バルカン、アセチレンブラック、酸素含有官能基を導入することにより親水処理したカーボン、金属亜鉛、銅・真鍮・ニッケル・銀・ビスマス・インジウム・鉛・錫等の金属が好ましい。なお、金属亜鉛はアルカリ(蓄)電池や空気電池のような実電池に使用されるものであってもよく、表面を他元素やカーボン等で処理されたものであってもよいし、合金化されていてもよい。固溶体であってもよい。上記導電助剤は、1種でも2種以上でも使用することができる。
電極活物質として亜鉛種を用いた場合、電極反応で亜鉛がイオンとなって電極から離れることで活物質の不足が生じると、水を分解して電子を取り出す反応がおこり、その際に水素が発生する。上記導電助剤のうち、ビスマス、インジウム、タリウムは、電極での水素の発生を抑制する効果があるため、亜鉛種を活物質として用いる場合、ビスマス、インジウム、タリウムを導電助剤として用いることは本発明の好適な実施形態の1つである。
上記金属亜鉛は活物質としても働くことが可能である。言い換えれば、電池の使用の過程で、導電助剤である金属亜鉛は酸化還元反応をおこなって活物質としても機能する。なお、同様に、活物質として亜鉛種を用いた場合、電池の使用の過程で、活物質である亜鉛含有化合物から生成する金属亜鉛は導電助剤としても機能する。電極の調製段階で合剤として加える金属亜鉛及び亜鉛含有化合物は、電池の使用の過程では、活物質かつ導電助剤として実質的に機能する。
上記導電助剤は、これを用いて蓄電池を作製した際に水含有電解液を使用した場合には、電池の使用の過程で水の分解副反応を進行させる場合があり、該副反応を抑制するために、特定の元素を導電助剤に導入してもよい。特定の元素としては、Al、B、Ba、Bi、Br、C、Ca、Cd、Ce、Cl、Cu、Eu、F、Ga、Hg、In、La、Mg、Mn、N、Nb、Nd、Ni、P、Pb、S、Sb、Sc、Si、Sm、Sn、Sr、Ti、Tl、Y、Zr等が挙げられる。導電性カーボンを導電助剤の一つとして使用する場合には、特定の元素としては、Al、B、Ba、Bi、C、Ca、Cd、Ce、Cu、F、Ga、In、La、Mg、Mn、N、Nb、Nd、Ni、P、Pb、S、Sb、Sc、Si、Sn、Ti、Tl、Y、Zrが好ましい。
ここで、特定の元素を導電助剤に導入するとは、導電助剤を、これらの元素を構成元素とする化合物とすることを意味する。
上記導電助剤の活物質層中の含有割合は、活物質層中の活物質100質量%に対して、0.0001〜100質量%であることが好ましい。導電助剤の含有割合がこのような範囲であると、活物質層を含んで構成される電極を電池に用いた場合に、より良好な電池性能を発揮する。より好ましくは、0.0005〜60質量%であり、更に好ましくは、0.001〜40質量%である。
なお、金属亜鉛を電極合剤調製時に使用する場合には、金属亜鉛は活物質ではなく、導電助剤として考えて計算する。また、亜鉛含有化合物である酸化亜鉛や水酸化亜鉛等から電池の使用の過程で生成する金属亜鉛は、系中で導電助剤としての機能も果たすことになるが、亜鉛負極合剤や亜鉛負極調製時には0価の金属亜鉛ではないため、ここでは導電助剤と考えず、活物質と考えて計算する。すなわち、上記活物質、導電助剤の好ましい含有割合は、亜鉛負極合剤や亜鉛負極の調製時における亜鉛含有化合物は活物質として考え、金属亜鉛は導電助剤として考えて計算する。
本発明に係る活物質層は、更に、周期表の第1族〜第17族に属する元素からなる群より選択される少なくとも1つの元素を有する化合物、有機化合物、及び、有機化合物塩からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
<集電体>
上記集電体としては、(電解)銅箔、銅メッシュ(エキスパンドメタル)、発泡銅、パンチング銅、真鍮等の銅合金、真鍮箔、真鍮メッシュ(エキスパンドメタル)、発泡真鍮、パンチング真鍮、ニッケル箔、耐食性ニッケル、ニッケルメッシュ(エキスパンドメタル)、パンチングニッケル、金属亜鉛、耐食性金属亜鉛、亜鉛箔、亜鉛メッシュ(エキスパンドメタル)、(パンチング)鋼板、導電性を付与した不織布;Ni・Zn・Sn・Pb・Hg・Bi・In・Tl・真鍮等を添加した(電解)銅箔・銅メッシュ(エキスパンドメタル)・発泡銅・パンチング銅・真鍮等の銅合金・真鍮箔・真鍮メッシュ(エキスパンドメタル)・発泡真鍮・パンチング真鍮・ニッケル箔・耐食性ニッケル・ニッケルメッシュ(エキスパンドメタル)・パンチングニッケル・金属亜鉛・耐食性金属亜鉛・亜鉛箔・亜鉛メッシュ(エキスパンドメタル)・(パンチング)鋼板・不織布;Ni・Zn・Sn・Pb・Hg・Bi・In・Tl・真鍮等によりメッキされた(電解)銅箔・銅メッシュ(エキスパンドメタル)・発泡銅・パンチング銅・真鍮等の銅合金・真鍮箔・真鍮メッシュ(エキスパンドメタル)・発泡真鍮・パンチング真鍮・ニッケル箔・耐食性ニッケル・ニッケルメッシュ(エキスパンドメタル)・パンチングニッケル・金属亜鉛・耐食性金属亜鉛・亜鉛箔・亜鉛メッシュ(エキスパンドメタル)・(パンチング)鋼板・不織布;銀;アルカリ(蓄)電池や空気亜鉛電池に集電体や容器として使用される材料等が挙げられる。
<電極の調製方法>
本発明の電極は、活物質層の原料となる電極合剤組成物を集電体上に塗工・圧着・接着・圧電・圧延・延伸・溶融等して活物質を含む活物質層を形成する工程を含む製造方法により製造することができる。本発明の電極が、2層以上の活物質層が積層された構造のものである場合、活物質層を形成する工程を2回以上行うことで電極を製造することができる。
上記電極合剤組成物は、上述した活物質層が含む活物質、導電助剤、バインダー(結着剤)やその他の成分を含み、更に溶媒を含んで構成されるものである。溶媒を除く電極合剤組成物の固形分全体に対する活物質や導電助剤等の成分の好ましい含有割合は、上述した活物質層におけるこれらの好ましい割合と同様である。
電極合剤組成物が含むバインダーとしては、ポリオレフィンや、その他、国際公開第2013/027767号に記載の結着剤として使用される有機化合物、有機化合物塩と同様のものを用いることができる。
電極合剤組成物が含む溶剤としては、水、エタノール、アセトン、イソプロピルアルコール、ブタノール、酢酸ブチル、N−メチルピロリドン等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
上記電極合剤組成物のバインダーの含有量は、電極合剤全体100質量%に対して、1〜5質量%であることが好ましい。より好ましくは、2〜4質量%である。
上記電極合剤組成物の溶剤の含有量は、負極合剤組成物全体100質量%に対して、10〜80質量%であることが好ましい。より好ましくは、30〜60質量%である。
本発明の電極は、電子伝導性に優れ、厚みのある電極とした場合にも、活物質を有効に利用して充放電レート特性に優れたものであって、亜鉛種やカドミウム種等を活物質として用いた場合のデンドライトの成長も効果的に抑制することができる。このような本発明の電極を用いて構成される電池もまた、本発明の1つである。
本発明の電極は、中でも、亜鉛種を活物質とする負極に用いられることが好ましい。すなわち、本発明の電極が亜鉛負極であることが好ましい。したがって、本発明の電池が、亜鉛種を活物質とする亜鉛負極として本発明の電極を含む電池であることは、本発明の好適な実施形態の1つである。
<本発明の電極を用いて構成される電池>
以下においては、亜鉛種を活物質とする亜鉛負極として本発明の電極を含む電池について記載する。
亜鉛種を活物質とする亜鉛負極として本発明の電極を含む電池の正極活物質としては、一次電池や二次電池の正極活物質として通常用いられるものを用いることができ、特に制限されないが、例えば、酸素(酸素が正極活物質となる場合、正極は、酸素の還元や水の酸化が可能なペロブスカイト型化合物、コバルト含有化合物、鉄含有化合物、銅含有化合物、マンガン含有化合物、白金含有化合物等より構成される空気極となる)、オキシ水酸化ニッケル、水酸化ニッケル、コバルト含有水酸化ニッケル等のニッケル化合物、酸化銀などが挙げられる。これらの中でも、正極活物質が酸素であることが好ましい。
上述したとおり、本発明の電極は、活物質の厚みを厚くした場合でも、活物質層中の活物質を有効に利用することができるため、容量を大きくするために負極活物質の厚みを厚くすることが求められる亜鉛空気電池の負極として用いられることが好適である。したがって、本発明の電池が空気亜鉛電池であることは、本発明の好適な実施形態の1つである。
また、本発明の亜鉛負極を使用した電池の形態としては、一次電池、充放電が可能な二次電池、メカニカルチャージ(亜鉛負極の機械的な交換)の利用、本発明の亜鉛負極と上述したような正極活物質より構成される正極とは別の第3極の利用等、いずれの形態であっても良い。
本発明の電池に用いる電解液としては、蓄電池の電解液として通常用いられるものを用いることができ、特に制限されないが、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、ジメトキシメタン、ジエトキシメタン、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、ジエトキシエタン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、アセトニトリル、ベンゾニトリル、イオン性液体、フッ素含有カーボネート類、フッ素含有エーテル類、ポリエチレングリコール類、フッ素含有ポリエチレングリコール類等が挙げられる。上記有機溶剤系電解液は、1種でも2種以上でも使用することができる。水系電解液としては、水酸化カリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化リチウム水溶液、硫酸亜鉛水溶液、硝酸亜鉛水溶液、リン酸亜鉛水溶液、酢酸亜鉛水溶液等などが挙げられる。これらの中でも、水酸化カリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化リチウム水溶液といったアルカリ性電解質が好ましい。上記水系電解液は、1種でも2種以上でも使用することができる。水系電解液は、上記有機溶剤系電解液を含んでいてもよい。
本発明の電池としては、更に、セパレーターを使用することもできる。セパレーターとは、正極と負極を隔離し、電解液を保持して正極と負極との間のイオン伝導性を確保する部材である。セパレーターとして特に制限はないが、不織布、濾紙、ポリエチレンやポリプロピレン等の炭化水素部位含有ポリマー、ポリテトラフルオロエチレン部位含有ポリマー、ポリフッ化ビニリデン部位含有ポリマー、セルロース、フィブリル化セルロース、ビスコースレイヨン、酢酸セルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール含有ポリマー、セロファン、ポリスチレン等の芳香環部位含有ポリマー、ポリアクリロニトリル部位含有ポリマー、ポリアクリルアミド部位含有ポリマー、ポリハロゲン化ビニル部位含有ポリマー、ポリアミド部位含有ポリマー、ポリイミド部位含有ポリマー、ナイロン等のエステル部位含有ポリマー、ポリ(メタ)アクリル酸部位含有ポリマー、ポリ(メタ)アクリル酸塩部位含有ポリマー、ポリイソプレノールやポリ(メタ)アリルアルコール等の水酸基含有ポリマー、ポリカーボネート等のカーボネート基含有ポリマー、ポリエステル等のエステル基含有ポリマー、ポリウレタン等のカルバメートやカルバミド基部位含有ポリマー、寒天、ゲル化合物、有機無機ハイブリッド(コンポジット)化合物、イオン交換膜性ポリマー、環化ポリマー、スルホン酸塩含有ポリマー、第四級アンモニウム塩含有ポリマー、第四級ホスホニウム塩ポリマー、環状炭化水素基含有ポリマー、エーテル基含有ポリマー、セラミックス等の無機物等が挙げられる。セパレータはこれらのうちの1種であってもよく、2種以上であってもよい。
本発明の電極は、上述の構成よりなり、電子伝導性に優れ、厚みのある電極とした場合にも、活物質を有効に利用して優れた充放電レート特性を実現でき、更に亜鉛種やカドミウム種等の充放電に伴ってデンドライトが成長するおそれのある活物質を用いた場合のデンドライトの成長も抑制することができる。本発明の電極は、特に空気亜鉛電池の負極として好適に用いることができる。
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
実施例において、膜の厚みはマイクロメータにより測定した。
実施例1、2、比較例1、2
ポリオレフィン水分散液(三井化学社製、ケミパールS100)、テトラフルオロエチレン、天然黒鉛、及び、酸化亜鉛(平均粒子径1μm)を0.5:3.5:4:92の質量比で混錬し、乾燥させた電極合材Aと、ポリオレフィン水分散液(三井化学社製、ケミパールS100)、テトラフルオロエチレン、及び、酸化亜鉛(平均粒子径1μm)を0.5:3.5:96の質量比で混錬し、乾燥させた電極合材Bと、ポリオレフィン水分散液(三井化学社製、ケミパールS100)、テトラフルオロエチレン、天然黒鉛、及び、酸化亜鉛(平均粒子径1μm)を0.5:3.5:2:94の質量比で混錬し、乾燥させた電極合材Cとを作製した。パンチングニッケルに電極合材Aを配置し、乾燥させた後、その上に電極合材Bを配置し、乾燥させて2つの活物質層が積層された電極(1)、電極合材Aを配置し、乾燥させた後、その上に電極合材Aを配置し、乾燥させて2つの活物質層が積層された電極(2)、電極合材Bを配置し、乾燥させた後、その上に電極合材Bを配置し、乾燥させて2つの活物質層が積層された電極(3)、電極合材Aを配置し、乾燥させた後、その上に電極合材Cを配置し、乾燥させて2つの活物質層が積層された電極(4)の四種類の電極を作製した。厚みは500μm厚みの合材を二枚貼り合わせた1mm厚みのものと、1mm厚みの合材を二枚貼り合わせた2mmのものを各組成に対して用意した。これらの電極を、以下のセルに組み込み評価した。
負極として上記作製した亜鉛極、正極としてニッケル極、参照極として正極と同じ電極を50%充電した電極を用い、正極及び負極間には不織布を配置し、電解液として酸化亜鉛を飽和させた8M水酸化カリウム水溶液を用いて三極セルを構成し、充放電レート特性試験と充放電サイクル試験を行った。充放電レート特性試験では電極面積は1.948cmとし、電流値を10mAから100mAまで変化させて測定した。充電容量に対して放電容量が20%以下になった時点をサイクル寿命とした。結果を表1に示した。
Figure 0006735539
試験の結果、いずれの電極も、抵抗が小さく、充放電レート特性に優れることが確認されたが、電流値が50mA時の充電電圧と放電電圧の差、つまり過電圧を比較すると、導電助剤を入れていない(3)の電極に比べ(1)の積層構造の電極で小さくなっていることが確認された。また、充放電サイクル試験では電極面積は1.948cmとし、電流値を60mAで3時間充放電測定をした。充放電サイクル試験の結果、(1)や(4)の導電助剤濃度分布のある電極の方が(2)や(3)のような導電助剤分布のあるものに比べサイクル特性が良いことが確認された。また、充放電試験後の電極を目視で確認したところ、電極(1)、電極(4)ともデンドライトの成長は確認されなかった。

Claims (4)

  1. 活物質及び導電助剤を含む活物質層と集電体とを含んで構成される極であって、
    該活物質は、亜鉛種であり、
    該導電助剤は、導電性カーボンであり、
    該活物質層は、集電体に接する側から集電体とは反対の活物質層の表面側に向けて、活物質層中に含まれる導電助剤の濃度が少なくなるように分布している
    ことを特徴とする極。
  2. 前記活物質層は、厚みが500μm以上であることを特徴とする請求項1に記載の極。
  3. 前記活物質層は、導電助剤濃度が最も高い層中の導電助剤の濃度に対する、導電助剤濃度が最も低い層中の導電助剤の濃度が0〜90%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の極。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の極を用いて構成されることを特徴とする電池。
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