以下に、本発明の実施の形態および実施例を説明する。ただし、本発明の一形態は、以下の説明に限定されず、本発明の趣旨およびその範囲から逸脱することなくその形態および詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。したがって、本発明の一形態は、以下に示す実施の形態および実施例の記載内容に限定して解釈されるものではない。
以下に示される複数の実施の形態および実施例は適宜組み合わせることが可能である。また1の実施の形態または1の実施例の中に、複数の構成例(作製方法例、動作方法例等も含む。)が示される場合は、構成例を適宜組み合わせること、および他の実施の形態あるいは他の実施例に記載された1または複数の構成例と適宜組み合わせることも可能である。
図面において、同一の要素または同様な機能を有する要素、同一の材質の要素、あるいは同時に形成される要素等には同一の符号を付す場合があり、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
本明細書において、例えば、高電源電位VDDを、電位VDD、VDD等と省略して記載する場合がある。これは、他の構成要素(例えば、信号、電圧、回路、素子、電極、配線等)についても同様である。
また、同じ符号を用いる場合、特に、その中でも区別する必要があるときには、符号に“_1”、“_2”、“<j>”、“[i、j]”等の識別用の符号を付記して記載する場合がある。例えば、複数の配線WLを個々に区別する場合、アドレス番号(行番)を利用して、2行目の配線WLを配線WL<2>と記載する場合がある。
〔実施の形態1〕
<<半導体装置の構成例1>>
ここでは、パワーゲーティング可能な半導体装置について説明する。図1Aは半導体装置の構成例を示すブロック図であり、図1Bは同動作例を示すタイミングチャートである。図1Aに示す半導体装置100は、記憶回路10、パワースイッチ(PSW)50、配線51、配線52、および回路90を有する。
回路90は、ノードb1およびノードb2を有する。ノードb1はVH1用の入力ノードであり、ノードb2はVL1用の入力ノードである。VH1は高電源電位であり、VL1は低電源電位である。配線51は、回路90にVH1を供給するための電源線であり、配線52は回路90にVL1を供給するための電源線である。ノードb2は配線52と電気的に接続されている。PSW50は、回路90へのVH1の供給を遮断する機能を有する。PSW50はトランジスタMP1を有する。ここでは、トランジスタMP1はpチャネル型トランジスタである。トランジスタMP1は、配線51とノードb1間の導通状態を制御する機能を有する。トランジスタMP1のゲート(ノードNpsw)は記憶回路10のノードa4と電気的に接続されている。ノードa4は記憶回路10の出力ノードである。ノードNpswと配線51とは寄生容量(例えば、トランジスタMP1のゲート容量)を介して容量結合されている。
記憶回路10は、ノードNpswの電位を設定するためのデータを記憶するための回路である。記憶回路10は、回路11、トランジスタMO3、ノードa4を有する。トランジスタMO3はノードa3とノードa4間の導通状態を制御するパストランジスタである。トランジスタMO3のゲートには、信号wr3が入力される。回路11は、トランジスタMO3の第1端子(例えば、ドレイン)の電位を制御するための回路であり、またデータを記憶する機能を有する。ノードa3は回路11の出力ノードである。記憶回路10およびPSW50により、プログラム可能なパワースイッチ(PPS)が構成されている。
<<半導体装置の動作例>>
図1Bに、信号wr3、ノードNpswの電位、および配線51の電位の波形を示す。図1Bにおいて、VH1で示される波形が配線51の電位の波形である。半導体装置100は、回路90に供給するVH1を変化させることが可能である。図1Bには、VH1をVH1_HからVH1_Lに変化させる例を示している。ここで、VH1_LはVH1_Hよりも低い電位である。Vgp1Hは、トランジスタMP1をオフ状態にすることができる電位である。
信号wr3を高(H)レベルにして、トランジスタMO3をオン状態にする。ノードNpswの電位は、ノードa3の電位に応じた大きさになり、ここでは、0Vとなることとする。信号wr3を低(L)レベルにすることで、トランジスタMO3がオフ状態となり、ノードNpswは浮遊ノードとなる。配線51の電位(VH1)を高電位(VH1_H)から低電位(VH1_L)に変化させることで、容量結合によりノードNpswの電位も低下し、負電位Vgp1Lとなる。つまり、負電位を生成する電源回路を設けなくとも、トランジスタMP1をオーバードライブすることができる。負電位生成回路は電力効率の低い回路であるため、これを設けないことは半導体装置100の消費電力の低減につながる。また、半導体装置100では、回路90に安定してVH1_Lを供給することができるため、低い電源電位でも回路90は安定して動作することが可能である。
半導体装置100において、トランジスタMO3と、ノードNpswの寄生容量とによって、1トランジスタ1容量(1T1C)型の記憶回路が形成されている。低電位VH1_Lで回路90を安定して駆動するには、電気的に浮遊状態のトランジスタMP1のゲートから電荷がリークすることを可能な限り抑えることが求められる。そのための手段として、トランジスタMO3をオフ電流の極めて小さいトランジスタにすることが挙げられる。
オフ電流とは、トランジスタがオフ状態のときにソースとドレインとの間に流れる電流をいう。トランジスタがnチャネル型である場合、例えば、閾値電圧が0V乃至2V程度であれば、ゲートとソース間の電圧が負の電圧であるときのソースとドレインとの間に流れる電流をオフ電流と呼ぶことができる。オフ電流が極めて小さいとは、例えば、チャネル幅1μmあたりのオフ電流が100ゼプトA(100zA、100×10−21A)以下であることをいう。オフ電流は小さいほど好ましいため、この規格化されたオフ電流が10zA/μm以下、あるいは1zA/μm以下であることが好ましく、10ヨクトA/μm(10yA/μm、10×10−24A/μm)以下であることがより好ましい。
トランジスタのオフ電流を極めて小さくするには、チャネルをバンドギャップが広い半導体、例えばバンドギャップが3.0eV以上の半導体で形成すればよい。このような半導体としては、金属酸化物を含む酸化物半導体が挙げられる。チャネルが形成される酸化物半導体層を有するトランジスタ(以下、OSトランジスタと呼ぶ場合がある。)は、熱励起によるリーク電流が小さく、またオフ電流が極めて小さい。
OSトランジスタの酸化物半導体は、インジウム(In)および亜鉛(Zn)の少なくとも一方を含むものが好ましい。OSトランジスタを構成する酸化物半導体としては、In−Ga−Zn酸化物、In−Sn−Zn酸化物が代表的である。電子供与体(ドナー)となる水分または水素等の不純物を低減し、かつ酸素欠損も低減することで、酸化物半導体をi型(真性半導体)にする、あるいはi型に限りなく近づけることができる。ここでは、このような酸化物半導体は高純度化された酸化物半導体と呼ぶことができる。高純度化された酸化物半導体でチャネルを形成することで、チャネル幅で規格化されたOSトランジスタのオフ電流を数yA/μm以上数zA/μm以下程度に低くすることができる。OSトランジスタ、酸化物半導体の詳細については、実施の形態2、3で説明する。
本実施の形態に係るPPSの動作をシミュレーションで確認した。半導体装置として5段のリングオシレータ(RO5)を想定し、発振周波数比のVg依存性をSPICEシミュレーションで算出した。図2AにRO5の回路図を示し、図2Bにシミュレーション結果を示す。RO5は5段のNOR回路を有する。各NOR回路には、pチャネル型トランジスタでなるパワースイッチが設けられている。Vgはpチャネル型トランジスタのゲート電位である。
VH1を100mV以上600mV以下(変化量は100mV)に変化させ、それぞれのVH1に対して、Vgを−800mVから0mVまで(変化量は100mV)変化させた場合のRO5の発振周波数を算出し、Vgが0mVの値を基準に発振周波数比を求めた。図2Bに示すように低電圧駆動ではパワースイッチのゲートに僅かな負電位を印加することでRO5の動作能力が大きく改善することが分かる。
<<回路構成例>>
以下、半導体装置100のより具体的な構成について説明する。図3は半導体装置100の構成例を示す回路図である。記憶回路10は、ノードa1、ノードa4、回路11およびトランジスタMO3を有する。記憶回路10の入力ノードがノードa1であり、出力ノードがノードa4である。例えば、ノードa1の論理を“L”に維持するため、ノードa1にVL1が入力されている。VL1は、0ボルトや接地電位(GND)とすればよい。
図3の回路11は、回路20、回路30、ノードa2、ノードa3を有する。回路11にはVH1、VL1が入力される。回路30の入力ノードがノードa2であり、出力ノードがノードa3である。
<<回路20>>
回路20は、回路21、回路22、ノードa21、ノードa22を有する。ノードa21は回路20の入力ノードであり、ノードa1と電気的に接続されている。ノードa22は回路20の出力ノードであり、ノードa2と電気的に接続されている。回路21は、トランジスタMS1および回路AM1を有する。回路22はトランジスタMS2および回路AM2を有する。ノードa21とノードa22との間にトランジスタMS1とトランジスタMS2とが電気的に直列に接続されている。トランジスタMS1、MS2は、ノードa21とノードa22との間の導通状態を制御するパストランジスタである。トランジスタMS1のゲートには回路AM1が電気的に接続され、トランジスタMS2のゲートには回路AM2が電気的に接続されている。
<回路AM1>
回路AM1は、トランジスタMS1をオン状態にするかオフ状態にするかを設定するデータを記憶するための回路である。信号da1は、トランジスタMS1のオン/オフ状態を設定するためのデータ信号である。回路AM1は、ノードN1、トランジスタMO1、および容量素子C1を有しており、1T1C型の記憶回路である。また、回路AM1はアナログ電位を保持することが可能であるため、アナログメモリと呼ぶこともできる。ノードN1は保持ノードであり、トランジスタMS1のゲートと電気的に接続されている。容量素子C1はノードN1の電荷を保持するための保持容量である。容量素子C1の一方の端子にはVL1が入力され、他方の端子はノードN1と電気的に接続されている。トランジスタMO1は、信号da1が入力されるノードとノードN1間の導通状態を制御するためのパストランジスタである。トランジスタMO1のゲートには信号wr1が入力される。
<回路AM2>
回路AM2はトランジスタMS2をオン状態にするかオフ状態にするかを設定するデータを記憶するための回路であり、ノードN2およびトランジスタMO2を有する。信号da2は、トランジスタMS2のオン/オフ状態を設定するためのデータ信号である。ノードN2が保持ノードであり、トランジスタMS2のゲートに電気的に接続されている。トランジスタMO2は、信号da2が入力されるノードとノードN2間の導通を制御することができるパストランジスタである。トランジスタMO2のゲートには信号wr2が入力される。
回路AM2も、回路AM1と同様に、1T1C型の記憶回路であり、アナログ電位を保持することが可能であるため、アナログメモリと呼ぶこともできる。回路AM2では、ノードN2の保持容量はノードN2の寄生容量(例えば、トランジスタMS2のゲート容量)になる。回路AM2にも、回路AM1と同様に、ノードN2に接続される容量素子を意図的に設けてもよい。ノードN2の保持容量を小さくすることで、保持時間は短くなるが、回路AM2の書き込み速度を速くすることができる。なお、回路AM1も容量素子C1を設けない構成とすることが可能である。
(トランジスタMO1、MO2)
トランジスタMO1をオフ状態にすることで、ノードN1が電気的に浮遊状態になり、回路AM1は保持状態となる。同様に、トランジスタMO2をオフ状態にすることで、ノードN2が電気的に浮遊状態になり、回路AM2は保持状態となる。よって、回路AM1、AM2の保持期間を長くするには、トランジスタMO1、MO2がオフ電流の極めて小さいトランジスタであることが好ましい。そのため、例えば、トランジスタMO1、MO2もトランジスタMO3と同様にOSトランジスタとすればよい。
(保持時間について)
回路AM2を例に、OSトランジスタを書き込みトランジスタに用いることで、長時間のデータ保持が、例えば、85℃の環境下で10年データ保持が可能なことを説明する。
回路AM2の記憶容量が1ビットであるとする。電源電位を2V以上かつ3.5V以下、ノードN2の保持容量を21fF、保持電位の許容変動量を0.5V未満であるとする条件下では、85℃、10年間で保持電位の変動量を許容変動量未満とするには、ノードN2からのリーク電流は、33×10−24A未満であることが必要となる。他からのリークがさらに小さく、リーク箇所がほぼトランジスタMO2である場合、トランジスタMO2のチャネル幅が350nmのとき、トランジスタMO2のチャネル幅あたりのリーク電流を93×10−24A/μm未満とすることが好ましい。つまり、トランジスタMO2をOSトランジスタとすることで、回路AM2は85℃において10年間データを保持することが可能である。
なお、回路AM1等のOSトランジスタのオフ電流特性を利用する記憶回路では、保持期間において、OSトランジスタに所定の電位が供給され続けている場合がある。例えば、OSトランジスタのゲートには、OSトランジスタが完全にオフ状態となるような電位が供給され続けている場合がある。または、OSトランジスタのバックゲートには、ノーマリ・オフ状態になるような電位が供給され続けている場合がある。そのような場合には、保持期間において、記憶回路に電圧が供給されていることになるが、電流がほとんど流れないため、電力をほとんど消費しない。したがって、電力をほとんど消費しないことから、仮に、所定の電圧が記憶回路に供給されているとしても、実質的には、OSトランジスタを利用した記憶回路は不揮発性であると表現することができる。
<回路30>
回路30は、ノードa2を“H”にプリチャージする機能、およびノードa2の論理を“H”に維持する機能等を有する。回路30は、トランジスタMD2、回路31、ノードa2、およびノードa3を有する。
トランジスタMD2は、VH1が供給されるノードとノードa2間を導通するためのパストランジスタである。トランジスタMD2のゲートには信号wr4が入力される。トランジスタMD2をオン状態にすることで、ノードa2をHレベルにプリチャージすることができる。そのため、トランジスタMD2は、プリチャージ回路と呼ぶことができる。
回路31はトランジスタMD1およびインバータINV1を有する。回路31は、ノードa2の論理を“H”に維持する機能を有しており、キーパー回路と呼ばれる場合がある。回路31は必要に応じて設ければよい。トランジスタMD1のソースにはVH1が入力され、そのドレインはノードa2と電気的に接続され、そのゲートはINV1の出力ノードと電気的に接続されている。INV1の入力ノードはノードa2と電気的に接続され、その出力ノードはノードa3と電気的に接続されている。INV1には、VH1、VL1が入力される。回路31によって、ノードa3には、ノードa2の反転論理が書き込まれることとなる。
回路31では、トランジスタMD1がオン状態になるとノードa2がVH1を供給する配線と電気的に接続されることとなる。よって、プリチャージ期間では、トランジスタMD2がオン状態とされるので、回路31によってノードa2の論理は“H”に維持され、ノードa3の論理は“L”に維持される。
回路30はダイナミックロジック回路と呼ぶことができる。トランジスタMD2がオン状態である期間がプリチャージ期間であり、ノードa2がVH1に充電される。トランジスタMD2がオフ状態である期間が評価期間であり、トランジスタMS1、トランジスタMS2の導通状態によって、ノードa3の論理は決定される。つまり、ノードN1、N2の論理によって、ノードa3の論理が決定される。評価期間において、トランジスタMS1およびトランジスタMS2の少なくとも1つがオフ状態である場合は、ノードa3の論理は“L”に維持され、トランジスタMS1およびトランジスタMS2がオン状態である場合は、ノードa3の論理は“L”から“H”に遷移することとなる。つまり、記憶回路10は回路AM1、AM2で記憶されているデータに依存する電位をノードa3から出力する機能を有する。
以下、図4を参照し、半導体装置100の動作例を説明する。以下では、コンフィギュレーション・データを記憶する回路のデータを書き換えることをコンフィギュレーション、あるいはコンフィギュレーション動作と呼び、コンフィギュレーション動作が実行されるモードをコンフィギュレーション・モードと呼ぶこととする。
<<半導体装置100の動作例>>
図4は半導体装置100の動作例を示すタイミングチャートである。図4Aは、回路AM1に“H”を書き込む例を示し、図4Bは回路AM1に“L”を書き込む例を示す。
半導体装置100のモードは、期間P1ではコンフィギュレーション・モードであり、期間P2では通常動作が行われる通常モードである。期間P1では、ノードa2をプリチャージするため、VH1はVH1_Hとなる。期間P2では、回路90を低電圧駆動するため、VH1は、VH1_Hよりも低いVH1_Lとなる。
期間P1では、回路AM1、回路AM2にデータが書き込まれる。期間P1では、信号wr2をHレベルにしてトランジスタMO2をオン状態にする。信号wr3をLレベルにして、トランジスタMO3をオフ状態にする。また、信号wr4をLレベルにしてトランジスタMD2をオン状態にすることで、ノードa2をHレベルにプリチャージする。
回路AM1にデータを書き込む。信号wr1をHレベルにして、トランジスタMO1をオン状態にすることで、ノードN1に信号da1が書き込まれる。図4Aの例ではノードN1は“H”となり、図4Bの例では“L”となる。次に、トランジスタMO1をオフ状態にするため信号wr1をLレベルにする。ノードN1が浮遊ノードとなることで、ノードN1の電荷が保持され、回路AM1は保持状態となる。
次に、回路AM2に“H”を書き込む。まず、信号wr4をHレベルにして、トランジスタMD2をオフ状態にする。しかる後、信号da2をHレベルにすることで、ノードN2は“L”から“H”となる。そのため、図4Aの例では、トランジスタMS1およびトランジスタMS2が共にオン状態となり、ノードa2とノードa1間が導通状態となるため、ノードa1に供給されているVL1によってノードa2は“L”となる。他方、図4Bの例では、ノードN2は“L”から“H”に遷移するためトランジスタMS2はオン状態になるが、ノードN1がLレベルであるので、トランジスタMS1はオフ状態である。よって、ノードa2とノードa1間が非導通状態であるため、回路31によって、ノードa2の論理は“H”に維持され、ノードa3の論理も“L”に維持される。回路AM2を保持状態にするため、信号wr2をLレベルにしてトランジスタMO2をオフ状態にし、しかる後、信号da2をLレベルにする。これにより、コンフィギュレーション動作が完了する。
また、回路AM2の書き込み動作時において、トランジスタMO2をオン状態にした後、信号wr3をHレベルにしてトランジスタMO3をオン状態にしている。ノードa4とノードa3間が導通状態となるので、図4Aの例では、ノードa2が“L”であるので、ノードa4は“H”となる。図4Bの例では、ノードa4は“L”に維持される。しかる後、信号wr3をLレベルにしてトランジスタMO3をオフ状態にすることで、ノードa4は浮遊ノードとなるので、トランジスタMP1のゲートの寄生容量およびトランジスタMO1によって構成される記憶回路によって、ノードa4の電位、つまりトランジスタMP1のゲート電位が保持される。
期間P2では、期間P1で設定されたノードa4の電位によって、PSW50が駆動される。図4Aの例では、トランジスタMP1はオフ状態となるので、回路90はパワーゲーティングされ、VH1の供給が遮断される。他方、図4Bの例では、トランジスタMP1はオン状態となる。VH1をVH1_HからVH1_Lに低下させることで、上掲したように、トランジスタMP1はオーバードライブされる。回路90はVH1_Lが供給され、通常動作を行う。
つまり、記憶回路10によってPSW50を制御することで、時間的に細粒度なパワーゲーティングが可能となる。また、半導体装置100が複数の回路90を有する場合、それぞれに記憶回路10及びPSW50を設けることで、空間的に細粒度なパワーゲーティングが可能となる。したがって、半導体装置100の消費電力を効果的に低減することができる。また、期間P2では、回路AM1、回路AM2、およびトランジスタMO3を駆動する必要がないため、これらに信号を供給するドライバ回路は動作させる必要がない。そのため、ドライバ回路もパワーゲーティング可能な構成とし、期間P2で、ドライバ回路への電源供給を遮断するような電源管理を行えばよい。これにより、半導体装置100の消費電力をさらに低減することができる。
<記憶回路10の変形例>
図5に記憶回路10の変形例を示す。記憶回路61(図5A)、記憶回路62(図5B)は、バックゲートを備えるトランジスタMO11−MO13を有する点で、記憶回路10と異なる。
記憶回路61では、トランジスタMO11−MO13のバックゲートは、ノードOBGと電気的に接続されている。ノードOBGの電位によって、トランジスタMO11−MO13の閾値電圧を制御することができる。また、トランジスタMO11−MO13のバックゲートとチャネル形成領域との間の絶縁層に電荷蓄積層を設けた場合、記憶回路61の作製時に、ノードOBGを利用して、トランジスタMO11−MO13の電荷蓄積層に電荷を注入する工程を行うこともできる。この工程を行った場合は、記憶回路61の実際の使用時には、ノードOBGの電位を制御せずに、トランジスタMO11−MO13のバックゲートを電気的に浮遊状態にして、記憶回路61を動作させてもよい。
記憶回路62のトランジスタMO11−MO13では、それぞれ、バックゲートはゲートと電気的に接続されている。このようなデバイス構造とすることで、トランジスタMO11−MO13のオン電流特性を向上させることができる。また、トランジスタMO11のバックゲートをソースまたはドレインと電気的に接続してもよい。トランジスタMO12、MO13についても同様である。
記憶回路61、62において、トランジスタMO11のバックゲートを設けない構成してもよい。バックゲートを設ける場合、バックゲートは、端子OBG、トランジスタMO11のゲート、ソース、ドレインの何れかに電気的に接続するようにしてもよい。これは、トランジスタMO12、MO13についても同様である。
記憶回路10は、組み合わせ回路(例えば、ルックアップテーブル、マルチプレクサ等)が処理するデータを保持する記憶回路に用いることができ、様々な半導体装置に適用することが可能である。例えば、PLD(プログラマブル・ロジック・デバイス)のコンフィギュレーション・データを格納するコンフィギュレーション・メモリに記憶回路10を適用することができる。
PLDは、1のプログラマブル・ロジック・エレメント(PLE、論理ブロックともいう。)と、1の他のPLEとの間の導通状態を制御するプログラム可能な配線スイッチ(PRS:programmable routing switch)を有する。PLEは、例えば、ルックアップテーブル(LUT)、およびマルチプレクサなどの組み合わせ回路を有する。
配線スイッチの接続状態やPLEの回路構成を変更することで、PLDの回路構成の変更が可能である。また、PLEが処理する論理を変更することで、PLDの機能を変更することができる。接続構造や論理を設定するためのデータがコンフィギュレーション・データと呼ばれ、コンフィギュレーション・データが格納されるための記憶回路がコンフィギュレーション・メモリと呼ばれる。コンフィギュレーション・データをコンフィギュレーション・メモリに格納することがコンフィギュレーションと呼ばれる。特に、コンフィギュレーション・メモリに格納されているコンフィギュレーション・データを書き換える(更新する)ことをリコンフィギュレーションと呼ぶ場合がある。PLDをユーザの目的に応じた回路構成に設定することは、所望のコンフィギュレーション・データを作成(プログラム)し、コンフィギュレーションすることで実現することができる。
マルチコンテキストPLD(MC−PLD)は、コンフィギュレーション・データのセットを複数格納することが可能なコンフィギュレーション・メモリを有している。MC−PLDでは、ロードするコンフィギュレーション・データのセットを切り替えることで、回路構成を高速に変更することができる。また、MC−PLDでは動的コンフィギュレーションが可能であり、処理の実行中に非選択のコンフィギュレーション・データのセットを書き換えることができる。例えば、記憶回路10を応用することで、マルチコンテキストに対応したPPS、PRS、およびコンフィギュレーション・メモリ等を構成することができる。図6に、マルチコンテキストに対応したPPSを備えた半導体装置の一例を示す。
<<半導体装置の構成例2>>
図6に示す半導体装置101は、記憶回路15、PSW50、配線51、配線52、および回路90を有する。記憶回路15は記憶回路10の変形例であり、n(1よりも大きな整数)の回路20(20<n−1:0>)、回路30、配線40、n本の配線41(41<n−1:0>)、配線42、配線43、n本の配線44(44<n−1:0>)を有する。半導体装置101において、回路20、回路30、PSW50の動作および機能等は半導体装置100と同様である。
ノードa1は配線40と電気的に接続されている。配線40はVL1を供給することができる機能を有する。回路20<n−1:0>において、ノードa21はノードa1と電気的に接続され、ノードa22はノードa2と電気的に接続されている。つまり、回路20<n−1:0>がノードa1とノードa2との間に電気的に並列に接続されている。
電気的に並列接続されている回路21<n−1:0>は、n個のコンフィギュレーション・データを格納することができるコンフィギュレーション・メモリを成している。信号cfgはコンフィギュレーション・データ信号として機能することができる。配線41<n−1:0>は、それぞれ、トランジスタMO1<n−1:0>のゲートと電気的に接続されており、信号wr1<n−1:0>が入力される。配線42には信号cfgが入力され、かつトランジスタMO1<n−1:0>の第1端子が電気的に接続されている。
回路22<n−1:0>によって、回路21<n−1:0>から、コンフィギュレーション・データを出力する1の回路21<j>(jは0以上(n−1)以下の整数。)が選択される。回路22<n−1:0>は、コンテキストを選択するためのセレクタを成している。よって、コンテキスト機能が不要であれば、回路22<n−1:0>を設けない回路構成とすればよい。配線43には信号wr2が入力され、かつトランジスタMO2<n−1:0>のゲートが電気的に接続されている。配線44<n−1:0>には、それぞれ、信号ctx<n−1:0>が入力され、トランジスタMO2<n−1:0>の第1端子が電気的に接続されている。信号ctx<n−1:0>は、コンテキスト・データ信号である。また、信号ctx<n−1:0>は回路22<n−1:0>でなるセレクタを制御するための制御信号と呼ぶことができる。
信号ctx<n−1:0>のうち信号ctx<j>のみを“H”にしたコンテキスト・データを記憶回路15に書き込むことで、アドレス(行)番号jの回路AM2<j>のトランジスタMS2<j>がオン状態となり、回路AM1<j>が格納しているコンフィギュレーション・データに依存する論理がノードa22<j>から出力されることとなる。以下、この一連の動作をcontext<j>が選択される、と表現することもある。
<<動作例>>
図7、図8に半導体装置101の動作例を示す。半導体装置101は半導体装置100と同様に動作するため、異なる点を中心に説明する。
<コンフィギュレーション・モード>
期間P11では、半導体装置101はコンフィギュレーション・モードである。期間P11の半導体装置101の動作は、半導体装置100のコンフィギュレーション動作と同様である。VH1はVH1_Hである。まず、回路AM1<n−1:0>に、順次コンフィギュレーション・データが書き込まれる。ノードN1<n−1:0>の電位は信号cfgの電位レベルに対応したものとなる。
次に、信号ctx<n−1:0>によって、回路AM2<n−1:0>の何れか1つに“H”を書き込み、残りに“L”を書き込む。図7の例では、回路AM2<0>に“H”が書き込まれる。ノードN2<0>はHレベルとなり、ノードN2<n−1:1>はLレベルとなる。
信号wr3がHレベルとなることで、ノードa4にはノードa2の反転論理が書き込まれるため、ノードa4は“H”となる。信号wr3をLレベルにすることで、ノードa4は浮遊状態となり、その論理が保持される。
<通常モード>
期間P12では、半導体装置101は通常モードであり、context<0>が選択されている。期間P12の半導体装置101の動作は、半導体装置100の通常モードと同様である。VH1はVH1_HからVH1_Lになる。ノードa4は“H”であるため、PSW50によって、回路90はパワーゲーティングされ、VH1の供給が遮断されている。
<コンテキスト切り替えモード>
期間P13では、半導体装置101はコンテキスト切り替えモードである。回路AM2<0>で保持しているデータを“L”に書き換え、回路AM2<n−1:1>の何れか1つに“H”を書き込む。ここでは、回路AM2<1>に“H”を書き込む。
まず、期間P11と同じ論理レベルの信号ctx<n−1:0>が入力される。しかるのち、信号wr2を“H”にして、トランジスタMO2<n−1:0>をオン状態にして、回路AM2<n−1:0>に、それぞれ、信号ctx<n−1:0>を書き込む。
次に、回路AM2<n−1:0>を更新するために、VH1を高電位VH1_Hにする。信号wr4をLレベルにすることでトランジスタMD2をオン状態にする。ノードa2はプリチャージされ、“H”となる。トランジスタMO3がオフ状態であるため、ノードa4は“H”に維持される。そして、信号ctx<n−1:0>をLレベルとすることで、回路AM2<n−1:0>に“L”を書き込み、トランジスタMS2<n−1:0>をオフ状態にする。これにより、ノードa1とノードa2との間に貫通電流が流れるのを防止することができる。
次に、トランジスタMD2をオフ状態にするため、信号wr4をHレベルにする。信号ctx<1>をHレベルにし、その他の信号ctxをLレベルにすることで、ノードN2<1>に“H”を書き込み、その他のノードN2に“L”を書き込む。トランジスタMO2<1>がオン状態となるが、ノードN1<1>が“L”であるため、ノードa2は“H”のままであり、トランジスタMO3がオフ状態であるため、ノードa4は“H”のままである。
また、信号ctx<n−1:0>をそれぞれ回路AM2<n−1:0>に書き込んでいる期間に、信号wr3をHレベルにして、トランジスタMO3をオン状態にする。これにより、ノードa4にノードa2の反転論理が書き込まれ、ノードa4は“L”になる。信号wr3をLレベルにしてトランジスタMO3をオフ状態とすることで、ノードa4の電位が保持される。
<通常モード>
期間P14では、半導体装置101は通常モードであり、context<1>が選択されている。トランジスタMP1がオン状態であるため、回路90はVH1_Lが供給され、通常動作を行う。
このように、半導体装置101も半導体装置100と同様に、時間的および空間的に細粒度なパワーゲーティングが可能であるため、消費電力を低減することができる。また、半導体装置100、101は、パストランジスタをベースにした回路であるため、SRAMと比較して少ない素子数でデータを保持することができる。よって、半導体装置100、101を組み込んだ半導体装置を小型化でき、また消費電力を低減できる。また、SRAMは1ビットのデータを保持するため、相補データをメモリセルに書き込む必要があるが、半導体装置100、101はその必要がない。そのため、半導体装置100、101において、回路AM1、AM2およびトランジスタMO3を駆動するための回路を簡単化することが可能である。
<<スイッチ回路の構成例>>
図6に示す記憶回路15によって、プログラム可能なスイッチ回路を構成することが可能である。そのようなスイッチ回路の構成例を図9、図10に示す。
図9に示すスイッチ回路121は、n個の回路20(20<n−1:0>)を有する。スイッチ回路121は、記憶回路15から回路30、トランジスタMO3を除いた回路に対応し、マルチコンテキストに対応したスイッチ回路である。回路20<n−1:0>の何れか1つの回路AM2に、例えば回路AM2<k>に“H”を書き込み、トランジスタMS2<k>をオン状態に設定する。トランジスタMS1<k>の導通状態によって入力ノードと出力ノードとの間の接続状態が決定される。トランジスタMS1<k>の導通状態は、回路AM1<k>に保持されるコンフィギュレーション・データによって決定される。なお、kは0以上n−1以下の整数である。
コンテキスト切り替えを行わない場合は、1の回路21でスイッチ回路121を構成すればよい。
図10に示すスイッチ回路122は複数のスイッチ回路121を有する。スイッチ回路121は、p行q列のアレイ状に配列されている(p、qは1よりも大きい整数)。入力ノードIN<j>と、出力ノードOUT<p−1:0>との間の導通状態は、第j列にあるp個のスイッチ回路121で保持されているコンフィギュレーション・データによって設定される。
<<PLDの構成例>>
図11はマルチコンテキスト方式のPLDの一例を示す。図11に示すPLD200は、ロジック部、入出力部および周辺回路を有する。ロジック部は、ロジックアレイ(LA)211、212、スイッチアレイ(SWA)221−223を有する。入出力部は、入出力アレイ(IOA)224、225を有する。周辺回路はロジック部および入出力部を駆動するための機能回路を有する。例えば、周辺回路は、クロック生成装置230、コンフィギュレーション・コントローラ231、コンテキスト・コントローラ232、列ドライバ回路234、行ドライバ回路235を有する。
LA211、212はそれぞれ複数のプログラマブル・ロジック・エレメント(PLE)240を有する。図11の例では、LA211は10個のPLE240(PLE_00−_09)を有し、LA212は10個のPLE240(PLE_10−_19)を有する。IOA224、225は、PLD200の外部端子とLA211、212との間の信号の入出力を制御する機能を有する。
IOA224、225は、それぞれ、複数の入出力回路(IO)を有する。図11の例では、IOA224は10個の入出力回路(IO_00−IO_09)を有し、IOA225は10個の入出力回路(IO_10−IO_19)を有する。IO_00−IO_19は、互いに異なる外部端子と電気的に接続されている。
SWA221−223はそれぞれ複数のPRS280を有する。PRS280は、図10のスイッチ回路122と同様の回路構成を有する。PRS280を表すブロック内の表記はその機能を表している。例えば、“PLE0* to IO00”とは、PRS280が、PLE_00−_09の出力ノードとIO_00の入力ノードとの間の配線スイッチであることを示しており、コンフィギュレーション・データおよびコンテキスト・データに従って、PRS280は、PLE_00−_09とIO_00との電気的な接続関係を決定する。
クロック生成装置230は、外部から入力されるクロック信号から、PLD200内で使用される1または複数のクロック信号を生成する機能を有する。列ドライバ回路234は信号cfgを生成する機能を有する。行ドライバ回路235は信号wr1を生成する機能を有する。コンフィギュレーション・コントローラ231は、列ドライバ回路234および行ドライバ回路235を制御する機能を有する。コンテキスト・コントローラ232は、コンテキスト・データの書き込み、および書き換えを制御する機能を有する。コンテキスト・コントローラ232は、信号wr2―wr4、および信号ctxを生成する機能を有する。
<<PLEの構成例>>
図12はPLE240の構成例を示す。PLE240はプログラム可能な論理回路であり、ロジックセル(LCELL)241、およびコンフィギュレーション・メモリ部242を有する。LCELL241の機能は、コンフィギュレーション・メモリ部242から出力されるコンフィギュレーション・データで決定される。LCELL241は、データ信号datainの論理に応じた信号dataoutを生成する機能を有する。LCELL241には、クロック信号CLK、リセット信号RST等の制御信号が入力される。
コンフィギュレーション・メモリ部242は、複数の記憶回路243を有する。PLE240にはPPS245を介してVH1が入力される。PPS245はトランジスタMP1および記憶回路243を有する。このように、PLE240毎にPPS245を設けることで、細粒度パワーゲーティングが可能となる。
記憶回路243は、記憶回路15(図6)と同様の回路構成を有する。コンテキストの数に応じて、回路20を記憶回路243に設ければよい。あるいは、記憶回路243は、記憶回路15からトランジスタMO3を除いた回路構成とすることができる。
コンフィギュレーション・メモリ部242には、記憶回路243がp行q列のアレイ状に配置されている(p、qは1よりも大きい整数)。第j行、第k列の記憶回路243には、信号wr1<jn−1:(j−1)n>、および信号cfg<k−1>が入力される。jは1以上p以下の整数であり、kは1以上q以下の整数である。PLE240の有する全ての記憶回路243および、PPS245の記憶回路243に共通して、信号wr2、wr3、wr4、ctx<n−1:0>が入力される。
また、PPS245の記憶回路243は、コンフィギュレーション・メモリ部242に設けられている記憶回路243であってもよい。
<<LCELLの構成例>>
図13はLCELL241の構成例を示す。図13に示すLCELL241は、複数のロジック回路を有する。例えば、排他的論理和回路群(EXORs)261、マルチプレクサ(MUX)262、セレクタ(SEL)263、264、及びフリップフロップ回路(FF)265を有する。FF265は、レジスタとして機能する回路である。FF265は、データが入力される端子D、リセット信号RSTが入力される端子XR、クロック信号CLKが入力される端子、データを出力する端子Qを有する。コンフィギュレーション・メモリ部242から出力されるコンフィギュレーション・データによって、LCELL241内の組み合わせ回路(262―264)の論理機能が変更される。
データ信号datain_Lは、PRS280を経てLCELL241に入力される。データ信号dataout_Lは、他のPRS280に入力される。複数のLCELL241によってキャリーチェーンを形成するため、隣接するLCELL241間で、キャリー信号(carry signals)が伝送される。また、複数のLCELL241によってレジスタチェーンを形成するため、隣接するLCELL241間でレジスタチェーン信号(register chain signal)が伝送される。
センサネットワーク向けデバイスでは、待機時には環境発電による低電圧駆動、信号処理時には高性能処理、のように回路構成を柔軟に変更可能なPLDが好適なデバイスとして期待されている。
本実施の形態のPLDは、細粒度パワーゲーティング、ノーマリ・オフ駆動、およびコンテキスト切り替えによる低エネルギーかつ高速な回路構成の変更が可能である。よって、本実施の形態のPLDと無線通信装置およびセンサを組み合わせたデバイスは、センサーネットワークデバイスとして非常に好適である。我々は、実際にFPGAを試作し、このことを検証した。検証結果は実施例1に記す。
<<電子部品の作製方法例、および構成例>>
ここでは、半導体装置の一例として、電子部品、及び電子部品を具備する電子機器等について説明する。図14Aは、電子部品の作製方法例を示すフローチャートである。電子部品は、半導体パッケージ、IC用パッケージ、またはパッケージともいう。電子部品は、端子取り出し方向や、端子の形状に応じて、複数の規格や名称が存在する。そこで、本実施の形態では、その一例について説明することとする。
トランジスタで構成される半導体装置は、組み立て工程(後工程)を経て、プリント基板に脱着可能な部品が複数合わさることで完成する。後工程は、図14Aに示す各工程を経ることで完了する。具体的には、前工程で得られる素子基板が完成(ステップS1)した後、基板を複数のチップに分離するダイシング工程を行う。基板を複数のチップに分割する前に、基板を薄膜化して、前工程での基板の反り等を低減し、部品の小型化を図る(ステップS2)。
チップをピックアップしてリードフレーム上に搭載し接合する、ダイボンディング工程を行う(ステップS3)。ダイボンディング工程におけるチップとリードフレームとの接着方法は製品に適した方法を選択すればよい。例えば、樹脂やテープによってこれらを接着すればよい。ダイボンディング工程で、インターポーザ上にチップを搭載し接合する。ワイヤーボンディング工程で、リードフレームのリードとチップ上の電極とを金属の細線(ワイヤー)で電気的に接続する(ステップS4)。金属の細線には、銀線や金線を用いることができる。ワイヤーボンディングは、ボールボンディングとウェッジボンディングの何れでもよい。
ワイヤーボンディングされたチップは、エポキシ樹脂等で封止される、モールド工程が施される(ステップS5)。リードフレームのリードをメッキ処理する。そしてリードを切断及び成形加工する(ステップS6)。めっき処理によりリードの錆を防止し、後にプリント基板に実装する際のはんだ付けをより確実に行うことができる。パッケージの表面に印字処理(マーキング)を施す(ステップS7)。検査工程(ステップS8)を経て、電子部品が完成する(ステップS9)。上掲した半導体装置を組み込むことで、低消費電力で、小型な電子部品を提供することができる。
図14Bは電子部品の斜視模式図である。一例として、図14BはQFP(Quad Flat Package)を示している。図14Bに示す電子部品7000は、リード7001及び回路部7003を有する。回路部7003には、例えば、本実施の形態のPLDが作製されている。電子部品7000は、例えばプリント基板7002に実装される。このような電子部品7000が複数組み合わされて、それぞれがプリント基板7002上で電気的に接続されることで電子機器に搭載することができる。完成した回路基板7004は、電子機器等の内部に設けられる。
本実施の形態に係るPLD自体をプロセッサとして、あるいはPLDをCPU(中央演算処理装置)、MCU(マイクロコントローラユニット)、センサデバイス等に組み込んで、各種の処理を実行するプロセッサとして用いることができる。PLDと他の回路を1つの半導体チップ(ICチップ)に実装した、System−on−a−chip(SOC、SoC)として電子部品を構成することができる。センサデバイスにPLDを組み込む場合、複数のセンサで検出されたデータを1のPLDで処理するようにすることで、電子部品の小型化、多機能化が可能である。また、実施の形態1に係る半導体装置は消費電力を低減できるため、これを組み込んだ電子部品自体の消費電力も低減できる。
また、本実施の形態の電子部品は、デジタル信号処理、ソフトウェア無線、アビオニクス(通信機器、航法システム、自動操縦装置、飛行管理システム等の航空に関する電子機器)、ASIC(Application specific integrated circuit)のプロトタイピング、医療用画像処理、音声認識、暗号、バイオインフォマティクス(生物情報科学)、機械装置のエミュレータ、および電波天文学における電波望遠鏡等、幅広い分野の電子機器に用いることが可能である。本実施の形態により、電子機器の小型化、消費電力を削減することが可能である。
例えば、電子機器には、表示装置、パーソナルコンピュータ、記録媒体を備えた画像再生装置(DVD等の記録媒体の画像データを読み出し、その画像を表示するディスプレイを有する装置)等が挙げられる。その他に、携帯電話、携帯型を含むゲーム機、携帯情報端末、電子書籍端末、ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、ゴーグル型ディスプレイ(ヘッドマウントディスプレイ)、ナビゲーションシステム、音響再生装置(カーオーディオ、デジタルオーディオプレーヤ等)、複写機、ファクシミリ、プリンタ、プリンタ複合機等が挙げられる。これら電子機器の具体例を図15に示す。
図15Aに示す携帯型ゲーム機900は、筐体901、筐体902、表示部903、表示部904、マイクロホン905、スピーカ906、操作キー907、およびスタイラス908等を有する。
図15Bに示す携帯情報端末910は、筐体911、筐体912、表示部913、表示部914、接続部915、および操作キー916等を有する。表示部913は筐体911に設けられ、表示部914は筐体912に設けられている。接続部915により筐体911と筐体912とが接続されており、筐体911と筐体912との間の角度は、接続部915により変更可能となっている。そのため、接続部915における筐体911と筐体912との間の角度によって、表示部913で表示される画像の向きの変更や、画像の表示/非表示の切り換えを行う構成としてもよい。また、表示部913および/または表示部914にタッチパネル付の表示装置を適用してもよい。
図15Cに示すパーソナルコンピュータ920は、筐体921、表示部922、キーボード923、およびポインティングデバイス924等を有する。
図15Dは家庭用電化製品の一例であり、ここでは電気冷凍冷蔵庫を示す。電気冷凍冷蔵庫930は、筐体931、冷蔵室用扉932、および冷凍室用扉933等を有する。
図15Eに示すビデオカメラ940は、筐体941、筐体942、表示部943、操作キー944、レンズ945、および接続部946等を有する。操作キー944およびレンズ945は筐体941に設けられており、表示部943は筐体942に設けられている。そして、筐体941と筐体942は、接続部946により接続されており、筐体941と筐体942の間の角度は接続部946により変更可能な構造となっている。筐体941に対する筐体942の角度によって、表示部943に表示される画像の向きの変更や、画像の表示/非表示の切り換えを行う構成としてもよい。
図15Fに示す自動車950は、車体951、車輪952、ダッシュボード953、およびライト954等を有する。自動車950は、エンジンを動力とするものでもよいし、電気自動車、またはハイブリッド自動車であってもよい。
〔実施の形態2〕
本実施の形態では、OSトランジスタ、およびOSトランジスタを有する半導体装置について説明する。
<<OSトランジスタの構成例1>>
図16にOSトランジスタの構成の一例を示す。図16AはOSトランジスタの構成の一例を示す上面図である。図16Bは、y1−y2線断面図であり、図16Cはx1−x2線断面図であり、図16Dはx3−x4線断面図である。ここでは、y1−y2線の方向をチャネル長方向と呼び、x1−x2線方向をチャネル幅方向と呼ぶ場合がある。よって、図16Bは、OSトランジスタのチャネル長方向の断面構造を示す図であり、図16Cおよび図16Dは、OSトランジスタのチャネル幅方向の断面構造を示す図である。なお、デバイス構造を明確にするため、図16Aでは、一部の構成要素が省略されている。
OSトランジスタ501は絶縁表面に形成される。ここでは、絶縁層511上に形成されている。絶縁層511は基板510表面に形成されている。OSトランジスタ501は絶縁層516に覆われている。なお、絶縁層516をOSトランジスタ501の構成要素とみなすこともできる。OSトランジスタ501は、絶縁層512、絶縁層513、絶縁層514、絶縁層515、半導体層521−523、導電層530、導電層531、導電層532および導電層533を有する。ここでは、半導体層521−523をまとめて半導体領域520と呼称する。
導電層530はゲート電極として機能し、導電層533はバックゲート電極として機能する。導電層531、532は、それぞれ、ソース電極またはドレイン電極として機能する。絶縁層511は、基板510と導電層533を電気的に分離する機能を有する。絶縁層515はゲート絶縁層を構成し、絶縁層513、514はバックチャネル側のゲート絶縁層を構成する。
なお、チャネル長とは、例えば、トランジスタの上面図において、半導体(またはトランジスタがオン状態のときに半導体の中で電流の流れる部分)とゲート電極とが重なる領域、またはチャネルが形成される領域における、ソース(ソース領域またはソース電極)とドレイン(ドレイン領域またはドレイン電極)との間の距離をいう。なお、一のトランジスタにおいて、チャネル長が全ての領域で同じ値をとるとは限らない。即ち、一のトランジスタのチャネル長は一つの値に定まらない場合がある。そのため、本明細書等では、チャネル長はチャネルの形成される領域における、いずれか一の値、最大値、最小値または平均値とする。
チャネル幅とは、例えば、半導体(またはトランジスタがオン状態のときに半導体の中で電流の流れる部分)とゲート電極とが重なる領域、またはチャネルが形成される領域における、ソースとドレインとが向かい合っている部分の長さをいう。なお、一のトランジスタにおいて、チャネル幅がすべての領域で同じ値をとるとは限らない。即ち、一つのトランジスタのチャネル幅は、一つの値に定まらない場合がある。そのため、本明細書等では、チャネル幅は、チャネルの形成される領域における、いずれか一の値、最大値、最小値または平均値とする。
なお、トランジスタの構造によっては、実際にチャネルの形成される領域におけるチャネル幅(以下、実効的なチャネル幅と呼ぶ。)と、トランジスタの上面図において示されるチャネル幅(以下、見かけ上のチャネル幅と呼ぶ。)とが異なる場合がある。例えば、立体的な構造を有するトランジスタでは、実効的なチャネル幅が、トランジスタの上面図において示される見かけ上のチャネル幅よりも大きくなり、その影響が無視できなくなる場合がある。例えば、微細かつ立体的な構造を有するトランジスタでは、半導体の側面に形成されるチャネル領域の割合が大きくなる場合がある。その場合は、上面図において示される見かけ上のチャネル幅よりも、実際にチャネルの形成される実効的なチャネル幅の方が大きくなる。
特に、立体的な構造を有するトランジスタにおいては、実効的なチャネル幅の実測による見積もりが困難となる場合がある。例えば、設計値から実効的なチャネル幅を見積もるためには、半導体領域の形状が既知という仮定が必要である。したがって、半導体領域の形状が正確にわからない場合には、実効的なチャネル幅を正確に測定することは困難である。
そこで、本明細書では、トランジスタの上面図において、半導体領域とゲート電極とが重なる領域における、ソースとドレインとが向かい合っている部分の長さである見かけ上のチャネル幅を、「囲い込みチャネル幅(SCW:Surrounded Channel Width)」と呼ぶ場合がある。また、本明細書では、単にチャネル幅と記載した場合には、囲い込みチャネル幅または見かけ上のチャネル幅を指す場合がある。または、本明細書では、単にチャネル幅と記載した場合には、実効的なチャネル幅を指す場合がある。なお、チャネル長、チャネル幅、実効的なチャネル幅、見かけ上のチャネル幅、囲い込みチャネル幅などは、断面TEM像などを取得して、その画像を解析することなどによって、値を決定することができる。
なお、トランジスタの電界効果移動度や、チャネル幅当たりの電流値などを計算して求める場合、囲い込みチャネル幅を用いて計算する場合がある。その場合には、実効的なチャネル幅を用いて計算する場合とは異なる値をとる場合がある。
図16B、図16Cに示すように、半導体領域520は、半導体層521、半導体層522、半導体層523の順に積層している部分を有する。絶縁層515はこの積層部分を覆っている。導電層530は絶縁層513を介して積層部分と重なる。導電層531および導電層532は、半導体層521および半導体層522とでなる積層上に設けられており、それぞれ、この積層の上面に接している。半導体層521、522および導電層531、532の積層は、同じマスクを用いたエッチング工程を経ることで形成されている。
半導体層523は、半導体層521、522、および導電層531、532を覆うように形成されている。絶縁層515は半導体層523を覆っている。ここでは、半導体層523と絶縁層515は同じマスクを用いてエッチングされている。
チャネル幅方向の断面から見たとき、絶縁層515を介して、半導体層521−523の積層部分を取り囲むように、導電層530が形成されている(図16C参照)。このため、この積層部分には、垂直方向からのゲート電界と、側面方向からのゲート電界も印加される。OSトランジスタ501において、ゲート電界とは、導電層530(ゲート電極層)に印加される電圧により形成される電界のことをいう。ゲート電界によって、半導体層521−523の積層部分全体を電気的に取り囲むことができるので、半導体層522の全体(バルク)にチャネルが形成される場合がある。OSトランジスタ501のように、ゲート電界によって、チャネルが形成される半導体層が電気的に囲まれるトランジスタのデバイス構造をsurrounded channel(s−channel)構造と呼ぶことができる。s−channel構造をとるため、OSトランジスタ501は高いオン電流を有することができる。また、s−channel構造であることで、OSトランジスタ501の高周波特性を向上することができる。具体的には、遮断周波数を向上することができる。
s−channel構造は高いオン電流が得られるため、LSIなど微細化されたトランジスタが要求される半導体装置に適した構造といえ、また、動作周波数が高いトランジスタに適した構造といえる。該トランジスタを有する半導体装置は、高い周波数で動作させることができる。
OSトランジスタの微細化によって、集積度が高い、または小型な半導体装置を提供することが可能となる。例えば、OSトランジスタは、チャネル長が好ましくは10nm以上かつ1μm未満、さらに好ましくは10nm以上かつ100nm未満、さらに好ましくは10nm以上かつ70nm未満、さらに好ましくは10nm以上かつ60nm未満、さらに好ましくは10nm以上かつ30nm未満の領域を有する。例えば、OSトランジスタは、チャネル幅が好ましくは10nm以上かつ1μm未満、さらに好ましくは10nm以上かつ100nm未満、さらに好ましくは10nm以上かつ70nm未満、さらに好ましくは10nm以上かつ60nm未満、さらに好ましくは10nm以上かつ30nm未満の領域を有する。
酸化物半導体はシリコンよりも熱伝導率が低い、そのため、OSトランジスタ501において、半導体領域520は熱がこもりやすい。図16B、図16Dに示すように、導電層531と導電層532を、半導体層523および絶縁層515を介して導電層530と重なるように設けることで、導電層531、532に、半導体領域520(特に、半導体層522)で発生する熱を放熱させる機能を持たせることができる。
<絶縁層>
絶縁層511−516は、単層構造または積層構造の絶縁膜で形成される。絶縁膜を構成する材料には、例えば、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化ハフニウム、酸化タンタルなどがある。
なお、本明細書等において、酸化窒化物とは、窒素よりも酸素の含有量が多い化合物をいい、窒化酸化物とは、酸素よりも窒素の含有量が多い化合物をいう。本明細書等において、絶縁材料に用いられる酸化物には、窒素濃度が1atomic%未満のものも含まれる。
絶縁層514、515は半導体領域520と接しているため、酸化物を含むことが好ましく、特に、加熱により一部の酸素が脱離する酸化物材料を含むことが好ましい。好適には、化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含む酸化物を用いることが好ましい。化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含む酸化物膜は、加熱により一部の酸素が脱離する。絶縁層514、515から脱離した酸素は酸化物半導体である半導体領域520に供給され、酸化物半導体中の酸素欠損を低減することが可能となる。その結果、トランジスタの電気特性の変動を抑制し、信頼性を高めることができる。
化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含む酸化物膜は、例えば、TDS(Thermal Desorption Spectroscopy)分析にて、酸素原子に換算しての酸素の脱離量が1.0×1018atoms/cm3以上、好ましくは3.0×1020atoms/cm3以上である酸化物膜である。なお、上記TDS分析時における膜の表面温度は100℃以上700℃以下、または100℃以上500℃以下の範囲が好ましい。
絶縁層513は、絶縁層514に含まれる酸素が導電層533に含まれる金属と結びつき、絶縁層514に含まれる酸素が減少することを防ぐパッシベーション機能を有する。絶縁層516は、絶縁層515に含まれる酸素が減少することを防ぐパッシベーション機能を有する。
絶縁層511、513、516は、酸素、水素、水、アルカリ金属、アルカリ土類金属等をブロッキングできる機能を有していることが好ましい。絶縁層511、513、516を設けることで、半導体領域520から外部への酸素の拡散と、外部から半導体領域520への水素、水等が入り込みを防ぐことができる。このような機能を持たせるため、絶縁層511、513、516には、例えば、窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、酸化ガリウム、酸化窒化ガリウム、酸化イットリウム、酸化窒化イットリウム、酸化ハフニウム、酸化窒化ハフニウム等でなる絶縁膜を少なくとも1層設ければよい。
<導電層>
導電層530―533は、銅(Cu)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、金(Au)、アルミニウム(Al)、マンガン(Mn)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、鉛(Pb)、錫(Sn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ルテニウム(Ru)、白金(Pt)、イリジウム(Ir)、ストロンチウム(Sr)の低抵抗材料からなる単体、もしくは合金、またはこれらを主成分とする化合物を含む導電膜の単層または積層とすることが好ましい。特に、耐熱性と導電性を両立するタングステンやモリブデンなどの高融点材料を用いることが好ましい。また、アルミニウムや銅などの低抵抗導電性材料で形成することが好ましい。さらに、Cu−Mn合金を用いると、酸素を含む絶縁体との界面に酸化マンガンを形成し、酸化マンガンがCuの拡散を抑制する機能を持つので好ましい。
OSトランジスタ501の導電層531および導電層532は、半導体層521と半導体層522との積層を形成するために使用されるハードマスクから作製されている。そのため、導電層531および導電層532は、半導体層521および半導体層522の側面に接する領域を有していない。例えば、次のような工程を経て、半導体層521、522、導電層531、532を作製することができる。半導体層521、522を構成する2層の酸化物半導体膜を形成する。酸化物半導体膜上に、単層または積層の導電膜を形成する。この導電膜をエッチングしてハードマスクを形成する。このハードマスクを用いて、2層の酸化物半導体膜をエッチングして、半導体層521と半導体層522の積層を形成する。次に、ハードマスクをエッチングして、導電層531および導電層532を形成する。
<半導体層>
半導体層522は、例えば、インジウム(In)を含む酸化物半導体である。半導体層522は、例えば、インジウムを含むと、キャリア移動度(電子移動度)が高くなる。また、半導体層522は、元素Mを含むと好ましい。元素Mは、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、イットリウム(Y)またはスズ(Sn)などが好ましい。また、元素Mに適用可能なその他の元素としては、ホウ素(B)、シリコン(Si)、チタン(Ti)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、ゲルマニウム(Ge)、ジルコニウム(Zr)、モリブデン(Mo)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、ネオジム(Nd)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、タングステン(W)などがある。ただし、元素Mとして、前述の元素を複数組み合わせても構わない場合がある。元素Mは、例えば、酸素との結合エネルギーが高い元素である。例えば、酸素との結合エネルギーがインジウムよりも高い元素である。または、元素Mは、例えば、酸化物半導体のエネルギーギャップを大きくする機能を有する元素である。また、半導体層522は、亜鉛(Zn)を含むと好ましい。酸化物半導体は、亜鉛を含むと結晶化しやすくなる場合がある。
なお、半導体層522は、インジウムを含む酸化物半導体に限定されない。半導体層522は、例えば、亜鉛スズ酸化物、ガリウムスズ酸化物などの、インジウムを含まず、亜鉛を含む酸化物半導体、ガリウムを含む酸化物半導体、スズを含む酸化物半導体などであっても構わない。半導体層522は、例えば、エネルギーギャップが大きい酸化物を用いる。半導体層522のエネルギーギャップは、例えば、2.5eV以上4.2eV以下、好ましくは2.8eV以上3.8eV以下、さらに好ましくは3eV以上3.5eV以下とする。半導体領域520は、実施の形態3で説明されるCAAC−OSで形成されていることが好ましい。または、少なくとも、半導体層522はCAAC−OSで形成されていることが好ましい。
例えば、半導体層521および半導体層523は、半導体層522を構成する酸素を除く1種以上、または2種以上の元素から構成される酸化物半導体である。半導体層522を構成する酸素を除く1種以上、または二種以上の元素から半導体層521および半導体層523が構成されるため、半導体層521と半導体層522との界面、および半導体層522と半導体層523との界面において、界面準位が形成されにくい。
なお、半導体層521がIn−M−Zn酸化物のとき、InおよびMの和を100atomic%としたとき、好ましくはInが50atomic%未満、Mが50atomic%より高く、さらに好ましくはInが25atomic%未満、Mが75atomic%より高いとする。半導体層521をスパッタリング法で成膜する場合、上記の組成を満たすスパッタリングターゲットを用いることが好ましい。例えば、In:M:Zn=1:3:2が好ましい。
また、半導体層522がIn−M−Zn酸化物のとき、InおよびMの和を100atomic%としたとき、好ましくはInが25atomic%より高く、Mが75atomic%未満、さらに好ましくはInが34atomic%より高く、Mが66atomic%未満とする。半導体層522をスパッタリング法で成膜する場合、上記の組成を満たすスパッタリングターゲットを用いることが好ましい。例えば、In:M:Zn=1:1:1、In:M:Zn=1:1:1.2、In:M:Zn=2:1:3、In:M:Zn=3:1:2、In:M:Zn=4:2:4.1が好ましい。特に、スパッタリングターゲットとして、原子数比がIn:Ga:Zn=4:2:4.1を用いる場合、成膜される半導体層522の原子数比は、In:Ga:Zn=4:2:3近傍となる場合がある。
また、半導体層523がIn−M−Zn酸化物のとき、InおよびMの和を100atomic%としたとき、好ましくはInが50atomic%未満、Mが50atomic%より高く、さらに好ましくはInが25atomic%未満、Mが75atomic%より高くする。なお、半導体層523は、半導体層521と同種の酸化物を用いても構わない。ただし、半導体層521または/および半導体層523がインジウムを含まなくても構わない場合がある。例えば、半導体層521または/および半導体層523が酸化ガリウムであっても構わない。
(エネルギーバンド構造)
図17を参照して、半導体層521、半導体層522、および半導体層523の積層により構成される半導体領域520の機能およびその効果について、説明する。図17Aは、図16Bの部分拡大図であり、OSトランジスタ501の活性層(チャネル部分)を拡大した図である。図17BはOSトランジスタ501の活性層のエネルギーバンド構造であり、図17Aの一点鎖線z1−z2で示す部位のエネルギーバンド構造を示している。
図17Bの、Ec514、Ec521、Ec522、Ec523、Ec515は、それぞれ、絶縁層514、半導体層521、半導体層522、半導体層523、絶縁層515の伝導帯下端のエネルギーを示している。
ここで、真空準位と伝導帯下端のエネルギーとの差(「電子親和力」ともいう。)は、真空準位と価電子帯上端のエネルギーとの差(イオン化ポテンシャルともいう。)からエネルギーギャップを引いた値となる。なお、エネルギーギャップは、分光エリプソメータを用いて測定できる。また、真空準位と価電子帯上端のエネルギー差は、紫外線光電子分光分析(UPS:Ultraviolet Photoelectron Spectroscopy)装置を用いて測定できる。
絶縁層514と絶縁層515は絶縁体であるため、Ec514とEc515は、Ec521、Ec522、およびEc523よりも真空準位に近い(電子親和力が小さい)。
半導体層522には、半導体層521および半導体層523よりも電子親和力の大きい酸化物が用いられる。例えば、半導体層522として、半導体層521および半導体層523よりも電子親和力の0.07eV以上1.3eV以下、好ましくは0.1eV以上0.7eV以下、さらに好ましくは0.15eV以上0.4eV以下大きい酸化物が用いられる。なお、電子親和力は、真空準位と伝導帯下端のエネルギーとの差である。
なお、インジウムガリウム酸化物は、小さい電子親和力と、高い酸素ブロック性を有する。そのため、半導体層523がインジウムガリウム酸化物を含むと好ましい。ガリウム原子割合[Ga/(In+Ga)]は、例えば、70%以上、好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上とする。このとき、ゲート電圧を印加すると、半導体層521、半導体層522、半導体層523のうち、電子親和力の大きい半導体層522にチャネルが形成される。
ここで、半導体層521と半導体層522との間には、半導体層521と半導体層522との混合領域を有する場合がある。また、半導体層522と半導体層523との間には、半導体層522と半導体層523との混合領域を有する場合がある。混合領域は、界面準位密度が低くなる。そのため、半導体層521、半導体層522および半導体層523の積層体は、それぞれの界面近傍において、エネルギーが連続的に変化する(連続接合ともいう。)バンド構造となる。
このとき、電子は、半導体層521中および半導体層523中ではなく、半導体層522中を主として移動する。上述したように、半導体層521および半導体層522の界面における界面準位密度、半導体層522と半導体層523との界面における界面準位密度を低くすることによって、半導体層522中で電子の移動が阻害されることが少なく、トランジスタのオン電流を高くすることができる。
トランジスタのオン電流は、電子の移動を阻害する要因を低減するほど、高くすることができる。例えば、電子の移動を阻害する要因のない場合、効率よく電子が移動すると推定される。電子の移動は、例えば、チャネル形成領域の物理的な凹凸が大きい場合にも阻害される。または、例えば、チャネルの形成される領域中の欠陥準位密度が高い場合にも、電子の移動は阻害される。
OSトランジスタ501のオン電流を高くするためには、例えば、半導体層522の上面または下面(被形成面、ここでは半導体層521の上面)の、1μm×1μmの範囲における二乗平均平方根(RMS:Root Mean Square)粗さが1nm未満、好ましくは0.6nm未満、さらに好ましくは0.5nm未満、より好ましくは0.4nm未満とすればよい。また、1μm×1μmの範囲における平均面粗さ(Raともいう。)が1nm未満、好ましくは0.6nm未満、さらに好ましくは0.5nm未満、より好ましくは0.4nm未満とすればよい。また、1μm×1μmの範囲における最大高低差(P−Vともいう。)が10nm未満、好ましくは9nm未満、さらに好ましくは8nm未満、より好ましくは7nm未満とすればよい。RMS粗さ、RaおよびP−Vは、走査型プローブ顕微鏡システムを用いて測定することができる。
例えば、半導体層522が酸素欠損(VOとも表記する。)を有する場合、酸素欠損のサイトに水素が入り込むことでドナー準位を形成することがある。以下では酸素欠損のサイトに水素が入り込んだ状態をVOHと表記する場合がある。VOHは電子を散乱するため、トランジスタのオン電流を低下させる要因となる。なお、酸素欠損のサイトは、水素が入るよりも酸素が入る方が安定する。したがって、半導体層522中の酸素欠損を低減することで、トランジスタのオン電流を高くすることができる場合がある。
例えば、半導体層522のある深さにおいて、または、半導体層522のある領域において、二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)で測定される水素濃度は、1×1016atoms/cm3以上、2×1020atoms/cm3以下、好ましくは1×1016atoms/cm3以上、5×1019atoms/cm3以下、より好ましくは1×1016atoms/cm3以上、1×1019atoms/cm3以下、さらに好ましくは1×1016atoms/cm3以上、5×1018atoms/cm3以下とする。
半導体層522の酸素欠損を低減するために、例えば、絶縁層515に含まれる過剰酸素を、半導体層521を介して半導体層522まで移動させる方法などがある。この場合、半導体層521は、酸素透過性を有する層(酸素を通過または透過させる層)であることが好ましい。
OSトランジスタ501がs−channel構造である場合、半導体層522の全体にチャネルが形成される。したがって、半導体層522が厚いほどチャネル領域は大きくなる。即ち、半導体層522が厚いほど、OSトランジスタ501のオン電流を高くすることができる。
また、OSトランジスタ501のオン電流を高くするためには、半導体層523の厚さは小さいほど好ましい。半導体層523は、例えば、10nm未満、好ましくは5nm以下、さらに好ましくは3nm以下の領域を有していればよい。一方、半導体層523は、チャネルの形成される半導体層522へ、隣接する絶縁体を構成する酸素以外の元素(水素、シリコンなど)が入り込まないようブロックする機能を有する。そのため、半導体層523は、ある程度の厚さを有することが好ましい。半導体層523は、例えば、0.3nm以上、好ましくは1nm以上、さらに好ましくは2nm以上の厚さの領域を有していればよい。また、半導体層523は、絶縁層515などから放出される酸素の外方拡散を抑制するために、酸素をブロックする性質を有すると好ましい。
また、OSトランジスタ501の信頼性を高くするためには、半導体層521は厚く、半導体層523は薄いことが好ましい。半導体層521は、例えば、10nm以上、好ましくは20nm以上、さらに好ましくは40nm以上、より好ましくは60nm以上の厚さの領域を有していればよい。半導体層521の厚さを、厚くすることで、隣接する絶縁体と半導体層521との界面からチャネルの形成される半導体層522までの距離を離すことができる。ただし、半導体装置の生産性が低下する場合があるため、半導体層521は、例えば、200nm以下、好ましくは120nm以下、さらに好ましくは80nm以下の厚さの領域を有していればよい。
OSトランジスタ501に安定した電気特性を付与するには、半導体領域520中の不純物濃度を低減し、半導体層522を真性または実質的に真性にすることが有効である。なお、本明細書等において、酸化物半導体が実質的に真性であるという場合、酸化物半導体膜のキャリア密度は、8×1011/cm3未満、好ましくは1×1011/cm3未満、さらに好ましくは1×1010/cm3未満であり、1×10−9/cm3以上である。
酸化物半導体において、水素、窒素、炭素、シリコン、および主成分以外の金属元素は不純物となる。例えば、水素および窒素はドナー準位の形成に寄与し、キャリア密度を増大させてしまう。また、シリコンは酸化物半導体中で不純物準位の形成に寄与する。当該不純物準位はトラップとなり、トランジスタの電気特性を劣化させることがある。したがって、半導体層521、半導体層522および半導体層523の層中や、それぞれの界面において不純物濃度を低減させることが好ましい。
例えば、半導体層522および半導体層521は、シリコン濃度が1×1016atoms/cm3以上かつ1×1019atoms/cm3未満である領域を有する。シリコン濃度は、1×1016atoms/cm3以上かつ5×1018atoms/cm3未満が好ましく、1×1016atoms/cm3以上かつ2×1018atoms/cm3未満であることがより好ましい。また、半導体層522および半導体層523は、シリコン濃度が1×1016atoms/cm3以上かつ1×1019atoms/cm3未満である領域を有する。シリコン濃度は1×1016atoms/cm3以上かつ5×1018atoms/cm3未満が好ましく、1×1016atoms/cm3以上、2×1018atoms/cm3未満がより好ましい。シリコン濃度は例えばSIMSで測定することができる。
また、半導体層522の水素濃度を低減するために、半導体層521および半導体層523の水素濃度を低減すると好ましい。半導体層521および半導体層523は、水素濃度が1×1016atoms/cm3以上かつ2×1020atoms/cm3以下の領域を有する。水素濃度は、1×1016atoms/cm3以上かつ5×1019atoms/cm3以下が好ましく、1×1016atoms/cm3以上かつ1×1019atoms/cm3以下がより好ましく、1×1016atoms/cm3以上かつ5×1018atoms/cm3以下がさらに好ましい。水素濃度は例えばSIMSで測定することができる。
半導体層522の窒素濃度を低減するために、半導体層521および半導体層523の窒素濃度を低減すると好ましい。半導体層521および半導体層523は、窒素濃度が1×1016atoms/cm3以上かつ5×1019atoms/cm3未満の領域を有する。窒素濃度は1×1016atoms/cm3以上かつ5×1018atoms/cm3以下が好ましく、1×1016atoms/cm3以上かつ1×1018atoms/cm3以下がより好ましく、1×1016atoms/cm3以上かつ5×1017atoms/cm3以下がさらに好ましい。窒素濃度はSIMSで測定することができる。
また、上述のように高純度化された酸化物半導体をチャネル形成領域に用いたトランジスタのオフ電流は極めて小さい。例えば、ソースとドレインとの間の電圧を0.1(V)、5(V)、または、10(V)程度とした場合に、トランジスタのチャネル幅で規格化したオフ電流を数yA/μmから数zA/μmにまで低減することが可能となる。
図16は、半導体領域520が3層の例であるが、これに限定されない。例えば、半導体層521または半導体層523が無い2層構造としてもよい。または、半導体層521の上もしくは下、または半導体層523上もしくは下に、半導体層521―523と同様の半導体層を設けて、4層構造とすることも可能である。または、半導体層521の上、半導体層521の下、半導体層523の上、半導体層523の下のいずれか二箇所以上に、半導体層521―523と同様の半導体層を設けて、n層構造(nは5以上の整数)とすることもできる。
OSトランジスタ501をバックゲート電極の無いトランジスタにする場合、導電層533を設けなければよい。この場合、絶縁層512、513も設けず、絶縁層511上に絶縁層514を形成してもよい。
<電荷捕獲層>
Siトランジスタでは、チャネルドーピングによって閾値電圧を容易に制御することができる。これに対して、OSトランジスタは、チャネルドーピングでは、閾値電圧を効果的に変化させることが困難である。OSトランジスタでは、電荷捕獲層に電子を注入することで、閾値電圧を変動させることが可能である。例えば、電荷捕獲層への電子の注入はトンネル効果を利用すればよい。導電層533に正の電圧を印加することによって、トンネル電子を電荷捕獲層に注入する。
OSトランジスタ501においては、絶縁層515に電荷捕獲層を設けることができる。また、バックゲート(導電層533)を設ける場合は、絶縁層512または絶縁層513に電荷捕獲層を設けることが好ましい。あるいは、絶縁層513自体を電荷捕獲層として形成してもよい。例えば、絶縁層513を酸化ハフニウム、酸化アルミニウム、酸化タンタル、アルミニウムシリケート等で形成することで、電荷捕獲層として機能させることができる。
<基板>
基板510としては、例えば、絶縁体基板、半導体基板または導電体基板を用いればよい。絶縁体基板は、例えば、ガラス基板、石英基板、サファイア基板、安定化ジルコニア基板(イットリア安定化ジルコニア基板など)、樹脂基板などである。また、半導体基板は、例えば、シリコン、ゲルマニウムなどの単体半導体基板、または炭化シリコン、シリコンゲルマニウム、ヒ化ガリウム、リン化インジウム、酸化亜鉛、酸化ガリウムからなる化合物半導体基板などである。半導体基板は、バルク型でよいし、半導体基板に絶縁領域を介して半導体層が設けられているSOI(Silicon On Insulator)型でもよい。導電体基板は、黒鉛基板、金属基板、合金基板、導電性樹脂基板などである。または、金属の窒化物を有する基板、金属の酸化物を有する基板などがある。さらには、絶縁体基板に導電体または半導体が設けられた基板、半導体基板に導電体または絶縁体が設けられた基板、導電体基板に半導体または絶縁体が設けられた基板などである。または、上掲された基板に素子が設けられたものを用いてもよい。基板に設けられる素子は、容量素子、抵抗素子、スイッチ素子、発光素子、記憶素子などである。
基板510は可撓性基板でもよい。可撓性基板上にトランジスタを設ける方法としては、非可撓性基板(例えば、半導体基板)上にトランジスタを作製した後、トランジスタを剥離し、可撓性基板である基板510に転置する方法もある。その場合には、非可撓性基板とトランジスタとの間に剥離層を設けるとよい。なお、基板510として、繊維を編みこんだシート、フィルムまたは箔などを用いてもよい。また、基板510が伸縮性を有してもよい。また、基板510は、折り曲げや引っ張りをやめると元の形状に戻る性質を有してもよい。または、元の形状に戻らない性質を有してもよい。基板510の厚さは、例えば、5μm以上700μm以下、好ましくは10μm以上500μm以下、さらに好ましくは15μm以上300μm以下とする。基板510を薄くすると、半導体装置を軽量化することができる。また、基板510を薄くすることで、ガラスのような素材であっても、伸縮性を有する場合や、折り曲げや引っ張りをやめると元の形状に戻る性質を有する場合がある。そのため、落下などによって基板510上の半導体装置に加わる衝撃などを緩和することができる。即ち、丈夫な半導体装置を提供することができる。
可撓性基板である基板510は、例えば、金属、合金、樹脂もしくはガラス、またはそれらの繊維などである。可撓性基板は、線膨張率が低いほど環境による変形が抑制されて好ましい。可撓性基板には、例えば、線膨張率が1×10−3/K以下、5×10−5/K以下、または1×10−5/K以下である材質を用いるとよい。樹脂としては、例えば、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド(ナイロン、アラミドなど)、ポリイミド、ポリカーボネート、アクリル、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などがある。特に、アラミドは、線膨張率が低いため可撓性基板の材料として好適である。
<<OSトランジスタの構成例2>>
OSトランジスタ501は、導電層530をマスクにして、半導体層523及び絶縁層515をエッチングすることができる。そのような工程を経たOSトランジスタの構成例を図18Aに示す。図18AのOSトランジスタ502では、半導体層523および絶縁層515の端部は導電層530の端部とほぼ一致することになる。導電層530の下部のみに半導体層523および絶縁層515が存在する。
<<OSトランジスタの構成例3>>
図18Bに示すOSトランジスタ503は、OSトランジスタ502に導電層535、導電層536を追加したデバイス構造を有する。ソース電極およびドレイン電極として機能する一対の電極は、導電層535と導電層531との積層、および導電層536と導電層532との積層で構成される。
導電層535、536は、単層または積層の導電体で形成される。例えば、ホウ素、窒素、酸素、フッ素、シリコン、リン、アルミニウム、チタン、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、イットリウム、ジルコニウム、モリブデン、ルテニウム、銀、インジウム、スズ、タンタルおよびタングステンを一種以上含む導電体を用いることができる。導電体は合金や化合物であってもよく、アルミニウムを含む導電体、銅およびチタンを含む導電体、銅およびマンガンを含む導電体、インジウム、スズおよび酸素を含む導電体、チタンおよび窒素を含む導電体などを用いてもよい。
導電層535、536は可視光線を透過する性質を有してもよい。または、導電層535、536は可視光線、紫外線、赤外線もしくはX線を、反射もしくは吸収することで透過させない性質を有してもよい。このような性質を有することで、OSトランジスタ503の電気特性の迷光による変動を抑制できる場合がある。
半導体層522などとの間にショットキー障壁を形成しない層を、導電層535、536に用いるのが好ましい場合がある。こうすることで、OSトランジスタ503のオン特性を向上させることができる。
導電層535、536は、導電層531、532よりも高抵抗の膜を用いると好ましい場合がある。また、導電層535、536は、OSトランジスタ503のチャネル(具体的には、半導体層522)よりも抵抗が低いことが好ましい場合がある。例えば、導電層535、536の抵抗率を、0.1Ωcm以上かつ100Ωcm以下、または0.5Ωcm以上かつ50Ωcm以下、または1Ωcm以上かつ10Ωcm以下とすればよい。導電層535、536の抵抗率を上述の範囲とすることにより、チャネルとドレインとの境界部における電界集中を緩和することができる。そのため、OSトランジスタ503の電気特性の変動を低減することができる。また、ドレインから生じる電界に起因したパンチスルー電流を低減することができる。そのため、チャネル長の短いトランジスタにおいても、飽和特性を良好にすることができる。なお、ソースとドレインとが入れ替わらない回路構成であれば、導電層535および導電層536のいずれか一方のみ(例えば、ドレイン側)を配置するほうが好ましい場合がある。
<<OSトランジスタの構成例4>>
図16に示すOSトランジスタ501は、導電層531及び導電層532が、半導体層521、522の側面と接していてもよい。そのような構成例を図18Cに示す。図18Cに示すOSトランジスタ504は、導電層531及び導電層532が半導体層521の側面及び半導体層522の側面と接している。
半導体装置の作製工程において、絶縁体、導電体、半導体の成膜は、スパッタリング法、化学気相堆積(CVD;Chemical Vapor Deposition)法、分子ビームエピタキシー(MBE;Molecular Beam Epitaxy)法、原子層堆積(ALD;Atomic Layer Deposition)法、またはパルスレーザ堆積(PLD;Pulsed Laser Deposition)法等で行えばよい。CVD法は、熱CVD法、有機金属CVD(MOCVD;Metal Organic CVD)法、プラズマCVD(PECVD;Plasma Enhanced CVD)法等を含む。例えば、絶縁膜をCVD法、好ましくはPECVD法によって成膜すると、被覆性を向上させることができるため好ましい。また、CVD法で成膜する場合、プラズマによるダメージを減らすには、熱CVD法、MOCVD法あるいはALD法が好ましい。また、スパッタリング法で成膜する場合、例えば、対向ターゲット型のスパッタ装置、平行平板型のスパッタ装置等を用いればよい。例えば、半導体領域520の半導体層522は、対向ターゲット型のスパッタ装置で成膜を行うことが好ましい。
<<PLDのデバイス構造例>>
OSトランジスタは、Siトランジスタ等が作製された素子層に積層することが可能である。例えば、実施の形態1のPLD200(図11)を、SiトランジスタとOSトランジスタとが積層されたデバイス構造とすることができる。図19はPLD200のデバイス構造を説明する断面図である。図19には、代表的に回路20を示している。図19において、符号およびハッチングが付されていない領域は絶縁物で形成されている領域であり、符号が付されていないが、ハッチングが付されている領域は導電体で形成されている領域である。
PLD200は、単結晶シリコンウエハ700に形成されている。単結晶シリコンウエハ700には、素子層701、702が作製される。素子層701はSiトランジスタが作製される層であり、素子層702はOSトランジスタおよび容量素子が作製される層である。図19の例では、素子層701に、トランジスタMS1、MS2が作製され、素子層702にトランジスタMO1、MO2、容量素子C1が作製されている。
なお図19において、符号およびハッチングが付されていない領域は絶縁体で形成されている。ハッチングが付されているが、符号が付されていない領域は導電体でなり、配線や電極を構成している。図3に示すような回路構成となるように、導電体により、素子層701、702に作製されている素子が電気的に接続されている。
710は素子分離のための絶縁物である。711、712はn型不純物領域である。751、752は導電層であり、それぞれ、トランジスタMO1、MO2のバックゲートを構成している。761−763は絶縁層である。
トランジスタMO1、MO2のデバイス構造はOSトランジスタ502(図18A)と同様である。容量素子C1は、トランジスタMO1、MO2と同じ工程で作製される。容量素子C1の一方の電極は、トランジスタMO1の導電層750で構成され、他方の電極は、トランジスタMO1のゲート電極と同じ導電層から形成されている。図示していないが、トランジスタMO3もトランジスタMO2と同様に素子層702に作製されている。
容量素子C1をトランジスタMO1、MO2と異なる素子層に形成することで、ノードN1の保持時間を確保しつつ、回路20の面積を縮小することができる。そのような例を図20に示す。図20の例では容量素子C1は、素子層702に積層されている。
図19、図20は、素子層701にプレナー型のトランジスタを作製した例を示しているが、立体構造を有するトランジスタ(フィン(FIN)型、トライゲート型など)を作製してもよい。図21にフィン型トランジスタの一例を示す。図21Aはトランジスタのチャネル長方向の断面図であり、図21Bは、E−F線で切断した図21Aの断面図である。
図21に示すトランジスタM70は、活性層(チャネル形成領域とも呼ぶ。)772が凸形状を有し、その側面及び上面に沿ってゲート絶縁層776及びゲート電極777が設けられている。771はウエルであり、773は低濃度不純物領域であり、774は高濃度不純物領域である。775は導電性領域である。778、779は側壁絶縁層である。図21には、単結晶シリコンウエハ700を加工して凸部を形成する場合を示したが、SOI基板を加工して凸形状を有する半導体層を形成してもよい。
〔実施の形態3〕
<<酸化物半導体の構造>>
本実施の形態では、酸化物半導体の構造について説明する。
酸化物半導体は、単結晶酸化物半導体と、それ以外の非単結晶酸化物半導体とに分けられる。非単結晶酸化物半導体としては、CAAC−OS(C Axis Aligned Crystalline Oxide Semiconductor)、多結晶酸化物半導体、nc−OS(nanocrystalline Oxide Semiconductor)、擬似非晶質酸化物半導体(a−like OS:amorphous like Oxide Semiconductor)、非晶質酸化物半導体などがある。
また別の観点では、酸化物半導体は、非晶質酸化物半導体と、それ以外の結晶性酸化物半導体とに分けられる。結晶性酸化物半導体としては、単結晶酸化物半導体、CAAC−OS、多結晶酸化物半導体、nc−OSなどがある。
非晶質構造の定義としては、一般に、準安定状態で固定化していないこと、等方的であって不均質構造を持たないことなどが知られている。また、長距離秩序性を有さないが、ある原子から最近接原子または第2近接原子までの範囲において秩序性を有していてもよい構造を非晶質構造と呼ぶ場合がある。
逆の見方をすると、本質的に安定な酸化物半導体の場合、完全な非晶質(completely amorphous)酸化物半導体と呼ぶことはできない。また、等方的でない(例えば、微小な領域において周期構造を有する)酸化物半導体を、完全な非晶質酸化物半導体と呼ぶことはできない。ただし、a−like OSは、微小な領域において周期構造を有するものの、鬆(ボイドともいう。)を有し、不安定な構造である。そのため、物性的には非晶質酸化物半導体に近いといえる。
<CAAC−OS>
CAAC−OSは、c軸配向した複数の結晶部(ペレットともいう。)を有する酸化物半導体の一つである。
透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)によって、CAAC−OSの明視野像と回折パターンとの複合解析像(高分解能TEM像ともいう。)を観察すると、複数のペレットを確認することができる。一方、高分解能TEM像ではペレット同士の境界、即ち結晶粒界(グレインバウンダリーともいう。)を明確に確認することができない。そのため、CAAC−OSは、結晶粒界に起因する電子移動度の低下が起こりにくいといえる。
以下では、TEMによって観察したCAAC−OSについて説明する。試料面と略平行な方向から観察したCAAC−OSの断面の高分解能TEM像により、ペレットにおいて、金属原子が層状に配列していることを確認できる。金属原子の各層の配列は、CAAC−OSの膜を形成する面(被形成面ともいう。)または上面の凹凸を反映しており、CAAC−OSの被形成面または上面と平行となる。
また、高分解能TEM像により、CAAC−OSは特徴的な原子配列を有することを確認することができる。ペレット一つの大きさは1nm以上のものや、3nm以上のものがあり、ペレットとペレットとの傾きにより生じる隙間の大きさは0.8nm程度であることがわかる。したがって、ペレットを、ナノ結晶(nc:nanocrystal)と呼ぶこともできる。また、CAAC−OSを、CANC(C−Axis Aligned nanocrystals)を有する酸化物半導体と呼ぶこともできる。
また、試料面と略垂直な方向から観察したCAAC−OSの平面のCs補正高分解能TEM像では、ペレットは、金属原子が三角形状、四角形状または六角形状に配列していることを確認できる。しかしながら、異なるペレット間で、金属原子の配列に規則性は見られない。
次に、X線回折(XRD:X−Ray Diffraction)によって解析したCAAC−OSについて説明する。例えば、InGaZnO4の結晶を有するCAAC−OSに対し、out−of−plane法による構造解析を行うと、回折角(2θ)が31°近傍にピークが現れる場合がある。このピークは、InGaZnO4の結晶の(009)面に帰属されることから、CAAC−OSの結晶がc軸配向性を有し、c軸が被形成面または上面に略垂直な方向を向いていることが確認できる。
なお、CAAC−OSのout−of−plane法による構造解析では、2θが31°近傍のピークの他に、2θが36°近傍にもピークが現れる場合がある。2θが36°近傍のピークは、CAAC−OS中の一部に、c軸配向性を有さない結晶が含まれることを示している。より好ましいCAAC−OSは、out−of−plane法による構造解析では、2θが31°近傍にピークを示し、2θが36°近傍にピークを示さない。
一方、CAAC−OSに対し、c軸に略垂直な方向からX線を入射させるin−plane法による構造解析を行うと、2θが56°近傍にピークが現れる。このピークは、InGaZnO4の結晶の(110)面に帰属される。CAAC−OSの場合は、2θを56°近傍に固定し、試料面の法線ベクトルを軸(φ軸)として試料を回転させながら分析(φスキャン)を行っても、明瞭なピークは現れない。これに対し、InGaZnO4の単結晶酸化物半導体であれば、2θを56°近傍に固定してφスキャンした場合、(110)面と等価な結晶面に帰属されるピークが6本観察される。したがって、XRDを用いた構造解析から、CAAC−OSは、a軸およびb軸の配向が不規則であることが確認できる。
次に、電子回折によって解析したCAAC−OSについて説明する。例えば、InGaZnO4の結晶を有するCAAC−OSに対し、試料面に平行にプローブ径が300nmの電子線を入射させると、回折パターン(制限視野透過電子回折パターンともいう。)が現れる場合がある。この回折パターンには、InGaZnO4の結晶の(009)面に起因するスポットが含まれる。したがって、電子回折によっても、CAAC−OSに含まれるペレットがc軸配向性を有し、c軸が被形成面または上面に略垂直な方向を向いていることがわかる。一方、同じ試料に対し、試料面に垂直にプローブ径が300nmの電子線を入射させた場合、リング状の回折パターンが確認される。したがって、電子回折によっても、CAAC−OSに含まれるペレットのa軸およびb軸は配向性を有さないことがわかる。
上述したように、CAAC−OSは結晶性の高い酸化物半導体である。酸化物半導体の結晶性は不純物の混入や欠陥の生成などによって低下する場合があるため、逆の見方をするとCAAC−OSは不純物や欠陥(酸素欠損など)の少ない酸化物半導体ともいえる。
なお、不純物は、酸化物半導体の主成分以外の元素で、水素、炭素、シリコン、遷移金属元素などがある。例えば、シリコンなどの、酸化物半導体を構成する金属元素よりも酸素との結合力の強い元素は、酸化物半導体から酸素を奪うことで酸化物半導体の原子配列を乱し、結晶性を低下させる要因となる。また、鉄やニッケルなどの重金属、アルゴン、二酸化炭素などは、原子半径(または分子半径)が大きいため、酸化物半導体の原子配列を乱し、結晶性を低下させる要因となる。
酸化物半導体が不純物や欠陥を有する場合、光や熱などによって特性が変動する場合がある。例えば、酸化物半導体に含まれる不純物は、キャリアトラップとなる場合や、キャリア発生源となる場合がある。また、酸化物半導体中の酸素欠損は、キャリアトラップとなる場合や、水素を捕獲することによってキャリア発生源となる場合がある。
不純物および酸素欠損の少ないCAAC−OSは、キャリア密度の低い酸化物半導体である。具体的には、8×1011/cm3未満、好ましくは1×1011/cm3未満、さらに好ましくは1×1010/cm3未満であり、1×10−9/cm3以上のキャリア密度の酸化物半導体とすることができる。そのような酸化物半導体を、高純度真性または実質的に高純度真性な酸化物半導体と呼ぶ。CAAC−OSは、不純物濃度が低く、欠陥準位密度が低い。即ち、安定な特性を有する酸化物半導体であるといえる。
<nc−OS>
nc−OSは、高分解能TEM像において、結晶部を確認することのできる領域と、明確な結晶部を確認することのできない領域と、を有する。nc−OSに含まれる結晶部は、1nm以上10nm以下、または1nm以上3nm以下の大きさであることが多い。なお、結晶部の大きさが10nmより大きく100nm以下である酸化物半導体を微結晶酸化物半導体と呼ぶことがある。nc−OSは、例えば、高分解能TEM像では、結晶粒界を明確に確認できない場合がある。なお、ナノ結晶は、CAAC−OSにおけるペレットと起源を同じくする可能性がある。そのため、以下ではnc−OSの結晶部をペレットと呼ぶ場合がある。
nc−OSは、微小な領域(例えば、1nm以上10nm以下の領域、特に1nm以上3nm以下の領域)において原子配列に周期性を有する。また、nc−OSは、異なるペレット間で結晶方位に規則性が見られない。そのため、膜全体で配向性が見られない。したがって、nc−OSは、分析方法によっては、a−like OSや非晶質酸化物半導体と区別が付かない場合がある。例えば、nc−OSに対し、ペレットよりも大きい径のX線を用いた場合、out−of−plane法による解析では、結晶面を示すピークは検出されない。また、nc−OSに対し、ペレットよりも大きいプローブ径(例えば50nm以上)の電子線を用いる電子回折を行うと、ハローパターンのような回折パターンが観測される。一方、nc−OSに対し、ペレットの大きさと近いかペレットより小さいプローブ径の電子線を用いるナノビーム電子回折を行うと、スポットが観測される。また、nc−OSに対しナノビーム電子回折を行うと、円を描くように(リング状に)輝度の高い領域が観測される場合がある。さらに、リング状の領域内に複数のスポットが観測される場合がある。
このように、ペレット(ナノ結晶)間では結晶方位が規則性を有さないことから、nc−OSを、RANC(Random Aligned nanocrystals)を有する酸化物半導体、またはNANC(Non−Aligned nanocrystals)を有する酸化物半導体と呼ぶこともできる。
nc−OSは、非晶質酸化物半導体よりも規則性の高い酸化物半導体である。そのため、nc−OSは、a−like OSや非晶質酸化物半導体よりも欠陥準位密度が低くなる。ただし、nc−OSは、異なるペレット間で結晶方位に規則性が見られない。そのため、nc−OSは、CAAC−OSと比べて欠陥準位密度が高くなる。
<a−like OS>
a−like OSは、nc−OSと非晶質酸化物半導体との間の構造を有する酸化物半導体である。a−like OSは、高分解能TEM像において鬆が観察される場合がある。また、高分解能TEM像において、明確に結晶部を確認することのできる領域と、結晶部を確認することのできない領域と、を有する。鬆を有するため、a−like OSは、不安定な構造である。a−like OSは、電子照射によって結晶部の成長が見られる場合がある。一方、nc−OSおよびCAAC−OSは、電子照射による結晶部の成長がほとんど見られないことがわかる。即ち、a−like OSは、nc−OSおよびCAAC−OSと比べて、不安定な構造であることがわかる。
また、鬆を有するため、a−like OSは、nc−OSおよびCAAC−OSと比べて密度の低い構造である。具体的には、a−like OSの密度は、同じ組成の単結晶酸化物半導体の密度の78.6%以上92.3%未満となる。また、nc−OSの密度およびCAAC−OSの密度は、同じ組成の単結晶酸化物半導体の密度の92.3%以上100%未満となる。単結晶酸化物半導体の密度の78%未満となる酸化物半導体は、成膜すること自体が困難である。
例えば、In:Ga:Zn=1:1:1[原子数比]を満たす酸化物半導体において、菱面体晶構造を有する単結晶InGaZnO4の密度は6.357g/cm3となる。よって、例えば、In:Ga:Zn=1:1:1[原子数比]を満たす酸化物半導体において、a−like OSの密度は5.0g/cm3以上5.9g/cm3未満となる。また、例えば、In:Ga:Zn=1:1:1[原子数比]を満たす酸化物半導体において、nc−OSの密度およびCAAC−OSの密度は5.9g/cm3以上6.3g/cm3未満となる。
なお、同じ組成の単結晶が存在しない場合がある。その場合、任意の割合で組成の異なる単結晶を組み合わせることにより、所望の組成における単結晶に相当する密度を見積もることができる。所望の組成の単結晶に相当する密度は、組成の異なる単結晶を組み合わせる割合に対して、加重平均を用いて見積もればよい。ただし、密度は、可能な限り少ない種類の単結晶を組み合わせて見積もることが好ましい。
以上のように、酸化物半導体は、様々な構造をとり、それぞれが様々な特性を有する。なお、酸化物半導体は、例えば、非晶質酸化物半導体、a−like OS、nc−OS、CAAC−OSのうち、二種以上を有する積層膜であってもよい。
実施の形態1では、OSトランジスタが理想的な電荷保持機能を発現させる浮遊ノードを構成しうることを利用したオーバードライブ駆動を開示した。我々は、OSトランジスタを適用したFPGA(OS FPGA)を設計し、試作した。本実施例では、OS FPGAがサブスレッショルド電圧駆動に適していることを説明する。
I.イントロダクション
センサネットワークとして極めて多数のセンサデバイスを敷設するシステムが提案されている。このようなシステム向けデバイスでは、バッテリー交換などのメンテナンスを不要とし、保守性を高めるため、待機時に自然エネルギーからの環境発電による極低電圧及び超低消費電力駆動の実現が期待されている。
極低電圧動作向けのデバイスとして特別な設計指針に従って、特殊なスタンダードセルやライブラリを利用したASICが提案されている。極低電圧及び超低消費電力駆動向けに設計されたASICは固有のアプリケーションに特化したハードウェア構成であるため、センサネットワーク向けデバイスとして採用すると、想定したアプリケーション以外に利用できない問題がある。また、センサネットワーク特有の動作である、待機時には極低電圧及び超低消費電力駆動を、信号処理時には高性能処理を実現する、多種多様なデバイスが求められるため、処理要求に応じて回路構成を柔軟に変更可能なFPGAが最適なデバイスとして期待されている(非特許文献1)。
しかしながら、FPGAはASICと同様の設計手法のみでは極低電圧駆動が実現できない問題がある。例えば、正常な論理伝達を阻害する信号電位の低下を引き起こす、配線スイッチを構成するパストランジスタにおける閾値電圧(Vth)落ちや低Ion/Ioff比による静的リーク電流への対処が必要である(非特許文献4)。FPGAの極低電圧駆動向けに、信号電位のVth落ちを防ぐ目的で配線スイッチをパストランジスタからトライステートバッファへ変更する方法が提案されているが、回路面積及び消費電力が増加する問題がある。また、低Ion/Ioff比による静的リーク電流を低減する目的で閾値電圧の高いトランジスタを採用してIoffを下げる方法(非特許文献4)が提案されているが、Ionも下がるので、極低電圧駆動のための回路の最適化が難しい。そのため、極低電圧化を実現する更なる改良が求められる。
本実施例では、サブスレッショルド動作に適したOS FPGAについて説明する。特にOSトランジスタが理想的な電荷保持機能を有する浮遊ノードを構成しうることを利用して、不揮発性コンフィギュレーション・メモリ、PLE間の接続を制御するプログラム可能な配線スイッチ(PRS)、及び細粒度パワーゲーティングを実現するプログラム可能なパワースイッチ(PPS)にOSトランジスタを適用し、オーバードライブを採用することで極低電圧駆動を実現する方法を提案する。
PRSは、Vth落ちが問題となるパストランジスタを構成するnチャネル型Siトランジスタ(nch−Siトランジスタ)のゲートを浮遊ゲートとし、当該浮遊ゲートの電位を向上、PPSはPLEの高電位電源の供給を制御するpチャネル型Siトランジスタ(pch−Siトランジスタ)のゲートを浮遊ゲートとし、当該浮遊ゲートの電位を低下するオーバードライブを実現することで、PRS及びPPSは高Ion/Ioff比の駆動が可能となり、安定した極低電圧駆動が期待される。上記構成では、極低リーク電流のOSトランジスタを書き込み制御トランジスタとする浮遊ゲートを構成してオーバードライブ電位を保持するため、オーバードライブ電位を常時供給する必要なく、したがって、浮遊ゲートの電位保持に要する消費電力を極めて低く抑制できる。なお、PPSのオーバードライブ駆動では負電源を必要とせず、浮遊ゲートに負のオーバードライブ電位を生成することができるため、回路構成の簡素化と消費電力の低減が可能である。
本実施例のアウトラインは、以下のとおりである。まず、II節で、サブスレッショルド動作用設計における課題を整理する。また、本実施例で開示する上記提案するPRSとPPSのオーバードライブ駆動の方法とその特徴を説明する。III節で、本実施例のOS FPGAのシステム構成とその動作を説明し、IV節で試作したOS FPGAチップが有する各機能の検証結果を示し、その結果に対する考察を述べる。最後にV節で本実施例を総括する。
II.OS FPGAの低電圧設計
本節では、OS FPGAの低電圧設計について説明する。
II−A.OS FPGAの設計課題
まず、本実施例で提案するOS FPGA(以下、本OS FPGA)よりも前に我々が設計したOS FPGA(以下、前版OS FPGA)をベースに、サブスレッショルド動作用の設計の課題を確認する。図22に、前版OS FPGAのプログラム可能な配線スイッチとプログラム可能なパワースイッチとに注目した回路構成を示す。
なお、本実施例で参照する図において、“OS”が付記されたトランジスタはOSトランジスタであり、“OS”が付記されていないトランジスタはSiトランジスタである。本実施例において、OSトランジスタの酸化物半導体は、CAAC構造をもつIn−Ga−Zn酸化物である。ここでは、このようなIn−Ga−Zn酸化物が用いられたOSトランジスタをIGZOトランジスタと呼ぶこととする。
図22に示す前版OS FPGAは、プログラマブル・ロジック・エレメント(PLEpv)、nch−Siトランジスタで構成される配線スイッチ(PRSpv)、コンテキスト・コントローラ、コンフィギュレーション・コントローラを有する。
PRSpvは、2つのプログラム可能な配線スイッチ(PRScfg_pv、PRSctx_pv)を有しており、PRSctx_pvを有することでマルチコンテキスト機能を実現する。PRScfg_pvは、OSトランジスタ、nch−Siトランジスタ、およびノードNcfg_pvを有しており、ノードNcfg_pvの電位で制御される。ノードNcfg_pvはコンフィギュレーション・データ(Dcfg_pv)の保持ノードである。OSトランジスタは、書き込み信号(Wcfg_pv)で制御される。PRSctx_pvは、nch−Siトランジスタ、ノードNctx_pvを有しており、ノードNctx_pvの電位で制御される。ノードNctx_pvはコンテキスト・データ(Dctx_pv)の保持ノードである。
PLEpvは、PLEコア(PLEcore_pv)、プログラム可能な配線スイッチ(PPSpv)を有する。PPSpvを制御することで細粒度パワーゲーティング機能が実現される。PLEcore_pvの電源電圧はVDDである。PPSpvは、pch−SiトランジスタおよびノードNpps_pvを有し、ノードNpps_pvの電位で制御される。ノードNpps_pvは、PPSデータ(Dpps_pv)の保持ノードである。
PRSpvの各種制御信号は、コンフィギュレーション・コントローラ、コンテキスト・コントローラで生成され、PPSpvの制御信号は、コンフィギュレーション・メモリ・ブロックから与えられる。各回路の電源電圧はVDDである。また、これら制御信号のためにバッファが設けられている。Dctx_pv、Dcfg_pv、Dpps_pv用の各バッファの電源電圧はVDDであり、Wcfg_pv用バッファの電源電圧はVDDよりも高く、VDD2である。これは、OSトランジスタの閾値電圧がnch−Siトランジスタよりも高いためである。
我々のPLEの設計では、ASICを含めて一般的なサブスレッショルド動作に適用可能な設計指針(非特許文献5、6)、特にトランジスタスタック数制限を採用する。ここでは、トランジスタスタックの最大数は2に制限される(非特許文献5)。前版設計では、NOT、2入力NAND、2入力NOR、およびそれらのゲート回路を組み合わせたレジスタを含むスタンダードセルライブラリが採用されている。
FPGA固有の課題として、PRSを構成するパストランジスタの閾値電圧(Vth)落ちへの対策、および低Ion/Ioff(オン電流/オフ電流)比による静的リーク電流への対策が求められる(PRSの課題)。前版OS FPGAでは、PRScfg_pvにおける入力信号線とノードNcfg_pvとの容量結合を利用したブースティングにより、PRSpvでのVth落ちを改善することが可能である。しかしながら、サブスレッショルド動作では入力信号の振幅が小さくなるため、ブースティング効果では不十分であり、さらなる対策が求められる。また、PRSctx_pvについても、正常な信号伝達のための対策が必要である。
さらに、前版OS FPGAの低消費電力化のキー技術である細粒度パワーゲーティング機能、コンテキスト切り替え機能、およびシャドウ・レジスタ(SR)を継承するために、次のような課題をサブスレッショルド動作においても解消することが求められる。
第1に、細粒度パワーゲーティングに必要なPPSの追加は、トランジスタスタック数の実質的な増加になるため、Ionを維持する対策が求められる(PPSの課題)。第2に、高速コンテキスト切り替え(FCS、Fast Context Switch)機能を実現するためには、PRSと同様の配線スイッチにおける信号電位のVth落ちへの対策が求められる(FCSの課題)。第3に、シャドウ・レジスタ(SR)の機能を実現するためにはストア用トランジスタの保持電位のVth落ちと、ロード用トランジスタのIon電流の低下を解決する対策が求められる(SRの課題)。
II−B.オーバードライブ・アーキテクチャ
II−A節で挙げたPRS及びPPSの課題を解決するため、オーバードライブ駆動が採用されている。図22の構成において、PRScfg_pvに正にオーバードライブされた高電位のコンフィギュレーション・データの書き込み、PRSctx_pvのNctx_pvに正にオーバードライブされた高電位のコンテキスト選択信号の書き込み、および、PPSpvのNpps_pvに負にオーバードライブされた低電位信号の書き込みによって、オーバードライブ駆動が可能である。しかし、この仕組みでは、コンテキスト選択信号を生成する高電位回路に加えて、負電位の信号を生成する回路の追加が必要であり、電圧変換におけるエネルギー効率の低下や消費電力の増加が避けられない。
そこで、本実施例では、PRS及びPPSの課題を解決するため、OSトランジスタが理想的な電荷保持機能を有する浮遊ノードを構成しうることを利用したオーバードライブが採用される。本駆動方法では、PRS及びPPSのオーバードライブされるゲートは浮遊ゲート化され、高電位信号を生成する回路は、当該ゲートのデータを更新する場合のみアクティブである。当該ゲートとOSトランジスタとは、オーバードライブ電圧の保持に要する電力が極めて低い不揮発性アナログメモリを成し、これは本駆動方法の採用に効果的である。
図23に、本実施例のOS FPGAの要部を示す。図23に示す本OS FPGAは、PLE、PRS、コンテキスト・コントローラ、コンフィギュレーション・コントローラ、コンフィギュレーション・メモリ・ブロックを有する。PLEはPLEコア(PLEcore)、PPSを有する。PRSはPRScfg、PRSctxを有する。INprs_LはPRSの入力ノードであり、OUTprs_Lは出力ノードである。PRScfg、PRSctx及びPPSは、それぞれコンフィギュレーション・メモリ、コンテキスト・メモリ、およびPPSデータを記憶するメモリ(PPSメモリ)に相当する。
PRScfgは、OSトランジスタ(MOcfg)、高Vthのパストランジスタ(MScfg)、およびノード(Ncfg)を有する。MOcfgには、コンフィギュレーション・コントローラから書き込み信号(Wcfg_H)、コンフィギュレーション・データ(Dcfg_H)が入力される。PRSctxは、OSトランジスタ(MOctx)、高Vthのパストランジスタ(MSctx)、ノード(Nctx)を有する。MOctxには、コンテキスト・コントローラから書き込み信号(Wctx_H)、コンテキスト・データ(Dctx_H)が入力される。Dcfg_HはNcfgに書き込まれ、Dctx_HはNctxに書き込まれる。PRSの導通状態は、Dcfg_H、Dctx_Hの電位により制御される。
LVDDはPLEcoreの電源電圧である。PPSは、pch−Siトランジスタ、OSトランジスタ(MOpps)、ノード(Npps)を有し、PLEcoreへのLVDDの供給を制御する。pch−Siトランジスタはパワースイッチであり、Nppsに与えられたPPSデータ(Dpps_L)により、導通状態が制御される。Dpps_Lは、コンフィギュレーション・メモリ・ブロックからPPSに入力される。
本OS FPGAは3の電源ドメイン:入出力(IO)ドメイン、HVDDドメイン、LVDDドメインを有する。なお、符号の末尾に追加された符号_H、_Lは、それぞれ、HVDDドメイン、LVDDドメインの要素や、そこで生成される信号であることを表している。
本OS FPGAには、データ信号用バッファ、書き込み信号用バッファが設けられている。これらのバッファは対応する回路の電源電圧で動作する。コンフィギュレーション・コントローラの電源電圧はHVDDcfg(書き込み信号用HVDDcfg_w、データ信号用HVDDcfg_d)であり、コンテキスト・コントローラの電源電圧はHVDDctx(書き込み信号用HVDDctx_w、データ信号用HVDDctx_d)である。HVDDcfg、HVDDctxはLVDDよりも高い。オーバードライブ電圧を考慮してデータ信号用電源電圧(HVDDcfg_d、HVDDctx_d)をLVDDよりも高くし、かつMOcfg、MOctxのVthを考慮して書き込み信号用電源電圧(HVDDcfg_w、HVDDctx_w)を、データ信号用電源電圧よりも高くすることで、書き込み電位のばらつきを抑制することが可能である。FCSの課題とSRの課題は、PRS及びPPSのオーバードライブ駆動に伴い、解決される。以下、本実施例のPRS、PPSの詳細な動作方法を示す。
(PRSのオーバードライブ)
図24にPRSのオーバードライブ動作のタイミングチャートを示す。コンフィギュレーション動作は、コンフィギュレーション時(Wcfg_H=“H”)に、コンフィギュレーション・データ(Dcfg_H)をコンフィギュレーション・メモリ(PRScfg)に書き込むことで、実行される。Ncfgの電位は、LVDD+ΔVcfgまたはGNDになる。ΔVcfgはコンフィギュレーション・メモリ(PRScfg)のオーバードライブ電圧である。コンフィギュレーション・メモリは、容量に電位を書き込むという単純な動作を行うので、SRAMとは異なり、書き換え、及びデータ保持動作のマージンが広く、極低電圧においても正常な動作が容易である。
コンフィギュレーション完了時とコンテキスト切り替え時には、Wctx_Hを“H”にして、コンテキスト・データ(Dctx_H)をコンテキスト・メモリ(PRSctx)に書き込む。Nctxの電位は、LVDD+ΔVctxまたはLVDDとなる。ΔVctxはコンテキスト・メモリ(PRSctx)のオーバードライブ電圧である。選択されたコンテキストのコンフィギュレーション・データに対応して、PRSの導通状態が決定される。
コンフィギュレーション・メモリにコンフィギュレーション・データを書き込んだ後、MOcfgをオフにすることで(Wcfg_H=“L”)、Ncfgは浮遊ノードとなり、高電位データ(LVDD+ΔVcfg/GND)を保持する。コンテキスト・メモリも同様であり、MOctxをオフとすることで(Wctx_H=“L”)、Nctxは浮遊ノードとなり、高電位データ(LVDD+ΔVctx/GND)を保持する。MOcfg、MOctxは極めて小さいリーク電流を持つOSトランジスタであるため、NcfgおよびNctxを電位の変化が小さい理想的な浮遊ノードにすることができるので、コンフィギュレーション・メモリおよびコンテキスト・メモリは不揮発性アナログメモリとして動作する。
MScfgをオン状態にする場合は、そのゲートに高電圧LVDD+ΔVcfgが入力されるため、MScfgはオーバードライブされる。MSctxも同様であり、ゲートにLVDD+ΔVctxが入力されることで、MSctxはオーバードライブされる。当該オーバードライブによって、パストランジスタ(MScfg、MSctx)の高Ion/Ioff比が維持されるので、PRSの出力信号(OUTprs_L)の電位は低下しない。
コンフィギュレーション・メモリ、コンテキスト・メモリは、不揮発性アナログメモリとみなせるため、データ保持、すなわち、オーバードライブ電圧を浮遊ゲートで保持するのに要する消費電力は低い。コンフィギュレーション・メモリでは、Wcfg_H、Dcfg_Hを低電位とすることで、MOcfgをオフ状態にしてNcfgを浮遊状態にし、コンテキスト・メモリでは、Wctx_H、Dctx_Hを低電位とすることで、MOctxをオフ状態にして、Nctxを浮遊状態にしている。よって、コンフィギュレーション・データ、コンテキスト・データの書き込みを行う期間のみ、コンフィギュレーション・コントローラ、およびコンテキスト・コントローラに電源電圧を供給し、その他の期間は、HVDDドメインをパワーゲーティングすることができる。よって、消費電力を効果的に低減できる。
なお、Wcfg_H用信号線、Wctx_H用信号線には、パワーゲーティング時にアクティブとなるプルダウン用OSトランジスタが設けられている。したがって、パワーゲーティング中に、これらの信号線の電位はGNDに維持されるため、MOcfg,MOctxのオフ状態は確実に維持される。OSトランジスタは極小Ioffをもつため、非アクティブ時では信号線に与えるプルダウン用OSトランジスタの影響は無視できるほど小さい。
(PPSのオーバードライブ)
図25にPPSのオーバードライブの動作タイミングチャートを示す。コンフィギュレーション完了時とコンテキスト切り替え時に、Wpps_Hを“H”にして、PPSにPPSデータ(Dpps_L)を書き込む。Nppsの電位は、LVDDhまたはGNDである。
PPSにPPSデータを書き込んだ後、Wpps_Hを“L”にしてMOppsをオフにすると、Nppsは浮遊ノードとなり、電位(LVDDh/GND)を保持する。図25はDpps_Lの電位がGNDの例を示しており、Nppsの電位はGNDとなる。ここで、LVDDドメインの電圧を高電位(LVDDh)から低電位(LVDD)に低下させることで、Npps(pch−Siトランジスタのゲート)とLVDD電源ノードとの間の寄生容量を介した容量結合によってNppsの電位が低下する。ここで、LVDDドメインの電圧を低下させる際、Nppsの電位がLVDDhのときは、pch−Siトランジスタはオフ状態のため、LVDD電源ノードとNppsとの容量結合が小さく、Nppsの電位はほとんど変化しない。一方、Nppsの電位がGNDのときは容量結合が大きいため、Nppsの電位は大きく変化する。
つまり、負電圧を生成する電源回路を設けなくても、PPSのpch−Siトランジスタのオーバードライブができる。MOppsはOSトランジスタであるので、オーバードライブ後に、Wpps_Hを“L”にしてMOppsをオフとすると、Nppsは浮遊ノードとなり、データ(LVDDh/−ΔVpps、ここでΔVppsはPPSのオーバードライブ電圧である。)を保持できる。
当該オーバードライブによって、pch−Siトランジスタは高Ion/Ioff比を維持し、良好なスイッチング特性を有する。PPSは、不揮発性アナログメモリとみなせるので、データ保持、すなわち、オーバードライブ電圧を浮遊ゲートに維持するのに要する消費電力は低い。さらに、コンテキスト・データの更新時のみ、LVDDドメインの電圧を高電位(LVDDh)とし、その他の期間は低電位とすることができるので、低消費電力化が可能である。
実施の形態1で述べたリングオシレータRO5のシミュレーション結果(図2B)が示すように、低電圧駆動では、pch−Siトランジスタのゲートの電位を0Vから僅かに負電位側に変化することで、動作能力が大きく改善する。つまり、本明細書で開示するオーバードライブはサブスレッショルド動作に有利な方法である。
(オーバードライブの検証)
SPICEシミュレーションを行い、PRS及びPPSのオーバードライブの効果を検証した。PPSを用いずに、7組のPLEとPRSをループ状に連結した7段PRSリングオシレータ(RO7prs)と、PRSを用いずに、7個のPLEをループ状に連結した7段PPSリングオシレータ(RO7pps)と、7個の2入力NORのみをループ状に連結した7段リングオシレータ(RO7nor)とについて検証した。RO7prs、RO7ppsでは、PLEcoreを2入力NORとして機能させている。
シミュレーションのため、0.8μm OSトランジスタ/0.18μm CMOSトランジスタのハイブリッドプロセスベースのIGZOトランジスタ、nch−Siトランジスタ(NMOS)、およびpch−Siトランジスタ(PMOS)のパラメータを使用した。図26Aに同プロセスのIGZOトランジスタ、nch−Siトランジスタ、pch−SiトランジスタのId−Vg(ドレイン電流−ゲート電圧)特性、および図26Bにこれらの仕様を示す。
図26Bにおいて、Vdは、Id−Vg特性を測定した時のドレイン電圧であり、Icut(カットオフ電流)はVgが0VのときのIdである。IGZOトランジスタのIcutは1×10−13A未満であるので、IGZOトランジスタは、電荷保持が良好であることを要求されるアナログメモリに好適である。高速動作が要求される論理回路は、nch−Siトランジスタおよびpch−Siトランジスタで構成する。
図27Aは、SPICEシミュレーションで見積もられたFRO7prs/FRO7norのΔVcfg、ΔVctx依存性を示し、図27Bは、FRO7pps/FRO7norの−ΔVpps依存性を示す。FRO7prsはRO7prsの発振周波数であり、FRO7ppsはRO7ppsの発振周波数であり、FRO7norはRO7norの発振周波数である。FRO7prs/FRO7nor、FRO7pps/FRO7norは周波数減衰率を表している。ここでは、LVDDを100mVから600mVの間で100mV毎に変化している。
図27Aにより、FRO7prs/FRO7norは、LVDDが200mV以下で、かつΔVcfg、ΔVctxが400mV以上の場合、急激に上昇し、0.9に達している。
図27Bにより、LVDDが300mV以下で、FRO7pps/FRO7norは、0.9を越え、RO7ppsの周波数特性が改善される。RO7ppsにおいて、PPSの追加によりトランジスタスタック数は3に相当するが、200mVのサブスレッショルド動作であっても、−ΔVpps=−100mVのオーバードライブ駆動によるPPSのIonによって、RO7ppsはトランジスタスタック数が2のCMOS回路の同等の駆動能力をもつ。
この周波数特性の改善は、オーバードライブによって各スイッチの抵抗がゲート出力遅延に対して無視できるほど小さくなるためである。なお、コンフィギュレーション・データ更新時に高電位を使用することによる電力増加が懸念事項ではあるが、IV−B節で示すように、オーバーヘッド電力は0.17%以下と小さいことを確認している。つまり、PRS及びPPSのオーバードライブがサブスレッショルド動作において高効率である。
この結果から、環境発電による電源供給が容易である動作電圧としてLVDD=200mVを想定し、PRS及びPPSの影響による周波数の低下を1割程度許容する構成を得るため、ΔVcfg、ΔVctx=400mV、及び−ΔVpps=−100mVをターゲットとする。
III.OS FPGAの回路設計
本節において、上記設計指針に基づいて設計した本OS FPGAについて説明する。
III―A.OS FPGAの構成
図28は本OS FPGAの構成を示すブロック図である。本OS FPGAはマルチコンテキストに対応しており、コンテキスト数は2である。
IOドメインには、複数のプログラム可能なIO回路を有する入出力ブロック(PIOB)の高電位ドメインが属する。HVDDドメインには、コンフィギュレーション・コントローラ(行ドライバ回路、列ドライバ回路を含む)と、コンテキスト・コントローラとが属する。LVDDドメインには、ロジックアレイブロックと、PIOBの低電位ドメインとが属する。
ロジックアレイブロックは2のPLEブロック(PLEB)と、3のPRSブロック(PRSB)を有する。各PLEBは10のPLEを有する。PRSBは複数のPRSA(PRSアレイ)を有する。PRSAは複数のPRSを有する配線スイッチである。PRSAを表すブロック内の表記はその機能を表している。例えば、“PLE[0*] to IO[00]”とは、PRSAが、PLE[00]−PLE[09]の出力ノードと入出力回路IO[00]の入力ノードとの間の導通状態を制御する機能をもつことを示している。
(PRS)
図29にPRSの回路図を示す。図29のPRScfgは図23のPRScfgに容量素子Ccfgを追加した回路構成を有する。PRScfg<0>とPRSctx<0>が電気的に直列に接続されて、配線スイッチ対を構成し、PRScfg<1>とPRSctx<1>が電気的に直列に接続され、他の配線スイッチ対を構成している。これら配線スイッチ対は、INprs_LとOUTprs_L間に並列に電気的に接続されている。
(PLE)
図30に、PLEの回路構成を示す。図30に示すPLEは、PPS、PLEcore、およびコンフィギュレーション・メモリ・ブロック(CMB)を有する。PLEにPPSを設けることで、細粒度パワーゲーティングが可能である。
PLEcoreは、5の2入力EXOR、LUT、複数のMUX、2のSEL、レジスタ、および複数のメモリ回路(MM)、4の入力ノード(INple_L<0>−INple_L<3>)、1の出力ノードOUTple_Lを有する。MMはMOcm(OSトランジスタ)とCMBとで構成され、コンフィギュレーション・データおよびコンテキスト・データを記憶する。Wcm_HはMOcmの制御信号である。
細粒度パワーゲーティングのため、レジスタには揮発性レジスタ(VR)とシャドウ・レジスタ(SR)が設けられている。SRは、VRのデータをバックアップするための不揮発性レジスタであり、ストア用トランジスタ(OSトランジスタ)、ロード用トランジスタ、および容量素子を含む。ストア用トランジスタと容量素子とにより不揮発性アナログメモリが構成される。
レジスタには各種制御信号が入力される。SRにはph1、ph2とでなる2相クロック信号、WS_H(ストア信号)、WL_H(ロード信号)が入力される。ph1、ph2は本OS FPGAに設けられているクロック生成装置で生成される。WS_Hは、SRにデータをバックアップするための動作(ストア動作)を制御する。WS_Hは外部から入力される。WL_HはSRからVRへデータを書き戻す動作(ロード動作)を制御する。WL_Hは、HVDDドメインに属するノーマリ・オフ・コントローラで生成される。
ストア用トランジスタをWS_Hによってオーバードライブすることで、バックアップデータ電位のVth落ちを回避する。また、WL_Hでオーバードライブされることで、ロード用トランジスタは、VR内のデータ保持用インバータラッチよりも高いオン電流を持つため、確実なデータのストア、およびロードが可能となる。
(CMB)
CMBは、プログラム可能な接地接続(PGC、Programmable Ground Connection)を用いた接地電位供給回路と、プリチャージ回路とを有する。PGCは図29のPRSと同じ回路構成を持つ。CMBにおいては、入力ノード(INprs_L)が接地接続され、出力ノード(OUTprs_L)がプリチャージ回路の入力ノード(Npc)に電気的に接続されている。前版のPLE用メモリ回路と比較して、素子数が低減されるので、本CMBの面積効率は向上する。プリチャージ回路は、2のpch−Siトランジスタと1のインバータで構成されているダイナミックロジック回路である。Wpc_HはNpcのプリチャージ動作を制御する信号であり、コンテキスト・コントローラで生成される。
図31にCMBのタイミングチャートを示す。Wpc_Hが“H”である期間はCMB(プリチャージ回路)のプリチャージ期間であり、Wpc_Hが“L”である期間はCMB(プリチャージ回路)の評価期間である。プリチャージ動作後に、コンフィギュレーション・データ(Dcfg_H)及び選択されたコンテキストに依存して、CMBはNpcのLVDD電位を維持もしくは放電する。コンテキスト切り替え動作時に、CMBは出力データを更新する(リフレッシュする)。コンフィギュレーション・モードでは、HVDDドメイン全体に電源が供給され、コンテキスト切り替えモードでは、コンテキスト・コントローラのみに電源が供給される。ユーザ動作モードでは、HVDDドメインの回路は動作する必要がないので、パワーゲーティングにより電源オフにされる。
(LS)
図32にPIOBにおけるレベルシフタ(LS)の回路図を示す。本OS FPGAの内部ドメインと外部回路との接続を容易にするために、LSは、LVDD電位からIOドメイン電位(IOVDD)へと信号を昇圧する。LSは昇圧倍率が高いことが求められる。公知のレベルシフタ(非特許文献7)を元に、いくつかのOSトランジスタ(MOpass、MOov)が追加される。MOpass、MOovは、極小オフリーク電流を持ち、かつ低電圧駆動のSiトランジスタよりも高Ion/Ioff比をもつ。したがって、MOpassのゲートとLSの出力ノード(OUT、OUTB)との容量結合によるオーバードライブにより、LSの駆動能力を低下せずに静的オフリーク電流を低減できる。オーバードライブ電圧はMOovがオフ状態となることで保持される。II―B節のSPICEシミュレーション(図27)と同じパラメータを用いて、SPICEシミュレーションを行い、OSトランジスタの追加によってLSの静的消費電力が約30%低減することが確認された。したがって、本実施例のLSは静的リーク電力の抑制に大きく寄与する。
III―B.OS FPGAの状態遷移
図33Aに本OS FPGAの状態遷移図を示し、図33Bに本OS FPGAの各動作状態の一覧表を示す。本OS FPGAは、コンフィギュレーション・モード、ユーザ動作モード、コンテキスト切り替えモード、更新モードの4つの動作状態を遷移する。以下、4つの動作状態について説明する。
コンフィギュレーション・モードでは、起動(電源オン)時もしくはシステムリセット時に、コンフィギュレーション・データを全てのコンフィギュレーション・メモリに書き込み、全てのドメインに電源が供給される。
ユーザ動作モードでは、プログラム可能な領域において、コンテキストで選択されたコンフィギュレーション・データによって設定される回路動作が実行され、LVDDドメインのみに電源が供給される。パワーゲーティングによって、コンフィギュレーション・コントローラ、コンテキスト・コントローラへの電源(HVDDcfg、HVDDctx)の供給は停止される。
コンテキスト切り替えモードでは、プログラム可能な領域における回路動作は停止し、コンテキスト・コントローラ、およびLVDDドメインに電源(HVDDctx、LVDD)が供給される。PLE、PRSのコンテキスト・メモリにコンテキスト・データを書き込んだ後は、パワーゲーティングにより、コンテキスト・コントローラへの電源(HVDDctx)供給は再び停止される。ユーザ動作モードからコンテキスト切り替えモードを経てユーザ動作モードに戻る遷移、すなわち、コンテキストの切り替えは、1クロックで可能である。
更新モードでは、選択されていないコンテキストに対応するコンフィギュレーション・メモリのコンフィギュレーション・データを更新する動作を行い、ユーザ動作モードのコンフィギュレーション領域の回路動作を継続し、コンフィギュレーション・コントローラ、およびLVDDドメインに電源(HVDDcfg、LVDD)を供給する。
ユーザ動作モード、コンテキスト切り替えモード、更新モードでは、HVDDドメインの回路がパワーゲーティング中であっても、PLE及びPRS内のコンフィギュレーション・メモリ、PRS内のコンテキスト・メモリはデータを保持できるため、電力を消費せずに回路機能を維持する。また、IOドメインには、内部信号をモニターする必要があるときに、電源(IOVDD)を供給すればよい。
IV.試作チップ
0.8μm OS/0.18μm CMOSハイブリッドプロセスでOS FPGA及びPLE TEG(test element group)を試作した。図34に試作した本OS FPGAチップの顕微鏡写真を示す。
IV−A.PLE TEG
最初に、PPSの課題、FCSの課題及びSRの課題の解決を確認するため、PLE TEGの動作を評価した。ここではPPSのオーバードライブの効果と、コンテキスト切り替え動作とについて検証する。具体的には、4入力OR/4入力ANDの2−コンテキスト構成とし、コンテキスト切り替えモードを介してのユーザ動作モード(context<0>、4入力OR)からユーザ動作モード(context<1>、4入力AND)への遷移動作を確認する。
図35に、5kHz駆動時における所望の動作(出力信号のpass/fail)の確認に使用された、4入力OR/4入力AND構成のPLE TEGのLVDDに対するLVDDh−LVDDのシュムプロットを示す。ここで、HVDD(HVDDcfg、HVDDctx)は1.1Vである。図35では、最低動作電圧LVDD=180mVにおける最低オーバードライブLVDDh=320mVとしている。
図36に、最低動作電圧LVDD=180mVにおけるPLE TEGの入出力信号波形を示す。図36から、PLE TEGは、コンテキスト切り替えを含め、最低動作電圧LVDD=180mVで正常に動作することを確認できる。一方で、オーバードライブを行わない、すなわち、コンテキスト切り替え時にLVDDh−LVDD=0mVとする条件では、最低動作電圧LVDD=320mVである。PLE TEGはPRSを有さないことから、最低動作電圧が320mVから180mVに低減されるのは、PPSのオーバードライブ駆動の寄与による。
PLE内のVRとSR間でのロード/ストア動作を検証した。図37は、上掲の最低動作電圧条件である、LVDD=180mV、LVDDh=320mVでの5kHz駆動におけるPLE TEG内のレジスタの入出力波形を示す。
INreg及びOUTregが“H”であるときにストア動作(WS_H=“H”)を行い、しかる後、INreg及びOUTregが“L”であるときに、ロード動作(WL_H=“H”)を行っている。ロード動作によって、SRにストアした“H”のデータをロードすることで、OUTregの電位が“L”から“H”へ遷移することが確認される。また、ストア/ロード動作の前後で、2相クロック信号ph1、ph2に同期してINregの電位がOUTregの電位に伝搬しており、SRを具備したレジスタが正常に動作することが確認される。つまり、図37から、PPSの課題、FCSの課題、及びSRの課題が解決されていることが確認される。
IV−B.OS FPGA チップ
次に、本OS FPGAチップの各機能を検証する。まず、組み合わせ回路および順序回路の構成について、オーバードライブの効果を確認する。図38は、本OS FPGAの最大動作周波数(Fmax)、消費電力、および電力遅延積(PDP)のLVDD依存性を示す。図38は、組み合わせ回路の例として3段リングオシレータ(RO3)構成を持つ本OS FPGAの動作周波数、消費電力、および電力遅延積(PDP)のLVDD依存性を示す。図39は、順序回路の例として、4ビットカウンタ(CNT4)構成の本OS FPGAの最大動作周波数(Fmax)、消費電力、PDPのLVDD依存性を示す。
ここで、各電源電圧は、LVDDhが1.2Vであり、HVDDが2.5Vである。使用されないPLEはPPSによってパワーゲーティングされている。なお、図39には、SRAMベースのコンフィギュレーション・メモリを有するFPGA(SRAM FPGA)の非特許文献2の図8、9から抽出した数値を、1のCNT4に換算したデータも示している。
本OS FPGAの最低動作電圧はRO3構成で180mVである。最小PDP(PDPmin)は、CNT4構成で、LVDDが330mVであり、Fmaxが28.6kHzにおいて3.40pJである。このPDPminは、CNT4構成でのSRAM FPGA(非特許文献2)と比較して約49%低減されている(下記表1参照)。前版OS FPGA(非特許文献1)のLVDDが900mVでのFmaxは33.3kHzであるのに対して、本OS FPGAの同じ電圧でのFmaxは8.6MHzに増加している。つまり、本OS FPGAは低電力駆動と高性能処理とが可能である。
表1に本OS FPGAの仕様を示す。また、比較例として、非特許文献2、3のSRAM FPGAおよび非特許文献1の前版OS FPGAの仕様も示す。前版OS FPGAのOSトランジスタもIGZOトランジスタである。
オーバードライブの寄与を検証するため、PPSのオーバードライブの有無での本OS FPGAのPDPを測定する。図40にPDPの測定結果を示す。本OS FPGAの回路構成はCNT4構成である。PPSをオーバードライブしないときは、LVDD=LVDDhであり、HVDD=LVDD+1.2Vである。オーバードライブによって、最低動作電圧は390mVから180mVまで低下される。これに伴い、最小PDPは4.48pJ(動作電圧390mV)から3.40pJ(動作電圧330mV)まで下がり、24%低減されている。これは、サブスレッショルド電圧動作時にPRSにおけるVth落ちの抑制、及び、PPSのIonの増加により、論理回路のIon/Ioff比が改善するからである。つまり、上記結果はPRSの課題が解決されていることを示している。
次に、本OS FPGAの細粒度パワーゲーティング機能を評価する。上掲CNT4構成におけるPDP最小の動作条件(330mV,28.6kHz)において、16個の利用されていないPLEに電源を供給する構成に設定するcontext<0>から、利用されていないPLEをパワーゲーティングする構成に設定するcontext<1>に切り替えることで、OS FPGAの待機電流は54%(9.15μAから4.20μAに)低減される。したがって、細粒度パワーゲーティングは、サブスレッショルド電圧動作においても待機電流の低減に寄与できる。
極低電圧動作において本OS FPGAがコンテキスト切り替えを高速かつ低電力で実行できるかを確認する。図41Aに検証結果を示す。CNT4構成でPDPが最小となる条件(300mV、28.6kHz)でコンテキスト切り替え動作を検証した。コンテキスト切り替えにより、回路構成はCNT4からCNT3(3ビットカウンタ)に変更されている。図41Aは、本OS FPGAのチップの入出力波形を示す。PIOBのLSによって、チップの出力信号OUT0―OUT3は2.5Vに昇圧している。
コンテキスト切り替え後、カウンタの各ビット信号を出力するOUT1−OUT3信号の周期が、それぞれ、1/2倍になっており、context<0>からcontext<1>にコンテキスト切り替え動作が正常に行われている。かつcontext<0>が選択されているときは、OUT3―OUT0は、4ビットの出力信号CNT[3]−CNT[0]に対応する。context<1>が選択されているときはOUT3−OUT1がCNT[2]−CNT[0]に対応する。OUT0はパワーゲーティングされて利用されていないPLEの出力が与えられるため、低レベルの固定電位となる。
図41Bは、図41Aと同じ動作条件において、CNT3構成からCNT4構成へのコンテキスト切り替え動作の検証結果を示す。図41Bも、コンテキスト切り替え動作は正常に行われ、CNT3構成からCNT4構成へのコンテキスト切り替えが、1クロックで実行される。図41Bにおいて、context<0>が選択されているときは、OUT3はCNT[2]に、OUT0はCNT[0]に対応する。context<1>が選択されているときは、OUT3はCNT[3]に、OUT0はCNT[0]に対応する。
図41Aと同条件においてコンテキスト切り替えに要するエネルギーをSPICEシミュレーションで評価した。その結果、本OS FPGAのSPICEによって、コンテキスト切り替えに要するエネルギーは、6.42nJであると見積もられ、CNT3構成、CNT4構成の平均電力はそれぞれ3.86μW、4.46μWと見積もられる。仮に1秒に1回コンテキスト切り替えをする場合でも、コンテキスト切り替えの電力は通常動作時の0.17%以下であり、コンフィギュレーション・データ更新時にLVDDを昇圧しても、オーバーヘッド電力は極めて小さい。
オーバードライブ効果の持続期間を確認する目的で、RO3(3段リングオシレータ)構成での本OS FPGAの発振周波数の時間変化を測定した。図42に、LVDDが180mVでの測定結果を示す。コンテキスト切り替え時ではLVDDhは1200mVである。コンテキスト切り替え動作がない場合でも、発振周波数の低下は4時間で4.5%に留まる。1時間に1回の頻度でのリフレッシュ動作は、1%以内の発振周波数の低下で、オーバードライブの効果を持続させることが可能である。
(温度依存性)
次にOS FPGAの特性の温度依存性について述べる。図43に、0℃、27℃(室温)、60℃、85℃での、IGZOトランジスタのId−Vg特性を示す。IGZOトランジスタにおいて、L/W=0.81μm/2.96μm(チャネル長L、チャネル幅W)であり、Vd=3.3Vである。
温度が上昇するにつれてIGZOトランジスタのVthが低下しているが、Vthの変動量はSiトランジスタと比べて小さく、またオフ電流(Ioff)は測定下限(1×10−13A)以下を維持する。これにより高温動作時においても、OSトランジスタを用いたアナログメモリは良好な保持特性を有することが可能である。本OS FPGAは環境発電を利用したデバイスを目指しており、OSトランジスタが温度変化に強いことは、本OS FPGAに有効である。
図44にRO3構成時の本OS FPGAのPDPの温度依存性を示す。測定温度は、図43と同じである。本OS FPGAの動特性を決めるSiトランジスタは、温度が上昇するとVthは低下し、Ionは上昇するという特性を持つ。そのため、温度が上昇するにつれて、本OS FPGAの周波数と消費電力が増加する。このとき、周波数の増加量よりも消費電力の増加量が上回るため、PDPの最低値は増加する。ここでは、最小PDPは、4.86pJ(340mV、0℃)、5.51pJ(360mV、27℃)、7.60pJ(380mV、60℃)、11.1pJ(450mV、85℃)である。また、同じ温度条件において、本OS FPGAが200mVでの極低電圧駆動が可能であることを確認した。
図45にRO3構成での発振周波数比の時間変化を示す。測定温度は、図43と同じである。ここでは、発振周波数比は、330mV(CNT4構成での27℃におけるPDPが最小となる動作電圧)における動作開始時点の発振周波数を基準値にしている。
温度の上昇と共にOSトランジスタはVthが低下するため、温度が上昇すると保持時間が低下する。27℃、0℃では、4.5時間以上であり、60℃では4.2時間であり、85℃では1.8時間である。保持時間にはPPSの寄与が大きいと考えられる。Nppsの負電位が大きい程、OSトランジスタのゲートーソース間電圧が大きくなるため、OSトランジスタを介した浮遊ノードからのオフリーク電流が増加する。Nppsの電圧低下はPLEcoreに供給する電流値を減少させるため、最終的に論理回路の信号伝達が正常に機能しなくなり、回路動作が停止する。保持容量を設けることで、保持時間を改善できる。また、動作時間の延長には、コンテキスト切り替えを利用したリフレッシュ動作が有効であり、特に、高温時にはリフレッシュ動作の間隔を短くすること(例えば、85℃であれば25分間隔で5%の低下)が好ましい。
V.まとめ
上述したように、PLE間の配線スイッチ用PRSの正のオーバードライブと、PPSの負のオーバードライブとによって、OS FPGAのサブスレッショルド電圧動作が実現できる。試作したOS FPGAは、組み合わせ回路構成において180mVで動作する。また、順序回路構成で、190mVで12.5kHz動作が、900mVで8.6MHz動作が可能であり、最小PDPが330mVで3.40pJである。これは、極小Ioffを持つOSトランジスタによる理想的な電荷保持特性を有する浮遊ノードにより実現される。極低電圧による低消費電力駆動に加えて、高電圧駆動時には、MHzの高速処理が可能であるため、本OS FPGAは用途に応じた柔軟な回路構成を実現するデバイスとなり得る。
本OS FPGAは、ユーザ動作モードでの安定した低電圧駆動、細粒度パワーゲーティングや不揮発性コンフィギュレーション・メモリによる待機時の低消費電力、およびマルチコンテキストによる回路構成の高速切り替え等の性能を備えており、センサーネットワークデバイスに極めて好適である。
以下に、本明細書等に関する事項を示す。
図面において、大きさ、層の厚さ、又は領域は、明瞭化のために誇張されている場合がある。よって、必ずしもそのスケールに限定されない。なお図面は、理想的な例を模式的に示したものであり、図面に示す形状又は値などに限定されない。例えば、ノイズによる信号、電圧、若しくは電流のばらつき、又は、タイミングのずれによる信号、電圧、若しくは電流のばらつきなどを含むことが可能である。
本明細書において、「上に」、「下に」などの配置を示す語句は、構成同士の位置関係を、図面を参照して説明するために、便宜上用いている場合がある。また、構成同士の位置関係は、各構成を描写する方向に応じて適宜変化するものである。従って、明細書で説明した語句に限定されず、状況に応じて適切に言い換えることができる。
図面に記載したブロック図の各回路ブロックの配置は、説明のため位置関係を特定するものであり、異なる回路ブロックで別々の機能を実現するよう示していても、実際の回路ブロックにおいては同じ回路ブロック内で別々の機能を実現しうるように設けられている場合もある。また各回路ブロックの機能は、説明のため機能を特定するものであり、一つの回路ブロックとして示していても、実際の回路ブロックにおいては一つの回路ブロックで行う処理を、複数の回路ブロックで行うよう設けられている場合もある。
本明細書等において、「膜」という言葉と「層」という言葉とは、場合によっては、または、状況に応じて、互いに入れ替えることが可能である。例えば、「導電層」という用語を「導電膜」という用語に変更することが可能な場合がある。例えば、「絶縁膜」という用語を「絶縁層」という用語に変更することが可能な場合がある。
また、本明細書等において、結晶が三方晶または菱面体晶である場合、六方晶系として表す。
本明細書等において、「平行」とは、二つの直線が−10°以上10°以下の角度で配置されている状態をいう。したがって、−5°以上5°以下の場合も含まれる。また、「略平行」とは、二つの直線が−30°以上30°以下の角度で配置されている状態をいう。また、「垂直」とは、二つの直線が80°以上100°以下の角度で配置されている状態をいう。したがって、85°以上95°以下の場合も含まれる。また、「略垂直」とは、二つの直線が60°以上120°以下の角度で配置されている状態をいう。
本明細書等においては、能動素子(トランジスタ、ダイオードなど)、受動素子(容量素子、抵抗素子など)などが有するすべての端子について、その接続先を特定しなくても、当業者であれば、発明の一形態を構成することは可能な場合がある。つまり、接続先を特定しなくても、発明の一形態が明確であると言える。そして、接続先が特定された内容が、本明細書等に記載されている場合、接続先を特定しない発明の一形態が、本明細書等に記載されていると判断することが可能な場合がある。特に、端子の接続先が複数のケース考えられる場合には、その端子の接続先を特定の箇所に限定する必要はない。したがって、能動素子(トランジスタ、ダイオードなど)、受動素子(容量素子、抵抗素子など)などが有する一部の端子についてのみ、その接続先を特定することによって、発明の一形態を構成することが可能な場合がある。
なお、本明細書等においては、ある回路について、少なくとも接続先を特定すれば、当業者であれば、発明を特定することが可能な場合がある。または、ある回路について、少なくとも機能を特定すれば、当業者であれば、発明を特定することが可能な場合がある。つまり、機能を特定すれば、発明の一形態が明確であると言える。そして、機能が特定された発明の一形態が、本明細書等に記載されていると判断することが可能な場合がある。したがって、ある回路について、機能を特定しなくても、接続先を特定すれば、発明の一形態として開示されているものであり、発明の一形態を構成することが可能である。または、ある回路について、接続先を特定しなくても、機能を特定すれば、発明の一形態として開示されているものであり、発明の一形態を構成することが可能である。
本明細書等において規定されていない内容について、その内容を除くことを規定した発明の一形態を構成することができる。または、ある値について、上限値と下限値などで示される数値範囲が記載されている場合、その範囲を任意に狭めることで、または、その範囲の中の一点を除くことで、その範囲を一部除いた発明の一形態を規定することができる。これらにより、例えば、従来技術が本発明の一形態の技術的範囲内に入らないことを規定することができる。
具体例としては、ある回路において、第1乃至第5のトランジスタを用いている回路図が記載されているとする。その場合、その回路が、第6のトランジスタを有していないことを発明として規定することが可能である。または、その回路が、容量素子を有していないことを規定することが可能である。さらに、その回路が、ある特定の接続構造をとっているような第6のトランジスタを有していない、と規定して発明を構成することができる。または、その回路が、ある特定の接続構造をとっている容量素子を有していない、と規定して発明を構成することができる。例えば、ゲートが第3のトランジスタのゲートと接続されている第6のトランジスタを有していない、と発明を規定することが可能である。または、例えば、第1の電極が第3のトランジスタのゲートと接続されている容量素子を有していない、と発明を規定することが可能である。
なお、本明細書等においては、ある一つの実施の形態において述べる図または文章において、その一部分を取り出して、発明の一形態を構成することは可能である。したがって、ある部分を述べる図または文章が記載されている場合、その一部分の図または文章を取り出した内容も、発明の一形態として開示されているものであり、発明の一形態を構成することが可能であるものとする。そして、その発明の一形態は明確であると言える。そのため、例えば、能動素子(トランジスタ、ダイオードなど)、配線、受動素子(容量素子、抵抗素子など)、導電層、絶縁層、半導体層、有機材料、無機材料、部品、装置、動作方法、製造方法などが単数もしくは複数記載された図面または文章において、その一部分を取り出して、発明の一形態を構成することが可能であるものとする。例えば、N個(Nは整数)の回路素子(トランジスタ、容量素子等)を有して構成される回路図から、M個(Mは整数で、M<N)の回路素子(トランジスタ、容量素子等)を抜き出して、発明の一形態を構成することは可能である。別の例としては、N個(Nは整数)の層を有して構成される断面図から、M個(Mは整数で、M<N)の層を抜き出して、発明の一形態を構成することは可能である。さらに別の例としては、N個(Nは整数)の要素を有して構成されるフローチャートから、M個(Mは整数で、M<N)の要素を抜き出して、発明の一形態を構成することは可能である。さらに別の例としては、「Aは、B、C、D、E、または、Fを有する」と記載されている文章から、一部の要素を任意に抜き出して、「Aは、BとEとを有する」、「Aは、EとFとを有する」、「Aは、CとEとFとを有する」、または、「Aは、BとCとDとEとを有する」などの発明の一形態を構成することは可能である。
本明細書等においては、ある一つの実施の形態において述べる図または文章において、少なくとも一つの具体例が記載される場合、その具体例の上位概念を導き出すことは、当業者であれば容易に理解される。したがって、ある一つの実施の形態において述べる図または文章において、少なくとも一つの具体例が記載される場合、その具体例の上位概念も、発明の一形態として開示されているものであり、発明の一形態を構成することが可能である。そして、その発明の一形態は、明確であると言える。
本明細書等においては、少なくとも図に記載した内容(図の中の一部でもよい)は、発明の一形態として開示されているものであり、発明の一形態を構成することが可能である。したがって、ある内容について、図に記載されていれば、文章を用いて述べていなくても、その内容は、発明の一形態として開示されているものであり、発明の一形態を構成することが可能である。同様に、図の一部を取り出した図についても、発明の一形態として開示されているものであり、発明の一形態を構成することが可能である。そして、その発明の一形態は明確であると言える。
本発明の一形態において、スイッチとしては、様々な形態のものを用いることができる。スイッチは、導通状態(オン状態)、または、非導通状態(オフ状態)になり、電流を流すか流さないかを制御する機能を有している。または、スイッチは、電流を流す経路を選択して切り替える機能を有し、例えば、経路1に電流を流すことができるようにするか、経路2に電流を流すことができるようにするかを選択して切り替える機能を有している。スイッチの一例としては、電気的スイッチまたは機械的なスイッチなどを用いることができる。つまり、スイッチは、電流を制御できるものであればよく、特定のものに限定されない。スイッチの一例としては、トランジスタ(例えば、バイポーラトランジスタ、MOS(Metal Oxide Semiconductor)トランジスタなど)、ダイオード(例えば、PNダイオード、PINダイオード、ショットキーダイオード、MIM(Metal Insulator Metal)ダイオード、MIS(Metal Insulator Semiconductor)ダイオード、ダイオード接続のトランジスタなど)、またはこれらを組み合わせた論理回路などがある。機械的なスイッチの一例としては、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)のように、MEMS(マイクロ・エレクトロ・メカニカル・システム)技術を用いたスイッチがある。そのスイッチは、機械的に動かすことが可能な電極を有し、その電極が動くことによって、導通と非導通とを制御して動作する。
本発明の一形態において、素子として意図的に設けられるキャパシタのデバイス構造に特段の制約はない。例えば、MIM型のキャパシタを用いることも、MOS型のキャパシタを用いることもできる。