JP6733095B2 - 魚類の保存方法 - Google Patents

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Description

本発明は、魚類の保存方法に関する。より詳しくは海水魚の外傷回復および体重減少抑制保存方法に関する。
捕獲した魚を直ちに出荷しない場合、出荷するまでの期間生きたまま保存することが行われている。魚を保存する場合、経済的理由から、収容密度を高めて保存することが望ましいが、収容密度を高めると、(1)1匹あたりの溶存酸素量が減少し、(2)アンモニアなどの有害物質の排出も増加する、などの問題がある。そこで魚艙において低水温で保存することで基礎代謝を下げることにより、酸素消費を抑制でき、より多くの魚を保存できる方法が報告されている(非特許文献1)。また、通常保存の場合は給餌しないため、温度が高いほど基礎代謝が高まり体重減少が起きるという問題がある。また、漁獲時に生じた外傷が化膿する等の原因となる細菌は水温が高いほど増殖が速いため、水温を13〜17℃の低温で保存することで基礎代謝を下げ、体重減少を抑制すると同時に、外傷の悪化等を防ぐ方法が一般的に用いられている。
一方、捕獲または養殖時に網や魚同士の接触などで魚が外傷を負う場合があり、それにより保存中に魚が高頻度で死亡するという問題があった。海水魚の外傷回復には低塩分濃度(希釈海水中)での飼育が有効であることが知られている(特許文献1)が上記の低温保存では、外傷回復に時間がかかるため、そもそも、外傷回復して商品価値が回復するまでに長期間かかってしまい、さらに、傷口に細菌が繁殖・侵入して化膿し外観が悪化し、死亡のリスクが上昇するという問題があった。
さらに、捕獲された天然魚の場合、外傷が回復した方が餌付きやすいが、餌を食べない期間が長くなるほど餌付きは悪くなり、結果的に生残率(歩留まり)も低下する。そのため、外傷回復後の海水魚を養殖する場合は、外傷回復期間の短縮化が求められていた。
そこで、外傷を持つ海水魚の保存時に魚の体重減少などの問題を抑制しつつ、外傷回復を促進し、さらに餌付きをよりよくし、養殖の歩留まりを改善する保存方法が求められていた。
特開2012−200167号公報
福島県水試研報第2号、第65頁〜第73頁(昭和49年4月)
海水魚の外傷回復を促進しつつ、体重減少を抑制する保存方法を提供する。
本明細書によれば、以下の発明が提供される。
(1)海水魚の外傷回復及び保存方法であって、海水魚を、塩分が0.9%以上3.0%以下であって、且つ水温が18℃以上27℃以下の飼育水で保存する、海水魚の外傷回復方法及び保存方法。
(2)前記海水魚の魚種がスズキ目、フグ目、又はカレイ目であることを特徴とする、請求項1に記載の海水魚の外傷回復方法及び保存方法。
(3)海水魚の外傷回復及び保存方法であって、海水魚を、塩分濃度が0.9%以上1.5%以下であって、且つ水温が18℃以上25℃以下の飼育水で保存する、海水魚の外傷回復方法及び保存方法。水温は18℃以上25℃以下の条件でより外傷回復効果が高かった(実施例1、実施例4、実施例5)。塩分濃度は0.9%以上1.5%以下がより体重減少抑制効果および外傷回復効果が高かった(実施例2、実施例3、実施例4)。
(4)海水魚の外傷回復及び保存方法であって、海水魚を、塩分濃度が1.1%以上1.5%以下であって、且つ水温が18℃以上25℃以下の飼育水で保存する、海水魚の外傷回復方法及び保存方法。実施例3により、15℃以上27℃以下で塩分3.2(海水の塩分濃度)より塩分1.1%の方で体重減少が抑制される。また、実施例1により、塩分1.1%でも1.5%でも外傷回復が水温10℃以上25℃以下において水温が高いほど外傷回復が促進されたことから、少なくとも、塩分1.1%以上1.5%以下であって、且つ水温18℃以上25℃以下の飼育水では体重減少抑制と外傷回復促進が実現できる。この範囲で実施した実施例4で効果を確認した。
(5)海水魚の外傷回復及び保存方法であって、海水魚を、塩分濃度が1.5%であって、且つ水温が21℃の飼育水で保存する、海水魚の外傷回復方法及び保存方法。外傷回復と体重減少の両方の効果が最も高かったのは、実施例4では水温21℃、塩分濃度1.5%であった。
本発明の方法によれば、海水魚を出荷するまでの一定期間保存する間に、体重の減少を抑制することができる。外傷を有する海水魚の場合は体重減少を抑制しつつ外傷回復を促進することができる。これらのことによって、保存中の魚の価値を高く維持でき、また、天然魚を種苗とした養殖で高い歩留まりを実現できる。
塩分1.5%でウマヅラハギを10、15、20、25℃で2日間保存した場合の外傷回復速度を示すグラフである。 塩分1.1%でオニオコゼを10、15、20、25℃で2日間保存した場合の外傷回復速度を示すグラフである。 塩分3.2%と1.1%の飼育水で5日間保存したカサゴの水温別の体重減少率を示すグラフである。 水温20℃、塩分1.1%で8日間保存したときの正常個体と悪化個体別の外傷指数を示すグラフである。 種々の水温・塩分におけるマダイおよびウマヅラハギの保存結果を示すグラフである。
通常漁獲魚を保存する場合、高密度で保存するために水質悪化を防止する意味で給餌しないか、与えたとしてもごく少量の給餌しかしないため、保存中の体重減少が問題となる。本発明は、海水魚を低塩分の飼育水中で保存することにより、該海水魚の体重を増加させ、または体重減少を抑制することを特徴とする。これは、海水魚を低塩分の飼育水中で保存することにより、体重が増加し、または体重減少が抑制されることの発見に基づく。
本発明の低塩分保存による体重の増加、または体重減少の抑制のメカニズムとしては、まだ十分解明されているとは言えないが、原因のひとつとして、低塩分中では浸透圧調節のエネルギーが少なくなるために、体重減少を抑制できる可能性が考えられる。
本明細書における、「保存」とは、海水魚を出荷するまでの一定期間、体重の減少等による品質劣化を抑制しながら生きたままの状態で保持することを目的とした飼育をいい、外傷を有する海水魚の外傷回復のための飼育も含まれる。保存の場合、通常は餌を与えない無給餌であるが、成長(体重の増加)を目的とする給餌よりも少ない量を給餌することも可能である。本明細書において、成長を目的とする給餌よりも少ない量の給餌を「低給餌」という。低給餌は、基礎代謝を賄うための餌量を超えない量である。すなわち、本発明の保存は、無給餌、または低給餌の条件で行われるのが好ましい。ただし、外傷が回復した後は成長を目的とした給餌を行い、養殖してもよい。
本明細書における、「飼育水」とは、海水魚を保存するために使用する、塩分を含んだ水をいう。本発明における飼育水の塩分は、例えば、海水を真水で希釈する方法、市販の人工海水を真水に溶かす方法等により調製することが可能である。また、塩分を含む地下水をそのまま、あるいは真水で希釈することによって調製することができる。
本発明における「海水」とは、海洋大辞典(和達清夫監修東京堂出版、1987年)に示される物性に代表されるものであり、特に、塩分が3.0〜3.4%で、アンモニアや遊離塩素、重金属類等が海水魚に悪影響を及ぼす濃度よりも低いものをいう。
本発明における「地下水」とは、ボーリング工事等により地表面より下から採取された水であり、重金属類等が海水魚に悪影響を及ぼす濃度よりも低く、酸素等が海水魚の生育にとって十分溶存されてあるものをいう。
また、この海水の希釈等により塩分調整された飼育水も同様の水質が担保されていなければならない。
さらに、保存中に、アンモニア等の物質が海水魚に悪影響を及ぼすようになる場合には、水質維持・改善を行わなければならない。
この水質維持・改善方法は問わないが、例えば、水温と塩分を調整した飼育水をかけ流す方法、生物濾過槽や泡沫分離装置等により飼育水を浄化・循環させる方法等があり、保存する魚の量と水質および費用を考慮しながら適宜選択することができる。
本発明が適用される魚類としては、海水魚であれば特に制限されないが、好ましくは養殖用種苗として利用される魚を含む漁獲魚または養殖魚であり、外傷を有する海水魚である。生活の主たる生息域が、温帯(生物学辞典、岩波書店、1972年)の汽水域を含む海である硬骨魚類が好ましく用いられる。また、低塩分条件で死亡しにくい海水魚が好ましく用いられる。海水魚としては、例えば、スズキ目、フグ目、カレイ目、ニシン目などが挙げられるがこれらに限られない。スズキ目としては、例えば、マダイ、オニオコゼ、キジハタ、クロメバル、カサゴ、クロマグロ、ブリ、マアジ、マサバなど、フグ目としては、例えば、トラフグ、カワハギ、ウマヅラハギなど、カレイ目としては、例えば、マガレイ、マコガレイ、ホシガレイ、ヒラメなど、ニシン目としては、例えばカタクチイワシ、キビナゴ、ニシン、マイワシなどが挙げられるが、これらに限られない。
本明細書における「外傷」とは、体表のうち、表皮、真皮および筋肉のいずれかが物理的に損傷を受けたもののことをいう。このような外傷は、定置網、まき網、すくい網、船ひき網、底引き網、刺し網などによる漁獲や養殖場での採捕、輸送を含む高密度飼育時の魚同士の接触などにより発生する。骨折や内臓の損傷などは「外傷」には含まない。
このような外傷は、組織切片を作成することで確認することができる他、例えば1%濃度のフルオレセインナトリウム水溶液で染色することができるため、魚を生かしたまま簡便に確認できる。
本発明における「外傷回復」とは、物理的に損傷を受けた表皮および真皮、筋肉の一部が再生された表皮によって完全に覆われる状態までを指し、鱗の再生や真皮の再生までを指すものではない。
また、病原性のある一部の寄生虫や細菌などの感染により表皮と真皮の一部に損傷を受ける場合もあるが、本発明の方法のみでは、これらの寄生虫や細菌感染に対して直接的に効果を示すものではない。そのため、感染中においては死亡などの症状を緩和することはできても、寄生虫や細菌の感染が取り除かれた後でなければ外傷を完全に回復することはできない。
表皮層が外傷を覆うことで、真皮層や筋肉が受ける浸透圧ショックは緩和されるため、以降、通常の海水に戻しても血中のナトリウムやカリウム濃度が上昇することによって死亡することはなく、また、化膿などによる外観悪化も起こりにくくなる。
このような外傷回復では、外傷周辺部の表皮細胞が徐々に外傷部を覆うように回復し、外傷回復終期には外傷の中心部だけが残っている。
外傷回復がなされたか否かについては、組織切片を観察することで判断できる他、簡便には、1%フルオレセインナトリウム溶液で染色されなくなった状態をもって判断できる。
ただし、稀に瘡蓋様組織が覆ったまま外傷の回復が進むことがあるが、この場合、瘡蓋様組織が1%フルオレセインナトリウム溶液で染まるため、瘡蓋層下の表皮再生状況がわからない。そのため、この方法によって外傷回復状態を簡便に判断することができない。しかし、肉眼で確認できるような瘡蓋様組織が形成されているのであれば、外傷が回復された状態と同様に通常の海水に戻しても血中のナトリウムやカリウム濃度が上昇することによって死亡することはなく、また、化膿等による外観悪化も起こりにくい。
本発明の保存期間は、上記手段等により外傷が回復したことを確認することによって決定される。また、簡便には魚が負っている外傷の大きさと飼育水温によって推定できる。
本明細書において、「外傷回復を促進」とは、外傷が回復するまでの期間を短縮することをいう。外傷が回復するまでの期間が短縮されることにより、細菌や寄生虫感染、化膿などのリスクを低減することができる。また、給餌しない期間も短縮されるため、餌付きが良くなるという効果も有する。
通常、捕獲魚を高密度で保存する場合、水質悪化を防止するために給餌しないが、本発明においては外傷回復期間が短縮されるため、通常よりも早期に給餌を開始することができる。給餌しない外傷回復期間が短縮されるために回復後の餌付きが良くなり、その後の養殖の歩留まりが向上するという効果が得られる。
なお、実施例に示すように、本願発明によれば、塩分濃度0.9〜3.0%、かつ、水温18℃〜27℃の範囲においては、外傷回復促進かつ体重減少抑制効果を示す。この塩分濃度および水温の範囲内であれば、どの塩分濃度および水温範囲で区切ってもそれなりの外傷回復促進かつ体重減少抑制効果を奏するものである。
塩分濃度については、0.9%以上3.0%以下が好ましく、この濃度範囲内であればどの濃度で区切ってもそれなりの効果を奏する。そのような濃度の上限としては、例えば、2.9%以下、2.8%以下、2.7%以下、2.6%以下、2.5%以下、2.4%以下、2.3%以下、2.2%以下、2.1%以下、2.0%以下、1.9%以下、1.8%以下、1.7%以下、1.6%以下、1.5%以下が挙げられる。濃度の下限としては、例えば、1.0%以上、1.1%以上、1.2%以上、1.3%以上、1.4%以上が挙げられる。
保存する水温については、18℃〜27℃が好ましく、この温度範囲内であればどの温度で区切ってもそれなりの効果を奏する。そのような温度の上限としては、例えば、26℃以下、25℃以下、24℃以下、23℃以下、22℃以下が挙げられる。温度の下限としては、例えば、19℃以上、20℃以上、21℃以上が挙げられる。
以下に、実施例を用いて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら制限されるものではない。
(実施例1)
塩分1.5%環境下でウマヅラハギ(フグ目)、および、塩分1.1%環境下でオニオコゼ(スズキ目)を10、15、20、25℃で2日間保存した場合の外傷回復速度をそれぞれ図1および図2に示した。なお、外傷はハサミにより表皮と真皮の一部を切除し、その後、1%フルオレセインナトリウム溶液に染色される面積の減少から外傷回復速度を求めた。
このとき、オコゼとウマヅラハギ間の外傷回復速度の差は大きくなく、いずれも、10℃でおよそ0.5mm/d、15℃で1mm/d、20℃で2mm/d、25℃で3mm/dであった。
この結果から、例えば直径1cmの外傷を負った海水魚を20℃で外傷回復させる場合、外傷回復は3日以内に完了すると推定できる。
なお、別に水温28℃で実施したウマヅラハギの外傷回復実験では死亡が観察され、28℃以上の水温では、別の死亡リスクが高まることが推察された。そのため、本発明の外傷回復は魚種にもよるが、27℃以下の水温で行うのが好ましい。
本発明の保存は、塩分0.7〜2.5%の範囲内において、低いほど体重減少抑制効果が大きい。以下に、マダイ(スズキ目)とクロメバル(スズキ目)を様々な塩分条件で保存した時の体重減少率を求めた実施例2を示した。
(実施例2)
マダイおよびクロメバルを各3尾ずつ、海水の希釈により7段階の塩分、および20℃に調整された飼育水で4日間無給餌保存した際の平均体重減少率を表1に示した。体重減少抑制効果は、((塩分3.2%の体重減少率−試験区塩分の体重減少率)/塩分3.2%の体重減少率×100)により算出した。
Figure 0006733095
飼育水の塩分が通常の海水と等しい3.2%と比較して、塩分2.5%では、14〜25%、塩分2.0%では36〜37%、塩分1.6%では36〜60%、塩分1.2%では65%〜129%、塩分0.8%では424〜459%、塩分0.7%では493%の体重減少抑制効果がみられた。特に、塩分1.2%ではマダイ、クロメバルともに体重が増加する個体がみられ、それ以下ではすべて体重が増加した。
ただし、マダイについては、塩分0.7%では3尾とも死亡し、塩分0.8%でも2尾死亡した。マダイについては、魚類の血中塩分濃度であるおよそ0.9%より低い飼育水中では死亡のリスクが高まると言える。
また、試験終了後の魚の水分量を測定したところ、体重が増加した一部の区の水分量が他の区と比較して有意に高かったため、体重増加の原因の一部は体水分の増加にあると推察された。
体重減少抑制効果は、水温の影響をほとんど受けない。このことをカサゴ(スズキ目)で確認した実施例3を以下に示す。
(実施例3)
塩分3.2%の海水および塩分1.1%となるように水道水で希釈した海水を4段階の水温に調整し、5日間カサゴを各10尾ずつ保存した際の平均体重減少率を求め、図3に示した。
少なくとも15〜27℃の範囲で飼育水塩分によらず、水温が高くなるにつれて体重減少は増加したが、塩分濃度を3.2%から1.1%に低下させることで、いずれの水温でも体重減少率を、1.4〜2.6%低下させることができた(図3)。また、いずれの試験区でも魚に異常は見られなかった。
また塩分3.2%と1.1%の試験区についてそれぞれ線形補完して解析したところ、塩分1.1%での体重減少率は塩分3.2%と比較して約1.5倍の水温に上昇させても同等の体重減少抑制効果を得ることができることがわかった。
このことから、例えば、水温13℃の海水で保存する従来技術と比較して、本発明の保存方法のうち水温18℃、塩分1.1%では、ほぼ同等の体重減少抑制効果を維持しながら、およそ2倍程度(面積換算で4倍程度)の外傷回復速度を得ることができる。
同様に、例えば、水温17℃の海水で保存する従来技術と比較して、塩分1.1%を用いた本発明の保存方法では、水温18〜24℃において、ほぼ同等かそれ以上の体重減少抑制効果を維持しながら、最大で2倍程度(面積換算で4倍程度)の外傷回復速度を得ることができる。
本発明の保存方法は、複数の魚種を一度に同じ水槽で処理することが可能であり、外傷が回復した個体については、海水に直接移動しても死亡せず、また、外傷も悪化しない。このことについて確認した実施例4を以下に示す。
(実施例4)
およそ直径1cmの表皮と真皮の一部をハサミにより切除した、オニオコゼ、カサゴ、マダイを、従来技術(水温17℃、塩分3.4%)と、本発明技術(平均水温21℃、塩分1.5%)で3日間同じ水槽で保存した場合の外傷個体/試験個体と体重減少率を比較し、表2にまとめた。この間、水槽の飼育水は生物ろ過槽と循環させることで水質を維持した。また、外傷が回復したオニオコゼ、カサゴを13、15、17℃の海水に、マダイを13℃および17℃の海水にそれぞれ1尾ずつ移動させ5日間観察した。
なお、保存は、海水を水道水で希釈した飼育水を用い、すべての魚を600L水槽に入れ、500Wのヒーターとサーモスタットを用いて水温を保持しながら、生物濾過槽を介した循環により水質を維持しながら行った。
Figure 0006733095
従来技術で保存された魚については、外傷が完治した魚がなかった一方、本発明により保存された魚は、カサゴの3尾中1尾を除いてすべて回復していた。同時に、カサゴ、マダイでは、体重減少率は両方法に差がほとんど無かった。また、オニオコゼでは本発明技術の方でより体重が増加していた。
また、13〜17℃の海水に移動したすべての海水魚で死亡や外傷の悪化は見られなかった。
本発明の保存方法で外傷を回復させた海水魚を使って養殖することで、高い歩留まりを実現できる。このことを確認した実施例5を以下に示す。
(実施例5)
定置網で漁獲されたウマヅラハギ216尾、56.4kgを、水温18〜19℃、塩分1.6〜1.7%の飼育水で7日間、保存した。この間、泡沫分離装置(VL−3D、JAPAN DISTRIBUTER −OCEAN EARTH−)により水質を維持した。その後、海面生け賓に移動させ、給餌しながら養殖した。対象として、定置網で漁獲されたウマヅラハギ937尾、161kgを海面生け賓に収容し、給餌しながら養殖した。
78日後に生残率を比較したところ、漁獲から直接収容後に給餌しながら養殖した区の生残率が89.4%であったのに対し、外傷回復後に給餌しながら養殖した区では99.0%と高かった。
本発明の保存方法のみでは、横転、鰓蓋運動の弱化等の症状が現れている瀕死魚に対しては外傷回復効果を発揮しない。また、外傷部に細菌等が侵入し化膿している場合は外傷回復効果を発揮しない。また、外傷部に病原性の高い細菌や寄生虫が侵入し発病している場合は外傷回復効果を発揮しない。
さらに、本発明の保存方法のみでは、外傷が大きすぎる個体については十分な外傷回復効果を得ることができない。このことについて確認した実施例6を以下に示した。
(実施例6)
12尾のオニオコゼ(体重103.2〜199.2g)にハサミで3.1〜31.6cmの外傷を負わせた。その後、水温20℃、塩分1.1%で8日間保存した。この間、水槽の飼育水は生物ろ過槽と循環させることで永質を維持した。その後、15℃の海水に移槽させ3日間観察した。
8日間の保存後、外傷部が正常に回復傾向にあった個体(以下、正常個体)と悪化傾向にあった個体(以下、悪化個体)別に、ハサミでつけた外傷の面積(cm)を体重(g)で除し100を乗じた値(以下:外傷指数)を求めた。これを個体ごとにプロットしたものを図4に示した。なお、保存中に死亡した個体はいなかった。
外傷指数が10以下ではすべて正常個体であったが、10以上では浮腫や外傷部の化膿が観察される悪化個体が現れた。外傷指数が10〜20では50%の個体が悪化個体であった。
保存後、15℃、3.2%の海水に移槽し、3日間観察したところ、正常個体が悪化個体に変わることはなく、悪化個体も悪化傾向のままであった。
本発明の技術によって保存された海水魚の味や風味、食感は従来技術と比較して差がみ
られない。このことについて確認した実施例7を以下に示す。
(実施例7)
18℃の海水(塩分3.3%)および海水を水道水で希釈した飼育水(塩分1.1%)でオニオコゼおよびキジハタ(スズキ目)を7日間保存した。その後、これらの魚を刺身にし、生臭さ、うまみ、水っぽさ、弾力、おいしさについて比較した。比較者は32〜60歳の15人であった。比較者は、事前の保存方法についての情報は与えられず、AおよびBの刺身についての比較として、Aがかなり強い、Aがやや強い、差が無い、Bがやや強い、Bがかなり強い、の5段階で各項目評価した。
それぞれの回答について構成比率(%)で示した結果をオニオコゼについて表3に、キジハタについて表4に示した。
Figure 0006733095
Figure 0006733095
オニオコゼおよびキジハタのいずれも項目についても従来技術と本発明との間に有意な差は見られず、味や風味、食感に差が無いことが示された。
(実施例8)
供試魚は体長94〜104mmのマダイ(養殖魚)で、各試験区あたり3尾ずつ用いた。水温17〜18℃に制御した塩分2.0%および3.1%の飼育水で、試験開始0、5、11日目に体重測定して減少率を比較した。結果を表5に示す。
Figure 0006733095
表5に示すように、5、11日目いずれにおいても、マダイの体重減少率は塩分3.1%と比較し、2.0%の方で小さかった。
(実施例9)
供試魚は231〜450gのヒラメ(養殖魚)を、塩分1.1%および3.2%の各試験区あたり3尾ずつ用いた。水温は、15℃から6時間かけて20℃に上昇させた。その後は20〜23℃の範囲で維持し3日間(温度上昇期間の6時間を含む)保存した。体重測定は、実験開始前と3日目に個体別に行った。その結果を表6に示す。
Figure 0006733095
表6に示すように、塩分3.3%では平均4.44%体重が減少していたが、塩分1.1%では、平均で0.27%体重が増加していた。従ってヒラメについても低塩分飼育水での保存が体重減少抑制に有効であることが示された。
(実施例10)
およそ直径1cmの表皮と真皮の一部と鱗をハサミにより除去したマダイ(スズキ目)を、表7に示すとおり、水温28℃−塩分0.9%、水温28℃−塩分3.0%、水温27℃−塩分0.8%、水温27℃−塩分0.9%、水温27℃−塩分3.0%、水温27℃−塩分3.3%、水温18℃−塩分0.8%、18℃−塩分0.9%、18℃−塩分3.0%、18℃−塩分3.3%、17℃−塩分0.9%、17℃−塩分3.0%の12とおりに調整した飼育水でそれぞれ4尾ずつ保存した。
2日後のマダイの死亡尾数、体重減少率、および、外傷残存個体の確認を行った結果を、表7に示した。
Figure 0006733095
表7に示すとおり、水温18℃−塩分0.8%では、保存1日後に3尾死亡した。水温28℃−塩分0.9%、水温28℃−塩分3.0%、水温27℃−塩分0.8%、水温27℃−塩分3.3%、水温18℃−塩分0.8%、18℃−塩分3.3%、17℃−塩分0.9%、17℃−塩分3.0%では、外傷が残存している個体が見られた。特に、水温18℃−塩分0.8%、水温27℃−塩分0.8%、18℃−塩分3.3%、17℃−塩分0.9%では、残存した外傷が大きい傾向にあった。一方、水温27℃−塩分0.9%、水温27℃−塩分3.0%、18℃−塩分0.9%、18℃−塩分3.0%では、死亡、外傷の残存が見られず、体重の減少も従来技術である塩分3.3%での保存と比較して小さかった。
(実施例11)
およそ直径1cmの表皮と真皮の一部をハサミにより除去したウマヅラハギ(フグ目)を、表8に示すとおり、水温28℃−塩分0.9%、水温28℃−塩分3.0%、水温27℃−塩分0.8%、水温27℃−塩分0.9%、水温27℃−塩分3.0%、水温27℃−塩分3.3%、水温18℃−塩分0.8%、18℃−塩分0.9%、18℃−塩分3.0%、18℃−塩分3.3%、17℃−塩分0.9%、17℃−塩分3.0%の12とおりに調整した飼育水でそれぞれ3尾ずつ保存した。
6日後の死亡尾数、体重減少率、および、外傷残存個体の確認を行った結果を、表8に示した。
Figure 0006733095
表8に示すとおり、水温28℃−塩分0.9%、水温28℃−塩分3.0%、水温27℃−塩分0.8%、水温27℃−塩分3.3%、水温18℃−塩分0.8%、17℃−塩分0.9%では、死亡個体が見られた。17℃−塩分0.9%、17℃−塩分3.0%では、外傷が残存している個体が見られた。一方、水温27℃−塩分0.9%、水温27℃−塩分3.0%、18℃−塩分0.9%、18℃−塩分3.0%、18℃−塩分3.3%では、死亡、外傷の残存が見られなかった。ただし、従来技術である18℃−塩分3.3%での保存は、18℃−塩分3.0%での保存と比較して体重減少率が大きかった。
以上の結果をまとめると、図5のようなマトリックスとなる。すなわち、マダイの場合、塩分濃度が0.8%では死亡個または外傷が残存している個体が見られた。塩分濃度3.3%では外傷が残存している個体が見られた。温度17℃および温度28℃では外傷が残存している個体が見られた。すなわち、塩分濃度0.9〜3.0%、かつ、水温18℃〜27℃の外側の範囲では、外傷回復促進かつ体重減少抑制効果を奏さない場合があることが明らかとなった。
ウマヅラハギの場合は、塩分濃度が0.8%では死亡個体が見られた。塩分濃度3.3%では死亡または体重が減少する個体が見られた。温度17℃では、死亡または外傷が残存している個体が見られた。温度28℃では、死亡する個体が見られた。ウマヅラハギの場合も、塩分濃度0.9〜3.0%、かつ、水温18℃〜27℃以外の範囲では、外傷回復促進かつ体重減少抑制効果を奏さない場合があることが明らかとなった。
本発明は、水産業、水産加工業、流通業、飲食業などにおいて利用できる。

Claims (2)

  1. 海水魚の外傷回復を促進しつつ、体重減少を抑制する保存方法であって、
    外傷を有する海水魚を、塩分が0.9%以上3.0%以下であって、且つ水温が18℃以上27℃以下の飼育水で保存する工程を含む、方法
  2. 前記海水魚の魚種がスズキ目、フグ目、又はカレイ目であることを特徴とする、請求項1に記載の方法
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