次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る外観検査装置1を示す概略平面図である。図2は、外観検査装置1の側面図である。
本実施形態の外観検査装置1は、ワイヤハーネス組立ライン2において組立図板3が搬送される経路に設置される。この外観検査装置1は、組立図板3が備えるワイヤハーネス保持部材(ハーネス保持部材)6,7,8が正常な状態(例えば、正常な位置及び角度)になっているか否かを検査するとともに、ワイヤハーネス組立ライン2において製造されたワイヤハーネス5が正確に組み立てられたか否かを検査することができる。
ワイヤハーネス組立ライン2は、長円状かつ無端状の経路を備えており、この経路上を複数の組立図板3が図1の矢印に沿って搬送されるように構成されている。ワイヤハーネス組立ライン2は、組立図板3を上記の経路に沿って搬送するための搬送コンベア4を備える。なお、以下の説明で単に「上流」「下流」というときは、この搬送コンベア4による組立図板3の搬送経路における上流及び下流を意味する。ワイヤハーネスの組立ては、組立図板3が図1の左上の位置にあるときに開始される。組立図板3が下流に搬送されるに従って組立作業は進行し、図1の右下の位置にあるときに完了する。
そして、外観検査装置1は、ワイヤハーネス組立ライン2においてワイヤハーネス5の組立てが完了する場所の直後(すぐ下流側)に配置されている。
ここで、ワイヤハーネス組立ライン2において組み立てられるワイヤハーネス5について簡単に説明する。ワイヤハーネス5とは、機械(本実施形態においては、車両)に複数設置された電気機器同士を電気的に接続するために、車両に設定された配線経路に沿って組み付けられる配線部材である。ワイヤハーネス5は、電線などの配線体が束ねられ、適宜分岐された状態で粘着テープ等により結束されて構成されている。ワイヤハーネス5の端部には、電気機器への電気的な接続のためのコネクタが取り付けられる。また、ワイヤハーネス5の適宜の部位には、車両に固定するための固定部材が取り付けられる。このほか、ワイヤハーネス5には、上記した粘着テープ、固定部材、コネクタのほかに、チューブ、シート、蛇腹管等の外装材が必要に応じて取り付けられることがある。
ワイヤハーネス5は、前記の組立図板3上で、作業者の手作業等により製造される。具体的に説明すると、組立図板3の一側の面(作業者が向かって作業する面)には、組み立てるべきワイヤハーネス5を原寸大の大きさで描いた組立図面15が貼り付けられる。また、組立図板3において組立図面15が貼り付けられた面には、ワイヤハーネス5やその半製品を保持することが可能な複数のワイヤハーネス保持部材6,7,8が、組立図板3から突出するように固定されている。作業者は、組立図面15を参照しながら、組立図板3に取り付けられているワイヤハーネス保持部材6,7,8を用いてワイヤハーネス5を組み立てていく。
次に、ワイヤハーネス保持部材6,7,8の詳細な構成について説明する。図3は、コネクタを保持するためのワイヤハーネス保持部材6を示す斜視図である。図4は、電線束を保持するためのワイヤハーネス保持部材7を示す斜視図である。図5は、固定部材16を保持するためのワイヤハーネス保持部材8を示す斜視図である。
図3には、ワイヤハーネス5の端末に配置されるコネクタを保持することが可能なワイヤハーネス保持部材6の例が示されている。このワイヤハーネス保持部材6は、組立図板3から垂直に突出して配置される支柱6aと、支柱6aの先端に固定されるコネクタ保持部6bと、を備える。
支柱6aは金属製の丸棒として構成されており、組立図板3に対してネジ止め等の公知の方法で回転不能に固定される。コネクタ保持部6bは例えば合成樹脂により構成されており、支柱6aに対してネジ止め等の公知の方法で回転不能に固定される。コネクタ保持部6bの内部には収容空間が形成されており、ワイヤハーネス5の端末に配置されるコネクタを所定の向きで収容した状態で保持することができる。
図4には、ワイヤハーネス5の中途部にある電線束を保持することが可能なワイヤハーネス保持部材7の例が示されている。このワイヤハーネス保持部材7は、支柱7aと、支柱7aの先端に配置される電線保持部7bと、を備える。
支柱7aの構成は、図3に示すワイヤハーネス保持部材6の支柱6aと同様である。電線保持部7bは金属によって形成され、支柱7aと一体的に構成されている。電線保持部7bは、その突出端側が2股に分岐しており、分岐した部分の内部に、ワイヤハーネス5の中途部を所定の向きで収容した状態で保持することができる。
図5には、ワイヤハーネス5に組み付けられる固定部材16を保持することでワイヤハーネス5を(間接的に)保持することが可能なワイヤハーネス保持部材8の例が示されている。ワイヤハーネス保持部材8は、ワイヤハーネス5に対する固定部材16の取付位置の近傍に配置されている。このワイヤハーネス保持部材8は、支柱8aと、支柱8aの先端に配置される部材保持部8bと、を備える。
支柱8aの構成は、図3に示すワイヤハーネス保持部材6の支柱6aと同様である。部材保持部8bは例えば合成樹脂により構成されており、支柱8aに対してネジ止め等の公知の方法で回転不能に固定される。部材保持部8bの内部には収容空間が形成されており、固定部材16を所定の向きで収容した状態で保持することができる。
図3から図5までに示すワイヤハーネス保持部材6,7,8は一例であり、必要に応じて様々な構成のものが用いられる。例えば、図3のワイヤハーネス保持部材6において、コネクタ保持部6bの大きさ及び収容空間の形状は、保持するコネクタの形状等に応じて適宜変更することができる(図5のワイヤハーネス保持部材8の部材保持部8bについても同様である)。また、図4のワイヤハーネス保持部材7は2股状に分岐されているが、3つ以上分岐する形状に構成しても良い。更に、例えばワイヤハーネス保持部材7の支柱7aの根元部分に図示しないヒンジ部を設け、ワイヤハーネス保持部材7を倒して周囲の作業スペースを広く確保して各種の作業を行い、作業完了後に元に戻すように構成しても良い。
本実施形態の外観検査装置1は、組立図板3に多数配置されているワイヤハーネス保持部材6,7,8の全部又は一部について検査を行うように構成されている。この検査項目としては、当該ワイヤハーネス保持部材6,7,8の固定が緩んでいる等のために組立図板3上で回転したり倒れたりしていないか、ワイヤハーネス保持部材6,7,8に変形が生じていないか(特に、分岐状の電線保持部7bが開くように変形していないか)等である。ここで、ワイヤハーネス保持部材6,7,8の「回転」とは、組立図板3に向かい合って見たときのワイヤハーネス保持部材6,7,8の角度が変化することをいう。また、ワイヤハーネス保持部材6,7,8が「倒れる」とは、組立図板3に対するワイヤハーネス保持部材6,7,8の突出角度が所定の角度、例えば垂直(90°)から変化することをいう。
また、本実施形態の外観検査装置1は、ワイヤハーネス保持部材6,7,8だけでなく、当該ワイヤハーネス保持部材6,7,8によって保持されたワイヤハーネス5に対して複数の検査対象部位を設定し、各部位について検査を行うように構成されている。ワイヤハーネス5に関する検査項目としては、当該ワイヤハーネス5が組立図板3において正しい位置に保持されているか、粘着テープによる固定漏れや部品の取付漏れがないか否か、あるいは、間違った部品が取り付けられていないか等である。
次に、外観検査装置1の構成について詳細に説明する。図6は、外観検査装置1の正面図である。
外観検査装置1は、図2及び図6に示すように、撮影架台11と、組立図板3を撮影する複数のカメラ(撮影部)12と、撮影用の光源13と、を備える。カメラ12及び光源13は、後述のコンピュータ30に電気的に接続される。なお、図6においては、カメラ12及び光源13の位置関係を分かり易く示すために、本来は実線で示すべき外観検査装置1を鎖線で透視的に描いている。
図2に示すように撮影架台11は側面視で門形に形成されており、門の内側を、搬送コンベア4による組立図板3の搬送経路が通過するように構成されている。カメラ12及び光源13は、組立図板3においてワイヤハーネス保持部材6が取り付けられている側の面に対向するように取り付けられている。
カメラ12による撮影は、搬送コンベア4によって搬送される組立図板3が撮影架台11の内側を通過する間に複数回行われる。本実施形態では、カメラ12は、組立図板3の搬送経路に垂直な方向に複数(3台)並べて設置され、それぞれのカメラ12が互いに異なる領域を撮影できるように構成されている。3つのカメラ12は何れも撮影架台11に固定されており、撮影架台11の内側に組立図板3を走行させながら、それぞれ定点撮影ができるように構成されている。
図6に示すように、光源13はカメラ12の左右両側に配置されている。また、左右それぞれの光源13は、組立図板3の搬送方向に垂直な向きに3つに分割されている。従って、外観検査装置1が備える光源13の数は6つである。6つの光源13のそれぞれは、点灯/消灯を切り換えたり、互いに独立に発光強度を異ならせたりすることができる。
次に、外観検査装置1の電気的構成について、図7を参照して説明する。図7は、外観検査装置1の電気的構成を示す機能ブロック図である。
外観検査装置1は、カメラ12や光源13等を制御する制御部としてのコンピュータ30を備えている。このコンピュータ30は、設定部31と、カメラ制御部32と、光源制御部33と、撮影領域特定部34と、画像検査部35と、記憶部(検出結果記憶部)36と、不合格時期予測部38と、を備えている。
具体的に説明すると、コンピュータ30は、図示しないCPU、ROM、RAM等を備えている。なお、CPUは、演算部や画像処理部に相当する。そして、前記ROMには、本発明のワイヤハーネス保持部材の外観検査方法における撮影工程、画像検査工程等を行うための外観検査プログラムが予め記憶されている。なお、この外観検査プログラムは、前記の外観検査方法に対応して、撮影ステップと、画像検査ステップと、を含んでいる。
この構成で、上記のハードウェアとソフトウェアとが協働することにより、コンピュータ30を、図7に示す設定部31、カメラ制御部32、光源制御部33、撮影領域特定部34、画像検査部35、記憶部36、検査結果出力部37、及び不合格時期予測部38等として動作させることができる。
設定部31は、ワイヤハーネス保持部材6,7,8等に関する所定の検査項目を実際に検査するための設定事項を、例えば図示しないマウスやキーボード等の入力部を介してコンピュータ30に予め入力させるために設けられている。入力される設定事項は様々であるが、撮影領域の特定及び撮影条件に関する設定事項と、検査に関する設定事項と、に大別することができる。なお、この設定事項の詳細は後述する。
カメラ制御部32は、カメラ12の動作を制御する。カメラ12は、カメラ制御部32からの指令に基づいて撮影を行い、得られた画像をカメラ制御部32に送信する。カメラ制御部32は、カメラ12から取得した画像を記憶部36に記憶する。
光源制御部33は、光源13を予め指定された強度で発光させるように制御する。これにより、(後述の画像処理のために)適切な照明条件でカメラ12による撮影を行うことができる。
撮影領域特定部34は、カメラ12から入力された画像データにおいて後述の位置認定用画像を検索することで、当該カメラ12が組立図板3上のどの部分を撮影したかを特定する。
画像検査部35は、カメラ12がどの部分を撮影したかを撮影領域特定部34が特定できた場合、画像データを解析することで、ワイヤハーネス5に設定された検査対象部位のそれぞれについて検査を行う。検査結果は、検査結果出力部37へ出力される。
記憶部36は、設定部31で設定された事項、カメラ12から得られた画像、画像検査部35による検査結果等を記憶する。
検査結果出力部37は、画像検査部35による検査結果を、例えば「OK」「NG」のような形で、コンピュータ30に接続された図示しないディスプレイ等に出力する。
次に、設定部31で設定される事項について詳細に説明する。上述したとおり、設定部31では、撮影領域の特定及び撮影条件に関する事項と、検査に関する事項と、を設定することができる。
以下、撮影領域の特定に関して説明する。外観検査装置1が備える複数のカメラ12は何れも、組立図板3の全域を撮影領域に収めることができない。このため、本実施形態では、組立図板3にセットされた状態のワイヤハーネス5の全体を検査するために、組立図板3の全域をm×n(本実施形態では、3×5)のマトリクス状に区画した分割領域をカメラ12で撮影し、それぞれの画像(以下、分割画像と呼ぶことがある)を用いて検査を行う。
図8(a)は、ワイヤハーネス5が組み付けられる前の組立図板3を示している。組立図板3に貼り付けられる組立図面15には、ワイヤハーネス5を組み立てるための図、記号、文字等が適宜記載されている。
図8(b)は、ワイヤハーネス5の組立てが完了した状態の組立図板3を示している。そして、この状態の組立図板3を、縦に3分割、横に5分割した15個の分割領域が、3つのカメラ12によって撮影され、15個の分割画像が得られる。なお、図8(b)の縦方向は、組立図板3の搬送方向と垂直な方向と言い換えることができ、横方向は、組立図板3の搬送方向に沿う方向と言い換えることができる。図8(b)では、分割画像の位置を特定するための行番号及び列番号が、縦にA〜C、横に1〜5のように付されている。これに従うと、図8(b)の左上隅の分割画像の位置はA1と表現することができ、右下隅の分割画像の位置はC5と表現することができる。
本実施形態の外観検査装置1において、撮影領域の特定とは、カメラ12から得られた画像が、上記の15個の分割領域のうちどの領域を撮影したものかを特定することを意味する。そして、本実施形態では、この撮影領域の特定を、カメラ12から取得した画像について適宜の画像処理を行うことにより実現している。
具体的に説明すると、撮影領域特定部34は、カメラ12から得られた画像について、予め設定されている位置認定用画像を探索する。位置認定用画像としては、組立図板3の分割領域をカメラ12で予め撮影して得られた画像から、組立図面15に記載されている内容の一部(図、記号、文字)を切り出したものを用いることができる。なお、位置認定用画像のための特別なマークを組立図面15に付しても良い。
検査担当者は、検査前の準備作業として、ワイヤハーネス保持部材6,7,8が正しい状態で配置されるとともに、検査の基準となるワイヤハーネス5がセットされた組立図板3について予め15個の分割領域をカメラ12で撮影し、15個の基準となる分割画像(以下、基準分割画像と呼ぶことがある)を、設定部31を用いて登録しておく。そして、検査担当者は、それぞれの分割領域ごとに、基準分割画像から特徴的な部分を切り出して位置認定用画像として登録(設定)するとともに、当該位置認定用画像が撮影画像のどの部分に現れるべきか(位置認定座標)についても登録(設定)する。更に、検査担当者は、分割領域ごとに、画像の撮影条件(例えば、照明である光源13の発光強度を含む)を併せて設定する。検査担当者によって登録及び設定された事項は、記憶部36に記憶される。
例えば、組立図板3の分割領域のうちA1の部分をカメラ12が撮影していたならば、カメラ12から得られた画像に、A1について登録した位置認定用画像と同一/類似の画像が、登録した位置認定座標の近傍に現れているはずである。このことを利用して、撮影領域特定部34は、カメラ12から得られた画像が組立図板3のどの分割領域を撮影したものかを特定する。なお、位置認定用画像を探索する方法としては、公知の画像マッチング法等を用いることができる。
以下、分割画像を特定する例について詳細に説明する。図9(a)には、A1の分割画像を特定するための位置認定用画像の例が示されている。図9(a)の例において位置認定用画像は、組立図面15に記されている、四角形と矢印を組み合わせた図形の画像とされている。カメラ制御部32は、組立図板3の搬送中にカメラ12が所定時間毎に撮影を繰り返すように制御するため、カメラ12からコンピュータ30に新しい画像が順次入力される。カメラ12が図9(b)のような画像を取得した場合、撮影領域特定部34は位置認定用画像を探索するが、位置認定用画像と同一/類似の画像は見つからない。従って、撮影領域特定部34は、A1の位置の分割画像は取得できなかったと判断する。この結果、カメラ12から入力した画像は破棄され、カメラ制御部32はカメラ12が撮影を再び行うように制御する。
次に、カメラ12が図9(c)のような画像を取得した場合、位置認定用画像が探索されるが、その探索位置は、登録されている位置認定座標よりも少し上流側となっており、位置認定座標と異なる。従って、撮影領域特定部34はA1の分割画像はやはり取得できなかったと判断するので、カメラ12から入力した画像は今回も破棄され、カメラ制御部32はカメラ12が撮影を再び行うように制御する。ただし、位置認定用画像の探索位置が位置認定座標の少し手前であることにより、間もなくA1の分割画像をカメラ12が撮影することが予測できるので、光源制御部33は、光源13を所定の強度で発光させるように制御する。なお、光源13の発光強度は、撮影条件の一部として設定部31で予め設定できることは上述したとおりである。
その後、カメラ12が図9(d)のような画像を取得し、この画像からは、位置認定用画像と同一/類似の画像が、位置認定座標とほぼ同一の位置にて探索される。従って、撮影領域特定部34はA1の部分の分割画像を取得できたと判断し、所定のトリミング処理を施した上で、分割画像の位置情報(A1)を付して記憶部36に記憶する。以上の処理を他の分割領域についても同様に行うことで、15個の分割画像を記憶部36に記憶することができる。
記憶部36に記憶された分割画像は、ワイヤハーネス保持部材6,7,8及びワイヤハーネス5の検査を行うために、画像検査部35によって適宜解析される。
次に、設定部31で設定される事項のうち検査に関する事項について説明する。以下の表には、検査に関する設定事項の例が示されている。
この設定事項としては、例えば、検査項目名、ワイヤハーネス保持部材6,7,8が含まれる分割画像の位置、上述の基準分割画像においてワイヤハーネス保持部材6,7,8がどの部分に存在するかを示す矩形範囲、検査時にカメラ12で撮影した画像からワイヤハーネス保持部材6,7,8を検出するために切り出される矩形範囲、検査アルゴリズム、合格条件等を挙げることができる。検査担当者は、設定部31を用いて、これらの事項をワイヤハーネス保持部材6,7,8ごとに登録(設定)し、記憶部36に記憶させることができる。
以下、設定事項の意味を詳細に説明する。例えば、上記の表1のうち番号が1である「コネクタ取付治具#A」の行に関して、当該コネクタ取付治具#Aは、検査の基準となる組立図板3(ワイヤハーネス保持部材6,7,8)及びワイヤハーネス5を予め撮影して登録してある3×5の基準分割画像のうち、A1に位置する基準分割画像の、座標(229,299)−(477,497)の矩形範囲に写っている旨が設定事項として登録されている。なお、A1の基準分割画像から上記の矩形範囲に従って切り出したものが、外観検査のための検索画像となる。そして、コネクタ取付治具#Aを検査する場合は、カメラ12で撮影される3×5の分割画像のうち、A1に位置する分割画像から座標(179,249)−(527,547)の矩形範囲を切り出し、この切り出された画像に対して、前記検索画像を用いてパターンマッチングのアルゴリズムにより検査を行い、所定の合格条件を満たせば合格とする旨が登録されている。
検査アルゴリズムとしては、ワイヤハーネス保持部材6,7,8の構成に応じて、パターンマッチング、粒子解析等を指定することができる。なお、これらの画像解析手法は何れも公知であるので、詳細な説明は省略する。
合格条件としては、パターンマッチングを行う場合、画像の一致度、検索位置、回転角度が満たすべき範囲を設定することができる。一方、粒子解析を行う場合、得られた粒子(黒領域又は白領域)の形、位置、及び面積等が満たすべき範囲を設定することができる。この合格条件の範囲(言い換えれば、合否判定閾値)は、適切な公差を考慮して定められる。
次に、上記のように設定された外観検査装置1によって実際に行われる外観検査について説明する。
検査対象の組立図板3がカメラ12で撮影され、撮影領域が特定された分割画像が得られると、画像検査部35は、上記の表1に示す設定事項に従い、ワイヤハーネス保持部材6,7,8について検査を行う。例えば、表1での番号が4である検査項目「固定部材取付治具#D」(ワイヤハーネス保持部材8)については、画像検査部35は、カメラ12で今回撮影したB5の分割画像から、予め設定された切出し範囲(36,20)−(415,357)に従って、図10の左側に示すように画像を切り出す。
画像検査部35は、設定された範囲(86,70)−(365,307)に基づいて基準分割画像から予め切り出して保存されている、検査の基準となるワイヤハーネス保持部材8の画像(検索画像、図10の右側)を、検査対象の組立図板3をカメラ12で撮影したB5の分割画像において(36,20)−(415,357)に従って切り出された画像(図10の左側)からパターンマッチングを用いて検索し、検索された位置と、画像の一致度と、を求める。なお、予め設定されている基準座標(256,207)の切出し範囲(86,70)−(365,307)における相対位置を用いて、撮影画像から検索画像が検索された位置(検索位置)を1点の座標として表すことができる。
このとき、ワイヤハーネス保持部材8の回転も併せて検出される。即ち、画像検査部35は、上記の検索画像を所定の角度範囲(例えば、−10°〜+10°)で小さな角度単位(例えば、0.1°単位)で画像処理により回転させながら検索し、画像の一致度が最大となる回転角度と、そのときの検索位置と、画像の一致度と、を求める。
そして、得られた検索位置、回転角度、画像の一致度が何れも所定の範囲内であれば合格と判定し、そうでなければ不合格と判定する。これにより、例えば組立図板3への固定が緩んでしまってワイヤハーネス保持部材8が支柱8aを中心として回転した場合、回転角度が異常な値を示すため、不合格と判定することができる。また、ワイヤハーネス保持部材8の支柱8aが倒れたり曲がってしまったりした場合、検索位置又は画像の一致度が異常な値を示すので、不合格と判定することができる。このように、ワイヤハーネス保持部材8の異常を適切に検出することができる。
図10の例では、検索画像として、部材保持部8bが固定部材16を保持した状態で撮影されたものが登録されている(即ち、ワイヤハーネス保持部材8によって固定部材16が保持された状態で基準分割画像が撮影されている)。この場合、画像の一致度に関する合否判定閾値を適切に設定することにより、ワイヤハーネス保持部材8自体の状態に加えて、ワイヤハーネス保持部材8が固定部材16を保持しているか否かについても併せて検査することができる。ただし、部材保持部8bが固定部材16を保持しない状態のワイヤハーネス保持部材8の画像が検索画像として登録されても差し支えない。
なお、コネクタを保持するワイヤハーネス保持部材6の検査も、上記のワイヤハーネス保持部材8の検査と実質的に同様に行うことができる。
次に、電線保持部7bを有するワイヤハーネス保持部材7の外観検査について説明する。上述のように電線保持部7bは分岐状に形成されているが、検査担当者は、それぞれの先端を検出するために画像を切り出す範囲を予め定める。図11には、上述の表のうち番号が3である「U字治具#C」の行に関して、基準画像(分割画像の一部)を表示させた状態で、2股状に分岐された電線保持部7bの先端を検出するために2つの切出し範囲(510,158)−(584,219)、(509,262)−(584,323)が指定された様子を示している。
検査対象の組立図板3がカメラ12で取得されると、画像検査部35は、図12に示すように、カメラ12で撮影したC3の分割画像において上記の切出し範囲に従って画像を切り出し、所定の閾値で画像を2値化する。
ここで、本実施形態において、ワイヤハーネス保持部材7の電線保持部7bは金属製であり、分岐されたそれぞれの先端は半球状に形成されている。従って、カメラ12の左右に配置される光源13の影響で、当該電線保持部7bの先端部分を撮影した画像には、上下方向に細長い楕円又は円弧状のハイライトが左右1対で現れる。
画像検査部35は、それぞれの切出し範囲の2値化画像から、周知の粒子解析により白領域を検出する。その後、画像検査部35は、上記のように特徴的な形状を有する2つのハイライトを、当該白領域の面積、白領域に外接する矩形の縦横の長さ、当該矩形の中心の位置等に基づいて検出した上で、2つのハイライトの重心の平均に相当する座標を先端位置とする。これにより、撮影画像において、電線保持部7bのそれぞれの先端位置を計算により得ることができる。
画像検査部35は、2つの先端位置を取得した後、それぞれの先端位置、2つの先端位置を結ぶ線分の長さ、及び当該線分の角度が所定の条件を満たしていれば合格と判定し、そうでなければ不合格と判定する。これにより、例えば組立図板3への固定が緩んでしまってワイヤハーネス保持部材7が支柱7aを中心として回転したり、支柱7aが倒れたり、ワイヤハーネス保持部材7自体が変形したりした場合、先端位置及び上記の線分の長さ/角度が異常な値を示すので、不合格と判定することができる。このように、ワイヤハーネス保持部材7の異常を適切に検出することができる。また、この方法によれば、既存のワイヤハーネス保持部材7を交換したり改造したりすることなく、継続して使用しながら外観検査を行うことができる。
なお、図8のワイヤハーネス保持部材7xのように電線保持部7bが3股以上に分岐する構成も考えられるが、この場合は、切り出す範囲を3つ以上指定して、3つ以上の先端部をそれぞれ検出すれば良い。
以上のような検査を全ての検査項目について行うことにより、ワイヤハーネス保持部材6,7,8の外観を作業者の目視に頼らず客観的かつ正確に検査することができ、保守作業の負担を軽減することができる。また、検査は非接触で行われるため、ワイヤハーネス保持部材6,7,8及びワイヤハーネス5が検査によって物理的な影響を受けることがない。従って、ワイヤハーネス5の組立作業の効率低下を防ぐことができる。また、検査はコンピュータ30を用いて自動的にかつ高速で行われるため、ワイヤハーネス保持部材6,7,8の異常を直ちに検出することができ、ワイヤハーネス5の寸法精度の低下等を良好に抑制することができる。
なお、検査に合格した場合でも、例えば検索位置、回転角度又は画像一致度があまり良好でない場合(例えば、合否判定閾値との差の絶対値が所定値以下である場合)には、画像検査部35は、近い将来にワイヤハーネス保持部材6,7,8が外観検査で不合格になる可能性があると判断し、検査結果出力部37は、その旨を警告の形で出力する。これにより、事前に修理の準備等を行うことができるので、実際に異常が発生した場合にも素早く対応することができる。
次に、ワイヤハーネス保持部材6,7,8の検査とともに行われる、ワイヤハーネス5が組立図板3において正しく組み立てられているか否かを検査する外観検査について説明する。なお、ワイヤハーネス5の検査項目も多数設定されるが、以下では、ワイヤハーネス保持部材7にワイヤハーネス5の中途部(電線束の部分)が正しく保持されているか否かについて検査する例を説明する。
検査担当者は、ワイヤハーネス5の中途部が存在すべき領域(ハーネス存在検査領域)と、存在すべきでない領域(ハーネス不存在検査領域)とを、ワイヤハーネス保持部材7の電線保持部7bの位置を参考にして定める。図13には、基準画像(分割画像の一部)を表示させた状態で、ワイヤハーネス5の中途部を検出するために、1つのハーネス存在検査領域が定められるとともに、その脇に2つのハーネス不存在検査領域が定められた様子を示している。
検査対象の組立図板3がカメラ12で取得されると、画像検査部35は、図14に示すように、カメラ12で撮影した分割画像において適宜の範囲で画像を切り出し、所定の閾値で画像を2値化する。本実施形態において、ワイヤハーネス5の電線部分には結束のために黒い粘着テープが巻かれる等しているため、2値化することにより黒い画素として現れ易くなり、そうでない部分(例えば、組立図面15が現れている部分等)は白い画素として現れ易くなる。
その後、画像検査部35は、2値化した画像に対して粒子解析により黒領域を検出した上で、図15に示すように所定面積以下の黒領域を除去する処理を行う。これにより、ワイヤハーネス5の中途部に由来しない黒領域(例えば、組立図面15に描かれる小さな文字による黒領域)が概ね除去されるので、検査精度を向上させることができる。その後、画像検査部35は、上記のハーネス存在検査領域及びハーネス不存在検査領域のそれぞれにおける黒画素の面積割合を求める。そして、画像検査部35は、ハーネス存在検査領域の黒画素の面積割合が所定値以上であり、ハーネス不存在検査領域の黒画素の面積割合が所定値以下である場合に、合格と判定し、そうでなければ不合格と判定する。これにより、ワイヤハーネス5が電線保持部7bを通過していない組立ミスを適切に検出することができる。
このように、本実施形態では、1つの外観検査装置1によって、ワイヤハーネス保持部材6,7,8の状態を外観検査するとともに、組み立てられたワイヤハーネス5の状態を外観検査することができる。従って、構成の簡素化を実現することができる。また、ワイヤハーネス組立ライン2に設置された外観検査装置1によってワイヤハーネス5の外観を検査できるので、組立図面15から検査台へワイヤハーネス5を載せ替える作業を省略でき、効率化を図ることができる。
なお、組立図板3のワイヤハーネス保持部材6,7,8の検査は、適宜に反復して行い、それにより得られた各検査項目の検査結果(検索位置、回転角度、及び画像一致度等)は記憶部36に記憶される。そして、不合格時期予測部38は、記憶部36に記憶された検査結果の時系列的な変化に基づいて、ワイヤハーネス保持部材6,7,8が外観検査で不合格になる時期(具体的には、検索位置等が合格とされる範囲から外れてしまう時期)を予測することができる。この予測結果を外観検査装置1から適宜の方法で出力して活用することにより、ワイヤハーネス保持部材6,7,8の異常が発生する時期を適切に予測して対応することができる。
一般的に、ワイヤハーネス保持部材6,7,8の固定が緩んで回転や傾きを生じたり、変形が生じたりするきっかけは、ワイヤハーネス保持部材6,7,8へのワイヤハーネス5等の付け外し等に伴って発生する負荷(衝撃)である。従って、ワイヤハーネス5をワイヤハーネス保持部材6,7,8にセットしない状態で当該ワイヤハーネス保持部材6,7,8を例えば目視で検査しても、ワイヤハーネス保持部材6,7,8の異常の早期発見が難しいことが多い。この点、本実施形態では、ワイヤハーネス組立ライン2においてワイヤハーネス保持部材6,7,8の外観検査が行われるので、ワイヤハーネス保持部材6,7,8に負荷が作用している状態、又は作用した直後の状態を検査することができる。従って、ワイヤハーネス保持部材6,7,8の異常を早期に検出することができる。
また、本実施形態の構成によれば、ワイヤハーネス5の製造サイクルに対し、ワイヤハーネス保持部材6,7,8の検査サイクルを円滑に組み込んで一体化することができる。従って、ワイヤハーネス保持部材6,7,8を検査する頻度を十分に増やすことができ、例えば、ワイヤハーネス5を1つ組み立てる毎にワイヤハーネス保持部材6,7,8を検査することができる。この結果、ワイヤハーネス保持部材6,7,8の異常を早期に発見することができる。また、十分な頻度の検査によって、ワイヤハーネス保持部材6,7,8の異常が進行して深刻化する前に検出することができる。従って、ワイヤハーネス5を組み立てる過程でワイヤハーネス保持部材6,7,8の異常が発見されても、ワイヤハーネス保持部材6,7,8をその場で応急修理して組立ラインの稼動を殆ど止めることなく継続するような運用も可能になる。
以上に説明したように、本実施形態の外観検査装置1は、カメラ12と、画像検査部35と、を備える。カメラ12は、ワイヤハーネス5又はその半製品を保持可能なワイヤハーネス保持部材6,7,8が突出するように配置されている組立図板3を撮影可能である。画像検査部35は、カメラ12により得られた撮影画像のデータと、事前に入力された基準分割画像のデータと、を比較することにより、ワイヤハーネス保持部材6,7,8の外観の合否を判定する。
言い換えれば、本実施形態においては、以下の撮影工程及び画像検査工程を含む方法によって、ワイヤハーネス保持部材6,7,8の外観検査が行われる。撮影工程では、ワイヤハーネス5又はその半製品を保持可能なワイヤハーネス保持部材6が突出するように配置されている組立図板3を撮影する。画像検査工程では、前記撮影工程により得られた撮影画像のデータと、事前に入力された基準分割画像のデータと、を比較することにより、ワイヤハーネス保持部材6,7,8の外観の合否を判定する。
これにより、組立図板3が備えるワイヤハーネス保持部材6,7,8を短時間で正確に検査することができる。また、検査は撮影画像を用いて非接触で行われるので、ワイヤハーネス保持部材6,7,8が検査によって物理的な影響を受けないようにすることができる。
また、本実施形態の外観検査装置1において、カメラ12は、ワイヤハーネス保持部材6,7,8がワイヤハーネス5又はその半製品を保持した状態の組立図板3を撮影可能である。画像検査部35は、ワイヤハーネス保持部材6,7,8の外観の合否とともに、ワイヤハーネス保持部材6,7,8がワイヤハーネス5又はその半製品を正しく保持しているか否かを判定する。
これにより、1台の外観検査装置1によってワイヤハーネス保持部材6,7,8に加えてワイヤハーネス5の外観検査を行うことができるので、構成を簡素化できるとともに、全体的な検査効率を向上させることができる。
また、本実施形態の外観検査装置1において、画像検査部35は、組立図板3に向かい合って見たときのワイヤハーネス保持部材6,7,8の角度、組立図板3に対するワイヤハーネス保持部材6,7,8の突出角度、及びワイヤハーネス保持部材6,7,8の変形のうち少なくとも何れかを(直接的又は間接的に)検出することにより、ワイヤハーネス保持部材6,7,8の外観の合否を判定する。
これにより、ワイヤハーネス保持部材6,7,8が回転したり倒れたり変形したりする異常を確実に検出することができる。
また、本実施形態の外観検査装置1は、カメラ12の撮影領域を照明可能な光源13を備える。画像検査部35は、カメラ12により得られた撮影画像データからハイライト部分を検出することにより、ワイヤハーネス保持部材7の突出側の端部を検出する。
これにより、撮影画像においてワイヤハーネス保持部材7の突出側の端部に照明によるハイライト部分が現れることを用いて、ワイヤハーネス保持部材7の状態を安定して検出することができる。
また、本実施形態の外観検査装置1において、画像検査部35は、ワイヤハーネス保持部材6,7,8の外観の合否判定に合格した場合に、当該ワイヤハーネス保持部材6,7,8が近い将来に不合格になる可能性があることをワイヤハーネス保持部材6,7,8の外観に基づいて検出可能である。特に、ワイヤハーネス5がワイヤハーネス保持部材6,7,8に取り付けられた状態で、ワイヤハーネス保持部材6,7,8の外観検査を行うことで、当該ワイヤハーネス保持部材6,7,8に負荷が掛かった状態で外観検査を行うことができ、ワイヤハーネス保持部材6,7,8が近い将来に不合格になる可能性があることを、より確実に検出可能となる。
これにより、メンテナンスの準備等を事前に行うことができるので、異常発生を未然に防止し、又は、異常が発生しても素早く対応することができる。
また、本実施形態の外観検査装置1は、記憶部36と、不合格時期予測部38と、を備える。記憶部36は、画像検査部35の検出結果を時系列で記憶する。不合格時期予測部38は、記憶部36の記憶内容に基づいて、ワイヤハーネス保持部材6,7,8が外観検査によって不合格になる時期を予測する。
これにより、メンテナンスを事前に計画し易くなるので、ワイヤハーネス保持部材6,7,8の保守作業を効率化できるとともに、ワイヤハーネス組立ライン2を円滑に運用することができる。
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
組立図板3にワイヤハーネス5又はその半製品を保持させない状態で、外観検査装置1による外観検査を行っても良い。即ち、ワイヤハーネス保持部材6,7,8の検査を、ワイヤハーネス5の検査とは独立して行っても良い。
ワイヤハーネス保持部材6,7,8を検査する頻度は任意であり、例えば1週間に1回というように定期的に行っても良いし、組立図板3においてワイヤハーネス5が組み立てられる毎に行っても良い。
上記の実施形態では組立図板3上の領域を3×5に分割しているが、本発明はこれに限定されない。即ち、組立図板3上の領域をどのように分割するかは、カメラ12の視野の広さや組立図板3の大きさ等を考慮して任意に設定することができる。また、組立図板3が小さく、1台のカメラ12が1回撮影するだけで組立図板3の全域の画像を得ることができる場合は、上記のように分割画像ごとに検査する必要がない。
ワイヤハーネス保持部材7の突出側端部の検出においては、図12のように、それぞれが上下に細長い左右1対の図形をハイライトとして検出する構成に限定されない。即ち、ワイヤハーネス保持部材7の突出側端部に現れるハイライトの個数及び形状は、当該突出側端部の形状、光源13とカメラ12の位置関係等によって様々であるので、それに応じたハイライトの検出を行う必要がある。
上記実施形態の外観検査装置は、長円状かつ無端状のコンベアによって組立図板が搬送される場合に限定されない。例えば、運搬台車等の移動手段によって組立図板が搬送されるように構成しても良い。