JP5195501B2 - 路盤材適性を有しない材料の選定方法 - Google Patents

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本発明は、製鋼スラグを含む材料を道路、駐車場、歩道等の路盤材として使用した際に、路盤の膨張による舗装面の隆起を防止するために、膨張による舗装面の隆起を生じさせるおそれのある路盤材適性を有しない材料を選定するための方法に関する。
道路や駐車場などのアスファルトコンクリート舗装では、路盤が膨張することにより舗装面が突然隆起することがある。このように路盤膨張を生じる主たる原因については、特に路盤材として鉄鋼スラグが使用されている場合は、スラグ中のf-CaOが水和する際に体積膨張を生じたり、或いは固結した鉄鋼スラグ路盤材中にエトリンガイトが生成し、体積膨張を生じるためであると考えられてきた。
従来、鉄鋼スラグ路盤材としては、成分組成が異なる種々の鉄鋼スラグ(例えば、転炉スラグなどの製鋼スラグ、高炉徐冷スラグなど)が使用されている。
しかし、本発明者らによる調査の結果では、路盤中でのf-CaOやエトリンガイトの生成量(含有率)が非常に少ないアスファルトコンクリート舗装であっても、路盤の膨張により舗装面が隆起する場合があることが判明した。このような路盤膨張は、f-CaOの水和やエトリンガイトの生成に起因するものでないことは明らかであり、その原因の解明と適切な対策が望まれ、特にそのような膨張を生じさせるおそれのある路盤材の選定基準が明確になることが望まれていた。
したがって本発明の目的は、路盤用の材料について、上述したような路盤膨張による舗装面の隆起を生じさせるおそれのある路盤材適性を有しない材料を的確且つ簡易に選定することができる選定方法を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、既設の舗装について、上述したような路盤膨張による舗装面の隆起が生じる可能性を予測し、そのような舗装面の隆起を予防するための路盤補修を的確に実施することができる路盤の補修方法を提供することにある。
本発明者らによる既設のアスファルトコンクリート舗装に関する調査、検討の結果、上述した路盤膨張による舗装面の隆起は、路盤材に製鋼スラグを使用した舗装に生じること、また、隆起が生じた舗装の路盤には鉄錆が多く含まれることが判った。これらの事実を基にさらに調査、検討を進めた結果、pHが比較的低く且つ製鋼スラグ由来の相当量の金属Feを含む材料を路盤材として使用した場合、路盤材中の金属Feが酸化されて体積膨張を生じることで路盤が膨張し、舗装面の隆起を生じることが判った。したがって、これらの事実から、pHが比較的低く且つ製鋼スラグ由来の相当量の金属Feを含む材料を路盤材適性を有しない材料として選定すれば、上記原因による路盤膨張とこれにより生じる舗装面の隆起を適切に防止できることが判った。
本発明はこのような知見に基づきなされたもので、以下を要旨とするものである。
[1]一部又は全部が製鋼スラグである材料のなかで、路盤材として施工した場合に膨張による舗装面の隆起を生じさせるおそれのある路盤材適性を有しない材料を選定するための方法であって、
少なくとも下記(a)及び(b)の両条件を満たす材料を、前記路盤材適性を有しない材料として選定することを特徴とする路盤材適性を有しない材料の選定方法。
(a)JIS−K0058−1に規定するタンクリーチング試験法による溶出試験により測定されるpHが9.5以下
(b)金属Fe含有量が6mass%以上
[2]上記[1]の選定方法において、透水性舗装用としての路盤材適性を有しない材料を選定するに当たり、少なくとも下記(a)及び(b)の両条件を満たす材料を、路盤材適性を有しない材料として選定することを特徴とする路盤材適性を有しない材料の選定方法。
(a)JIS−K0058−1に規定するタンクリーチング試験法による溶出試験により測定されるpHが10.5以下
(b)金属Fe含有量が6mass%以上
[3]一部または全部が製鋼スラグである路盤材が施工された既設の舗装から路盤材を採取し、この採取した路盤材についてJIS−K0058−1に規定するタンクリーチング試験法による溶出試験によりpHを測定し、該pHが閾値以下であるときに、路盤膨張による舗装面の隆起を予防するための路盤補修を実施することを特徴とする路盤の補修方法。
[4]上記[3]の補修方法において、pHの閾値を9.5以上のpH領域において設定することを特徴とする路盤の補修方法。
本発明の選定方法によれば、一部または全部が製鉄スラグである材料のなかで、金属Feの酸化が原因の路盤膨張による舗装面の隆起を生じさせるおそれのある路盤材適性を有しない材料を簡易且つ的確に選定することができる。
また、本発明の路盤の補修方法によれば、既設の舗装について、金属Feの酸化が原因の路盤膨張により舗装面の隆起が生じる可能性を予測し、そのような舗装面の隆起を予防するための路盤補修を的確に実施することができる。
一部または全部が製鋼スラグである材料であって、種々のpHを有する材料を路盤材として施工し、路盤内での鉄錆の発生状況と路盤膨張による舗装面の隆起の有無を調べた結果を示すグラフ
アスファルトコンクリート舗装において、pHが比較的低く且つ相当量の金属Feを含む材料を路盤材として使用した場合、路盤材中の金属Feが酸化されて体積膨張を生じることで路盤が膨張し、舗装面の隆起を生じる。したがって、pHが比較的低く且つ相当量の金属Feを含む材料を路盤材適性を有しない材料として選定すれば、上記原因による路盤膨張とこれにより生じる舗装面の隆起を適切に防止することができる。ここで、上述のような問題を生じる材料(路盤材)は、一部または全部が製鋼スラグである材料であり、したがって、本発明において選定の対象となるのは一部または全部が製鋼スラグである材料である。本発明は、このような材料のなかで、路盤材として施工した場合に膨張による舗装面の隆起を生じさせるおそれのある路盤材適性を有しない材料を選定するものである。
製鋼スラグとは、鉄鋼製造プロセスの製鋼工程で発生するスラグであり、溶銑予備処理スラグ(例えば、脱燐スラグ、脱珪スラグなど)、転炉スラグ(脱炭スラグ)などが挙げられ、これらの1種以上を用いることができる。
また、一部が製鋼スラグである材料の場合、材料の残部には、コンクリート廃材、廃路盤材、レンガ廃材、製鋼スラグ以外の鉄鋼スラグ(例えば、高炉徐冷スラグなど)、鉄鋼スラグ以外のスラグ(例えば、ごみ溶融スラグなど)、砕石などの1種以上を用いることができる。
本発明では、下記(a)及び(b)の両条件を満たす材料を路盤材適性を有しない材料(以下、この材料を「不適材」という場合がある)として選定する。なお、下記(a)のpH測定の供試体となる材料の粒度は、当然、路盤材として施工する粒度のものである。
(a)JIS−K0058−1に規定するタンクリーチング試験法による溶出試験により測定されるpHが9.5以下
(b)金属Fe含有量が6mass%以上
図1は、一部または全部が製鋼スラグである材料であって、種々のpHを有する材料を、アスファルトコンクリート舗装の路盤材として施工し、鉄錆の発生状況と路盤膨張による舗装面の隆起の有無を調べた結果を示している。材料は、製鋼スラグ単体又は製鋼スラグと高炉徐冷スラグ、廃コンクリートの1種以上を混合したものであり、金属Fe含有量は6〜12mass%である。施工前の材料のpHは、JIS−K0058−1に規定するタンクリーチング試験法による溶出試験により測定した。
施工して2年後のアスファルトコンクリート舗装について、路盤膨張による舗装面の隆起の有無を調べた。この調査では、舗装面長さ20cmで2cm以上の高低差がある場合に「舗装面の隆起」と判断した。また、そのアスファルトコンクリート舗装の路盤から路盤材を採取し、この路盤材サンプルの発錆状態を目視観察し、以下のような基準で4段階評価し、指数化した。
錆指数1:灰色
錆指数2:薄茶色
錆指数3:茶色
錆指数4:濃い茶色〜赤褐色
図1によれば、金属Fe含有量が6mass%以上の材料のなかでも、pHが9.5以下の材料の錆指数が高く(錆指数3〜4)、路盤膨張による舗装面の隆起を生じている。これに対して金属Fe含有量が6mass%以上であっても、pHが9.5超の材料は、錆指数が低く(錆指数1〜2)、路盤膨張による舗装面の隆起を生じていない。
以上の結果から、本発明では上記(a)及び(b)の両条件を満たす材料を、路盤材適性を有しない材料(不適材)として選定するものである。
また、上記(a)として規定する不適材のpHの上限値をより高く設定することが好ましい。具体的には、好ましくはpH10.5、より好ましくはpH11.5、特に好ましくはpH12.5を上限値とすることが好ましい。同様の理由から、上記(b)として規定する不適材の金属Fe含有量の下限値をより低く設定することが好ましい。具体的には、好ましくは4mass%、より好ましくは2mass%、特に好ましくは1mass%を下限値とすることが好ましい。
また、透水性舗装に施工された路盤材は、雨水と接触することによりpHが低下しやすいので、透水性舗装用としての路盤材適性を有しない材料を選定する場合には、上記(a)として規定する不適材のpHの上限値をより高く設定することが好ましい。具体的には、好ましくはpH10.5、より好ましくはpH11.5、特に好ましくはpH12.5を上限値とすることが好ましい。
ここで、透水性舗装とは、路面に降った雨水を舗装内部の隙間から地中に浸透させる機能を持った舗装であり、アスファルトコンクリート舗装の場合、粘度の高い改質アスファルトを使用するとともに、粗骨材の割合を高めて空隙率を高めに設定する条件で施工される。一般に、透水性舗装の透水係数は1.0×10−2cm/sec以上である。
また、路盤膨張による舗装面の隆起は、路盤の固結の程度が高いほど生じやすいので、路盤材適性を有しない材料の選定をより厳しくするには、材料の固結性も選定基準に加えることが好ましい。
以上により、アスファルトコンクリート舗装などの路盤材として施工した場合に、金属Feの酸化が原因の路盤膨張による舗装面の隆起を生じさせるおそれがある路盤材適性を有しない材料を簡易且つ的確に選定することができる。
次に、以上述べた本発明の選定方法の原理を利用した路盤の補修方法について説明する。
路盤材に含まれる金属Feの酸化は、施工後に徐々に進行し、路盤の膨張と舗装面の隆起を引き起こす。また、その場合、雨水との接触により材料のpHが低下し、金属Feがより酸化されやすい環境になる。したがって、既設のアスファルトコンクリート舗装などの舗装についても、その路盤を構成する路盤材のpHを測定することにより、金属Feの酸化による路盤膨張と舗装面隆起を生じる可能性について、ある程度の精度で予測することができ、その予測に基づいて路盤補修(路盤材の膨張による舗装面の隆起を予防するための路盤補修)を実施すれば、仮に路盤に不適材を用いたような場合でも、舗装面の隆起を未然に防止することができる。
すなわち、本発明の路盤の補修方法では、一部または全部が製鋼スラグである路盤材が施工された既設の舗装(アスファルトコンクリート舗装など)から路盤材を採取し、この採取した路盤材についてJIS−K0058−1に規定するタンクリーチング試験法による溶出試験によりpHを測定し、このpHが特定の閾値以下であるときに路盤膨張と舗装面隆起を生じる可能性があると判定し、路盤膨張による舗装面の隆起を予防するための路盤補修を実施する。
路盤材のpHの上記閾値は、適宜なpH値に設定できるが、さきに説明した本発明の選定方法における不適材のpHの上限値からして、9.5以上のpH領域、好ましくは10以上のpH領域において設定することが適当である。
路盤膨張による舗装面の隆起を予防するための路盤補修は、例えば、下記(イ)、(ロ)のいずれかの形態で実施することができる。
(イ)アスファルトコンクリート層を除去した後、路盤層の一部分を略全層厚方向で溝状に除去し、この溝内に路盤層の膨張を吸収できる粒状材料を充填し、その上層にアスファルトコンクリートを再施工する。
(ロ)路盤層をアスファルトコンクリート層とともにカッターで切断してカッター溝を形成した後、このカッター溝内に、路盤層の膨張を吸収できる充填材を充填する。

Claims (4)

  1. 一部又は全部が製鋼スラグである材料のなかで、路盤材として施工した場合に膨張による舗装面の隆起を生じさせるおそれのある路盤材適性を有しない材料を選定するための方法であって、
    少なくとも下記(a)及び(b)の両条件を満たす材料を、前記路盤材適性を有しない材料として選定することを特徴とする路盤材適性を有しない材料の選定方法。
    (a)JIS−K0058−1に規定するタンクリーチング試験法による溶出試験により測定されるpHが9.5以下
    (b)金属Fe含有量が6mass%以上
  2. 透水性舗装用としての路盤材適性を有しない材料を選定するに当たり、少なくとも下記(a)及び(b)の両条件を満たす材料を、路盤材適性を有しない材料として選定することを特徴とする請求項1に記載の路盤材適性を有しない材料の選定方法。
    (a)JIS−K0058−1に規定するタンクリーチング試験法による溶出試験により測定されるpHが10.5以下
    (b)金属Fe含有量が6mass%以上
  3. 一部または全部が製鋼スラグである路盤材が施工された既設の舗装から路盤材を採取し、この採取した路盤材についてJIS−K0058−1に規定するタンクリーチング試験法による溶出試験によりpHを測定し、該pHが閾値以下であるときに、路盤膨張による舗装面の隆起を予防するための路盤補修を実施することを特徴とする路盤の補修方法。
  4. pHの閾値を9.5以上のpH領域において設定することを特徴とする請求項3に記載の路盤の補修方法。
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