JP6729609B2 - 鉄含有酸化物の膨張率測定方法および粒状材の製造方法 - Google Patents

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本発明は、鉄含有酸化物の膨張率測定方法および粒状材の製造方法に関する。
製造業において発生する粒状酸化物などの粒状材は、リサイクルされ、例えば、コンクリート骨材またはアスファルト舗装材として利用される。
アスファルト舗装により道路を施工する際には、下層路盤および上層路盤からなる路盤の層を形成し、その上にアスファルト混合物層を施工する。路盤の層を形成する際には、路盤材が敷き詰められるが、この路盤材として、天然砕石と共に、上記粒状材が使用される場合がある。上記粒状材としては、鉄鋼スラグなどの鉄含有酸化物を、代表的に挙げることができる(例えば、特許文献1を参照)。
鉄鋼スラグなどの鉄含有酸化物を路盤材として使用する場合、種々の基準または規格を満たすことが要求される。例えば、鉄鋼スラグの一種であり、製鉄プロセスにおいて発生する製鋼スラグは、基本的に塩基度(CaO/SiO)が高いスラグであるが、この塩基度が高すぎると、pHの高い水が溶出し、環境面から問題となり得る。このため、近年、塩基度を低くする傾向にある。
また、製鋼スラグは、精錬過程で完全に溶融しきれない未滓化のCaO成分(遊離CaO)を含む場合がある。この遊離CaOは、水分と反応(水和反応)して水和膨張する特性を有するが、水和膨張が路盤材に発生すると、路面の隆起または割れにつながるおそれがある。このような水和膨張を抑制する観点からも、CaOを少なくすること、すなわち、低塩基度にすることが要求される。
特開2014−196218号公報
鉄鋼スラグなどの鉄含有酸化物中には、酸化していない金属として鉄分(金属鉄分)が含まれる場合がある。
例えば、製鉄プロセスにおいては、溶融した鉄の精錬過程で純酸素ジェットが供給される際に、スラグ(製鋼スラグ)が発生する。このとき、スピッティングと呼ばれる溶鉄粒滴の飛散が生じ、製鋼スラグ中に金属鉄分が取り込まれる。
ところで、上述したように、近年、製鋼スラグには低い塩基度が要求される場合があるが、塩基度が低くなりすぎると、スラグ中の金属鉄分が腐食し、この腐食(鉄錆)によって膨張が発生することが懸念される。このような膨張が、土木用資材、特に路盤材として使用される粒状材に発生すると、路面の隆起または割れにつながるおそれがある。
しかしながら、現状では、鉄鋼スラグなどの鉄含有酸化物の膨張(膨張率)を測定する方法は、確率されていない。
そこで、本発明は、新規な鉄含有酸化物の膨張率測定方法、および、この測定方法を用いた粒状材の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意検討した結果、下記構成によって、上記目的が達成されることを見出した。すなわち、本発明は、以下の[1]〜[4]を提供する。
[1]湿潤雰囲気下で行なう鉄含有酸化物の膨張率測定方法であって、鉄含有酸化物を、型枠の内部に敷き詰めて、上記鉄含有酸化物の鉄錆による膨張率を測定する、鉄含有酸化物の膨張率測定方法。
[2]上記型枠の内部に敷き詰めた上記鉄含有酸化物を、加圧成型または突き固めしてから、上記膨張率を測定する、上記[1]に記載の鉄含有酸化物の膨張率測定方法。
[3]温度が0℃超100℃未満、かつ、湿度が60%以上である雰囲気下において、上記膨張率を測定する、上記[1]または[2]に記載の鉄含有酸化物の膨張率測定方法。
[4]鉄含有酸化物を準備し、上記準備した鉄含有酸化物に対して、上記[1]〜[3]に記載の鉄含有酸化物の膨張率測定方法における膨張率の測定を含む評価を行ない、基準を満たす鉄含有酸化物を粒状材として用いる、粒状材の製造方法。
本発明によれば、新規な鉄含有酸化物の膨張率測定方法、および、この測定方法を用いた粒状材の製造方法を提供できる。
図1は、型枠の内部に鉄含有酸化物を敷き詰めた状態を示す断面図である。 図2は、型枠の内部に敷き詰めた鉄含有酸化物を、加圧成型している状態を示す断面図である。 図3(a)は、膨張センサを用いて鉄含有酸化物の初期高さを測定している状態を示す断面図である。図3(b)は、膨張センサを用いて鉄含有酸化物の膨張後の高さを測定している状態を示す断面図である。 図4は、溶銑予備処理スラグ1および2の膨張率を測定した結果を示すグラフである。 図5は、溶銑予備処理スラグ1の膨張率を、温度および湿度を異ならせて測定した結果を示すグラフである。
[鉄含有酸化物の膨張率測定方法]
本発明の鉄含有酸化物の膨張率測定方法(以下、単に「本発明の測定方法」とも称する)は、湿潤雰囲気下で行なう鉄含有酸化物の膨張率測定方法であって、鉄含有酸化物を、型枠の内部に敷き詰めて、上記鉄含有酸化物の鉄錆による膨張率を測定する、鉄含有酸化物の膨張率測定方法である。
以下、図1、図2、図3(a)および図3(b)に基づいて、本発明の好適な実施形態について説明する。ただし、本発明は、以下の実施形態に限定されない。
図1は、型枠1の内部に鉄含有酸化物2を敷き詰めた状態を示す断面図である。
本実施形態では、まず、図1に示すように、鉄含有酸化物2を、型枠1の内部に敷き詰める。図1に示す型枠1は、上面が開口した円筒状の箱型部材である。型枠1は、耐腐食性金属で構成されることが好ましく、一例として、ステンレス製である。
型枠1は、鉄含有酸化物2の膨張によっても変形しないことが好ましい。
鉄含有酸化物2としては、特に限定されないが、例えば、鉄鋼スラグが挙げられる。
鉄鋼スラグは、高炉スラグと製鋼スラグとに大別される。
高炉スラグは、鉄鉱石をコークスで還元する過程で、鉄分以外の鉄鉱石中の岩石分と成分調整のための石灰とが融合して生成するスラグである。高炉スラグは、その冷却方法によって、高炉徐冷スラグと高炉水砕スラグとに分類される。
製鋼スラグは、高炉で製造された銑鉄を鋼にする過程で副生するスラグである。製鋼スラグは、精錬炉の種類によって転炉スラグまたは電気炉スラグに分類されるほか、製鋼工程で生成する、溶銑予備処理スラグ(溶銑を転炉に装入する前に溶銑の脱硫、脱珪、脱燐等の処理をする際に生成するスラグ)および二次精錬スラグ(転炉等から出鋼した溶鋼に脱硫、脱燐、脱ガス等の処理をする場合があり、その際に生成するスラグ)なども含む。
鉄含有酸化物2中には、金属鉄分3が含まれる。例えば、鉄含有酸化物2が鉄鋼スラグである場合、鉄鋼スラグが得られる過程で、鉄鋼スラグ中に金属鉄分3が取り込まれる。
鉄含有酸化物2が鉄鋼スラグである場合、金属鉄分3は、そのほとんどが、スラグ粒子の表面に固着しているか、または、スラグ粒子の内部に埋没しており、スラグ粒子から遊離して存在する金属鉄分3は少ないものと推測される。
金属鉄分3は、一例として、粒状の鉄(粒鉄)であり、粒鉄のサイズは、例えば、100μm以下である。
次に、加圧成型および突き固めについて説明する。
図2は、型枠1の内部に敷き詰めた鉄含有酸化物2を、加圧成型している状態を示す断面図である。型枠1の内部に鉄含有酸化物2を敷き詰めた後、図2に示すように、鉄含有酸化物2の表面(上面)を、例えばプレス機4を用いて加圧成型することが好ましい。これにより、鉄含有酸化物2から空気が押し出され、粒子どうしの接触が密になって密度が高まり、実際の固結した路盤に近い状態となる。プレス機4としては、加圧に使用される従来公知のプレス機を適宜使用でき、特に限定されない。
型枠1の内部に鉄含有酸化物2を敷き詰めた後、鉄含有酸化物2の表面(上面)を、突き固めしてもよい。突き固めによっても、加圧成型と同様の効果が得られる。突き固め方法としては、例えば、JIS A 1210に規定される方法が挙げられる。
次に、型枠1内の鉄含有酸化物2の膨張率を測定する。ここで測定する膨張は、以下に説明するように、鉄含有酸化物2に含まれる金属鉄分3の腐食による膨張、すなわち、鉄含有酸化物2の鉄錆による膨張である。
鉄含有酸化物2に含まれる金属鉄分3の腐食について説明する。
金属鉄分3の腐食は、電荷(電子およびイオン)の移動を伴う電気化学的反応である。腐食を起こしている箇所はアノード域と呼ばれ、鉄原子は、電子を失い鉄イオンとして周辺の鉄含有酸化物2に存在する水に溶け出す。この反応はアノード反応と呼ばれ、下記式(1)で表される。
Fe → Fe2++2e (1)
電子は金属鉄分3の中に残り、カソード域と呼ばれる場所に移動し、そこで、周辺の鉄含有酸化物2に存在する水および酸素と結合し、水酸化物イオンとなる。この反応はカソード反応と呼ばれ、下記式(2)で表される。
O+1/2O+2e → 2OH (2)
鉄イオンは、水酸化物イオンと反応して水酸化鉄(鉄錆)となる。この反応は、下記式3)で表され、その際、体積が約3倍に膨張する。
Fe2++2OH → Fe(OH) (3)
型枠1内の鉄含有酸化物2における上記反応は、湿潤雰囲気において進行しやすい。とりわけ、温度が0℃超100℃未満であって、かつ、湿度が60%以上である湿潤雰囲気(以下、便宜的に「特定湿潤雰囲気」ともいう)下において、より進行することが様々な実験の結果から判明している。
JIS A 5015「道路用鉄鋼スラグ」に記載の水浸膨張試験では、鉄錆が流出して鉄錆膨張は計れなかった。
特定湿潤雰囲気の温度は、0℃超80℃以下の範囲内で、できる限り高くすることが好ましい。また、特定湿潤雰囲気の湿度は、100%に近いほど好ましい。
特定湿潤雰囲気は、酸素を含有するガス雰囲気であれば特に限定されないが、最も簡易であることから、大気雰囲気が好ましい。
このような鉄含有酸化物2の膨張率は、例えば、膨張センサを用いて測定される。膨張センサとしては、特に限定されないが、以下では、膨張センサとしてダイヤルゲージを使用する場合を例に説明する。
図3(a)は、膨張センサ5を用いて鉄含有酸化物2の初期高さを測定している状態を示す断面図である。図3(a)に示す鉄含有酸化物2は、型枠1の内部に敷き詰めた直後(または、型枠1の内部に敷き詰めてから加圧成型もしくは突き固めした直後)であり、まだ、鉄錆による膨張は生じていない。
このような鉄含有酸化物2の上面に、ダイヤルゲージである膨張センサ5の測定子5aを接触させる。実際には、図3(a)に示すように、鉄含有酸化物2の上面に、硬質の補助部材6を配置し、この補助部材6に測定子5aを接触させてもよい。こうして、型枠1内の鉄含有酸化物2の「初期高さ」が測定される。
図3(b)は、膨張センサ5を用いて鉄含有酸化物2の膨張後の高さを測定している状態を示す断面図である。図3(b)に示す鉄含有酸化物2は、鉄錆による膨張が生じ、その結果、上面位置が初期高さ(図3(a)参照)よりも上昇している。
鉄含有酸化物2の上面位置が上昇することにより、測定子5aが押し上げられて、ダイヤルゲージである膨張センサ5の表示が変化する。こうして、鉄含有酸化物2の「膨張後の高さ」が測定される。
こうして得られた「初期高さ」および「膨張後の高さ」の値から、鉄含有酸化物2の膨張率が測定される。例えば、型枠1が円筒状である場合、その内寸の直径が分かれば、鉄含有酸化物2の「初期体積」および「膨張後の体積」が求められ、更に、これらの値から、膨張率が求められる。
鉄含有酸化物2の膨張率は、上述した特定湿潤雰囲気下において測定されることが好ましい。鉄含有酸化物2の膨張率の測定間隔および測定期間などは、適宜設定される。
本実施形態においては、本発明の測定方法における膨張率の測定を含む評価を行なうことができる。
評価の手法は特に限定されないが、例えば、測定開始から一定時間が経過した後の膨張率を、基準値と対比する手法が挙げられる。基準値は、一律に決まるものではなく、各種条件等に応じて適宜決定される。
例えば、長期間にわたって金属鉄分の腐食の問題がない(腐食が発生しない;腐食が発生しても膨張が生じない;膨張が生じても粒状材(路盤材)として使用した場合に路面の隆起等が起こらない;等)ことが実証されている鉄含有酸化物と同じスペックの鉄含有酸化物について、同様に膨張率を測定し、測定開始から一定時間が経過した後の膨張率を基準値とすることができる。
そして、基準値をV[体積%]としたときに、ある鉄含有酸化物2の膨張率が基準値以下である場合には、鉄含有酸化物2を粒状材に適用できると評価し、反対に、膨張率が基準値を超過する場合には、鉄含有酸化物2を粒状材に適用できないと評価することができる。
[粒状材の製造方法]
本発明の粒状材の製造方法は、鉄含有酸化物を準備し、上記準備した鉄含有酸化物に対して、本発明の測定方法における膨張率の測定を含む評価を行ない、基準を満たす鉄含有酸化物を粒状材として用いる、粒状材の製造方法である。
粒状材は、一例として、路盤材である。鉄含有酸化物を路盤材などの粒状材として使用するに際しては、例えばJIS A 5015:2013に規定されるような各種の基準(規格)を満たすことが要求される。この基準を満たすか否かを確認するために各種の評価が行なわれる。本発明の粒状材の製造方法は、要するに、この評価の1つとして、本発明の測定方法における膨張率の測定を含む評価を行なうものである。そして、いずれの評価についても、決められた基準を満たす場合には、その鉄含有酸化物を、路盤材などの粒状材として使用する。
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。以下の実施例は、鉄含有酸化物が鉄鋼スラグである場合の例である。ただし、本発明は以下の実施例に限定されない。
図1、図2、図3(a)および図3(b)に基づいて説明した実施形態に基づいて、試験を行なった。
このとき、型枠1は、ステンレス製とし、型枠1の寸法(内寸)は、直径50mm×高さ100mmとした。
鉄鋼スラグである鉄含有酸化物2として、溶銑予備処理スラグ200gを使用した。溶銑予備処理スラグとしては、下記表1に示す溶銑予備処理スラグ1または2を使用した。
膨張センサ5としては、ダイヤルゲージを用いた。
まず、型枠1の内部に、充分にエージング処理を施した鉄含有酸化物2を敷き詰めてから(図1参照)、プレス機4を用いて鉄含有酸化物2の表面を10MPaで加圧成型した(図2参照)。そして、膨張センサ5を設置した(図3(a)参照)。
このような状態において、膨張センサ5を用いて、温度20℃および湿度100%の大気雰囲気下において、膨張率を40日間測定した。測定結果を図4のグラフに示す。
図4は、溶銑予備処理スラグ1および2の膨張率を測定した結果を示すグラフである。図4のグラフに示すように、使用した溶銑予備処理スラグによって、測定される膨張率の挙動は大きく異なっていた。なお、参考例として、標準砂についても同様に測定を行なったが、膨張は見られなかった。
次に、溶銑予備処理スラグ1について、大気雰囲気の温度および湿度を変えて、膨張率の測定を行なった。具体的には、温度20℃および湿度100%の大気雰囲気に加えて、更に、温度80℃および湿度80%、ならびに、温度50℃および湿度80%の大気雰囲気下においても、同様に測定を行なった。測定結果を図5のグラフに示す。
図5は、溶銑予備処理スラグ1の膨張率を、温度および湿度を異ならせて測定した結果を示すグラフである。図5のグラフに示すように、測定雰囲気である大気雰囲気の温度および湿度によって、膨張率の挙動は大きく異なっていた。なお、参考例として、温度0℃以下でも同様に測定を行なったが、膨張は見られなかった。また、湿度0%でも同様に膨張は見られなかった。
1:型枠
2:鉄含有酸化物
3:金属鉄分
4:プレス機
5:膨張センサ(ダイヤルゲージ)
5a:測定子
6:補助部材

Claims (4)

  1. 所定の湿潤雰囲気下で行なう鉄含有酸化物の膨張率測定方法であって、
    エージング処理を施した鉄含有酸化物を、型枠の内部に敷き詰めて、
    前記型枠の内部に敷き詰めた前記鉄含有酸化物を、前記型枠内において加圧成型または突き固めしてから、
    前記所定の湿潤雰囲気下において、前記型枠内の前記鉄含有酸化物の鉄錆による膨張率を測定する、鉄含有酸化物の膨張率測定方法。
  2. 温度が0℃超100℃未満、かつ、湿度が60%以上である前記所定の湿潤雰囲気下において、前記膨張率を測定する、請求項に記載の鉄含有酸化物の膨張率測定方法。
  3. 温度が0℃超50℃以下、かつ、湿度が80%以上である前記所定の湿潤雰囲気下において、前記膨張率を測定する、請求項2に記載の鉄含有酸化物の膨張率測定方法。
  4. エージング処理を施した鉄含有酸化物を準備し、前記準備した鉄含有酸化物に対して、請求項1〜3のいずれか1項に記載の鉄含有酸化物の膨張率測定方法における膨張率の測定を含む評価を行ない、基準を満たす鉄含有酸化物を粒状材として用いる、粒状材の製造方法。
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