医師が手術の際に縫合又は穿刺に用いる針については、医師や看護師が手術前に予め用意した針の本数を数えておき、縫合又は穿刺が終わる度に一つ一つ所定の容器内に置き、手術が終わった後にその本数を数え、本数があっていることを確認した後に纏めて処理している。この手術用針には尖鋭な小さなものが多いために、容器内に単に置くだけであると紛失し易く、その結果、手術前に確認した針の本数と合わなくなることがある。また、容器内に置く際に針で自分の手などを刺してしまうこともあるため、C型肝炎の発症者やエイズウイルス等の危険な疾病の感染者の手術をする場合、医療関係者への感染の可能性が生じる。
そのため、手術用針の場合は、縫合又は穿刺した後の針をスポンジやコルクなどに突き刺して、手術後にその本数を確認してから、処分することも行われているが、この際にも上記したような問題が生じる。
特に、医師が心臓疾患手術等の際に細い血管の縫合等で用いた使用後のマイクロ針(例えば、長さが3mm程度のものから、それ以下のものもある。)の場合、スポンジ等に突き刺すと、スポンジ等の内部に入り込んでしまい、手術後にその本数を確認することが困難になる。そのため、使用後のマイクロ針が確実に固定され、危険が防止されて確実に回収できると共に、脱落することもなく容易に収納され、本数を確認することができるマイクロ針収納器が求められている。
例えば、使用済みの手術用針の収納容器として、二つ折りにされたプラスチックシートからなり、上方シートは下方シートのフタ部を構成し、該下方シートはその三辺に側壁を有し、該側壁以外の該下方シートの内表面の少なくとも一部に第一接着テープが設けられ、該上方シートの少なくとも一辺の縁部に第二接着テープが設けられ、該第一接着テープの上又は下に所定の間隔を置いて平行に複数のゴムマグネット片が設けられ、そして該ゴムマグネット片の接着された下方シート上に剥離紙が設けられているものが知られている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、この収納容器は、必ずしもマイクロ針の収納には向いていない。ゴムマグネットを使用するため、磁力線の影響で周辺機器(電子機器)に弊害をもたらす恐れがあるからである。
また、医師が手術の際に用いるメス、例えば、替え刃式メスの刃部分についても上記した針の場合と同様に、本数の問題や感染の問題が起こる。メスは、最近は刃部分を取り替える替え刃式メスが主流であり、取り外した使用済みの刃部分が上記した針の場合と同様な問題を生じる。さらにまた、使用済みの点滴針についても、本数の問題や取り扱い不注意による感染の問題が起こり、上記した手術用針や替え刃式メスの刃部分等の場合と同様の問題をもたらす。
縫合又は穿刺用の針、例えば、特に心臓疾患手術等の際に細い血管の縫合等で用いた使用後のマイクロ針や眼科等で用いた使用後のマイクロ針等の手術用針を単に容器内に置いたり、スポンジなどに突き刺したりして管理するだけでは、スポンジの中に針が埋まったり、針を紛失したり、針が確実に固定されずに脱落してしまい、安全・確実に回収することが困難であるということが問題になっている。このため、手術後の手術用針を安全に処置し、管理することが求められている。手術用の替え刃式メスの刃部分や点滴針や手術の際に骨等の固定時に用いるネジや、プレートやボルト等の医療用器具の場合も同様である。
本発明の課題は、手術後のマイクロ針等の手術用針や替え刃式メス(刃部分が取り替え可能なメスの取り外した刃部分)や使用後の点滴針等を安全に処置し、管理することができる使用済みの手術用針や替え刃式メスの刃部分や点滴針等の医療用器具の収納器を提供することにある。
本発明の使用済み医療用器具収納器は、底部材と蓋部材とからなる支持体を有し、この支持体の底部材の表面上に、第1粘着剤層、スポンジ層、第2粘着剤層、不織布層、使用済み医療用器具が載置される第3粘着剤層、及び第1剥離紙層をこの順番に設けてなる積層体を有し、この積層体の最上層の第1剥離紙層の上に前記蓋部材が設けられており、前記支持体は、同じ形状かつ同じ大きさの前記底部材と蓋部材とからなる長方形形状であって、その底部材と蓋部材との間に二つ折りできるように設けられた折り目を有し、この折り目により前記支持体を二つ折りできるように構成され、この二つ折りした一方を前記底部材とし、他方を前記蓋部材とする支持体であり、前記蓋部材で前記第1剥離紙層が覆われるように構成されてなり、前記第3粘着剤層の、前記折り目を設けた側の辺に向かい合った辺(反対側の辺)の少なくとも1つの隅部の粘着剤層上にこの隅部と同じ寸法の紙層を設けてなり、そして前記第1剥離紙層には、前記紙層を設けた隅部に対応する前記第1剥離紙層の隅部が前記第3粘着剤層に対して反対側に折り曲げられた折り曲げ部であって、前記第1剥離紙層を剥がすための把持部分を構成する折り曲げ部を設けてなり、さらに前記底部材の下表面の少なくとも一部に第4粘着剤層を設け、この第4粘着剤層の下表面に第2剥離紙層を設けてなることを特徴とする。
上記のように構成された使用済み医療用器具収納器を用いれば、使用後の、マイクロ針等の手術用針や、替え刃式メスから取り外した刃部分や、点滴針や、手術の際に骨等の固定時に用いるネジや、プレートやボルト等からなる医療用器具を安全に処置・管理することができると共に、その使用方法も簡便である。使用する場合には、第1剥離紙層を剥がし、第3粘着剤層の表面に、使用済み医療用器具を載置すれば良く、載置した医療用器具の上を蓋部材で覆って医療用器具を確実に収納することができる。また、本発明の医療用器具収納器の使用前に、第4粘着剤層の下表面に設けられた第2剥離紙層を剥がし、この収納器を、第4粘着剤層を介して手術台やその周辺の適宜の箇所に確実に取り付けることができるので、使用中にこの収納器が落下する恐れはない。
また、第1剥離紙層の折り曲げ部である把持部分を引っ張って、この剥離紙層を上方に簡単に持ち上げて一部又は全部を剥がし、第3粘着剤層の上に、使用済み医療用器具を載置することができるので、極めて簡便に使用できる。
本発明の使用済み医療用器具収納器において、前記第2剥離紙層の寸法を、前記第4粘着剤層の寸法よりも大きくして、その第2剥離紙層の一部が、前記底部材の一辺から突出するように構成されてなることを特徴とする。
このため、手術前に、前記突出する部分を持って第2剥離紙層を容易に剥がすことができ、本発明の使用済み医療用器具収納器を、露出した第4粘着剤層を介して所定の場所に簡単に固定できる。
前記支持体が、透光性ないしは透明のプラスチックから構成されていることを特徴とする。
上記したように、支持体が透光性ないしは透明のプラスチックから構成されているため、使用済み医療用器具収納器の蓋部材を開くことなく、載置され、固定された使用済みの、マイクロ針等の手術用針や、替え刃式メスの刃部分や、点滴針や、手術の際に骨等の固定時に用いるネジや、プレートやボルト等からなる医療用器具を外部から視認でき、固定した手術用針や、メスの刃部分や、点滴針等の存在及びその本数が一目で分かる。
前記第3粘着剤層の隅部、その上に貼付した紙層、及び第1剥離紙層の折り曲げ部(把持部分)が、三角形状であることを特徴とする。
前記不織布層の上で前記第3粘着剤層の下に、載置される使用済み医療用器具の数をカウントするための記号を設けてなることを特徴とする。
このため、この記号の順番に使用済み医療用器具を載置、固定すれば、第1剥離紙層及び支持体の蓋部材を被せた後でも、透光性ないしは透明のプラスチックから構成されている支持体の蓋部材を通して、また、下記したような材料からなる第1剥離紙層を通して、手術に使用した医療用器具の存在及び本数を一目で確実に視認できる。この場合、記号がなくても、また、記号の順番通りに固定しなくとも、少ない本数であれば簡単に一目で確実に視認できるので問題は生じない。
前記した医療用器具収納器において、さらに、前記支持体を底部材と蓋部材とに二つ折りするために、底部材と蓋部材との間に設けられた折り目を有する辺以外の、底部材の3つの辺の少なくとも1辺に、さらに内側(収納器内部側)に折り曲げ可能な側壁が一体的に設けられてなり、前記側壁の折り曲げられた場合の側壁の上表面上に第3剥離紙層付きの第5粘着剤層が設けられていることを特徴とする。
上記のような側壁を設けるように構成すれば、側壁がない場合と同様に第3粘着剤層と蓋部材とを接着できると共に、この側壁があるために、また、この側壁上の剥離紙層を剥がして露出した第5粘着剤層を介して側壁と蓋部材とを密着することができるために、医療用器具収納器を廃棄する際に、乱暴に取り扱ったとしても載置された医療用器具がこの収納器の外に落下する恐れはない。
前記支持体の底部材と蓋部材との間に二つ折りできるように設けられた折り目が、その支持体の長辺の中央部分(真ん中)に短辺の端から端まで設けられたミシン目であることを特徴とする。
前記使用済み医療用器具が、(マイクロ針等の)手術用針、替え刃式メスの刃部分及び点滴針、及び手術の際に骨等の固定時に用いるネジや、プレートやボルトの医療用器具からからなる群から選ばれることを特徴とする。
本発明の使用済み医療用器具収納器の使用方法は簡便であり、この収納器を用いれば、使用後の医療用器具を載置するだけでしっかり固定できて脱落することがないので、安全であり、また、使用後の医療用器具を紛失することもないので、確実に回収することができる。かくして、使用後の医療用器具を安全に処置し、管理することが可能になるという効果を奏する。その結果、本発明の医療用器具収納器を用いる医師や看護師が、使用後の、マイクロ針等の手術用針やメスの刃部分や点滴針等の医療用器具により傷つく恐れがなくなる。
本発明の使用済み医療用器具収納器を使用する場合には、先ずこの収納器を所定の場所に取り付けた後、蓋部材を開け、第1剥離紙層の折り曲げ部(把持部分)を引っ張ってこの剥離紙層を上方に持ち上げ、又は剥がし、露出した第3粘着剤層の表面に、使用済み医療用器具を載置、固定し、作業終了後に固定した医療用器具の上を蓋部材で覆うので、簡単に固定できると共に、医療用器具を確実に収納できるという効果を奏する。
また、本発明の医療用器具収納器を使用する際には、第4粘着剤層の裏面に設けられた第2剥離紙層を、その突出部分を持って剥がすことにより、この収納器を、第4粘着剤層を介して手術台やその周辺部分に確実に取り付けることができるので、手術中等に収納器が落下することもなく、安全であるという効果を奏する。
さらに、支持体が透光性ないしは透明のプラスチックから構成されているので、そして、剥離紙層も以下に述べるような材料から構成されているので、固定した医療用器具を外部から容易に視認でき、使用済み医療用器具の存在及びその本数を一目で確認することが可能であるという効果を奏する。
さらにまた、使用済み医療用器具をカウントするための記号を表示することができるので、収納した使用済み医療用器具の本数を外部から容易に視認することができるという効果を奏する。
本発明の使用済み医療用器具収納器に係わる一実施の形態によれば、この医療用器具収納器は、底部材と蓋部材とからなる支持体を有し、この支持体の底部材の上表面の上に、第1粘着剤層、スポンジ層、第2粘着剤層、不織布層、使用済み医療用器具が載置される第3粘着剤層、及び第1剥離紙層をこの順番で設けてなる積層体であって、好ましくは、この積層体の各要素の形状が同じであり(好ましくは、例えば正方形又は長方形である)、かつその大きさも同じである積層体を有し、この積層体の最上層の第1剥離紙層の上に蓋部材が設けられており、支持体は、同じ形状かつ同じ大きさの底部材と蓋部材とからなる長方形形状であって、その底部材と蓋部材との間に二つ折りできるように設けられた折り目(好ましくは、支持体の長辺の中央部分(真ん中部分)に短辺の端から端まで設けたミシン目、以下「ミシン目」として説明する。)を有し、このミシン目により二つ折りできるように構成され、その二つ折りした一方を底部材とし、そして二つ折りした他方を蓋部材とし、蓋部材で第1剥離紙層が覆われるように構成されてなり、底部材と蓋部材との間に設けられたミシン目の側の辺に向かい合った辺(反対側の辺)の少なくとも1つの隅部の第3粘着剤層上にこの隅部と少なくとも同じ寸法の紙層を設けてなり、そして第1剥離紙層には、この紙層の設けられた隅部に対応する第1剥離紙層の隅部が第3粘着剤層に対して反対側に折り曲げられた折り曲げ部であって、第1剥離紙層を剥がすための把持部分を構成する折り曲げ部が設けられており、底部材の下表面(裏面)の少なくとも一部に第4粘着剤層を設け、この第4粘着剤層の下表面(裏面)に第2剥離紙層を設け、第2剥離紙層の寸法を、第4粘着剤層の寸法よりも大きくして、その第2剥離紙層の一部が、底部材の一辺、好ましくは底部材と蓋部材との間に設けられたミシン目の側の辺以外の底部材の三辺の少なくとも一辺から、より好ましくはミシン目の側の辺に向かい合った反対側の辺から突出するように構成されてなり、支持体は、透光性ないしは透明のプラスチックから構成されている。
上記実施の形態において、第3粘着剤層の隅部、その上に貼付された紙層、及び第1剥離紙層の折り曲げ部(把持部分)が、三角形状であることが好ましく、さらに不織布層の上で第3粘着剤層の下に、載置される使用済み医療用器具の数をカウントするための記号が、公知の各種印刷等の所定の方法で表示されていることが好ましい。本発明で用いることができる医療用器具としては、例えば、マイクロ針等の手術用針や、手術用替え刃式メスから取り外した刃部分や、点滴針や、手術の際に骨等の固定時に用いるネジや、プレートやボルト等からなる医療用器具等を挙げることができる。
本発明の別の実施の形態に係る使用済み医療用器具収納器として、前記した実施の形態に係る医療用器具収納器に、さらに、支持体を底部材と蓋部材とに二つ折りした際の底部材と蓋部材との間に設けられたミシン目のある辺以外の底部材の三辺の少なくとも一辺に、好ましくは、この三辺のそれぞれに、内側に向かって(収納器内部に向かって)折り曲げ可能な適宜の高さの側壁が一体的に設けられてなり、そしてこの側壁の上表面上に好ましくは第3剥離紙層付きの第5粘着剤層が設けられてなる収納器を挙げることができる。この場合、使用済み医療用器具を載置して固定した収納器を廃棄する前に、この第3剥離紙層を剥がして、蓋部材を第5粘着剤層に接着させれば、乱暴に取り扱ったとしても載置、固定された医療用器具が落下する恐れはない。
上記剥離紙層は、透光性、透明、半透明のものが好ましい。
本発明の使用済み医療用器具収納器を構成する上記要素の内、スポンジ層としては、その材質には特に制限はないが、例えば、メラミン樹脂、ポリウレタン等の合成樹脂を発泡成形して作製した市販品の合成スポンジ(例えば、BASF製メラミンフォーム(輸入元:イノアックコーポレーション、「BASOTECT/バソテクト(登録商標)」)等)を用いることができる。スポンジ層の厚さは、薄く、例えば、3mm程度にしたものを用いれば良い。また、不織布層としても、その材質には特に制限はないが、例えば、綿、羊毛、麻、パルプ、絹等からなる天然繊維や、レーヨン、ナイロン、ポリエステル、ポリプロピレン、アクリル、ビニロン、アラミド等からなる合成繊維から得られる市販品の不織布(例えば、ライオン株式会社製、商品名:リードクッキングペーパー等)を用いることができる。不織布層の厚さは、薄く、例えば、0.8〜0.9mm程度の厚さのものを用いれば良い。このようなスポンジ層及び不織布層を用いることにより、使用済み医療用器具を第3粘着剤層の上に載置した後、第1剥離紙層を被せ、次いで蓋部材で覆って押さえる場合に、スポンジ層があるために、この医療用器具は積層体内に向かって沈み、仮に針が立って載置されていても容易に横になり、しっかりと第3粘着剤層と接着して固定され、また、不織布層があるために、第3粘着剤層を通して積層体内部、特にスポンジ層中に潜り込むことはないので、安全に収納され、処理することができる。なお、上記不織布には、いわゆる市販のキッチンペーパーも含まれる。
次いで、本発明で用いる粘着剤層に関し説明する。特別の粘着剤・接着剤ではなく、底部材のプラスチック材料とスポンジ層とを、スポンジ層と不織布層とを、また、紙層を粘着・接着できる市販の両面接着テープ(以下、「両面テープ」と称する。)の粘着剤を用いることができる。本発明の使用済み医療用器具収納器は、後述するように、市販の両面テープ(特に制限されるわけではない)を用いて作製できる。例えば、恵比寿化成(株)製の両面テープ(品名700−EPNT(アクリル系の粘着剤使用))等を用いて作製できる。
以下、図1〜5を参照して、本発明について詳細に説明する。各図面中、同じ構成要素には同じ参照番号を付してある。
図1に示すように、本発明の使用済み医療用器具収納器100は、底部材101aと蓋部材101bとからなる支持体101の底部材101aの表面上に、第1粘着剤層102、スポンジ層103、第2粘着剤層104、不織布層105、使用済み医療用器具(例えば、マイクロ針等の手術用針、替え刃式メスから取り外した刃部分、点滴針等)が載置される第3粘着剤層106、及び第1剥離紙層107を、同じ大きさの形状(図1では、底部材101a、蓋部材101b、第1粘着剤層102から第1剥離紙層107までを正方形(図2−4参照)として示してあるが、長方形でも良い)で、この順番に積層して、各粘着剤層で相互に接着して一体化してなる積層体を有してなり、この支持体101は、長方形形状であって、その長辺の中央部分(真ん中部分)の短辺の端から端までにわたって全体にミシン目(図4参照)が設けられ、このミシン目を折り目(境目)として支持体101を半分に折り曲げて、二つ折りできるように構成されている。この二つ折りした一方が底部材101aとして、他方が蓋部材101bとして形成されている。この底部材101aの下表面(裏面)の少なくとも一部に第4粘着剤層108を設けてなり、この第4粘着剤層108の下表面(裏面)に第2剥離紙層109が設けられている(図2(b)参照)。この第2剥離紙層109は、その寸法が第4粘着剤層108の寸法よりも大きく、底部材101aのいずれか一辺(好ましくは、底部材と蓋部材との間に設けられたミシン目のある側の辺に向かい合った反対側の辺)から突出するように設けられている。この突出部分(把持部分)を持って、第2剥離紙層109を容易に剥がせるように構成されている。第2剥離紙層109を剥がして、第4粘着剤層108を露出させ、本発明の使用済み医療用器具収納器を手術台やその周辺の適当な場所に接着させ、固定して使用することができる。なお、底部材及び蓋部材の大きさは、積層体の大きさと同じか、又は僅かに大きく構成されていることが好ましい。
また、図1に示すように、第3粘着剤層106の、底部材101aと蓋部材101bとの間の折り目に設けられたミシン目(図4参照)側の辺に向かい合った反対側の辺の1つの隅部(三角形状)の粘着剤層上に、この粘着剤層の隅部と同じ大きさの紙層(三角形状)110が貼付されてなり、そして第3粘着剤層106の隅部に対応する第1剥離紙層107の隅部が、第3粘着剤層に対して反対側に折り曲げられて折り曲げ部111を形成している。この折り曲げ部111は、使用済み医療用器具を第3粘着剤層上に載置する際に第1剥離紙層107を剥がすための把持部分を構成している。図1及び以下説明する図2(a)等では、紙層110と折り曲げ部111との大きさをほぼ同じ大きさの三角形として示したが、紙層の方が大きくても、紙層の方が小さくても良い。この紙層の材料には特に制限はなく、下の第3粘着剤層の隅部に貼付できて、これを覆うことができる紙であればよい。
図2(a)及び図3に示すように、本発明の使用済み医療用器具収納器100では、透光性ないしは透明な材料からなる蓋部材101b及び第1剥離紙層107を通して、第3粘着剤層106(図示せず)の隅部上に貼付された三角形状の紙層110、第1剥離紙層107の隅部の折り曲げ部111である把持部分、及び記号112が視認できるようになっている。図2(b)に示すように、第4粘着剤層108は底部材101aの裏面の一部に設けられ、その第4粘着剤層の裏面上に、第2剥離紙層109が、好ましくは、その一方の端部が底部材101aと蓋部材101bとの間に設けられたミシン目(境目)を有する辺に対向する反対側の辺から突出するように設けられている。第1粘着剤層102が底部材101aを通して見えている。
本発明の使用済み医療用器具収納器の使用順序を模式的に示す斜視図である図4(a)〜(c)に示すように、使用する場合には、まず第2剥離紙層109(図示せず)を剥がし、露出した第4粘着剤層108(図示せず)を介して収納器を手術台等の適宜の場所に固定し、蓋部材101bを開く。蓋部材101bを開いた後、第1剥離紙層107の折り曲げ部111を把持して第1剥離紙層107を第3粘着剤層106から剥がし始め、次いで、第1剥離紙層107を剥がした後、図4(b)に示すように、使用済みの手術用針113を第3粘着剤層106上に載置し、固定し、全ての使用済みの手術用針を固定した後、図4(c)(図中では、全ての使用済みの手術用針を示していない)に示すように、蓋部材101bを第3粘着剤層106上に被せて収納工程を完了する。剥した第1剥離紙層107は廃棄する。
次に、本発明の使用済み医療用器具収納器の別の構成例である、底部材101aの3辺のそれぞれに折り曲げ可能な側壁114を一体的に設けた収納器の使用順序を模式的に示す図5(a)〜(d)を参照して説明する。
図5(a)〜(d)に示すように、上記した図1〜4に示す本発明の使用済み医療用器具収納器との違いは、底部材101aの三辺(支持体101の底部材101aと蓋部材101bとの間に設けられたミシン目側の辺以外の辺)に、内側(収納器内部)に向かって折り曲げ可能な適宜な高さ(底部材の縁部を覆う高さ)の側壁114を一体的に設けていることであり、残りの構成要素は同じである。この側壁114には、側壁を内側に向かって折り曲げた場合の側壁表面上に第5粘着剤層115、その上に第3剥離紙層116が設けられており、第3剥離紙層116を剥がし、露出した第5粘着剤層115を介して側壁と蓋部材の縁部とを接着できるようになっている。
底部材101aに折り曲げ可能な3つの側壁114を一体的に設けた収納器を示す図5に関し、蓋部材101bを開いた状態を模式的に示す斜視図(図5(a))及び第1剥離紙層107を剥がし、使用済みの手術用針113を第3粘着剤層上に載置、固定した状態を模式的に示す斜視図(図5(b))は、側壁114を除いて、上記した図4(a)及び(b)の場合と同様であるので、説明を省略する。
図5(c)に示すように、第5粘着剤層115及び第3剥離紙層116(図5(b)参照)を備えた側壁114を内側に向かって折り曲げた後、第3剥離紙層116を剥がし、図5(d)に示すように、蓋部材101bを被せて、蓋部材101bの縁部と側壁114とを第5粘着剤層115を介して接着せしめ、収納工程を完了する。
上記した本発明の使用済み医療用器具収納器を作製する方法には特に制限はなく、目的とする構造のものが得られればいかなる方法でも良い。その作製方法の好ましい一つの例を述べれば、例えば、半透明の所定寸法の長方形ポリプロピレンシートを支持体101として用い、この支持体101の長辺の中央部分(真ん中部分)の短辺の端から端まで、公知のミシン目カッターを用いてミシン目を形成し、このミシン目を境目として半分に二つ折りして、底部材101aと蓋部材101bとを形成する。ミシン目カッターとしては、例えば、歯部分の幅が1〜2mm、好ましくは1.5mm程度、また、歯間隔が1〜3mm、好ましくは2.0mm程度の歯を有するミシン目カッターを用いてミシン目を形成しても良い。二つ折りが可能であればミシン目の大きさには特に制限はなく、このミシン目を境目として、支持体101を容易に半分に折り曲げ、底部材101aと蓋部材101bとを形成することができれば良い。
かくして得られた底部材101aの上表面に両面テープを貼付する。この両面テープは、底部材101aとスポンジ層103とを接着できる市販の公知粘着剤を有する両面テープであれば良く、例えば、上記したような市販の両面テープを用いれば良い(以下用いる両面テープも同じである)。この両面テープを底部材101aの上に貼付した後、その剥離紙を剥がしたものを第1粘着剤層102として使用することができる。この粘着剤層の表面上にスポンジ層103を接着し、次いでこのスポンジ層の表面上に両面テープを貼付し、次いで剥離紙を剥がし、露出した粘着剤層(第2粘着剤層)の上に不織布層105を積層し、スポンジ層と不織布層とを接着する。その後、不織布層105の表面上に、好ましくは、載置される使用済み医療用器具の数をカウントするための記号を公知の印刷法で印刷した後、その上に両面テープを貼付する。この場合の両面テープの粘着剤が第3粘着剤層106に相当し、この両面テープの剥離紙は剥がさず、第1剥離紙層107として用いる。この第3粘着剤層106の、底部材101aと蓋部材101bとの間に設けられたミシン目の側の辺に向かい合った辺(反対側の辺)の1つの隅部(好ましくは、三角形状)の粘着剤層上にこの隅部と同じ形状及び大きさの紙層を貼付し、また、この紙層の貼付された隅部に対応する第1剥離紙層107の隅部を第3粘着剤層106に対して反対側に折り曲げて、第1剥離紙層107を剥がすための把持部分を構成する折り曲げ部(好ましくは、三角形状)を形成し、その後、折り曲げ部を有する第1剥離紙層107上を蓋部材101bで覆えば、本発明の使用済み医療用器具収納器を作製できる。かくして得られた収納器を必要に応じて滅菌し、袋詰めすれば製品となる。上記剥離紙層の材質は、特に制限はなく、例えば、通常用いられている透光性ないしは透明、半透明の剥離紙用紙(例えば、グラシン紙やパラフィン紙等)であってもよい。
また、図2(b)に示すように、底部材101aの下表面(裏面)には、適当な大きさに切った両面テープであって、第2剥離紙層109が第4粘着剤層108よりも大きくなるように形成した両面テープが貼付され、底部材101aの一辺(例えば、底部材101aと蓋部材101bとの間に設けられたミシン目を有する側の辺の反対側の辺)から突出するように形成されており、この突出部分(把持部分)を持って、第2剥離紙層109を容易に剥がし、露出した第4粘着剤層108を介して収納器を所定の場所に接着できるように構成されている。
支持体101の材質は特に制限されず、透明又は半透明のプラスチックを使用することができ、載置された医療用器具を外部から容易に視認でき、固定した医療用器具の存在及びその本数を一目で確認することが可能である素材であれば良い。例えば、公知の硬質プラスチック等、例えばポリプロピレン等であれば良い。
上記記号の表示方法はいかなる方法を用いても良く、例えば、数字等の記号を公知の印刷法に従って直接不織布層105の表面に印刷しても良い。また、表示した記号に合わせて区割り線を引いておくことが好ましい。このように構成することにより、載置・固定した使用済みの手術用針、替え刃式メスの刃部分、点滴針の本数をさらに容易に確認することが可能になる。
なお、図5に示す側壁を設けた使用済み医療用器具収納器も、上記の側壁を設けない使用済み医療用器具収納器の作製方法に準じて作製できる。側壁についても通常の方法により作製でき、また、その側壁に設ける第5粘着剤層及び第3剥離紙層についても、通常の方法により、両面テープを用いて同様に作製できる。
かくして製造された本発明の使用済み医療用器具収納器によれば、使用済み医療用器具が確実に固定され、容易に収納されるので、危険が防止され、確実に回収できる。さらに、第3粘着剤層上に完全に固定できるため、載置・固定された医療用器具が脱落することはない。この場合、使用済み医療用器具をカウントするための記号が表示されていれば、上記記号の順番に器具を固定することにより、支持体の蓋部材及び剥離紙層が、固定された器具を認識できる程度の材質(透光性を有する材質、透明な材質、半透明の材質)で構成されているので、外部から固定した器具の存在及びその本数が一目で分かる。