しかし、上記特許文献1の構成は、位置情報付与部及び位置情報取得部によって検査対象部位を特定する構成になっているため、装置が複雑化してコストが増大する原因となっていた。
また、特許文献1の構成では、作業者が検査対象部位までカメラを移動させる構成であるため、作業者の負担を大幅に軽減できるとはいいがたい。一方、カメラとしてパンチルトカメラを使用したり、ロボットでカメラを移動させる構成としたりすると、装置のコストが増大してしまう。
特許文献2の構成では、カメラの切換タイミングを決定するために搬送装置の駆動モータからパルスを入力する必要があるため、コストの低減が難しく、この点で改善の余地が残されていた。
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、特別な構成を必要とすることなく撮影部による撮影領域を特定して検査対象部位を検査可能なワイヤハーネスの外観検査装置を提供することにある。
課題を解決するための手段及び効果
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
本発明の第1の観点によれば、以下の構成のワイヤハーネスの外観検査装置が提供される。即ち、このワイヤハーネスの外観検査装置は、撮影部と、撮影領域特定部と、画像検査部と、を備える。前記撮影部は、ワイヤハーネスがセットされた状態で予め設定された経路に沿って搬送される組立図板の一部の領域を撮影可能である。前記撮影領域特定部は、前記撮影部により得られた画像データにおいて、前記組立図板に取り付けられた組立図面の内容の一部を示す画像、及び、前記組立図板においてワイヤハーネスを保持する保持部材の画像のうち少なくとも何れかである位置認定用画像を探索することにより、当該画像データに対応する前記組立図板の撮影領域を特定する。前記画像検査部は、撮影領域が特定された画像データを用いて、ワイヤハーネスの検査対象部位の外観の合否を判定する。前記位置認定用画像は、前記組立図板の一部の領域を予め撮影して得られた画像中の組立図面の記載内容の一部又は前記保持部材の部分を含む。
これにより、撮影部が撮影した組立図板の撮影領域を特定するために、当該部位の位置特定情報を取得するカメラや特別な器具等を新しく設けたり、組立図板側に特別な図形(マーク等)を付けたりする必要がない。言い換えれば、撮影部がワイヤハーネスの検査のために取得した画像自体を、組立図板のどの領域を撮影したかを特定するために用いることができる。従って、外観検査装置の簡素な構成を実現することができる。
前記のワイヤハーネスの外観検査装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記撮影部は、撮影領域を前記組立図板が通過する間に定点撮影を繰り返し行う。前記撮影領域特定部は、前記撮影部が取得した画像データにおいて前記位置認定用画像を探索し、その探索位置が予め設定した位置である場合に、当該画像データに対応する撮影領域を特定する。
これにより、撮影部が固定されていても、当該撮影部の視野を組立図板が通過させるようにしながら繰り返し撮影することにより、複数の撮影領域の画像データを得ることができる。また、撮影部を移動させるための構成(チルトパンカメラやロボット等)を必要としないため、外観検査装置の簡素な構成を実現できる。
前記のワイヤハーネスの外観検査装置においては、前記撮影部は、前記組立図板を搬送経路と垂直な向きで複数に分割したそれぞれの領域を撮影できるように複数設けられていることが好ましい。
これにより、大型のワイヤハーネスを組み付けるための大きな組立図板にも問題なく対応することができる。
前記のワイヤハーネスの外観検査装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記撮影部は作業者が持ち運び可能に構成される。前記組立図板の撮影領域を前記作業者に指示するための撮影指示光源を備える。
これにより、定点的な撮影を行うための構成では撮影しにくい方向を向いているワイヤハーネスの部位についても、持ち運び可能な撮影部によって柔軟に検査することが可能になる。また、作業者は、撮影部で撮影すべき場所を撮影指示光源により的確に理解することができる。
前記のワイヤハーネスの外観検査装置においては、前記組立図板の撮影領域ごとに照明条件を変化させることが可能な光源を備えることが好ましい。
これにより、撮影領域(検査対象部位)ごとに、外観検査に適した様々な照明条件で撮影を行うことができる。
前記のワイヤハーネスの外観検査装置においては、ワイヤハーネスの検査対象部位に応じた検査アルゴリズムを設定可能な設定部を備えることが好ましい。
これにより、検査対象部位に応じて適切な外観検査を行うことができる。
前記のワイヤハーネスの外観検査装置においては、前記撮影部は、ワイヤハーネス組立ラインにおいて搬送される前記組立図板上で組み付けられたワイヤハーネスを、当該組立図板から取り外される前に撮影することが好ましい。
これにより、ワイヤハーネスの組立てが完了して組立図板にセットされた状態のままで検査を行うことができる。従って、ワイヤハーネスを組立図板から取り外して別の検査台等にセットする作業を省略できるので、作業時間の短縮及び負担の軽減を図ることができる。
本発明の第2の観点によれば、以下のようなワイヤハーネスの外観検査方法が提供される。即ち、このワイヤハーネスの外観検査方法は、撮影工程と、撮影領域特定工程と、画像検査工程と、を含む。前記撮影工程では、予め設定された経路に沿って搬送される組立図板にセットされた状態のワイヤハーネスの一部を撮影する。前記撮影領域特定工程では、前記撮影工程により得られた画像データにおいて、前記組立図板に取り付けられた図面の内容の一部を示す画像、及び、前記組立図板においてワイヤハーネスを保持する保持部材の画像のうち少なくとも何れかである位置認定用画像を探索することにより、当該画像データに対応する前記組立図板の撮影領域を特定する。前記画像検査工程では、撮影領域が特定された画像データを用いて、ワイヤハーネスの検査対象部位の外観の合否を判定する。前記位置認定用画像は、前記組立図板の一部の領域を予め撮影して得られた画像中の組立図面の記載内容の一部又は前記保持部材の部分を含む。
これにより、撮影工程で撮影した組立図板の撮影領域を特定するために、撮影部位の位置特定情報を取得するカメラや特別な器具等を新しく設けたり、組立図板側に特別な図形(マーク等)を付けたりする必要がない。言い換えれば、撮影工程でワイヤハーネスの検査のために取得した画像自体を、組立図板のどの領域を撮影したかを特定するために用いることができる。従って、簡素な構成で外観の検査を行うことができる。
本発明の第3の観点によれば、以下のようなワイヤハーネスの外観検査プログラムが提供される。即ち、このワイヤハーネスの外観検査プログラムは、撮影ステップと、撮影領域特定ステップと、画像検査ステップと、をコンピュータに実行させる。前記撮影ステップでは、予め設定された経路に沿って搬送される組立図板にセットされた状態のワイヤハーネスの一部を撮影する。前記撮影領域特定ステップでは、前記撮影ステップにより得られた画像データにおいて、前記組立図板に取り付けられた図面の内容の一部を示す画像、及び、前記組立図板においてワイヤハーネスを保持する保持部材の画像のうち少なくとも何れかである位置認定用画像を探索することにより、当該画像データに対応する前記組立図板の撮影領域を特定する。前記画像検査ステップでは、撮影領域が特定された画像データを用いて、ワイヤハーネスの検査対象部位の外観の合否を判定する。前記位置認定用画像は、前記組立図板の一部の領域を予め撮影して得られた画像中の組立図面の記載内容の一部又は前記保持部材の部分を含む。
これにより、撮影ステップで撮影した組立図板の撮影領域を特定するために、撮影部位の位置特定情報を取得するカメラや特別な器具等を新しく設けたり、組立図板側に特別な図形(マーク等)を付けたりする必要がない。言い換えれば、撮影ステップでワイヤハーネスの検査のために取得した画像自体を、組立図板のどの領域を撮影したかを特定するために用いることができる。従って、簡素な構成で外観の検査を行うことができる。
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るワイヤハーネス5の外観検査装置1を示す概略平面図である。図2は、外観検査装置1の側面図である。図3は、外観検査装置1の正面図である。図4は、外観検査装置1の電気的構成を示す機能ブロック図である。
本実施形態の外観検査装置1は、ワイヤハーネス組立ライン2において製造されたワイヤハーネス5が正確に組み立てられたか否かを検査する装置である。
ワイヤハーネス組立ライン2は、長円状かつ無端状の経路を備えており、この経路上を複数の組立図板3が図1の矢印に沿って搬送されるように構成されている。ワイヤハーネス組立ライン2は、組立図板3を上記の経路に沿って搬送するための搬送コンベア4を備える。なお、以下の説明で単に「上流」「下流」というときは、この搬送コンベア4による組立図板3の搬送経路における上流及び下流を意味する。ワイヤハーネスの組立ては、組立図板3が図1の左上の位置にあるときに開始される。組立図板3が下流に搬送されるに従って組立作業は進行し、図1の右下の位置にあるときに完了する。
そして、外観検査装置1は、ワイヤハーネス組立ライン2においてワイヤハーネス5の組立てが完了する場所の直後(すぐ下流側)に配置されている。
ここで、検査対象となるワイヤハーネス5について簡単に説明する。ワイヤハーネス5とは、機械(本実施形態においては、車両)に複数設置された電気機器同士を電気的に接続するために、車両に設定された配線経路に沿って組み付けられる配線部材である。ワイヤハーネス5は、電線などの配線体が適宜分岐された状態で粘着テープ等により結束されて構成されている。ワイヤハーネス5の適宜の部位には、車両に固定するための固定部材が取り付けられる。また、ワイヤハーネス5の端部には、電気機器への電気的な接続のためのコネクタが取り付けられる。このほか、ワイヤハーネス5には、上記した粘着テープ、固定部材、コネクタのほかに、チューブ、シート、蛇腹管等の外装材が必要に応じて取り付けられることがある。
ワイヤハーネス5は、前記した組立図板3上で、作業者の手作業により製造される。具体的に説明すると、組立図板3の一側の面(作業者が向かって作業する面)には、ワイヤハーネス5やその半製品を保持することが可能な複数のハーネス保持部材6が、突出状に固定されている。ハーネス保持部材6の先端部の形状は様々であり、例えば、略U字状の電線支持部となっているものや、コネクタ保持部となっているものや、固定部材を嵌め込んで保持できるようになっているもの等を挙げることができる。作業者は、組立図板3に取り付けられているハーネス保持部材6に電線を保持させながらコネクタ等を取り付けることで、ワイヤハーネス5を組み立てていく。
本実施形態の外観検査装置1は、上記のワイヤハーネス5について複数の検査対象部位を設定し、各部位について検査を行うように構成されている。具体的な検査項目としては、粘着テープによる固定漏れや部品の取付漏れがないか否か、あるいは、間違った部品が取り付けられていないか等、様々である。
外観検査装置1は、図2及び図3に示すように、撮影架台11と、組立図板3を撮影する複数のカメラ(撮影部)12と、撮影用の光源13と、を備える。カメラ12及び光源13は、後述のコンピュータ30に電気的に接続される。なお、図3においては、カメラ12及び光源13の位置関係を分かり易く示すために、本来は実線で示すべき外観検査装置1を鎖線で透視的に描いている。
図2に示すように撮影架台11は側面視で門形に形成されており、門の内側を、搬送コンベア4による組立図板3の搬送経路が通過するように構成されている。カメラ12及び光源13は、組立図板3においてハーネス保持部材6が取り付けられている側の面に対向するように取り付けられている。
カメラ12による撮影は、搬送コンベア4によって搬送される組立図板3が撮影架台11の内側を通過する間に複数回行われる。本実施形態では、カメラ12は、組立図板3の搬送経路に垂直な方向に複数(3台)並べて設置され、それぞれのカメラ12が互いに異なる領域を撮影できるように構成されている。3つのカメラ12は何れも撮影架台11に固定されており、撮影架台11の内側に組立図板3を走行させながら、それぞれ定点撮影ができるように構成されている。
図3に示すように、光源13はカメラ12の左右両側に配置されている。また、左右それぞれの光源13は、組立図板3の搬送方向に垂直な向きに3つに分割されている。従って、外観検査装置1が備える光源13の数は6つである。6つの光源13のそれぞれは、点灯/消灯を切り換えたり、互いに独立に発光強度を異ならせたりすることができる。
次に、外観検査装置1の電気的構成について、図4を参照して説明する。図4は、外観検査装置1の電気的構成を示す機能ブロック図である。
外観検査装置1は、カメラ12や光源13等を制御する制御部としてのコンピュータ30を備えている。このコンピュータ30は、設定部31と、カメラ制御部32と、光源制御部33と、撮影領域特定部34と、画像検査部35と、記憶部36と、検査結果出力部37と、を備えている。
具体的には、コンピュータ30は、図示しないCPU、ROM、RAM等を備えている。なお、CPUは、演算部や画像処理部に相当する。そして、前記ROMには、本発明のワイヤハーネスの外観検査方法における撮影工程、撮影領域特定工程、画像検査工程等を行うための外観検査プログラムが予め記憶されている。なお、この外観検査プログラムは、前記の外観検査方法に対応して、撮影ステップと、撮影領域特定ステップと、画像検査ステップと、を含んでいる。
この構成で、上記のハードウェアとソフトウェアとが協働することにより、コンピュータ30を、図4に示す設定部31、カメラ制御部32、光源制御部33、撮影領域特定部34、画像検査部35、記憶部36、検査結果出力部37等として動作させることができる。
設定部31は、ワイヤハーネス5の所定の検査項目を実際に検査するための設定事項を、例えば図示しないマウスやキーボード等の入力部を介してコンピュータ30に予め入力させるために設けられている。入力される設定事項は様々であるが、撮影領域の特定及び撮影条件に関する設定事項と、検査に関する設定事項と、に大別することができる。なお、この設定事項の詳細は後述する。
カメラ制御部32は、カメラ12の動作を制御する。カメラ12は、カメラ制御部32からの指令に基づいて撮影を行い、得られた画像をカメラ制御部32に送信する。カメラ制御部32は、カメラ12から取得した画像を記憶部36に記憶する。
光源制御部33は、光源13を予め指定された強度で発光させるように制御する。これにより、(後述の画像処理のために)適切な照明条件でカメラ12による撮影を行うことができる。
撮影領域特定部34は、カメラ12から入力された画像データにおいて後述の位置認定用画像を検索することで、当該カメラ12が組立図板3上のどの部分を撮影したかを特定する。
画像検査部35は、カメラ12がどの部分を撮影したかを撮影領域特定部34が特定できた場合、画像データを解析することで、ワイヤハーネス5に設定された検査対象部位のそれぞれについて検査を行う。検査結果は、検査結果出力部37へ出力される。
記憶部36は、設定部31で設定された事項、カメラ12から得られた画像、画像検査部35による検査結果等を記憶する。
検査結果出力部37は、画像検査部35による検査結果を、例えば「OK」「NG」のような形で、コンピュータ30に接続された図示しないディスプレイ等に出力する。
次に、設定部31で設定される事項について詳細に説明する。上述したとおり、設定部31では、撮影領域の特定及び撮影条件に関する事項と、検査に関する事項と、を設定することができる。
以下、撮影領域の特定に関して説明する。外観検査装置1が備える複数のカメラ12は何れも、組立図板3の全域を撮影領域に収めることができない。このため、本実施形態では、組立図板3にセットされた状態のワイヤハーネス5の全体を検査するために、組立図板3の全域をm×n(本実施形態では、3×5)のマトリクス状に区画した分割領域をカメラ12で撮影し、それぞれの画像(以下、分割画像と呼ぶことがある)を用いて検査を行うこととしている。
図5(a)は、ワイヤハーネス5が組み付けられる前の組立図板3を示している。組立図板3には組立図面7が貼り付けられており、この組立図面7には、ワイヤハーネス5を組み立てるための図、記号、文字等が適宜記載されている。
図5(b)は、ワイヤハーネス5の組立てが完了した状態の組立図板3を示している。そして、この状態の組立図板3を、縦に3分割、横に5分割した15個の分割領域が、3つのカメラ12によって撮影され、15個の分割画像が得られる。なお、図5(b)の縦方向は、組立図板3の搬送方向と垂直な方向と言い換えることができ、横方向は、組立図板3の搬送方向に沿う方向と言い換えることができる。図5(b)では、分割画像の位置を特定するための行番号及び列番号が、縦にA〜C、横に1〜5のように付されている。これに従うと、図5(b)の左上隅の分割画像の位置はA1と表現することができ、右下隅の分割画像の位置はC5と表現することができる。
本実施形態の外観検査装置1において、撮影領域の特定とは、カメラ12から得られた画像が、上記の15個の分割領域のうちどの領域を撮影したものかを特定することを意味する。そして、本実施形態では、この撮影領域の特定を、カメラ12から取得した画像について適宜の画像処理を行うことにより実現している。
具体的に説明すると、撮影領域特定部34は、カメラ12から得られた画像について、予め設定されている位置認定用画像を探索する。位置認定用画像としては、組立図板3の分割領域をカメラ12で予め撮影して得られた画像から、組立図面7に記載されている内容の一部(図、記号、文字)を切り出したものや、ハーネス保持部材6の部分等を切り出したものを用いることができる。なお、位置認定用画像のために特別なマークを組立図面7に付したりする必要はない。
検査責任者は、検査前の準備作業として、検査の基準となるワイヤハーネス5がセットされた組立図板3について予め15個の分割領域をカメラ12で撮影し、15個の基準となる分割画像(以下、基準分割画像と呼ぶことがある)を、設定部31を用いて登録しておく。そして、検査責任者は、それぞれの分割領域ごとに、基準分割画像から特徴的な部分を切り出して位置認定用画像として登録(設定)するとともに、当該位置認定用画像が撮影画像のどの部分に現れるべきか(位置認定座標)についても登録(設定)する。更に、検査責任者は、分割領域ごとに、画像の撮影条件(例えば、照明である光源13の発光強度を含む)を併せて設定する。検査責任者によって登録及び設定された事項は、記憶部36に記憶される。
例えば、組立図板3の分割領域のうちA1の部分をカメラ12が撮影していたならば、カメラ12から得られた画像に、A1について登録した位置認定用画像と同一/類似の画像が、登録した位置認定座標の近傍に現れているはずである。このことを利用して、撮影領域特定部34は、カメラ12から得られた画像が組立図板3のどの分割領域を撮影したものかを特定する。なお、位置認定用画像を探索する方法としては、公知の画像マッチング法等を用いることができる。
以下、分割画像を特定する例について詳細に説明する。図6(a)には、A1の分割画像を特定するための位置認定用画像の例が示されている。図6(a)の例では、位置認定用画像は、組立図面7に記されているクリップの図形の画像とされている。カメラ制御部32は、組立図板3の搬送中にカメラ12が所定時間毎に撮影を繰り返すように制御するため、カメラ12からコンピュータ30に新しい画像が順次入力される。カメラ12が図6(b)のような画像を取得した場合、撮影領域特定部34は位置認定用画像を探索するが、位置認定用画像と同一/類似の画像は見つからない。従って、撮影領域特定部34は、A1の位置の分割画像は取得できなかったと判断する。この結果、カメラ12から入力した画像は破棄され、カメラ制御部32はカメラ12が撮影を再び行うように制御する。
次に、カメラ12が図6(c)のような画像を取得した場合、位置認定用画像が探索されるが、その探索位置は、登録されている位置認定座標よりも少し上流側となっており、位置認定座標と異なる。従って、撮影領域特定部34はA1の分割画像はやはり取得できなかったと判断するので、カメラ12から入力した画像は今回も破棄され、カメラ制御部32はカメラ12が撮影を再び行うように制御する。ただし、位置認定用画像の探索位置が位置認定座標の少し手前であることにより、間もなくA1の分割画像をカメラ12が撮影することが予測できるので、光源制御部33は、光源13を所定の強度で発光させるように制御する。なお、光源13の発光強度は、撮影条件の一部として設定部31で予め設定できることは上述したとおりである。
その後、カメラ12が図6(d)のような画像を取得し、この画像からは、位置認定用画像と同一/類似の画像が、位置認定座標とほぼ同一の位置にて探索される。従って、撮影領域特定部34はA1の部分の分割画像を取得できたと判断し、所定のトリミング処理を施した上で、分割画像の位置情報(A1)を付して記憶部36に記憶する。以上の処理を他の分割領域についても同様に行うことで、15個の分割画像を記憶部36に記憶することができる。
記憶部36に記憶された分割画像は、ワイヤハーネス5の各検査対象部位の検査を行うために、画像検査部35によって適宜解析される。
次に、設定部31で設定される事項のうち検査に関する事項について説明する。
検査に関する設定事項の例が図7に示され、当該設定事項としては、例えば、検査項目名、ワイヤハーネス5の検査対象部位が含まれる分割画像の位置、上述の基準分割画像において検査対象部位がどの部分に存在するかを示す矩形範囲、検査時にカメラ12で撮影した画像から検査対象部位を検索するために切り出される矩形範囲、検査アルゴリズム、(検査アルゴリズムに色判定が含まれる場合の)色判定範囲、合格閾値等を挙げることができる。検査責任者は、設定部31を用いて、これらの事項をワイヤハーネス5の検査対象部位ごとに登録(設定)し、記憶部36に記憶させることができる。
以下、図7に示す設定事項の意味を詳細に説明する。例えば、図7の表のうち番号が1である「黄色コネクタ」の行に関して、当該黄色コネクタは、検査の基準となるハーネスを予め撮影して登録してある3×5の基準分割画像のうち、A1に位置する基準分割画像の、座標(284,68)−(479,184)の矩形範囲に写っている旨が設定事項として登録されている。なお、A1の基準分割画像から上記の矩形範囲に従って切り出したものが、外観検査のための検索画像となる。そして、黄色コネクタを検査する場合は、カメラ12で撮影される3×5の分割画像のうち、A1に位置する分割画像から座標(234,48)−(529,204)の矩形範囲を切り出し、この切り出された画像に対して、検索画像を図形検索及び色のアルゴリズムによりマッチングし、画素の色の平均値が色判定範囲の条件を満たし、画像一致度が設定値(80%)以上であれば合格とする旨が登録されている。
なお、検査の基準となるワイヤハーネス5を撮影した3×5の基準分割画像のうち、A1の基準分割画像の(284,68)−(479,184)の範囲に検査対象部位である黄色コネクタが写っている場合、理想的には、検査対象のワイヤハーネス5をカメラ12で撮影して得られたA1の分割画像においても、上記と同じ(284,68)−(479,184)の範囲に黄色コネクタが写るはずである。しかしながら、実際には、搬送コンベア4の速度ムラや搬送時の振動、組立図板3の寸法の個体差、カメラ12の撮影タイミングのズレ等が生じるので、基準分割画像と全く同じ位置をカメラ12が正確に撮影できる訳ではない。従って、検査対象のワイヤハーネス5を撮影した場合に、検査対象部位が写る位置に多少のズレが生じることは避けられない。
そこで、本実施形態では、検査の基準となるワイヤハーネス5を撮影して登録してある基準分割画像においてユーザが検査対象部位の範囲を指定した場合、それよりも若干広い範囲が、検査対象のワイヤハーネス5をカメラ12で撮影した画像から検索のために切り出される範囲として自動的に設定されるようになっている。具体的に説明すると、検査責任者は、設定事項の登録プログラムがインストールされたコンピュータを操作し、検査の基準となるワイヤハーネス5を撮影したA1の基準分割画像を画面に表示させた上で、当該基準分割画像において、検査対象部位である黄色コネクタが写っている範囲を矩形枠により指定する。今回指定された範囲は、(284,68)−(479,184)であったとする。コンピュータは、指定された範囲の座標を記憶部36に保存するとともに、A1の基準分割画像から上記の範囲に従って画像を切り出し、検索画像として記憶部36に保存する。これにより、検索画像は、検査の基準となるワイヤハーネス5の黄色コネクタの画像となる。
続いて、コンピュータは、図8の上側で概念的に示すように、ユーザによって矩形枠で指定された検査対象部位の範囲の周囲に所定の大きさのマージンを付加するように、検査時にカメラ12で撮影する画像からの切出し範囲を計算し、得られた切出し範囲の座標を保存する。このマージンの大きさは、上記の撮影位置ズレを吸収できるように、適切な大きさに設定され、本実施形態では、横の両方向に50画素ずつ、縦の方向に20画素ずつとされている。従って、実際の検査時にカメラ12の撮影画像から切り出される範囲は、(234,48)−(529,204)となる。
このように、検査対象のワイヤハーネス5をカメラ12で撮影した画像からは、図8の下側で示すように、ユーザによって指定された範囲そのものではなく、ある程度のマージンを含んで切り出すようになっている。従って、図8の下側に示すように撮影位置ズレが多少生じていても、切り出された範囲に、検査対象のワイヤハーネス5の黄色コネクタの部分が確実に含まれることになる。そして、この切り出された画像から、検査の基準となるワイヤハーネス5の黄色コネクタの画像(検索画像)が検索されるので、検査精度を良好に維持することができる。
次に、上記のように設定された外観検査装置1によって実際に行われる外観検査について説明する。
検査対象のワイヤハーネス5がカメラ12で撮影され、撮影領域が特定された分割画像が得られると、画像検査部35は、図7に示す設定事項に従い、ワイヤハーネス5の検査対象部位について検査を行う。例えば、図7の番号が2の検査項目「青色テープ」については、画像検査部35は、カメラ12で今回撮影したC4の分割画像から、予め設定された切出し範囲(531,163)−(694,270)に従って、画像を切り出す。切出し範囲には上記のとおり適宜のマージンが含まれているので、カメラ12から取得した画像に多少の撮影位置ズレがあっても、検査対象部位(青色テープ)が写っているべき部分を問題なく切り出すことができる。
撮影領域特定部34は、予め基準分割画像から切り出して保存されている、検査の基準となるワイヤハーネス5の青色テープの画像(検索画像)を、検査対象のワイヤハーネス5をカメラ12で撮影したC4の分割画像において切り出された画像から検索する。検査アルゴリズムとして、図形検索と、色判定との組合せが指定されているので、撮影領域特定部34は、上記の検索画像を検索する際に画像一致度を計算するとともに、画像一致部分における画素の色の平均値を調べる。なお、上記した画像の一致度は、2つの画像の大きさの違い、向きの違い、特徴点の数の違い等を総合的に考慮するように、適宜の方法で計算される。そして、画像検査部35は、画像一致度が設定値(80%)以上であり、かつ、画素の色の平均値が色判定範囲を満たしていれば、合格と判定する。色の平均値が色判定範囲を外れているか、画像一致度が設定値未満であれば不合格と判定する。
なお、色の平均値を計算する代わりに、画像一致部分における中心から所定の範囲にある複数の画素のうち色判定範囲を満たす画素の割合を計算し、当該割合が所定の閾値以上であれば、色判定について合格となるように構成しても良い。
以上のような検査を全ての検査項目について行うことにより、ワイヤハーネス5の外観を目視に頼らず正確に検査することができる。なお、カメラ12による撮影(画像の取得)、撮影領域特定部34による撮影領域の特定、画像検査部35による画像の検査は、コンピュータ30によって並列処理されるので、外観検査を効率良く行うことができる。
このように、本実施形態の外観検査装置1は、少ない数のカメラ12で複数の撮影領域を撮影できるとともに、元から設けられている組立図面7の記載内容やハーネス保持部材6の画像を位置認定用画像として、カメラ12の画像データから位置認定用画像を探索することで撮影領域がどこかを特定できるので、簡素な構成の外観検査装置1を提供することができる。また、ワイヤハーネス組立ライン2においてワイヤハーネス5の外観を検査できるので、組立図面7から検査台への載せ替え等の作業を省略でき、効率化を図ることができる。
以上に示すように、本実施形態のワイヤハーネス5の外観検査装置1は、カメラ12と、撮影領域特定部34と、画像検査部35と、を備える。カメラ12は、ワイヤハーネス5がセットされた状態で予め設定された経路に沿って搬送される組立図板3の一部の領域を撮影可能である。撮影領域特定部34は、カメラ12により得られた画像データにおいて、組立図板3に取り付けられた組立図面7の内容の一部を示す画像、及び、組立図板3においてワイヤハーネス5を保持するハーネス保持部材6の画像のうち少なくとも何れかである位置認定用画像を探索することにより、当該画像データに対応する組立図板3の撮影領域を特定する。画像検査部35は、撮影領域が特定された画像データを用いて、ワイヤハーネス5の検査対象部位の外観の合否を判定する。
これにより、カメラ12が撮影した組立図板3の撮影領域を特定するために、撮影部位の位置特定情報を取得するカメラや特別な器具等を新しく設けたり、組立図板3側に特別な図形(マーク等)を付けたりする必要がない。言い換えれば、カメラ12がワイヤハーネス5の検査のために取得する画像自体を、組立図板3のどの領域を撮影したかを特定するために用いることができる。従って、外観検査装置1の簡素な構成を実現することができる。
また、本実施形態のワイヤハーネス5の外観検査装置1において、カメラ12は、当該カメラ12の視野を組立図板3が通過する間に定点撮影を繰り返し行う。撮影領域特定部34は、カメラ12が取得した画像データにおいて前記位置認定用画像を探索し、その探索位置が予め設定した位置であるかその近傍である場合に、当該画像データに対応する撮影領域を特定する。
これにより、カメラ12が固定されていても、当該カメラ12の視野を組立図板3が通過させるようにしながら繰り返し撮影することにより、複数の撮影領域の画像データを得ることができる。また、カメラ12を移動させるための構成(チルトパンカメラやロボット等)を必要としないため、外観検査装置1の簡素な構成を実現できる。
また、本実施形態のワイヤハーネス5の外観検査装置1において、カメラ12は、組立図板3を搬送経路と垂直な向きで複数に分割したそれぞれの領域を撮影できるように複数設けられている。
これにより、大型のワイヤハーネス5を組み付けるための大きな組立図板3にも問題なく対応することができる。
また、本実施形態のワイヤハーネス5の外観検査装置1は、組立図板3の撮影領域ごとに照明条件を変化させることが可能な光源13を備える。
これにより、撮影領域(検査対象部位)ごとに、外観検査に適した様々な照明条件で撮影を行うことができる。
また、本実施形態のワイヤハーネス5の外観検査装置1は、ワイヤハーネス5の検査対象部位に応じた検査アルゴリズムを設定可能な設定部31を備える。
これにより、検査対象部位に応じて適切な外観検査を行うことができる。
また、本実施形態のワイヤハーネス5の外観検査装置1において、カメラ12は、ワイヤハーネス組立ライン2において搬送される組立図板3上で組み付けられたワイヤハーネスを、当該組立図板3から取り外される前に撮影する。
これにより、ワイヤハーネス5の組立てが完了して組立図板3にセットされた状態のままで検査を行うことができる。従って、ワイヤハーネス5を組立図板3から取り外して別の検査台等にセットする作業を省略できるので、作業時間の短縮及び負担の軽減を図ることができる。
次に、上記実施形態の変形例を説明する。図8は、変形例の外観検査装置を示す概略平面図である。なお、本変形例の説明においては、前述の実施形態と同一又は類似の部材には図面に同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。
図9に示す変形例は、上記の実施形態の外観検査装置1のカメラ12では撮影が難しいワイヤハーネス5の部位を、検査担当の作業者がポータブルカメラ(撮影部)22を用いて手作業で撮影して検査することで、外観検査の柔軟性を高めるものである。
ポータブルカメラ22は、作業者が手で持って自由に移動できる小型のカメラであり、前述のコンピュータ30に対して図略のケーブルによって接続される。なお、ポータブルカメラ22とコンピュータ30とを無線接続しても良く、この場合はより機動的に撮影を行える点で好ましい。
このポータブルカメラ22は図示しない小型のディスプレイ(表示部、指示部)を備えており、コンピュータ30からの指令に応じて、作業者に撮影の向き等を指示するメッセージを表示させることができる。なお、ディスプレイに代えて、あるいはそれに加えて、音声で作業者に指示するスピーカー(指示部)等をポータブルカメラ22が備えるようにしても良い。
本変形例において、外観検査装置1の下流側には、作業者に撮影場所を指示するためのマトリクス照明装置(撮影指示光源)23が設置されている。このマトリクス照明装置23は、組立図板3のほぼ全域を覆うようにマトリクス状に配置された多数のスポット照明を備えている。マトリクス照明装置23は、長円状に形成された走行経路を、電動モータ等のアクチュエータにより走行することができる。マトリクス照明装置23の走行速度は、ワイヤハーネス組立ライン2において組立図板3が搬送される速度と等しくなるように設定されている。
マトリクス照明装置23の走行は搬送コンベア4による組立図板3の搬送と連動するように制御されているので、マトリクス照明装置23は、ワイヤハーネス5がセットされた組立図板3と並走するようにして、同一の速度で走行することができる。一定の区間を組立図板3と並走した後、マトリクス照明装置23は戻り経路を戻り、次に搬送されてくる組立図板3と並走する。
組立図板3との並走区間において、マトリクス照明装置23はスポット照明を選択的に点灯させることで、組立図板3上のワイヤハーネス5の特定の部位を明るく照らす。これにより、当該部位を撮影するように作業者に分かり易く指示することができる。なお、ワイヤハーネス5の特定の部位をピンポイントで照らすことができるように、マトリクス照明装置23は十分に小さな照明を多数並べて備えた構成とすることが好ましい。
作業者は、スポット的に照らされたワイヤハーネス5の部位を、指示された向きで、ポータブルカメラ22を用いて撮影する。当該部位の撮影が完了すると、マトリクス照明装置23はワイヤハーネス5の別の部位を照らして撮影を指示する。以上の繰返しにより、ワイヤハーネス5の複数の部位をポータブルカメラ22で撮影することができる。ポータブルカメラ22で撮影した画像データはコンピュータ30に送られ、(上記の実施形態でカメラ12が撮影した画像データと同様に)撮影領域特定部34によって撮影領域が特定され、画像検査部35によって検査される。
なお、ワイヤハーネス5の複数の撮影部位をマトリクス照明装置23で指示するにあたっては、作業者の手の動きが最小になるように指示の順番を考慮することが好ましい。また、ポータブルカメラ22を向けることが困難な部位についてはある程度の余裕時間を確保する等、作業者への指示のタイミングについても考慮することが好ましい。
以上に説明したように、本変形例の外観検査装置においては、ポータブルカメラ22は作業者が持ち運び可能に構成される。また、変形例の外観検査装置は、組立図板3の撮影領域を作業者に指示するためのマトリクス照明装置23を備える。
これにより、定点的な撮影を行う構成(上記のカメラ12)では撮影しにくい横向きや下向きの部位についても、ポータブルカメラ22によって柔軟に検査することが可能になる。また、作業者は、ポータブルカメラ22で撮影すべき場所をマトリクス照明装置23により的確に理解することができる。
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
カメラ12から取得した画像について、図6(d)で説明したようなトリミング処理を特に行わないようにしても良い。この場合、隣り合う分割画像同士がある程度の重複を有することになる。
画像検査部35が分割画像から基準画像を検索するときに、作業者が予め設定部31で設定した検索範囲から検索するように構成しても良い。これにより、検査時間の短縮を図ることができる。
上記の実施形態では組立図板3上の領域を3×5に分割しているが、本発明はこれに限定されない。即ち、組立図板3上の領域をどのように分割するかは、カメラ12の視野の広さや組立図板3の大きさ等を考慮して任意に設定することができる。
変形例において、マトリクス状照明は、長円形の経路を搬送されるように構成されている。しかしながら、マトリクス状照明が直線状のルートを往復するように構成しても良い。
上記実施形態の外観検査装置は、長円状かつ無端状のコンベアによって組立図板が搬送される場合に限定されない。例えば、運搬台車等の移動手段によって組立図板が搬送されるように構成しても良い。