JP6730503B1 - 銅張積層板 - Google Patents
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かかる銅張積層板として本発明者らは特許文献1において、「銅層、白色層、接着層および熱伝導率が200W/m・K以上の高熱伝導基板をこの順に有し、前記白色層がオルガノポリシロキサンのマトリックス中に、BN、ZrO2、SiO2、CaF2、ダイヤモンドのうちいずれか1種または2種以上のフィラーを有する組成であり、前記接着層が熱硬化性樹脂である銅張積層板」を開示した。
しかし、この特許文献1の銅張積層板は、白色層と高熱伝導基板との間に熱硬化性樹脂である接着層(典型的にはエポキシ樹脂層)を有することから、銅層および白色層から高熱伝導基板への放熱性が十分とは言えなかった。
すなわち、シリコーンゴムは二次元鎖状構造であるから、三次元網目構造であるシリコーンレジンと比較して、分子構造上絶縁膜中に雰囲気中の水分子等の分子が侵入しやすい。時間経過とともに、侵入した分子がシロキサン結合を切断したり、フィラーを分解したりするなどして劣化し、単位厚さあたりの耐電圧が維持できなくなる。一般的に耐電圧は、膜厚にかかわらず4kV以上が必要とされているところ、シリコーンゴムを用いる場合であっても、膜厚を厚くすれば4kV以上の耐電圧は達成可能である、しかし、シリコーンゴムやシリコーンレジンなどのシリコーン樹脂の熱伝導率は、銅やアルミニウムなどの金属材と比較して2〜3桁程度低いために、厚くするほど放熱性が大きく低下する。
近年、特にパワー半導体等では、放熱性能を確保するために、単位厚さあたりの耐電圧が高く、かつ膜厚の薄い絶縁層を有した銅張積層基板が求められている。放熱性と耐電圧とを両立させるには、単位厚さあたりの耐電圧を高くする必要あるが(図4参照。右上ほど、ハイスペック。)、シリコーンゴムは前述のとおり、時間経過と共に耐電圧が低下するため、放熱性と耐電圧とを両立させることが困難である。
(1)
銅層、絶縁層および基板をこの順に有し、
前記絶縁層は、メチル基およびエチル基が全体の官能基のうち80%以上を占めるシリコーンレジンのマトリックス中に、平均粒径が2.0μm以下である無機フィラーが分散した組織を有し、
前記絶縁層が前記銅層と前記基板にそれぞれ直接接合されており、耐電圧がAC70kV/mm以上、DC130kV/mm以上である、銅張積層板。
(2)
銅層、絶縁層および基板をこの順に有し、
前記絶縁層は、メチル基およびエチル基が全体の官能基のうち90%以上を占めるシリコーンレジンのマトリックス中に、平均粒径が2.0μm以下である無機フィラーが分散した組織を有し、
前記絶縁層が前記銅層と前記基板にそれぞれ直接接合されている、銅張積層板。
(3)
銅層、絶縁層および基板をこの順に有し、
前記絶縁層は、メチル基が全体の官能基のうち90%以上を占めるシリコーンレジンのマトリックス中に、平均粒径が2.0μm以下である無機フィラーが分散した組織を有し、
前記絶縁層が前記銅層と前記基板にそれぞれ直接接合されている、銅張積層板。
また、本発明の銅張積層板において絶縁層は、メチル基およびエチル基が全体の官能基のうち80%以上を占めるシリコーンレジンのマトリックス中に無機フィラーが分散した組織を有することから、特許文献2に開示されているシリコーンゴムや特許文献3に開示されている硬化性メチルフェニルシリコーン樹脂を用いた場合と比較して、単位厚さあたりの耐電圧を高く維持できる。具体的には膜厚1mmあたりの耐電圧は、AC70kV/mm以上、DC130kV/mm以上を維持できる。
すなわち本発明における絶縁層は、メチル基およびエチル基が全体の官能基のうち80%以上を占めるシリコーンレジンをマトリックスとしているため、分子構造上の隙間が形成されにくい。その隙間から水分子などが侵入しにくいため、分子(特に水分子)の侵入に起因する劣化が生じにくい。なお、この働きは、官能基に対してメチル基の占める割合が大きいほど高くなり、メチル基が90%以上であればより顕著となる。
以上より、本発明の銅張積層板によれば、放熱性と耐電圧とを両立させることができる。
図1に、本発明の一実施形態である銅張積層板の製造方法の一例を模式的に示している。
絶縁塗料の塗布方法(コーティング方法)は、ディップコート法、スクリーン印刷法、溶液滴下法、印刷法、ロール・ツー・ロール法、スピンコート法、転写法、バーコート法、スキージ法、インクジェット法などが挙げられるが、絶縁塗料を塗布できれば塗布方法は限定されない。乾燥する温度は20〜200℃であることが好ましく、より好ましくは100〜180℃である。
なお、絶縁層2のマトリックスを、メチル基およびエチル基が全体の官能基のうち90%以上を占めるシリコーンレジンとするには、前述の絶縁塗料の原料となるシリコーンレジンに含まれるアルキル基の90%以上をメチル基およびエチル基とすればよい。また、絶縁層2のマトリックスを、メチル基が全体の官能基のうち90%以上を占めるシリコーンレジンとするには、前述の絶縁塗料の原料となるシリコーンレジンに含まれるアルキル基の90%以上をメチル基とすればよい。
いずれの場合も、前述の絶縁塗料の原料となるシリコーンレジンの平均分子量は、2500〜30万程度とすることができる。
室温で固体であって、官能基として炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜5のアルキル基(ただし、アルキル基の90%以上がメチル基)、およびヒドロキシル基を有する、重量平均分子量Mw=3000のシリコーンレジン12質量部、D50=0.7μmのZrO2フィラー70質量部、1−ブタノール18質量部を混合し、絶縁塗料(A)を得た。
室温で固体であって、官能基として炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜5のアルキル基(ただし、アルキル基の90%以上がメチル基)、およびヒドロキシル基を有する、重量平均分子量Mw=3000のシリコーンレジン45質量部、1−ブタノール55質量部を混合し、接合塗料(B)を得た。
絶縁膜付銅箔(C)の絶縁膜上に、マイクログラビア法により接合塗料(B)を厚み10μmtになるように塗工し、100℃/10分の乾燥を実施し、接合層付絶縁膜付銅箔(D)を得た。
Al基板(E)に接合層付絶縁膜付銅箔(D)を、接合層が(D)と(E)の接触面に来るように積層させ、250℃/3.5MPaで1時間真空加圧積層を実施し、絶縁層(前記(A)(B)に由来の部分)のマトリックスであるシリコーンレジンが有する官能基のうち90%がメチル基であり、他の官能基として炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数2〜5のアルキル基およびヒドロキシル基を有する、三次元網目構造を持ったシリコーン硬化体の銅張積層基板を得た。
また、得られた銅張積層基板の耐電圧はAC80kV/mm、DC150kV/mmであった。銅張積層基板を雰囲気温度60℃、雰囲気湿度80%の環境下に1000時間暴露した後に耐電圧を測定したところ、AC80kV/mm、DC150kV/mmであり、劣化は認められなかった。銅張積層基板の絶縁層について、ガスクロマトグラフィー質量分析(GC/MS)により低分子シロキサンの検出を試みたが、低分子シロキサンに相当するD3〜D12のいずれも検出されなかった。
なお、前述した図1の製造方法では絶縁層2上に接合層3を形成するが、前述のとおり加熱加圧接合により接合層3が絶縁層2に吸収されて混然一体となる。すなわち、図3において絶縁層2と基板4との接合界面に表れている無機フィラーを含まない絶縁層2aは、前述の加熱加圧接合により接合層3と絶縁層2が混然一体となった絶縁層2’(図1(b)参照)の一部であり、本発明において「直接接合されている」とは、無機フィラーを含まない絶縁層2aを有しない接合形態を含むことはもとより、図3のように無機フィラーを含まない絶縁層2aを有する接合形態も含む概念であり、例えば、前記特許文献1のような接着層や接着剤の層を有さないということである。
室温で固体であって、官能基として炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜5のアルキル基(ただし、アルキル基の90%以上がメチル基)、およびヒドロキシル基を有する、重量平均分子量Mw=275000のシリコーンレジン12質量部、D50=0.7μmのZrO2フィラー70質量部、1−ブタノール18質量部を混合し、絶縁塗料(A)を得た。
室温で固体であって、官能基として炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜5のアルキル基(ただし、アルキル基の90%以上がメチル基)、およびヒドロキシル基を有する、重量平均分子量Mw=275000のシリコーンレジン45質量部、1−ブタノール55質量部を混合し、接合塗料(B)を得た。
絶縁膜付銅箔(C)の絶縁膜上に、マイクログラビア法により接合塗料(B)を厚み10μmtになるように塗工し、100℃/10分の乾燥を実施し、接合層付絶縁膜付銅箔(D)を得た。
Al基材(E)に接合層付絶縁膜付銅箔(D)を、接合層が(D)と(E)の接触面に来るように積層させ、250℃/3.5MPaで1時間真空加圧積層を実施し、絶縁層のマトリックスであるシリコーンレジンが有する官能基のうち90%がメチル基であり、他の官能基として炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数2〜5のアルキル基およびヒドロキシル基を有する、三次元網目構造を持ったシリコーン硬化体の銅張積層基板を得た。
また、得られた銅張積層基板の耐電圧はAC80kV/mm、DC150kV/mmであった。銅張積層基板を雰囲気温度60℃、雰囲気湿度80%の環境下に1000時間暴露した後に耐電圧を測定したところ、AC80kV/mm、DC150kV/mmであり、劣化は認められなかった。銅張積層基板の絶縁層について、ガスクロマトグラフィー質量分析(GC/MS)により低分子シロキサンの検出を試みたが、低分子シロキサンに相当するD3〜D12のいずれも検出されなかった。
室温で液体であって、官能基として炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜5のアルキル基(ただし、アルキル基の90%以上がメチル基)、およびヒドロキシル基を有する、重量平均分子量Mw=275000のシリコーンゴム12質量部、D50=0.7μmのZrO2フィラー70質量部、1−ブタノール18質量部を混合し、絶縁塗料(A)を得た。
室温で液体であって、官能基として炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜5のアルキル基(ただし、アルキル基の90%以上がメチル基)、およびヒドロキシル基を有する、重量平均分子量Mw=275000のシリコーゴム45質量部、1−ブタノール55質量部を混合し、接合塗料(B)を得た。
絶縁膜付銅箔(C)の絶縁膜上に、マイクログラビア法により接合塗料(B)を厚み10μmtになるように塗工し、100℃/10分の乾燥を実施し、接合層付絶縁膜付銅箔(D)を得た。
Al基板(E)に接合層付絶縁膜付銅箔(D)を、接合層が(D)と(E)の接触面に来るように積層させ、250℃/3.5MPaで1時間真空加圧積層を実施し、絶縁層のマトリックスであるシリコーンゴムが有する官能基のうち90%がメチル基であり、他の官能基として炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数2〜5のアルキル基およびヒドロキシル基を有する、二次元鎖状構造を持ったシリコーン硬化体の銅張積層基板を得た。
また、得られた銅張積層基板の耐電圧はAC80kV/mm、DC150kV/mmであった。銅張積層基板を雰囲気温度60℃、雰囲気湿度80%の環境下に1000時間暴露した後に耐電圧を測定したところ、その耐電圧はAC60kV/mm、DC110kV/mmであり、劣化が見られた。
また、銅張積層基板の絶縁層について、ガスクロマトグラフィー質量分析(GC/MS)により低分子シロキサンの検出を試みたところ、低分子シロキサンに相当するD3〜D12が確認された。
2 絶縁層
2’ 接合層と絶縁層が混然一体となった絶縁層
2a 無機フィラーを含まない絶縁層
3 接合層
4 基板
Claims (3)
- 銅層、絶縁層および基板をこの順に有し、
前記絶縁層は、メチル基およびエチル基が全体の官能基のうち80%以上を占めるシリコーンレジンのマトリックス中に、平均粒径が2.0μm以下である無機フィラーが分散した組織を有し、
前記絶縁層が前記銅層と前記基板にそれぞれ直接接合されており、耐電圧がAC70kV/mm以上、DC130kV/mm以上である、銅張積層板。 - 銅層、絶縁層および基板をこの順に有し、
前記絶縁層は、メチル基およびエチル基が全体の官能基のうち90%以上を占めるシリコーンレジンのマトリックス中に、平均粒径が2.0μm以下である無機フィラーが分散した組織を有し、
前記絶縁層が前記銅層と前記基板にそれぞれ直接接合されている、銅張積層板。 - 銅層、絶縁層および基板をこの順に有し、
前記絶縁層は、メチル基が全体の官能基のうち90%以上を占めるシリコーンレジンのマトリックス中に、平均粒径が2.0μm以下である無機フィラーが分散した組織を有し、
前記絶縁層が前記銅層と前記基板にそれぞれ直接接合されている、銅張積層板。
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